説明

マスク搬送システムおよびマスク搬送用アダプタ

【課題】人手による搬送作業をなるべく抑えて露光装置とマスク検査装置との間でフォトマスクを搬送することができるマスク搬送システムを提供する。
【解決手段】実施形態によれば、マスク搬送システムは、ストッカ11〜71と、搬送路3と、収納容器と、搬送装置200と、制御装置80と、を備える。収納容器はウェハ搬送用とマスク搬送用とで同一の構造を有する。制御装置80は、露光エリア30のストッカ31、またはマスク検査エリア70のストッカ71に収納容器が入庫されると、収納容器がマスク搬送用であるかを判別し、マスク搬送用の収納容器である場合には入庫されたストッカではないストッカ71,31に収納容器が搬送されるように搬送装置200を制御する搬送装置制御部を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、マスク搬送システムおよびマスク搬送用アダプタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体装置の製造設備における露光処理を行うエリアには、露光装置と、露光装置に用いられるフォトマスクを複数格納し、露光装置の近傍に設けられるストッカと、が設けられる。そして、ストッカと露光装置との間のフォトマスクの受け渡しは、マスク搬送装置によって行われる。また、フォトマスクは複数種類のフォトマスクを収納可能な構造のアダプタに載置されて、ストッカに格納される。
【0003】
一般的に、露光装置で使用されるフォトマスクは、露光を繰り返すと成長性欠陥が発生し、この欠陥がある大きさ以上に成長すると、ウェハ上にパターンとして転写されるようになり、半導体装置の製造歩留りを低下させてしまう。そのため、マスク検査装置でフォトマスクが使用可能か否かを定期的に検査している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−79418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
マスク検査装置が露光装置の近傍に設けられる場合には、上記従来技術で露光装置のフォトマスクを、ストッカを介してマスク検査装置に搬送することは可能である。しかし、マスク検査装置がマスク搬送装置で搬送できない位置に設けられた場合には、上記従来技術では対応できず、フォトマスクを人手で露光装置とマスク検査装置との間で搬送しなければならない。
【0006】
本発明の一つの実施形態は、マスク検査装置が露光装置から離れて設置された場合に、人手による搬送作業をなるべく抑えて露光装置とマスク検査装置との間でフォトマスクを搬送することができるマスク搬送システムを提供することを目的とする。また、マスク搬送システムで使用されるフォトマスクを収納するマスク搬送用アダプタを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの実施形態によれば、半導体装置の製造工程の一工程で使用される露光装置と、前記露光装置で使用されるフォトマスクを検査するマスク検査装置と、の間で前記フォトマスクの搬送を行うマスク搬送システムが提供される。前記マスク搬送システムは、ストッカと、搬送路と、収納容器と、搬送装置と、制御装置と、を備える。前記ストッカは、前記半導体装置の各製造工程で使用される装置が配置される処理エリアに設けられる。前記搬送路は、前記各処理エリアの前記ストッカ間を結ぶように設けられる。前記収納容器は、前記各処理エリアで処理される所定の数のウェハを収納可能な構成を有し、ウェハ搬送用の前記収納容器とマスク搬送用の前記収納容器とは、同一の構造を有する。前記搬送装置は、前記搬送路に沿って移動し、前記収納容器を搬送する。前記制御装置は、前記搬送装置の前記搬送路上での運行を制御する装置であり、搬送装置制御手段を備える。前記搬送装置制御手段は、前記露光装置が配置される露光エリアの第1のストッカ、または前記マスク検査装置が配置されるマスク検査エリアの第2のストッカに収納容器が入庫されると、前記収納容器がマスク搬送用の収納容器であるかを判別し、マスク搬送用の収納容器である場合には前記入庫されたストッカではない前記第2または前記第1のストッカに前記収納容器が搬送されるように前記搬送装置を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、実施形態によるマスク搬送システムが適用される半導体装置の製造設備の一例を模式的に示す図である。
【図2】図2は、収納容器の構造の一例を示す図である。
【図3】図3は、収納容器にフォトマスクを収めるマスク搬送用アダプタの一例を示す分解斜視図である。
【図4】図4は、収納容器の格納時の様子を模式的に示す斜視図である。
【図5】図5は、マスク搬送用アダプタ収納時の収納容器の様子を示す図である。
【図6】図6は、搬送装置の構造の一例を模式的に示す図である。
【図7】図7は、実施形態による制御装置の機能構成を示すブロック図である。
【図8】図8は、収納容器登録情報の一例を示す図である。
【図9】図9は、実施形態による収納容器の行き先制御処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【図10】図10は、マスク搬送システムを用いたマスク検査手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、実施形態にかかるマスク搬送システムおよびマスク搬送用アダプタを詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0010】
図1は、実施形態によるマスク搬送システムが適用される半導体装置の製造設備の一例を模式的に示す図である。ここでは、半導体装置の製造設備は、A棟1AとB棟1Bとを有し、それぞれに半導体装置を製造するための処理装置が配置されている場合が例示されている。この半導体装置の製造設備として、処理対象物であるウェハをそれぞれの処理装置が配置される処理エリアに搬送して、処理を加えながら製品を製造する施設を採用し、A棟1Aには、成膜エリア10、レジスト塗布エリア20、露光エリア30および現像エリア40が設けられ、B棟1Bには、エッチングエリア50、洗浄エリア60およびマスク検査エリア70が設けられる場合を例として図示している。またこの例では、OHT(Over Head Hoist Transport)と呼ばれる搬送方式、およびリニア駆動方式の走行方式を採用しているものとする。そのため、各棟の上記各処理エリア間を経由するように、天井面に搬送路としてのレール3が設置され、レール3に沿って搬送装置200が走行する。図1では矢印で示されているが、A棟1Aの現像エリア40とB棟1Bのエッチングエリア50との間にもレール3が敷設されており、搬送装置200でA棟1AとB棟1Bとの間を往来可能な構成となっている。
【0011】
各処理エリア10〜70のレール3の配設位置の一部には、処理対象であるウェハを格納する収納容器を載置するストッカ11〜71が設けられ、ストッカ11〜71に近接して各処理エリア10〜70に対応する処理装置が設けられる。たとえば、成膜エリア10には成膜装置13が設けられ、レジスト塗布エリア20にはレジスト塗布装置23が設けられ、露光エリア30には露光装置33が設けられ、現像エリア40には現像装置43が設けられ、エッチングエリア50にはエッチング装置53が設けられ、洗浄エリア60には洗浄装置63が設けられ、マスク検査エリア70にはマスク検査装置73が設けられる。また、成膜エリア10、レジスト塗布エリア20、露光エリア30、現像エリア40、エッチングエリア50および洗浄エリア60には、収納容器内のウェハを各処理装置へと搬送するための搬送装置14〜64が設けられている。さらに、露光エリア30とマスク検査エリア70には、作業者が使用する作業端末36,76が設けられている。
【0012】
各処理装置13〜73や搬送装置14〜64,200などの被制御装置には、通信回線5を介して制御装置80が接続されている。制御装置80は、半導体装置の製造設備全般の動作を制御するものであり、たとえば、半導体装置の製造工程にしたがって、成膜エリア10→レジスト塗布エリア20→露光エリア30→現像エリア40→エッチングエリア50→洗浄エリア60の順にウェハを搬送するように、搬送装置200が移動されるとともに、搬送装置200で搬送されるウェハに対して各処理エリアの処理装置で処理が行われる。処理にあたっては、被制御装置を制御するのに必要な情報が被制御装置から通信回線5を介して制御装置80へと伝達され、制御装置80はその情報を用いて所定の演算を行って被制御装置を制御する指示を作成し、その指示を通信回線5を介して被制御装置へと伝達する。なお、制御装置80と作業端末36,76との間も通信回線5を介して接続されている。
【0013】
なお、各ストッカ11〜71には、収納容器に付された収納容器識別情報を読み取り、自ストッカ11〜71を識別するストッカ識別情報とともに読み取った収納容器識別情報を制御装置80へと通知する収納容器識別情報読取部12〜72を備える。そのため、ストッカの収納容器識別情報読取部12〜72と制御装置80とは通信回線5を介して接続されている。収納容器識別情報読取部12〜72は、収納容器に設けられる収納容器識別情報記憶部がバーコードや二次元コードで構成される場合には、それらを読み取るバーコードリーダや二次元コードリーダであり、収納容器識別情報記憶部が無線タグで構成される場合には、無線タグ読取装置である。
【0014】
一般的な半導体装置の製造設備では、レール3に沿って移動する搬送装置200で搬送されるものはウェハであるが、本実施形態では、ウェハのほかに露光装置33とマスク検査装置73との間でフォトマスクを搬送可能な構成としている。そのため、後述するように、搬送装置200で搬送される収納容器には、ウェハのほかにフォトマスクが収納される。
【0015】
図2は、収納容器の構造の一例を示す図であり、(a)は収納容器の外観を示す斜視図であり、(b)は(a)のA−A断面図であり、(c)は(a)のB−B断面図である。この図2に示されるように、収納容器100は内部が空洞となっている直方体形状を有し、直方体形状の中の一つの面が、収納容器100内に搬送対象を出し入れする際の開口103となる収納部材101と、収納部材101の開口103に着脱可能な蓋部材102と、を有する。搬送時には収納部材101の開口103を覆うように蓋部材102が装着される。また、収納容器100上部には、搬送装置200と接続される接続部104が設けられている。
【0016】
収納容器100の開口103を正面から見た場合に、収納部材101内の左右方向の内壁には、ウェハを格納することが可能な溝105が設けられている。収納部材101内には、たとえば半導体装置の製造において、製造単位である1ロットで製造することができるウェハの枚数を収納できるように、溝105が設けられている。
【0017】
また、収納容器100には、収納容器100をシステム内で一意に識別する収納容器識別情報が記憶された収納容器識別情報記憶部106が設けられている。収納容器識別情報記憶部106として、たとえばバーコードや二次元コード、無線タグなどを用いることができる。
【0018】
図3は、収納容器にフォトマスクを収めるマスク搬送用アダプタの一例を示す分解斜視図である。マスク搬送用アダプタ120は、収納容器100に格納されるウェハと同じサイズを有するベース板121と、ベース板121の裏面に接着される裏面補強板122と、フォトマスクが入れられているフォトマスク収納ケース130のベース板121上での前後方向の移動を防止するガイドピン123と、フォトマスク収納ケース130のベース板121上での左右方向の移動の防止と、マスク搬送用アダプタ120の収納容器100内への収納時にベース板121の面内方向の回転を防止するガイドバー124と、を備える。この例では、ガイドバー124は、ベース板121の前後方向(収納容器100の奥行き方向)に延在した形状を有し、着脱可能な構成となっている。なお、ここで、収納容器100の開口103に対して、マスク搬送用アダプタ120を出し入れする方向をベース板121の前後方向と定義し、ベース板121面内の前後方向(奥行き方向)に垂直な方向を左右方向と定義している。また、ベース板121と裏面補強板122とは、底板を構成し、ガイドピン123とガイドバー124とは、支持部材を構成している。
【0019】
さらに、この例では、裏面補強板122は八角形形状となっているが、収納容器100に格納したときに、収納容器100の前後方向および左右方向の側面と並行となる辺を有する多角形状の板状部材であればよい。裏面補強板122の辺が収納容器100の前後方向および左右方向の側面と並行となるようにマスク搬送用アダプタ120を収納容器100に格納することで、底板が面内方向に回転してしまうことを防ぎ、フォトマスクの損傷を抑制することができる。
【0020】
図4は、収納容器の格納時の様子を模式的に示す斜視図であり、(a)はウェハの収納時の様子を示しており、(b)はマスク搬送用アダプタの収納時の様子を示している。また、図5は、マスク搬送用アダプタ収納時の収納容器の様子を示す図であり、(a)は正面図であり、(b)は上面図である。また、図5(a)では、左半分は蓋部材を装着した状態を示しており、右半分は蓋部材を取り外した状態を示している。
【0021】
これらの図に示されるように、収納容器100には、ウェハ140とフォトマスク収納ケース130とを収納することができる。図4(a)のようにウェハ140を収納する場合には、所定のサイズ(直径R)のウェハ140をそのままの状態で、収納容器100の収納部材101に形成された溝105の数だけ収納することができる。また、図4(b)と図5に示されるように、マスク搬送用アダプタ120のウェハ140と同じサイズ(直径R)を有するベース板121を収納部材101の溝105に挿入することで、マスク搬送用アダプタ120全体が収納容器100内に保持される。また、ガイドバー124が溝105の近傍に配置されるように挿入することで、マスク搬送用アダプタ120の収納容器100内での回転が抑えられる。さらに、ガイドバー124と、ベース板121の前後方向に設けられたガイドピン123とによって、ベース板121上でフォトマスク収納ケース130が固定され、搬送装置200での移動中などでフォトマスク収納ケース130のベース板121上での前後左右方向への移動(位置ずれ)が防止される。図5では、収納容器100にマスク搬送用アダプタ120が2つ収納される場合が示されている。
【0022】
図6は、搬送装置の構造の一例を模式的に示す図である。ここでは、搬送装置200として、天井に設けられたレール3に懸架されてレール3に沿って移動する懸垂搬送装置を用いる場合について説明する。搬送装置200は、収納容器100の上部の接続部104と接続して収納容器100を保持する収納容器保持部201と、レール3に懸架するとともに、レール3に沿って移動可能な移動機構部202と、移動機構部202と収納容器保持部201とを接続するロッド203と、ロッド203を介して収納容器保持部201を上下に移動させる駆動機構部204と、を備える。
【0023】
このような構成の搬送装置200の動作の概略について説明する。搬送装置200は、収納容器100を保持していない場合には、ストッカ11〜71の位置で、駆動機構部204によって収納容器保持部201をストッカ11〜71上の収納容器100の配置位置まで下降させ、収納容器保持部201で収納容器100の接続部104と接続する。搬送中に収納容器100が落下しないように収納容器保持部201と接続部104とがしっかりと固定される。その後、駆動機構部204によって収納容器保持部201を所定の位置まで上昇させる。そして、制御装置80からの指示に従って、移動機構部202はレール3上をたとえばリニア駆動方式で移動することになる。
【0024】
また、制御装置80からの指示によって目的とするストッカに到着すると、駆動機構部204によって収納容器保持部201を下降させ、収納容器保持部201を収納容器100の接続部104から外し、ストッカ11〜71上に収納容器100を載置する。その後、駆動機構部204によって収納容器保持部201を所定の位置まで上昇させる。以上のように、搬送装置200によって収納容器100の搬送が行われる。
【0025】
図7は、実施形態による制御装置の機能構成を示すブロック図である。ここでは、搬送装置200を用いた収納容器100の搬送処理に関する機能のみを示している。制御装置80は、収納容器登録情報格納部81と、搬送装置制御部82と、通知処理部83と、を備える。
【0026】
収納容器登録情報格納部81は、マスク搬送システムで使用される収納容器100の用途と行き先を含む収納容器登録情報を格納している。具体的には、収納容器登録情報には、収納容器100に一意に付された収納容器識別情報に対して、ウェハ搬送用かマスク搬送用かを示す用途が設定され、マスク搬送用の場合には、収納容器100の搬送先が設定される。
【0027】
図8は、収納容器登録情報の一例を示す図である。収納容器登録情報は、収納容器をシステム内で一意に識別する収納容器識別情報と、用途と、行き先と、を含む。用途は、収納容器識別情報で特定される収納容器100がウェハ搬送用に用いられるのか、またはマスク搬送用に用いられるのかが指定される。そのため、この用途でマスク搬送用と指定された収納容器100は、マスク搬送システムでは、マスク搬送専用で用いられることになる。行き先は、用途がマスク搬送用の場合に指定されるものであり、露光エリア30とマスク検査エリア70が格納されている。
【0028】
搬送装置制御部82は、搬送装置200が搬送している収納容器100について、収納容器登録情報格納部81の収納容器登録情報に基づいてレール3上を搬送させる機能を有する。具体的には、搬送装置制御部82は、ストッカ11〜71の収納容器識別情報読取部12〜72から、読み取った収納容器100の収納容器識別情報と、ストッカ11〜71を識別するストッカ識別情報とを受け取ると、そのストッカ11〜71に入庫された収納容器100を搬送する搬送装置200を決定し、その搬送装置200で収納容器100を収納容器登録情報に基づいて搬送する制御を行う。ここで、搬送装置200の決定方法として、たとえば収納容器100が入庫されたストッカ11〜71に最も近くに存在し、収納容器100を搬送していない搬送装置200を選択することができる。
【0029】
また、搬送装置200の制御方法として、たとえば、ストッカ11〜71から取得した収納容器識別情報が、収納容器登録情報中でウェハ搬送用として登録されている場合には、ウェハ搬送用の収納容器であると識別される。そして、搬送装置制御部82は、予め定められた手順にしたがって、そのストッカからつぎのストッカへと収納容器100を搬送するように制御する。一方、ストッカ11〜71から取得した収納容器識別情報が、収納容器登録情報中でマスク搬送用として登録されている場合には、マスク搬送用の収納容器であると識別される。そして、搬送装置制御部82は、ストッカ識別情報から収納容器100の現在の位置(露光エリア30かマスク検査エリア70か)を特定し、収納容器登録情報から搬送すべきストッカの位置を取得し、取得したストッカの位置に搬送するように制御する。具体的には、露光エリア30のストッカ31にマスク搬送用の収納容器100が作業者によって入庫された場合には、マスク検査エリア70のストッカ71が行き先に指定され、逆にマスク検査エリア70のストッカ71にマスク搬送用の収納容器100が作業者によって入庫された場合には、露光エリア30のストッカ31が行き先に指定される。
【0030】
通知処理部83は、搬送装置制御部82によって収納容器100が、露光エリア30からマスク検査エリア70のストッカ71に搬送された場合、または逆にマスク検査エリア70から露光エリア30のストッカ31に搬送された場合に、収納容器100がそれぞれの処理エリアに到着したことを各処理エリア内または各処理エリア近傍での作業者に通知する。通知方法としては、たとえば露光エリア30やマスク検査エリア70に通知灯を設け、収納容器100が到着した場合に通知灯を点灯させる方法や、露光エリア30やマスク検査エリア70にスピーカを設け、収納容器100が到着した場合にスピーカから音声を出力する方法、露光エリア30やマスク検査エリア70に設けられている作業端末36,76に収納容器100が到着したことを通知する方法、作業者が携帯可能な端末を有している場合に、収納容器100が到着した場合に携帯可能な端末にメールを送信する方法などを例示することができる。
【0031】
つぎに、マスク搬送システムにおける収納容器100の行き先制御処理について説明する。図9は、実施形態による収納容器の行き先制御処理の手順の一例を示すフローチャートである。まず、各処理エリア10〜70のストッカ11〜71に収納容器100が入庫されると、ストッカ11〜71の収納容器識別情報読取部12〜72は、収納容器100に付された収納容器識別情報記憶部106から収納容器識別情報を読み取る。そして、自ストッカ11〜71のストッカ識別情報とともに、読み取った収納容器識別情報を制御装置80へと送信する。
【0032】
制御装置80の搬送装置制御部82は、収納容器識別情報とストッカ識別情報とを取得すると(ステップS11)、取得した収納容器識別情報と、収納容器登録情報格納部81内の収納容器登録情報とから、収納容器識別情報に対応する収納容器100の用途がマスク搬送用であるかを確認する(ステップS12)。具体的には、取得した収納容器識別情報の用途が、収納容器登録情報内でマスク搬送用として登録されているのか、ウェハ搬送用として登録されているのかを確認する。
【0033】
収納容器100の用途がマスク搬送用でない場合、すなわちウェハ搬送用である場合(ステップS12でNoの場合)には、つぎの処理エリアのストッカに収納容器100を搬送するように搬送装置200を制御する(ステップS13)。たとえば、図1の成膜エリア10のストッカ11に収納容器100が載置された場合には、レジスト塗布エリア20のストッカ21へと収納容器100を搬送するように搬送装置200を制御し、処理が終了する。
【0034】
一方、収納容器100の用途がマスク搬送用である場合(ステップS12でYesの場合)には、取得したストッカ識別情報から収納容器100の行き先を決定する(ステップS14)。マスク搬送用の収納容器100は、露光エリア30のストッカ31とマスク検査エリア70のストッカ71との間を行き来するので、ストッカ識別情報が露光エリア30のストッカ31であるのか、マスク検査エリア70のストッカ71であるのかを判別する。そして、判別した処理エリアでない方の処理エリアのストッカを行き先として設定する。具体的には、取得したストッカ識別情報が露光エリア30のストッカ31である場合には、行き先としてマスク検査エリア70のストッカ71が設定され、取得したストッカ識別情報がマスク検査エリア70のストッカ71である場合には、行き先として露光エリア30のストッカ31が設定される。
【0035】
その後、搬送装置制御部82は、ステップS14で決定した行き先に収納容器100を搬送するように搬送装置200を制御する(ステップS15)。ついで、搬送装置制御部82は、収納容器100が目的とするストッカに到着したか判定する(ステップS16)。目的とするストッカに到着しない場合(ステップS16でNoの場合)には、ステップS15へと戻る。また、目的とするストッカに到着した場合(ステップS16でYesの場合)には、収納容器100をストッカ上に載置する(ステップS17)。そして、通知処理部83は、たとえば行き先の処理エリアまたはその近傍で作業をしている作業者に対して、収納容器100が到着したことを通知する(ステップS18)。露光エリア30のストッカ31にフォトマスクを収容した収納容器100が到着した場合には、露光エリア30の作業端末36の表示装置に、収納容器100が到着したことを通知するメッセージを表示し、マスク検査エリア70のストッカ71にフォトマスクを収容した収納容器100が到着した場合には、マスク検査エリア70の作業端末76の表示装置に、収納容器100が到着したことを通知するメッセージを表示するものとする。以上によって、行き先制御処理が終了する。
【0036】
図10は、マスク搬送システムを用いたマスク検査手順の一例を示すフローチャートである。まず、露光エリア30で露光装置33のフォトマスクが所定期間使用されると、作業者はフォトマスクを使用可能か否かを調べるために、フォトマスクを露光装置33から取り出し(ステップS31)、マスク搬送用アダプタ120に装着し、マスク搬送用アダプタ120を収納容器100に格納する(ステップS32)。そして、作業者は収納容器100を最寄りのストッカ31に入庫する(ステップS33)。なお、このとき使用される収納容器100は、予め収納容器登録情報格納部81の収納容器登録情報にマスク搬送用として登録された収納容器100が使用される。
【0037】
ついで、マスク搬送システムによって収納容器100が露光エリア30のストッカ31からマスク検査エリア70のストッカ71へと自動搬送される(ステップS34)。上記したように、ストッカ31から収納容器識別情報が制御装置80へと送出されるので、行き先としては、マスク検査エリア70のストッカ71が指定される。
【0038】
その後、収納容器100がマスク検査エリア70に到着し、ストッカ71に載置されると、制御装置80の通知処理部83がフォトマスクを収納した収納容器100の到着を、たとえばマスク検査装置73の近傍に配置された作業端末76に通知し、作業端末76はその通知に基づいて表示手段にフォトマスクを収納した収納容器100の到着を出力する(ステップS35)。これによって、作業者は、検査を行うフォトマスクが到着したことを認識することができる。そして、作業者は、ストッカ71から収納容器100を搬出し(ステップS36)、収納容器100からマスク搬送用アダプタ120を取り出し(ステップS37)、フォトマスクをマスク検査装置73にセットして検査を実施し(ステップS38)、欠陥が検出されたかを判定する(ステップS39)。
【0039】
検査の結果、欠陥が検出された場合(ステップS39でYesの場合)には、検査したフォトマスクを洗浄する(ステップS40)。その後、またはステップS39で欠陥が検出されなかった場合(ステップS39でNoの場合)には、作業者によってフォトマスクを格納したマスク搬送用アダプタ120を収納容器100に格納し(ステップS41)、収納容器100がマスク検査装置73に最寄りのストッカ71に入庫される(ステップS42)。
【0040】
ついで、マスク搬送システムによって収納容器100がマスク検査エリア70のストッカ71から露光エリア30のストッカ31へと自動搬送される(ステップS43)。上記したように、ストッカ71から収納容器識別情報が制御装置80へと送出されるので、行き先としては、露光エリア30のストッカ31が指定される。
【0041】
その後、収納容器100が露光エリア30に到着し、ストッカ31に載置されると、制御装置80の通知処理部83がフォトマスクを収納した収納容器100の到着を、たとえば露光装置33の近傍に配置された作業端末36に通知し、作業端末36はその通知に基づいて表示手段にフォトマスクを収納した収納容器100の到着を出力する(ステップS44)。これによって、作業者は、検査済みのフォトマスクが到着したことを認識することができる。そして、作業者は、ストッカ31から収納容器を取り出し(ステップS45)、収納容器100からマスク搬送用アダプタ120を取り出し(ステップS46)、フォトマスクを元の露光装置33へと設置し(ステップS47)、フォトマスク検査手順が終了する。
【0042】
なお、上述した説明では、棟1A,1Bの天井部にレール3を設ける場合を示したが、これに限られる趣旨ではない。たとえば、レール3を棟の底部(床上)に設けるようにしてもよい。また、マスク検査エリア70にストッカ71を設ける場合を示したが、マスク検査エリア70に、設計の都合上レール3を敷設できない場合などには、マスク検査エリア70に近接する処理エリア、図1の場合には洗浄エリア60のストッカ61を、マスク検査エリアのストッカとして代用してもよい。露光エリア30でも同様にすることができる。
【0043】
本実施形態では、半導体装置の製造設備に設けられているウェハ搬送用のラインを用いて、露光装置33が設けられる露光エリア30と、マスク検査装置73が設けられるマスク検査エリア70との間でフォトマスクを搬送させるようにしたので、フォトマスクを搬送する専用ラインを新たに設けることなく、効率的にフォトマスクの検査を行うことができる。また、マスク搬送用アダプタ120にフォトマスクを設置することで、ウェハ搬送用の収納容器100に、フォトマスクを収納して搬送することができ、フォトマスク搬送用の収納容器を別途用意する必要がない。このように、新たにフォトマスク搬送用のラインを設けた場合に比して、マスク搬送システムの建設にかかる費用を大幅に削減することができる。そして、露光エリア30とマスク検査エリア70との間をすべて人手で運ぶ場合に比して、フォトマスクの検査時間を短縮することができるとともに、検査コストを低減し、結果として半導体装置を低コストで製造することができるという効果を有する。
【0044】
また、露光装置33、洗浄装置63、およびマスク検査装置73のロードポートをマスク自動搬送ライン用に改造しなくてよいので、低コスト化を図ることができる。特に、棟間搬送や大型のクリーンルームなどによる搬送の移動距離が長い場合に有効である。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0046】
1A,1B…棟、3…レール、5…通信回線、10…成膜エリア、11〜71…ストッカ、12〜72…収納容器識別情報読取部、13…成膜装置、14〜64…搬送装置、20…レジスト塗布エリア、23…レジスト塗布装置、30…露光エリア、31…ストッカ、33…露光装置、36,76…作業端末、40…現像エリア、43…現像装置、50…エッチングエリア、53…エッチング装置、60…洗浄エリア、63…洗浄装置、70…マスク検査エリア、73…マスク検査装置、80…制御装置、81…収納容器登録情報格納部、82…搬送装置制御部、83…通知処理部、100…収納容器、101…収納部材、102…蓋部材、103…開口、104…接続部、105…溝、106…収納容器識別情報記憶部、120…マスク搬送用アダプタ、121…ベース板、122…裏面補強板、123…ガイドピン、124…ガイドバー、130…フォトマスク収納ケース、140…ウェハ、200…搬送装置、201…収納容器保持部、202…移動機構部、203…ロッド、204…駆動機構部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置の各製造工程で使用される装置が配置される処理エリアに設けられるストッカと、
前記各処理エリアの前記ストッカ間を結ぶ搬送路と、
前記各処理エリアで処理される所定の数のウェハを収納可能な収納容器と、
前記搬送路に沿って移動し、前記収納容器を搬送可能な搬送装置と、
前記搬送装置の前記搬送路上での運行を制御する制御装置と、
を備え、前記搬送装置を用いて前記各処理エリアの前記ストッカに順番に前記収納容器を搬送する製造システムで、前記製造工程の一工程で使用される露光装置と、前記露光装置で使用されるフォトマスクを検査するマスク検査装置と、の間で前記フォトマスクの搬送を行うマスク搬送システムであって、
ウェハ搬送用の前記収納容器とマスク搬送用の前記収納容器とは、同一の構造を有し、
前記制御装置は、前記露光装置が配置される露光エリアの第1のストッカ、または前記マスク検査装置が配置されるマスク検査エリアの第2のストッカに収納容器が入庫されると、前記収納容器がマスク搬送用の収納容器であるかを判別し、マスク搬送用の収納容器である場合には前記入庫されたストッカではない前記第2または前記第1のストッカに前記収納容器が搬送されるように前記搬送装置を制御する搬送装置制御手段を備えることを特徴とするマスク搬送システム。
【請求項2】
前記収納容器は、自容器を識別する収納容器識別情報を記憶する収納容器識別情報記憶手段を有し、
前記ストッカは、前記ストッカに入庫された前記収納容器の前記収納容器識別情報を読み取り、自ストッカに付されたストッカ識別情報とともに前記収納容器識別情報を前記制御装置へと送信する収納容器識別情報読取手段を有し、
前記制御装置は、使用される前記収納容器について、前記収納容器識別情報と、前記収納容器がウェハ搬送用かマスク搬送用かを規定する用途と、前記収納容器の前記用途に応じた行き先と、を含む収納容器登録情報を保持し、
前記制御装置の前記搬送装置制御手段は、前記ストッカの前記収納容器識別情報読取手段から受け取った前記収納容器識別情報を前記収納容器登録情報と比較して、前記ストッカに載置された収納容器は前記フォトマスク搬送用であるかを判定し、前記フォトマスク搬送用である場合には、前記ストッカ識別情報と前記収納容器登録情報とを用いて前記収納容器の行き先を決定し、入庫された前記収納容器を搬送する前記搬送装置の行き先を制御することを特徴とする請求項1に記載のマスク搬送システム。
【請求項3】
前記露光エリアと前記マスク検査エリアには、前記マスク搬送用の収納容器が前記第1または前記第2のストッカに到着すると、前記収納容器の到着を前記露光装置または前記マスク検査装置の作業者に対して通知する通知手段が設けられることを特徴とする請求項1または2に記載のマスク搬送システム。
【請求項4】
前記収納容器は、所定の数のウェハを格納可能な空間を有し、前記ウェハを出し入れ可能な開口を有する容器状の収納部材と、前記収納部材の前記開口を覆うように着脱可能な蓋部材と、を有し、前記収納部材の内壁には前記ウェハの周縁部を保持する前記所定の数の溝が設けられ、
前記フォトマスクは、マスク搬送用アダプタに載置された状態で、前記収納容器に収納され、
前記マスク搬送用アダプタは、前記ウェハと同じサイズの底板と、前記底板の前記フォトマスク載置面側に設けられ、前記フォトマスクの前記載置面上での移動を防止する支持部材と、を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のマスク搬送システム。
【請求項5】
所定の数のウェハを格納可能な空間を有し、前記ウェハを出し入れ可能な開口を有する容器状の収納部材と、前記収納部材の前記開口を覆うように着脱可能な蓋部材と、を有し、前記収納部材の内壁には前記ウェハの周縁部を保持する前記所定の数の溝が設けられた収納容器に格納可能なマスク搬送用アダプタであって、
前記ウェハと同じサイズの底板と、
前記底板の前記フォトマスクが載置される側である載置面上での前記フォトマスクの移動を防止する支持部材と、
を備えることを特徴とするマスク搬送用アダプタ。
【請求項6】
前記支持部材は、前記底板を前記収納部材の前記溝に保持させたときに、前記収納部材の奥行き方向の前記底板上に一対と、前記収納部材の前記溝の近傍の前記底板上にもう一対設けられ、
前記収納部材の前記溝の近傍に設けられる前記支持部材は、前記収納部材の奥行き方向に延在した形状を有し、着脱可能であることを特徴とする請求項5に記載のマスク搬送用アダプタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−99663(P2012−99663A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246585(P2010−246585)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】