説明

メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂組成物、樹脂硬化物、電気絶縁用樹脂組成物およびコーティング組成物

【課題】耐熱性、耐溶剤性、基材に対する密着性等の諸性能を劣化させることなく、透明性、耐熱分解性、耐熱変色性が良好であり、且つ低吸水性であるシラン変性エポキシ樹脂を提供し、さらには該シラン変性エポキシ樹脂を用いて、各性能が優れたコーティング剤、電気絶縁用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】水酸基含有エポキシ樹脂(a)、水酸基を有する特定のエポキシ化合物(b)(但し、(a)成分を除く)、およびメトキシシラン部分縮合物(c)を脱メタノール縮合反応させて得られるメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂、当該メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂を含有する電気絶縁用樹脂組成物およびコーティング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は、安価で硬化後の特性(耐水性、密着性、耐薬品性等)が比較的優れていることから、各種コーティング剤、接着剤、電気絶縁材等の用途に広く用いられている。しかしながら、近年の技術の進歩に伴い、エポキシ樹脂に対し、さらなる高い性能(密着性、耐熱性等)が要求されるようになっている。
【0003】
本出願人は、これらの要求に応えるべく、先に種々のシラン変性エポキシ樹脂を提案している。(例えば、特許文献1参照)当該樹脂をコーティング剤として用いることにより、基材に対するに密着性、耐熱性、耐溶剤性を向上させ(例えば、特許文献2および3参照)、また、電気絶縁用材料として用いることで、耐熱性、低熱膨張性、絶縁性を向上させることに成功した(例えば、特許文献4〜6参照)。
【0004】
しかしながら、近年、液晶やELなどのディスプレイ用の透明コート剤やシール剤、太陽電池用各種コート剤、光学材料用接着剤などの用途ではこれらの諸性能に加え、透明性、耐熱分解性、耐熱変色性、低吸水性が更に良好な材料が求められるようになってきている。
【0005】
【特許文献1】特開2002−249539号公報
【特許文献2】特開2002−226770号公報
【特許文献3】特開2003−026990号公報
【特許文献4】特開2002−212262号公報
【特許文献5】特開2003−055435号公報
【特許文献6】特開2003−141933号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、耐熱性、耐溶剤性、基材に対する密着性等の諸性能を劣化させることなく、透明性、耐熱分解性、耐熱変色性が良好であり、且つ低吸水性であるシラン変性エポキシ樹脂を提供し、さらには当シラン変性エポキシ樹脂を用いて、各性能が優れたコーティング剤、電気絶縁用樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は前記課題を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果、シラン変性エポキシ樹脂を製造する際に特定のエポキシ化合物を用いることにより、前記課題を解決しうることを見出した。
【0008】
すなわち本発明は、水酸基含有エポキシ樹脂(a)、一般式(1):
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、Xは炭素数4〜10のアルキレン基を表す。)で表されるエポキシ化合物(b)(但し、(a)成分を除く)、およびメトキシシラン部分縮合物(c)を脱メタノール縮合反応させて得られるメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂;当該樹脂およびエポキシ樹脂用硬化剤を含有することを特徴とするメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂組成物;当該樹脂または当該樹脂組成物を硬化させてなることを特徴とする樹脂硬化物およびその製造方法;当該樹脂または当該樹脂組成物を含有する電気絶縁用樹脂組成物;当該樹脂または当該樹脂組成物を含有するコーティング剤組成物に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、耐熱性、耐溶剤性、基材に対する密着性等の諸性能を劣化させることなく、透明性、耐熱分解性、耐熱変色性が良好であり、さらに低吸水性であるシラン変性エポキシ樹脂が得られる。当該シラン変性エポキシ樹脂を用いたコーティング剤は、密着性(特に無機材料)、耐傷つき性等の各種性能に優れるものである。また、当該シラン変性エポキシ樹脂を用いた電気絶縁用樹脂組成物は、耐熱性、電気絶縁性、低熱膨張性等の各種性能に優れたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂は、水酸基含有エポキシ樹脂(a)(以下、(a)成分という)、一般式(1):
【0013】
【化1】

【0014】
(式中、Xは炭素数4〜10のアルキレン基を表す。)で表されるエポキシ化合物(b)であって(a)成分を除くもの(以下、(b)成分という)、およびメトキシシラン部分縮合物(c)(以下、(c)成分という)を脱メタノール縮合反応させることにより得られる。
【0015】
(a)成分は、(c)成分と脱メタノール反応しうる水酸基を含有するエポキシ樹脂であれば、特に限定されず公知のものを用いることができる。なお、(a)成分は、(c)成分との脱アルコール縮合反応により、珪酸エステルを形成しうる水酸基を有するものであるが、当該水酸基は、(a)成分を構成する全ての分子に含まれている必要はなく、これら樹脂として、水酸基を有していればよい。(a)成分の具体例としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ基の一部を開環変性して得られる水酸基含有エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0016】
ビスフェノール型エポキシ樹脂は、ビスフェノール類とエピクロルヒドリンまたはβ−メチルエピクロルヒドリン等のハロエポキシドとの反応により得られる。ビスフェノール類としてはフェノールとホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、アセトフェノン、シクロヘキサノン、ベンゾフェノン等のアルデヒド類もしくはケトン類との反応の他、ジヒドロキシフェニルスルフィドの過酸による酸化、ハイドロキノン同士のエーテル化反応等により得られるものがあげられる。また、2,6−ジハロフェノールなどハロゲン化フェノールから誘導されたハロゲン化ビスフェノール型エポキシ樹脂、リン化合物を化学反応させたリン変性ビスフェノール型エポキシ樹脂など、難燃性に特徴があるものを使用することもできる。ビスフェノール類とエピクロルヒドリンまたはβ−メチルエピクロルヒドリン等のハロエポキシドとの反応により得られたビスフェノール型エポキシ樹脂を用いることにより、機械的性質、化学的性質、電気的性質を向上させることができる。
【0017】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、一般式(2):
【0018】
【化2】

【0019】
で表される化合物である。
【0020】
ノボラックフェノール樹脂類としては、ノボラックフェノール樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック樹脂、ポリp−ビニルフェノール等があげられる。これらノボラックフェノール樹脂の中でも、特にフェノールノボラック樹脂を用いたフェノールノボラック型エポキシ樹脂は、硬化物の熱膨張性が低いため好ましい。ノボラック型エポキシ樹脂の数平均フェノール核体数は3〜10であることが好ましく、さらに好ましくは3〜6である。平均核体数が3未満であると、熱膨張性が高くなり、10を超えると(c)成分との相溶性が低くなるため好ましくない。
【0021】
フェノールノボラック型エポキシ樹脂は、一般式(3):
【0022】
【化3】

【0023】
(式中、nは1〜8の整数を表す。)で表される化合物である。
当該ノボラック型エポキシ樹脂は、(c)成分との脱メタノール縮合反応により、珪酸エステルを形成しうる水酸基を有するように、ノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ基の1つ以上を開環変性したものである。開環変性する化合物としては、フェノール類、アミン類、カルボン酸類などの活性水素化合物が例示できる。具体的には、フェノール、パラターシャリーブチルフェノール、パラターシャリーオクチルフェノール、クレゾール、キシレノール、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなどのフェノール類、ハイドロキノンなどのキノン類、エチルアミン、イソプロピルアミン、2−エチルヘキシルアミン、3−メトキシプロピルアミン、アリルアミンなどの一級アミン類、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジイソブチルアミンなどの二級アミン類、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、クエン酸、安息香酸、フマル酸、マレイン酸などのカルボン酸類、リン酸、メチルホスホン酸、ジメチルホスホン酸などのリン酸類等が挙げられる。これらの中でも、活性水素を2つ持つ2官能性の化合物が、エポキシ樹脂―シリカハイブリッドの熱膨張性が低くなるため好ましい。さらに好ましくは、(c)成分との相溶性がよく反応しやすいことから、ビスフェノール類で開環変性するのがより好ましい。ノボラック型エポキシ樹脂を開環変性するのに使用する活性水素化合物の量は特に制限されないが、ノボラック型エポキシ樹脂分子1モルに対する開環変性する活性水素のモル比が0.2〜3モルであること、すなわち、ノボラック型エポキシ樹脂の持つエポキシ基のうち、開環変性されるエポキシ基の平均個数が0.2〜3個であることが好ましい。本数値が0.2未満であると本発明の効果が得られず、3を超えると開環変性時にゲル化したり、熱膨張性が高くなる傾向があり好ましくない。また、ノボラック型エポキシ樹脂のすべての分子が開環変性されている必要はない。変性されなかったノボラック型エポキシ樹脂は、(a)成分と(c)成分との脱メタノール反応を進行させるため、双方を相溶解させる反応媒体としての役割と、ゾル−ゲル硬化した半硬化物を柔軟化する役割を担う。このため、特に、接着剤、成形中間材料、プリプレグ、封止剤などの半硬化状態での加工が必要な用途には、ノボラック型エポキシ樹脂の一部を変性しないまま残すために、ノボラック型エポキシ樹脂1モルに対する開環変性する活性水素のモル比を0.8以下にすることが好ましい。
【0024】
なお、本発明において、(a)成分のエポキシ当量は、特に限定されず、(a)成分の構造により、用途に応じたものを適宜に選択して使用できる。しかしながら、溶剤を使用しない接着剤やシーリング剤として本発明のシラン変性エポキシ樹脂を使用する場合、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂の製造を無溶剤下に行う事が好ましく、(a)成分として、1種類以上のビスフェノール型エポキシ樹脂を用いて、全体としてのエポキシ当量を200〜400g/eqとなる様に調整するのが好ましい。すなわち、無溶剤下にメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂を製造する場合には、溶剤系で反応させる場合よりも反応系内の粘度が上昇するため、当該粘度を調整する観点からエポキシ樹脂(a)成分の種類を選択するものである。(a)成分の当量が400g/eqを超えると、脱アルコール縮合反応途中で高粘度化する傾向が高くなり、また当該エポキシ当量が200g/eq未満の場合には反応生成物であるメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂中に残存する(c)成分の量が増えたりして好ましくない。
【0025】
本発明において、(a)成分と(b)成分はいずれも、(c)成分と脱メタノール縮合反応して、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂を与える。そのため、(a)成分中には、水酸基が存在しなければならないが、例えば、一般式(2)のビスフェノールA型エポキシ樹脂の場合には、水酸基を持たない分子(一般式(a)におけるm=0の分子)も存在する。水酸基を持たないエポキシ樹脂分子は(c)成分とは反応しないため、未反応のままメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂中に存在することとなる。(a)成分中に水酸基を持たない分子が多く含まれる場合には、最終的に得られる硬化膜の密着性が不充分である場合がある。
【0026】
本発明では、水酸基を持たないエポキシ樹脂分子が多く存在する(a)成分を使用した場合であっても、得られる硬化膜に十分な密着性を付与するために、(b)成分を必須構成成分としている。すなわち、(b)成分は、硬化膜の密着性の低下を防止する作用効果を有する。
【0027】
(b)成分としては、一般式(1)で表されるエポキシ化合物であれば、エポキシ基の数は特に限定されない。また、(b)成分としては、分子量が小さいもの程、(a)成分や(c)成分に対する相溶性がよく、炭素数が6〜12(一般式(1)において、Xが4〜10のもの)が耐熱性付与効果の点で最も優れており、また(c)成分との反応性も高いため、最適である。メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂の製造に際して、(b)成分の使用量は特に限定されず、(a)成分中の水酸基を持たない分子の含有量に応じて適宜に決定すればよい。硬化膜の密着性の観点から、(a)成分のエポキシ当量が200g/eq未満の場合には、(b)成分の重量/(a)成分の重量=0.05以上であり、当該エポキシ当量が200〜300g/eqの場合には該重量比が0.03以上であり、当該エポキシ当量が300g/eqを超える場合は該重量比が0.01以上であるのが好ましい。なお、(b)成分は、多少の毒性を有するものも多いため、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂中の(b)成分残存量を極力少なくするのがよい。上記重量比が0.3を超える場合には、未反応(b)成分を低減させるためにメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂の製造時間が長くなり、製造効率が低下する。
【0028】
また、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂を構成する(c)成分としては、酸又は塩基触媒の存在下、下記メトキシシラン化合物および水を加え、部分的に加水分解、縮合したものを用いることができる。
【0029】
当該メトキシシラン化合物としては、例えば、一般式(4):
Si(OCH4−p
(式中、pは0または1を示す。Rは、炭素原子に直結した低級アルキル基、アリール基または不飽和脂肪族残基を示す。)で表される化合物を例示できる。
【0030】
(c)成分の構成原料である上記メトキシシランの具体例としては、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン等があげられる。
【0031】
上記の中でも、メトキシシランとしては、テトラメトキシシランの部分縮合物、メチルトリメトキシシランの部分縮合物を用いた場合が、低温での硬化性に特に優れているため好ましい。
【0032】
(c)成分は、例えば次の一般式(5):
【0033】
【化4】

【0034】
(式中、R1は、炭素数1〜4の低級アルキル基、アリール基、又はメトキシ基を示す。)で示される。
【0035】
当該(c)成分の数平均分子量は230〜2000程度、一般式(5)において、平均繰り返し単位数qは2〜11が好ましい。qの値が11を超えると、溶解性が悪くなり、反応温度において、(a)成分との相溶性が著しく低下し、(a)成分や(b)成分との反応性が落ちる傾向があるため好ましくない。qが2未満であると反応途中に反応系外にメタノールと一緒に留去されてしまい好ましくない。
【0036】
メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂は、(a)成分、(b)成分および(c)成分を、溶剤の存在下または無溶剤下に脱アルコール縮合反応させることにより得られる。(a)成分および(b)成分と、(c)成分との使用重量比は、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂中にメトキシ基が実質的に残存するような割合であれば特に制限はされないが、(a)成分の水酸基と(b)成分の水酸基との合計当量/(c)成分のメトキシ基の当量(当量比)=0.1〜0.6であることが好ましい。更に好ましくは0.13〜0.5である。上記当量比が0.1未満であると未反応(c)成分が増え、0.6を超えると十分な密着性が得られず好ましくない。
【0037】
なお、(a)成分として平均エポキシ当量400以上の高分子量のものや(c)成分として前記一般式(c)の平均繰り返し単位数q>7を使用原料とする場合には、(a)成分の水酸基が完全に消失するまで、脱アルコール縮合反応を行うと高粘度化、ゲル化する傾向が見られる場合がある。このような場合には、脱メタノール反応を反応途中で、停止させたり、(b)成分/(a)成分(水酸基当量比)が0.33を超えるような条件を選択するなどの方法により高粘度化、ゲル化を防ぐことが可能である。たとえば、反応を途中で停止させる方法としては、高粘度化してきた時点で、反応系を還流系にして、反応系からメタノールの留去量を調整したり、反応系を冷却し反応を終了させる方法等を採用できる。
【0038】
本発明における脱メタノール縮合反応では、反応温度は50〜130℃程度、好ましくは70〜110℃であり、全反応時間は1〜15時間程度である。この反応は、(c)成分自体の重縮合反応を防止するため、実質的に無水条件下で行うのが好ましい。またメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂の製造は、反応時間を短くするため、(b)成分が蒸発しない範囲で、減圧下で行うこともできる。
【0039】
また、上記の脱メタノール縮合反応に際しては、反応促進のために従来公知の触媒の内、エポキシ環を開環しないものを使用することができる。該触媒としては、たとえば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、亜鉛、アルミニウム、チタン、コバルト、ゲルマニウム、錫、鉛、アンチモン、砒素、セリウム、硼素、カドミウム、マンガンのような金属;これら金属の酸化物、有機酸塩、ハロゲン化物、アルコキシド等があげられる。これらのなかでも、少量で高い反応性を示すため有機錫、有機酸錫が好ましく、具体的には、ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸錫等が有効である。
【0040】
また、上記の脱メタノール縮合反応は、溶剤存在下または無溶剤下で行うことができる。しかしながら、(a)成分や(c)成分の分子量が大きい時には、反応温度において、反応系が不均一となる場合が見られ反応が進行しにくくなるため、溶剤を使用するのが好ましい。溶剤としては、(a)成分および(c)成分を溶解し、且つこれらに対し非活性な有機溶剤である必要がある。更には、コーティング組成物を低温で乾燥させる必要がある事から、沸点が120℃以下の有機溶剤が好ましい。このような有機溶剤としては、例えば、トルエン、メチルエチルケトン、アセトン、テトラヒドロフランなどの非プロトン性極性溶媒が例示できる。
【0041】
こうして得られたメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂は、メトキシシラン部分縮合物のメトキシ基が、エポキシ樹脂残基やグリシジル基で置換されたものを主成分とするが、当該樹脂中には未反応の(a)成分、(b)成分、(c)成分が含有されていてもよい。なお、未反応の(c)成分は、ゾル−ゲル硬化反応によりシリカとすることができる。
【0042】
メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂は、その分子中に(c)成分に由来するメトキシ基を有している。当該メトキシ基の含有量は、特に限定はされないが、このメトキシ基は溶剤の蒸発や加熱処理により、又は水分(湿気)との反応により、ゾル−ゲル反応や脱アルコール縮合して、相互に結合した硬化膜を形成するために必要となるため、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂は通常、反応原料となる(c)成分のメトキシ基の30〜95モル%程度、好ましくは40〜80モル%を未反応のままで保持しておくのが良い。かかる硬化膜は、ゲル化した微細なシリカ部位(シロキサン結合の高次網目構造)を有するものである。かかる硬化膜は、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂の固形残分中のSi含有量が、シリカ重量換算で2〜60重量%程度となることが好ましい。固形残分中のシリカ重量換算Si含有量とは、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂中のメトキシシリル部位が上記ゾル−ゲル硬化反応を経て、シリカ部位に硬化した時のシリカ部位の重量パーセントである。2重量%未満であると本発明の効果である密着性を得難くなるし、60重量%を越えると硬化膜が脆くなり過ぎ、膜厚の厚い硬化膜を得ることが困難になる傾向がある。
【0043】
前記方法で得られたメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂は、電気絶縁用樹脂組成物として用いることができる。当該用途に用いる場合には、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂に加えて、各種のシラン変性していないエポキシ樹脂、エポキシ樹脂用硬化剤、硬化促進剤、エポキシ重合触媒などを併用できる。本発明の電気絶縁用樹脂組成物を各種用途へ適用するにあたっては、エポキシ樹脂−シリカハイブリッド硬化物や半硬化物の柔軟性や力学強度を調整するため、各種のエポキシ樹脂やゴム成分などを併用することもできる。
【0044】
当該併用しうるシラン変性していないエポキシ樹脂としては、本発明の構成成分として記載した前記ノボラック型エポキシ樹脂;ビスフェノール類とエピクロロヒドリンを反応させて得られるビスフェノール型エポキシ樹脂;フタル酸、ダイマー酸などの多塩基酸類およびエピクロロヒドリンを反応させて得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂;ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸などのポリアミン類とエピクロロヒドリンを反応させて得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂;オレフィン結合を過酢酸などの過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂および脂環式エポキシ樹脂などがあげられる。これらの中では、ノボラック型エポキシ樹脂を用いることにより、完全硬化物の熱膨張率が高くなることを防止することができるため好ましい。当該ノボラック樹脂としては、(a)成分として用いられる開環変性する前のノボラック型エポキシ樹脂を用いることができる。ノボラック型エポキシ樹脂を用いる場合には、(a)成分としてビスフェノール型エポキシ樹脂を用いることが、耐熱性、低熱膨張性が良好となるため好ましい。またゴム成分としてはポリイソブテン、ポリブチレン、ポリブタジエン、ブタジエン−アクリロニトリルゴム、クロロプレンゴム、シリコンゴム等が挙げられる
【0045】
また、潜在性エポキシ樹脂用硬化剤としては、通常、エポキシ樹脂の硬化剤として使用されている従来公知の潜在性硬化剤が使用できる。潜在性エポキシ樹脂用硬化剤は、ノボラック樹脂系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、酸無水物系硬化剤等が例示できる。具体的には、ノボラック樹脂系のものとしては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック樹脂、ポリp−ビニルフェノール等があげられ、イミダゾール系硬化剤としては、2-メチルイミダゾール、2-エチルへキシルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2‐フェニルイミダゾール、1-シアノエチル‐2‐フェニルイミダゾリウム・トリメリテート、2‐フェニルイミダゾリウム・イソシアヌレート等があげられ、酸無水物系硬化剤としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサクロルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチル−3,6−エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸があげられ、またその他の硬化剤としてジシアンジアミド、ケチミン化合物等があげられる。これらの中でも電気絶縁用樹脂組成物の貯蔵安定性を考慮すると、ノボラック樹脂系硬化剤、イミダゾール系硬化剤が好ましい。
【0046】
潜在性エポキシ樹脂用硬化剤の使用割合は、通常、電気絶縁用樹脂組成物中のエポキシ基1当量に対し、硬化剤中の活性水素を有する官能基が0.2〜1.5当量程度となるような割合で配合して調製される。
【0047】
また、前記電気絶縁用樹脂組成物には、エポキシ樹脂と硬化剤との硬化反応を促進するための硬化促進剤を含有することができる。例えば、1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの三級アミン類;2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾールなどのイミダゾール類;トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィンなどの有機ホスフィン類;テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N−メチルモルホリン・テトラフェニルボレートなどのテトラフェニルボロン塩などをあげることができる。硬化促進剤はエポキシ樹脂の100重量部に対し、0.1〜5重量部の割合で使用するのが好ましい。
【0048】
前記電気絶縁用樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、有機溶剤、充填剤、離型剤、表面処理剤、難燃剤、粘度調節剤、可塑剤、抗菌剤、防黴剤、レベリング剤、消泡剤、着色剤、安定剤、カップリング剤等を配合してもよい。
【0049】
前記電気絶縁用樹脂組成物を用いることにより電子材料用絶縁材料が得られる。すなわち、電気絶縁用樹脂組成物から、電子材料用絶縁材料となるハイブリッド硬化物を直接的に得るには、当該組成物を室温〜250℃で硬化させる。半硬化物を経由させる場合は、当該組成物を50〜120℃で溶剤を揮発、ゾルゲル硬化させ、そののち150〜250℃で完全硬化させる。硬化温度は、エポキシ樹脂用硬化剤の種類によって適宜決定される。当該硬化剤として、フェノール樹脂系硬化剤や酸無水物系硬化剤を用いる場合には、当該硬化剤以外にゾル−ゲル硬化触媒を0.1%以上併用して、コーティングや含浸などの加工を施した後、150〜250℃で硬化させるのが好ましい。なぜなら、メトキシシリル部位のゾル−ゲル硬化反応ではメタノールが発生するため、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂中のエポキシ基とエポキシ樹脂用硬化剤とのエポキシ基の開環・架橋反応による硬化が進行した後に、当該アルコールが発生した場合には、発泡やクラックを生じる。そのため、触媒を適宜に選択することによってゾル−ゲル硬化反応速度を調整する必要がある。
【0050】
以下、本発明の電気絶縁用樹脂組成物から各種の絶縁材料を得るための方法につき説明する。当該電気絶縁用樹脂組成物から半硬化シートや成形用中間材料などを経て、最終的な硬化物を収得するには、当該樹脂組成物中のエポキシ硬化剤の種類、更には半硬化条件などを慎重に選択することが重要となる。エポキシ硬化剤として、フェノール樹脂系硬化剤、酸無水物系硬化剤、イミダゾール類等の潜在性硬化剤を用い、錫系のゾル−ゲル硬化触媒をメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂の固形残分当り0.05〜5%程度配合することが好ましい。上記電気絶縁用樹脂組成物を用いて半硬化フィルムや成形用中間材料を作製するには、好ましくは50〜150℃で加熱することにより、溶剤を含有している場合には溶剤を蒸発させ、当該樹脂組成物中に含有されるメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂のメトキシシリル部位のゾル−ゲル硬化を70%以上、好ましくは90%以上進行させ、シロキサン結合を生成させる必要がある。なぜなら、メトキシシリル部位のゾル−ゲル硬化反応ではメタノールが発生するため、半硬化物作製時のゾル−ゲル硬化の進行が少ないと、これに引き続く完全硬化反応において硬化収縮やクラック、発泡が生じる可能性があるためである。こうして得られた半硬化フィルムや成形中間材料は60〜150℃に加熱することによって軟化し、成形加工やモールド、部品装着などの操作が可能になる。その後、当該加工させた半硬化フィルムや成形中間材料を150〜250℃で加熱することで、当該エポキシ基とエポキシ硬化剤とが硬化し、目的とする電子材料用絶縁材料が得られる。
【0051】
本発明の電気絶縁用樹脂組成物からプリント基板用プリプレグを得るには、例えば特開平9−143286号公報に記載されているように、電気絶縁用樹脂組成物を溶剤でワニス化し、当該ワニスを補強基材に含浸し、加熱してプリプレグシートを得ることができる。この時、上記エポキシ樹脂組成物の組成や作製条件については、上記の半硬化フィルムや成形用中間材料と同様に決定すればよい。なお、溶剤としては、例えばメチルエチルケトン、アセトン、エチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどの沸点が160℃以下の極性溶剤があげられ、これらはプレプリグ中に残存しないため好ましい。加熱温度は、用いる溶剤の種類を考慮して決定され、好ましくは50〜150℃とされる。尚、補強基材の種類は特に限定はされず、例えば紙、ガラス布、ガラス不織布、アラミド紙、アラミド布、ガラスマット、ガラスロービング布などの各種を例示できる。また、樹脂分と補強基材の割合も特に限定されないが、通常、プリプレグ中の樹脂分が20〜80重量%となるように調整するのが好ましい。
【0052】
本発明の電気絶縁用樹脂組成物から銅張り積層板を得るには、例えば特開平5−86215号公報や特開平6−100763号公報に記載されているように、上記のプリプレグを3〜8枚程度重ね、さらに上下に銅箔を重ねて、1〜10MPaの加圧下に、170〜250℃で10分〜3時間、加熱圧着させる。
【0053】
上記プリプレグと銅張り積層板からプリント配線基板やインターポーザーを得るには、銅張り積層板をレジストエッチングして回路を形成させた後、プリプレグおよび銅箔を重ねて上記の銅張り積層板作製時と同じ条件で加熱圧着し、多層化すればよい。
【0054】
本発明の電気絶縁用樹脂組成物からビルドアップ基板用層間絶縁材料を得る方法としては特に限定されないが、例えば特公平4−6116号、特開平7−304931号、特開平8−64960号、特開平9−71762号、特開平9−298369号公報などに記載の各種方法を採用できる。より具体的には、ゴム、フィラーなどを適宜含有した当該エポキシ樹脂組成物を、回路を形成した配線基板にスプレーコーティング法、カーテンコーティング法等の公知の方法で塗布した後、上記のような直接ハイブリッド体を得る方法に従って硬化させる。その後、必要に応じて所定のスルーホール部等の穴あけを行った後、粗化剤により処理し、その表面を湯洗することによって、凹凸を形成させ、銅などの金属をめっき処理する。当該めっき方法としては、無電解めっき、電解めっき処理が好ましく、また上記の粗化剤としては酸化剤、アルカリ及び有機溶剤の中から選ばれた少なくとも1種が用いられる。このような操作を所望に応じて順次繰り返し、樹脂絶縁層及び所定の回路パターンの導体層を交互にビルドアップして形成することができる。但し、スルーホール部の穴あけは、最外層の樹脂絶縁層の形成後に行なう。また、本発明の電気絶縁用樹脂組成物から得られた半硬化フィルムや半硬化物を用いてビルドアップ基板用層間絶縁材料を作製することもできる。たとえば、回路を形成した配線基板上で、前記と同様の条件下に当該電気絶縁用樹脂組成物を半硬化させ、その後、必要に応じて所定のスルーホール部等の穴あけを行った後、粗化剤により粗面化処理を行ない、樹脂絶縁層の表面及びスルーホール部に凹凸状の良好な粗化面を形成させる。次いで、このように粗面化された樹脂絶縁層表面に前記と同様に金属めっきを施した後、再度、当該電気絶縁用樹脂組成物をコーティングし、170〜250℃で加熱処理を行う。このような操作を所望に応じて順次繰り返し、樹脂絶縁層及び所定の回路パターンの導体層を交互にビルドアップして形成することもできる。また、銅箔上で当該エポキシ樹脂組成物を半硬化させた樹脂付き銅箔を、回路を形成した配線基板上に、170〜250℃で加熱圧着することで、粗化面を形成、メッキ処理の工程を省き、ビルドアップ基板を作製することも可能である。
【0055】
電子部品用封止剤として、モールド型封止剤、テープ状封止剤、ポッティング型液状封止剤など各種のものが知られている。本発明の電気絶縁用樹脂組成物から、例えばモールド型封止剤を調製する場合、その方法について特に限定されないが、当該樹脂組成物をゾル−ゲル硬化させた硬化物の粉末を用いる方法が好ましい。例えば、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂に錫系のゾル−ゲル硬化触媒を樹脂分当り0.05〜5%と、必要に応じてシリカなど無機充填剤を配合して本発明の電気絶縁用樹脂組成物(エポキシ樹脂硬化剤を配合せず)とした後、テフロン(登録商標)シート上で100〜200℃にて硬化させ、更に当該ゾル−ゲル硬化物を粉砕機にかけて、粉末化する方法がある。また、当該樹脂組成物を溶剤で希釈し、25℃で500mPa・s以下の粘度になるよう調整した後、スプレーして空気中の湿気と反応させることにより、ゾル−ゲル硬化物の粉末を得ることもできる。当該溶剤としては、前記と同様のものであり、特に沸点が100℃以下の溶剤が好ましい。この様にして得られたゾル−ゲル硬化物の粉末に、エポキシ樹脂硬化剤としてのノボラックフェノール樹脂、エポキシ樹脂硬化触媒、および無機充填剤を通常80〜170℃の温度で30〜300秒間、混練りして、封止剤用組成物を得る。当該封止剤用組成物を金型に封入し、通常170〜250℃、5〜20MPaでトランスファー成形する事により、半導体や電子部品を封止する。封止剤の使用は電子部品や半導体を長寿命化する事が目的であるため、低吸水性は最も大切な性能である。本特許のメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂の製造において、メトキシシラン部分縮合物(3)にメチルトリメトキシシランの部分縮合物を用いると、硬化物が低い吸水率を示し、好適である。
【0056】
またテープ状封止剤として使用する場合には、必要に応じてシリカなど無機充填剤を配合した本発明の電気絶縁用樹脂組成物を用いて、前記手順に従って半硬化シートを作製し、封止剤テープとする。この封止剤テープを半導体チップ上に置き、100〜150℃に加熱して軟化させ成形した後、170〜250℃で完全に硬化させる。
【0057】
更にポッティング型液状封止剤として使用する場合には、必要に応じてシリカなど無機充填剤を配合した本発明の電気絶縁用樹脂組成物を半導体チップや電子部品上に塗布し、直接、硬化させればよい。
【0058】
本発明の電気絶縁用樹脂組成物をアンダーフィル樹脂として使用する方法についても特に限定されないが、例えば特開平9−266221号公報や「エレクトロニクス分野のプラスチック」(工業調査会発行、1999年、27〜34頁)に記載されるような方法を採用できる。より具体的には、フリップチップ実装時に電極のついた半導体素子と半田のついたプリント配線基板との空隙に、本発明の電気絶縁用樹脂組成物を、毛細管現象を利用してキャピラリーフロー法によって注入し、上記直接ハイブリッド体を得る方法で硬化させる方法と、予め基板ないし半導体素子上に前記手順に従って、半硬化樹脂を形成させてから、加熱して半導体素子と基板を半硬化樹脂で密着させ、完全硬化させるコンプレッションフロー法などによりアンダーフィル樹脂層を形成する。この場合、本発明の電気絶縁用樹脂組成物を、溶剤を含有しない液状の樹脂組成物の形態で使用するのが好ましい。特にキャピラリーフロー法を用いる場合には、低粘度である必要があり、5000mPa・s以下の粘度であることが好ましい。エポキシ樹脂組成物がこれを超える粘度であれば、室温〜100℃以下に加温して注入することもできる。また、アンダーフィル樹脂の目的は、半導体素子と基板の線膨張性の違いから生じる半田周辺の応力を緩和する事であり、界面ジョイントである半田の線膨張係数に近い、低い線膨張係数を持つ絶縁材料が好ましいとされている。そのため、エポキシ樹脂組成物が低粘度であれば、シリカなどフィラーを添加することによって、線膨張率係数を更に下げることもできる。
【0059】
本発明の電気絶縁用樹脂組成物をソルダーレジストなどの熱硬化型レジストインキとして使用する場合には、例えば特開平5−186567号公報や特開平8−307041号公報に記載の方法に準じて、レジストインキ用組成物とした後、スクリーン印刷方式で、プリント基板上に塗布した後、直接ハイブリッド硬化物を得る方法によって、レジストインキ硬化物とする。好適には、レジストインキ用組成物として、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤の他、必要に応じてアクリル酸エステルやメタクリル酸エステルなどのエチレン性不飽和二重結合を有するビニル系モノマー、フタロシアニンブルーをはじめとする各種の顔料、シリカ、アルミナ等の充填剤、レベリング剤などを添加する。
【0060】
本発明の電気絶縁用樹脂組成物を半導体の層間絶縁材料として使用する場合は、例えば特開平6−85091公報の記載の方法が採用できる。具体的には、半導体上に当該樹脂組成物をスピンコートし、直接ハイブリッド硬化物を得る方法によって得られる。層間絶縁膜に用いる場合は、特に硬化物の線膨張率が低いことが要求されるため、本発明の電気絶縁用樹脂組成物においては、メトキシシラン部分縮合物(2)としてテトラメトキシシラン部分縮合物を用いること、更にはエポキシ樹脂組成物の固形残分中のシリカ重量換算Si含有量が10%以上であることが好ましい。
【0061】
本発明の電気絶縁用樹脂組成物を導電ペーストとして使用する場合には、例えば特開平9−35530号公報に記載されるように、真球状やリン片状の銀やニッケルなどの導電粉を絶縁材料に配合しなければならない。導電粉の含有量は、導電ペーストに対して導電性と経済性の観点から、50〜80重量%であることが好ましい。この含有率が50重量%未満であると抵抗値が高くなる傾向にあり、80重量%を超えると接着性が低下したり、製品の価格が上昇するなどの不利がある。導電ペーストは高温や高湿等の過酷な条件にさらされた後に比抵抗変化が小さいことが求められる。吸水率を低減させる観点から、本発明の電気絶縁用樹脂組成物におけるメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂の成分であるメトキシシラン部分縮合物(2)として、メチルトリメトキシシランの部分縮合物を用いること、更にはエポキシ樹脂硬化剤としてノボラックフェノール樹脂を用いることが特に好ましい。
【0062】
本発明の電気絶縁用樹脂組成物からICトレイなどの電子部品を収納するための容器(成形物)を製造する場合には、前記方法で得られた半硬化シートや成形用中間材料を得た後、これらを60〜150℃で再溶融させて金型に入れ、150〜250℃、1〜30MPaの条件下で成形することにより得られる。
【0063】
また、本発明のメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂はコーティング剤組成物として用いることができる。本発明のコーティング剤組成物においては、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂を含有しておればよく、その他の配合成分については特に限定されず各種公知のエポキシ樹脂を併用してもよい。なお、各種用途へ適用するにあたってはエポキシ樹脂用硬化剤、硬化促進剤を含有している事が好ましい。
【0064】
当該併用しうるエポキシ樹脂としては、本発明の構成成分として記載した(a)成分の他フタル酸、ダイマー酸などの多塩基酸類およびエピクロロヒドリンを反応させて得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂;ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸などのポリアミン類とエピクロロヒドリンを反応させて得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂;オレフィン結合を過酢酸などの過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂および脂環式エポキシ樹脂などがあげられる。
【0065】
また、エポキシ樹脂用硬化剤としては、通常、エポキシ樹脂の硬化剤として使用されている、フェノール樹脂系硬化剤、ポリアミン系硬化剤、ポリカルボン酸系硬化剤、イミダゾール系硬化剤等を特に制限なく使用できる。具体的には、フェノール樹脂系のものとしては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ポリp−ビニルフェノール等があげられ、ポリアミン系硬化剤としてはジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジシアンジアミド、ポリアミドアミン(ポリアミド樹脂)、メラミン樹脂、ケチミン化合物、イソホロンジアミン、m−キシレンジアミン、m−フェニレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、N−アミノエチルピペラジン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノ−3,3′―ジエチルジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、ジシアンジアミド等があげられ、ポリカルボン酸系硬化剤としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサクロルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチル−3,6−エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸があげられ、またイミダゾール系硬化剤としては、2−メチルイミダゾール、2−エチルへキシルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウム・トリメリテート、2−フェニルイミダゾリウム・イソシアヌレート等があげられる。上記エポキシ樹脂用硬化剤は、エポキシ環と反応して開環硬化させるだけではなく、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂中のメトキシシリル部位やメトキシ基が互いにシロキサン縮合していく反応の触媒ともなる。また半硬化膜を得る場合には、高い温度でエポキシ樹脂と反応するような潜在性硬化剤がよく、例えば、上記例示化合物の内でフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂および酸無水物類が好ましい。また、少なくともメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂とエポキシ樹脂用硬化剤の双方が配合された一液型コーティング剤組成物として、長期安定性が必要な場合には、上記例示化合物の中でもフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ジシアンジアミド、イミダゾール類および酸無水物類が好ましい。また、十分なポットライフと低温硬化性を実現するためには、ケチミン化合物(d)(以下、(d)成分という。)を用いることが好ましい。(d)成分としては、ポリアミンとケトンを縮合反応して得られる化合物が挙げられる。ポリアミンとしては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、フェニレンジアミン、キシレンジアミンなどが挙げられるが、低温硬化性から脂肪族アミンが好ましい。またケトンとしては、メチルエチルケトンやメチルイソブチルケトンが挙げられる。これらの(d)成分としては、エピキュアH3、同H30(いずれも油化シェルエポキシ(株)製の商品名)などを挙げる事が出来る。
【0066】
エポキシ樹脂用硬化剤の使用割合は、通常、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対し、硬化剤中の活性水素を有する官能基が0.2〜1.5当量程度となるような割合で配合して調製される。なお、(d)成分を用いる場合には、通常、コーティング組成物中のエポキシ基1当量に対し、硬化剤中の活性水素を有する官能基が0.5〜1.2当量程度となるような割合で配合して調製される。
【0067】
また、前記のコーティング剤組成物には、エポキシ樹脂と硬化剤との硬化反応を促進するための硬化促進剤を含有することができる。例えば、1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの三級アミン類;2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾールなどのイミダゾール類;トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィンなどの有機ホスフィン類;テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N−メチルモルホリン・テトラフェニルボレートなどのテトラフェニルボロン塩などをあげることができる。
【0068】
前記の硬化促進剤は、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂のエポキシ基や任意成分として用いたエポキシ樹脂の合計エポキシ基に対して、それぞれ0.1〜5重量部の割合で使用するのが好ましい。また、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂中のメトキシシリル部位やメトキシ基のシロキサン縮合の促進には、従来公知の酸又は塩基性触媒、金属系触媒などのゾル−ゲル硬化触媒を配合することが出来る。これらのなかでも、オクチル酸錫やジブチル錫ジラウレート、テトラプロポキシチタンなど金属系触媒が、活性が高く好ましい。
【0069】
また、本発明のコーティング剤組成物は、目的用途に応じて、従来公知の高分子化合物を含有することが出来る。例えば、当該コーティング剤組成物に可とう性や柔軟性を付与するためには、従来公知のアクリル樹脂、ウレタン樹脂や、ポリブタジエンなどのゴム材料などを併用でき、また当該コーティング剤組成物に低誘電性やスリップ性を付与するためにはシリコーン樹脂などを併用できる。また、本発明のコーティング剤組成物においては、更に(c)成分を配合し、コーティング剤組成物のSi含有量を増加させてもよいが、得られる硬化膜の耐熱性、密着性、耐酸性などを考慮すると、コーティング剤組成物の固形残分中のシリカ重量換算Si含有量が、シリカ重量換算で2〜60重量%であることが好ましい。この場合、配合したメトキシシラン部分縮合物(3)は、ゾル−ゲル硬化反応により、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂のシリカ部位と一体化する。
【0070】
また、本発明のコーティング剤組成物は、目的用途に応じて、溶剤により適宜に濃度や粘度を調整できる。溶剤としては、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂の製造に用いたものと同様のものを使用できる。その他、当該コーティング剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、充填剤、離型剤、表面処理剤、難燃剤、粘度調節剤、可塑剤、抗菌剤、防黴剤、レベリング剤、消泡剤、着色剤、安定剤、カップリング剤等を配合してもよい。
【0071】
本発明のコーティング剤組成物から硬化膜を直接的に得るには、当該組成物を室温〜250℃で硬化させる。硬化温度は、エポキシ樹脂用硬化剤の種類によって適宜決定される。当該硬化剤として、フェノール樹脂系硬化剤やポリカルボン酸系硬化剤を用いる場合には、当該硬化剤以外にゾル−ゲル硬化触媒を0.1%以上併用して、コーティングや含浸などの加工を施した後、150〜250℃で硬化させるのが好ましい。ポリアミン系硬化剤を用いると室温〜100℃の低温硬化が可能であるが、オクチル酸錫など活性の高いゾル−ゲル硬化触媒を0.3%以上併用して硬化させるのが好ましい。なぜなら、メトキシシリル部位のゾル−ゲル硬化反応ではメタノールが発生するため、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂中のエポキシ基とエポキシ樹脂用硬化剤とのエポキシ基の開環・架橋反応による硬化が進行した後に、当該メタノールが発生した場合には、発泡やクラックを生じる。そのため、触媒を適宜に選択することによってゾル−ゲル硬化反応速度を調整する必要がある。
【0072】
以下、本発明のコーティング剤組成物から半硬化膜を経て、硬化膜を得るための方法につき説明する。当該コーティング剤組成物から半硬化膜を経て、最終的な硬化膜を収得するには、当該樹脂組成物中のエポキシ樹脂用硬化剤やエポキシ重合触媒の種類、更には半硬化条件などを慎重に選択することが重要となる。エポキシ樹脂用硬化剤として、フェノール樹脂系硬化剤、ポリカルボン酸系硬化剤等の潜在性硬化剤を用い、錫系のゾル−ゲル硬化触媒をメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂の固形残分当り0.05〜5%程度配合することが好ましい。上記コーティング剤組成物を用いて半硬化膜を作製するには、好ましくは40〜150℃で加熱することにより、溶剤を含有している場合には溶剤を蒸発させ、当該樹脂組成物中に含有されるメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂のメトキシシリル部位のゾル−ゲル硬化を70%以上、好ましくは90%以上進行させ、シロキサン結合を生成させる必要がある。なぜなら、メトキシシリル部位のゾル−ゲル硬化反応ではメタノールが発生するため、半硬化膜作製時のゾル−ゲル硬化の進行が少ないと、これに引き続く完全硬化反応において硬化収縮やクラック、発泡が生じる可能性があるためである。こうして得られた半硬化膜は60〜150℃に加熱することによって軟化し、各種基材などの密着が可能になる。コーティング剤組成物の必須成分であるメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂において、(c)成分としてメチルトリメトキシシラン部分縮合物を用いた場合には、半硬化膜が加熱時に適度に軟化し、密着しやすいため好ましい。その後、当該加工させた半硬化膜を150〜250℃で加熱することで、当該エポキシ基とエポキシ樹脂用硬化剤とが硬化し、目的とする硬化膜が得られる。
【0073】
本発明のコーティング剤組成物は、シーラー、プライマー、床剤の表面コート剤、プラスチック用ハードコート剤などの塗料;メッキ用アンカーコート、金属蒸着アンカーコートなどのアンカーコート剤;電子材料用、液晶板用、建材用などのシーリング剤;プリント基板用、建材用などの接着剤などに好適であり、上記硬化方法の何れかを適用して容易に硬化膜を形成させることができる。
【0074】
本発明のコーティング剤組成物の各種用途への適用例を後述する。本発明のコーティング剤組成物は、無機基材の1層目に塗工される塗料(シーラー)として特に有用である。ここで無機基材とはコンクリート、モルタル、ガラス等のセラミック基材の他、鉄、ステンレス、マグネシウム合金、亜鉛合金などの金属基材をも包含する。当該シーラーを屋外で施行する場合には、加熱硬化が困難なため室温硬化が可能なポリアミン系硬化剤を用いて、上記の直接硬化膜を得る方法で硬化させるのがよい。一方、焼き付け塗装が可能な場合には、上記の各種エポキシ樹脂用硬化剤を使用し、所定の加熱条件下で硬化膜を得ることができる。当該塗料を基材に塗工する方法としては、刷毛塗り、スプレーコート、ロールコート、ディップコートなど何れの手法も適用でき、必要に応じて有機溶剤で粘度調整することにより通常5〜100μm程度の硬化膜となるよう塗工される。なお当該塗料には、防錆性などを向上するために、各種フィラーを配合してもよい。当該フィラーの種類も特に限定されないが、チタン白、黄色酸化鉄、カーボンブラック等の着色顔料;シリカ、タルク、沈降性バリウム等の体質顔料;亜鉛華、リン酸アルミニウム系等の防錆顔料等を例示できる。
【0075】
本発明のコーティング剤組成物をプライマーとして使用する場合には、例えば特開平6−128353号公報に記載されるような床材用プライマーの使用方法を適用できる。コンクリートなど基材の上に沸点が150℃未満の溶剤を含むコーティング剤組成物を硬化膜の膜厚が3〜50μm程度になるよう塗布し、室温で1時間〜2日間放置して硬化させる。室温硬化であるため、エポキシ樹脂用硬化剤にはポリアミン系硬化剤を用いるのが好ましい。硬化時間は硬化剤であるポリアミン系硬化剤の可使時間などを考慮して決定できる。当該プライマーを硬化させた後は、常法に従って、例えば床材用エポキシ樹脂が塗工される。本発明のコーティング剤組成物は、コンクリートなどの無機基材に対する密着性が特に良好なことから、ブリスターなどの生じない高耐久性コーティング硬化物となる。
【0076】
本発明のコーティング剤組成物を床材の表面コーティングに適用する場合には、例えば特開平4−224858号、特開平6−128353号公報に記載された方法を採用できる。すなわち、本発明のコーティング剤組成物をプライマー処理したコンクリートに、硬化膜の膜厚が100〜5000μm程度になるように、ローラーを用いて塗布し、1〜7日間、室温硬化させる。当該コーティング剤組成物には、無溶剤下に製造したアルコキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂、およびエポキシ樹脂用硬化剤としてポリアミン系硬化剤が必須成分とされるが、その他の成分として、上記シーラーの調製に用いた充填剤や可塑剤を適宜に配合できる。
【0077】
本発明のコーティング剤組成物をプラスチック用ハードコート剤として使用する場合には、プラスチック基材上に当該コーティング剤組成物を硬化膜の膜厚が5〜50μm程度になるよう公知の方法によって塗布し、直接硬化膜を得る方法によって硬化させればよい。当該硬化温度は基材プラスチックの熱変形温度以下に設定する必要があるため、硬化剤としてポリアミン系エポキシ樹脂用硬化剤を用い低温硬化させるのが好ましい。
【0078】
本発明のコーティング剤組成物をアンカーコート剤として使用する場合には、基材上に硬化膜の膜厚が2〜100μm程度になるよう、上記塗料の塗工方法と同様に塗布し、直接硬化膜を得る方法で硬化させればよい。硬化膜上にメッキを施す場合には、粗化剤により処理し、その表面を湯洗することによって、凹凸を形成させ、金属をめっき処理する。当該めっき方法としては、無電解めっき、電解めっき処理が好ましく、また上記の粗化剤としては、硫酸、重クロム酸、酸化剤、アルカリの中から選ばれた少なくとも1種が用いられる。本発明のコーティング剤組成物から得られる硬化膜は、これらの粗化剤によって適度に表面が荒れているため、メッキ層との密着性に優れている。また金属蒸着を施す場合には、硬化膜を上にして、従来公知のシリカ、アルミニウム、アルミナなどの金属又は金属酸化物を蒸着させればよい。
【0079】
本発明のコーティング剤組成物を建材用シーリングや接着剤として使用する場合には、例えば、特開平10−204152号記載の方法を例示できる。すなわち、建材用シーリングや接着剤を調製するには、無溶剤下に製造されたメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂を含有するコーティング組成物を用いるのがよく、これに充填剤や可塑剤を加え、公知の混練機を用いて強力混練すればよい。当該充填剤としては、各種形状の有機または無機充填材を使用できるが、酸性または中性のものを選定するのが好ましい。当該充填剤としては、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ;けいそう土;酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン;ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー;あるいはカーボンブラック;炭酸カルシウム等が挙げられる。なお、塩基性を示す充填剤は、当該シーリング剤のゾル−ゲル硬化を過度に促進し、十分なポットライフが得られないため好ましくない。充填剤の配合量は、硬化物の物性面から、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂の固形残分100重量部に対して、50〜150重量部であることが好ましい。使用するエポキシ樹脂用硬化剤としては室温硬化が可能なポリアミン系硬化剤が好ましい。作業性の点からジオクチルフタレート、ジブチルフタレートなどの可塑剤を用い、建材用シーリングや接着剤の粘度が25℃で1000〜100000mPa・s程度となるよう調整するのがよい。
【0080】
本発明のコーティング剤組成物をプリント基板用接着剤として使用する場合には、例えば特開平5−51571号、特開平6−145628号公報に記載された方法を適用できる。すなわち、当該プリント基板用接着剤は、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂とエポキシ樹脂用硬化剤を必須成分とするが、これら成分以外にポリアミド樹脂、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、イミド系樹脂、ゴム系樹脂などの樹脂成分や、各種無機・有機フィラーなどを適宜に併用して調製できる。また作業性の面から、有機溶剤、好ましくは沸点が150℃未満のものを適宜に配合してもよい。当該プリント基板用接着剤は、半硬化膜を経て銅箔と接着させる必要があるため、これに用いるエポキシ樹脂用硬化剤としては、フェノール樹脂系硬化剤、ポリカルボン酸系硬化剤等の潜在性硬化剤が好ましい。
【0081】
当該プリント基板用接着剤の具体的な使用方法としては、コーティング剤組成物をポリイミドなど絶縁フィルム上に塗布し、上記方法に従って5〜50μm程度の半硬化膜を形成させた後、当該半硬化膜上に銅箔を重ねて、60〜150℃でラミネートし、当該ラミネートを150〜250℃で加熱硬化させることにより、積層板を得ることができる。
【実施例】
【0082】
以下、実施例および比較例をあげて本発明を具体的に説明する。なお、各例中、%は特記なし限り重量基準である。
【0083】
実施例1
攪拌機、分水器、温度計、窒素吹き込み口を備えた反応装置に、固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名「エピコート1001」、エポキシ当量475g/eq、平均繰り返し単位数2.2)700g、および7,8−エポキシ−1−オクタノール(クラレ(株)製、商品名「EOA」)461gを加え、90℃で溶融混合させた。更にポリ(メチルトリメトキシシラン)(多摩化学(株)製、商品名「MTMS-A」、平均繰り返し単位数3.2)1068g、および触媒としてジブチル錫ジラウレート1.53gを加え、窒素気流下にて、100℃で16時間、脱メタノール反応させることにより、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂を得た。
なお、((b)成分の水酸基と(a)成分の水酸基との合計当量)/((c)成分のメトキシ基の当量)(当量比)は0.29であった。本樹脂のH-NMR(CDCl3溶液)からエポキシ環のメチンピーク(3.3ppm付近)が100%保持されていること、及びエポキシ樹脂中の水酸基のピーク(3.85ppm付近)が消失していることを確認できた。得られたメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂のエポキシ当量は440g/eqであった。
【0084】
実施例2
実施例1と同様の反応装置に、エピコート1001を600g、およびEOA354gを加え、90℃で溶融混合させた。更にポリ(テトラメトキシシラン)(多摩化学(株)製、商品名「MS−51」、平均繰り返し単位数4)1165g、および触媒としてジブチル錫ジラウレート0.58gを加え、窒素気流下にて、100℃で32時間、脱メタノール反応させることにより、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂を得た。
なお、((b)成分の水酸基と(a)成分の水酸基との合計当量)/((c)成分のメトキシ基の当量)(当量比)は0.30であった。本樹脂のH-NMR(CDCl3溶液)からエポキシ環のメチンピーク(3.3ppm付近)が100%保持されていること、及びエポキシ樹脂中の水酸基のピーク(3.85ppm付近)が消失していることを確認できた。得られたメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂のエポキシ当量は535g/eqであった。
【0085】
実施例3
実施例1と同様の反応装置に、エピコート1001を300g、および液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名「エピコート807」)を667g加え、90℃で溶融混合させた。更にMTMS-Aを580g、EOAを156g、および触媒としてジブチル錫ジラウレートを0.83g加え、窒素気流下にて、100℃で7時間、脱メタノール反応させることにより、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂を得た。
なお、((b)成分の水酸基と(a)成分の水酸基との合計当量)/((c)成分のメトキシ基の当量)(当量比)は0.22であった。本樹脂のH-NMR(CDCl3溶液)からエポキシ環のメチンピーク(3.3ppm付近)が100%保持されていること、及びエポキシ樹脂中の水酸基のピーク(3.85ppm付近)が消失していることを確認できた。得られたメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂のエポキシ当量は285g/eqであった。
【0086】
実施例4
実施例1と同様の反応装置に、ノボラック型エポキシ樹脂(東都化成(株)製、商品名「エポトートYDPN−638P」、エポキシ当量177g/eq、数平均フェノール核体数5.2)615gとビスフェノールA80gとを125℃で溶解させ、開環変性の触媒として、N,N−ジメチルベンジルアミン0.2gを加え、4時間反応させることによって、水酸基含有エポキシ樹脂(以下、開環変性樹脂a−1という)であるビスフェノール変性ノボラック型エポキシ樹脂を得た。さらにここにMシリケート51を630g、メチルエチルケトン990g、EOA195gと触媒としてジブチル錫ジラウレート1gを加え、窒素気流下にて、80℃で5時間、脱メタノール反応させることによって、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂を得た。
なお、((b)成分の水酸基と開環変性樹脂(a−1)の水酸基との合計当量)/((c)成分のメトキシ基の当量)(当量比)は=0.17、EOAの重量/開環変性樹脂の重量=0.27であった。得られた樹脂のエポキシ当量は630g/eqであった。
【0087】
実施例5
実施例1と同様の反応装置に、エポトートYDPN−638Pを680gとビスフェノールA90gとを125℃で溶解させ、開環変性の触媒として、N,N−ジメチルベンジルアミン0.1gを加え、4時間反応させることによって、開環変性樹脂a−1を得た。さらにここにMTMS−Aを505g、メチルエチルケトン1150g、EOA146gと触媒としてジブチル錫ジラウレート2gを加え、窒素気流下にて、80℃で5時間、脱メタノール反応させることによって、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂を得た。
なお、((b)成分水酸基と開環変性樹脂(a−1)の水酸基との合計当量)/(c)成分のメトキシ基の当量(当量比)は=0.26、EOAの重量/開環変性樹脂の重量=0.19であった。得られた樹脂のエポキシ当量は630g/eqであった。
【0088】
比較例1
エピコート1001をそのまま用いた。
【0089】
比較例2
エポトートYDPN−638Pをそのまま用いた。
【0090】
比較例3
実施例1と同様の反応装置に、エピコート1001を922g、およびエピコート828を2335g加え、90℃で溶融混合させた。更にMTMS−Aを1783g、および触媒としてジブチル錫ジラウレートを2.55g加え、窒素気流下にて、100℃で15時間、脱メタノール反応させることにより、アルコキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂を得た。
なお、((a)成分の水酸基の当量)/((c)成分のメトキシ基の当量)(当量比)は0.10であった。本樹脂のH-NMR(CDCl3溶液)からエポキシ環のメチンピーク(3.3ppm付近)が100%保持されていること、及びエポキシ樹脂中の水酸基のピーク(3.85ppm付近)が消失していることを確認できた。得られたメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂のエポキシ当量は340g/eqであった。
【0091】
比較例4
実施例1と同様の反応装置に、エピコート1001を1193g、およびエピコート828を1998g加え、90℃で溶融混合させた。更にMS−51を2559g、および触媒としてジブチル錫ジラウレートを1.19g加え、窒素気流下にて、90℃で10時間、脱メタノール反応させることにより、アルコキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂を得た。
なお、((a)成分の水酸基の当量)/((c)成分のメトキシ基の当量)(当量比)は0.06であった。本樹脂のH-NMR(CDCl3溶液)からエポキシ環のメチンピーク(3.3ppm付近)が100%保持されていること、及びエポキシ樹脂中の水酸基のピーク(3.85ppm付近)が消失していることを確認できた。得られたメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂のエポキシ当量は425g/eqであった。
【0092】
比較例5
エピコート1001をメチルエチルケトンで希釈し、MTMS-Aをエピコート1001と同量加え、エポキシ樹脂溶液とした。
【0093】
比較例6
エポトートYDPN−638Pをメチルエチルケトンで希釈し、MS−51をエピコート1001と同量加え、エポキシ樹脂溶液とした。
【0094】
比較例7
実施例1と同様の反応装置に、エピコート1001を922g、エピコート828を2335g加え、90℃で溶融混合させた。更にMTMS-Aを1783g、グリシドールを246g、および触媒としてジブチル錫ジラウレートを2.55g加え、窒素気流下にて、100℃で15時間、脱メタノール反応させることにより、アルコキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂を得た。
なお、((b)成分の水酸基と(a)成分の水酸基との合計当量)/((c)成分のメトキシ基の当量)(当量比)は0.22であった。本樹脂のH-NMR(CDCl3溶液)からエポキシ環のメチンピーク(3.3ppm付近)が100%保持されていること、及びエポキシ樹脂中の水酸基のピーク(3.85ppm付近)が消失していることを確認できた。得られたアルコキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂のエポキシ当量は285g/eqであった。
【0095】
比較例8
実施例1と同様の反応装置に、エピコート1001を1193g、およびエピコート828を1998g加え、90℃で溶融混合させた。更にMS−51を2559g、グリシドールを571g、および触媒としてジブチル錫ジラウレートを1.19g加え、窒素気流下にて、90℃で10時間、脱メタノール反応させることにより、アルコキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂を得た。
なお、((b)成分の水酸基と(a)成分の水酸基との合計当量)/((c)成分のメトキシ基の当量)(当量比)0.20であった。本樹脂のH-NMR(CDCl3溶液)からエポキシ環のメチンピーク(3.3ppm付近)が100%保持されていること、及びエポキシ樹脂中の水酸基のピーク(3.85ppm付近)が消失していることを確認できた。得られたアルコキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂のエポキシ当量は285g/eqであった。
【0096】
実施例6〜8
実施例1〜3で得られた各樹脂をメチルエチルケトンで希釈し、フェノールノボラック樹脂(荒川化学工業(株)製、商品名「タマノル759」、フェノール当量106g/eq)のメチルエチルケトン50%溶液を、フェノールノボラック樹脂のフェノール当量/樹脂溶液中のエポキシ基の当量=0.8になるように加え、さらに2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成(株)製、商品名「2E4MZ」)を各樹脂の0.1%加え、各エポキシ樹脂組成物を調製した。
【0097】
実施例9、10
実施例4、5で得られた各樹脂にタマノル759のメチルエチルケトン50%溶液を、フェノールノボラック樹脂のフェノール当量/樹脂溶液中のエポキシ基の当量=0.8になるように加え、さらに2E4MZを各樹脂の0.1%加え、各エポキシ樹脂組成物を調製した。
【0098】
実施例11〜13
実施例1〜3で得られた樹脂をメチルエチルケトンで希釈し、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(新日本理化(株)製、商品名「リカシッドMH−700」、酸無水物当量164g/eq)を酸無水物当量/樹脂溶液中のエポキシ基の当量=1.0になるように加え、さらに2E4MZを各樹脂の0.1%加え、各エポキシ樹脂組成物を調製した。
【0099】
実施例14、15
実施例4、5で得られた樹脂にリカシッドMH−700を酸無水物当量/樹脂溶液中のエポキシ基の当量=1.0になるように加え、さらに2E4MZを各樹脂の0.1%加え、各エポキシ樹脂組成物を調製した。
【0100】
実施例16、17
実施例2、3で得られた樹脂をメチルエチルケトンで希釈し、ケチミン化合物(油化シェルエポキシ(株)製、商品名「エピキュアH30」、活性水素当量107g/eq)を、ケチミン化合物の活性水素当量/樹脂溶液中のエポキシ基の当量=1.0になるように加え、コーティング組成物を調製した。
【0101】
実施例18
実施例3で得られた樹脂をメチルエチルケトンで希釈し、ジシアンジアミドを、ジシアンジアミドの活性水素当量/樹脂溶液中のエポキシ基の当量=0.8になるように加え、エポキシ樹脂組成物を調製した。
【0102】
実施例19、20
実施例2、3で得られた樹脂をメチルエチルケトンで希釈し、オルソクレゾールノボラック樹脂(フェノール当量120g/eq)のメチルエチルケトン50%溶液を、オルソクレゾールノボラック樹脂のフェノール当量/樹脂溶液中のエポキシ基の当量=0.8になるように加え、さらに2E4MZを各樹脂の0.1%加え、各エポキシ樹脂組成物を調製した。
【0103】
実施例21、22
実施例2、3で得られた樹脂をメチルエチルケトンで希釈し、2E4MZを各樹脂の2%加え、各エポキシ樹脂組成物を調製した。
【0104】
比較例9、10
比較例1、2で得られた各樹脂をメチルエチルケトンで希釈し、タマノル759のメチルエチルケトン50%溶液を、フェノールノボラック樹脂のフェノール当量/樹脂溶液中のエポキシ基の当量=0.8になるように加え、さらに2E4MZを各樹脂の0.1%加え、各エポキシ樹脂組成物を調製した。
【0105】
比較例11、12
比較例1、2で得られた各樹脂をメチルエチルケトンで希釈し、リカシッドMH−700を酸無水物当量/樹脂溶液中のエポキシ基の当量=1.0になるように加え、さらに2E4MZを各樹脂の0.1%加え、各エポキシ樹脂組成物を調製した。
【0106】
比較例13、14
比較例5、6で得られた各樹脂にリカシッドMH−700を酸無水物当量/樹脂溶液中のエポキシ基の当量=1.0になるように加え、さらに2E4MZを各樹脂の0.1%加え、各エポキシ樹脂組成物を調製した。
【0107】
比較例15
比較例8で得られた樹脂をメチルエチルケトンで希釈しタマノル759のメチルエチルケトン50%溶液を、フェノールノボラック樹脂のフェノール当量/樹脂溶液中のエポキシ基の当量=0.8になるように加え、さらに2E4MZを各樹脂の0.1%加え、各エポキシ樹脂組成物を調製した。
【0108】
比較例16
比較例7で得られた樹脂をメチルエチルケトンで希釈し、リカシッドMH−700を酸無水物当量/樹脂溶液中のエポキシ基の当量=1.0になるように加え、さらに2E4MZを各樹脂の0.1%加え、各エポキシ樹脂組成物を調製した。
【0109】
実施例で得られた各メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂および、比較例で得られた各エポキシ樹脂および、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂を50℃にて7日間保管した際の粘度安定性を評価した。結果を表1に示す。
【0110】
○:粘度上昇が20%以下である。
△:粘度上昇が20%〜50%である。
×:粘度上昇が50%以上である。
【0111】
【表1】

【0112】
表1からも明らかなように、(b)成分を含まない比較例3、4では50℃保管によりゲル化を起こし粘度安定性が悪いが、各実施例により得られるメトキシ含有シラン変性エポキシ樹脂は粘度安定性がよい。
【0113】
実施例及び比較例で得られた各樹脂組成物をそれぞれ2g、アルミ製の容器(φ50mm×深さ20mm)に注ぎ、100℃で1時間、150℃で2時間、硬化を行った。得られた硬化物の状態(気泡、収縮の度合い、外観)を以下の基準で評価した。結果を表2に示す。
【0114】
(気泡の評価)
○:硬化物中に気泡がない。
△:硬化物中に気泡が5つ以上存在する。
×:硬化物中に気泡が5つ以上存在する。
【0115】
(収縮評価)
○:硬化物にクラックがない。
△:硬化物にクラックが存在する。
×:硬化物に多数の割れがある。
【0116】
(外観評価)
○:透明。
△:曇りがある。
×:白化している。
【0117】
(透明性)
○:ヘーズ0.3以下である。
△:ヘーズ0.3を超えて1.0未満である。
×:ヘーズ1.0以上である。
【0118】
【表2】

【0119】
表2から、各実施例のエポキシ樹脂組成物は、いずれも透明な硬化フィルム(膜厚約0.4mm)を作成することができたが、比較例13および14のエポキシ樹脂組成物では、エポキシ樹脂とシリカの相分離によって白化しており、非常に脆いものであった。また、各比較例のエポキシ樹脂組成物は、いずれも淡黄色に変色してヘーズが悪化していたが、各実施例エポキシ樹脂組成物は、無色透明な硬化フィルムを作成することができた。
【0120】
(密着性)
実施例及び比較例で得られた各樹脂組成物をそれぞれ#20のバーコーターを用いて各基材に塗布し、100℃で1時間、150℃で2時間、硬化を行った。得られたコーティング膜の鉛筆硬度および、碁盤目剥離試験による密着性を評価した。碁盤目剥離試験の評価は以下の基準で行った。
◎:100/100
○:90〜99/100
△:80〜89/100
×:〜79/100
結果を表3に示す。
【0121】
【表3】

【0122】
(1)ガラス板(JIS R3202−85)
(2)モルタル(JIS R5201−92)
(3)アルミ板(JIS H4000 A1050P)
表3からも明らかなように、縮合反応により得られるメトキシ含有シラン変性エポキシ樹脂は、塗膜硬度が硬く、かつ無機基材や非鉄金属への密着性、耐熱性が向上する。
【0123】
(耐熱性)
実施例6、7、9および比較例9、10で得られた各樹脂組成物をそれぞれ2g、アルミ製の容器(φ50mm×深さ20mm)に注ぎ、100℃で1時間、150℃で2時間、硬化を行った。得られた硬化フィルムを5mm×25mmにカットし、粘弾性測定器(レオロジ社製、商品名「DVE−V4」、測定条件振幅1μm、振動数10Hz、スロープ3℃/分)を用いて動的貯蔵弾性率E’を測定して、耐熱性を評価した。測定結果を図1、図2に示す。
【0124】
図1から明らかなように、比較例9では、硬化フィルム(エポキシ樹脂硬化物)は90℃付近で貯蔵弾性率が大幅に低下している。これに対し、実施例6、7は比較例9と比べて貯蔵弾性率の低下が少なくなり、より耐熱性に優れていると認められる。
【0125】
また、図2から明らかなように、比較例10では、硬化フィルム(エポキシ樹脂硬化物)は100℃付近で貯蔵弾性率が大幅に低下している。これに対し、実施例9は比較例10と比べて貯蔵弾性率の低下が少なくなり、より耐熱性に優れていると認められる。
【0126】
(熱重量損失)
実施例6、7および比較例9で得られた硬化フィルムを用いて、示差熱・熱重量同時測定装置(セイコーインスツルメンス(株)製、商品名「TG/DTA220」、測定条件:スロープ10℃/分)で熱重量損失を測定した。結果を表4に示す。
【0127】
【表4】

【0128】
表4から明らかなように、実施例6、7は比較例9比べて5%重量損失時の温度が十分に高く、耐熱分解性に優れていると認められる。
【0129】
(耐水性)
実施例6、8および比較例9、15で得られた各樹脂組成物をそれぞれ2g、アルミ製の容器(φ50mm×深さ20mm)に注ぎ、100℃で1時間、150℃で2時間、硬化を行った。得られた硬化フィルムを50℃で24時間乾燥を行った後、計量し、ついで室温で純水に24時間浸し吸水率を測定した。結果を表5に示す。
【0130】
【表5】

表5から明らかなように、実施例6、8は比較例9、15と比べて吸水率が低く、耐水性に優れていると認められる。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】実施例6、7および比較例9で得られた硬化フィルムの動的(引っ張り)粘弾性の評価結果である。
【図2】実施例9および比較例10で得られた硬化フィルムの動的(引っ張り)粘弾性の評価結果である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基含有エポキシ樹脂(a)、一般式(1):
【化1】

(式中、Xは炭素数4〜10のアルキレン基を表す。)で表されるエポキシ化合物(b)(但し、(a)成分を除く)、およびメトキシシラン部分縮合物(c)を脱メタノール縮合反応させて得られるメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂。
【請求項2】
水酸基含有エポキシ樹脂(a)が、ビスフェノール型エポキシ樹脂および/またはノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ基の一部を開環変性して得られる水酸基含有エポキシ樹脂である請求項1記載のメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂。
【請求項3】
請求項1または2に記載のメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂およびエポキシ樹脂用硬化剤を含有することを特徴とするメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
エポキシ樹脂用硬化剤がフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ジシアンジアミド、イミダゾール類および酸無水物類からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項3記載のメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
水酸基含有エポキシ樹脂(a)の水酸基とエポキシ化合物(b)の水酸基との合計当量/アルコキシシシラン部分縮合物(c)のアルコキシ基の当量(当量比)が、0.1〜0.6である請求項3または4に記載の記載の樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1もしくは2に記載のメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂または請求項3〜5のいずれかに記載のメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂組成物を硬化させてなることを特徴とする樹脂硬化物。
【請求項7】
請求項1もしくは2に記載のメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂または請求項3〜5のいずれかに記載のメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂組成物を室温〜250℃で硬化させてなる樹脂硬化物の製造方法。
【請求項8】
請求項1もしくは2に記載のメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂または請求項3〜5のいずれかに記載のメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂組成物を40〜150℃でゾル−ゲル硬化させて半硬化物とした後、当該半硬化物を成形加工し、ついで150〜250℃で完全硬化させることにより得られる樹脂硬化物。
【請求項9】
請求項1もしくは2に記載のメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂または請求項3〜5のいずれかに記載のメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂組成物を含有する電気絶縁用樹脂組成物。
【請求項10】
さらにシラン変性していないエポキシ樹脂を含有する請求項9に記載の電気絶縁用樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1もしくは2に記載のメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂または請求項3〜5のいずれかに記載のメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂組成物を含有するコーティング剤組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−143789(P2006−143789A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−332598(P2004−332598)
【出願日】平成16年11月17日(2004.11.17)
【出願人】(000168414)荒川化学工業株式会社 (301)
【Fターム(参考)】