説明

低駆動電圧と長寿命用途のためのSDA微小モータのレイアウト設計および組立

【課題】低駆動電圧と長寿命特性を有するスクラッチ駆動アクチュエータ(SDA)微小回転モータの新規な設計と製造方法を提供する。
【解決手段】駆動電圧を交流振幅で30〜150Vo−pから12〜30Vo−pに大幅に減少するべく、超低抵抗(<0.004Ω−cm未満)のシリコンウェハをSDA微小モータの基板として用いる。さらに、本発明は、SDA微小モータの寿命(>75時間)および回転速度(〜30rpm)の改善ができる新規なSDA構造および形状設計方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、微小電気機械システム(MEMS)に適用可能なフォトリソグラフィ技術によりパターン化したSDA微小モータに関する。
【背景技術】
【0002】
小型化技術の開発と応用は、近代科学の主要トレンドである。特に、集積回路(IC)と微小電気機械システム(MEMS)技術は、近年、ミクロの世界の基礎となる方法である。世界最小の微小ファン装置は2mm x 2mmの寸法(付属書1に示すように)を有し、自己組織化微小ブレードと微小スクラッチ駆動アクチュエータ (SDA) により構成されている。SDA駆動微小ファンは、付属書2に示すように、ポリシリコンベース表面微細加工技術(マルチユーザーMEMSプロセス、MUMPs) を用いて製造される。実際に製造された微小モータチップを付属書3に示す。
【0003】
SDA装置の多くの研究や応用例が先行文献に報告されている。例えば、Terunobu Akiyamaと共同研究者は、ポシリコンの微小スライダ、微小モータおよびX/Yステージにおいて静電制御階段状動作(すなわち、スクラッチ駆動アクチュエータ)を最初に提案した。彼らの実験結果が示すように、微細構造の速度は、印加されたパルス周波数の関数であり、ステップ長は、印加されたパルスのピーク値とSDA板の長さとの関数である。上記研究者は、さらに、三次元シリコン微細構造を実現するための新規な基本形状補正技術(reshaping technology)を提供する。
【0004】
一方、Ryan J. LindermanとVictor M. Brightは、半田による自己組織化及びSDA技術を用いた新規なMEMS型微小回転ファンを提供する。これらの論文は、静電駆動されるMEMS回転ファンを提示するものであり、同MEMS回転ファンは、モータ基板をバルクエッチングすることによって寸法と重量を更に小さくできる。即ち、モータとファン羽根列を支持する薄肉構造層のみを残すことができる。SDA装置の設計において、構造ポリシリコン層、ブッシング、誘電層及び支持ビームの寸法が重要となる。この微小ファン設計において採用される最適寸法に関して、SDA板は78mmの長さと65mmの幅を有し、ブッシングは1.5mmの高さを有し、1.5mmの厚みの支持ビームは4mmの幅と30mmの長さを有する。
【0005】
SDA微小回転モータは10年以上前から開発されている。しかし、このようなSDA微小回転モータの実用化は、その高い駆動電圧(30〜150Vo−p)のために限られたものであった。この欠点を解決するため、本発明は、チップ基板として超低抵抗シリコンウエハーを用いることによって低駆動電圧SDA微小モータを開発することを目的とする。本発明によってフォトリソグラフィ技術によりパターン化したSDA微小モータを、超低抵抗(<0.004W−cm)シリコン基板上に形成するプロセスが開発された。超低抵抗シリコン基板は、SDA微小モータの駆動電圧を交流振幅で30〜150V0−pから12〜30V0−pに低減できる。
【非特許文献1】R. J. Linderman、P. E. KladitisおよびV. M. Bright、「微小回転ファンの開発」、センサとアクチュエータ A、第95巻、2002年、135〜142ページ
【非特許文献2】R. J. LindermanおよびV. M. Bright、「最適スクラッチ駆動アクチュエータを用いたナノメータ精度の位置決めロボット」、センサとアクチュエータ A、第91巻、2001年、292〜300ページ
【非特許文献3】R. J. LindermanおよびV. M. Bright、「チップサイズ部品の限界ナノメータ位置決め用最適スクラッチ駆動アクチュエータ」、半導体センサとアクチュエータ作業部会の技術ダイジェスト、ヒルトンヘッド島、サウスカロライナ州、米国、2000年、214〜217ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のSDA微小モータにはその他に寿命が短いという問題がある。この点を改善するために、本発明は、SDA微小モータの寿命を延ばし、歩留りを向上させ、電力を低減させるための新規なリブおよびフランジ構造設計を提供する。このような新規なリブおよびフランジ構造設計による新規なSDA微小モータは、本発明において長寿命(>75時間)および高回転(〜30rpm)を実現した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のSDA型微小モータを形成する方法は、以下の工程からなることを特徴とする。
a.引張り応力が小さく摩擦係数が低い窒化シリコン絶縁材料からなる第1の層を超低抵抗シリコン基板上に蒸着する工程と、
b.低応力窒化シリコン絶縁材料の層をフォトリソグラフィによりパターニングし、少なくとも一つの低抵抗シリコン基板の電気コンタクト窓を形成する工程と、
c.超低応力の適所ドープドポリシリコンからなる第2の層を、窒化シリコン蒸着基板上に蒸着する工程と、
d.第1の低応力適所ドープドポリシリコン構造層をフォトリソグラフによりパターニングし、SDA微小モータの少なくとも一つの結合路と一つのアンカーパッドを形成する工程と、
e.低応力勾配を有し、SDA微小モータの構造層の捨て層として機能する蛍光ケイ酸(PSG)からなる第3の層を基板上または基板の上方に蒸着する工程と、
f.第1の低応力PSG捨て層をフォトリソグラフィによりパターニングし、SDA微小モータの少なくとも一つのブッシング窓と一つのディンプル窓を形成する工程と、
g. 低応力勾配を有する、適所ドープドポリシリコンからなる第4の層を、第1のPSG捨て層上に蒸着する工程と、
h. 第2の低応力適所ドープドポリシリコン層をフォトリソグラフィによりパターニングし、SDA微小モータの少なくとも一つのリブ微小構造部を形成する工程と、
i. 低応力勾配を有し、SDA微小モータの構造層の第2の捨て層として機能する蛍光ケイ酸(PSG)からなる第5層を、リブおよび第1のPSG捨て層部上に蒸着する工程と、
j. 第2のPSG捨て層をフォトリソグラフィによりパターニングし、少なくとも一つのディンプル窓と一つのブッシング窓を形成する工程と、
k. 第1と第2のPSG捨て層をフォトリソグラフィによりパターニングし、SDA微小モータの少なくとも一つのカバー窓を形成する工程と、
l. 低応力勾配を有し、SDA微小モータの主構造層として機能する適所ドープドポリシリコンからなる第6層を、リブ部および第2のPSG捨て層部上に蒸着する工程と、
m. 第3の低応力ポリシリコン構造層をフォトリソグラフィによりパターニングし、微小モータのカバー部および少なくとも一つのSDAロータ部を形成する工程と、
n. クロムと金からなる金属層によって形成される第7層を、第3の低応力ポリシリコン層および第2のPSG捨て層部上に蒸着する工程と、
o. クロムと金からなる金属層をフォトリソグラフィによりパターニングし、SDA微小モータのバイアスおよびグラウンドパッドを形成する工程と、
p. SDA微小モータのカバーと結合路部は基板に固定した状態で、第1および第2のPSG捨て層にアンダーカットエッチングを行い、基板からSDA微小モータのSDAロータ部を解放(release)し、解放プロセスの後、窒化シリコン絶縁層上で、適切な静電駆動により自立した状態のSDAロータを回転可能とする工程。
【0008】
本発明のSDA型微小モータを形成する方法において、前記超低抵抗シリコン基板の抵抗は0.004Ω−cm未満とし、前記超低抵抗(<0.004Ω−cm)シリコンウエハをSDA微小モータの基板として採用したことにより、駆動電圧を交流振幅で30〜150Vo−pから12〜30Vo−pに効率的に減少可能としたことを特徴とする。
【0009】
本発明のSDA型微小モータを形成する方法において、絶縁層の蒸着工程は、低圧化学蒸着(LPCVD)法による蒸着工程とポストアニールプロセスからなり、前記低応力シリコン窒化絶縁層の応力が250MPa以下に調整されていることを特徴とする。
【0010】
本発明のSDA型微小モータを形成する方法において、低抵抗シリコン基板の電気的コンタクト窓は、金属層とシリコン基板の電気的コンタクトを図るため形成され、SDA微小モータの駆動に際し、前記超低抵抗シリコン基板が、接地電極および機械的支持部として機能することを特徴とする。
【0011】
本発明のSDA型微小モータを形成する方法において、低応力適所ドープドポリシリコン層を蒸着する工程は、低圧化学蒸着(LPCVD)法において、蒸着工程と、適所(in situ) ドーピングとポストアニールプロセスを含み、本工程の各プロセスは、異なった圧力、ガス流および温度の下で行われ、前記低応力ポリシリコン薄構造膜の応力は200MPa未満に調整されていることを特徴とする。
【0012】
本発明のSDA型微小モータを形成する方法において、低応力PSG捨て層の蒸着工程は、プラズマ強化化学蒸着(PECVD)法を用いた蒸着工程とポストアニールプロセスとを含み、前記低応力PSG捨て層の応力は300MPa未満に調整されることを特徴とする。
【0013】
本発明のSDA型微小モータを形成する方法において、前記捨て層の蒸着工程は、低応力蛍光ケイ酸(PSG)を蒸着する工程を含むことを特徴とする。
【0014】
前記リブ構造設計およびフランジ形状設計方法は、SDA型微小モータの設計と製造に用いられ、SDA型微小モータの寿命(75時間超)と回転速度(30rpm以下)を向上可能である。
【0015】
本発明の微小ファンの形成方法は、以下の工程からなる。
a. 最終の解放プロセスを除いた請求項1に記載のプロセスによるSDA微小モータの製造工程と、
b. 前記SDA微小モータの第3低応力ポリシリコン構造層上にポリイミド薄膜をスピンコーティングする工程と、
c. 前記ポリイミド薄膜上に、弾性ジョイントを、フォトリソグラフィによりパターニングしエッチングする工程と、
d. 第1および第2PSG捨て層をアンダーカットエッチングして基板からSDA微小ファンのSDAロータ部および微小羽根部を解放し、SDA微小モータのカバーおよび結合路は基板に固定した状態に保持する工程と、
e. リフロープロセスを実施して前記ポリイミド弾性ジョイントを収縮させ、予め形成した微小羽根部を回転させて持ち上げ、微小羽根部の持ち上げ角度は、ポリイミド層のリフロー温度を調整することにより調整可能とする工程と、を含み、
構造解放およびポリイミド硬化プロセス後に、自立するSDA微小ファンを適切な静電駆動によりシリコン基板上で回転可能とすることを特徴とする。
【0016】
本発明の微小ファンの形成方法において、持ち上げて微小羽根の形成することによって、ポリイミド自己組織化微細構造を形成し、ポリイミド自己組織化の基本的な操作機構として、構造層を持ち上げるための高温リフロープロセス中に発生したポリイミド弾性ジョイントの表面張力を利用することを特徴とする。
【0017】
本発明の微小ファンの形成方法において、エッチング工程は、アンダーカットエッチングプロセスであることを特徴とする。
【0018】
本発明の微小ファンの形成方法において、エッチング工程は、選択的エッチングプロセスであり、ポリシリコン構造層よりも速くPSG捨て層をエッチング可能な希釈HF酸性溶液を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明は低駆動電圧で長寿命のSDA微小モータを提供する。まず、駆動電圧を交流振幅で30〜150Vo−pから12〜30Vo−pに大幅に低減するために、SDA微小モータの基板として、超低抵抗(>0.004W−cm)シリコンウェハを用いる。次に、SDA微小モータの寿命を延ばすために、本発明は主構造およびフランジ構造設計を含む新規なレイアウトを提供する。ビーム−SDA板間およびビーム−SDA結合路間のコーナーにフランジ構造設計をさらに用いることによって、フランジ構造は、細いポリシリコンビームの曲げ剛性を向上させることができ、装置の歩留りを高め、さらに、動作時の亀裂破損を減少させることができる。
【0020】
さらに、本発明は、SDA微小モータの寿命(>75時間)および回転速度(〜30rpm)を改善できる新規なリブ構造設計およびフランジレイアウト設計を提供する。
【0021】
本発明が採用する主要な技術は、微小電気機械システム(MEMS)技術のポリシリコンベースの表面微細加工プロセスであり、バッチ製造、低コストおよび集積回路技術との高い適合性という利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
従来のSDA微小モータは、その高駆動電圧と短寿命に起因して実用化が制限されていた。図1は、L-edit(商標)ソフトウェアのシミュレーション結果による従来および新規なSDA微小モータの主構造を示す。支持ビーム(05)の破壊抵抗性(捩り力によって生じる)を向上させるために、本発明は、SDA板(04)、支持ビーム(05)、リング(06)およびカバー(08)を同時に形成するため、ポリシリコン3(03)層を利用する。ここに、これらの部材はリング(06)部に隣接する厚肉の「リブ(07)」構造(ポリシリコン2(02)層およびポリシリコン3(03)層の積層からなる)を形成し、SDA微小モータの曲げ剛性と寿命を改善することができる。図2は、本発明において提案された新規な「フランジ(09)」レイアウトを示す。このフランジ設計によって、支持ビームの構造堅牢性をさらに向上することができ、かつ、SDA微小モータの歩留りを改善し、動作時の亀裂破損を減少させることができる。付属書5は、製造されたSDA微小モータが有するフランジレイアウト設計のSEM電子顕微鏡写真である。本発明は、SDA微小モータの寿命(>75時間)と回転速度(〜30rpm)を改善するための新規なリブおよびフランジ構造設計を提供する。
【0023】
さらに、本発明は、駆動電圧を交流振幅で30〜150Vo−pから12〜30Vo−pに大幅に減少させるために、超低抵抗(<0.004W−cm未満)(10)シリコンウェハをSDA微小モータの基板として用いる。
【0024】
図3は、本発明に係るSDA微小モータの製造フローを示す。全プロセスは、少なくとも8つのフォトリソグラフィ工程と、7つの薄膜蒸着工程を必要とする。本発明の主な製造技術は、ポリシリコン系表面微細加工工程である。主な処理工程の詳細は以下の通りである。
(a) LPCVD法により超低抵抗シリコン基板(10)上に蒸着した600nm厚みの低応力窒化シリコンからなる絶縁層(11)を、フォトリソグラフィによりパターニングする。図3に示すように、まず、基板(12)に少なくとも一つの電気的コンタクト窓をフォトリソグラフィおよびエッチングプロセスにおいて形成することができる。
(b) LPCVD法を用いて、1.5μm厚の低応力適所(in situ) ドープドリシリコン(13)をシリコン基板上(on or above)に蒸着する。図3(b)に示すように、本発明は、第2のフォトリソグラフィカルパターニングプロセスにおいて、結合路(14)およびアンカーのパッド(15)の領域を正確に形成するため、誘導結合プラズマ(ICP)エッチング法を用いる。
(c) プラズマ助長化学蒸着(PECVD)により、2μm厚の低応力PSG捨て層(16)を基板上に形成する。重要寸法を正確に管理し、エッチングの異方性を向上させるため、本発明はICPドライエッチング法を採用し、第3のフォトリソグラフィプロセス(図3(c))によって、SDA微小モータの少なくとも一つの750nm深さのディンプル窓(17)とブッシング窓(18)をパターニングする。
(d) 2μm厚の低応力適所ドープドリシリコン(19)層を、LPCVD法を用いて基板上に蒸着し、フォトリソグラフィおよびドライエッチングプロセス(図3(d))を用いたパターニングによって、SDA微小モータの少なくとも一つのリブ(20)微細構造を形成する。
(e) 1.5μm厚の低応力PSG捨て層(21)を、PECVD法を用いて、基板上に蒸着する。図3(e)に示すように、5番目のフォトマスクを用いて、SDA微小モータのディンプル窓(22)、カバー窓(23)およびブッシング窓(24)の領域をパターニングする。
(f) 第6のフォトリソグラフィおよびドライエッチングプロセスにより、本発明は、さらに、図3(f)に示すように、SDA微小モータのアンカー窓(25)の領域を形成する。
(g) 3番目の2μm厚の低応力適所ドープドリシリコン(26)層を、LPCVD法を用いて、基板上に蒸着し、第7のフォトリソグラフィおよびドライエッチングプロセス(図3(g))を用いたパターニングにより、SDA微小モータの少なくとも一つのディンプル(27)、支持ビーム(28)、リング(29)、カバー(30)、ブッシング(31)、およびSDAロータ(32)を形成する。
(h) 200nm厚のクロムと250nm厚の金(33)からなる金属膜を、電子ビームエバポレータ蒸着システムを用いて、基板上に蒸着する。第8のフォトリソグラフィプロセスにおいて、本発明は、リフトオフ法を用いてクロムおよび金の金属層をパターニングし、SDA微小モータ(図3(h))の少なくとも一つのバイアスパッド(34)およびグラウンドパッド(35)を形成する。
(i) 第1および第2のPSG捨て層に、49%のHF酸性溶液を用いてアンダーカットエッチングを施し、基板からSDA微小モータのSDAロータ部を解放(release)し、一方、SDA微小モータのカバーと結合路部は基板に固定された状態に保持する。解放プロセスの後、適切な静電駆動を行うことにより、自由起立状態のSDAロータを窒化シリコン絶縁層上で、回転させることができる。
【0025】
図4は、本発明に係るSDA微小モータのレイアウトおよび断面構造設計、すなわち、わずか直径475μmの世界最小のSDA微小モータを示す。
【0026】
電圧分圧理論に基づき、SDA微小モータの駆動電圧は、基板の抵抗に比例して減少する。図5は、レイアウト及び製造プロセスは同一であるが、基板の抵抗を異ならせた2つのSDAアクチュエータ(単一SDA板)を比較した結果を示す。低抵抗シリコンウエハ上の単一板SDAは、わずか約4 - 7Vo-pという低い駆動電圧を実現した。一方、8枚板からなるSDA微小モータの駆動電圧は、12〜30Vo−pである。この値は、他の特許文献において示された結果よりもはるかに小さい値となっている。
【0027】
図6は、SDA微小モータ(40)と、SDA微小モータ(40)を用いて製造したSDA微小ファンに適用可能な新規な応用例を示し、SDA微小モータ(40)と8枚のポリイミド自己組織化微小羽根(41)により構成されている。ポリイミド自己組織化の基本的な動作機構は、構造層を持ち上げるための高温リフロープロセス中に発生するポリイミド弾性継手(42)の表面張力を利用している。
【0028】
(付属書の説明)
付属書1:MEMS技術によって製造されかつ自己組織化微小ブレードを用いて形成された微小ファン装置と微小スクラッチ駆動アクチュエータ(SDAs)

付属書2:マルチユーザMEMS処理(MUMPs)

付属書3:製造された微小モータチップ

付属書4:装着したSDA微小モータの断面および上面から写した電子顕微鏡写真(SEM)。新規なリブ構造およびフランジレイアウト設計の小型化475μm幅SDA微小モータ。

付属書5:SDA微小モータの曲げ剛性および寿命改善のためのフランジ構造設計のSEM電子顕微鏡写真

【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】L-edit(商標)ソフトウェアのシミュレーション結果による従来および新規なSDA微小モータの主構造を示す図である。
【図2】SDA微小モータの構造の堅牢性および寿命を効果的に向上させる斬新なフランジ構造設計を表す図である。
【図3】SDA微小モータの主要工程段階の断面図を示す図である。
【図4】本発明が提供するSDA微小モータのレイアウトおよび断面構造設計を示す図である。
【図5】2種類のシリコンウェハによるSDA板の長さ/幅比に対する単板SDAの駆動電圧を示す図である。
【図6】SDA微小モータにより作動する微小ファンの新規な設計を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
(01)通常シリコンウェハ
(02)ポリシリコン2
(03)ポリシリコン3
(04)SDA板
(05)支持ビーム
(06)リング
(07)リブ
(08)カバー
(09)フランジ
(10)低抵抗シリコン基板
(11)低応力Si
(12)基板のコンタクト窓
(13)低応力適所ドープドリシリコン1
(14)結合路
(15)アンカーのパッド
(16)低応力PSG1
(17)ディンプル窓
(18)ブッシング窓
(19)低応力適所ドープドリシリコン2
(20)リブ
(21)低応力PSG2
(22)ディンプル窓
(23)カバー窓
(24)ブッシング窓
(25)アンカー窓
(26)低応力適所ドープドリシリコン3
(27)ディンプル
(28)支持ビーム
(29)リング
(30)カバー
(31)ブッシング
(32)SDAロータ
(33)Cr/Au金属
(34)バイアスパッド
(35)グラウンドパッド
(40)SDA微小モータ
(41)微小羽根
(42)ポリイミドジョイント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程からなるSDA型微小モータを形成する方法。
a.引張り応力が小さく摩擦係数が低い窒化シリコン絶縁材料からなる第1の層を超低抵抗シリコン基板上に蒸着する工程と、
b.低応力窒化シリコン絶縁材料の層をフォトリソグラフィによりパターニングし、少なくとも一つの低抵抗シリコン基板の電気コンタクト窓を形成する工程と、
c.超低応力の適所ドープドポリシリコンからなる第2の層を、窒化シリコン蒸着基板上に蒸着する工程と、
d.第1の低応力適所ドープドポリシリコン構造層をフォトリソグラフによりパターニングし、SDA微小モータの少なくとも一つの結合路と一つのアンカーパッドを形成する工程と、
e.低応力勾配を有し、SDA微小モータの構造層の捨て層として機能する蛍光ケイ酸(PSG)からなる第3の層を基板上または基板の上方に蒸着する工程と、
f.第1の低応力PSG捨て層をフォトリソグラフィによりパターニングし、SDA微小モータの少なくとも一つのブッシング窓と一つのディンプル窓を形成する工程と、
g. 低応力勾配を有する、適所ドープドポリシリコンからなる第4の層を、第1のPSG捨て層上に蒸着する工程と、
h. 第2の低応力適所ドープドポリシリコン層をフォトリソグラフィによりパターニングし、SDA微小モータの少なくとも一つのリブ微小構造部を形成する工程と、
i. 低応力勾配を有し、SDA微小モータの構造層の第2の捨て層として機能する蛍光ケイ酸(PSG)からなる第5層を、リブおよび第1のPSG捨て層部上に蒸着する工程と、
j. 第2のPSG捨て層をフォトリソグラフィによりパターニングし、少なくとも一つのディンプル窓と一つのブッシング窓を形成する工程と、
k. 第1と第2のPSG捨て層をフォトリソグラフィによりパターニングし、SDA微小モータの少なくとも一つのカバー窓を形成する工程と、
l. 低応力勾配を有し、SDA微小モータの主構造層として機能する適所ドープドポリシリコンからなる第6層を、リブ部および第2のPSG捨て層部上に蒸着する工程と、
m. 第3の低応力ポリシリコン構造層をフォトリソグラフィによりパターニングし、微小モータのカバー部および少なくとも一つのSDAロータ部を形成する工程と、
n. クロムと金からなる金属層によって形成される第7層を、第3の低応力ポリシリコン層および第2のPSG捨て層部上に蒸着する工程と、
o. クロムと金からなる金属層をフォトリソグラフィによりパターニングし、SDA微小モータのバイアスおよびグラウンドパッドを形成する工程と、
p. SDA微小モータのカバーと結合路部は基板に固定した状態で、第1および第2のPSG捨て層にアンダーカットエッチングを行い、基板からSDA微小モータのSDAロータ部を解放(release)し、解放プロセスの後、窒化シリコン絶縁層上で、適切な静電駆動により自立した状態のSDAロータを回転可能とする工程。
【請求項2】
前記超低抵抗シリコン基板の抵抗は0.004Ω−cm未満とし、前記超低抵抗(<0.004Ω−cm)シリコンウエハをSDA微小モータの基板として採用したことにより、駆動電圧を交流振幅で30〜150Vo−pから12〜30Vo−pに効率的に減少可能としたことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
絶縁層の蒸着工程は、低圧化学蒸着(LPCVD)法による蒸着工程とポストアニールプロセスからなり、前記低応力シリコン窒化絶縁層の応力が250MPa以下に調整されていることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
低抵抗シリコン基板の電気的コンタクト窓は、金属層とシリコン基板の電気的コンタクトを図るため形成され、SDA微小モータの駆動に際し、前記超低抵抗シリコン基板が、接地電極および機械的支持部として機能することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
低応力適所ドープドポリシリコン層を蒸着する工程は、低圧化学蒸着(LPCVD)法において、蒸着工程と、適所(in situ) ドーピングとポストアニールプロセスを含み、本工程の各プロセスは、異なった圧力、ガス流および温度の下で行われ、前記低応力ポリシリコン薄構造膜の応力は200MPa未満に調整されていることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
低応力PSG捨て層の蒸着工程は、プラズマ強化化学蒸着(PECVD)法を用いた蒸着工程とポストアニールプロセスとを含み、前記低応力PSG捨て層の応力は300MPa未満に調整されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記捨て層の蒸着工程は、低応力蛍光ケイ酸(PSG)を蒸着する工程を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
SDA型微小モータの設計と製造に用いられ、SDA型微小モータの寿命(75時間超)と回転速度(30rpm以下)を向上可能な前記リブ構造設計およびフランジ形状設計方法。
【請求項9】
以下の工程からなる微小ファンの形成方法。
a. 最終の解放プロセスを除いた請求項1に記載のプロセスによるSDA微小モータの製造工程と、
b. 前記SDA微小モータの第3低応力ポリシリコン構造層上にポリイミド薄膜をスピンコーティングする工程と、
c. 前記ポリイミド薄膜上に、弾性ジョイントを、フォトリソグラフィによりパターニングしエッチングする工程と、
d. 第1および第2PSG捨て層をアンダーカットエッチングして基板からSDA微小ファンのSDAロータ部および微小羽根部を解放し、SDA微小モータのカバーおよび結合路は基板に固定した状態に保持する工程と、
e. リフロープロセスを実施して前記ポリイミド弾性ジョイントを収縮させ、予め形成した微小羽根部を回転させて持ち上げ、微小羽根部の持ち上げ角度は、ポリイミド層のリフロー温度を調整することにより調整可能とする工程と、を含み、
構造解放およびポリイミド硬化プロセス後に、自立するSDA微小ファンを適切な静電駆動によりシリコン基板上で回転可能とすることを特徴とする微小ファンの形成方法。
【請求項10】
持ち上げて微小羽根の形成することによって、ポリイミド自己組織化微細構造を形成し、ポリイミド自己組織化の基本的な操作機構として、構造層を持ち上げるための高温リフロープロセス中に発生したポリイミド弾性ジョイントの表面張力を利用することを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
エッチング工程は、アンダーカットエッチングプロセスであることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
エッチング工程は、選択的エッチングプロセスであり、ポリシリコン構造層よりも速くPSG捨て層をエッチング可能な希釈HF酸性溶液を用いることを特徴とする、請求項9に記載の方法。

【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−283843(P2008−283843A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−168243(P2007−168243)
【出願日】平成19年6月26日(2007.6.26)
【出願人】(505381910)サノンウェルス エレクトリック マシーン インダストリー カンパニー リミテッド (24)
【氏名又は名称原語表記】Sunonwealth Electric Machine Industry Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】12th Froor, 120 Chung Cheng 1st Road, Ling Ya Dt., Kaohsiung City, TAIWAN
【Fターム(参考)】