説明

モータおよび記録ディスク駆動装置

【課題】すべり軸受を用いたモータにおいて、ロータのシャフトの回転を安定させること。
【解決手段】モータ1は、静止部3に対して相対的に回転する回転部2と、各ティース部3212に巻回されたコイル322を備えるステータ32の静止部3と、回転部2を静止部3に対して相対回転可能に支持する軸受機構4と、を備える。回転部2は、シャフト41とともに回転する有蓋円筒形状のロータヨーク21の蓋部に固定された予圧マグネット23を備える。静止部3のステータ32は、環状のコアバック部3211を備える。軸受機構4は、シャフト41を回転可能に支持するスリーブ43と、スリーブ43を保持し、鍔部424を有するスリーブ保持部42とを備える。鍔部424は磁性体であり、予圧マグネット23の外端部および前記鍔部424の外端部は、コアバック部3211の外端よりも径方向外側に位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータおよび記録ディスク駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、すべり軸受を用いたモータにおいては、ロータのシャフトの回転を安定させるために、予圧マグネットが用いられてきた。
【0003】
特開2007−300789号公報では、ベアリングハウジング110が予圧マグネットと対向している。
【特許文献1】特開2007−300789号公報
【特許文献2】特開2004−007905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年のモータの回転数増大等に伴い、特許文献1のような構造ではロータの振れに伴う振動が問題になっていた。すなわち、径方向内側のみで軸方向の吸引力を発生させると、ロータの振れに伴う振動を抑えることができないという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、ロータの振れを抑えることが可能なロータ吸引構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の側面に係るモータは、静止部に対して相対的に回転する回転部と、前記回転部を前記静止部に対して相対回転可能に支持する軸受部と、を備え、前記回転部は、回転中心軸を中心に回転するシャフトと、シャフトとともに回転する有蓋円筒形状のロータヨークと、前記ロータヨークの蓋部に固定された予圧マグネットと、前記ロータヨークの円筒部に固定されたロータマグネットと、を備え、前記静止部は、前記ロータマグネットに対向して配置され、環状のコアバック部と、前記コアバック部から径方向外側に延伸する複数のティース部と、各ティース部に巻回されたコイルと、を備えるステータを備え、前記軸受部は、前記シャフトを回転可能に支持するスリーブと、前記スリーブを保持し、鍔部を有するスリーブ保持部と、を備え、前記鍔部は磁性体であり、前記予圧マグネットの外端部および前記鍔部の外端部は、前記コアバック部の外端よりも径方向外側に位置している。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ロータの振れを抑えつつ、軸方向の吸引力を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る記録ディスク駆動装置の断面図である。
【図2】図2は、モータの断面図である。
【図3】図3は、第2の実施形態に係るモータの断面図である。
【図4】図4は、第3の実施形態に係るモータの断面図である。
【図5】図5は、他の実施形態に係るモータの断面図である。
【図6】図6は、他の実施形態に係るモータの断面図である。
【図7】図7は、他の実施形態に係るモータの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書では、中心軸J1方向における上側を単に「上側」と呼び、下側を単に「下側」と呼ぶ。本発明の説明における上下方向は、実際の機器に組み込まれたときの位置関係や方向を示すものではない。また、中心軸J1に直交する方向を径方向と呼ぶ。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るモータを備える記録ディスク駆動装置10の中心軸を含む平面で切断した断面図である。記録ディスク駆動装置10は、モータ1と、アクセス部11と、これらを内部に収容する箱状のハウジング12とを備える。図1では、ハウジング12、クランパ122、クランプマグネット123および記録ディスク9を二点鎖線にて示している。モータ1はシャーシ121により保持される。アクセス部11は、ヘッド111と、ヘッド移動機構112とを備える。ヘッド111は、記録ディスク9に対する情報の読み出しおよび/または書き込みを行う光ピックアップ機構である。記録ディスク9として、例えば、ブルーレイディスクが利用される。ヘッド移動機構112は、ヘッド111をモータ1および記録ディスク9に対して移動する。ヘッド111は、光出射部と、受光部とを有する。光出射部は、記録ディスク9の下面に向けてレーザ光を出射する。受光部は、記録ディスク9からの反射光を受光する。
【0011】
ハウジング12には、図示省略の搬送機構が設けられる。搬送機構により、記録ディスク9のハウジング12への挿入や、ハウジング12からの取り出しが行われる。また、ハウジング12内には、クランプマグネット123を有するクランパ122が設けられる。
【0012】
記録ディスク9が挿入されると、記録ディスク9の中央のディスク中央孔91がモータ1のターンテーブル13の上方に配置される。そして、モータ1が上昇して、記録ディスク9がターンテーブル13に載置される。クランプマグネット123が、ターンテーブル13の金属のプレート部材を上方から吸着することにより、クランパ122により記録ディスク9がターンテーブル13上にクランプされる。
【0013】
記録ディスク駆動装置10では、モータ1により記録ディスク9が回転され、ヘッド移動機構112がヘッド111を所定の位置へと移動させて、記録ディスク9に対する情報の読み出しおよび/または書き込みが行われる。記録ディスク9の取出時には、クランパ122が記録ディスク9から離され、モータ1が下降して記録ディスク9がターンテーブル13から外される。
【0014】
図2はモータ1の縦断面図である。モータ1は、回転組立体である回転部2と、固定組立体である静止部3と、ターンテーブル13と、軸受機構4とを備える。回転部2は、軸受機構4により、静止部3に対しその上方にて回転可能に支持される。ターンテーブル13は、回転部2の上端に設けられる。
【0015】
回転部2は、有蓋略円筒状のロータヨーク21と、円環状のロータマグネット22と、円環状の予圧マグネット23を有する。ロータマグネット22は、ロータヨーク21の円筒部212の内側面に取り付けられる。ロータヨーク21の中央には、円筒状のシャフト固定部213が設けられる。シャフト固定部213は、バーリング加工により成形される。シャフト固定部213は、蓋部211から軸方向下側に延伸する。軸受機構4のシャフト41は、シャフト固定部213に挿入されてロータヨーク21に固定される。
予圧マグネット23は、ロータヨーク21の蓋部211の下面に接着剤を介して固定される。予圧マグネット23の内周面は、シャフト固定部213の外周面と間隙を介して対向する。予圧マグネット23の内周端は、後述する軸受機構4のスリーブ43の外周面よりも径方向内側に位置する。予圧マグネット23の外周端は、後述するステータ32のコアバック部3211の外端よりも径方向外側に位置する。また、予圧マグネット23の外周端は、後述するコイルの内端よりも径方向外側に位置する。なお、本実施形態において、予圧マグネット23は、ネオジボンド製である。ネオジボンドに代えて、ネオジ焼結、サマリウム、フェライト等が用いられてもよい。
【0016】
静止部3は、略板状のベース部31と、ステータ32と、回路基板33とを備える。回路基板33は、ベース部31上に配置される。ベース部31は金属にて形成され、ベース部31の中央の孔311には、軸受機構4が取り付けられる。ステータ32は、ステータコア321と、ステータコア321上に形成された複数のコイル322とを備える。ステータコア321は、積層鋼板にて形成される。ステータコア321は、円環状のコアバック部3211と、コアバック部3211から周方向に間隔をあけて径方向外方向に向かって放射状に延びる複数のティース部3212を備える。複数のコイル322は、各ティース部3212に巻回される。ステータ32は、コアバック部3211がスリーブ保持部42の円筒部421の外側面に取り付けられる。ステータ32は、各ティース部の先端の磁極面がロータマグネット22に対して中心軸J1に垂直な方向に対向する。モータ1の駆動時には、ロータマグネット22とステータ32との間にて磁気的作用が生じる。
【0017】
軸受機構4は、シャフト41と、有底略円筒状のスリーブ保持部42と、スリーブ43と、円環状の抜止部材44と、スラストプレート45と、ワッシャ46と、を備える。シャフト41の下部の先端には、円環状の溝が形成される。スリーブ43は、含油性の多孔質金属体により形成される。スリーブ保持部42は、円筒部421と、環状の段差部422と、底部423と、鍔部424と、を有する。段差部422では、円筒部421の下端から中心軸J1に向かって径が小さくなる。底部423は、段差部422の下側にて、スリーブ保持部42の下端を閉塞する。
【0018】
抜止部材44は、樹脂等の弾性体により形成され、段差部422上に載置される。抜止部材44の内側の端部は、シャフト41の溝の内側に位置する。これにより、シャフト41がスリーブ保持部42から抜け出ることが防止される。底部423の内側には、円板状のスラストプレート45が設けられる。スラストプレート45は、例えば、ポリエーテル・エーテル・ケトン(PEEK材)等の摺動性に優れた樹脂材料製である。モータ1の駆動時には、シャフト41の先端がスラストプレート45に当接することにより、シャフト41がスラスト方向に安定して支持される。さらに、シャフト41は、スリーブ43により、オイルを介してラジアル方向に支持される。スリーブ43の上端面には、ワッシャ46が載置される。ワッシャ46は樹脂製である。
【0019】
鍔部424は、円筒部421の上端から径方向外方に延伸する。鍔部424は、中心軸を中心として環状に広がる。鍔部424の下面は、ステータ32のコアバック部3211およびティース部3212に巻回されたコイル322の一部と間隙を介して対向する。鍔部424の上面は、予圧マグネット23の下面と間隙を介して対向する。
【0020】
ここで、鍔部424の径方向外端の位置は、予圧マグネット23の径方向外端の位置と同じか、それより径方向外側に位置することが望ましい。本実施形態においては、鍔部424の径方向外端の位置と、予圧マグネット23の径方向外端の位置とは、一致する。
【0021】
また、鍔部424の下面とコイル322との間隙よりも、鍔部424の上面と予圧マグネット23の下面との間隙のほうが、小さいことが望ましい。
なお、鍔部424は、円筒部421、段差部422、底部423と別体であってもよい。
【0022】
予圧マグネット23は、スリーブ43および鍔部424と軸方向に間隙を介して対向するので、スリーブ43および鍔部424の間の磁気的作用により、回転部2を軸方向に吸引することができる。特に、予圧マグネット23の外周端は、コアバック部3211の外周端よりも径方向外側に位置しているので、径方向外側で軸方向吸引力を発生させることができ、回転部2の振れを抑えることができる。また、予圧マグネット23の軸方向の吸引力に寄与する面積を増やすことができる。
【0023】
そのうえ、鍔部424は、予圧マグネット23の径方向外端の位置と同じか、それより径方向外側に位置しているので、予圧マグネット23から発生する磁界がロータマグネット22およびステータ32との間に発生する磁界に影響を及ぼすことがない。
【0024】
ここで、鍔部424の軸方向の厚さは、予圧マグネット23の軸方向の厚さよりも、薄い。このようにすることで、ステータ32の厚みを厚くしたとしても、モータ全体の高さを低く抑えることができる。なお、予圧マグネット23の軸方向の厚みは、0.6mm以上、1.2mm以下とすることが望ましい。また、鍔部424の軸方向の厚みは、0.5mm以上とすることが望ましい。
【0025】
ターンテーブル13は、円環状のプレート部材131と、環状の中央樹脂部材132と、ラバー133とを備える。モータ1の中心軸J1は、プレート部材131の中心軸でもあり、中央樹脂部材132の中心軸でもある。プレート部材131は、軟質な強磁性材料からなり、プレス加工にて成型される。プレート部材131の厚さは0.8mm程度である。プレート部材131は、例えば電気亜鉛めっき鋼板(SECC)である。
【0026】
プレート部材131は、プレート部材131の外周部であるプレート外周部51と、プレート部材131の中央部であるプレート中央部52と、プレート中央部52とプレート外周部51との間に位置する屈曲部53とを備える。プレート外周部51は、中心軸J1に略垂直である。プレート中央部52は、中心軸J1に略垂直であり、プレート外周部51よりも上方に位置する。ターンテーブル13では、図1のクランプマグネット123とプレート外周部51との間にて、十分な磁気的作用を働かせることができる。このため、プレート部材131は、軟質な強磁性材料であればよく、安価な材料も選択可能である。これにより、ターンテーブル13が安価に製造される。
【0027】
中央樹脂部材132は、プレート部材131の略中央に配置され、樹脂の射出成型により形成される。これにより、プレート部材131および中央樹脂部材132は、1つの部品となる。なお、射出成型は、プレス加工に比べて成型精度が高い。具体的には、プレート部材131が50μm程度の誤差にて成型されるのに対し、中央樹脂部材132を作製する金型部品が5μm〜10μm程度の誤差にて成型される。中央樹脂部材132は、プレート外周部51よりも上方に突出する。中央樹脂部材132がプレート中央部52および屈曲部53のほぼ全体を覆っているので、プレート部材131が中央樹脂部材132から分離することが防止される。中央樹脂部材132は、例えばポリカーボネイト(PC)等の樹脂材料から形成されている。
【0028】
中央樹脂部材132は、樹脂円筒部61と、ディスクガイド部631と、樹脂連結部632と、複数の爪633とを備える。これらの部位を含む中央樹脂部材132全体が、一つながりの部材として形成される。樹脂円筒部61は、プレート部材131の略中央に設けられたプレート中央孔55の内側に位置し、プレート中央孔55を貫通する中央樹脂貫通孔611を有する。中央樹脂貫通孔611には、シャフト41の上部が固定される。
【0029】
ディスクガイド部631は、中央樹脂部材132の上部の外周に位置し、中心軸J1を中心とする径方向外方かつ下方に向かって傾斜する。プレート部材131の屈曲部53は、ディスクガイド部631の外周形状におよそ倣うように折り曲げられている。樹脂連結部632は、プレート中央部52上において、プレート中央部52の上面全体を覆うとともに、樹脂円筒部61とディスクガイド部631とを繋ぐ。
【0030】
複数の爪633は、ディスクガイド部631の複数箇所に設けられ、ディスクガイド部631から中心軸J1を中心とする径方向外方かつ下方に向かって伸びる。ディスクガイド部631と爪633との間には、アンダーカットが形成される。以下、中心軸J1を中心とする径方向を単に「径方向」といい、中心軸J1を中心とする周方向を単に「周方向」という。
【0031】
図1の記録ディスク9が、ターンテーブル13に取り付けられる際には、ディスクガイド部631によりディスク中央孔91が爪633へとガイドされ、爪633がディスク中央孔91に接する。そして、記録ディスク9がプレート部材131上に配置される。正確には、記録ディスク9はプレート部材131上の環状ラバー133上に載置される。この状態にて、爪633は、樹脂連結部632により支持されつつ、径方向内方に弾性変形している。爪633の弾性変形を利用することにより、記録ディスク9の中心を、中心軸J1上に正確に位置させることができる。このため、高い調芯性能が要求されるブルーレイディスク等の記録ディスクであっても、ターンテーブル13に高精度位置決めして取り付けられる。
(第2の実施形態)
【0032】
続いて、本発明を適用した、第2の実施形態のモータについて、説明する。図3は、第2の実施形態のモータの縦断面図である。なお、以下では、上記実施形態のモータとの相違点を中心に説明する。
【0033】
第2の実施形態では、予圧マグネット23にフェライト製のマグネットを用いている点で第1の実施形態と相違する。また、第2の実施形態では、予圧マグネット23が、ステータ32のコイル322の外端よりも径方向外側まで延びている。
また、第2の実施形態では、鍔部424がステータ32のコイル322の外端よりも径方向外側まで延びている。
以上の構成により、予圧マグネット23に比較的磁力の弱いフェライトマグネットを用いたとしても、十分な軸方向の吸引力を得ることができる。
【0034】
また、第2の実施形態では、ロータマグネット22にフェライト製のマグネットを用いている。第2の実施形態では、ステータ32の軸方向の厚さが厚い。このように構成することで、ロータマグネット22に比較的磁力の弱いフェライトマグネットを用いたとしても、十分な回転力を得ることができる。
【0035】
ここで、鍔部424の軸方向の厚さは、予圧マグネット23の軸方向の厚さよりも、薄い。このようにすることで、ステータ32の軸方向厚みを厚くしたとしても、モータ全体の高さを低く抑えることができる。
【0036】
加えて、第2の実施形態では、ターンテーブル13において、中央樹脂部材132は、軟質な強磁性材料であるプレート部材131の略中央に配置され、樹脂の射出成型により形成される。ターンテーブル13をこのように構成することで、ターンテーブル13自体の軸方向厚さを薄く抑えることができる。したがって、鍔部424を配設したり、ステータ32の軸方向厚さを厚くしたとしても、モータ全体の高さを低く抑えることができる。
(第3の実施形態)
【0037】
続いて、本発明を適用した、第3の実施形態のモータについて、説明する。図4は、第3の実施形態のモータの縦断面図である。なお、以下では、上記実施形態のモータとの相違点を中心に説明する。
【0038】
回転部2は、ロータヨーク21、ロータマグネット22、予圧マグネット23、樹脂部材24、ディスク載置部材133、クランプマグネット25、クランプヨーク26、閉塞部材27、および複数の球体28、を有する。
【0039】
ロータヨーク21は、例えば、亜鉛めっき鋼板等の金属を、プレス成形することにより得られる。ただし、ロータヨーク21は、切削等の他の工法により得られたものであってもよい。
【0040】
樹脂部材24は、ポリカーボネート等の成型用樹脂で構成された部材である。樹脂部材24は、インサート成型により、ロータヨーク21と一体に成型されている。樹脂部材24は、ターンテーブル241、転走部242、内側環状部243および被覆部244を、有している。
【0041】
ロータヨーク21のシャフト固定部213は、蓋部211の径方向内端から軸方向上側に延伸する。ロータヨーク21の蓋部211は、内側平板部2111、内低傾斜部2112、および外側平板部2113を含んでいる。内側平板部2111は、シャフト固定部213と内低傾斜部2112との間において、径方向に広がる部位である。内低傾斜部2112は、内側平板部2111の径方向外側の端縁部から、径方向外側へ向けて高くなるように、斜めに広がる部位である。外側平板部2113は、内低傾斜部2112と円筒部212との間において、径方向に広がる部位である。
【0042】
ロータヨーク21の蓋部211には、複数の貫通孔2114が、周方向に等間隔に、形成されている。各貫通孔2114は、内低傾斜部2112と外側平板部2113とに亘って、蓋部2114を軸方向に貫通するように、形成されている。複数の貫通孔2114は、ロータヨーク21の重心の偏りを抑制するためには、周方向に等間隔に配列されることが好ましい。ただし、複数の貫通孔2114は、必ずしも周方向に等間隔に配列されていなくてもよい。
【0043】
ターンテーブル241は、蓋部211の上側かつ後述する調心部材15の径方向外側に、配置されている。上述した貫通孔2114は、ターンテーブル241の下方に配置されている。ターンテーブル241の径方向外側の端部は、ロータヨーク21の円筒部212より径方向外側へ、張り出している。
【0044】
ターンテーブル241の上面には、円環状のディスク載置部材133が、固定されている。ディスク載置部材133の上面は、記録ディスク9が載置される載置面となる。つまり、本実施形態では、ターンテーブル241が、ディスク載置部材133を介して、ディスク9の下面を間接的に支持する。なお、ターンテーブル241は、ディスク載置部材133を介することなく、ディスク9の下面を直接的に支持するものであってもよい。
【0045】
蓋部211の下面側には、内低傾斜部2112、外側平板部2113、および円筒部212によって、下向きに開いた環状凹部2115が、形成されている。そして、当該環状凹部2115内に、転走部242が配置されている。転走部242は、ロータヨーク21とインサート成型により一体化された樹脂部材24の、一部分である。
【0046】
転走部242は、天板部2421、外壁部2422、および内壁部2423を有している。天板部2421は、外側平板部2113の下面に接している。外壁部2422及び内壁部2423は、天板部2421の径方向外側および径方向内側の端縁部から、それぞれ、下方へ向けて延びている。また、転走部242の下部には、転走部242を下方から閉塞する閉塞部材27が、取り付けられている。転走部242と閉塞部材27とに包囲された円環状の空間には、複数の球体28が、周方向に転走自在に配置されている。
【0047】
閉塞部材27は、例えば、亜鉛めっき鋼板やスズめっき鋼板等の金属により、形成される。閉塞部材27は断面L字状であり、平板状の板部271と、板部271の外周面から径方向に垂下する垂下部272とを有する。閉塞部材27は、垂下部272がロータヨーク21の円筒部212の内周面に圧入または接着されることによって、転走部242に固定される。ただし、閉塞部材27の材料や固定方法は、これらの例に限定されない。
【0048】
転走部242と閉塞部材27とに包囲された円環状の空間には、複数の球体28が、周方向に転走自在に配置されている。複数の球体28は、閉塞部材27の上面に取り付けられた滑り止め部材(シート)273の上に、載置されている。複数の球体28は、回転部2およびディスク9の全体としての重心の、中心軸J1に対する位置ずれを、補正する役割を果たす。回転部2およびディスク9が回転し、その回転数が一定以上になると、複数の球体28は、中心軸に対して重心とは反対の方向へ、転走移動する。これにより、回転部2およびディスク9の全体としての重心の位置が、中心軸に近づくように、調整される。
【0049】
上述の通り、転走部242は、ロータヨーク21の蓋部211の下側かつ円筒部212の径方向内側に、配置されている。このため、転走部242が蓋部211の上側に配置される場合と比べて、球体28の転走により生じる騒音の、外部への伝播が抑制される。
【0050】
また、ターンテーブル241と転走部242とは、単一の樹脂部材24のそれぞれ一部分であり、ロータヨーク21の貫通孔2114を介して、連続している。これにより、ロータヨーク21に対して、ターンテーブル241および転走部242が、より強固に固定されている。
【0051】
特に、本実施形態では、ターンテーブル241の下方位置、かつ、転走部242の上方位置に、貫通孔2114が配置されている。すなわち、平面視において、ターンテーブル241および転走部242と重なる位置に、貫通孔2114が配置されている。したがって、ターンテーブル241と転走部242とが、迂回することなく繋がっている。これにより、ロータヨーク21に対して、ターンテーブル241および転走部242が、より強固に固定されている。
【0052】
転走部242の内壁部2423は、内低傾斜部2112の下方に、配置されている。このため、仮に、貫通孔2114がなければ、インサート成型時に、天板部2421と内壁部2423との間で、溶融した樹脂を流動させる空間を確保することが、困難となる。
【0053】
この点について、内低傾斜部2112と外側平板部2113とに亘って、貫通孔2114が形成されている。そして、当該貫通孔2114が、内壁部2423の上方、すなわち、平面視において内壁部2423と重なる位置に、配置されている。このため、インサート成型時には、貫通孔2114を介して、天板部2421と内壁部2423との間で、溶融した樹脂を流動させることができる。したがって、天板部2421および内壁部2423の双方に、十分に樹脂を行き渡らせることができる。また、これにより、天板部2421と内壁部2423とが、強固に連結される。
【0054】
内側環状部243は、蓋部211の下側かつ転走部242の径方向内側に、配置されている。内側環状部243の上面の一部は、内低傾斜部2112の下面に接している。樹脂部材24は、内側環状部243を有することにより、ロータヨーク21と、より強固に固定されている。また、インサート成型時には、蓋部211の下面と金型との間に、内側環状部243が介在する。したがって、蓋部211と金型とは、直接には殆ど接触しない。これにより、蓋部211および金型の寸法誤差が、許容される。
【0055】
被覆部244は、ターンテーブル241から下方へ向けて延びる、円筒状の部位である。被覆部244は、ロータヨーク21の円筒部212の一部を覆う。円筒部212の被覆部244との軸方向の境界には、拡径部2121が形成される。
なお、拡径部2121の上端近傍に、閉塞部材27の垂下部272の下端が位置する。これにより、閉塞部材27を取り付ける際、垂下部272を固定する箇所近傍まで、閉塞部材を容易に挿入することができる。したがって、作業性が向上する。
【0056】
内側平板部2111の上側かつ内低傾斜部2112の径方向内側には、中央樹脂部245およびばね受け部246が、形成されている。中央樹脂部245およびばね受け部246は、貫通孔2114を介して、ターンテーブル241や転走部242と、連続している。
【0057】
中央樹脂部245およびばね受け部246は、インサート成型時に、樹脂部材24の一部分として、成型される。このため、中央樹脂部245およびばね受け部246は、樹脂部材24の他の部位やロータヨーク21に対して、強固に固定される。中央樹脂部245およびばね受け部246の径方向外側に、これらと同じ高さ位置で、貫通孔2114が配置されている。このため、インサート成型時には、中央樹脂部245およびばね受け部246に対して、溶融した樹脂が良好に流入する。したがって、中央樹脂部245およびばね受け部246の形状を、精度よく得ることができる。
【0058】
また、中央樹脂部245やばね受け部246の上面の高さ位置は、インサート成型に使用される金型によって、容易に微調整できる。
【0059】
さらに、中央樹脂部245とシャフト固定部213とは、間隙を介して対向する。これにより、シャフト固定部213をプレス加工にて形成する際、シャフト固定部213の軸方向上側または径方向外側にバリが発生したとしても、インサート成型時におけるバリと金型との接触が抑制される。したがって、金型の寿命を長くすることができる。
【0060】
中央樹脂部245およびばね受け部246の上方には、クランプマグネット25、クランプヨーク26、調芯部材15、および予圧ばね16が、配置されている。クランプヨーク26は、シャフト41に固定されている。クランプマグネット25は、クランプヨークの上側に固定されている。クランプマグネット25は、クランパとの間に、磁気的な吸引力を発生させる役割を果たす。調芯部材15は、シャフト41に沿って上下に移動可能となっている。調芯部材15は、ディスク9の内周部を支持する支持面151を、有している。
【0061】
予圧ばね16は、調芯部材15とばね受け部246との間に、介挿されている。すなわち、予圧ばね16の上端部は、調芯部材15の下面に当接し、予圧ばね16の下端部は、ばね受け部246の上面に当接している。予圧ばね16は、調芯部材15を、上方へ向けて付勢している。ディスク9を保持していないときは、調芯部材15がクランプヨーク26の下面に当接した状態で、静止している。一方、ディスク9を保持するときには、調芯部材15は、ディスク9の内周部を支持しつつ、予圧ばね16の付勢力に抗して下降する。調芯部材15の支持面151は、ディスク9の内周部に当接することにより、ディスク9の径方向の位置を定める。
【0062】
調芯部材15が、ディスク9を保持した状態よりもさらに下降すると、調芯部材15は、中央樹脂部245の上面に当接する。これにより、調芯部材15の下降限界が、定められている。なお、中央樹脂部245が省略され、ロータヨーク21の上面に、調芯部材15が当接するようになっていてもよい。
【0063】
内低傾斜部2112の径方向内側に、中央樹脂部245、ばね受け部246、調芯部材15、および予圧ばね16が、配置されている。一方、内低傾斜部2112の径方向外側に、転走部242が配置されている。すなわち、中央樹脂部245、ばね受け部246、調芯部材15、および予圧ばね16を配置するための空間と、転走部242を配置するための空間とが、内低傾斜部2112を介して、径方向に配列されている。これにより、モータの軸方向の寸法が、抑制されている。
【0064】
また、ロータヨーク21の内側平板部2111の下面に、予圧マグネット23が固定されている。予圧マグネット23は、鍔部424との間で軸方向の磁気吸引力を発生させる。また、ロータヨーク21の内側平板部2111は、予圧マグネット23のヨークとなる。本実施形態においては、予圧マグネット23は、樹脂部材24の一部である内側環状部243が予圧マグネット23の外周面と接触または近接して配置されることによって、位置決めをしている。したがって、内側環状部243の内周面は位置決め部である。内側感情部243が位置決め部となることによって、予圧マグネット23を外側にのみ配置する構成としてもよい。また、予圧マグネット23は環状ではなくてもよい。例えば、円柱形、矩形、円弧形等の形状の予圧マグネット23を周方向に複数配置してもよい。
【0065】
なお、予圧マグネット23を、鍔部424の上面に固定してもよい。その場合には、ロータヨーク21の内側平板部2111と、予圧マグネット23との間に、磁気的吸引力を発生させることができる。予圧マグネット23と、静止部3側のスリーブ保持部422との間に、軸方向の磁気的吸引力を発生させることとなる。
【0066】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0067】
例えば、ロータヨーク21のシャフト固定部213は、蓋部212から上側に延伸していてもよいし、下側に延伸していてもよい。
【0068】
位置決め部は、ロータヨーク21に設けてもよい。例えば、図5に示すように、ロータヨーク21の蓋部212が半抜き加工される半抜き部2122が位置決め部となってもよい。また、図6に示すように、鍔部424が半抜き加工される半抜き部4241が位置決め部となってもよい。位置決め部と予圧マグネット23との位置関係は、径方向に接するまたは隙間を介して対向するものに限られない。予圧マグネットを複数の円弧状のセグメントマグネットとしてもよい。また、各予圧マグネットを周方向に位置決めしてもよい。
【0069】
また、鍔部422は2部材で構成されてもよい。例えば、図7に示すように、円筒部421の外周面に鍔部422が固定されてもよい。この際、予圧マグネット23は、回転部2側、固定部3側のいずれに取り付けられてもよい。図7では、固定側3の鍔部422上に予圧マグネットが固定されている。
【0070】
また、鍔部422の外径は、予圧マグネット23の外径よりも大きくてもよい。また、予圧マグネット23がロータヨーク21の蓋部211の最外径まで延びていてもよい。さらに、鍔部422はコイルの322の外端よりも外側まで延びていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、様々な用途に関するモータとして利用可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 モータ
2 回転部
3 静止部
4 軸受機構
9 記録ディスク
10 記録ディスク駆動装置
11 アクセス部
12 ハウジング
21 ロータヨーク
22 ロータマグネット
23 予圧マグネット
32 ステータ
3211 コアバック部
3212 ティース部
322 コイル
41 シャフト
42 スリーブ保持部
424 鍔部
43 スリーブ
J1 中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静止部に対して相対的に回転する回転部と、前記回転部を前記静止部に対して相対回転可能に支持する軸受部と、を備え、
前記回転部は、
回転中心軸を中心に回転するシャフトと、
シャフトとともに回転する有蓋円筒形状のロータヨークと、
前記ロータヨークの蓋部に固定された予圧マグネットと、
前記ロータヨークの円筒部に固定されたロータマグネットと、を備え、
前記静止部は、
前記ロータマグネットに対向して配置され、環状のコアバック部と、前記コアバック部から径方向外側に延伸する複数のティース部と、各ティース部に巻回されたコイルと、を備えるステータを備え、
前記軸受部は、
前記シャフトを回転可能に支持するスリーブと、
前記スリーブを保持し、鍔部を有するスリーブ保持部と、を備え、
前記鍔部は磁性体であり、
前記予圧マグネットの外端部および前記鍔部の外端部は、前記コアバック部の外端よりも径方向外側に位置している、モータ。
【請求項2】
静止部に対して相対的に回転する回転部と、前記回転部を前記静止部に対して相対回転可能に支持する軸受部と、を備え、
前記回転部は、
回転中心軸を中心に回転するシャフトと、
前記シャフトとともに回転する有蓋円筒形状のロータヨークと、
前記ロータヨークの円筒部に固定されたロータマグネットと、を備え、
前記静止部は、
前記ロータマグネットに対向して配置され、環状のコアバック部と、前記コアバック部から径方向外側に延伸する複数のティース部と、各ティース部に巻回されたコイルと、を備えるステータを備え、
前記軸受部は、
前記シャフトを回転可能に支持するスリーブと、
前記スリーブを保持し、鍔部を有するスリーブ保持部と、
前記鍔部に固定された予圧マグネットと、を備え、
前記鍔部は磁性体であり、
前記予圧マグネットの外端部および前記鍔部の外端部は、前記コアバック部よりも径方向外側に位置している、モータ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のモータであって、
前記予圧マグネットの外端部および前記鍔部の外端部は、前記コイルの径方向内端よりも径方向外側に位置している、モータ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のモータであって、
前記鍔部の軸方向の厚みは、前記予圧マグネットの軸方向の厚みよりも薄い、モータ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載のモータであって、
前記予圧マグネットはフェライトマグネットである、モータ。
【請求項6】
請求項1に記載のモータであって、
前記ロータヨークは前記予圧マグネットと接する、または、隙間を介して径方向または周方向に対向する位置決め部を有する、モータ。
【請求項7】
請求項2に記載のモータであって、
前記鍔部は前記予圧マグネットと接する、または、隙間を介して径方向または周方向に対向する位置決め部を有する、モータ。
【請求項8】
請求項6または7に記載のモータであって、
前記位置決め部は、前記ロータホルダの蓋面が半抜き加工されることにより形成される、モータ。
【請求項9】
請求項6に記載のモータであって、
前記位置決め部は、樹脂により形成される、モータ。
【請求項10】
請求項6ないし9のいずれかに記載のモータであって、
前記予圧マグネットの内端部は、前記スリーブ保持部よりも外側に位置する、モータ。
【請求項11】
請求項6ないし9のいずれかに記載のモータであって、
前記予圧マグネットの内端部は、前記コアバック部よりも外側に位置する、モータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−38973(P2013−38973A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174419(P2011−174419)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000232302)日本電産株式会社 (697)
【Fターム(参考)】