説明

乾燥膜の除去のための剥離剤

【課題】半導体デバイスの表面からフォトレジスト、エッチング残留物又はアッシング残留物を除去するためのフォトレジスト剥離剤配合物及び方法を提供する。
【解決手段】ヒドロキシルアミンと、水と、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリジン、ジメチルアセトアミド、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、モノエタノールアミン及びそれらの混合物からなる群より選択される溶媒と、水酸化コリン、モノエタノールアミン、水酸化テトラメチルアンモニウム、アミノエチルエタノールアミン及びそれらの混合物からなる群より選択される塩基と、カテコール、没食子酸、乳酸、ベンゾトリアゾール及びそれらの混合物からなる群より選択される金属腐食防止剤と、グリセリン、プロピレングリコール及びそれらの混合物からなる群より選択される浴寿命延長剤とを含むフォトレジスト剥離剤配合物が提供される。さらに、上記配合物を使用する方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ウェハ上の半導体回路の製造では、ウェハは、回路の種々の層、電気デバイス、並びにビア及び相互接続を製作するためにフォトレジストで周期的にコーティングされる。フォトレジストが現像及び使用された後、エッチング及びアッシングが行われ、その結果、さらなる処理の前に除去すべき残留物が生じる。剥離剤が不要なフォトレジストやエッチング及びアッシングの残留物を除去するのに用いられている。所望の回路構造にダメージを与えることなく、フォトレジスト、エッチング残留物又はアッシング残留物を選択的に除去することは難しい。剥離剤は、誘電体材料及び金属導電性材料と適合しなければならない。これら異なるタイプの材料のいずれの腐食速度も許容できるレベル内になければならない。
【0002】
(通常、70〜120ミクロン(μm)に及ぶ)厚い乾燥膜の除去に適用するための商業的に入手可能な剥離剤は、ジメチルスルホキシド(DMSO)と水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)の混合物を含む。これらの剥離剤は、通常は高温(>90℃)で作用するため、浴寿命が短いという問題を抱えている。この分野の剥離剤は、特許文献1〜3に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0263743号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/0094613号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2006/0115970号明細書
【発明の概要】
【0004】
本発明は、
ヒドロキシルアミンと、
水と、
ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリジン、ジメチルアセトアミド、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、モノエタノールアミン、及びそれらの混合物からなる群より選択される溶媒と、
水酸化コリン、モノエタノールアミン、水酸化テトラメチルアンモニウム、アミノエチルエタノールアミン、及びそれらの混合物からなる群より選択される塩基と、
カテコール、没食子酸、乳酸、ベンゾトリアゾール、及びそれらの混合物からなる群より選択される金属腐食防止剤と、
グリセリン、プロピレングリコール、及びそれらの混合物からなる群より選択される浴寿命延長剤と、
を含む、半導体デバイスの表面からフォトレジスト、エッチング残留物又はアッシング残留物を除去するためのフォトレジスト剥離剤配合物である。
【0005】
本発明はまた、上記の配合物を用いてフォトレジスト、エッチング残留物又はアッシング残留物を剥離する方法である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】表2の配合物による洗浄性能を示す走査電子顕微鏡法(SEM)の像である。
【図2】表2の配合物を用いた場合の75時間の試験期間内の銅の損失を示す走査電子顕微鏡法(SEM)の像である。
【図3】表2の配合物を用いた場合の75時間の試験期間にわたる活性な浴寿命を示す走査電子顕微鏡法(SEM)の像である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
フォトレジスト剥離剤配合物が当分野で用いられているが、これまでのところ、これらの配合物は、銅導体のエッチ速度が高く、フォトレジスト剥離剤の活性な浴寿命がより短く、そして使用温度が望ましくないものである。
【0008】
本発明において、新規のフォトレジスト剥離剤が乾燥膜の除去に適用するために開発された。このような問題を改善するために、一連の試験が実施され、乾燥膜の除去及び銅の保護に強く関係する幾つかの重要な成分が見出された。乾燥膜の洗浄に用いられている市販の剥離剤と比較すると、この剥離剤はより穏やかな条件(好ましくは60℃で30分間)のもとで使用することができ、同等の洗浄性能及び銅導線のエッチ速度を有する。さらには、活性な浴寿命が本発明において大きく改善される。
【0009】
本発明の配合物は、以下の幾つかの注目すべき特徴を有する。
1.本発明の剥離剤は、攪拌することなく、60℃で30分間において乾燥膜の良好な洗浄性を示す。
2.さらに、本発明の剥離剤で処理した基材の断面は、走査電子顕微鏡法(SEM)によって調べると、75時間の試験期間内で10%未満の銅の損失を示す。
3.本発明の剥離剤の浴寿命は60℃で75時間を超える。
【実施例】
【0010】
本実施例では、以下の略語が使用される。
TMAH=水酸化テトラメチルアンモニウム
DMSO=ジメチルスルホキシド
HA=ヒドロキシルアミン
NMP=N−メチルピロリジン
DMAC=ジメチルアセトアミド
DPM=ジプロピレングリコールモノメチルエーテル
MEA=モノエタノールアミン
AEEA=アミノエチルエタノールアミン
DIW=脱イオン水
BZT=ベンゾトリアゾール
【0011】
[実施例1]
本発明のフォトレジスト剥離剤配合物は下表1に従って調製した。
【0012】
【表1】

【0013】
得られた本発明のフォトレジスト剥離剤配合物の実施態様は、表2に記載する組成の構成を有し、表2は、好ましい実施態様に関する組成含有物の好ましい範囲を示している。
【0014】
【表2】

【0015】
表2の好ましい実施態様を、基材上に不連続にパターニングされた膜(乾燥膜)に関して60℃で30分間の処理条件下で試験した。図1に示すSEM走査像から、優れた洗浄性能が明らかに示された。
【0016】
下表3に挙げる類似物を含むがそれらに限定されない本発明のフォトレジスト配合物の変形態様が考えられる。
【0017】
【表3】

【0018】
[実施例2]
表2の好ましい実施態様を、60℃の処理条件下、下表4に示す時間間隔において基材上の銅膜に関して試験した。
【0019】
【表4】

【0020】
Cu損失を走査電子顕微鏡法(SEM)によって調べた。SEMのデータを図2に示す。
【0021】
図2と表4の両データは、本発明の剥離剤配合物のこの実施態様が広い範囲の時間の曝露にわたって許容できるレベルの銅のエッチングを示すことを実証している。銅の損失は75時間の試験期間内で10%未満であった。
【0022】
[実施例3]
表2の好ましい実施態様を、基材上に不連続にパターニングされた膜に関して、60℃及び20時間、27時間、45時間及び75時間の時間間隔の処理条件下で試験した。それらのSEM像を図3に示す。下表5は、これらの像から、パターニングされた幾何学的形状からの膜の除去に基づいて、有効な浴寿命の視覚測定を示すものである。
【0023】
【表5】

「鮮明」=望ましくない周囲材料の剥離剤による除去の間、ウェハ上の所望の幾何学的形状が維持され、鋭い角及び形状が維持されている。
【0024】
表5の結果は、表2の実施態様で例示された本発明の剥離剤の活性な浴寿命が75時間の期間にわたって効果的な剥離能力を有することを示している。
【0025】
塩基のさらなる例としては、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ジメチルジエチルアンモニウムヒドロキシド、エチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、及びアンモニウム基上の水素を置換する類似の有機基、例えば、アルキル及びアリール基、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、及びヘキシルの種々の組み合わせを有するアンモニウムヒドロキシドが挙げられる。
【0026】
実施例は、新規のフォトレジスト剥離剤が乾燥膜の除去の用途に関して開発されたことを示している。乾燥膜の除去及び銅の保護に強く関係する幾つかの重要な成分が見出された。剥離剤配合物中のヒドロキシルアミンは乾燥膜と反応して溶解性を向上させ、非常に低い処理温度、典型的には60℃を可能にし、グリセリン及び/又はグリセロールはDIWの蒸発速度を低下させ、浴寿命を延ばし、そしてカテコールは銅の腐食を防ぐ。
【0027】
剥離剤配合物は、実施例において基材上の不連続にパターニングされた膜(乾燥膜)に関して剥離効果を実証した。しかしながら、剥離剤配合物は任意の半導体デバイスの表面からフォトレジスト並びにエッチング及びアッシング処理からの残留物を除去するのに使用できると解されるべきである。
【0028】
特定の実施態様が詳細に説明されたが、当業者であれば、これらに対する種々の変更及びそれらに代わるものを本開示の全体的な教示を考慮して開発できることを理解するであろう。したがって、開示される特定の実施態様は単に例示を意図するものであり、特許請求の範囲の記載に不可欠なもの及びその任意のすべての同等なものが与えられるべきである本発明の範囲を限定するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシルアミンと、
水と、
ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリジン、ジメチルアセトアミド、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、モノエタノールアミン、及びそれらの混合物からなる群より選択される溶媒と、
水酸化コリン、モノエタノールアミン、水酸化テトラメチルアンモニウム、アミノエチルエタノールアミン、及びそれらの混合物からなる群より選択される塩基と、
カテコール、没食子酸、乳酸、ベンゾトリアゾール、及びそれらの混合物からなる群より選択される金属腐食防止剤と、
グリセリン、プロピレングリコール、及びそれらの混合物からなる群より選択される浴寿命延長剤と、
を含む、半導体デバイスの表面からフォトレジスト、エッチング残留物又はアッシング残留物を除去するためのフォトレジスト剥離剤配合物。
【請求項2】
ヒドロキシルアミンと、
水と、
ジメチルスルホキシドと、
水酸化テトラメチルアンモニウムと、
カテコールと、
グリセリンと、
を含む、請求項1に記載のフォトレジスト剥離剤配合物。
【請求項3】
5〜10wt%のヒドロキシルアミン(50%水溶液)と、
5〜10wt%の水と、
40〜70wt%のジメチルスルホキシドと、
20〜30wt%の水酸化テトラメチルアンモニウム(25%水溶液)と、
0.25〜1.0wt%のカテコールと、
2〜10wt%のグリセリンと、
を含む、請求項2に記載のフォトレジスト剥離剤配合物。
【請求項4】
8.26wt%のヒドロキシルアミン(50%水溶液)と、
5.72wt%の水と、
57.18wt%のジメチルスルホキシドと、
22.87wt%の水酸化テトラメチルアンモニウム(25%水溶液)と、
0.57wt%のカテコールと、
5.4wt%のグリセリンと、
を含む、請求項3に記載のフォトレジスト剥離剤配合物。
【請求項5】
ヒドロキシルアミンと、
水と、
ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリジン、ジメチルアセトアミド、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、モノエタノールアミン、及びそれらの混合物からなる群より選択される溶媒と、
水酸化コリン、モノエタノールアミン、水酸化テトラメチルアンモニウム、アミノエチルエタノールアミン、及びそれらの混合物からなる群より選択される塩基と、
カテコール、没食子酸、乳酸、ベンゾトリアゾール、及びそれらの混合物からなる群より選択される金属腐食防止剤と、
グリセリン、プロピレングリコール、及びそれらの混合物からなる群より選択される浴寿命延長剤と、
を含むフォトレジスト剥離剤配合物を、フォトレジスト、エッチング残留物又はアッシング残留物と接触させることを含む、半導体デバイスの表面からフォトレジスト、エッチング残留物又はアッシング残留物を除去するための方法。
【請求項6】
前記フォトレジスト剥離剤配合物が、
ヒドロキシルアミンと、
水と、
ジメチルスルホキシドと、
水酸化テトラメチルアンモニウムと、
カテコールと、
グリセリンと、
を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記フォトレジスト剥離剤配合物が、
5〜10wt%のヒドロキシルアミン(50%水溶液)と、
5〜10wt%の水と、
40〜70wt%のジメチルスルホキシドと、
20〜30wt%の水酸化テトラメチルアンモニウム(25%水溶液)と、
0.25〜1.0wt%のカテコールと、
2〜10wt%のグリセリンと、
を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記フォトレジスト剥離剤配合物が、
8.26wt%のヒドロキシルアミン(50%水溶液)と、
5.72wt%の水と、
57.18wt%のジメチルスルホキシドと、
22.87wt%の水酸化テトラメチルアンモニウム(25%水溶液)と、
0.57wt%のカテコールと、
5.4wt%のグリセリンと、
を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
フォトレジスト、エッチング残留物又はアッシング残留物が70℃よりも低い温度で前記配合物と接触される、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記温度が60℃である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
フォトレジスト、エッチング残留物又はアッシング残留物が60分よりも短い持間にわたって前記配合物と接触される、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
フォトレジスト、エッチング残留物又はアッシング残留物が30分以下の持間にわたって前記配合物と接触される、請求項11に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−217267(P2009−217267A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−54002(P2009−54002)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(591035368)エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド (452)
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】7201 Hamilton Boulevard, Allentown, Pennsylvania 18195−1501, USA
【Fターム(参考)】