説明

レジストパターン形成方法およびそれを用いたパターン化基板の製造方法

【課題】レジストパターンの形成において、残膜をエッチングする工程後のレジストパターンの凸部の幅が、残膜をエッチングする工程前におけるレジストパターンの凸部の幅以上の所望の幅となることを可能とする。
【解決手段】凹凸パターンが転写されたレジスト膜2の残膜エッチング工程が、エッチングの際に堆積物4を生成する堆積性ガスを含有する第1のエッチングガスを用いて、レジストパターンにおける凸部の側壁に堆積物4が堆積しかつ残膜がエッチングされる条件でレジスト膜2をエッチングする第1のエッチング工程を含み、堆積物4を含めた上記凸部の幅が残膜エッチング工程前における上記凸部の幅以上の所望の幅となるように第1のエッチング工程以後の工程によってレジスト膜2をエッチングする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の凹凸パターンを表面に有するモールドを用いたレジストパターン形成方法およびそれを用いたパターン化基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ディスクリートトラックメディア(DTM)やビットパターンドメディア(BPM)等の磁気記録媒体、及び半導体デバイスの製造等において、加工対象である基板上に塗布されたレジストにナノインプリントを行うパターン転写技術の利用が期待されている。
【0003】
ナノインプリントは、光ディスク製作では良く知られているエンボス技術を発展させたパターン形成技術である。具体的には、ナノインプリントは、凹凸パターンを形成した型(一般的にモールド、スタンパ、テンプレートとも呼ばれる)を被加工物上に塗布されたレジストに押し付け、レジストを力学的に変形または流動させて微細なパターンを精密に転写する技術である。モールドを一度作製すれば、ナノレベルの微細構造を簡単に繰り返して成型できるため経済的であるとともに、有害な廃棄物および排出物が少ない転写技術であるため、近年、さまざまな分野へも応用が期待されている。
【0004】
従来、ナノインプリントによりレジスト膜に形成されたレジストパターンの凹部に、モールドの凹凸パターンの凸部によって排除することができなかったレジストの薄膜(残膜)が残ってしまうことが知られている。そして、この残膜は下地の基板をエッチングする工程等に影響を与えることも知られている。
【0005】
そこで例えば特許文献1に示されるように通常、下地の基板をエッチングする工程等は上記残膜を除去した後に実施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4322096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、エッチングにより残膜を除去する際、残膜のエッチングと共にレジストパターンの凸部の側壁もエッチング(いわゆるサイドエッチング)されることが知られている。しかしながら、特許文献1に示されるように、単に酸素ガスまたは希ガスを用いたプラズマエッチングによって残膜をエッチングした場合、サイドエッチングの影響はレジストパターンが微細化するに従って顕著となり、場合によってはレジストパターンの凸部が完全に欠損して断線するという問題が生じる可能性がある。上記のような場合、下地の基板をエッチングする工程において当該基板に所望のパターンを形成することができず、加工精度が低下する。また、仮に残膜をエッチングする際にレジストパターンの凸部が断線するに至らなかったとしても、サイドエッチングにより当該凸部の幅が減少することは不可避である。この様な場合、マスクとして機能する当該凸部が、下地の基板をエッチングする工程におけるサイドエッチングで断線したり倒れたりして、当該基板に所望のパターンを形成することができず加工精度が低下する可能性がある。
【0008】
上記のような問題を解決するためには、残膜をエッチングする工程終了時におけるレジストパターンの凸部の幅が、残膜をエッチングする工程開始時におけるレジストパターンの凸部の幅と同等であるか、または下地の基板をエッチングする工程におけるサイドエッチングを考慮してそれより広い所望の幅である必要がある。
【0009】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、レジストパターンの形成において、残膜をエッチングする工程終了時におけるレジストパターンの凸部の幅を、残膜をエッチングする工程開始時におけるレジストパターンの凸部の幅以上の所望の幅とすることを可能とするレジストパターン形成方法を提供することを目的とするものである。
【0010】
さらに本発明は、レジストパターンをマスクとしてエッチングするパターン化基板の製造において、当該レジストパターンに対応した凹凸パターンの加工精度を向上させることを可能とするパターン化基板の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係るレジストパターン形成方法は、
微細な凹凸パターンを表面に有するモールドを用いて、凹凸パターンを基板上のレジスト膜に押し付け、
モールドをレジスト膜から剥離して、凹凸パターンをレジスト膜に転写し、
凹凸パターンが転写されたレジスト膜の残膜を除去するように反応性イオンエッチング法によりこのレジスト膜をエッチングする残膜エッチング工程を実施する方法であって、
残膜エッチング工程が、エッチングの際に堆積物を生成する堆積性ガスを含有する第1のエッチングガスを用いて、上記凹凸パターンの転写パターンであるレジストパターンにおける凸部の側壁に堆積物が堆積しかつ残膜がエッチングされる条件でレジスト膜をエッチングする第1のエッチング工程を含み、堆積物を含めた上記凸部の幅が残膜エッチング工程前における上記凸部の幅以上の所望の幅となるように第1のエッチング工程以後の工程によってレジスト膜をエッチングするものであることを特徴とするものである。
【0012】
本明細書において、凹凸パターンの転写パターンであるレジストパターンにおける凸部の側壁に「堆積物が堆積し」とは、堆積物が当該側壁に堆積することのみが起きていること、および、堆積物が当該側壁に堆積する能力が、当該側壁に堆積した堆積物をエッチングする能力に比して大きく、その結果として堆積物が当該側壁に堆積していくことを含む意味である。
【0013】
「残膜がエッチングされる」とは、堆積物がレジストパターンの凹部の底に堆積する能力が、当該底に堆積した堆積物をエッチングする能力に比して小さく、その結果として堆積物が当該底に堆積しにくい状態となって残膜のエッチングが進行することを意味する。
【0014】
残膜エッチング工程が「堆積物を含めた上記凸部の幅が残膜エッチング工程前における上記凸部の幅以上の所望の幅となるように第1のエッチング工程以後の工程によってレジスト膜をエッチングするものである」とは、残膜エッチング工程が、堆積物を含めた上記凸部の幅が残膜エッチング工程前における上記凸部の幅以上の所望の幅となるように第1のエッチング工程によってレジスト膜をエッチングする工程であること、または、堆積物を含めた上記凸部の幅が残膜エッチング工程前における上記凸部の幅以上の所望の幅となるように第1のエッチング工程の後の更なるエッチング工程によってレジスト膜をエッチングする工程であることを意味する。
【0015】
「所望の値」とは、レジストパターンが形成されたレジスト膜をマスクとして下地の基板を加工する際に必要とする凸部の幅であって、堆積した堆積物を含めたレジストパターンの凸部の幅を意味する。
【0016】
そして、本発明に係るレジストパターン形成方法において、堆積性ガスはCH4−xで表されるフルオロカーボンガスであることが好ましい。xは0〜3の整数を表す。
【0017】
そして、本発明に係るレジストパターン形成方法において、堆積性ガスはCF、CHFおよびCHの少なくとも1つであることが好ましい。
【0018】
そして、本発明に係るレジストパターン形成方法において、第1のエッチングガス中の堆積性ガスの割合は0.05〜0.5であることが好ましい。
【0019】
そして、本発明に係るレジストパターン形成方法において、第1のエッチングガスは酸素ガスを含有するものであることが好ましい。この場合において、第1のエッチングガス中における堆積性ガスに対する酸素ガスの割合は0.01〜5であることが好ましい。
【0020】
そして、本発明に係るレジストパターン形成方法において、第1のエッチングガスは希ガスを含有するものであることが好ましい。この場合において、第1のエッチングガス中における堆積性ガスに対する希ガスの割合は0.8〜10であることが好ましい。
【0021】
そして、本発明に係るレジストパターン形成方法において、第1のエッチング工程は、堆積物を含めた上記凸部の幅が所望の値より大きくなるように堆積物が堆積する条件でレジスト膜をエッチングするものであり、
残膜エッチング工程は、第1のエッチング工程の後に、堆積物を含めた上記凸部の幅が所望の値となるように、上記凸部の側壁に堆積した堆積物をエッチングする第2のエッチング工程を含むことが好ましい。
【0022】
そして、本発明に係るレジストパターン形成方法において、第1のエッチングガス中の堆積性ガスの割合は、第2のエッチング工程において使用される第2のエッチングガス中の堆積性ガスの割合よりも大きいことが好ましい。
【0023】
そして、本発明に係るレジストパターン形成方法において、第1のエッチングガス中の酸素ガスの割合は、第2のエッチング工程において使用される第2のエッチングガス中の酸素ガスの割合よりも小さいことが好ましい。
【0024】
そして、本発明に係るレジストパターン形成方法において、反応性イオンエッチング法は、誘導結合、容量結合および電子サイクロトロン共鳴のいずれかのプラズマ発生法を用いたエッチング法であることが好ましい。
【0025】
そして、本発明に係るレジストパターン形成方法において、基板は、レジスト膜が形成される表面に1層以上のマスク層を有することが好ましい。
【0026】
そして、本発明に係るレジストパターン形成方法において、マスク層は、クロムおよび/またはクロム酸化物を含有する層を少なくとも1層有することが好ましい。
【0027】
さらに、本発明に係るパターン化基板の製造方法は、
上記に記載の形成方法によりレジスト膜にレジストパターンを形成し、
このレジスト膜をマスクとして基板をエッチングすることにより、レジストパターンに対応した凹凸パターンを基板の表面に形成することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係るレジストパターン形成方法は、特に、残膜エッチング工程が、エッチングの際に堆積物を生成する堆積性ガスを含有する第1のエッチングガスを用いて、凹凸パターンの転写パターンであるレジストパターンにおける凸部の側壁に堆積物が堆積しかつ残膜がエッチングされる条件でレジスト膜をエッチングする第1のエッチング工程を含むことを特徴とする。この結果、残膜をエッチングする工程終了時のレジストパターンの凸部の幅を、残膜をエッチングする工程開始時におけるレジストパターンの凸部の幅以上の所望の幅とすることが可能となる。これは、堆積物がレジストパターンの凸部の側壁に堆積することにより、レジストパターンの凸部のレジスト部分がエッチングされることを抑制したり、当該堆積物自体が当該凸部におけるエッチングされたレジスト部分を補ったりするためと考えられる。
【0029】
また、本発明に係るパターン化基板の製造方法は、上記に記載の形成方法によりレジスト膜にレジストパターンを形成し、このレジスト膜をマスクとして基板をエッチングすることにより、レジストパターンに対応した凹凸パターンを基板の表面に形成することを特徴とするから、凸部の幅が残膜をエッチングする工程前におけるレジストパターンの凸部の幅以上の所望の幅とされたレジストパターンをマスクとしてエッチングすることができる。その結果、パターン化基板の製造において、当該レジストパターンに対応した凹凸パターンの加工精度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1A】本発明の実施形態のレジストパターン形成方法に係るモールドを示す概略断面図である。
【図1B】図1Aにおけるモールドの凹凸パターン領域の一部の断面を示す概略拡大図である。
【図2A】レジストパターン形成方法の実施形態の一工程を示す概略断面図である。
【図2B】レジストパターン形成方法の実施形態の一工程を示す概略断面図である。
【図2C】レジストパターン形成方法の実施形態の一工程を示す概略断面図である。
【図3A】レジストパターン形成方法において第1のエッチング工程後かつ第2のエッチング工程前のレジストパターンの状態を示す概略断面図である。
【図3B】レジストパターン形成方法において第2のエッチング工程後のレジストパターンの状態を示す概略断面図である。
【図4A】本発明のパターン化基板の製造方法の実施形態の一工程を示す概略断面図である。
【図4B】本発明のパターン化基板の製造方法の実施形態の一工程を示す概略断面図である。
【図4C】本発明のパターン化基板の製造方法の実施形態の一工程を示す概略断面図である。
【図5】実施例におけるエッチングガス全体に対するCHFの割合とE1/E2の値との関係を表すグラフを示す図である。
【図6A】実施例においてパターン化基板の評価基準を説明するためのSEM画像を示す図である。
【図6B】実施例においてパターン化基板の評価基準を説明するためのSEM画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明するが、本発明はこれに限られるものではない。なお、視認しやすくするため、図面中の各構成要素の縮尺等は実際のものとは適宜異ならせてある。
【0032】
「レジストパターン形成方法」
まず、レジストパターン形成方法の実施形態について説明する。図1Aは本発明の実施形態のレジストパターン形成方法に係るモールドを示す概略断面図であり、図1Bは図1Aにおけるモールドの凹凸パターン領域の一部の断面を示す概略拡大図である。また、図2Aから図2Cはレジストパターン形成方法の実施形態の工程を示す概略断面図である。
【0033】
本実施形態のレジストパターン形成方法は、微細な凹凸パターン13を表面に有するモールド1を用いて(図2A)、凹凸パターン13を基板3上のレジスト膜2に押し付け、モールド1をレジスト膜2から剥離して、凹凸パターン13をレジスト膜2に転写し(図2B)、凹凸パターン13が転写されたレジスト膜2の残膜2bを除去するように反応性イオンエッチング法によりこのレジスト膜2をエッチングする残膜エッチング工程を実施する(図2C)方法であって、残膜エッチング工程が、エッチングの際に堆積物4を生成する堆積性ガスを含有する第1のエッチングガスを用い、凹凸パターン13の転写パターンであるレジストパターンにおける凸部2aの側壁に堆積物4が堆積しかつ残膜2bがエッチングされる条件で、レジスト膜2をエッチングする第1のエッチング工程と、堆積物4を含めた上記凸部2aの幅W3が所望の値となるように、上記凸部2aの側壁に堆積した堆積物4をエッチングする第2のエッチング工程を含むものであることを特徴とするものである。
【0034】
(モールド)
モールド1は、例えば図1Aおよび図1Bに示すように、支持部12と、支持部12の表面上に形成された微細な凹凸パターン13とから構成される。
【0035】
支持部12の材料は、例えばシリコン、ニッケル、アルミニウム、クロム、鉄、タンタルおよびタングステン等の金属材料、並びにそれらの酸化物、窒化物および炭化物とすることができる。具体的には、支持部12の材料としては、酸化シリコン、酸化アルミニウム、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラスおよびソーダガラス等を挙げることができる。
【0036】
凹凸パターン13の形状は、特に限定されず、ナノインプリントの用途に応じて適宜選択される。例えば典型的なパターンとして図1Aおよび図1Bに示すようなライン&スペースパターンである。そして、ライン&スペースパターンの凸部(ライン)の長さ、凸部の幅W1、凸部同士の間隔W2および凹部底面からの凸部の高さ(凹部の深さ)Hは適宜設定される。例えば、凸部の幅W1は10〜100nm、より好ましくは20〜70nmであり、凸部同士の間隔W2は10〜500nm、より好ましくは20〜100nmであり、凸部の高さHは10〜500nm、より好ましくは30〜100nmである。また、凹凸パターン13の形状は、その他、矩形、円および楕円等の断面を有するドットが配列したような形状でもよい。
【0037】
(基板)
加工対象となる基板3は、モールド1が光透過性を有する場合、その形状、構造、大きさ、材質等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。基板3のパターン転写の対象となる面がレジスト塗布面となる。例えば基板3が情報記録媒体の製造向けのものである場合には、基板3の形状は通常円板状である。構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。材質としては、基板材料として公知のものの中から、適宜選択することができ、例えば、シリコン、ニッケル、アルミニウム、ガラス、樹脂、などが挙げられる。これらの基板材料は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。基板3の厚さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.05mm以上が好ましく、0.1mm以上がより好ましい。基板3の厚さが0.05mm未満であると、基板3とモールドとの接着時に基板3側に撓みが発生し、均一な接着状態を確保できない可能性がある。一方、モールド1が光透過性を有しない場合は、光硬化性レジストの露光を可能とするために石英基板を用いる。石英基板は、光透過性を有し、厚さが0.3mm以上であれば、特に制限されることなく、目的に応じて適宜選択される。例えば、石英基板表面をシランカップリング剤で被覆したものや、前記積層体の表面をシランカップリング剤で被覆したものなどが挙げられる。石英基板の厚さは、通常0.3mm以上が好ましい。0.3mm以下では、ハンドリングやインプリント中の押圧で破損しやすい。
【0038】
基板3はそのレジスト塗布面に1層以上のマスク層を有することが好ましい。この場合、基板3は、支持基板3aおよびマスク層3bから構成される。マスク層3bは、残膜エッチング工程において、残膜が除去された後、残膜2bの下部構造、つまり基板3がエッチングされることを防止する役割を担う。これにより、残膜エッチング工程の終点である「堆積物を含めたレジストパターンの凸部の幅が所望の値となる時点」が、残膜2bが完全に除去される時点を超過していても基板3が損傷することを抑制することができる。つまり、堆積物4を含めたレジストパターンの凸部2aの幅W3が所望の値となる前に残膜2bが完全に除去されたとしても、基板3が損傷することを抑制しながら残膜エッチング工程を継続することが可能となる。マスク層3bの材料は、エッチング選択比(レジスト膜2のエッチング速度/マスク層3bのエッチング速度)が大きくなるような材料から選択される。マスク層3bの材料は、特にCr、W、Ti、Ni、Ag、Pt、Auなどからなる金属材料、およびCrO、WO、TiOなどからなる金属酸化物材料が好ましい。さらにマスク層3bは、クロムおよび/またはクロム酸化物を含有する層を少なくとも1層有することが好ましい。
【0039】
(レジスト膜)
レジスト膜2を構成するレジストは、特に制限されるものではないが、本実施形態では例えば重合性化合物に、光重合開始剤(2質量%程度)、フッ素モノマー(0.1〜1質量%)を加えて調製された光硬化性樹脂を用いることができる。また、必要に応じて酸化防止剤(1質量%程度)を添加することもできる。上記の手順により作成した光硬化性のレジストは波長360nmの紫外光により硬化することができる。溶解性の悪いものについては少量のアセトンまたは酢酸エチルを加えて溶解させた後、溶媒を留去することが好ましい。
【0040】
上記重合性化合物としては、ベンジルアクリレート(ビスコート#160:大阪有機化学株式会社製)、エチルカルビトールアクリレート(ビスコート#190:大阪有機化学株式会社製)、ポリプロピレングリコールジアクリレート(アロニックスM−220:東亞合成株式会社製)、トリメチロールプロパンPO変性トリアクリレート(アロニックスM−310:東亞合成株式会社製)等の他、下記構造式(1)で表される化合物等を挙げることができる。
【0041】
構造式(1):
【化1】

【0042】
また、上記重合開始剤としては、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン(IRGACURE 379:豊通ケミプラス株式会社製)等のアルキルフェノン系光重合開始剤を挙げることができる。
【0043】
また、上記フッ素モノマーとしては、下記構造式(2)で表される化合物等を挙げることができる。
【0044】
構造式(2):
【化2】

【0045】
インクジェット法によりレジストを塗布する場合には、例えば、上記構造式(1)で示される化合物、IRGACURE 379および上記構造式(2)で示されるフッ素モノマーをそれぞれ質量比97:2:1の割合で混合し形成されたレジストを使用することが好ましい。一方、スピンコート法によりレジストを塗布する場合には、例えば、重合性化合物をPGMEA(Propylene Glycol Methyl Ether Acetate)で1質量%に希釈したレジストを使用することが好ましい。
【0046】
(モールドの押付け工程)
モールド1と基板3間の雰囲気を減圧または真空雰囲気にした後に、モールド1を押し付けることで残留気体を低減する。ただし、高真空雰囲気下では硬化前のレジストが揮発し、均一な膜厚を維持することが困難となる可能性がある。そこで、好ましくはモールド1と基板3間の雰囲気を、He雰囲気または減圧He雰囲気にすることで残留気体を低減する。Heは石英基板を透過するため、取り込まれた残留気体(He)は徐々に減少する。Heの透過には時間を要すため減圧He雰囲気とすることがより好ましい。
【0047】
モールド1の押し付け圧は、100kPa以上、10MPa以下の範囲で行う。圧力が大きい方が、レジストの流動が促進され、また残留気体の圧縮、残留気体のレジストへの溶解、石英基板中のHeの透過も促進し、タクトアップに繋がる。しかし、加圧力が強すぎるとモールド接触時に異物を噛みこんだ際にモールド1及び基板3を破損する可能性がある。よって、モールド1の押し付け圧は、100kPa以上、10MPa以下が好ましく、より好ましくは100kPa以上、5MPa、更に好ましくは100kPa以上、1MPa以下となる。100kPa以上としたのは、大気中でインプリントを行う際、モールド1と基板3間が液体で満たされている場合、モールド1と基板3間が大気圧(約101kPa)で加圧されているためである。
【0048】
(モールドの剥離工程)
モールド1を押し付けてレジスト膜2にレジストパターンを形成した後、モールド1をレジスト膜2から剥離する。剥離させる方法としては、例えばモールド1または基板3のどちらかの外縁部を保持し、他方の基板3またはモールド1の裏面を吸引保持した状態で、外縁の保持部もしくは裏面の保持部を押圧と反対方向に相対移動させることで剥離させる方法が挙げられる。この工程を経た時点では、レジストパターンの凸部の幅は、モールド1の凹凸パターン13の凸部同士の間隔W2に一致する。
【0049】
(残膜エッチング工程)
残膜エッチング工程は、レジストパターンの凹部の底にある残膜2bを除去するための工程である。本実施形態では、残膜エッチング工程は第1のエッチング工程および第2のエッチング工程とから構成される。反応性イオンエッチング(RIE)は、アンダーカット(サイドエッチ)を抑制するため、垂直異方性(イオンの運動が凹部の深さ方向に偏っている度合)の高いものが好ましく、特に誘導結合型プラズマ(ICP)−RIE、容量結合型プラズマ(CCP)−RIEまたは電子サイクロトロン共鳴型(ECR)−RIEであることが好ましい。さらに、本発明においてバイアス電力(プラズマと下部電極との間にバイアスを形成するための電力)は、その制御を容易にするため、プラズマ電力(プラズマを形成するための電力)と独立して制御可能な方式を採用することが好ましい。
【0050】
(第1のエッチング工程)
第1のエッチング工程は、エッチングの際に堆積物を生成する堆積性ガスを含有する第1のエッチングガスを用い、凹凸パターン13の転写パターンであるレジストパターンにおける凸部2aの側壁に堆積物4が堆積しかつ残膜2bがエッチングされる条件で、レジスト膜2をエッチングする工程である。本明細書において、「堆積物が堆積しかつ残膜がエッチングされる」とは、堆積物4の堆積と残膜2bのエッチングとが同時に行われていること、および、残膜2bが完全に除去され、堆積物4の堆積のみがそのままの状態で継続して行われていることを含む意味である。残膜2bが完全に除去されるまでに複数のエッチング工程を経る場合にはそれらが全体として1つの「第1のエッチング工程」に相当する。
【0051】
堆積性ガスは、エッチングの際に反応生成物および反応副生成物等の堆積物を生成するガスである。堆積性ガスは、堆積物を生成しやすいフルオロカーボンガスであることが好ましく、CH4−xで表されるフルオロカーボンガスであることがより好ましく、CF、CHFおよびCHの少なくとも1つであることが特に好ましい。堆積性ガスを用いたRIEを実施した場合、堆積性ガスに起因する堆積物がレジストパターンの凸部2aの側壁に堆積する。当該側壁に堆積した堆積物4は当該側壁をエッチングから保護する役割を果たし、その結果いわゆるサイドエッチングを抑制して、レジストパターンの凸部2aの断線を抑制することができる。特に堆積性ガスがCH4−xで表されるフルオロカーボンガスである場合には、エッチングガス中の堆積性ガスの割合、エッチングガスの流量、プラズマ電力、バイアス電力および圧力等を調整することにより、堆積物4の堆積の度合を調整することが可能である。つまり、堆積物4の堆積の度合を調整することにより、堆積物4を含めた上記凸部2aの幅W3の長さを残膜エッチング工程の前における上記凸部2aの幅W2の長さよりも短くしたり長くしたりと、所望の値となるように設定することが可能になる。ここで、レジストパターンの凸部2aの幅とは、当該凸部の半値全幅とする。例えば、エッチングガス中の堆積性ガスの割合を大きくすれば、堆積物4の堆積の度合が大きくなるため堆積物4を含めた上記凸部2aの幅の長さW3は長くなり、エッチングガス中の堆積ガスの割合を小さくすれば、堆積物4の堆積の度合が小さくなるため堆積物4を含めた上記凸部2aの幅の長さW3は短くなるという傾向がある。
【0052】
第1のエッチングガスは、上記堆積性ガスの他に酸素ガスおよび/または希ガス(不活性ガス)を含むものが好ましく、希ガスとしては特にアルゴンガスが好ましい。これにより、エッチングレートの制御性が向上する。
【0053】
第1のエッチング工程では、レジストパターンにおける凸部2aの側壁に堆積物4が堆積しかつ残膜2bがエッチングされる条件で、エッチングが行われる。これにより、上記凸部2aのレジスト部分を保護するとともにその削られた部分を堆積物4で補填しながら残膜2bをエッチングすることが可能となる。このような条件を実現するためにも前述のようにエッチングガス中の堆積性ガスの割合、エッチングガスの流量、プラズマ電力、バイアス電力および圧力等を調整する。例えば、エッチングガス中の堆積性ガスの割合は0.05〜0.5であり、エッチングガスの流量は50〜200sccmであり、プラズマ電力20〜100Wであり、バイアス電力10〜50Wであり、圧力0.3〜3Paである範囲において、上記のようなエッチング条件は実現しやすい。
【0054】
高さ方向のエッチングレートに対する幅方向のエッチングレートの比を算出することにより、残膜のエッチング量(オーバーエッチング含む)に対してレジストパターンの凸部の幅がどの程度変化するかを把握することができる。
【0055】
(第2のエッチング工程)
第2のエッチング工程は、第1のエッチング工程において堆積した堆積物4のうち不要な部分をエッチングする工程である。図3Aはレジストパターン形成方法において第1のエッチング工程後かつ第2のエッチング工程前のレジストパターンの状態を示す概略断面図である。また、図3Bレジストパターン形成方法において第2のエッチング工程後のレジストパターンの状態を示す概略断面図である。第1のエッチング工程において、堆積物4を含めたレジストパターンの凸部2aの幅W3が所望の値Woとなる前に残膜2bが完全に除去される場合には、堆積物4を含めた上記凸部2aの幅W3が所望の値Woとなる時点に合わせて第1のエッチング工程を終了すれば、上記幅W3を所望の値Woとすることが可能である。しかし、残膜2bが完全に除去される前に上記幅W3が所望の値Woとなる場合には、残膜2bを完全に除去しなければならないため上記幅W3が所望の値Woとなる時点を超えて第1のエッチング工程を継続しなければならない。つまり、残膜2bが完全に除去された時点(或いは第1のエッチング工程を終了した時点)においては、上記幅W3が所望の値Woよりも大きくなるため(図3A)、当該幅W3が所望の値Woとなるようなトリミング処理が必要となる。そこで、第2のエッチング工程では、上記のように所望の値Woよりも大きくなった上記幅W3が所望の値Woとなるようにエッチングが行われる(図3B)。なお、第1のエッチング工程のみで上記幅W3を所望の値Woとすることができかつ残膜2bを完全に除去することができる場合には第2のエッチング工程は不要となる。
【0056】
また、図3Aに示されるように第1のエッチング工程において、堆積物の残渣5がレジストパターンの凹部の底に残る場合がある。第2のエッチング工程はこのような残渣5を除去する役割も果たす(図3B)。
【0057】
上記のように第2のエッチング工程は、レジストパターンの凸部2aのトリミング機能と堆積物の残渣5の除去機能とを有する。これらの機能を実現するため、第2のエッチング工程では、エッチングガス中の堆積性ガスの割合を第1のエッチング工程におけるエッチングガス中の堆積性ガスの割合よりも小さくしてエッチングが行われることが好ましい。
【0058】
以上より、本発明に係るレジストパターン形成方法は、特に、残膜エッチング工程が、エッチングの際に堆積物を生成する堆積性ガスを含有する第1のエッチングガスを用いて、凹凸パターンの転写パターンであるレジストパターンにおける凸部の側壁に堆積物が堆積しかつ残膜がエッチングされる条件でレジスト膜をエッチングする第1のエッチング工程を含むことを特徴とする。この結果、残膜をエッチングする工程後のレジストパターンの凸部の幅を、残膜をエッチングする工程前におけるレジストパターンの凸部の幅以上の所望の幅とすることが可能となる。これは、堆積物がレジストパターンの凸部の側壁に堆積することにより、レジストパターンの凸部のレジスト部分がエッチングされることを抑制したり、当該堆積物自体が当該凸部におけるエッチングされたレジスト部分を補ったりするためと考えられる。
【0059】
(レジストパターン形成方法の実施形態の設計変更)
第1の実施形態においては、レジストパターンの凸部のトリミング機能と堆積物の残渣の除去機能とを有するエッチング工程は、第2のエッチング工程のみであったが、本発明はこのような形態に限られない。つまり、この2つの機能を有するエッチング工程は、エッチング条件が互いに異なり連続的又は非連続的に実施される複数のエッチング工程から構成されてもよい。ここで、非連続的とは、エッチング工程同士の間隔を長時間空ける場合やエッチング装置を変更する場合等を意味する。
【0060】
トリミング機能と堆積物の残渣の除去機能とを有するエッチング工程の総工程数をNとし、残膜エッチング工程中の第i番目のエッチング工程(i=1、2、・・・、N+1)において使用されるエッチングガス中の堆積性ガスの割合をDGとする場合を考える。つまり、i=1、2、・・・、N+1。i=1のときは残膜を除去しかつ堆積物を作るための本発明の第1のエッチング工程に相当し、i=2からN+1まではトリミング機能と堆積物の残渣の除去機能とを有するエッチング工程に相当する。このような場合、任意の第j番目のエッチング工程および第k番目のエッチング工程(1≦j<k≦N+1)において、DG>DGという条件を満たす組み合わせが少なくとも1つ存在するように、エッチング条件を設定することが好ましい。段階的に堆積物の生成を抑制することにより、堆積物の残渣を確実に除去することが可能となるためである。さらに、残膜エッチング工程において使用されるエッチングガス中の堆積性ガスの割合に関して、下記式(1)を満たすように設定することが好ましい。
【0061】
DG>DG>・・・>DGN+1・・・(1)
【0062】
また、残膜エッチング工程中の第i番目のエッチング工程(iおよびNに関しては上記と同様である。)において使用されるエッチングガス中の酸素ガスの割合をOGとしたとき、任意の第m番目のエッチング工程および第n番目のエッチング工程(1≦m<n≦N+1)において、OG<OGという条件を満たす組み合わせが少なくとも1つ存在するように、エッチング条件を設定することが好ましい。さらに、残膜エッチング工程において使用されるエッチングガス中の酸素ガスの割合に関して、下記式(2)を満たすように設定することが好ましい。
【0063】
OG<OG<・・・<OGN+1・・・(2)
【0064】
「パターン化基板の製造方法」
次に、本発明のパターン化基板の製造方法の実施形態について説明する。本実施形態では、前述したレジストパターン形成方法を用いてパターン化基板の製造を行う。図4Aから図4Cは、パターン化基板の製造方法の実施形態の工程を示す概略断面図である。
【0065】
まず、前述したレジストパターン形成方法を用いて、所定のパターンが形成されたレジスト膜を基板上に形成する。当該レジスト膜は、本発明のレジストパターン形成方法によりパターン形成されたものであるから、レジストパターンの凸部は、残膜をエッチングする工程前におけるレジストパターンの凸部の幅以上の所望の幅とされている。次に、パターン形成されたレジスト膜をマスクにして基板のエッチングを行い、レジスト膜に形成された凹凸パターンに対応した凹凸パターンを基板上に形成して、所定のパターンを有するパターン化基板を得る。
【0066】
一方、基板3が積層構造を有しており表面上にマスク層3bを含む場合には、前述したレジストパターン形成方法を用いて、所定のパターンが形成されたレジスト膜2をマスク層3b付きの基板3上に形成する(図4A)。当該レジスト膜は、本発明のレジストパターン形成方法によりパターン形成されたものであるから、レジストパターンの凸部は、残膜をエッチングする工程前におけるレジストパターンの凸部の幅以上の所望の幅とされている。次に、レジスト膜2をマスクにしてドライエッチングを行い、レジスト膜2に形成された凹凸パターンに対応した凹凸パターンを当該マスク層3bに形成し(図4B)、そのマスク層3bをエッチストップ層にして基板3にさらにドライエッチングを行い、凹凸パターンを基板3上に形成して(図4C)、所定のパターンを有するパターン化基板を得る。
【0067】
ドライエッチングとしては、基板に凹凸パターンを形成できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イオンミリング法、反応性イオンエッチング(RIE)、スパッタエッチング、などが挙げられる。これらの中でも、イオンミリング法、反応性イオンエッチング(RIE)が特に好ましい。
【0068】
イオンミリング法は、イオンビームエッチングとも言われ、イオン源にArなどの不活性ガスを導入し、イオンを生成する。これを、グリッドを通して加速させ、試料基板に衝突させてエッチングするものである。イオン源としては、カウフマン型、高周波型、電子衝撃型、デュオプラズマトロン型、フリーマン型、ECR(電子サイクロトロン共鳴)型などが挙げられる。
【0069】
イオンビームエッチングでのプロセスガスとしては、Arガス、RIEのエッチャントとしては、フッ素系ガスや塩素系ガスを用いることができる。
【0070】
以上のように、本発明に係るパターン化基板の製造方法は、上記に記載の形成方法によりレジスト膜にレジストパターンを形成し、このレジスト膜をマスクとして基板をエッチングすることにより、レジストパターンに対応した凹凸パターンを基板の表面に形成することを特徴とするから、凸部の幅が残膜をエッチングする工程前における凸部の幅以上の所望の幅とされたレジストパターンをマスクとしてエッチングすることができる。その結果、パターン化基板の製造において、当該レジストパターンに対応した凹凸パターンの加工精度を向上させることが可能となる。
【0071】
本発明のレジストパターン形成方法の実施例を以下に示す。
【0072】
<実施例1−1>
(レジストパターンの形成)
クロム層(5nm)付きの石英基板の当該クロム層上に光硬化性レジストを塗布してレジスト膜(60nm)を形成した。光硬化性レジストの成分は、上記構造式(1)で示される化合物、IRGACURE 379および上記構造式(2)で示されるフッ素モノマーをそれぞれ質量比97:2:1の割合で混合したものである。その後、凸部の幅が20nmであり、凸部の高さが40nmであり、凸部の周期間隔が40nmである凹凸パターンを有するSiモールドを当該レジスト膜に対して押し付け、紫外光を照射することでレジスト膜を硬化し、Siモールドをレジスト膜から剥離して、Siモールドの凹凸パターンをレジスト膜に転写した。この時点でのレジストパターンについて、凸部の幅は20nmであり、凸部の高さは40nmであり、凸部の周期間隔は40nmである。
【0073】
レジスト膜のレジストパターンの凹部における残膜の厚さを測定した。レジスト膜のパターン領域の一部を、スクラッチまたはテープ剥離等により剥離することにより基板を露出させ、剥離領域とパターン領域の境界部をAFM(原子間力顕微鏡)で測定することにより、残膜の厚さを測定した。
【0074】
誘導結合型(ICP)の反応性イオンエッチング装置を用い、下記に示すエッチング条件でエッチングガスのプラズマで本発明における第1のエッチング工程のみを実施した。第1のエッチング工程の実施時間の終了点は、少なくとも残膜を丁度除去できる時点からそれまでの経過時間の50%分だけ超過した時点とした。つまり、オーバーエッチング量が残膜の平均の厚さの50%となる時点を目安に第1のエッチング工程を実施した。ここで、当該実施時間は、事前に測定しておいたエッチング速度および残膜の厚さに基づいて算出される。
【0075】
(エッチング条件)
エッチングガス:CHFガス、酸素ガスおよびアルゴンガスをそれぞれ1:1:10の割合で混合した。
プラズマ電力:50W
バイアス電力:25W
圧力:2Pa
残膜の平均の厚さに対するエッチング量:150%
【0076】
(レジストパターンの評価方法)
測長可能な走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子株式会社製)にて、残膜エッチング工程後におけるレジストパターンの凸部の幅をTOPVIEW観察により評価した。また、同時に断面構造の評価も行った。そして、残膜エッチング工程前後のレジストパターンの凸部の幅(残膜エッチング工程後においては当該凸部に堆積した堆積物を含めた幅)からレジストパターンの凸部の幅方向(凸部の側面に垂直な方向)のエッチングレートE1を算出し、残膜エッチング工程前後の当該凸部の高さから当該凸部の高さ方向のエッチングレートE2を算出した。そして、高さ方向のエッチングレートE2に対する幅方向のエッチングレートE1の比E1/E2を算出した。
【0077】
<実施例1−2>
エッチングガスとして、CHFガス、酸素ガスおよびアルゴンガスをそれぞれ4:1:10の割合で混合したものを用いた点以外は、実施例1−1と同様にレジストパターンの形成および評価を行った。
【0078】
<実施例1−3>
エッチングガスとして、CHFガス、酸素ガスおよびアルゴンガスをそれぞれ8:1:10の割合で混合したものを用いた点以外は、実施例1−1と同様にレジストパターンの形成および評価を行った。
【0079】
<実施例1−4>
エッチングガスとして、CHFガス、酸素ガスおよびアルゴンガスをそれぞれ12:1:10の割合で混合したものを用いた点以外は、実施例1−1と同様にレジストパターンの形成および評価を行った。
【0080】
<実施例1−5>
エッチングガスとして、CHFガス、およびアルゴンガスをそれぞれ1:10の割合で混合したものを用いた点以外は、実施例1−1と同様にレジストパターンの形成および評価を行った。
【0081】
<実施例1−6>
エッチングガスとして、CHFガス、およびアルゴンガスをそれぞれ1:5の割合で混合したものを用いた点以外は、実施例1−1と同様にレジストパターンの形成および評価を行った。
【0082】
<比較例1−1>
エッチングガスとして、酸素ガスおよびアルゴンガスをそれぞれ1:10の割合で混合したものを用いた点以外は、実施例1−1と同様にレジストパターンの形成および評価を行った。
【0083】
<比較例1−2>
エッチングガスとして、酸素ガスおよびアルゴンガスをそれぞれ1:1の割合で混合したものを用いた点以外は、実施例1−1と同様にレジストパターンの形成および評価を行った。
【0084】
(結果1)
下記の表1は、上記実施例1−1から1−6並びに比較例1および2の結果を示すものである。そして、図5は、上記実施例1−1から1−6におけるエッチングガス全体に対するCHFの割合とE1/E2の値との関係を示すグラフである。グラフ中の丸い点は、エッチングガスが酸素ガスを含有する場合を表し、四角い点はエッチングガスが酸素ガスを含有しない場合を表す。表1においてE1/E2の符号がプラスであることは、残膜エッチング工程後のレジストパターンの凸部の幅が残膜エッチング工程前における当該凸部の幅より広くなっていることを意味する。これらの結果より、本発明のレジストパターン形成方法によれば、エッチング条件を制御してレジストパターンの凸部の側壁への堆積物の付着度合いを制御できることが確認された。つまり、残膜をエッチングする工程後のレジストパターンの凸部の幅を、残膜をエッチングする工程前におけるレジストパターンの凸部の幅以上の所望の幅とすることが可能であることが確認された。
【0085】
【表1】

【0086】
<実施例2>
(レジストパターンの形成)
Siモールドの凹凸パターンの光硬化性レジスト膜への転写、および残膜の厚さの測定については実施例1−1と同様である。
【0087】
誘導結合型(ICP)の反応性イオンエッチング装置を用い、下記に示すエッチング条件1でエッチングガスのプラズマで本発明における第1のエッチング工程を実施した。第1のエッチング工程の実施時間の終了点は、残膜を丁度除去できる時点とした。ここで、当該実施時間は、事前に測定しておいたエッチング速度および残膜の厚さに基づいて算出される。
【0088】
続いて、誘導結合型(ICP)の反応性イオンエッチング装置を用い、下記に示すエッチング条件2でエッチングガスのプラズマで本発明における第2のエッチング工程を実施した。第2のエッチング工程の実施時間の終了点は、残膜を50%分除去できる時点とした。ここで、当該実施時間は、事前に測定しておいたエッチング速度および残膜の厚さに基づいて算出される。
【0089】
つまり、本実施例では、残膜エッチング工程は上記の第1のエッチング工程および第2のエッチング工程から構成される。そして、上記第1のエッチング工程および第2のエッチング工程全体を通したオーバーエッチング量は、残膜の平均の厚さの50%となる時点となる。
【0090】
(エッチング条件1)
エッチングガス:CHFガス、およびアルゴンガスをそれぞれ1:3の割合で混合した。
プラズマ電力:50W
バイアス電力:25W
圧力:2Pa
残膜の平均の厚さに対するエッチング量:100%
【0091】
(エッチング条件2)
エッチングガス:酸素ガスおよびアルゴンガスをそれぞれ1:1の割合で混合した。
プラズマ電力:25W
バイアス電力:25W
圧力:0.6Pa
残膜の平均の厚さに対するエッチング量:50%
【0092】
(レジストパターンの凸部幅に関する増減の評価方法)
測長可能なSEMにてTOPVIEW及び断面観察により、レジストパターンの凸部幅に関する増減について評価した。具体的には、第1のエッチング工程後の上記凸部の幅が、第1のエッチング工程前の上記凸部の幅に対して増加したか或いは減少したかを評価した。
【0093】
(レジストパターンのトリミング効果の評価方法)
測長可能なSEMにてTOPVIEW及び断面観察により、第2のエッチング工程におけるレジストパターンのトリミング効果について評価した。具体的には、第2のエッチング工程終了時の上記凸部の幅が第1のエッチング工程終了時の上記凸部の幅に対して減少している場合をトリミング効果ありと評価した。
【0094】
(残渣有無の評価方法)
上記残膜エッチング工程後にレジストパターンの凹部の底に残る堆積物の残渣の有無を評価した。具体的には、上記残膜エッチング工程を実施した後、塩素系ガスを用いたプラズマにてクロム層のエッチングを行い、SEM観察によりクロム層の残存状況を調べ、クロム層が部分的にでも残存している場合を残渣ありと、クロム層が残存していない場合を残渣なしと評価した。ここでクロム層のエッチングの終了点は、少なくともクロム膜を丁度除去できる時点からそれまでの経過時間の50%分だけ超過した時点とした。
【0095】
(パターン化基板の製造)
上記の残膜エッチング工程を実施した後、塩素系ガスを用いたプラズマにてクロム層のエッチングを行った。クロム層のエッチングは、少なくともクロム膜を丁度除去できる時点からそれまでの経過時間の50%分だけ超過した時点とした。次いで、フッ素系ガスプラズマを用いて石英基板を深さ60nmエッチングし、レジストパターンに対応した凹凸パターンを石英基板に形成した。
【0096】
(パターン化基板の評価方法)
測長可能なSEMにて、パターン化基板に形成された凹凸パターンの欠陥の有無を評価した。具体的には、凹凸パターンの欠陥として、凹凸パターンの凸部の断線およびクロムの残存により凹凸パターンを形成不可能な領域の有無を評価した。図6及び図6Bは、凹凸パターンの評価基準を説明するためのSEM画像を示す図である。パターン化基板の凸部の断線の有無は、図6Aのような場合を断線なしと評価し、図6Bのような場合を断線ありと評価した。また、残膜エッチング工程後に堆積物の残渣がある場合を、凹凸パターンを形成不可能な領域があると評価した。以上の結果、いずれの欠陥もなかった場合を凹凸パターンの欠陥なし(表では○)と、いずれかの欠陥があった場合を凹凸パターンの欠陥あり(表では×)と評価した。
【0097】
<比較例2−1>
第2のエッチング工程を実施せずに、第1のエッチング工程における残膜の平均の厚さに対するエッチング量を150%とした点以外は、実施例2と同様にレジストパターンの形成および評価、並びにパターン化基板の製造および評価を行った。
【0098】
<比較例2−2>
第1のエッチング工程を実施せずに、第2のエッチング工程における残膜の平均の厚さに対するエッチング量を150%とした点以外は、実施例2と同様にレジストパターンの形成および評価、並びにパターン化基板の製造および評価を行った。
【0099】
(結果2)
下記の表2は、上記実施例2並びに比較例2−1および2−2の結果を示すものである。これらの結果より、本発明の第2のエッチング工程を含むレジストパターン形成方法によれば、第1のエッチング工程において残渣が生じる場合においても第2のエッチング工程によって残渣を除去でき、かつ残膜をエッチングする工程後のレジストパターンの凸部の幅を、残膜をエッチングする工程前におけるレジストパターンの凸部の幅以上の所望の幅とすることが可能であることが確認された。
【0100】
また、本発明のレジストパターン形成方法によれば、パターン化基板の凹凸パターンが良好に形成でき、凹凸パターンの加工精度を向上させることが可能であることが確認された。
【0101】
【表2】

【符号の説明】
【0102】
1 モールド
2 レジスト膜
2a 凸部
2b 残膜
3 基板
3a 支持基板
3b マスク層
4 レジストパターンの凸部側壁に堆積した堆積物
5 レジストパターンの凹部の底に残った堆積物の残渣
12 支持部
13 凹凸パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細な凹凸パターンを表面に有するモールドを用いて、前記凹凸パターンを基板上のレジスト膜に押し付け、
前記モールドを前記レジスト膜から剥離して、前記凹凸パターンを前記レジスト膜に転写し、
前記凹凸パターンが転写された前記レジスト膜の残膜を除去するように反応性イオンエッチング法により該レジスト膜をエッチングする残膜エッチング工程を実施する方法であって、
前記残膜エッチング工程が、エッチングの際に堆積物を生成する堆積性ガスを含有する第1のエッチングガスを用いて、前記凹凸パターンの転写パターンであるレジストパターンにおける凸部の側壁に前記堆積物が堆積しかつ前記残膜がエッチングされる条件で前記レジスト膜をエッチングする第1のエッチング工程を含み、前記堆積物を含めた前記凸部の幅が残膜エッチング工程前における前記凸部の幅以上の所望の幅となるように前記第1のエッチング工程以後の工程によって前記レジスト膜をエッチングするものであることを特徴とするレジストパターン形成方法。
【請求項2】
前記堆積性ガスがCH4−xで表されるフルオロカーボンガスであることを特徴とする請求項1に記載のレジストパターン形成方法。
(xは0〜3の整数を表す。)
【請求項3】
前記堆積性ガスがCF、CHFおよびCHの少なくとも1つであることを特徴とする請求項2に記載のレジストパターン形成方法。
【請求項4】
前記第1のエッチングガス中の前記堆積性ガスの割合が0.05〜0.5であることを特徴とする請求項1から3に記載のレジストパターン形成方法。
【請求項5】
前記第1のエッチングガスが酸素ガスを含有するものであることを特徴とする請求項1から4いずれかに記載のレジストパターン形成方法。
【請求項6】
前記第1のエッチングガス中における前記堆積性ガスに対する前記酸素ガスの割合が0.01〜5であることを特徴とする請求項5に記載のレジストパターン形成方法。
【請求項7】
前記第1のエッチングガスが希ガスを含有するものであることを特徴とする請求項1から6いずれかに記載のレジストパターン形成方法。
【請求項8】
前記第1のエッチングガス中における前記堆積性ガスに対する前記希ガスの割合が0.8〜10であることを特徴とする請求項7に記載のレジストパターン形成方法。
【請求項9】
前記第1のエッチング工程が、前記堆積物を含めた前記凸部の幅が前記所望の値より大きくなるように前記堆積物が堆積する条件で前記レジスト膜をエッチングするものであり、
前記残膜エッチング工程が、該第1のエッチング工程の後に、前記堆積物を含めた前記凸部の幅が前記所望の値となるように、前記凸部の側壁に堆積した前記堆積物をエッチングする第2のエッチング工程を含むことを特徴とする請求項1〜8に記載のレジストパターン形成方法。
【請求項10】
前記第1のエッチングガス中の前記堆積性ガスの割合が、前記第2のエッチング工程において使用される第2のエッチングガス中の堆積性ガスの割合よりも大きいことを特徴とする請求項9に記載のレジストパターン形成方法。
【請求項11】
前記第1のエッチングガス中の酸素ガスの割合が、前記第2のエッチング工程において使用される第2のエッチングガス中の酸素ガスの割合よりも小さいことを特徴とする請求項9または10に記載のレジストパターン形成方法。
【請求項12】
前記反応性イオンエッチング法が、誘導結合、容量結合および電子サイクロトロン共鳴のいずれかのプラズマ発生法を用いたエッチング法であることを特徴とする請求項1から11いずれかに記載のレジストパターン形成方法。
【請求項13】
前記基板が、前記レジスト膜が形成される表面に1層以上のマスク層を有することを特徴とする請求項1から12いずれかに記載のレジストパターン形成方法。
【請求項14】
前記マスク層が、クロムおよび/またはクロム酸化物を含有する層を少なくとも1層有することを特徴とする請求項13に記載のレジストパターン形成方法。
【請求項15】
請求項1から14いずれかに記載の方法によりレジスト膜にレジストパターンを形成し、
該レジスト膜をマスクとして前記基板をエッチングすることにより、前記レジストパターンに対応した凹凸パターンを前記基板の表面に形成することを特徴とするパターン化基板の製造方法。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図4C】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate


【公開番号】特開2012−209290(P2012−209290A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71406(P2011−71406)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】