説明

位置決め装置

【課題】位置決め対象物を一台の駆動装置により互いに直交する二方向、例えば、水平方向と垂直方向とのそれぞれに移動させて位置決めすることができる位置決め装置を提供すること。
【解決手段】基台11に設けられたレール12の上にそれぞれ摺動可能に立設された第1のスライド部材21と第2のスライド部材22、但し、第1のスライド部材には、レールとの係合により第1のスライド部材を一時的に固定することのできる第1の仮固定機構31が設けられており、また第2のスライド部材には、斜面22cが設けられている;第1のスライド部材の側面21bと第2のスライド部材の斜面22cとにより摺動可能に係合支持された楔状の位置決め対象物支持部材23、但し、対象物支持部材23には、上記係合支持を一時的に固定することのできる第2の仮固定機構32が設けられている;そして、第2のスライド部材のレール上での摺動を駆動する駆動部材41を含む位置決め装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置決め対象物を互いに直交する二方向、例えば、水平(X軸)方向と垂直(Z軸)方向とのそれぞれに移動させて位置決めすることのできる位置決め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、感光材の所定位置に光学描画装置によりレーザ光を照射するため、感光材(位置決め対象物)を水平(X軸)方向あるいは垂直(Z軸)方向に沿って移動させて位置決めする位置決め装置が開示されている。同文献に記載の位置決め装置は、位置決め対象物を水平方向に沿って移動させて位置決めする装置(一軸テーブル)の上に、位置決め対象物を垂直方向に沿って移動させて位置決めする装置(移動ステージ)を重ねて配置した構成を有している。
【0003】
上記の位置決め対象物を水平方向に沿って移動させて位置決めする装置(一軸テーブル)には駆動装置(サーボモータ)が備えられ、そして位置決め対象物を垂直方向に沿って移動させて位置決めする装置(移動ステージ)にもまた駆動装置(マイクロメータヘッド)が備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−343357号公報(図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、位置決め対象物を一台の駆動装置により互いに直交する二方向、例えば、水平(X軸)方向と垂直(Z軸)方向、あるいは水平の二軸(X軸とY軸)の方向のそれぞれに移動させて位置決めすることができる位置決め装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、基台表面に設けたレール上に第1のスライド部材と第2のスライド部材とをそれぞれ摺動可能に立設し、第1のスライド部材の側面と第2のスライド部材に形成した斜面とにより位置決め対象物支持部材を摺動可能に係合支持すると、一方のスライド部材に駆動装置(後述の駆動部材に相当する)を接続し、この一台の駆動装置を用いて、上記の一方のスライド部材を位置決め対象物支持部材の係合支持が一時的に固定された状態で摺動させることにより、位置決め対象物支持部材をレールの長さ方向に沿って移動することができ、そして上記の一方のスライド部材を他方のスライド部材がレールと係合して一時的に固定された状態で摺動させることにより、位置決め対象物支持部材を基台に垂直な方向に沿って移動することができる、すなわち位置決め対象物支持部材に支持された位置決め対象物を一台の駆動装置により互いに直交する二方向、例えば、水平(X軸)方向と垂直(Z軸)方向とのそれぞれに移動させて位置決めすることが可能になることを見出し、本発明に到達した。
【0007】
本発明は、基台;基台の表面に設けられたレール;レール上にそれぞれ摺動可能に立設された第1のスライド部材と第2のスライド部材、但し、第1のスライド部材の下部には、レールとの係合により第1のスライド部材を一時的に固定することのできる第1の仮固定機構が設けられており、また第2のスライド部材には、その頂面から第1のスライド部材に対向する側面にかけて形成された斜面が設けられている;第1のスライド部材の第2のスライド部材に対向する側面と第2のスライド部材の斜面とにより摺動可能に係合支持された楔状の位置決め対象物支持部材、但し、前記の対象物支持部材、第1のスライド部材もしくは第2のスライド部材には、前記の対象物支持部材の係合支持を一時的に固定することのできる第2の仮固定機構が設けられている;そして、第2のスライド部材のレール上での摺動を駆動する基台に設置された駆動部材を含む位置決め装置にある。
【0008】
上記の本発明の位置決め装置の好ましい態様は、次の通りである。
(1)第1の仮固定機構が、レールと第1のスライド部材との間の摩擦抵抗の強化により前記レールとの係合を実現する機構である。
(2)第1のスライド部材の第2のスライド部材に対向する側面と第2のスライド部材の斜面とによる位置決め対象物支持部材の摺動可能な係合支持の少なくとも一方が、一方の部材に設けられたレール状部材と他方の部材に設けられた前記レール状部材と摺動可能に係合する係合部材との組み合わせにより実現している。
【0009】
本発明はまた、基台;基台の表面に設けられたレール;レール上にそれぞれ摺動可能に立設された第1のスライド部材と第2のスライド部材、但し、第2のスライド部材の下部には、レールとの係合により第2のスライド部材を一時的に固定することのできる第1の仮固定機構が設けられており、また第2のスライド部材には、その頂面から第1のスライド部材に対向する側面にかけて形成された斜面が設けられている;第1のスライド部材の第2のスライド部材に対向する側面と第2のスライド部材の斜面とにより摺動可能に係合支持された楔状の位置決め対象物支持部材、但し、前記の対象物支持部材、第1のスライド部材もしくは第2のスライド部材には、前記の対象物支持部材の係合支持を一時的に固定することのできる第2の仮固定機構が設けられている;そして、第1のスライド部材のレール上での摺動を駆動する基台に設置された駆動部材を含む位置決め装置にもある。
【0010】
上記の本発明の位置決め装置の好ましい態様は、次の通りである。
(1)第1の仮固定機構が、レールと第2のスライド部材との間の摩擦抵抗の強化により前記レールとの係合を実現する機構である。
(2)第1のスライド部材の第2のスライド部材に対向する側面と第2のスライド部材の斜面とによる位置決め対象物支持部材の摺動可能な係合支持の少なくとも一方が、一方の部材に設けられたレール状部材と他方の部材に設けられた前記レール状部材と摺動可能に係合する係合部材との組み合わせにより実現している。
【発明の効果】
【0011】
本発明の位置決め装置は、位置決め対象物を一台の駆動装置により互いに直交する二方向、例えば、水平方向と垂直方向とのそれぞれに移動させて位置決めすることができる。本発明の位置決め装置は、位置決め対象物を、例えば、水平方向と垂直方向のそれぞれに移動可能とするするために必要とされる駆動装置の数が一台で済むため小型化が容易で、そして極めて低コストで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の位置決め装置の構成例を示す正面図である。
【図2】図1の位置決め装置10の平面図である。
【図3】図1の位置決め装置10の右側面図である。
【図4】図2に記入した切断線IV−IV線に沿って切断した位置決め装置10の断面図である。
【図5】図1の位置決め装置10の第1の仮固定機構31の近傍の部位の一部切り欠き拡大図である。なお、第1の仮固定機構31は、気体供給手段による管体39を介した気体の供給を継続している状態で示してある。
【図6】図5に示す第1の仮固定機構31の近傍の部位を、気体供給手段による管体39を介した気体の供給を停止した状態で示す図である。
【図7】図1の位置決め装置10を位置決め対象物支持部材23が図にて右側の方向に移動した状態で示す図である。
【図8】図7の位置決め装置10を位置決め対象物支持部材23が図にて上側の方向に移動した状態で示す図である。
【図9】本発明の位置決め装置の別の構成例を示す正面図である。
【図10】図9の位置決め装置90の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の位置決め装置を、添付の図面を用いて説明する。図1は、本発明の位置決め装置の構成例を示す正面図である。図2は、図1の位置決め装置10の平面図である。図3は、図1の位置決め装置10の右側面図である。そして図4は、図2に記入した切断線IV−IV線に沿って切断した位置決め装置10の断面図である。
【0014】
図1〜図4に示す位置決め装置10は、基台11;基台11の表面に設けられたレール12;レール12の上にそれぞれ摺動可能に立設された第1のスライド部材21と第2のスライド部材22、但し、第1のスライド部材21の下部には、レール12との係合により第1のスライド部材21を一時的に固定することのできる第1の仮固定機構31が設けられており、また第2のスライド部材22には、その頂面22aから第1のスライド部材21に対向する側面22bにかけて形成された斜面22cが設けられている;第1のスライド部材21の第2のスライド部材22に対向する側面21bと第2のスライド部材22の斜面22cとにより摺動可能に係合支持された楔状の位置決め対象物支持部材23、但し、対象物支持部材23には、上記の対象物支持部材23の係合支持を一時的に固定することのできる第2の仮固定機構32が設けられている;そして、第2のスライド部材22のレール12の上での摺動を駆動する駆動部材41(基台11に設置されている)から構成されている。
【0015】
第1のスライド部材21は、その底面にレール12と摺動可能に係合する係合部材13aを備えており、これにより係合部材13aと共にレール12の長さ方向に沿って摺動(滑動)可能とされている。
【0016】
同様に、第2のスライド部材22もまた、その底面にレール12と摺動可能に係合する係合部材13bを備えており、これにより係合部材13bと共にレール12の長さ方向に沿って摺動(滑動)可能とされている。
【0017】
なお、上記のレール12、係合部材13a、および係合部材13bとしては、例えば、公知のリニアガイドを用いることができる。
【0018】
第1のスライド部材21の下部には、レール12との係合により第1のスライド部材21を一時的に固定(以下「仮固定」とも云う)することのできる第1の仮固定機構31が設けられている。
【0019】
図5は、図1の位置決め装置10の第1の仮固定機構31の近傍の部位の一部切り欠き拡大図である。
【0020】
第1の仮固定機構31としては、例えば、レール12と第1のスライド部材21との間の摩擦抵抗の強化によりレール12との係合を実現する機構が用いられている。
【0021】
第1の仮固定機構31は、レール12の一方の側面12aにプレート33を押し付けるプレート駆動部31aと、レール12の他方の側面12bにプレート(図示していない)を押し付けるプレート駆動部31bとが、第1のスライド部材21の底面(下部)に固定されていて、かつレール12の頂面よりも上方側にレール12と間隙を介して配置された連結部(図2に示す第2の仮固定機構32の連結部32cに相当する部分)を介して互いに連結された構成を有している。
【0022】
プレート駆動部31aのケース34の内部には、上記のプレート33と共にレール12の側面12aに垂直な方向に沿って移動可能とされているローラ35と、ローラ35に斜面を接触させた状態で配置された楔状部材36と、ケース34の内部に嵌め合わされていて、楔状部材36をケース34の長さ方向に沿って移動可能に支持している仕切板37と、そして仕切板37の楔状部材36の側とは逆側に配置されたコイルばね38とが収容されている。プレート駆動部31bの構成は、プレートをレール12の側面12bに押し付けるように構成されていること以外は、プレート駆動部31aの構成と同様である。
【0023】
プレート駆動部31a、31bには、管体39を介して接続された気体供給手段(図示していない)から気体(通常は、加圧されて圧縮された気体)が供給される。気体供給手段の代表例としては、コンプレッサ、ポンプ、およびボンベが挙げられる。気体供給手段で供給する気体の代表例としては、空気、および窒素が挙げられる。
【0024】
図5には、第1の仮固定機構31を、気体供給手段による管体39を介した気体の供給を継続している状態で示してある。
【0025】
以下では、第1の仮固定機構31の動作について説明する。ただし、各々のプレート駆動部の動作については、プレート駆動部31aの動作を代表例として説明する。
【0026】
第1の仮固定機構31は、管体39を介した気体(特に好ましくは圧縮された気体)の供給を継続している状態では、供給された気体の圧力を受けて仕切板37が楔状部材36と共にコイルばね38の側に移動し、このためローラ35とプレート33が楔状部材36の側に移動し、プレート33とレール12の側面12aとの間に間隙を生じることから、第1のスライド部材21のレール12の長さ方向に沿った自由な摺動を可能とする。
【0027】
図6は、図5に示す第1の仮固定機構31の近傍の部位を、気体供給手段による管体39を介した気体の供給を停止した状態で示す図である。
【0028】
第1の仮固定機構31は、管体39を介した気体の供給を停止した状態では、コイルばね38の伸長により仕切板37が楔状部材36と共にローラ35の側に移動し、このためローラ35とプレート33がレール12の側に移動し、プレート33がレール12の側面12aに押し付けられ、その際のレール12と第1のスライド部材21との摩擦抵抗の強化(増大)によりレール12との係合を実現し、これにより第1のスライド部材21を仮固定する。
【0029】
第1の仮固定機構31(および後に説明する第2の仮固定機構32)としては、例えば、公知の仮固定具(鍋屋バイテック株式会社製)が用いられている。このような仮固定具としては、上記のレールの側面に押し付けるプレートの動力源として、油圧、電気(モータ)を用いるもの、そしてプレートを手動で駆動するものも知られている。また、プレートをレールの一方の側面にのみ、あるいはレールの頂面にのみ押し付けるものも知られている。このような仮固定具の構成は周知であるため、これ以上の説明は行なわない。
【0030】
なお、第1の仮固定機構31は、第1のスライド部材21を仮固定することができれば、その構成に特に制限はない。同様に、後に説明する第2の仮固定機構32は、対象物支持部材23の係合支持を仮固定することができれば、その構成に特に制限はない。例えば、第1の仮固定機構として、レールに押し付けるプレートを電磁石で駆動する機構を用いることもできる。また、例えば、第1の仮固定機構として、プレートをレールに押し付けた際の摩擦力を利用するのではなく、レールとは非接触に配置された電磁石の吸引力(磁力)を利用して第1のスライド部材21を仮固定する機構を用いることもできる。
【0031】
図1に示すように、楔状の位置決め対象物支持部材23は、第1のスライド部材21の第2のスライド部材22に対向する側面21bと第2のスライド部材22の斜面22cとにより摺動可能に係合支持されている。
【0032】
上記の第1のスライド部材21の第2のスライド部材22に対向する側面21bと第2のスライド部材22の斜面22cとによる位置決め対象物支持部材23の摺動可能な係合支持の少なくとも一方は、一方の部材に設けられたレール状部材と他方の部材に設けられた前記レール状部材と摺動可能に係合する係合部材との組み合わせにより実現していることが好ましい。
【0033】
例えば、図1〜図4に示す位置決め装置10の場合、第1のスライド部材21の側面21bと第2のスライド部材22の斜面22cとによる位置決め対象物支持部材23の摺動可能な係合支持の両方が、それぞれ一方の部材に設けられたレール状部材と他方の部材に設けられた前記レール状部材と摺動可能に係合する係合部材との組み合わせにより実現している。
【0034】
すなわち、上記の係合支持の一方、すなわち第1のスライド部材21の側面21bによる位置決め対象物支持部材23の摺動可能な係合支持は、一方の部材、例えば、第1のスライド部材21に設けられたレール状部材51aと、他方の部材、例えば、対象物支持部材23に設けられた前記レール状部材51aと摺動可能に係合する係合部材51bとの組み合わせ(リニアガイド51)により実現されている。
【0035】
そして、上記の係合支持の他方、すなわち第2のスライド部材22の斜面22cによる位置決め対象物支持部材23の摺動可能な係合支持は、一方の部材、例えば、対象物支持部材23に設けられたレール状部材52aと、他方の部材、例えば、第2のスライド部材22に設けられた前記レール状部材52aと摺動可能に係合する係合部材52bとの組み合わせ(リニアガイド52)により実現されている。
【0036】
位置決め対象物支持部材23には、前記のような対象物支持部材23の係合支持を一時的に固定(以下「仮固定」とも云う)することのできる第2の仮固定機構32が備えられている。
【0037】
第2の仮固定機構32の構成は、第1の仮固定機構31の構成と同様である。
【0038】
すなわち、第2の仮固定機構32は、レール状部材51aの各側面に対向するプレート(図示していない)を備えていて、管体39を介した気体の供給を継続している状態では、上記プレートとレール状部材51aとの間に間隙を生じることから、対象物支持部材23のレール状部材51aの長さ方向に沿った自由な摺動を可能とし、これによりレール状部材52aの長さ方向に沿った自由な摺動をも可能とする。
【0039】
その一方で、第2の仮固定機構32は、管体39を介した気体の供給を停止した状態では、上記プレートがレール状部材51aの側面に押し付けられることから、対象物支持部材23の係合支持を仮固定する。
【0040】
第2の仮固定機構32により、対象物支持部材23の係合支持を仮固定することにより、対象物支持部材23、第1のスライド部材21、および第2のスライド部材22の相対的な位置関係を仮固定することができる。
【0041】
第2の仮固定機構は、位置決め対象物支持部材23、第1のスライド部材21、そして第2のスライド部材22のうちの何れか一つの部材に設けられていればよい。勿論、第2の仮固定機構を、位置決め対象物支持部材23、第1のスライド部材21、そして第2のスライド部材22のうちの二以上の部材のそれぞれに設けることもできる。
【0042】
基台11には、第2のスライド部材22のレール12の上での摺動を駆動する駆動部材41が設置されている。
【0043】
位置決め装置10の駆動部材41としては、回転駆動装置42と、回転駆動装置42の回転軸42aに接続された送りねじ43とを備える直動駆動装置が用いられている。
【0044】
回転駆動装置42としては、例えば、ステッピングモータに代表される公知の回転駆動装置が用いられる。
【0045】
送りねじ43は、ねじ軸43aと、ねじ軸43aの周囲に嵌め合わされたナット43bから構成されている。ねじ軸43aは、一方の端部がカップリング44を介して回転軸42aに接続されていて、支柱46の内部に備えられた回転軸受(図示していない)により回転可能に支持されている。そしてナット43bは、ナット43bを収容しているケース45を介して第2のスライド部材22に接続されている。
【0046】
回転駆動装置42の回転軸42aをねじ軸43aと共に回転させ、ナット43bをねじ軸43aの長さ方向に移動させることにより、ナット43bにケース45を介して固定された第2のスライド部材22をレール12の長さ方向に沿って摺動させ、レール12の上の所定位置に配置することができる。
【0047】
なお、前記の駆動部材としては、例えば、上記のような回転駆動装置と送りねじとを組み合わせた直動駆動装置、あるいはリニアモータなどに代表される公知の直動駆動装置を用いることができる。また、前記の駆動部材として、例えば、マイクロメータヘッド、あるいは送りねじのような駆動装置を持たない部材を用いることもできる。この場合、例えば、位置決めを行なう作業者がマイクロメータヘッド、あるいは送りねじを操作することにより、第2のスライド部材をレールの長さ方向に沿って摺動させる。
【0048】
次に、図1〜4に示す位置決め装置10を用いた位置決め対象物の位置決めについて説明を行なう。
【0049】
先ず、位置決め対象物支持部材23を、レール12の長さ方向に沿って移動する場合、第1の仮固定機構31に管体39を介して気体の供給を継続することにより、第1のスライド部材21のレール12に沿った自由な摺動を可能とし、そして第2の仮固定機構32の管体39を介した気体の供給を停止することにより、対象物支持部材23の係合支持を仮固定、すなわち対象物支持部材23、第1のスライド部材21、および第2のスライド部材22の相対的な位置関係を仮固定する。
【0050】
次に、駆動部材41により第2のスライド部材22をレール12の長さ方向に沿って摺動させることにより、第2のスライド部材との相対的な位置関係が仮固定された対象物支持部材23(および第1のスライド部材21)を、レール12の長さ方向に沿って移動することができる。
【0051】
例えば、図1に示す位置決め装置10の第2のスライド部材22をレール12の長さ方向に沿って図の右側の方向に摺動させることにより、図7に示すように対象物支持部材23をレール12の長さ方向に沿って図の右側の方向に移動させることができる。
【0052】
このように、駆動部材41を用いて、対象物支持部材23をレール12の長さ方向に沿って移動させ、レール上の所定の位置に配置することにより、対象物支持部材23に支持された位置決め対象物をレール12の長さ方向(X軸方向)に沿って移動させて所定の位置に位置決めすることができる。
【0053】
その一方で、位置決め対象物支持部材23を、基台11の表面に垂直な方向に沿って移動する場合、第1の仮固定機構31の管体39を介した気体の供給を停止することにより、第1のスライド部材21を仮固定し、そして第2の仮固定機構32に管体39を介して気体の供給を継続することにより、対象物支持部材23の係合支持の仮固定を解除する、すなわち対象物支持部材23のレール状部材51aの長さ方向に沿った自由な摺動と、レール状部材52aの長さ方向に沿った自由な摺動とを可能にする。
【0054】
次に、駆動部材41により第2のスライド部材22をレール12の長さ方向に沿って摺動させることにより、第1のスライド部材21の側面21bと第2のスライド部材22の斜面22cとにより摺動可能に係合支持されている対象物支持部材23を、基台11の表面に垂直な方向に沿って移動(昇降)することができる。
【0055】
例えば、図7に示す位置決め装置10の第2のスライド部材22をレール12の長さ方向に沿って図の左側の方向に摺動させ、レール上に仮固定された第1のスライド部材21に近づける(両スライド部材21、22の間隔を小さくする)ことにより、図8に示すように係合部材52bがレール状部材52aの下端の側に摺動し、そして対象物支持部材23がレール状部材52aの下端の側に摺動した係合部材52bを介して第2のスライド部材22の斜面22cにより支持されるため、対象物支持部材23が係合部材51bと共にレール状部材51aに沿って上昇する。
【0056】
これとは逆に、図7に示す位置決め装置10の第2のスライド部材22をレール12の長さ方向に沿って図の右側の方向に摺動させ、レール上に仮固定された第1のスライド部材21から遠ざける(両スライド部材21、22の間隔を大きくする)ことにより、係合部材52bがレール状部材52aの上端の側に摺動し、そして対象物支持部材23がレール状部材52aの上端の側に摺動した係合部材52bを介して第2のスライド部材22の斜面22cにより支持されるため、対象物支持部材23が係合部材51bと共にレール状部材51aに沿って下降する。
【0057】
このように、駆動部材41を用いて、対象物支持部材23を昇降させて所定の位置に配置することにより、対象物支持部材23に支持された位置決め対象物を基台11の表面に垂直な方向(Z軸方向)に沿って移動させて所定の位置に位置決めすることができる。
【0058】
位置決め装置10は、位置決め対象物を一台の駆動装置(駆動部材41)により互いに直交する二方向、例えば、水平(X軸)方向と垂直(Z軸)方向とのそれぞれに移動させて位置決めすることができる。位置決め装置10は、位置決め対象物を、例えば、水平方向と垂直方向とのそれぞれに移動可能とするために必要とされる駆動装置の数が一台で済むため、装置の小型化が容易で、そして極めて低コストで製造することができる。また、位置決め装置10は、位置決め対象物を水平方向に沿って移動させて位置決めする装置と、位置決め対象物を垂直方向に沿って移動させて位置決めする装置とを積み重ねて構成する必要はない、すなわち下側の装置の位置決め対象物を支持する部材と上側の装置の基台とが不要であるため、装置の高さを低くしたり、装置を軽量化したりすることが容易である。
【0059】
図9は、本発明の位置決め装置の別の構成例を示す正面図であり、そして図10は、図9の位置決め装置90の平面図である。
【0060】
図9及び図10に示す位置決め装置90は、基台11;基台11の表面に設けられたレール12;レール12の上にそれぞれ摺動可能に立設された第1のスライド部材21と第2のスライド部材22、但し、第2のスライド部材22の下部には、レール12との係合により第2のスライド部材22を一時的に固定することのできる第1の仮固定機構31が設けられており、また第2のスライド部材22には、その頂面22aから第1のスライド部材21に対向する側面22bにかけて形成された斜面22cが設けられている;第1のスライド部材21の第2のスライド部材22に対向する側面21bと第2のスライド部材22の斜面22cとにより摺動可能に係合支持された楔状の位置決め対象物支持部材23、但し、対象物支持部材23には、上記の対象物支持部材23の係合支持を一時的に固定することのできる第2の仮固定機構32が設けられている;そして、第1のスライド部材21のレール12の上での摺動を駆動する、基台11に設置された駆動部材41から構成されている。
【0061】
第1の仮固定機構31は、レール12と第2のスライド部材22との間の摩擦抵抗の強化によりレール12との係合を実現する機構であることが好ましい。
【0062】
また、第1のスライド部材21の第2のスライド部材22に対向する側面21bと第2のスライド部材22の斜面22cとによる位置決め対象物支持部材23の摺動可能な係合支持の少なくとも一方が、一方の部材に設けられたレール状部材と他方の部材に設けられた前記レール状部材と摺動可能に係合する係合部材との組み合わせにより実現していることが好ましい。
【0063】
例えば、図9及び図10に示す位置決め装置90の場合、第1のスライド部材21の側面21bと第2のスライド部材22の斜面22cとによる位置決め対象物支持部材23の摺動可能な係合支持の両方が、それぞれ一方の部材に設けられたレール状部材と他方の部材に設けられた前記レール状部材と摺動可能に係合する係合部材との組み合わせにより実現している。
【0064】
すなわち、上記の係合支持の一方、すなわち第1のスライド部材21の側面21bによる位置決め対象物支持部材23の摺動可能な係合支持は、一方の部材、例えば、第1のスライド部材21に設けられたレール状部材51aと、他方の部材、例えば、対象物支持部材23に設けられた前記レール状部材51aと摺動可能に係合する係合部材51bとの組み合わせ(リニアガイド51)により実現されている。
【0065】
そして、上記の係合支持の他方、すなわち第2のスライド部材22の斜面22cによる位置決め対象物支持部材23の摺動可能な係合支持は、一方の部材、例えば、対象物支持部材23に設けられたレール状部材52aと、他方の部材、例えば、第2のスライド部材22に設けられた前記レール状部材52aと摺動可能に係合する係合部材52bとの組み合わせ(リニアガイド52)により実現されている。
【0066】
図9の位置決め装置90の構成は、第1の仮固定機構31が第2のスライド部材22に備えられていること、駆動部材41が第1のスライド部材21に接続されていること以外は、図1の位置決め装置10の構成と同様である。
【0067】
但し、位置決め装置90の場合には、位置決め対象物支持部材23を昇降させるため、第1の仮固定機構31により第2のスライド部材22を仮固定した状態で、第1のスライド部材21をレール12の長さ方向に沿って摺動させると、対象物支持部材23を摺動(昇降)可能に係合支持している第1のスライド部材21もまたレール12の長さ方向に沿って摺動するため、対象物支持部材23は昇降するのみでなく、レール12の長さ方向にも移動する。
【0068】
従って、必要であれば、第1の仮固定機構31に管体39を介して気体の供給を継続することにより、第2のスライド部材22のレール12に沿った自由な摺動を可能とし、そして第2の仮固定機構32の管体39を介した気体の供給を停止することにより、対象物支持部材23の係合支持を仮固定する、すなわち対象物支持部材23、第1のスライド部材21、および第2のスライド部材22の相対的な位置関係を仮固定した状態で、駆動部材41により第1のスライド部材21をレール12の長さ方向に沿って摺動させ、これにより対象物支持部材23のレール12の長さ方向における位置の調整を行なう。
【0069】
本発明の位置決め装置は、基台の表面が水平に配置されるように設置することにより、位置決め対象物をレールの長さ方向(X軸方向)と基台の表面に垂直な方向(Z軸方向)とのそれぞれに移動させて位置決めを行なうXZステージとして用いることができる。また、本発明の位置決め装置は、基台の表面が垂直に配置されるように設置することにより、位置決め対象物をレールの長さ方向(X軸方向)と基台の表面に垂直な方向(Y軸方向)とのそれぞれに移動させて位置決めを行なうXYステージとして用いることもできる。
【0070】
また、本発明の位置決め装置の複数台を用いて大きなサイズのステージ板を支持することにより、大型のXZステージあるいは大型のXYステージを構成することもできる。
【0071】
また、例えば、本発明の位置決め装置(XZステージ)と別の位置決め装置(例えば、Yステージ、θステージ)とを重ねて配置して、多自由度の位置決め装置を構成することもできる。
【0072】
あるいは、本発明の位置決め装置の複数台によりステージ板を支持して、更に前記ステージ板と各々の位置決め装置の対象物支持部材との間に各種の軸受(直動軸受、回転軸受あるいは球面軸受)を設置して多自由度の位置決め装置を構成することもできる。
【符号の説明】
【0073】
10、90 位置決め装置
11 基台
12 レール
12a、12b 側面
13a、13b 係合部材
21 第1のスライド部材
21b 側面
22 第2のスライド部材
22a 頂面
22b 側面
22c 斜面
23 位置決め対象物支持部材
31 第1の仮固定機構
31a、31b プレート駆動部
32 第2の仮固定機構
32c 連結部
33 プレート
34 ケース
35 ローラ
36 楔状部材
37 仕切板
38 コイルばね
39 管体
41 駆動部材
42 回転駆動装置
42a 回転軸
43 送りねじ
43a ねじ軸
43b ナット
44 カップリング
45 ケース
46 支柱
51、52 リニアガイド
51a、52a レール状部材
51b、52b 係合部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台;該基台の表面に設けられたレール;該レール上にそれぞれ摺動可能に立設された第1のスライド部材と第2のスライド部材、但し、第1のスライド部材の下部には、レールとの係合により第1のスライド部材を一時的に固定することのできる第1の仮固定機構が設けられており、また第2のスライド部材には、その頂面から第1のスライド部材に対向する側面にかけて形成された斜面が設けられている;第1のスライド部材の第2のスライド部材に対向する側面と第2のスライド部材の斜面とにより摺動可能に係合支持された楔状の位置決め対象物支持部材、但し、該対象物支持部材、第1のスライド部材もしくは第2のスライド部材には、該対象物支持部材の係合支持を一時的に固定することのできる第2の仮固定機構が設けられている;そして、第2のスライド部材のレール上での摺動を駆動する基台に設置された駆動部材を含む位置決め装置。
【請求項2】
第1の仮固定機構が、レールと第1のスライド部材との間の摩擦抵抗の強化により該レールとの係合を実現する機構である請求項1に記載の位置決め装置。
【請求項3】
第1のスライド部材の第2のスライド部材に対向する側面と第2のスライド部材の斜面とによる位置決め対象物支持部材の摺動可能な係合支持の少なくとも一方が、一方の部材に設けられたレール状部材と他方の部材に設けられた該レール状部材と摺動可能に係合する係合部材との組み合わせにより実現している請求項1もしくは2に記載の位置決め装置。
【請求項4】
基台;該基台の表面に設けられたレール;該レール上にそれぞれ摺動可能に立設された第1のスライド部材と第2のスライド部材、但し、第2のスライド部材の下部には、レールとの係合により第2のスライド部材を一時的に固定することのできる第1の仮固定機構が設けられており、また第2のスライド部材には、その頂面から第1のスライド部材に対向する側面にかけて形成された斜面が設けられている;第1のスライド部材の第2のスライド部材に対向する側面と第2のスライド部材の斜面とにより摺動可能に係合支持された楔状の位置決め対象物支持部材、但し、該対象物支持部材、第1のスライド部材もしくは第2のスライド部材には、該対象物支持部材の係合支持を一時的に固定することのできる第2の仮固定機構が設けられている;そして、第1のスライド部材のレール上での摺動を駆動する基台に設置された駆動部材を含む位置決め装置。
【請求項5】
第1の仮固定機構が、レールと第2のスライド部材との間の摩擦抵抗の強化により該レールとの係合を実現する機構である請求項4に記載の位置決め装置。
【請求項6】
第1のスライド部材の第2のスライド部材に対向する側面と第2のスライド部材の斜面とによる位置決め対象物支持部材の摺動可能な係合支持の少なくとも一方が、一方の部材に設けられたレール状部材と他方の部材に設けられた該レール状部材と摺動可能に係合する係合部材との組み合わせにより実現している請求項4もしくは5に記載の位置決め装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−7566(P2013−7566A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138272(P2011−138272)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(394000493)ヒーハイスト精工株式会社 (76)
【Fターム(参考)】