説明

ロータリキルンにおける回転体の周長計測装置

【課題】ロータリキルンを停止させること無くタイヤ等回転体の外周長さを検出することができる計測装置を提供する。
【解決手段】ロータリキルンにおける回転体の周長を測定する装置であって、ストライカ16と近接センサ14によりタイヤ62の回転数を検出する回転検出部12と、タイヤ62の外周に転がり接触する周長測定用ローラ22と周長測定用ローラ22の回転角度を検出する回転角度検出器24とを有する周長測定部20と、回転検出部12と周長測定部20の稼動を制御し、回転検出部12によって検出された回転数と周長測定部20によって検出された回転角度、および周長測定用ローラ22の周長に基づいて、タイヤ62の周長および外径、または周長および外径のいずれか一方を算出する演算部を備えた制御部40とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント製造や廃棄物処理、各種原料の精錬などに用いられるロータリキルンに係り、特にロータリキルンを構成する回転体の周長を計測するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロータリキルンは図3に示すように、回転炉となる胴体2と、ガースギア3、ピニオンギア4、タイヤ5、ローラ6とを基本として構成される。ガースギア3は、胴体2を回転駆動させるためのギアであり、胴体2の外周であって任意の位置に設けられる。ピニオンギア4は、モータなどの駆動源7からの動力をガースギア3に伝達するためのギアである。
【0003】
タイヤ5は、胴体2の外周に設けられ、胴体2を支持するローラ6との接点を成す。胴体2は、その半径を約1.5〜3m、長さを約40〜120mとする長尺物である。このためタイヤ5は胴体2の複数個所に配置される。ローラ6は、2個一対として各タイヤ5の下部に配置されて胴体2を支持する役割を担う。
【0004】
このような構成のロータリキルン1では、胴体2に設けられたタイヤ5とこれを支持するローラ6との間に継続的な負荷が長期に亙って繰り返し付加されるため、摩耗や経年劣化により胴体2の落ち込みやローラ6の片当たりなどが生ずることがある。胴体2は上述したように長尺な重量物であるため、局所的な落ち込みや片当たりが生じた場合には胴体2自体に歪みが生じてしまう。また、全体的な落ち込みが生じた場合には、ガースギア3とピニオンギア4との噛み合いが深くなり、駆動に支障を来たすこととなってしまう。
【0005】
このような胴体2の歪み、駆動の支障を防止するために、胴体2の落ち込み等が生じた場合には、落ち込み部を支持するローラ6の軸間距離を縮めることで胴体2の高さを調整する必要がある。しかし、胴体2の落ち込み、すなわちタイヤ5等に対する摩耗が生じたか否かは従来、ロータリキルン1の稼動を停止させて点検を行うことにより初めて知ることができるものである。また、胴体2の摩耗は、直径数mもある胴体2の外周長さを作業員の手によって測定し、これを直径に換算することで知ることができる値であり、その手間と作業性の悪さ、及びロータリキルン1を停止させる事による生産性の悪化などが問題視されてきた。
【0006】
特許文献1には、タイヤとローラとの接触状態の変化から生ずる荷重変化に基づき、ローラの接触面を変化させることでローラによる胴体の支持状態の改善を図る手段が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−218141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示されている手段によれば、ローラに負荷される荷重の分散が図られることより、タイヤがローラに対して片当たりすることによる胴体の破損等は避けることができるようになると考えられる。
【0009】
しかし、特許文献1に開示されている手段はローラに負荷される荷重の変化を補正するものであるため、ローラやタイヤの減り、およびタイヤの外周振れなどを検出することはできない。このため結果として、胴体の一部や全体に落ち込みが生じた場合であってもそれを検知することができず。これによって胴体に歪みや破損が生ずる虞がある。
そこで本発明では、ロータリキルンを停止させること無くタイヤ等回転体の外周長さを検出することができる計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係るロータリキルンにおける回転体の周長測定装置は、ロータリキルンにおける回転体の周長を測定する装置であって、ストライカとセンサにより前記回転体の回転数を検出する回転検出部と、前記回転体の外周に転がり接触する周長測定用ローラと前記周長測定用ローラの回転角度を検出する回転角度検出器とを有する周長測定部と、前記回転検出部と前記周長測定部の稼動を制御し、前記回転検出部によって検出された回転数と前記周長測定部によって検出された回転角度、および前記周長測定用ローラの周長に基づいて、前記回転体の周長および外径、または周長および外径のいずれか一方を算出する演算部を備えた制御部とを有することを特徴とする。
【0011】
また、上記特徴を有する回転体の周長測定装置では、前記回転体の外周面における凹凸を検出する振れ検出手段を備えるようにすることが望ましい。
このような構成とすることにより、回転体の周長計測と共に、回転体の外周振れの検出も行うことができる。
【0012】
また、上記のような特徴を有する回転体の周長測定装置では、前記振れ検出手段は、前記周長測定部に統合配置すると良い。
このような構成とすることにより、装置の小型化、設置スペースの縮小を図ることができる。
【発明の効果】
【0013】
上記特徴を有するロータリキルンにおける回転体の周長測定装置によれば、ロータリキルンを停止させること無くタイヤ等回転体の外周長さを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態に係るロータリキルンにおける回転体の周長測定装置の構成を示すブロック図である。
【図2】振れ検出手段を備える周長測定部におけるロッドの部分拡大図である。
【図3】ロータリキルンの基本構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のロータリキルンにおける回転体の周長計測装置に係る実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
まず、図1を参照して、計測対象の回転体として胴体60に外嵌されたタイヤ62を例に挙げて説明する。本実施形態に係る回転体の周長計測装置(以下、単に計測装置10と称す)は、回転検出部12と周長測定部20、および制御部40を基本として構成される。
【0016】
回転検出部12は、近接センサ14とストライカ16を基本として構成される。近接センサ14は非接触でストライカ16の接近を検出するセンサであり、タイヤ62の側面に検出面を向けて配置される。近接センサ14を固定する手段は特に限定するものでは無いが、例えばマグネットベース18などにより固定物に張り付けられる構成とすれば良い。ストライカ16は、近接センサ14による検出対象物である。胴体60が周回する毎に近接センサ14のセンサ面を通過するように、タイヤ62の側面に張り付けられる。ストライカ16の貼付手段としては、タイヤ62の素材が磁性体である場合にはマグネット、非磁性体の場合には粘着テープなどを用いれば良い。このような構成の回転検出部12によれば、近接センサ14により検出されたストライカ16が、周回して再び検出されることにより胴体60が1周したことを認識することができる。
【0017】
周長測定部20は、周長測定用ローラ22と、回転角度検出器24を基本として構成され、本実施形態の場合には振れ検出手段26を備える構成としている。周長測定用ローラ22は、タイヤ62の外周に接触してタイヤ62に連れ回りするローラである。回転角度検出器24は、周長測定用ローラ22の回転角度をパルスとして検出するセンサであり、1回転、すなわち360度間における出力パルスの数が多いほど(分解能が高いほど)、測定長さの精度を上げることができる。
【0018】
例えば2000パルス/1回転の分解能の回転角度検出器24を使用した場合、周長測定用ローラ22の外周長さの2000分の1の距離まで計測することができることとなる。周長測定用ローラ22の外周長さは既知であるため、タイヤ62が1周する間に周長測定用ローラ22が何周(何度)回転したかを検出することにより、タイヤ62の外周長さ(周長)を測定することができるようになる。
【0019】
振れ検出手段26は、周長測定用ローラ22の上下動を検出することで、計測対象としたタイヤ62の外周の歪みを検出するというものであり、その構成は特に限定するものでは無いが、例えば次のような構成とすれば良い。振れ検出手段26は周長測定用ローラ22及び回転角度検出器24を支持するロッド36上に配置された固定板30と可動板28、バネ32、及びレーザ変位計34とを有する。周長測定用ローラ22を支えるロッド36は図2に示すように、周長測定用ローラ22に接続された上部片36aと、位置固定を行うマグネットベース38に接続された下部片36bとに分割されており、分割面の径を異ならせることにより上部片36aの下端部を下部片36bの上端部へ収めることを可能な構成とされている。このためロッド36は、収容部分を摺動させることにより全長を伸縮させることが可能となる。
【0020】
固定板30と可動板28はこのようなロッド36に対し、下部片36bに固定板30が、上部片36aに可動板28がそれぞれ設けられ、固定板30と可動板28の間にバネ32が配置される。バネ32は例えば弦巻バネであれば良く、可動板28を固定板30から押し上げると共に周長測定用ローラ22をタイヤ62の外周面に押し当てる作用を担う。
【0021】
レーザ変位計34は、レーザ照射面を可動板28に向けるようにして、固定板30に配置される。このような配置形態によれば、タイヤ62の外周振れにより周長測定用ローラ22が押し戻されたり、周長測定用ローラ22の押し込み量が増した場合に周長測定用ローラ22の揺動に従って変化する可動板28と固定板30との間の距離を検出することで、タイヤ62の外周面の凹凸を検知することができる。
【0022】
制御部40は、シーケンサ42と表示器44を基本として構成される。シーケンサ42は、各種電子機器の信号制御を行う役割を担い、制御対象機器として、上述した近接センサ14、回転角度検出器24、及びレーザ変位計34が接続されている。表示機は本実施形態の場合、入力手段と表示手段の役割を担い、前述したシーケンサ42に接続されている。入力手段とは各種制御命令を入力する手段であり、例えば表示器44における表示画面46をタッチパネル形式とし、表示画面46に表示される制御機器、あるいは制御プログラムの選択により、シーケンサ42を介した近接センサ14、回転角度検出器24、及びレーザ変位計34の制御を行ったり、表示画面46に表示される情報の切り替えを行ったりする。表示画面46に表示される情報としては例えば、測定物であるタイヤ62が1回転する間に回転角度検出器24により検出されるパルス数、このパルス数と周長測定用ローラ22の周長とに基づいて算出されるタイヤ62の周長や直径、およびレーザ変位計34により検出される外周振れなどである。なお制御部40は、計測装置10全体の電力を賄う電源部50に接続されている。
【0023】
このような構成の計測装置10では、表示器44の表示画面46を介して計測プログラムが起動されると、シーケンサ42を介して近接センサ14、回転角度検出器24、およびレーザ変位計34のON、OFF制御が開始される。具体的には、計測プログラムの起動信号が出力されるとまず、近接センサ14が起動される。計測対象としてのタイヤ62が回転することにより、近接センサ14がストライカ16を捕らえると、シーケンサ42に対してその旨の信号が送信される。近接センサ14がストライカ16を捕らえた旨の信号を受けたシーケンサ42は、回転角度検出器24とレーザ変位計34を起動させ、周長の計測と外周振れの計測が開始される。回転角度検出器24とレーザ変位計34から出力される信号(パルス)は、シーケンサ42を介して表示器44内に設けられた演算部(不図示)に送信されてカウントが成される。
【0024】
タイヤ62の回転により、ストライカ16が1周し、近接センサ14が再びストライカ16を捕らえた旨の信号をシーケンサ42に送信することにより、シーケンサ42は回転角度検出器24とレーザ変位計34による計測を停止させ、近接センサ14も停止させると共に、表示器44の演算部に対して計測終了信号を出力する。
【0025】
計測終了を受けた演算部は、カウントしたパルス数と回転角度検出器24の分解能、および周長測定用ローラ22の周長(直径)に基づいてタイヤ62の周長、および直径、またはそのいずれか一方を算出すると共に、計測開始から計測終了に至るまでにおけるレーザ変位計34による計測値を表示画面46に表示する。なお、各種データの表示は、1画面(1ページ)に複数表示させるようにしても良く、複数画面(複数ページ)に表示されたデータを順次切り換えて表示するようにしても良い。
【0026】
このような構成の計測装置10によれば、ロータリキルンを停止させること無くタイヤ62の外周長さや外周振れを検出することができる。これにより、ロータリキルンの可動効率の向上を図ることができる。また、ロータリキルンを停止させることなく簡易に測定を行うことができるため、比較的短い間隔で定期測定を行うことが可能となり、ロータリキルンの破損や不具合の危険性を事前に検知することが可能となる。
【0027】
上記のような計測装置10では制御部40として、シーケンサ42と表示器44に替えてパーソナルコンピュータ(不図示)を接続するようにしても良い。このような構成とすることにより、各種計測値をハードディスクやメモリ等の記憶手段に記憶することができるようになる。
【0028】
計測値を記憶可能とすることにより、回転角度検出器24やレーザ変位計34による計測値を、ストライカ検知信号毎にリセットし、連続的に周長や外周振れを計測し続けることが可能となる。
【0029】
また、計測データに基づき、基準円に対する外周振れの状態を作図し、これを表示するようにプリグラムすることもできる。これにより、経年的にタイヤ62のどの部分に変形が生じ易いのか、あるいは胴体のどの部分の負荷が大きいのかといった情報を得ることが容易となる。
【0030】
なお、上記実施形態では計測対象の回転体として胴体60に外嵌されたタイヤ62を例に挙げて説明した。しかしながらタイヤ62を支持するローラや、回転する胴体60自体を計測対象とした場合であっても、本発明に係る計測装置10を用いることができる。
【0031】
また、上記実施形態では振れ検出手段26は周長測定部20に備える構成とした。しかし振れ検出手段26は、周長測定部20とは独立して設けるようにしても良い。具体的には、レーザ変位計34のレーザ照射面を直接、回転体の外周面に照射するというものである。また、上記実施形態では振れ検出手段26の変位計として、非接触のレーザ変位計34を用いる旨記載した。しかしながら変位計としては、差動トランス形式などを用いた接触式の変位計であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、回転体であればその外径の大小に係わらず、周長や外周振れ、および直径等を計測することができる。
【符号の説明】
【0033】
10………計測装置(回転体の周長計測装置)、12………回転検出部、14………近接センサ、16………ストライカ、18………マグネットベース、20………周長測定部、22………周長測定用ローラ、24………回転角度検出器、26………振れ検出手段、28………可動板、30………固定板、32………バネ、34………レーザ変位計、36………ロッド、36a………上部片、36b………下部片、38………マグネットベース、40………制御部、42………シーケンサ、44………表示器、46………表示画面、50………電源部、60………胴体、62………タイヤ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータリキルンにおける回転体の周長を測定する装置であって、
ストライカとセンサにより前記回転体の回転数を検出する回転検出部と、
前記回転体の外周に転がり接触する周長測定用ローラと前記周長測定用ローラの回転角度を検出する回転角度検出器とを有する周長測定部と、
前記回転検出部と前記周長測定部の稼動を制御し、前記回転検出部によって検出された回転数と前記周長測定部によって検出された回転角度、および前記周長測定用ローラの周長に基づいて、前記回転体の周長および外径、または周長および外径のいずれか一方を算出する演算部を備えた制御部とを有することを特徴とするロータリキルンにおける回転体の周長測定装置。
【請求項2】
前記回転体の外周面における凹凸を検出する振れ検出手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載のロータリキルンにおける回転体の周長測定装置。
【請求項3】
前記振れ検出手段は、前記周長測定部に統合配置したことを特徴とする請求項2に記載のロータリキルンにおける回転体の周長測定装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−21805(P2011−21805A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167017(P2009−167017)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(394010193)宇部テクノエンジ株式会社 (37)
【Fターム(参考)】