説明

リピータ装置

【課題】既に抑圧されている干渉信号以外に、新たに強い強度の回り込み干渉信号が発生しても、発振を防いで安定した電波の中継が可能なリピータ装置を提供する。
【解決手段】送信信号の受信アンテナ21、22への回り込みによる干渉信号を抑圧する干渉抑圧装置35a、36a、37aと、周囲環境の変化により新たに発生した干渉信号による異常を検出する異常検出手段51と、送信信号と、干渉抑圧装置35a、36a、37aによって干渉信号を抑圧するために生成される抑圧信号とに対して同時に制御可能であり、検波器51の検出結果に基づいて干渉信号が混入した受信信号の減衰量を変化させる可変減衰器53とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信の中継に用いられるリピータ装置に関する。より詳しくは、受信信号と同じ周波数で送信信号を輻射する場合に生じる、受信アンテナへの回り込みによる干渉信号(回り込み干渉信号)を抑圧する干渉信号抑圧技術に関する。リピータ装置は、中継装置あるいは無線中継ブースタと呼ばれる場合もある。
【背景技術】
【0002】
無線基地局の電波の届きにくいビル内部、トンネル内部、山岳地帯等での電波状況を改善するために、リピータ装置が用いられている。リピータ装置では、受信信号を所定の利得で増幅した上で送信するため、受信信号と送信信号とは同一周波数となる。このため、送信信号が受信アンテナに回り込むと、この信号が所望信号に対して干渉信号(回り込み干渉信号)となり、増幅器の利得(再送利得と呼ばれる)が大きい場合には発振を引き起こすという問題がある。
【0003】
この問題に対して、従来より、回り込み干渉信号を抑圧するための抑圧信号を生成し、この抑圧信号を受信信号に加算することにより、回り込み干渉信号を除去した送信信号を生成するリピータ装置が知られている(特許文献1参照)。このリピータ装置では、抑圧信号の生成に用いる抑圧係数は、受信信号と送信信号との間の相関演算結果から生成する。
【0004】
回り込み干渉信号は、リピータ装置の周辺環境による影響を受けて複数の経路で生じる場合がある。これに対応して、複数の抑圧信号生成を可能にするリピータ装置、すなわち、新たな回り込み干渉信号が発生したときは、それを検出して抑圧する抑圧信号を生成するリピータ装置も提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2001−196994号公報
【特許文献2】特開2005−86448号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載されたリピータ装置では、新たに発生した回り込み干渉信号を検出するために、A(アナログ)/D(ディジタル)変換器の出力信号と、遅延量が付加された出力信号との相関演算により干渉信号強度を演算する。そして、閾値を超えた強度の信号を干渉信号として検出する。しかし、この手法では、予め定めた遅延量の範囲を変化させて干渉信号の検出を行うため、干渉信号の検出が完了するまでに一定の時間がかかる。干渉信号の強度が強い場合は、この干渉信号の検出が完了するまでの間に、発振を引き起こす可能性があった。
【0006】
本発明の課題は、新たに強い強度の干渉信号が発生しても、発振を防いで安定した信号の中継を可能とするリピータ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のリピータ装置は、受信アンテナで受信された受信信号に対して所定の信号処理を行った後、これを送信信号として送信するリピータ装置であって、前記送信信号の前記受信アンテナへの回り込みによる干渉信号が混入した前記受信信号のうち前記干渉信号を抑圧する干渉抑圧装置と、周囲環境の変化により新たに発生した干渉信号による異常を検出する異常検出手段と、前記異常検出手段の検出結果に基づいて前記干渉信号が混入した受信信号の減衰量を変化させる可変減衰器とを有する装置である。
【0008】
ある実施の態様では、前記異常検出手段に対して前記可変減衰器が後方に位置するフィードフォワード式を採用しており、前記異常検出手段による検出結果の出力遅れを補償するために前記干渉抑圧装置に入力する信号を遅延させる遅延回路を有する構成とする。これにより、異常が検出される際に発生する遅延を、可変減衰器へ入力する信号に対して補償することができ、動作の安定性を高めることができる。
【0009】
フィードフォワード式を採用する場合において、前記異常検出手段による検出結果の出力遅れを補償するとともにフィルタリングを行うために前記可変減衰器への入力信号を遅延させるフィルタをさらに有する構成としても良い。これにより、フィルタリングを同時に要求されているリピータ装置において、回路規模の削減が可能となる。
【0010】
前記異常検出手段は、例えば、異常を検出した際に前記減衰量を予め定めた最大値とし、その後、異常を検出しなければ段階的に前記減衰量を段階的に減らし、前記干渉信号が混入した受信信号の電力値を最大に戻す。これにより、減衰量を段階的に減らしている際に再度異常が検出された際にも即時対応が可能であり、安定した動作が可能となる。
あるいは、前記異常検出手段は、前記受信信号の電力値を検出し、検出した電力が予め定めた異常電力の閾値を超えたことにより異常を検出する。新たに発生した干渉信号により、受信信号の電力は増加するので、例えば正常時の電力を超える値を異常電力閾値と定めることで、より確実に異常検出を行うことができる。
また、あるいは、前記異常検出手段は、前記干渉抑圧装置により前記干渉信号が抑圧された後の信号の電力値を検出する。干渉抑圧の際に異常が発生することにより信号の電力は増加するので、例えば正常時の電力を超える値を異常電力閾値と定めることで、より確実に異常検出を行うことができる。
【0011】
異常検出手段が電力を算出する周期、電力から異常を検出する周期、可変減衰器により干渉信号が混入した受信信号の減衰量を段階的に戻す周期が、それぞれ、リピータ装置の遅延時間以下となるようにしてもよい。受信アンテナを介して受信した信号が送信アンテナを介して送信され、干渉信号として受信アンテナで受信される最短の時間は、空間伝播による遅延時間を0としたリピータ装置が受信から送信にかかるまでの遅延時間であり、干渉信号は最短でこのリピータ装置の遅延時間の周期で受信アンテナに入力される。従って、リピータ装置の遅延時間以下の周期で異常検出手段により異常検出を行い、可変減衰器により減衰量を制御することで、リピータ装置の動作を安定化することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、既に抑圧されている干渉信号以外に、新たな干渉信号が発生した場合に、この新たな干渉信号によりリピータ装置に異常が生じた場合は異常検出手段がそれを検出し、その結果を用いて受信信号の減衰量を変化させるので、リピータ装置が異常状態となることを防ぐことができる。これにより、リピータ装置の発振を防いで安定した電波の中継が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態例を説明する。
図1は、本発明が適用される通信システムの概要を示す図である。この通信システムは、基地局1、リピータ装置2および移動局5を含んで構成される。
【0014】
リピータ装置2が設置される環境は、周囲に建造物3が存在していたり、周囲を移動物体4が移動していたりして、電波の伝搬環境が好ましくない場所である。リピータ装置2は、受信アンテナで受信した無線信号を同一の周波数で増幅した後、この無線信号を送信アンテナを介して放射する。
【0015】
送信アンテナから送信された無線信号は、その全てが移動局5に到達するわけではなく、その一部は送信アンテナから直接受信アンテナに到来する。この信号が受信信号に混入する干渉信号となる。この干渉信号は、伝播経路によって受信アンテナへの到達時間が異なる。従って、リピータ装置2の周辺に新たな建造物3あるいは移動物体4が出現すると、干渉信号の状況も変化する。また、移動物体4で反射されて受信アンテナに到達する干渉信号の状況は、移動物体4の数およびその移動状況に応じて瞬時に変化する。
【0016】
次に、リピータ装置2の構成及び動作について説明する。
図2は、リピータ装置2の構成例を示す図である。リピータ装置2は、基地局向けアンテナ21、アンテナ共用器22、移動局向けアンテナ23のほか、下り回線及び上り回線用の各構成要素、すなわち、低雑音増幅器24a、24bと、周波数変換器25a、25b、27a、27bと、干渉抑圧装置26a、26bと、高出力増幅器28a、28bを備えて構成される。
【0017】
基地局向けアンテナ21は、基地局1との間で無線信号の送受信を行うためのアンテナであり、移動局向けアンテナ23は、移動局5との間で無線信号の送受信を行うためのアンテナである。アンテナ共用器22は、基地局1から基地局向けアンテナ21を介して受信した無線信号(以下、「受信信号」とする。)を下り回線に供給するとともに、基地局1に対して送信する上り回線からの信号(以下、「送信信号」とする)を基地局向けアンテナ21に供給する。また、移動局5から移動局向けアンテナ23を介して受信した受信信号を上り回線に供給するとともに、移動局5に対して送信する下り回線からの送信信号を移動局向けアンテナ23に供給する。
【0018】
低雑音増幅器24a、24bは、基地局向けアンテナ21または移動局向けアンテナ23を介して受信した微弱な受信信号を増幅する低雑音の増幅器である。周波数変換器25a、25bは、受信信号を周波数変換してIQ(In-Phase Quadrature Phase)ベースバンド信号を生成する。周波数変換器27a、27bは、周波数変換器25a、25bとは逆の処理を行って、IQベースバンド信号を直交変調し、周波数変換して送信信号に変換する。高出力増幅器28a、28bは、送信信号を増幅する増幅度の高い増幅器である。
【0019】
干渉抑圧装置26a、26bの内部構成例図3に示す。干渉抑圧装置26a、26bは、A/D変換器31、チップ遅延器32、D/A変換器33、加算器34、位相振幅制御器35a、35b、35c、相関積分器36a、36b、36c、遅延器37a、37b、37c、監視制御回路38、及び、保護回路39を備えている。
干渉抑圧信号は、位相振幅制御器35a、35b、35cと、相関積分器36a、36b、36cと、遅延器37a、37b、37cにより生成する。
【0020】
なお、位相振幅制御器35a、35b、35cと、相関積分器36a、36b、36cと、遅延器37a、37b、37cとは、それぞれ1つが組になって1つの干渉信号に対する干渉抑圧信号を生成する。
【0021】
A/D変換器31は、アナログ信号を所定のサンプリング周波数によりディジタル信号に変換する変換器であり、受信アンテナで受信した信号をディジタル信号に変換して次段に供給する。D/A変換器33は、A/D変換器31と逆の動作をする変換器であって、ディジタル信号をアナログ信号に変換して、これを送信信号として送信アンテナから出力する。
【0022】
本実施形態では、ディジタル化された受信信号に所定の遅延量を付加した遅延信号をアナログ信号に変換して、これを送信信号として送信アンテナから出力する。チップ遅延器32は、所望波を含む受信信号と、送信アンテナと受信アンテナとの間を回り込む干渉信号との相関を減らすために、再送時にCDMA(Code Division Multiple Access)信号の1チップ以上の遅延を付加するための遅延回路である。
【0023】
相関積分器36a、36b、36cは、チップ遅延器32を通過したリファレンス信号を取得し、取得したリファレンス信号から干渉信号の振幅と位相を相関演算により検出するための演算回路である。但し、相関演算を有効に機能させるためには、予め干渉信号の遅延を知っておく必要があるため、各相関積分器36a、36b、36c及び位相振幅制御器35a、35b、35cには、対応する遅延器37a、37b、37cが設けられており、この遅延器37a、37b、37cにより干渉信号の回り込み時間に相当する遅延が与えられた信号が相関積分器36a、36b、36c及び位相振幅制御器35a、35b、35cに入力される。
【0024】
位相振幅制御器35a、35b、35cは、上述のリファレンス信号を、干渉信号と同振幅でかつ逆位相となるように制御し、抑圧信号として出力する回路である。振幅と位相をどの位制御したら良いかという情報は、相関積分器36a、36b、36により供給される。この位相振幅制御器35a、35b、35cで生成された抑圧信号は、加算器34に供給される。
【0025】
加算器34は、干渉信号が混入された受信信号に、位相振幅制御器35a、35b、35cにより生成された抑圧信号を加算する。
【0026】
監視制御回路38は、相関積分器41、CPU42、遅延器43から構成されている。なお、相関積分器41の機能は、上述した相関積分器36a、36b、36cと同様である。
【0027】
遅延器43、相関積分器41、位相振幅制御器35a、35b、35cは、図示しないクロック発生器から供給されるクロック信号に同期しており、このクロック信号は、A/D変換器31にも入力されてサンプリングクロックとしても機能する。また、遅延器43は、チップ遅延処理がなされたリファレンス信号に、上述したクロック信号に応じた遅延量を設定して相関積分器41に供給する。
【0028】
相関積分器41は、遅延器43で遅延時間が付加された遅延リファレンス信号と、干渉信号が混入した受信信号との相関演算を行い、相関演算値を算出する。算出された相関演算値はCPU42に入力される。
CPU42は、遅延量と干渉信号の振幅及び位相とを対応付け、検出した干渉信号の遅延量を各遅延器37a、37b、37cに設定することで、1組の位相振幅制御器35a、35b、35c、相関積分器36a、36b、36c、遅延器37a、37b、37cを干渉信号に割り当て、位相振幅制御器35a、35b、35cに抑圧信号を生成させる。
【0029】
保護回路39は、検波器51、遅延器52、可変減衰器53から構成されている。
【0030】
検波器51は、A/D変換器31から出力された信号と加算器34から出力された信号の電力を算出し、少なくとも一方の信号の電力が、それぞれ規定された最大信号電力の閾値を超えた場合に異常を検出して異常警報を出力する異常検出手段として機能する。遅延器52は、検波器51で異常警報を出力する際に、かかる処理遅延量と同じ遅延量を加算器34からの出力信号に付加する。これにより、可変減衰器53に入力される信号と異常警報のタイミングを合わせることができる。
【0031】
可変減衰器53は、減衰量を0から最大値までステップ制御するものである。可変減衰器53は、検波器51から異常警報が入力されると減衰量を最大にし、その後検波器51から異常警報が入力されなければ減衰量をステップ制御して漸次減らす動作をする。
【0032】
次に、リピータ装置2の動作を、主に保護回路39の動作を中心に説明する。
本実施形態のリピータ装置2は、図3に基づいて説明したように、監視制御回路38により新たな干渉信号の発生を監視し、この新たな干渉信号に対して干渉抑圧信号を割り当てて干渉信号の抑圧を行う。しかし、監視制御回路38で新たな干渉信号を検出している間にこの干渉信号の電力が異常に高いためにリピータ装置2全体が異常状態になってしまう場合があり得る。従って、新たな干渉信号により信号電力が異常値になったときに、保護回路39により可変減衰器53を制御してリピータ装置2の利得を下げ、干渉信号の強度を一時的に弱くすることで、リピータ装置2が異常状態となることを防止する。
【0033】
干渉信号の強度は、リピータ装置2の利得と、基地局向けアンテナ21と移動局向けアンテナ23との間のアイソレーションによって決まる。アイソレーションが決まっている条件では、リピータ装置2の利得が高いほど、干渉信号の強度が強くなる。従って、予め干渉抑圧を行わなくても良いリピータ装置2の利得を測定しておき、新たな干渉信号により信号電力が異常値となった場合にリピータ装置2をその利得まで下げることで新たな干渉信号の影響を取り除くことが可能である。
【0034】
また、干渉信号と受信アンテナへ入力される所望波との遅延量の差は、リピータ装置2の入力から出力までの遅延量と、受信アンテナから送信アンテナへ伝播する干渉信号の伝播時間との差である。最短距離で伝播すると仮定すると伝播時間は0となるので、遅延量の差はリピータ装置2の遅延量と等しくなる。従って、干渉信号と所望波との加算結果である受信信号の電力が変動する周期は、最短の場合、リピータ装置2の遅延量ということになる。よって、リピータ装置2の遅延量の周期で電力を監視し、異常値になったときに利得を即時に下げることにより、リピータ装置2が異常状態となっている期間を最短にすることが可能になる。
【0035】
以下、保護回路39の動作を詳細に説明する。
検波器51は、リピータ装置2の遅延量の周期で、A/D変換器31の出力と加算器34の出力とを監視し、少なくとも一方の信号電力がそれぞれ予め定められた信号電力閾値を超えたときに、すなわち異常値となったときに、異常警報を出力する。可変減衰器53へ入力される異常警報と加算器34からの信号は、遅延器52によりタイミングを合わせられている。従って、異常警報を確認した場合に、即時に可変減衰器53により信号の電力を減衰させることができる。
【0036】
図4は、可変減衰器53の状態遷移の説明図である。
リピータ装置2が正常な信号電力で動作しているときを初期61の状態とする。検波器51が信号電力の異常値を検出し、異常警報を出力すると、初期61の状態から最大減衰62の状態に遷移する。このとき、可変減衰器53の減衰量は、最大となる。最大減衰62の状態は、最短でも時間Tの間保持される。この時間Tは、リピータ装置2の信号電力が異常値になった場合にリピータ装置2の利得を下げ、それからリピータ装置2が正常状態に戻るまでの時間である必要があり、予め定められる。
【0037】
この時間Tの後に異常警報が出力されていなければ、復帰制御63の状態となる。この復帰制御の状態63は、可変減衰器53の減衰量を0へ戻す制御を行う状態であり、検波器51が信号電力を監視する周期と同じ周期で減衰量を減らしていく。但し、その過程で異常警報が出力されれば、最大減衰62の状態に戻る。復帰制御63の状態において可変減衰器53の減衰量が0になったときは初期61の状態へ遷移し、正常な信号電力での動作状態へ復帰することになる。
【0038】
図5は、リピータ装置2の利得の時間推移を説明するための図である。この図5では、新たな干渉信号により信号電力が異常値となり、それを検波器51により検出してからのリピータ装置2の利得の時間推移を示している。図5において横軸は時間、縦軸は利得を示し、可変減衰器53の状態遷移がグラフの下部に示されている。最初は初期61の状態であり、リピータ装置2の利得は最大である。その後、異常検出71により最大減衰62の状態となり、利得も最小となる。その後復帰制御63の状態となり、ステップ制御で可変減衰器53の減衰量を減らし、利得を元に戻していく。減衰量が0、すなわち最大利得になったときに初期61の状態に遷移する。
【0039】
以上詳細に説明したように、本実施形態によれば、新たな干渉信号が発生した場合に保護回路39の上述した動作によりリピータ装置2の保護を行うことができる。その間に、監視制御回路38によって新たな干渉信号の発生を監視し、この新たな干渉信号に対して干渉抑圧信号を割り当てて干渉信号の抑圧を行うことができる。
【0040】
特に、この新たな干渉信号が図1に示す移動物体4等に反射した信号の場合、移動物体4はリピータ装置2へ向かってリピータ装置2の近くを通過した後遠ざかっていく動きをしたとすると、新たな干渉信号の強度は移動物体4とリピータ装置2との間の距離によるため、弱い強度から強くなりまた弱くなるといった変動を示す。従って、リピータ装置2は、正常状態から、移動物体4が移動することにより干渉信号が強くなって異常状態となり、また正常状態に遷移することになる。この遷移の速度が速いと監視制御回路38によって干渉信号を検出する間に干渉信号はなくなってしまうため、このような干渉信号に対しては保護回路39が有効な対策手段として働くことになる。
【0041】
なお、本発明は上述した一実施形態に限定されることなく、種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】リピータ装置を含む通信システムの概要を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態であるリピータ装置の詳細を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態であるリピータ装置の干渉抑圧装置の詳細を示すブロック図である。
【図4】保護回路の可変減衰器の状態遷移図である。
【図5】本発明の一実施形態であるリピータ装置の利得の時間推移を説明するための図である。
【符号の説明】
【0043】
1 基地局
2 リピータ装置
21 基地局向けアンテナ
22 移動局向けアンテナ
26a、26b 干渉抑圧装置
32 チップ遅延器
34 加算器
35a、35b、35c 位相振幅制御器
36a、36b、36c、41 相関積分器
37a、37b、37c、43、52 遅延器
38 監視制御回路
39 保護回路
42 CPU
51 検波器
53 可変減衰器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信アンテナで受信された受信信号に対して所定の信号処理を行った後、これを送信信号として送信するリピータ装置であって、
前記送信信号の前記受信アンテナへの回り込みによる干渉信号が混入した前記受信信号のうち、前記干渉信号を抑圧する干渉抑圧装置と、
周囲環境の変化により新たに発生した干渉信号による異常を検出する異常検出手段と、
前記異常検出手段の検出結果に基づいて前記干渉信号が混入した受信信号の減衰量を変化させる可変減衰器と、
を有するリピータ装置。
【請求項2】
前記異常検出手段に対して前記可変減衰器が後方に位置するフィードフォワード式を採用しており、
前記異常検出手段による検出結果の出力遅れを補償するために前記干渉抑圧装置に入力する信号を遅延させる遅延回路をさらに有する、
請求項1記載のリピータ装置。
【請求項3】
前記異常検出手段に対して前記可変減衰器が後方に位置するフィードフォワード式を採用しており、
前記異常検出手段による検出結果の出力遅れを補償するとともにフィルタリングを行うために前記可変減衰器への入力信号を遅延させるフィルタをさらに有する、
請求項1記載のリピータ装置。
【請求項4】
前記異常検出手段は、異常を検出した際に前記減衰量を予め定めた最大値とし、その後、異常を検出しなければ前記減衰量を段階的に減らし、前記干渉信号が混入した受信信号の電力値を最大に戻す、
請求項2記載のリピータ装置。
【請求項5】
前記異常検出手段は、前記受信信号の電力値を検出し、検出した電力値が予め定めた異常電力の閾値を超えたことにより異常を検出する、
請求項1又は請求項4記載のリピータ装置。
【請求項6】
前記異常検出手段は、前記干渉抑圧装置により前記干渉信号が抑圧された後の信号の電力値を検出する、
請求項1又は請求項4又は請求項5記載のリピータ装置。
【請求項7】
前記異常検出手段が電力を算出する周期、電力から異常を検出する周期、可変減衰器により干渉信号が混入した受信信号の減衰量を段階的に戻す周期が、それぞれ、リピータ装置の遅延時間以下とする、
請求項6に記載のリピータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−135930(P2010−135930A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−307905(P2008−307905)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(000219004)島田理化工業株式会社 (205)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】