説明

ロジウムまたは触媒作用を有するロジウム錯化合物を、プロセス流から分離し、かつ部分的に返送する方法

本発明は、少なくとも一段階の膜分離および吸着を組合せることによって、遷移金属および/またはその触媒作用を有する錯化合物を、反応混合物から分離し、かつ部分的に返送するための方法に関し、その際、遷移金属を含む触媒含有流は、少なくとも一段階の膜分離工程を介して、反応混合物が再度供給される遷移金属に富む保持流と、遷移金属の少ない透過流とに分配され、かつ、さらに別の遷移金属の少ない透過流を吸着工程に供給する。本発明のさらなる対象は、トリデカナールの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遷移金属または触媒作用を有する遷移金属錯化合物を、膜分離工程と吸着工程を組合せることによってプロセス流から分離または濃縮することに関する。
【0002】
特に、ロジウム触媒ヒドロホルミル化の際に、価値の高いロジウムを生成物流および排出流から回収することは、付加価値の改善に寄与する重要なプロセス工程である。
【0003】
多くの刊行物は、ロジウムの回収に取り組んでいる。この方法は、抽出(EP0147824、W001056932)、イオン交換(DE 195 43 15、US 5,208,194、WO 02/096848、WO 02/020451)、吸着(US 3,539,634)または濾過(FR 1588014)に基づく。
【0004】
存在するロジウムの種類は、吸着媒におけるその吸着能力に影響を与える。さらなる影響は、合成ガスの温度および濃度を含む(M. Beller, "Catalytic Carbonylation Reactions" in Topics in Organometallic Chemistry, 18, (2006))。
【0005】
DE 95 36 05には、生成物流の圧力緩和及び加熱による溶解されたロジウムの析出ならびにシリカゲルまたは活性炭を用いての吸着が記載されている。達成可能な析出割合および負荷能力については挙げられていない。加熱は、生成物の望ましくないアルドール縮合を招きうる。
【0006】
GB 801 734およびFR 1 588 014において、ロジウムの金属的沈澱は水と一緒に加熱することによって達成される。引き続いてこのロジウム沈殿物をデカント、濾過または遠心分離によって生成物から除去する。水の供給は、さらなる熱的な生成物後処理工程を必要とするのに加えて、触媒をもはや反応に返送することができない結果を招き、それというのも、痕跡量の水であっても活性触媒種を分解しうるためである。
【0007】
ロジウムの吸着を水素雰囲気下で実施する場合には、DE 22 62 852によれば、吸着したロジウムを溶解性のロジウムカルボニル錯体に変換することができる。吸着剤として、例示的に活性炭、シリカゲル、酸化アルミニウム、ケイソウ土および酸化マグネシウムが挙げられる。この例において、吸着中の水素雰囲気の影響は示されていない。さらに、例示的な反応は水系であり、これはたとえばリガンド改質化されたヒドロホルミル化反応に応用できるものではない。
【0008】
DE 23 11 388は、元素周期律表の第II主族および第III主族の元素の酸化物および炭酸塩ならびにシリケートおよびアルカリ土類金属に、ロジウム−tert.−ホスフィン−触媒を選択的に吸着することが記載されている。方法は極めてコストがかかるものであり、それというのも、触媒は、特別な溶剤を用いて吸着媒から洗浄除去しなければならず、かつ引き続いてこの溶剤を分離しなければならないためである。この付加的な工程は、触媒に損傷を与えうる。さらに、吸着媒の負荷能力は極めてわずかであり、これは全体として非経済的な方法を招く。
【0009】
US 4,388,279において、硫酸カルシウム上での引き続いての吸着を含む、濃縮された水性アンモニア溶液を用いてのロジウムの抽出が記載されている。方法は極めてコストがかかるものであり、析出割合は71〜75%であって極めてわずかである。さらに、吸着媒の負荷能力については明示されていない。
【0010】
−20℃〜+120℃の温度でエチレンおよび1,3−ブタジエンから1,4−ヘキサジエンを製造するためのプロセスから、ロジウムを吸着分離するための活性炭の使用は、US 3,978,148中に開示されている。これに関して達成される析出割合は、どちらかといえば期待はずれである。最良の実施例において、排出流におけるロジウム濃度はなおも27ppmを示す。さらに、使用された活性炭粉粒体においては、またも活性炭の極めて少ない負荷能力に起因して、溶出液中におけるロジウム濃度の急速な増加に伴い、ロジウムがただちにあふれ出す。反応における直接的な再利用の可能性については記載されていない。
【0011】
WO 01/72679は、ヒドロホルミル化生成物からロジウムを回収するための方法を記載している。この方法は、ヒドロホルミル化生成物を、固体吸着媒の存在下で50〜200℃の温度で加熱することによって特徴付けられる。方法の経済性に関して相当する要因としての使用された活性炭の負荷能力については、説明されていない。同様に、分離されたロジウムの反応中への直接的な返送が可能でないことが、この方法の欠点である。
【0012】
EP 1 669 337は、コバルトを吸着するための方法を記載している。活性炭上でのコバルトの析出割合は、最も少ない場合には9%を下回る。
【0013】
さらなる刊行物は、テルルまたは硫黄上での沈澱によるロジウムの回収を記載している(DE 32 23 501、DE 29 11 193)。この方法は煩雑であり、かつコストがかかり、実際の使用は専ら困難である。沈澱したロジウムは、活性触媒として反応中に供給しうる前に、さらに煩雑な後処理を行わなければならない。
【0014】
特にロジウムを回収するための吸着工程に基づくすべての方法の欠点は、結合した金属の触媒活性の完全な喪失である。ヒドロホルミル化触媒としての再度の使用に関しては煩雑であり、かつコストのかかる冶金的後処理が不可欠である。これに関して、増加した資本的拘束が生じる。
【0015】
ナノ濾過に基づくすべての膜分離の欠点は、この分離を基本的には完全にすることができないといった事実である。この欠点は、多段階方法の使用によって生じるものであり、したがって、とどまるロジウム量に関連して極めて多くの工程数を含むことによって、投資コストおよび操作コストが増加する。
【0016】
本発明の技術的課題は、遷移金属ベースの均一系触媒を濃縮するための方法を提供することであり、この際、触媒系は、その活性を維持しながら濃縮されるか、あるいは分離することができる。本発明による方法は、触媒系に関して高い保持レベルを示し、かつ可能な限りその分解を回避する。
【0017】
この技術的課題は、遷移金属および/または触媒作用を有する遷移金属の錯化合物を、反応混合物から、少なくとも一段階の膜分離工程及び吸着工程の組合せによって分離し、かつ部分的に返送する方法によって解決され、その際、遷移金属を含む触媒含有流は、少なくとも1個の一段階の膜分離工程、特にナノ濾過工程を介して反応混合物に再供給される遷移金属に富む保持流と、遷移金属の減少した透過流とに分配され、かつ、さらにこの遷移金属の少ない透過流を吸着工程に連行する。
【0018】
ナノ濾過を含む膜分離工程と吸着工程との本発明により組合せは有利である。ナノ濾過を用いて、生成物流および排出流のロジウムの大部分がプロセス中に保持される。ナノ濾過の透過流から残りのロジウムを回収するためには、灰化可能な吸着装置上での吸着が適している。
【0019】
遷移金属、特にロジウムは、ナノ濾過の透過流から:
i)リガンドと結合させることができるか、
ii)部分的にリガンドと結合させることができるか、あるいは、
iii)有機相中に遊離して存在する。
【0020】
プロセス条件は、固体材料不含であることによって特徴付けられるナノ濾過の透過流である。したがって、透過流中には、専ら溶解され、かつ粒子状ではない遷移金属、特にロジウムが存在する。
【0021】
当業者には知られているように、より低い温度の場合に吸着と脱着との比は改善される。この効果は、本発明による方法を用いて、ナノ濾過工程と吸着工程との中間工程中で加熱することによって有利に利用することができ、したがって、遷移金属、特にロジウムの吸着は、熱処理に引き続いて実施される。
【0022】
方法の特別な実施態様において、遷移金属または触媒作用を有する遷移金属の錯化合物の分離および部分的返送は、高沸点成分および触媒系を含有する反応混合物から、1個または複数個の膜を含む膜分離工程を用いて、一段階または多段階で実施し、この場合、金属成分は少なくとも60質量%保持流中にとどまる。この膜分離工程の透過流は、後続の吸着工程中で後処理され、この際、連行された金属成分は吸着剤によって少なくとも60%とどまる。本発明の範囲内の高沸点成分とは、第一のヒドロホルミル化生成物(使用されたオレフィンよりも多くのC−原子を有するアルデヒドおよび/またはアルコール)よりも高い温度で沸騰し、かつ高いモル質量を示し、かつヒドロホルミル化中で生じる物質である。これに関して、アルドール化生成物およびアセタール化生成物、エーテル及びエステルが挙げられ、この場合、これはアルコールと酸との反応によって生じ、この際、アルコールおよび酸は不均化反応によってアルデヒドから形成されるものである。ヒドロホルミル化からのプロセス流中に存在する高沸点成分は、一般に0.1MPaで55℃を上回る沸点を有する。
【0023】
膜分離工程中の分離は、200〜2000g/molの分離限界で、40〜150℃の温度範囲で、かつ0.5〜7.0MPaの膜内外圧力差で実施する。膜分離工程の透過流を、吸着工程に連行し、かつ吸着を30〜140℃の温度および0.01〜5l/hの空間負荷量(Raumbelastungen)で実施する。好ましくは、吸着剤を固定床として使用する。
【0024】
吸着剤として、特に活性炭が表面に富むポリケイ酸、たとえばシリカゲル(珪石−キセロゲル)、高分散シリカ、表面冨化アルミナおよびアルミナ水和物、使用済みまたは新鮮な(水素化)触媒を使用することができる。
【0025】
特に有利な吸着媒として、化学的に変性されたシリカ材料を示すことができ、これはたとえばWO 2006013060 A1中に開示されている。このような吸着剤は、商標名メルカプトアルキル変性シリカ(タイプRh H3、バッチ番号09-S26-001、PhosphonicS Ltd社、114 Milton Park, Abingdon, OXON, 0X14 4SA、英国)で入手可能である。
【0026】
膜分離工程は、1個の膜、2個またはそれ以上の膜の使用下であるか、あるいは、1個、2個またはそれ以上の膜分離工程の使用下で実施することができる。本発明による方法において、特に2個またはそれ以上の膜分離工程を実施することができる。膜分離工程は、直列的に実施することができる。直列運転は、保持流または透過流、特に第1膜分離工程の透過流を、さらなる膜分離工程中に供給流として導くことによって実施することができる。本発明による第1膜分離工程に場合によっては引き続く膜分離工程もまた、第1工程と同様の条件下で実施することができる。膜分離工程において、1個の膜または複数個の膜を使用することができる。好ましくは、1個の膜分離工程において、2個またはそれ以上の膜を使用する。
【0027】
多段階膜分離工程の場合には、膜分離工程において、異なる分離限界および/または透過能力を有する膜を使用することが有利であってもよい。
【0028】
本発明による方法において、その化学的および/または物理的性質に基づいて適した膜を使用することができ、これは、金属−錯体触媒および/または遊離有機燐−リガンドを、特に、少なくとも60質量%のレベルでとどめるものである。膜の使用性のためのさらなる前提条件は、膜が、ヒドロホルミル化反応混合物中に存在するすべての化合物に対して、特に溶剤に対して安定でなければならないことからなる。
【0029】
特に、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、硝酸セルロース、再生セルロース、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリベンスイミダゾール、ポリベンズイミダゾロン、ポリアクリルニトリル、ポリアリールエーテルスルホン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、アクリロニトリル/グリシジルメタクリレート(PANGMA)、シランで疎水化されたセラミック膜、たとえばDE 103 08 111に記載されたもの、固有ミクロ多孔性ポリマー(PIM)等、たとえばEP 0781 166および"Membranes"、I. Cabasso、Encyclopedia of Polymer Sience and Technlogy、John Wiley and Sons、New York、1987に記載されたもの、からなる群から選択された材料からの分離活性層を有する膜を使用する。
【0030】
特に好ましくは、分離活性層として、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、アクリロニトリル/グリシジルメタクリレート(PANGMA)、ポリアミド(PA)またはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)からなるポリマー層を有する膜を使用し、この場合、この層は、固有ミクロ多孔性ポリマー(PIM)から成るか、あるいは、この際、分離活性層が、疎水化されたセラミック膜の上に構築される。特に好ましくは、シリコーンまたはポリアミドイミドから成る膜を使用する。このような膜は、商業的に入手可能である。前記材料の他に、膜はさらなる材料を有していてもよい。特に、膜は、保護材料または担体材料を有していてもよく、これは、分離活性層上に施与される。このような結合膜の場合には、本来の膜の他になおも保護材料が存在する。保護材料の選択は、EP 0 781 166に記載されており、ここで例証されている。さらに、本発明によって使用可能な膜において、補強材料が存在していてもよく、これは、たとえば無機酸化物または無機繊維、たとえばセラミック繊維またはガラス繊維の粒子であり、この場合、これは膜の安定性、特に圧力変動または高い圧力差に対する膜の安定性を増加させるものである。
【0031】
吸着工程は、1個または複数個の回分容器または好ましくは1個または複数個の固定床中で実施することができる。これに関して、複数個の回分容器および/または固定床を使用する場合には、並列または直列につないで実施することができる。
【0032】
吸着工程の分離能力は、吸着工程前に溶出液を返送することによって高めることができる。
【0033】
有利には、活性炭を吸着剤として使用する。一方で、活性炭はコスト削減的であり、かつ大量に使用可能である。他方で、吸着された金属の回収は、負荷された活性炭の灰化によって実施することができる。使用が見出された活性炭のための例は、商業的に入手可能であって、第1表に示されている:
【表1】

【0034】
糖価およびヨウ素量は、活性炭の吸着挙動を示すために一般に認められている分析的パラメータである。詳細については、たとえばEP 1 280 593 B1またはDE 34 18 150 A1中で見出される。
【0035】
代替的に、吸着媒として化学的に変性されたシリカ材料を使用することができ、これは、商品名メルカプトアルキル変性シリカ(タイプRh H3、バッチ番号09-S26-001、供給元 PhosphonicS Ltd、114 Milton Park、Abingdon, OXON, 0X14 4SA、英国)として入手可能である。この材料は、WO 2006013060 A1中に詳細に記載されている。これは、当該刊行物の開示内容に関連する範囲内で選択される。
【0036】
触媒的作用を有する錯化合物に応じて、膜分離工程の遷移金属の減少した流を中間容器中に有利に留めることができ、それによって、遷移金属またはその触媒作用を有する錯化合物が良好に吸着可能な種に変換される。場合によっては、リガントのさらなる添加は、吸着能力に有利に作用しうる。
【0037】
図1によれば、ヒドロホルミル化反応成分、オレフィンおよび合成ガス(1)を、反応器(R)に連行する。反応器中に予め装入された触媒的に作用する錯化合物の存在下で、オレフィンのアルデヒドへのヒドロホルミル化が生じる。アルデヒド、さらには副生成物および二次的生成物、特に高沸点成分、たとえばアルドール縮合生成物、未変換反応成分ならびに触媒作用を有する錯化合物を、反応混合物として反応器から取り出し(2)、かつ、膜分離工程(M)に連行する。この際、保持側(5)で遷移金属および触媒作用を有する遷移金属の錯化合物の濃縮および透過側(3)で枯渇が生じる。遷移金属または触媒作用を有する遷移金属の錯化合物が減少した流(3)を吸着工程(A)に連行し、この工程からさらに遷移金属または触媒作用を有する遷移金属の錯化合物が減少した流(4)を排出する。
【0038】
ヒドロホルミル化生成物であるアルデヒドからの高沸点成分の直接的な分離が不可欠である場合には、図2に好ましいプロセス回路を示す。ヒドロホルミル化反応成分、オレフィンおよび合成ガス(1)を反応器(R)に連行する。反応器中に予め装入された触媒作用を有する錯化合物の存在下で、オレフィンのアルデヒドへのヒドロホルミル化が生じる。アルデヒド、さらには副生成物および二次的生成物、特に高沸点成分、たとえばアルドール縮合生成物、未変換反応成分ならびに遷移金属および触媒作用を有する遷移金属の錯化合物を、反応混合物として反応器から排出し(2)、かつ、熱分離工程(D)に連行する。熱分離工程中で、反応混合物(2)を、より高い沸点を有する成分の流、たとえばこの成分は、前記に示した反応副生成物ならびに遷移金属および/または触媒作用を有する遷移金属の錯化合物に富む流(3)と、低沸点の主にアルデヒドを含む生成物流(6)とに分離する。高沸点成分流(3)を、選択的に膜分離工程(M)に連行する。この際、保持側(7)で遷移金属またはその触媒作用を有する錯化合物の濃縮および透過側(4)で枯渇が生じる。遷移金属または触媒作用を有する錯化合物が減少した流(4)を、吸着工程(A)に連行し、この吸着工程から遷移金属または触媒作用を有する錯化合物が減少したさらなる流(5)を排出する。
【0039】
特にロジウムおよびその触媒作用を有する錯化合物を、ヒドロホルミル化プロセスの反応混合物から、膜分離工程および吸着工程の組合せによって分離および部分的に回収するための本発明による方法を、以下に、C12−含有オレフィン混合物のロジウム錯体−触媒ヒドロホルミル化に関して例示的に記載する。
【0040】
本発明のこの対象は、たとえばEP 1 515 934 B1に示すようなトリデカナールおよびトリデカノールを含有する混合物の製造の際における、本発明による方法の使用であり、この際、ロジウム含有触媒複合体の分離は、以下の工程:
a)ヒドロホルミル化反応混合物からのトリデカナールおよびトリデカノールを含有する生成物の混合物の熱分離;
b)少なくとも1個の膜で実施する少なくとも一段階の膜分離工程、その結果、使用されたロジウムの少なくとも60質量%が保持流中にとどまり;
c)得られた透過流の後続の吸着工程への供給、その結果、透過流中に含まれるロジウムの少なくとも60質量%がとどまり;
d)工程b)からの濃縮されたロジウム含有触媒複合体を有する保持流のヒドロホルミル化反応への返送;
を含む。
【0041】
本発明による方法の膜分離工程は、1.5MPaを上回る膜内外圧力差で実施する場合に有利である。より高い膜内外圧力差は、一方で、遷移金属またはその触媒作用を有する錯化合物の増加した保持量を導き、かつ、他方で、使用された膜表面毎の増加した透過流を導く。
【0042】
また更なる詳説なしにも、当業者であれば、上記説明を最も広い範囲で利用することができると考えられる。したがって、この有利な実施形態及び実施例は、単に説明するもので、限定する開示として把握されるべきでない。以下に、本発明を実施例に基づき詳説する。本発明の代替的な実施形態は、同様の方法で得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明による方法の好ましい実施形態を示す概略図
【図2】本発明による方法の好ましい実施形態を示す概略図
【図3】本発明による方法の膜分離工程におけるロジウム量を示すグラフ図
【図4】本発明による方法の吸着工程におけるロジウム量を示すグラフ図
【図5】本発明による方法の吸着工程におけるロジウム量を示すグラフ図
【図6】サイクル数増加との関係におけるロジウム濃度の変化を示すグラフ図
【図7】本発明による例2の試験を示す概略図
【図8】膜内外圧差とロジウム保持量との関係を示すグラフ図
【0044】

本発明による例1
例として、図2による分離形態を採用した。反応は、たとえばEP 1 515 934 B1に記載されている、C12−含有オレフィン混合物のロジウム−ホスフィット−触媒ヒドロホルミル化である。使用されたロジウム前駆体は、ロジウムアセチルアセトナトジカルボニルおよび使用されたリガンドはトリス(2,4−ジ−tert−ブチル−フェニル)ホスフィットである。ロジウム濃度は、反応混合物に対して10mg/kgである。リガンドとロジウムとの比は20:1である。トリデカナールからのアルデヒド混合物、さらに副生成物および二次生成物、特に高沸点成分、たとえばアルドール縮合生成物、未変換反応成分ならびにロジウムまたは触媒作用を有するその錯化合物を、熱分離工程に連行する。高沸点成分およびロジウムまたは触媒作用を有する錯化合物を含み(約100ppm)、濃縮された塔底生成物は、組み合わされた膜分離工程および吸着工程に連行される。高沸点成分の割合は50質量%を上回る。活性触媒種と高沸点成分とのモル質量差は、500g/モルを下回る。典型的に、一段階の膜分離工程を用いて、放射化学的に変性されたシリコーン複合材料膜(Lieferant社、GMT、タイプoNF2)、たとえばDE 195 07 584 C2に記載されたものを用いて80℃の温度で、2.0MPaの膜内外圧力差で、かつ1.7m/sの膜の貫流(Uberstroemung)で、高沸点成分流からの触媒が60質量%を上回ってとどまることを示すことができる(図3)。
【0045】
透過流中に残る触媒量を、約0.1m/(mh)の空間負荷量で、614gの粒状活性炭(供給元Fluka社、粒状活性炭(高純度)、製品18002、識別番号52980)から成る1mの高さの活性炭粉粒体上に導き、この際、さらに85〜99質量%の触媒がとどまった。この試験において、1.5mg/kgを上回るロジウムでの活性炭の負荷量が達成された(図4参照)。
【0046】
このようにして得られたロジウムが減少した溶出液を、約0.1m/(mh)の空間負荷量で、さらなる614gの粒状活性炭(同品質)からなる1mの高さの活性炭粉粒体上に導き、その結果、ロジウム量はさらに50〜80%だけ減少した(図5参照)。
【0047】
本発明による例2
この例において、いくつかの他の商業的に入手可能な型の活性炭(第1表参照)に、図7にしたがって回分容器(V)から前記実施例と同様にして得られた透過流を、流1として適用した。それぞれ60gの活性炭を1m/(mh)の空間負荷量で使用した。ここで生じた溶出液、流2は複数回に亘って活性炭粉粒体A上に再循環させ、この際、溶出液中のロジウム濃度はサイクル数の増加に伴って、顕著に減少した(図6)。
【0048】
前記活性炭粉粒体で、前記供給流のための溶出液中の少ないロジウム濃度は、好ましくは溶出液の再循環を含む回分操作によって達成することができる。
【0049】
本発明による例3
例1と同様にして得られた塔底流を、膜分離工程中で種々の膜内外圧力差(1MPa、2MPa、3MPa、3.7MPa)で、放射化学的に変性されたシリコーン複合材料膜(供給元GMT社、タイプoNF2)上に導いた。ここで、図8によれば顕著に改善されたロジウム保持率が高い膜内外圧力差でもたらされた。
【0050】
本発明による例4
さらなる本発明による例において、例1にしたがって生じた透過流を:
Aの場合には直接的に、かつ、
Bの場合には90℃で24時間に亘っての予めの加熱を伴って、60gの活性炭粉粒体を介して1m/(mh)の空間負荷量および100℃の粉粒体温度で、シングルパスで導いた。40mg/kgのロジウムを含有する透過流は、Aの場合には14mg/kgおよびBの場合には6mg/kgに減少した。
【0051】
本発明による例5
例1にしたがって得られた高沸点成分およびロジウム−錯体触媒に富む塔底生成物を、例1と同様に運転される二段階膜濾過工程に導いた。ここで、ロジウム−保持率は90%前後を達成した。すでにロジウムが減少した透過流を、70℃の温度で0.5m/(m/h)の空間負荷量で、化学的に変性したシリカ材料(メルカプロアルキル変性シリカ、タイプRh H3、バッチ番号09-S26-001、PhosphonicS社)の床上に連行した。溶出液中のロジウム濃度は0.5ppmを下回った。これは、全部で99%を上回るロジウム保持率に相当する。
【符号の説明】
【0052】
R 反応器、 M 膜分離工程、 A 吸着工程、 D 熱分離、 1 オレフィンおよび合成ガス、 2 反応混合物、 3 透過側(図1)または遷移金属に富む流(図2)、 4 遷移金属が減少した流(図1)または透過側(図2)、 5 保持側(図1)または遷移金属が減少した流(図2)、 6 アルデヒドを含む流、 7 保持側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一段階の膜分離と吸着とを組み合わせることによって、反応混合物から遷移金属および/または触媒作用を有する遷移金属錯化合物を分離し、かつ部分的に返送する方法において、遷移金属を含む触媒含有流を、少なくとも1個の一段階の膜分離工程を介して、反応混合物に再度供給される遷移金属に富む保持流と、遷移金属が減少した透過流とに分配し、かつさらにこの遷移金属が減少した透過流を吸着工程に連行することを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
遷移金属がロジウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも60質量%のロジウムが、膜分離工程により保持流中にとどまる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
膜分離工程後の透過流の少なくとも60%のロジウムが、吸着により分離される、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
200〜2000g/モルの範囲の分離限界を有する膜分離工程を行う、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
膜分離工程を、40〜150℃の温度範囲で行う、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
膜分離工程を、0.5〜7MPaの膜内外圧力差の範囲で行う、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
吸着工程を活性炭上で行う、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
吸着媒として、化学的に変性されたシリカ材料を使用する、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
粉粒体としての吸着媒に貫流させる、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
吸着工程の溶出液を吸着媒上に返送する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
吸着工程を、30〜140℃の温度範囲で行う、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
吸着工程を、0.01〜5l/hの範囲の空間負荷量で行う、請求項1から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
吸着工程を固定床中で行う、請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
トリデカナールおよびトリデカノールを含有する混合物を製造するための、請求項1から14までのいずれか1項に記載の方法において、ロジウム含有触媒錯体の分離が、以下の工程:
a)ヒドロホルミル化の反応混合物からのトリデカナールおよびトリデカノールを含有する生成物混合物の熱分離;
b)少なくとも1個の膜で行われる少なくとも一段階の膜分離、その結果、使用されたロジウムの少なくとも60質量%が保持流中にとどまり;
c)得られた透過流の後続の吸着工程への供給、その結果、透過流中に含まれるロジウムの少なくとも60質量%がとどまり;
d)工程b)からの濃縮されたロジウム含有触媒錯体を含む保持流のヒドロホルミル化反応への返送、
を含む、前記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−519062(P2012−519062A)
【公表日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−551489(P2011−551489)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際出願番号】PCT/EP2010/052390
【国際公開番号】WO2010/097428
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(398054432)エボニック オクセノ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (63)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Oxeno GmbH
【住所又は居所原語表記】Paul−Baumann−Strasse 1, D−45764 Marl, Germany
【Fターム(参考)】