説明

位相同期ループ回路および通信機

【課題】低消費電力化と小型化とが両立されたPLL回路を提供する。
【解決手段】PLL回路の位相比較器2は、カウンタ16と時間デジタル変換器13とを含む。カウンタ16は、参照クロック信号REFと、デジタル制御発振器の出力を分周した低周波クロック信号CLKAおよび高周波クロック信号CLKBとを受ける。カウンタ16は、高周波クロック信号CLKBのクロック数をカウントすることによって参照クロック信号REFと低周波クロック信号CLKAとの位相差を検出する。時間デジタル変換器13は、参照クロック信号REFと低周波クロック信号CLKAとを受ける。時間デジタル変換器13は、カウンタ16の出力が所定範囲になってから、参照クロック信号REFと低周波クロック信号CLKAとの位相差を、高周波クロック信号CLKBの周期よりも短い時間の精度で検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は位相同期ループ回路に関し、主要構成要素がデジタル回路で構成されたデジタル位相同期ループ回路に関する。さらに、この発明は、位相同期ループ回路を用いた通信機に関する。
【背景技術】
【0002】
位相同期ループ(PLL:Phase-Locked Loop)回路は、高周波集積回路(RF−IC:Radio Frequency Integrated Circuit)の基準信号源として用いられる。近年では、PLL回路の全ての受動素子をデジタル回路で置き換えた全デジタルPLL(ADPLL:All Digital PLL)回路の開発も進められている。PLL回路を携帯電話や無線LAN(WLAN:Wireless Local Area Network)などの無線端末に用いる場合には、低消費電力化が製品の価値を決める重要な要素になる。低消費電力動作が可能なPLL回路として、たとえば、以下の文献に記載された技術が知られている。
【0003】
特開2008―160594号公報(特許文献1)は、時間デジタル変換器(TDC:Time-to-Digital Converter)を用いたADPLL回路について開示する。この文献の時間デジタル変換器は、発振周波数を制御する周波数制御信号を用いて、入力周波数に応じて、動作状態の遅延回路の段数を切り替えるスイッチング素子を備えている。入力周波数の周期に応じて必要な段数の遅延回路だけが動作することとなるため、広帯域の周波数範囲に対応しながらも系全体の低消費電力化を図ることが可能となり、特に高い入力周波数において低消費電力化を図ることができる。
【0004】
特開平11―127062号公報(特許文献2)に開示されたPLL回路は、供給されたクロックを分周器によって分周したレファレンスクロックと、可変クロックとの位相を比較する位相比較回路を有する。位相比較回路は、両クロックの位相が一致したことを検出した場合に、分周器の分周比を高くすることによって位相比較回路の動作頻度を下げる。これによって、PLL回路の消費電力が抑えられる。非活性状態から活性状態に戻るリセット時には、分周器の分周比をもとの低い状態にすることによって位相比較回路の動作頻度がもとの高い状態に戻る。したがって、両クロックの位相同期までに要する時間を短くすることができる。
【0005】
特開平10―070456号公報(特許文献3)に記載のデジタルPLL回路は、2つの信号の位相が一致したことを検出する回路を備える。デジタルPLL回路は、2つの信号の位相が一致している間、位相調整動作を停止する。この結果、低消費電力化に伴う位相調整能力の低下が生じない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008―160594号公報
【特許文献2】特開平11―127062号公報
【特許文献3】特開平10―070456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、携帯用の無線端末で用いられるPLL回路は、待機時間を延ばすために低消費電力化が要求されるとともに、実装面積を削減するために小型化が要求される。上記の特開2008―160594号公報(特許文献1)の場合、広帯域の周波数範囲に対応するためには、時間デジタル変換器に用いられる遅延セルの段数を増やす必要がある。このため、回路面積が大きくなってしまう。上記の特開平11―127062号公報(特許文献2)および特開平10―070456号公報(特許文献3)に記載の技術は、回路面積の削減の効果はない。
【0008】
この発明の目的は、低消費電力化と小型化とが両立されたPLL回路を提供することである。また、この発明の他の目的は、このようなPLL回路を用いることによって従来よりも電力消費量が小さくかつ回路面積の縮小された通信機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の実施の一形態による位相同期ループ回路は、発振器と、分周器と、位相比較部とを備える。発振器は、位相差信号に応じた周波数で発振する。分周器は、発振器の出力を分周した第1のクロックおよび第1のクロックよりも周波数の高い第2のクロックを生成する。位相比較部は、第1および第2の検出部を含む。第1の検出部は、第1および第2のクロックならびに参照クロックを受ける。第1の検出部は、第1のクロックと参照クロックとの位相差を第2のクロックの周期である第1の時間の精度で検出し、検出した位相差が所定範囲内になるまで、検出した位相差に対応した位相差信号を出力する。第2の検出部は、第1のクロックおよび参照クロックを受ける。第2の検出部は、第1の検出部によって検出された位相差が所定範囲内となってから、第1のクロックと参照クロックとの位相差を第1の時間よりも短い第2の時間の精度で検出し、検出した位相差に対応した位相差信号を出力する。
【発明の効果】
【0010】
上記の実施の形態によれば、第1の検出部によって検出された位相差が所定範囲内となってから、位相検出精度が第1の検出部よりも高い第2の検出部によって位相差が検出される。これによって、低消費電力化と小型化とが両立されたPLL回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1によるADPLL回路1の構成を示すブロック図である。
【図2】図1のデジタル位相比較器2の構成を示すブロック図である。
【図3】ADPLL回路1の動作モードを説明するための波形図である。
【図4】モード1におけるデジタル位相比較器2の動作を説明するためのブロック図である。
【図5】図2の時間デジタル変換器13の構成を示すブロック図である。
【図6】図2のカウンタ16の構成を示すブロック図である。
【図7】モード1におけるデジタル位相比較器2の動作を説明するための波形図である。
【図8】モード1においてADPLL回路1の出力信号の周波数変化を示す図である。
【図9】モード1においてデジタル位相比較器2の入力信号の位相差と出力との関係を示す図である。
【図10】モード2の粗調整期間におけるデジタル位相比較器2の動作を説明するためのブロック図である。
【図11】モード2の微調整期間におけるデジタル位相比較器2の動作を説明するためのブロック図である。
【図12】モード2におけるデジタル位相比較器2の動作を説明するための波形図である。
【図13】モード2においてADPLL回路1の出力信号の周波数変化を示す図である。
【図14】モード2においてデジタル位相比較器2の入力信号の位相差と出力との関係を示す図である。
【図15】ADPLL回路1の入力信号の周波数と電流消費との関係を示す図である。
【図16】図2のデジタル位相比較器2の比較例としてのデジタル位相比較器502の構成を示すブロック図である。
【図17】図16のデジタル位相比較器502の入力信号の位相差と出力との関係を示す図である。
【図18】図1のADPLL回路1の適用例として携帯電話機120の構成を示すブロック図である。
【図19】図1のADPLL回路1の他の適用例として携帯電話機121の構成を示すブロック図である。
【図20】図19のDPFD制御部125の構成の一例を示すブロック図である。
【図21】図1のADPLL回路1のさらに他の適用例として携帯電話機131の構成を示すブロック図である。
【図22】この発明の実施の形態2によるデジタル位相比較器2Aの構成を示すブロック図である。
【図23】図22の位相判定部41の構成の一例を示すブロック図である。
【図24】図22のデジタル位相比較器2Aの入力信号の位相差と出力との関係を示す図である。
【図25】この発明の実施の形態3によるデジタル位相比較器2Bの構成を示すブロック図である。
【図26】図25のデジタル位相比較器2Bの入力信号の位相差と出力との関係を示す図である。
【図27】この発明の実施の形態4によるADPLL回路1Cの構成を示すブロック図である。
【図28】図27のADPLL回路1Cの位相雑音特性を説明するための図である。
【図29】図27のADPLL回路1Cのロックアップタイムを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して、その説明を繰返さない。
【0013】
[実施の形態1]
(ADPLL回路1の構成)
図1は、この発明の実施の形態1によるADPLL回路1の構成を示すブロック図である。図1を参照して、ADPLL回路1は、たとえば、RF−ICチップ内で高精度の高周波クロックを生成する回路である。ADPLL回路1は、デジタル制御発振器4(DCO:Digital Controlled Oscillator)と、分周器5(DIV:Divider)と、デジタル位相比較器2(DPFD:Digital Phase Frequency Detector)と、デジタルループフィルタ3(DLF:Digital Loop Filter)とを含む。
【0014】
デジタル制御発振器4は、デジタルループフィルタ3のデジタル出力に応じた周波数で発振する。デジタル制御発振器4には、公知の構成のものを用いることができる。たとえば、デジタル制御発振器として、複数のインバータによって構成されたリング発振器が知られている。この場合には、デジタルループフィルタ3の多ビットのデジタル出力に応じて、各インバータが活性状態または非活性状態になるように制御される。その他のデジタル制御発振器の例として、クロスカップル接続された一対の増幅素子に負荷としてLC共振回路が接続された構成が知られている。この構成の場合、LC共振回路に用いられる複数のコンデンサの接続が、デジタルループフィルタ3の多ビットのデジタル出力に応じて切替えられる。
【0015】
分周器5は、デジタル制御発振器4の出力信号を受けて、その出力信号の周波数を分周した低周波クロック信号CLKAと、低周波クロック信号CLKAよりも周波数の高い高周波クロック信号CLKBとを出力する。図1の例の場合、デジタル制御発振器4の発振周波数は3.9GHzであり、低周波クロック信号CLKAの周波数は、デジタル制御発振器4の発振周波数を150分の1に分周した26MHzである。高周波クロック信号CLKBは、低周波クロック信号CLKAより周波数の高い約1GHzである。
【0016】
デジタル位相比較器2(位相比較部)は、温度補償型水晶発振器6(TCXO:Temperature Compensated Xtal Oscillator)から出力された参照クロック信号REFと、上記の低周波クロック信号CLKAおよび高周波クロック信号CLKBとを受ける。デジタル位相比較器2は、参照クロック信号REFと低周波クロック信号CLKAとの位相差を検出し、検出した位相差に対応した位相差信号PSを出力する。実際には、デジタル位相比較器2は、位相差の検出に代えて、参照クロック信号REFおよび低周波クロック信号CLKAの立上り時刻(または立下り時刻)の時間差を検出する。
【0017】
デジタルループフィルタ3は、デジタル位相比較器2から出力された位相差信号PSの周波数帯域を制限するデジタルフィルタである。デジタルループフィルタ3によって位相差信号PSの高域の雑音成分が除去される。
【0018】
上記のデジタル制御発振器4、分周器5、デジタル位相比較器2、およびデジタルループフィルタ3によって帰還ループが構成される。この帰還ループによって、分周器5から出力された低周波クロック信号CLKAの周波数と参照クロック信号REFの周波数とが一致するまで帰還がかかる。このように周波数が一致することをロックするという。
【0019】
周波数がロックした状態では、ADPLL回路1の出力信号OSの周波数は、参照クロック信号REFの分周比倍に一致する。ADPLL回路1を用いた通信機では、分周器5の分周比を所定の値に設定することによって、搬送波の周波数に一致した出力信号OSを得ることができる。
【0020】
図1に示すように、ADPLL回路1のデジタル位相比較器2を制御するためにDPFD制御部7が設けられる。DPFD制御部7は、ADPLL回路1の動作モードに応じてデジタル位相比較器2を制御するために、制御信号SWおよびイネーブル信号EN1,EN2を出力する。DPFD制御部7は、さらに、デジタル位相比較器2から出力された位相差信号PSをモニタ信号MONとしてモニタする。ADPLL回路1の動作モードについては図3で詳述する。
【0021】
(デジタル位相比較器2の構成)
図2は、図1のデジタル位相比較器2の構成を示すブロック図である。図2を参照して、デジタル位相比較器2は、第1の検出部15と、第2の検出部12と、スイッチ部11と、加算部18(位相差信号生成部)とを含む。
【0022】
第1の検出部15は、カウンタ16と、カウンタ16への信号の入力の可否を制御するためのAND回路17A,17B,17C(総称する場合または不特定のものを示す場合、AND回路17とも記載する。)とを含む。AND回路17A,17B,17Cの各一方の入力端子にはイネーブル信号EN2が入力される。
【0023】
イネーブル信号EN2が活性化状態(“1”またはHレベルに対応する。)の場合、カウンタ16は、AND回路17A,17B,17Cをそれぞれ介して参照クロック信号REF、低周波クロック信号CLKA、および高周波クロック信号CLKBを受ける。カウンタ16は、高周波クロック信号CLKBのクロック数をカウントすることによって、参照クロック信号REFと低周波クロック信号CLKAとの立上り時刻の時間差を検出する。したがって、カウンタ16による時間差の検出精度は、高周波クロック信号CLKBの周期に等しい。カウンタ16は、検出した時間差に対応する多ビットの出力信号OUT1を加算部18に出力する。カウンタ16の構成の詳細については図6を参照して後述する。
【0024】
カウンタ16の入力側に設けられたAND回路17A,17B,17Cは、参照クロック信号REF、低周波クロック信号CLKA、高周波クロック信号CLKBにそれぞれ対応する。各AND回路17は、対応のクロック信号とイネーブル信号EN2とを受け、イネーブル信号EN2が非活性化状態(“0”またはLレベルに対応する。)のとき、カウンタ16の入力信号は“0”(Lレベル)に固定される。この場合、カウンタ16からの出力信号OUT1は位相差0に対応した値(0)になる。
【0025】
スイッチ部11は、参照クロック信号REF、低周波クロック信号CLKA、および高周波クロック信号CLKBと受け、制御信号SWに応じて選択されたクロック信号を第2の検出部12に出力する。制御信号SWが“1”(Hレベル)の場合、スイッチ部11は参照クロック信号REFおよび高周波クロック信号CLKBを第2の検出部12に出力する。制御信号SWが“0”(Lレベル)の場合、スイッチ部11は参照クロック信号REFおよび低周波クロック信号CLKAを第2の検出部12に出力する。
【0026】
より詳細には、スイッチ部11は制御信号SWに応じて接続状態が切替わる第1、第2のスイッチ11A,11Bを含む。第1のスイッチ11Aは、制御信号SWが“1”のとき、時間デジタル変換器13の第1の入力ノードIN1に高周波クロック信号CLKBを入力し、制御信号SWが“0”のとき、第1の入力ノードIN1に参照クロック信号REFを入力する。第2のスイッチ11Bは、制御信号SWが“1”のとき、時間デジタル変換器13の第2の入力ノードIN2に参照クロック信号REFを入力し、制御信号SWが“0”のとき、第2の入力ノードIN2に低周波クロック信号CLKAを入力する。
【0027】
第2の検出部12は、時間デジタル変換器13(TDC)と、時間デジタル変換器13からの信号の出力の可否を制御するための複数のAND回路14とを含む。複数のAND回路14の各一方の入力端子にはイネーブル信号EN1が入力される。
【0028】
時間デジタル変換器13は、スイッチ部11から出力された2つのクロック信号を受けて、これらのクロック信号の立上り時刻の時間差を検出する。具体的には、時間デジタル変換器13は、入力されたクロック信号のうち、一方のクロック信号を所定の遅延時間ずつ遅延させた信号と他方とを比較することによって立上り時刻の時間差を検出する。この場合の遅延時間は高周波クロック信号CLKBの周期よりも短く設定されるので(たとえば、20ピコ秒)、時間デジタル変換器13の時間検出精度はカウンタ16よりも高精度である。時間デジタル変換器13は、イネーブル信号EN1が活性化状態(“1”またはHレベルに対応する。)の場合、検出した時間差に対応した多ビットの出力信号OUT2を複数のAND回路14を介して加算部18に出力する。時間デジタル変換器13の詳細な構成については、図5を参照して後述する。
【0029】
時間デジタル変換器13の出力側に設けられた各AND回路14は、多ビットの出力信号OUT2の各ビットに個別に対応する。各AND回路14は、対応するビットの出力信号OUT2とイネーブル信号EN1とを受ける。イネーブル信号EN1が非活性化状態(“0”またはLレベルに対応する。)のとき、各AND回路14は位相差0に対応した値(0)を加算部18に出力する。
【0030】
加算部18は、第1の検出部15の出力と第2の検出部12の出力とを合成する。たとえば、図2の場合、分解能が低い第1の検出部15の出力信号OUT1が上位ビット(9〜14ビット)に対応し、分解能が高い第2の検出部12の出力信号OUT2が下位ビット(1〜8ビット)に対応する。加算部18は、上位ビットに対応する出力信号OUT1と、下位ビットに対応する出力信号OUT2とを合成することによって合計14ビットの位相差信号PSを得る。図2の場合と異なり、低分解能の出力信号OUT1が上位ビットおよび中位ビットに対応し、高分解能の出力信号OUT2が中位ビットと下位ビットに対応していてもよい。この場合、加算部18は、共通する中位ビットについてはビットごとに加算することによって、最終的な位相差信号PSを得る。
【0031】
(ADPLL回路1の動作モード)
次にADPLL回路1の動作モードについて説明する。図1のADPLL回路1は動作モードとしてモード1(高トラッキングレンジモード)とモード2(省電力モード)とを有する。
【0032】
図3は、ADPLL回路1の動作モードを説明するための波形図である。図3は、上から順に制御信号SWおよびイネーブル信号EN1,EN2の波形を示している。時刻t1〜t2がモード1の場合の波形であり、時刻t2〜t4がモード2の場合の波形である。モード1では制御信号SWが“1”(Hレベル)であり、モード2では制御信号SWが“0”(Lレベル)であるので、制御信号SWの論理レベルはADPLL回路1の動作モードに対応している。
【0033】
モード1(時刻t1〜t2)の場合、制御信号SWおよびイネーブル信号EN1,EN2は全て“1”に設定される。この場合、図4〜図9で詳述するように、検出精度が粗い第1の検出部15と検出精度が細かい第2の検出部12とが並行して動作する。
【0034】
モード2(時刻t2〜t4)の場合、デジタル位相比較器2の動作は、時刻t2〜t3の粗調整期間とこの粗調整期間に続く時刻t3〜t4の微調整期間とで異なる。粗調整期間(時刻t2〜t3)では、制御信号SWおよびイネーブル信号EN1が“0”に設定され、イネーブル信号EN2が“1”に設定される。これによって、この期間(時刻t2〜t3)では検出精度が粗い第1の検出部15によって位相差の検出が行なわれる。一方、微調整期間(時刻t3〜t4)では、制御信号SWおよびイネーブル信号EN2が“0”に設定され、イネーブル信号EN1が“1”に設定される。これによって、この期間(時刻t3〜t4)では細かい検出精度の第2の検出部12によって位相差の検出が行なわれる。
【0035】
粗調整期間から微調整期間への移行は、モニタ信号MONに基づいて行なわれる。図1のDPFD制御部7は、モニタ信号MONである図1のデジタル位相比較器2の出力信号OSが所定範囲内になったとき、イネーブル信号EN1,EN2の状態を切替えて粗調整期間から微調整期間へ移行させる。モード2の詳細については、図10〜図14で詳述する。
【0036】
(モード1:高トラッキングレンジモード)
図4は、モード1におけるデジタル位相比較器2の動作を説明するためのブロック図である。
【0037】
図4を参照して、モード1の場合、制御信号SWが“1”であるので、第1のスイッチ11Aを介して高周波クロック信号CLKBが時間デジタル変換器13の第1の入力ノードIN1に入力される。さらに、第2のスイッチ11Bを介して参照クロック信号REFが時間デジタル変換器13の第2の入力ノードIN2に入力される。
【0038】
時間デジタル変換器13は、入力された高周波クロック信号CLKBと参照クロック信号REFとの位相差を検出する。時間デジタル変換器13から出力された信号OUT2は、イネーブル信号EN1が活性化状態(“1”)であるので、加算部18に入力される。
【0039】
モード1では、さらに、イネーブル信号EN2も活性化状態(“1”)であるので、参照クロック信号REF、低周波クロック信号CLKA、および高周波クロック信号CLKBがカウンタ16に入力される。カウンタ16は、参照クロック信号REFの立上り時刻と低周波クロック信号CLKAの立上り時刻との時間差を検出し、検出した時間差に対応する信号OUT1を加算部18に出力する。
【0040】
図5は、図2の時間デジタル変換器13の構成を示すブロック図である。時間デジタル変換器13は、入力された2つのクロック信号の立上り時刻の時間差を検出する。図5に示すように時間デジタル変換器13は、従属接続されたn−1段の遅延セルDC0〜DCn−2と、n個のDフリップフロップFF0〜FFn−1と、デコーダ21とを含む。
【0041】
時間デジタル変換器13の初段の遅延セルDC0には、高周波クロック信号CLKBが入力される。入力された高周波クロック信号CLKBは、遅延セルDC0〜DCn−2によって順々に遅延されて転送される。各遅延セルDC0〜DCn−2の遅延時間をTdとすれば、第x段目(xは1以上n−2以下の整数)の遅延セルDCx−1は、高周波クロック信号CLKBよりもx×Tdだけ遅延した信号を出力する。遅延時間Tdによって時間デジタル変換器13の分解能が決まり、遅延セルの段数によっての時間デジタル変換器13による検出可能範囲が決まる。たとえば、20ピコ秒の分解能で、5ナノ秒の時間差を検出する場合には、遅延セルDC0〜DCn−2の段数は約256段必要になる。
【0042】
図5において、初段のDフリップフロップFF0の入力端子には、高周波クロック信号CLKBが入力される。2段目以降である第x+1番目(xは1以上n−2以下の整数)のDフリップフロップFFxの入力端子には、第x番目の遅延セルDCx−1の出力信号が与えられる。各フリップフロップFF0〜FFn−1のクロック端子には、共通の参照クロック信号REFが与えられる。したがって、初段のDフリップフロップFF0は、高周波クロック信号CLKBを参照クロック信号REFの立上りのタイミングで保持する。第x+1番目(xは1以上n−2以下の整数)のDフリップフロップFFxは、高周波クロック信号CLKBよりもx×Tdだけ遅延した信号を、参照クロック信号REFの立上りのタイミングで保持する。
【0043】
デコーダ21は、DフリップフロップFF0〜FFn−1の出力信号B0〜Bn−1に基づいて、入力された2信号の立上り時間の差(位相差)を検出する。この場合、入力された2信号の位相関係によって、出力信号B0〜Bn−1の値が異なる。
【0044】
具体的に図5の場合、参照クロック信号REFの立上り時刻よりも先に高周波クロック信号CLKBが立上っていた場合には、DフリップフロップFF0〜FFn−1の出力信号B0〜Bn−1は立上り時刻の差の分だけ“1”が続き、その後“0”になる。“1”から“0”に切替わったところが高周波クロック信号CLKBの立上りエッジに対応する。したがって、出力信号“1”の個数に遅延セルの遅延時間Tdを乗じることによって立上り時刻の時間差を求めることができる。
【0045】
逆に、参照クロック信号REFの立上り時刻よりも後に高周波クロック信号CLKBが立上る場合には、DフリップフロップFF0〜FFn−1の出力信号B0〜Bn−1は最初“0”が続き、その後“1”になる。“0”から“1”に切替わったところが高周波クロック信号CLKBの立下りエッジに対応する。したがって、出力信号“0”の個数に遅延セルの遅延時間を乗じた値を、高周波クロック信号CLKBの周期の半分から減じることによって、立上り時刻の時間差を求めることができる。
【0046】
図6は、図2のカウンタ16の構成を示すブロック図である。
図6を参照して、カウンタ16は、高周波クロック信号CLKBを反転させるインバータ22と、インバータ22の出力を積分する積分器23と、第1、第2のDフリップフロップ24,25と、減算器26とを含む。積分器23の出力信号CNは、高周波クロック信号CLKBのカウント数に対応する。出力信号CNは、高周波クロック信号CLKBの立下りのタイミングで1ずつカウントアップされる。
【0047】
第1のDフリップフロップ24は、入力端子に積分器23の出力信号CNを受け、クロック端子に参照クロック信号REFを受ける。第2のDフリップフロップ25は、入力端子に積分器23の出力信号CNを受け、クロック端子に低周波クロック信号CLKAを受ける。したがって、Dフリップフロップ24,25は、それぞれ、参照クロック信号REFおよび低周波クロック信号CLKAの立上り時刻に積分器の出力信号CN(カウント数に対応する)を保持する。
【0048】
減算器26は、Dフリップフロップ25の出力からDフリップフロップ24の出力を減じた値を出力信号OUT1として出力する。したがって、カウンタ16の出力信号OUT1は、低周波クロック信号CLKAの立上り時刻と参照クロック信号REFの立上り時刻との時間差を高周波クロック信号CLKBのクロック数でカウントした値に相当する。
【0049】
以下、上記で説明したデジタル位相比較器2の動作を、具体的な信号波形の例を用いて説明する。
【0050】
図7は、モード1におけるデジタル位相比較器2の動作を説明するための波形図である。図7は上から順に、参照クロック信号REFの波形、低周波クロック信号CLKAの波形、高周波クロック信号CLKBの波形、および、図6の積分器23の出力信号CN(高周波クロック信号CLKBのカウント数)を示す。図7に示すように、参照クロック信号REFと低周波クロック信号CLKAとの立上り時刻の差ERRが、高周波クロック信号CLKBの4.3周期分であったとする。
【0051】
まず、参照クロック信号REFの立上り時刻において、図6の第1のDフリップフロップ24が保持した高周波クロック信号CLKBのカウント数CNは3である。次に、低周波クロック信号CLKAの立上り時刻において、図6の第2のDフリップフロップ25が保持した高周波クロック信号CLKBのカウント数CNは7である。したがって、図6のカウンタ16によって検出された時間差は、高周波クロック信号CLKBの4周期分になる。
【0052】
次に、図7の場合には、参照クロック信号REFの立上り時刻よりも後に高周波クロック信号CLKBが立上っているので、図5の時間デジタル変換器13によって、高周波クロック信号CLKBの立下り時刻と参照クロック信号REFの立上り時刻との差OUT2*が検出される。図7の場合、この差は高周波クロック信号CLKBの0.2周期分に相当する。したがって、参照クロック信号REFと高周波クロック信号CLKBとの立上り時刻の差は高周波クロック信号CLKBの0.3周期分になる。
【0053】
以上によって、参照クロック信号REFと低周波クロック信号CLKAとの立上り時刻の差は、カウンタ16の出力OUT1である4周期と時間デジタル変換器13の出力OUT2である0.3周期とを加算することによって4.3周期と求められる。ここで、上記の例の場合、低周波クロック信号CLKAの立上り時刻または立下り時刻は、時間デジタル変換器13の検出範囲TDCR内にはないことに注意すべきである。したがって、時間デジタル変換器13は、参照クロック信号REFと低周波クロック信号CLKAとの立上り時刻の差を直接検出することができない。
【0054】
図8は、モード1においてADPLL回路1の出力信号の周波数変化を示す図である。
図8を参照して、時刻t1で図1のADPLL回路1に電源が投入される。次の時刻t2までの期間は電子回路が起動するまでの待機時間である。
【0055】
次の時刻t2からt3までは、図1のデジタル制御発振器4に対して開ループ制御が行なわれる。このため、ADPLL回路1には図示を省略した自動バンド選択(ABS:Auto Band Selection)回路が設けられる。ABS回路は、参照クロック信号REFに対して低周波クロック信号CLKAが進み位相か遅れ位相かを判別し、判別結果に基づいて、デジタル制御発振器4が目標周波数DFに近い周波数で発振するようにデジタル制御発振器4の発振周波数帯を選択する。
【0056】
次の時刻t3でデジタル制御発振器4に対してモード1による閉ループ制御が行なわれる。これによってデジタル制御発振器4の発振周波数に帰還がかかり、最終的に時刻t4で発振周波数がロックする。
【0057】
このように時刻t2〜t3までの期間で、デジタル制御発振器4の発振周波数を目標周波数DFに近い値に調整しておくことによって、デジタル制御発振器4の利得を小さくしてもロッキングさせることができる。この結果、ADPLL回路1の位相雑音特性を改善することができる。
【0058】
図9は、モード1においてデジタル位相比較器2の入力信号の位相差と出力との関係を示す図である。図9の横軸は参照クロック信号REFと低周波クロック信号CLKAとの位相差を表わし、縦軸は出力信号の大きさを表わす。ここで、参照クロック信号REFと低周波クロック信号CLKAとの位相差は、波形の立上り時刻の差を参照クロック信号REFの周期で除した値に2πを掛けたものである。
【0059】
図9の破線で示すように、カウンタ16の出力OUT1と位相差との関係は、階段状になっている。この理由は、カウンタ16は高周波クロック信号CLKBの周期の精度で位相差を検出するからである。すなわち、カウンタ16の位相検出範囲は時間デジタル変換器13の位相検出範囲よりも広いが、その分解能は時間デジタル変換器13の分解能よりも低い。
【0060】
一方、図9の実線で示すように、デジタル位相比較器2の出力信号PSと位相差との関係は、0〜2πの範囲で直線状の線形な特性となっている。この理由は、カウンタ16と時間デジタル変換器13とを並行動作させることによって、カウンタ16の有する広い位相検出範囲と時間デジタル変換器13の有する高分解能とを両立させることができるからである。
【0061】
図9において、周波数がロックしたとき、位相差は一定の値になる。モード1の場合、ロックポイントLPにおける位相差はほぼ0である。
【0062】
PLL回路が所望の周波数にロックするためにはある程度の位相検出範囲が必要である。このPLL回路の位相検出範囲をロッキングレンジLRと称する。図9のデジタル位相比較器2の出力特性は0〜2πの範囲で線形であるので、ロッキングレンジLRは0〜2πの範囲である。
【0063】
一旦ロッキングした後にロックした周波数が変動する場合がある。このような場合に周波数の変化に追従してロッキングさせるためにある程度の位相検出範囲が必要である。この範囲をトラッキングレンジTRと呼ぶ。図9の動作モード1の場合、トラッキングレンジTRはロッキングレンジLRに等しく0〜2πである。
【0064】
通信機用のADPLL回路1を直接変調する場合には、ADPLL回路1の発振周波数は変動する。ΔΣ変調等を用いて分周比を等価的に非整数とし、発振周波数を連続的に変化できるようにしたFractional−N PLLシンセサイザの場合にも、分周器5から出力される低周波クロック信号CLKAおよび高周波クロック信号CLKBの周波数が変動する。このような場合には、トラッキングレンジTRの広いPLL回路が必要なので、動作モード1のADPLL回路1が用いられる。
【0065】
(モード2:省電力モード)
次に、モード2におけるADPLL回路1の動作について説明する。図3で説明したように、モード2の場合、ADPLL回路1がロッキングするまでの期間は、粗調整期間と微調整期間とに分けられる。
【0066】
図10は、モード2の粗調整期間におけるデジタル位相比較器2の動作を説明するためのブロック図である。
【0067】
図10を参照して、モード2の粗調整期間の場合、制御信号SWが“0”であるので、第1のスイッチ11Aを介して参照クロック信号REFが時間デジタル変換器13の第1の入力ノードIN1に入力される。さらに、第2のスイッチ11Bを介して低周波クロック信号CLKAが時間デジタル変換器13の第2の入力ノードIN2に入力される。
【0068】
時間デジタル変換器13は、入力された参照クロック信号REFと低周波クロック信号CLKAとの位相差を検出する。しかし、粗調整期間にはイネーブル信号EN1が非活性化状態(“0”)であるので、時間デジタル変換器13の出力結果は加算部18に出力されない。
【0069】
一方、モード2の粗調整期間では、イネーブル信号EN2が活性化状態(“1”)であるので、AND回路17A,17B,17Cをそれぞれ介してカウンタ16に参照クロック信号REF、低周波クロック信号CLKA、および高周波クロック信号CLKBが入力される。カウンタ16は、参照クロック信号REFの立上り時刻と低周波クロック信号CLKAの立上り時刻との差を検出し、検出した時間差に対応した信号OUT1を加算部18に出力する。このように、モード2の粗調整期間では、カウンタ16による検出結果のみによってデジタル位相比較器2から位相差信号PSが出力される。
【0070】
図11は、モード2の微調整期間におけるデジタル位相比較器2の動作を説明するためのブロック図である。
【0071】
図11を参照して、モード2の微調整期間の場合、制御信号SWが“0”であるので、第1のスイッチ11Aを介して参照クロック信号REFが時間デジタル変換器13の第1の入力ノードIN1に入力される。さらに、第2のスイッチ11Bを介して低周波クロック信号CLKAが時間デジタル変換器13の第2の入力ノードIN2に入力される。
【0072】
時間デジタル変換器13は、入力された参照クロック信号REFと低周波クロック信号CLKAとの立上り時刻の差を検出する。微調整期間にはイネーブル信号EN1が活性化状態(“1”)であるので、検出した時間差に対応した信号OUT2が加算部18に出力される。
【0073】
一方、モード2の微調整期間では、イネーブル信号EN2が非活性化状態(“0”)であるので、AND回路17A,17B,17Cを介してカウンタ16に入力される信号は“0”であり、その間カウンタ14の出力OUT1は変化しない。したがって、モード2の微調整期間では、時間デジタル変換器13による検出結果OUT2に基づき、デジタル位相比較器2から位相差信号PSが出力される。
【0074】
図12(A)〜(C)は、モード2におけるデジタル位相比較器2の動作を説明するための波形図である。
【0075】
図12(A)は、粗調整期間を示す。図12(A)は上から順に、参照クロック信号REFの波形、低周波クロック信号CLKAの波形、高周波クロック信号CLKBの波形、および、図6の積分器23の出力信号CN(高周波クロック信号CLKBのカウント数)を示す。図12(A)のように、参照クロック信号REFと低周波クロック信号CLKAとの立上り時刻の差ERRが、高周波クロック信号CLKBの3.3周期分であったとする。
【0076】
まず、参照クロック信号REFの立上り時刻に、図6の第1のDフリップフロップ24が保持した高周波クロック信号CLKBのカウント数CNは3になる。次に、低周波クロック信号CLKAの立上り時刻に、図6の第2のDフリップフロップ25が保持した高周波クロック信号CLKBのカウント数CNは6になる。したがって、図6のカウンタ16によって検出された時間差は、高周波クロック信号CLKBの3周期分に等しい。
【0077】
図12(B)は、粗調整期間から微調整期間への移行時を示す。図12(B)に示すように粗調整期間ではカウンタ16の出力に対して帰還がかかる結果、カウンタ16によって検出された参照クロック信号REFと低周波クロック信号CLKAとの位相差は0になる。この結果、低周波クロック信号CLKAの立上りエッジが時間デジタル変換器13の時間検出範囲TDCR内に入るので、時間デジタル変換器13による位相差検出が可能になる。図1のDPFD制御部7はモニタしている位相差信号PSが基準値(図12(B)の場合は0である)になったことを検出すると、粗調整期間から微調整期間に移行すべくイネーブル信号EN1,EN2を切替える。
【0078】
図12(C)は、微調整期間を示す。図12(C)は上から順に、参照クロック信号REFの波形および低周波クロック信号CLKAの波形を示す。図12(C)では、参照クロック信号REFと低周波クロック信号CLKAとの立上り時刻の差ERRが、高周波クロック信号CLKBの0.3周期分になっている。時間デジタル変換器13は、この差ERRを検出し、検出した時間差OUT2を加算部18に出力する。
【0079】
最終的に周波数がロックしたとき、図12(C)の時間差ERRは一定値になる。このロックしたときの時間差ERRは、TDC13の出力に、任意の値(たとえば図12(C)では0.3)を予め引き算することで設定できる。ロックしたときに参照クロック信号REFの立上りエッジと低周波クロック信号CLKA立上りエッジが重なることを避ける必要がある場合には、このような制御を行なってもよい。
【0080】
図13は、モード2においてADPLL回路1の出力信号の周波数変化を示す図である。
【0081】
図13の時刻t1〜t3は、図8の場合と同じであるので説明を繰返さない。図13の時刻t3以降、動作モード2による閉ループ制御が行なわれる。時刻t3〜t4が粗調整期間に対応する。この期間には、カウンタ16によって検出された参照クロック信号REFと低周波クロック信号CLKAとの位相差に基づいてデジタル制御発振器4の閉ループ制御が行なわれる。
【0082】
次の時刻t4以降が微調整期間に対応する。この期間には、時間デジタル変換器13によって検出された参照クロック信号REFと低周波クロック信号CLKAとの位相差に基づいてデジタル制御発振器4の閉ループ制御が行なわれる。この結果、時刻t5でデジタル制御発振器4の発振周波数が目標周波数DFに等しくなってロックする。
【0083】
図14は、モード2においてデジタル位相比較器2の入力信号の位相差と出力との関係を示す図である。図14において横軸は参照クロック信号REFと低周波クロック信号CLKAとの位相差を表わし、縦軸は出力信号の大きさを表わす。
【0084】
モード2の粗調整期間にはカウンタ16のみによって位相差の検出が行なわれる。したがって、図14の破線のグラフ(OUT1)で示すようにロッキングレンジLRは0〜2πと広くなっているが、分解能は低い。一方、モード2の微調整期間には時間デジタル変換器13のみによって位相差の検出が行なわれる。したがって、図14の実線のグラフ(OUT2)で示すように、破線のグラフよりも分解能は高いが線形範囲が狭くなる。
【0085】
図14のモード2の場合のグラフを図9のモード1の場合グラフと比較すると、モード2の場合のロッキングレンジLRは、モード1の場合と同じである。これに対して、モード2の場合のトラッキングレンジTRは、モード1の場合よりも狭くなる。
【0086】
モード2のADPLL回路1はトラッキングレンジTRが狭いので、PLL回路を直接変調するような場合には適していない。しかし、固定された発振周波数を用いる受信機などの場合には、問題なく使用することができる。しかも、以下に述べるように、モード2のADPLL回路1はモード1の場合よりも電流消費が少ないので、受信機などの用途にはモード1の場合よりも適している。
【0087】
図15は、ADPLL回路1の入力信号の周波数と電流消費との関係を示す図である。ADPLL回路1の電流消費は図2のデジタル位相比較器2に入力される信号の周波数に依存すると考えることができる。モード1の場合、図2のカウンタ16および時間デジタル変換器13のいずれにも高周波クロック信号CLKB(たとえば、1GHz)が入力されている。
【0088】
一方、モード2の場合には、粗調整期間にだけ一時的にカウンタ16に高周波クロック信号CLKB(たとえば、1GHz)が入力される。しかし、微調整期間以降に動作する時間デジタル変換器13には、参照クロック信号REF(たとえば、26MHz)および低周波クロック信号CLKA(たとえば、26MHz)しか入力されない。したがって、モード2によってADPLL回路1を動作させることによって、常時高周波の信号がデジタル位相比較器2に入力されるモード1の場合に比べて、電流消費を低減させることができる。
【0089】
さらに、実施の形態1のADPLL回路1には、回路面積の削減の効果もある。
図16は、図2のデジタル位相比較器2の比較例としてのデジタル位相比較器502の構成を示すブロック図である。図16のデジタル位相比較器502は、時間デジタル変換器13のみを含む点で、図2のデジタル位相比較器2と異なる。時間デジタル変換器13の構成は図5の場合と同じである。図16の場合、時間デジタル変換器13の第1の入力ノードIN1には低周波クロック信号CLKAが入力され、第2の入力ノードIN2には参照クロック信号REFが入力される。
【0090】
時間デジタル変換器13のみを含むデジタル位相比較器502において、モード1のデジタル位相比較器2と同等の分解能(たとえば、20ピコ秒)と検出範囲とを実現しようとすると、1万段以上の遅延セルが必要になる。このため、回路面積が大きくなり問題である。
【0091】
図17は、図16のデジタル位相比較器502の入力信号の位相差と出力との関係を示す図である。図17を図9に示すモード1のADPLL回路1の場合と比較すると、図17の場合のロッキングレンジLRおよびトラッキングレンジTRは、図9の場合と同じである。このように、図2のデジタル位相比較器2は、図16のデジタル位相比較器502と同じ性能をより小さな回路面積で実現している。
【0092】
以上の実施の形態1のADPLL回路1の効果をまとめる以下のとおりである。
第1に、ADPLL回路1をモード2で動作させることによって、低消費電力化が可能になる。このモード2のロッキングレンジはモード1の場合と変わらないので、低消費電力化のためにロッキングの性能が低下することはない。
【0093】
第2に、直交変調器を設けずにPLL回路を直接変調する場合のように、広いトラッキングレンジが必要な場合には、ADPLL回路1をモード1の動作させることによって対応できる。モード2からモード1への変更は、制御信号SWおよびイネーブル信号EN1,EN2の切替えによって容易に行なえる。
【0094】
第3に、カウンタ16と時間デジタル変換器13とを共用することによって、時間デジタル変換器13のみでデジタル位相比較器を構成する場合に比べて、面積を削減することができる。さらに、制御信号SWおよびイネーブル信号EN1,EN2の切替えによって容易に動作モードの変更ができるので、高トラッキングレンジが必要な回路と電流消費量の削減が必要な回路とが同時に動作しない場合には、これらの回路で用いられるPLL回路を共有化することができる。この結果、従来、複数のPLL回路を設けられていた場合を1つのPLL回路で置換えることができるので、回路面積を削減することができる。
【0095】
(ADPLL回路1の無線通信機への適用例)
近年、携帯電話機は、WCDMA(Wideband Code Division Multiple Access)、GSM(Global System for Mobile Communications)、およびEDGE(Enhanced Data GSM Environment)など多種多様な無線規格に対応する必要がある。このため、RF−ICの内部でこれまでアナログ回路で実装されてきた部分をデジタル回路に置き換える必要性が増している。デジタル回路に変更することによって、回路面積の縮小、動作電圧の低減、および素子特性のばらつき抑制などが期待できる。
【0096】
PLLシンセサイザについても、全ての受動素子をデジタル回路に変更したADPLLが製品に採用される場合が多くなりつつある。しかしながら、ADPLLでは数GHzの信号をデジタル処理する必要があるので、消費電流が大きくなるという問題がある。これまで説明したADPLL回路1は、従来のPLLシンセサイザに比べて低消費電力化が可能になるともに、回路面積の削減が可能になるという利点がある。以下、ADPLL回路1の携帯電話機への適用例について説明する。
【0097】
図18は、図1のADPLL回路1の適用例として携帯電話機120の構成を示すブロック図である。図18を参照して、携帯電話機120は、アンテナ素子71と、アンテナ切替器72と、RF部73と、ベースバンド回路74とを含む。携帯電話機120はWCDMA、GSM、およびEDGEの各通信方式に対応した、いわゆるマルチバンド対応の端末である。
【0098】
具体的にWCDMAの場合、携帯電話機120が対応する周波数帯域は、バンド1(受信:2110〜2170MHz 送信:1920〜1980MHz)、バンド2(受信:1930〜1990MHz 送信:1850〜1910MHz)、およびバンド5(受信:869〜894MHz 送信:824〜849MHz)である。
【0099】
GSMの場合、携帯電話機120が対応する周波数帯域は、GSM850(受信:869〜894MHz 送信:824〜849MHz)、GSM900(受信:925〜960MHz 送信:880〜915MHz)、DCS(Digital Cellular System)1800(受信:1805〜1880MHz 送信:1710〜1785MHz)、およびPCS(Personal Communication System)1900(受信:1930〜1990MHz 送信:1850〜1910MHz)である。
【0100】
EDGEは、GSMを拡張した方式であり、GSMと同じ周波数帯域が用いられる。GMSがGMSK(Gaussian Minimum Shift Keying)変調であるのに対して、EDGEは、音声通信をGMSK変調で行ない、データ通信を8−PSK(Phase Shift Keying)変調で行なう。
【0101】
上記の各周波数帯の通信方式に対してアンテナ素子71を共用するためにアンテナ切替器72が設けられている。GSM/EDGEは半二重通信方式であるので、送信の場合と受信の場合とでアンテナ切替器72によって接続が切替えられる。これに対して、WCDMAは2つの周波数帯域で送受信が同時に行なわれる全二重通信方式であるので、送信の場合と受信の場合とでアンテナ切替器72の接続は切替えられない。アンテナ切替器72の接続は、ベースバンド回路74からデジタルインターフェース回路75を介して供給された切替信号76に従って切替えられる。
【0102】
RF部73は、アンテナ素子71によって受信された高周波の受信信号80A〜80Eをベースバンド信号86I,86Qに周波数変換する。この場合、図18のPLL周波数シンセサイザ150は、直交復調器84A〜84C用のローカル発振器として用いられる。ベースバンド信号86I,86Qは、デジタル信号に変換された後、RF部73に設けられたデジタルインターフェース回路75を介してベースバンド回路74に出力される。
【0103】
図18において、受信信号80AはWCDMAのバンド1の帯域の信号であり、受信信号80B,80Cはそれぞれバンド2,5の帯域の信号である。受信信号80DはDCS1800/PCS1900の帯域の信号であり、受信信号80EはGSM850/GSM950の帯域の信号である。携帯電話機120では、これらの受信信号80A〜80Eを、中間周波数に変換することなくベースバンド信号86I,86Qに直接変換するダイレクト・コンバージョン方式が用いられている。
【0104】
RF部73は、さらに、ベースバンド回路74が送信データに基づいて生成した変調信号91I,91Q,100A,100Fを、高周波の送信信号90A〜90Eに変換する。図18において、送信信号90AはWCDMAのバンド1の帯域の信号であり、送信信号90B,90Cはそれぞれバンド2,5の帯域の信号である。送信信号90DはDCS1800/PCS1900の帯域の信号であり、送信信号90EはGSM850/GSM950の帯域の信号であるとする。各送信信号90A〜90Eは、アンテナ素子71から基地局に向けて送信される。
【0105】
携帯電話機120の場合、GSM/EDGE方式とWCDMA方式とで変調方式が異なる。GSM/EDGE方式では、PLL周波数シンセサイザ152を直接変調するポーラ変調方式が用いられる。一方、WCDMA方式の場合には、PLL周波数シンセサイザ151はローカル発振器として用いられ、直交変調器93A,93B,93Cによって変調が行なわれる。この場合、受信信号80A〜80Cの周波数変換の場合と同様に、変調信号91I,91Qは中間周波数に変換されることなく、高周波の送信信号90A,90B,90Cに直接変換されるダイレクト・コンバージョン方式が用いられる。
【0106】
以下、図18に記載されたRF部73の各構成要素について概略を説明する。まず、受信回路の構成について説明する。
【0107】
RF部73は、受信回路の構成として、デュプレクサ81A〜81Cと、受信信号80A〜80Eに対応の周波数帯域をそれぞれ通過させるバンドパスフィルタ82A〜82Eと、バンドパスフィルタ82A〜82Eを通過した信号をそれぞれ増幅するローノイズアンプ83A〜83Eとを含む。全二重通信であるWCDMA方式に対応して、アンテナ切替器72と、バンドパスフィルタ82A〜82Cとの間にデュプレクサ81A〜81Cが設けられる。デュプレクサ81A,81B,81Cは、送受信でアンテナを共用するために、送信信号の経路と受信信号の経路とを分離する。
【0108】
RF部73は、さらに、直交復調器84A〜84Cと、PLL周波数シンセサイザ150と、マルチプレクサ85と、プログラマブル利得増幅器87I,87Qと、ローパスフィルタ88I,88Qと、A/D(Analog-to-Digital)変換器89I,89Qとを含む。
【0109】
直交復調器84A〜84Cは、WCDMAのバンド1,2,5にそれぞれ対応して設けられ、受信信号80A〜80Cをベースバンド信号に周波数変換する。直交復調器84Bは、DCS1800/PCS1900に対応した受信信号80Dの周波数変換も行なう。直交復調器84Cは、GSM850/GSM950に対応した受信信号80Eの周波数変換も行なう。PLL周波数シンセサイザ150は、直交復調器84A〜84C用のローカル発振器として設けられている。各直交復調器は、周波数変換によって得られたベースバンドのI信号およびQ信号を出力する。
【0110】
マルチプレクサ85は、直交復調器84A〜84Cのうち通信中の周波数帯に対応した直交復調器を選択するための切替スイッチである。マルチプレクサ85から出力されたI信号86IおよびQ信号86Qは、プログラマブル利得増幅器87I,87Qによって強度が調整される。強度調整後にI信号およびQ信号は、ローパスフィルタ88I,88Qを通過してから、A/D変換器89I,89Qによってデジタル信号に変換される。デジタル変換されたI信号およびQ信号は、デジタルインターフェース回路75を介してベースバンド回路74に出力される。ベースバンド回路74は、I信号およびQ信号に基づいて送信データを復調する。
【0111】
次に、WCDMA方式の場合の送信回路の構成について説明する。
RF部73は、WCDMA方式の送信用として、D/A(Digital-to-Analog)変換器92I,92Qと、直交変調器93A〜93Cと、プログラマブル利得増幅器94A〜94Cと、パワーアンプ95A〜95Cと、アイソレータ96A〜96Cと、PLL周波数シンセサイザ151とを含む。直交変調器93A〜93Cは、バンド1,2,5にそれぞれ対応して設けられる。プログラマブル利得増幅器94A〜94C、パワーアンプ95A〜95C、およびアイソレータ96A〜96Cについても同様である。
【0112】
WCDMA方式に対応して、ベースバンド回路74は送信データに基づいて互いに位相が直交するI信号およびQ信号(変調信号)を生成する。デジタルインターフェース回路75を介して入力されたI信号91IおよびQ信号91Qは、D/A変換器92I,92Qによってそれぞれアナログ信号に変換される。アナログ変換されたI信号91IおよびQ信号91Qは、直交変調器93A〜93Cのうち使用する周波数帯域に対応した直交変調器に出力される。
【0113】
各直交変調器は、I信号およびQ信号によってPLL周波数シンセサイザ151の発振出力を変調する。PLL周波数シンセサイザ151は各直交変調器用のローカル発振器として設けられている。
【0114】
直交変調器93A〜93Cから出力された信号は、プログラマブル利得増幅器94A〜94Cによってそれぞれ強度が調整されてからパワーアンプ95A〜95Cによってそれぞれ増幅される。パワーアンプ95A〜95Cから出力された信号は、アイソレータ96A〜96Cおよびデュプレクサ81A〜81Cをそれぞれ通過して、送信信号90A〜90Cとしてアンテナ素子71から出力される。
【0115】
次に、GSM/EDGE方式の場合の送信回路の構成について説明する。
RF部73は、GSM/EDGE方式の送信用として、PLL周波数シンセサイザ152と、パワーアンプ103D,103Eと、D/A変換器105Aと、増幅器106Aとを含む。パワーアンプ103DはDCS1800/PCS1900の周波数帯に対応して設けられ、パワーアンプ103EはGSM850/GSM950の周波数帯に対応して設けられる。
【0116】
GSM/EDGE方式の場合にはポーラ変調によって送信信号90D,90Eが生成される。この場合、ベースバンド回路74は、送信データに基づいてI信号およびQ信号(変調信号)を生成する。ベースバンド回路74は、生成した直交座標上のI信号およびQ信号を極座標平面上の振幅変調信号および位相変調信号に変換する。生成された振幅変調信号および位相変調信号は、RF部73のデジタルインターフェース回路75に出力される。
【0117】
振幅変調信号100Aは、D/A変換器105Aによってアナログ変換された後、増幅器106Aによって強度が調整される。強度調整された振幅変調信号100Aによってパワーアンプ103D,103Eの電源電圧が変調される。
【0118】
位相変調信号100Fは、PLL周波数シンセサイザ152を直接変調するのに用いられる。具体的には、位相変調信号100Fに応じてPLL周波数シンセサイザに設けられた分周器の分周比が変調される。PLL周波数シンセサイザ152によって生成された信号は、周波数帯域に応じてパワーアンプ103Dまたは103Eに出力される。
【0119】
パワーアンプ103D,103Eは、PLL周波数シンセサイザ152から出力された信号を増幅する。このとき、パワーアンプ103D,103Eを駆動する電源電圧は振幅変調信号100Aによって変調されているので、最終的に振幅変調信号100Aおよび位相変調信号100Fによって変調された送信信号90D,90Eがアンテナ素子71から放射される。
【0120】
これまで説明したPLL周波数シンセサイザ150,151,152のいずれにも、図1のADPLL回路1を適用することができる。具体的に説明すると、受信用のローカル発振器として用いられるPLL周波数シンセサイザ150の発振周波数は利用する通信規格の周波数に設定されるので、シンセサイザ150のトラッキングレンジは狭くても良い。したがって、モード2(省電力モード)のADPLL回路1をPLL周波数シンセサイザ150に用いることができる。これによって、従来よりもPLL周波数シンセサイザ150の消費電流を低減させることができる。
【0121】
WCDMA方式の送信用のローカル発振器として用いられるPLL周波数シンセサイザ151の発振周波数も、利用する通信規格の周波数に設定される。したがって、モード2(省電力モード)のADPLL回路1をPLL周波数シンセサイザ151に用いることができる。この結果、従来よりもPLL周波数シンセサイザの消費電流を低減させることができる。
【0122】
GSM/EDGE方式の送信用に用いられるPLL周波数シンセサイザ152は、変調信号(位相変調信号100F)によって直接変調される。このため、トラッキングレンジがより広い動作モード1(高トラッキングレンジモード)のADPLL回路1が用いられる。
【0123】
このように、RF部73内のいずれのPLL周波数シンセサイザに対しても、同じADPLL回路1を適用することができるので、回路設計の負荷を低減することができる。
【0124】
図19は、図1のADPLL回路1の他の適用例として携帯電話機121の構成を示すブロック図である。図19の携帯電話機121では、図18の送信用のPLL周波数シンセサイザ151,152が1つのPLL周波数シンセサイザ153にまとめられている。PLL周波数シンセサイザ153には、図1のADPLL回路1が変形して用いられる。PLL周波数シンセサイザ153は、動作モードをモード1(高トラッキングレンジモード)またはモード2(省電力モード)に切替えて使用される。以下、具体的に説明する。
【0125】
図19の携帯電話機121は、ベースバンド回路122とRF部123とを含む。RF部123は、PLL周波数シンセサイザ153,154と、デジタルインターフェース回路124と、送信回路110と、受信回路114と、温度補償型水晶発振器6とを含む。
【0126】
PLL周波数シンセサイザ153は、単一のデジタル制御発振器4に代えて、2個のデジタル制御発振器4A,4Bを含む点で図1のADPLL回路1と異なる。デジタル制御発振器4AはWCDMA用に設けられ、デジタル制御発振器4BはGSM/EDGE用に設けられる。
【0127】
PLL周波数シンセサイザ153は、さらに、スイッチ9を含む点で図1のADPLL回路1と異なる。その他の点については、図19のPLL周波数シンセサイザ153は、図1のADPLL回路1の構成と同じである。具体的に、PLL周波数シンセサイザ153は、デジタル制御発振器4A,4Bおよびスイッチ9に加えて、分周器5と、デジタル位相比較器2と、デジタルループフィルタ3とを含む。以下の説明では、図1のADPLL回路1と同一または相当する部分については同一の参照符号を付して説明を繰返さない場合がある。
【0128】
スイッチ9は、デジタルインターフェース回路124に設けられたDPFD制御部125によって制御される。DPFD制御部125は図1のDPFD制御部7に対応する。DPFD制御部125から出力された制御信号SWが“1”(動作モード1)のとき、デジタル制御発振器4Bの出力が分周器5に入力される。制御信号SWが“0”(動作モード2)のとき、デジタル制御発振器4Aの出力が分周器5に入力される。
【0129】
分周器5は、スイッチ9の出力を分周することによって、低周波クロック信号CLKAおよび高周波クロック信号CLKBを生成する。分周器5の分周比は可変である。デジタルインターフェース回路124に設けられた分周比制御部126は、GSMやWCDMAなどの通信規格に対応した周波数でデジタル制御発振器4A,4Bが発振するように、分周器5の分周比を設定する。さらに、図18で説明したようにGSM/EDGE方式によるデータ送信場合にはポーラ変調方式によってPLL周波数シンセサイザ153が直接変調される。この場合、分周比制御部126は、ベースバンド回路122から出力された位相変調信号に応じて、分周器5の分周比を変調する。
【0130】
デジタル位相比較器2およびデジタルループフィルタ3の構成および動作は、図2〜図15で説明したとおりであるので繰返さない。
【0131】
次に、送信回路110および受信回路114について説明する。図19の送信回路110は、D/A変換器111と、直交変調器112と、パワーアンプ113A,113Bとを含む。
【0132】
WCDMA方式でデータを送信する場合には、直交変調器112によってデジタル制御発振器4Aの発振出力が変調される。直交変調器112には、変調信号としてD/A変換器111でアナログ変換された変調信号MS2(I信号およびQ信号)が与えられる。パワーアンプ113Aは、直交変調器112から出力された信号を増幅してアンテナ素子に出力する。
【0133】
WCDMA方式の場合、PLL周波数シンセサイザ153は動作モード2(制御信号SW=“0”)で動作する。WCDMA方式の場合は、PLL周波数シンセサイザ153はローカル発振器として用いられるため、ロック状態では狭いトラッキングレンジでよいからである。PLL周波数シンセサイザ153をモード2(低電力モード)で動作させることによって、PLL周波数シンセサイザ153の消費電流を削減することができる。
【0134】
一方、GSM/EDGE方式でデータを送信する場合には、ポーラ変調方式によってPLL周波数シンセサイザ153が直接変調される。具体的には、分周比制御部126から出力された変調信号MS1によって分周器5の分周比が変調される。デジタル制御発振器4Bの発振出力はパワーアンプ113Bによって増幅されてアンテナ素子に出力される。図19では図示を省略しているが、ポーラ変調方式の場合には、ベースバンド回路122で生成された振幅変調信号によってパワーアンプ113Bの駆動電圧が変調される。
【0135】
GSM/EDGE方式の場合には、PLL周波数シンセサイザ153は動作モード1(制御信号SW=“1”)で動作する。GSM/EDGE方式の場合は、PLL周波数シンセサイザ153を直接変調するため、ロック状態で広いトラッキングレンジが要求されるからである。図2、図3で説明したように、動作モードは制御信号SWおよびイネーブル信号EN1,EN2によって容易に切替えることができる。したがって、WCDMA用とGSM/EDGE用とで同一のPLL周波数シンセサイザ153を共用することができ、回路面積を削減することができる。
【0136】
図19の受信回路114の構成は、図18の場合と同様の構成であるので、以下、簡単に説明する。受信回路114は、ローノイズアンプ115A,115Bと、直交復調器116A,116Bと、A/D変換器117とを含む。受信用のPLL周波数シンセサイザ154は、WCDMA用およびGSM/EDGE用の局部発振信号を発生して、直交復調器116A,116Bにそれぞれ出力する。
【0137】
WCDMA方式の受信信号を復調する場合には、ローノイズアンプ115Aで増幅された受信信号が直交復調器116Aによってベースバンド信号に変換される。直交復調器116Aから出力されたベースバンド信号はA/D変換器117によってデジタル変換され、ベースバンド回路122に出力される。同様に、GSM/EDGE方式の受信信号を復調する場合には、ローノイズアンプ115Bで増幅された受信信号が直交復調器116Bによってベースバンド信号に変換される。直交復調器116Bから出力されたベースバンド信号はA/D変換器117によってデジタル変換され、ベースバンド回路122に出力される。
【0138】
図20は、図19のDPFD制御部125の構成の一例を示すブロック図である。
図20に示すように、DPFD制御部125は、比較器127、インバータ128、およびOR回路129,130を含む論理回路である。DPFD制御部125への入力信号は、デジタル位相比較器2からのモニタ信号MON(位相差信号)と、ベースバンド回路122から出力された動作モードの選択値および参照値のデータである。DPFD制御部125からの出力信号は、制御信号SWとイネーブル信号EN1,EN2である。
【0139】
モード選択値“1”の場合が動作モード1(高トラッキングレンジモード)に対応し、“0”の場合が動作モード2(低電力モード)に対応する。制御信号SWはモード選択値に等しい。参照値は、モード2の粗調整期間から微調整期間に移行するときにモニタ信号MONと比較するために用いられる。
【0140】
比較器127は、モニタ信号が参照値以下である場合(所定範囲内の場合)に“1”を出力し、モニタ信号が参照値を超える場合に“0”を出力する。OR回路129は、モード選択値と比較器127の出力との論理和を演算し、演算結果をイネーブル信号EN1として出力する。インバータ128は、比較器127の出力を反転する。OR回路130は、モード選択値とインバータ128の出力との論理和を演算し、演算結果をイネーブル信号EN2として出力する。
【0141】
上記の構成によれば、モード選択値が“1”の場合(動作モード1)、制御信号SWおよびイネーブル信号EN1,EN2のいずれも“1”になる。モード選択値が“0”の場合には(動作モード2)、比較器127の出力に応じてDPFD制御部125の出力が異なる。比較器127の出力が“0”の場合(粗調整期間)、制御信号が“0”となり、イネーブル信号EN1が“0”となり、イネーブル信号EN2が“1”となる。一方、比較器127の出力が“1”の場合(微調整期間)、制御信号が“0”となり、イネーブル信号EN1が“1”となり、イネーブル信号EN2が“0”となる。このように、図20のDPFD制御部125の回路構成によって、図3と同じ出力結果が得られる。
【0142】
図21は、図1のADPLL回路1のさらに他の適用例として携帯電話機131の構成を示すブロック図である。図21の携帯電話機131は、受信用のPLL周波数シンセサイザと送信用のPLL周波数シンセサイザとを1つのPLL周波数シンセサイザ155にまとめたものである。GSM、Zigbee、およびWLANなど、送信と受信を同時に行なわないシステムでは、送信用と受信用とでシンセサイザの一体化が可能である。以下、具体的に説明する。
【0143】
図21に示す携帯電話機131は、ベースバンド回路132とRF部133とを含む。RF部133は、PLL周波数シンセサイザ155と、デジタルインターフェース回路134と、送信回路138と、受信回路140と、温度補償型水晶発振器6とを含む。
【0144】
PLL周波数シンセサイザ155は、図19のPLL周波数シンセサイザ153と同じ構成である。PLL周波数シンセサイザ155は、デジタル制御発振器4C,4Dと、スイッチ9と、分周器5と、デジタル位相比較器2と、デジタルループフィルタ3とを含む。図21の場合、図19のデジタル制御発振器4Bに代えて送信用のデジタル制御発振器4Cが設けられ、図19のデジタル制御発振器4Aに代えて受信用のデジタル制御発振器4Dが設けられる。スイッチ9は、制御信号SWによって制御され、制御信号SWが“1”(動作モード1)のとき、デジタル制御発振器4Cの出力が分周器5に入力される。制御信号SWが“0”(動作モード2)のとき、デジタル制御発振器4Dの出力が分周器5に入力される。
【0145】
送信回路138は、パワーアンプ139を含む。パワーアンプ139は、デジタル制御発振器4Cの出力を増幅してアンテナ素子に出力する。図21では図示を省略しているが、ポーラ変調方式の場合には、ベースバンド回路132で生成された振幅変調信号によってパワーアンプ139の駆動電圧が変調される。
【0146】
送信時には、PLL周波数シンセサイザ155は動作モード1(制御信号SW=“1”)で動作する。PLL周波数シンセサイザ155を直接変調するので、ロック状態で広いトラッキングレンジが要求されるからである。
【0147】
受信回路140は、ローノイズアンプ141、直交復調器142、およびA/D変換器143を含む。ローノイズアンプ141で増幅された受信信号が直交復調器142によってベースバンド信号に変換される。直交復調器142から出力されたベースバンド信号はA/D変換器143によってデジタル変換され、ベースバンド回路132に出力される。
【0148】
受信用のPLL周波数シンセサイザ155はローカル発振器として用いられ、局部発振信号を発生して、直交復調器142にそれぞれ出力する。この場合、PLL周波数シンセサイザ155は動作モード2(制御信号SW=“0”)で動作する。ローカル発振器として用いられるため、ロック状態では狭いトラッキングレンジでよいからである。PLL周波数シンセサイザ155をモード2(低電力モード)で動作させることによって、PLL周波数シンセサイザ155の消費電流を削減することができる。
【0149】
PLL周波数シンセサイザ155の動作モードは、制御信号SWおよびイネーブル信号EN1,EN2によって容易に切替えることができる。したがって、送信用と受信用とで同一のPLL周波数シンセサイザ155を共用することができ、回路面積を削減することができる。
【0150】
[実施の形態2]
図22は、この発明の実施の形態2によるデジタル位相比較器2Aの構成を示すブロック図である。
【0151】
図22のデジタル位相比較器2Aは、スイッチ11Aの入力側に位相判定部41(PFD)をさらに含む点で、図2のデジタル位相比較器2と異なる。位相判定部41は、参照クロック信号REFと低周波クロック信号CLKAとを受ける。制御信号SWが“0”の場合(動作モード2)、位相判定部41の出力が、スイッチ11Aを介して時間デジタル変換器13の入力ノードIN1に入力される。制御信号SWが“1”の場合(動作モード1)には、図2の場合と同様に、高周波クロック信号CLKBがスイッチ11Aを介して時間デジタル変換器13の入力ノードIN1に入力される。その他の点については、図22のデジタル位相比較器2Aは、図2のデジタル位相比較器2と同じであるので、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
【0152】
位相判定部41は、参照クロック信号REFの位相が低周波クロック信号CLKA位相よりも進んでいる場合に、参照クロック信号REFの立上りと同じタイミングで立上り、低周波クロック信号CLKAの立上りのタイミングで立ち下がるパルス信号を出力する。すなわち、参照クロック信号REFが低周波クロック信号CLKAよりも進み位相の場合には、位相判定部41の出力45はこれらのクロック信号間の位相差に比例する。逆に参照クロック信号REFが低周波クロック信号CLKAよりも遅れ位相の場合には0を出力する。このように、位相判定部41は、参照クロック信号REFが低周波クロック信号CLKAよりも進み位相か遅れ位相かを判定する回路である。
【0153】
位相判定部41は、公知の位相周波数検出器(PFD:Phase Frequency Detector)と同様の構成であり、論理回路によって構成することができる。
【0154】
図23は、図22の位相判定部41の構成の一例を示すブロック図である。
図23を参照して、位相判定部41は、Dフリップフロップ42,43と、AND回路44とを含む。Dフリップフロップ42のクロック端子には参照クロック信号REFが入力され、Dフリップフロップ43のクロック端子には低周波クロック信号CLKAが入力される。Dフリップフロップ42,43の入力端子は、“1”(Hレベル)に固定される。AND回路44は、Dフリップフロップ42,43の出力を受け、これらの出力が共に“1”(Hレベル)のとき、Dフリップフロップ42,43をリセットする。Dフリップフロップ42の出力が位相判定部41の出力信号45として用いられる。
【0155】
図24(A),(B)は、図22のデジタル位相比較器2Aの入力信号の位相差と出力との関係を示す図である。図24(A),(B)の横軸は参照クロック信号REFと低周波クロック信号CLKAとの位相差(REF−CLKA)を表わし、縦軸は出力信号の大きさを表わす。
【0156】
図24(A)を参照して、実線のグラフ45は図23の位相判定部41の入力信号の位相差と出力との関係を示す。破線のグラフ46は、位相判定部41が設けられていない場合の時間デジタル変換器13の入力信号の位相差と出力との関係を示し、図14の実線のグラフと同じである。
【0157】
図24(B)を参照して、破線のグラフは図23のカウンタ16の出力OUT1と位相差との関係を示す。実線のグラフは、図23のデジタル位相比較器2Aの時間デジタル変換器13の出力OUT2と位相差との関係を示す。図24(B)の実線のグラフは、図24(A)の実線45のグラフと破線46のグラフとを合成したものに対応している。
【0158】
図14と図24(B)とを比較すると、図14の場合には位相差が正の状態から負の状態になると、時間デジタル変換器13の出力OUT2に跳びが生じていた。これに対して、位相判定部41が設けられた図24(B)の場合には、位相差が負である遅れ位相の場合には、出力OUT2が0に固定される。したがって、位相差が正の状態から負の状態になったとしても、時間デジタル変換器13の出力OUT2に跳びは生じない。このように、位相判定部41を設けることによってデジタル位相比較器の入出力特性を改善することができる。
【0159】
[実施の形態3]
PLLをロックさせる場合に、参照クロック信号REFと低周波クロック信号CLKAとの位相差(時間差)がほぼ0の状態でロックしたとする。この場合、温度変化などの外乱によって位相差がマイナス側にシフトすると、図14の入出力特性のグラフで示すように、デジタル位相比較器2の出力の値が急激に変化する。この結果、PLLのロックが外れる可能性があり問題となる。実施の形態3では、カウンタ16および時間デジタル変換器13の出力にオフセットを付加することによって、カウンタ16および時間デジタル変換器13の出力が線形出力範囲の中心でロックするようにする。
【0160】
図25は、この発明の実施の形態3によるデジタル位相比較器2Bの構成を示すブロック図である。
【0161】
図25のデジタル位相比較器2Bは、第1の検出部15に入力される参照クロック信号REFの位相を180度シフトさせるインバータ51(位相シフタ)をさらに含む点で図2のデジタル位相比較器2と異なる。
【0162】
デジタル位相比較器2Bは、さらに、第1の検出部15の出力にオフセットを付加する減算器52(第1のオフセット付加部)と、第2の検出部12の出力にオフセットを付加する減算器53(第2のオフセット付加部)とをさらに含む点で図2のデジタル位相比較器2と異なる。減算器52は、第1の検出部15の出力からオフセットOFST1を減じた値OUT1を加算部18に出力する。減算器53は、第2の検出部12の出力からオフセットOFST2を減じた値OUT2を加算部18に出力する。
【0163】
図25のデジタル位相比較器2Bのその他の点は、図2のデジタル位相比較器2と同じであるので、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して説明を繰返さない。
【0164】
図26は、図25のデジタル位相比較器2Bの入力信号の位相差と出力との関係を示す図である。図26の横軸は参照クロック信号REFと低周波クロック信号CLKAとの位相差(REF−CLKA)を表わし、縦軸は出力信号の大きさを表わす。
【0165】
図26のグラフを図14のグラフと比較すると、まず、図25のインバータ51を設けることによって、図26の破線のグラフで示されたカウンタ16の出力OUT1は横方向にπシフトする。
【0166】
次に、減算器52によってカウンタ16の出力からオフセットOFST1を減じることによって、ロックポイントLPが上方向にオフセットOFST1の大きさだけシフトする。オフセットOFST1の大きさは、カウンタ16の出力が線形範囲の中心でロックするように定められる。具体的には、参照クロック信号REFの半周期分に相当する量をオフセットOFST1に定めるとよい。
【0167】
さらに、減算器53によって時間デジタル変換器13の出力からオフセットOFST2を減じることによって、最終的なロックポイントLPが上方向にオフセットOFST2の大きさだけシフトする。オフセットOFST2の大きさは、時間デジタル変換器13の出力が線形範囲の中心でロックするように定められる。具体的には、時間デジタル変換器13の出力の中間値をオフセットOFST2に定めるとよい。たとえば、時間デジタル変換器13の出力が0〜255の場合は、半分の128をオフセットOFST2とする。
【0168】
以上の結果、ロックポイントが外乱によって変動したとしても、PLLのロックがはずれたりしないようにすることができる。さらに、参照クロック信号REFと立上りエッジと低周波クロック信号CLKAの立上りエッジとがずれた位置でロックがかかるようにできるので、立上りエッジが重なった場合に比べて判定誤差を低減できる。
【0169】
[実施の形態4]
図27は、この発明の実施の形態4によるADPLL回路1Cの構成を示すブロック図である。
【0170】
図27のADPLL回路1Cは、デジタルループフィルタ3Aの帯域幅がイネーブル信号EN1で制御される点で、図1のADPLL回路1と異なる。デジタルループフィルタ3Aの帯域幅は、イネーブル信号EN1が非活性状態(“0”)であるモード2の粗調整期間において通常(モード1)の場合よりも広げられ、イネーブル信号EN1が活性状態(“1”)であるモード2の微調整期間において通常の帯域幅に戻される。
【0171】
上記のように制御する理由について次に説明する。なお、図27のその他の点については、図1のADPLL回路1と同じであるので同一または相当する部分には同一の参照符号を付して説明を繰返さない。
【0172】
図28は、図27のADPLL回路1Cの位相雑音特性を説明するための図である。図28の横軸は周波数であり、縦軸は位相雑音[dBc/Hz]である。破線のグラフ62の場合が通常の帯域幅の場合の位相雑音特性であり、実線のグラフ61がループ帯域幅を通常よりも広げた場合の位相雑音特性である。一転鎖線のグラフ63がシステムによって決まる位相雑音特性のスペック値であるとする。図28に示すように、ループ帯域を広げると位相雑音特性が劣化するためにスペック値に入らない場合ある。
【0173】
図29(A),(B)は、図27のADPLL回路1Cのロックアップタイムを説明するための図である。図29(A)がループ帯域を通常よりも広げた場合であり、図29(B)が通常のループ帯域の場合である。図29(A)の場合のロックアップタイム64は、図29(B)の場合のロックアップタイム65よりも短くなっており、ループ帯域を広げることで収束時間を短くすることができる。
【0174】
以上の考察結果から、モード2の粗調整期間(EN1=“0”)にはループ帯域を広げることによって収束時間を早め、微調整期間(EN1=“1”)にはループ帯域を狭めることによって位相雑音特性を改善させるのがよい。なお、デジタルループフィルタはアナログループフィルタと異なり、ループ帯域の変更は容易である。
【0175】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0176】
1,1C ADPLL回路、2,2A,2B デジタル位相比較器、3,3A デジタルループフィルタ、4,4A〜4D デジタル制御発振器、5 分周器、6 温度補償型水晶発振器、7,125,135 DPFD制御部、9,11A,11B スイッチ、11 スイッチ部、12 第2の検出部、13 時間デジタル変換器、15 第1の検出部、16 カウンタ、18 加算部(位相差信号生成部)、41 位相判定部、51 インバータ(位相シフタ)、52 減算器(オフセット付加部)、53 減算器(オフセット付加部)、73,123,133 RF部、74,122,132 ベースバンド回路、75,124,134 デジタルインターフェース回路、120,121,131 携帯電話機、126,136 分周比制御部、150〜155 周波数シンセサイザ、CLKA 低周波クロック信号、CLKB 高周波クロック信号、EN1,EN2 イネーブル信号、PS 位相差信号、REF 参照クロック信号、SW 制御信号、TR トラッキングレンジ、LR ロッキングレンジ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位相差信号に応じた周波数で発振する発振器と、
前記発振器の出力を分周した第1のクロックおよび前記第1のクロックよりも周波数の高い第2のクロックを生成する分周器と、
位相比較部とを備え、
前記位相比較部は、
前記第1および第2のクロックならびに参照クロックを受け、前記第1のクロックと前記参照クロックとの位相差を前記第2のクロックの周期である第1の時間の精度で検出し、検出した位相差が所定範囲内になるまで、検出した位相差に対応した前記位相差信号を出力する第1の検出部と、
前記第1のクロックおよび前記参照クロックを受け、前記第1の検出部によって検出された位相差が前記所定範囲内となってから、前記第1のクロックと前記参照クロックとの位相差を前記第1の時間よりも短い第2の時間の精度で検出し、検出した位相差に対応した前記位相差信号を出力する第2の検出部とを含む、位相同期ループ回路。
【請求項2】
前記第1の検出部は、前記第2のクロックのクロック数をカウントすることによって前記第1のクロックと前記参照クロックとの位相差を検出し、
前記第2の検出部は、前記第1のクロックおよび前記参照クロックのうちの一方を前記第2の時間ずつ遅延させた信号と他方とを比較することによって、前記第1のクロックと前記参照クロックとの位相差を検出する、請求項1に記載の位相同期ループ回路。
【請求項3】
前記位相比較部は、前記第1のクロックおよび前記参照クロックのうち一方が他方に対して位相進みか位相遅れかを判定する位相判定部をさらに含み、
前記第2の検出部は、前記位相判定部の判定結果に応じて、位相進みの場合に前記第1のクロックと前記参照クロックとの位相差に対応した前記位相差信号を出力し、位相遅れの場合に位相差零に対応した前記位相差信号を出力する、請求項1または2に記載の位相同期ループ回路。
【請求項4】
前記位相比較部は、
前記第1の検出部に入力される第1のクロックおよび前記参照クロックのいずれか一方の位相を所定量シフトさせる位相シフタと、
前記第1の検出部の出力が出力範囲の中央値付近でロックするように、前記第1の検出部の出力にオフセットを付加する第1のオフセット付加部と、
前記第2の検出部の出力が出力範囲の中央値付近でロックするように、前記第2の検出部の出力にオフセットを付加する第2のオフセット付加部とをさらに含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の位相同期ループ回路。
【請求項5】
前記位相同期ループ回路は、前記位相比較部から出力された前記位相差信号を可変の帯域幅に制限し、帯域制限された前記位相差信号を前記発振器に出力するループフィルタをさらに備え、
前記第1の検出部によって検出された位相差が前記所定範囲内になる第1の時点から後の前記ループフィルタの帯域幅は、前記第1の時点より前の帯域幅よりも狭い、請求項1〜4のいずれか1項に記載の位相同期ループ回路。
【請求項6】
第1および第2の動作モードを有する位相同期ループ回路であって、
位相差信号に応じた周波数で発振する発振器と、
前記発振器の出力を分周することによって、第1のクロックおよび前記第1のクロックよりも周波数の高い第2のクロックを生成する分周器と、
位相比較部とを備え、
前記位相比較部は、
前記第1および第2のクロックならびに参照クロックを受け、前記第1のクロックと前記参照クロックとの位相差を前記第2のクロックの周期である第1の時間の精度で検出する第1の検出部と、
前記第1および第2のクロックを受け、前記第2の動作モードの場合に前記第1のクロックを出力し、前記第1の動作モードの場合に前記第2のクロックを出力するスイッチ部と、
前記スイッチ部の出力および前記参照クロックを受け、前記スイッチ部の出力と前記参照クロックとの位相差を前記第1の時間よりも短い第2の時間の精度で検出する第2の検出部と、
前記位相差信号を生成する位相差信号生成部とを含み、
前記第1の動作モードの場合、前記第2の検出部は、前記第1の検出部と並行して位相差を検出し、前記位相差信号生成部は、前記第1および第2の検出部によって検出された位相差を合成することによって前記位相差信号を生成し、
前記第2の動作モードの場合、前記第2の検出部は、前記第1の検出部によって検出された位相差が所定範囲内になる第1の時点から位相差の検出を開始し、前記位相差信号生成部は、前記第1の時点までは前記第1の検出部によって検出された位相差に対応した前記位相差信号を出力し、前記第1の時点からは前記第2の検出部によって検出された位相差に対応した前記位相差信号を出力する、位相同期ループ回路。
【請求項7】
前記第1の検出部は、前記第2のクロックのクロック数をカウントすることによって前記第1のクロックと前記参照クロックとの位相差を検出し、
前記第2の検出部は、前記スイッチ部の出力と前記参照クロックのうちの一方を前記第2の時間ずつ遅延させた信号と他方とを比較することによって、前記スイッチ部の出力と前記参照クロックとの位相差を検出する、請求項6に記載の位相同期ループ回路。
【請求項8】
第1および第2の動作モードを有し、送信データを送信するための通信機であって、
位相差信号に応じた周波数で発振する発振器と、
前記発振器の出力を受け、前記第2の動作モードの場合に前記発振器の発振周波数の安定後に前記発振器の出力を前記送信データで変調する変調器と、
前記発振器の出力を分周した第1のクロックおよび前記第1のクロックよりも周波数の高い第2のクロックを生成する分周器と、
前記第1の動作モードの場合に前記発振器の発振周波数の安定後に前記分周器の分周比を前記送信データに応じて変化させる分周比制御部と、
位相比較部とを備え、
前記位相比較部は、
前記第1および第2のクロックならびに参照クロックを受け、前記第1のクロックと前記参照クロックとの位相差を前記第2のクロックの周期である第1の時間の精度で検出する第1の検出部と、
前記第1および第2のクロックを受け、前記第2の動作モードの場合に前記第1のクロックを出力し、前記第1の動作モードの場合に前記第2のクロックを出力するスイッチ部と、
前記スイッチ部の出力および前記参照クロックを受け、前記スイッチ部の出力と前記参照クロックとの位相差を前記第1の時間よりも短い第2の時間の精度で検出する第2の検出部と、
前記位相差信号を生成する位相差信号生成部とを含み、
前記第1の動作モードの場合、前記第2の検出部は、前記第1の検出部と並行して位相差を検出し、前記位相差信号生成部は、前記第1および第2の検出部によって検出された位相差を合成することによって前記位相差信号を生成し、
前記第2の動作モードの場合、前記第2の検出部は、前記第1の検出部によって検出された位相差が所定範囲内になる第1の時点から位相差の検出を開始し、前記位相差信号生成部は、前記第1の時点までは前記第1の検出部によって検出された位相差に対応した前記位相差信号を出力し、前記第1の時点からは前記第2の検出部によって検出された位相差に対応した前記位相差信号を出力する通信機。
【請求項9】
送信データを送信するための第1の動作モードと、受信信号を受信する第2の動作モードとを有する通信機であって、
位相差信号に応じた周波数で発振する発振器と、
前記第2の動作モードの場合に前記発振器の発振周波数の安定後に前記発振器の出力と前記受信信号とを混合する混合器と、
前記発振器の出力を分周した第1のクロックおよび前記第1のクロックよりも周波数の高い第2のクロックを生成する分周器と、
前記第1の動作モードの場合に前記分周器の分周比を前記送信データに応じて変化させる分周比制御部と、
位相比較部とを備え、
前記位相比較部は、
前記第1および第2のクロックならびに参照クロックを受け、前記第1のクロックと前記参照クロックとの位相差を前記第2のクロックの周期である第1の時間の精度で検出する第1の検出部と、
前記第1および第2のクロックを受け、前記第2の動作モードの場合に前記第1のクロックを出力し、前記第1の動作モードの場合に前記第2のクロックを出力するスイッチ部と、
前記スイッチ部の出力および前記参照クロックを受け、前記スイッチ部の出力と前記参照クロックとの位相差を前記第1の時間よりも短い第2の時間の精度で検出する第2の検出部と、
前記位相差信号を生成する位相差信号生成部とを含み、
前記第1の動作モードの場合、前記第2の検出部は、前記第1の検出部と並行して位相差を検出し、前記位相差信号生成部は、前記第1および第2の検出部によって検出された位相差を合成することによって前記位相差信号を生成し、
前記第2の動作モードの場合、前記第2の検出部は、前記第1の検出部によって検出された位相差が所定範囲内になる第1の時点から位相差の検出を開始し、前記位相差信号生成部は、前記第1の時点までは前記第1の検出部によって検出された位相差に対応した前記位相差信号を出力し、前記第1の時点からは前記第2の検出部によって検出された位相差に対応した前記位相差信号を出力する通信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2011−23804(P2011−23804A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−164725(P2009−164725)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
2.GSM
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】