説明

リフトオフ用ネガ型レジスト組成物及びパターン形成方法

【課題】基材との密着性、剥離性を両立し、タック性に優れ、レジスト膜から発生するアウトガスが少なく、さらにハレーション防止性能に優れたリフトオフ用ネガ型レジスト組成物、及びレジストパターン形成方法を提供する。
【解決手段】(A)エポキシ樹脂とエピハロヒドリンの反応物を(メタ)アクリル酸と反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレートと多塩基性カルボン酸又はその無水物との反応物である不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂100重量部に対して、(B)前記成分(A)以外のエチレン性不飽和化合物を0.5〜50重量部、(C)シランカップリング剤を0.01〜30重量部、(D)光重合開始剤を0.5〜20重量部、及び(E)光吸収剤を0.01〜10重量部含有することを特徴とするリフトオフ用ネガ型レジスト成物、及びこの組成物を用いたレジストパターン形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リフトオフ法による金属パターンの形成に適したネガ型レジスト組成物及びそのパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基材上に電極等の金属パターンを形成する際には、ドライエッチングやウェットエッチング等のプロセスが利用されている。ウェットエッチングによる金属パターン形成の一般的なプロセスは、金属薄膜を有する基材上にレジスト膜を形成する工程、該レジスト膜へマスクを介しまたは直接に一定のパターンを有する紫外線を照射しその後現像することでレジストパターンを形成する工程、金属薄膜を溶解するエッチング工程、レジスト膜を剥離する工程、からなる。
【0003】
しかし、上記プロセスは、加工精度の点や難エッチング性金属パターンを形成する点において問題があり、近年、リフトオフ法による金属パターン形成プロセスが利用されつつある。リフトオフ法とは、例えば、基材上にレジストパターンを形成する工程、該レジストパターンが形成された基材上に金属薄膜を形成する工程、レジストパターンを剥離する工程からなり、エッチング工程を要することなく、基材上に金属パターンを形成することができる。
【0004】
リフトオフ法に使用されるレジスト組成物として、例えば、特許文献1には、ベースポリマー、エチレン性不飽和化合物及び光重合開始剤からなるレジスト組成物が開示されている。また、特許文献2には、アルカリ可溶性樹脂、特定の組合せからなる光重合開始剤成分、希釈剤からなるネガ型レジスト組成物が開示されている。しかしながら、これらのレジスト組成物は、基材との密着性、剥離性、レジスト膜から発生するアウトガスの抑制、及びレジスト膜形成基材を透過した照射光がステージで反射してレジストパターン形状を阻害する(ハレーション)といった課題に対しては十分満足するものではない。
【0005】
【特許文献1】特開平11−339574号公報
【特許文献2】特開2003−207904号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、タック性、光硬化性に優れ、基材との密着性及び剥離性を両立し、レジスト膜から発生するアウトガスが少なく、さらにハレーション防止性能に優れたリフトオフ用ネガ型レジスト組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、(A)エポキシ樹脂とエピハロヒドリンとの反応物を(メタ)アクリル酸と反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレートと多塩基性カルボン酸又はその無水物との反応物である不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂100重量部に対して、(B)前記成分(A)以外のエチレン性不飽和化合物を0.5〜50重量部、(C)シランカップリング剤を0.01〜30重量部、(D)光重合開始剤を0.5〜20重量部、及び(E)光吸収剤を0.01〜10重量部含有することを特徴とするリフトオフ用ネガ型レジスト組成物に関する。
【0008】
さらに本発明は、
(1)基材上に前記リフトオフ用ネガ型レジスト組成物を塗布して、レジスト膜を形成する工程、
(2)前記レジスト膜に活性エネルギー線を直接もしくはネガマスクを介して照射して、所望のパターン状に硬化させる工程、及び、
(3)所望のパターン状に硬化させたレジスト膜を現像処理して基材上にレジストパターンを形成する工程
を含むレジストパターン形成方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、エポキシ樹脂とエピハロヒドリンとの反応物を(メタ)アクリル酸と反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレートと多塩基性カルボン酸又はその無水物との反応物である不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂を含有するレジスト組成物にエチレン性不飽和化合物、シランカップリング剤及び光吸収剤を併用することにより、タック性、光硬化性に優れ、基材との密着性及び剥離性を両立し、レジスト膜から発生するアウトガスが少なく、さらにハレーション防止能に優れたリフトオフ用ネガ型レジスト組成物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のリフトオフ用ネガ型レジスト組成物は、(A)エポキシ樹脂とエピハロヒドリンとの反応物を(メタ)アクリル酸と反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレートと多塩基性カルボン酸又はその無水物との反応物である不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂100重量部に対して、(B)前記成分(A)以外のエチレン性不飽和化合物を0.5〜50重量部、(C)シランカップリング剤を0.01〜30重量部、(D)光重合開始剤を0.5〜20重量部、及び(E)光吸収剤を0.01〜10重量部含有することを特徴とする。
【0011】
エポキシ樹脂とエピハロヒドリンとの反応物を(メタ)アクリル酸と反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレートと多塩基性カルボン酸又はその無水物との反応物である不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A)は、光重合開始剤(D)存在下での活性エネルギー線照射により不飽和基である(メタ)アクリロイル基〔CH=CR−CO−(式中、Rは、水素原子又はメチル基を示す)〕が重合反応してアルカリ現像液に対して実質的に不溶ないし難溶となるものであって、照射しない部分は、前記現像液に可溶である。ここで使用される(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸、メタクリル酸又はこれらの混合物を示す。
【0012】
上記不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A)は、エポキシ樹脂とエピハロヒドリンとの反応物を(メタ)アクリル酸と反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレートと多塩基性カルボン酸又はその無水物とを反応させることにより得ることができる。
【0013】
エポキシ樹脂とエピハロヒドリンの反応物(以下、「反応物(a)」と略すことがある)は、例えば、エポキシ樹脂の水酸基とエピクロロヒドリン等のエピハロヒドリンを、アルカリ金属水酸化物存在下においてジメチルスルホキシド又は4級アンモニウム塩を使用して反応させることにより得ることができる。
【0014】
エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、及びこれらエポキシ樹脂の芳香族環に結合した水素原子の一部若しくは全部をハロゲン原子若しくはアルキル基で置換したエポキシ樹脂等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上組合せて使用することができる。
【0015】
エピハロヒドリンの使用量は、特に限定されるものではないが、例えば上記エポキシ樹脂のエポキシ化させたい水酸基1当量に対して1当量以上使用すればよい。
【0016】
アルカリ金属水酸化物としては、例えば水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化カルシウム〔Ca(OH)〕等が挙げられる。好ましくは水酸化ナトリウム(NaOH)である。アルカリ金属水酸化物の使用量は、特に限定されるものではないが、例えば、上記エポキシ樹脂の水酸基1当量に対して約1当量使用される。アルカリ金属水酸化物は固形若しくは水溶液のどちらでもよい。また水溶液の状態で使用する場合は、反応中に、反応系内の水を反応系外に留去しながら反応を行うこともできる。
【0017】
ジメチルスルホキシドの使用量は、特に限定されるものではないが、例えば上記エポキシ樹脂100重量部に対して5〜300重量部が好ましい。
【0018】
4級アンモニウム塩としては、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド等が挙げられる。4級アンモニウム塩の使用量は、特に限定されるものではないが、例えば上記エポキシ樹脂の水酸基1当量に対して0.3〜50gが好ましい。
【0019】
エポキシ樹脂の水酸基とエピハロヒドリンを反応させる際の反応温度は、特に限定されるものではないが、例えば30〜100℃が好ましい。この範囲の下限値は、反応時間の点で意義があり、また上限値は副反応を抑制する点で意義がある。
【0020】
反応終了後、過剰のエピハロヒドリン又はジメチルスルホキシドを減圧留去し、続いて生成した化合物を有機溶剤に溶解させ、さらにアルカリ金属水酸化物を用いて脱ハロゲン化水素反応を行うことができる。また、反応終了後、水洗分離を行い副生塩、ジメチルスルホキシド及び4級アンモニウム塩を分離し、続いて油層より過剰のエピハロヒドリンを減圧留去し、さらに生成した化合物を有機溶剤に溶解させた後、アルカリ金属水酸化物を用いて脱ハロゲン化水素反応を行ってもよい。有機溶剤としては、メチルイソブチルケトン、ベンゼン、トルエン、キシレン等が使用できるが、メチルイソブチルケトンが好ましい。これら有機溶剤は単独で又は2種以上組合せて使用することができる。
【0021】
本発明の不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A)は、反応物(a)を(メタ)アクリル酸と反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレートと多塩基性カルボン酸又はその無水物を反応させることにより得ることができる。
【0022】
エポキシ(メタ)アクリレートは、反応物(a)と(メタ)アクリル酸を反応させることにより得ることができる。
【0023】
反応物(a)と(メタ)アクリル酸の反応において、(メタ)アクリル酸の配合量は、特に限定されるものではなく、例えば反応物(a)のエポキシ基1当量に対して(メタ)アクリル酸のカルボキシ基が0.8〜1.5当量となるようにするのが好ましい。
【0024】
反応時に希釈剤として、メチルエチルケトン、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ソルベントナフサ等の溶剤類を使用することができる。
【0025】
また、反応を促進させるための触媒として、例えば、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、メチルトリエチルアンモニウムクロライド、トリフェニルフォスフィン等を使用することができる。該触媒の使用量は、反応物(a)と(メタ)アクリル酸の合計量100重量部に対して、好ましくは0.1〜10重量部の範囲、さらに好ましくは0.3〜5重量部の範囲である。
【0026】
さらに、反応中の重合を防止するための重合防止剤として、例えば、メトキノン、ハイドロキノン、フェノチアジン等を使用するのことができる。該重合防止剤の使用量は、反応物(a)と(メタ)アクリル酸の合計量100重量部に対して、好ましくは0.01〜1重量部の範囲、さらに好ましくは0.05〜0.5重量部の範囲である。
【0027】
反応条件として、反応温度は特に限定されないが、好ましくは60〜150℃の範囲、さらに好ましくは80〜120℃の範囲である。また、反応時間も特に限定されないが、好ましくは5〜60時間の範囲、さらに好ましくは10〜50時間の範囲である。
【0028】
次に、前記エポキシ(メタ)アクリレートと多塩基性カルボン酸又はその無水物とを反応させることにより不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A)を得ることができる。多塩基性カルボン酸又はその無水物としては、例えば、マレイン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘッド酸等及びこれら酸の無水物等が挙げられる。前記反応は前記エポキシ(メタ)アクリレート中の水酸基1モルに対して、前記の多塩基性カルボン酸又はその無水物を、好ましくは0.05〜1.00モル反応させる。反応温度は特に限定されないが、好ましくは60〜150℃の範囲、さらに好ましくは80〜100℃の範囲である。不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A)の酸価(mgKOH/g)は30〜150の範囲が好ましく、さらに好ましくは50〜120の範囲である。これら範囲は、光硬化性、パターン形成性の点で意義がある。
【0029】
ここで、本明細書において、酸価(mgKOH/g)は、樹脂固形分1gに含まれる酸基の量を水酸化カリウムに換算したときの水酸化カリウムのmg数で表したものである。水酸化カリウムの分子量は56.1とする。
【0030】
酸価の測定は、JIS K−5601−2−1(1999)に準拠して行う。試料をトルエン/エタノール=2/1体積比の混合溶剤で溶解し、フェノールフタレインを指示薬として水酸化カリウム溶液で滴定し、下記式により算出する。
酸価(mgKOH/g)=56.1×V×C/m
V:滴定量(ml)、C:滴定液の濃度(mol/l)、m:試料の固形分重量(g)
【0031】
本発明のエチレン性不飽和化合物(B)は、その化学構造中にエチレン性不飽和二重結合を少なくとも1個以上含有する化合物であって、かつ前記成分(A)以外のエチレン性不飽和化合物であり、重合開始剤(D)存在下での活性エネルギー線照射により重合することで、照射部分のアルカリ現像液に対する不溶化等をもたらす機能を有するような化合物が挙げられる。
【0032】
1官能のエチレン性不飽和化合物としては、例えば、一価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物等が挙げられる。具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0033】
2官能以上の多官能エチレン性不飽和化合物としては、例えば、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物等が挙げられる。具体的には、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ウレタンジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート化合物;グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート化合物;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のテトラ(メタ)アクリレート化合物;その他、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0034】
これらのエチレン性不飽和化合物は、単独で又は2種以上組合せて使用することができる。
【0035】
エチレン性不飽和化合物(B)は、光硬化性確保及びアウトガス抑制の点から、2官能以上の多官能エチレン性不飽和化合物であることが好ましい。
【0036】
ここでアウトガスとは、レジスト膜から発生する揮発性ガスのことである。この揮発性ガスの発生量が多いと、金属薄膜を蒸着等により形成する際に、チャンバー内の減圧度の低下や、金属薄膜への不純物の混入が起こり易くなる。その結果、形成される金属薄膜の導電性が低下する恐れがある。
【0037】
エチレン性不飽和化合物(B)の含有量は、上記不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A)100重量部に対して、0.5〜50重量部の範囲である。好ましくは1〜30重量部の範囲である。この範囲の下限値は、光硬化性確保の点で意義があり、上限値はレジスト膜のタック性やアウトガス抑制の点で意義がある。
【0038】
シランカップリング剤(C)は、例えば、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤;N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤;γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等のクロロ基含有シランカップリング剤;γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン等のビニル基含有シランカップリング剤等が挙げられる。これらの中でも、ビニル基含有シランカップリング剤を用いることが、基材に対する密着性を保持しつつ剥離液に対する剥離性が優れる点、光硬化性確保の点及びアウトガス抑制の点から好ましい。
【0039】
シランカップリング剤(C)の含有量は、上記不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A)100重量部に対して、0.01〜30重量部の範囲である。好ましくは0.05〜20重量部の範囲、さらに好ましくは0.1〜15重量部の範囲である。これら範囲の下限値は、基材に対する密着性向上の点で意義があり、上限値はタック性、アウトガス抑制及び剥離性の点で意義がある。また、含有量が上限値を越える場合、レジスト膜の作成後から活性エネルギー線照射までの時間が長いと、得られるレジストパターンの線幅が太くなったり、照射部と未照射部の境界部のシャープさがなくなるため、好ましくない。
【0040】
光重合開始剤(D)は、活性エネルギー線を吸収してラジカルを発生する開始剤であれば特に限定されることなく使用することができる。光重合開始剤(D)としては、例えばベンジル、ジアセチル等のα−ジケトン類;ベンゾイン等のアシロイン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のアシロインエーテル類;チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、チオキサントン−4−スルホン酸等のチオキサントン類;ベンゾフェノン、4,4′−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4′−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;ミヒラーケトン類;アセトフェノン、2−(4−トルエンスルホニルオキシ)−2−フェニルアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、α,α′−ジメトキシアセトキシベンゾフェノン、2,2′−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、p−メトキシアセトフェノン、2−メチル〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、α−イソヒドロキシイソブチルフェノン、α,α′−ジクロル−4−フェノキシアセトフェノン、1−ヒドロキシ−1−シクロヘキシルアセトフェノン等のアセトフェノン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(アシル)フォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド類;アントラキノン、1,4−ナフトキノン等のキノン類;フェナシルクロライド、トリハロメチルフェニルスルホン、トリス(トリハロメチル)−s−トリアジン等のハロゲン化合物;ジ−t−ブチルパーオキサイド等の過酸化物等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上組合せて使用することができる。
【0041】
上記光重合開始剤(D)の市販品としては、例えば、イルガキュア(IRGACURE)−184、同261、同369、同500、同651、同907、同CGI−1700(チバ スペシャルティ ケミカルズ社製、商品名)、ダロキュア(Darocur)−1173、同1116、同2959、同1664、同4043(メルクジャパン社製、商品名)、カヤキュア(KAYACURE)−DETX、同MBP、同DMBI、同EPA、同OA(日本化薬社製、商品名)、ビキュア(VICURE)−10、同55〔ストウファー社(STAUFFER Co., LTD.)製、商品名〕、トリゴナル(TRIGONAL)P1〔アクゾ社(AKZO Co., LTD.)製、商品名〕、サンドレイ(SANDORAY)1000〔サンドズ社(SANDOZ Co., LTD.)製、商品名〕、ディープ(DEAP)〔アプジョン社(APJOHN Co., LTD.)製、商品名〕、カンタキュア(QUANTACURE)−PDO、同ITX、同EPD〔ウォードブレキンソプ社(WARD BLEKINSOP Co., LTD.)製、商品名〕等を挙げることができる。光重合開始剤(D)としては、光硬化性確保、現像性等の点からアセトフェノン類が好ましい。
【0042】
光重合開始剤(D)の含有量は、上記不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A)100重量部に対して、0.5〜20重量部の範囲である。好ましくは1〜10重量部の範囲である。この範囲の下限値は、光硬化性確保の点で意義があり、上限値はパターン形成性及びコストの点で意義がある。
【0043】
光吸収剤(E)としては、例えば、400nm以上の波長を吸収する光吸収剤が挙げられる。400nm以上の波長を吸収する光吸収剤としては、例えばモノアゾ系化合物等が挙げられる。また、モノアゾ系化合物としては例えば下記一般式(I)で表される化合物等が挙げられる。
【0044】
【化1】

(ここで、R1は水素原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基又はアラルキル基を表し、R2は5個以上の炭素原子を有するアルキル基を表し、R3は水素原子又は1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を表し、Bはニトロ基、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基、塩素、臭素、フェニル基又はフェノキシ基を有していてもよいベンゼン環を表す。)
【0045】
さらに、一般式(I)で表される化合物としては、例えば下記化学式(II)で表される化合物が挙げられる。
【0046】
【化2】

【0047】
光吸収剤(E)としては、レジスト組成物への溶解性及びハレーション防止性能の点から、上記一般式(I)で表される化合物が好ましく、さらに好ましくは上記一般式(II)で表される化合物である。
【0048】
光吸収剤(E)の具体例としては、ORASOL YELLOW 4GN(チバ スペシャルティ ケミカルズ社製、商品名)、OIL COLORS YELLOW 3G SOLVENT YELLOW 16 (オリエント化学社製、商品名)、OIL COLORS YELLOW GGS SOLVENT YELLOW 56 (同左)、OIL COLORS YELLOW 105(同左)、OIL COLORS YELLOW 129 SOLVENT YELLOW 29 (同左)、NEPTUN YELLOW 075 (BASF社製、商品名)などが挙げられる。
【0049】
光吸収剤(E)の含有量は、上記不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(A)100重量部に対して、0.01〜10重量部の範囲である。好ましくは0.1〜7重量部の範囲、さらに好ましくは0.8〜7重量部の範囲である。
【0050】
本発明のレジスト組成物は上記した以外に、飽和樹脂を使用することができる。該飽和樹脂としては、本発明のレジスト組成物の現像液に対する溶解性を調整するために使用することができる。このものとしては、例えば、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、天然樹脂、合成ゴム、シリコン樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン樹脂等が包含される。これらの樹脂は単独で又は2種以上組合せて使用することができる。
【0051】
また、本発明のレジスト組成物は上記した以外に、光増感剤を使用することもできる。光増感剤としては、例えば、チオキサンテン系、キサンテン系、ケトン系、チオピリリウム塩系、ベーススチリル系、メロシアニン系、3ー置換クマリン系、クマリン系、3.4ー置換クマリン系、シアニン系、アクリジン系、チアジン系、フェノチアジン系、アントラセン系、コロネン系、ベンズアントラセン系、ペリレン系、メロシアニン系、ケトクマリン系、フマリン系、ボレート系等の色素が挙げられる。これらのものは1種もしくは2種以上組み合わせて使用することができる。ボレート系光増感色素としては、例えば、特開平5-241338号公報、特開平7-5685号公報及び特開平7-225474号公報等に記載のものが挙げられる。
【0052】
また、本発明のレジスト組成物は、必要に応じて有機溶剤、表面調整剤等を含有していてもよい。上記有機溶剤は粘度調整等の目的で使用される。この有機溶剤としては、成分(A)〜(E)を溶解できる有機溶剤であれば特に限定されることなく使用できる。具体的には、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、エチルイソアミルケトン、ジイソブチルケトン、メチルへキシルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、プロピオン酸メチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のグリコールエーテル類;エチルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類;芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類等が挙げられる。
【0053】
続いて、本発明のリフトオフ用ネガ型レジスト組成物を用いたレジストパターン形成方法について説明する。
【0054】
本発明のレジストパターン形成方法は、
(1)基材上に本発明のリフトオフ用ネガ型レジスト組成物を塗布して、レジスト膜を形成する工程、
(2)前記レジスト膜に活性エネルギー線を直接もしくはネガマスクを介して照射して、所望のパターン状に硬化させる工程、及び、
(3)所望のパターン状に硬化させたレジスト膜を現像処理して基材上にレジストパターンを形成する工程を含む。
【0055】
本発明において、基材表面に被覆されるレジスト膜は、上記レジスト組成物を塗装し、必要に応じて有機溶剤を揮発させた乾燥膜である。また、PETフィルムのようなベースフィルム表面に有機溶剤系のレジスト組成物を塗装・乾燥し、ベースフィルム表面に乾燥レジスト膜を形成してなるドライフィルムを、基材表面と乾燥レジスト膜とが接するように加熱・圧着し、ベースフィルムを乾燥レジスト膜から剥離してレジスト膜を形成することもできる。
【0056】
上記で使用する基材は、非導電性の基材であれば特に限定されるものではなく、例えば、プラスチックやガラス等を使用することができる。
【0057】
塗装方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を使用することができる。具体的には、例えば、ローラー、ロールコーター、スピンコーター、カーテンロールコーター、スリットコーター、スプレー、静電塗装、浸漬塗装、シルク印刷、スピン塗装等により塗装することができる。
【0058】
本発明において、照射される活性エネルギー線の光源は、従来から公知の光源を使用することができる。具体的には、例えば、超高圧、高圧、中圧、低圧の水銀灯、ケミカルランプ灯、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライド灯、タングステン灯等が挙げられる。
【0059】
活性エネルギー線としては、特に限定されるものではなく、例えば、紫外線、可視光線、レーザー光(近赤外線、可視光レーザー、紫外線レーザー等)が挙げられる。特に、紫外線が好ましく、i線(波長365nm)、h線(波長405nm)及びg線(波長436nm)の3混線を含むものがさらに好ましい。
【0060】
活性エネルギー線の照射量は、特に限定されないが、好ましくは100〜10000J/m、さらに好ましくは300〜7000J/mの範囲である。この範囲の下限値は光硬化性確保の点で意義がある。また上限値はパターン形状向上の点で意義がある。
【0061】
レジスト膜の膜厚は0.5〜20μm、好ましくは1〜10μmであり、さらに好ましくは1〜5μmである。これら範囲の下限値はパターン形成性の点で意義があり、上限値はアウトガス抑制の点で意義がある。
【0062】
現像処理で使用される現像液としては、例えば、トリエチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アンモニア、メタ珪酸ソーダ、メタ珪酸カリ、炭酸ソーダ、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等のアルカリ現像液が挙げられる。また、酸性現像液としては、例えば、酢酸、蟻酸、ヒドロキシ酢酸等の酸性現像液が挙げられる。現像液の濃度は、通常、0.1〜3重量%、好ましくは0.2〜2重量%の範囲である。現像処理は、通常、20〜50℃の温度で通常20〜120秒間の範囲である。
【0063】
上記工程により、レジストパターンが形成される。
【0064】
続いて、レジストパターン形成後の金属パターンの形成工程について説明する。
【0065】
金属パターンの形成工程は、レジストパターンを有する基材表面の全面に金属パターン膜を形成する工程、レジストパターンを剥離する工程を含む。
【0066】
該レジストパターンを有する基材表面の全面に、蒸着、スパッタリング等の方法によりアルミニウム、銅、金、ITO、酸化錫、タンタル等の金属膜を形成する。なお、金属膜と基材の密着性を向上させるためにレジストパターンの形成後にUVオゾンアッシングや、酸素プラズマ処理を行ってから前記蒸着等を行うことも可能である。
【0067】
その後レジストパターンは、アルカリ水溶液、有機溶剤等の剥離液を用いて洗い流すことにより剥離される。アルカリ水溶液は、通常、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、トリエタノールアミン、トリエチルアミン等の水溶液を使用することができる。また、有機溶剤としては、例えば、1,1,1−トリクロロエタン、メチルエチルケトン、塩化メチレン等の溶剤を使って照射部を溶解することによって行うことができる。剥離は、上記剥離液に20〜80℃の温度で通常1〜30分間浸漬することにより行われる。
【0068】
上記工程により、基材上に金属パターンが形成される。
【実施例】
【0069】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。尚、「部」及び「%」は、別記しない限り「重量部」及び「重量%」を示す。
【0070】
<合成例1(樹脂1の合成)>
エポキシ当量650(g/eq)のビスフェノールF型エポキシ樹脂371部をエピクロロヒドリン925部とジメチルスルホキシド462.5部に溶解させた。その後、98.5%NaOH24.3部を添加して70℃で3時間反応を行った。次いで、未反応のエピクロロヒドリン及びジメチルスルホキシドを減圧留去し、さらに反応生成物をメチルイソブチルケトン750部に溶解させた。その後、30%NaOH水溶液10部を添加して70℃で1時間反応を行った。反応終了後、水で洗浄し、次いでメチルイソブチルケトンを留去してエポキシ当量379(g/eq)の反応物(a−1)365部を得た。
【0071】
反応物(a−1)365部をアクリル酸66部とジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート232.1gに溶解させた後、メトキノン0.7部及びトリフェニルフォスフィン2.4部の存在下、95℃で反応を行った。酸価が1.0(mgKOH/g)以下になったことを確認し、無水マレイン酸95.3部及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート51.5gを添加し反応を行った。酸価が100(mgKOH/g)になったところで反応を終了して、不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(樹脂1)溶液を得た。この樹脂溶液の固形分含有量は約65%であった。
【0072】
<合成例2(樹脂2の合成)>
エポキシ当量205(g/eq)のトリスフェノールメタン型エポキシ樹脂199部をエピクロロヒドリン370部に溶解させた。その後、テトラメチルアンモニウムクロライド6部を添加し、さらに48%NaOH水溶液30部を滴下して70℃で3時間反応を行った。反応終了後、水で洗浄し、未反応のエピクロロヒドリンを減圧留去した。さらに、その反応生成物をメチルイソブチルケトン450部に溶解させ、30%NaOH水溶液5部を添加し、70℃で1時間反応を行った。反応終了後、水で洗浄し、次いでメチルイソブチルケトンを留去して、エポキシ当量189(g/eq)の反応物(a−2)195部を得た。
【0073】
反応物(a−2)195部を、アクリル酸70.7部とジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート143.4gに溶解させた。その後、メトキノン0.5部及びトリフェニルフォスフィン1.4部の存在下、95℃で反応を行った。酸価が1.0(mgKOH/g)以下になったことを確認し、テトラヒドロ無水フタル酸104.5部及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート56.2gを添加し反応を行った。酸価が104(mgKOH/g)になったところで反応を終了して、不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(樹脂2)溶液を得た。この樹脂溶液の固形分含有量は約65%であった。
【0074】
<合成例3(樹脂3の合成)>
エポキシ当量199(g/eq)のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂240部を、エピクロロヒドリン370部とジメチルスルホキシド185部に溶解させた。その後、98.5%NaOH10.6部を添加して、70℃で3時間反応を行った。次いで、未反応のエピクロロヒドリン及びジメチルスルホキシドを減圧留去し、さらに反応生成物をメチルイソブチルケトン450部に溶解させた。その後、30%NaOH水溶液5部を添加して、70℃で1時間反応を行った。反応終了後、水で洗浄し、次いでメチルイソブチルケトンを留去して、エポキシ当量190(g/eq)の反応物(a−3)241部を得た。
【0075】
反応物(a−3)241部を、メタクリル酸103.8部とジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート185.4gに溶解させた。その後、メトキノン0.5部及びトリフェニルフォスフィン1.9部の存在下、95℃で反応を行った。酸価が1.0(mgKOH/g)以下になったことを確認し、ヘキサヒドロ無水フタル酸154.2部及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート83.1gを添加し反応を行った。酸価が114(mgKOH/g)になったところで反応を終了して、不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂(樹脂3)溶液を得た。この樹脂溶液の固形分含有量は約65%であった。
【0076】
<合成例4(樹脂4の合成)>
スチレン50部、n−ブチルアクリレート10部、メチルアクリレート30部、アクリル酸10部及びアゾビスイソブチロニトリル0.5部からなる混合液を窒素ガス雰囲気下において120℃に保持したエチレングリコールモノエチルエーテル90部中に3時間を要して滴下した。滴下後、1時間熟成させ、アゾビスジメチルバレロニトリル1部とエチレングリコールモノエチルエーテル10部からなる混合液を1時間要して滴下し、さらに2時間熟成させてアクリル樹脂(酸価78mgKOH/g、Tg点47℃、数平均分子量約15,000)(樹脂4)溶液を得た。この樹脂溶液の固形分含有量は約50%であった。
【0077】
<実施例1〜10及び比較例1〜6>
表1に示す配合組成に従って配合し、ネガ型レジスト組成物を得た(表1において、A成分の配合量は固形分配合である)。
【0078】
<評価試験>
上記のようにして得たレジスト組成物を、厚さ1.8mm、大きさ100mm×100mmのガラス基材にスピンコーターを用いて塗装し、60℃で1分間乾燥し、乾燥膜厚3μmのレジスト膜を得た。
【0079】
得られたレジスト膜について、下記の評価試験に供した。試験結果を表1に示した。
【0080】
【表1】

(注1)アロニックスM−210:商品名、東亞合成社製、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジアクリレート
(注2)アロニックスM−309:商品名、東亞合成社製、トリメチロールプロパントリアクリレート
(注3)シリコーンKBM−503:商品名、信越化学工業社製、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン
(注4)シリコーンKBE−503:商品名、信越化学工業社製、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン
(注5)イルガキュア−369:商品名、チバ スペシャルティ ケミカルズ社製、光重合開始剤
(注6)イルガキュア−907:商品名、チバ スペシャルティ ケミカルズ社製、光重合開始剤
(注7)NEPTUN YELLOW 075:商品名、BASF社製、化学式(II)で表される光吸収剤
(注8)ORASOL YELLOW 4GN:商品名、チバ スペシャルティ ケミカルズ社製、光吸収剤
(注9)PMA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0081】
タック性
上記で得たレジスト膜について、指触にてタックの有無を確認し、下記基準によりタック性を評価した。
「○」:べとつきがない
「×」:べとつきがある
【0082】
光硬化性
上記レジスト膜形成基材に、21段ステップタブレットフィルム(日立化成社製、フォテック21段ステップタブレットフィルム)を通じて、i線(波長365nm)、h線(波長405nm)及びg線(波長436nm)の3混線を含むUVランプ(35気圧)の活性エネルギー線を照射量500J/mで照射を行った。次いで、25℃の0.25重量%炭酸ソーダ水溶液で30秒間現像を行った。
現像後のレジスト膜のステップタブレット感度を表1に示した。ここで、ステップタブレット感度とは、段階的に異なった光透過率を有するフィルム(ここでは21段のステップタブレットフィルム)を用い、光照射、現像させた場合に良好な光硬化性(レジストパターン)を示す最低光透過率の段数を意味する。段数が大きいほどフイルムの光透過率が低くなることから、評価結果の段数が大きいほど良好な光硬化性であることを示す。
【0083】
密着性
上記レジスト膜形成基材に、i線(波長365nm)、h線(波長405nm)及びg線(波長436nm)の3混線を含むUVランプ(35気圧)の活性エネルギー線をライン&スペース(L/S)パターンが30μm/100μmのマスクを介して照射を行った。ここで、活性エネルギー線照射は、各々のレジスト膜についてステップタブレット感度が7段となる照射量で行った。次いで、25℃の0.25重量%炭酸ソーダ水溶液で30秒間現像を行い、レジストパターン形成基材を得た。
得られたレジストパターンについて下記基準により密着性を評価した。
「○」:レジストパターンの剥がれは見られない
「△」:レジストパターンが一部剥がれている
「×」:レジストパターンの大部分が剥がれている
【0084】
パターン形成性
上記レジスト膜形成基材を作成後1時間放置した後、照射光が反射しない黒化アルマイト処理アルミニウム製ステージの上に載せ、レジスト膜形成基材に、i線(波長365nm)、h線(波長405nm)及びg線(波長436nm)の3混線を含むUVランプ(35気圧)の活性エネルギー線をライン&スペース(L/S)パターンが30μm/100μmのマスクを介して照射を行った。ここで、活性エネルギー線照射は、各々のレジスト膜についてステップタブレット感度が7段となる照射量で行った。次いで、時間を置かずに25℃の0.25重量%炭酸ソーダ水溶液で30秒間現像を行い、形成されたレジストパターンの形状を観察した。
「◎」:線幅がL/Sとほぼ同じ〜5%太くなる程度、かつ照射部と未照射部との境界部はシャープで、特に良好なレジストパターンが形成できた。
「○」:線幅がL/Sと比較し5〜10%程度太くなるものの、照射部と未照射部との境界部はシャープで、良好なレジストパターンが形成できた。
「×」:線幅がL/Sと比較し10%以上太くなる、若しくは照射部と未照射部との境界部はシャープさが無く、レジストパターンは実用性がなかった
【0085】
ハレーション防止性能
上記レジスト膜形成基材を照射光が反射するアルミニウム製ステージの上に載せ、レジスト膜形成基材に、i線(波長365nm)、h線(波長405nm)及びg線(波長436nm)の3混線を含むUVランプ(35気圧)の活性エネルギー線をライン&スペース(L/S)パターンが30μm/100μmのマスクを介して照射を行った。ここで、活性エネルギー線照射は、各々のレジスト膜についてステップタブレット感度が7段となる照射量で行った。次いで、25℃の0.25重量%炭酸ソーダ水溶液で30秒間現像を行い、形成されたレジストパターンの形状を観察した。なおレジスト膜形成基材作成後、照射・現像までの時間を30分以内として試験を行った。
「◎」:照射部と未照射部との境界部は特にシャープで、特に良好なレジストパターンが形成できた。
「○」:照射部と未照射部との境界部はシャープで、良好なレジストパターンが形成できた。
「×」:照射部と未照射部との境界部はシャープさが無く、レジストパターンは実用性がなかった
【0086】
アウトガス評価
上記密着性試験と同様にしてレジストパターン形成基材を得た。得られたレジストパターン形成基材について、蒸着により酸化錫からなる金属膜を形成し、その金属膜の導電性からレジスト組成物のアウトガス性能を評価した。導電性の評価は、同じ蒸着条件下で、レジストパターンを形成していないガラス基材上に酸化錫からなる金属膜(リファレンス)を形成し、そのリファレンスと導電性を比較して、下記基準により評価した。
「◎」:リファレンスと同等で導電性良好
「○」:リファレンスよりもわずかに劣るものの導電性良好で実用性あり
「×」:リファレンスよりも劣り導電性不良で実用性なし
【0087】
剥離性
上記密着性試験と同様にしてレジストパターン形成基材を得た。得られたレジストパターン形成基材について、50℃の5.0%水酸化ナトリウム水溶液に浸漬した。レジストパターンが基材より剥離するまでに要した時間を測定し、下記基準により剥離性を評価した。
「○」: 剥離時間≦1分
「△」:1分<剥離時間≦2分
「×」:2分<剥離時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂とエピハロヒドリンの反応物を(メタ)アクリル酸と反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレートと多塩基性カルボン酸又はその無水物との反応物である不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂100重量部に対して、(B)前記成分(A)以外のエチレン性不飽和化合物を0.5〜50重量部、(C)シランカップリング剤を0.01〜30重量部、(D)光重合開始剤を0.5〜20重量部、及び(E)光吸収剤を0.01〜10重量部含有することを特徴とするリフトオフ用ネガ型レジスト組成物。
【請求項2】
エチレン性不飽和化合物(B)が、多官能エチレン性不飽和化合物である請求項1記載のリフトオフ用ネガ型レジスト組成物。
【請求項3】
シランカップリング剤(C)が、ビニル基含有シランカップリング剤である請求項1又は2記載のリフトオフ用ネガ型レジスト組成物。
【請求項4】
光吸収剤(E)が、400nm以上の波長を吸収する光吸収剤である請求項1〜3のいずれか1項に記載のリフトオフ用ネガ型レジスト組成物。
【請求項5】
400nm以上の波長を吸収する光吸収剤が、モノアゾ系化合物である請求項4記載のリフトオフ用ネガ型レジスト組成物。
【請求項6】
モノアゾ系化合物が、下記一般式(I)
【化1】


(ここで、R1は水素原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基又はアラルキル基を表し、R2は5個以上の炭素原子を有するアルキル基を表し、R3は水素原子又は1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を表し、Bはニトロ基、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基、塩素、臭素、フェニル基又はフェノキシ基を有していてもよいベンゼン環を表す。)で表される化合物である請求項5記載のリフトオフ用ネガ型レジスト組成物。
【請求項7】
(1)基材上に請求項1〜6のいずれか1項に記載のリフトオフ用ネガ型レジスト組成物を塗布して、レジスト膜を形成する工程、
(2)前記レジスト膜に活性エネルギー線を直接もしくはネガマスクを介して照射して、所望のパターン状に硬化させる工程、及び、
(3)所望のパターン状に硬化させたレジスト膜を現像処理して基材上にレジストパターンを形成する工程
を含むレジストパターン形成方法。

【公開番号】特開2008−304719(P2008−304719A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−152186(P2007−152186)
【出願日】平成19年6月8日(2007.6.8)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】