説明

不燃性化粧板

【課題】 ハンドリング時に割れや欠けが発生し難い上に反ることがない、耐汚染性や耐擦傷性、耐衝撃性において優れた性能を有する不燃性化粧板を提供することである。
【解決手段】 固形分100重量部中のフェノール樹脂の固形分が3.0〜7.0重量部、コロイダルシリカを固形分として5.0重量部以上含有する無機充填剤が97.0〜93.0重量部の固形分組成からなる水溶性樹脂組成物をガラスペーパーに含浸させて後に乾燥して得た半硬化状態のプリプレグを複数層重ね合わせて熱圧成形したことを特徴とする不燃性基材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不燃性化粧板に関し、さらに詳しくは、システムキッチンの焜炉上等の壁面に設置されるキッチン吊り戸等に好適に用いられる不燃性化粧板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、不燃性化粧板としては、(1)ケイ酸カルシウム板などの無機質板の表面に着色塗料を塗装したもの、あるいは、無機質板に熱硬化型樹脂化粧シートを積層し加熱・加圧成形したものが知られている。
【0003】
また、別の不燃性化粧板としては、(2)無機繊維からなるシート基材と水酸化アルミニウム並びにフェノール樹脂からなる複層の芯材層用成形素材上に化粧層成形層材を積層一体化したものが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
上記した(1)の不燃性化粧板は、硬くて脆いために加工時や施工時等のハンドリング時において割れ易いという問題や欠け易いという問題、あるいは、含水率の変化により反り易いという問題を有し、また、無機質板の表面凹凸が表面に現出するために意匠性においては満足できるものではなかった。
【0005】
また、上記した(2)の不燃性化粧板は、フェノール樹脂に対する水酸化アルミニウム配合比率を大きくしないと不燃材とはならず、配合比率を大きくすると耐衝撃性などにおいて十分な強度を得ることができないという問題、あるいは、化粧層成形層材に用いるメラミン樹脂は、衝撃強度においては優れる反面、特に酸化した植物性や動物性の油に対する耐汚染性において劣るという問題があり、上記した種々の問題の解決が求められていた。
【特許文献1】特開昭64−56540号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、ハンドリング時に割れや欠けが発生し難い上に反ることがない、耐汚染性や耐擦傷性、耐衝撃性において優れた性能を有する不燃性化粧板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題を達成するために、請求項1記載の本発明の不燃性基材は、固形分100重量部中のフェノール樹脂の固形分が3.0〜7.0重量部、コロイダルシリカを固形分として5.0重量部以上含有する無機充填剤が97.0〜93.0重量部の固形分組成からなる水溶性樹脂組成物をガラスペーパーに含浸させて後に乾燥して得た半硬化状態のプリプレグを複数層重ね合わせて熱圧成形したことを特徴とするものである。
【0008】
また、請求項2記載の本発明は、請求項1記載の不燃性基材において、前記フェノール樹脂の固形分が前記水溶性樹脂組成物の固形分100重量部に対して3.5〜5.0重量部であって、前記コロイダルシリカの固形分が前記水溶性樹脂組成物の固形分100重量部に対して10〜30重量部であることを特徴とするものである。
【0009】
また、請求項3記載の本発明は、請求項1記載の不燃性基材において、前記水溶性樹脂組成物を前記ガラスペーパーの坪量に対して固形分として500〜700重量%含浸させてなることを特徴とするものである。
【0010】
また、請求項4記載の本発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の不燃性基材の少なくとも一方の面に接着剤層を介して表層に電離放射線硬化型樹脂からなる表面保護層を備えた化粧層を積層した不燃性化粧板において、前記接着剤層と前記化粧層の有機分重量が150g/m2以下であることを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項5記載の本発明は、請求項4記載の不燃性化粧板において、前記接着剤層が湿気硬化型ホットメルト接着剤により形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の不燃性基材は、無機充填剤としてコロイダルシリカを用いることにより、フェノール樹脂の使用量を少なくしてもコロイダルシリカが凝結剤として機能するために、ハンドリング時に割れや欠けが発生することがなく、また、耐衝撃性等の強度においても優れた性能を有するものである。
【0013】
また、本発明の不燃性化粧板は、不燃性基材の少なくとも一方の面に接着剤層を介して化粧層を積層した構成からなるために、表面平滑性を有する意匠性に優れたものとすることができ、さらに化粧層の表層に電離放射線硬化型樹脂からなる表面保護層を備えているために、耐汚染性や耐擦傷性において優れた性能を有するものとすることができる。さらにまた、本発明の不燃性化粧板は、接着剤層と化粧層の有機分重量を150g/m2以下とすることにより、不燃材料としての試験に合格する防火性能を有するものであり、内装制限を受ける用途に適合するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
上記の本発明について、図面等を用いて以下に詳しく説明する。
図1は本発明にかかる不燃性化粧板の基本的な層構成を図解的に示す図であって、不燃性化粧板1は不燃性基材2の一方の面に接着剤層3を介して表層に電離放射線硬化型樹脂からなる表面保護層40を備えた化粧層4を積層したものである。
【0015】
前記不燃性基材2は、ガラスペーパーを芯材として、これに水溶性樹脂組成物を固形分として500〜700重量%含浸させて後に乾燥して得た半硬化状態のプレプラグを複数層重ね合わせて熱圧成形したものである。ガラスペーパーの坪量としては30〜150g/m2が適当である。坪量が30g/m2未満では水溶性樹脂組成物を含浸・乾燥する工程の作業性に支障をきたす虞があり、坪量が150g/m2超では含浸時間が増大すると共にガラスペーパーの繊維間の空隙が大きくなるために水溶性樹脂組成物の固形分の定着重量%が低下し、層間剥離する虞がある。
【0016】
また、前記水溶性樹脂組成物はフェノール樹脂と、コロイダルシリカと、無機充填剤とで構成され、前記水溶性樹脂組成物の固形分100重量部に対してフェノール樹脂の固形分として3.0〜7.0重量部、好ましくは3.5〜5.0重量部、コロイダルシリカの固形分として5.0〜50重量部、好ましくは10〜30重量部、無機充填剤として92〜43重量部、好ましくは86.5〜65.0重量部である。
【0017】
また、フェノール樹脂はレゾールタイプが好ましく、固形分が3.0重量部未満では、凝結剤として機能するコロイダルシリカの添加量を増やしても補完することができずに、不燃性基材としての十分な強度(曲げ強度、衝撃強度)が得られず、7.0重量部超では、有機分重量が多いために不燃性において劣る虞が生じる。
【0018】
また、コロイダルシリカの固形分が5.0重量部未満では凝結剤としての機能が不十分なために不燃性基材としての十分な強度(曲げ強度、衝撃強度)が得られず、50重量部超ではコロイダルシリカが互いに凝結するためと推測され、プレス成形時の接着力が低下する虞がある。
【0019】
また、無機充填剤としては、92重量部超では不燃性基材としての十分な強度が得られず、43重量部未満では不燃(防火)性能が得られない。無機充填剤としては、水酸化アルミニウムを必須とし、炭酸カルシウム、シリカなどの不燃性粉体を添加してもよいものである。
【0020】
また、ガラスペーパーに含浸させる前記水溶性樹脂組成物の乾燥後の含浸量(固形分)としては400〜800重量%が適当であり、不燃性、含浸時の加工性、熱圧成形性、耐衝撃性などの強度等を考慮すると500〜700重量%が好ましい。
【0021】
次に、後述する電離放射線硬化型樹脂からなる表面保護層41を有する化粧層4と前記不燃性基材2とを積層する前記接着剤層3について説明する。前記接着剤層3としては、ポリオール成分とイソシアネート成分とからなる2液硬化型ポリウレタン系接着剤を用いて周知のドライラミネーション法で形成すればよい。前記ポリオール成分としては、ポリエステルポリオール、ポリエステルポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルポリウレタンポリオール等を挙げることができ、イソシアネート成分としては、TDI、MDI、HDI、PIDI、XDI等のジイソシアネートおよびこれらを出発原料とする変性体を挙げることができるが、塗布量や作業性および作業環境を考慮すると、湿気硬化型ホットメルト接着剤が好ましい。
【0022】
湿気硬化型ホットメルト接着剤は、分子末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを必須成分とする組成物である。前記プレポリマーは、通常は分子両末端にイソシアネート基をそれぞれ1個以上有するポリイソシアネートプレポリマーであり、常温で固体の熱可塑性樹脂の状態にあるものである。イソシアネート基同士が空気中の水分により反応して鎖延長反応を起こし、分子鎖中に尿素結合を有する反応物を生じ、この尿素結合にさらに分子末端のイソシアネート基が反応し、ビューレット結合を起こして分枝し、架橋反応を起こす。分子末端にイソシアネート基を有するプレポリマーの分子鎖の骨格構造は任意であるが、具体的には、ウレタン結合を有するポリウレタン骨格、エステル結合を有するポリエステル骨格、ポリブタジエン骨格等である。これらの1種ないし2種以上の骨格構造を適宜採用することにより、接着剤物性を調整することができる。なお、分子鎖中にウレタン結合がある場合は、このウレタン結合とも末端イソシアネート基が反応して、アロファネート結合を生じ、このアロファネート結合によっても架橋反応を起こす。
【0023】
ポリイソシアネートプレポリマーの具体例としては、たとえば、ポリオールに過剰のイソシアネートを反応させた分子末端にイソシアネート基を有し、かつ、分子鎖中にウレタン結合を有するポリウレタン骨格の、ウレタンプレポリマーがある。また、特開昭64−14287号公報に開示されているような、ポリイソシアネートにポリエステルポリオールとポリブタジエン骨格を有するポリオールとを任意の順序で加えて付加反応させて得られたポリエステル骨格とポリブタジエン骨格とがウレタン結合により結合された構造を有し、かつ、分子末端にイソシアネート基を有する結晶性ウレタンプレポリマー、あるいは、特開平2−305882号公報に開示されているような、ポリカーボネート系ポリオールとポリイソシアネートを反応させて得られる分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリカーボネート系ウレタンプレポリマー、ポリエステル系ポリオールとポリイソシアネートを反応させて得られる分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリエステル系ウレタンプレポリマー等が挙げられる。
【0024】
また、湿気硬化型ホットメルト接着剤としては、上記した各種ポリイソシアネートプレポリマーの他に、各種物性を調整するために、上記した必須反応成分に、必要に応じて、熱可塑性樹脂、粘着付与剤、可塑剤、充填剤等の各種副材料を添加することも出来る。これらの副材料としては、たとえば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、低分子量ポリエチレン、変性ポリオレフィン、アタクチックポリプロピレン、線状ポリエステル、エチレン−エチルアクリレート(EAA)、エチレン−メタクリレート(EMA)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)等の熱可塑性樹脂、テルペン−フェノール樹脂、アビエチン酸ロジンエステル等の粘着付与剤、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ、アルミナ等の微粉末からなる充填剤(体質顔料)、着色顔料、硬化触媒、水分除去剤、貯蔵安定剤、老化防止剤等である。
【0025】
上記した湿気硬化型ホットメルト接着剤の塗布量は、固形分として概ね20〜60g/m2、好ましくは30〜50g/m2である。接着剤の塗布面は、後述する前記化粧層4の裏面であってもよいし、前記不燃性基材2面であってもよいものである。
【0026】
次に、前記化粧層4について説明する。前記化粧層4を構成する化粧層基材としては、加工適性に優れ、燃焼時に有害なガスを発生しないことなどから、その一つを例示するならば、飽和ポリエステル、低密度ポリエチレン(線状低密度ポリエチレンを含む)、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ホモポリプロピレン、エチレンαオレフィン共重合体、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、あるいは、これらの混合物等からなるフィルム系基材を挙げることができ、これらは未延伸の状態であっても、一軸ないし二軸方向に延伸した状態のいずれの状態であってもよく、厚さとしては概ね25〜125μmが適当である。また、前記化粧層基材の別の一つを例示するならば、建材用プリント用紙(建材用薄葉紙)、純白紙、あるいは、合成樹脂を混抄させて層間強度を強化した薄葉紙、酸化チタン等の不透明顔料を混抄したチタン紙等の紙質系基材を挙げることができ、坪量としては概ね23〜100g/m2が適当である。これらのフィルム系基材ないし紙質系基材は必要に応じて必要な面にコロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理等の適宜の易接着処理を施してもよいものである。
【0027】
また、前記化粧層4は、通常、木目模様、石目模様、布目模様、皮紋模様、幾何学模様、文字、記号、線画、各種抽象模様柄等の絵柄がグラビア印刷法、オフセット印刷法、シルクスクリーン印刷法等の周知の印刷法でインキを用いて前記化粧層基材に形成される。インキとしては、ビヒクルとして塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、イソシアネートとポリオールとからなるポリウレタン、ポリアクリル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、セルロース系樹脂、ポリアミド樹脂等を1種ないし2種以上混合して用い、これに顔料、溶剤、各種補助剤等を加えてインキ化したものを用いることができるが、環境問題を考慮すると、ポリエステル、イソシアネートとポリオールからなるポリウレタン、ポリアクリル、ポリ酢酸ビニル、セルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂等の1種ないし2種以上混合した非塩素系のビヒクルが適当であり、より好ましくはポリエステル、イソシアネートとポリオールからなるポリウレタン、ポリアクリル、ポリアミド系樹脂等の1種ないし2種以上混合したものである。
【0028】
次に、前記化粧層4の表層に形成される表面保護層40について説明する。前記表面保護層40は不燃性化粧板1に要求される耐汚染性、耐擦傷性、耐摩耗性、耐水性等の表面物性を付与するために設けられるものであり、この表面保護層40を形成する樹脂としては、熱硬化型樹脂ないし電離放射線硬化型樹脂等の硬化型樹脂を用いて形成するのが適当であるが、より好ましくは表面硬度が硬く、酸化した植物性や動物性の油が付着しても簡単に拭き取ることができると共に生産性においても優れるなどの理由から電離放射線硬化型樹脂である。
【0029】
電離放射線硬化型樹脂としては、電離放射線を照射することにより架橋重合反応を起こして3次元の高分子構造に変化する樹脂である。電離放射線は、電磁波または荷電粒子線のうち分子を重合、架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、可視光線、紫外線(近紫外線、真空紫外線等)、X線、電子線、イオン線等がある。通常は紫外線や電子線が用いられる。紫外線源としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、メタルハライドランプ灯の光源が使用できる。紫外線の波長としては、190〜380nmの波長域を使用することができる。また、電子線源としては、コッククロフトワルト型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用いることができる。用いる電子線としては、100〜1000keV、好ましくは100〜300keVのものが使用される。電子線の照射量は、通常2〜15Mrad程度である。
【0030】
電離放射線硬化型樹脂は、分子中に、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等のラジカル重合性不飽和基、又はエポキシ基等のカチオン重合性官能基を有する単量体、プレポリマー又はポリマー(以下、これらを総称して化合物と呼称する)からなる。これら単量体、プレポリマー、及びポリマーは、単体で用いるか、或いは複数種混合して用いる。尚、本明細書で(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタアクリレートの意味で用いる。
【0031】
ラジカル重合性不飽和基を有するプレポリマーとしては、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。このプレポリマーは、通常、分子量が10000程度以下のものが用いられる。分子量が10000を超えると硬化した樹脂層の耐擦傷性、耐摩耗性、耐薬品性、耐熱性等の表面物性が不足する。上記のアクリレートとメタアクリレートは共用し得るが、電離放射線での架橋硬化速度という点ではアクリレートの方が速い為、高速度、短時間で能率よく硬化させるという目的ではアクリレートの方が有利である。
【0032】
カチオン重合性官能基を有するプレポリマーとしては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂等のエポキシ系樹脂、脂肪族系ビニルエーテル、芳香族系ビニルエーテル、ウレタン系ビニルエーテル、エステル系ビニルエーテル等のビニルエーテル系樹脂、環状エーテル化合物、スピロ化合物等のプレポリマーが挙げられる。
【0033】
ラジカル重合性不飽和基を有する単量体の例としては、(メタ)アクリレート化合物の単官能単量体として、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2エチルヘキシル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジベンジルアミノエチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンテレフタレート等が挙げられる。
【0034】
また、ラジカル重合性不飽和基を有する多官能単量体として、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノール−A−ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリンポリエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェ−ト等が挙げられる。カチオン重合性官能基を有する単量体は、上記カチオン重合性官能基を有するプレポリマーの単量体を用いることができる。
【0035】
上記の電離放射線硬化型樹脂は電子線を照射すれば十分に硬化するが、紫外線を照射して硬化させる場合には、増感剤として光重合開始剤を添加する。ラジカル重合性不飽和基を有する樹脂系の場合の光重合開始剤は、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、ミヒラーケトン、ジフェニルサルファイド、ジベンジルジサルファイド、ジエチルオキサイト、トリフェニルビイミダゾール、イソプロピル−N,N−ジメチルアミノベンゾエート等を単独又は混合して用いることができる。又、カチオン重合性官能基を有する樹脂系の場合は、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル、フリールオキシスルホキソニウムジアリルヨードシル塩等を単独又は混合物として用いることができる。尚、これら光重合開始剤の添加量は一般に、電離放射線硬化型樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部程度である。また、この電離放射線硬化型樹脂で表面保護層40を形成する方法としては、たとえば、この電離放射線硬化型樹脂を塗布可能な粘度に調節し、グラビアコート法、ロールコート法等の周知の塗布法で塗布することにより形成することができる。塗布量としては、固形分として概ね3〜15g/m2が適当である。
【0036】
また、前記化粧層4には、必要に応じて必要な層間に、インキ用プライマー層や表面保護層40用プライマー層を設け、層間の接着強度を向上させることができる。これらのプライマー層の形成は、接着剤層3で説明したポリオール成分とイソシアネート成分とからなる2液硬化型ポリウレタン系接着剤を用いて、グラビア印刷法、ロールコート法等の周知の塗布方法で形成すればよいものである。プライマー層の乾燥後の塗布量としては、0.1〜5.0g/m2であり、好ましくは0.5〜1.0g/m2である。
【0037】
次に、本発明について、以下に実施例を挙げてさらに詳しく説明する。
【0038】
〔化粧層の作製〕
50μm厚さの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルムと呼称する)の一方の面に2液硬化型ポリウレタン系接着剤を乾燥後に0.5g/m2となるようにグラビア印刷法で塗布してインキ用プライマー層を形成し、該インキ用プライマー層面にアクリル系インキを用いてグラビア印刷法で木目模様の絵柄層を形成した後、前記PETフィルムの他方の面に2液硬化型ポリウレタン系接着剤を乾燥後に0.5g/m2となるようにグラビア印刷法で塗布して表面保護層用プライマー層を形成し、該表面保護層用プライマー層面に電離放射線硬化型樹脂をロールコート法にて塗布して後に電子線(175KeV、5Mrad)を照射して10g/m2の表面保護層を形成した化粧層となる化粧シートを作製した。
【0039】
〔プリプレグAの作製〕
フェノール樹脂(レゾール型)、コロイダルシリカ、水酸化アルミニウムを固形分としてそれぞれ4重量部、25重量部、71重量部を添加した水溶性樹脂組成物を調整し、この水溶性樹脂組成物中に坪量が100g/m2のガラスペーパー〔阿波製紙(株)製〕をディッピングして後にスクイズロールにて絞ると共に乾燥して、固形分としての含浸量が600g/m2(総重量が700g/m2)の半硬化状態のプリプレグAを作製した。
【0040】
〔プリプレグBの作製〕
フェノール樹脂を固形分として3重量部を添加した水溶性樹脂組成物を用いた以外はプリプラグAと同様にして半硬化状態のプリプラグBを作製した。
【0041】
〔プリプレグCの作製〕
フェノール樹脂を固形分として7重量部を添加した水溶性樹脂組成物を用いた以外はプリプラグAと同様にして半硬化状態のプリプラグCを作製した。
【0042】
〔プリプレグDの作製〕
コロイダルシリカを添加しない水溶性樹脂組成物を用いた以外は、プリプレグAと同様にしてプリプレグDを作製した。
【0043】
〔不燃性基材Aの作製〕
上記で作製したプリプレグAを5枚重ね合わせ、ホットプレス機にて熱圧成形〔プレス圧力:80kgf/cm2、プレス温度と時間:40℃(45分)→180℃(30分)→40℃(45分)〕して硬化一体化させた不燃性基材Aを作製した。
【0044】
〔不燃性基材Bの作製〕
上記で作製したプリプレグBを5枚重ね合わせ、ホットプレス機にて熱圧成形〔プレス圧力:80kgf/cm2、プレス温度と時間:40℃(45分)→180℃(30分)→40℃(45分)〕して硬化一体化させた不燃性基材Bを作製した。
【0045】
〔不燃性基材Cの作製〕
上記で作製したプリプレグCを5枚重ね合わせ、ホットプレス機にて熱圧成形〔プレス圧力:80kgf/cm2、プレス温度と時間:40℃(45分)→180℃(30分)→40℃(45分)〕して硬化一体化させた不燃性基材Cを作製した。
【0046】
〔不燃性基材Dの作製〕
上記で作製したプリプレグDを5枚重ね合わせ、ホットプレス機にて熱圧成形〔プレス圧力:80kgf/cm2、プレス温度と時間:40℃(45分)→180℃(30分)→40℃(45分)〕して硬化一体化させた不燃性基材Dを作製した。
【実施例1】
【0047】
上記で作製した不燃性基材Aの一方の面に湿気硬化型ホットメルト接着剤〔日立化成ポリマー(株)製:ハイボンシリーズ(商品名)〕をロールコート法で50g/m2塗布すると共に上記で作製した化粧シートをホットメルト接着剤面に絵柄層が位置するように積層して本発明の不燃性化粧板を作製した。
【実施例2】
【0048】
不燃性基材Aに代えて不燃性基材Bを用いた以外は実施例1と同様にして本発明の不燃性化粧板を作製した。
【実施例3】
【0049】
不燃性基材Aに代えて不燃性基材Cを用いた以外は実施例1と同様にして本発明の不燃性化粧板を作製した。
【0050】
[比較例1]
不燃性基材Aに代えて不燃性基材Dを用いた以外は実施例1と同様にして比較例とする不燃性化粧板を作製した。
【0051】
[比較例2]
不燃性基材Aに代えて12.5mm厚さの石膏ボード〔吉野石膏(株)製:タイガーボード(商品名)〕を用いた以外は実施例1と同様にして比較例とする不燃性化粧板を作製した。
【0052】
[比較例3]
不燃性基材Aに代えて5.0mm厚さのケイ酸カルシウム板〔(株)エー・アンド・エーマテリアル製:ハイラック(商品名)〕を用いた以外は実施例1と同様にして比較例とする不燃性化粧板を作製した。
【0053】
[比較例4]
5.0mm厚さのケイ酸カルシウム板〔(株)エー・アンド・エーマテリアル製:ハイラック(商品名)〕の一方の面に2液硬化型ウレタンシーラー〔中国塗料(株)製:EPコート(商品名)〕を固形分として40g/m2塗布・乾燥して後に、該塗布面を#320サンディングペーパーにて研磨仕上げし、該研磨面にUV(紫外線)硬化型接着剤〔中国塗料(株)製:オーレックス(商品名)〕を固形分として40g/m2塗布し、該塗布面に転写フィルム(25μm厚さのPETフィルムの一方の面に剥離層と石目模様の絵柄層とを順に設けたもの)を貼合し、転写フィルム側からUV照射(条件:120W/cm2、2PASS、5m/分)した後にPETフィルムを剥がして絵柄層を転写し、該絵柄層面にUV硬化型樹脂〔ザ・インクテック(株)製:UV硬化型TOP樹脂(商品名)〕を20g/m2塗布すると共にUV照射(条件:120W/cm2、2PASS、5m/分)して硬化させた比較例とする不燃性化粧板を作製した。
【0054】
[比較例5]
一方の面にアクリル系インキを用いて石目模様の絵柄層を形成した60g/m2のチタン紙にメラミン樹脂を固形分として60g/m2含浸させたメラミン含浸紙をプリプレグBを5枚重ね合わせた上下に配置して、ホットプレス機にて熱圧成形〔プレス圧力:80kgf/cm2、プレス温度と時間:40℃(45分)→180℃(30分)→40℃(45分)〕して硬化一体化させた比較例とする不燃性化粧板を作製した。
【0055】
上記で作製した実施例1〜3、および、比較例1〜5について不燃性試験、曲げ強度試験、衝撃強度試験、耐光性試験、汚染性試験を行い、その結果を表1、表2に纏めて示した。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
表1、表2からも明らかなように、実施例1〜3はいずれの評価試験においても優れた性能を示したが、比較例1〜5はいずれかの評価試験において劣る結果となった。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明にかかる不燃性化粧板の基本的な層構成を図解的に示す図である。
【符号の説明】
【0060】
1 不燃性化粧板
2 不燃性基材
3 接着剤層
4 化粧層
40 表面保護層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形分100重量部中のフェノール樹脂の固形分が3.0〜7.0重量部、コロイダルシリカを固形分として5.0重量部以上含有する無機充填剤が97.0〜93.0重量部の固形分組成からなる水溶性樹脂組成物をガラスペーパーに含浸させて後に乾燥して得た半硬化状態のプリプレグを複数層重ね合わせて熱圧成形したことを特徴とする不燃性基材。
【請求項2】
前記フェノール樹脂の固形分が前記水溶性樹脂組成物の固形分100重量部に対して3.5〜5.0重量部であって、前記コロイダルシリカの固形分が前記水溶性樹脂組成物の固形分100重量部に対して10〜30重量部であることを特徴とする請求項1記載の不燃性基材。
【請求項3】
前記水溶性樹脂組成物を前記ガラスペーパーの坪量に対して固形分として500〜700重量%含浸させてなることを特徴とする請求項1記載の不燃性基材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の不燃性基材の少なくとも一方の面に接着剤層を介して表層に電離放射線硬化型樹脂からなる表面保護層を備えた化粧層を積層した不燃性化粧板において、前記接着剤層と前記化粧層の有機分重量が150g/m2以下であることを特徴とする不燃性化粧板。
【請求項5】
前記接着剤層が湿気硬化型ホットメルト接着剤により形成されていることを特徴とする請求項4記載の不燃性化粧板。


【図1】
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【公開番号】特開2006−335999(P2006−335999A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−165956(P2005−165956)
【出願日】平成17年6月6日(2005.6.6)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】