説明

ラック搬送機構および自動分析装置

【課題】周囲の環境や容器の種類によらず、その容器に帯電した静電気を確実に除去することができるラック搬送機構および当該ラック搬送機構を備えた自動分析装置を提供する。
【解決手段】一連の部材からなり、複数の試料容器71を搭載するラック41を載置して移送する移送ベルト211と、移送ベルト211が移送するラック41に搭載された試料容器71に接触可能であり、移送ベルト211のラック移送方向および移送ベルト211のラック載置面の法線方向と直交する方向であって互いに相反する方向にそれぞれ延出し、前記容器に帯電した静電気を除去する一対の除電ブラシ26および27と、を備え、移送ベルト211のラック移送方向における一対の除電ブラシ26および27の間隔を、ラック41が試料容器71を搭載する間隔Pの1/2とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の容器を搭載したラックを搬送するラック搬送機構、および当該ラック搬送機構を備え、各容器に収容された試料の自動的かつ連続的な分析を行う自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
試料と試薬とを反応させることによって試料の成分の分析を行う自動分析装置では、試料容器に収容されている試料を所定の反応容器へ分注し、その反応容器内で検査項目に応じた試薬と混合し、反応を生じさせている。このような試料の分注を迅速に行うため、自動分析装置には、複数の試料容器をまとめて搭載したラックを搬送するラック搬送機構が設けられている。
【0003】
自動分析装置において試料を分注する際には、分注用のプローブが必要以上に試料の中にもぐりこんでしまうことがないように試料の液面検知が行われるが、試料容器に静電気が帯電していると、液面を誤検知してしまうという問題があった。このような液面の誤検知を防止する技術として、搬送中のラックに搭載されている試料容器に金属製のブラシ(除電ブラシ)を接触させることにより、試料容器に帯電した静電気を除去する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。除電ブラシを設ける場合には、その除電ブラシの延出長さや高さを調整し、試料容器と接触する際に発生する摩擦が大きくなり過ぎてラックの進行が妨げられることがないような工夫が施される。
【0004】
【特許文献1】特開平11−271319号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば大気が顕著に乾燥している地域で上述した自動分析装置を使用する場合には、試料容器に想定しているよりも多くの静電気が帯電してしまうことがあり、上述した従来の除電ブラシでは十分な除電効果を得ることができなかった。
【0006】
また、少量の試料を分析する際には試験管等の大型容器の上に小型容器を載せて使用することがあるが、その小型容器はプラスチック製で静電気を帯電しやすいにもかかわらず、容器上端部以外は試料容器の内部に入っているため、除電ブラシを小型容器に接触させて静電気を除去することが困難であった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、周囲の環境や容器の種類によらず、その容器に帯電した静電気を確実に除去することができるラック搬送機構および当該ラック搬送機構を備えた自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1記載の発明に係るラック搬送機構は、一連の部材からなり、複数の容器を搭載するラックを載置して移送する移送手段と、前記移送手段で移送する前記ラックに搭載された前記容器に接触可能であり、前記移送手段のラック移送方向および前記移送手段のラック載置面の法線方向と直交する方向であって互いに相反する方向にそれぞれ延出し、前記容器に帯電した静電気を除去する一対の除電ブラシと、を備え、前記移送手段のラック移送方向における前記一対の除電ブラシの間隔は、前記ラックが前記容器を搭載する間隔の1/2であることを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記一対の除電ブラシは、前記移送手段で移送する前記ラックに搭載された前記容器の鉛直方向の最高点よりも高い位置まで達していることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、前記一対の除電ブラシは、前記移送手段における前記ラックの載置面と直交する面のうち前記移送手段の移送経路に沿って該ラック移送経路の幅方向の中心を通過する面まで延出していることを特徴とする。
【0011】
請求項4載の発明は、試料と試薬とを反応させることによって前記試料の成分の分析を行う自動分析装置であって、請求項1〜3のいずれか一項記載のラック搬送機構と、前記移送手段のラック移送方向に沿って前記一対の除電ブラシよりも後方に位置し、前記移送手段で移送する前記ラックに搭載された前記容器に収容される試料を分注する試料分注手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、一連の部材からなり、複数の容器を搭載するラックを載置して移送する移送手段と、前記移送手段で移送する前記ラックに搭載された前記容器に接触可能であり、前記移送手段のラック移送方向および前記移送手段のラック載置面の法線方向と直交する方向であって互いに相反する方向にそれぞれ延出し、前記容器に帯電した静電気を除去する一対の除電ブラシと、を備え、前記移送手段のラック移送方向における前記一対の除電ブラシの間隔を、前記ラックが前記容器を搭載する間隔の1/2とすることにより、周囲の環境や容器の種類によらず、その容器に帯電した静電気を確実に除去することができるラック搬送機構および当該ラック搬送機構を備えた自動分析装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための最良の形態(以後、「実施の形態」と称する)を説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係る自動分析装置要部の構成を模式的に示す図である。同図に示す自動分析装置1は、試料(検体)と試薬とを所定の反応容器にそれぞれ分注し、その反応容器内の液体(反応液)に対して光学的な測定を行う測定ユニット101と、この測定ユニット101を含む自動分析装置1の制御を行うとともに測定ユニット101における測定結果の分析を行うデータ処理ユニット102とを備え、これら二つのユニットが連携することによって多数の試料の成分の生化学的な分析を自動的かつ連続的に行う装置である。なお、ここでいう「液体」には、微量の固体成分を含有する液体も含まれる。
【0014】
測定ユニット101は、試料を収容する試料容器71が搭載された複数のラック41の供給、回収、および収納を行うサンプラ2と、試薬容器81を保持する試薬容器保持部3と、試料と試薬とを反応させる反応容器91を保持する反応容器保持部4と、サンプラ2上の試料容器71に収容された試料を反応容器91に分注する試料分注部5と、試薬容器保持部3上の試薬容器81に収容された試薬を反応容器91に分注する試薬分注部6と、反応容器91の内部に収容された液体を攪拌する攪拌部7と、反応容器91内を通過した光を受光して所定の波長成分の強度等を測定する測光部8と、イオン交換水等から成る洗浄液を用いて反応容器91の洗浄を行う洗浄部9と、を備える。
【0015】
試薬容器保持部3および反応容器保持部4は、試薬容器81および反応容器91をそれぞれ収容保持するホイールと、このホイールの底面中心に取り付けられ、その中心を通る鉛直線を回転軸としてホイールを回転させる駆動手段とを有する(図示せず)。各容器保持部の内部は一定の温度に保たれている。例えば、試薬容器保持部3の内部は、試薬の劣化や変性を抑制するために室温よりも低温に設定される一方、反応容器保持部4内は、人間の体温と同程度の温度に設定される。なお、生化学的な分析を行う際には一つの試料に対して2種類の試薬を用いることが多いため、第1試薬用の試薬容器保持部3と第2試薬用の試薬容器保持部3とを別個に設けるとともに、各試薬容器保持部3に対応する試薬分注部6を別個に設けてもよい。
【0016】
試料分注部5は、試料の吸引や吐出を行う細管状のプローブ51と、プローブ51の鉛直方向の昇降および水平方向の回転を行うアーム52と、プローブ51を洗浄するプローブ洗浄部53と、吸排シリンジ等によって実現される吸排機構(図示せず)とを有する。また、試料分注部5は、静電容量方式による液面検知機構を有している。この液面検知機構としては、従来知られている技術を適用することができる(例えば、特開平5−1934号公報などを参照)。試薬分注部6も試料分注部5と同様、プローブ61、アーム62、プローブ洗浄部63、吸排機構、および液面検知機構を有する。なお、プローブ洗浄部53および63で使用する洗浄液は、洗浄部9で使用する洗浄液と同じでよい。
【0017】
測光部8は、白色光を照射する光源8aと、反応容器91を透過してきた白色光を分光する分光光学系8bと、分光光学系で分光した光を成分ごとに受光して電気信号に変換する受光素子8cとを有する。
【0018】
ところで、図1では、測定ユニット101の主要な構成要素を模式的に示すことを主眼としているため、構成要素間の位置関係は必ずしも正確ではない。正確な構成要素間の位置関係は、試薬容器保持部3の数や分注動作のインターバルにおける反応容器保持部4のホイールの回転態様などの各種条件に応じて定められる。
【0019】
次に、データ処理ユニット102の構成を説明する。データ処理ユニット102は、CPU,ROM,RAM等を具備したコンピュータによって実現される。データ処理ユニット102は、キーボードやマウスなどを有し、試料の分析に必要な情報や自動分析装置1の動作指示信号などを含む情報等の入力を受ける入力部10と、液晶等のディスプレイ装置を有し、試料の分析に関する情報等を出力する出力部11と、測定ユニット101の測定結果に基づいた分析演算を行い、試料の分析データを生成する演算部12と、試料の分析に関する情報や自動分析装置1に関する情報を含む各種情報を記憶する記憶部13と、自動分析装置1が有する各機能または各手段の制御を行う制御部14と、を備える。
【0020】
図2は、サンプラ2に搭載されるラック41および試料容器71の構成を示す図である。ラック41は、試料容器71を保持する複数の凹部42が長手方向に沿って等間隔Pで形成されている。ラック41の長手方向の側面43の底部には、各凹部42に対応して複数の窪み44が形成されている。隣接する窪み44の境界に相当する突起部45の間隔は凹部42の間隔Pと等しく、各突起部45は隣接する凹部42の中間に位置している。なお、図2に示す凹部42の個数(8個)はあくまでも一例に過ぎない。
【0021】
ラック41の長手方向の側面43および短手方向の側面46には、バーコードcd1がそれぞれ貼付されている(図示しない裏側の側面43および46にも貼付されている)。バーコードcd1には、ラック41の種類やID番号等の識別情報に加えて、そのラック41が保持する試料容器71に収容されている試料の識別情報や分析情報などを所定の形式でコード化した情報が記録されている。
【0022】
試料容器71は、ラック41の凹部42に収容する大型の第1容器72と、この第1容器72の開口部に載置された小型の第2容器73とからなる。第1容器72は、プラスチックまたはガラスによって形成されている。第2容器73は、プラスチックによって形成されており、少量の試料を分注する場合などにおいてその試料を収容する場合に用いられる。第1容器72の側面には、第1容器72および/または第2容器73が収容する試料のID番号等の識別情報や分析項目等の分析情報などを所定の形式でコード化して記録したバーコードcd2が貼付されている。この意味で、重なり合っている第1容器72および第2容器73の双方に試料が収容される場合には、それらが同一の試料でなければならない。なお、第1容器72および第2容器73は、それぞれ単独でラック41に搭載して使用することも可能である。
【0023】
試薬容器81にも、試料容器71と同様に、その内部に収容する試薬を識別する識別情報をコード化して記録したバーコードが貼付されている(図示せず)。このため、試薬容器保持部3の近傍にも、試薬容器81に貼付されたバーコードを読み取るバーコード読取部CR2が設けられている。
【0024】
なお、ここではバーコードに所定の情報を記録する場合を説明したが、他の情報コード記録媒体(例えば2次元コード)に所定の情報を記録し、対応するラックや容器に貼付するようにしてもよい。この場合、その情報コード記録媒体に対応した情報コード読取部が設けられることはいうまでもない。
【0025】
次に、本実施の形態に係るラック搬送機構としてのサンプラ2の構成を詳細に説明する。サンプラ2は、ラック41を移送する直線状の搬送レーン21と、搬送レーン21へラック41を供給する供給部22と、搬送レーン21からラック41を回収する回収部23と、回収部23によって回収されたラック41を収納する収納部24と、回収部23から供給部22や収納部24へラック41を振り分ける振り分け部25と、供給部22の搬送レーン21への出口付近に設けられ、ラック41および試料容器71にそれぞれ貼付されたバーコードcd1およびcd2を読み取るバーコード読取部CR1と、を備える。また、搬送レーン21のラック移送方向において試料分注位置Sよりも前方の所定位置には、細毛状のステンレスをブラシ状に束ねて形成した一対の除電ブラシ26および27が設けられている。除電ブラシ26および27の一端側は、アルミニウムなどの金属からなる保持部材28および29によってそれぞれ保持されている。
【0026】
図3は、搬送レーン21の要部の構成を示す図であり、除電ブラシ26および27の近傍の部分拡大図である。また、図4は、図3の矢視A方向の部分矢視図である。この図4では、バーコードcd1およびcd2を省略して記載している。除電ブラシ26および27が搬送レーン21の長手方向に沿って配設される間隔は、ラック41の凹部42の間隔Pの1/2である。また、除電ブラシ26および27が保持部材28および29からそれぞれ延出する長さはLで等しく、搬送レーン21の幅方向の中心まで達している。換言すれば、除電ブラシ26および27は、搬送レーン21のラック移送経路に沿ってこのラック移送経路の幅方向の中心を通過する平面まで延出している。さらに、除電ブラシ26および27の鉛直方向(h軸方向)の最高点h1は、ラック41に搭載された試料容器71の鉛直方向の最高点h2よりも高い。
【0027】
図5は、本実施の形態に係るラック搬送機構の要部の構成を示す図であり、搬送レーン21およびその周囲の詳細な構成を示す図である。搬送レーン21は、ラック41を載置して移送する一連の移送ベルト211(移送手段)と、移送ベルト211を駆動させるモータ212と、ラック41の進行を案内するとともにラック41の移送ベルト211からの脱落を防止するガイドフレーム213および214と、移送ベルト211上のラック41を所定のピッチで歩進させる送りユニット215および216と、を備える。このうち、モータ212のシャフトにはプーリ(図示せず)が取り付けられており、この取り付けられたプーリによって移送ベルト211に駆動力を伝達している。
【0028】
ガイドフレーム213には、除電ブラシ26を保持する保持部材28が取り付けられている一方、ガイドフレーム214には、除電ブラシ27を保持する保持部材29が取り付けられている。ガイドフレーム213および214は、保持部材28および29と同じく、アルミニウムなどの金属によって構成されている。このうちガイドフレーム213は、送りユニット215および216にそれぞれ設けられるツメ部材や歩進検知レバー(後述)の各先端部をラック41に当接させるための開口部213aおよび213bを有する。保持部材28および29は、それぞれガイドフレーム213および214を介して接地されている。
【0029】
送りユニット215は、移送ベルト211の進行方向と直交する平面内で揺動する一対のツメ部材251aおよび251bと、ツメ部材251aおよび251bを軸支するツメ支軸252と、ツメ部材251aおよび251bをそれぞれ揺動させるカム253aおよび253bと、カム253aおよび253bを回転自在に軸支するカム軸254と、カム軸254の回転位置を検知する回転センサ255と、先端部がラック41の溝部44および突起部45に当接可能であり、その先端部の進退に応じてラック41の歩進状況を検知する歩進検知レバー256と、を備える。また、送りユニット215は、カム軸254を回転させる回転用モータ、および歩進検知レバー256の位置を検知する位置センサを備える(ともに図示せず)。
【0030】
ツメ部材251aおよび251bは、所定の位相差(例えば60度)を有しながら揺動し、ラック41の位置決めを行う。このため、カム253aおよび253bはその位相差を実現するようにカム軸254に対して配置される。歩進検知レバー256は、開口部213aを介してラック41の側面43に設けられた溝部44をラック41の長手方向に沿って摺動し、その先端が突起部45に達したとき、ラック41から最も退避した位置となる。
【0031】
以上の構成を有する送りユニット215では、回転センサ255によるカム軸254の回転位置と、位置センサによる歩進検知レバー256のラック41に対する進退位置とを用いることによってラック41の歩進状態を検知する。
【0032】
なお、移送ベルト211を駆動させるモータ212およびカム軸254を回転させるモータは、データ処理ユニット102が具備する制御部14の制御のもと同期して駆動し、前述した回転センサ255や位置センサ等の検知結果に基づいて1ピッチごとに間欠的に動作する。
【0033】
送りユニット216は、送りユニット215と同様の構成を有している。すなわち、送りユニット216は、ツメ部材261aおよび261b、ツメ支軸262、カム263aおよび263b、カム軸264、回転センサ265、歩進検知レバー266、カム軸264の回転用モータ(図示せず)、ならびに位置センサ(図示せず)を備える。ツメ部材261aおよび261bならびに歩進検知レバー266は、ガイドフレーム213の開口部213bを介してラック41の溝部44や突起部45に当接可能であり、それぞれツメ部材251aおよび251bならびに歩進検知レバー256と同様に動作する。カム軸264の回転用モータは、モータ212やカム軸254の回転用モータと同期して動作するように制御部14によって制御される。
【0034】
このようにして搬送レーン21に2つの送りユニット215および216を設けることにより、搬送レーン21のレーン長さが長くても、その途中でラック41の歩進状況を送りユニット間で受け渡すことができ、ラック41を適確に歩進させることが可能となる。
【0035】
以上の構成を有するサンプラ2において、ラック42に搭載された試料容器71は、試料分注位置Sに到達する前に除電ブラシ26および27と接触する。図6は、試料容器71が除電ブラシ26および27に接触している状態を示す図である。上述したように、除電ブラシ26および27のラック移送方向における間隔は、凹部42の間隔(試料容器71が搭載される間隔)Pの1/2であり、除電ブラシ26および27の延出長さはLで等しく、移送ベルト211の幅方向の中心に達している。したがって、除電ブラシ26および27は、同じ試料容器71に対して同時に接触することも可能となる。この場合、従来のように一つの除電ブラシを用いた場合よりも長時間にわたって連続的に除電ブラシを接触させることができ、試料容器71に帯電した静電気を確実に除去することが可能となる。また、同時に接触しない場合でも、2度にわたって除電を行うので、一つの除電ブラシを用いた場合よりも確実に静電気を除去することが可能となる。
【0036】
また、図4からも明らかなように、第2容器73の大部分は第1容器72の内部に収容されてしまうため、第2容器73が除電ブラシ26および27と直接接触する部分が少ない。本実施の形態では、除電ブラシ26および27が試料容器71の鉛直方向の最高点h2よりも高い位置まで達しているため、除電ブラシ26および27を第2容器73の開口部付近で確実に接触させることができる。したがって、第2容器73を第1容器72に載せて使用する場合にも、第2容器73に帯電した静電気を確実に除去することができる。
【0037】
ところで、本実施の形態では、除電ブラシ26および27のラック移送方向における間隔をP/2とし、各除電ブラシの延出長さ(L)を搬送レーン21の幅方向の中心まで達する長さとしているので、除電ブラシ26が試料容器71と接触して除電ブラシ27に近づく方向へ湾曲しても、除電ブラシ26と除電ブラシ27が接触することがない。このため、試料容器71内部の試料が一方の除電ブラシに万が一付着したとしても、その付着した試料が他方の除電ブラシに付着することを回避することができ、例えば双方のブラシ同士が試料を介して固着してしまうのを防止することができる。
【0038】
以上説明した本発明の一実施の形態によれば、一連の部材からなり、複数の試料容器を搭載するラックを載置して移送する移送ベルトと、移送ベルトが移送するラックに搭載された試料容器に接触可能であり、移送ベルトのラック移送方向および移送ベルトのラック載置面の法線方向と直交する方向であって互いに相反する方向にそれぞれ延出し、試料容器に帯電した静電気を除去する一対の除電ブラシと、を備え、移送ベルトのラック移送方向における一対の除電ブラシの間隔を、ラックが試料容器を搭載する間隔の1/2とすることにより、周囲の環境や容器の種類によらず、その容器に帯電した静電気を確実に除去することができるラック搬送機構および当該ラック搬送機構を備えた自動分析装置を提供することができる。
【0039】
また、本実施の形態によれば、一対の除電ブラシは、移送ベルトが移送するラックに搭載された試料容器の鉛直方向の最高点よりも高い位置まで達しているため、大型の第1容器に小型の第2容器を載置して試料容器を構成した場合であっても、第2容器に帯電した電荷を確実に除去することが可能となる。
【0040】
さらに、本実施の形態によれば、移送ベルトのラック移送方向における一対の除電ブラシの間隔を、ラックが試料容器を搭載する間隔の1/2とするとともに、各除電ブラシが延出する長さを、移送ベルトにおけるラックの載置面と直交する面のうち移送ベルトのラック移送経路に沿ってそのラック移送経路の幅方向の中心を通過する面まで達する長さとしたため、除電ブラシからラックに過度の力が加わることがなく、ラックが移送ベルトに対して動いてしまうことがない。この結果、搬送レーン上でラックジャムが発生するのを防止することができる。
【0041】
また、本実施の形態においては、除電ブラシを除いた構成が従来のラック搬送機構と同じなので、容易にかつ低コストで実現することができる。
【0042】
ここまで、本発明を実施するための最良の形態を詳述してきたが、本発明は上記一実施の形態によってのみ限定されるべきものではない。例えば、移送手段として、上述した移送ベルト以外の一連の部材を用いることも可能である。その際、移送手段の移送経路が直線である必要はなく、曲線をなしていてもよい。
【0043】
また、搬送レーンの送りユニットは、移送手段の上に載置したラックを所定のピッチで歩進させることができるものであれば、如何なる構成を有していても構わない。
【0044】
さらに、本発明に係る自動分析装置は、生化学的な分析を行う場合のみならず、免疫学的な分析や遺伝学的な分析を行う自動分析装置のラック搬送機構としても適用することが可能である。
【0045】
このように、本発明は、ここでは記載していないさまざまな実施の形態等を含みうるものであり、特許請求の範囲により特定される技術的思想を逸脱しない範囲内において種々の設計変更等を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施の形態に係る自動分析装置要部の構成を模式的に示す図である。
【図2】ラックおよび試料容器の構成を示す図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係るラック搬送機構の除電ブラシ近傍の部分拡大図である。
【図4】図3の矢視A方向の部分矢視図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係るラック搬送機構の要部の構成を示す図である。
【図6】試料容器が一対の除電ブラシに接触している状態を示す図である。
【符号の説明】
【0047】
1 自動分析装置
2 サンプラ
3 試薬容器保持部
4 反応容器保持部
5 試料分注部
6 試薬分注部
7 攪拌部
8 測光部
8a 光源
8b 分光光学系
8c 受光素子
9 洗浄部
10 入力部
11 出力部
12 演算部
13 記憶部
14 制御部
21 搬送レーン
22 供給部
23 回収部
24 収納部
25 振り分け部
26、27 除電ブラシ
28、29 保持部材
41 ラック
42 凹部
43、46 側面
44 溝部
45 突起部
51、61 プローブ
52、62 アーム
53、63 プローブ洗浄部
71 試料容器
72 第1容器
73 第2容器
81 試薬容器
91 反応容器
101 測定ユニット
102 データ処理ユニット
211 移送ベルト
212 モータ
213、214 ガイドフレーム
213a、213b 開口部
215、216 送りユニット
251a、251b、261a、261b ツメ部材
252、262 ツメ支軸
253a、253b、263a、263b カム
254、264 カム軸
255、265 回転センサ
256、266 歩進検知レバー
cd1、cd2 バーコード
CR1、CR2 バーコード読取部
S 試料分注位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一連の部材からなり、複数の容器を搭載するラックを載置して移送する移送手段と、
前記移送手段で移送する前記ラックに搭載された前記容器に接触可能であり、前記移送手段のラック移送方向および前記移送手段のラック載置面の法線方向と直交する方向であって互いに相反する方向にそれぞれ延出し、前記容器に帯電した静電気を除去する一対の除電ブラシと、
を備え、
前記移送手段のラック移送方向における前記一対の除電ブラシの間隔は、前記ラックが前記容器を搭載する間隔の1/2であることを特徴とするラック搬送機構。
【請求項2】
前記一対の除電ブラシは、前記移送手段で移送する前記ラックに搭載された前記容器の鉛直方向の最高点よりも高い位置まで達していることを特徴とする請求項1記載のラック搬送機構。
【請求項3】
前記一対の除電ブラシは、前記移送手段における前記ラックの載置面と直交する面のうち前記移送手段の移送経路に沿って該ラック移送経路の幅方向の中心を通過する面まで延出していることを特徴とする請求項1または2記載のラック搬送機構。
【請求項4】
試料と試薬とを反応させることによって前記試料の成分の分析を行う自動分析装置であって、
請求項1〜3のいずれか一項記載のラック搬送機構と、
前記移送手段のラック移送方向に沿って前記一対の除電ブラシよりも後方に位置し、前記移送手段で移送する前記ラックに搭載された前記容器に収容される試料を分注する試料分注手段と、
を備えたことを特徴とする自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−102032(P2008−102032A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−285190(P2006−285190)
【出願日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】