説明

メディア再生装置

【課題】 バッファ容量を大規模にすることなく、メディアを所定の再生時刻に出力することが可能なメディア再生装置を提供する。
【解決手段】 所定の再生時刻にメディアを再生するための符号化されたメディアデータを蓄積する入力バッファ101と、この入力バッファ101から出力されるデータを再生する再生手段102とを有し、前記データに基づいてメディアを再生するメディア再生装置100であって、再生手段102で前記データの再生に要する時間を示す処理遅延時間を算出する処理遅延算出手段103と、この処理遅延算出手段103で算出された処理遅延時間に基づいて、メディアを再生するための処理を開始する時刻を指定する制御手段104とを備え、再生手段102は、制御手段104により指定された時刻に、メディアを再生するための処理を開始する開始時刻制御部112を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像や音声などのメディアを再生するメディア再生装置に関し、特に、受信したメディアを提示されるべき時刻に再生するメディア再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネット(ネットワーク)上で、映像(動画像、静止画像、CG画像および文字を含む)や音声(合成音声を含む)などのマルチメディア(以下、メディアと称す)が流通するようになってきた。このようなメディアのうち、動画像や音声などは時間軸を持つ情報要素から構成されているので、出力する際にはそれぞれの要素を同期させて再生する必要がある。そこで、動画像や音声などのメディアが複数種類ある場合に、メディア間で同期をとりながら、それらが提示されるべき時刻に再生するマルチメディア再生装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に開示されたマルチメディア再生装置は、各メディアを受信する前に、予め再生する各メディアの情報量と、この再生装置の負荷状態の情報とをネットワークを介して送信側に伝達し、送信側は、これらの情報に基づいて、各メディアの再生時刻を決定して、このマルチメディア再生装置に伝達するものである。
【0004】
なお、メディアの再生するべき時刻を、メディアに関連付ける規格が知られており、各メディアには、それらを再生するためのタイムスタンプが付加される(非特許文献1)。このタイムスタンプにより、データを送信する際に、送信速度や到着間隔がばらつく、いわゆる揺らぎが発生しても、例えば音声が途切れるなどの品質不良を軽減して音声を再生することができる。
【0005】
従来、このようなマルチメディア再生装置は、図10に示すように、受信した複数のメディアを分離する多重分離部1010と、分離された各メディアを再生する複数(図では2つ)のメディア再生装置1030とを備えている。図10に示したメディア再生装置1030は、メディアの再生するベき時刻情報と、圧縮されたストリームなどのデータを入力し、それらを復号あるいは合成して映像や音声として再生するものである。このメディア再生装置1030は、例えば、図10に示すように、受信したデータ(圧縮ストリーム)を蓄積することにより、伝送路上で発生するデータの到着間隔の揺らぎを吸収する入力バッファ1031と、この入力バッファ1031から出力される圧縮ストリームの再生(復号または合成)を行う再生手段1032とを備えている。
【0006】
あるいは、図11に示すように、前記した入力バッファ1031と再生手段1032に加えて、再生手段1032で再生された映像や音声を出力するべき時刻まで蓄積する出力バッファ1133を備えたメディア再生装置1130を有するマルチメディア再生装置1100も知られている。
【0007】
図10および図11に示した再生手段1032は、メディアの指定された再生時刻(出力時刻)に映像や音声が出力されるようにするために、再生時刻よりも、再生に要する時間(処理遅延時間)だけ早く再生処理を開始する。すなわち、この再生手段1032は、図12の(a)に示した時間軸(t)の上方に示すように、処理遅延時間を固定値(想定遅延時間t1)として、所定の再生時刻TSより想定遅延時間t1だけ以前の開始時刻TPに再生処理を開始する。
【0008】
また、図11に示した出力バッファ1133は、蓄積された映像や音声を瞬時に再生可能な状態で所定時間(再生余裕時間:最大値t3)待機することができる。そのため、図11に示した再生手段1032は、図12の(b)に示すように、所定の再生時刻TSよりも、想定遅延時間t1と再生余裕時間t3との和の時間だけ以前の開始時刻TP′に再生処理を開始する。
【特許文献1】特許第3179922号公報(段落0014〜0062、図1)
【非特許文献1】H. Schulzrinne、外3名、「RTP: A Transport Protocol for Real-Time Applications」、RFC3550(Network Working Group Request for Comments:3550)、2003年7月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、リアルタイム処理系を除く汎用のOS上では、一般に、再生処理に要する最大の時間(処理遅延時間)は保証されていない。そのため、図10に示した再生手段1032が、図12の(a)に示した時間軸の下方に示すように、再生処理に想定遅延時間t1よりも長い実処理遅延時間t2だけ要した場合、映像や音声の出力は、所定の再生時刻TSよりも遅れた出力時刻TDに開始されてしまうことがある。
【0010】
これに対して、図11に示した出力バッファ1133を有するマルチメディア再生装置1100は、図12の(b)に示すように、再生余裕時間t3を設けることで、実処理遅延時間t2が想定遅延時間t1と異なっても、所定の再生時刻TS(出力時刻TS)に映像や音声を再生することができるが、出力バッファ1133は、非圧縮の映像や音声を蓄積できるような大容量を有する記憶装置としなければならない。
【0011】
また、特許文献1に開示されたマルチメディア再生装置は、予めメディアの情報量を算出しメディア送信側に送信しなければならないという問題がある。
【0012】
また、汎用OS上で実行する限り、圧縮ストリームの復号や、スクリプトの解釈や合成に要する時間(処理遅延時間)は変化するため、非特許文献1に基づき、複数のメディアにそれらを再生するためのタイムスタンプを付加した場合でも、付加されたタイムスタンプの時刻にそのメディアを再生できないという問題がある。
【0013】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、バッファ容量を大規模にすることなく、マルチメディアを所定の再生時刻に出力することが可能なマルチメディア再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、前記目的を達成するために創案されたものであり、まず、請求項1に記載のメディア再生装置は、所定の再生時刻にメディアを再生するための符号化されたメディアデータを蓄積する入力バッファと、この入力バッファから出力されるデータを再生する再生手段とを有し、前記データに基づいてメディアを再生するメディア再生装置であって、処理遅延算出手段と、制御手段と、開始時刻制御手段とを備える構成とした。
【0015】
かかる構成によれば、メディア再生装置は、メディアデータとして、例えばネットワークを介して伝送されるストリームまたはスクリプトを入力バッファに蓄積し、再生手段によって、この入力バッファから出力されるデータの再生処理(復号処理または合成処理)を行う。この再生手段は、例えば、MPEG−2のストリームを復号して映像を再生したり、MPEG−1 Audio Layerのストリームを復号して音声を再生したりする。また、TVML(TV program Making language)スクリプトを解釈し、映像や音声を合成したり、テキストスクリプトを解釈し、映像や音声を合成したりする。
【0016】
そして、メディア再生装置は、処理遅延算出手段によって、再生手段でデータの再生に要する時間を示す処理遅延時間を算出する。ここで、処理遅延時間の算出は、例えば、再生手段への入力を検知したときに、クロックのカウントを開始し、再生手段からの出力を検知したときのカウント値により求めることができる。そして、メディア再生装置は、制御手段によって、処理遅延算出手段で算出された処理遅延時間に基づいて、メディアを再生するための処理を開始する時刻を指定する。これによって、再生手段は、開始時刻制御手段によって、制御手段により指定された時刻に、メディアを再生するための処理を開始する。
【0017】
また、請求項2に記載のメディア再生装置は、請求項1に記載のメディア再生装置において、入力バッファに容量制御手段を有することを特徴とする。
【0018】
かかる構成によれば、メディア再生装置は、制御手段によって、処理遅延算出手段で算出された処理遅延時間に基づいて、入力バッファに蓄積されるデータの容量を指定する。そして、メディア再生装置は、入力バッファの容量制御手段によって、蓄積されるデータの容量を、制御手段により指定された容量に制御する。
【0019】
また、請求項3に記載のメディア再生装置は、請求項1または請求項2に記載のメディア再生装置において、再生手段から出力されるデータを蓄積し、蓄積されたデータを所定時間保持する出力バッファをさらに備え、この出力バッファに容量制御手段を有することを特徴とする。
【0020】
かかる構成によれば、メディア再生装置は、制御手段によって、処理遅延算出手段で算出された処理遅延時間に基づいて、出力バッファに蓄積されるデータの容量を指定する。そして、メディア再生装置は、出力バッファの容量制御手段によって、蓄積されるデータの容量を、制御手段により指定された容量に制御する。
【0021】
また、請求項4に記載のメディア再生装置は、請求項1または請求項2に記載のメディア再生装置において、制御手段が、メディアを再生するための処理を開始する時刻を、所定の再生時刻よりも、処理遅延算出手段で算出された処理遅延時間だけ早めた時刻として指定することを特徴とする。
【0022】
かかる構成によれば、メディア再生装置は、再生手段の開始時刻制御手段によって、制御手段で指定された時刻にメディアを再生するための処理を開始し、処理遅延時間経過後にメディアを再生するので、所定の再生時刻にメディアを再生出力することができる。
【0023】
また、請求項5に記載のメディア再生装置は、請求項3に記載のメディア再生装置において、制御手段は、メディアを再生するための処理を開始する時刻を、所定の再生時刻よりも、処理遅延算出手段で算出された処理遅延時間と出力バッファでデータが保持される所定時間との和だけ早めた時刻として指定することを特徴とする。
【0024】
かかる構成によれば、メディア再生装置は、再生手段の開始時刻制御手段によって、制御手段で指定された時刻にメディアを再生するための処理を開始し、処理遅延時間の経過後、出力バッファにて、所定時間保持されるので、所定の再生時刻にメディアを再生出力することができる。この所定時間は、出力バッファに蓄積されたデータを瞬時に再生可能な状態で保持することのできる時間である。
【0025】
また、請求項6に記載のメディア再生装置は、請求項2乃至請求項5のいずれか一項に記載のメディア再生装置において、制御手段は、入力バッファに蓄積されるデータの容量を、処理遅延算出手段で算出された処理遅延時間が所定値よりも大きい場合に減少させるように指定し、かつ、処理遅延算出手段で算出された処理遅延時間が所定値よりも小さい場合に増加させるように指定することを特徴とする。
【0026】
かかる構成によれば、メディア再生装置は、処理遅延時間が所定値よりも大きくなった場合に、再生処理を早めに開始する。つまり、入力バッファに蓄積されたデータは早めに出力してしまう。その結果、入力バッファに蓄積されるデータの容量は少なくて済む。したがって、メディア再生装置は、入力バッファに蓄積されるデータの容量を減少させる制御を行う。一方、メディア再生装置は、処理遅延時間が所定値よりも小さくなった場合に、再生処理を遅めに開始する。つまり、入力バッファに蓄積されたデータは遅めに出力してしまう。その結果、入力バッファに蓄積されるデータの容量は多くなければならない。したがって、メディア再生装置は、入力バッファに蓄積されるデータの容量を増加させる制御を行う。その結果、入力バッファの容量を大規模にすることなく、所定の再生時刻にメディアを再生することができる。
【0027】
また、請求項7に記載のメディア再生装置は、請求項3または請求項5に記載のメディア再生装置において、制御手段は、出力バッファに蓄積されるデータの容量を、処理遅延算出手段で算出された処理遅延時間が所定値よりも大きい場合に増加させるように指定し、かつ、処理遅延算出手段で算出された処理遅延時間が所定値よりも小さい場合に減少させるように指定することを特徴とする。
【0028】
かかる構成によれば、メディア再生装置は、処理遅延時間が所定値よりも大きくなった場合に、再生処理を早めに開始する。つまり、入力バッファに蓄積されたデータは早めに出力してしまうので、入力バッファに蓄積されるデータの容量を減少させる。この場合、再生処理の時間にそれほど要しないと、所定の再生時刻まで待機しなければならなくなる。そこで、出力バッファに蓄積されるデータの容量を増加させる制御を行う。一方、メディア再生装置は、処理遅延時間が所定値よりも小さくなった場合に、再生処理を遅めに開始する。つまり、入力バッファに蓄積されたデータは遅めに出力してしまうので、入力バッファに蓄積されるデータの容量を増加させる。この場合、再生処理が早く終わっても、再生処理を開始する時刻が遅いために所定の再生時刻までの時間は減少している。そこで、出力バッファに蓄積されるデータの容量を減少させる制御を行う。その結果、出力バッファの容量を大規模にすることなく、所定の再生時刻にメディアを再生することができる。
【0029】
また、請求項8に記載のメディア再生装置は、所定の再生時刻にメディアを再生するための符号化されたメディアデータを蓄積する入力バッファと、この入力バッファから出力される前記データを再生する再生手段とを有し、前記データに基づいてメディアを再生するメディア再生装置であって、負荷計測手段と、制御手段とを備える構成とした。
【0030】
かかる構成によれば、メディア再生装置は、負荷計測手段によって、メディアを再生するための処理の負荷である処理負荷を計測する。ここで、処理負荷は、例えば、このメディア再生装置のCPUにおいて、負荷が存在しないときに0.0、最大負荷時に1.0の実数値で示されるようなCPU負荷率である。そして、メディア再生装置は、制御手段によって、負荷計測手段で計測された処理負荷と、再生手段で前記データの再生に要する時間を示す処理遅延時間とに基づいて、メディアを再生するための処理を開始する時刻を指定する。これによって、再生手段は、開始時刻制御手段によって、制御手段により指定された時刻に、メディアを再生するための処理を開始する。
【0031】
また、請求項9に記載のメディア再生装置は、請求項8に記載のメディア再生装置において、入力バッファに容量制御手段を有することを特徴とする。
【0032】
かかる構成によれば、メディア再生装置は、制御手段によって、負荷計測手段で計測された処理負荷に基づいて、入力バッファに蓄積されるデータの容量を指定する。そして、メディア再生装置は、入力バッファの容量制御手段によって、蓄積されるデータの容量を、制御手段により指定された容量に制御する。
【0033】
また、請求項10に記載のメディア再生装置は、請求項8または請求項9に記載のメディア再生装置において、再生手段から出力されるデータを蓄積し、蓄積されたデータを瞬時に再生可能な状態で所定時間保持する出力バッファをさらに備え、この出力バッファに容量制御手段を有することを特徴とする。
【0034】
かかる構成によれば、メディア再生装置は、制御手段によって、負荷計測手段で計測された処理負荷に基づいて、出力バッファに蓄積されるデータの容量を指定する。そして、メディア再生装置は、出力バッファの容量制御手段によって、蓄積されるデータの容量を、制御手段により指定された容量に制御する。
【0035】
また、請求項11に記載のメディア再生装置は、請求項9または請求項10に記載のメディア再生装置において、制御手段は、入力バッファに蓄積されるデータの容量を、負荷計測手段で計測された処理負荷が所定値よりも大きい場合に減少させるように指定し、かつ、負荷計測手段で計測された処理負荷が所定値よりも小さい場合に増加させるように指定することを特徴とする。
【0036】
かかる構成によれば、メディア再生装置は、処理負荷が所定値よりも大きくなった場合に、再生処理を早めに開始する。つまり、入力バッファに蓄積されたデータは早めに出力してしまう。その結果、入力バッファに蓄積されるデータの容量は少なくて済む。したがって、メディア再生装置は、入力バッファに蓄積されるデータの容量を減少させる制御を行う。一方、メディア再生装置は、処理負荷が所定値よりも小さくなった場合に、再生処理を遅めに開始する。つまり、入力バッファに蓄積されたデータは遅めに出力してしまう。その結果、入力バッファに蓄積されるデータの容量は多くなければならない。したがって、メディア再生装置は、入力バッファに蓄積されるデータの容量を増加させる制御を行う。その結果、入力バッファの容量を大規模にすることなく、所定の再生時刻にメディアを再生することができる。
【0037】
また、請求項12に記載のメディア再生装置は、請求項10に記載のメディア再生装置において、制御手段は、出力バッファに蓄積されるデータの容量を、負荷計測手段で計測された処理負荷が所定値よりも大きい場合に増加させるように指定し、かつ、負荷計測手段で計測された処理負荷が所定値よりも小さい場合に減少させるように指定することを特徴とする。
【0038】
かかる構成によれば、メディア再生装置は、処理負荷が所定値よりも大きくなった場合に、再生処理を早めに開始する。つまり、入力バッファに蓄積されたデータは早めに出力してしまうので、入力バッファに蓄積されるデータの容量を減少させる。この場合、再生処理の時間にそれほど要しないと、所定の再生時刻まで待機しなければならなくなる。そこで、出力バッファに蓄積されるデータの容量を増加させる制御を行う。一方、メディア再生装置は、処理負荷が所定値よりも小さくなった場合に、再生処理を遅めに開始する。つまり、入力バッファに蓄積されたデータは遅めに出力してしまうので、入力バッファに蓄積されるデータの容量を増加させる。この場合、再生処理が早く終わっても、再生処理を開始する時刻が遅いために所定の再生時刻までの時間は減少している。そこで、出力バッファに蓄積されるデータの容量を減少させる制御を行う。その結果、出力バッファの容量を大規模にすることなく、所定の再生時刻にメディアを再生することができる。
【0039】
また、請求項13に記載のマルチメディア再生装置は、請求項1に記載のメディア再生装置を複数備えると共に、多重化されたメディアデータを分離して複数のメディア再生装置にそれぞれ出力する多重分離手段を備えることを特徴とする。
【0040】
かかる構成によれば、マルチメディア再生装置は、異なる符号化方式で符号化されて多重化されたマルチメディアデータが入力されたときに、多重分離手段によって、複数のメディアデータに分離し、各メディア再生装置によって、それぞれのメディアを再生出力することができる。また、このとき分離したクロック信号により、各メディアを同期させて出力することができる。
【発明の効果】
【0041】
請求項1又は請求項8に記載の発明によれば、メディア再生装置において、制御手段がメディアを再生するための処理を開始する時刻を柔軟に変動させるので、処理負荷が変動して再生するための処理に要する時間が変動しても、所定の再生時刻に映像や音声を再生出力することができる。また、制御手段に必要な処理遅延時間または処理負荷は、当該メディア再生装置の中で生成されるので、特許文献1のようにメディア送信側から予め情報を受信するような複雑な制御を必要としない。したがって、RFC3550で規定されるタイムスタンプを複数メディアに記載することで、バッファ容量を大規模にすることなく、それらのメディアを所定の時刻に同期を取りながら再生出力することが可能になる。
【0042】
請求項2又は請求項9に記載の発明によれば、メディア再生装置において、制御手段が入力バッファに蓄積されるデータの量を制御する場合、入力バッファの容量を大規模なものにする必要がない。その結果、製造コストを低減できる。
【0043】
請求項3又は請求項10に記載の発明によれば、メディア再生装置において、制御手段が出力バッファに蓄積されるデータの量を制御する場合、出力バッファの容量を大規模なものにする必要がない。その結果、製造コストを低減できる。
【0044】
請求項4又は請求項5に記載の発明によれば、メディア再生装置において、制御手段がメディアを再生するための処理を開始する時刻を早めることができるので、所定の再生時刻に映像や音声を再生出力することが可能になる。
【0045】
請求項6、請求項7、請求項11又は請求項12に記載の発明によれば、メディア再生装置において、入力バッファまたは出力バッファの容量を大規模なものにする必要がない。その結果、製造コストを低減できる。
【0046】
請求項13に記載の発明によれば、マルチメディア再生装置において、異なる符号化方式で符号化されて多重化されたマルチメディアを同期させて所定の再生時刻に再生出力することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
[マルチメディア再生装置の構成]
図1は、第1の実施形態のマルチメディア再生装置のブロック図である。
マルチメディア再生装置1は、IP(Internet Protocl)ネットワークなどの通信回線を介してストリーミング伝送される映像(動画像、静止画像、CG画像および文字を含む)や音声(合成音声を含む)などのマルチメディア(以下、メディアと称す)を、入力されたタイムスタンプに示される時刻に再生するものである。
【0048】
マルチメディア再生装置1は、図1に示すように、多重分離部50と、複数(図では2つ)のメディア再生装置100とを備えている。
多重分離部(多重分離手段)50は、メディアの再生するベき時刻情報と、映像や音声が圧縮されたストリームなどのマルチメディアデータ(以下、単にデータ)を分離するものである。これにより、複数のメディアおよびクロック信号ckが分離される。
メディア再生装置100は、クロック信号ckで同期をとりながら、多重分離部50で分離されたメディアを、それらが提示されるべき時刻に再生するものである。このメディア再生装置100は、入力バッファ101と、再生手段102と、処理遅延算出手段103と、制御手段104とを備えている。
【0049】
入力バッファ101は、圧縮ストリームなどのデータを蓄積し、再生手段102に出力するものである。この入力バッファ101が圧縮ストリームなどのデータを蓄積することにより、伝送路上で発生するデータの到着間隔の揺らぎを吸収することができる。この入力バッファ101は、圧縮ストリームを伝送してきたIPパケットの順序制御や誤り訂正をおこない、タイムスタンプを取り出し、ペイロード部を結合したストリーム(またはスクリプト)を出力する。また、入力バッファ101は、容量制御部111を備えている。この容量制御部(容量制御手段)111は、入力バッファ101に蓄積されるデータの容量を制御手段104により指定された容量に制御するものである。
【0050】
再生手段102は、入力バッファ101から出力される圧縮ストリームの復号処理、またはスクリプトの解釈、合成処理(以上、総称して再生処理)を行い、モニタやスピーカなどから構成されている出力装置150へ出力するものである。この再生手段102は、開始時刻制御部112を備えている。この開始時刻制御部112は、ある時刻に再生するべき映像または音声をその時刻より、制御手段104に指定された所定時間だけ以前の時刻(以下、復号開始時刻と呼ぶ)に再生処理を開始するように制御するものである。なお、出力装置150は、マルチメディア再生装置1と別体としたが、一体としてもよいことはもちろんである。
【0051】
処理遅延算出手段103は、再生手段102で再生処理に要する時間(以下、処理遅延時間と称す)を算出し、制御手段104に通知するものである。この処理遅延算出手段103は、再生手段102へのストリームの入力を検出すると、例えば、Windows(登録商標)API(Application Program Interface)であるQueryPerformanceCounter関数によりクロックをカウントし始め、映像や音声が出力されるまでの処理時間を測定し、測定結果を処理遅延時間とする。
制御手段104は、後記するように、処理遅延算出手段103から通知される処理遅延時間に基づいて、入力バッファ101に蓄積されるデータの容量と、再生手段102の復号開始時刻とを指定するものである。
【0052】
[マルチメディア再生装置の動作]
次に、図2を参照(適宜図1参照)して、第1の実施形態に係るマルチメディア再生装置の動作について説明する。図2は、本発明の第1の実施形態に係るマルチメディア再生装置の制御手段のフローチャートである。
【0053】
まず、制御手段104は、処理遅延時間の初期値をDに設定し、この値を保持する(ステップS1)。例えば、MPEG−2の1GOP(Group of Picture)の処理遅延時間が平均的に10msであったとすると、この値(10ms)をDとして保持する。そして、制御手段104は、処理遅延算出手段103から処理遅延時間の入力(D_IN)があったかどうかを判別する(ステップS2)。通常、この処理遅延時間D_INは、マルチメディア再生装置1の処理負荷の変動に応じて変化し、例えば、10msの前後の値となる。続いて、制御手段104は、入力した処理遅延時間D_INと、保持している処理遅延時間Dとを比較して大小を判定する(ステップS3)。
【0054】
入力した処理遅延時間D_INが保持している処理遅延時間Dよりも大きい場合(D_IN>D)、すなわちメディアを再生するための処理の負荷である処理負荷が前回(初回は初期値)よりも大きくなった場合、制御手段104は、復号開始時刻TQを再生時刻TSよりも(D_IN)だけ早めた時刻を指定する(ステップS4)と共に、入力バッファ101に蓄積されるデータの容量を(D_IN−D)×Rateだけ減少させた容量を指定する(ステップS5)。ここでRateは受信しているストリームの符号化レートである。これにより、再生手段102の開始時刻制御部112は、復号開始時刻TQを早め、また、入力バッファ101の容量制御部111は、入力バッファ101に蓄積されるデータの容量を減少させる。
ステップS5に続いて、制御手段104は、入力した処理遅延時間(D_IN)の値を、改めてDに設定して保持し(ステップS6)、ステップS2に戻る。なお、ステップS4およびステップS5は、逆の順序で処理してもよいし、並行に処理してもよい。
【0055】
また、ステップS3において、入力した処理遅延時間(D_IN)が保持している処理遅延時間Dよりも小さい場合(D_IN<D)、すなわち処理負荷が前回(初回は初期値)よりも小さくなった場合、制御手段104は、ステップS4と同様に、復号開始時刻TQを再生時刻TSよりも(D_IN)だけ早めた時刻を指定する(ステップS7)と共に、入力バッファ101に蓄積されるデータの容量を(D−D_IN)×Rateだけ増加させた容量を指定し(ステップS8)、ステップS6に進む。これにより、再生手段102の開始時刻制御部112は、復号開始時刻TQを早め、また、入力バッファ101の容量制御部111は、入力バッファ101に蓄積されるデータの容量を増加させる。なお、ステップS7およびステップS8は、逆の順序で処理してもよいし、並行に処理してもよい。
【0056】
また、ステップS3において、入力した処理遅延時間(D_IN)が保持している処理遅延時間Dと等しい場合(D_IN=D)、すなわち、処理負荷が前回(初回は初期値)と同じ場合、制御手段104は、ステップS2に戻り、次の入力(D_IN)まで待機する。
【0057】
第1の実施形態のマルチメディア再生装置によれば、再生手段102による処理遅延時間を常に監視し、この処理遅延時間の分だけ復号開始時刻を早めることができる。また、処理負荷を反映している処理遅延時間に基づいて、入力バッファ101に蓄積される容量を制御することができる。これにより、処理負荷が変動しても、入力バッファ101に必要十分な容量を保ちながら、所定の再生時刻に復号または合成した映像や音声を再生出力することが可能になる。
【0058】
(第2の実施形態)
[マルチメディア再生装置の構成]
図3は、第2の実施形態のマルチメディア再生装置のブロック図である。
このマルチメディア再生装置2は、図3に示すように、多重分離部50と、複数(図では2つ)のメディア再生装置200と、負荷計測手段210とを備えている。なお、図1と同じ構成には同じ符号を付して説明を省略する。
【0059】
負荷計測手段210は、処理負荷(負荷情報)を計測し、所定のタイミングでメディア再生装置200に出力するものである。ここで負荷情報とはCPU負荷率であり、例えばCPUの負荷が存在しないときに0.0、CPUの最大負荷時に1.0の実数値で示される。また、負荷計測手段210は、負荷情報を例えば20ms毎にメディア再生装置200に出力する。
【0060】
メディア再生装置200は、入力バッファ101と、再生手段102と、制御手段204とを備えている。制御手段204は、後記するように、負荷計測手段210から出力される負荷情報と、再生手段102で再生処理に要する時間である処理遅延時間とに基づいて、入力バッファ101に蓄積されるデータの容量と、再生手段102による復号開始時刻とを指定するものである。
【0061】
[マルチメディア再生装置の動作]
次に、図4を参照(適宜図3参照)して、第2の実施形態に係るマルチメディア再生装置の動作について説明する。図4は、本発明の第2の実施形態に係るマルチメディア再生装置の制御手段のフローチャートである。
【0062】
まず、制御手段204は、処理遅延時間の初期値をDに設定し、この値を保持すると共に、負荷情報の初期値をLに設定し、保持する(ステップS11)。ここで、例えば、負荷情報の初期値を0.0としてLに設定し、保持する。そして、制御手段204は、負荷計測手段210から現在の負荷情報の入力(L_IN)があったかどうかを判別する(ステップS12)。続いて、制御手段204は、入力した負荷情報L_INと、保持している負荷情報Lとを比較して大小を判定する(ステップS13)。
【0063】
入力した負荷情報L_INが保持している負荷情報Lよりも大きい場合(L_IN>L)、すなわち処理負荷が前回(初回は初期値)よりも大きくなった場合、制御手段204は、保持している処理遅延時間Dと負荷情報L_IN,Lとに基づいて、調整時間D′を次式(1)により算出する(ステップS14)。ここで、αはCPUの処理能力やストリームの符号化レートに応じて異なり、予めシミュレーション等により決定された定数である。
【0064】
D′=D+α×(L_IN−L)…(1)
【0065】
そして、制御手段204は、復号開始時刻TQを再生時刻TSよりも、式(1)で示される調整時間D′だけ早めた時刻を指定する(ステップS15)と共に、入力バッファ101に蓄積されるデータの容量をβ×(L_IN−L)だけ減少させた容量を指定する(ステップS16)。ここでβはCPUの処理能力やストリームの符号化レートに応じて異なり、予めシミュレーション等により決定された定数である。これにより、再生手段102の開始時刻制御部112は、復号開始時刻TQを早め、また、入力バッファ101の容量制御部111は、入力バッファ101に蓄積されるデータの容量を減少させる。
【0066】
ステップS16に続いて、制御手段204は、入力した負荷情報(L_IN)の値を、改めてLに設定して保持すると共に、調整時間D′の値を改めてDに設定して保持し(ステップS17)、ステップS12に戻る。なお、ステップS15およびステップS16は、逆の順序で処理してもよいし、並行に処理してもよい。
【0067】
また、ステップS13において、入力した負荷情報(L_IN)が保持している負荷情報Lよりも小さい場合(L_IN<L)、すなわち処理負荷が前回(初回は初期値)よりも小さくなった場合、制御手段204は、保持している処理遅延時間Dと負荷情報L_IN,Lとに基づいて、調整時間D′を次式(2)により算出する(ステップS18)。ここで、αは前記した式(1)のものと同一である。
【0068】
D′=D−α×(L−L_IN)…(2)
【0069】
そして、制御手段204は、復号開始時刻TQを再生時刻TSよりも、式(2)で示される調整時間D′だけ早めた時刻を指定する(ステップS19)と共に、入力バッファ101に蓄積されるデータの容量をβ×(L−L_IN)だけ増加させた容量を指定し(ステップS20)、ステップS17に進む。これにより、再生手段102の開始時刻制御部112は、復号開始時刻TQを早め、また、入力バッファ101の容量制御部111は、入力バッファ101に蓄積されるデータの容量を増加させる。なお、ステップS19およびステップS20は、逆の順序で処理してもよいし、並行に処理してもよい。
【0070】
また、ステップS13において、入力した負荷情報(L_IN)が保持している負荷情報Lと等しい場合(L_IN=L)、すなわち、マルチメディア再生装置1の処理負荷が前回(初回は初期値)と同じ場合、制御手段204は、ステップS17に進む。
【0071】
第2の実施形態のマルチメディア再生装置によれば、処理負荷の変動に基づいた調整時間D′の分だけ復号開始時刻を早めることができる。また、処理負荷の変動に基づいて、入力バッファ101に蓄積される容量を制御することができる。これにより、処理負荷が変動しても、入力バッファ101に必要十分な容量を保ちながら、所定の再生時刻に復号または合成した映像や音声を再生出力することが可能になる。
【0072】
(第3の実施形態)
[マルチメディア再生装置の構成]
図5は、第3の実施形態のマルチメディア再生装置のブロック図である。
このマルチメディア再生装置3は、図5に示すように、多重分離部50と、複数(図では2つ)のメディア再生装置300とを備えている。なお、図1と同じ構成には同じ符号を付して説明を省略する。
メディア再生装置300は、出力バッファ310を備えている点と、制御手段304の機能が異なる点とを除いて、図1に示した第1の実施形態のメディア再生装置100と同一の構成である。
【0073】
出力バッファ310は、再生手段102で再生処理された映像や音声を再生するべき時刻まで蓄積するものである。この出力バッファ310は、蓄積された映像や音声を瞬時に再生可能な状態で所定時間(再生余裕時間)待機する。そして、出力バッファ310に蓄積された映像や音声は、タイムスタンプで示された再生時刻に直ちに出力される。また、出力バッファ310は、容量制御部311を備えている。この容量制御部(容量制御手段)311は、出力バッファ310に蓄積されるデータの容量を制御手段304により指定された容量に制御するものである。
制御手段304は、後記するように、処理遅延算出手段103から通知される処理遅延時間に基づいて、入力バッファ101に蓄積されるデータの容量と、出力バッファ310に蓄積されるデータの容量と、再生手段102による復号開始時刻とを指定するものである。
【0074】
[マルチメディア再生装置の動作]
次に、図6を参照(適宜図5参照)して、第3の実施形態に係るマルチメディア再生装置の動作について説明する。図6は、本発明の第3の実施形態に係るマルチメディア再生装置の制御手段のフローチャートである。
【0075】
まず、制御手段304は、処理遅延時間の初期値をDに設定し、この値を保持する(ステップS21)。また、制御手段304は、変数Sの初期値に、出力バッファ310の再生余裕時間を設定して、保持する。そして、制御手段304は、処理遅延算出手段103から処理遅延時間の入力(D_IN)があったかどうかを判別する(ステップS22)。続いて、制御手段304は、入力した処理遅延時間D_INと、保持している処理遅延時間Dとを比較して大小を判定する(ステップS23)。
【0076】
入力した処理遅延時間D_INが保持している処理遅延時間Dよりも大きい場合(D_IN>D)、すなわち処理負荷が前回(初回は初期値)よりも大きくなった場合、制御手段304は、復号開始時刻TQを再生時刻TSよりも(S+D_IN)だけ早めた時刻を指定する(ステップS24)。また、この場合、入力バッファ101に蓄積されるデータの容量を(D_IN−D)×Rateだけ減少させた容量を指定する(ステップS25)。また、この場合、出力バッファ310に蓄積されるデータの容量を(D_IN−D)×Orgだけ増加させた容量を指定する(ステップS26)。ここで、Rateは受信しているストリームの符号化レートであり、Orgは非圧縮の映像や音声の単位時間あたりの情報量である。これにより、再生手段102の開始時刻制御部112は、復号開始時刻TQを早め、また、入力バッファ101の容量制御部111は、入力バッファ101に蓄積されるデータの容量を減少させ、出力バッファ310の容量制御部311は、出力バッファ310に蓄積されるデータの容量を増加させる。なお、ステップS24乃至ステップS26は、任意の順序で処理してもよいし、並行に処理してもよい。
ステップS26に続いて、制御手段304は、入力した処理遅延時間(D_IN)の値を、改めてDに設定して保持すると共に、S+(D_IN−D)の値を改めてSに設定して保持し(ステップS27)、ステップS22に戻る。
【0077】
また、ステップS23において、入力した処理遅延時間(D_IN)が保持している処理遅延時間Dよりも小さい場合(D_IN<D)、すなわち処理負荷が前回(初回は初期値)よりも小さくなった場合、制御手段304は、ステップS24と同様に、復号開始時刻TQを再生時刻TSよりも(D_IN)だけ早めた時刻を指定する(ステップS28)。また、この場合、入力バッファ101に蓄積されるデータの容量を(D−D_IN)×Rateだけ増加させた容量を指定する(ステップS29)。また、この場合、出力バッファ310に蓄積されるデータの容量を(D−D_IN)×Orgだけ減少させた容量を指定する(ステップS30)。これにより、再生手段102の開始時刻制御部112は、復号開始時刻TQを早め、また、入力バッファ101の容量制御部111は、入力バッファ101に蓄積されるデータの容量を増加させ、出力バッファ310の容量制御部311は、出力バッファ310に蓄積されるデータの容量を減少させる。なお、ステップS28乃至ステップS30は、任意の順序で処理してもよいし、並行に処理してもよい。
【0078】
さらに、ステップS30に続いて、制御手段304は、ステップS27に進む。
また、ステップS23において、入力した処理遅延時間(D_IN)が保持している処理遅延時間Dと等しい場合(D_IN=D)、すなわち、マルチメディア再生装置1の処理負荷が前回(初回は初期値)と同じ場合、制御手段304は、ステップS27に進む。
【0079】
第3の実施形態のマルチメディア再生装置によれば、再生手段102による処理遅延時間を常に監視し、この処理遅延時間と再生余裕時間の分だけ復号開始時刻を早めることができる。また、処理負荷を反映している処理遅延時間に基づいて、入力バッファ101および出力バッファ310に蓄積される容量を制御することができる。これにより、処理負荷が変動しても、入力バッファ101および出力バッファ310に必要十分な容量を保ちながら、所定の再生時刻に復号または合成した映像や音声を再生出力することが可能になる。
【0080】
(第4の実施形態)
[マルチメディア再生装置の構成]
図7は、第4の実施形態のマルチメディア再生装置のブロック図である。
このマルチメディア再生装置4は、図7に示すように、多重分離部50と、複数(図では2つ)のメディア再生装置400と、負荷計測手段210とを備えている。なお、図3と同じ構成には同じ符号を付して説明を省略する。
【0081】
メディア再生装置400は、出力バッファ310を備えている点と、制御手段404の機能が異なる点とを除いて、図3に示した第2の実施形態のメディア再生装置200と同一の構成である。
制御手段404は、後記するように、負荷計測手段210から出力される処理負荷と、再生手段102で再生に要する時間を示す処理遅延時間とに基づいて、入力バッファ101に蓄積されるデータの容量と、出力バッファ310に蓄積されるデータの容量と、再生手段102による復号開始時刻とを指定するものである。
【0082】
[マルチメディア再生装置の動作]
次に、図8を参照(適宜図7参照)して、第4の実施形態に係るマルチメディア再生装置の動作について説明する。図4は、本発明の第4の実施形態に係るマルチメディア再生装置の制御手段のフローチャートである。
【0083】
まず、制御手段404は、処理遅延時間の初期値をDに設定し、この値を保持すると共に、負荷情報の初期値をLに設定し、保持する(ステップS31)。また、制御手段404は、変数Sの初期値に、出力バッファ310の再生余裕時間を設定して、保持する。そして、制御手段404は、負荷計測手段210から現在の負荷情報の入力(L_IN)があったかどうかを判別する(ステップS32)。続いて、制御手段404は、入力した負荷情報L_INと、保持している負荷情報Lとを比較して大小を判定する(ステップS33)。
【0084】
入力した負荷情報L_INが保持している負荷情報Lよりも大きい場合(L_IN>L)、すなわち処理負荷が前回(初回は初期値)よりも大きくなった場合、制御手段404は、保持している処理遅延時間Dと負荷情報L_IN,Lとに基づいて、調整時間D′を次式(3)により算出する(ステップS34)。ここで、α′はCPUの処理能力やストリームの符号化レートに応じて異なり、予めシミュレーション等により決定された定数である。
【0085】
D′=D+α′×(L_IN−L)…(3)
【0086】
そして、制御手段404は、復号開始時刻TQを再生時刻TSよりも(S+D′)だけ早めた時刻を指定する(ステップS35)。また、この場合、入力バッファ101に蓄積されるデータの容量をβ′×(L_IN−L)だけ減少させた容量を指定する(ステップS36)。また、この場合、出力バッファ310に蓄積されるデータの容量をγ′×(L_IN−L)だけ増加させた容量を指定する(ステップS37)。ここでβ′、γ′はCPUの処理能力やストリームの符号化レートに応じて異なり、予めシミュレーション等により決定された定数である。これにより、再生手段102の開始時刻制御部112は、復号開始時刻TQを早め、また、入力バッファ101の容量制御部111は、入力バッファ101に蓄積されるデータの容量を減少させ、出力バッファ310の容量制御部311は、出力バッファ310に蓄積されるデータの容量を増加させる。なお、ステップS35乃至ステップS37は、任意の順序で処理してもよいし、並行に処理してもよい。
【0087】
ステップS37に続いて、制御手段404は、入力した負荷情報(L_IN)の値を改めてLに設定して保持し、また、調整時間D′の値を改めてDに設定して保持し、さらに、{S+γ′×(L_IN−L)/Org}の値を求めてこれを改めて変数Sに設定して保持し(ステップS38)、ステップS32に戻る。なお、Orgは非圧縮の映像や音声の単位時間あたりの情報量である。
【0088】
また、ステップS33において、入力した負荷情報(L_IN)が保持している負荷情報Lよりも小さい場合(L_IN<L)、すなわち処理負荷が前回(初回は初期値)よりも小さくなった場合、制御手段404は、保持している処理遅延時間Dと負荷情報L_IN,Lとに基づいて、調整時間D′を次式(4)により算出する(ステップS39)。ここで、α′は前記した式(3)のものと同一である。
【0089】
D′=D−α′×(L−L_IN)…(4)
【0090】
そして、制御手段404は、ステップS35と同様に、復号開始時刻TQを再生時刻TSよりも(S+D′)だけ早めた時刻を指定する(ステップS40)。また、この場合、入力バッファ101に蓄積されるデータの容量をβ′×(L−L_IN)だけ増加させた容量を指定する(ステップS41)。また、この場合、出力バッファ310に蓄積されるデータの容量をγ′×(L−L_IN)だけ減少させた容量を指定する(ステップS42)。ここでβ′、γ′はCPUの処理能力やストリームの符号化レートに応じて異なり、予めシミュレーション等により決定された定数である。これにより、再生手段102の開始時刻制御部112は、復号開始時刻TQを早め、また、入力バッファ101の容量制御部111は、入力バッファ101に蓄積されるデータの容量を増加させ、出力バッファ310の容量制御部311は、出力バッファ310に蓄積されるデータの容量を減少させる。なお、ステップS40乃至ステップS42は、任意の順序で処理してもよいし、並行に処理してもよい。ステップS42に続いて、制御手段404は、ステップS38に進む。
【0091】
また、ステップS33において、入力した負荷情報(L_IN)が保持している負荷情報Lと等しい場合(L_IN=L)、すなわち、処理負荷が前回(初回は初期値)と同じ場合、制御手段404は、ステップS38に進む。
【0092】
第4の実施形態のマルチメディア再生装置によれば、処理負荷の変動に基づいた調整時間D′と再生余裕時間に相当する時間の分だけ復号開始時刻を早めることができる。また、処理負荷の変動に基づいて、入力バッファ101および出力バッファ310に蓄積される容量を制御することができる。これにより、処理負荷が変動しても、入力バッファ101および出力バッファ310に必要十分な容量を保ちながら、所定の再生時刻に復号または合成した映像や音声を再生出力することが可能になる。
【0093】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は第1乃至第4の実施形態には限定されない。例えば、第1乃至第4の実施形態では、マルチメディア再生装置が同一のメディア再生装置を複数備えて、複数のメディアを再生できるものとしたが、単一のメディアに対応した単一のメディア再生装置だけを備えるものとしてもよい。
また、本発明は、例えば第1乃至第4の実施形態における各メディア再生装置が混在するようにしてもよい。この場合のマルチメディア再生装置を第5の実施形態として説明する。
【0094】
(第5の実施形態)
[マルチメディア再生装置の構成]
図9は、第5の実施形態のマルチメディア再生装置のブロック図である。
このマルチメディア再生装置5は、図9に示すように、多重分離部50と、メディア再生装置100〜400(図1、図3、図5および図7参照)と、負荷計測手段210とを備えている。なお、マルチメディア再生装置1〜4と同一の構成には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0095】
ここでは、IPネットワークにより伝送されるメディア(ストリームやスクリプト)として、MPEG−2映像、MPEG−1 Audio Layer、TVMLスクリプトおよびテキストスクリプトを想定している。
そして、メディア再生装置100は、MPEG−2のストリームを復号し映像を再生する。このメディア再生装置100において、MPEG−2の1GOPの処理遅延時間は例えば10msであり、この値(10ms)を処理遅延時間の初期値に設定する。
また、メディア再生装置200は、MPEG−1 Audio Layerで符号化したストリームを復号して音声を再生する。このメディア再生装置200において、MPEG−1 Audio Layerの1音声フレームの処理遅延時間は例えば3msであり、この値(3ms)を処理遅延時間の初期値に設定する。
【0096】
また、メディア再生装置300は、TVMLスクリプトを解釈し、映像や音声を合成する。このメディア再生装置300において、一定量のTVMLスクリプトの解釈や合成に要する処理遅延時間は、例えば900msであり、この値(900ms)を処理遅延時間の初期値に設定する。
さらに、メディア再生装置400は、テキストスクリプトを解釈し、映像や音声を合成する。このメディア再生装置400において、一定量のテキストスクリプトの解釈や合成に要する処理遅延時間は、例えば600msであり、この値(600ms)を処理遅延時間の初期値に設定する。
【0097】
第5の実施形態のマルチメディア再生装置によれば、映像や音声などそれぞれのメディアが、それぞれに付与されたタイムスタンプの時刻に映像や音声を再生することで、複数のメディア間で同期を取りながら再生出力をおこなうことが可能になる。なお、いずれのメディアをどの符号化方式とするかは任意であり、どのストリーム(またはスクリプト)をいずれのメディア再生装置100〜400で再生(復号または合成)するかは任意である。また、前記した処理遅延時間の数値は、あるシステムにおける一例であることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るマルチメディア再生装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るマルチメディア再生装置の制御手段のフローチャートである。
【図3】本発明の第2の実施形態に係るマルチメディア再生装置の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るマルチメディア再生装置の制御手段のフローチャートである。
【図5】本発明の第3の実施形態に係るマルチメディア再生装置の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係るマルチメディア再生装置の制御手段のフローチャートである。
【図7】本発明の第4の実施形態に係るマルチメディア再生装置の構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の第4の実施形態に係るマルチメディア再生装置の制御手段のフローチャートである。
【図9】本発明の第5の実施形態に係るマルチメディア再生装置の構成を示すブロック図である。
【図10】従来のマルチメディア再生装置の構成を示すブロック図である(出力バッファがない場合)。
【図11】従来のマルチメディア再生装置の構成を示すブロック図である(出力バッファがある場合)。
【図12】処理遅延時間の説明図であり、(a)は出力バッファがない場合を示し、(b)は出力バッファがある場合を示している。
【符号の説明】
【0099】
1〜5 マルチメディア再生装置
50 多重分離部(多重分離部手段)
100 メディア再生装置
101 入力バッファ
102 再生手段
103 処理遅延算出手段
104 制御手段
111 容量制御部(容量制御手段)
112 開始時刻制御部(開始時刻制御手段)
150 出力装置
200 メディア再生装置
204 制御手段
210 負荷計測手段
300 メディア再生装置
304 制御手段
310 出力バッファ
311 容量制御部(容量制御手段)
400 メディア再生装置
404 制御手段



【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の再生時刻にメディアを再生するための符号化されたメディアデータを蓄積する入力バッファと、この入力バッファから出力されるデータを再生する再生手段とを有し、前記データに基づいてメディアを再生するメディア再生装置であって、
前記再生手段で前記データの再生に要する時間を示す処理遅延時間を算出する処理遅延算出手段と、
この処理遅延算出手段で算出された処理遅延時間に基づいて、前記メディアを再生するための処理を開始する時刻を指定する制御手段とを備え、
前記再生手段は、前記制御手段により指定された時刻に、前記メディアを再生するための処理を開始する開始時刻制御手段を有することを特徴とするメディア再生装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記処理遅延算出手段で算出された処理遅延時間に基づいて、前記入力バッファに蓄積されるデータの容量を指定し、
前記入力バッファは、蓄積されるデータの容量を、前記制御手段により指定された容量に制御する容量制御手段を有することを特徴とする請求項1に記載のメディア再生装置。
【請求項3】
前記再生手段から出力されるデータを蓄積し、蓄積されたデータを所定時間保持する出力バッファをさらに備え、
前記制御手段は、前記処理遅延算出手段で算出された処理遅延時間に基づいて、前記出力バッファに蓄積されるデータの容量を指定し、
前記出力バッファは、蓄積されるデータの容量を、前記制御手段により指定された容量に制御する容量制御手段を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のメディア再生装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記メディアを再生するための処理を開始する時刻を、前記所定の再生時刻よりも、前記処理遅延算出手段で算出された処理遅延時間だけ早めた時刻として指定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のメディア再生装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記メディアを再生するための処理を開始する時刻を、前記所定の再生時刻よりも、前記処理遅延算出手段で算出された処理遅延時間と前記出力バッファでデータが保持される所定時間との和だけ早めた時刻として指定することを特徴とする請求項3に記載のメディア再生装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記入力バッファに蓄積されるデータの容量を、前記処理遅延算出手段で算出された処理遅延時間が所定値よりも大きい場合に減少させるように指定し、かつ、前記処理遅延算出手段で算出された処理遅延時間が所定値よりも小さい場合に増加させるように指定することを特徴とする請求項2乃至請求項5のいずれか一項に記載のメディア再生装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記出力バッファに蓄積されるデータの容量を、前記処理遅延算出手段で算出された処理遅延時間が所定値よりも大きい場合に増加させるように指定し、かつ、前記処理遅延算出手段で算出された処理遅延時間が所定値よりも小さい場合に減少させるように指定することを特徴とする請求項3または請求項5に記載のメディア再生装置。
【請求項8】
所定の再生時刻にメディアを再生するための符号化されたメディアデータを蓄積する入力バッファと、この入力バッファから出力される前記データを再生する再生手段とを有し、前記データに基づいてメディアを再生するメディア再生装置であって、
前記メディアを再生するための処理の負荷である処理負荷を計測する負荷計測手段と、
この負荷計測手段で計測された処理負荷と、前記再生手段で前記データの再生に要する時間を示す処理遅延時間とに基づいて、前記メディアを再生するための処理を開始する時刻を指定する制御手段とを備え、
前記再生手段は、前記制御手段により指定された時刻に、前記メディアを再生するための処理を開始する開始時刻制御手段を有することを特徴とするメディア再生装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記負荷計測手段で計測された処理負荷に基づいて、前記入力バッファに蓄積されるデータの容量を指定し、
前記入力バッファは、蓄積されるデータの容量を、前記制御手段により指定された容量に制御する容量制御手段を有することを特徴とする請求項8に記載のメディア再生装置。
【請求項10】
前記再生手段から出力されるデータを蓄積し、蓄積されたデータを所定時間保持する出力バッファをさらに備え、
前記制御手段は、前記負荷計測手段で計測された処理負荷に基づいて、前記出力バッファに蓄積されるデータの容量を指定し、
前記出力バッファは、蓄積されるデータの容量を、前記制御手段により指定された容量に制御する容量制御手段を有することを特徴とする請求項8または請求項9に記載のメディア再生装置。
【請求項11】
前記制御手段は、前記入力バッファに蓄積されるデータの容量を、前記負荷計測手段で計測された処理負荷が所定値よりも大きい場合に減少させるように指定し、かつ、前記負荷計測手段で計測された処理負荷が所定値よりも小さい場合に増加させるように指定することを特徴とする請求項9または請求項10に記載のメディア再生装置。
【請求項12】
前記制御手段は、前記出力バッファに蓄積されるデータの容量を、前記負荷計測手段で計測された処理負荷が所定値よりも大きい場合に増加させるように指定し、かつ、前記負荷計測手段で計測された処理負荷が所定値よりも小さい場合に減少させるように指定することを特徴とする請求項10に記載のメディア再生装置。
【請求項13】
請求項1に記載のメディア再生装置を複数備えると共に、多重化されたメディアデータを分離して前記複数のメディア再生装置にそれぞれ出力する多重分離手段を備えることを特徴とするマルチメディア再生装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−190213(P2006−190213A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−3121(P2005−3121)
【出願日】平成17年1月7日(2005.1.7)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成16年度、総務省、情報通信研究機構委託研究「通信ネットワーク利用放送技術に関する研究開発(平成15年度拡充課題)」、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【出願人】(591053926)財団法人エヌエイチケイエンジニアリングサービス (169)
【Fターム(参考)】