説明

位置変動監視装置およびこれを含む位置変動監視システム

【課題】監視対象領域の位置変動の測定精度を高める。
【解決手段】位置変動監視システム1は、予め決められた監視対象領域に設置された複数の監視指標2と、複数の監視指標2が撮像された撮像画像を用いて監視対象領域の位置変動を検出する位置変動監視装置3とを備える。位置変動監視装置3は、複数の監視指標2を予め設定された時間間隔で撮像する撮像部51と、撮像部51により時系列で得られる撮像画像を用いて複数の監視指標2の位置変位を求める画像解析部61と、複数の監視指標2の位置変位があった場合に警告を報知するように報知装置4を制御する報知制御部63とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視対象領域の位置変動を監視する位置変動監視装置およびこれを含む位置変動監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、監視対象領域の位置変動を監視する装置が種々知られている(例えば特許文献1,2参照)。特許文献1に記載された装置は、被観測体の地面に打設された目印の変化が検出センサーで検出されたときに、上記目印を照明器具で照射した状態で、上記目印の位置変化を撮影機で撮影することによって、被観測体の地すべりを監視する。特許文献2に記載された装置は、観測対象地点に設置された計測対象板の変位を計測することによって、観測対象地点の傾斜を計測する。
【0003】
上記特許文献1,2に記載された装置を用いることによって、監視対象領域に設置された監視指標(目印、計測対象板)の位置変位の兆候を検出した場合に、監視対象領域の修繕を行ったり、近くの住人に対して退避を促したり、しかるべき対処を行うように警告を促したりすることができる。
【0004】
なお、発光源の点滅タイミングと受光素子(固体撮像素子)の受光タイミングとを調整することで外光の影響を低減させるとともに受光素子の電荷蓄積方法を工夫して小型でありかつ耐ノイズ性の高い振幅画像生成カメラが出願人によって提案されている(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−47513号公報
【特許文献2】特開2007−285989号公報
【特許文献3】特許第4466319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1,2に記載された従来の装置では、監視対象領域に設置された監視指標が1つのみであるため、監視対象領域の複雑な変位を測定することが難しいという問題があった。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みて為され、本発明の目的は、監視対象領域の位置変動の測定精度を高めることができる位置変動監視装置およびこれを含む位置変動監視システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の位置変動監視装置は、予め決められた監視対象領域に設置された複数の監視指標とともに用いられる位置変動監視装置であって、前記複数の監視指標を予め設定された時間間隔で撮像する撮像部と、前記撮像部により時系列で得られる撮像画像を用いて前記複数の監視指標の位置変位を求める画像解析部と、前記複数の監視指標の位置変位が予め設定された判断基準を満たすか否かを判断する判断部と、前記判断部で前記複数の監視指標の位置変位が前記判断基準を満たすと判断されると警告を報知するように報知装置を制御する報知制御部とを備えることを特徴とする。
【0009】
この位置変動監視装置において、前記複数の監視指標へ向けて光を発する光源と、前記光源が点灯期間と消灯期間とを交互に繰り返すように前記光源の点灯状態を制御する制御部と、前記画像解析部において前記複数の監視指標の位置変位を求める際に用いられる判断対象画像を生成する画像生成部とを備え、前記撮像部は、前記点灯期間および前記消灯期間に前記複数の監視指標を前記時間間隔で撮像し、前記画像生成部は、前記点灯期間に得られた受光成分と前記消灯期間に得られた受光成分との差の成分による画像を前記判断対象画像として生成し、前記画像解析部は、前記判断対象画像を用いて前記複数の監視指標の位置変位を求めることが好ましい。
【0010】
この位置変動監視装置において、前記光源は、予め決められた変調が行われた変調光を前記複数の監視指標へ向けて発し、前記撮像部は、映像信号から前記変調光の成分を抽出するフィルタを前記画像生成部への出力側に有することが好ましい。
【0011】
この位置変動監視装置において、前記画像解析部は、前記複数の監視指標の位置変位として、前記複数の監視指標間の相対位置の変位を求めることが好ましい。
【0012】
この位置変動監視装置において、前記複数の監視指標へ向けて光を発する光源を備え、前記光源は、赤外帯域の光を前記複数の監視指標へ向けて発し、前記撮像部は、受光した光から赤外帯域の光を抽出する光学フィルタを有することが好ましい。
【0013】
この位置変動監視装置において、前記判断部は、前記判断基準として閾値と当該閾値より小さな予備閾値とが設定され、前記複数の監視指標の位置変位が前記予備閾値を超えるか否かを判断するとともに前記複数の監視指標の位置変位が前記閾値を超えるか否かを判断し、前記報知制御部は、前記判断部で前記複数の監視指標の位置変位が前記予備閾値を超えたと判断された場合に予備警報を報知するように前記報知装置を制御するとともに、前記判断部で前記複数の監視指標の位置変位が前記閾値を超えたと判断された場合に警報を報知するように前記報知装置を制御することが好ましい。
【0014】
本発明の位置変動監視システムは、前記位置変動監視装置と、予め決められた監視対象領域に設置された複数の監視指標とを備えることを特徴とする。
【0015】
この位置変動監視システム装置において、前記位置変動監視装置は、前記複数の監視指標へ向けて光を発する光源を有し、前記複数の監視指標は、前記光源からの光を前記位置変動監視装置側に向かって反射させる再帰性反射部材を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、監視対象領域に設置された複数の監視指標の位置変位を求め、上記位置変位が大きいか否かを判断することによって、1つの監視指標のみの位置変位を用いる場合に比べて、監視対象領域の位置変動の測定精度を高めることができる
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る位置変動監視システムの構成を示すブロック図である。
【図2】同上に係る位置変動監視システムの概略図である。
【図3】同上に係る監視指標の要部を示す図である。
【図4】(a)は一般的なカメラの撮像画像を示す図、(b)は変調光対応型のカメラの撮像画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の実施形態では、予め決められた監視対象領域の位置変動を監視する位置変動監視システムについて説明する。本実施形態の位置変動監視システムは、監視対象領域における自然災害の発生を防止するために用いられるシステムである。
【0019】
本実施形態の位置変動監視システム1は、図1に示すように、監視対象領域7(図2参照)に設置された複数の監視指標2と、複数の監視指標2が撮像された撮像画像を用いて監視対象領域7の位置変動を検出する位置変動監視装置3と、位置変動監視装置3の検出結果に応じた報知を行う報知装置4とを備えている。
【0020】
本実施形態の監視対象領域7は、図2に示すように、地すべりが発生する懸念のある領域である。このような監視対象領域7の地すべり面71に、監視指標2が3つずつ上段と下段の2段に分かれて設置されている。つまり、本実施形態の位置変動監視システム1は、地すべりの監視に用いられる。
【0021】
各監視指標2は、図3に示すように、後述の光源52(図1参照)からの光を反射する反射板21を備えている。本実施形態の反射板21は、当たった光を光源52側(位置変動監視装置3側)へ向けてまっすぐに反射する再帰性反射板(再帰性反射部材)であり、監視指標2の表面に設けられている。本実施形態では、再帰性反射部材として、例えば自転車の反射板、ガードマンの安全服の反射シートなどと同等の部材が用いられ、できるだけ低コストであるほうが好ましい。
【0022】
図1に示す位置変動監視装置3は、撮像機能を有する定点監視カメラ5と、画像処理機能を有する画像処理装置6とを備えている。位置変動監視装置3は、点灯と消灯とを交互に繰り返す光源52からの光が照射されている監視指標2から光を受光し、光源52の点灯および消灯のタイミングと受光した光量との関係を用いて各監視指標2の位置変位を検出する。
【0023】
定点監視カメラ5は、複数の監視指標2が設置された監視対象領域7(図2参照)を撮像する撮像部51と、複数の監視指標2へ向けて光を発する光源52と、撮像部51および光源52の各動作を制御する制御部53とを備えている。さらに、定点監視カメラ5は、撮像部51で得られた撮像画像から画像処理装置6で用いられる画像を生成する画像生成部54を備えている。定点監視カメラ5は、特許第4466319号公報(特許文献3)に開示した撮像デバイスを採用した変調光対応型のカメラであり、図2(b)に示すように監視対象領域7に対向する場所8に設置されている。定点監視カメラ5が設置されている場所8は、地すべりが発生しにくい地盤である。
【0024】
図1に示す光源52は、例えば一平面上に配列された多数個の発光ダイオードまたは半導体レーザと発散レンズとの組み合わせなどである。本実施形態の光源52は、赤外線(赤外光)を複数の監視指標2へ向けて発する。本実施形態のように光源52から発する光として赤外線が用いられることによって、夜間でも光源52の点灯に気付かれにくいから、本実施形態の定点監視カメラ5は、監視カメラの目的に適した構成になる。
【0025】
本実施形態の光源52は、制御部53から出力される所定の変調周波数の変調信号により駆動されて変調光を発する発光期間制御型光源である。変調信号には方形波が用いられ、変調周波数は10kHz〜100kHzの範囲から選択され、デューティは50%で固定されている。つまり、制御部53は、光源52が点灯期間と消灯期間とを交互に繰り返すように光源52の点灯状態を制御する。したがって、光源52は、10μs〜100μsの周期で点灯と消灯とを同じ時間ずつ交互に繰り返すことになる。光源52が点灯と消灯とを繰り返す周期は、人の目では認識できない程度の短い周期になる。つまり、光源52は実際には点灯と消灯とを繰り返しているが、人の目には連続して点灯しているように見えることになる。ただし、これらの数値は一例であり、変調周波数は適宜に設定可能であり、デューティは50%以外とすることが可能である。
【0026】
撮像部51は、例えば1枚の半導体基板上に複数個の受光素子(図示せず)が2次元に配列されたイメージセンサであり、予め決められた時間間隔で複数の監視指標2を撮像する。受光素子は、例えばホトダイオードからなる光電変換素子などであり、MIS(Metal-Insulator-Semiconductor)素子として知られた構造である。電荷を転送するための構成としては、フレーム転送型のCCD(Charge Coupled Device)と同様の構成またはインターライン型のCCDと同様の構成が採用される。撮像部51には受光光学系(図示せず)を通して光が入射する。受光光学系は、撮像部51の各受光素子に監視対象領域7を投影するために設けられている。すなわち、受光光学系は、撮像部51において受光素子が配列された2次元平面に監視対象領域7である3次元空間をマッピングする。監視対象領域7が撮像された撮像画像の画像データは、撮像部51から画像生成部54に出力される。
【0027】
本実施形態の撮像部51は、予め設定された時間間隔の各タイミングにおいて、光源52の点灯および消灯の両期間で複数の監視指標2を撮像する。例えば、撮像部51は、点灯期間に複数の監視指標2を撮像した後、消灯期間に複数の監視指標2を撮像する。本実施形態の撮像部51は、受光した光から赤外帯域の光を抽出する光学フィルタ(図示せず)を備えている。つまり、撮像部51は、複数の監視指標2を撮像する際に赤外帯域の光を限定して受光する。さらに、本実施形態の撮像部51は、光電変換されて生成された映像信号から変調光の成分を抽出するフィルタ(図示せず)を画像生成部54への出力側に備えている。
【0028】
画像生成部54は、画像処理装置6において複数の監視指標2の位置変位を求める際に用いられる判断対象画像を生成する。具体的には、画像生成部54は、光源52の点灯期間に得られた受光成分(受光出力、画素値)Aaから消灯期間に得られた受光成分Abを減算した画像を判断対象画像として生成する。
【0029】
上述のように、点灯期間の受光成分Aaと消灯期間の受光成分Abとの差の成分(以下「差分」という)(Aa−Ab)を求めることにより、周囲光(環境光)の影響を除去して光源52から監視対象領域7に照射された光の成分のみを抽出することができる。この差分(Aa−Ab)を各受光素子の位置に対応付けた画像が判断対象画像になる。
【0030】
なお、差分(Aa−Ab)は隣接した点灯期間と消灯期間との受光成分Aa,Abから求められ、差分(Aa−Ab)が求められる点灯期間と消灯期間とを合わせた程度の期間では周囲光の強度は実質的に変化がないものとみなしている。したがって、点灯期間と消灯期間とにおける周囲光による受光成分は相殺され、光源52から監視対象領域7に照射され監視対象領域7で反射された反射光に対応する受光成分のみが残り、結果的に、判断対象画像として、監視指標2の反射板21のみを強調した画像を得ることができる。
【0031】
なお、定点監視カメラ5で用いられている各部の構造および動作原理の詳細は、特許第4466319号公報に示されている。
【0032】
ところで、本実施形態の定点監視カメラ5である特許第4466319号公報に開示した撮像デバイスを採用した変調光対応型のカメラと一般的なカメラとの差異について図4を用いて説明する。
【0033】
まず、一般的なカメラで得られた撮像画像91は、図4(a)に示すように、背景を含む全体から監視指標2の反射板21(図1参照)の領域93を認識して抽出する必要がある。この場合、撮像画像91には環境の明るさ(昼夜など)によって陰影または逆光による「黒つぶれ」などが生じ、撮像画像91が安定しないため、誤検出などが発生しやすいという問題がある。
【0034】
これに対して、特許第4466319号公報に開示した撮像デバイスを採用した変調光対応型のカメラでは、監視指標2の反射板21からの赤外光レベルが他の物体に比べて非常に大きい。したがって、上記カメラで得られた撮像画像92は、図4(b)に示すように、反射板21の領域93に「白とび」が生じない状態までレンズを絞ることで背景の領域94が「黒つぶれ」した結果、反射板21の領域93だけを容易に浮き出させることができる。撮像画像92上の領域93は、環境の明るさ(昼夜など)の影響を受けない。
【0035】
図1に示す画像処理装置6は、CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)およびメモリが搭載されたコンピュータ(マイクロコンピュータを含む)を主構成要素とし、プログラムに従って動作することによって、後述の画像解析部61と判断部62と報知制御部63との各機能を実行する。
【0036】
画像解析部61は、予め設定された時間間隔の各タイミングの判断対象画像を定点監視カメラ5から順次取得し、取得した判断対象画像を用いて、複数の監視指標2の位置変位を求める。
【0037】
複数の監視指標2の位置変位の一例としては、各監視指標2ごとの位置変位がある。画像解析部61は、各タイミングの判断対象画像ごとに、判断対象画像上における各監視指標2の位置座標を求め、各監視指標2ごとに、求めた位置座標と基準時の位置座標との変位を求める。なお、基準時としては、例えば最初に監視を開始した時点、予め設定された期間の開始時または1日において監視の開始時などがある。
【0038】
複数の監視指標2の位置変位の他の例としては、複数の監視指標2の重心位置の変位がある。画像解析部61は、各タイミングの判断対象画像ごとに、判断対象画像上における各監視指標2の位置座標を求め、これらの位置座標から重心座標を求める。画像解析部61は、求めた重心座標と基準時の重心座標との変位量を重心位置の変位として求める。
【0039】
複数の監視指標2の位置変位の他の例としては、判断対象画像上における各監視指標2の位置を結んだときの形状の変化がある。画像解析部61は、各タイミングの判断対象画像ごとに、判断対象画像上において、隣接する監視指標2間を結んだときの形状を求める。画像解析部61は、求めた形状と基準時の形状との間における位置ずれの度合い(相違度)または面積の差を上記相対位置の変位として求める。
【0040】
また、本実施形態の画像解析部61は、複数の監視指標2の位置変位として、複数の監視指標2間の相対位置の変位を求めてもよい。つまり、画像解析部61は、撮像画像において特定の監視指標2を基準とし、この基準の監視指標2と他の監視指標2との距離または方向を求め、求めた距離または方向の変位を求めてもよい。
【0041】
判断部62は、画像解析部61で求められた複数の監視指標2の位置変位(複数の監視指標2間の相対位置の変位を含む)が閾値を超えるか否かを判断する。判断部62で用いられる閾値は、予め定められた値である。判断部62は、上記位置変位が閾値を超えた場合に、上記位置変位が大きいつまり監視対象領域7(図2参照)の位置変動が大きいと判断する。
【0042】
例えば複数の監視指標2の位置変位が各監視指標2ごとの位置変位である場合、判断部62は、各監視指標2の位置変位の総和が閾値を超えるか否かを判断し、各監視指標2の位置変位の総和が閾値を超えた場合に、監視対象領域7の位置変動が大きいと判断する。また、判断部62は、各監視指標2の位置変位のいずれかが閾値を超えた場合に、監視対象領域7の位置変動が大きいと判断することもできる。
【0043】
報知制御部63は、判断部62で複数の監視指標2の位置変位が閾値を超えたと判断された場合に警告を報知するように報知装置4を制御する。
【0044】
ところで、本実施形態の判断部62には、閾値より小さな予備閾値が閾値とともに予め設定されている。判断部62は、複数の監視指標2の位置変位が閾値を超えるか否かを判断する前に、上記位置変位が予備閾値を超えるか否かを判断する。
【0045】
報知制御部63は、判断部62で複数の監視指標2の位置変位が予備閾値を超えたと判断された場合、予備警告を報知するように報知装置4を制御する。
【0046】
報知装置4は、報知制御部63の指示に従って、警告および予備警告を報知する。例えば報知装置4は、警告または予備警告である旨を音または音声によって出力したり、警告または予備警告である旨のメッセージを表示画面に表示したりする。
【0047】
次に、本実施形態に係る位置変動監視システム1の動作について図1を用いて説明する。監視対象領域7(図2参照)には複数の監視指標2が設置され、監視対象領域7に対向する場所8(図2参照)に定点監視カメラ5が設置されている。
【0048】
まず、定点監視カメラ5の光源52は、制御部53からの変調信号によって、点灯と消灯とを交互に繰り返すように駆動される。点灯期間と消灯期間とが等しくなるように設定されている(つまり、変調信号のデューティは50%に設定されている)。光源52から複数の監視指標2が設置された監視対象領域7に照射され監視対象領域7で反射された光は、撮像部51の受光素子に入射する。画像生成部54は、点灯期間の受光成分Aaと消灯期間の受光成分Abとの差分(Aa−Ab)を各受光素子ごとの画素値とする判断対象画像を生成する。
【0049】
その後、画像処理装置6の画像解析部61は、各タイミングの判断対象画像を用いて、複数の監視指標2の位置変位を求める。その後、上記位置変位が予備閾値を超えるか否かを判断部62が判断し、上記位置変位の変位が予備閾値を超えた場合、報知制御部63が報知装置4を制御して予備警告を報知させる。その後、上記位置変位が閾値を超えるか否かを判断部62が判断し、上記位置変位が閾値を超えた場合、報知制御部63が報知装置4を制御して本警告を報知させる。
【0050】
位置変動監視システム1が上記のように動作することによって、監視対象領域7に設置された監視指標2の位置変位の兆候を検出した場合に、監視対象領域7の修繕を行ったり、近くの住人に対して退避を促したり、しかるべき対処を行うように警告を促したりすることができる。
【0051】
以上、本実施形態の位置変動監視システム1によれば、監視対象領域7に設置された複数の監視指標2の位置変位を求め、判断基準によって上記位置変位が大きいか否かを判断することによって、1つの監視指標2のみの位置変位を用いる場合に比べて、監視対象領域7の位置変動の測定精度を高めることができる。これにより、地すべりの監視の信頼性を上げることができる。
【0052】
また、本実施形態の位置変動監視システム1によれば、複数の監視指標2の位置変位として複数の監視指標2間の相対位置の変位を求めることによって、監視対象領域7の位置変動の大きさだけではなく、どのように変動しているのかを詳細に監視することができる。
【0053】
さらに、本実施形態の位置変動監視システム1によれば、画像解析部61が複数の監視指標2間の相対位置の変位を求めることによって、画像解析部61に絶対座標軸を記憶させなくてもよい。
【0054】
また、本実施形態の位置変動監視システム1によれば、画像生成部54が点灯期間に得られた受光成分Aaから消灯期間に得られた受光成分Abを減算した画像を判断対象画像として生成することによって、周囲光(環境光)の影響を低減した判断対象画像を用いて複数の監視指標2の位置変位を求めることができるので、画像処理の信頼性を上げることができる。
【0055】
さらに、本実施形態の位置変動監視システム1によれば、光源52が変調光を発することによって、高周波数で点灯期間と消灯期間とを繰り返すことができ、点灯期間の受光成分Aaと消灯期間の受光成分Abとの差分(Aa−Ab)を求めることができるので、変化の速い画像でも精度高く解析することができる。
【0056】
また、本実施形態の位置変動監視システム1によれば、定点監視カメラ5の撮像部51が赤外帯域に限って撮影するので、可視光帯域の周囲光をカットすることができ、画像処理装置6の画像解析部61での画像解析の負荷を低減することができる。
【0057】
さらに、本実施形態の位置変動監視システム1によれば、閾値より小さな予備閾値が設定されることによって、本警報の前に予備警報を出すことができるので、警戒の予兆を知らせることができる。
【0058】
また、本実施形態の位置変動監視システム1によれば、各監視指標2が反射板21として再帰性反射部材を用いることによって、撮像部51の受光効率が良好になるので、感度を上げるなどの調整が不要になる。これにより、各監視指標2が複雑な構成を備えていなくても、各監視指標2の位置変位つまり監視対象領域7の位置変動を精度よく測定することができる。特に光源52から複数の監視指標2に変調光が照射される場合に効果的である。
【0059】
なお、反射板21が再帰性反射板などの再帰性反射部材であることは必須ではなく、反射板21としては、光源52からの光を反射する部材であれば再帰性反射部材以外の部材であってもよい。
【0060】
定点監視カメラ5は、1台のみ用いることに限定されず、複数台用いてもよい。この場合、各定点監視カメラ5は、用途に応じて適切な場所に設置される。
【0061】
光源52から放射される光は赤外線に限定されず、可視光であってもよい。可視光が用いられる場合、人が目で見るときの状態に近い画像を得ることができる。
【0062】
また、位置変動監視システム1は、コンクリート壁面の亀裂発生の監視に用いてもよい。コンクリート壁面の亀裂は、例えば長期水浸食などが起因となって発生する。また、長期水浸食の他にも、高速道路など振動が長期に亘って加えられるコンクリート支柱においては、車両の高速かつ高重量の進行による振動の印加に起因して、長期の積み重ねによる劣化のおそれを免れない。このように、位置変動監視システム1をコンクリート壁面の亀裂発生の監視に用いることにより、コンクリートの崩落の監視の信頼性を上げることができる。
【0063】
位置変動監視システム1は、岩石の崩落の危険予知に用いてもよい。この場合、岩石表面に複数の監視指標2が設置される。これにより、岩石崩落の監視の信頼性を上げることができる。
【0064】
位置変動監視システム1は、スキー場のリフト用柱の傾斜監視に用いてもよい。これにより、リフト用柱の傾斜監視の信頼性を上げることができる。
【0065】
位置変動監視システム1は、橋脚の傾斜監視に用いてもよい。これにより、橋脚の傾斜監視の信頼性を上げることができる。
【符号の説明】
【0066】
1 位置変動監視システム
2 監視指標
21 反射板
3 位置変動監視装置
4 報知装置
51 撮像部
52 光源
53 制御部
54 画像生成部
61 画像解析部
62 判断部
63 報知制御部
7 監視対象領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め決められた監視対象領域に設置された複数の監視指標とともに用いられる位置変動監視装置であって、
前記複数の監視指標を予め設定された時間間隔で撮像する撮像部と、
前記撮像部により時系列で得られる撮像画像を用いて前記複数の監視指標の位置変位を求める画像解析部と、
前記複数の監視指標の位置変位が予め設定された判断基準を満たすか否かを判断する判断部と、
前記判断部で前記複数の監視指標の位置変位が前記判断基準を満たすと判断されると警告を報知するように報知装置を制御する報知制御部と
を備えることを特徴とする位置変動監視装置。
【請求項2】
前記複数の監視指標へ向けて光を発する光源と、
前記光源が点灯期間と消灯期間とを交互に繰り返すように前記光源の点灯状態を制御する制御部と、
前記画像解析部において前記複数の監視指標の位置変位を求める際に用いられる判断対象画像を生成する画像生成部とを備え、
前記撮像部は、前記点灯期間および前記消灯期間に前記複数の監視指標を前記時間間隔で撮像し、
前記画像生成部は、前記点灯期間に得られた受光成分と前記消灯期間に得られた受光成分との差の成分による画像を前記判断対象画像として生成し、
前記画像解析部は、前記判断対象画像を用いて前記複数の監視指標の位置変位を求める
ことを特徴とする請求項1記載の位置変動監視装置。
【請求項3】
前記光源は、予め決められた変調が行われた変調光を前記複数の監視指標へ向けて発し、
前記撮像部は、映像信号から前記変調光の成分を抽出するフィルタを前記画像生成部への出力側に有する
ことを特徴とする請求項2記載の位置変動監視装置。
【請求項4】
前記画像解析部は、前記複数の監視指標の位置変位として、前記複数の監視指標間の相対位置の変位を求めることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の位置変動監視装置。
【請求項5】
前記複数の監視指標へ向けて光を発する光源を備え、
前記光源は、赤外帯域の光を前記複数の監視指標へ向けて発し、
前記撮像部は、受光した光から赤外帯域の光を抽出する光学フィルタを有する
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の位置変動監視装置。
【請求項6】
前記判断部は、前記判断基準として閾値と当該閾値より小さな予備閾値とが設定され、前記複数の監視指標の位置変位が前記予備閾値を超えるか否かを判断するとともに前記複数の監視指標の位置変位が前記閾値を超えるか否かを判断し、
前記報知制御部は、前記判断部で前記複数の監視指標の位置変位が前記予備閾値を超えたと判断された場合に予備警報を報知するように前記報知装置を制御するとともに、前記判断部で前記複数の監視指標の位置変位が前記閾値を超えたと判断された場合に警報を報知するように前記報知装置を制御する
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の位置変動監視装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の位置変動監視装置と、
予め決められた監視対象領域に設置された複数の監視指標と
を備えることを特徴とする位置変動監視システム。
【請求項8】
前記位置変動監視装置は、前記複数の監視指標へ向けて光を発する光源を有し、
前記複数の監視指標は、前記光源からの光を当該光源側に向かって反射させる再帰性反射部材を有する
ことを特徴とする請求項7記載の位置変動監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−103009(P2012−103009A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248957(P2010−248957)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(000106221)パナソニック電工SUNX株式会社 (578)
【Fターム(参考)】