説明

モールド作製方法

【目的】本発明は、モールド作製方法に関し、一定面積のマスクを電子描画で作製し、作製したマスクを電子線露光でモールド上に順次マスク露光した後に現像し、大面積のモールドを短時間に作製してスループットを向上させることを目的とする。
【構成】マスクを、レジストを塗布したモールドの所定位置に近接して位置づけるステップと、近接して位置づけた状態で、電子線をマスクに照射してマスク上の微小パターンを透過した電子線をマスク上のレジストに露光するステップと、露光した後に、マスクを次の位置に位置づけた後、露光することを繰り返すステップと、繰り返した後に、モールド上の露光されたレジストを現像するステップと、現像した後のモールドをエッチングし、マスク上のパターンに対応するパターンをモールド上に形成するステップとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターンを転写する押し型を作製するモールド作製方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、LEDやLDなどの光学デバイスの表面、あるいは内部に光の波長程度の周期構造をつくることによって光学デバイスの特性を制御する、あるいは改良することが行われている。このような目的の周期構造はいろいろな微細加工によって作製するが、その中でも現在もっとも有力視されている技術の1つにナノインプリント技術がある。
【0003】
ナノインプリントの押し型転写に使えわれるモールド(押し型)は光学的な露光装置によって製作していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したモールド上に作製するパターンのサイズが500nmを下回る場合には光学的な方法では波長の限界のために解像力が不足する。このような場合には、電子線露光装置を使用して微細なパターンをモールド上に作製するが、電子線露光装置を用いた描画では描画に非常に多くの時間がかかり、特に、大面積のモールドではスループットが極めて低くなり、ひいてはコストが非常に高いものとなってしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はこのような微細なパターンサイズを持つモールドを作製する際に、一定面積のマスクを電子描画で作製し、当該作製したマスクを電子線露光でモールド上に順次マスク露光した後に現像し、大面積のモールドを短時間に作製してスループットを向上させることを目的としている。
【0006】
そのために、本発明は、パターンを転写する押し型(以下「モールド」という)を作製するモールド作製方法において、モールドにレジストを塗布するステップと、電子線が透過するパターンを有する予め作製した一定面積のマスクを、レジストを塗布したモールドの所定位置に近接して位置づけるステップと、近接して位置づけた状態で、電子線をマスクに照射してマスク上の微小パターンを透過した電子線をモールド上のレジストに露光するステップと、露光した後に、マスクを次の位置に位置づけた後、露光することを繰り返すステップと、繰り返した後に、モールド上の露光されたレジストを現像するステップと、現像した後のモールドをエッチングし、マスク上のパターンに対応するパターンをモールド上に形成するステップと、モールド上のレジストを除去するステップとを有する。
【0007】
この際、電子線をマスクに照射するとして、細い電子線で当該マスク上を全面走査あるいはマスク上のパターンのある部分のみを走査するようにしている。
【0008】
また、細い電子線として、マスク上の最も細いパターンの幅のサイズあるいは若干太いサイズのパターンとするようにしている。
【0009】
また、マスクとモールドあるいはモールドを塗布したレジストとの間の間隔をd、モールド上に形成する最小のパターンの幅をsとしたとき、マスクを照射する電子線の開き角度α<<s/d(ラジアン)とするようにしている。
【0010】
また、モールドにアライメントマークを形成しておき、アライメントマークを基準にマスクに位置づけるようにしている。
【0011】
また、マスクにアライアメントマークを形成しておき、アライメントマークを基準にモールドに位置づけるようにしている。
【0012】
また、マスクにレジストを塗布して一定面積のパターンを電子線描画した後に現像し、更に、エッチングして電子線が透過するパターンを作製するようにしている。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、微細なパターンサイズを持つモールドを作製する際に、一定面積のマスクを電子描画で作製し、作製したマスクを電子線露光でモールド上に順次マスク露光した後に現像し、大面積のモールドを短時間に作製してスループットを向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、微細なパターンサイズを持つモールドを作製する際に、一定面積のマスクを電子描画で作製し、作製したマスクを電子線露光でモールド上に順次マスク露光した後に現像し、大面積のモールドを短時間に作製してスループットを向上させることを実現した。
【実施例1】
【0015】
図1は、本発明の動作説明フローチャート(全体)を示す。
【0016】
図1において、S1は、シリコンウェハにレジスト塗布する。これは、後述する図3の(a)に示すように、シリコンウェハ12にレジスト11を均一に塗布、例えばシリコンウェハ12を高速回転した状態で中心にレジスト11の液を1点たらして遠心力で均一に塗布する。
【0017】
S2は、電子線描画装置でパターン描画する。これは、S1でレジストを塗布して乾燥した後、電子線描画装置でモールドに繰り返し露光するための一定面積内のパターンを描画して露光する。
【0018】
S3は、レジストの現像、およびシリコンウェハのエッチングを行なう。これは、S2でシリコンウェハ12にパターンを電子線描画した後、現像およびエッチングを行い、後述する図3の(b)に示すように、パターンの部分(あるいはパターン以外の部分)に穴が開いたシリコンウェハ11、即ちステンシルマスク14を作製する。
【0019】
ここで、本発明で使用するステンシルマスク14について詳細に説明すれば、シリコンウェハ11を材料にパターンを作製する必要領域を0.001nm程度の電子線が透過しない薄膜に加工した上で、この領域内に必要な開口パターンを作製して電子線が通過するパターンとする。
【0020】
S4は、電子ビームマスク転写装置でモールドにパターン転写する。これは、後述する図3の(c)に示すように、S3で作製したステンシルマスク14に近接して配置したレジスト15の塗布したモールド16に、ステンシルマスク14の上から電子線を照射しつつ走査して当該ステンシルマスク14のパターンを、モールド16に塗布したレジスト15に転写する。
【0021】
S5は、ステージ移動する。これは、S4である位置でステンシルマスク14のパターンをモールド16の所定位置に転写した後、次の転写位置に移動する。そして、S4を繰り返し、ステンシルマスク14のパターンを、モールド16上に塗布したレジスト15に繰り返し複数回、転写する(いわゆるステップ アンド リピートする)。これにより、大面積のモールド16上に塗布したレジスト15に、小さなステンシルマスク14のパターンが繰り返し転写(露光)されたこととなる。
【0022】
S6は、レジスト現像、エッチングする。これは、S4、S5を繰り返しモールド16上のレジスト15の全面にステンシルマスク14のパターンの転写(電子線露光)を行った後、レジスト15を現像、エッチングし(図3の(d)参照)、更に、レジスト15を除去する。
【0023】
S7は、モールド完成する。これにより、後述する図3の(e)の大面積のモールド16が作製されたこととなる。
【0024】
ここで、本発明で使用するモールド16について詳細に説明すれば、S1からS3で作製したステンシルマスク14を、モールド16に近接して配置し、ステンシルマスク14側から電子線を照射しつつ走査してモールド16に露光(モールド16に塗布したレジスト15に露光)することを位置を移動させて繰り返し、モールド16の必要な領域にパターンを順次露光した後、現像、エッチングし、ステンシルマスク14上の開口パターンをモールド16の必要領域に作製し、モールド16を作製する(図3の(c)から(e)参照)。
【0025】
更に、図2を用いて詳細に説明する。
【0026】
図2は本発明の説明図(全体)を示す。これは、近接マスク転写の様子を模式的に示したものである。以下近接マスク転写および要点について順次詳細に説明する。
【0027】
(1)パターンを形成するべき表面に電子線に感光する樹脂(レジスト15)を塗布したモールド16を平面内に移動可能なステージ上に置く。
【0028】
(2) このモールド16の表面に近接して(100μm以内)、形成すべきパターン形状の開口を有するステンシルマスク14を配置し、その上から電子線を照射する。
【0029】
(2−1)照射は必要な面積を同時に照射できる断面をもつ電子線でもよいし、細い電子線(電子線ビーム)を高速に走査して必要な面積を照射してもよい。
【0030】
(2−2)また、照射する電子線の走行は出来るだけ相互に平行となるようにし、ステンシルマスク14の開口を出てからモールド16の表面に到達するまでの電子線ビームの広がりを小さくする(電子線ビームの開き角αを小さくする)。ステンシルマスク14とモールド16との間の間隙をd、形成すべき最小パターン幅をsとすると、電子線ビームの広がり角αは少なくとも s/d(rad)より十分小さくなければならない。
【0031】
例えばd=50μm、s=100nmとすると、a<<2mradとなる。
【0032】
(3)ステージを停止した状態でパターン面のビーム走査を実行する。これによりモールド16に塗布したレジスト15上の電子によって照射された領域が露光する。ステンシルマスク14のパターン領域を全面照射した後、ステージを一定ピッチ移動する。このピッチはステンシルマスク14上に形成されたパターンの領域のサイズに正確に一致させる。その後、再びビーム走査を実行し、モールド16上の隣接した領域を照射、露光する。
【0033】
以上の操作を繰り返すことにより、モールド16上の必要領域の全てを照射、露光する(ステップ・アンド・リピートという)。
【0034】
(4)露光を終了したモールド16を現像し、さらにエッチンクすることによりパターンがモールド16上に形成される(図3の(e)参照)。
【0035】
(5)ここで、上述したモールド16へのマスク転写露光ではパターンサイズに係わりなく大電流の電子線ビームを使用することができるので、1ステップの露光時間は数十秒の範囲で可能である。一方、ステンシルマスク14へのパターンの電子線描画では微小な電子ビーム(ビームサイズが最小パターンサイズを決める)を用いるので、露光時間は非常に長くなる。例えば1cm角を1画素10nmで描画するとして、1画素あたり200MHzで描画するとしても1時間程度かかる。
【0036】
(6)いま、ステンシルマスク14上でa(cm)×a(cm)の領域を電子線描画装置で描画し、これをモールド16上で2次元のm×nのステップ・アンド・リピートでマスク転写を行うとする。もし従来のとおりモールド16の全面を電子線描画装置によって描画すれば描画面積はma(cm)×na(cm)となる。仮に電子線描画装置による描画では前述のように1cm角を1時間、マスク転写1ステップ(1cm角)20秒とし、12cm角のモールド16の全面を露光する時間(のみ)を計算してみる。
【0037】
・電子線描画では、12×12×1時間=144時間
となる。一方、マスク転写では、
・1時間+12×12×20秒=1.8時間
となってマスク転写を応用する有利さが明らかとなり、極めて短時間にモールド16を作製することが可能となる。
【0038】
(7)ここで、ステップ・アンド・リピートの際に、隣接領域とのパターン接続の精度を得るためにはステージを高精度で移動停止させなければならない。レーザー干渉計を用いれば、計測とステージ位置決め制御によって10−12nm程度の接続精度が実現されているので、この程度の接続精度を持つマスクを作製することが可能である。更に、レーザ干渉計の精度が上がれば、更に接続精度の高いマスクを作製することも可能である。
【0039】
図3は、本発明の説明図を示す。
【0040】
図3の(a)は、シリコンウェハにレジストを塗布した状態を示す。
【0041】
図3の(b)は、ステンシルマスクを示す。これは、図3の(a)のシリコンウェハ12にレジスト11を塗布した状態で、パターンを電子線描画装置で描画(露光)、現像、エッチング、レジスト11の除去した後のものであって、開口パターンが電子線が透過し、それ以外が電子線が透過しない部分を持つもの(ステンシルマスク14)である。
【0042】
図3の(c)は、レジストの塗布したモールドにステンシルマスクのパターンを露光、現像した後の状態を模式的に示す。
【0043】
図3の(d)は、図3の(c)の状態で、エッチングしてモールドにパターンを形成した状態を模式的に示す。
【0044】
図3の(e)は、図3の(d)のパターンを形成したモールドからレジストを除去して完成したモールドを模式的に示す。
【0045】
図4は、本発明の縮小投影例を示す。
【0046】
図4において、電子源32は、電子線を発生する電子銃を構成する電子源である。
【0047】
コンデンサレンズ33は、電子源32で発生された電子線を集束すると共にほぼ平行な電子線をステンシルマスク14に照射するものである。
【0048】
ステンシルマスク14は、既述した電子線の通過する開口パターンを持つマスクである。
【0049】
縮小レンズ系34は、ステンシルマスク14の開口パターンを通過した電子線(電子線像)を縮小するレンズ系であって、電磁あるいは静電のレンズを用いて形成したものである。縮小レンズ系34により、ステンシルマスク14上の開口パターンの像が、モールド16上で縮小されて投影されるので、ステンシルマスク14上の開口パターンのサイズを実際にモールド16上に形成するパターンのサイズよりも大きく形成でき、ステンシルマスク14の作製が容易となる。
【0050】
以上の図4の縮小レンズ系34によりモールド16上に塗布したレジストにステンシルマスク14の開口パターンの縮小したパターンを露光することが可能となる。この縮小投影系34を、図1から図3で説明したステンシルマスク14の開口パターンを直接にモールド16に電子線転写する構成と置き換えることにより、縮小倍率に相当した分だけステンシルマスク14上の開口パターンの寸法を大きくでき、ステンシルマスク14を容易に作製できる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、微細なパターンサイズを持つモールドを作製する際に、一定面積のマスクを電子描画で作製し、作製したマスクを電子線露光でモールド上に順次マスク露光した後に現像し、大面積のモールドを短時間に作製してスループットを向上させるモールド作製方法に関するものである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の動作説明フローチャート(全体)である。
【図2】本発明の説明図(全体)である。
【図3】本発明の説明図である。
【図4】本発明の縮小投影例である。
【符号の説明】
【0053】
10:電子線ビーム
11、15、22:レジスト
12:シリコンウェハ
13:開口パターン
14:ステンシルマスク
16:モールド
32:電子源
33:コンデンサレンズ
34:縮小レンズ系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターンを転写する押し型(以下「モールド」という)を作製するモールド作製方法において、
前記モールドにレジストを塗布するステップと、
電子線が透過するパターンを有する一定面積のマスクを、前記レジストを塗布したモールドの所定位置に近接して位置づけるステップと、
前記近接して位置づけた状態で、電子線を前記マスクに照射して当該マスク上の微小パターンを透過した電子線を前記モールド上のレジストに露光するステップと、
前記露光した後に、前記マスクを次の位置に位置づけた後、露光することを繰り返すステップと、
前記繰り返した後に、モールド上の露光されたレジストを現像するステップと、
前記現像した後のモールドをエッチングし、前記マスク上のパターンに対応するパターンを当該モールド上に形成するステップと、
前記モールド上のレジストを除去するステップと
を有するモールド作製方法。
【請求項2】
前記電子線をマスクに照射するとして、細い電子線で当該マスク上を全面走査あるいはマスク上のパターンのある部分のみを走査することを特徴とする請求項1記載のモールド作製方法。
【請求項3】
前記細い電子線として、前記マスク上の最も細いパターンの幅のサイズあるいは若干太いサイズのパターンとしたことを特徴とする請求項1あるいは請求項2記載のモールド作製方法。
【請求項4】
前記マスクと前記モールドあるいは前記モールドを塗布したレジストとの間の間隔をd、モールド上に形成する最小のパターンの幅をsとしたとき、前記マスクを照射する電子線の開き角度α<<s/d(ラジアン)としたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のモールド作製方法。
【請求項5】
前記モールドにアライメントマークを形成しておき、当該アライメントマークを基準に前記マスクに位置づけることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のモールド作製方法。
【請求項6】
前記マスクにアライアメントマークを形成しておき、当該アライメントマークを基準に前記モールドに位置づけることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のモールド作製方法。
【請求項7】
前記マスクにレジストを塗布して一定面積のパターンを電子線描画した後に現像し、更に、エッチングして電子線が透過するパターンを作製したことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のモールド作製方法。
【請求項8】
前記マスクを電子線で全面照射あるいは全面走査あるいは開口したパターンの部分のみを全面走査し、当該マスク上に形成したパターンを透過した電子線を電磁型あるいは静電型の縮小レンズを用いて前記モールドに塗布したレジスト上に縮小したパターンを形成して露光することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載のモールド作製方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−274348(P2009−274348A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−128280(P2008−128280)
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(591012668)株式会社ホロン (63)
【出願人】(592216384)兵庫県 (258)
【Fターム(参考)】