説明

モジュール封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法

【課題】メッキ処理されたリードフレームおよびソルダーレジストとの接着性に優れたモジュール封止用エポキシ樹脂組成物の簡便な製造方法を提供する。
【解決手段】下記A〜F成分を含むモジュール封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法であって、
B成分、D成分およびE成分によりマスターバッチを得る工程、
前記マスターバッチにA成分、C成分およびF成分を添加して、溶融混練物を得る工程、
を含むことを特徴とする、モジュール封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法。
A:エポキシ樹脂
B:フェノール樹脂
C:ビニル基を有するトリアジン化合物とイミダゾール化合物の付加物である、融点が200〜260℃のイミダゾール誘導体
D:C成分以外の硬化促進剤
E:酸価10〜30mgKOH/gのワックス
F:無機質充填剤

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メッキ処理したリードフレームおよびソルダーレジストへの接着性に優れた信頼性の高いモジュール封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高性能化に伴い、複数の電子部品装置や回路基板を有する大型実装基板を、樹脂封止してモジュール化することが行われている。これらモジュールは、マルチチップモジュールと言われている。電子部品装置は、半導体素子、コンデンサ、トランジスタおよびセンサーデバイス等の電子部品を樹脂封止したものであり、回路基板はプリント基板等をソルダーレジストで保護したものであるため、これら大型実装基板を樹脂封止する際には、封止用樹脂組成物と、電子部品装置に用いられるリードフレームや回路基板に用いられるソルダーレジストとの接着性が求められる。
【0003】
リードフレームの材質は、電気特性、放熱特性に優れた銅が主流であるが、銅は酸化されやすく、それにより生じる様々な問題を避けるため、リードフレームにニッケル等のメッキ処理することが多くなってきている。リードフレームをメッキ処理すると、封止用樹脂組成物とリードフレームとの接着性が低下するという問題が生じるため、接着性低下の対策として、ポリスルフィド系シランカップリング剤を用いた封止用樹脂組成物(特許文献1)、フリル基あるいはチオフリル基を含有するフェノール樹脂を用いた封止用樹脂組成物(特許文献2)、イオウ含有エポキシ樹脂を用いた封止用樹脂組成物(特許文献3)等が提案されている。
【特許文献1】特開2008−177377号
【特許文献2】特開2003−64339号
【特許文献3】特開2001−332661号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、これら封止用樹脂組成物は、メッキに対する接着性は向上しても、ソルダーレジストとの接着性が不十分であるという問題があった。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みなされたもので、メッキ処理されたリードフレームおよびソルダーレジストとの接着性に優れたモジュール封止用エポキシ樹脂組成物の簡便な製造方法の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の問題を解決するために、本発明は、下記A〜F成分を含むモジュール封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法であって、
B成分、D成分およびE成分によりマスターバッチを得る工程、
前記マスターバッチにA成分、C成分およびF成分を添加して、溶融混練物を得る工程、
を含むことを特徴としている。
A:エポキシ樹脂
B:フェノール樹脂
C:ビニル基を有するトリアジン化合物とイミダゾール化合物の付加物である、融点が200〜260℃のイミダゾール誘導体
D:C成分以外の硬化促進剤
E:酸価10〜30mgKOH/gのワックス
F:無機質充填剤
【発明の効果】
【0007】
本発明のモジュール封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法により、メッキ処理したリードフレームおよびソルダーレジストへの接着性に優れた信頼性の高いモジュール封止用エポキシ樹脂組成物を簡便かつ歩留まり良く得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
つぎに、本発明の実施の形態について詳しく説明する。
【0009】
本発明の下記A〜F成分を含むモジュール封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法は、
B成分、D成分およびE成分によりマスターバッチを得る工程、
前記マスターバッチにA成分、C成分およびF成分を添加して、溶融混練物を得る工程、
を含むことを特徴としている。
A:エポキシ樹脂
B:フェノール樹脂
C:ビニル基を有するトリアジン化合物とイミダゾール化合物の付加物である、融点が200〜260℃のイミダゾール誘導体
D:C成分以外の硬化促進剤
E:酸価10〜30mgKOH/gのワックス
F:無機質充填剤
【0010】
A成分であるエポキシ樹脂は、特に限定されるものではない。例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂およびフェノキシ樹脂等の各種のエポキシ樹脂を用いることができる。これらエポキシ樹脂は単独で用いてもよいし2種以上併用してもよい。このようなエポキシ樹脂としては、エポキシ樹脂の硬化後の靭性及びエポキシ樹脂の反応性を確保する観点から、エポキシ当量150〜250、軟化点もしくは融点が50〜130℃の常温で固形のものが好ましく、中でも、信頼性の観点から、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂やビフェニル型エポキシ樹脂や低級アルキル基をフェニル環に付加したような吸低湿型のエポキシ樹脂を好適に用いることができる。また、低応力性の観点から、アセタール基を有するエポキシ樹脂も好適に用いることができる。
【0011】
A成分の含有率は、エポキシ樹脂組成物全体に対して5〜20重量%の範囲に設定することが好ましく、10〜15重量%とすることがより好ましい。
【0012】
B成分であるフェノール樹脂は、特に限定されるものではない。例えば、フェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、クレゾールノボラック樹脂およびフェノールアラルキル樹脂等が用いられる。これらフェノール樹脂は単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。そして、A成分との反応性の観点から、水酸基当量が70〜250、軟化点が50〜110℃のものを用いることが好ましく、中でも硬化反応性が高いという観点から、フェノールノボラック樹脂を好適に用いることができる。また、信頼性の観点から、フェノールアラルキル樹脂やビフェニルアラルキル樹脂のような低吸湿性のものも好適に用いることができる。
【0013】
そして、A成分とB成分の配合割合は、硬化反応性という観点から、A成分中のエポキシ基1当量に対して、B成分中の水酸基の合計が0.7〜1.5当量となるように配合することが好ましく、より好ましくは0.9〜1.2当量である。
【0014】
C成分は、ビニル基を有するトリアジン化合物とイミダゾール化合物の付加物である、融点が200〜260℃のイミダゾール誘導体である。イミダゾール誘導体の融点が特定の範囲から外れると、エポキシ樹脂組成物のニッケルメッキに対する接着性が低下する傾向がみられる。
【0015】
C成分を得るために用いるビニル基を有するトリアジン化合物としては、例えば、2,4−ジアミノ−6−ビニル−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ビニル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2,4−ジメチル−6−ビニル−1,3,5−トリアジン、2,4−ジシクロ−6−ビニル−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メタクリロルオキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(フラニル−2)ビニル]−1,3,5−トリアジン、2−ビニル−4−パーフルオロキシル−6−フェニル−1,3,5−トリアジン等が挙げられるが、接着性の観点から、アミノ基を有するものが好ましい。また、イミダゾール化合物としては、分子量が68〜170のものを用いると、C成分が容易に得られる。具体的には、2−メチル−1H−イミダゾール、2−エチル−4−メチル−1H−イミダゾール、2,2’−ビ(1H−イミダゾール)、2,5−ジエチル−1H−イミダゾール、2−フルオロ−1H−イミダゾール、4−アリル−1H−イミダゾール、2−ブチル−4メチル−1H−イミダゾール、2−ベンジル−1H−イミダゾール、5−ブチル−2−エチル−1H−イミダゾール等が挙げられるが、エポキシ樹脂組成物のニッケルメッキおよびソルダーレジストに対する接着性の観点から、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールが好ましい。C成分は、ビニル基を有するトリアジン化合物とイミダゾール化合物を常法の付加反応することによって得ることができるが、2MZ−A、2E4MZ−A(以上、四国化成工業社製)等が市販品として入手可能である。
【0016】
C成分は、通常粉末であり、エポキシ樹脂組成物の流動性の観点から、平均粒径が0.1〜30μmの範囲のものが好ましく、0.3〜15μmの範囲のものがより好ましく、0.5〜5μmの範囲のものが特に好ましい。なお、平均粒径は、例えば、母集団から任意に抽出される試料を用い、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて測定することにより導き出すことができる。
【0017】
C成分の含有率は、エポキシ樹脂組成物のニッケルメッキおよびソルダーレジストに対する接着性の観点から、エポキシ樹脂組成物全体の0.03〜0.15重量%が好ましく、0.05〜0.1重量%がより好ましい。
【0018】
D成分は、C成分以外の硬化促進剤であり、特に制限されるものではない。例えば、アミン化合物、ホスフィン化合物、ホスホニウム化合物およびイミダゾール化合物が挙げられる。アミン化合物としては、1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ〔4.3.0〕ノネン−5、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ベンジルジメチルアミン、トリエチルアミンおよびベンジルジメチルアミン等が挙げられ、ホスフィン化合物としては、トリフェニルホスフィン、ブチルジフェニルフォスフィン等が挙げられ、ホスホニウム化合物としては、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム、テトラキス(3−フルオロフェニル)ボレート、テトラ(m−トリル)ボレート等が挙げられ、イミダゾール化合物としては、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール等が挙げられる。中でも樹脂組成物の硬化性の観点からアミン化合物が好ましく、第3級アミン化合物がより好ましい。
【0019】
E成分は、酸価10〜30mgKOH/gのワックスである。酸価が特定の範囲内にないと、エポキシ樹脂組成物のニッケルメッキやソルダーレジストに対する接着性が低下する傾向がみられる。E成分は、酸価が特定の範囲内となるワックスであれば特に制限されるものではない。例えば、酸化ポリエチレン等の酸化ポリオレフィンワックス、高級脂肪酸およびグリコール類をエステル化したエステル系ワックス、カルナバワックス等の天然ワックス、モンタン酸ワックス等の鉱物ワックス等のうち、特定の酸価を有するものが挙げられるが、中でもエポキシ樹脂組成物の金型離型性の観点から酸化ポリオレフィンワックスおよびエステル系ワックスが好ましく、酸化ポリオレフィンワックスおよびエステル系ワックスを併用することがより好ましい。
【0020】
なお、酸価は、ASTM D1386に準じて測定することにより導き出すことができる。
【0021】
E成分の含有率は、エポキシ樹脂組成物全体に対して0.1〜0.7重量%が好ましく、0.4〜0.6重量%がより好ましい。E成分の含有率が0.1重量%未満では金型離型性が低下する傾向がみられ、一方、0.7重量%を超えるとエポキシ樹脂組成物のニッケルメッキやソルダーレジストに対する接着性が低下する傾向がみられる。
【0022】
F成分は、特に限定されるものではなく、従来公知の各種無機質充填剤を用いることができる。例えば、石英ガラス、タルク、シリカ(溶融シリカや結晶性シリカ等)、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化珪素等の粉末が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。中でも、エポキシ樹脂組成物の硬化体の熱線膨張係数が低減することにより内部応力を低減し、その結果、樹脂封止後の基板の反りを抑制できるという点から、シリカ粉末を用いることが好ましく、シリカ粉末の中でも溶融シリカ粉末を用いることが、高充填性および高流動性という点から特に好ましい。溶融シリカ粉末としては、球状溶融シリカ粉末、破砕溶融シリカ粉末が挙げられるが、流動性という観点から、球状溶融シリカ粉末を用いることが特に好ましい。中でも、平均粒径が0.1〜30μmの範囲のものを用いることが好ましく、0.3〜15μmの範囲のものを用いることが特に好ましい。なお、平均粒径は、C成分と同様に測定することにより導き出すことができる。
【0023】
F成分の含有率は、エポキシ樹脂組成物の硬化性の観点から、エポキシ樹脂組成物全体の65〜90重量%であることが好ましく、70〜85重量%がより好ましく、75〜80重量%であることが特に好ましい。
【0024】
なお、本発明において、上記エポキシ樹脂組成物には、上記成分以外にも必要に応じて、難燃剤、カーボンブラックをはじめとする顔料等、他の添加剤を適宜配合することができる。
【0025】
本発明のモジュール封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法は、
B成分、D成分およびE成分によりマスターバッチを得る工程、
前記マスターバッチにA成分、C成分およびF成分を添加して、溶融混練物を得る工程、
を含むことを特徴としている。
【0026】
まず、B成分、D成分およびE成分によりマスターバッチを得る。例えば、B成分、D成分およびE成分を万能反応釜等の装置を用いて溶融混合することにより、マスターバッチが得られる。その際の混合温度は165〜185℃が好ましい。混合温度が165℃未満では分散不良の傾向がみられ、185℃を超えると過剰反応が起こる傾向がみられる。
【0027】
ついで、得られたマスターバッチにA成分、C成分、F成分および必要に応じて顔料等の他の添加剤を加えて、溶融混練物を得る。例えば、マスターバッチにA成分、C成分、F成分および顔料等の他の添加剤を添加し、ミキシングロール等の装置を用いて溶融混練することにより、溶融混練物が得られる。その際の混練温度は80〜130℃が好ましい。混練温度が80℃未満では、分散不良の傾向がみられ、130℃を超えると、過剰反応が起こる傾向がみられる。
【0028】
得られた溶融混練物は、冷却固化して公知の手段により粉砕して打錠するとよいし、打錠工程を経ずに顆粒状態のパウダーとしてもよい。また、溶融混練物を圧延してシート状にしてもよい。
【0029】
本発明の製造方法により、メッキ処理したリードフレームおよびソルダーレジストへの接着性に優れた信頼性の高いモジュール封止用エポキシ樹脂組成物を簡便かつ歩留まり良く得ることができる。
【0030】
このようにして得られたエポキシ樹脂組成物を用いたモジュールの封止は、特に制限するものではなく、通常のトランスファー成形、圧縮成形、シート封止等の公知のモールド方法により行うことができる。
【実施例】
【0031】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0032】
まず、下記に示す各成分を準備した。
〔エポキシ樹脂〕
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(東都化成社製、KI−3000。エポキシ当量105、軟化点70℃)
〔フェノール樹脂〕
フェノールノボラック樹脂(荒川化学社製、GS−180。水酸基当量109、軟化点70℃)
〔イミダゾール誘導体a〕
2−メチルイミダゾール(分子量82.1)と2,4−ジアミノ−6−ビニル−1,3,5−トリアジンの付加物(四国化成工業社製、2MZ−A。融点247〜251℃)
〔イミダゾール誘導体b〕
2−エチル−4−メチルイミダゾール(分子量110.2)と2,4−ジアミノ−6−ビニル−1,3,5−トリアジンの付加物(四国化成工業社製、2E4MZ−A。融点215〜225℃)
〔イミダゾール誘導体c〕本発明外
2−ウンデシルイミダゾール(分子量222.4)と2,4−ジアミノ−6−ビニル−1,3,5−トリアジンの付加物(四国化成工業社製、C11Z−A。融点187〜195℃)
〔イミダゾール誘導体d〕本発明外
2−メチルイミダゾールと2,4−ジアミノ−6−ビニル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物との付加物(四国化成工業社製、2MA−OK。融点260℃超(分解))
〔硬化促進剤a〕
1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデセン−7(サンアプロ社製、DBU(登録商標))
〔硬化促進剤b〕
ジメチルベンジルアミン
〔ワックスa〕
カルナバワックス(日興ファイン社製、カルナバワックス。酸価16mgKOH/g)
〔ワックスb〕
酸化ポリエチレンワックス(クラリアント社製、Licowax(登録商標)PED−521。酸価18mgKOH/g)
〔ワックスc〕本発明外
モンタン酸エステルワックス(クラリアント社製、Licowax(登録商標)F。酸価8mgKOH/g)
〔ワックスd〕本発明外
酸化ポリプロピレンワックス(クラリアント社製、Licomont(登録商標)AR504。酸価40mgKOH/g)
〔無機質充填剤〕
球状溶融シリカ粉末(電気化学工業社製、FB−940。平均粒径13.1μm)
〔エポキシ樹脂組成物の組成〕
表1に、実施例1〜5および比較例1〜7で作製したエポキシ樹脂組成物I〜IXの組成を示した。
〔実施例1〜5、比較例1〜4〕
表1および表2に示す組成のうち、フェノール樹脂、硬化促進剤およびワックスを、万能反応釜を用いて175℃で30分間溶融混合することによりマスターバッチを得た。ついで、得られたマスターバッチにエポキシ樹脂、イミダゾール誘導体、無機質充填剤および他の添加剤を加えて、ミキシングロール機を用いて100℃で3分間溶融混練した。得られた溶融混練物を冷却した後に粉砕し、エポキシ樹脂組成物を得た。
〔比較例5〕
表1および表3に示す組成のうち、フェノール樹脂、イミダゾール誘導体および硬化促進剤を、万能反応釜を用いて175℃で30分間溶融混合することによりマスターバッチを得た。ついで、得られたマスターバッチにエポキシ樹脂、ワックス、無機質充填剤および他の添加剤を加えて、ミキシングロール機を用いて100℃で3分間溶融混練した。得られた溶融混練物を冷却した後に粉砕し、エポキシ樹脂組成物を得た。
〔比較例6〕
表1および表3に示す組成のうち、フェノール樹脂およびイミダゾール誘導体を、万能反応釜を用いて175℃で30分間溶融混合することによりマスターバッチを得た。ついで、得られたマスターバッチにエポキシ樹脂、硬化促進剤、ワックス、無機質充填剤および他の添加剤を加えて、ミキシングロール機を用いて100℃で3分間溶融混練した。得られた溶融混練物を冷却した後に粉砕し、エポキシ樹脂組成物を得た。
〔比較例7〕
表1および表3に示す組成の全成分を、ミキシングロール機を用いて100℃で3分間溶融混練した。得られた溶融混練物を冷却した後に粉砕し、エポキシ樹脂組成物を得た。
〔ニッケル接着性〕
上記で得られたエポキシ樹脂組成物を用い、ニッケルメッキに対する接着力をつぎのように測定した。ニッケルメッキ処理したアルミ製金属フレーム板を8mm四方に切断してチップとし、このチップ上に、低圧トランスファー成型機(東邦インターナショナル社製、TF15)にて成形温度175℃、注入圧力686MPa、硬化時間120秒で、円錐台状の樹脂組成物(厚み3mm、接着面積10mm2)を成形した。その後、低圧トランスファー成形機から取り外して175℃×5時間の後硬化を行うことにより試験片を得た。この試験片を用いて、横型荷重測定器(アイコーエンジニアリング社製、プッシュプルゲージ)でチップに対する樹脂成形体の剪断接着力を測定した。1回の成形および測定に6個の試験片を作製し、n=6で測定し、その平均値を接着力とした。なお、剪断接着力を測定する際、測定台の温度は25℃とし、上記フレームを25℃測定台に接触、固定し、60秒後に樹脂円錐台のフレームとの界面に傾斜45°の三角刃型治具を5mm/分の速度で押し当て、樹脂が剥がれる際の最大荷重を治具に接続された上記プッシュプルゲージにて読み取った。
〔ソルダーレジスト接着性〕
アルミ製金属フレーム板の表面をソルダーレジスト処理した以外は、ニッケル接着性の評価と同様にして、エポキシ樹脂組成物のソルダーレジストに対する接着力を測定した。
〔硬化性〕
上記で得られたエポキシ樹脂組成物を用いて、175℃×120秒の成形条件で、10mm×64mm×厚み4mmの試験片を作製した直後の熱時硬度を、ショアーD硬度計を用いて測定した。
【0033】
表2および表3に、実施例および比較例のエポキシ樹脂組成物における各特性の評価結果を示した。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
【表3】

【0037】
実施例1〜5および比較例1〜4は、エポキシ樹脂組成物の組成のうち、イミダゾール誘導体またはワックスが異なるが、同じ製造工程によりエポキシ樹脂組成物を得たものである。また、実施例1および比較例5〜7は、エポキシ樹脂組成物の組成は同じであるが、異なる製造工程によりエポキシ樹脂組成物を得たものである。
【0038】
上記の結果、実施例品は、ニッケル接着性、ソルダーレジスト接着性および硬化性に優れていることがわかる。一方、特定の成分を含まない比較例品(比較例1〜4)および特定の製造工程を含まない比較例品(比較例5〜7)は、ニッケル接着性、ソルダーレジスト接着性および硬化性のいずれかが劣ることがわかる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記A〜F成分を含むモジュール封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法であって、
B成分、D成分およびE成分によりマスターバッチを得る工程、
前記マスターバッチにA成分、C成分およびF成分を添加して、溶融混練物を得る工程、
を含むことを特徴とする、モジュール封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法。
A:エポキシ樹脂
B:フェノール樹脂
C:ビニル基を有するトリアジン化合物とイミダゾール化合物の付加物である、融点が200〜260℃のイミダゾール誘導体
D:C成分以外の硬化促進剤
E:酸価10〜30mgKOH/gのワックス
F:無機質充填剤
【請求項2】
C成分の含有率がエポキシ樹脂組成物全体の0.03〜0.15重量%であることを特徴とする、請求項1に記載のモジュール封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
D成分が第3級アミン化合物であることを特徴とする、請求項1または2に記載のモジュール封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法。


【公開番号】特開2012−1592(P2012−1592A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136122(P2010−136122)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】