説明

交互ドナーアクセプターコポリマー系の高性能で溶液加工可能な半導体ポリマー

下記式(I)の基を繰返単位として含み、数平均分子量Mnが30〜70g/molの範囲にあるベンゾチアジアゾール−シクロペンタジチオフェンコポリマー:
【化1】


式中、Rはn−ヘキサデシルまたは3,7−ジメチルオクチルである。
本発明はまた、上記コポリマーの、半導体または電荷移動材料としての、薄膜トランジスタ(TFT)としての、または有機発光ダイオード(OLED)用半導体部品中での、太陽電池部品用の、またはセンサー中での、電池の電極材料としての、光導波路としての、あるいは電子写真用途用の利用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベンゾチアジアゾール−シクロペンタジチオフェンコポリマーと、その製造方法、またその半導体電荷輸送材料としての利用に関する。
【背景技術】
【0002】
20世紀の後半に(マイクロ)エレクトロニクスの発展を大きく支えたものは、無機電極や絶縁体や半導体を基にする電界効果トランジスタ(FET)である。これらの材料は、信頼性が高く、高効率で、有名なムーアの法則に則りますます高性能となってきている。分子状材料や高分子材料系の有機FET(OFET)は、従来のケイ素技術と競うのでなく、低性能記憶素子や、アクティブマトリックス有機発光ダイオード表示装置内のピクセルドライブ開閉素子や、RFIDタグ、スマートIDタグ、センサーなどの集積光電子装置に大きな用途を見出すであろう。
【0003】
多くの導電性また半導電性有機ポリマーが開発された結果、有機薄膜トランジスタ(OTFT)中の活性層としての、したがって半導体としての利用が、ますます注目を集めるようになってきた。
【0004】
OTFT中での有機半導体の使用は、従来から使用されている無機半導体に比べていくつかの利点がある。これらは、繊維からフィルムまでいかなる形ででも加工可能であり、高い機械的柔軟性を示し、低コストで生産可能で、低質量である。しかしながら、大きな利点は、全体が半導性である部品を、大気圧で、例えば印刷法によりポリマー基板上に溶液から層を析出させて製造し、安価にFETを製造できる可能性があることである。
【0005】
電子機器の性能は、実質的に半導体材料中での電荷キャリアの移動度とオン状態とオフ状態での電流の比(オン/オフ比)により定まる。したがって、理想的な半導体は、スイッチがオフ状態で最小の伝導度を持ち、スイッチがオン状態で最大の電荷キャリア移動度を持つ(移動度>10-3cm2-1-1、オン/オフ比>102)。また、半導体材料は、酸化劣化により部品の性能が低下するため、酸化に対して比較的安定である必要があり、即ち十分に大きなイオン化ポテンシャルを持つ必要がある。
【0006】
EP1510535A1は、移動度が3・10-3または1.7・10-2cm2-1-1でオン/オフ比が約106であるポリチエノ(2,3−b)チオフェンを開示している。WO2006/094645A1は、1個以上のセレノフェン−2,5−ジイル基と1個以上のチオフェン−2,5−ジイル基を持つポリマーについて述べ、
WO2006/131185は、ポリチエノ(3,4−d)チアゾールをUS2005/0082525A1はベンゾ(1,2−b,4,5−b’)ジチオフェンを開示している。
【0007】
US2007/0014939は、半導体材料として、C−C20アルキルで置換されたシクロペンタジチオフェンとベンゾチアジアゾールのコポリマーを開示している。この実施例中では、それぞれn−ヘキシル基とエチルヘキシル基とで二置換されたシクロペンタジチオフェンのコポリマーが合成されている。これらの材料は、電荷キャリア移動度が小さい(10-3cm2/Vs)という欠点を持つ。
【0008】
Z. Zhu et al., Macromolecules 2007, 40 (6), 1981−1986は、それぞれn−ヘキシル置換基と2−エチルヘキシル置換基で二置換されたシクロペンタジチオフェンとベンゾチアジアゾールとのコポリマーを開示している。この材料からなる電界効果トランジスタでは、0.015cm2/Vsの正孔移動度が報告されている。
【0009】
Zhang et al., J. Am.Chem. Soc. 2007, 129(12), 3472−3473は、数平均分子量が10.2kg/molで、あるFET中で0.17cm2/Vの電荷キャリア移動度を示す、それぞれn−ヘキサデシル置換基または3,7−ジメチルオクチル置換基で二置換されたシクロペンタジチオフェンとベンゾチアジアゾールとのコポリマーを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】EP1510535A1
【特許文献2】WO2006/094645A1
【特許文献3】WO2006/131185
【特許文献4】US2005/0082525A1
【特許文献5】US2007/0014939
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Z. Zhu et al., Macromolecules 2007, 40 (6), 1981−1986
【非特許文献2】Zhang et al., J. Am.Chem. Soc. 2007, 129(12), 3472−3473
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、有機半導体材料として用いられる新規の化合物であって、合成が容易で、高い移動度をもち、酸化安定性に優れ、加工が容易であるものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本目的は、下記式(I)の基
【0014】
【化1】

【0015】
(式中、Rはn−ヘキサデシルまたは3,7−ジメチルオクチルである。)
を繰返単位として有し、数平均分子量Mnが30〜70kg/molの範囲にあるベンゾチアジアゾール−シクロペンタジチオフェンコポリマーにより達成される。
【0016】
本発明のベンゾチアジアゾール−シクロペンタジチオフェンコポリマーの長所は、材料の高分子量と高純度の改善による電界効果トランジスタ中での電荷キャリア移動度の大幅な増加である。
【0017】
この数平均分子量Mnは、好ましくは40〜60kg/molの範囲である。ある特定の実施様態においては、Mnは65〜70kg/molの範囲である。
【0018】
Rは、n−ヘキサデシルまたは3,7−ジメチルオクチルである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、回転塗布で得られたBTZ/n−ヘキサデシル−CDTコ−ポリマー(Mn=51K)の典型的な出力性能を示す。
【図2】図2aと2bは、回転塗布で得られたBTZ/3,7−ジメチルオクチル−CDTコポリマー(Mn=38K)の典型的な移動特性(a)と出力(b)特性を示す。
【図3】図3は、浸漬塗布によるBTZ/n−ヘキサデシル−CDTコ−ポリマー(Mn=51K)の典型的な移動特性を示す。
【図4】図4aと4bは、n−ヘキサデシル−CDTコポリマー(Mn=69K)の典型的な移動特性(a)と出力特性(b)を示す。
【0020】
本発明において、「移動度」は、電場などの外的な刺激で誘起された電荷キャリア(例えば、p型の半導体材料の場合は正孔(または正電荷の単位)、n型の半導体材料の場合は電子)が電場の影響下で材料中を移動する速度の指標である。
【0021】
本発明はまた、半導体または電荷輸送材としての、特に光学部品、電子光部品または電子部品中の半導体または電荷輸送材としての、薄膜トランジスタ、特に平面光学表示装置の薄膜トランジスタとしての、高周波認識タグ(RFIDタグ)用としての、液晶ディスプレーのエレクトロルミネッセント表示またはバックライトなどの有機発光ダイオード(OLED)用半導体部品中での、太陽電池部品またはセンサー中での、電池の電極材料としての、光導波路として電子写真記録などの電子写真用途での本発明のコポリマーの使用方法を提供する。
【0022】
本発明はまた、本発明のポリマーを含む光学部品、電子光学部品、または電子部品を提供する。これらの部品は、例えば、FET、集積回路(IC)、TFT、OLEDまたは配向層であってもよい。
【0023】
本発明のポリマーは特に半導体として好適である。これは、この目的に必要とされる高い移動度を有するためである。
【0024】
先行技術から既知のように、これらのポリマーの末端が保護されていてもよい。好ましい末端基としては、H、置換又は非置換のフェニル、または置換又は非置換のチオフェンがあげられるが、これらに限定されるのではない。
【0025】
本発明のコポリマーは、既知の方法により合成される。以下に、好ましい合成ルートを述べる。
【0026】
本発明のコポリマーは、好ましくは、2,1,3−ベンゾチアジアゾール−4,7−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)(BTZ)と2,6−ジブロモ−4,4−ジヘキサデシル−4H−シクロペンタ[2,1−b:3,4−b’]ジチオフェン(CDT)とから合成される。
【0027】
モノマーの2,6−ジブロモ−4,4−ジヘキサデシル−4H−シクロペンタ[2,1−b:3,4−b’]ジチオフェン(CDT)は、P. Coppo et al., Macromolecules 2003, 36, 2705−2711に記載の方法により、以下の反応経路で合成できる。
【0028】
【化2】

【0029】
この経路において、Rはn−ヘキサデシルまたは3,7−ジメチルオクチルである。
【0030】
Zhang et al., J. Am. Chem. Soc. 2007, 129(12), 3472−3473に記載のように、このコモノマーである2,1,3−ベンゾチアジアゾール−4,7−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキソボロラン−2−イル)(BTZ)は、4,7−ジブロモ−2,1,3−ベンゾチアジアゾールから合成できる。
【0031】
このBTZ/CDTコポリマーは、スチル反応または鈴木反応のようなクロスカップリング重合反応で合成可能である。なお、この反応では、アリールジハライドと、有機スズ化合物またはボロン酸ジエステル/酸とを、塩基と少量のテトラキス(トリフェニルホスフィノ)パラジウム(0)のような金属触媒の存在下で反応させる。通常この反応は、一種以上の溶媒中で20℃〜130℃の反応温度で行われる。
【0032】
高分子量ポリマーの合成に必須なのは、鈴木クロスカップリング反応と純度が>99%の高純度モノマーの使用であり、このため適当な使用モノマーの精製方法が必要である。
【0033】
あらかじめピンクの固体として得られたこのBTZモノマー(Zhang et al., J. Am. Chem. Soc. 2007, 129(12), 3472−3473)を、数回再結晶して、GCによる純度が>99%の無色の結晶を得る。
【0034】
必要な純度の>99%を持つCDTを得るのに、循環型のGPCを利用することができる。
【0035】
1:1モノマー混合物の濃度を調整することにより再現性よく分子量を得ることができる。数平均分子量の50−60kg/molを得るのに最適の反応液中のモノマーの総濃度は約60質量%である。
【0036】
本発明は、酸化型と還元型の本発明のポリマーの両方を含む。電子の欠乏または過剰により、高伝導度の非局在化イオンが形成される。これは、通常のドーパントでドーピングすることで行われる。ドーパントおよびドーピング方法、例えばEP−A0528662、US5198153またはWO96/21659により周知である。好適なドーピング方法としては、例えば、ドーピングガスでのドーピング、ドーパントを含む溶液中での電気化学的ドーピング、熱拡散によるドーピング、ドーパントの半導体材料へのイオン注入によるドーピングがあげられる。
【0037】
電子を電荷キャリアとして使用する場合は、ハロゲン(例えば、I2や、Cl2、Br2、ICl、ICl3、IBr、IF)、ルイス酸(例えば、PF5や、AsF5、SbF5、BF3、BCl3、SbCl5、BBr3、SO3)、無機酸(例えば、HFや、HCl、HNO3、H2SO4、HClO4、FSO3H、ClSO3H)、有機酸またはアミノ酸、遷移金属化合物(例えば、FeCl3、FeOCl、Fe(ClO43、Fe(4−CH364SO33、TiCl4、ZrCl4、HfCl4、NbF5、NbCl5、TaCl5、MoF5、MoCl5、WF5、WCl5、UF6、LnCl3(式中、Lnはランタノイド))、アニオン(例えば、Cl-や、Br-、I-、I3-、HSO4-、SO4-2、NO3-、ClO4-、BF4-、PF6-、AsF6-、SbF6-、FeCl4-、Fe(CN)63-、アリール−SO3−などの異なるスルホン酸のアニオン)を用いることが好ましい。正孔を電荷キャリアとして用いる場合は、カチオン(例えば、H+や、Li+、Na+、K+、Rb+、Cs+)、アルカリ金属(例えば、Liや、Na、K、Rb、Cs)、アルカリ土類金属(例えば、Caや、Sr、Ba)、O2、XeOF4、(NO2+)(SbF6-)、(NO2+)(SbCl6-)、(NO2+)(BF4-)、AgClO4、H2IrCl6、La(NO33、FSO2OOSO2F、Eu、アセチルコリン、R4+、R4+、R6As+、R3+、(式中、Rはアルキル基)を使用することが好ましい。
【0038】
伝導型の本発明のコポリマーは、有機伝導体として、具体的には有機発光ダイオード(OLED)中の電荷注入層やITO平坦化層、フラットスクリーンやタッチスクリーン、静電防止フィルム、プリント回路、キャパシターとして利用可能であるが、特にこれらに限定されるわけではない。
【0039】
本発明のコポリマーは、光学材料や電子材料や半導体材料の製造に、特に電界効果トランジスタ(FET)の電荷輸送材、例えば集積回路(IC)の部品、IDタグまたはTFTの製造に使用可能である。あるいは、これらを、有機発光ダイオード(OLED)のエレクトロルミネッセント表示、またはブラックライト(例えば液晶表示装置(LCD)、太陽電池用途、またはセンサー、電子写真記録などの半導体用途に使うことができる。
【0040】
本発明のジチエノベンゾジチオフェンは、溶解性がよいため溶液として基板に塗布可能である。したがって、安価な方法で、例えば回転塗布(スピンコーティング)や印刷で層が形成可能である。
【0041】
好適な溶媒または溶媒混合物としては、例えば、エーテル、芳香族化合物、特に塩素化溶媒があげられる。
【0042】
FETや、他の半導体材料を含む部品、例えばダイオードは、貴重品の、例えば紙幣やクレジットカード、IDカードや運転免許書、またゴム印、郵便切手、切符などの金銭的価値のある文書の真正性を示し偽造を防止するためのIDタグまたは安全ラベルに好ましく使用できる。
【0043】
また、本発明のポリマーを、有機発光ダイオード(OLED)中、例えばディスプレー中で、あるいは液晶表示装置(LCD)用のバックライトとして使用することができる。通常、OLEDは多層構造を有している。発光層は、一般的には1層以上の電子輸送層及び/又は正孔輸送層の間に設けられている。電圧が印加されると、電子または正孔が発光層の方向に移動し、そこで再結合し、発光層中の発光化合物を励起させて、発光させる。これらのポリマーや材料や層は、それらの電気的性質や光学的性質に応じて、1層以上の輸送層及び/又は発光層中で使用される。これらの化合物、材料または層が電子発光性であるか電子発光性の基または化合物を持っている場合は、これらは、特に発光層に好適である。
【0044】
OLEDでの使用が好ましいポリマーの加工と同様に、この選択は常識であり、例えば、Synthetic Materials, 111−112 (2000), 31−34 or J. Appl. Phys., 88 (2000)7124−7128に述べられている。
【0045】
本明細書に引用された文書はすべて、参考文献として本特許出願に組み込むものとする。すべての定量データ(百分率、ppm等)は、特に断らない限り、混合物の全質量に対する質量を基にした値である。
【実施例】
【0046】
モノマーの2,1,3−ベンゾチアジアゾール−4,7−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)(BTZ)と2,6−ジブロモ−4,4−ジヘキサデシル−4H−シクロペンタ[2,1−b:3,4−b’]ジチオフェン(CDT)は、文献の方法により合成した(Zhang et al., J. Am. Chem. Soc. 2007, 129(12), 3472−3473; P. Coppo et al., Macromolecules 2003, 36, 2705 − 2711)。
【0047】
実施例1
ジボロン酸エステルBTZの合成
4,7−ジブロモ−2,1,3−ベンゾチアジアゾール(1g、3.41mmol)、ビス(ピナコラト)ジボロン(2g、7.8mmol)と、PdCl2(dppf)(500mg、0.6mmol)とKOAc(2g、20mmol)の脱泡1,4−ジオキサン(10ml)溶液を、80℃で一夜攪拌した。水を加えてこの反応を停止させ、得られた混合物を酢酸エチルで洗浄した(30ml×3)。有機層を塩水で洗い、Na2SO4上で乾燥し、真空下に濃縮して、濃赤色の固体を得た。この固体を、3%酢酸エチルのヘキサン溶液を用いてシリカゲルクロマトグラフィーで精製して、所望の化合物をピンクの固体として得た。この粗生成物をエタノールから4回再結晶して、無色の結晶を得た(300mgのBTZ)。
【0048】
FD−MS: m/z = 388.0 (計算値:388.1).
1H NMR (250 MHz、CD2Cl2):δ 8.10 (s、2H)、1.41 (s、24H).
13C NMR (62.9 MHz、CD2Cl2):δ 157.55、138.11、84.91、25.3.
【0049】
実施例2
4,4−ジ−n−ヘキサデシル−シクロペンタ[2,1−b:3,4−b’]ジチオフェン/4,4−ビス−(3,7−ジメチルオクチル)−シクロペンタ[2,1−b:3,4−b’]ジチオフェンの合成
4H−シクロペンタ[2,1−b:3,4−b’]ジチオフェン(2.0g、11.2mmol)を50mLのジーメチルスルホキシドに溶解した。n−ヘキサデシルブロミドまたは2,7−ジメチルオクチルブロミド、それぞれ(22.4mmol)を添加し、次いでヨウ化カリウム(50mg)を添加した。この混合物を窒素置換し、氷浴で冷却し、最後に粉砕した水酸化カリウム(2.0g)を少しずつ加えた。得られた緑色の混合物を室温で一夜激しく攪拌した。反応容器を氷浴中で冷却し、水(50ml)を加えた。有機相をジエチルエーテルで二回抽出し、水、塩水、塩化アンモニウム溶液で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥した。溶媒を蒸発させて、標記化合物を黄色の油として得た。シリカ/ヘキサンでのクロマトグラフィーによる精製で、微量のモノアルキル化された生成物と未反応のアルキルブロミドを除いた。標記化合物が透明な油として得られた。収率:85%
【0050】
実施例3
2,6−ジブロモ−4,4−ジ−n−ヘキサデシル−シクロペンタ[2,1−b:3,4−b’]ジチオフェン/2,6−ジブロモ−4,4−ビス(3,7−ジメチルオクチル)−シクロペンタ[2,1−b:3,4−b’]ジチオフェンの合成
4,4−ジ−n−ヘキサデシル−シクロペンタ[2,1−b:3,4−b’]ジチオフェン/4,4−ビス−(3,7−ジメチルオクチル)−シクロペンタ[2,1−b:3,4−b’]ジチオフェン(4,97mmol)を、暗所で窒素下にて50mlの蒸留DMFに溶解した。NBS(1.8g、9.94mmol)を少しずつ加えた。得られた黄色の溶液を、室温で窒素下にて一夜攪拌した。次いで水(50ml)を添加し、有機相をジエチルエーテル(100ml)で2回抽出し、水と1%HCl溶液で洗い、硫酸マグネシウム上で乾燥させた。溶媒を減圧下で除き、標記生成物を黄色の油として得た。シリカ/ヘキサンでのカラムクロマトグラフィーと再循環GPC(4−5回)で不純物を除いた。標記化合物を無色の油として得た(収率68%)。
【0051】
実施例4
ポリマーの合成と精製
BTZ/n−ヘキサデシル−CDTコポリマーを鈴木カップリング反応で合成した。還流冷却器を備えた50mLのシュレンクフラスコ中で、n−ヘキサデシル−CDT(300mg、0.382mmol)とBTZ(148mg、0.382mmol)、K2CO3(2mL、2M)と3滴のアリコット336を、Xmlのトルエンに溶解した。この溶液を、凍結/ポンプ/パージ法を3回用いて脱泡し、次いでテトラキス(トリフェニルフォスフィン)パラジウムを加えた。この溶液をさらに3回凍結/ポンプ/パージし、3日間100℃で加熱した。次いで、0.1mlの1Mフェニルボロネートエステルのトルエン溶液を添加し、さらに12時間攪拌し、その後0.1mlのブロモベンゼンのトルエン溶液を添加して、反応性の鎖末端を封鎖した。
【0052】
得られた混合物を、メタノールと濃塩酸(2:1)の混合物中に注ぎ、一夜攪拌した。固体を濾過し、熱クロロベンゼンに溶解し、メタノールから沈殿化させ、アセトンでのソックスレー抽出にかけた。このポリマーを次いで、ヘキサン、アセトンと酢酸エチルから三回沈殿化させ、次いでヘキサンでのソックスレー抽出にかけて、収量190mg(43%)を得た。
【0053】
GPC分析: Mn=5k(X=10mL);14k(X=8mL);51k(X=4mL)、D=2.6〜4.0
【0054】
同様に、BTZ/3,7−ジメチルオクチル−CDTが得られ、その数平均分子量は38k、D=4.5(X=4mLトルエン)であった。
【0055】
ポリマーの分子量は、トリクロロベンゼンを溶離液に用いるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で、ポリスチレン標準試薬に対する値である。試料は、3本のカラムを通過させた。第一のカラムの孔径範囲は106であり、第二のカラムは104、最後のカラムは500であった。
【0056】
実施例5
FET装置の製造と測定
150nmのSiO2層をもつ高度にn++ドープしたSiウエハーをトランジスタ基板に用いた。このSiO2誘電体をフェニルトリエトキシシランで処理した。基板全体を、1mg/mlのコポリマー(クロロベンゼン中に溶解)を含む溶液に浸漬させた。浸漬塗布法により、1μm/sの速度で試料をゆっくりと引き出しながら、高分子膜を「一方向成長」させた。他方、半導体層は、0.5質量%のクロロベンゼン溶液の回転塗布で、厚みが50nmに塗布できた。このポリマー層を、窒素雰囲気200℃で1時間加熱し、この層の上に50nmの金の接点を蒸着してトランジスタを形成した。
【0057】
電荷キャリア移動度は、飽和移動プロットから求めたものである。
【0058】
FETの特性:
電界効果トランジスタ中で求めた電荷キャリア移動度は、明確に、高分子量が好ましい分子量依存性を示す(表1)。
【0059】
【表1】

【0060】
Mnが51kのポリマーの回転塗布では、窒素中で測定した場合に、FETが0.65cm2/Vsの正孔移動度と103の電流オン/オフ比Ion/Ioffを示す。
【0061】
ポリマーの浸漬塗布にで、窒素中で測定した場合に、FETが1.4cm2/Vsの正孔移動度と10*5の電流オン/オフ比Ion/Ioffを示す。いろいろなゲート電圧VGでの典型的な出力曲線を図1に示す。
【0062】
このBTZ/3,7−ジメチルオクチル−CDTコポリマーは、窒素中で測定した場合に、0.45cm2/Vsの電荷キャリア移動度と105の電流オン/オフ比Ion/Ioffを示す。
【0063】
実施例6
還流冷却器を備えた25mlのシュレンクフラスコ中で、BTZ(148mg、0.382mmol)と、n−ヘキサデシル−CDT(300mg、0.382mmol)とK2CO3(12eq、4.584mmolの2M溶液)と3滴のアリコット336を、4mlのトルエンに溶解した。この溶液を、凍結/ポンプ/パージ法を3回用いて脱泡し、次いでアルゴン下でテトラキス(トリフェニルフォスフィン)パラジウムを加えた。この溶液を、次いで3回凍結/ポンプ/パージし、アルゴン下で24時間100℃で加熱した。この反応液を室温まで冷却し、さらに4mlのトルエンを加えた。この溶液を、凍結/ポンプ/パージ法を3回用いて脱泡し、さらにテトラキス(トリフェニルフォスフィン)パラジウム(0.0191mmol)を加え、次いで3回、凍結/ポンプ/パージサイクルを行った。この反応液を100℃で48時間加熱し、次いでフェニルボロネートエステル(0.1M)のトルエン溶液を添加し、さらに12時間攪拌した。その後、ブロモベンゼン(0.1M)のトルエン溶液を添加した。得られた混合物をメタノールと濃塩酸(2:1)の混合物中に注ぎ、4時間攪拌した。固体を濾過し、熱1,2,4−トリクロロベンゼンに溶解し、メタノールから沈殿化させ、アセトンを用いるソックスレー抽出にかけた。このポリマーを次いで、ヘキサンとアセトンと酢酸エチルから三回沈殿化させ、次いでヘキサンでのソックスレー抽出にかけて、収量200mg(45%)を得た。
【0064】
GPC分析:溶解度が低かったためこの試料の分子量の直接比較はできなかった。しかしながら、130℃のトリクロロベンゼンを溶離液に用いた単一カラムでのGPC分析では、5.1×104のMn測定値をもつ試料と比較して約35%の増加を示した。外挿するとMn=6.9×104となる。
【0065】
FET装置の製造と測定
試料を、100℃でのHMDSで感応化された200nmのSiO2上に保持された下部接触FET基板上に、試料の2mg/mLのo−ジクロロベンゼン溶液を滴下塗布した。チャネル長と幅は、それぞれ20μmと1.4mmであった。4個のトランジスタを測定した結果、最小の飽和正孔移動度は、μsat=2.5cm2/Vsであり、最大は、μsat=3.3cm2/Vsであった。平均移動度は、μsat=2.95cm2/Vsである。オン/オフ比は106である(図4)。加工は窒素雰囲気下で行った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)の基
【化1】

(式中、Rはn−ヘキサデシルまたは3,7−ジメチルオクチルである。)
を繰返単位として含み、数平均分子量Mnが30〜70kg/molの範囲にあるベンゾチアジアゾール−シクロペンタジチオフェンコポリマー。
【請求項2】
請求項1に記載のコポリマーを、半導体または電荷移動材料として、薄膜トランジスタ(TFT)として、有機発光ダイオード(OLED)用半導体部品において、太陽電池部品用に、またはセンサーにおいて、電池の電極材料として、光導波路として、あるいは電子写真の適用に使用する方法。
【請求項3】
液状媒体中に溶解または分散した請求項1の1種以上のコポリマーを含む組成物。
【請求項4】
請求項1の1種以上のポリマーを含む薄膜半導体。
【請求項5】
基板と、該基板上に設けられた請求項4の薄膜半導体とを含む複合体。
【請求項6】
請求項1に記載のコポリマーを液状媒体中に溶解して溶液とし、該溶液を支持体上に施与し、溶媒を除いて基板上に薄膜半導体を形成することを特徴とする請求項5に記載の複合体の製造方法。
【請求項7】
前記溶液を、回転塗布、浸漬塗布または印刷により施与する請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
請求項4の薄膜半導体または請求項5の複合体を含む電界効果トランジスタ装置。
【請求項9】
請求項4の薄膜半導体または請求項5の複合体を含む光発電装置。
【請求項10】
請求項4の薄膜半導体または請求項5の複合体を含む有機発光ダイオード装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【公表番号】特表2011−528383(P2011−528383A)
【公表日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515441(P2011−515441)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【国際出願番号】PCT/EP2009/058218
【国際公開番号】WO2010/000755
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【出願人】(506209857)マクス−プランク−ゲゼルシャフト、ツール、フェルデルング、デァ、ヴィセンシャフテン、イー、ファウ (5)
【Fターム(参考)】