乗用型作業機
【課題】乗用型作業機の旋回時の走行速度を自動的に減速するための構成を簡略化すること。
【解決手段】ステアリングハンドル31と、エンジン11と、該エンジン11の動力を走行用の駆動輪14,14に伝達する油圧式無段変速機62と、該油圧式無段変速機62を変速操作をするようにスイング動作が可能な操作レバー71と、を備えた乗用型作業機10である。操作レバー71のスイング基部71aには、戻し機構90が設けられている。該戻し機構90は、操作レバー71によって変速操作されている油圧式無段変速機62の変速状態を、ステアリングハンドル31による旋回操舵時に減速する方向に戻す。
【解決手段】ステアリングハンドル31と、エンジン11と、該エンジン11の動力を走行用の駆動輪14,14に伝達する油圧式無段変速機62と、該油圧式無段変速機62を変速操作をするようにスイング動作が可能な操作レバー71と、を備えた乗用型作業機10である。操作レバー71のスイング基部71aには、戻し機構90が設けられている。該戻し機構90は、操作レバー71によって変速操作されている油圧式無段変速機62の変速状態を、ステアリングハンドル31による旋回操舵時に減速する方向に戻す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの動力によって走行するとともに、旋回時の走行速度を自動的に減速することが可能な乗用型作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、乗用型作業機の旋回時における車体の安定性や作業の安定性(走行しながら作業を行うときの、作業条件を安定的に且つ効率良く行うことが可能なこと。)を確保するために、操舵系統と走行系統とを連係させる技術の開発が進められている。中でも、農作業機のように厳しい作業環境で使用する乗用型作業機では、耐久性を確保するために、電気的な制御システムを用いることなく、機械的システムによってのみ、旋回時の走行速度を自動的に減速する技術の開発が進められている(例えば、特許文献1−2参照。)。
【0003】
特許文献1で知られている乗用型作業機は、ステアリングハンドルに連動する左右の旋回連動機構とアクセルレバーとを備えた、トラクタによって構成されている。アクセルレバーを操作して、アクセルロッドを介してガバナ及び燃料噴射装置を調節することにより、エンジンの回転速度を調節することが可能である。ステアリングハンドルを左又は右へ操舵したときには、該ステアリングハンドルに連動した左又は右の旋回連動機構が、アクセルロッドを介してガバナ及び燃料噴射装置を絞る。この結果、該エンジンが減速するので、旋回時の乗用型作業機は自動的に減速する。
【0004】
しかし、特許文献1で知られている乗用型作業機では、左右の旋回連動機構をアクセルロッドの近傍に配置する必要があり、旋回時の走行速度を自動的に減速するための構成が、複雑で大型にならざるを得ない。しかも、左右の旋回連動機構をアクセルロッドの近傍に配置するので、乗用型作業機に他の種々の部材を配置するためのスペースを確保するのに限界があり、この結果、他の部材の配置の自由度が低い。さらには、旋回時の走行速度を自動的に減速するための構成は、エンジン自体を減速するのであるから、1つのエンジンによって走行系と作業系の両方を駆動する形式の乗用型作業機には採用できない。つまり、特許文献1で知られている技術は、1つのエンジンによって走行しながら作業系を駆動する形式の乗用型作業機には、不向きである。
【0005】
特許文献2で知られている乗用型作業機は、エンジンの動力をギヤ式変速装置を介して車輪に伝達するものである。さらに、特許文献2で知られている乗用型作業機は、エンジンとギヤ式変速装置との間に介在したベルト式無段変速機と、ステアリングハンドルに連動して該ベルト式無段変速機を減速するように切り換える切換え機構とを備える。該切換え機構は、ステアリングハンドルの操舵角が一定以上であることを、カムによって検出したときに、ベルト式無段変速機を減速する方向に切り換える。この結果、旋回時の乗用型作業機は自動的に減速する。
【0006】
しかし、特許文献2で知られている乗用型作業機では、ギヤ式変速装置の他にベルト式無段変速機を備える必要があり、旋回時の走行速度を自動的に減速するための構成が、複雑で大型にならざるを得ない。しかも、乗用型作業機にギヤ式変速装置とベルト式無段変速機の両方を備えたのでは、他の種々の部材を配置するためのスペースを確保するのに限界があり、この結果、他の部材の配置の自由度が低い。
【0007】
このように、特許文献1〜2で知られている乗用型作業機は、いずれも旋回時の走行速度を自動的に減速するための構成が複雑であり、更なる改良の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭51−42218号公報
【特許文献2】実開昭57−91414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、旋回時の走行速度を自動的に減速するための構成を簡略化するとともに、該構成を、1つのエンジンによって走行系と作業系の両方を駆動する形式の乗用型作業機に採用することが可能な技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明では、ステアリングハンドルと、エンジンと、該エンジンの動力を走行用の駆動輪に伝達する油圧式無段変速機と、該油圧式無段変速機を変速操作をするようにスイング動作が可能な操作レバーと、を備えた乗用型作業機において、前記操作レバーのスイング基部には、該操作レバーによって変速操作されている前記油圧式無段変速機の変速状態を、前記ステアリングハンドルによる旋回操舵時に減速する方向に戻すための、戻し機構が設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る発明では、前記戻し機構は、前記操作レバーの前記スイング基部に設けられて、該操作レバーと共に変速操作方向にスイング動作が可能な支持部材と、該支持部材に対し、該支持部材のスイング可能方向と同方向にスイング可能に支持されたスイングアームと、該スイングアームに連結されて、前記操作レバーの操作力を前記油圧式無段変速機の変速操作軸に伝達するためのロッドと、前記ステアリングハンドルの操舵角に従って前記スイングアームをスイングさせるように、前記ステアリングハンドルの操舵角を前記スイングアームに伝える操舵角伝達機構と、から成ることを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る発明では、前記操舵角伝達機構は、前記ステアリングハンドルの操舵角を前記スイングアームに伝えるワイヤケーブルと、前記変速操作軸を低速側へ戻す方向に、前記スイングアームを付勢しているリターンスプリングと、から成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明では、旋回時の走行速度を自動的に減速させるための戻し機構が、操作レバーのスイング基部に設けられている。このため、旋回時の走行速度を自動的に減速させるための機構が操作レバーとは別個に設けられる場合に比べて、該戻し機構を簡略化することができる。しかも、該戻し機構が操作レバーのスイング基部に設けられているので、乗用型作業機に他の部材を配置するためのスペースを確保することが容易である。このため、他の部材の配置の自由度が高まる。さらには、該戻し機構を、1つのエンジンによって走行系と作業系の両方を駆動する形式の乗用型作業機にも採用することが可能である。
【0014】
ステアリングハンドルは、旋回操舵されたときに戻し機構を作動させる。該戻し機構は、操作レバーによって変速操作されている油圧式無段変速機の変速状態を、減速方向に戻すように作動する。この結果、油圧式無段変速機が減速するので、乗用型作業機は自動的に減速する。
【0015】
請求項2に係る発明では、戻し機構は、操作レバーと共に変速操作方向にスイング動作が可能な支持部材と、該支持部材にスイング可能に支持されたスイングアームと、該スイングアームに連結されたロッドと、ステアリングハンドルの操舵角をスイングアームに伝える操舵角伝達機構と、から成る簡単な構成である。
【0016】
ステアリングハンドルが直進操舵状態にあるときには、該ステアリングハンドルの操舵角は零である。このときには、操作レバーの変速操作に従って、該操作レバー及び支持部材と共にスイングアームがスイングすることにより、ロッドを介して油圧式無段変速機の変速操作軸を変速させる。
【0017】
一方、ステアリングハンドルが旋回操舵されたときには、該ステアリングハンドルの操舵角を、操舵角伝達機構がスイングアームに伝える。該スイングアームは、支持部材に対してスイングすることにより、ロッドを介して油圧式無段変速機の変速操作軸を減速する方向に戻す。
【0018】
請求項3に係る発明では、ステアリングハンドルの操舵角をスイングアームに伝える手段を、ワイヤケーブルによって構成したので、ステアリングハンドルに対するスイングアームの配置関係の制約がない。このため、戻し機構の配置の自由度を高めることができる。さらには、スイングアームは、変速操作軸を低速側へ戻す方向(つまり、フェールセーフとなる方向)に、常にリターンスプリングによって付勢されている。このため、操舵角伝達機構に何らかのアクシデントが発生した場合であっても、リターンスプリングの付勢力によって、スイングアームは変速操作軸を低速側へ戻す方向にスイングする。従って、操舵角伝達機構のフェールセーフ性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る乗用型作業機の側面図である。
【図2】図1に示された操舵系と走行系と戻し機構の系統図である。
【図3】図2に示された操舵角伝達機構の断面図である。
【図4】図3に示された操舵角伝達機構の分解図である。
【図5】図3に示された操舵角伝達機構の平面図である。
【図6】図5に示された操舵角伝達機構の操舵状態の作用図である。
【図7】図2に示された走行系と戻し機構との関係を示す斜視図である。
【図8】図7に示された戻し機構の側面図である。
【図9】図8に示された戻し機構を前方から見た図である。
【図10】図8に示された戻し機構の分解図である。
【図11】図8に示された戻し機構の操作レバーが最高速の前進位置にある状態の作用図である。
【図12】図8に示されている戻し機構の模式図である。
【図13】図11に示されている戻し機構の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を実施するための形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0021】
実施例に係る乗用型作業機について、乗用型芝刈機を一例として説明する。
【0022】
図1及び図2に示されるように、乗用型作業機10は、作業系20と操舵系30と走行系60とを備え、1つのエンジン11によって走行しながら作業系20を駆動する形式の作業機である。つまり、エンジン11は、作業系20をベルト駆動する他に、走行系60を別のベルトによって駆動する。該乗用型作業機10は、例えば作業系20が芝刈り作業部によって構成されている、乗用型芝刈機である。
【0023】
該エンジン11は、乗用型作業機10(乗用型芝刈機10)の機体12の後上部に取り付けられている。該機体12は、前部左右に前輪13,13を備えるとともに、後部左右に後輪14,14を備える。左右の前輪13,13は、機体12の前部に備えたステアリングハンドル31によって操舵される操舵輪である。左右の後輪14,14は、エンジン11の動力によって駆動される駆動輪である。
【0024】
図1に示されるように、芝刈り作業部20(作業系20)は、機体12の中央下部に設けられており、エンジン11の動力によってベルト駆動されるカッタ21と、該カッタ21を収納するための下開放のカッタハウジング22とから成る。カッタ21によって刈られた芝は、カッタハウジング22から芝収納バッグ23に送られて収納される。
【0025】
操舵系30は、ステアリングハンドル31によって左右の前輪13,13(操舵輪13,13)を操舵する系統の構成である。詳しく述べると、該操舵系30は、該ステアリングハンドル31と、該ステアリングハンドル31に連結されたステアリング軸32と、該ステアリング軸32に連結された操舵用ギヤ33と、該操舵用ギヤ33に噛み合う被動ギヤ34と、該被動ギヤ34が連結された中間軸35と、該中間軸35に連結されたピットマンアーム36(転舵アーム36)と、該ピットマンアーム36に左右のタイロッド37,37及び左右のナックルアーム38,38を介して連結された左右の前輪13,13と、から成る。操舵用ギヤ33は平ギヤによって構成される。被動ギヤ34はセクタギヤによって構成される。
【0026】
ステアリングハンドル31を左右に操舵することによって発生する操舵トルクは、ステアリング軸32、操舵用ギヤ33、被動ギヤ34、中間軸35、ピットマンアーム36、左右のタイロッド37,37及び左右のナックルアーム38,38を介して左右の前輪13,13に伝わる。この結果、左右の前輪13,13は転舵する。
【0027】
さらに該操舵系30は、図2に示されるように操舵角伝達機構39を備える。該操舵角伝達機構39は、ステアリングハンドル31の操舵角を後述するスイングアーム73に伝えるものであり、操舵角変換機構40とワイヤケーブル51とリターンスプリング57とから成る。
【0028】
操舵角変換機構40は、ステアリングハンドル31の操舵角を直線方向の変位量に変換するものである。図3〜図5に示されるように、該操舵角変換機構40は、スライドピン41と連結ピン42とスライドベース43と第1アーム44と第2アーム45とから成る。
【0029】
スライドピン41及び連結ピン42は、中間軸35に対して平行である。スライドベース43は、機体12に取り付けられているとともに、中間軸35に対して直交する方向に細長い直線状のガイド部43aを有している。該ガイド部43aは、直線状の長孔又は長溝によって構成されている。スライドピン41は、ガイド部43aに対して直線状にスライド可能に嵌合されている。スライドピン41には、第1アーム44の一端部がスイング可能に連結されている。第1アーム44の他端部には、連結ピン42によって、第2アーム45の一端部が相対的にスイング可能に連結されている。第2アーム45の他端部は、被動ギヤ34に結合されている。
【0030】
ステアリングハンドル31(図2参照)の操舵角が零の状態、つまり直進状態においては、図5に示されるように中間軸35を軸方向に見たときに、該中間軸35に対して、スライドピン41及び連結ピン42は1つの直線L1上(第1直線L1上)に位置している。また、ガイド部43aは第1直線L1上に細長い。ガイド部43aに対して、スライドピン41は中間軸35から離れた端(直進位置Ps)に位置している。
【0031】
その後、ステアリングハンドル31を右へ操舵した場合には、操舵された右方向の操舵角に従ってステアリング軸32、操舵用ギヤ33及び被動ギヤ34が回転変位する。該被動ギヤ34の回転変位に従って、第2アーム45及び第1アーム44はスイング運動をする。この結果、スライドピン41は、ガイド部43aに案内されて中間軸35に接近する方向(操舵方向)に直線運動をする。この結果は図6に示されている。スライドピン41の直線方向の変位量、つまりスライド量は、ステアリングハンドル31の操舵角に対応する。ステアリングハンドル31を左へ操舵した場合も同様である。このように、操舵角変換機構40は、ステアリングハンドル31の操舵角を直線方向の変位量に変換することができる。
【0032】
なお、中間軸35から連結ピン42までの距離と、該連結ピン42からスライドピン41までの距離と、の比率については、適宜設定することが可能である。該比率を設定することによって、ステアリングハンドル31の操舵角の変化の度合いに対する、スライドピン41のスライド量の変化の度合いを、最適条件となるように自由に設定することが可能である。例えば、該比率を設定することによって、操舵角が零の付近では、操舵角の変化量に対するスライド量の変化度合いを小さくするとともに、操舵角が大きい場合には操舵角の変化量に対するスライド量の変化度合いを大きくすることも可能である。
【0033】
ワイヤケーブル51は、アウタチューブ52と、該アウタチューブ52によって被覆されたインナワイヤ53とから成る。該アウタチューブ52の一端部52aは、ガイド部43aの長手方向に沿って第1直線L1上(図5参照)に位置し、機体12に取り付けられている。より詳しく述べると、該一端部52aは、ガイド部43aよりも機体前方(中間軸35寄り)に位置するとともに、機体後方(中間軸35とは反対方向)へ向かって開放している。この開放した端52bのことを、開放端52bという。
【0034】
該インナワイヤ53の一端部53aは、アウタチューブ52の一端部52aの開放端52bから露出するとともに、機体後方へ向かって延び、アダプタ54及びケーブル連結ピン55を介して第1アーム44の一端部に連結されている。該ケーブル連結ピン55は、常にスライドピン41と同じ位置に位置する。
【0035】
なお、スライドピン41は、ケーブル連結ピン55を兼ねることが可能である。その場合には、スライドピン41がケーブル連結ピン55の役割を有するので、アダプタ54は不要である。
【0036】
図1及び図2に示されるように、該走行系60は、エンジン11の動力によって左右の後輪14,14(駆動輪14,14)を駆動する。詳しく述べると、走行系60は、ベルト伝達機構61と油圧式無段変速機62と左右の後輪14,14とから成る。油圧式無段変速機62は、機体12の後下部に取り付けられており、エンジン11の動力を左右の後輪14,14に伝達する。従って、エンジン11の動力は、ベルト伝達機構61及び油圧式無段変速機62を介して左右の後輪14,14に伝達される。
【0037】
油圧式無段変速機62は、エンジン11によって駆動される入力軸62aの回転方向に対して、後輪14,14に出力する出力軸62bの回転方向を正逆転切り替えが可能であるとともに、入力軸62aの回転速度に対して出力軸62bの回転速度を無段階に変速切り替えが可能な変速機構である。つまり、該油圧式無段変速機62は、変速操作軸62cに連結されている変速レバー63のスイング位置に従い、入力軸62aの回転速度に対して、出力軸62bの回転を停止させる中立位置Tn(停止位置Tn)と、出力軸62bを正転で無段階に変速させる正転変速モードと、出力軸62bを逆転で無段階に変速させる逆転変速モードとに、変速することができる。該変速操作軸62cは、油圧式無段変速機62の変速機構を切り換えるための回転軸である。
【0038】
変速レバー63が中立位置Tnにあるときには、出力軸62bは回転を停止する。変速レバー63が中立位置Tnに対して一方にスイングしたときには、出力軸62bの回転モードが正転変速モードに入るので、出力軸62bは正転するとともに、変速レバー63のスイング角に従って、無段階に変速する。変速レバー63が中立位置Tnに対して他方にスイングしたときには、出力軸62bの回転モードが逆転変速モードに入るので、出力軸62bは逆転するとともに、変速レバー63のスイング角に従って、無段階に変速可能である。
【0039】
該油圧式無段変速機62は、変速操作機構70によって変速操作される。図2及び図7に示されるように、該変速操作機構70は、操作レバー71と支持部材72とスイングアーム73とロッド74とを、主要な構成要素としている。
【0040】
該操作レバー71は、油圧式無段変速機62を変速操作をするようにスイング動作が可能な操作部材であって、図1に示されるように、乗用型作業機10のシート15に着座している作業者が手動操作をすることが可能に、乗用型作業機10の側部に配置されている。該操作レバー71は、機体12の前後方向にスイング操作可能である。
【0041】
図7及び図8は、操作レバー71が中立位置Mnに位置している状態を示している。該操作レバー71は、中立位置Mn(停止位置Mn)にあるときに、油圧式無段変速機62を停止状態に維持する。さらに、該操作レバー71は、中立位置Mnから前後にスイング操作することによって、油圧式無段変速機62の前後進操作と変速操作の両方を行うことが可能である。つまり、操作レバー71を中立位置Mnから前方にスイング操作すれば前進操作となり、且つ中立位置Mnから最高速の前進位置Mfまでの範囲が前進領域Fmである。前進領域Fmでは、操作レバー71が最高速の前進位置Mfに近づくほど、高速の前進操作となる。一方、操作レバー71を中立位置Mnから後方にスイング操作すれば後進操作となり、且つ中立位置Mnから最高速の後進位置Mrまでの範囲が後進領域Rmである。後進領域Rmでは、操作レバー71が最高速の後進位置Mrに近づくほど、高速の後進操作となる。
【0042】
図7〜図10に示されるように、該支持部材72は、支持本体72aと、該支持本体72aから乗用型作業機10の幅方向に延びる支軸72bと、該支持本体72aの側部から垂下した平板状の支持板72cと、から成る。操作レバー71のスイング基部71aは、支持本体72aに取り付けられている。該操作レバー71は、支持本体72aに対して上方へ延びるとともに、支持本体72aに対して、機体12の前後方向への相対的なスイング運動が規制されている。言い換えると、該支持部材72は、操作レバー71のスイング基部71aに設けられていることになる。このような該支持部材72は、操作レバー71と共に変速操作方向(機体12の前後方向)にスイング動作が可能である。該支軸72bは、軸受75によって機体12に回転可能に支持されている。該支持板72cは、板面が乗用型作業機10の幅方向を向いており、板面の前下部には概ね上下に細長いガイド孔72dが形成されている。
【0043】
スイングアーム73は、機体12の前後方向に細長い板材によって構成され、長手中間部を支持板72cの下後部に支持ピン76によって上下スイング可能に連結されている。つまり、該スイングアーム73の長手方向中間部は、支持部材72に対し、該支持部材72のスイング可能方向と同方向にスイング可能に支持されている。該スイングアーム73の前部は、前下方へ延びている。
【0044】
該スイングアーム73の前端部には、乗用型作業機10の幅方向に延びるガイドピン77が取り付けられている。図8に示されるように、該ガイドピン77は、支持部材72のスイング中心P1(支軸72bの中心P1)とスイングアーム73のスイング中心P2(支持ピン76の中心P2)とを通る直線L2、つまり第2直線L2に対して機体前方に位置して、ガイド孔72dに嵌合されている。スイングアーム73が支持ピン76を中心に上下スイングしたときに、ガイドピン77はガイド孔72dに案内される。
【0045】
図7〜図10に示されるように、アウタチューブ52の他端部52cは、支持部材72に取り付けられている。スイングアーム73の後端部には、上記ワイヤケーブル51のインナワイヤ53の他端部53bがケーブル連結ピン78によって連結されている。従って、該ワイヤケーブル51は、ステアリングハンドル31の操舵角をスイングアーム73に伝える役割を果たすことが可能である。
【0046】
図8に示されるように、該ケーブル連結ピン78は、第2直線L2に対して機体後方に位置するとともに、スイングアーム73のスイング中心P2とガイドピン77の中心P3とを通る直線L3(第3直線L3)に対して機体下方に位置する。支持部材72の支軸72bに対して、支持ピン76とガイドピン77とケーブル連結ピン78とは、平行である。
【0047】
図7〜図10に示されるように、ロッド74は、該スイングアーム73に連結されて、操作レバー71の操作力を油圧式無段変速機62(図7参照)の変速操作軸62cに伝達するための部材である。詳しく述べると、該ロッド74の一端部74aはガイドピン77に取り付けられている。
【0048】
図9に示されるように、変速操作機構70は、機体12の上部を覆うカバー16によって、覆われている。つまり、図7及び図9に示されるように、変速操作機構70は機体12の側部に且つ下方が開放されたスペースに配置されている。このため、乗用型作業機10に他の部材を配置するためのスペースを確保することが容易である。このため、他の部材の配置の自由度が高まる。
【0049】
図7に示されるように、該ロッド74は、ガイドピン77の位置から後方へ延び、後端部74bを第1中間アーム81、中間操作軸82、第2中間アーム83及びリンク84を介して、油圧式無段変速機62の変速レバー63に連結されている。ガイドピン77に対して、中間操作軸82、及び油圧式無段変速機62の変速操作軸62cは、平行であり、乗用型作業機10の幅方向に延びている。第1中間アーム81は、中間操作軸82から前下方へ延びている。
【0050】
中間操作軸82は、油圧式無段変速機62の前に位置するとともに、機体12に回転可能に支持されている。第1中間アーム81は、基端部を中間操作軸82の一端部に結合されるとともに、スイング先端部をロッド74の後端部74bに連結されている。第2中間アーム83は、基端部を中間操作軸82の他端部に結合されるとともに、スイング先端部をリンク84の一端部に連結されている。該リンク84の他端部は、変速レバー63に連結されている。
【0051】
図7〜図10に示されるように、支持本体72aの前上部には、上部ばね掛け部86が設けられている。スイングアーム73の前端部には、ガイドピン77によって下部ばね掛け部87が取り付けられている。上部ばね掛け部86と下部ばね掛け部87の間には、引張コイルばねから成る前記リターンスプリング57が掛け渡されている。該リターンスプリング57は、支持部材72の前上部とスイングアーム73の前端部との間に掛け渡されることにより、支持部材72に対してスイングアーム73の前端部を常に引き上げる方向(図8において反時計回り方向)に付勢する。言い換えると、該リターンスプリング57は、図2に示される変速操作軸62cを低速側へ戻す方向に、スイングアーム73を付勢している。
【0052】
このように、該スイングアーム73の後端部は、リターンスプリング57によって付勢されることにより、ワイヤケーブル51のインナワイヤ53を常に引っ張っている。この結果、該インナワイヤ53は、図3及び図5に示されるスライドピン41を、ガイド部43aに沿って中間軸35に近づく方向に、常に引っ張っている。
【0053】
これに対し、ステアリングハンドル31(図2参照)の操舵角が零の状態、つまり直進状態(中立状態)においては、図5に示されるように中間軸35、スライドピン41及び連結ピン42の全てが第1直線L1上に位置している。このため、スライドピン41は中間軸35から離れている直進位置Psに、そのまま位置している。
【0054】
さらには、上述のようにスイングアーム73は、変速操作軸62c(図2参照)を低速側へ戻す方向、つまりフェールセーフとなる方向に、常にリターンスプリング57によって付勢されている。このため、操舵角伝達機構39に何らかのアクシデントが発生した場合、例えばインナワイヤ53が破断した場合であっても、リターンスプリング57の付勢力によって、スイングアーム73は変速操作軸62cを低速側へ戻す方向にスイングする。従って、操舵角伝達機構39のフェールセーフ性能を高めることができる。
【0055】
さらには、リターンスプリング57の付勢力は、油圧式無段変速機62の変速操作軸62cを確実に作動することが可能なように、スイングアーム73に対するロッド74の傾き角や、第1中間アーム81に対するロッド74の傾き角を考慮して、設定される。
【0056】
上記変速操作機構70のうちの少なくとも「支持部材72、スイングアーム73及びロッド74」と、操舵角伝達機構39との組み合わせによって、戻し機構90が構成されている。該戻し機構90は、操作レバー71によって変速操作されている油圧式無段変速機62の変速状態を、ステアリングハンドル31による旋回操舵時に減速する方向に戻すための機構であって、操作レバー71のスイング基部71aに設けられている。
【0057】
次に、操作レバー71の操作による油圧式無段変速機62の作用について説明する。例えば、図8に示されるように、操作レバー71を中立位置Mnから前方Fr、つまり前進領域Fmにスイング操作した場合には、スイング中心P1を基準として、操作レバー71と共に支持部材72及びスイングアーム73が同方向(図時計回り)にスイングする。操作レバー71が最高速の前進位置Mfまでスイングした状態を、図11に示す。
【0058】
該スイングアーム73が図時計回り方向にスイングすることにより、ロッド74は後退して第1中間アーム81を図時計回りにスイング作動させる。このため、中間操作軸82は図時計回りに回り、図7に示される第2中間アーム83及びリンク84を介して、変速レバー63を図時計回りにスイング作動させる。この結果、油圧式無段変速機62は、出力軸62bを停止状態から前進方向への回転に切り替えるとともに、操作レバー71の操作量に従って高速にする。
【0059】
一方、図8に示されるように、操作レバー71を中立位置Mnから後方Rr、つまり後進領域Rmにスイング操作した場合には、図7に示される油圧式無段変速機62は、出力軸62bを停止状態から後進方向への回転に切り替えるとともに、操作レバー71の操作量に従って高速にする。
【0060】
次に、ステアリングハンドル31(図2参照)の操舵に伴う油圧式無段変速機62の作用について説明する。図8に示されるように、操作レバー71が中立位置Mnに位置している状態では、乗用型作業機10(図2参照)は走行を停止している。図5に示されるように中間軸35、スライドピン41及び連結ピン42は第1直線L1上に位置している。さらに、スライドピン41は直進位置Psに位置している。
【0061】
このように、操作レバー71が中立位置Mnに位置している状態において、ステアリングハンドル31を左又は右に操舵すると、操舵角に従って、図6に示される第1アーム44及び第2アーム45がスイング運動をする。このため、スライドピン41は、ガイド部43aに案内されて中間軸35に接近する方向にスライドする。該スライドピン41のスライド量は、ステアリングハンドル31の操舵角に対応する。ステアリングハンドル31を左へ操舵した場合も同様である。このように、操舵角変換機構40は、ステアリングハンドル31の操舵角を直線方向の変位量に変換することができる。
【0062】
該スライドピン41が中間軸35に接近する方向にスライドするに連れて、インナワイヤ53(図3参照)が緩む。このため、リターンスプリング57(図8参照)の付勢力により、スイングアーム73は図12の実線によって示される位置から図反時計回り方向にスイングして、破線によって示される位置に至る。この結果、ガイドピン77の中心P3は、スイングアーム73のスイング中心P2を基準とした円弧の軌跡Los(小円弧状の軌跡Los)上を変位して、位置P3aに至る。ガイドピン77の中心P3が位置P3aまで変位することにより、ロッド74は破線によって示されるように反時計回りに変位する。
【0063】
この場合に、連結中心P4を基準とした、ガイドピン77の中心P3の円弧の軌跡Lom(大円弧状の軌跡Lom)は、小円弧状の軌跡Losに概ね合致する。つまり、ステアリングハンドル31の操舵角に従ってガイドピン77の中心P3が変位する程度では、小円弧状の軌跡Losと大円弧状の軌跡Lomとの位置ずれは、実質的に零(零又はほぼ零)である。従って、ロッド74がロッド長手方向に変位しないので、連結中心P4の位置は実質的に変化しない(油圧式無段変速機62に影響を与えるほどの変化がない。)。この結果、図7に示される油圧式無段変速機62の出力軸62bが停止状態を維持しているので、乗用型作業機10は停止状態を維持している。
【0064】
このように、操作レバー71が中立位置Mnに位置している状態では、ガイドピン77の中心P3が位置P3aまで変化しても、第1中間アーム81が作動しないように、各点P1〜P5の位置が設定されている。このため、操作レバー71が中立位置Mnに位置している状態では、エンジン11(図2参照)が作動中であったとしても、ステアリングハンドルの操舵角にかかわらず、乗用型作業機10は停止状態を維持している。
【0065】
一方、図8に示されるように、中立位置Mnに位置している操作レバー71が前進領域Fm、例えば最高速の前進位置Mfへ操作された場合には、次の通りである。つまり、第1中間アーム81は、図13に示される前下方へ傾いている状態(一点鎖線によって示されている状態)から、図時計回りにスイングすることによって、概ね垂直な状態(実線によって示された状態)に変化する。このため、乗用型作業機10(図2参照)は最高速で前進走行をしている。
【0066】
この状態において、ステアリングハンドル31(図2参照)を左又は右に操舵すると、操舵角に従ってインナワイヤ53が緩む。このため、リターンスプリング57(図11参照)の付勢力により、スイングアーム73は図13の実線によって示される位置から図反時計回り方向にスイングして、破線によって示される位置に至る。この結果、ガイドピン77の中心P3は、スイングアーム73のスイング中心P2を基準とした小円弧状の軌跡Los上を変位して、位置P3aに至る。ガイドピン77の中心P3が位置P3aまで前方に変化する変化量はδであり、大きい。
【0067】
ガイドピン77の中心P3が位置P3aまで変位することにより、ロッド74は実線によって示される位置から、破線によって示される位置まで、反時計回りに変位する。前記変化量δが大きいので、ロッド74は前方へ大きく変位し、この結果、連結中心P4が前方へ変位するので、第1中間アーム81は図反時計回り方向に変化点P4aまでスイングする。つまり、第1中間アーム81は、実線によって示されている最高速の前進位置から、一点鎖線によって示されている停止位置へ向かって、図反時計回り方向にスイングし、破線によって示される減速位置に至る。この結果、図7に示される油圧式無段変速機62の変速レバー63が減速方向に変化するので、乗用型作業機10は減速する。
【0068】
このように、図2に示されるステアリングハンドル31は、旋回操舵されたときに戻し機構90を作動させる。該戻し機構90は、操作レバー71によって変速操作されている油圧式無段変速機62の変速状態を、減速方向に戻すように作動する。この結果、油圧式無段変速機62が減速するので、乗用型作業機10は自動的に減速する。
【0069】
なお、図7に示される支軸72bは、軸受75に対して予め設定されている摩擦力を有して、回転可能である。このため、作業者が操作レバー71から手を離しても、該操作レバー71は現在位置を維持することが可能である。例えば、ステアリングハンドル31(図2参照)が操舵されたときであっても、該操作レバー71が操舵力によってレバー位置が変化することはなく、現在位置を維持するように、該摩擦力が設定される。操舵力によって操作レバー71及び支持部材72が作動しないので、その分、小さい操舵力によって油圧式無段変速機62を減速操作することができる。
【0070】
以上の説明をまとめると、次の通りである。本実施例では、図2に示されるように、旋回時の走行速度を自動的に減速させるための戻し機構90が、操作レバー71のスイング基部71aに設けられている。このため、旋回時の走行速度を自動的に減速させるための機構が操作レバー71とは別個に設けられる場合に比べて、該戻し機構90を簡略化することができる。しかも、該戻し機構90が操作レバー71のスイング基部71aに設けられているので、乗用型作業機10に他の部材を配置するためのスペースを確保することが容易である。このため、他の部材の配置の自由度が高まる。さらには、該戻し機構90を、1つのエンジン11によって作業系20(図1参照)と走行系60の両方を駆動する形式の乗用型作業機にも採用することが可能である。
【0071】
さらに、本実施例では、戻し機構90は、操作レバー71と共に変速操作方向にスイング動作が可能な支持部材72と、該支持部材72にスイング可能に支持されたスイングアーム73と、該スイングアーム73に連結されたロッド74と、ステアリングハンドル31の操舵角をスイングアーム73に伝える操舵角伝達機構39と、から成る簡単な構成である。
【0072】
ステアリングハンドル31が直進操舵状態にあるときには、該ステアリングハンドル31の操舵角は零である。このときには、操作レバー71の変速操作に従って、該操作レバー71及び支持部材72と共にスイングアーム73がスイングすることにより、ロッド74を介して油圧式無段変速機62の変速操作軸62cを変速させる。
【0073】
一方、ステアリングハンドル31が旋回操舵されたときには、該ステアリングハンドル31の操舵角を、操舵角伝達機構39がスイングアーム73に伝える。該スイングアーム73は、支持部材72に対してスイングすることにより、ロッド74を介して油圧式無段変速機62の変速操作軸を減速する方向に戻す。
【0074】
さらに、本実施例では、ステアリングハンドル31の操舵角をスイングアーム73に伝える手段を、ワイヤケーブル51によって構成したので、ステアリングハンドル31に対するスイングアーム73の配置関係の制約がない。このため、戻し機構90の配置の自由度を高めることができる。
【0075】
なお、本発明では、操舵角伝達機構39は、ステアリングハンドル31の操舵角をスイングアーム73に伝えることが可能に、少なくともワイヤケーブル51とリターンスプリング57とを有する構成であればよく、必ずしも操舵角変換機構40を必要としない。例えば、ステアリングハンドル31の操舵角の変化を、直線方向の変位量に変換することなく、ワイヤケーブル51によってスイングアーム73に伝える構成であってもよい。
【0076】
また、変速操作機構70には、第1中間アーム81、中間操作軸82、第2中間アーム83及びリンク84を含んでいるが、これらの部材81〜84は必ずしも必要ではなく、乗用型作業機10全体の配置関係のなかで適宜設ければよい。つまり、変速操作機構70は、ロッド74の後端部74bを変速レバー63に直接に連結してもよい。その場合には、変速レバー63を第1中間アーム81と同じ長さや向きに設定すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の乗用型作業機10は、乗用型芝刈機に好適である。
【符号の説明】
【0078】
10…乗用型作業機(乗用芝刈機)、11…エンジン、14…走行用の駆動輪(後輪)、31…ステアリングハンドル、39…操舵角伝達機構、51…ワイヤケーブル、57…リターンスプリング、62…油圧式無段変速機、62c…変速操作軸、71…操作レバー、71a…操作レバーのスイング基部、72…支持部材、73…スイングアーム、74…ロッド、90…戻し機構。
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの動力によって走行するとともに、旋回時の走行速度を自動的に減速することが可能な乗用型作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、乗用型作業機の旋回時における車体の安定性や作業の安定性(走行しながら作業を行うときの、作業条件を安定的に且つ効率良く行うことが可能なこと。)を確保するために、操舵系統と走行系統とを連係させる技術の開発が進められている。中でも、農作業機のように厳しい作業環境で使用する乗用型作業機では、耐久性を確保するために、電気的な制御システムを用いることなく、機械的システムによってのみ、旋回時の走行速度を自動的に減速する技術の開発が進められている(例えば、特許文献1−2参照。)。
【0003】
特許文献1で知られている乗用型作業機は、ステアリングハンドルに連動する左右の旋回連動機構とアクセルレバーとを備えた、トラクタによって構成されている。アクセルレバーを操作して、アクセルロッドを介してガバナ及び燃料噴射装置を調節することにより、エンジンの回転速度を調節することが可能である。ステアリングハンドルを左又は右へ操舵したときには、該ステアリングハンドルに連動した左又は右の旋回連動機構が、アクセルロッドを介してガバナ及び燃料噴射装置を絞る。この結果、該エンジンが減速するので、旋回時の乗用型作業機は自動的に減速する。
【0004】
しかし、特許文献1で知られている乗用型作業機では、左右の旋回連動機構をアクセルロッドの近傍に配置する必要があり、旋回時の走行速度を自動的に減速するための構成が、複雑で大型にならざるを得ない。しかも、左右の旋回連動機構をアクセルロッドの近傍に配置するので、乗用型作業機に他の種々の部材を配置するためのスペースを確保するのに限界があり、この結果、他の部材の配置の自由度が低い。さらには、旋回時の走行速度を自動的に減速するための構成は、エンジン自体を減速するのであるから、1つのエンジンによって走行系と作業系の両方を駆動する形式の乗用型作業機には採用できない。つまり、特許文献1で知られている技術は、1つのエンジンによって走行しながら作業系を駆動する形式の乗用型作業機には、不向きである。
【0005】
特許文献2で知られている乗用型作業機は、エンジンの動力をギヤ式変速装置を介して車輪に伝達するものである。さらに、特許文献2で知られている乗用型作業機は、エンジンとギヤ式変速装置との間に介在したベルト式無段変速機と、ステアリングハンドルに連動して該ベルト式無段変速機を減速するように切り換える切換え機構とを備える。該切換え機構は、ステアリングハンドルの操舵角が一定以上であることを、カムによって検出したときに、ベルト式無段変速機を減速する方向に切り換える。この結果、旋回時の乗用型作業機は自動的に減速する。
【0006】
しかし、特許文献2で知られている乗用型作業機では、ギヤ式変速装置の他にベルト式無段変速機を備える必要があり、旋回時の走行速度を自動的に減速するための構成が、複雑で大型にならざるを得ない。しかも、乗用型作業機にギヤ式変速装置とベルト式無段変速機の両方を備えたのでは、他の種々の部材を配置するためのスペースを確保するのに限界があり、この結果、他の部材の配置の自由度が低い。
【0007】
このように、特許文献1〜2で知られている乗用型作業機は、いずれも旋回時の走行速度を自動的に減速するための構成が複雑であり、更なる改良の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭51−42218号公報
【特許文献2】実開昭57−91414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、旋回時の走行速度を自動的に減速するための構成を簡略化するとともに、該構成を、1つのエンジンによって走行系と作業系の両方を駆動する形式の乗用型作業機に採用することが可能な技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明では、ステアリングハンドルと、エンジンと、該エンジンの動力を走行用の駆動輪に伝達する油圧式無段変速機と、該油圧式無段変速機を変速操作をするようにスイング動作が可能な操作レバーと、を備えた乗用型作業機において、前記操作レバーのスイング基部には、該操作レバーによって変速操作されている前記油圧式無段変速機の変速状態を、前記ステアリングハンドルによる旋回操舵時に減速する方向に戻すための、戻し機構が設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る発明では、前記戻し機構は、前記操作レバーの前記スイング基部に設けられて、該操作レバーと共に変速操作方向にスイング動作が可能な支持部材と、該支持部材に対し、該支持部材のスイング可能方向と同方向にスイング可能に支持されたスイングアームと、該スイングアームに連結されて、前記操作レバーの操作力を前記油圧式無段変速機の変速操作軸に伝達するためのロッドと、前記ステアリングハンドルの操舵角に従って前記スイングアームをスイングさせるように、前記ステアリングハンドルの操舵角を前記スイングアームに伝える操舵角伝達機構と、から成ることを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る発明では、前記操舵角伝達機構は、前記ステアリングハンドルの操舵角を前記スイングアームに伝えるワイヤケーブルと、前記変速操作軸を低速側へ戻す方向に、前記スイングアームを付勢しているリターンスプリングと、から成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明では、旋回時の走行速度を自動的に減速させるための戻し機構が、操作レバーのスイング基部に設けられている。このため、旋回時の走行速度を自動的に減速させるための機構が操作レバーとは別個に設けられる場合に比べて、該戻し機構を簡略化することができる。しかも、該戻し機構が操作レバーのスイング基部に設けられているので、乗用型作業機に他の部材を配置するためのスペースを確保することが容易である。このため、他の部材の配置の自由度が高まる。さらには、該戻し機構を、1つのエンジンによって走行系と作業系の両方を駆動する形式の乗用型作業機にも採用することが可能である。
【0014】
ステアリングハンドルは、旋回操舵されたときに戻し機構を作動させる。該戻し機構は、操作レバーによって変速操作されている油圧式無段変速機の変速状態を、減速方向に戻すように作動する。この結果、油圧式無段変速機が減速するので、乗用型作業機は自動的に減速する。
【0015】
請求項2に係る発明では、戻し機構は、操作レバーと共に変速操作方向にスイング動作が可能な支持部材と、該支持部材にスイング可能に支持されたスイングアームと、該スイングアームに連結されたロッドと、ステアリングハンドルの操舵角をスイングアームに伝える操舵角伝達機構と、から成る簡単な構成である。
【0016】
ステアリングハンドルが直進操舵状態にあるときには、該ステアリングハンドルの操舵角は零である。このときには、操作レバーの変速操作に従って、該操作レバー及び支持部材と共にスイングアームがスイングすることにより、ロッドを介して油圧式無段変速機の変速操作軸を変速させる。
【0017】
一方、ステアリングハンドルが旋回操舵されたときには、該ステアリングハンドルの操舵角を、操舵角伝達機構がスイングアームに伝える。該スイングアームは、支持部材に対してスイングすることにより、ロッドを介して油圧式無段変速機の変速操作軸を減速する方向に戻す。
【0018】
請求項3に係る発明では、ステアリングハンドルの操舵角をスイングアームに伝える手段を、ワイヤケーブルによって構成したので、ステアリングハンドルに対するスイングアームの配置関係の制約がない。このため、戻し機構の配置の自由度を高めることができる。さらには、スイングアームは、変速操作軸を低速側へ戻す方向(つまり、フェールセーフとなる方向)に、常にリターンスプリングによって付勢されている。このため、操舵角伝達機構に何らかのアクシデントが発生した場合であっても、リターンスプリングの付勢力によって、スイングアームは変速操作軸を低速側へ戻す方向にスイングする。従って、操舵角伝達機構のフェールセーフ性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る乗用型作業機の側面図である。
【図2】図1に示された操舵系と走行系と戻し機構の系統図である。
【図3】図2に示された操舵角伝達機構の断面図である。
【図4】図3に示された操舵角伝達機構の分解図である。
【図5】図3に示された操舵角伝達機構の平面図である。
【図6】図5に示された操舵角伝達機構の操舵状態の作用図である。
【図7】図2に示された走行系と戻し機構との関係を示す斜視図である。
【図8】図7に示された戻し機構の側面図である。
【図9】図8に示された戻し機構を前方から見た図である。
【図10】図8に示された戻し機構の分解図である。
【図11】図8に示された戻し機構の操作レバーが最高速の前進位置にある状態の作用図である。
【図12】図8に示されている戻し機構の模式図である。
【図13】図11に示されている戻し機構の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を実施するための形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0021】
実施例に係る乗用型作業機について、乗用型芝刈機を一例として説明する。
【0022】
図1及び図2に示されるように、乗用型作業機10は、作業系20と操舵系30と走行系60とを備え、1つのエンジン11によって走行しながら作業系20を駆動する形式の作業機である。つまり、エンジン11は、作業系20をベルト駆動する他に、走行系60を別のベルトによって駆動する。該乗用型作業機10は、例えば作業系20が芝刈り作業部によって構成されている、乗用型芝刈機である。
【0023】
該エンジン11は、乗用型作業機10(乗用型芝刈機10)の機体12の後上部に取り付けられている。該機体12は、前部左右に前輪13,13を備えるとともに、後部左右に後輪14,14を備える。左右の前輪13,13は、機体12の前部に備えたステアリングハンドル31によって操舵される操舵輪である。左右の後輪14,14は、エンジン11の動力によって駆動される駆動輪である。
【0024】
図1に示されるように、芝刈り作業部20(作業系20)は、機体12の中央下部に設けられており、エンジン11の動力によってベルト駆動されるカッタ21と、該カッタ21を収納するための下開放のカッタハウジング22とから成る。カッタ21によって刈られた芝は、カッタハウジング22から芝収納バッグ23に送られて収納される。
【0025】
操舵系30は、ステアリングハンドル31によって左右の前輪13,13(操舵輪13,13)を操舵する系統の構成である。詳しく述べると、該操舵系30は、該ステアリングハンドル31と、該ステアリングハンドル31に連結されたステアリング軸32と、該ステアリング軸32に連結された操舵用ギヤ33と、該操舵用ギヤ33に噛み合う被動ギヤ34と、該被動ギヤ34が連結された中間軸35と、該中間軸35に連結されたピットマンアーム36(転舵アーム36)と、該ピットマンアーム36に左右のタイロッド37,37及び左右のナックルアーム38,38を介して連結された左右の前輪13,13と、から成る。操舵用ギヤ33は平ギヤによって構成される。被動ギヤ34はセクタギヤによって構成される。
【0026】
ステアリングハンドル31を左右に操舵することによって発生する操舵トルクは、ステアリング軸32、操舵用ギヤ33、被動ギヤ34、中間軸35、ピットマンアーム36、左右のタイロッド37,37及び左右のナックルアーム38,38を介して左右の前輪13,13に伝わる。この結果、左右の前輪13,13は転舵する。
【0027】
さらに該操舵系30は、図2に示されるように操舵角伝達機構39を備える。該操舵角伝達機構39は、ステアリングハンドル31の操舵角を後述するスイングアーム73に伝えるものであり、操舵角変換機構40とワイヤケーブル51とリターンスプリング57とから成る。
【0028】
操舵角変換機構40は、ステアリングハンドル31の操舵角を直線方向の変位量に変換するものである。図3〜図5に示されるように、該操舵角変換機構40は、スライドピン41と連結ピン42とスライドベース43と第1アーム44と第2アーム45とから成る。
【0029】
スライドピン41及び連結ピン42は、中間軸35に対して平行である。スライドベース43は、機体12に取り付けられているとともに、中間軸35に対して直交する方向に細長い直線状のガイド部43aを有している。該ガイド部43aは、直線状の長孔又は長溝によって構成されている。スライドピン41は、ガイド部43aに対して直線状にスライド可能に嵌合されている。スライドピン41には、第1アーム44の一端部がスイング可能に連結されている。第1アーム44の他端部には、連結ピン42によって、第2アーム45の一端部が相対的にスイング可能に連結されている。第2アーム45の他端部は、被動ギヤ34に結合されている。
【0030】
ステアリングハンドル31(図2参照)の操舵角が零の状態、つまり直進状態においては、図5に示されるように中間軸35を軸方向に見たときに、該中間軸35に対して、スライドピン41及び連結ピン42は1つの直線L1上(第1直線L1上)に位置している。また、ガイド部43aは第1直線L1上に細長い。ガイド部43aに対して、スライドピン41は中間軸35から離れた端(直進位置Ps)に位置している。
【0031】
その後、ステアリングハンドル31を右へ操舵した場合には、操舵された右方向の操舵角に従ってステアリング軸32、操舵用ギヤ33及び被動ギヤ34が回転変位する。該被動ギヤ34の回転変位に従って、第2アーム45及び第1アーム44はスイング運動をする。この結果、スライドピン41は、ガイド部43aに案内されて中間軸35に接近する方向(操舵方向)に直線運動をする。この結果は図6に示されている。スライドピン41の直線方向の変位量、つまりスライド量は、ステアリングハンドル31の操舵角に対応する。ステアリングハンドル31を左へ操舵した場合も同様である。このように、操舵角変換機構40は、ステアリングハンドル31の操舵角を直線方向の変位量に変換することができる。
【0032】
なお、中間軸35から連結ピン42までの距離と、該連結ピン42からスライドピン41までの距離と、の比率については、適宜設定することが可能である。該比率を設定することによって、ステアリングハンドル31の操舵角の変化の度合いに対する、スライドピン41のスライド量の変化の度合いを、最適条件となるように自由に設定することが可能である。例えば、該比率を設定することによって、操舵角が零の付近では、操舵角の変化量に対するスライド量の変化度合いを小さくするとともに、操舵角が大きい場合には操舵角の変化量に対するスライド量の変化度合いを大きくすることも可能である。
【0033】
ワイヤケーブル51は、アウタチューブ52と、該アウタチューブ52によって被覆されたインナワイヤ53とから成る。該アウタチューブ52の一端部52aは、ガイド部43aの長手方向に沿って第1直線L1上(図5参照)に位置し、機体12に取り付けられている。より詳しく述べると、該一端部52aは、ガイド部43aよりも機体前方(中間軸35寄り)に位置するとともに、機体後方(中間軸35とは反対方向)へ向かって開放している。この開放した端52bのことを、開放端52bという。
【0034】
該インナワイヤ53の一端部53aは、アウタチューブ52の一端部52aの開放端52bから露出するとともに、機体後方へ向かって延び、アダプタ54及びケーブル連結ピン55を介して第1アーム44の一端部に連結されている。該ケーブル連結ピン55は、常にスライドピン41と同じ位置に位置する。
【0035】
なお、スライドピン41は、ケーブル連結ピン55を兼ねることが可能である。その場合には、スライドピン41がケーブル連結ピン55の役割を有するので、アダプタ54は不要である。
【0036】
図1及び図2に示されるように、該走行系60は、エンジン11の動力によって左右の後輪14,14(駆動輪14,14)を駆動する。詳しく述べると、走行系60は、ベルト伝達機構61と油圧式無段変速機62と左右の後輪14,14とから成る。油圧式無段変速機62は、機体12の後下部に取り付けられており、エンジン11の動力を左右の後輪14,14に伝達する。従って、エンジン11の動力は、ベルト伝達機構61及び油圧式無段変速機62を介して左右の後輪14,14に伝達される。
【0037】
油圧式無段変速機62は、エンジン11によって駆動される入力軸62aの回転方向に対して、後輪14,14に出力する出力軸62bの回転方向を正逆転切り替えが可能であるとともに、入力軸62aの回転速度に対して出力軸62bの回転速度を無段階に変速切り替えが可能な変速機構である。つまり、該油圧式無段変速機62は、変速操作軸62cに連結されている変速レバー63のスイング位置に従い、入力軸62aの回転速度に対して、出力軸62bの回転を停止させる中立位置Tn(停止位置Tn)と、出力軸62bを正転で無段階に変速させる正転変速モードと、出力軸62bを逆転で無段階に変速させる逆転変速モードとに、変速することができる。該変速操作軸62cは、油圧式無段変速機62の変速機構を切り換えるための回転軸である。
【0038】
変速レバー63が中立位置Tnにあるときには、出力軸62bは回転を停止する。変速レバー63が中立位置Tnに対して一方にスイングしたときには、出力軸62bの回転モードが正転変速モードに入るので、出力軸62bは正転するとともに、変速レバー63のスイング角に従って、無段階に変速する。変速レバー63が中立位置Tnに対して他方にスイングしたときには、出力軸62bの回転モードが逆転変速モードに入るので、出力軸62bは逆転するとともに、変速レバー63のスイング角に従って、無段階に変速可能である。
【0039】
該油圧式無段変速機62は、変速操作機構70によって変速操作される。図2及び図7に示されるように、該変速操作機構70は、操作レバー71と支持部材72とスイングアーム73とロッド74とを、主要な構成要素としている。
【0040】
該操作レバー71は、油圧式無段変速機62を変速操作をするようにスイング動作が可能な操作部材であって、図1に示されるように、乗用型作業機10のシート15に着座している作業者が手動操作をすることが可能に、乗用型作業機10の側部に配置されている。該操作レバー71は、機体12の前後方向にスイング操作可能である。
【0041】
図7及び図8は、操作レバー71が中立位置Mnに位置している状態を示している。該操作レバー71は、中立位置Mn(停止位置Mn)にあるときに、油圧式無段変速機62を停止状態に維持する。さらに、該操作レバー71は、中立位置Mnから前後にスイング操作することによって、油圧式無段変速機62の前後進操作と変速操作の両方を行うことが可能である。つまり、操作レバー71を中立位置Mnから前方にスイング操作すれば前進操作となり、且つ中立位置Mnから最高速の前進位置Mfまでの範囲が前進領域Fmである。前進領域Fmでは、操作レバー71が最高速の前進位置Mfに近づくほど、高速の前進操作となる。一方、操作レバー71を中立位置Mnから後方にスイング操作すれば後進操作となり、且つ中立位置Mnから最高速の後進位置Mrまでの範囲が後進領域Rmである。後進領域Rmでは、操作レバー71が最高速の後進位置Mrに近づくほど、高速の後進操作となる。
【0042】
図7〜図10に示されるように、該支持部材72は、支持本体72aと、該支持本体72aから乗用型作業機10の幅方向に延びる支軸72bと、該支持本体72aの側部から垂下した平板状の支持板72cと、から成る。操作レバー71のスイング基部71aは、支持本体72aに取り付けられている。該操作レバー71は、支持本体72aに対して上方へ延びるとともに、支持本体72aに対して、機体12の前後方向への相対的なスイング運動が規制されている。言い換えると、該支持部材72は、操作レバー71のスイング基部71aに設けられていることになる。このような該支持部材72は、操作レバー71と共に変速操作方向(機体12の前後方向)にスイング動作が可能である。該支軸72bは、軸受75によって機体12に回転可能に支持されている。該支持板72cは、板面が乗用型作業機10の幅方向を向いており、板面の前下部には概ね上下に細長いガイド孔72dが形成されている。
【0043】
スイングアーム73は、機体12の前後方向に細長い板材によって構成され、長手中間部を支持板72cの下後部に支持ピン76によって上下スイング可能に連結されている。つまり、該スイングアーム73の長手方向中間部は、支持部材72に対し、該支持部材72のスイング可能方向と同方向にスイング可能に支持されている。該スイングアーム73の前部は、前下方へ延びている。
【0044】
該スイングアーム73の前端部には、乗用型作業機10の幅方向に延びるガイドピン77が取り付けられている。図8に示されるように、該ガイドピン77は、支持部材72のスイング中心P1(支軸72bの中心P1)とスイングアーム73のスイング中心P2(支持ピン76の中心P2)とを通る直線L2、つまり第2直線L2に対して機体前方に位置して、ガイド孔72dに嵌合されている。スイングアーム73が支持ピン76を中心に上下スイングしたときに、ガイドピン77はガイド孔72dに案内される。
【0045】
図7〜図10に示されるように、アウタチューブ52の他端部52cは、支持部材72に取り付けられている。スイングアーム73の後端部には、上記ワイヤケーブル51のインナワイヤ53の他端部53bがケーブル連結ピン78によって連結されている。従って、該ワイヤケーブル51は、ステアリングハンドル31の操舵角をスイングアーム73に伝える役割を果たすことが可能である。
【0046】
図8に示されるように、該ケーブル連結ピン78は、第2直線L2に対して機体後方に位置するとともに、スイングアーム73のスイング中心P2とガイドピン77の中心P3とを通る直線L3(第3直線L3)に対して機体下方に位置する。支持部材72の支軸72bに対して、支持ピン76とガイドピン77とケーブル連結ピン78とは、平行である。
【0047】
図7〜図10に示されるように、ロッド74は、該スイングアーム73に連結されて、操作レバー71の操作力を油圧式無段変速機62(図7参照)の変速操作軸62cに伝達するための部材である。詳しく述べると、該ロッド74の一端部74aはガイドピン77に取り付けられている。
【0048】
図9に示されるように、変速操作機構70は、機体12の上部を覆うカバー16によって、覆われている。つまり、図7及び図9に示されるように、変速操作機構70は機体12の側部に且つ下方が開放されたスペースに配置されている。このため、乗用型作業機10に他の部材を配置するためのスペースを確保することが容易である。このため、他の部材の配置の自由度が高まる。
【0049】
図7に示されるように、該ロッド74は、ガイドピン77の位置から後方へ延び、後端部74bを第1中間アーム81、中間操作軸82、第2中間アーム83及びリンク84を介して、油圧式無段変速機62の変速レバー63に連結されている。ガイドピン77に対して、中間操作軸82、及び油圧式無段変速機62の変速操作軸62cは、平行であり、乗用型作業機10の幅方向に延びている。第1中間アーム81は、中間操作軸82から前下方へ延びている。
【0050】
中間操作軸82は、油圧式無段変速機62の前に位置するとともに、機体12に回転可能に支持されている。第1中間アーム81は、基端部を中間操作軸82の一端部に結合されるとともに、スイング先端部をロッド74の後端部74bに連結されている。第2中間アーム83は、基端部を中間操作軸82の他端部に結合されるとともに、スイング先端部をリンク84の一端部に連結されている。該リンク84の他端部は、変速レバー63に連結されている。
【0051】
図7〜図10に示されるように、支持本体72aの前上部には、上部ばね掛け部86が設けられている。スイングアーム73の前端部には、ガイドピン77によって下部ばね掛け部87が取り付けられている。上部ばね掛け部86と下部ばね掛け部87の間には、引張コイルばねから成る前記リターンスプリング57が掛け渡されている。該リターンスプリング57は、支持部材72の前上部とスイングアーム73の前端部との間に掛け渡されることにより、支持部材72に対してスイングアーム73の前端部を常に引き上げる方向(図8において反時計回り方向)に付勢する。言い換えると、該リターンスプリング57は、図2に示される変速操作軸62cを低速側へ戻す方向に、スイングアーム73を付勢している。
【0052】
このように、該スイングアーム73の後端部は、リターンスプリング57によって付勢されることにより、ワイヤケーブル51のインナワイヤ53を常に引っ張っている。この結果、該インナワイヤ53は、図3及び図5に示されるスライドピン41を、ガイド部43aに沿って中間軸35に近づく方向に、常に引っ張っている。
【0053】
これに対し、ステアリングハンドル31(図2参照)の操舵角が零の状態、つまり直進状態(中立状態)においては、図5に示されるように中間軸35、スライドピン41及び連結ピン42の全てが第1直線L1上に位置している。このため、スライドピン41は中間軸35から離れている直進位置Psに、そのまま位置している。
【0054】
さらには、上述のようにスイングアーム73は、変速操作軸62c(図2参照)を低速側へ戻す方向、つまりフェールセーフとなる方向に、常にリターンスプリング57によって付勢されている。このため、操舵角伝達機構39に何らかのアクシデントが発生した場合、例えばインナワイヤ53が破断した場合であっても、リターンスプリング57の付勢力によって、スイングアーム73は変速操作軸62cを低速側へ戻す方向にスイングする。従って、操舵角伝達機構39のフェールセーフ性能を高めることができる。
【0055】
さらには、リターンスプリング57の付勢力は、油圧式無段変速機62の変速操作軸62cを確実に作動することが可能なように、スイングアーム73に対するロッド74の傾き角や、第1中間アーム81に対するロッド74の傾き角を考慮して、設定される。
【0056】
上記変速操作機構70のうちの少なくとも「支持部材72、スイングアーム73及びロッド74」と、操舵角伝達機構39との組み合わせによって、戻し機構90が構成されている。該戻し機構90は、操作レバー71によって変速操作されている油圧式無段変速機62の変速状態を、ステアリングハンドル31による旋回操舵時に減速する方向に戻すための機構であって、操作レバー71のスイング基部71aに設けられている。
【0057】
次に、操作レバー71の操作による油圧式無段変速機62の作用について説明する。例えば、図8に示されるように、操作レバー71を中立位置Mnから前方Fr、つまり前進領域Fmにスイング操作した場合には、スイング中心P1を基準として、操作レバー71と共に支持部材72及びスイングアーム73が同方向(図時計回り)にスイングする。操作レバー71が最高速の前進位置Mfまでスイングした状態を、図11に示す。
【0058】
該スイングアーム73が図時計回り方向にスイングすることにより、ロッド74は後退して第1中間アーム81を図時計回りにスイング作動させる。このため、中間操作軸82は図時計回りに回り、図7に示される第2中間アーム83及びリンク84を介して、変速レバー63を図時計回りにスイング作動させる。この結果、油圧式無段変速機62は、出力軸62bを停止状態から前進方向への回転に切り替えるとともに、操作レバー71の操作量に従って高速にする。
【0059】
一方、図8に示されるように、操作レバー71を中立位置Mnから後方Rr、つまり後進領域Rmにスイング操作した場合には、図7に示される油圧式無段変速機62は、出力軸62bを停止状態から後進方向への回転に切り替えるとともに、操作レバー71の操作量に従って高速にする。
【0060】
次に、ステアリングハンドル31(図2参照)の操舵に伴う油圧式無段変速機62の作用について説明する。図8に示されるように、操作レバー71が中立位置Mnに位置している状態では、乗用型作業機10(図2参照)は走行を停止している。図5に示されるように中間軸35、スライドピン41及び連結ピン42は第1直線L1上に位置している。さらに、スライドピン41は直進位置Psに位置している。
【0061】
このように、操作レバー71が中立位置Mnに位置している状態において、ステアリングハンドル31を左又は右に操舵すると、操舵角に従って、図6に示される第1アーム44及び第2アーム45がスイング運動をする。このため、スライドピン41は、ガイド部43aに案内されて中間軸35に接近する方向にスライドする。該スライドピン41のスライド量は、ステアリングハンドル31の操舵角に対応する。ステアリングハンドル31を左へ操舵した場合も同様である。このように、操舵角変換機構40は、ステアリングハンドル31の操舵角を直線方向の変位量に変換することができる。
【0062】
該スライドピン41が中間軸35に接近する方向にスライドするに連れて、インナワイヤ53(図3参照)が緩む。このため、リターンスプリング57(図8参照)の付勢力により、スイングアーム73は図12の実線によって示される位置から図反時計回り方向にスイングして、破線によって示される位置に至る。この結果、ガイドピン77の中心P3は、スイングアーム73のスイング中心P2を基準とした円弧の軌跡Los(小円弧状の軌跡Los)上を変位して、位置P3aに至る。ガイドピン77の中心P3が位置P3aまで変位することにより、ロッド74は破線によって示されるように反時計回りに変位する。
【0063】
この場合に、連結中心P4を基準とした、ガイドピン77の中心P3の円弧の軌跡Lom(大円弧状の軌跡Lom)は、小円弧状の軌跡Losに概ね合致する。つまり、ステアリングハンドル31の操舵角に従ってガイドピン77の中心P3が変位する程度では、小円弧状の軌跡Losと大円弧状の軌跡Lomとの位置ずれは、実質的に零(零又はほぼ零)である。従って、ロッド74がロッド長手方向に変位しないので、連結中心P4の位置は実質的に変化しない(油圧式無段変速機62に影響を与えるほどの変化がない。)。この結果、図7に示される油圧式無段変速機62の出力軸62bが停止状態を維持しているので、乗用型作業機10は停止状態を維持している。
【0064】
このように、操作レバー71が中立位置Mnに位置している状態では、ガイドピン77の中心P3が位置P3aまで変化しても、第1中間アーム81が作動しないように、各点P1〜P5の位置が設定されている。このため、操作レバー71が中立位置Mnに位置している状態では、エンジン11(図2参照)が作動中であったとしても、ステアリングハンドルの操舵角にかかわらず、乗用型作業機10は停止状態を維持している。
【0065】
一方、図8に示されるように、中立位置Mnに位置している操作レバー71が前進領域Fm、例えば最高速の前進位置Mfへ操作された場合には、次の通りである。つまり、第1中間アーム81は、図13に示される前下方へ傾いている状態(一点鎖線によって示されている状態)から、図時計回りにスイングすることによって、概ね垂直な状態(実線によって示された状態)に変化する。このため、乗用型作業機10(図2参照)は最高速で前進走行をしている。
【0066】
この状態において、ステアリングハンドル31(図2参照)を左又は右に操舵すると、操舵角に従ってインナワイヤ53が緩む。このため、リターンスプリング57(図11参照)の付勢力により、スイングアーム73は図13の実線によって示される位置から図反時計回り方向にスイングして、破線によって示される位置に至る。この結果、ガイドピン77の中心P3は、スイングアーム73のスイング中心P2を基準とした小円弧状の軌跡Los上を変位して、位置P3aに至る。ガイドピン77の中心P3が位置P3aまで前方に変化する変化量はδであり、大きい。
【0067】
ガイドピン77の中心P3が位置P3aまで変位することにより、ロッド74は実線によって示される位置から、破線によって示される位置まで、反時計回りに変位する。前記変化量δが大きいので、ロッド74は前方へ大きく変位し、この結果、連結中心P4が前方へ変位するので、第1中間アーム81は図反時計回り方向に変化点P4aまでスイングする。つまり、第1中間アーム81は、実線によって示されている最高速の前進位置から、一点鎖線によって示されている停止位置へ向かって、図反時計回り方向にスイングし、破線によって示される減速位置に至る。この結果、図7に示される油圧式無段変速機62の変速レバー63が減速方向に変化するので、乗用型作業機10は減速する。
【0068】
このように、図2に示されるステアリングハンドル31は、旋回操舵されたときに戻し機構90を作動させる。該戻し機構90は、操作レバー71によって変速操作されている油圧式無段変速機62の変速状態を、減速方向に戻すように作動する。この結果、油圧式無段変速機62が減速するので、乗用型作業機10は自動的に減速する。
【0069】
なお、図7に示される支軸72bは、軸受75に対して予め設定されている摩擦力を有して、回転可能である。このため、作業者が操作レバー71から手を離しても、該操作レバー71は現在位置を維持することが可能である。例えば、ステアリングハンドル31(図2参照)が操舵されたときであっても、該操作レバー71が操舵力によってレバー位置が変化することはなく、現在位置を維持するように、該摩擦力が設定される。操舵力によって操作レバー71及び支持部材72が作動しないので、その分、小さい操舵力によって油圧式無段変速機62を減速操作することができる。
【0070】
以上の説明をまとめると、次の通りである。本実施例では、図2に示されるように、旋回時の走行速度を自動的に減速させるための戻し機構90が、操作レバー71のスイング基部71aに設けられている。このため、旋回時の走行速度を自動的に減速させるための機構が操作レバー71とは別個に設けられる場合に比べて、該戻し機構90を簡略化することができる。しかも、該戻し機構90が操作レバー71のスイング基部71aに設けられているので、乗用型作業機10に他の部材を配置するためのスペースを確保することが容易である。このため、他の部材の配置の自由度が高まる。さらには、該戻し機構90を、1つのエンジン11によって作業系20(図1参照)と走行系60の両方を駆動する形式の乗用型作業機にも採用することが可能である。
【0071】
さらに、本実施例では、戻し機構90は、操作レバー71と共に変速操作方向にスイング動作が可能な支持部材72と、該支持部材72にスイング可能に支持されたスイングアーム73と、該スイングアーム73に連結されたロッド74と、ステアリングハンドル31の操舵角をスイングアーム73に伝える操舵角伝達機構39と、から成る簡単な構成である。
【0072】
ステアリングハンドル31が直進操舵状態にあるときには、該ステアリングハンドル31の操舵角は零である。このときには、操作レバー71の変速操作に従って、該操作レバー71及び支持部材72と共にスイングアーム73がスイングすることにより、ロッド74を介して油圧式無段変速機62の変速操作軸62cを変速させる。
【0073】
一方、ステアリングハンドル31が旋回操舵されたときには、該ステアリングハンドル31の操舵角を、操舵角伝達機構39がスイングアーム73に伝える。該スイングアーム73は、支持部材72に対してスイングすることにより、ロッド74を介して油圧式無段変速機62の変速操作軸を減速する方向に戻す。
【0074】
さらに、本実施例では、ステアリングハンドル31の操舵角をスイングアーム73に伝える手段を、ワイヤケーブル51によって構成したので、ステアリングハンドル31に対するスイングアーム73の配置関係の制約がない。このため、戻し機構90の配置の自由度を高めることができる。
【0075】
なお、本発明では、操舵角伝達機構39は、ステアリングハンドル31の操舵角をスイングアーム73に伝えることが可能に、少なくともワイヤケーブル51とリターンスプリング57とを有する構成であればよく、必ずしも操舵角変換機構40を必要としない。例えば、ステアリングハンドル31の操舵角の変化を、直線方向の変位量に変換することなく、ワイヤケーブル51によってスイングアーム73に伝える構成であってもよい。
【0076】
また、変速操作機構70には、第1中間アーム81、中間操作軸82、第2中間アーム83及びリンク84を含んでいるが、これらの部材81〜84は必ずしも必要ではなく、乗用型作業機10全体の配置関係のなかで適宜設ければよい。つまり、変速操作機構70は、ロッド74の後端部74bを変速レバー63に直接に連結してもよい。その場合には、変速レバー63を第1中間アーム81と同じ長さや向きに設定すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の乗用型作業機10は、乗用型芝刈機に好適である。
【符号の説明】
【0078】
10…乗用型作業機(乗用芝刈機)、11…エンジン、14…走行用の駆動輪(後輪)、31…ステアリングハンドル、39…操舵角伝達機構、51…ワイヤケーブル、57…リターンスプリング、62…油圧式無段変速機、62c…変速操作軸、71…操作レバー、71a…操作レバーのスイング基部、72…支持部材、73…スイングアーム、74…ロッド、90…戻し機構。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングハンドルと、エンジンと、該エンジンの動力を走行用の駆動輪に伝達する油圧式無段変速機と、該油圧式無段変速機を変速操作をするようにスイング動作が可能な操作レバーと、を備えた乗用型作業機において、
前記操作レバーのスイング基部には、該操作レバーによって変速操作されている前記油圧式無段変速機の変速状態を、前記ステアリングハンドルによる旋回操舵時に減速する方向に戻すための、戻し機構が設けられていることを特徴とする乗用型作業機。
【請求項2】
前記戻し機構は、
前記操作レバーの前記スイング基部に設けられて、該操作レバーと共に変速操作方向にスイング動作が可能な支持部材と、
該支持部材に対し、該支持部材のスイング可能方向と同方向にスイング可能に支持されたスイングアームと、
該スイングアームに連結されて、前記操作レバーの操作力を前記油圧式無段変速機の変速操作軸に伝達するためのロッドと、
前記ステアリングハンドルの操舵角に従って前記スイングアームをスイングさせるように、前記ステアリングハンドルの操舵角を前記スイングアームに伝える操舵角伝達機構と、から成ることを特徴とする請求項1記載の乗用型作業機。
【請求項3】
前記操舵角伝達機構は、
前記ステアリングハンドルの操舵角を前記スイングアームに伝えるワイヤケーブルと、
前記変速操作軸を低速側へ戻す方向に、前記スイングアームを付勢しているリターンスプリングと、から成ることを特徴とする請求項2記載の乗用型作業機。
【請求項1】
ステアリングハンドルと、エンジンと、該エンジンの動力を走行用の駆動輪に伝達する油圧式無段変速機と、該油圧式無段変速機を変速操作をするようにスイング動作が可能な操作レバーと、を備えた乗用型作業機において、
前記操作レバーのスイング基部には、該操作レバーによって変速操作されている前記油圧式無段変速機の変速状態を、前記ステアリングハンドルによる旋回操舵時に減速する方向に戻すための、戻し機構が設けられていることを特徴とする乗用型作業機。
【請求項2】
前記戻し機構は、
前記操作レバーの前記スイング基部に設けられて、該操作レバーと共に変速操作方向にスイング動作が可能な支持部材と、
該支持部材に対し、該支持部材のスイング可能方向と同方向にスイング可能に支持されたスイングアームと、
該スイングアームに連結されて、前記操作レバーの操作力を前記油圧式無段変速機の変速操作軸に伝達するためのロッドと、
前記ステアリングハンドルの操舵角に従って前記スイングアームをスイングさせるように、前記ステアリングハンドルの操舵角を前記スイングアームに伝える操舵角伝達機構と、から成ることを特徴とする請求項1記載の乗用型作業機。
【請求項3】
前記操舵角伝達機構は、
前記ステアリングハンドルの操舵角を前記スイングアームに伝えるワイヤケーブルと、
前記変速操作軸を低速側へ戻す方向に、前記スイングアームを付勢しているリターンスプリングと、から成ることを特徴とする請求項2記載の乗用型作業機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−22987(P2013−22987A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157324(P2011−157324)
【出願日】平成23年7月18日(2011.7.18)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月18日(2011.7.18)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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