説明

不揮発性半導体記憶装置

【課題】読み出し時のセル電流を増大させる揮発性半導体記憶装置を提供する。
【解決手段】メモリストリングMSは、基板Baに対して垂直方向に延びるメモリ柱状半導体層35と、メモリ柱状半導体層35の側面を取り囲むように形成された電荷蓄積層34bと、電荷蓄積層34bの側面を取り囲むように形成され、メモリトランジスタMTr1〜MTr4の制御電極として機能するワード線導電層31a〜31dとを備える。ワード線導電層31a〜31dは、その間に誘電体を挟んで前記垂直方向に所定間隔Lをもって設けられている。誘電体は、酸化シリコンの比誘電率よりも小さい比誘電率を有する空気にて構成されている。所定間隔Lは、空気の等価酸化膜厚DEOTが、次の関係式[数1]を満たすように設定されている。
[数1]
sio2<DEOT<D

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的にデータの書き換えが可能な不揮発性半導体記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコン基板上の2次元平面内に素子を集積して、LSIが形成されてきた。メモリの記憶容量を増加させるには、一素子の寸法を小さくする(微細化する)のが一般的だが、近年その微細化もコスト的、技術的に困難なものになってきた。微細化のためにはフォトリソグラフィの技術向上が必要であるが、リソグラフィ工程に要するコストは増加の一途を辿っている。また、仮に微細化が達成されたとしても、駆動電圧などがスケーリングされない限り、素子間の耐圧など物理的な限界点を迎える事が予想される。つまり、デバイスとしての動作が困難になる可能性が高い。
【0003】
そこで、近年、メモリの集積度を高めるために、メモリセルを3次元的に配置した半導体記憶装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
メモリセルを3次元的に配置した従来の半導体記憶装置の一つに、円柱型構造のトランジスタを用いた半導体記憶装置がある(特許文献1)。円柱型構造のトランジスタを用いた半導体記憶装置においては、ゲート電極となる多層の導電層、及びピラー状の柱状半導体層が設けられる。導電層の上下には、酸化シリコン(SiO)にて構成された層間絶縁層が設けられる。柱状半導体層は、トランジスタのチャネル(ボディ)部として機能する。柱状半導体層の周りには、メモリゲート絶縁層が設けられる。これら導電層、柱状半導体層、メモリゲート絶縁層を含む構成は、メモリストリングと呼ばれる。
【0005】
しかしながら、メモリストリングにおいて、柱状半導体層は、不純物をほとんど含まない多結晶シリコンにて構成されている。これにより、導電層からの漏れ電場を利用したとしても、柱状半導体層は、所望とする抵抗値に下げることは困難である。すなわち、従来、読み出し時の電流が少ないという問題がある。
【0006】
そこで、導電層の間の層間絶縁層の膜厚を薄くし、柱状半導体層の抵抗値を下げようとすると、メモリの書き込み時、層間絶縁層の耐圧がもたないという問題が生じる。つまり、層間絶縁層の耐圧を確保しつつ、読み出し時のセル電流を増大させる技術が、望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−266143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、読み出し時のセル電流を増大させる不揮発性半導体記憶装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る不揮発性半導体記憶装置は、電気的に書き換え可能な複数のメモリセルが直列に接続された複数のメモリストリングを有する不揮発性半導体記憶装置であって、前記メモリストリングは、基板に対して垂直方向に延びる柱状部を有する第1半導体層と、前記第1半導体層の側面を取り囲むように形成された電荷蓄積層と、前記電荷蓄積層の側面を取り囲むように形成され、前記メモリセルの制御電極として機能する複数の第1導電層とを備え、複数の前記第1導電層は、その間に誘電体を挟んで前記垂直方向に所定間隔Lをもって設けられ、前記誘電体は、酸化シリコンの比誘電率よりも小さい比誘電率を有する第1誘電体にて構成され、前記所定間隔Lは、前記第1誘電体の等価酸化膜厚DEOTが、次の関係式[数1]を満たすように設定されていることを特徴とする不揮発性半導体記憶装置。
【0010】
[数1]
sio2<DEOT<D
(ただし、Dsio2は、前記誘電体が酸化シリコンにて構成され、且つその厚さが前記第1導電層に印加される最大電圧に耐えうる最小の厚さとした場合における、酸化シリコンの厚さであり、前記誘電体を酸化シリコンにて構成し、且つその酸化シリコンの膜厚をDsio2とした場合における、前記第1導電層の1層当たりの前記第1半導体層の抵抗値をRsio2と定義すると、Dは、抵抗値Rsio2を与えるような前記第1誘電体の等価酸化膜厚である)
【0011】
本発明の一態様に係る不揮発性半導体記憶装置は、電気的に書き換え可能な複数のメモリセルが直列に接続された複数のメモリストリングを有する不揮発性半導体記憶装置であって、前記メモリストリングは、基板に対して垂直方向に延びる柱状部を有する半導体層と、前記半導体層の側面を取り囲むように形成された第1絶縁層と、前記第1絶縁層の側面を取り囲むように形成された電荷蓄積層と、前記電荷蓄積層の側面を取り囲むように形成された第2絶縁層と、前記第2絶縁層の側面を取り囲むように形成され、前記メモリセルの制御電極として機能する複数の導電層とを備え、前記第2絶縁層の比誘電率は、酸化シリコンの比誘電率よりも高いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、読み出し時のセル電流を増大させる不揮発性半導体記憶装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置100のブロック図である。
【図2】第1実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置の一部の回路図である。
【図3】第1実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置100の一部省略斜視図である。
【図4】第1実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置100の断面図である。
【図5】図4の一部拡大図である。
【図6】第1実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置100の製造工程を示す断面図である。
【図7】第1実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置100の製造工程を示す断面図である。
【図8】第1実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置100の製造工程を示す断面図である。
【図9】第1実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置100の製造工程を示す上面図である。
【図10】第1実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置100の製造工程を示す断面図である。
【図11】第1実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置100の製造工程を示す上面図である。
【図12】第1実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置100の製造工程を示す断面図である。
【図13】第1実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置100の製造工程を示す断面図である。
【図14】第2実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置の断面図である。
【図15】ワード線導電層31a〜31dの間に設ける構成を変えて、ワード線導電層31a〜31dの間の間隔(物理膜厚)と、メモリ柱状半導体層35の一部の抵抗とをプロットした図である。
【図16】図15の横軸であるワード線導電層31a〜31dの間の間隔(物理膜厚)を等価酸化膜厚(EOT)に変換したグラフである。
【図17】ワード線導電層31a〜31dの間に、膜厚35nmの酸化シリコン(SiO)を設けた場合における、電場、及び電界分布を示す図である。
【図18】ワード線導電層31a〜31dの間に、膜厚35nmの窒化シリコン(SiN)を設けた場合における、電場、及び電界分布を示す図である。
【図19】ワード線導電層31a〜31dの間に、膜厚70nmの窒化シリコン(SiN)を設けた場合における、電場、及び電界分布を示す図である。
【図20】ワード線導電層31a〜31dの間に、膜厚35nmの酸化シリコン(SiO)を設け、ブロック絶縁層34aを酸化シリコン(SiO)とした場合における、電場、及び電界分布を示す図である。
【図21】ワード線導電層31a〜31dの間に、膜厚35nmの窒化シリコン(SiO)を設け、ブロック絶縁層34aを酸化アルミニウム(Al)とした場合における、電場、及び電界分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明に係る不揮発性半導体記憶装置の一実施形態について説明する。
【0015】
[第1実施形態]
(第1実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置100の構成)
先ず、図1を参照して、第1実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置100の構成について説明する。図1、第1本発明の実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置100のブロック図である。
【0016】
第1実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置100は、図1に示すように、メモリセルアレイ11、ロウデコーダ12、13、センスアンプ14、カラムデコーダ15、制御信号生成部(高電圧生成部)16を備える。
【0017】
メモリセルアレイ11は、データを電気的に記憶するメモリトランジスタMTrを有する。ロウデコーダ12、13は、取り込まれたブロックアドレス信号及びロウアドレス信号をデコードし、メモリセルアレイ11を制御する。センスアンプ14は、メモリセルアレイ11からデータを読み出す。カラムデコーダ15は、カラムアドレス信号をデコードし、センスアンプ14を制御する。制御信号生成部16は、基準電圧を昇圧させて、書き込みや消去時に必要となる高電圧を生成し、さらに、制御信号を生成し、ロウデコーダ12、13、センスアンプ14、及びカラムデコーダ15を制御する。
【0018】
次に、図2〜図4を参照し、メモリセルアレイ11の積層構造及び回路構成について説明する。図2は、メモリセルアレイ11の概略斜視図である。図3は、図2の拡大図である。図4は、図3の断面図である。以下、積層方向に直交する方向をロウ方向とし、積層方向及びロウ方向に直交する方向をカラム方向とする。なお、図3は、配線間に設けられた層間絶縁層を省略して記載している。
【0019】
メモリセルアレイ11は、図2に示すように、複数のメモリブロックMBを有する。メモリブロックMBは、半導体基板Ba(図示略)上に、カラム方向に配列されている。換言すると、メモリブロックMBは、半導体基板Ba上に所定領域毎に形成されている。
【0020】
メモリブロックMBは、図2に示すように、複数のメモリストリングMS、ソース側選択トランジスタSSTr、及びドレイン側選択トランジスタSDTrを備える。メモリストリングMSは、直列接続されたメモリトランジスタMTr1〜MTr4にて構成されている。ドレイン側選択トランジスタSDTrは、メモリストリングMSの一端(メモリトランジスタMTr4)に接続されている。ソース側選択トランジスタSSTrは、メモリストリングMSの他端(メモリトランジスタMTr1)に接続されている。
【0021】
図2に示すように、メモリブロックMBにおいて、ロウ方向に一列に配列されたメモリトランジスタMTr1の制御ゲートは、ロウ方向に延びるワード線WL1に共通接続されている。同様に、ロウ方向に一列に配列されたメモリトランジスタMTr2の制御ゲートは、ロウ方向に延びるワード線WL2に共通接続されている。ロウ方向に一列に配列されたメモリトランジスタMTr3の制御ゲートは、ロウ方向に延びるワード線WL3に共通接続されている。ロウ方向に一列に配列されたメモリトランジスタMTr4の制御ゲートは、ロウ方向に延びるワード線WL4に共通接続されている。ワード線WL1〜WL4は、各々独立の信号で制御されている。
【0022】
図2に示すように、メモリブロックMBにおいて、ロウ方向に一列に配列された各ドレイン側選択トランジスタSDTrの制御ゲートは、ドレイン側選択ゲート線SGDに共通接続されている。ドレイン側選択ゲート線SGDは、ロウ方向に延びるように形成されている。ドレイン側選択ゲート線SGDは、カラム方向に複数本設けられ、各々独立の信号で制御される。また、カラム方向に配列されたドレイン側選択トランジスタSDTrの他端は、ビット線BLに共通に接続されている。ビット線BLは、メモリブロックMBを跨いでカラム方向に延びるように形成されている。ビット線BLは、ロウ方向に複数本設けられ、各々独立の信号で制御されている。
【0023】
図2に示すように、メモリブロックMBにおいて、ロウ方向に一列に配列された各ソース側選択トランジスタSSTrの制御ゲートは、ソース側選択ゲート線SGSに共通接続されている。ソース側選択ゲート線SGSは、ロウ方向に延びるように形成されている。ソース側選択ゲート線SGSは、カラム方向に複数本設けられ、各々独立の信号で制御されている。また、カラム方向に配列されたソース側選択トランジスタSDTrの他端は、ソースSLに共通に接続されている。
【0024】
上記のようなメモリブロックMBの回路構成は、図3及び図4に示す積層構造により実現されている。各メモリブロックMBは、半導体基板Ba上に順次積層されたソース側選択トランジスタ層20、メモリトランジスタ層30、及びドレイン側選択トランジスタ層40を有する。
【0025】
ソース側選択トランジスタ層20は、ソース側選択トランジスタSSTrとして機能する層である。メモリトランジスタ層30は、メモリストリングMS(メモリトランジスタMTr1〜MTr4)として機能する層である。ドレイン側選択トランジスタ層40は、ドレイン側選択トランジスタSDTrとして機能する層である。
【0026】
半導体基板Baは、図3及び図4に示すように、上面に拡散層Ba1を有する。拡散層Ba1は、ソース線SLとして機能する。
【0027】
ソース側選択トランジスタ層20は、図3及び図4に示すように、半導体基板Ba上に、ソース側第1絶縁層21、ソース側導電層22、ソース側第2絶縁層23、及び層間絶縁層24を有する。
【0028】
ソース側第1絶縁層21、ソース側導電層22、及びソース側第2絶縁層23は、半導体基板Ba上に、順次積層されている。ソース側第1絶縁層21、ソース側導電層22、及びソース側第2絶縁層23は、カラム方向に所定ピッチをもってロウ方向に延びるストライプ状に構成されている。すなわち、ソース側第1絶縁層21の側面、ソース側導電層22の側面、及びソース側第2絶縁層23の側面は、ロウ方向に延びる溝25を構成する。層間絶縁層24は、溝25を埋めるように形成されている。
【0029】
ソース側第1絶縁層21、ソース側第2絶縁層23、及び層間絶縁層24は、酸化シリコン(SiO)にて構成されている。ソース側導電層22は、ポリシリコン(p−Si)にて構成されている。
【0030】
ソース側選択トランジスタ層20は、図4に示すように、ソース側ホール26を有する。
【0031】
ソース側ホール26は、ソース側第1絶縁層21、ソース側導電層22、及びソース側第2絶縁層23を貫通するように形成されている。ソース側ホール26は、半導体基板Baの拡散層Ba1と整合する位置に形成されている。ソース側ホール26は、ロウ方向及びカラム方向にて構成される面内にマトリクス状に形成されている。
【0032】
ソース側選択トランジスタ層20は、図3及び図4に示すように、ソース側ゲート絶縁層27、及びソース側柱状半導体層28を有する。
【0033】
ソース側ゲート絶縁層27は、ソース側ホール26に面する側面に、所定の厚さをもって形成されている。ソース側柱状半導体層28は、積層方向に延びるように柱状に形成されている。ソース側柱状半導体層28は、ソース側ゲート絶縁層27の側面、及び拡散層Ba1の上面に接するように形成されている。ソース側柱状半導体層28は、ソース側ホール26を埋めるように形成されている。ソース側柱状半導体層28は、ロウ方向及びカラム方向にて構成される面内にマトリクス状に形成されている。
【0034】
ソース側ゲート絶縁層27は、酸化アルミニウム(Al)(比誘電率:k=10)、又は酸化シリコン(SiO)(比誘電率:k=3.9)にて構成されている。ソース側柱状半導体層28は、ポリシリコン(p−Si)にて構成されている。
【0035】
ソース側選択トランジスタ20の構成において、ソース側導電層22は、ソース側選択トランジスタSSTrの制御ゲート電極として機能する。また、ソース側導電層22は、ソース側選択ゲート線SGSとして機能する。
【0036】
上記ソース側選択トランジスタ20の構成を換言すると、ソース側ゲート絶縁層27は、ソース側柱状半導体層28を取り囲むように形成されている。ソース側導電層22は、ソース側ゲート絶縁層27を取り囲むように形成されている。
【0037】
メモリトランジスタ層30は、図3及び図4に示すように、ソース側選択トランジスタ20上に、ワード線導電層31a〜31d、及び保護層32を有する。
【0038】
ワード線導電層31a〜31dは、カラム方向に所定ピッチをもって、ロウ方向に延びるストライプ状に形成されている。ワード線導電層31a〜31dのカラム方向の側面には、空隙Agが設けられている。すなわち、ワード線導電層31a〜31dは、上下に空隙Agを介して形成されている。
【0039】
ワード線導電層31a〜31dは、半導体基板Baに対して垂直方向に所定間隔Lをもって形成されており、ワード線導電層31a〜31dの間に形成されている空隙Agは、例えば、略真空(k≒1)(誘電体)である。
【0040】
ここで、所定間隔Lは、酸化シリコン(SiO)にて構成された層間絶縁層を用いてワード線導電層31a〜31dの間を埋めた場合において、所定の破壊耐圧M(V)が得られる間隔よりも小さく設定される。これにより、後述するメモリ柱状半導体層35の抵抗値を小さくし、読み出し時のセル電流を増大させることができる。
【0041】
すなわち、酸化シリコンで構成された層間絶縁層は、10(V/m)程度の電界が加わったときに破壊される。このため、酸化シリコンで構成された層間絶縁層の厚さは、設定された破壊耐圧がM(V)である場合には、M(nm)以下にすることができない。たとえば、破壊耐圧Mが35(V)に設定されていれば、上記層間絶縁層(酸化シリコン)は、少なくとも35(nm)以上の厚さ(物理膜厚)に設定しなければならない。
【0042】
しかし、第1実施形態では、ワード線導電層31a〜31dの間である空隙Ag1に酸化シリコンよりも誘電率の小さい誘電体(空気)を設け、且つその誘電体の厚さ(所定間隔L:物理膜厚)が、同一の破壊耐圧の条件において、酸化シリコンの場合に比べ小さく設定されている。所定間隔Lの具体的な数値範囲は、後述するように、同一の容量を与える酸化シリコンの厚さである等価酸化膜厚DEOTに基づいて決定される。
【0043】
保護層32は、第4ワード線導電層31dの上面に形成されている。保護層32は、ロウ方向及びカラム方向に所定領域に亘って2次元的に広がるように形成されている。
【0044】
ワード線導電層31a〜31dは、ポリシリコン(p−Si)にて構成されている。保護層32は、窒化シリコン(SiN)にて構成されている。上記のように、ワード線導電層31a〜31dの間は、空隙Agとなっている。また、空隙Ag1は、略真空(k≒1)である。すなわち、ワード線導電層31a〜31dの間の比誘電率は、略「1」であり、酸化シリコン(SiO)の比誘電率(k=3.9)よりも小さい。
【0045】
メモリトランジスタ層30は、図4に示すように、メモリホール33を有する。
【0046】
メモリホール33は、保護層32、及びワード線導電層31a〜31dを貫通するように形成されている。メモリホール33は、ソース側ホール26と整合する位置に形成されている。メモリホール33は、ロウ方向及びカラム方向にて構成される面内にマトリクス状に形成されている。
【0047】
メモリトランジスタ層30は、図3及び図4に示すように、メモリゲート絶縁層34、及びメモリ柱状半導体層35を有する。
【0048】
メモリゲート絶縁層34は、メモリホール33に面する側面に形成されている。メモリゲート絶縁層34は、図5に示すように、ブロック絶縁層34a、電荷蓄積層34b、及びトンネル絶縁層34cを有する。ブロック絶縁層34aは、メモリホール33に面する側面に形成されている。電荷蓄積層34bは、ブロック絶縁層34aの側面に形成されている。トンネル絶縁層34cは、電荷蓄積層34bの側面に形成されている。
【0049】
メモリ柱状半導体層35は、積層方向に延びるように柱状に形成されている。メモリ柱状半導体層35は、トンネル絶縁層34cの側面、及びソース側柱状半導体層28の上面に接するように形成されている。メモリ柱状半導体層35は、メモリホール33を埋めるように形成されている。メモリ柱状半導体層35は、ロウ方向及びカラム方向にて構成される面内にマトリクス状に形成されている。
【0050】
ブロック絶縁層34aは、酸化アルミニウム(Al)(比誘電率:k=10)にて構成されている。すなわち、ブロック絶縁層34aは、酸化シリコン(SiO)(比誘電率:k=3.9)よりも比誘電率の高い材料にて構成されている。トンネル絶縁層34cは、酸化シリコン(SiO)(比誘電率:k=3.9)にて構成されている。電荷蓄積層34bは、窒化シリコン(SiN)にて構成されている。メモリ柱状半導体層35は、ポリシリコン(p−Si)にて構成されている。
【0051】
メモリトランジスタ30の構成において、ワード線導電層31a〜31dは、メモリトランジスタMTr1〜MTr4の制御ゲート電極として機能する。また、ワード線導電層31a〜31dは、ワード線WL1〜WL4として機能する。
【0052】
上記メモリトランジスタ30の構成を換言すると、トンネル絶縁層34cは、メモリ柱状半導体層35を取り囲むように形成されている。電荷蓄積層34bは、トンネル絶縁層34cを取り囲むように形成されている。ブロック絶縁層34aは、電荷蓄積層34bを取り囲むように形成されている。ワード線導電層31a〜31dは、ブロック絶縁層34aを取り囲むように形成されている。
【0053】
ドレイン側選択トランジスタ層40は、図3及び図4に示すように、半導体基板Ba上に、ドレイン側第1絶縁層41、ドレイン側導電層42、ドレイン側第2絶縁層43、及び層間絶縁層44を有する。
【0054】
ドレイン側第1絶縁層41、ドレイン側導電層42、及びドレイン側第2絶縁層43は、半導体基板Ba上に、順次積層されている。ドレイン側第1絶縁層41、ドレイン側導電層42、及びドレイン側第2絶縁層43は、カラム方向に所定ピッチをもってロウ方向に延びるストライプ状に構成されている。すなわち、ドレイン側第1絶縁層41の側面、ドレイン側導電層42の側面、及びドレイン側第2絶縁層43の側面は、ロウ方向に延びる溝45を構成する。層間絶縁層44は、溝45を埋めるように形成されている。
【0055】
ドレイン側第1絶縁層41、ドレイン側第2絶縁層43、及び層間絶縁層44は、酸化シリコン(SiO)にて構成されている。ドレイン側導電層42は、ポリシリコン(p−Si)にて構成されている。
【0056】
ドレイン側選択トランジスタ層40は、図4に示すように、ドレイン側ホール46を有する。
【0057】
ドレイン側ホール46は、ドレイン側第1絶縁層41、ドレイン側導電層42、及びドレイン側第2絶縁層43を貫通するように形成されている。ドレイン側ホール46は、メモリホール33と整合する位置に形成されている。ドレイン側ホール46は、ロウ方向及びカラム方向にて構成される面内にマトリクス状に形成されている。
【0058】
ドレイン側選択トランジスタ層40は、図3及び図4に示すように、ドレイン側ゲート絶縁層47、及びドレイン側柱状半導体層48を有する。
【0059】
ドレイン側ゲート絶縁層47は、ドレイン側ホール46に面する側面に、所定の厚さをもって形成されている。ドレイン側柱状半導体層48は、積層方向に延びるように柱状に形成されている。ドレイン側柱状半導体層48は、ドレイン側ゲート絶縁層47の側面、及びメモリ柱状半導体層35の上面に接するように形成されている。ドレイン側柱状半導体層48は、ドレイン側ホール46を埋めるように形成されている。ドレイン側柱状半導体層48は、ロウ方向及びカラム方向にて構成される面内にマトリクス状に形成されている。
【0060】
ドレイン側ゲート絶縁層47は、酸化アルミニウム(Al)(比誘電率:k=10)又は酸化シリコン(SiO)(比誘電率:k=3.9)にて構成されている。
【0061】
ドレイン側選択トランジスタ40の構成において、ドレイン側導電層42は、ドレイン側選択トランジスタSDTrの制御ゲート電極として機能する。また、ドレイン側導電層42は、ドレイン側選択ゲート線SGDとして機能する。
【0062】
上記ドレイン側選択トランジスタ40の構成を換言すると、ドレイン側ゲート絶縁層47は、ドレイン側柱状半導体層48を取り囲むように形成されている。ドレイン側導電層42は、ドレイン側ゲート絶縁層47を取り囲むように形成されている。
【0063】
(第1実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置100の製造方法)
次に、図6〜図13を参照して、第1実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置100の製造方法を説明する。図6〜図13は、第1実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置100の製造工程を示す断面図である。
【0064】
先ず、図6に示すように、半導体基板Ba上に、ソース側選択トランジスタ層20を形成する。
【0065】
次に、図7に示すように、ソース側選択トランジスタ層20の上に、酸化シリコン(SiO)、ポリシリコン(p−Si)を交互に積層させ、最後に、窒化シリコン(SiN)を堆積させる。これら構成により、ソース側選択トランジスタ層20の上に、順次、犠牲層51を介して、4つの層31aA〜31dAが形成される。また、層31dAの上面に、層32Aが形成される。ここで、犠牲層51は、積層方向に所定の厚みLをもって形成する。
【0066】
続いて、図8に示すように、層32A、層31aA〜31dA、及び犠牲層51を貫通するように、メモリホール33を形成する。メモリホール33は、ソース側ホール26と整合する位置に形成する。
【0067】
次に、図9に示すように、メモリホール33に面する側面に、順次、酸化シリコン(SiO)、窒化シリコン(SiN)、酸化シリコン(SiO)、ポリシリコン(p−Si)を堆積させる。これら工程により、メモリホール33内に、メモリゲート絶縁層34、及びメモリ柱状半導体層35が形成される。
【0068】
続いて、図10に示すように、層32B、層31aA〜31dA、及び犠牲層51を貫通するように溝52を形成する。溝52は、カラム方向に隣接するメモリホール33の間に形成する。溝52は、ロウ方向に延びるように形成する。これら工程により、層31aA〜31dAは、ワード線導電層31a〜31dとなる。層32Aは、層32Bとなる。なお、ワード線導電層31a〜31dの側面は、空隙Agとなる。
【0069】
次に、図11に示すように、溝52を介して、フッ酸処理により、犠牲層51を除去する。これにより、犠牲層51の設けられていた空間は、空隙Agとなる。
【0070】
続いて、図12に示すように、埋め込み性の低い成膜方法により、層32B上に、窒化シリコン(SiN)を堆積させる。この工程により、層32Bは、溝52の上部に蓋をする層31Cとなる。ここで、埋め込み性の低い成膜方法は、例えば、プラズマCVDなどである。
【0071】
次に、図13に示すように、層32Bに対して、エッチバックを行う。この工程により、層32Bは、保護層32となる。続いて、保護層32の上に、ドレイン側選択トランジスタ層40を形成し、図4に示す積層構造を形成する。
【0072】
[第2実施形態]
(第2実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置の構成)
次に、図14を参照して、第2実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置の構成について説明する。図14は、第2実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置を示す断面図である。なお、第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0073】
第2実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置は、図14に示すように、第1実施形態と異なるメモリトランジスタ層30Aを有する。
【0074】
メモリトランジスタ層30Aは、第1実施形態の構成に加えて、さらに層間絶縁層36を有する。層間絶縁層36は、ワード線導電層31a〜31dの間を埋めるように形成されている。層間絶縁層36の垂直方向の長さは、所定長さLである。すなわち、ワード線導電層31a〜31dは、垂直方向に所定間隔Lをもって形成されている。所定長さL(所定間隔L)は、酸化シリコン(SiO)にて構成された層間絶縁層を用いてワード線導電層31a〜31dの間を埋めた場合に動作上の破壊耐圧となる層間絶縁層の垂直方向の長さ未満である。
【0075】
層間絶縁層36は、例えば、塗布型誘電膜材料(比誘電率:k=2.4〜3.0)にて構成されている。すなわち、層間絶縁層36の比誘電率は、酸化シリコン(SiO)(比誘電率:k=3.9)よりも小さい。
【0076】
(第2実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置の製造方法)
次に、第2実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置の製造方法について説明する。先ず、第1実施形態の図6〜図11に示す工程を実行する。続いて、溝52、及び空隙Ag内を満たすように、層間絶縁層36を形成する。次に、第1実施形態の図12及び図13に示す工程を実行し、図14に示す第2実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置が形成される。
【0077】
[第1及び第2実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置の効果]
(ワード線導電層31a〜31dの間の比誘電率、及び間隔による効果)
次に、第1及び第2実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置の効果について説明する。先ず、ワード線導電層31a〜31dの間の比誘電率、及び間隔による効果について説明する。
【0078】
第1及び第2実施形態において、ワード線導電層31a〜31dは、半導体基板Baと平行な垂直方向に所定間隔Lをもって形成されている。
【0079】
ワード線導電層31a〜31dの間に形成されている空隙Agは、例えば、略真空(k≒1)であり、酸化シリコン(SiO)よりも低い比誘電率を有する。
【0080】
また、第2実施形態において、ワード線導電層31a〜31dの間に形成されている層間絶縁層36は、例えば、塗布型誘電膜材料(比誘電率:k=2.4〜3.0)にて構成されている。層間絶縁層36は、酸化シリコン(SiO)の誘電率よりも低い比誘電率(k=2.4〜3.0)を有する。
【0081】
上記構成により、酸化シリコン(SiO)にて構成された層間絶縁層を用いてワード線導電層31a〜31dの間を埋めた場合と比較して、ワード線導電層31a〜31dの間の誘電体のチャネル表面にかかる電場が大きくなり、メモリストリングMSの抵抗を下げることができる。すなわち、第1及び第2実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置は、読み出し時のセル電流を増大させることができる。
【0082】
以下、図15、及び図16を参照して、上記の効果をもたらす要因を具体的に説明する。図15は、ワード線導電層31a〜31dの間に層間絶縁層として埋め込む誘電体の種類を変えて、ワード線導電層31a〜31dの間の間隔(物理膜厚)と、ワード線導電層31bの側面に位置するメモリ柱状半導体層35の一部の抵抗とをプロットした図である。具体的に、メモリ柱状半導体層35の一部の抵抗とは、ワード線導電層31a〜31dの一本当りのメモリ柱状半導体層35の抵抗である。図15は、第1実施形態を線分A1にて示し、第2実施形態を線分A2にて示している。上述した第1実施形態において、ワード線導電層31a〜31dの間に設ける誘電体は、空隙Ag内の真空(比誘電率:k≒1)である。上述した第2実施形態において、ワード線導電層31a〜31dの間に設ける誘電体は、層間絶縁層36(比誘電率:k=2)である。また、図15は、第1及び第2実施形態A1、A2の他、比較例1、2を、線分A3、A4にて示している。比較例1において、ワード線導電層31a〜31dの間に設ける誘電体は、酸化シリコン(SiO)(比誘電率:k=3.9)とする。比較例2において、ワード線導電層31a〜31dの間に設ける誘電体は、窒化シリコン(SiN)(比誘電率:k=7.5)とする。
【0083】
図15に示すように、同じ物理膜厚(間隔)であれば、ワード線導電層31a〜31dの間に設ける誘電体が比誘電率の高いものであるほど、ワード線導電層31a〜31dの一層当りのメモリ柱状半導体層35の抵抗値は低くなる。読み出し時のセル電流の増大という観点で図15のみを見ると、ワード線導電層31a〜31dの間の誘電体は、比誘電率の高い材料を用いるのが好適であるように見える。しかし、誘電体の物理膜厚を一定にしつつその比誘電率を上げることは、破壊耐圧の低下につながる。
【0084】
図16は、図15の横軸であるワード線導電層31a〜31dの間の物理膜厚(間隔)を等価酸化膜厚(EOT)に変換したグラフである。ここで、等価酸化膜厚(EOT)は、以下に示す(数式1)で表すことができる。同一の等価酸化膜厚(EOT)は、同一の容量を有する。なお、Tは、物理膜厚(m)である。εoxは、酸化シリコン(SiO)の比誘電率(k=3.9)である。εは、ワード線導電層31a〜31dの間に設けられる誘電体の比誘電率である。
【0085】
EOT=T×(εox/ε) …(数式1)
【0086】
上記(数式1)から分かるように、一定の等価酸化膜厚(EOT)を得ようとする場合に、比誘電率εが大きくなれば、物理膜厚(間隔)も大きくする必要がある。
【0087】
図16に示すように、同じ等価酸化膜厚(EOT)であれば、ワード線導電層31a〜31dの間に設ける構成が比誘電率の低いものであるほど、ワード線導電層31a〜31dの抵抗値は低くなる。
【0088】
ここで、図16を参照して、第1及び第2実施形態における所定間隔Lの条件を説明する。第1実施形態において、所定間隔Lは、空隙Agの空気(誘電体)の等価酸化膜厚DEOTが、次の(数式2)を満たすように設定されている。また、第2実施形態において、所定間隔Lは、層間絶縁層36(誘電体)の等価酸化膜厚DEOTが、次の(数式2)を満たすように設定されている。
【0089】
sio2<DEOT<D …(数式2)
【0090】
図16に示すように、上記(数式2)におけるDsio2は、ワード線導層31a〜31d間の誘電体が酸化シリコンにて構成され、且つその厚さがワード線導電層31a〜31dに印加される最大電圧に耐えうる最小の厚さとした場合における、酸化シリコンの厚さである。
【0091】
図16に示すように、上記(数式2)におけるDは、第1実施形態において、抵抗値Rsio2を与えるような空隙Ag内の空気の等価酸化膜厚である。また、上記(数式2)におけるDは、第2実施形態において、抵抗値Rsio2を与えるような層間絶縁層36の等価酸化膜厚である。第1実施形態におけるDは、図16に示す「Dk1」となり、第2実施形態におけるDは、図16に示す「Dk2」となる。抵抗値Rsio2は、図16に示すように、ワード線導電層31a〜31d間の誘電体を酸化シリコンにて構成し、且つその酸化シリコンの膜厚をDsio2とした場合における、ワード線導電層31a〜31dの1層当たりのメモリ柱状半導体層35の抵抗値である。
【0092】
上記所定間隔Lの条件により、第1及び第2実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置は、比較例1、2よりも、ワード線導電層31a〜31dの1層当りのメモリ柱状半導体層35の抵抗値を下げることができる。
【0093】
次に、図17〜図19を参照して、上記図15及び図16に示した現象をより具体的に説明する。図17は、ワード線導電層31a〜31dの間に、膜厚35nmの酸化シリコン(SiO)を設けた場合における、電場、及び電界分布を示す図である。図18は、ワード線導電層31a〜31dの間に、膜厚35nmの窒化シリコン(SiN)を設けた場合における、電場、及び電界分布を示す図である。つまり、図18は、図17と物理膜厚を揃えている。図19は、ワード線導電層31a〜31dの間に、膜厚70nmの窒化シリコン(SiN)を設けた場合における、電場、及び電界分布を示す図である。つまり、図19は、図17と等価酸化膜厚を揃えている。図17〜図19の符号“G1”にて示す図は、メモリ柱状半導体層35の側面近傍の位置における、積層方向(X Axis)(μm)に沿った、電場(V/cm)の変化を示している。図17〜図19の符号“G2”にて示す図は、水平方向(Y Axis)(μm)、及び積層方向(X Axis)(μm)の電界分布を等高線にて表した図である。
【0094】
ここで、物理膜厚を揃えて、ワード線導電層31a〜31dの間の構成を、酸化シリコン(SiO)から窒化シリコン(SiN)に変えることで、ワード線導電層31a〜31dの間の誘電体の比誘電率は高くなる。これにより、図17及び図18に示すように、ワード線導電層31a〜31dの間の誘電体におけるチャネルの漏れ電場が大きくなる。したがって、図18の矢印B1に示すように、ワード線導電層31a〜31dの間の誘電体のチャネル表面にかかる電場が大きくなり、チャネル抵抗が下がる。
【0095】
一方、等価酸化膜厚を揃えつつ、ワード線導電層31a〜31dの間の誘電体を、酸化シリコン(SiO)からより比誘電率が大きい窒化シリコン(SiN)に変えることで、物理膜厚は大きくなる。これらにより、図17及び図19に示すように、ワード線導電層31a〜31dの間の誘電体におけるチャネルの漏れ電場は、小さくなる。したがって、図19の矢印B2に示すように、ワード線導電層31a〜31dの間のチャネル表面にかかる電場が小さくなり、チャネル抵抗が上がる。
【0096】
以上図17〜図19の説明を要約すると、ワード線導電層31a〜31d間の誘電体の誘電率を酸化シリコンに比べ低くし、その誘電体の厚さを酸化シリコンの場合の最小厚さよりも小さくする(等価酸化膜厚を揃える)ことにより、ワード線導電層31a〜31dの間の誘電体におけるチャネルの漏れ電場は大きくなり、そのチャネル抵抗は下がる。すなわち、第1及び第2実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置は、図17〜図19に示した誘電体(酸化シリコン、窒化シリコン)よりも、誘電率の低い誘電体(空隙Ag1内の空気、層間絶縁層36)を設け、その厚さを小さくする(等価酸化膜厚を揃える)ことにより、チャネル抵抗を下げている。
【0097】
(ブロック絶縁層34aの比誘電率による効果)
次に、ブロック絶縁層34aの比誘電率による効果について説明する。第1及び第2実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置は、酸化シリコン(SiO)よりも比誘電率の高い酸化アルミニウム(Al)にて構成されたブロック絶縁層34aを有する。この構成により、ブロック絶縁層34aを酸化シリコン(SiO)にて構成した場合と比較して、ワード線導電層31a〜31dの間のチャネル表面にかかる電場が大きくなり、メモリストリングMSの抵抗を下げることができる。すなわち、第1及び第2実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置は、読み出し時のセル電流を増大させることができる。
【0098】
以下、図20及び図21を参照して、上記の効果をもたらす要因を具体的に説明する。図20は、ワード線導電層31a〜31dの間に、膜厚35nmの酸化シリコン(SiO)を設け、ブロック絶縁層34aを酸化シリコン(SiO)とした場合における、電場、及び電界分布を示す図である。図21は、ワード線導電層31a〜31dの間に、膜厚35nmの窒化シリコン(SiO)を設け、ブロック絶縁層34aを酸化アルミニウム(Al)とした場合における、電場、及び電界分布を示す図である。
【0099】
ブロック絶縁層34aを、酸化シリコン(SiO2)から、酸化アルミニウム(Al)に変えることで、比誘電率は高くなる。これにより、図20及び図21に示すように、ワード線導電層31a〜31dの間のチャネルの漏れ電場は、大きくなる。したがって、図21の矢印B3に示すように、ワード線導電層31a〜31dの間のチャネル表面にかかる電場が大きくなり、チャネル抵抗が下がる。
【0100】
以上、図20及び図21にて説明した理由により、第1及び第2実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置は、読み出し時のセル電流を増大させることができる。
【0101】
[その他実施形態]
以上、不揮発性半導体記憶装置の一実施形態を説明してきたが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更、追加、置換等が可能である。
【0102】
例えば、上記第1実施形態において、ワード線導電層31a〜31d間の空隙Ag内は、略真空(比誘電率:k≒1)である。また、上記第2実施形態において、ワード線導電層31a〜31dの間には、層間絶縁層36(比誘電率:k=2)が設けられている。しかしながら、本発明は、上記構成に限られるものではなく、第1実施形態は、空隙Ag内に、酸化シリコン(SiO)よりも比誘電率の小さい流体(気体)を封入した構成を有するものであってもよい。また、第2実施形態は、酸化シリコン(SiO)よりも比誘電率の小さい層間絶縁層36であればよい。
【0103】
また、第1及び第2実施形態において、メモリ柱状半導体層35は、基板Baと平行な方向からみて「I字状」に形成されている。しかしながら、メモリ柱状半導体層35は、上記形状に限らず、「U字状」に形成されていてもよい。すなわち、メモリ柱状半導体層35は、一対の柱状部と、それら一対の柱状部の下端を連結する連結部にて構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0104】
100…不揮発性半導体記憶装置、 20…ソース側選択トランジスタ層、 30、30A…メモリトランジスタ層、 40…ドレイン側選択トランジスタ層、 Ba…半導体基板、 MTr1〜MTr4…メモリトランジスタ、 SSTr…ソース側選択トランジスタ、 SDTr…ドレイン側選択トランジスタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的に書き換え可能な複数のメモリセルが直列に接続された複数のメモリストリングを有する不揮発性半導体記憶装置であって、
前記メモリストリングは、
基板に対して垂直方向に延びる柱状部を有する第1半導体層と、
前記第1半導体層の側面を取り囲むように形成された電荷蓄積層と、
前記電荷蓄積層の側面を取り囲むように形成され、前記メモリセルの制御電極として機能する複数の第1導電層とを備え、
複数の前記第1導電層は、その間に誘電体を挟んで前記垂直方向に所定間隔Lをもって設けられ、
前記誘電体は、酸化シリコンの比誘電率よりも小さい比誘電率を有する第1誘電体にて構成され、
前記所定間隔Lは、前記第1誘電体の等価酸化膜厚DEOTが、次の関係式[数1]を満たすように設定されていることを特徴とする不揮発性半導体記憶装置。
[数1]
sio2<DEOT<D
(ただし、Dsio2は、前記誘電体が酸化シリコンにて構成され、且つその厚さが前記第1導電層に印加される最大電圧に耐えうる最小の厚さとした場合における、酸化シリコンの厚さであり、
前記誘電体を酸化シリコンにて構成し、且つその酸化シリコンの膜厚をDsio2とした場合における、前記第1導電層の1層当たりの前記第1半導体層の抵抗値をRsio2と定義すると、Dは、抵抗値Rsio2を与えるような前記第1誘電体の等価酸化膜厚である)
【請求項2】
前記第1誘電体は、真空又は酸化シリコンよりも比誘電率の低い気体にて構成されている
ことを特徴とする請求項1記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項3】
前記メモリストリングは、
前記電荷蓄積層と前記第1半導体層の間に形成された第1絶縁層と、
前記電荷蓄積層と前記第1導電層の間に形成された第2絶縁層とを備え、
前記第2絶縁層の比誘電率は、酸化シリコンの比誘電率よりも高い
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項4】
前記メモリストリングの一端に接続され、前記メモリストリングへの導通を制御する選択トランジスタを備え、
前記選択トランジスタは、
前記第1半導体層の上面又は下面から前記垂直方向に延びる第2半導体層と、
前記第2半導体層の側面を取り囲むように形成された第3絶縁層と、
前記第3絶縁層の側面を取り囲むように形成された第2導電層とを備え、
前記第3絶縁層の比誘電率は、酸化シリコンの比誘電率よりも高い
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項5】
電気的に書き換え可能な複数のメモリセルが直列に接続された複数のメモリストリングを有する不揮発性半導体記憶装置であって、
前記メモリストリングは、
基板に対して垂直方向に延びる柱状部を有する半導体層と、
前記半導体層の側面を取り囲むように形成された第1絶縁層と、
前記第1絶縁層の側面を取り囲むように形成された電荷蓄積層と、
前記電荷蓄積層の側面を取り囲むように形成された第2絶縁層と、
前記第2絶縁層の側面を取り囲むように形成され、前記メモリセルの制御電極として機能する複数の導電層とを備え、
前記第2絶縁層の比誘電率は、酸化シリコンの比誘電率よりも高い
ことを特徴とする不揮発性半導体記憶装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−192517(P2010−192517A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−32697(P2009−32697)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】