説明

メラニン産生抑制剤及び美白剤

【課題】メラニン産生抑制剤並びに美白剤を提供する。
【解決手段】アセチレン基を有するアミド化合物を含有するメラニン産生抑制剤および美白剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メラニン産生抑制剤及び美白剤に関する。
【背景技術】
【0002】
大気汚染やオゾン層の破壊により表皮に届く紫外線量は年々増加する傾向にあり、それに伴い、紫外線による肌のシミ、ソバカス、色黒などの肌悩みが大きくなっている。紫外線により、皮膚内に存在するチロシンがチロシナーゼ酵素の働きにより酸化されてメラニン色素が産生され、過剰に産生されるとシミ、ソバカス、色黒などの肌悩みとなる。このメラニン色素の産生を抑制し、シミ、ソバカス、色黒を予防する方法として従来よりアルブチンを配合した皮膚外用剤(特許文献1:特開昭60−16906号公報)、L-アスコルビン酸及びその誘導体であるL-アスコルビン酸のグルコース配糖体を配合した皮膚化粧料(特許文献2:特開平4−182412号公報)が提案されている。アルブチンを配合した化粧料(特許文献3:特開2009−67691号公報)や、L-アスコルビン酸及びその誘導体であるL-アスコルビン酸のグルコース配糖体を配合した美白剤は、美白効果が十分でなかったり、美白効果を示す成分を、美白効果を認める濃度に配合すると安全性に問題を生じることがあった。
【0003】
また、Undeca-2,4-diene-8,10-diynoic acid isobutyl-amideはフェーズ2タンパク産生促進などが知られているが、美白やメラニン生成抑制活性については知られていない(特許文献4:国際公開第2010/003238号)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−016906号公報
【特許文献2】特開平04−182412号公報
【特許文献3】特願2009−67691号公報
【特許文献4】国際公開第2010/003238号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、安全で、かつ有用なメラニン産生抑制剤および美白剤の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために研究を重ねた結果、下記のメラニン産生抑制剤、及び美白剤が有効であるに至った。
1.タラゴン抽出物を有効成分とするメラニン産生抑制剤。
2.タラゴン抽出物を含有する美白剤。
3.下記の化学式1で示されるアミド化合物を有効成分とするメラニン産生抑制剤。
【化1】

(化学式1)
式中、R,R2は、それぞれ独立に水素原子または置換されていても良いアルキル基、あるいはR1,R2は一緒になって環を形成してもよい基である。
4.化学式1で示される化合物を含有する美白剤。
5.下記の化学式2で示されるアミド化合物を有効成分とするメラニン産生抑制剤。
【化2】

(化学式2)
6.化学式2で示されるアミド化合物を含む美白剤。
7.下記の化学式3で示されるアミド化合物を有効成分とするメラニン産生抑制剤。
【化3】

(化学式3)
8.化学式3で示されるアミド化合物を含む美白剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明は上記のメラニン産生抑制剤及び美白剤とすることにより、従来よりも強いメラニン産生抑制剤及び美白剤等が得られる。さらに、そのメラニン産生抑制剤及び美白剤等は活性濃度下で安全性がより高いものであるという効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】化合物1及び2を単離するためのスキーム
【図2】本発明のアセチレン基を有するアミド化合物と陽性対照の化合物によるメラニン産生量を比較したグラフ
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明の実施形態を更に詳細に説明する。
本発明におけるタラゴン抽出物に含有されるアセチレン基を有するアミド化合物は、次の化学式(1)で示される化合物であり、好ましくは次の化学式(2)、化学式(3)で示される化合物1及び2である。
【化1】

(化学式1)
式中、R,R2は、それぞれ独立に水素原子または置換されていても良いアルキル基、あるいはR1,R2は一緒になって環を形成してもよい基である。
【化2】

化学式(2)
【化3】

(化学式3)
【0010】
具体的には、化粧料等の人体に直接適用するメラニン産生抑制能を有する化合物を探索する目的で、タラゴン等の植物抽出物から、メラニン産生抑制能を有することが期待される多数の化合物を、メラニン産生能を測定する装置に通してスクリーニングし、メラニン産生抑制能が高い化合物を選定した。さらに人体に直接適用できる安全性を確認するために、安全性を確認する試験を行ない、メラニン産生抑制能が高く、かつ活性濃度において毒性を示さない化合物を探索した。
その結果、多数の化合物の中からメラニン産生抑制能が公知の化合物よりも優れ、安全性を備える化合物を特定し、この化合物がアセチレン基を有するアミド化合物である。
このように、アセチレン基を有するアミド化合物はタラゴン(Artemisia dracunculus)等の植物に含まれており、それら植物抽出物から単離精製して得ることができる。
【0011】
本発明のメラニン産生抑制剤は、美白作用を発現させるための使用にあたって、各種美白剤用の基剤や添加剤等と混合して、本発明の美白剤とすることができる。
【0012】
本発明の美白剤は、種々の公知の形態及び用途、例えば美白用乳化化粧料、美白用クリーム、美白用化粧水、美白用油性化粧料、美白用パック剤、美白用ファンデーション、美白用オイル等として用いることができる。また、本発明の美白剤は、美白用皮膚外用医薬、美白用医薬部外品、美白用化粧料、美白用洗顔料、石鹸、制汗剤、入浴剤等を含む。また、本発明の美白剤は、直接皮膚に適用するものに限らず、美白用の経口剤、注射剤、経口医薬としても良い。
【0013】
本発明のアセチレン基を有するアミド化合物を含有するメラニン産生抑制剤及び美白剤は通常使用される製剤化方法にしたがって、溶液上、ペースト状、固形状、粉粒体状等の任意の形態に製造することができる。
本発明のメラニン産生抑制剤及び美白剤には、植物油のような油脂類、高級脂肪酸、高級アルコール、シリコーン、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、防腐剤、糖類、金属イオン封鎖剤、水溶性高分子のような高分子、増粘剤、粉体成分、紫外線吸収剤、紫外線遮断剤、ヒアルロン酸のような保湿剤、香料、pH調整剤等を含有させることができる。ビタミン類、皮膚賦活剤、血行促進剤、常在菌コントロール剤、活性酸素消去剤、抗炎症剤、他の美白剤、殺菌剤等の他の薬効成分、生理活性成分を含有させることもできる。
【0014】
油脂類としては、例えば、ツバキ油、月見草油、マカデミアナッツ油、オリーブ油、ナタネ油、トウモロコシ油、ゴマ油、ホホバ油、胚芽油、小麦胚芽油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、等の液体油脂、カカオ脂、ヤシ油、硬化ヤシ油、パーム油、パーム核油、モクロウ、モクロウ核油、硬化油、硬化ヒマシ油等の固体油脂、ミツロウ、キャンデリラロウ、綿ロウ、ヌカロウ、ラノリン、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ等のロウ類、流動パラフィン、スクワレン、スクワラン、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。
【0015】
高級脂肪酸として、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)等が挙げられる。
【0016】
高級アルコールとして、例えば、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール等の直鎖アルコール、モノステアリルグリセリンエーテル、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、オクチルドデカノール等の分枝鎖アルコール等が挙げられる。
【0017】
シリコーンとして、例えば、鎖状ポリシロキサンのジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等、環状ポリシロキサンのデカメチルポリシロキサン等が挙げられる。
【0018】
アニオン界面活性剤として、例えば、ラウリン酸ナトリウム等の脂肪酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の高級アルキル硫酸エステル塩、POEラウリル硫酸トリエタノールアミン等のアルキルエーテル硫酸エステル塩、N−アシルサルコシン酸、スルホコハク酸塩、N−アシルアミノ酸塩等が挙げられる。
【0019】
カチオン界面活性剤として、例えば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム等のアルキルトリメチルアンモニウム塩、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。
【0020】
両性界面活性剤として、例えば、アルキルベタイン、アミドベタイン等のベタイン系界面活性剤等が挙げられる。
【0021】
非イオン界面活性剤として、例えば、ソルビタンモノオレエート等のソルビタン脂肪酸エステル類、硬化ヒマシ油誘導体が挙げられる。
【0022】
防腐剤として、例えば、メチルパラベン、エチルパラベン等を挙げることができる。
【0023】
金属イオン封鎖剤として、例えば、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、エデト酸、エデト酸ナトリウム塩等のエデト酸塩を挙げることができる。
【0024】
高分子として、例えば、アラビアゴム、トラガカントガム、ガラクタン、グアーガム、カラギーナン、ペクチン、寒天、クインスシード、デキストラン、プルラン、カルボキシメチルデンプン、コラーゲン、カゼイン、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、アルギン酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー(CARBOPOL等)等のビニル系高分子、ベントナイト等を挙げることができる。
【0025】
増粘剤として、例えば、カラギーナン、トラガカントガム、クインスシード、カゼイン、デキストリン、ゼラチン、CMC、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシビニルポリマー、グアーガム、キサンタンガム等を挙げることができる。
【0026】
粉体成分としては、例えば、タルク、カオリン、雲母、シリカ、ゼオライト、ポリエチレン粉末、ポリスチレン粉末、セルロース粉末等の体質顔料、無機白色顔料、無機赤色系顔料等の着色顔料、酸化チタンコーテッドマイカ、酸化チタンコーテッドタルク、着色酸化チタンコーテッドマイカ等のパール顔料、赤色201号、赤色202号等の有機顔料を挙げることができる。
【0027】
紫外線吸収剤としては、例えば、パラアミノ安息香酸、サリチル酸フェニル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル、パラメトキシケイ皮酸オクチル、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン等を挙げることができる。
【0028】
紫外線遮断剤として、例えば、酸化チタン、タルク、カルミン、ベントナイト、カオリン、酸化亜鉛等を挙げることができる。
【0029】
保湿剤として、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、キシリトール、マルチトール、マルトース、ソルビトール、ブドウ糖、果糖、ショ糖、乳糖、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、ピロリドンカルボン酸、シクロデキストリン等が挙げられる。
【0030】
薬効成分としては、例えば、ビタミンA油、レチノール等のビタミンA類、リボフラビン等のビタミンB2類、ピリドキシン塩酸塩等のB6類、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸リン酸エステル、L−アスコルビン酸モノパルミチン酸エステル、L−アスコルビン酸ジパルミチン酸エステル、L−アスコルビン酸−2−グルコシド等のビタミンC類、パントテン酸カルシウム等のパントテン酸類、ビタミンD2、コレカルシフェロール等のビタミンD類;α−トコフェロール、酢酸トコフェロール、ニコチン酸DL−α−トコフェロール等のビタミンE類等のビタミン類を挙げることができる。
【0031】
その他に薬効成分として、グルタチオン、ユキノシタ抽出物等の美白剤、ローヤルゼリー、ぶなの木エキス等の皮膚賦活剤、カプサイシン、ジンゲロン、カンタリスチンキ、イクタモール、カフェイン、タンニン酸、γ−オリザノール等の血行促進剤、グリチルリチン酸誘導体、グリチルレチン酸誘導体、アズレン等の消炎剤、アルギニン、セリン、ロイシン、トリプトファン等のアミノ酸類、常在菌コントロール剤のマルトースショ糖縮合物、塩化リゾチーム等を挙げることができる。
【0032】
さらに、カミツレエキス、パセリエキス、ワイン酵母エキス、グレープフルーツエキス、スイカズラエキス、コメエキス、ブドウエキス、ホップエキス、コメヌカエキス、ビワエキス、オウバクエキス、ヨクイニンエキス、センブリエキス、メリロートエキス、バーチエキス、カンゾウエキス、シャクヤクエキス、サボンソウエキス、ヘチマエキス、トウガラシエキス、レモンエキス、ゲンチアナエキス、シソエキス、アロエエキス、ローズマリーエキス、セージエキス、タイムエキス、茶エキス、海藻エキス、キューカンバーエキス、チョウジエキス、ニンジンエキス、マロニエエキス、ハマメリスエキス、クワエキス等の各種抽出物を挙げることができる。
【0033】
美白用の経口剤としては、アセチレン基を有するアミド化合物をそのまま、又は種々の栄養成分を加えて、若しくは飲食品中に含有せしめて、栄養補助食品、機能性食品、健康食品、特定保健用食品又は通常食品の素材として使用できる。例えば、澱粉、乳糖、麦芽糖、植物油脂粉末、カカオ脂末、ステアリン酸などの適当な助剤を添加することができる。
美白用の経口剤としてのアセチレン基を有するアミド化合物の有効投与量は、対象者の年齢、体重、症状、投与経路、投与スケジュール、製剤形態、素材の活性の強さ等により、適宜選択決定されるが、例えば、1日あたり1〜5000mgが好ましく、特に好ましくは10〜1000mgである。これを1日に数回に分けて投与しても良い。
【0034】
美白剤へのアセチレン基を有するアミド化合物の配合量としては、0.00001〜80質量%が好ましいが、必ずしもこれに制限されず、0.0001〜80質量%、さらに0.001〜50質量%としてもよい。
【実施例】
【0035】
[アセチレン基を有するアミド化合物の抽出]
タラゴン Artemisia dracunculus(ヨモギ属タラゴン)の全草の乾燥物の分画を図1のスキームに沿って行った。ヒハツの実の乾燥物100gを100%エタノールを用いて抽出し、7.1375gの抽出物を得た(A)。エタノール抽出物を酢酸エチルと水によって液液分配し、酢酸エチル層(B)をヘキサンと90%メタノールで液液分配を行った。90%メタノール層(C)をTSK−GEL G3000Sカラムで分画し、50%エタノール層を逆相C18カラム(Cosmosil75C18−OPN)によって3つのフラクションに分けた。そこから得られたFr.2(D)をHPLC(Sun FireTM C18 OBD TM 10μm 70%MeOH)によってさらに5つの画分に分けた。そこから得られたFr.2(化合物1)およびFr.4(化合物2)がアセチレン基を有するアミド化合物であった。
【0036】
[アセチレン基を有するアミド化合物の同定]
前記Fr.2の化合物1は、MSのデータより230 [M+H]+, 252[M+Na]+,481 [2M+Na]+のピークを観測し、分子量は229であった。前記Fr.4の化合物2はMSのデータより242[M+H]+, 264[M+Na]+,505[2M+Na]+のピークを観測し、分子量は241であった。また、H-NMRと13C-NMRおよびLC/MSによる構造解析をおこなった。化合物1のH-NMRのCDCl中におけるシフトはδ0.91(6H,d,J=7Hz),1.79(2H,m),1.96(1H,s),3.15(2H,dd,J=7,7Hz),5.45(1H,br.s),5.78(1H,d,J=15Hz), 6.03(1H,dt,J=15,7Hz),6.19(1H,dd,J=15,11Hz),7.17(1H,dd,J=15,11Hz)となり、13C-NMRにおけるCDCl中におけるシフトはδ18.8,20.1(2C),28.6,31.2,46.9,65.0,68.2,77.2,123.1,129.7139.1,140.4,166.1となり、参考文献1のシフトと一致したことからUndeca2,4-diene-8,10-diynoic acid isobutyl-amide
を同定した。
化合物2のH-NMRのCDCl中におけるシフトはδ1.60(4H,m),1.66(2H,m),
2.00(1H,s),3.52,3.64(each 2H,m),6.04(1H,m),6.25(1H,dd,J=10,15Hz), 6.33(1H,dd,J=15,7Hz),7.24(1H,dd,J=10,15Hz)となり、13C-NMRにおけるCDCl中におけるシフトはδ18.8,24.6(2C),26.1(2C),31.3,43.0br,47.0br,65.0,
65.4,68.2,77.2,119.9,130.3,138.5,141.9,165.4となり、参考文献2のシフトと一致したことから1‐Piperidin-1y‐l-undeca-2,4-diene−8,10−diyn-1-oneを同定した。
(参考文献)
1.Phyctochemistry. Vol.24 No10. pp.2295-2300.1985
2.Tetrahedron Vo.42.No.10,pp.2707 to 2716,1986
【0037】
[メラニン産生抑制試験]
アセチレン基を有するアミド化合物1、化合物2について、以下の試験によって、メラニン産生抑制活性を測定した。
【0038】
メラニン産生抑制活性は、以下の方法により求めた。化合物1、化合物2、陽性対照としてアルブチンを検体として、それぞれメタノールを用いて10mg/mLに調製した。B16F1細胞をDMEM に10%FBSを添加した培地を用い、4×10cells/mLで200μl播種し、100nMα−MSHおよびメタノールで溶解した検体化合物1、化合物2では終濃度0、1、10、30μg/mL添加し、アルブチンでは0、1、3、10、30、100、300、1000μg/mL添加し、96時間5%CO下で培養した。培養終了後、培養上清を405nmの波長により測定し、検体を培地に溶解したときの405nmの値を差し引き、メラニン量の定量値とした。
メラニン産生量(%)は、[NLE4,D−PHE7]α−MSHのみ処理したときの定量値をA、各濃度で検体を添加したときの定量値をAsとして、次式により求めた。
メラニン産生量(%)=As/A×100
【0039】
結果を表1に示す。各画分の(A)〜(D)の符号は前記[アセチレン基を有するアミド化合物の抽出]の記載による。各検体濃度におけるメラニン産生量の測定値を用いてメラニン産生抑制のEC50(メラニン産生量が50%となるときの培養液中の検体の濃度)を求めた。各検体濃度におけるメラニン産生量の測定値を図2にグラフ化した。
【0040】
[細胞生存率試験(MTT試験)]
細胞毒性は、以下の方法により求めた。化合物1、化合物2、陽性対照としてアルブチンを検体として、それぞれメタノールを用いて10mg/mLに調製した。B16F1細胞をDMEM に10%FBSを添加した培地を用い、4×10cells/mLで200μl播種し、100nMα−MSHおよびメタノールで溶解した検体化合物1、化合物2では終濃度0、1、10、30μg/mL添加し、アルブチンでは0、1、3、10、30、100、300、1000μg/mL添加し、96時間5%CO下で培養した。培養の後、MTT試験法の一般的なプロトコールに従って細胞を処理し、細胞生存率を測定した(図2)。[NLE4,D−PHE7]α−MSHのみ処理したときの細胞生存率を100%として、各試料のIC50を算出した(表1)。細胞生存率(%)は、[NLE4,D−PHE7]α−MSHのみ処理したときの定量値をB、各濃度で試料を添加したときの定量値をBsとして、次式により求めた。
細胞生存率(%)=Bs/B×100
【0041】
[安全係数]
細胞生存率のIC50をメラニン産生抑制率のEC50で割ったものを安全係数とした。安全係数が大きいほど、低い細胞毒性でメラニン産生を抑制することができる。化合部1、化合物2は安全係数が極めて高く、美白剤として優れている。安全係数を表1に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
化合物1、化合部物2を用いた場合のメラニン産生量は、化合物1を10μg/mLとした場合には、20.5%にまで低下し、化合物2を10μg/mLとした場合には36.9%にまで低下した。
一方陽性対照であるアルブチンを使用した場合、3μg/mLまでの濃度ではメラニン産生量が100〜98%とほとんど変化はなく、10μg/mLにまで濃度を上げるとようやく84%と若干メラニン産生量が低下するに留まる。
さらにアルブチンの濃度を30μg/mLと更に高濃度にしてもまだメラニン産生量が41%と、化合物1を10μg/mLの場合よりも高い結果を示した。
アルブチンの濃度を30μg/mL以上にして初めて化合物1,2の濃度が10μg/mLのときと同程度になる。
このような、化合物1、化合物2、アルブチンのメラニン産生量に関する結果によれば、化合物1、化合物2はアルブチンよりもはるかに低濃度で十分なメラニン産生抑制を発揮しその効果のある濃度においては毒性は認められなかった。この結果によれば、化合物1及び2はアルブチンと同程度の安全性で、且つアルブチンよりも優れたメラニン産生抑制作用を発揮することができる。
【0044】
以下に、本発明の処方例を示す。それぞれ常法に従って製造した。
【0045】
処方例1 美白用ローション
成分 配合量(質量%)
1.グリセリン 10
2.1,3-ブチレングリコール 5
3.ブドウ糖 2
4.エタノール 5
5.カルボキシビニルポリマー 0.02
6.グリチルリチン酸ジカリウム 0.1
7.ヒアルロン酸ナトリウム 0.001
8.Undeca2,4-diene-8,10-diynoic acid isobutyl-amide 0.1
9.クエン酸 0.05
10.クエン酸ナトリウム 0.1
11.水酸化カリウム 0.01
12.精製水 残余
【0046】
処方例2 美白用クリーム
成分 配合量(質量%)
1.ステアリルアルコール 6
2.ステアリン酸 2
3.スクワラン 10
4.オクチルドデカノール 5
5.オリーブ油 5
6.1,3-ブチレングリコール 8
7.ポリエチレングリコール1500 4
8.POE(25)セチルアルコールエーテル 3
9.モノステアリン酸グリセリル 2
10.タラゴン抽出物 0.1
11.精製水 残余
【0047】
処方例3 美白用パック
成分 配合量(質量%)
1.ポリビニルアルコール 15
2.カルボキシメチルセルロース 5
3.1,3-ブチレングリコール 5
4.エタノール 12
5.Undeca2,4-diene-8,10-diynoic acid isobutyl-amide 0.05
6.POEオレイルアルコールエーテル 0.5
7.クエン酸 0.02
8.クエン酸ナトリウム 0.04
9.精製水 残余
【0048】
処方例4 美白用錠剤
成分 配合量(質量%)
1.Undeca2,4-diene-8,10-diynoic acid isobutyl-amide 63
2.乳糖 24
3.コーンスターチ 12
4.グアーガム 1
【0049】
処方例5 美白用飲料
成分 配合量(質量%)
1.Undeca2,4-diene-8,10-diynoic acid isobutyl-amide 10
2.果糖ブトウ糖液糖 15
3.クエン酸 10
4.ビタミンC 5
5.香料 1
6.色素 1
7.精製水 残余

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タラゴン抽出物を有効成分とするメラニン産生抑制剤。
【請求項2】
タラゴン抽出物を含有する美白剤。
【請求項3】
下記の化学式1で示されるアミド化合物を有効成分とするメラニン産生抑制剤。
【化1】

(化学式1)
式中、R,R2は、それぞれ独立に水素原子または置換されていても良いアルキル基、あるいはR1,R2は一緒になって環を形成してもよい基である。
【請求項4】
化学式1で示される化合物を含有する美白剤。
【請求項5】
下記の化学式2で示されるアミド化合物を有効成分とするメラニン産生抑制剤。
【化2】

(化学式2)
【請求項6】
化学式2で示されるアミド化合物を含む美白剤。
【請求項7】
下記の化学式3で示されるアミド化合物を有効成分とするメラニン産生抑制剤。
【化3】

(化学式3)
【請求項8】
化学式3で示されるアミド化合物を含む美白剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−102063(P2012−102063A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254171(P2010−254171)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(593106918)株式会社ファンケル (310)
【出願人】(899000079)学校法人慶應義塾 (742)
【Fターム(参考)】