説明

モータ駆動装置およびそれを搭載する車両

【課題】複数の電力変換装置を含むモータ駆動装置において、複雑な制御ロジックを用いることなく損失を低減する。
【解決手段】モータ駆動装置20は、電力変換装置であるコンバータ12およびインバータ14,22と、ECU30とを備え、蓄電装置28からの電力を用いてモータジェネレータMG1,MG2を駆動する。ECU30は、インバータ14,22に供給されるシステム電圧VHにおける各電力変換装置の損失を演算するとともに、得られた損失が最大となる電力変換装置において生じる損失が、当該電力変換装置についての駆動指令値が達成可能な範囲で最小となるように、システム電圧VHの電圧指令値を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ駆動装置およびそれを搭載する車両に関し、より特定的には、モータ駆動装置の損失を低減するための制御に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境に配慮した車両として、蓄電装置(たとえば二次電池やキャパシタなど)を搭載し、蓄電装置に蓄えられた電力から生じる駆動力を用いて走行する車両が注目されている。このような車両には、たとえば電気自動車、ハイブリッド自動車、燃料電池車などが含まれる。
【0003】
これらの車両においては、発進時や加速時に蓄電装置から電力を受けて走行のための駆動力を発生するとともに、制動時に回生制動によって発電を行なって蓄電装置に電気エネルギを蓄えるための回転電機(モータジェネレータ)を備える、モータ駆動装置が搭載される場合がある。そして、このような走行状態に応じたモータジェネレータの制御をするために、車両にはインバータが搭載される。
【0004】
また、このような車両においては、インバータが必要とする電力は車両状態によって変動する。そして、インバータが必要とする電力を安定的に供給するために、蓄電装置とインバータとの間にコンバータが備えられる場合がある。このコンバータにより、インバータの入力電圧を蓄電装置の出力電圧より高く昇圧して、モータの高出力化ができるとともに、同一出力時のモータ電流を低減することで、インバータおよびモータの小型化,低コスト化を図ることができる。
【0005】
このようなモータ駆動装置においては、省エネルギの観点から、装置の損失を低減して効率を向上させることが望まれる。しかしながら、インバータやコンバータなど、モータ駆動装置に含まれる電力変換装置が多く、システム構成が複雑になるほど、装置全体の損失を低減するための手法も複雑となり得る。
【0006】
特開2010−035386号公報(特許文献1)は、複数の構成要素を含むシステムを作動するためのシステム作動制御装置において、各構成要素における損失の傾きを求めるとともに、各構成要素について求められた損失の傾きの合計値がゼロとなるように、システムに供給するシステム電圧をフィードバック制御によって設定することで、複数の構成要素についての損失の総和を低減する構成が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−035386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特開2010−035386号公報(特許文献1)に開示される構成においては、システム全体の損失を最小化するためのシステム電圧を設定することは可能であるが、損失の傾きの合計値がゼロとなるようにフィードバック制御を行なうことが必要であるので、制御ロジックが複雑となるとともに演算負荷が高くなるおそれがある。
【0009】
また、フィードバック制御を行なうために、フィードバックゲインの設計および調整が必要となる。
【0010】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、複数の電力変換装置を含むモータ駆動装置において、複雑な制御ロジックを用いることなく、損失を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明におけるモータ駆動装置によれば、第1のモータと、第1および第2の電力変換装置と、制御装置とを備え、直流電源からの電力を用いてモータを駆動する。第1の電力変換装置は、直流電源からの電力を用いて第1のモータを駆動するためのインバータである。第2の電力変換装置は、第1の電力変換装置における直流側の端子に接続される。制御装置は、第1および第2の電力変換装置を制御する。そして、制御装置は、第1の電力変換装置への供給電圧に対する第1および第2の電力変換装置の損失を演算するとともに、得られた損失が最大となる電力変換装置において生じる損失に基づいて、第1の電力変換装置に供給される供給電圧の電圧指令値を設定する。
【0012】
好ましくは、制御装置は、損失が最大となる電力変換装置おいて生じる損失が、当該電力変換装置についての駆動指令値が達成可能な範囲で最小となるように、電圧指令値を設定する。
【0013】
好ましくは、モータ駆動装置は、第2のモータをさらに備える。そして、第2の電力変換装置は、第2のモータを駆動するためのインバータである。
【0014】
好ましくは、モータ駆動装置は、第3の電力変換装置をさらに備える。第3の電力変換装置は、直流電源の電圧を変換して第1および第2の電力変換装置に供給するためのコンバータである。そして、制御装置は、第1の電力変換装置への供給電圧に対する第3の電力変換装置の損失をさらに演算するとともに、第1から第3の電力変換装置のうちで損失が最大となる電力変換装置において生じる損失が、当該電力変換装置についての駆動指令値が達成可能な範囲で最小となるように、電圧指令値を設定する。
【0015】
好ましくは、駆動指令値は、モータのトルク指令値および回転速度指令値を含む。そして、制御装置は、第1のモータについてのトルク指令値が予め定められたしきい値を上回るときは、各電力変換装置の損失の大小にかかわらず、第1のモータがトルク指令値および回転速度指令値を達成可能な範囲で、第1の電力変換装置において生じる損失が最小となるように、電圧指令値を設定する。
【0016】
好ましくは、第2の電力変換装置は、直流電源の電圧を変換して第1の電力変換装置に供給するためのコンバータである。
【0017】
好ましくは、制御装置は、各電力変換装置について、与えられた駆動指令値において当該電力変換装置において生じる損失が最小となる電圧指令値が予め定められたマップを含む。そして、制御装置は、マップを用いて電圧指令値を設定する。
【0018】
本発明による車両によれば、駆動輪と、第1のモータと、第1および第2の電力変換装置と、制御装置とを備え、直流電源からの電力を用いて走行する。第1のモータ駆動輪を回転させて車両を走行させる。第1の電力変換装置は、直流電源からの電力を用いて第1のモータを駆動するためのインバータである。第2の電力変換装置は、第1の電力変換装置における直流側の端子に接続される。制御装置は、第1および第2の電力変換装置を制御する。そして、制御装置は、第1の電力変換装置への供給電圧に対する第1および第2の電力変換装置の損失を演算するとともに、得られた損失が最大となる電力変換装置において生じる損失に基づいて、第1の電力変換装置に供給される供給電圧の電圧指令値を設定する。
【0019】
好ましくは、制御装置は、損失が最大となる電力変換装置において生じる損失が、当該電力変換装置についての駆動指令値が達成可能な範囲で最小となるように、電圧指令値を設定する。
【0020】
好ましくは、車両は、第1のモータからの駆動力とともに用いられ、駆動輪を回転させるように構成されたエンジンをさらに備える。
【0021】
好ましくは、車両は、第2のモータをさらに備える。そして、第2の電力変換装置は、直流電源からの直流電力を第2のモータを駆動するための交流電力に変換する機能と、エンジンからの駆動力を用いて第2のモータにより発電された交流電力を、直流電源を充電するための直流電力に変換する機能とを有するように構成されたインバータである。
【0022】
好ましくは、車両は、第3の電力変換装置をさらに備える。第3の電力変換装置は、直流電源の電圧を変換して第1および第2の電力変換装置に供給するためのコンバータである。そして、制御装置は、第1の電力変換装置への供給電圧に対する第3の電力変換装置の損失をさらに演算するとともに、第1から第3の電力変換装置のうちで損失が最大となる電力変換装置において生じる損失が、当該電力変換装置についての駆動指令値が達成可能な範囲で最小となるように、電圧指令値を設定する。
【0023】
好ましくは、第2の電力変換装置は、直流電源の電圧を変換して第1の電力変換装置に供給するためのコンバータである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、複数の電力変換装置を含むモータ駆動装置において、複雑な制御ロジックを用いることなく、損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施の形態1に従うモータ制御装置を搭載した車両の全体ブロック図である。
【図2】実施の形態1における、システム電圧に対する各電力変換装置の損失の一例を示す図である。
【図3】インバータにおける、駆動指令値に対応する最小システム電圧を定めるマップの一例を説明するための図である。
【図4】実施の形態1において、ECUで実行されるシステム電圧設定制御を説明するための機能ブロック図である。
【図5】実施の形態1において、ECUで実行されるシステム電圧設定制御処理の詳細を説明するためのフローチャートである。
【図6】実施の形態1の変形例におけるシステム電圧設定制御の概要を説明するための図である。
【図7】実施の形態1の変形例において、ECUで実行されるシステム電圧設定制御処理の詳細を説明するためのフローチャートの第1の例である。
【図8】実施の形態1の変形例において、ECUで実行されるシステム電圧設定制御処理の詳細を説明するためのフローチャートの第2の例である。
【図9】実施の形態2に従うモータ制御装置を搭載した車両の全体ブロック図である。
【図10】実施の形態3に従うモータ制御装置を搭載した車両の全体ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0027】
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1に従うモータ制御装置を搭載したハイブリッド車両100の全体ブロック図である。本実施の形態においては、車両100としてエンジンおよびモータジェネレータを搭載したハイブリッド車両を例として説明するが、車両100の構成はこれに限定されるものではなく、蓄電装置からの電力によって走行可能な車両であれば適用可能である。車両100としては、ハイブリッド車両以外にたとえば電気自動車や燃料電池自動車などが含まれる。
【0028】
図1を参照して、車両100は、蓄電装置28と、システムリレーSR1,SR2と、平滑コンデンサC1,C2と、コンバータ12と、インバータ23と、制御装置(以下、ECU「Electronic Control Unit」とも称する。)30と、エンジン40と、動力分割機構41と、駆動輪42と、モータジェネレータMG1,MG2とを備える。
【0029】
蓄電装置28は、代表的には、ニッケル水素電池またはリチウムイオン電池等の二次電池や電気二重層キャパシタ等の蓄電装置を含んで構成される。また、蓄電装置28が出力する直流電圧(以下、「バッテリ電圧」とも称する。)VBおよび入出力される直流電流IBは、電圧センサ10および電流センサ11によってそれぞれ検出される。そして、電圧センサ10および電流センサ11は、検出した直流電圧VBおよび直流電流IBの検出値をECU30に出力する。蓄電装置28の出力電圧は、たとえば200V程度である。
【0030】
システムリレーSR1は、蓄電装置28の正極端子と電力線PL1とに接続される。また、システムリレーSR2は、蓄電装置28の負極端子と接地線NLとに接続される。システムリレーSR1,SR2は、ECU30からの信号SEにより制御され、蓄電装置28からコンバータ12への電力の供給と遮断とを切替える。
【0031】
コンバータ12は、リアクトルL1と、スイッチング素子Q1,Q2と、ダイオードD1,D2とを含む。
【0032】
スイッチング素子Q1およびQ2は、電力線PL2および接地線NLの間に直列に接続される。スイッチング素子Q1およびQ2は、ECU30からのスイッチング制御信号PWCによって制御される。本実施の形態において、スイッチング素子Q1,Q2および後述するスイッチング素子Q3〜Q8としては、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、電力用MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタあるいは、電力用バイポーラトランジスタ等を用いることができる。スイッチング素子Q1,Q2に対しては、逆並列ダイオードD1,D2が配置される。
【0033】
リアクトルL1は、一方端がスイッチング素子Q1およびQ2の接続ノードに接続され、他方端が電力線PL1に接続される。すなわち、リアクトルL1,スイッチング素子Q1,Q2およびダイオードD1,D2によってチョッパ回路が構成される。
【0034】
平滑コンデンサC1は、電力線PL1および接地線NLの間に接続され、電力線PL1および接地線NLの間の電圧変動を低減する。
【0035】
コンバータ12は、基本的には、各スイッチング周期内でスイッチング素子Q1およびQ2が相補的かつ交互にオン・オフするように制御される。コンバータ12は、昇圧動作時には、平滑コンデンサC1の両端の直流電圧VLを直流電圧VH(インバータ14への入力電圧に相当するこの直流電圧を、以下「システム電圧」とも称する)に昇圧する。この昇圧動作は、スイッチング素子Q2のオン期間にリアクトルL1に蓄積された電磁エネルギを、スイッチング素子Q1および逆並列ダイオードD1を介して、電力線PL2へ供給することにより行なわれる。
【0036】
また、コンバータ12は、降圧動作時には、直流電圧VHを直流電圧VLに降圧する。この降圧動作は、スイッチング素子Q1のオン期間にリアクトルL1に蓄積された電磁エネルギを、スイッチング素子Q2および逆並列ダイオードD2を介して、接地線NLへ供給することにより行なわれる。
【0037】
これらの昇圧動作および降圧動作における電圧変換比(VHおよびVLの比)は、上記スイッチング周期におけるスイッチング素子Q1,Q2のオン期間比(デューティ)により制御される。なお、スイッチング素子Q1およびQ2をオンおよびオフにそれぞれ固定すれば、VH=VL(電圧変換比=1.0)とすることもできる。
【0038】
平滑コンデンサC2は、電力線PL2および接地線NLとの間に接続される。平滑コンデンサC2は、コンバータ12からの直流電圧を平滑化し、その平滑化した直流電圧をインバータ23へ供給する。電圧センサ13は、平滑コンデンサC2の両端の電圧、すなわち、システム電圧VHを検出し、その検出値をECU30へ出力する。
【0039】
インバータ23は、モータジェネレータMG1を駆動するためのインバータ14と、モータジェネレータMG2を駆動するためのインバータ22とを含む。なお、図1のようにインバータおよびモータジェネレータを2組備えることは必須ではなく、たとえば図9で後述するように、インバータとモータジェネレータとを1組のみ備える構成としてもよい。
【0040】
モータジェネレータMG1,MG2は、インバータ23から供給される交流電力を受けて車両走行のための回転駆動力を発生する。また、モータジェネレータMG1,MG2は、外部から回転力を受け、ECU30からの回生トルク指令によって交流電力を発電するとともに回生制動力を車両100に発生する。
【0041】
また、モータジェネレータMG1,MG2は、動力分割機構41を介してエンジン40にも連結される。そして、エンジン40の発生する駆動力とモータジェネレータMG1,MG2の発生する駆動力とが最適な比率となるように制御される。また、モータジェネレータMG1,MG2のいずれか一方を専ら電動機として機能させ、他方のモータジェネレータを専ら発電機として機能させてもよい。なお、実施の形態1においては、モータジェネレータMG1を、エンジン40により駆動される発電機として専ら機能させ、モータジェネレータMG2を、駆動輪42を駆動する電動機として専ら機能させるものとして説明する。
【0042】
動力分割機構41には、エンジン40の動力を、駆動輪42とモータジェネレータMG1との両方に振り分けるために、遊星歯車機構(プラネタリーギヤ)が使用される。
【0043】
インバータ14は、コンバータ12から昇圧された電圧を受けて、たとえばエンジン40を始動させるためにモータジェネレータMG1を駆動する。また、インバータ14は、エンジン40から伝達される機械的動力によってモータジェネレータMG1で発電された回生電力をコンバータ12に出力する。このときコンバータ12は、降圧回路として動作するようにECU30によって制御される。
【0044】
インバータ14は、電力線PL2および接地線NLの間に並列に設けられる、U相アーム15と、V相アーム16と、W相アーム17とを含んで構成される。各相アームは、電力線PL2および接地線NLの間に直列接続されたスイッチング素子を含んで構成される。たとえば、U相アーム15はスイッチング素子Q3,Q4を含み、V相アーム16はスイッチング素子Q5,Q6を含み、W相アーム17はスイッチング素子Q7,Q8を含む。また、スイッチング素子Q3〜Q8に対して、逆並列ダイオードD3〜D8がそれぞれ接続される。スイッチング素子Q3〜Q8は、ECU30からのスイッチング制御信号PWI1によって制御される。
【0045】
代表的には、モータジェネレータMG1は、3相の永久磁石型同期電動機を含んで構成され、U,V,W相の3つのコイルの一端が中性点に共通に接続される。さらに、各相コイルの他端は、各相アーム15〜17におけるスイッチング素子の接続ノードと接続される。
【0046】
インバータ22は、コンバータ12に対してインバータ14と並列的に接続される。
インバータ22は駆動輪42を駆動するためのモータジェネレータMG2に対して、コンバータ12の出力する直流電圧を三相交流電圧に変換して出力する。またインバータ22は、回生制動に伴い、モータジェネレータMG2において発電された回生電力をコンバータ12に出力する。このときコンバータ12は降圧回路として動作するようにECU30によって制御される。インバータ22の内部の構成は図示しないが、インバータ14と同様であり、詳細な説明は繰り返さない。
【0047】
インバータ14は、モータジェネレータMG1のトルク指令値が正(TR1>0)の場合には、平滑コンデンサC2から直流電圧が供給されるとECU30からのスイッチング制御信号PWI1に応答したスイッチング素子Q3〜Q8のスイッチング動作により、直流電圧を交流電圧に変換して正のトルクを出力するようにモータジェネレータMG1を駆動する。また、インバータ14は、モータジェネレータMG1のトルク指令値が零の場合(TR1=0)には、スイッチング制御信号PWI1に応答したスイッチング動作により、直流電圧を交流電圧に変換してトルクが零になるようにモータジェネレータMG1を駆動する。これにより、モータジェネレータMG1は、トルク指令値TR1によって指定された零または正のトルクを発生するように駆動される。
【0048】
さらに、車両100の回生制動時には、モータジェネレータMG1のトルク指令値TR1は負に設定される(TR1<0)。この場合には、インバータ14は、スイッチング制御信号PWI1に応答したスイッチング動作により、モータジェネレータMG1が発電した交流電圧を直流電圧に変換し、その変換した直流電圧(システム電圧)を、平滑コンデンサC2を介してコンバータ12へ供給する。なお、ここで言う回生制動とは、電動車両を運転するドライバーによるフットブレーキ操作があった場合の回生発電を伴う制動や、フットブレーキを操作しないものの、走行中にアクセルペダルをオフすることで回生発電をさせながら車両を減速(または加速の中止)させることを含む。
【0049】
インバータ22についても同様に、モータジェネレータMG2のトルク指令値に対応したECU30からのスイッチング制御信号PWI2を受け、スイッチング制御信号PWI2応答したスイッチング動作によって、直流電圧を交流電圧に変換して所定のトルクになるようにモータジェネレータMG2を駆動する。
【0050】
電流センサ24,25は、モータジェネレータMG1,MG2に流れるモータ電流MCRT1,MCRT2を検出し、その検出したモータ電流をECU30へ出力する。なお、U相,V相,W相の各相の電流の瞬時値の和は零であるので、図1に示すように電流センサ24,25は2相分のモータ電流を検出するように配置すれば足りる。
【0051】
回転角センサ(レゾルバ)26,27は、モータジェネレータMG1,MG2の回転角θ1,θ2を検出し、その検出した回転角θ1,θ2をECU30へ出力する。ECU30では、回転角θ1,θ2に基づきモータジェネレータMG1,MG2の回転速度MN1,MN2および角速度ω1,ω2(rad/s)を算出できる。なお、回転角センサ26,27については、回転角θ1,θ2をECU30にてモータ電圧や電流から直接演算することによって、配置しないようにしてもよい。
【0052】
ECU30は、いずれも図示しないがCPU(Central Processing Unit)、記憶装置および入出力バッファを含み、車両100の各機器を制御する。なお、これらの制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で処理することも可能である。
【0053】
代表的な機能として、ECU30は、入力されたトルク指令値TR1,TR2、電圧センサ19によって検出された直流電圧VL、電流センサ11によって検出された直流電流IB、電圧センサ13によって検出されたシステム電圧VHおよび電流センサ24,25からのモータ電流MCRT1,MCRT2および回転角センサ26,27からの回転角θ1,θ2等に基づいて、モータジェネレータMG1,MG2がトルク指令値TR1,TR2に従ったトルクを出力するように、コンバータ12およびインバータ23の動作を制御する。すなわち、コンバータ12およびインバータ23を上記のように制御するためのスイッチング制御信号PWC,PWI1,PWI2を生成して、コンバータ12およびインバータ23へそれぞれ出力する。
【0054】
コンバータ12の昇圧動作時には、ECU30は、システム電圧VHをフィードバック制御することにより、システム電圧VHが電圧目標値に一致するようにスイッチング制御信号PWCを生成する。
【0055】
また、ECU30は、車両100が回生制動モードに入ると、モータジェネレータMG1,MG2で発電された交流電圧を直流電圧に変換するようにスイッチング制御信号PWI1、PWI2を生成してインバータ23へ出力する。これにより、インバータ23は、モータジェネレータMG1,MG2で発電された交流電圧を直流電圧に変換してコンバータ12へ供給する。
【0056】
さらに、ECU30は、車両100が回生制動モードに入ると、インバータ23から供給された直流電圧を降圧するようにスイッチング制御信号PWCを生成し、コンバータ12へ出力する。これにより、モータジェネレータMG1,MG2が発電した交流電圧は、直流電圧に変換され、さらに降圧されて蓄電装置28に供給される。
【0057】
なお、図1の構成において、モータジェネレータMG1,MG2、エンジン40、動力分割機構41および駆動輪42の除いた部分により、モータ駆動装置20が構成される。
【0058】
図1のような車両システムにおいては、モータ駆動装置のシステム全体としての効率を向上させることが重要である。この効率向上を達成するために、図1のように、コンバータ12、インバータ14,22のような複数の電力変換装置を備えるモータ駆動装置では、各電力変換装置の損失を低減させることが重要となるが、同様の走行状態の場合であっても、各電力変換装置の駆動状態によってその損失が異なる。そして、この損失は、これらの電力変換装置へ供給または出力される共通のシステム電圧VHによって変化する。
【0059】
このシステム電圧VHは、コンバータ12によって制御されるが、基本的にはモータジェネレータMG1,MG2の回転によって発生される誘起電圧よりも高く設定される。これは、システム電圧VHよりもモータジェネレータMG1,MG2による誘起電圧が高くなると、モータジェネレータMG1,MG2が制御不能となってしまうおそれがあるからである。逆に、システム電圧VHを超えないようにモータジェネレータMG1,MG2の誘起電圧を制御しようとする場合には「弱め界磁制御」を行うことが必要となるが、この弱め界磁制御は一般的に損失の増加を招いてしまう。
【0060】
図2は、車両が特定の走行状態である場合における、システム電圧VHに対する各電力変換装置の損失の一例を示す図である。
【0061】
図2の例の場合には、比較的高速・高出力が要求されている走行状態であり、モータジェネレータMG2を駆動するインバータ14(以下、「INV2」とも称する。)の損失が最も大きくなっている。しかしながら、走行状態によっては、INV2の出力が、モータジェネレータMG1を駆動するインバータ22(以下、「INV1」とも称する。)の損失と同等またはより低くなる場合もあり得る。
【0062】
また、図2に示されるように、各電力変換装置において、同じ駆動状態であっても、システム電圧VHの設定によって生じる損失が異なる。そして、各電力変換装置について、損失が極小となる特定のシステム電圧VHが存在し得る。この損失が極小となるシステム電圧VHは、電力変換装置ごとに異なるが、たとえば、図2のように、設定可能なシステム電圧VHの範囲にわたって、特定の電力変換装置(図2ではINV2)の損失が他の電力変換装置の損失よりも大きく、モータ駆動装置のシステム全体の損失において支配的となるような場合には、この損失が最大となる電力変換装置について生じる損失が最小となるようにシステム電圧VHを設定することによって、モータ駆動装置全体の損失を最小化することが期待できる。
【0063】
そこで、実施の形態1では、ある走行状態において、複数の電力変換装置についてそれぞれの駆動状態に対する損失を求め、得られた損失が最大となる電力変換装置について損失が最小となるようにシステム電圧VHを設定するシステム電圧設定制御を行なう。
【0064】
次に、図3を用いて、システム電圧設定制御の概要について説明する。図3は、インバータにおける、駆動指令値に対応する最小システム電圧を定めるマップを説明するための図である。
【0065】
図3を参照して、図3の上段は上記のマップを示しており、インバータの駆動指令(すなわち、トルク指令値TRおよび回転速度指令値MN)の各動作点に対して、図3の下段のように、その駆動指令値が達成可能な範囲で最小となるシステム電圧VHminが設定されている。そして、各電力変換装置において、現在のシステム電圧VHと駆動指令(TR,NM)とから発生し得る損失を演算し、得られた損失のうちで最大の損失を生じる電力変換装置に対して、図3に示すマップを用いてシステム電圧の設定値を決定する。
【0066】
このような手法によってシステム電圧VHを設定することで、設定値演算のためにフィードバック制御を行なうというような複雑な制御ロジックを用いることなく、比較的に容易な演算によってシステム全体の損失を低減することが可能となる。
【0067】
なお、上述の説明においては、インバータの場合におけるマップの例を説明したが、コンバータ12の場合には、その損失は、蓄電装置28のバッテリ電圧VBとシステム電圧VHとから定まる昇圧比にほぼ比例する。
【0068】
図4は、実施の形態1において、ECU30で実行されるシステム電圧設定制御を説明するための機能ブロック図である。図4で説明される機能ブロック図に記載された各機能ブロックは、ECU30によるハードウェア的あるいはソフトウェア的な処理によって実現される。
【0069】
図1および図4を参照して、ECU30は、損失演算部31と、判定部32と、VH設定部33と、記憶部34とを含む。
【0070】
損失演算部31は、アクセルペダル(図示せず)の踏込量に基づいて設定されるモータジェネレータMG1,MG2のトルク指令値TR1,TR2(以下、総称してTRとも称する。)および回転速度の設定値MN1,MN2(以下、総称してNMとも称する。)を、図示しない上位ECUから受ける。また、損失演算部31は、電圧センサ10,13からの現在のバッテリ電圧VBおよびシステム電圧VHの検出値をそれぞれ受ける。そして、損失演算部31は、これらの情報に基づいて、たとえば、記憶部34に記憶された図2で示したようなマップを用いて、現在のシステム電圧VHで発生し得るINV1,INV2の損失LOS1,LOS2およびコンバータ12の損失LOSCを演算する。損失演算部31は、演算した損失LOS1,LOS2,LOSCを判定部32へ出力する。なお、各電力変換器の損失は、予め定められた演算式を用いて設定するようにしてもよい。
【0071】
判定部32は、損失演算部31から損失LOS1,LOS2,LOSCを受ける。そして、判定部32は、得られた損失を比較して、どの電力変換装置の損失が最大となるかを判定する。そして、最大損失となる電力変換装置を示す判定結果SELをVH設定部33へ出力する。
【0072】
VH設定部33は、判定部32からの判定結果SELを受ける。また、VH設定部33は、駆動指令(TR,NM)およびバッテリ電圧VBを受ける。VH設定部33は、判定結果SELで選択された電力変換装置に対して、記憶部34に記憶された図3で示したようなマップを用いて、駆動指令またはバッテリ電圧VBに基づいてシステム電圧の電圧指令値VHRを決定する。VH設定部33は、決定された電圧指令値VHRを、他のECUまたはECU30内の別の機能部分(いずれも図示せず)へ出力し、そこで電圧指令値VHRに基づいてコンバータ12を駆動するための制御信号PWCが生成される。
【0073】
図5は、実施の形態1において、ECU30で実行されるシステム電圧設定制御処理の詳細を説明するためのフローチャートである。図5および後述する図7,図8に示されるフローチャート中の各ステップについては、ECU30に予め格納されたプログラムを所定周期で実行することによって実現される。あるいは、一部のステップについては、専用のハードウェア(電子回路)で処理を実現することも可能である。
【0074】
図1および図5を参照して、ECU30は、ステップ(以下、ステップをSと略す。)100にて、モータジェネレータMG1,MG2のトルク指令値TRおよび回転速度指令NMを取得する。また、ECU30は、S100において、現在のシステム電圧VHおよびバッテリ電圧VBについても取得する。
【0075】
ECU30は、これらの情報に基づいて、各電力変換装置において発生し得る損失LOS1,LOS2,LOSCを演算により求める。
【0076】
そして、ECU30は、S120にて、INV1の損失LOS1が最大であるか否かを判定する。
【0077】
損失LOS1が最大の場合(S120にてYES)は、処理がS130に進められ、ECU30は、INV1についての図3のようなマップを選択する。そして、ECU30は、S140において、選択されたマップと駆動指令とを用いて、損失が最小となるようなシステム電圧の電圧指令値VHRを決定する。
【0078】
一方、損失LOS1が最大でない場合(S120にてNO)は、S150に処理が進められ、ECU30は、次にINV2の損失LOS2が最大であるか否かを判定する。
【0079】
損失LOS2が最大の場合(S150にてYES)は、処理がS160に進められ、ECU30は、INV2についてのマップを選択し、それを用いて電圧指令値VHRを決定する(S140)。
【0080】
損失LOS2が最大でない場合(S150にてNO)は、ECU30は、コンバータ12の損失LOSCが最大であると判定する。そして、ECU300は、コンバータ12についてのマップを選択して(S170)、それを用いて電圧指令値VHRを決定する(S140)。
【0081】
このような処理に従って制御を行なうことによって、複数の電力変換装置を備えるモータ駆動装置において、複雑な制御ロジックを用いることなく、比較的簡易な制御ロジックによって、モータ駆動装置の損失を低減することが可能となる。
【0082】
[実施の形態1の変形例]
上述の例においては、常にインバータおよびコンバータの損失を演算,比較し、システム電圧の電圧指令値VHRを決定する構成について説明した。
【0083】
ところで、図1に示したようなモータ駆動装置においては、車両を走行させるためのモータジェネレータMG2の容量がモータジェネレータMG1の容量よりも大きく設計される場合が多い。また、モータジェネレータMG2が高出力に設定される場合は、モータジェネレータMG1で発電された電力と、蓄電装置28からの電力(すなわち、コンバータ12から供給される電力)との両方を用いて、モータジェネレータMG2が駆動される場合がある。したがって、このような場合には、モータジェネレータMG2を駆動するためのインバータ22の容量が、一般的に、他の電力変換装置の容量に比べて大きくなるように設計される。
【0084】
そうすると、モータジェネレータMG2のトルク指令値TR2がある所定値よりも大きくなるような高出力の場合には、INV2による損失が、他の電力変換装置の損失よりもさらに支配的となり得る。そして、そのような状況において、実施の形態1で示したような制御を適用すると、常にINV2の基づいてシステム電圧VHが設定されることになり得る。
【0085】
そこで、実施の形態1の変形例においては、モータジェネレータMG2へのトルク指令値TR2が予め定められたしきい値よりも大きい場合には、INV2における損失が最大である可能性が高いとみなして電力変化装置間の損失の比較を行なわず、INV2の損失が最小となるようにシステム電圧の電圧指令値VHRを設定する。
【0086】
このようにすることによって、上記のような条件の場合に、電力変化装置間の損失比較が不要となるので、より簡易な制御ロジックとすることができ、その結果さらにECUの演算負荷を低減することが可能となる。
【0087】
図6は、実施の形態1の変形例におけるシステム電圧設定制御の概要を説明するための図である。図6を参照して、上述のように、モータジェネレータMG2のトルク指令値TR2が、予め定められたしきい値TRthよりも大きくなる領域RG1においては、図6の上段のように、INV2の損失が他の電力変換装置の損失と比較して著しく大きくなり得る。そのため、モータジェネレータMG2のトルク指令値TR2が領域RG1の範囲となる場合には、各電力変換装置における損失の演算・比較を行なわずに、INV2についてのマップを用いて電圧指令値VHRを決定する。
【0088】
一方、モータジェネレータMG2のトルク指令値TR2がしきい値TRth以下となる領域RG2の場合には、INV2の損失が小さくなり、図6の下段のような状態となり得る。したがって、この場合には、実施の形態1のように各電力変換装置の損失の比較に基づいて電圧指令値VHRを決定する。あるいは、従来の技術で行われているように、各電力変換装置についての駆動指令から、マップなどを用いて定められるシステム電圧の電圧設定値のうち、最大のものを電圧指令値VHRとして設定するようにしてもよい。
【0089】
図7は、実施の形態1の変形例において、ECU30で実行されるシステム電圧設定制御処理の詳細を説明するためのフローチャートの第1の例である。図7は、実施の形態1の図5のフローチャートに、ステップS105,S106が追加されたものとなっている。図7において、図5と重複するステップについての説明は繰り返さない。
【0090】
図1および図7を参照して、ECU30は、S100にて駆動指令等を取得すると、次にS105にて、モータジェネレータMG2のトルク指令値TR2がしきい値TRthより大きいか否かを判定する。
【0091】
トルク指令値TR2がしきい値TRthより大きい場合(S105にてYES)は、処理がS106に進められて、ECU30は、INV2についてのマップを選択し、それを用いて電圧指令値VHRを決定する(S140)。
【0092】
一方、トルク指令値TR2がしきい値TRth以下の場合(S105にてNO)は、処理がS110に進められ、実施の形態1の図6の処理と同様に、各電力変換装置の損失を演算するとともに、得られた損失の比較に基づいて電圧指令値VHRを決定する。
【0093】
また、図8は、実施の形態1の変形例において、ECU30で実行されるシステム電圧設定制御処理の詳細を説明するためのフローチャートの第2の例である。
【0094】
図1および図8を参照して、ECU30は、S200にて、モータジェネレータMG1,MG2の駆動指令等を取得すると、次にS210にて、モータジェネレータMG2のトルク指令値TR2がしきい値TRthよりも大きいか否かを判定する。
【0095】
トルク指令値TR2がしきい値TRthよりも大きい場合(S210にてYES)は、処理がS220に進められ、ECU30は、INV2についてのマップを用いて電圧指令値VHRを決定する。
【0096】
一方、トルク指令値TR2がしきい値TRth以下の場合(S210にてNO)は、処理がS230に進められ、INV1,INV2の各々について、駆動指令に基づいて定められるシステム電圧の電圧設定値VHmg1,VHmg2を演算する。
【0097】
そして、ECU30は、S240にて、モータジェネレータMG2についての電圧設定値VHmg2がモータジェネレータMG2についての電圧設定値VHmg1より大きいか否か(VHmg2<VHmg1)を判定する。
【0098】
電圧設定値VHmg2が電圧設定値VHmg1より大きい場合(S240にてYES)は、S250にて、ECU30は、電圧設定値VHmg2をVHRとして設定する。
【0099】
一方、電圧設定値VHmg2が電圧設定値VHmg1以下の場合(S240にてNO)は、S260にて、ECU30は、電圧設定値VHmg1をVHRとして設定する。
【0100】
このような処理に従って制御を行なうことによって、実施の形態1と比較してさらに演算負荷を低減しつつ、モータ駆動装置の損失を低減することが可能となる。
【0101】
[実施の形態2]
実施の形態1およびその変形例においては、2つのモータジェネレータを備えたハイブリッド自動車について説明したが、エンジンとモータジェネレータを備えるハイブリッド自動車には、実施の形態1における発電用に用いられるモータジェネレータが備えられない場合もある。
【0102】
図9は、実施の形態2に従うモータ制御装置20Aを搭載した車両100Aの全体ブロック図である。図9では、モータジェネレータおよびインバータが1組となっており、図1におけるモータジェネレータMG2に関連する装置が削除されている。
【0103】
なお、図9においては、図1との対比が容易なように、モータジェネレータおよびインバータについての参照符号として実施の形態1におけるモータジェネレータMG1およびインバータ14と同じものをそれぞれ使用しているが、図9のようにモータジェネレータおよびインバータが1組である構成においては、モータジェネレータは、駆動輪を駆動することができる機能、すなわち実施の形態1において説明したモータジェネレータMG2の機能を有する場合も含むことに注意されたい。
【0104】
このような構成の場合においても、モータジェネレータを駆動するためのインバータおよび蓄電装置の出力電圧を昇圧するためのコンバータのように、2つの電力変換装置を備える場合には、実施の形態1およびその変形例と同様のシステム電圧設定制御を適用することが可能である。
【0105】
[実施の形態3]
また、図10に示す実施の形態3における車両100Bは、実施の形態2の構成からエンジン40および動力分割機構41が削除された構成となっている。すなわち、車両100Bは電気自動車の場合に相当する。
【0106】
なお、実施の形態3においては、車両100Bは、モータジェネレータMG1からの駆動力を用いて走行する。
【0107】
このような電気自動車においても、複数の電力変換装置を有する場合には、実施の形態2と同様に、実施の形態1およびその変形例と同様のシステム電圧設定制御を適用することが可能である。
【0108】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0109】
10,13,19 電圧センサ、11,24,25 電流センサ、12 コンバータ、14,22,23 インバータ、15 U相相アーム、16 V相アーム、17 W相アーム、20,20A,20B モータ駆動装置、26,27 回転角センサ、28 蓄電装置、30 ECU、31 損失演算部、32 判定部、33 設定部、34 記憶部、40 エンジン、41 動力分割機構、42 駆動輪、100,100A,100B 車両、C1,C2 平滑コンデンサ、D1〜D8 ダイオード、L1 リアクトル、MG1,MG2 モータジェネレータ、NL 接地線、PL1,PL2 電力線、Q1〜Q8 スイッチング素子、SR1,SR2 システムリレー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源からの電力を用いてモータを駆動するためのモータ駆動装置であって、
第1のモータと、
前記直流電源からの電力を用いて前記第1のモータを駆動するためのインバータである第1の電力変換装置と、
前記第1の電力変換装置における直流側の端子に接続された第2の電力変換装置と、
前記第1の電力変換装置および前記第2の電力変換装置を制御するための制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記第1の電力変換装置への供給電圧に対する前記第1および第2の電力変換装置の損失を演算するとともに、得られた損失が最大となる電力変換装置において生じる損失に基づいて、前記第1の電力変換装置に供給される前記供給電圧の電圧指令値を設定する、モータ駆動装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記損失が最大となる電力変換装置おいて生じる損失が、当該電力変換装置についての駆動指令値が達成可能な範囲で最小となるように、前記電圧指令値を設定する、請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項3】
第2のモータをさらに備え、
前記第2の電力変換装置は、前記第2のモータを駆動するためのインバータである、請求項2に記載のモータ駆動装置。
【請求項4】
第3の電力変換装置をさらに備え、
前記第3の電力変換装置は、前記直流電源の電圧を変換して前記第1および第2の電力変換装置に供給するためのコンバータであり、
前記制御装置は、前記第1の電力変換装置への供給電圧に対する前記第3の電力変換装置の損失をさらに演算するとともに、前記第1から第3の電力変換装置のうちで損失が最大となる電力変換装置において生じる損失が、当該電力変換装置についての駆動指令値が達成可能な範囲で最小となるように、前記電圧指令値を設定する、請求項3に記載のモータ駆動装置。
【請求項5】
前記駆動指令値は、前記モータのトルク指令値および回転速度指令値を含み、
前記制御装置は、前記第1のモータについての前記トルク指令値が、予め定められたしきい値を上回るときは、前記各電力変換装置の損失の大小にかかわらず、前記第1のモータが前記トルク指令値および前記回転速度指令値を達成可能な範囲で、前記第1の電力変換装置において生じる損失が最小となるように、前記電圧指令値を設定する、請求項3または4に記載のモータ駆動装置。
【請求項6】
前記第2の電力変換装置は、前記直流電源の電圧を変換して前記第1の電力変換装置に供給するためのコンバータである、請求項2に記載のモータ駆動装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記各電力変換装置について、与えられた駆動指令値において当該電力変換装置において生じる損失が最小となる前記電圧指令値が予め定められたマップを含み、
前記制御装置は、前記マップを用いて前記電圧指令値を設定する、請求項2〜6のいずれか1項に記載のモータ駆動装置。
【請求項8】
直流電源からの電力を用いて走行が可能な車両であって、
駆動輪と、
前記駆動輪を回転させて前記車両を走行させるための第1のモータと、
前記直流電源からの電力を用いて前記第1のモータを駆動するためのインバータである第1の電力変換装置と、
前記第1の電力変換装置における直流側の端子に接続された第2の電力変換装置と、
前記第1の電力変換装置および前記第2の電力変換装置を制御するための制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記第1の電力変換装置への供給電圧に対する前記第1および第2の電力変換装置の損失を演算するとともに、得られた損失が最大となる電力変換装置において生じる損失に基づいて、前記第1の電力変換装置に供給される前記供給電圧の電圧指令値を設定する、車両。
【請求項9】
前記制御装置は、前記損失が最大となる電力変換装置において生じる損失が、当該電力変換装置についての駆動指令値が達成可能な範囲で最小となるように、前記電圧指令値を設定する、請求項8に記載の車両。
【請求項10】
前記第1のモータからの駆動力とともに用いられ、前記駆動輪を回転させるように構成されたエンジンをさらに備える、請求項9に記載の車両。
【請求項11】
第2のモータをさらに備え、
前記第2の電力変換装置は、前記直流電源からの直流電力を、前記第2のモータを駆動するための交流電力に変換する機能と、前記エンジンからの駆動力を用いて前記第2のモータにより発電された交流電力を、前記直流電源を充電するための直流電力に変換する機能とを有するように構成されたインバータである、請求項10に記載の車両。
【請求項12】
第3の電力変換装置をさらに備え、
前記第3の電力変換装置は、前記直流電源の電圧を変換して前記第1および第2の電力変換装置に供給するためのコンバータであり、
前記制御装置は、前記第1の電力変換装置への供給電圧に対する前記第3の電力変換装置の損失をさらに演算するとともに、前記第1から第3の電力変換装置のうちで損失が最大となる電力変換装置において生じる損失が、当該電力変換装置についての駆動指令値が達成可能な範囲で最小となるように、前記電圧指令値を設定する、請求項11に記載の車両。
【請求項13】
前記第2の電力変換装置は、前記直流電源の電圧を変換して前記第1の電力変換装置に供給するためのコンバータである、請求項9または10に記載の車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−65479(P2012−65479A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208732(P2010−208732)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】