説明

位置制御装置

【課題】 制御対象機械を目標位置へ移動させて停止させるための位置制御装置において、オーバーシュートの抑制とサイクルタイムの短縮を可能にする。
【解決手段】 フィードフォワード制御ブロック27aは位置指令ブロック21からの前記位置指令値に対して、フィードフォワード設定手段41で設定し出力されるフィードフォワードゲインを乗じた値を、新たな補正量として出力する機能を有し、この位置制御装置40が位置決め制御動作を開始すると、フィードフォワード設定手段41では、位置指令ブロック21からのパルス列形式の位置指令値に含まれるパルス周波数の変化に基づく速度指令演算値を求めつつその変化を監視し、この速度指令演算値が予め定めた切換設定値より小さいときにはフィードフォワード制御ブロック27aへのフィードフォワードゲインのより小さく設定することにより、位置決め終了時のオーバーシュートの抑制と位置決め開始から終了までのサイクルタイムの短縮とを可能にしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、制御対象機械を目標位置へ移動させて停止させるための位置制御装置に関し、特に、停止時の慣性力による制御対象機械の振動を抑制するようにした位置制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図19は、この種の制御対象機械の模式的概念構成図である。
【0003】
この対象機械10には、重量物11と、アーム12と、スライド移動部13と、スライドレール部14と、送りねじ15と、カップリング16と、モータ17と、モータエンコーダ18と、位置制御装置20,30,40,50,60,70,80,90のうちの何れか1台とを備えている。このうち、重量物11,アーム12,スライド移動部13,スライドレール部14,送りねじ15,カップリング16は、制御対象機械として包括されるものである。
【0004】
図19において、スライドレール部14は、スライド移動部13が図示の左右の移動方向のみ移動するように拘束する。さらに、スライドレール部14とスライド移動部13の接触部は低摩擦であり、スライド移動部13がスライドレール部14上を滑らかに移動できるようにされている。また、モータ17の出力軸はカップリング16を介して送りねじ15と連結され、この送りねじ15はスライド移動部13に取り付けられた図示しないねじ部内に螺挿されている。
【0005】
すなわち、前記何れかの位置制御装置からの位置指令値に従った位置決め制御により、モータ17が送りねじ15を回転駆動することにより、スライド移動部13が図示の左右方向に移動する。
【0006】
このような位置決め制御がなされるスライド移動部13には、長尺のアーム12が取り付けられており、このアーム12の先端には重量物11が取り付けられている。従って、スライド移動部13の位置制御により、アーム12の先端の重量物11も位置決め制御されることとなる。
【0007】
図19に示した構成においては、スライド移動部13が目標位置で停止した場合でも、アーム12の先端にある重量物11は自らの慣性力によりアーム12をたわませて指令位置より先に進み、スライド移動部13が目標位置で停止した後も、即座に停止せず振動する場合があることが知られている。
【0008】
図20は、上述の振動現象を抑制する機能を備えた従来の位置制御装置20の回路構成図であり、下記特許文献1に開示されている回路構成である。
【0009】
この位置制御装置20には、位置指令ブロック21と、位置調節器22と、速度調節器28と、トルク調節器29とを備えている。
【0010】
図20において、位置指令ブロック21では、スライド移動部13が目標位置に移動するためのパルス列形式の位置指令値を出力し、このパルス列形式の位置指令値ではパルス数が移動量を指令し、パルス周波数がその時々の移動速度(すなわち、単位時間当りの位置の移動量が速度に相当する指令値となる)を指令している。
【0011】
減算器23,積算器24,調節器25,加算器26,フィードフォワード制御ブロック27からなる位置調節器22では、モータ17の出力軸に取り付けられたモータエンコーダ18からのパルス列の検出信号を指令される前記位置指令値に一致させるために、減算器23,積算器24,調節器25を用いた調節動作が行われ、その出力は速度指令値として加算器26を介して速度調節器28に送られる。
【0012】
このとき、フィードフォワード制御ブロック27では、位置指令ブロック21からの前記位置指令値の単位時間当りの位置の移動量に所定のフィードフォワードゲインを乗じた補正量を求め、この補正量と調節器25からの速度指令値とを加算器26により加算し、この加算値を新たな速度指令値として速度調節器28に送っている。
【0013】
速度調節器28では、モータエンコーダ18からのパルス列の検出信号に基づくモータ17の速度検出値が前記速度指令値に一致するように調節動作が行われ、その出力がトルク指令値としてトルク調節器29に送られる。
【0014】
トルク調節器29では、前記トルク指令値に従い、このトルク調節器29に内蔵するインバータなどの半導体電力変換器を介してモータ17を駆動し、対象機械10のスライド移動部13を所定位置に移動させて停止させるような位置決め制御が実行される。
【0015】
図21は、図20に示した位置制御装置20とは異なった従来の位置制御装置の回路構成図であり、図20に示した構成と同一機能を有するものには同一符号を付している。
【0016】
この位置制御装置30には、位置指令ブロック31と、位置調節器32と、積算器38と、速度調節器28と、トルク調節器29とを備えている。
【0017】
図21において、位置指令ブロック31では、スライド移動部13が目標位置に移動するためのデータ形式の位置指令値を出力し、このデータ形式の位置指令値ではデータの値が移動量を指令し、データの変化がその時々の移動速度を指令している。
【0018】
減算器33,調節器34,加算器35,微分器36,フィードフォワード制御ブロック37からなる位置調節器32では、モータ17に取り付けられたモータエンコーダ18からのパルス列の検出信号の積算器38による積算値である移動量検出値を位置指令ブロック31からが指令される前記位置指令値に一致させるために、減算器33,調節器34を用いた調節動作が行われ、その出力は速度指令値として加算器35を介して速度調節器22に送られる。
【0019】
このとき、微分器36とフィードフォワード制御ブロック37とにより、位置指令ブロック31からの前記位置指令値の微分値に所定のフィードフォワードゲインを乗じた補正量を求め、この補正量と調節器34からの速度指令値とを加算器35により加算し、この加算値を新たな速度指令値として速度調節器28に送っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】

【特許文献1】特開2003−76426号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
従来の位置制御装置20,30において、位置調節器22,32を形成するフィードフォワード制御ブロック27,37での前記フィードフォワードゲインを大きく設定し過ぎると、位置決め終了時のオーバーシュートが大きくなり、また、前記フィードフォワードゲインを小さく設定し過ぎると、位置決め開始から終了までの所要時間(サイクルタイムとも称する)が長くなることが知られている。
【0022】
特に制御対象機械のアームが長くその剛性が低い場合など、位置調節器22,32を形成する調節器25,34の比例ゲインを大きく設定できないときには、この状態での位置決め性能はフィードフォワードゲインの設定値に大きく依存するため、従来の固定したフィードフォワードゲインの設定値では、位置決め終了時のオーバーシュートの抑制とサイクルタイムの短縮とが両立できないという問題点があった。
【0023】
この発明の目的は、上記問題点を解消した位置制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
この第1の発明は、制御対象機械を目標位置に移動させて停止させるために指令される位置指令値に基づいて位置決め制御を行う際に、この位置決め制御のための位置調節演算動作の出力値に、前記位置指令値にフィードフォワードゲインを乗じて得られる補正量を加算し、この加算した値に基づいて前記制御対象機械を駆動制御する位置制御装置に、前記フィードフォワードゲインの設定値を新たな設定値までステップ関数状に変化させるフィードフォワードゲイン設定手段を備えたことを特徴とする。
【0025】
第2の発明は前記位置制御装置に、前記フィードフォワードゲインの設定値を新たな設定値までランプ関数状に変化させるフィードフォワードゲイン設定手段を備えたことを特徴とする。
【0026】
第3の発明は前記第1または第2の発明の位置制御装置において、
前記フィードフォワードゲイン設定手段は、前記位置指令値に基づく速度指令演算値が予め定めた切換設定値より小さいときには、前記フィードフォワードゲインの設定値をより小さくすることを特徴とする。
【0027】
第4の発明は前記第1または第2の発明の位置制御装置において、
前記フィードフォワードゲイン設定手段は、前記位置指令値に基づく速度指令演算値が減速状態で予め定めた切換設定値より小さいときには、前記フィードフォワードゲインの設定値をより小さくすることを特徴とする。
【0028】
第5の発明は前記第1または第2の発明の位置制御装置において、
前記フィードフォワードゲイン設定手段は、前記位置指令値に基づく移動量演算値が前記目標位置より予め定めた値だけ少ない切換設定値を超えたときには、前記フィードフォワードゲインの設定値をより小さくすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
この発明によれば、前記位置指令値に基づく速度指令演算値または移動量演算値に対応して、前記フィードフォワードゲインの設定値を変化させることにより、位置決め終了時のオーバーシュートの抑制とサイクルタイムの短縮とを両立させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明の第1の実施例を示す位置制御装置の回路構成図
【図2】図1の動作を説明する波形図
【図3】図1の動作を説明する波形図
【図4】図1の動作を説明する波形図
【図5】図1の動作を説明する波形図
【図6】この発明の第2の実施例を示す位置制御装置の回路構成図
【図7】図6の動作を説明する波形図
【図8】図6の動作を説明する波形図
【図9】図6の動作を説明する波形図
【図10】図6の動作を説明する波形図
【図11】この発明の第3の実施例を示す位置制御装置の回路構成図
【図12】この発明の第4の実施例を示す位置制御装置の回路構成図
【図13】図11,12の動作を説明する波形図
【図14】図11,12の動作を説明する波形図
【図15】この発明の第5の実施例を示す位置制御装置の回路構成図
【図16】この発明の第6の実施例を示す位置制御装置の回路構成図
【図17】図15,16の動作を説明する波形図
【図18】図15,16の動作を説明する波形図
【図19】制御対象機械の模式的概念構成図
【図20】従来例を示す位置制御装置の回路構成図
【図21】従来例を示す位置制御装置の回路構成図
【発明を実施するための形態】
【0031】
<実施例>
図1は、この発明の第1の実施例を示す位置制御装置の回路構成図であり、この図において、図20に示した従来の位置制御装置20と同一機能を有するものには同一符号を付して、ここではその説明を省略する。
【0032】
この位置制御装置40では、従来の位置調節器22に代えて、フィードフォワード制御ブロック27がフィードフォワード制御ブロック27aに変更された位置調節器22aが備えられている。
【0033】
このフィードフォワード制御ブロック27aは位置指令ブロック21からの前記位置指令値の単位時間当りの位置の移動量に基づく速度に相当する指令値(速度指令演算値)に対して、フィードフォワード設定手段41〜44の何れかで設定し出力されるフィードフォワードゲインを乗じた値を、新たな補正量として出力する機能を有する。
【0034】
図2は、図1に示した位置制御装置40において、フィードフォワード設定手段41を用いたときの動作を説明する波形図である。
【0035】
すなわち、この位置制御装置40が位置決め制御動作を開始すると、フィードフォワード設定手段41では、位置指令ブロック21からのパルス列形式の位置指令値に含まれるパルス周波数の変化に基づく速度指令演算値を求めつつその変化を監視し、図2に示す如く、この速度指令演算値が予め定めた切換設定値より小さい時刻T0 以前ではフィードフォワード制御ブロック27aへのフィードフォワードゲインのより小さく設定する。また、速度指令演算値が予め定めた切換設定値より大きい時刻T0 〜時刻T1 の間はフィードフォワード制御ブロック27aへのフィードフォワードゲインをより大きく設定し、さらに、速度指令演算値が予め定めた切換設定値より小さい時刻T1 以降はフィードフォワード制御ブロック27aへのフィードフォワードゲインをより小さく設定する。上記のように速度指令演算値に応じてフィードフォワードゲインを変化させることにより、このフィードフォワード設定手段41を用いた位置制御装置40では、位置決め終了時のオーバーシュートの抑制と位置決め開始から終了までのサイクルタイムの短縮とを可能にしている。
【0036】
図3は、図1に示した位置制御装置40において、フィードフォワード設定手段42を用いたときの動作を説明する波形図である。
【0037】
すなわち、この位置制御装置40が位置決め制御動作を開始すると、フィードフォワード設定手段42では、位置指令ブロック21からのパルス列形式の位置指令値に含まれるパルス周波数の変化に基づく速度指令演算値を求めつつその変化を監視し、図3に示す如く、この速度指令演算値が予め定めた第1切換設定値より小さい時刻T1 以前ではフィードフォワード制御ブロック27aへのフィードフォワードゲインをより小さく設定し、また、前記速度指令演算値が予め定めた第2切換設定値に達するまでの時刻T1 〜時刻T2 の間はフィードフォワード制御ブロック27aへのフィードフォワードゲインをランプ関数状により増大させ、さらに、前記速度指令演算値が第2切換設定値を越えた状態の時刻T2 〜時刻T3 の間はフィードフォワード制御ブロック27aへのフィードフォワードゲインをより大きい値で固定し、また、前記速度指令演算値が予め定めた第1切換設定値に達するまでの時刻T3 〜時刻T4 の間はフィードフォワード制御ブロック27aへのフィードフォワードゲインをランプ関数状により減少させ、また、速度指令演算値が予め定めた第1切換設定値より小さい時刻T4 以降はフィードフォワード制御ブロック27aへのフィードフォワードゲインをより小さく設定することにより、このフィードフォワード設定手段42を用いた位置制御装置40では、フィードフォワードゲインを設定値の変更に伴うショックの発生を抑制しつつ、位置決め終了時のオーバーシュートの抑制と位置決め開始から終了までのサイクルタイムの短縮とを可能にしている。
【0038】
図4は、図1に示した位置制御装置40において、フィードフォワード設定手段43を用いたときの動作を説明する波形図である。
【0039】
すなわち、この位置制御装置40が位置決め制御動作を開始すると、フィードフォワード設定手段43では、位置指令ブロック21からのパルス列形式の位置指令値に含まれるパルス周波数の変化に基づく速度指令演算値を求めつつその変化を監視し、図4に示す如く、この速度指令演算値が増大し、その後、減速状態になり、予め定めた切換設定値より小さくなった時刻T1 以降ではフィードフォワード制御ブロック27aへのフィードフォワードゲインをより小さく設定することにより、このフィードフォワード設定手段43を用いた位置制御装置40では、位置決め終了時のオーバーシュートの抑制と、前記速度指令演算値が加速状態のときのフィードフォワード制御ブロック27aへのフィードフォワードゲインをより大きい値で固定することにより、位置決め開始から終了までのサイクルタイムの更なる短縮とを可能にしている。
【0040】
図5は、図1に示した位置制御装置40において、フィードフォワード設定手段44を用いたときの動作を説明する波形図である。
【0041】
すなわち、この位置制御装置40が位置決め制御動作を開始すると、フィードフォワード設定手段44では、位置指令ブロック21からのパルス列形式の位置指令値に含まれるパルス周波数の変化に基づく速度指令演算値を求めつつその変化を監視し、図5に示す如く、この速度指令演算値が増大し、その後、減速状態になり、予め定めた切換設定値より小さくなった時刻T1 以降ではフィードフォワード制御ブロック27aへのフィードフォワードゲインをランプ関数状により減少させ、最終的には、フィードフォワード制御ブロック27aへのフィードフォワードゲインをより小さい値に固定することにより、このフィードフォワード設定手段44を用いた位置制御装置40では、フィードフォワードゲインを設定値の変更に伴うショックの発生を抑制しつつ、位置決め終了時のオーバーシュートの抑制と、前記速度指令演算値が加速状態のときのフィードフォワード制御ブロック27aへのフィードフォワードゲインをより大きい値で固定することにより、位置決め開始から終了までのサイクルタイムの更なる短縮とを可能にしている。
【0042】
なお、図2〜図5の波形図に基づいたこの発明の動作説明において、それぞれの状態におけるフィードフォワードゲインの設定値,切換設定値,ランプ関数の勾配値は、前記制御対象機械に対して、予め試運転などを行って決定した値を使用するものとする。
【0043】
図6は、この発明の第2の実施例を示す位置制御装置の回路構成図であり、この図において、図21に示した従来の位置制御装置30と同一機能を有するものには同一符号を付して、ここではその説明を省略する。
【0044】
この位置制御装置50では、従来の位置調節器32に代えて、微分器36がその出力値を外部にも出力できるように変更された微分器36aおよびフィードフォワード制御ブロック37がフィードフォワード制御ブロック37aに変更された位置調節器32aが備えられている。
【0045】
フィードフォワード制御ブロック37aでは、位置指令ブロック31からの前記位置指令値を微分器36aにより微分して位置指令値に含まれる速度成分を抽出し、この抽出した値(速度指令演算値)に対して、フィードフォワード設定手段51〜54の何れかで設定し出力されるフィードフォワードゲインを乗じた値を、新たな補正量として出力する機能を有する。
【0046】
図7は、図6に示した位置制御装置50において、フィードフォワード設定手段51を用いたときの動作を説明する波形図である。
【0047】
すなわち、この位置制御装置50が位置決め制御動作を開始すると、フィードフォワード設定手段51では、位置調節器32aを形成する微分器36aから出力される位置指令ブロック31からのデータ形式の位置指令値に含まれるデータの変化に基づく速度指令演算値の変化を監視し、図7に示す如く、この速度指令演算値が予め定めた切換設定値より小さい時刻T0 以前ではフィードフォワード制御ブロック37aへのフィードフォワードゲインをより小さく設定し、また、速度指令演算値が予め定めた切換設定値より大きい時刻T0 〜時刻T1 の間はフィードフォワード制御ブロック37aへのフィードフォワードゲインをより大きく設定し、さらに、速度指令演算値が予め定めた切換設定値より小さい時刻T1 以降はフィードフォワード制御ブロック37aへのフィードフォワードゲインをより小さく設定することにより、このフィードフォワード設定手段51を用いた位置制御装置50では、位置決め終了時のオーバーシュートの抑制と位置決め開始から終了までのサイクルタイムの短縮とを可能にしている。
【0048】
図8は、図6に示した位置制御装置50において、フィードフォワード設定手段52を用いたときの動作を説明する波形図である。
【0049】
すなわち、この位置制御装置50が位置決め制御動作を開始すると、フィードフォワード設定手段52では、位置調節器32aを形成する微分器36aから出力される位置指令ブロック31からのデータ形式の位置指令値に含まれるデータの変化に基づく速度指令演算値の変化を監視し、図8に示す如く、この速度指令演算値が予め定めた第1切換設定値より小さい時刻T1 以前ではフィードフォワード制御ブロック37aへのフィードフォワードゲインをより小さく設定し、また、前記速度指令演算値が予め定めた第2切換設定値に達するまでの時刻T1 〜時刻T2 の間はフィードフォワード制御ブロック37aへのフィードフォワードゲインをランプ関数状により増大させ、さらに、前記速度指令演算値が第2切換設定値を越えた状態の時刻T2 〜時刻T3 の間はフィードフォワード制御ブロック37aへのフィードフォワードゲインをより大きい値で固定し、また、前記速度指令演算値が予め定めた第1切換設定値に達するまでの時刻T3 〜時刻T4 の間はフィードフォワード制御ブロック37aへのフィードフォワードゲインをランプ関数状により減少させ、また、速度指令演算値が予め定めた第1切換設定値より小さい時刻T4 以降はフィードフォワード制御ブロック37aへのフィードフォワードゲインをより小さく設定することにより、このフィードフォワード設定手段52を用いた位置制御装置50では、フィードフォワードゲインを設定値の変更に伴うショックの発生を抑制しつつ、位置決め終了時のオーバーシュートの抑制と位置決め開始から終了までのサイクルタイムの短縮とを可能にしている。
【0050】
図9は、図6に示した位置制御装置50において、フィードフォワード設定手段53を用いたときの動作を説明する波形図である。
【0051】
すなわち、この位置制御装置50が位置決め制御動作を開始すると、フィードフォワード設定手段53では、位置調節器32aを形成する微分器36aから出力される位置指令ブロック31からのデータ形式の位置指令値に含まれるデータの変化に基づく速度指令演算値の変化を監視し、図9に示す如く、この速度指令演算値が増大し、その後、減速状態になり、予め定めた切換設定値より小さくなった時刻T1 以降ではフィードフォワード制御ブロック37aへのフィードフォワードゲインをより小さく設定することにより、このフィードフォワード設定手段53を用いた位置制御装置50では、位置決め終了時のオーバーシュートの抑制と、前記速度指令演算値が加速状態のときのフィードフォワード制御ブロック37aへのフィードフォワードゲインをより大きい値で固定することにより、位置決め開始から終了までのサイクルタイムの更なる短縮とを可能にしている。
【0052】
図10は、図6に示した位置制御装置50において、フィードフォワード設定手段54を用いたときの動作を説明する波形図である。
【0053】
すなわち、この位置制御装置50が位置決め制御動作を開始すると、フィードフォワード設定手段54では、位置調節器32aを形成する微分器36aから出力される位置指令ブロック31からのデータ形式の位置指令値に含まれるデータの変化に基づく速度指令演算値の変化を監視し、図10に示す如く、この速度指令演算値が増大し、その後、減速状態になり、予め定めた切換設定値より小さくなった時刻T1 以降ではフィードフォワード制御ブロック37aへのフィードフォワードゲインをランプ関数状により減少させ、最終的には、フィードフォワード制御ブロック37aへのフィードフォワードゲインをより小さい値に固定することにより、このフィードフォワード設定手段54を用いた位置制御装置50では、フィードフォワードゲインを設定値の変更に伴うショックの発生を抑制しつつ、位置決め終了時のオーバーシュートの抑制と、前記速度指令演算値が加速状態のときのフィードフォワード制御ブロック37aへのフィードフォワードゲインをより大きい値で固定することにより、位置決め開始から終了までのサイクルタイムの更なる短縮とを可能にしている。
【0054】
なお、図7〜図10の波形図に基づいたこの発明の動作説明において、それぞれの状態におけるフィードフォワードゲインの設定値,切換設定値,ランプ関数の勾配値は、前記制御対象機械に対して、予め試運転などを行って決定した値を使用するものとする。
【0055】
図11は、この発明の第3の実施例を示す位置制御装置の回路構成図であり、この図において、図1に示した位置制御装置40と同一機能を有するものには同一符号を付している。
【0056】
この位置制御装置60では、図1に示した位置制御装置40に備えたフィードフォワード設定手段41〜44が削除され、さらに、先述の位置指令ブロック21の機能の他に、位置目標値を外部に出力できるように変更された位置指令ブロック21aと、積算器61と、フィードフォワード設定手段62,63のいずれかが備えられている。
【0057】
図12は、この発明の第4の実施例を示す位置制御装置の回路構成図であり、この図において、図11に示した位置制御装置60と同一機能を有するものには同一符号を付している。
【0058】
この位置制御装置70では、図11に示した位置制御装置60に備えた積算器61とフィードフォワード設定手段62,63が削除され、新たに、積算器71と、フィードフォワード設定手段72,73のいずれかが備えられている。
【0059】
図13は、図11に示した位置制御装置60,図12に示した位置制御装置70において、積算器61,フィードフォワード設定手段62または積算器71,フィードフォワード設定手段72を用いたときの動作を説明する波形図である。
【0060】
すなわち、位置制御装置60,70が位置決め制御動作を開始すると、フィードフォワード設定手段62,72では、積算器61,71から出力される位置指令ブロック21aからのパルス列形式の位置指令値に基づく移動量演算値の変化を監視し、図13に示す如く、この移動量演算値が増大し、位置指令ブロック21aが出力する位置目標値に基づいて設定された切換設定値を越えた時刻T1 以降は、フィードフォワード制御ブロック27aへのフィードフォワードゲインをより小さく設定することにより、このフィードフォワード設定手段62,72を用いた位置制御装置60,70では、位置決め終了時のオーバーシュートの抑制と、前記時刻T1 以前のフィードフォワード制御ブロック27aへのフィードフォワードゲインをより大きく設定することにより、位置決め開始から終了までのサイクルタイムの更なる短縮とを可能にしている。
【0061】
図14は、図11に示した位置制御装置60,図12に示した位置制御装置70において、積算器61,フィードフォワード設定手段63または積算器71,フィードフォワード設定手段73を用いたときの動作を説明する波形図である。
【0062】
すなわち、位置制御装置60,70が位置決め制御動作を開始すると、フィードフォワード設定手段63,73では、積算器61,71から出力される位置指令ブロック21aからのパルス列形式の位置指令値に基づく移動量演算値の変化を監視し、図14に示す如く、この移動量演算値が増大し、位置指令ブロック21aが出力する位置目標値に基づいて設定された切換設定値を越えた時刻T1 以降は、フィードフォワード制御ブロック27aへのフィードフォワードゲインをランプ関数状により減少させ、最終的には、フィードフォワード制御ブロック27aへのフィードフォワードゲインをより小さい値に固定することにより、このフィードフォワード設定手段63,73を用いた位置制御装置60,70では、フィードフォワードゲインを設定値の変更に伴うショックの発生を抑制し、さらに、位置決め終了時のオーバーシュートの抑制と、前記時刻T1 以前のフィードフォワード制御ブロック27aへのフィードフォワードゲインをより大きく設定することにより、位置決め開始から終了までのサイクルタイムの更なる短縮とを可能にしている。
【0063】
なお、図13,図14の波形図に基づいたこの発明の動作説明において、それぞれの状態におけるフィードフォワードゲインの設定値,切換設定値,ランプ関数の勾配値は、前記制御対象機械に対して、予め試運転などを行って決定した値を使用するものとする。
【0064】
図15は、この発明の第5の実施例を示す位置制御装置の回路構成図であり、この図において、図21に示した従来の位置制御装置30と同一機能を有するものには同一符号を付して、ここではその説明を省略する。
【0065】
この位置制御装置80では、先述の位置指令ブロック31の機能の他に、位置目標値を外部に出力できるように変更された位置指令ブロック31aと、従来の位置調節器32に代えて、フィードフォワード制御ブロック37がフィードフォワード制御ブロック37aに変更された位置調節器32bが備えられている。
【0066】
この構成において、微分器36を介したフィードフォワード制御ブロック37aでは、位置指令ブロック31からの前記位置指令値に含まれる速度成分を抽出し、この抽出した値に対して、フィードフォワード設定手段81,82の何れかで設定し出力されるフィードフォワードゲインを乗じた値を、新たな補正量として出力する機能を有する。
【0067】
図16は、この発明の第6の実施例を示す位置制御装置の回路構成図であり、この図において、図15に示した位置制御装置80と同一機能を有するものには同一符号を付している。
【0068】
すなわち、この位置制御装置90では、図15に示したフィードフォワード設定手段81,82に代えて、フィードフォワード設定手段91,92の何れかが備えられている。
【0069】
図17は、図15に示した位置制御装置80,図16に示した位置制御装置90において、フィードフォワード設定手段81またはフィードフォワード設定手段91を用いたときの動作を説明する波形図である。
【0070】
すなわち、位置制御装置80,90が位置決め制御動作を開始すると、フィードフォワード設定手段81,91では、位置指令ブロック31aからのデータ形式の位置指令値に基づく移動量または積算器38の出力である移動量検出値を移動量演算値として、その変化を監視し、図17に示す如く、この移動量演算値が増大し、位置指令ブロック31aが出力する位置目標値に基づいて設定された切換設定値を越えた時刻T1 以降は、フィードフォワード制御ブロック37aへのフィードフォワードゲインをより小さく設定することにより、このフィードフォワード設定手段81,91を用いた位置制御装置80,90では、位置決め終了時のオーバーシュートの抑制と、前記時刻T1 以前のフィードフォワード制御ブロック27aへのフィードフォワードゲインをより大きく設定することにより、位置決め開始から終了までのサイクルタイムの更なる短縮とを可能にしている。
【0071】
図18は、図15に示した位置制御装置80,図16に示した位置制御装置90において、フィードフォワード設定手段82またはフィードフォワード設定手段92を用いたときの動作を説明する波形図である。
【0072】
すなわち、位置制御装置80,90が位置決め制御動作を開始すると、フィードフォワード設定手段82,92では、位置指令ブロック31aからのデータ形式の位置指令値に基づく移動量または積算器38の出力である移動量検出値を移動量演算値として、その変化を監視し、図18に示す如く、この移動量演算値が増大し、位置指令ブロック31aが出力する位置目標値に基づいて設定された切換設定値を越えた時刻T1 以降は、フィードフォワード制御ブロック37aへのフィードフォワードゲインをランプ関数状により減少させ、最終的には、フィードフォワード制御ブロック37aへのフィードフォワードゲインをより小さい値に固定することにより、このフィードフォワード設定手段82,92を用いた位置制御装置80,90では、フィードフォワードゲインを設定値の変更に伴うショックの発生を抑制し、さらに、位置決め終了時のオーバーシュートの抑制と、前記時刻T1 以前のフィードフォワード制御ブロック37aへのフィードフォワードゲインをより大きく設定することにより、位置決め開始から終了までのサイクルタイムの更なる短縮とを可能にしている。
【0073】
なお、図17,図18の波形図に基づいたこの発明の動作説明において、それぞれの状態におけるフィードフォワードゲインの設定値,切換設定値,ランプ関数の勾配値は、前記制御対象機械に対して、予め試運転などを行って決定した値を使用するものとする。
【符号の説明】
【0074】
10…対象機械、11…重量物、12…アーム、13…スライド移動部、14…スライドレール部、15…送りねじ、16…カップリング、17…モータ、18…モータエンコーダ、20,30,40,50,60,70,80,90…位置制御装置、21,21a…位置指令ブロック、22,22a…位置調節器、23…減算器、24…積算器25…調節器、26…加算器、27,27a…フィードフォワード制御ブロック、28…速度調節器、29…トルク調節器、31,31a…位置指令ブロック、32,32a,32b…位置調節器、33…減算器、34…調節器、35…加算器、36,36a…微分器、37,37a…フィードフォワード制御ブロック、38…積算器、41〜44,51〜54,62,63,72,81,82,91,92…フィードフォワードゲイン設定手段、61,71…積算器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御対象機械を目標位置に移動させて停止させるために指令される位置指令値に基づいて位置決め制御を行う際に、
この位置決め制御のための位置調節演算動作の出力値に、前記位置指令値にフィードフォワードゲインを乗じて得られる補正量を加算し、この加算した値に基づいて前記制御対象機械を駆動制御する位置制御装置において、
前記位置制御装置に、前記フィードフォワードゲインの設定値をステップ関数状に新たな設定値まで変化させるフィードフォワードゲイン設定手段を備えたことを特徴とする位置制御装置。
【請求項2】
制御対象機械を目標位置に移動させて停止させるために指令される位置指令値に基づいて位置決め制御を行う際に、
この位置決め制御のための位置調節演算動作の出力値に、前記位置指令値にフィードフォワードゲインを乗じて得られる補正量を加算し、この加算した値に基づいて前記制御対象機械を駆動制御する位置制御装置において、
前記位置制御装置に、前記フィードフォワードゲインの設定値をランプ関数状に新たな設定値まで変化させるフィードフォワードゲイン設定手段を備えたことを特徴とする位置制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の位置制御装置において、
前記フィードフォワードゲイン設定手段は、前記位置指令値に基づく速度指令演算値が予め定めた切換設定値より小さいときには、前記フィードフォワードゲインの設定値をより小さくすることを特徴とする位置制御装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の位置制御装置において、
前記フィードフォワードゲイン設定手段は、前記位置指令値に基づく速度指令演算値が減速状態で予め定めた切換設定値より小さいときには、前記フィードフォワードゲインの設定値をより小さくすることを特徴とする位置制御装置。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の位置制御装置において、
前記フィードフォワードゲイン設定手段は、前記位置指令値に基づく移動量演算値が前記目標位置より予め定めた値だけ少ない切換設定値を超えたときには、前記フィードフォワードゲインの設定値をより小さくすることを特徴とする位置制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2011−100203(P2011−100203A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−253115(P2009−253115)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】