説明

作業車両

【課題】両持ち構造にて、前記フレームピンの中間に機体フレームを支持し、前記機体フレームとミッションケースとの連結強度を確保する。
【解決手段】エンジンを搭載するエンジンフレーム後部に左右一対の機体フレーム前部が連結され、前記左右一対の機体フレーム後部間にミッションケースが配置されるように構成してなる作業車両において、前記ミッションケースの側面部に前記機体フレーム後部を延設し、前記機体フレーム後部にこの外側からフレームピンを貫通し、前記フレームピンの先端部を前記ミッションケースの側面部に突入し、前記フレームピンの基端部にピン締結部材が配置され、前記ピン締結部材を前記ミッションケースの外側面に締結したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作業に使用されるトラクタまたは土木作業に使用されるホイルローダ等の作業車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一般に、前記したトラクタまたはホイルローダ等では、走行機体の前部にエンジンを設置し、走行機体の後部にミッションケースを設置し、前後の車輪によって走行機体を支える。この場合、走行機体の前部にエンジンを搭載し、走行機体の後部にミッションケースを配設するように構成している (例えば、特許文献1) 。
【0003】
また、走行機体が、エンジンフレームと左右機体フレームとから構成され、前記エンジンフレームと機体フレームの連結部にエンジンを搭載し、前記左右機体フレームの間にミッションケースを配設するように構成している (例えば、特許文献2) 。
【特許文献1】特開平11−334395号公報
【特許文献2】特開2003−252236号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし乍ら、前記ミッションケースが前記左右機体フレームに複数のボルトを介して締結されていたから、ボルトの締結に際して、前記ミッションケースと前記左右機体フレームの各締結面を高精度で加工する必要がある。エンジンフレームと左右機体フレームとから構成される前記走行機体の製造コストが高くなり、または前記機体フレームのデザイン形状が制限される等の問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、エンジンを搭載するエンジンフレーム後部に左右一対の機体フレーム前部が連結され、前記左右一対の機体フレーム後部間にミッションケースが配置されるように構成してなる作業車両において、前記ミッションケースの側面部に前記機体フレーム後部を延設し、前記機体フレーム後部にこの外側からフレームピンを貫通し、前記フレームピンの先端部を前記ミッションケースの側面部に突入し、前記フレームピンの基端部にピン締結部材が配置され、前記ピン締結部材を前記ミッションケースの外側面に締結したことを特徴とする。
【0006】
請求項2に係る発明は、前記ピン締結部材の外側から前記フレームピンに締め付けボルトを貫通し、前記締め付けボルトをミッションケースに螺着したことを特徴とする。
【0007】
請求項3に係る発明は、前記ミッションケース内部のオイルフイルタに取付けるための蓋が、前記ピン締結部材の少なくとも1つには、形成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項4に係る発明は、前記ミッションケースの側面と、これに対向する前記機体フレーム側面との間に、隙間を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明は、エンジンを搭載するエンジンフレーム後部に左右一対の機体フレーム前部が連結され、前記左右一対の機体フレーム後部間にミッションケースが配置されるように構成してなる作業車両において、前記ミッションケースの側面部に前記機体フレーム後部を延設し、前記機体フレーム後部にこの外側からフレームピンを貫通し、前記フレームピンの先端部を前記ミッションケースの側面部に突入し、前記フレームピンの基端部にピン締結部材が配置され、前記ピン締結部材を前記ミッションケースの外側面に締結した。そのため、前記ミッションケースとピン締結部材とに前記フレームピンの両端が支持される両持ち構造にて、前記フレームピンの中間に機体フレームを支持でき、前記機体フレームとミッションケースとの連結強度を確保できる。従来の機体フレームをミッションケースにボルトを介して締結する構造に比べ、例えばトラクタ機体またはミッションケースなどの製造コストを低減できる。
【0010】
請求項2に係る発明は、前記ピン締結部材の外側から前記フレームピンに締め付けボルトを貫通し、前記締め付けボルトをミッションケースに螺着した。そのため、前記フレームピンと締め付けボルトとからなる二重軸を介して、前記機体フレームとミッションケースとを連結でき、前記機体フレームとミッションケースとの連結剛性を向上できる。
【0011】
請求項3に係る発明は、前記ミッションケース内部のオイルフイルタに取付けるための蓋が、前記ピン締結部材の少なくとも1つには、形成されている。そのため、前記ミッションケース側面外側の前記ピン締結部材を脱着してオイルフイルタを取出すことができ、前記オイルフイルタのメンテナンス作業性を向上できる。
【0012】
請求項4に係る発明は、前記ミッションケースの側面と、これに対向する前記機体フレーム側面との間に、隙間を形成した。そのため、従来のように前記機体フレーム側面を前記ミッションケース側面に圧着するボルト締結構造に比べ、前記機体フレーム及び前記ミッションケースの加工(切削など)手間を削減できる。また、前記ミッションケースに伝わるエンジンなどの振動を低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、作業車としての農作業用トラクタに適用した場合の図面について説明する。図1はトラクタの側面図、図2は同後方斜視図、図3は側面説明図、図4はトラクタ機体の斜視図、図5は動力伝達のスケルトン図である。
【0014】
図1乃至4に示す如く、トラクタ1は、走行機体2を左右一対の前車輪3と左右一対の後車輪4とで支持し、前記走行機体2の前部に搭載したエンジン5にて後車輪4及び前車輪3を駆動することにより、前後進走行するように構成される。エンジン5はボンネット6にて覆われる。また、前記走行機体2の上面にはキャビン7が設置され、該キャビン7の内部には、操縦座席8と、かじ取りすることによって前車輪3を左右に動かすようにした操縦ハンドル9とが設置される。キャビン7の外側部には、オペレータが乗降するステップ10が設けられ、該ステップ10より内側で且つキャビン7底部より下側には、エンジン5に燃料を供給する燃料タンク11が設けられている。
【0015】
また、前記走行機体2は、前バンパ12及び前車軸ケース13を備えたエンジンフレーム14と、エンジンフレーム14の後部にボルト15にて着脱自在に固定する左右一対の機体フレーム16とにより構成される。機体フレーム16の後部には、前記エンジン5の回転を適宜変速して後車輪4及び前車輪3に伝達するためのミッションケース17が連結されている。この場合、後車輪4は、前記ミッションケース17に対して、当該ミッションケース17の外側面から外向きに突出するように装着された後車軸ケース18、及びこの後車軸ケース18の外側端に後方に延びるように装着されたギヤケース19を介して取付けられている。 前記ミッションケース17の後部における上面には、耕うん機等の作業機(図示せず)を昇降動するための油圧式の作業機用昇降機構20が着脱可能に取付けられている。前記耕うん機等の作業機は、ミッションケース17の後部にロワーリンク21及びトップリンク22を介して連結される。さらに、ミッションケース17の後側面に、前記耕うん機等の作業機に対するPTO軸23が後向きに突出するように設けられている。
【0016】
次に、図10乃至図23を参照して、機体フレーム16とミッションケース17とを連結する走行機体2の後部構造を説明する。左右一対の機体フレーム16は、鉄合金またはアルミニューム合金などを材料として鋳造加工により製作される。各機体フレーム16後端部には、上下連結ボス部200が一体形成される。図18、図19に示されるように、連結ボス部200は筒形フレームピン201に被嵌される。フレームピン201の一端側には、ピン締結部材202,203が被嵌される(図15参照)。後述するように、進行方向に向かって右側の機体フレーム16後部下側に配置するピン締結部材203には、フイルタ蓋221が一体形成される。フレームピン201と、ピン締結部材202,203とは、溶接にて固定されている。フレームピン201の内孔に貫通する締め付けボルト204と、ピン締結部材202,203の取付け孔に貫通する固定ボルト205とを介して、機体フレームは、ミッションケース17の側面に取付けられる。
【0017】
図19に示されるように、ミッションケース17側面には、フレームピン201を圧入するピン孔206が形成される。ピン孔206の奥側には、締め付けボルト204を螺着するための締め付けネジ孔207が形成される。ピン孔206に近いミッションケース17外側面には、台座208が一体形成される。台座208には、固定ボルト205を螺着するための固定ネジ孔209が形成される。連結ボス部200の厚み幅寸法L1に比べ、ピン孔206の開口面210と固定ネジ孔209の開口面211との離間寸法L2が長くなるように形成する。なお、台座208の突出長さである離間寸法L2は、厚み幅寸法L1よりも、例えば、約1乃至3ミリメートル長くなるように形成される。
【0018】
連結ボス部200には、フレームピン201が貫通される軸孔199が形成される。軸孔199の内径と、フレームピン201の外径と、ピン孔206の内径とを略同一寸法に形成する。フレームピン201の端面と、ピン締結部材202,203の外側面が略面一になるように、フレームピン201端部がピン締結部材202,203に溶接固定される(図19参照)。
【0019】
なお、フレームピン201端部とピン締結部材202,203とを溶接固定する時、ピン締結部材202,203の外側面に対してフレームピン201の端面を若干突出させ、締め付けボルト204が締め付けネジ孔207に螺着されたとき、締め付けボルト204の頭部がフレームピン201端部に圧着するように構成してもよい。フレームピン201端部とピン締結部材202,203との固定は、溶接以外の固定方法、例えばフレームピン201端部がピン締結部材202,203の開孔に圧入される固定方法でもよい。
【0020】
図18に示されるように、連結ボス部200の外面から軸孔199にフレームピン201を貫通する。次いで、フレームピン201をピン孔206に圧入する。各ボルト204,205を各ネジ孔207,209に螺着する。このようにすると、機体フレーム16側面と、ミッションケース17の取付け側面との間に、隙間212が形成される(図18参照)。そして、ミッションケース17とピン締結部材202,203とにフレームピン201が両持ち構造にて支持される。隙間212の形成にて、機体フレーム16からミッションケース17に伝わる機械振動が低減したり、ミッションケース17の機体フレーム16取付け面の加工(切削など)手間を省ける。
【0021】
次に、図11、図12、図15、図17に示されるように、ミッションケース17には、作動油をろ過するオイルフイルタ220が内設される。オイルフイルタ220は、ミッションケース17内の底部に近い前側に配置される。オイルフイルタ220の一側部には、ピン締結部材203が近接して配置される。ピン締結部材203には、フイルタ蓋221が一体的に形成される。ピン締結部材203がミッションケース17に取り付けられ、オイルフイルタ220の一側部にフイルタ蓋221が着脱自在に固定される。
【0022】
ピン締結部材203とフイルタ蓋221とに、これらを貫通する油出管222が一体的に形成される。ピン締結部材203とフイルタ蓋221の内外側面が油出管222を介して連通される。作業機用油圧ポンプ94及び走行用油圧ポンプ95の給油管223が、油出管222に油路管224を介して連通される。ミッションケース17内部の作動油が、作業機用油圧ポンプ94及び走行用油圧ポンプ95に、オイルフイルタ220を介して供給されるように構成する(図12参照)。
【0023】
次に、図10乃至図13、図20、図23を参照して、エンジンフレーム14の構造を説明する。左右エンジンフレーム14の前後幅中間部の上面側には、左右一対の前部防振部材230が配置される。エンジン5の前部両側が左右前部防振部材230を介してエンジンフレーム14に連結される。左右エンジンフレーム14の前後幅中間部の下面側には、底板フレーム231が配置される。底板フレーム231の下面側には、前車軸ケース13と、パワーステアリング用油圧シリンダ93とが設置される。前車軸ケース13の左右両側には、左右前車輪3が操舵自在に配置されるように構成する。
【0024】
次に、図10、図13乃至図16、図21、図24を参照して、エンジンフレーム14に連結する機体フレーム16の前部構造を説明する。左右機体フレーム16の前部には、正面視門形の上連結部材250と、平板形の下連結部材251とが配設される。上連結部材250の門形両端部は、機体フレーム16の上面にボルト252を介して締結される。下連結部材251の両端部は、機体フレーム16の下面にボルト253を介して締結される。左右機体フレーム16の間には、フライホイル25が配置される。フライホイル25の上方には、上連結部材250が配置される。したがって、フライホイル25の下方には、下連結部材251が配置される。左右機体フレーム16と、上下連結部材250,251とにより、フライホイル25の外周(左右側部及び上下側部)が囲まれる。
【0025】
次に、機体フレーム16と、ミッションケース17との連結作業を説明する。軸孔199にフレームピン201を貫通し、連結ボス部200をフレームピン201に被嵌する。フレームピン201先端側がピン孔206に圧入され、ピン締結部材202,203の外側から締め付けボルト204が締め付けネジ孔207に螺着されたとき、フレームピン201がピン孔206に圧入固定される。各ボルト204,205が各ネジ孔207,209に螺着されたとき、機体フレーム16側面と、ミッションケース17の取付け側面との間に、隙間212が形成される。ミッションケース17とピン締結部材202,203とにフレームピン201が両持ち構造にて支持され、機体フレーム16後部とミッションケース17側面とが連結される(図18参照)。
【0026】
左右機体フレーム後部16とミッションケース17側面とを連結した後、エンジンフレーム14後部の外側面に機体フレーム16前部がボルト15を介して締結される。左右機体フレーム16前部の上面には、上連結部材250の門形両端部がボルト252を介して締結される。左右機体フレーム16前部の下面には、下連結部材251の両端部がボルト253を介して締結される。左右機体フレーム16前部の上面と下面が上下連結部材250,251を介して連結され、走行機体2が組み立てられる(図15参照)。
【0027】
次に、例えば、ミッションケース17前面側に設置した油圧ポンプ94,95のメンテナンス作業など、ミッションケース17前面側の構成部品の脱着作業などを行うとき、各ボルト204,205の取出し操作により、ピン締結部材202,203が機体フレーム16及びミッションケース17の各側面から取外され、機体フレーム16後部とミッションケース17側面とが分離される。他方、各ボルト15,252,253の取出し操作により、エンジンフレーム14及び上下連結部材250,251に対して機体フレーム16前部が分離される。左右機体フレーム16のいずれか一方または両方が取外され、油圧ポンプ94,95のメンテナンス作業などが行われる。
【0028】
次に、ミッションケース17に内設したオイルフイルタ220の交換作業などを行うとき、フイルタ蓋221が形成されたピン締結部材203が、ボルト205螺出操作により、右側の機体フレーム16及びミッションケース17の右側面から取外される。ミッションケース17からフイルタ蓋221が離脱されたとき、ミッションケース17内部から汚れたオイルフイルタ220を取り出す。未使用のオイルフイルタ220をミッションケース17内部に設置した後、右側の機体フレーム16及びミッションケース17の右側面に、ボルト205を介してピン締結部材203が再び締結され、ミッションケース17内部のオイルフイルタ220を交換する作業が終了する。
【0029】
上記の記載及び図18などから明らかなように、エンジン5を搭載するエンジンフレーム14後部に左右一対の機体フレーム16前部が連結され、前記左右一対の機体フレーム16後部間に前記ミッションケース17が配置されるように構成してなる作業車両において、前記ミッションケース17の側面部に前記機体フレーム16後部を延設し、前記機体フレーム16後部にこの外側からフレームピン201を貫通し、前記フレームピン201の先端部を前記ミッションケース17の側面部に突入した。そのため、従来のボルト締結に比べ、前記機体フレーム16の連結に必要なミッションケース17側部の面積などが縮小でき、前記ミッションケース17側部を例えば変速操作機構の設置スペースなどに活用できる。前記機体フレーム16とミッションケース17とが前記フレームピン201を介して連結されるから、例えば鋳造加工のように、材料費が安くて、かつデザイン形状の制限が少ない加工にて、前記機体フレーム16を低コストで製作できる。例えばトラクタ1などの走行機体を簡略化または軽量化でき、製造コストを低減できる。
【0030】
上記の記載及び図25などから明らかなように、前記エンジン5の後部にフライホイル25が設置され、前記左右機体フレーム16の間に前記フライホイル25が配置された。そのため、前記フライホイル25の左右側部を前記左右機体フレーム16にて閉塞し、前記フライホイル25の保護部材として前記左右機体フレーム16を活用できる。例えばトラクタ1などの走行機体を簡略化または軽量化でき、製造コストを低減できる。
【0031】
上記の記載及び図20などから明らかなように、前記左右機体フレーム16のいずれか一方が、前記エンジンフレーム14及びミッションケース17に連結された状態下で、前記エンジンフレーム14及びミッションケース17から、他方の前記機体フレーム16が取り外し可能に構成された。そのため、前記エンジンフレーム14と前記左右機体フレーム16とは、それぞれが独立した3つの部品として各別に加工及び組み立て等の作業を行うことができる。例えば前記エンジンフレーム14と前記左右機体フレーム16とが一体連結された従来に比べ、前記走行機体2の取り扱い性を向上できる。
【0032】
上記の記載及び図17、図18などから明らかなように、エンジン5を搭載するエンジンフレーム14後部に左右一対の機体フレーム16前部が連結され、前記左右一対の機体フレーム16後部間にミッションケース17が配置されるように構成してなる作業車両において、前記ミッションケース17の側面部に前記機体フレーム16後部を延設し、前記機体フレーム16後部にこの外側からフレームピン201を貫通し、前記フレームピン201の先端部を前記ミッションケース17の側面部に突入し、前記フレームピン201の基端部にピン締結部材202,203が配置され、前記ピン締結部材202,203を前記ミッションケース17の外側面に締結した。そのため、前記ミッションケース17とピン締結部材202,203とに前記フレームピン201の両端が支持される両持ち構造にて、前記フレームピン201の中間に機体フレーム16を支持でき、前記機体フレーム16とミッションケース17との連結強度を確保できる。従来の機体フレーム16をミッションケース17にボルトを介して締結する構造に比べ、例えばトラクタ1機体またはミッションケース17などの製造コストを低減できる。
【0033】
上記の記載及び図18などから明らかなように、前記ピン締結部材202,203の外側から前記フレームピン201に締め付けボルト204を貫通し、前記締め付けボルト204をミッションケース17に螺着した。そのため、前記フレームピン201と締め付けボルト204とからなる二重軸を介して、前記機体フレーム16とミッションケース17とを連結でき、前記機体フレーム16とミッションケース17との連結剛性を向上できる。
【0034】
上記の記載及び図12、図15などから明らかなように、前記ミッションケース17内部のオイルフイルタ220に取付けるためのフイルタ蓋221が、前記ピン締結部材203の少なくとも1つには、形成されている。そのため、前記ミッションケース17側面外側の前記ピン締結部材203を脱着してオイルフイルタ220を取出すことができ、前記オイルフイルタ220のメンテナンス作業性を向上できる。
【0035】
上記の記載及び図18などから明らかなように、前記ミッションケース17の側面と、これに対向する前記機体フレーム16側面との間に、隙間212を形成した。そのため、従来のように前記機体フレーム16側面を前記ミッションケース17側面に圧着するボルト締結構造に比べ、前記機体フレーム16及び前記ミッションケース17の加工(切削など)手間を削減できる。また、前記ミッションケース17に伝わるエンジン5などの振動を低減できる。
【0036】
次に、図22乃至図25に示されるように、上連結部材250上面の左右幅中間には、後部防振部材254が設置される。後部防振部材254は、上連結部材250上面にボルト256を介して連結する左右防振ゴム255と、各防振ゴム255を連結する受圧フレーム257とからなる。受圧フレーム257は、エンジン5背面の上部にボルト258を介して連結される。エンジン5背面の上部と、上連結部材250の上面とが、後部防振部材254を介して連結される。
【0037】
図23、図25に示されるように、左右の前部防振部材230と、後部防振部材254とは、平面視三角形(平面視でエンジン5の重心位置が略中央に位置する三角形)の各頂角部に配置される(図23参照)。前部防振部材230と、後部防振部材254とは、エンジン5の側面視四角形の対角線と略平行な直線(側面視でエンジン5の重心位置を通過する直線)上に配置される(図25参照)。 図21、図22、図23、図25に示されるように、上連結部材250上面の左右両端部には、左右ボンネット支柱260が立設される。左右ボンネット支柱260は、後部防振部材254を挟むようにこの左右両側に配置される。ボンネット支柱260の上端部には、ボンネット取付け軸261を介してボンネット支持フレーム262が連結される。ボンネット支持フレーム262にボンネット6が溶接固定される。ボンネット取付け軸261を中心にボンネット6が回転して開閉動作するように構成する。
【0038】
図24乃至図26を参照して、エンジン5とミッションケース17間の伝動構造を説明する。フライホイル25は、この背面側に凹部270を形成する。凹部270には、主動軸26が内設される。フライホイル25の背面側には、円板形の軸受支持部材271がボルト272を介して締結される。軸受支持部材271は、フライホイル25の背面に略面一に配置される。凹部270は、軸受支持部材271にて略密閉状に閉塞される。主動軸26の前端部がフライホイル25の前面側に玉軸受273を介して軸支される。主動軸26の中間には、エンジン出力軸24の回転などにより発生する振動を減衰するためのバネ式ダンパ274が被嵌される。フライホイル25と主動軸26とがダンパ274を介して連結される。主動軸26の後端部は、軸受支持部材271に玉軸受275を介して軸支される。主動軸26の後端が、軸受支持部材271の後側に突出される。主動軸26後端の突出部には、動力伝達軸28が自在継ぎ手276を介して連結される。
【0039】
図12、図21、図22、図24、図25を参照して、前車軸ケース13とミッションケース17間の伝動構造を説明する。前車輪駆動軸85は、前車輪出力軸73に軸継ぎ手290を介して連結する後側駆動軸291と、前車輪入力軸84に軸継ぎ手292を介して連結する前側駆動軸293とを備える。後側駆動軸291の前端と、前側駆動軸293の後端とが、軸継ぎ手294を介して連結される。前側駆動軸293の後端部は、中間軸受け体295に玉軸受296を介して軸支される。中間軸受け体295には、取付け板296が溶接固定される。取付け板は、下連結部材251にボルト297を介して締結される。後側駆動軸291及び前側駆動軸293は、後側及び前側軸カバー298,299にて覆われる。
【0040】
さらに、図5乃至図7は、前記ミッションケース17を示す。ミッションケース17は、この内部を仕切り壁31にて前後に仕切られる。ミッションケース17の前側には、前側壁部材32がボルトにて着脱自在に固定される。ミッションケース17の後側には、後側壁部材33がボルトにて着脱自在に固定される。ミッションケース17は箱形に構成され、ミッションケース17の内部には、前室34と後室35とが形成される。前室34と後室35は、これらの内部の作動油(潤滑油)が相互に移動するように連通されている。
【0041】
図5に示されるように、前側壁部材32には、後述する前車輪駆動ケース69が備えられる。前室34には、後述する走行副変速ギヤ機構30と、PTO変速ギヤ機構96とが配置される。後室35には、後述する走行主変速機構である油圧無段変速機29と、差動ギヤ機構58とが配置される。
【0042】
前記エンジン5の後側面には、エンジン出力軸24が後ろ向きに突出するように設けられる。エンジン出力軸24には、フライホイル25が直結するように取付けられている。フライホイル25から後ろ向きに突出する主動軸26と、ミッションケース17の前面から前向きに突出する主変速入力軸27との間を、両端に自在軸継ぎ手を備えた伸縮式の動力伝達軸28を介して連結する。前記エンジン5の回転を、ミッションケース17における主変速入力軸27に伝達し、次いで、油圧無段変速機29と、走行副変速ギヤ機構30にて適宜変速して、差動ギヤ機構58を介して後車輪4にこの駆動力を伝達するように構成して成る。
【0043】
また、走行副変速ギヤ機構30にて適宜変速したエンジン5の回転を、前車輪駆動ケース69と前車軸ケース13の差動ギヤ機構86とを介して前車輪3に伝達するように構成して成る。
【0044】
次に、図8及び図9は、主変速入力軸27に主変速出力軸36が同心状に配置されたインライン式油圧無段変速機29を示す。後室35の内部には、主変速入力軸27を介して油圧無段変速機29が設置される。主変速入力軸27の後端側は、後側壁部材33に延設される。主変速入力軸27の入力側(前端側)に対して反対側になる主変速入力軸27の後端側は、後側壁部材33に玉軸受504にて回転自在に軸支される。
【0045】
油圧無段変速機29の前側、即ち主変速入力軸27の入力側には、円筒形の主変速出力軸36が被嵌される。油圧無段変速機29から主変速出力を取出すための主変速出力ギヤ37が主変速出力軸36に設けられる。主変速出力軸36は、この中間が仕切り壁31に貫通され、前端と後端とが前室34と後室35とにそれぞれ突出する。主変速出力軸36の中間は、二組の玉軸受502にて仕切り壁31に回転自在に軸支される。主変速出力軸36の前端部には、主変速出力ギヤ37が設けられる。主変速入力軸27の入力側(前端側)が、主変速出力軸36前端より前方に突出するように、主変速入力軸27の入力側がころ軸受503を介して主変速出力軸36の軸孔に回転自在に軸支される(図9参照)。
【0046】
油圧無段変速機29は、以下に述べるように、可変容量形の変速用油圧ポンプ部500と、この油圧ポンプ部500から吐出される高圧の作動油にて作動する定容量形の変速用油圧モータ部501とを備える。
【0047】
前記仕切り壁31と後側壁部材33との略中間の主変速入力軸27には、油圧ポンプ部500及び油圧モータ部501のためのシリンダブロック505が被嵌される。主変速入力軸27とシリンダブロック505とはスプライン525にて連結される。主変速入力軸27の入力側と反対側でシリンダブロック505を挟んでこの一側部に油圧ポンプ部500が配置される。主変速入力軸27の入力側であるシリンダブロック505他側部に油圧モータ部501が配置される。
【0048】
前記油圧ポンプ部500には、シリンダブロック505の側面に対向するようにミッションケース17内側面に固定する第1ホルダ510と、主変速入力軸27の軸線に対して傾斜角を変更可能に第1ホルダ510に配置するポンプ斜板509と、該ポンプ斜板509に摺動自在に設けるシュー508と、該シュー508に球体自在継手を介して連結するポンププランジャ506と、ポンププランジャ506をシリンダブロック505に出入自在に配置する第1プランジャ孔507とが備えられる。ポンププランジャ506の一端側は、シリンダブロック505の側面からポンプ斜板509方向(図8右側)に突出する。前記油圧ポンプ部500は、シリンダブロック505と、ポンププランジャ506と、シュー508と、ポンプ斜板509と、第1ホルダ510とにより構成される。
【0049】
主変速入力軸27と第1ホルダ510との間には、主変速入力軸27に被嵌するスリーブ511と、ローラ軸受512と、ラジアル及びスラスト荷重用ころ軸受513とを介在させる。主変速入力軸27の後方にころ軸受513が抜け出るのを防ぐナット514を備える。
【0050】
前記シリンダブロック505には、ポンププランジャ506と同数の第1スプール弁536が設けられる。また、第1ホルダ510には、第1ラジアル軸受537が配置される。第1ラジアル軸受537は、主変速入力軸27の軸線に対して一定の傾斜角で傾斜させて第1ホルダ510に設けられる。図8において、ポンプ斜板509に対して約90度回転した位置(図8の図面の手前側)がシリンダブロック505の側面から離れるように、約180度反対側(図8の図面の奥側)がシリンダブロック505の側面に近くなるように、第1ラジアル軸受537が傾斜されて支持されるように構成している。
【0051】
他方、前記油圧モータ部501には、シリンダブロック505の側面に対向させて配置する第2ホルダ519と、主変速入力軸27の軸線に対して傾斜角を一定に保つように第2ホルダ519に固定するモータ斜板518と、モータ斜板518に摺動自在に設けるシュー517と、該シュー517に球体自在継手を介して連結するモータプランジャ515と、モータプランジャ515をシリンダブロック505に出入自在に配置する第2プランジャ孔516とが備えられる。モータプランジャ515の一端側は、シリンダブロック505の側面からモータ斜板518方向(図8左側)に突出する。前記油圧モータ部501は、シリンダブロック505と、モータプランジャ515と、シュー517と、モータ斜板518と、第2ホルダ519とにより構成される。
【0052】
第2ホルダ519には、継ぎ手部材526がボルト527にて固定される。前記出力軸36と継ぎ手部材525とがスプライン528にて連結される。
【0053】
主変速入力軸27と第2ホルダ519との間には、ラジアル荷重用のローラ軸受520,521と、主変速入力軸27に被嵌するスリーブ522と、ラジアル及びスラスト荷重用のころ軸受523とが介在する。主変速入力軸27からころ軸受523が抜け出るのを防ぐナット524を備える。
【0054】
前記シリンダブロック505には、モータプランジャ515と同数の第2スプール弁540が設けられる。また、第2ホルダ519には、第2ラジアル軸受541が配置される。第2ラジアル軸受541は、主変速入力軸27の軸線に対して一定の傾斜角で傾斜させて第2ホルダ519に設けられる。図8において、モータ斜板518に対して約90度回転した位置(図8手前側)がシリンダブロック505の側面に近くなるように、約180度反対側(図8奥側)がシリンダブロック505の側面から離れるように、第2ラジアル軸受541が傾斜されて支持されるように構成している。
【0055】
ポンププランジャ506と、該ポンププランジャ506と同数のモータプランジャ515とは、シリンダブロック505の回転中心の同一円周上に交互に配列される。
【0056】
さらに、主変速入力軸27が挿入されるシリンダブロック505の軸孔には、輪溝形の第1油室530と、輪溝形の第2油室531とがそれぞれ形成される。シリンダブロック505には、この回転中心の同一円周上に略等間隔に配列する第1弁孔532と第2弁孔533とが形成される。第1弁孔532及び第2弁孔533は、第1油室530及び第2油室531とそれぞれ連通している。第1プランジャ孔507は第1油路534を介して第1弁孔532と連通され、第2プランジャ孔516は第2油室531を介して第2弁孔533と連通されている。
【0057】
第1弁孔532には、第1スプール弁536が挿入される。第1スプール弁536は、シリンダブロック505の回転中心の同一円周上に略等間隔に配列される。第1弁孔532から背圧バネ力の弾圧にて第1スプール弁536の先端が第1ホルダ510の方向に突出し、第1スプール弁536の先端が第1ラジアル軸受537の外輪538側面に当接される。そして、シリンダブロック505の1回転で第1スプール弁536が1往復し、第1プランジャ孔507が、第1弁孔532と第1油路534とを介して第1油室530又は第2油室531に交互に連通されるように構成する。
【0058】
また、第2弁孔533には、第2スプール弁540が挿入される。第2スプール弁540は、シリンダブロック505の回転中心の同一円周上に略等間隔に配列される。第2弁孔533から背圧バネ力の弾圧にて第2スプール弁540の先端が第2ホルダ519の方向に突出し、第2スプール弁540の先端が第2ラジアル軸受541の外輪542側面に当接される。そして、シリンダブロック505の1回転で第2スプール弁540が1往復し、第2プランジャ孔516が、第2弁孔533と第2油路535とを介し、第1油室530又は第2油室531に交互に連通されるように構成する。
【0059】
さらに、前記主変速入力軸27の中心部には、この軸線方向に作動油供給油路543が形成される。該供給油路543は、主変速入力軸27の後端面に開口され、上記した走行用油圧ポンプ95の吐出口に連通される。また、作動油供給油路543の作動油を第1油室530に補給する第1チャージ弁544と、作動油供給油路543の作動油を第2油室531に補給する第2チャージ弁545とが備えられる。
【0060】
そして、第1及び第2プランジャ孔507,516と、第1及び第2油室530,531との間に形成される油圧閉回路に対し、第1及び第2チャージ弁544,545を介し、作動油供給油路543から作動油が補給されるように構成する。なお、油圧ポンプ部500及びモータ部501のそれぞれの回転部分にも、それぞれ逆止弁を介して、作動油供給油路543から作動油が潤滑油として供給されるように構成している。
【0061】
さらに、前記ポンプ斜板509は、傾斜角調節支点555(図9参照)を介して第1ホルダ510の小径部の外周に配置される。ポンプ斜板509はその傾斜角が主変速入力軸27の軸線に対して調節自在となるように設けられている。主変速入力軸27の軸線に対してポンプ斜板509の傾斜角を変更する変速用アクチュエータである主変速操作用の主変速油圧シリンダ556を備える(図9参照)。主変速油圧シリンダ556は、後側壁部材33に固定される。主変速油圧シリンダ556のピストンロッド557先端部に主変速アーム558が連結される(図6参照)。ピストンロッド557が主変速アーム558を介して傾斜角調節支点555に連結されて、ピストンロッド557が進出または退入動作したときに、ポンプ斜板509の傾斜角が変更されて、無段変速機29の主変速動作が行われるように構成する。なお、主変速入力軸27に対して、ポンプ斜板509が回転しないように、ミッションケース17の非回転部に、図示しない連結手段を介して第1ホルダ510が連結される。
【0062】
前記したインライン式油圧無段変速機29の主変速動作を、以下に説明する。主変速レバーなどにて油圧シリンダ556が制御され、主変速入力軸27の軸線に対してポンプ斜板509の傾斜角が変更される。
【0063】
先ず、主変速入力軸27の軸線に対してポンプ斜板509が略直交するように、ポンプ斜板509の傾斜角を略零に保つとき、シリンダブロック505が回転しても、第1プランジャ孔507にポンププランジャ506が進退動しない略一定姿勢で支持され、ポンププランジャ506の吐出行程で第1プランジャ孔507の作動油が第1油路534から第1弁孔532の方向に吐出されないから、第1プランジャ孔507から第2プランジャ孔516に作動油が供給されず、モータプランジャ515が進出しない。また、ポンププランジャ506の吸入行程でも第1プランジャ孔507に作動油が吸入されないから、第1プランジャ孔507に第2プランジャ孔516から作動油が排出されず、モータプランジャ515が退入しない。
【0064】
即ち、ポンプ斜板509の傾斜角が略零のとき、変速ポンプ部500にて変速モータ501部が駆動されない。そのため、モータプランジャ515を介してシリンダブロック505にモータ斜板518が固定された状態となり、シリンダブロック505とモータ斜板518とが同一方向に略同一回転数で回転し、主変速入力軸27と略同一回転数で主変速出力軸36が回転され、主変速入力軸27の回転速度が変更されることなく主変速出力ギヤ37に伝えられる。
【0065】
次に、主変速入力軸27の軸線に対してポンプ斜板509を傾斜させたときには、主変速入力軸27と一体回転するシリンダブロック505の回転により、第1ラジアル軸受537の外輪538にて第1スプール弁536が往復摺動し、シリンダブロック505の半回転毎に第1プランジャ孔507に第1油室530または第2油室531が交互に連通される。また、第2ラジアル軸受541の外輪542にて第2スプール弁540が往復摺動し、シリンダブロック505の半回転毎に第2プランジャ孔5016に第1油室530または第2油室531が交互に連通される。そして、第1プランジャ孔507と第2プランジャ孔516の間に閉油圧回路が形成され、ポンププランジャ506の吐出行程で第1プランジャ孔507から第2プランジャ孔516に作動油が圧送される一方、ポンププランジャ506の吸入行程で第1プランジャ孔507に第2プランジャ孔516から作動油が戻され、アキシャルピストンポンプ及びモータの動作が行われる。
【0066】
そして、主変速入力軸27の軸線に対してポンプ斜板509を一方向(正の傾斜角)側に傾斜させたときには、シリンダブロック505と同一方向にモータ斜板518が回転され、変速モータ501を増速(正転)動作させ、主変速入力軸27より高い回転数で主変速出力軸36が回転され、主変速入力軸27の回転速度が増速されて主変速出力ギヤ37に伝えられる。即ち、主変速入力軸27の回転数に、変速ポンプ500にて駆動される変速モータ501の回転数が加算されて、主変速出力ギヤ37に伝えられる。そのため、主変速入力軸27の回転数よりも高い回転数の範囲で、ポンプ斜板509の傾斜(正の傾斜角)に比例して、主変速出力ギヤ37からの変速出力(走行速度)が変更され、ポンプ斜板509の最大傾斜(正の傾斜角)で最大走行速度になる。
【0067】
さらに、主変速入力軸27の軸線に対してポンプ斜板509を他方向(負の傾斜角)側に傾斜させたときには、シリンダブロック505と逆の方向にモータ斜板518が回転され、変速モータ501を減速(逆転)動作させ、主変速入力軸27より低い回転数で主変速出力軸36が回転され、主変速入力軸27の回転速度が減速されて主変速出力ギヤ37に伝えられる。
【0068】
即ち、主変速入力軸27の回転数に、変速ポンプ500にて駆動される変速モータ501の回転数が減算されて、主変速出力ギヤ37に伝えられる。そのため、主変速入力軸27の回転数よりも低い回転数の範囲で、ポンプ斜板509の傾斜(負の傾斜角)に比例して、主変速出力ギヤ37からの変速出力(走行速度)が変更され、ポンプ斜板509の最大傾斜(負の傾斜角)で最低走行速度になる。
【0069】
次に、図5、図6に示されるように、前記ミッションケース17の前室34には、前進と後進の切換を行う前進ギヤ41及び後進ギヤ43と、低速と高速との切換を行う走行副変速ギヤ機構30とが配置される。
【0070】
前進ギヤ41及び後進ギヤ43を介して行う前進と後進との切換を説明する。図6に示されるように、主変速出力ギヤ37が配置される前室34の内部には、走行カウンタ軸38と逆転軸39とが配設される。前記走行カウンタ軸38には、前進用の湿式多板型油圧クラッチ40にて連結される前進ギヤ41と、後進用の湿式多板型油圧クラッチ42にて連結される後進ギヤ43とが被嵌される。主変速出力ギヤ37に前進ギヤ41が噛合される。主変速出力ギヤ37には、逆転軸39に設けられた逆転ギヤ44が噛合される。前記後進ギヤ43には、逆転軸39に設けられた逆転出力ギヤ45が噛合される。
【0071】
そして、主変速レバーまたは前進スイッチ(図示省略)の前進操作により、前進油圧電磁弁46にてクラッチシリンダ47が作動して前進用の油圧クラッチ40が継続され、主変速出力ギヤ37と走行カウンタ軸38が前進ギヤ41にて連結されるように構成する(図5、図6参照)。
【0072】
一方、主変速レバーまたは後進スイッチ(図示省略)の後進操作により、後進油圧電磁弁48にてクラッチシリンダ49が作動して後進用の油圧クラッチ42が継続され、主変速出力ギヤ37と走行カウンタ軸38が後進ギヤ43にて連結されるように構成する(図5、図6参照)。
【0073】
なお、主変速レバー(図示省略)が中立位置に支持されているとき(前進及び後進スイッチの両方がオフのとき)、前進用及び後進用の湿式多板型の各油圧クラッチ40,42の両方がともに切断され、前車輪3及び後車輪4に対して出力される主変速出力ギヤ37からの走行駆動力が略零(主クラッチ切の状態)になるように構成している。
【0074】
次に、走行副変速ギヤ機構30を介して行う低速と高速の切換を説明する。図5、図6に示されるように、前記ミッションケース17の前室34には、走行副変速ギヤ機構30と、副変速軸50が配置される。走行カウンタ軸38と副変速軸50の間には、副変速用の低速ギヤ51,52と、副変速用の高速ギヤ53,54とが設けられる。また、副変速油圧シリンダ55にて継続または切断される低速クラッチ56及び高速クラッチ57が備えられる。そして、副変速レバー(図示省略)または低速及び高速用副変速スイッチ(図示省略)の操作、またはエンジン5の回転数検出などにより、副変速油圧シリンダ55にて低速クラッチ56または高速クラッチ57が継続されて、副変速軸50に低速ギヤ52または高速ギヤ54が連結され、副変速軸50から前車輪3及び後車輪4に対して走行駆動力が出力されるように構成する。
【0075】
前記副変速軸50は、この後端部が仕切り壁31を貫通してミッションケース17の後室35内部に延設される(図5参照)。副変速軸50の後端部にはピニオン59が設けられる。また、後室35の内部には、左右の後車輪4に走行駆動力を伝える差動ギヤ機構58が配置される。差動ギヤ機構58には、副変速軸50後端のピニオン59に噛合させるリングギヤ60と、該リングギヤ60に設ける差動ギヤケース61と、左右の差動出力軸62とが備えられる。差動出力軸62がファイナルギヤ63等にて後車軸64に連結され、後車軸64に設ける後車輪4を駆動するように構成している。
【0076】
また、左右差動出力軸62には左右ブレーキ65がそれぞれ設置され、ブレーキペダル66の操作にて左右ブレーキ65が制動動作されるように構成している。一方、ハンドル9の操舵角検出などにより、オートブレーキ電磁弁67にてブレーキシリンダ68が作動して、ブレーキ65が自動的に制動動作され、Uターンなどの旋回走行が行われるように構成している。
【0077】
次に、図5,図6に示されるように、前後車輪3,4の二駆と四駆との切換を説明する。ミッションケース17の前側壁部材32には、前車輪駆動ケース69が設けられる。前車輪駆動ケース69には、前車輪入力軸72と前車輪出力軸73とが備えられている。前車輪入力軸72は、ギヤ70,71にて副変速軸50に連結される。また、前車輪出力軸73には、四駆用の油圧クラッチ74にて連結される四駆ギヤ75と、倍速用の油圧クラッチ76にて連結される倍速ギヤ77とが被嵌される。四駆ギヤ75と倍速ギヤ77は、各ギヤ78,79にて前車輪入力軸72にそれぞれ連結される。
【0078】
そして、二駆と四駆の切換レバー(図示省略)の四駆操作により、四駆油圧電磁弁80にてクラッチシリンダ81が作動して四駆用の油圧クラッチ74が継続され、前車輪入力軸72と前車輪出力軸73とが四駆ギヤ75にて連結され、後車輪4とともに前車輪3が駆動されるように構成する。
【0079】
次に、図5,図6に示されるように、前車輪3の倍速駆動の切換を説明する。操縦ハンドル9のUターン(圃場の枕地での方向転換)操作の検出により、倍速油圧電磁弁82にてクラッチシリンダ83が作動して倍速用の油圧クラッチ76が継続され、前車輪入力軸72と前車輪出力軸73とが倍速ギヤ77にて連結され、四駆ギヤ75にて前車輪3が駆動されるときの速度に比べて約2倍の高速度で前車輪3が駆動されるように構成する。
【0080】
図5に示されるように、前車軸ケース13から後ろ向きに突出する前車輪入力軸84と、前記ミッションケース17の前面から前向きに突出する前車輪出力軸73との間を、前車輪3に動力を伝達する前車輪駆動軸85を介して連結する。また、前車軸ケース13の内部には、左右の前車輪3に走行駆動力を伝える差動ギヤ機構86が配置される。
【0081】
差動ギヤ機構86には、前車輪入力軸84前端のピニオン87に噛合させるリングギヤ88と、該リングギヤ88に設ける差動ギヤケース89と、左右の差動出力軸90とが備えられる。差動出力軸90にはファイナルギヤ91等にて前車軸92が連結され、前車軸92に設ける前車輪3が駆動されるように構成している(図5参照)。また、前車軸ケース13の外側面には、操縦ハンドル9の操舵操作にて前車輪の走行方向を左右に変更するパワーステアリング用の油圧シリンダ93が配設される(図3参照)。
【0082】
図5、図7に示されるように、ミッションケース17の前側壁部材32の前面側には、前記作業機用昇降機構20に作動油を供給するための作業機用油圧ポンプ94と、ミッションケース17の各変速部およびパワーステアリング用の油圧シリンダ93に作動油を供給するための走行用油圧ポンプ95とを備える。油タンクとしてミッションケース17が併用されて該ケース17内部の作動油が各油圧ポンプ94,95に供給されるように構成する。
【0083】
次に、図5、図7を参照して、PTO軸23の駆動速度の切換(正転4段と、逆転1段)を説明する。ミッションケース17の前室34には、エンジン5からの動力をPTO軸23に伝えるPTO変速ギヤ機構96と、エンジン5からの動力を各油圧ポンプ94,95に伝えるポンプ駆動軸97とを設ける(図7参照)。
【0084】
図7に示されるように、後に詳述するPTO変速ギヤ機構96には、PTOカウンタ軸98と、PTO変速出力軸99を備える。PTO用の油圧クラッチ100にて連結されるPTO入力ギヤ101をPTOカウンタ軸98に被嵌させる。PTO入力ギヤ101には、前記主変速入力軸27に設ける入力側ギヤ102と、ポンプ駆動軸97の出力側ギヤ103とが噛合され、主変速入力軸27にポンプ駆動軸97が連結される。
【0085】
そして、PTOクラッチレバーまたはPTOクラッチスイッチ(図示省略)の継続操作により、PTOクラッチ油圧電磁弁104(図5参照)にてクラッチシリンダ105が作動してPTO用の油圧クラッチ100が継続され、主変速入力軸27とPTOカウンタ軸98とがPTO入力ギヤ101にて連結されるように構成する。
【0086】
また、前記PTO変速出力軸99には、PTO出力用として、1速ギヤ106と、2速ギヤ107と、3速ギヤ108と、4速ギヤ109と、逆転ギヤ110とを被嵌する(図5、図7参照)。
【0087】
PTO変速出力軸99には、変速シフタ111が移動自在にスプラインにて軸支される。前記の各ギヤ106,107,108,109,110がPTO変速出力軸99に変速シフタ111にて択一的に連結されるように構成する。変速シフタ111には、PTO変速レバー(図示省略)に連結する変速アーム112が係合される。そして、PTO変速レバー(図示省略)の変速操作により、変速アーム112にてPTO変速出力軸99の軸線に沿って変速シフタ111が直線的に移動して、各ギヤ106,107,108,109,110のいずれかが、択一的に選択されてPTO変速出力軸99に連結される(図5、図7参照)。従って、1速、2速、3速、4速、逆転の各PTO変速出力が、PTO変速出力軸99からPTO軸23にギヤ113,114を介して伝えられるように構成する。
【0088】
なお、図6において、逆転軸39に設ける回転検出ギヤ115と、主変速出力ギヤ37の回転を検出する主変速ピックアップ116とを対向させて設置し、主変速機構である油圧無段変速機29の無段変速出力回転数が、主変速ピックアップ116にて検出されるように構成する。また、前車輪入力軸72のギヤ78の回転を検出する車速ピックアップ117が設置され、前車輪入力軸72及び副変速軸50の回転に基づき、走行速度(車速)が車速ピックアップ117にて検出されるように構成する。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】農作業用のトラクタの側面図である。
【図2】トラクタの斜め後方斜視図である。
【図3】トラクタの側面説明図である。
【図4】トラクタ機体の斜視図である。
【図5】動力伝達のスケルトン図である。
【図6】ミッションケースの走行変速部の説明図である。
【図7】ミッションケースのPTO変速部の説明図である。
【図8】ミッションケースの無断変速機の説明図である。
【図9】ミッションケースの無段変速機の油圧回路図である。
【図10】走行機体とエンジンとミッションケースの側面図である。
【図11】走行機体とエンジンとミッションケースの平面図である。
【図12】走行機体とエンジンとミッションケースの底面図である。
【図13】走行機体とミッションケースの左前方斜視図である。
【図14】走行機体の右後方斜視図である。
【図15】走行機体の左後方斜視図である。
【図16】機体フレームの側面図である。
【図17】機体フレームの左前方斜視図である。
【図18】機体フレームとミッションケース連結部の拡大図である。
【図19】機体フレームとミッションケース連結部の分解図である。
【図20】左機体フレームを取外した左後方斜視図である。
【図21】走行機体の正面図である。
【図22】走行機体の背面図である。
【図23】エンジン防振構造の平面説明図である。
【図24】エンジンのフライホイル部の側面説明図である。
【図25】エンジンとボンネット部の側面説明図である。
【図26】エンジンとミッションケース部の伝動説明図である。
【符号の説明】
【0090】
5 エンジン
14 エンジンフレーム
16 機体フレーム
17 ミッションケース
201 フレームピン
202,203 ピン締結部材
204 締め付けボルト
212 隙間
220 オイルフイルタ
221 フイルタ蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを搭載するエンジンフレーム後部に左右一対の機体フレーム前部が連結され、前記左右一対の機体フレーム後部間にミッションケースが配置されるように構成してなる作業車両において、前記ミッションケースの側面部に前記機体フレーム後部を延設し、前記機体フレーム後部にこの外側からフレームピンを貫通し、前記フレームピンの先端部を前記ミッションケースの側面部に突入し、前記フレームピンの基端部にピン締結部材が配置され、前記ピン締結部材を前記ミッションケースの外側面に締結したことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記ピン締結部材の外側から前記フレームピンに締め付けボルトを貫通し、前記締め付けボルトをミッションケースに螺着したことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記ミッションケース内部のオイルフイルタに取付けるための蓋が、前記ピン締結部材の少なくとも1つには、形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記ミッションケースの側面と、これに対向する前記機体フレーム側面との間に、隙間を形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2006−103432(P2006−103432A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−290668(P2004−290668)
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】