モデリング装置、モデリング方法、領域抽出装置、およびプログラム
【課題】高精度のモデリング処理を実現することが可能な技術を提供する。
【解決手段】モデルフィッティング手法を用いて所定の評価関数を最適化するように標準モデルを変形させ、対象物のモデルを生成する。所定の評価関数は、先験的知識項を有する。先験的知識項は、先験的知識に基づき対象物の存在領域として想定される想定領域RBに一致するように標準モデルが変形するときに最適化される項である。また、想定領域RBは、例えば、同種の対象物のデータに基づいて得られる当該対象物の存在確率が、所定値よりも高い領域として求められる。
【解決手段】モデルフィッティング手法を用いて所定の評価関数を最適化するように標準モデルを変形させ、対象物のモデルを生成する。所定の評価関数は、先験的知識項を有する。先験的知識項は、先験的知識に基づき対象物の存在領域として想定される想定領域RBに一致するように標準モデルが変形するときに最適化される項である。また、想定領域RBは、例えば、同種の対象物のデータに基づいて得られる当該対象物の存在確率が、所定値よりも高い領域として求められる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モデルを生成するモデリング装置およびそれに関連する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療分野において、X線CT(Computed Tomography)装置或いはMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置等によって撮影された生体内の3次元画像が広く用いられている。これにより、体内の臓器等の情報が視覚的に把握可能となり診断精度の向上が期待できる。しかし、その一方で、診断に用いられる3次元画像は数十枚〜数百枚のスライス画像から構成されているため、このような膨大な情報量の中から診断に必要な情報のみを得ることは読影医師にとって大きな負担となっている。
【0003】
そこで、計算機を援用した定量的或いは自動的診断の要望が強まり、計算機による診断支援(CAD:Computer−aided diagnosis)システムの研究が盛んに行われている(例えば、非特許文献1〜3参照)。
【0004】
計算機による診断支援を行うには、診断に必要な情報、つまり臓器領域又は形状等を正確に抽出することが重要な課題となる。
【0005】
臓器の領域抽出手法の1つとして、予め用意した標準モデルをエネルギー最小化原理に基づいて変形させ、目的の輪郭を見つけるモデルフィッテイング(Model Fitting)手法が提案されている。
【0006】
この手法によれば、標準モデルという予め特徴を持たせたモデルを変形させて該当領域を抽出するため、高精度の抽出処理が可能となる。
【0007】
【非特許文献1】ツァガーン・バイガルマ、清水昭伸、小畑秀文、「3次元可変形状モデルによる腹部CT像からの腎臓領域抽出法の開発」、電子情報通信学会論文誌、D-II、2002年1月、Vol.J85-D-II、No.1、pp.140-148
【非特許文献2】清水昭伸、桜井博紀、柳田友尚、木畑秀文、縄野繁、「人体の電子アトラスに基づく3次元腹部CT像からの複数臓器の抽出処理とその性能評価−従来法との比較−」、信学技報、2005年、MI2005-15、pp.7-12
【非特許文献3】北川輝彦、奥尾一将、周向栄、横山龍二郎、原武史、藤田広志、兼松雅之、星博昭、「体幹部CT画像における横隔膜の変形による肝臓の確率的アトラスの自動生成とその肝臓自動抽出への応用」、信学技報、2005年、MI2005-16、pp.13-18
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記のモデルフィッティング手法(特許文献1参照)においても、十分な精度を得られないことがある。具体的には、上記のモデルフィッティング手法においては、外部エネルギーと内部エネルギーとの2つの種類のエネルギーを考慮しているが、これら2種類のエネルギーを考慮することによっては、十分な精度を得られないことがある。
【0009】
また、このような問題は、上記のような領域抽出処理のためのモデリング処理だけでなく、対象物のモデルを作成するモデリング処理においても一般的に生じる問題である。
【0010】
そこで、この発明の課題は、より正確なモデリング処理を実現することが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決すべく、請求項1の発明は、対象物のモデルを生成するモデリング装置であって、前記対象物に関する標準モデルを取得する取得手段と、モデルフィッティング手法を用いて所定の評価関数を最適化するように前記標準モデルを変形させ、前記対象物のモデルを生成するモデル変形手段とを備え、前記所定の評価関数は、先験的知識に基づき前記対象物の存在領域として想定される領域である想定領域に一致するように前記標準モデルが変形するときに最適化される先験的知識項を有することを特徴とする。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1の発明に係るモデリング装置において、前記想定領域は、前記対象物の存在確率が所定値よりも高い領域であることを特徴とする。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2の発明に係るモデリング装置において、前記先験的知識項は、前記想定領域の境界へと最短距離で接近するベクトルである接近ベクトルの向きに前記標準モデルの各制御点が移動するときに最適化されるものであることを特徴とする。
【0014】
請求項4の発明は、請求項3の発明に係るモデリング装置において、前記モデル変形手段が前記標準モデルを逐次変形させていく際において、前記接近ベクトルは変形後の前記標準モデルの各制御点の位置に応じて更新され、前記先験的知識項は、更新された前記接近ベクトルに基づいて算出されることを特徴とする。
【0015】
請求項5の発明は、請求項3の発明に係るモデリング装置において、前記接近ベクトルは、前記各制御点の初期位置に応じて前記各制御点ごとに予め設定され、前記モデル変形手段が前記標準モデルを逐次変形させていく際においても、前記先験的知識項は、常に、前記各制御点の初期位置に応じて前記各制御点ごとに予め設定された前記接近ベクトルに基づいて算出されることを特徴とする。
【0016】
請求項6の発明は、請求項1ないし請求項5のいずれかの発明に係るモデリング装置において、前記所定の評価関数は、前記標準モデルの形状が計測データにおける輪郭に近づくときに最適化される外部エネルギー項を有することを特徴とする。
【0017】
請求項7の発明は、請求項1ないし請求項6のいずれかの発明に係るモデリング装置において、前記所定の評価関数は、前記標準モデルの各制御点相互の関係が一定の関係に近づくときに最適化される内部エネルギー項を有することを特徴とする。
【0018】
請求項8の発明は、請求項1ないし請求項7のいずれかの発明に係るモデリング装置において、生成された前記対象物のモデルの存在位置に対応する領域を前記対象物の領域として計測データから抽出する手段とをさらに備えることを特徴とする。
【0019】
請求項9の発明は、対象物のモデルを生成するモデリング方法であって、前記対象物に関する標準モデルを初期位置に配置する工程と、モデルフィッティング手法を用いて所定の評価関数を最適化するように前記標準モデルを変形させ、前記対象物のモデルを生成する工程とを備え、前記所定の評価関数は、先験的知識に基づき前記対象物の存在領域として想定される領域である想定領域に一致するように前記標準モデルが変形するときに最適化される先験的知識項を有することを特徴とする。
【0020】
請求項10の発明は、コンピュータに、前記対象物に関する標準モデルを初期位置に配置する手順と、モデルフィッティング手法を用いて所定の評価関数を最適化するように前記標準モデルを変形させ、前記対象物のモデルを生成する手順とを実行させるためのプログラムであって、前記所定の評価関数は、先験的知識に基づき前記対象物の存在領域として想定される領域である想定領域に一致するように前記標準モデルが変形するときに最適化される先験的知識項を有することを特徴とする。
【0021】
請求項11の発明は、計測データから対象物の領域を抽出する領域抽出装置であって、前記対象物に関する標準モデルを取得する取得手段と、モデルフィッティング手法を用いて所定の評価関数を最適化するように前記標準モデルを変形させる手段と、変形後の前記標準モデルの存在位置に対応する領域を前記対象物の領域として前記計測データから抽出する手段とを備え、前記所定の評価関数は、先験的知識に基づき対象物が存在すると想定される想定領域に一致するように前記標準モデルが変形するときに最適化される先験的知識項を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
請求項1ないし請求項11に記載の発明によれば、先験的知識を反映させてモデルを変形させることができるので、より正確なモデリング処理を実現することができる。
【0023】
特に、請求項4に記載の発明によれば、標準モデルが逐次変形されていく際において、接近ベクトルは変形後の標準モデルの各制御点の位置に応じて更新され、先験的知識項は、更新された接近ベクトルに基づいて算出される。したがって、随時更新される接近ベクトルを考慮することにより、先験的知識をより高精度に反映させてモデルフィッティングを行うことができる。
【0024】
また、請求項5に記載の発明によれば、対象物の存在確率マップにおける全画素について接近ベクトルを予め準備しておく必要がなく、標準モデルの各制御点の初期位置における各接近ベクトルを求めれば済むので、効率的である。
【0025】
また、請求項8に記載の発明によれば、生成されたモデルの存在位置に対応する領域を対象物の領域として計測データから抽出することによって、先験的知識を反映させて、対象物の領域を正確に抽出することができる。
【0026】
また、請求項11に記載の発明によれば、先験的知識を反映して変形された標準モデルの存在位置に対応する領域を対象物の領域として計測データから抽出するので、先見的知識を反映させて、対象物の領域を正確に抽出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0028】
<1.構成>
図1は、本発明の実施形態に係る領域抽出装置1の概要を示す図である。領域抽出装置1は、計測データ(詳細には3次元計測データ(立体計測データとも称する))から所望の対象物の領域(詳細には立体領域)を抽出する装置である。なお、この領域抽出装置1は、モデルフィッティング手法を用いて対象物モデルの生成処理を行うことから、「モデリング装置」とも称せられる。
【0029】
図1に示すように領域抽出装置1は、パーソナルコンピュータ(以下、単に「パソコン」と称する)2と、モニター3と、装着部5と、操作部4とを備えている。
【0030】
パソコン2は、制御部20、入出力I/F21、及び記憶部22を備えている。
【0031】
入出力I/F21は、モニター3、操作部4および装着部5とパソコン2との相互間でデータの送受信を行うためのインターフェイス(I/F)であり、制御部20との間でデータの送受信を行う。
【0032】
記憶部22は、例えばハードディスクなどで構成されており、後述の各種処理を実行するためのソフトウェアプログラム(以下、単に「プログラム」と称する)PG等を格納している。
【0033】
制御部20は、主にCPU、ROM20a及びRAM20b等を有し、パソコン2の各部を統括制御する部位である。
【0034】
モニター3は、例えば、CRTで構成され、制御部20で生成される表示用画像を可視的に出力する。
【0035】
操作部4は、キーボード及びマウス等から構成され、使用者(ユーザ)に各種操作にしたがって各種信号を入出力I/F21に送信する。
【0036】
また、装着部5は、メモリカード51等の記憶媒体を着脱自在に装着することができる。そして、装着部5に装着されたメモリカード51に格納される各種データ又はプログラム等を入出力I/F21を介して制御部20或いは記憶部22に取り込むことができる。
【0037】
次に、領域抽出装置1の各種機能について説明する。
【0038】
図2は、領域抽出装置1の各種機能を示すブロック図である。
【0039】
これらの各種機能は、制御部20内のCPU等の各種ハードウェアを用いて所定のプログラムPGを実行することによって実現される。
【0040】
図2に示されるように、領域抽出装置1は、モデル格納部11と計測データ入力部12と暫定領域抽出部13と初期位置決定部14とモデルフィッティング部15と領域抽出部16と抽出領域出力部17とを備え、入力される3次元画像(3次元計測データ)から使用者(ユーザ)等が抽出したい物体(以下、「抽出対象領域(物体)」とも称する)を抽出し、出力することができる。
【0041】
モデル格納部11は、モデルフィッティング処理に用いられる「標準モデル」を格納している。領域抽出装置1は、モデル格納部11から読み出すことによって「標準モデル」を取得することができる。ここで、「標準モデル」は、後述のモデルフィッティング手法において用いられるモデルであり、抽出対象領域(例えば臓器)の標準的なモデルを意味する。
【0042】
計測データ入力部12は、CT装置あるいはMRI装置などによって取得された3次元計測データ(ボリュームデータ)を入力する機能を有している。
【0043】
暫定領域抽出部13は、モデルフィッティング手法とは異なる手法を用いて、抽出対象物体(領域)を暫定的に抽出する機能を有している。
【0044】
初期位置決定部14は、暫定的に抽出された抽出対象物体(領域)を用いて、標準モデルの初期位置を決定する機能を有している。
【0045】
モデルフィッティング部15は、モデルフィッティング手法を用いて標準モデルを変形することにより対象物のモデルを生成する機能を有している。
【0046】
領域抽出部16は、モデルフィッティング部15によって生成されたモデルを用いて計測データから対象物の領域を抽出する機能を有している。
【0047】
抽出領域出力部17は、抽出した対象物体をモニター3に表示出力する機能を有している。
【0048】
<2.動作>
<動作概要>
この実施形態では、X線CT装置によって取得される3次元画像(ボリュームデータとも称する)に基づくモデルフィッティング処理、および当該モデルフィッティング処理を用いた領域抽出処理等について説明する。ただし、本発明は、これに限定されず、他の計測データ(例えば、MRI装置によって取得される3次元画像等)に基づくモデルフィッティング処理および当該モデルフィッティング処理を用いた領域抽出処理等にも適用することができる。
【0049】
図3は、X線CT装置によって取得される3次元画像TDP1を示す図である。
【0050】
図3に示されるように、3次元画像TDP1は、物体(人体)を輪切りにした断面を示す複数(例えば、数十枚から数百枚)のスライス画像(断層画像)SDで構成されている。各スライス画像SDは、各点(各画素)でのX線の吸収量(CT値)を濃淡表示して可視化した画像である。図3においては、3次元画像TDP1を構成する複数のスライス画像SDのうちの所定位置におけるスライス画像PMも併せて示されている。
【0051】
図4は、領域抽出装置1の全体動作を示すフローチャートである。
【0052】
領域抽出装置1は、図4に示される各処理(ステップS1〜S4)を実行することによって、入力画像(3次元画像)から使用者(ユーザ)が指定した対象物を抽出する。なお、抽出対象物の指定は、ステップS1の処理開始前に使用者(ユーザ)によって予め行われる。指定手法としては、例えば、記憶部22に予めデータベース化されて保存されている項目一覧(例えば各種の臓器等が列挙された項目一覧)から、操作部(例えばマウス)4等の操作により使用者(ユーザ)が所望の項目を選択する態様等を採用することができる。以下では、抽出対象物として所定の臓器が指定されている場合を想定し、図4の各処理について説明する。
【0053】
まず、ステップS1では、領域抽出装置1に入力される3次元画像から使用者(ユーザ)の指定した物体(臓器)が暫定的に抽出される。後述するように、このステップS1では、モデルフィッティング手法とは異なる手法を用いて抽出対象領域が抽出される。
【0054】
次に、ステップS2において、ステップS1で暫定的に抽出された物体(臓器)を用いて、標準モデルの初期位置(標準モデルを計測データ中に配置する際の初期位置)が決定され、標準モデルの配置が行われる。ステップS1の暫定抽出処理によれば、この初期位置を正確に求めることが可能になる。
【0055】
さらに、ステップS3では、初期位置に配置された標準モデルがモデルフィッティング手法によって変形され、対象物のモデルが生成される。そして、変形後の標準モデルの位置に存在する領域が、対象物の領域として抽出される。
【0056】
ステップS4では、作成された個別モデルが抽出対象物体としてモニター3等に出力される。
【0057】
このように、最終的にはモデルフィッティング手法を用いて抽出対象物体が抽出される(ステップS3)。なお、ここでは、モデルフィッティング手法における標準モデルの初期位置を決定するに際して、モデルフィッティング手法とは異なる手法(領域拡張法)を用いる(ステップS1,S2)場合を例示する。
【0058】
また、後述するように、モデルフィッティング処理(ステップS3)において先験的知識を考慮することによって、より正確なモデルフィッティング処理を行うことが可能になる。
【0059】
以下、ステップS1,S2,S3の各処理について順次に詳述する。
【0060】
<暫定領域抽出処理(ステップS1)>
上述のように、暫定領域抽出処理(ステップS1)では、使用者(ユーザ)によって指定された物体(臓器)を暫定的に抽出することを目的とする。本実施形態では、その抽出方法の一例として領域拡張法を採用する。
【0061】
図5は、領域拡張法を用いた暫定領域抽出処理(ステップS1)の詳細を示すフローチャートである。図6は、人体をX線CT装置で撮影した際の所定位置におけるスライス画像PMを示す図であり、図7は、図6に示されるスライス画像PM上の画素M1を中心として隣接する画素付近を拡大表示した図である。図7においては、スライス画像PMの画素M1の隣接画素として、同一階層のスライス画像PMにおける隣接8画素M2〜M9に加えて、スライス画像PUにおける隣接9画素U1〜U9と、スライス画像PDにおける隣接9画素D1〜D9とが示されている。尚、スライス画像PUは、スライス画像PMに対して+z方向に隣接するスライス画像(換言すればスライス画像PMの直上層のスライス画像)であり、スライス画像PDは、スライス画像PMに対して−z方向に隣接するスライス画像(換言すればスライス画像PMの直下層のスライス画像)である。
【0062】
以下では、図6のスライス画像PMに表示されている物体(臓器)OB1を暫定的に抽出する場合を具体例に挙げて領域拡張法を用いた暫定領域抽出処理について説明する。
【0063】
まず、ステップS11において、使用者(ユーザ)によって抽出対象物体(臓器)内の拡張開始画素が特定される。具体的には、抽出したい物体(抽出対象物体)が表示されている任意のスライス画像(ここではスライス画像PM)上で、操作部(例えばマウス)4等の操作により抽出対象物体内の任意の点を特定する。より詳細には、物体OB1を抽出したい場合、スライス画像PM上の物体(臓器)OB1内の任意の点(例えばM1)をマウス等により特定すればよい(図6参照)。この操作により、スライス画像PM上において特定点M1に相当する画素が拡張開始画素となる。
【0064】
次に、ステップS12において、拡張開始画素に隣接する画素が拡張候補画素として検出される。詳細には、ステップS11において拡張開始画素をM1と特定したとすると、画素M1に隣接する画素全てが拡張候補画素となる。つまり、スライス画像PM上の画素M2〜M9、スライス画像PU上の画素U1〜U9、及びスライス画像PD上の画素D1〜D9の計26画素が拡張候補画素となる。
【0065】
次に、ステップS13において拡張候補画素がステップS12で検出されたか否かが判定され、ステップS12で拡張候補画素が検出されている場合には、ステップS14へ移行する。
【0066】
ステップS14では、検出された拡張候補画素の濃度値が所定範囲内か否かが判定される。具体的には、物体(臓器)の有する濃度値の範囲が物体(臓器)ごとに予め定められており、拡張候補画素の濃度値が、抽出対象物体の持つ濃度値の範囲内か否かを判定する。これにより、拡張候補画素が所定範囲内の濃度値を有していると判定されると、ステップS15に移行する。
【0067】
ステップS15では、当該拡張候補画素を抽出対象物体内の画素とする領域拡張を行う。
【0068】
一方、ステップS14において、拡張候補画素が所定範囲内の濃度値を有していないと判定されると、当該拡張候補画素の領域拡張は行われない。
【0069】
次に、ステップS16では、拡張候補画素の濃度判定工程(ステップS14)をまだ経ていない拡張候補画素が存在するか否かが判断される。
【0070】
濃度判定工程(ステップS14)を経ていない拡張候補画素が存在する場合には、当該未終了の拡張候補画素に対してステップS14、S16の処理が実行される。
【0071】
一方、全ての拡張候補画素に対して濃度判定工程(ステップS14)が終了している場合には、ステップS12に戻り、ステップS15において拡張された画素(換言すれば、領域内の画素であるとして特定された画素)にさらに隣接する画素であって、領域内に存在するか否かが未だ判定されていない画素が、新たな拡張候補画素として検出される。その後、新たに検出された拡張候補画素に対して、上述のステップS13〜S16の工程が実行される。ステップS12〜S16の工程は、新たな拡張候補画素を検出することが可能な限り繰り返され、新たな拡張候補画素が検出できなくなると、暫定領域抽出処理は終了する(ステップS13)。
【0072】
このようにステップS12〜S16の工程が繰り返し実行されることによって拡張開始画素から徐々に領域拡張が行われ、使用者(ユーザ)によって指定された物体(臓器)が暫定的に抽出される。
【0073】
<初期位置決定処理(ステップS2)>
次に、モデルフィッティング手法における標準モデルの初期位置を決定する初期位置決定処理(ステップS2)について、図8〜図10を参照しながら説明する。図8は、重心点を利用した初期位置決定処理(ステップS2)の詳細を示すフローチャートである。また、図9は、3次元画像(計測データ)に含まれる物体OBaを示す図であり、図10は、標準モデルSOを初期位置に移動させる様子を概念的に示す図である。図10においては、標準モデルを初期配置した際の抽出対象物体と標準モデルとの位置関係も示されている。
【0074】
尚、以下では図示の簡略化のため、図9に示されるような3次元画像TDP1中に存在する物体OBaが抽出対象物体であると仮定して説明する。
【0075】
まず、ステップS21において、ステップS1で暫定的に抽出された物体OBaの重心点GZが算出される。
【0076】
次に、ステップS22では、後述のモデルフィッティングにおいて用いられる標準モデルの重心点GHをステップS21で算出された重心点GZに合わせる標準モデルの初期配置が行われる。例えば、図10に示されるように、標準モデルSOの重心点GHを抽出対象物体OBaの重心点GZに合わせるように標準モデルSOを移動して、標準モデルSOを計測データ中に初期配置する。
【0077】
重心点を利用した標準モデルの初期配置が終了すると、モデルフィッティング処理(ステップS3)に移行する。
【0078】
<モデルフィッティング処理(ステップS3)>
ステップS3のモデルフィッテイング処理は、予め準備された一般的(標準的)な抽出対象物体(単に対象物とも称する)のモデルである「標準モデル」を、抽出対象物体から得られる情報(形状等)を用いて変形する処理である。尚、本出願においては、モデルフィッティング処理による変形後の標準モデル(換言すれば抽出対象物体の情報が反映された標準モデル)を「個別モデル」とも称するものとする。
【0079】
このモデルフィッティング処理では、初期位置に配置された標準モデルをモデルフィッティング手法によって変形することで、抽出対象物体を抽出する処理が行われる。
【0080】
図11は、モデルフィッティング処理(ステップS3)の詳細を示すフローチャートである。図12は、抽出対象物体OBaの境界点Q1を中心にした領域RQ(図10参照)付近を拡大表示した模式図であり、図13は、一部のスライス画像PQ1、PQ2及びPQ4を示す図である。図14は、制御点間を仮想バネで繋いだ模式図である。
【0081】
尚、抽出対象物体の標準モデルは、例えば、微小な多角形(例えば、三角形)のポリゴンで構成され、記憶部22等に保存されている。ポリゴンで構成された標準モデルは、各ポリゴンの頂点の3次元座標によってそのモデルの表面形状を表現することができる。また、標準モデルにおけるポリゴンの頂点のうち、全頂点あるいは代表的な幾つかの頂点を「制御点」とも称する。
【0082】
以下では、図11〜図14を用いてモデルフィッティング処理について詳述する。
【0083】
まず、ステップS31では、標準モデルSOの制御点Cjに対応する点(以下、「対応点」とも称する)を決定する処理が行われる(図11参照)。ここでは、抽出対象物体OBaの輪郭(境界)を示す画素(境界点)のうち、制御点Cjの最も近傍に存在する画素を当該制御点Cjの対応点とする手法を用いる。尚、抽出対象物体OBaの輪郭(境界)は、各スライス画像SDにおいて、エッジ抽出処理を行うことなどによって取得される。
【0084】
例えば、図12(立面図)においては、制御点C1の対応点は、制御点C1の最も近傍に存在する境界点(画素)Q1となる。ここで、図12においては、xz平面に平行な所定の平面(2次元空間)における境界点のみが示されているが、実際には、図13に示されるような3次元空間において制御点C1の最も近傍に存在する境界点が対応点となる。図13においては、制御点C1の各スライス画像PQ1、PQ2、PQ4における射影点が×印で示されている。
【0085】
次に、ステップS32では、標準モデルSOの制御点Cjのうち任意の一点(以下、「移動対象点」とも称する)(例えば制御点C1)が一方向(例えばA1方向)に微小量L移動される(図12参照)。
【0086】
さらに、ステップS33では、ステップS32において移動対象点を移動させ一時的に変形させた状態のモデル(以下、「一時変形モデル」とも称する)の総合エネルギーUeが算出される。
【0087】
総合エネルギーUeは、式(1)に示されるように、制御点Cjと対応点との距離に関する外部エネルギー項Feと、過剰な変形を避けるための内部エネルギー項Geと、先験的知識を考慮するための先験的知識項Heとの和で表される。尚、外部エネルギー項(単に外部エネルギーとも称する)Fe、内部エネルギー項(単に内部エネルギーとも称する)Ge、および先験的知識項Heについては後述する。
【0088】
【数1】
【0089】
次に、ステップS34において、移動対象点が全ての方向に移動されたか否かを判定する。例えば、3次元空間の全方位における移動対象点の移動方向を26方向(当該移動対象点(画素)に隣接する26画素へ向かう方向)とすると、26方向全ての方向に制御点C1が移動されたか否かを判定する。
【0090】
移動対象点(制御点C1)を26方向全てに移動させた一時変形モデルの作成が終了していなければ、移動対象点の移動方向を変更して再び微小量L移動させ、異なる移動方向パターンの一時変形モデルを作成し、各一時変形モデルの総合エネルギーUeを算出する(ステップS32、S33)。
【0091】
そして、ステップS34において全方向の移動が終了したと判定されると、ステップS35へ移行する。
【0092】
ステップS35では、作成された全パターンの一時変形モデルの中から、総合エネルギーUeを最小とする一時変形モデルが選択される。換言すれば、或る制御点Cjを26方向に移動させて生成された各一時変形モデルのうち、総合エネルギーUeを最小化する一時変形モデルが選択される。例えば、後述する3つの項Fe,Ge,Heのうち外部エネルギーFeのみを考慮する場合には、その制御点が対応点に近づく方向へと移動する一時変形モデルが選択されることになる。また、内部エネルギーGeを考慮する場合には、その制御点が対応点に近づく方向とは異なる方向へと移動する一時変形モデルが選択されることもある。また、先験的知識項Heを考慮する場合には、先験的知識が反映されるため、同種の対象物の存在確率が高い位置へと移動する一時変形モデルが選択されることもある。
【0093】
次に、ステップS36において全制御点Cjの移動が終了したか否かを判定する。具体的には、標準モデルSOの全ての制御点Cjについて微小量Lの移動が終了したか否かを判定し、終了していない制御点(未了点とも称する)が存在すれば、移動対象点を当該制御点(未了点)に変更してステップS32〜S35の動作を繰り返し、全ての制御点Cjの移動を完了した一時変形モデルを作成する。一方、全ての制御点の移動が終了していれば、ステップS37へ移行する。
【0094】
ステップS37では、モデルフィッティング処理を終了するか否かを判定する。具体的には、全ての制御点Cjの移動を完了させた一時変形モデルにおける複数の制御点とその対応点との距離の平均値が所定値以下であることを条件とし、当該条件を満たす場合に、モデルフィッティング処理を終了するようにすればよい。これによれば、各制御点が対応点に所定程度近づいた場合に同処理を終了することができる。または、これに加えてあるいはこれに代えて、(全ての制御点Cjの移動を完了させた)前回の一時変形モデルと今回の一時変形モデルとの総合エネルギーUeの変化量が所定量以下であるか否かを終了判定の基準として用いてもよい。これによれば、制御点を移動しても総合エネルギーがあまり変化しなくなった場合に処理を終了することができる。
【0095】
ステップS37においてモデルフィッティング処理を終了しないと判定される場合は、ステップS38へと移行する。
【0096】
ステップS38では、上述のステップS32〜S37で実行される処理を単位処理ループとして当該単位処理ループが所定回数W(例えば10回)実行されたか否かを判定する。所定回数W実行されていなければ、所定回数W実行されるまで再びステップS32〜S37の処理ループを繰り返し、所定回数W実行されていれば、ステップS39へと移行する。すなわち、全ての制御点の移動を完了させた一時変形モデルが所定回数W作成されるまで、単位処理ループが繰り返される。
【0097】
ステップS39では、ステップS31で決定した対応点の更新が行われる。具体的には、上述の処理ループによって所定回数W移動した各制御点の最も近傍に存在する画素(境界点)を各制御点それぞれの新しい対応点とする対応点の更新が行われ、再びステップS32〜S39の処理が繰り返し行われる。このような「対応点の更新」によれば、制御点の移動に伴って制御点の最近傍境界点が変わる場合にも、対応点の適正化を図ることができる。
【0098】
一方、ステップS37においてモデルフィッティング処理を終了すると判定される場合は、最終的に得られた一時変形モデルが、抽出対象物体に相当する個別モデルとして決定される。これによって、抽出対象物体のモデルが生成される。また、その後、最終的に得られた個別モデル(すなわち、生成された対象物モデル)の位置に存在する領域が、対象物の領域として計測データから抽出される。
【0099】
以上の処理によって、このステップS3の処理は終了する。
【0100】
このようなモデルフィッティング処理(ステップS3)においては、標準モデルSOを1制御点ごとに微小量Lずつ徐々に変形させることによって、抽出対象領域に相当する個別モデルが作成される。
【0101】
ここで、総合エネルギーUeを構成する外部エネルギーFe及び内部エネルギーGeについて説明する。
【0102】
外部エネルギーFeは、各制御点Cjと当該各制御点Cjにそれぞれ対応する対応点Qjとの距離の二乗を用いて式(2)のように表される。
【0103】
【数2】
【0104】
但し、αは定数、Ntは制御点の数、|Cj−Qj|は制御点Cjと対応点Qjとの距離を表すものとする。
【0105】
このような外部エネルギーFeが非常に大きくなるような一時変形モデル、すなわち、制御点Cjと対応点Qjとの距離が移動前より大きくなった一時変形モデルは、その総合エネルギーUeが大きくなるため、上述のステップS35(総合エネルギーUeを最小とする制御点の移動を採用する工程)において採用されにくくなる。逆に言えば、外部エネルギーFeを考慮することによって、各制御点Cjと対応点Qjとの距離が移動前よりも小さくなる(すなわち各制御点Cjが対応点Qjに近づく)一時変形モデルが選択されやすくなる。
【0106】
外部エネルギーFeは、標準モデルSOの各制御点Cjと計測データにおける各対応点Qjとの関係を反映したエネルギー項であるとも表現される。あるいは、外部エネルギーFeは、標準モデルの各制御点Cjと計測データにおける各対応点Qjとの距離が近づくときに最適化されるエネルギー項であるとも表現される。端的に言えば、この外部エネルギーFeは、標準モデルSOの形状を計測データにおける輪郭に近づけようとする役割を果たす。
【0107】
また、内部エネルギーGeは、例えば、図14に示されるように、制御点Cj間が仮想バネSPR(SPR1,SPR2,SPR3,...)によって繋がれていると想定すると、式(3)のように表される。
【0108】
【数3】
【0109】
但し、βは定数、Kは仮想バネのバネ係数、Nhは仮想バネの本数、wは各仮想バネの自然長からの変位量を表すものとする。
【0110】
式(3)によると、各制御点Cjの過剰な移動は、仮想バネSPRに蓄えられるエネルギーの増大として表現される。例えば、1つの制御点Czが、或る点Vzへと移動し他の制御点との相対変位が増大したとすると、仮想バネSPR1、SPR2及びSPR3には、各仮想バネの伸びによるエネルギーが蓄えられ内部エネルギーGeひいては総合エネルギーUeが大きくなる。
【0111】
このような過剰変形を伴う一時変形モデルは、その内部エネルギーGeが大きくなり、その総合エネルギーUeも大きくなるため、上述のステップS35(総合エネルギーUeを最小とする制御点の移動を採用する工程)において採用されにくくなる。
【0112】
換言すれば、内部エネルギーGeを減少させて総合エネルギーUeを減少させるような一時変形モデルがステップS35で選択されることによって、各制御点Cjの移動による過剰な変形を防止する作用を得ることができる。
【0113】
つまり、このような内部エネルギーGeを導入することによって、標準モデルSOの形状すなわち標準モデルSOを構成する各ポリゴンの形状を損なわない制御点Cjの移動が可能となる。なお、内部エネルギーGeを考慮する場合には、各制御点Cjが対応点Qjに近づく方向とは異なる方向へと移動する一時変形モデルが選択されることもある。
【0114】
また、ステップS31において対応点Qjを求める際の境界抽出処理が正確でないなどの理由によって、対応点Qjが正しいものでない場合が存在する。このような場合において、外部エネルギーFeのみを考慮するときには、或る制御点が、不正確な対応点に向けて移動するため、不正確なモデルフィッティングが行われることになる。これに対して、内部エネルギーGeを考慮することによれば、このような場合においても、標準モデルSOの形状を損なわないような変形動作が行われることになるため、より正確なモデリング処理が可能になる。
【0115】
この内部エネルギーGeは、標準モデルSOの各制御点Cj相互の関係が一定の関係(すなわち、全仮想バネが自然長を有する状態)に近づくときに最適化されるエネルギー項であるとも表現される。端的に言えば、この内部エネルギーGeは、標準モデルSOを一定の形状に維持しようとする役割を果たす。
【0116】
つぎに、先験的知識項Heについて説明する。
【0117】
先験的知識項Heは、計測対象物と同じ種類の対象物に関して予め求められたデータ(先験的知識)に基づくものであり、例えば、当該対象物の存在確率に基づいて次のようにして定められる。
【0118】
図15は、予め求められた同種の複数(ここでは5つ)の対象物(臓器)B1〜B5の存在位置を重ね合わせて示す図であり、図16は、当該種類の対象物の存在確率マップMPを示す図である。存在確率マップMPは、各位置における対象物の存在確率を示すものである。図16においては、存在確率が点の密度で表現されており、比較的黒い部分の存在確率は比較的白い部分に比べて高い。
【0119】
或る対象物に関する存在確率マップMP(図16)は、同種の複数の対象物の存在位置(図15参照)に関する先験データに基づいて求められる。図16の存在確率マップMPにおいては、図15と見比べると判るように、同種の複数の対象物B1〜B5のうち多数の対象物が存在する位置では存在確率が高く、逆に、複数の対象物B1〜B5のうち少数の対象物しか存在しない位置では存在確率は低い。なお、ここでは簡単化のため、図15において5つの対象物を図示しているが、実際にはより多数の対象物に基づいて、当該種類の対象物に関する存在確率マップMPを生成することが好ましい。また、存在確率マップMPは、図15等においては平面的に示されているが、実際には、3次元空間における各点(画素)ごとの存在確率が示された3次元マップ(立体マップ)として得られる。
【0120】
そして、対象物の各位置における存在確率(換言すれば、対象物の存在確率分布)という先験的知識に基づき対象物が存在することが想定される領域(換言すれば、対象物の存在領域として想定される領域)(以下、「想定領域」とも称する)RB(図17参照)を、図16の存在確率マップMPを用いて求める。ここでは、存在確率マップMPにおいて、その存在確率が所定の閾値TH1(例えば80%〜90%程度)よりも高い画素で構成される領域を想定領域RBとして求める。この閾値TH1は、例えば、想定領域RBの容積が、複数の対象物の平均容積と同一となるように定められればよい。なお、図17においては、想定領域RBの境界が実線で示されている。
【0121】
また、図18は、各位置から想定領域RBの境界へと最短距離で接近するベクトル(以下、「接近ベクトル」とも称する)pを示す図である。この接近ベクトルpは、詳細には、存在確率マップMPにおける各画素を始点とし、当該各画素と想定領域RBの境界とを最短距離で結ぶベクトルである。なお、図18においては、図示の簡略化等のため、代表的な幾つかの点についての接近ベクトルpのみを示しているが、実際には全画素についての接近ベクトルpが求められているものとする。また、図18のような、各位置における接近ベクトルpを表示するマップを「接近ベクトルマップVM」とも称するものとする。
【0122】
また、図19は、初期状態に配置された標準モデルSOの各制御点Cj(図19において白丸印で示す)における接近ベクトルpjを示す図である。各接近ベクトルpjは、図18の接近ベクトルマップVMにおける、各制御点Cjの位置の接近ベクトルpをそのまま採用することによって求められる。
【0123】
上記の先験的知識項Heは、例えば、このような接近ベクトルpjを用いて、式(4)のように表される。
【0124】
【数4】
【0125】
但し、γは定数、uはステップS32における制御点Cjの移動状態(移動の向きおよび移動量)を表すベクトルを表し、θjは、ベクトルuと接近ベクトルpjとの間の角度を表すものとする(図20参照)。また、記号(・)は、ベクトルの内積を意味するものとする。
【0126】
式(4)に示されるように、各制御点Cjの移動の向きと接近ベクトルpjの向きとが大きく異なるときには、値(1−cosθj)が大きくなる(例えばθj=180(deg)のときには値(1−cosθj)=2)。そのため、先験的知識項Heは比較的大きな値になり、ひいては総合エネルギーUeが大きくなる。そして、このように各制御点Cjが接近ベクトルpjと大きく異なる向きに移動するときの一時変形モデルは、その先験的知識項Heが大きくなりその総合エネルギーUeも大きくなるため、上述のステップS35において採用されにくくなる。
【0127】
逆に、各制御点Cjの移動の向きと接近ベクトルpjの向きとが近いときには、値(1−cosθj)が小さくなる(例えばθj=0(deg)のときには値(1−cosθj)=0)。そのため、先験的知識項Heは小さくなり、ひいては総合エネルギーUeが小さくなる。特に、各制御点Cjの移動の向きと接近ベクトルpjの向きとが一致するときには先験的知識項Heは最適化(最小化)される。そして、このように各制御点Cjが接近ベクトルpjに近い向きに移動するときの一時変形モデルは、その先験的知識項Heが小さくなりその総合エネルギーUeも小さくなるため、上述のステップS35(総合エネルギーUeを最小とする制御点の移動を採用する工程)において採用されやすくなる。
【0128】
換言すれば、先験的知識項Heを減少させて総合エネルギーUeを減少させるような一時変形モデルがステップS35で選択されることによって、標準モデルSOを想定領域RBに近づけるように変形させる作用を得ることができる。
【0129】
また、先験的知識項Heは、標準モデルが上述の想定領域RBに一致するように変形されるときに最適化される項であるとも表現される。この先験的知識項Heは、想定領域RBの境界へと最短距離で近づく向き(端的に言えば接近ベクトルpjの向き)に標準モデルSOの各制御点Cjが移動するときに最適化される項であるとも表現される。このような先験的知識項Heを導入することによれば、先験的知識を用いて、より安定的に各制御点Cjを移動させることが可能になる。
【0130】
また、この実施形態においては、標準モデルSOが逐次変形されていく際において、式(4)の先験的知識項Heにおける接近ベクトルpjは、変形後の標準モデルの各制御点Cjの位置に応じて随時更新されるものとする。具体的には、ステップS32〜S36(図11)の動作を繰り返して全制御点の移動を終了した後に、接近ベクトルpjの更新動作を行う。ここでは、ステップS39において、対応点の更新動作とともに接近ベクトルの更新動作を行うものとする。接近ベクトルマップVM(図18参照)において各画素の接近ベクトルpが求められているので、式(4)の先験的知識項Heにおける各接近ベクトルpjは、変形後の標準モデルにおける各制御点Cjの位置(すなわち、移動後の更新位置)における接近ベクトルpを採用することによって随時更新される(図21参照)。そして、更新後の接近ベクトルpjを用いた式(4)によって先験的知識項Heが算出される。これによれば、より正確に想定領域RBに近づくような変形を促すことが可能になる。すなわち、随時更新される接近ベクトルを考慮することにより、先験的知識をより高精度に反映させてモデルフィッティングを行うことができる。なお、図21は、移動後の各制御点Cjにおける更新された接近ベクトルpjを示す図である。図21においては、移動前の標準モデルSOの位置が破線で示されており、移動後の標準モデルSOの位置が実線で示されている。
【0131】
上述のステップS3の処理においては、このような外部エネルギーFeと内部エネルギーGeと先験的知識項Heとの和で表現される総合エネルギーUeを最小とする一時変形モデルが、標準モデルSOを最適に変形させる一時変形モデル(「最適変形モデル」とも称する)、すなわち個別モデルとして決定される。換言すれば、評価関数としての総合エネルギーUeを最適化する一時変形モデルが個別モデルとして決定される。
【0132】
上記のような処理によれば、先験的知識項Heを含む総合エネルギーUe(評価関数)を最小化(最適化)するように標準モデルSOが変形され、対象物のモデルが生成されるので、先験的知識を反映させてモデルを変形させることができる。したがって、より正確なモデリング処理が可能になる。また、当該モデリング処理によって得られた個別モデルの対応位置に存在する領域が抽出対象領域として計測データから抽出されるため、適切な領域抽出処理が実現される。
【0133】
また、上述したように、ステップS31において対応点Qjを求める際の境界抽出処理が正確でないなどの理由によって、対応点Qjが正しいものでない場合が存在する。このような場合において、外部エネルギーFeのみを考慮するときには、或る制御点が、不正確な対応点に向けて移動するため、不正確なモデルフィッティングが行われることになる。これに対して、外部エネルギーFeだけでなく先験的知識項Heをも考慮することによれば、このような場合においても、先験的知識を反映させた変形動作が行われることになるため、より正確なモデリング処理が可能になる。
【0134】
<3.変形例>
以上、この発明の実施の形態について説明したが、この発明は上記説明した内容のものに限定されるものではない。
【0135】
上記実施形態においては、標準モデルが逐次変形される際において、式(4)の先験的知識項Heにおける各接近ベクトルpjが各制御点Cjの移動に応じて随時更新される場合を例示したが、これに限定されない。例えば、標準モデルが逐次変形される際において、式(4)の先験的知識項Heにおける各接近ベクトルpjとして、標準モデルSOの各制御点Cjの初期位置に対する各接近ベクトルpjを各制御点Cjごとに予め設定しておき、標準モデルが逐次変形される際においても、式(4)における各接近ベクトルpjを更新することなく先験的知識項Heを算出するようにしてもよい。詳細には、各制御点Cjに対する各接近ベクトルpjとして、制御点Cjの更新後においても常に(固定的に)図19のような初期位置に対する各接近ベクトルpjを用いるようにしてもよい。これによれば、存在確率マップMPにおける全画素について接近ベクトルpを予め準備しておく必要がなく、標準モデルSOの各制御点Cjの初期位置における各接近ベクトルpjのみを求めれば済むので、効率化を図ることが可能である。
【0136】
また、上記実施形態においては、式(4)を用いて接近ベクトルpjの向きに各制御点Cjが移動しやすくなるような先験的知識項Heを用いたが、これに限定されない。たとえば、次の式(5)を用いて、接近ベクトルpjの向きだけでなく接近ベクトルpjの大きさにも基づいた先験的知識項Heを用いるようにしてもよい。
【0137】
【数5】
【0138】
また、図22は、このような変形例に係る動作を示すフローチャートである。
【0139】
この変形例においては、ステップS35とステップS36との間にステップS51〜S54の各処理が含まれる点で、上記実施形態のフローチャート(図11)と相違する。
【0140】
具体的には、値kをインクリメントしながら(例えば、k=2,3,...,Nk)、ステップS35で選択された一時変形モデルに対応する移動の向きと同一の向きに、その制御点を元の移動量|u|(=L)の整数倍(k倍)移動させた一時変形モデルを求め(ステップS51)、各移動後の一時変形モデルの各総合エネルギーUeを算出する(ステップS52)、という動作を繰り返す。そして、この動作が所定回数(例えば(Nk−1)回)行われたと判定(ステップS53)された後に、そのうち最も総合エネルギーUeが最適化される一時変形モデルを選択し、当該選択された一時変形モデルに対応する位置へとその制御点を移動させる(ステップS54)。これによれば、式(5)に示すように、接近ベクトルpjの大きさに近い大きさの変形が行われるときに先験的知識項Heが最小化されることになり、想定領域RBに早く近づきやすくすることができる。すなわち、処理の高速化を図ることができる。
【0141】
また、上記実施形態においては、外部エネルギー項Feと内部エネルギー項Geと先験的知識項Heとの3つの項の和で表される総合エネルギーUe(式(1)参照)を評価関数として用いたがこれに限定されない。たとえば、内部エネルギー項Geを考慮せず、外部エネルギー項Feと先験的知識項Heとの和で表される総合エネルギーUeを評価関数として用いるようにしてもよい。
【0142】
また、上記実施形態においては、標準モデルを領域抽出装置1内のモデル格納部11から取得する場合を例示したが、これに限定されず、領域抽出装置1に接続された他の装置からネットワーク等を介して「標準モデル」を取得するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】領域抽出装置の概要を示す図である。
【図2】領域抽出装置の各種機能を示すブロック図である。
【図3】X線CT装置によって取得される3次元画像と所定位置のスライス画像とを示す図である。
【図4】領域抽出装置の全体動作を示すフローチャートである。
【図5】領域拡張法を用いた暫定領域抽出処理を示すフローチャートである。
【図6】所定位置におけるスライス画像を示す図である。
【図7】図6に示されるスライス画像上の画素M1付近の拡大図である。
【図8】重心点を利用した初期位置決定処理を示すフローチャートである。
【図9】3次元画像に含まれる物体を示す図である。
【図10】標準モデルを初期位置に移動させる様子を示す図である。
【図11】モデルフィッティング処理を示すフローチャートである。
【図12】初期配置された標準モデルと抽出対象物体との関係を示す図である。
【図13】複数のスライス画像を示す図である。
【図14】制御点間を仮想バネで繋いだ模式図である。
【図15】同種の複数の対象物の存在位置を重ね合わせて示す図である。
【図16】存在確率マップを示す図である。
【図17】対象物が存在すると想定される想定領域を示す図である。
【図18】接近ベクトルマップを示す図である。
【図19】初期状態に配置された標準モデルの各制御点における接近ベクトルpjを示す図である。
【図20】ベクトルuと接近ベクトルpjとの関係を示す図である。
【図21】移動後の各制御点Cjにおける更新された接近ベクトルpjを示す図である。
【図22】変形例に係る動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0144】
1 領域抽出装置
Cj 制御点
Fe 外部エネルギー項
Ge 内部エネルギー項
He 先験的知識項
Ue 総合エネルギー
VM 接近ベクトルマップ
RB 想定領域
SO 標準モデル
p,pj 接近ベクトル
【技術分野】
【0001】
本発明は、モデルを生成するモデリング装置およびそれに関連する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療分野において、X線CT(Computed Tomography)装置或いはMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置等によって撮影された生体内の3次元画像が広く用いられている。これにより、体内の臓器等の情報が視覚的に把握可能となり診断精度の向上が期待できる。しかし、その一方で、診断に用いられる3次元画像は数十枚〜数百枚のスライス画像から構成されているため、このような膨大な情報量の中から診断に必要な情報のみを得ることは読影医師にとって大きな負担となっている。
【0003】
そこで、計算機を援用した定量的或いは自動的診断の要望が強まり、計算機による診断支援(CAD:Computer−aided diagnosis)システムの研究が盛んに行われている(例えば、非特許文献1〜3参照)。
【0004】
計算機による診断支援を行うには、診断に必要な情報、つまり臓器領域又は形状等を正確に抽出することが重要な課題となる。
【0005】
臓器の領域抽出手法の1つとして、予め用意した標準モデルをエネルギー最小化原理に基づいて変形させ、目的の輪郭を見つけるモデルフィッテイング(Model Fitting)手法が提案されている。
【0006】
この手法によれば、標準モデルという予め特徴を持たせたモデルを変形させて該当領域を抽出するため、高精度の抽出処理が可能となる。
【0007】
【非特許文献1】ツァガーン・バイガルマ、清水昭伸、小畑秀文、「3次元可変形状モデルによる腹部CT像からの腎臓領域抽出法の開発」、電子情報通信学会論文誌、D-II、2002年1月、Vol.J85-D-II、No.1、pp.140-148
【非特許文献2】清水昭伸、桜井博紀、柳田友尚、木畑秀文、縄野繁、「人体の電子アトラスに基づく3次元腹部CT像からの複数臓器の抽出処理とその性能評価−従来法との比較−」、信学技報、2005年、MI2005-15、pp.7-12
【非特許文献3】北川輝彦、奥尾一将、周向栄、横山龍二郎、原武史、藤田広志、兼松雅之、星博昭、「体幹部CT画像における横隔膜の変形による肝臓の確率的アトラスの自動生成とその肝臓自動抽出への応用」、信学技報、2005年、MI2005-16、pp.13-18
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記のモデルフィッティング手法(特許文献1参照)においても、十分な精度を得られないことがある。具体的には、上記のモデルフィッティング手法においては、外部エネルギーと内部エネルギーとの2つの種類のエネルギーを考慮しているが、これら2種類のエネルギーを考慮することによっては、十分な精度を得られないことがある。
【0009】
また、このような問題は、上記のような領域抽出処理のためのモデリング処理だけでなく、対象物のモデルを作成するモデリング処理においても一般的に生じる問題である。
【0010】
そこで、この発明の課題は、より正確なモデリング処理を実現することが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決すべく、請求項1の発明は、対象物のモデルを生成するモデリング装置であって、前記対象物に関する標準モデルを取得する取得手段と、モデルフィッティング手法を用いて所定の評価関数を最適化するように前記標準モデルを変形させ、前記対象物のモデルを生成するモデル変形手段とを備え、前記所定の評価関数は、先験的知識に基づき前記対象物の存在領域として想定される領域である想定領域に一致するように前記標準モデルが変形するときに最適化される先験的知識項を有することを特徴とする。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1の発明に係るモデリング装置において、前記想定領域は、前記対象物の存在確率が所定値よりも高い領域であることを特徴とする。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2の発明に係るモデリング装置において、前記先験的知識項は、前記想定領域の境界へと最短距離で接近するベクトルである接近ベクトルの向きに前記標準モデルの各制御点が移動するときに最適化されるものであることを特徴とする。
【0014】
請求項4の発明は、請求項3の発明に係るモデリング装置において、前記モデル変形手段が前記標準モデルを逐次変形させていく際において、前記接近ベクトルは変形後の前記標準モデルの各制御点の位置に応じて更新され、前記先験的知識項は、更新された前記接近ベクトルに基づいて算出されることを特徴とする。
【0015】
請求項5の発明は、請求項3の発明に係るモデリング装置において、前記接近ベクトルは、前記各制御点の初期位置に応じて前記各制御点ごとに予め設定され、前記モデル変形手段が前記標準モデルを逐次変形させていく際においても、前記先験的知識項は、常に、前記各制御点の初期位置に応じて前記各制御点ごとに予め設定された前記接近ベクトルに基づいて算出されることを特徴とする。
【0016】
請求項6の発明は、請求項1ないし請求項5のいずれかの発明に係るモデリング装置において、前記所定の評価関数は、前記標準モデルの形状が計測データにおける輪郭に近づくときに最適化される外部エネルギー項を有することを特徴とする。
【0017】
請求項7の発明は、請求項1ないし請求項6のいずれかの発明に係るモデリング装置において、前記所定の評価関数は、前記標準モデルの各制御点相互の関係が一定の関係に近づくときに最適化される内部エネルギー項を有することを特徴とする。
【0018】
請求項8の発明は、請求項1ないし請求項7のいずれかの発明に係るモデリング装置において、生成された前記対象物のモデルの存在位置に対応する領域を前記対象物の領域として計測データから抽出する手段とをさらに備えることを特徴とする。
【0019】
請求項9の発明は、対象物のモデルを生成するモデリング方法であって、前記対象物に関する標準モデルを初期位置に配置する工程と、モデルフィッティング手法を用いて所定の評価関数を最適化するように前記標準モデルを変形させ、前記対象物のモデルを生成する工程とを備え、前記所定の評価関数は、先験的知識に基づき前記対象物の存在領域として想定される領域である想定領域に一致するように前記標準モデルが変形するときに最適化される先験的知識項を有することを特徴とする。
【0020】
請求項10の発明は、コンピュータに、前記対象物に関する標準モデルを初期位置に配置する手順と、モデルフィッティング手法を用いて所定の評価関数を最適化するように前記標準モデルを変形させ、前記対象物のモデルを生成する手順とを実行させるためのプログラムであって、前記所定の評価関数は、先験的知識に基づき前記対象物の存在領域として想定される領域である想定領域に一致するように前記標準モデルが変形するときに最適化される先験的知識項を有することを特徴とする。
【0021】
請求項11の発明は、計測データから対象物の領域を抽出する領域抽出装置であって、前記対象物に関する標準モデルを取得する取得手段と、モデルフィッティング手法を用いて所定の評価関数を最適化するように前記標準モデルを変形させる手段と、変形後の前記標準モデルの存在位置に対応する領域を前記対象物の領域として前記計測データから抽出する手段とを備え、前記所定の評価関数は、先験的知識に基づき対象物が存在すると想定される想定領域に一致するように前記標準モデルが変形するときに最適化される先験的知識項を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
請求項1ないし請求項11に記載の発明によれば、先験的知識を反映させてモデルを変形させることができるので、より正確なモデリング処理を実現することができる。
【0023】
特に、請求項4に記載の発明によれば、標準モデルが逐次変形されていく際において、接近ベクトルは変形後の標準モデルの各制御点の位置に応じて更新され、先験的知識項は、更新された接近ベクトルに基づいて算出される。したがって、随時更新される接近ベクトルを考慮することにより、先験的知識をより高精度に反映させてモデルフィッティングを行うことができる。
【0024】
また、請求項5に記載の発明によれば、対象物の存在確率マップにおける全画素について接近ベクトルを予め準備しておく必要がなく、標準モデルの各制御点の初期位置における各接近ベクトルを求めれば済むので、効率的である。
【0025】
また、請求項8に記載の発明によれば、生成されたモデルの存在位置に対応する領域を対象物の領域として計測データから抽出することによって、先験的知識を反映させて、対象物の領域を正確に抽出することができる。
【0026】
また、請求項11に記載の発明によれば、先験的知識を反映して変形された標準モデルの存在位置に対応する領域を対象物の領域として計測データから抽出するので、先見的知識を反映させて、対象物の領域を正確に抽出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0028】
<1.構成>
図1は、本発明の実施形態に係る領域抽出装置1の概要を示す図である。領域抽出装置1は、計測データ(詳細には3次元計測データ(立体計測データとも称する))から所望の対象物の領域(詳細には立体領域)を抽出する装置である。なお、この領域抽出装置1は、モデルフィッティング手法を用いて対象物モデルの生成処理を行うことから、「モデリング装置」とも称せられる。
【0029】
図1に示すように領域抽出装置1は、パーソナルコンピュータ(以下、単に「パソコン」と称する)2と、モニター3と、装着部5と、操作部4とを備えている。
【0030】
パソコン2は、制御部20、入出力I/F21、及び記憶部22を備えている。
【0031】
入出力I/F21は、モニター3、操作部4および装着部5とパソコン2との相互間でデータの送受信を行うためのインターフェイス(I/F)であり、制御部20との間でデータの送受信を行う。
【0032】
記憶部22は、例えばハードディスクなどで構成されており、後述の各種処理を実行するためのソフトウェアプログラム(以下、単に「プログラム」と称する)PG等を格納している。
【0033】
制御部20は、主にCPU、ROM20a及びRAM20b等を有し、パソコン2の各部を統括制御する部位である。
【0034】
モニター3は、例えば、CRTで構成され、制御部20で生成される表示用画像を可視的に出力する。
【0035】
操作部4は、キーボード及びマウス等から構成され、使用者(ユーザ)に各種操作にしたがって各種信号を入出力I/F21に送信する。
【0036】
また、装着部5は、メモリカード51等の記憶媒体を着脱自在に装着することができる。そして、装着部5に装着されたメモリカード51に格納される各種データ又はプログラム等を入出力I/F21を介して制御部20或いは記憶部22に取り込むことができる。
【0037】
次に、領域抽出装置1の各種機能について説明する。
【0038】
図2は、領域抽出装置1の各種機能を示すブロック図である。
【0039】
これらの各種機能は、制御部20内のCPU等の各種ハードウェアを用いて所定のプログラムPGを実行することによって実現される。
【0040】
図2に示されるように、領域抽出装置1は、モデル格納部11と計測データ入力部12と暫定領域抽出部13と初期位置決定部14とモデルフィッティング部15と領域抽出部16と抽出領域出力部17とを備え、入力される3次元画像(3次元計測データ)から使用者(ユーザ)等が抽出したい物体(以下、「抽出対象領域(物体)」とも称する)を抽出し、出力することができる。
【0041】
モデル格納部11は、モデルフィッティング処理に用いられる「標準モデル」を格納している。領域抽出装置1は、モデル格納部11から読み出すことによって「標準モデル」を取得することができる。ここで、「標準モデル」は、後述のモデルフィッティング手法において用いられるモデルであり、抽出対象領域(例えば臓器)の標準的なモデルを意味する。
【0042】
計測データ入力部12は、CT装置あるいはMRI装置などによって取得された3次元計測データ(ボリュームデータ)を入力する機能を有している。
【0043】
暫定領域抽出部13は、モデルフィッティング手法とは異なる手法を用いて、抽出対象物体(領域)を暫定的に抽出する機能を有している。
【0044】
初期位置決定部14は、暫定的に抽出された抽出対象物体(領域)を用いて、標準モデルの初期位置を決定する機能を有している。
【0045】
モデルフィッティング部15は、モデルフィッティング手法を用いて標準モデルを変形することにより対象物のモデルを生成する機能を有している。
【0046】
領域抽出部16は、モデルフィッティング部15によって生成されたモデルを用いて計測データから対象物の領域を抽出する機能を有している。
【0047】
抽出領域出力部17は、抽出した対象物体をモニター3に表示出力する機能を有している。
【0048】
<2.動作>
<動作概要>
この実施形態では、X線CT装置によって取得される3次元画像(ボリュームデータとも称する)に基づくモデルフィッティング処理、および当該モデルフィッティング処理を用いた領域抽出処理等について説明する。ただし、本発明は、これに限定されず、他の計測データ(例えば、MRI装置によって取得される3次元画像等)に基づくモデルフィッティング処理および当該モデルフィッティング処理を用いた領域抽出処理等にも適用することができる。
【0049】
図3は、X線CT装置によって取得される3次元画像TDP1を示す図である。
【0050】
図3に示されるように、3次元画像TDP1は、物体(人体)を輪切りにした断面を示す複数(例えば、数十枚から数百枚)のスライス画像(断層画像)SDで構成されている。各スライス画像SDは、各点(各画素)でのX線の吸収量(CT値)を濃淡表示して可視化した画像である。図3においては、3次元画像TDP1を構成する複数のスライス画像SDのうちの所定位置におけるスライス画像PMも併せて示されている。
【0051】
図4は、領域抽出装置1の全体動作を示すフローチャートである。
【0052】
領域抽出装置1は、図4に示される各処理(ステップS1〜S4)を実行することによって、入力画像(3次元画像)から使用者(ユーザ)が指定した対象物を抽出する。なお、抽出対象物の指定は、ステップS1の処理開始前に使用者(ユーザ)によって予め行われる。指定手法としては、例えば、記憶部22に予めデータベース化されて保存されている項目一覧(例えば各種の臓器等が列挙された項目一覧)から、操作部(例えばマウス)4等の操作により使用者(ユーザ)が所望の項目を選択する態様等を採用することができる。以下では、抽出対象物として所定の臓器が指定されている場合を想定し、図4の各処理について説明する。
【0053】
まず、ステップS1では、領域抽出装置1に入力される3次元画像から使用者(ユーザ)の指定した物体(臓器)が暫定的に抽出される。後述するように、このステップS1では、モデルフィッティング手法とは異なる手法を用いて抽出対象領域が抽出される。
【0054】
次に、ステップS2において、ステップS1で暫定的に抽出された物体(臓器)を用いて、標準モデルの初期位置(標準モデルを計測データ中に配置する際の初期位置)が決定され、標準モデルの配置が行われる。ステップS1の暫定抽出処理によれば、この初期位置を正確に求めることが可能になる。
【0055】
さらに、ステップS3では、初期位置に配置された標準モデルがモデルフィッティング手法によって変形され、対象物のモデルが生成される。そして、変形後の標準モデルの位置に存在する領域が、対象物の領域として抽出される。
【0056】
ステップS4では、作成された個別モデルが抽出対象物体としてモニター3等に出力される。
【0057】
このように、最終的にはモデルフィッティング手法を用いて抽出対象物体が抽出される(ステップS3)。なお、ここでは、モデルフィッティング手法における標準モデルの初期位置を決定するに際して、モデルフィッティング手法とは異なる手法(領域拡張法)を用いる(ステップS1,S2)場合を例示する。
【0058】
また、後述するように、モデルフィッティング処理(ステップS3)において先験的知識を考慮することによって、より正確なモデルフィッティング処理を行うことが可能になる。
【0059】
以下、ステップS1,S2,S3の各処理について順次に詳述する。
【0060】
<暫定領域抽出処理(ステップS1)>
上述のように、暫定領域抽出処理(ステップS1)では、使用者(ユーザ)によって指定された物体(臓器)を暫定的に抽出することを目的とする。本実施形態では、その抽出方法の一例として領域拡張法を採用する。
【0061】
図5は、領域拡張法を用いた暫定領域抽出処理(ステップS1)の詳細を示すフローチャートである。図6は、人体をX線CT装置で撮影した際の所定位置におけるスライス画像PMを示す図であり、図7は、図6に示されるスライス画像PM上の画素M1を中心として隣接する画素付近を拡大表示した図である。図7においては、スライス画像PMの画素M1の隣接画素として、同一階層のスライス画像PMにおける隣接8画素M2〜M9に加えて、スライス画像PUにおける隣接9画素U1〜U9と、スライス画像PDにおける隣接9画素D1〜D9とが示されている。尚、スライス画像PUは、スライス画像PMに対して+z方向に隣接するスライス画像(換言すればスライス画像PMの直上層のスライス画像)であり、スライス画像PDは、スライス画像PMに対して−z方向に隣接するスライス画像(換言すればスライス画像PMの直下層のスライス画像)である。
【0062】
以下では、図6のスライス画像PMに表示されている物体(臓器)OB1を暫定的に抽出する場合を具体例に挙げて領域拡張法を用いた暫定領域抽出処理について説明する。
【0063】
まず、ステップS11において、使用者(ユーザ)によって抽出対象物体(臓器)内の拡張開始画素が特定される。具体的には、抽出したい物体(抽出対象物体)が表示されている任意のスライス画像(ここではスライス画像PM)上で、操作部(例えばマウス)4等の操作により抽出対象物体内の任意の点を特定する。より詳細には、物体OB1を抽出したい場合、スライス画像PM上の物体(臓器)OB1内の任意の点(例えばM1)をマウス等により特定すればよい(図6参照)。この操作により、スライス画像PM上において特定点M1に相当する画素が拡張開始画素となる。
【0064】
次に、ステップS12において、拡張開始画素に隣接する画素が拡張候補画素として検出される。詳細には、ステップS11において拡張開始画素をM1と特定したとすると、画素M1に隣接する画素全てが拡張候補画素となる。つまり、スライス画像PM上の画素M2〜M9、スライス画像PU上の画素U1〜U9、及びスライス画像PD上の画素D1〜D9の計26画素が拡張候補画素となる。
【0065】
次に、ステップS13において拡張候補画素がステップS12で検出されたか否かが判定され、ステップS12で拡張候補画素が検出されている場合には、ステップS14へ移行する。
【0066】
ステップS14では、検出された拡張候補画素の濃度値が所定範囲内か否かが判定される。具体的には、物体(臓器)の有する濃度値の範囲が物体(臓器)ごとに予め定められており、拡張候補画素の濃度値が、抽出対象物体の持つ濃度値の範囲内か否かを判定する。これにより、拡張候補画素が所定範囲内の濃度値を有していると判定されると、ステップS15に移行する。
【0067】
ステップS15では、当該拡張候補画素を抽出対象物体内の画素とする領域拡張を行う。
【0068】
一方、ステップS14において、拡張候補画素が所定範囲内の濃度値を有していないと判定されると、当該拡張候補画素の領域拡張は行われない。
【0069】
次に、ステップS16では、拡張候補画素の濃度判定工程(ステップS14)をまだ経ていない拡張候補画素が存在するか否かが判断される。
【0070】
濃度判定工程(ステップS14)を経ていない拡張候補画素が存在する場合には、当該未終了の拡張候補画素に対してステップS14、S16の処理が実行される。
【0071】
一方、全ての拡張候補画素に対して濃度判定工程(ステップS14)が終了している場合には、ステップS12に戻り、ステップS15において拡張された画素(換言すれば、領域内の画素であるとして特定された画素)にさらに隣接する画素であって、領域内に存在するか否かが未だ判定されていない画素が、新たな拡張候補画素として検出される。その後、新たに検出された拡張候補画素に対して、上述のステップS13〜S16の工程が実行される。ステップS12〜S16の工程は、新たな拡張候補画素を検出することが可能な限り繰り返され、新たな拡張候補画素が検出できなくなると、暫定領域抽出処理は終了する(ステップS13)。
【0072】
このようにステップS12〜S16の工程が繰り返し実行されることによって拡張開始画素から徐々に領域拡張が行われ、使用者(ユーザ)によって指定された物体(臓器)が暫定的に抽出される。
【0073】
<初期位置決定処理(ステップS2)>
次に、モデルフィッティング手法における標準モデルの初期位置を決定する初期位置決定処理(ステップS2)について、図8〜図10を参照しながら説明する。図8は、重心点を利用した初期位置決定処理(ステップS2)の詳細を示すフローチャートである。また、図9は、3次元画像(計測データ)に含まれる物体OBaを示す図であり、図10は、標準モデルSOを初期位置に移動させる様子を概念的に示す図である。図10においては、標準モデルを初期配置した際の抽出対象物体と標準モデルとの位置関係も示されている。
【0074】
尚、以下では図示の簡略化のため、図9に示されるような3次元画像TDP1中に存在する物体OBaが抽出対象物体であると仮定して説明する。
【0075】
まず、ステップS21において、ステップS1で暫定的に抽出された物体OBaの重心点GZが算出される。
【0076】
次に、ステップS22では、後述のモデルフィッティングにおいて用いられる標準モデルの重心点GHをステップS21で算出された重心点GZに合わせる標準モデルの初期配置が行われる。例えば、図10に示されるように、標準モデルSOの重心点GHを抽出対象物体OBaの重心点GZに合わせるように標準モデルSOを移動して、標準モデルSOを計測データ中に初期配置する。
【0077】
重心点を利用した標準モデルの初期配置が終了すると、モデルフィッティング処理(ステップS3)に移行する。
【0078】
<モデルフィッティング処理(ステップS3)>
ステップS3のモデルフィッテイング処理は、予め準備された一般的(標準的)な抽出対象物体(単に対象物とも称する)のモデルである「標準モデル」を、抽出対象物体から得られる情報(形状等)を用いて変形する処理である。尚、本出願においては、モデルフィッティング処理による変形後の標準モデル(換言すれば抽出対象物体の情報が反映された標準モデル)を「個別モデル」とも称するものとする。
【0079】
このモデルフィッティング処理では、初期位置に配置された標準モデルをモデルフィッティング手法によって変形することで、抽出対象物体を抽出する処理が行われる。
【0080】
図11は、モデルフィッティング処理(ステップS3)の詳細を示すフローチャートである。図12は、抽出対象物体OBaの境界点Q1を中心にした領域RQ(図10参照)付近を拡大表示した模式図であり、図13は、一部のスライス画像PQ1、PQ2及びPQ4を示す図である。図14は、制御点間を仮想バネで繋いだ模式図である。
【0081】
尚、抽出対象物体の標準モデルは、例えば、微小な多角形(例えば、三角形)のポリゴンで構成され、記憶部22等に保存されている。ポリゴンで構成された標準モデルは、各ポリゴンの頂点の3次元座標によってそのモデルの表面形状を表現することができる。また、標準モデルにおけるポリゴンの頂点のうち、全頂点あるいは代表的な幾つかの頂点を「制御点」とも称する。
【0082】
以下では、図11〜図14を用いてモデルフィッティング処理について詳述する。
【0083】
まず、ステップS31では、標準モデルSOの制御点Cjに対応する点(以下、「対応点」とも称する)を決定する処理が行われる(図11参照)。ここでは、抽出対象物体OBaの輪郭(境界)を示す画素(境界点)のうち、制御点Cjの最も近傍に存在する画素を当該制御点Cjの対応点とする手法を用いる。尚、抽出対象物体OBaの輪郭(境界)は、各スライス画像SDにおいて、エッジ抽出処理を行うことなどによって取得される。
【0084】
例えば、図12(立面図)においては、制御点C1の対応点は、制御点C1の最も近傍に存在する境界点(画素)Q1となる。ここで、図12においては、xz平面に平行な所定の平面(2次元空間)における境界点のみが示されているが、実際には、図13に示されるような3次元空間において制御点C1の最も近傍に存在する境界点が対応点となる。図13においては、制御点C1の各スライス画像PQ1、PQ2、PQ4における射影点が×印で示されている。
【0085】
次に、ステップS32では、標準モデルSOの制御点Cjのうち任意の一点(以下、「移動対象点」とも称する)(例えば制御点C1)が一方向(例えばA1方向)に微小量L移動される(図12参照)。
【0086】
さらに、ステップS33では、ステップS32において移動対象点を移動させ一時的に変形させた状態のモデル(以下、「一時変形モデル」とも称する)の総合エネルギーUeが算出される。
【0087】
総合エネルギーUeは、式(1)に示されるように、制御点Cjと対応点との距離に関する外部エネルギー項Feと、過剰な変形を避けるための内部エネルギー項Geと、先験的知識を考慮するための先験的知識項Heとの和で表される。尚、外部エネルギー項(単に外部エネルギーとも称する)Fe、内部エネルギー項(単に内部エネルギーとも称する)Ge、および先験的知識項Heについては後述する。
【0088】
【数1】
【0089】
次に、ステップS34において、移動対象点が全ての方向に移動されたか否かを判定する。例えば、3次元空間の全方位における移動対象点の移動方向を26方向(当該移動対象点(画素)に隣接する26画素へ向かう方向)とすると、26方向全ての方向に制御点C1が移動されたか否かを判定する。
【0090】
移動対象点(制御点C1)を26方向全てに移動させた一時変形モデルの作成が終了していなければ、移動対象点の移動方向を変更して再び微小量L移動させ、異なる移動方向パターンの一時変形モデルを作成し、各一時変形モデルの総合エネルギーUeを算出する(ステップS32、S33)。
【0091】
そして、ステップS34において全方向の移動が終了したと判定されると、ステップS35へ移行する。
【0092】
ステップS35では、作成された全パターンの一時変形モデルの中から、総合エネルギーUeを最小とする一時変形モデルが選択される。換言すれば、或る制御点Cjを26方向に移動させて生成された各一時変形モデルのうち、総合エネルギーUeを最小化する一時変形モデルが選択される。例えば、後述する3つの項Fe,Ge,Heのうち外部エネルギーFeのみを考慮する場合には、その制御点が対応点に近づく方向へと移動する一時変形モデルが選択されることになる。また、内部エネルギーGeを考慮する場合には、その制御点が対応点に近づく方向とは異なる方向へと移動する一時変形モデルが選択されることもある。また、先験的知識項Heを考慮する場合には、先験的知識が反映されるため、同種の対象物の存在確率が高い位置へと移動する一時変形モデルが選択されることもある。
【0093】
次に、ステップS36において全制御点Cjの移動が終了したか否かを判定する。具体的には、標準モデルSOの全ての制御点Cjについて微小量Lの移動が終了したか否かを判定し、終了していない制御点(未了点とも称する)が存在すれば、移動対象点を当該制御点(未了点)に変更してステップS32〜S35の動作を繰り返し、全ての制御点Cjの移動を完了した一時変形モデルを作成する。一方、全ての制御点の移動が終了していれば、ステップS37へ移行する。
【0094】
ステップS37では、モデルフィッティング処理を終了するか否かを判定する。具体的には、全ての制御点Cjの移動を完了させた一時変形モデルにおける複数の制御点とその対応点との距離の平均値が所定値以下であることを条件とし、当該条件を満たす場合に、モデルフィッティング処理を終了するようにすればよい。これによれば、各制御点が対応点に所定程度近づいた場合に同処理を終了することができる。または、これに加えてあるいはこれに代えて、(全ての制御点Cjの移動を完了させた)前回の一時変形モデルと今回の一時変形モデルとの総合エネルギーUeの変化量が所定量以下であるか否かを終了判定の基準として用いてもよい。これによれば、制御点を移動しても総合エネルギーがあまり変化しなくなった場合に処理を終了することができる。
【0095】
ステップS37においてモデルフィッティング処理を終了しないと判定される場合は、ステップS38へと移行する。
【0096】
ステップS38では、上述のステップS32〜S37で実行される処理を単位処理ループとして当該単位処理ループが所定回数W(例えば10回)実行されたか否かを判定する。所定回数W実行されていなければ、所定回数W実行されるまで再びステップS32〜S37の処理ループを繰り返し、所定回数W実行されていれば、ステップS39へと移行する。すなわち、全ての制御点の移動を完了させた一時変形モデルが所定回数W作成されるまで、単位処理ループが繰り返される。
【0097】
ステップS39では、ステップS31で決定した対応点の更新が行われる。具体的には、上述の処理ループによって所定回数W移動した各制御点の最も近傍に存在する画素(境界点)を各制御点それぞれの新しい対応点とする対応点の更新が行われ、再びステップS32〜S39の処理が繰り返し行われる。このような「対応点の更新」によれば、制御点の移動に伴って制御点の最近傍境界点が変わる場合にも、対応点の適正化を図ることができる。
【0098】
一方、ステップS37においてモデルフィッティング処理を終了すると判定される場合は、最終的に得られた一時変形モデルが、抽出対象物体に相当する個別モデルとして決定される。これによって、抽出対象物体のモデルが生成される。また、その後、最終的に得られた個別モデル(すなわち、生成された対象物モデル)の位置に存在する領域が、対象物の領域として計測データから抽出される。
【0099】
以上の処理によって、このステップS3の処理は終了する。
【0100】
このようなモデルフィッティング処理(ステップS3)においては、標準モデルSOを1制御点ごとに微小量Lずつ徐々に変形させることによって、抽出対象領域に相当する個別モデルが作成される。
【0101】
ここで、総合エネルギーUeを構成する外部エネルギーFe及び内部エネルギーGeについて説明する。
【0102】
外部エネルギーFeは、各制御点Cjと当該各制御点Cjにそれぞれ対応する対応点Qjとの距離の二乗を用いて式(2)のように表される。
【0103】
【数2】
【0104】
但し、αは定数、Ntは制御点の数、|Cj−Qj|は制御点Cjと対応点Qjとの距離を表すものとする。
【0105】
このような外部エネルギーFeが非常に大きくなるような一時変形モデル、すなわち、制御点Cjと対応点Qjとの距離が移動前より大きくなった一時変形モデルは、その総合エネルギーUeが大きくなるため、上述のステップS35(総合エネルギーUeを最小とする制御点の移動を採用する工程)において採用されにくくなる。逆に言えば、外部エネルギーFeを考慮することによって、各制御点Cjと対応点Qjとの距離が移動前よりも小さくなる(すなわち各制御点Cjが対応点Qjに近づく)一時変形モデルが選択されやすくなる。
【0106】
外部エネルギーFeは、標準モデルSOの各制御点Cjと計測データにおける各対応点Qjとの関係を反映したエネルギー項であるとも表現される。あるいは、外部エネルギーFeは、標準モデルの各制御点Cjと計測データにおける各対応点Qjとの距離が近づくときに最適化されるエネルギー項であるとも表現される。端的に言えば、この外部エネルギーFeは、標準モデルSOの形状を計測データにおける輪郭に近づけようとする役割を果たす。
【0107】
また、内部エネルギーGeは、例えば、図14に示されるように、制御点Cj間が仮想バネSPR(SPR1,SPR2,SPR3,...)によって繋がれていると想定すると、式(3)のように表される。
【0108】
【数3】
【0109】
但し、βは定数、Kは仮想バネのバネ係数、Nhは仮想バネの本数、wは各仮想バネの自然長からの変位量を表すものとする。
【0110】
式(3)によると、各制御点Cjの過剰な移動は、仮想バネSPRに蓄えられるエネルギーの増大として表現される。例えば、1つの制御点Czが、或る点Vzへと移動し他の制御点との相対変位が増大したとすると、仮想バネSPR1、SPR2及びSPR3には、各仮想バネの伸びによるエネルギーが蓄えられ内部エネルギーGeひいては総合エネルギーUeが大きくなる。
【0111】
このような過剰変形を伴う一時変形モデルは、その内部エネルギーGeが大きくなり、その総合エネルギーUeも大きくなるため、上述のステップS35(総合エネルギーUeを最小とする制御点の移動を採用する工程)において採用されにくくなる。
【0112】
換言すれば、内部エネルギーGeを減少させて総合エネルギーUeを減少させるような一時変形モデルがステップS35で選択されることによって、各制御点Cjの移動による過剰な変形を防止する作用を得ることができる。
【0113】
つまり、このような内部エネルギーGeを導入することによって、標準モデルSOの形状すなわち標準モデルSOを構成する各ポリゴンの形状を損なわない制御点Cjの移動が可能となる。なお、内部エネルギーGeを考慮する場合には、各制御点Cjが対応点Qjに近づく方向とは異なる方向へと移動する一時変形モデルが選択されることもある。
【0114】
また、ステップS31において対応点Qjを求める際の境界抽出処理が正確でないなどの理由によって、対応点Qjが正しいものでない場合が存在する。このような場合において、外部エネルギーFeのみを考慮するときには、或る制御点が、不正確な対応点に向けて移動するため、不正確なモデルフィッティングが行われることになる。これに対して、内部エネルギーGeを考慮することによれば、このような場合においても、標準モデルSOの形状を損なわないような変形動作が行われることになるため、より正確なモデリング処理が可能になる。
【0115】
この内部エネルギーGeは、標準モデルSOの各制御点Cj相互の関係が一定の関係(すなわち、全仮想バネが自然長を有する状態)に近づくときに最適化されるエネルギー項であるとも表現される。端的に言えば、この内部エネルギーGeは、標準モデルSOを一定の形状に維持しようとする役割を果たす。
【0116】
つぎに、先験的知識項Heについて説明する。
【0117】
先験的知識項Heは、計測対象物と同じ種類の対象物に関して予め求められたデータ(先験的知識)に基づくものであり、例えば、当該対象物の存在確率に基づいて次のようにして定められる。
【0118】
図15は、予め求められた同種の複数(ここでは5つ)の対象物(臓器)B1〜B5の存在位置を重ね合わせて示す図であり、図16は、当該種類の対象物の存在確率マップMPを示す図である。存在確率マップMPは、各位置における対象物の存在確率を示すものである。図16においては、存在確率が点の密度で表現されており、比較的黒い部分の存在確率は比較的白い部分に比べて高い。
【0119】
或る対象物に関する存在確率マップMP(図16)は、同種の複数の対象物の存在位置(図15参照)に関する先験データに基づいて求められる。図16の存在確率マップMPにおいては、図15と見比べると判るように、同種の複数の対象物B1〜B5のうち多数の対象物が存在する位置では存在確率が高く、逆に、複数の対象物B1〜B5のうち少数の対象物しか存在しない位置では存在確率は低い。なお、ここでは簡単化のため、図15において5つの対象物を図示しているが、実際にはより多数の対象物に基づいて、当該種類の対象物に関する存在確率マップMPを生成することが好ましい。また、存在確率マップMPは、図15等においては平面的に示されているが、実際には、3次元空間における各点(画素)ごとの存在確率が示された3次元マップ(立体マップ)として得られる。
【0120】
そして、対象物の各位置における存在確率(換言すれば、対象物の存在確率分布)という先験的知識に基づき対象物が存在することが想定される領域(換言すれば、対象物の存在領域として想定される領域)(以下、「想定領域」とも称する)RB(図17参照)を、図16の存在確率マップMPを用いて求める。ここでは、存在確率マップMPにおいて、その存在確率が所定の閾値TH1(例えば80%〜90%程度)よりも高い画素で構成される領域を想定領域RBとして求める。この閾値TH1は、例えば、想定領域RBの容積が、複数の対象物の平均容積と同一となるように定められればよい。なお、図17においては、想定領域RBの境界が実線で示されている。
【0121】
また、図18は、各位置から想定領域RBの境界へと最短距離で接近するベクトル(以下、「接近ベクトル」とも称する)pを示す図である。この接近ベクトルpは、詳細には、存在確率マップMPにおける各画素を始点とし、当該各画素と想定領域RBの境界とを最短距離で結ぶベクトルである。なお、図18においては、図示の簡略化等のため、代表的な幾つかの点についての接近ベクトルpのみを示しているが、実際には全画素についての接近ベクトルpが求められているものとする。また、図18のような、各位置における接近ベクトルpを表示するマップを「接近ベクトルマップVM」とも称するものとする。
【0122】
また、図19は、初期状態に配置された標準モデルSOの各制御点Cj(図19において白丸印で示す)における接近ベクトルpjを示す図である。各接近ベクトルpjは、図18の接近ベクトルマップVMにおける、各制御点Cjの位置の接近ベクトルpをそのまま採用することによって求められる。
【0123】
上記の先験的知識項Heは、例えば、このような接近ベクトルpjを用いて、式(4)のように表される。
【0124】
【数4】
【0125】
但し、γは定数、uはステップS32における制御点Cjの移動状態(移動の向きおよび移動量)を表すベクトルを表し、θjは、ベクトルuと接近ベクトルpjとの間の角度を表すものとする(図20参照)。また、記号(・)は、ベクトルの内積を意味するものとする。
【0126】
式(4)に示されるように、各制御点Cjの移動の向きと接近ベクトルpjの向きとが大きく異なるときには、値(1−cosθj)が大きくなる(例えばθj=180(deg)のときには値(1−cosθj)=2)。そのため、先験的知識項Heは比較的大きな値になり、ひいては総合エネルギーUeが大きくなる。そして、このように各制御点Cjが接近ベクトルpjと大きく異なる向きに移動するときの一時変形モデルは、その先験的知識項Heが大きくなりその総合エネルギーUeも大きくなるため、上述のステップS35において採用されにくくなる。
【0127】
逆に、各制御点Cjの移動の向きと接近ベクトルpjの向きとが近いときには、値(1−cosθj)が小さくなる(例えばθj=0(deg)のときには値(1−cosθj)=0)。そのため、先験的知識項Heは小さくなり、ひいては総合エネルギーUeが小さくなる。特に、各制御点Cjの移動の向きと接近ベクトルpjの向きとが一致するときには先験的知識項Heは最適化(最小化)される。そして、このように各制御点Cjが接近ベクトルpjに近い向きに移動するときの一時変形モデルは、その先験的知識項Heが小さくなりその総合エネルギーUeも小さくなるため、上述のステップS35(総合エネルギーUeを最小とする制御点の移動を採用する工程)において採用されやすくなる。
【0128】
換言すれば、先験的知識項Heを減少させて総合エネルギーUeを減少させるような一時変形モデルがステップS35で選択されることによって、標準モデルSOを想定領域RBに近づけるように変形させる作用を得ることができる。
【0129】
また、先験的知識項Heは、標準モデルが上述の想定領域RBに一致するように変形されるときに最適化される項であるとも表現される。この先験的知識項Heは、想定領域RBの境界へと最短距離で近づく向き(端的に言えば接近ベクトルpjの向き)に標準モデルSOの各制御点Cjが移動するときに最適化される項であるとも表現される。このような先験的知識項Heを導入することによれば、先験的知識を用いて、より安定的に各制御点Cjを移動させることが可能になる。
【0130】
また、この実施形態においては、標準モデルSOが逐次変形されていく際において、式(4)の先験的知識項Heにおける接近ベクトルpjは、変形後の標準モデルの各制御点Cjの位置に応じて随時更新されるものとする。具体的には、ステップS32〜S36(図11)の動作を繰り返して全制御点の移動を終了した後に、接近ベクトルpjの更新動作を行う。ここでは、ステップS39において、対応点の更新動作とともに接近ベクトルの更新動作を行うものとする。接近ベクトルマップVM(図18参照)において各画素の接近ベクトルpが求められているので、式(4)の先験的知識項Heにおける各接近ベクトルpjは、変形後の標準モデルにおける各制御点Cjの位置(すなわち、移動後の更新位置)における接近ベクトルpを採用することによって随時更新される(図21参照)。そして、更新後の接近ベクトルpjを用いた式(4)によって先験的知識項Heが算出される。これによれば、より正確に想定領域RBに近づくような変形を促すことが可能になる。すなわち、随時更新される接近ベクトルを考慮することにより、先験的知識をより高精度に反映させてモデルフィッティングを行うことができる。なお、図21は、移動後の各制御点Cjにおける更新された接近ベクトルpjを示す図である。図21においては、移動前の標準モデルSOの位置が破線で示されており、移動後の標準モデルSOの位置が実線で示されている。
【0131】
上述のステップS3の処理においては、このような外部エネルギーFeと内部エネルギーGeと先験的知識項Heとの和で表現される総合エネルギーUeを最小とする一時変形モデルが、標準モデルSOを最適に変形させる一時変形モデル(「最適変形モデル」とも称する)、すなわち個別モデルとして決定される。換言すれば、評価関数としての総合エネルギーUeを最適化する一時変形モデルが個別モデルとして決定される。
【0132】
上記のような処理によれば、先験的知識項Heを含む総合エネルギーUe(評価関数)を最小化(最適化)するように標準モデルSOが変形され、対象物のモデルが生成されるので、先験的知識を反映させてモデルを変形させることができる。したがって、より正確なモデリング処理が可能になる。また、当該モデリング処理によって得られた個別モデルの対応位置に存在する領域が抽出対象領域として計測データから抽出されるため、適切な領域抽出処理が実現される。
【0133】
また、上述したように、ステップS31において対応点Qjを求める際の境界抽出処理が正確でないなどの理由によって、対応点Qjが正しいものでない場合が存在する。このような場合において、外部エネルギーFeのみを考慮するときには、或る制御点が、不正確な対応点に向けて移動するため、不正確なモデルフィッティングが行われることになる。これに対して、外部エネルギーFeだけでなく先験的知識項Heをも考慮することによれば、このような場合においても、先験的知識を反映させた変形動作が行われることになるため、より正確なモデリング処理が可能になる。
【0134】
<3.変形例>
以上、この発明の実施の形態について説明したが、この発明は上記説明した内容のものに限定されるものではない。
【0135】
上記実施形態においては、標準モデルが逐次変形される際において、式(4)の先験的知識項Heにおける各接近ベクトルpjが各制御点Cjの移動に応じて随時更新される場合を例示したが、これに限定されない。例えば、標準モデルが逐次変形される際において、式(4)の先験的知識項Heにおける各接近ベクトルpjとして、標準モデルSOの各制御点Cjの初期位置に対する各接近ベクトルpjを各制御点Cjごとに予め設定しておき、標準モデルが逐次変形される際においても、式(4)における各接近ベクトルpjを更新することなく先験的知識項Heを算出するようにしてもよい。詳細には、各制御点Cjに対する各接近ベクトルpjとして、制御点Cjの更新後においても常に(固定的に)図19のような初期位置に対する各接近ベクトルpjを用いるようにしてもよい。これによれば、存在確率マップMPにおける全画素について接近ベクトルpを予め準備しておく必要がなく、標準モデルSOの各制御点Cjの初期位置における各接近ベクトルpjのみを求めれば済むので、効率化を図ることが可能である。
【0136】
また、上記実施形態においては、式(4)を用いて接近ベクトルpjの向きに各制御点Cjが移動しやすくなるような先験的知識項Heを用いたが、これに限定されない。たとえば、次の式(5)を用いて、接近ベクトルpjの向きだけでなく接近ベクトルpjの大きさにも基づいた先験的知識項Heを用いるようにしてもよい。
【0137】
【数5】
【0138】
また、図22は、このような変形例に係る動作を示すフローチャートである。
【0139】
この変形例においては、ステップS35とステップS36との間にステップS51〜S54の各処理が含まれる点で、上記実施形態のフローチャート(図11)と相違する。
【0140】
具体的には、値kをインクリメントしながら(例えば、k=2,3,...,Nk)、ステップS35で選択された一時変形モデルに対応する移動の向きと同一の向きに、その制御点を元の移動量|u|(=L)の整数倍(k倍)移動させた一時変形モデルを求め(ステップS51)、各移動後の一時変形モデルの各総合エネルギーUeを算出する(ステップS52)、という動作を繰り返す。そして、この動作が所定回数(例えば(Nk−1)回)行われたと判定(ステップS53)された後に、そのうち最も総合エネルギーUeが最適化される一時変形モデルを選択し、当該選択された一時変形モデルに対応する位置へとその制御点を移動させる(ステップS54)。これによれば、式(5)に示すように、接近ベクトルpjの大きさに近い大きさの変形が行われるときに先験的知識項Heが最小化されることになり、想定領域RBに早く近づきやすくすることができる。すなわち、処理の高速化を図ることができる。
【0141】
また、上記実施形態においては、外部エネルギー項Feと内部エネルギー項Geと先験的知識項Heとの3つの項の和で表される総合エネルギーUe(式(1)参照)を評価関数として用いたがこれに限定されない。たとえば、内部エネルギー項Geを考慮せず、外部エネルギー項Feと先験的知識項Heとの和で表される総合エネルギーUeを評価関数として用いるようにしてもよい。
【0142】
また、上記実施形態においては、標準モデルを領域抽出装置1内のモデル格納部11から取得する場合を例示したが、これに限定されず、領域抽出装置1に接続された他の装置からネットワーク等を介して「標準モデル」を取得するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】領域抽出装置の概要を示す図である。
【図2】領域抽出装置の各種機能を示すブロック図である。
【図3】X線CT装置によって取得される3次元画像と所定位置のスライス画像とを示す図である。
【図4】領域抽出装置の全体動作を示すフローチャートである。
【図5】領域拡張法を用いた暫定領域抽出処理を示すフローチャートである。
【図6】所定位置におけるスライス画像を示す図である。
【図7】図6に示されるスライス画像上の画素M1付近の拡大図である。
【図8】重心点を利用した初期位置決定処理を示すフローチャートである。
【図9】3次元画像に含まれる物体を示す図である。
【図10】標準モデルを初期位置に移動させる様子を示す図である。
【図11】モデルフィッティング処理を示すフローチャートである。
【図12】初期配置された標準モデルと抽出対象物体との関係を示す図である。
【図13】複数のスライス画像を示す図である。
【図14】制御点間を仮想バネで繋いだ模式図である。
【図15】同種の複数の対象物の存在位置を重ね合わせて示す図である。
【図16】存在確率マップを示す図である。
【図17】対象物が存在すると想定される想定領域を示す図である。
【図18】接近ベクトルマップを示す図である。
【図19】初期状態に配置された標準モデルの各制御点における接近ベクトルpjを示す図である。
【図20】ベクトルuと接近ベクトルpjとの関係を示す図である。
【図21】移動後の各制御点Cjにおける更新された接近ベクトルpjを示す図である。
【図22】変形例に係る動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0144】
1 領域抽出装置
Cj 制御点
Fe 外部エネルギー項
Ge 内部エネルギー項
He 先験的知識項
Ue 総合エネルギー
VM 接近ベクトルマップ
RB 想定領域
SO 標準モデル
p,pj 接近ベクトル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物のモデルを生成するモデリング装置であって、
前記対象物に関する標準モデルを取得する取得手段と、
モデルフィッティング手法を用いて所定の評価関数を最適化するように前記標準モデルを変形させ、前記対象物のモデルを生成するモデル変形手段と、
を備え、
前記所定の評価関数は、先験的知識に基づき前記対象物の存在領域として想定される領域である想定領域に一致するように前記標準モデルが変形するときに最適化される先験的知識項を有することを特徴とするモデリング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のモデリング装置において、
前記想定領域は、前記対象物の存在確率が所定値よりも高い領域であることを特徴とするモデリング装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のモデリング装置において、
前記先験的知識項は、前記想定領域の境界へと最短距離で接近するベクトルである接近ベクトルの向きに前記標準モデルの各制御点が移動するときに最適化されるものであることを特徴とするモデリング装置。
【請求項4】
請求項3に記載のモデリング装置において、
前記モデル変形手段が前記標準モデルを逐次変形させていく際において、前記接近ベクトルは変形後の前記標準モデルの各制御点の位置に応じて更新され、前記先験的知識項は、更新された前記接近ベクトルに基づいて算出されることを特徴とするモデリング装置。
【請求項5】
請求項3に記載のモデリング装置において、
前記接近ベクトルは、前記各制御点の初期位置に応じて前記各制御点ごとに予め設定され、
前記モデル変形手段が前記標準モデルを逐次変形させていく際においても、前記先験的知識項は、常に、前記各制御点の初期位置に応じて前記各制御点ごとに予め設定された前記接近ベクトルに基づいて算出されることを特徴とするモデリング装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のモデリング装置において、
前記所定の評価関数は、前記標準モデルの形状が計測データにおける輪郭に近づくときに最適化される外部エネルギー項を有することを特徴とするモデリング装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のモデリング装置において、
前記所定の評価関数は、前記標準モデルの各制御点相互の関係が一定の関係に近づくときに最適化される内部エネルギー項を有することを特徴とするモデリング装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載のモデリング装置において、
生成された前記対象物のモデルの存在位置に対応する領域を前記対象物の領域として計測データから抽出する手段と、
をさらに備えることを特徴とするモデリング装置。
【請求項9】
対象物のモデルを生成するモデリング方法であって、
前記対象物に関する標準モデルを初期位置に配置する工程と、
モデルフィッティング手法を用いて所定の評価関数を最適化するように前記標準モデルを変形させ、前記対象物のモデルを生成する工程と、
を備え、
前記所定の評価関数は、先験的知識に基づき前記対象物の存在領域として想定される領域である想定領域に一致するように前記標準モデルが変形するときに最適化される先験的知識項を有することを特徴とするモデリング方法。
【請求項10】
コンピュータに、
前記対象物に関する標準モデルを初期位置に配置する手順と、
モデルフィッティング手法を用いて所定の評価関数を最適化するように前記標準モデルを変形させ、前記対象物のモデルを生成する手順と、
を実行させるためのプログラムであって、
前記所定の評価関数は、先験的知識に基づき前記対象物の存在領域として想定される領域である想定領域に一致するように前記標準モデルが変形するときに最適化される先験的知識項を有することを特徴とするプログラム。
【請求項11】
計測データから対象物の領域を抽出する領域抽出装置であって、
前記対象物に関する標準モデルを取得する取得手段と、
モデルフィッティング手法を用いて所定の評価関数を最適化するように前記標準モデルを変形させる手段と、
変形後の前記標準モデルの存在位置に対応する領域を前記対象物の領域として前記計測データから抽出する手段と、
を備え、
前記所定の評価関数は、先験的知識に基づき対象物が存在すると想定される想定領域に一致するように前記標準モデルが変形するときに最適化される先験的知識項を有することを特徴とする領域抽出装置。
【請求項1】
対象物のモデルを生成するモデリング装置であって、
前記対象物に関する標準モデルを取得する取得手段と、
モデルフィッティング手法を用いて所定の評価関数を最適化するように前記標準モデルを変形させ、前記対象物のモデルを生成するモデル変形手段と、
を備え、
前記所定の評価関数は、先験的知識に基づき前記対象物の存在領域として想定される領域である想定領域に一致するように前記標準モデルが変形するときに最適化される先験的知識項を有することを特徴とするモデリング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のモデリング装置において、
前記想定領域は、前記対象物の存在確率が所定値よりも高い領域であることを特徴とするモデリング装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のモデリング装置において、
前記先験的知識項は、前記想定領域の境界へと最短距離で接近するベクトルである接近ベクトルの向きに前記標準モデルの各制御点が移動するときに最適化されるものであることを特徴とするモデリング装置。
【請求項4】
請求項3に記載のモデリング装置において、
前記モデル変形手段が前記標準モデルを逐次変形させていく際において、前記接近ベクトルは変形後の前記標準モデルの各制御点の位置に応じて更新され、前記先験的知識項は、更新された前記接近ベクトルに基づいて算出されることを特徴とするモデリング装置。
【請求項5】
請求項3に記載のモデリング装置において、
前記接近ベクトルは、前記各制御点の初期位置に応じて前記各制御点ごとに予め設定され、
前記モデル変形手段が前記標準モデルを逐次変形させていく際においても、前記先験的知識項は、常に、前記各制御点の初期位置に応じて前記各制御点ごとに予め設定された前記接近ベクトルに基づいて算出されることを特徴とするモデリング装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のモデリング装置において、
前記所定の評価関数は、前記標準モデルの形状が計測データにおける輪郭に近づくときに最適化される外部エネルギー項を有することを特徴とするモデリング装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のモデリング装置において、
前記所定の評価関数は、前記標準モデルの各制御点相互の関係が一定の関係に近づくときに最適化される内部エネルギー項を有することを特徴とするモデリング装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載のモデリング装置において、
生成された前記対象物のモデルの存在位置に対応する領域を前記対象物の領域として計測データから抽出する手段と、
をさらに備えることを特徴とするモデリング装置。
【請求項9】
対象物のモデルを生成するモデリング方法であって、
前記対象物に関する標準モデルを初期位置に配置する工程と、
モデルフィッティング手法を用いて所定の評価関数を最適化するように前記標準モデルを変形させ、前記対象物のモデルを生成する工程と、
を備え、
前記所定の評価関数は、先験的知識に基づき前記対象物の存在領域として想定される領域である想定領域に一致するように前記標準モデルが変形するときに最適化される先験的知識項を有することを特徴とするモデリング方法。
【請求項10】
コンピュータに、
前記対象物に関する標準モデルを初期位置に配置する手順と、
モデルフィッティング手法を用いて所定の評価関数を最適化するように前記標準モデルを変形させ、前記対象物のモデルを生成する手順と、
を実行させるためのプログラムであって、
前記所定の評価関数は、先験的知識に基づき前記対象物の存在領域として想定される領域である想定領域に一致するように前記標準モデルが変形するときに最適化される先験的知識項を有することを特徴とするプログラム。
【請求項11】
計測データから対象物の領域を抽出する領域抽出装置であって、
前記対象物に関する標準モデルを取得する取得手段と、
モデルフィッティング手法を用いて所定の評価関数を最適化するように前記標準モデルを変形させる手段と、
変形後の前記標準モデルの存在位置に対応する領域を前記対象物の領域として前記計測データから抽出する手段と、
を備え、
前記所定の評価関数は、先験的知識に基づき対象物が存在すると想定される想定領域に一致するように前記標準モデルが変形するときに最適化される先験的知識項を有することを特徴とする領域抽出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2007−98028(P2007−98028A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−295325(P2005−295325)
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】
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