説明

位置推定方法、端末装置及びプログラム

【課題】位置推定方法、端末装置及びプログラムに関し、位置推定精度を低下させることなく端末装置の消費電力を低減することを目的とする。
【解決手段】端末装置の移動距離を算出し、移動方向の変化が検出されてから所定時間後に絶対位置を取得する処理を繰り返し、1回目の処理で取得した第1の絶対位置と2回目の処理で取得した第2の絶対位置を通る移動距離の長さを有する第1のリンクを算出し、第1及び第2の絶対位置と3回目の処理で取得した第3の絶対位置に最も近く第1の絶対位置を通らない移動距離の長さを有する第2のリンクを算出する。第1及び第2のリンクの第1の絶対位置に対する方位を示す角度の差が所定値以内であれば第2のリンクの角度を第1の絶対位置の直前のリンクと直後の第1のリンクとがなす角度とみなし、第1の絶対位置の直前のリンクと直後の第1のリンクを接続したリンク形状に基づいて端末装置の現在位置を推定するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置推定方法、そのような位置推定方法で自装置の位置を推定する端末装置、コンピュータにそのような位置推定方法を用いた位置推定処理を実行させるプログラム、及びそのようなプログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話等の携帯端末装置が採用している位置測位システムは、GPS(Global Positioning System)が主流である。しかし、携帯端末装置のGPS機能を連続動作させると、GPS機能による消費電力が携帯端末装置の他の機能による消費電力と比較して高いため、携帯端末装置を駆動する電池が消耗してしまい、例えば8時間程度の比較的短い連続動作しか実現できない。
【0003】
一方、自律測位(又は、自律航法)を用いてユーザの歩行経路又は移動経路を推定する携帯端末装置も提案されている。自律測位を用いて推定された結果は、ナビゲーションサービス(Navigation Service)に限らず、携帯端末装置の現在位置に対応する情報提供サービス等の各種サービスに利用可能である。この種の携帯端末装置は、例えば方位を検出する方位検出機能、歩数を検出する歩数検出機能、予め入力されている歩幅と歩数の積から移動距離を算出する移動距離算出機能、現在の絶対位置を取得するGPS機能等の測位機能を有する。この種の携帯端末装置は、一定時間毎、或いは、一定移動距離毎にGPS機能が動作するようにGPS機能を間欠動作させ、これらの測位機能により取得される方位、移動距離、絶対位置等に基づいて、ユーザの移動経路を推定する(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【0004】
自律測位を用いる携帯端末装置は、GPS機能を連続動作させてユーザの移動経路を推定する携帯端末装置と比較すると、消費電力を比較的低く抑えることができる。これは、GPS機能以外の測位機能の動作時の消費電力が、GPS機能の動作時の消費電力と比較すると少ないことによる。しかし、各機能により取得される方位、移動距離、絶対位置等には誤差が含まれるため、ユーザの移動経路の推定精度を向上させるためには誤差を補正する必要がある。
【0005】
例えば方位検出機能が磁気センサを用いる場合、磁気センサのキャリブレーションを実行する必要がある。磁気センサを有する携帯端末装置は、磁気センサが例えば2〜3箇所に設けられ、各磁気センサが地磁気を測定して方位を取得する。しかし、これらの磁気センサのキャリブレーションを実行しても磁気センサ間の測定誤差、即ち、オフセットをゼロにすることは難しい。又、測定誤差は、ユーザが携帯端末装置を携帯して移動する距離に応じて累積されて増大するため、ユーザの移動経路の推定精度を向上させるためには例えばGPS機能を比較的頻繁に動作させて誤差を補正する等の対策が必要となる。GPS機能により取得した絶対位置にも誤差は含まれるが、GPS機能による測位誤差は例えばバネモデルを用いた歩行軌跡補間技術を用いて補正できるので(例えば、非特許文献1参照)、ユーザの移動距離に応じて累積されて増大する磁気センサの測定誤差はGPS機能により取得した絶対位置に基づいて補正することができる。
【0006】
このように、ある程度の位置推定精度を確保するためにGPS機能を連続動作させると携帯端末装置の消費電力が比較的高くなり、消費電力を低く抑えるためにGPS機能を比較的長い間隔で間欠動作させると累積される測定誤差のために位置推定精度が低下してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−272247号公報
【特許文献2】特開2002−162250号公報
【特許文献3】特開2009−92506号公報
【特許文献4】特開2010−223829号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】森 信一郎他、「ばねモデルを用いた歩行軌跡補間技術」、「マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2010)シンポジウム」、平成22年7月、pp.953-960
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の位置推定方法では、位置推定精度を低下させることなく端末装置の消費電力を低減することは難しいという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、位置推定精度を低下させることなく端末装置の消費電力を低減可能な位置推定方法、端末装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一観点によれば、端末装置の移動距離を移動距離算出機能で算出し、前記端末装置の移動方向の変化の有無を方向変化検出機能で検出し、前記移動方向の変化が検出された時点から所定時間後にGPS機能で絶対位置を取得する処理を繰り返し、1回目の処理で取得した第1の絶対位置と前記1回目の処理から所定時間後に実行される2回目の処理で取得した第2の絶対位置を通る移動距離の長さを有する第1のリンクを算出し、前記第1及び第2の絶対位置と、前記2回目の処理から所定時間後に実行される3回目の処理で取得した第3の絶対位置に最も近く、且つ、前記第1の絶対位置を通らない移動距離の長さを有する第2のリンクを算出し、前記第1及び第2のリンクの前記第1の絶対位置に対する方位を示す角度の差が所定値以内であれば前記第2のリンクの前記第1の絶対位置に対する角度を、前記第1の絶対位置の直前のリンクと前記第1の絶対位置直後の前記第1のリンクとがなす角度とみなし、前記第1の絶対位置の直前のリンクと前記第1の絶対位置直後の前記第1のリンクを接続したリンク形状に基づいて前記端末装置の現在位置を推定し、前記GPS機能を絶対位置の取得時に動作させ、取得後に非動作とすることを特徴とする位置推定方法が提供される。
【0012】
本発明の一観点によれば、端末装置の移動距離を算出する移動距離算出手段と、動作時に端末装置の絶対位置を検出するGPS受信機と、前記端末装置の移動方向の変化の有無を検出する方向変化検出手段と、前記方向変化検出手段により移動方向の変化が検出された時点から所定時間後に前記GPS受信機を動作させて絶対位置を取得して当該絶対位置の取得後に前記GPS受信機を非動作にする処理を繰り返す絶対位置取得手段と、前記移動距離及び前記絶対位置に基づいて前記端末装置の移動経路を取得する移動経路取得手段を備え、前記移動経路取得手段は、前記絶対位置取得手段の1回目の処理で取得した第1の絶対位置と前記1回目の処理から所定時間後に実行される2回目の処理で取得した第2の絶対位置を通る第1のリンクを算出し、前記第1及び第2の絶対位置と、前記2回目の処理から所定時間後に実行される3回目の処理で取得した第3の絶対位置に最も近く、且つ、前記第1の絶対位置を通らない第2のリンクを算出し、前記第1及び第2のリンクの前記第1の絶対位置に対する方位を示す角度の差が所定値以内であれば前記第2のリンクの前記第1の絶対位置に対する角度を、前記第1の絶対位置の直前のリンクと前記第1の絶対位置直後の前記第1のリンクとがなす角度とみなし、前記第1の絶対位置の直前のリンクと前記第1の絶対位置直後の前記第1のリンクを接続したリンク形状に基づいて前記端末装置の現在位置を推定することを特徴とする端末装置が提供される。
【0013】
本発明の一観点によれば、コンピュータに、前記コンピュータの位置を推定する位置推定処理を実行させるプログラムであって、前記コンピュータの移動距離を移動距離算出機能で算出して記憶部に格納し、前記コンピュータの移動方向の変化の有無を方向変化検出機能で検出し、前記移動方向の変化が検出された時点から所定時間後にGPS機能で絶対位置を取得して前記記憶部に格納する処理を繰り返す手順と、1回目の処理で取得した第1の絶対位置と前記1回目の処理から所定時間後に実行される2回目の処理で取得した第2の絶対位置を通る移動距離の長さを有する第1のリンクを算出して前記記憶部に格納する手順と、前記第1及び第2の絶対位置と、前記2回目の処理から所定時間後に実行される3回目の処理で取得した第3の絶対位置に最も近く、且つ、前記第1の絶対位置を通らない移動距離の長さを有する第2のリンクを算出して前記記憶部に格納する手順と、前記第1及び第2のリンクの前記第1の絶対位置に対する方位を示す角度の差が所定値以内であれば前記第2のリンクの前記第1の絶対位置に対する角度を、前記第1の絶対位置の直前のリンクと前記第1の絶対位置直後の前記第1のリンクとがなす角度とみなして前記記憶部に格納し、前記第1の絶対位置の直前のリンクと前記第1の絶対位置直後の前記第1のリンクを接続したリンク形状に基づいて前記コンピュータの現在位置を推定する手順を前記コンピュータに実行させることを特徴とするプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0014】
開示の位置推定方法、端末装置及びプログラムによれば、位置推定精度を低下させることなく端末装置の消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例における端末装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図2】コンピュータシステムの構成の一例を示すブロック図である。
【図3】携帯電話の動作の一例を説明するフローチャートである。
【図4】スタート時動作を説明するフローチャートである。
【図5】現在位置算出処理を説明するフローチャートである。
【図6】直線移動距離算出処理を説明するフローチャートである。
【図7】最適化処理を説明するフローチャートである。
【図8】節バネモデルを説明する図である。
【図9】現在位置出力処理を説明するフローチャートである
【図10】終了時動作を説明するフローチャートである。
【図11】リンクの算出を説明する図である。
【図12】1回目の角度算出処理時の推定移動経路と正解移動経路とを比較する図である。
【図13】2回目の角度算出処理時の推定移動経路と正解移動経路とを比較する図である。
【図14】3回目の角度算出処理時の推定移動経路と正解移動経路とを比較する図である。
【図15】4回目の角度算出処理時の推定移動経路と正解移動経路とを比較する図である。
【図16】5回目の角度算出処理時の推定移動経路と正解移動経路とを比較する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
開示の位置推定方法、端末装置及びプログラムでは、端末装置の移動距離を算出し、移動方向の変化が検出されてから所定時間後に絶対位置を取得する処理を繰り返し、1回目の処理で取得した第1の絶対位置と1回目の処理から所定時間後に実行される2回目の処理で取得した第2の絶対位置を通る移動距離の長さを有する第1のリンクを算出し、第1及び第2の絶対位置と2回目の処理から所定時間後に実行される3回目の処理で取得した第3の絶対位置に最も近く第1の絶対位置を通らない移動距離の長さを有する第2のリンクを算出する。第1及び第2のリンクの第1の絶対位置に対する方位を示す角度の差が所定値以内であれば第2のリンクの角度を第1の絶対位置の直前のリンクと直後の第1のリンクとがなす角度とみなし、第1の絶対位置の直前のリンクと直後の第1のリンクを接続したリンク形状に基づいて端末装置の現在位置を推定する。
【0017】
以下に、開示の位置推定方法、端末装置及びプログラムの各実施例を図面と共に説明する。
【実施例】
【0018】
図1は、本発明の一実施例における端末装置の構成の一例を示すブロック図である。この例では、本発明が携帯電話に適用されている。
【0019】
図1に示すように、携帯電話100は、地磁気センサ30、加速度センサ40、GPS受信機59、及び移動経路推定装置50を有する。携帯電話100は、周知の通話機能を備えており、更にメール、インターネット等の周知の通信機能、周知の撮影機能等の各種機能を備えても良いが、図1ではこれら各種機能を実現するための構成の図示は省略する。又、図1ではテンキー等の入力部、移動経路等を表示する表示部等の図示も省略する。
【0020】
地磁気センサ30は、例えば3軸座標系上での地磁気を検出する周知の磁気方位センサで形成可能である。加速度センサ40は、例えば3軸方向の加速度を検出する周知のセンサで形成可能である。GPS受信機59は、例えば複数のGPS衛星からの信号をアンテナ(図示せず)で受信して携帯電話100の絶対位置(即ち、緯度及び経度で示される位置)を取得する周知の構成を有する。
【0021】
移動経路推定装置50は、方位取得部8、絶対位置取得部10、方向転換検出部12、移動距離取得部14、方位算出部16、移動経路取得部18、移動経路補正部20、座標変換部22、及び経路情報保持部24を有する。
【0022】
方位取得部8は、地磁気センサ30が検出して出力する地磁気値に基づいて携帯電話100に予め定められた軸が指し示す方位(以下、相対方位と言う)を取得する。尚、地磁気センサ30の代わりに基準面に対する相対角度を検出するジャイロスコープ(gyroscope)又は角速度を検出する角速度センサを用い、方位取得部8がジャイロスコープ又は角速度センサの検出出力に基づいて相対方位を取得するようにしても良い。絶対位置取得部10は、GPS受信機59が取得して出力する絶対位置を取得する。方向転換検出部12は、方位取得部8が取得した相対方位に基づいて、携帯電話100を携帯するユーザが例えば道路の曲がり角を曲がる等することにより進行方向を転換したか否かの情報、或いは、ユーザが移動する方位(以下、進行方位と言う)を変えずに移動しているか否かの情報を検出する。
【0023】
移動距離取得部14は、ユーザが入力部から入力したユーザの1歩分の長さを表す歩幅情報、或いは、デフォルトの歩幅情報を予め保持しており、当該歩幅情報と、加速度センサ40が検出して出力する加速度から算出される歩数情報とから、ユーザの移動距離(=歩幅×歩数)を計算する。尚、移動距離の求め方自体は、加速度センサを用いた周知の歩数計と同様で良いため、その詳細な説明は省略する。方位算出部16は、絶対位置取得部10で取得された絶対位置に基づいて、携帯電話100を携帯するユーザが進行方向を転換したときの転換角度を算出する。この転換角度の算出方法には、例えば特許文献4より周知の算出方法を採用可能である。
【0024】
移動経路取得部18は、方位取得部8が取得した相対方位と移動距離取得部14が計算したユーザの移動距離から現在位置と相対移動経路を算出すると共に、方位算出部16が算出した転換角度に基づいて相対移動経路を補正する。以下の説明では、補正後の相対移動経路を、「補正後移動経路」とも呼ぶ。この移動経路取得部18の処理の概略は、例えば特許文献4より周知である。
【0025】
移動経路補正部20は、補正後移動経路を、絶対位置取得部10が取得した絶対位置を用いて更に補正する。座標変換部22は、移動経路補正部20が補正した相対経路を絶対座標に変換し、経路情報保持部24は、座標変換部22が変換した結果を保持する。
【0026】
GPS受信機59及び絶対位置取得部10は、GPS機能(又は、GPS手段)を形成可能である。地磁気センサ30、方位取得部8及び方向転換検出部12は、方向変化検出機能(又は、方向変化検出手段)を形成可能である。又、加速度センサ40及び移動距離取得部14は、歩数検出機能(又は、歩数検出手段)を含む移動距離算出機能(又は、移動距離算出手段)を形成可能である。方位算出部16、移動経路取得部18、移動経路補正部20、及び座標変換部22は、移動経路取得機能(又は、移動経路取得手段)を形成可能である。
【0027】
図1の如き基本構成を有する携帯電話100は、例えば特許文献4より周知である。尚、移動経路推定装置50は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサと記憶部の組み合わせにより形成可能である。図2は、携帯電話100を形成可能なコンピュータシステムの構成の一例を示すブロック図である。
【0028】
図2において、コンピュータシステム500は、CPU501、記憶部502、テンキー等を含む入力部503、表示部504、及びタイマ505を有する。この例では、記憶部502、入力部503、表示部504、及びタイマ505がバス506を介してCPU501に接続されているが、バス506を用いることなく記憶部502、入力部503、表示部504、及びタイマ505を夫々直接CPU501に接続した構成であっても良い。又、GPS受信機59、地磁気センサ30、加速度センサ40、及び携帯電話100の状態を検出する周知の状態センサ60は、バス506を介してCPU501に接続されていても、直接CPU501に接続されていても良い。尚、図2では、説明の便宜上、状態センサ60のみを示し、GPS受信機59、地磁気センサ30、及び加速度センサ40の図示は省略する。
【0029】
例えば、状態センサ60は、携帯電話100が折りたたみ式の場合に蓋の開閉状態を検出したり、携帯電話100がスライド式の場合に蓋のスライド状態を検出したり、携帯電話100の表示部(即ち、コンピュータシステム500の表示部504)のオン/オフ状態を検出したりすることで、携帯電話100の動作状態、或いは、動作モードを検出する。
【0030】
尚、入力部503及び表示部504は、タッチパネル等により一体的に設けられていても良い。タイマ505は、CPU501の内部タイマを用いる場合は省略可能である。バス506を介さずに直接CPU501と信号の送受信を行う場合、バス506上のトラフィックの問題が軽減できる。
【0031】
CPU501は、コンピュータシステム500全体の制御を司り、位置推定プログラムを含む各種プログラムを実行することで図1に示す移動経路推定装置50の各機能を実現できる。記憶部502は、移動経路推定装置50内の経路情報保持部24の機能を実現すると共に、CPU501が実行するプログラム、及びCPU501が実行する算出処理等の中間データ、地図等を含む各種データを格納する。つまり、記憶部502は、移動経路推定装置50内の各部が取得、検出、算出、補正、或いは変換した情報を記憶できる。記憶部502は、例えばRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)等で形成可能である。入力部502は、コンピュータシステム500(即ち、携帯電話100)にコマンドやデータを入力する際にユーザにより操作される。表示部503は、入力部502からの入力情報、ユーザへのメッセージ、各種操作メニュー、地図、移動経路推定装置50により推定された移動経路等を表示する。タイマ505は、CPU501が実行する処理で用いるタイミングを決定したり、所定時間を管理することができる。
【0032】
コンピュータシステム500に少なくとも位置推定機能を持たせるプログラム(位置推定プログラム)は、コンピュータシステム500(即ち、CPU501)を位置推定機能を有する携帯電話100として動作させる。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納されていても良い。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、例えばIC(Integrated Circuit)カードメモリ等の半導体記憶装置、フロッピー(登録商標)ディスク等の磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM等の可搬型記録媒体に限定されるものではなく、コンピュータシステム500でアクセス可能な各種記録媒体を含む。又、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、例えば記憶部502で形成されても良い。
【0033】
言うまでもなく、CPU501は、位置推定機能に加え、各種プログラムを実行することで携帯電話100の通話機能、通信機能、撮影機能等の各種機能の少なくとも一部を更に実現しても良い。
【0034】
次に、携帯電話100の動作を図3乃至図10と共に説明する。図3は、携帯電話100の動作の一例を説明するフローチャートである。尚、移動経路推定装置50の各機能をCPU501で実現する場合、図3乃至図10に示す処理はCPU501により実行される。図3の処理は、例えば加速度センサ40が携帯電話100を携帯するユーザの歩行開始を検出した時点から、或いは、ユーザが入力部503から移動経路の取得開始指示等を入力した時点から開示される。
【0035】
図3において、ステップS1は、携帯電話100の位置推定機能を用いるアプリケーションソフトウェア(以下、アプリと言う)が起動されたか否か、或いは、携帯電話100の動作モードが履歴モードから現在位置測位モードに切り替えられたか否かを判定する。位置推定機能を用いるアプリが起動されたか否かは、CPU501が当該アプリを実行したか否かに基づいて判定できる。又、携帯電話100の動作モードが履歴モードから現在位置測位モードに切り替えられたか否かは、状態センサ60の検出出力に基づいて判定できる。履歴モードでは、例えば移動経路取得部18が取得して記憶部502に記憶した移動経路を読み出して表示部504に表示する等して、携帯電話100を携帯するユーザの歩行履歴を地図上に表示することができる。一方、現在位置測位モードでは、携帯電話100の位置を測位して現在位置を推定する。ステップS1の判定結果がYESになると、ステップS2は、図4と共に後述するスタート時動作を開始する。ステップS2の後、ステップS3〜S9、ステップS11〜S14、及びステップS15の処理が並行して実行される。
【0036】
ステップS3は、方向転換検出部12により方向転換、即ち、曲がりが検出されたか否かを判定する。ステップS3の判定結果がYESになると、ステップS4は、移動距離取得部14により図6と共に後述する直線距離算出処理を行う。ステップS5は、移動経路取得部18により図5と共に後述する現在位置算出処理を行う。ステップS6は、方位算出部16により算出した進行方位nを記憶部502に記憶する。ステップS7は、ステップS5同様に移動経路取得部18により図5と共に後述する現在位置算出処理を行い、ステップS8は、ステップS6と同様に方位算出部16により算出した進行方位n+1を記憶部502に記憶する。ステップS6,S8で算出した進行方位n,n+1は、後述するステップS15にて利用される。ステップS9は、|(進行方位n)−(進行方位n+1)|>閾値であるか否かを移動経路取得部18により判定し、判定結果がYESであるとユーザが直線的に移動していないと推定されるので処理はステップS7戻り、判定結果がNOであるとユーザが直線的に移動していると推定されるので処理は後述するステップS21へ進む。
【0037】
一方、ステップS11は、タイマ505が監視している所定時間が経過したか否かを例えば移動経路取得部18により判定する。ステップS11の判定結果がYESになると、ステップS12は、ステップS5同様に移動経路取得部18により図5と共に後述する現在位置算出処理を行い、ステップS13は、ステップS6と同様に方位算出部16により算出した進行方位nを記憶部502に記憶する。ステップS14は、タイマ505をリセットし、処理はステップS15へ進む。
【0038】
ステップS15は、移動経路取得部18により図9と共に後述する現在位置出力処理を行い、処理はステップS21へ進む。
【0039】
ステップS21は、ステップS1においてアプリが起動されたか否かを判定した場合は、起動されているアプリが終了したか否かを判定する。又、ステップS21は、ステップS1において携帯電話100の動作モードが履歴モードから現在位置測位モードに切り替えられたか否かを判定した場合は、携帯電話100の動作モードが現在位置測位モードから履歴モードに切り替えられたか否かを判定する。
【0040】
起動されているアプリが終了したか否かを判定し、アプリが終了しておらずステップS21の判定結果がNOであると、処理はステップS3,S11,S15へ進む。一方、アプリが終了してステップS21の判定結果がYES(Y1)であると、ステップS23は図10と共に供述する終了時動作を実行し、処理は終了する。
【0041】
携帯電話100の動作モードが現在位置測位モードから履歴モードに切り替えられたか否かを判定し、履歴モードへの切り替えが発生しておりステップS21の判定結果がYES(Y2)であると、ステップS22は携帯電話100の動作モードを履歴モードへ切り替え、処理は終了する。一方、履歴モードへの切り替えが発生しておらずステップS21の判定結果がNOであると、処理はステップSS3,S11,S15へ進む。
【0042】
図4は、ステップS2のスタート時動作を説明するフローチャートである。図4において、ステップS201は、GPS受信機59を起動して(即ち、動作させて)アンカーポイント(anchor point)として利用される絶対位置を絶対位置取得部10により取得し、ステップS202は、加速度センサ40が出力する加速度から歩数を算出する歩数計を移動距離取得部14内で起動する。GPS受信機59は、アンカーポイント取得後はその都度解放(即ち、非動作と)される。ステップS203は、ステップS201でアンカーポイントを取得した時点からステップS202で起動された歩数計で計数された歩数に基づいて算出された当該アンカーポイントからの移動距離に基づき、図5と共に後述する現在位置算出処理を移動経路取得部18により行う。ステップS204は、地磁気センサ30の出力地磁気値に基づいて相対方位を取得する処理を方位取得部8により行い、相対方位を進行方位nとして記憶部502に記憶する。ステップS205は、図5と共に後述する現在位置算出処理を移動経路取得部18により行う。ステップS206は、地磁気センサ30の出力地磁気値に基づいて相対方位を取得する処理を方位取得部8により行い、相対方位を進行方位n+1として記憶部502に記憶する。ステップS207は、|(進行方位n)−(進行方位n+1)|>閾値であるか否かを移動経路取得部18により判定し、判定結果がYESであるとユーザが直線的に移動していないと推定されるので処理はステップS205戻り、判定結果がNOであるとユーザが直線的に移動していると推定されるので処理は呼出元の図3の処理(ステップS2)へ戻る。図3の処理に戻る際には、現在位置及び進行方位が求められている。
【0043】
図5は、現在位置算出処理を説明するフローチャートである。図5において、ステップS51は、GPS受信機59を起動してアンカーポイントを絶対位置取得部10により取得しする。ステップS52は、ステップS51でアンカーポイントを取得した時点から歩数計で計数された歩数に基づいて、図6と共に後述する直線移動距離算出処理を移動距離取得部14により行う。ステップS53は、直線移動距離を含む現在位置算出用データを記憶部502に保存する。ステップS54は、図7と共に後述する最適化処理を移動経路補正部20により行う。ステップS55は、タイマ505を例えば移動距離取得部14によりセットし、処理は呼出元の処理へ戻る。呼出元の処理に戻る際には、現在位置及び進行方位が求められている。
【0044】
図6は、直線移動距離算出処理を説明するフローチャートである。図6において、ステップS41は、方向転換検出部12により方向転換、即ち、曲がりが検出された(即ち、図3のステップS3の判定結果がYES)の場合の処理であるか、或いは、絶対位置取得部10によりアンカーポイントが取得された場合(即ち、図5のステップS51の後)の処理であるかを移動距離取得部14により判別する。前者の場合をケースAとし、後者の場合をケースBとすると、ステップS42は、ケースAの場合は移動距離取得部14により直線移動距離を[{(今回の曲がり検出時の歩数)−(前回の曲がり検出時の歩数)}×(歩幅)]から算出し、処理は呼出元の処理(例えば図3のステップS4)へ戻る。一方、ステップS42は、ケースBの場合は、移動距離取得部14により直線移動距離を[{(アンカーポイント取得時の歩数)−(前回の曲がり検出時の歩数)}×(歩幅)]から算出し、処理は呼出元の処理(例えば図5のステップS52)へ戻る。呼出元の処理に戻る際には、前回の曲がり検出時から今回のアンカーポイント取得時までの直線移動距離、即ち、リンク長が求められている。リンクとは、移動距離の長さを有する線分のことを言う。リンクは移動経路に相当し、有限の長さを有する一又は複数の節で形成される。1リンクにつき例えば3種類の変数(又は、パラメータ)、即ち、節の長さ、節の角度、及びリンクの角度が設定可能である。
【0045】
図7は、最適化処理を説明するフローチャートである。この例では、例えば非特許文献1等で提案されているバネモデルを用いた歩行軌跡補間技術を用いた最適化処理を行う。図7において、ステップS541は、各リンクの絶対位置(又は、アンカーポイント)に対する初期方位(即ち、初期角度)を移動経路補正部20により決定する。ステップS542は、各リンクの対応点座標を移動経路補正部20により算出する。各リンクの対応点は、図8と共に後述するバネモデルにおいてGPS機能により取得された絶対位置がバネを介してリンクに接続する位置であり、絶対位置の取得タイミングにおけるリンク上の位置に相当する。ステップS543は、絶対位置座標(即ち、GPS座標)と対応点座標の距離、及びリンクNの終点とリンク(即ち、リンクNに連続する次のリンク)N+1の始点の距離の二乗和(即ち、エネルギー値)を移動経路補正部20により算出する。ステップS544は、算出した二乗和、即ち、エネルギー値を最小化するリンクを求め、処理は呼出元の処理(例えば図5のステップS54)へ戻る。呼出元の処理に戻る際には、エネルギー値が最小化されるリンクにより最適化された現在位置及び進行方位が求められている。この最適化処理により、エネルギー値が最小となる解が求められる。
【0046】
【数1】

【0047】
エネルギー値Eは、例えば次式により表すことができる。
【0048】
【数2】

【0049】
リンクは移動経路に相当し、有限の長さを有する一又は複数の節で形成される。1リンクにつき例えば3種類の変数(又は、パラメータ)、即ち、節の角度、節の長さ、及びリンクの角度を決めることが可能である。
【0050】
次式で表されるように、節の角度及び節の長さを決め、リンクの始点を決めることができる。
【0051】
【数3】

【0052】
又、次式で表されるように、リンクの角度を決め、各対応点を決めることができる。
【0053】
【数4】

【0054】
更に、次式で表されるように、リンクの終点を決めることができる。
【0055】
【数5】

【0056】
このようにして1リンクについて3種類の変数を決めた後、次のリンクについて同様に3種類の変数を決めることができる。そして、周知の最適化手法を用いることで、エネルギーEが最小となる解を求める。
【0057】
【数6】

【0058】
このような節バネモデルのバネの延び縮みを利用して、直線移動距離の誤差を補正することができる。つまり、この例では、リンクの始点位置の特定にバネモデルの理論を応用しているとも言える。
【0059】
図9は、現在位置出力処理を説明するフローチャートである。図9において、ステップS151は、現在位置及び進行方位n+1が取得されているか否かを移動経路取得部18により判定する。ステップS151の判定結果がYESであると、ステップS152は、取得されている現在位置を移動経路取得部18により出力し、処理は呼出元の処理(例えば図3のステップS15)へ戻る。一方、ステップS151の判定結果がNOであると、ステップS153は、移動経路取得部18により現在位置を[(一歩前の現在位置)+(歩幅)×(一歩前の進行方位n)]から算出し、処理は呼出元の処理へ戻る。
【0060】
図10は、終了時動作を説明するフローチャートである。図10において、ステップS231は、GPS受信機59を起動して絶対位置取得部10によりアンカーポイントを取得する。ステップS232は、移動経路取得部18により図5に示す現在位置算出処理を行って現在位置を算出し、処理は呼出元の処理(例えば図3のステップS23)に戻る。呼出元の処理に戻る際には、現在位置が求められている。
【0061】
図11は、リンクの算出を説明する図である。上述の如く、この例では、方向変化検出機能で携帯電話100の移動方向の変化を検出すると、GPS機能を動作させてアンカーポイントG1を取得する。又、移動方向の変化を検出してから所定時間後にGPS機能を再度動作させてアンカーポイントG2を取得し、アンカーポイントG1,G2を通るリンク(又は、直線線分)Aを算出する。次に、アンカーポイントG2を取得した時点から所定時間後にGPS機能を再度動作させてアンカーポイントG3を取得する。GPS機能は、各アンカーポイントG1,G2,G3を取得後に非動作となるので、消費電力を比較的低く抑えることができる。
【0062】
アンカーポイントG1は、携帯電話100の移動方向の変化を検出した時点でGPS機能により取得された絶対位置であるが、移動方向の変化を検出した時点は、必ずしも携帯電話100の移動方向が実際に変化した時点と一致するものではない。そこで、アンカーポイントG1,G2,G3に最も近く、且つ、アンカーポイントG1を通らないリンクBを算出する。アンカーポイントG1を通らないリンクBを算出することで、アンカーポイントG1に対する各リンクA,Bの方位を示す角度の差が所定範囲内に収束し易くする。又、アンカーポイントG1を通らないリンクBを算出することで、アンカーポイントG1を通るリンクを算出する場合と比較して、アンカーポイントG1に対するリンクの方位(以下、リンクの角度と言う)の精度を向上することができる。
【0063】
このようにして、アンカーポイントに対するリンクの角度を決定するまでにGPS機能を動作させる回数を比較的少なくすることができる。更に、アンカーポイントP1に対するリンクの角度を決定後は、次に携帯電話100の移動方向の変化が検出されるまではGPS機能を動作させる必要がない。このため、GPS機能を連続動作させる場合と比較すると、GPS機能の消費電力、即ち、携帯電話100の消費電力を少なくすることができる。
【0064】
その後、アンカーポイントG1に対する各リンクA,Bの角度θ,θを比較し、角度の差|θ−θ|が所定値以内であればリンクBのアンカーポイントG1に対する角度θを、アンカーポイントG1の直前のリンクとアンカーポイントG1直後のリンクAとがなす角度とみなし、アンカーポイントG1の直前のリンクとアンカーポイントG1直後のリンクAを接続したリンク形状に基づいて携帯電話100の現在位置を推定する。
【0065】
一方、アンカーポイントG1に対する各リンクA,Bの角度θ,θを比較し、角度の差|θ−θ|が所定値を超える場合には、アンカーポイントG3を取得した時点から所定時間後にGPS機能を再度動作させてアンカーポイントG4を取得する。そして、アンカーポイントG1,G2,G3,G4に最も近く、且つ、アンカーポイントG1を通らないリンクCを算出する。このようにリンクCを算出する処理は、アンカーポイントG1に対する各リンクB,Cの角度θ,θを比較し、角度の差|θ−θ|が所定値以内に収束するまで繰り返される。
【0066】
このようにして、この例では、単純に一定時間毎、或いは、一定移動距離毎にGPS機能を間欠動作させる従来例と比較して、位置推定精度を低下させることなく、且つ、GPS機能を動作させる回数を減らして消費電力を更に低減することができる。
【0067】
図12乃至図16は、上記の例において推定された位置に基づき推定された推定移動経路と、正解移動経路とを比較する図である。図12はリンクの1回目の角度算出時の様子、図13はリンクの2回目の角度算出時の様子、図14はリンクの3回目の角度算出時の様子、図15はリンクの4回目の角度算出時の様子、図16はリンクの5回目の角度算出時の様子を夫々示す。図12乃至図16中、縦軸は地図上の例えば南北方向上の移動距離をメートル(m)で示し、横軸は地図上の例えば東西方向上の移動距離をメートル(m)で示す。尚、図12乃至図16では、原点が最初に取得した緯度及び経度で示されるGPS座標に対する値で示されているので、この例では縦軸の値が0.000m、横軸の値が50.000mの位置が原点でるが、原点はこの値に限定されるものではない。
【0068】
図12乃至図16の各図において、(a)はリンクが作成される様子を正解移動経路と共に示し、(b)は(a)によるリンクの作成により算出される推定移動経路を正解移動経路と共に示す。又、図12乃至図16の各図において、(a)では取得されたGPS位置を×印付きの□印で示し、正解移動経路のサンプル位置を◆印で示し、節バネモデルの算出結果が取得される位置を■印で示し、携帯電話100の自律航法結果を梨地の△印で示す。又、(b)では取得されたGPS位置を×印付きの□印で示し、正解移動経路を破線で示し、節バネモデルの算出結果が取得される位置を●印で示し、自律航法結果を梨地の○印で示す。
【0069】
図12(a)においてリンクL1〜L3のうち、リンクL2のリンク長は例えば46.2mであり、正解移動経路中のリンクL2に相当するリンク長は例えば55.7mである。そこで、この例では、推定移動経路と正解移動経路との間のリンクL2についての9.5mの誤差を次のリンクL3の仮想バネで補正する。
【0070】
表1は、リンクL3について1回目から5回目の角度算出処理で求めた節の長さ(m)、節の角度(rad)、及びリンクの角度(rad)を示す。連続する角度算出処理(例えば1回目と2回目の角度算出処理)間のリンクの角度の変化が所定値以下であれば、上記の如く携帯電話100を携帯するユーザは直進していると判断する。一方、連続する処理間のリンクの角度の変化が所定値を超えると、上記の如くユーザは直進していないと判断して再度方位を算出する。
【0071】
つまり、(ST1)初期方位を決定して初期方位に基づいて自律航法を行い、(ST2)曲がり(即ち、旋回イベント)を検出するとGPS機能により絶対位置を取得し、(ST3)リンクに節バネモデルを適用して方位を算出し、(ST4)算出した方位に基づいて自律航法を行い、(ST5)曲がりを検出する度に(ST2)〜(ST4)の処理を繰り返す。
【0072】
図12乃至図16の例では、5回目の角度算出処理を経てリンクL3で表される推定移動経路が正解移動経路を良好に再現できることが確認できる。
【0073】
【表1】

【0074】
尚、図12乃至図16に示す如き推定移動経路は、例えば周知の方法で表示部504に表示された地図上に表示することで、ユーザに対するナビゲーションサービスを提供することができる。
【0075】
上記の例では、端末装置が携帯電話である場合について説明したが、端末装置は携帯型の装置(即ち、携帯端末装置)に限定されるものではなく、端末装置は、自動車や二輪車等の車両に搭載されるナビゲーション装置であっても良い。この場合、移動距離取得部14は、例えば車両のタイヤの外周の長さと、タイヤの回転数から車両の移動距離を取得すれば良い。
【0076】
更に、上記の例では、説明の便宜上、地図及び移動経路が二次元で表示される場合について説明したが、地図及び移動経路は三次元で表示されても良いことは言うまでもない。
【0077】
以上の実施例を含む実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
端末装置の移動距離を移動距離算出機能で算出し、前記端末装置の移動方向の変化の有無を方向変化検出機能で検出し、前記移動方向の変化が検出された時点から所定時間後にGPS機能で絶対位置を取得する処理を繰り返し、
1回目の処理で取得した第1の絶対位置と前記1回目の処理から所定時間後に実行される2回目の処理で取得した第2の絶対位置を通る移動距離の長さを有する第1のリンクを算出し、
前記第1及び第2の絶対位置と、前記2回目の処理から所定時間後に実行される3回目の処理で取得した第3の絶対位置に最も近く、且つ、前記第1の絶対位置を通らない移動距離の長さを有する第2のリンクを算出し、
前記第1及び第2のリンクの前記第1の絶対位置に対する方位を示す角度の差が所定値以内であれば前記第2のリンクの前記第1の絶対位置に対する角度を、前記第1の絶対位置の直前のリンクと前記第1の絶対位置直後の前記第1のリンクとがなす角度とみなし、前記第1の絶対位置の直前のリンクと前記第1の絶対位置直後の前記第1のリンクを接続したリンク形状に基づいて前記端末装置の現在位置を推定し、
前記GPS機能を絶対位置の取得時に動作させ、取得後に非動作とする
ことを特徴とする、位置推定方法。
(付記2)
前記第1及び第2のリンクの前記第1の絶対位置に対する方位を示す角度の差が所定値を超える場合には、前記第3の絶対位置を取得した時点から前記所定時間後に前記GPS機能を再度動作させて第4の絶対位置を取得し、前記第1乃至第4の絶対位置に最も近く、且つ、前記第1の絶対位置を通らない移動距離の長さを有する第3のリンクを算出する処理を、前記第1の絶対位置に対する前記第2及び第3のリンクの角度の差が前記所定値以内に収束するまで繰り返すことを特徴とする、付記1記載の位置推定方法。
(付記3)
前記GPS機能により測位された絶対位置と測位時点の実際の位置との間の測位誤差を仮想バネの変位の位置エネルギーとして扱う、前記仮想バネでリンクが接続された節バネモデルにおいて、前記仮想バネの変位の位置エネルギーが最小となる状態を最も正解移動経路に近いリンクであると判断して当該リンクを前記GPS機能により取得した絶対位置に合わせて補間することを特徴とする、付記1又は2記載の位置推定方法。
(付記4)
前記端末装置の現在位置を推定して取得した推定位置から前記端末装置の推定移動経路を取得して表示部に表示することを特徴とする、付記1乃至3のいずれか1項記載の位置推定方法。
(付記5)
取得した前記推定移動経路を前記端末装置の移動履歴として記憶部に格納することを特徴とする、付記4記載の位置推定方法。
(付記6)
前記移動距離算出機能は、加速度センサを用いた歩数検出機能で検出された歩数に基づいて移動距離を算出し、
前記方向変化検出機能は、地磁気センサ又は角速度センサを用いて移動方向の変化を検出することを特徴とする、付記1乃至5のいずれか1項記載の位置推定方法。
(付記7)
端末装置の移動距離を算出する移動距離算出手段と、
動作時に端末装置の絶対位置を検出するGPS受信機と、
前記端末装置の移動方向の変化の有無を検出する方向変化検出手段と、
前記方向変化検出手段により移動方向の変化が検出された時点から所定時間後に前記GPS受信機を動作させて絶対位置を取得して当該絶対位置の取得後に前記GPS受信機を非動作にする処理を繰り返す絶対位置取得手段と、
前記移動距離及び前記絶対位置に基づいて前記端末装置の移動経路を取得する移動経路取得手段を備え、
前記移動経路取得手段は、
前記絶対位置取得手段の1回目の処理で取得した第1の絶対位置と前記1回目の処理から所定時間後に実行される2回目の処理で取得した第2の絶対位置を通る第1のリンクを算出し、
前記第1及び第2の絶対位置と、前記2回目の処理から所定時間後に実行される3回目の処理で取得した第3の絶対位置に最も近く、且つ、前記第1の絶対位置を通らない第2のリンクを算出し、
前記第1及び第2のリンクの前記第1の絶対位置に対する方位を示す角度の差が所定値以内であれば前記第2のリンクの前記第1の絶対位置に対する角度を、前記第1の絶対位置の直前のリンクと前記第1の絶対位置直後の前記第1のリンクとがなす角度とみなし、前記第1の絶対位置の直前のリンクと前記第1の絶対位置直後の前記第1のリンクを接続したリンク形状に基づいて前記端末装置の現在位置を推定する
ことを特徴とする、端末装置。
(付記8)
前記移動経路取得手段は、前記第1及び第2のリンクの前記第1の絶対位置に対する方位を示す角度の差が所定値を超える場合には、前記第3の絶対位置を取得した時点から前記所定時間後に前記GPS受信機を再度動作させて第4の絶対位置を取得し、前記第1乃至第4の絶対位置に最も近く、且つ、前記第1の絶対位置を通らない移動距離の長さを有する第3のリンクを算出する処理を、前記第1の絶対位置に対する前記第2及び第3のリンクの角度の差が前記所定値以内に収束するまで繰り返すことを特徴とする、付記7記載の端末装置。
(付記9)
前記移動経路取得手段は、前記GPS受信機により測位された絶対位置と測位時点の実際の位置との間の測位誤差を仮想バネの変位の位置エネルギーとして扱う、前記仮想バネでリンクが接続された節バネモデルにおいて、前記仮想バネの変位の位置エネルギーが最小となる状態を最も正解移動経路に近いリンクであると判断して当該リンクを前記GPS受信機により取得した絶対位置に合わせて補間する移動経路補正部を有することを特徴とする、付記7又は8記載の端末装置。
(付記10)
表示部を更に備え、
前記移動経路取得手段は、前記端末装置の現在位置を推定して取得した推定位置から前記端末装置の推定移動経路を取得して前記表示部に表示することを特徴とする、付記7乃至9のいずれか1項記載の端末装置。
(付記11)
取得した前記推定移動経路を前記端末装置の移動履歴として格納する記憶部を更に備えたことを特徴とする、付記10記載の端末装置。
(付記12)
前記移動距離算出手段は、加速度センサを用いた歩数検出手段で検出された歩数に基づいて移動距離を算出し、
前記方向変化検出手段は、地磁気センサ又は角速度センサを用いて移動方向の変化を検出する
ことを特徴とする、付記7乃至11のいずれか1項記載の端末装置。
(付記13)
コンピュータに、前記コンピュータの位置を推定する位置推定処理を実行させるプログラムであって、
前記コンピュータの移動距離を移動距離算出機能で算出して記憶部に格納し、前記コンピュータの移動方向の変化の有無を方向変化検出機能で検出し、前記移動方向の変化が検出された時点から所定時間後にGPS機能で絶対位置を取得して前記記憶部に格納する処理を繰り返す手順と、
1回目の処理で取得した第1の絶対位置と前記1回目の処理から所定時間後に実行される2回目の処理で取得した第2の絶対位置を通る移動距離の長さを有する第1のリンクを算出して前記記憶部に格納する手順と、
前記第1及び第2の絶対位置と、前記2回目の処理から所定時間後に実行される3回目の処理で取得した第3の絶対位置に最も近く、且つ、前記第1の絶対位置を通らない移動距離の長さを有する第2のリンクを算出して前記記憶部に格納する手順と、
前記第1及び第2のリンクの前記第1の絶対位置に対する方位を示す角度の差が所定値以内であれば前記第2のリンクの前記第1の絶対位置に対する角度を、前記第1の絶対位置の直前のリンクと前記第1の絶対位置直後の前記第1のリンクとがなす角度とみなして前記記憶部に格納し、前記第1の絶対位置の直前のリンクと前記第1の絶対位置直後の前記第1のリンクを接続したリンク形状に基づいて前記コンピュータの現在位置を推定する手順
を前記コンピュータに実行させることを特徴とする、プログラム。
(付記14)
前記第1及び第2のリンクの前記第1の絶対位置に対する方位を示す角度の差が所定値を超える場合には、前記第3の絶対位置を取得した時点から前記所定時間後に前記GPS機能を再度動作させて第4の絶対位置を取得し、前記第1乃至第4の絶対位置に最も近く、且つ、前記第1の絶対位置を通らない移動距離の長さを有する第3のリンクを算出する処理を、前記第1の絶対位置に対する前記第2及び第3のリンクの角度の差が前記所定値以内に収束するまで繰り返す手順
を前記コンピュータに更に実行させることを特徴とする、付記13記載のプログラム。
(付記15)
前記GPS機能により測位された絶対位置と測位時点の実際の位置との間の測位誤差を仮想バネの変位の位置エネルギーとして扱う、前記仮想バネでリンクが接続された節バネモデルにおいて、前記仮想バネの変位の位置エネルギーが最小となる状態を最も正解移動経路に近いリンクであると判断して当該リンクを前記GPS機能により取得した絶対位置に合わせて補間する手順
を前記コンピュータに更に実行させることを特徴とする、付記13又は14記載のプログラム。
(付記16)
前記コンピュータの現在位置を推定して取得した推定位置から前記端末装置の推定移動経路を取得して表示部に表示する手順
を前記コンピュータに更に実行させることを特徴とする、付記13乃至15のいずれか1項記載のプログラム。
(付記17)
取得した前記推定移動経路を前記コンピュータの移動履歴として前記記憶部に格納する手順
を前記コンピュータに更に実行させることを特徴とする、付記16記載のプログラム。
(付記18)
前記移動距離算出機能は、加速度センサを用いた歩数検出機能で検出された歩数に基づいて移動距離を算出し、
前記方向変化検出機能は、地磁気センサ又は角速度センサを用いて移動方向の変化を検出し、
前記コンピュータは携帯端末装置に備えられていることを特徴とする、付記13乃至17のいずれか1項記載のプログラム。
【0078】
以上、開示の位置推定方法、端末装置及びプログラムを実施例により説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0079】
8 方位取得部
10 絶対位置取得部
12 方向転換検出部
14 移動距離取得部
16 方位算出部
18 移動経路取得部
20 移動経路補正部
30 地磁気センサ
40 加速度センサ
50 移動経路推定装置
59 GPS受信機
60 状態センサ
100 携帯電話
500 コンピュータシステム
501 CPU
502 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末装置の移動距離を算出する移動距離算出手段と、
動作時に端末装置の絶対位置を検出するGPS受信機と、
前記端末装置の移動方向の変化の有無を検出する方向変化検出手段と、
前記方向変化検出手段により移動方向の変化が検出された時点から所定時間後に前記GPS受信機を動作させて絶対位置を取得して当該絶対位置の取得後に前記GPS受信機を非動作にする処理を繰り返す絶対位置取得手段と、
前記移動距離及び前記絶対位置に基づいて前記端末装置の移動経路を取得する移動経路取得手段を備え、
前記移動経路取得手段は、
前記絶対位置取得手段の1回目の処理で取得した第1の絶対位置と前記1回目の処理から所定時間後に実行される2回目の処理で取得した第2の絶対位置を通る第1のリンクを算出し、
前記第1及び第2の絶対位置と、前記2回目の処理から所定時間後に実行される3回目の処理で取得した第3の絶対位置に最も近く、且つ、前記第1の絶対位置を通らない第2のリンクを算出し、
前記第1及び第2のリンクの前記第1の絶対位置に対する方位を示す角度の差が所定値以内であれば前記第2のリンクの前記第1の絶対位置に対する角度を、前記第1の絶対位置の直前のリンクと前記第1の絶対位置直後の前記第1のリンクとがなす角度とみなし、前記第1の絶対位置の直前のリンクと前記第1の絶対位置直後の前記第1のリンクを接続したリンク形状に基づいて前記端末装置の現在位置を推定する
ことを特徴とする、端末装置。
【請求項2】
前記移動経路取得手段は、前記第1及び第2のリンクの前記第1の絶対位置に対する方位を示す角度の差が所定値を超える場合には、前記第3の絶対位置を取得した時点から前記所定時間後に前記GPS受信機を再度動作させて第4の絶対位置を取得し、前記第1乃至第4の絶対位置に最も近く、且つ、前記第1の絶対位置を通らない移動距離の長さを有する第3のリンクを算出する処理を、前記第1の絶対位置に対する前記第2及び第3のリンクの角度の差が前記所定値以内に収束するまで繰り返すことを特徴とする、請求項1記載の端末装置。
【請求項3】
前記移動経路取得手段は、前記GPS受信機により測位された絶対位置と測位時点の実際の位置との間の測位誤差を仮想バネの変位の位置エネルギーとして扱う、前記仮想バネでリンクが接続された節バネモデルにおいて、前記仮想バネの変位の位置エネルギーが最小となる状態を最も正解移動経路に近いリンクであると判断して当該リンクを前記GPS受信機により取得した絶対位置に合わせて補間する移動経路補正部を有することを特徴とする、請求項1又は2記載の端末装置。
【請求項4】
表示部を更に備え、
前記移動経路取得手段は、前記端末装置の現在位置を推定して取得した推定位置から前記端末装置の推定移動経路を取得して前記表示部に表示することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項記載の端末装置。
【請求項5】
コンピュータに、前記コンピュータの位置を推定する位置推定処理を実行させるプログラムであって、
前記コンピュータの移動距離を移動距離算出機能で算出して記憶部に格納し、前記コンピュータの移動方向の変化の有無を方向変化検出機能で検出し、前記移動方向の変化が検出された時点から所定時間後にGPS機能で絶対位置を取得して前記記憶部に格納する処理を繰り返す手順と、
1回目の処理で取得した第1の絶対位置と前記1回目の処理から所定時間後に実行される2回目の処理で取得した第2の絶対位置を通る移動距離の長さを有する第1のリンクを算出して前記記憶部に格納する手順と、
前記第1及び第2の絶対位置と、前記2回目の処理から所定時間後に実行される3回目の処理で取得した第3の絶対位置に最も近く、且つ、前記第1の絶対位置を通らない移動距離の長さを有する第2のリンクを算出して前記記憶部に格納する手順と、
前記第1及び第2のリンクの前記第1の絶対位置に対する方位を示す角度の差が所定値以内であれば前記第2のリンクの前記第1の絶対位置に対する角度を、前記第1の絶対位置の直前のリンクと前記第1の絶対位置直後の前記第1のリンクとがなす角度とみなして前記記憶部に格納し、前記第1の絶対位置の直前のリンクと前記第1の絶対位置直後の前記第1のリンクを接続したリンク形状に基づいて前記コンピュータの現在位置を推定する手順
を前記コンピュータに実行させることを特徴とする、プログラム。
【請求項6】
端末装置の移動距離を移動距離算出機能で算出し、前記端末装置の移動方向の変化の有無を方向変化検出機能で検出し、前記移動方向の変化が検出された時点から所定時間後にGPS機能で絶対位置を取得する処理を繰り返し、
1回目の処理で取得した第1の絶対位置と前記1回目の処理から所定時間後に実行される2回目の処理で取得した第2の絶対位置を通る移動距離の長さを有する第1のリンクを算出し、
前記第1及び第2の絶対位置と、前記2回目の処理から所定時間後に実行される3回目の処理で取得した第3の絶対位置に最も近く、且つ、前記第1の絶対位置を通らない移動距離の長さを有する第2のリンクを算出し、
前記第1及び第2のリンクの前記第1の絶対位置に対する方位を示す角度の差が所定値以内であれば前記第2のリンクの前記第1の絶対位置に対する角度を、前記第1の絶対位置の直前のリンクと前記第1の絶対位置直後の前記第1のリンクとがなす角度とみなし、前記第1の絶対位置の直前のリンクと前記第1の絶対位置直後の前記第1のリンクを接続したリンク形状に基づいて前記端末装置の現在位置を推定し、
前記GPS機能を絶対位置の取得時に動作させ、取得後に非動作とする
ことを特徴とする、位置推定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−122892(P2012−122892A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274818(P2010−274818)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】