説明

作業車輌

【課題】エンジンユニット及びフライホイールユニットを支持する車輌フレームがフロントフレーム及びメインフレームを有する作業車輌において、前記エンジンユニット及び前記フライホイールユニットの可及的な下方設置を可能としつつ、一対の前輪の左右方向取付ピッチを大きくすることなく前記前輪の最大切れ角を可及的に大きくする。
【解決手段】一対のフロントフレームは後端面のうち少なくとも上方領域がエンジンユニットの後端側に設けられた取付フランジより前方側に位置する。一対のメインフレームは前端側の内表面がスペーサを介して対応するフロントフレームの後端側の外表面に連結される。エンジンユニット及びフライホイールユニットは、少なくとも下方部分が側面視において車輌フレームとオーバーラップし且つ前記取付フランジが正面視においてフロントフレームの後端面の上方領域とオーバーラップした状態で、車輌フレームに支持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輌前後方向に延びる左右一対の車輌フレームと、前記一対の車輌フレームに支持されたフロントアクスルユニット及びエンジンユニットと、前記エンジンユニットの後端に連結されたフライホイールユニットと、前記フロントアクスルユニットに操舵可能に支持される左右一対の前輪と、前記エンジンユニットから前記フライホイールユニットを介して作動的に回転動力を入力するトランスミッションとを備えた作業車輌に関する。
【背景技術】
【0002】
板面が略垂直に沿った状態で互いに対向するように車輌前後方向に延びる左右一対の車輌フレームと、前記一対の車輌フレームより下方に位置し且つ両端部が前記一対の車輌フレームから車輌幅方向外方へ延在されるように車輌幅方向に沿った状態で前記一対の車輌フレームに支持されたフロントアクスルユニットと、前記フロントアクスルユニットの両端部に操舵可能に支持される左右一対の前輪と、前記一対の車輌フレームに支持されたエンジンユニットと、前記エンジンユニットの後端面に連結されるフライホイールユニットと、前記フライホイールユニットから後方へ離間配置され、前記エンジンユニットから前記フライホイールユニットを介して作動的に回転動力を入力するトランスミッションとを備え、前記一対の車輌フレームが、前記フロントアクスルユニットを支持する左右一対のフロントフレームと、前端側が前記一対のフロントフレームの後端側にそれぞれ直接又は間接的に連結され且つ後端側が前記トランスミッションのミッションケースの両側面にそれぞれ直接又は間接的に連結される左右一対のメインフレームとを含み、前記エンジンユニットが、エンジン本体と、前記エンジン本体から後方へ延在された出力軸と、前記エンジン本体の後端から径方向外方へ延在された取付フランジとを含み、前記フライホイールユニットが、前記出力軸に連結されるフライホイール本体と、前記フライホイール本体を囲繞するように前記取付フランジに連結されるフライホイールカバーとを含んでいる作業車輌が提案されている(例えば下記特許文献1参照)。
【0003】
前記特許文献1に記載の作業車輌は、前記フロントアクスルユニット及び前記エンジンユニットを車輌前方側に配置させ且つ前記トランスミッションを車輌後方側に配置させることで前後方向に関する重量バランスを良好に維持しつつ、簡単な構成の前記車輌フレームによって車体を形成できる点で有用であるが、以下の点において改善の余地がある。
【0004】
前記トランスミッションは、前記トランスミッションの上方に配置される運転席の下方設置及び前記作業車輌の重心の下方設置を可能とすべく、可及的に下方に設置されるのが好ましい。
そして、前記エンジンユニット及び前記フライホイールユニットは、前記フライホイールユニットの出力軸と前記トランスミッションの入力軸との上下位置を可能な限り一致させるべく、下方に設置されることが好ましい。
【0005】
このような理由から、前記一対の車輌フレームは、互いに対する離間幅(車輌幅方向の離間距離)が前記エンジンユニット及び前記フライホイールユニットのうち大きな幅を有するフライホイールユニットの幅よりも長くなるように、配置される。
【0006】
ところで、前記特許文献1に記載の作業車輌においては、前記一対のフロントフレームの後端側が前記一対のメインフレームの前端側に直接的に連結されている。
このような構成においては、前記一対のフロントフレームの離間幅及び前記一対のメインフレームの離間幅が共に前記フライホイールユニットの幅によって画されることになる。従って、前記一対のフロントフレームの離間幅を狭めることができず、結果として、操舵輪となる前記前車輪の最大切れ角を大きくできないという不都合が生じる。
【0007】
又、前記エンジンユニットが前記一対の車輌フレームに防振支持機構を介して支持されている作業車輌においては、前記エンジンユニットの前記車輌フレームに対する前方への相対移動量を制限する安全機構を備える必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−103430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、斯かる従来技術に鑑みなされたものであり、互いに対向するように車輌前後方向に延びる左右一対の車輌フレームと、前記一対の車輌フレームに支持されたフロントアクスルユニット及びエンジンユニットと、前記エンジンユニットの後端面に連結されたフライホイールユニットと、前記フロントアクスルユニットに操舵可能に支持される左右一対の前輪と、前記エンジンユニットから前記フライホイールユニットを介して作動的に回転動力を入力するトランスミッションとを備え、前記一対の車輌フレームは、前記フロントアクスルユニットを支持する左右一対のフロントフレームと、前端側が前記一対のフロントフレームの後端側にそれぞれ連結される左右一対のメインフレームとを含み、前記一対のメインフレームの後端側が前記トランスミッションのミッションケースの両側面にそれぞれ直接又は間接的に連結されることで前記トランスミッションが前記エンジンユニットから後方側へ離間配置されている作業車輌において、前記エンジンユニット及び前記フライホイールユニットの可及的な下方設置を可能としつつ、前記一対の前輪の左右方向取付ピッチを大きくすることなく前記前輪の最大切れ角を可及的に大きくし得る作業車輌の提供を一の目的とする。
又、前記エンジンユニットが前記車輌フレームに防振支持されている場合において、前記一の目的を達成しつつ、前記エンジンユニットの前記車輌フレームに対する前方への相対移動量を制限する安全機構を簡単な構造で実現し得る作業車輌の提供を、他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記目的を達成するために、板面が略垂直に沿った状態で互いに対向するように車輌前後方向に延びる左右一対の車輌フレームと、前記一対の車輌フレームより下方に位置し且つ両端部が前記一対の車輌フレームから車輌幅方向外方へ延在されるように車輌幅方向に沿った状態で前記一対の車輌フレームに支持されたフロントアクスルユニットと、前記フロントアクスルユニットの両端部に操舵可能に支持される左右一対の前輪と、前記一対の車輌フレームに支持されたエンジンユニットと、前記エンジンユニットの後端面に連結されるフライホイールユニットと、前記フライホイールユニットから後方へ離間配置され、前記エンジンユニットから前記フライホイールユニットを介して作動的に回転動力を入力するトランスミッションとを備え、前記一対の車輌フレームが、前記フロントアクスルユニットを支持する左右一対のフロントフレームと、前端側が前記一対のフロントフレームの後端側にそれぞれ直接又は間接的に連結され且つ後端側が前記トランスミッションのミッションケースの両側面にそれぞれ直接又は間接的に連結される左右一対のメインフレームとを含み、前記エンジンユニットが、エンジン本体と、前記エンジン本体から後方へ延在された出力軸と、前記エンジン本体の後端から径方向外方へ延在された取付フランジとを含み、前記フライホイールユニットが、前記出力軸に連結されるフライホイール本体と、前記フライホイール本体を囲繞するように前記取付フランジに連結されるフライホイールカバーとを含んでいる作業車輌であって、前記一対のフロントフレームは、後端面のうち少なくとも上方領域が前記取付フランジより前方側に位置し、前記一対のメインフレームは、前端側の内表面がスペーサを介して対応する前記フロントフレームの後端側の外表面に連結されており、前記エンジンユニット及び前記フライホイールユニットは、少なくとも下方部分が側面視において前記一対の車輌フレームとオーバーラップし且つ前記取付フランジが正面視において前記フロントフレームの前記後端面の前記上方領域とオーバーラップした状態で、前記一対の車輌フレームに支持されている作業車輌を提供する。
【0011】
前記エンジンユニットが防振支持機構を介して前記車輌フレームに支持されている場合には、好ましくは、前記エンジンユニットが前記車輌フレームに対して前方へ所定距離だけ相対移動すると前記取付フランジが前記一対のフロントフレームの前記後端面における前記上方領域に当接するように、前記上方領域と前記取付フランジとの車輌前後方向距離を画することができる。
【0012】
より好ましくは、前記一対のフロントフレームの前記後端面は、前記上方領域の下端部から後方へ延びる後方延在領域を有し、上方から視た平面視において前記取付フランジが前記後方延在領域とオーバーラップするように構成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る作業車輌によれば、一対のフロントフレームの後端面のうち少なくとも上方領域がエンジンユニットの後端に設けられた取付フランジより前方側に位置し、一対のメインフレームの前端側の内表面がスペーサを介して対応する前記フロントフレームの後端側の外表面に連結され、前記エンジンユニット及び前記取付フランジに連結されるフライホイールユニットは、少なくとも下方部分が側面視において前記一対の車輌フレームとオーバーラップし且つ前記取付フランジが正面視において前記フロントフレームの前記後端面の前記上方領域とオーバーラップした状態で、前記一対のフロントフレーム及び前記一対のメインフレームに支持されているので、前記エンジンユニット及び前記フライホイールユニットの下方設置を可能としつつ、一対の前輪の左右方向取付ピッチを大きくすることなく前記前輪の最大切れ角を可及的に大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明に係る作業車輌の一実施の形態であるトラクタの斜視図である。
【図2】図2は、前記作業車輌の車体部分の前方斜視図である。
【図3】図3は、前記作業車輌の車体部分の側面図である。
【図4】図4は、前記作業車輌におけるエンジンユニット近傍を後方から視た上方斜視図である。
【図5】図5は、前記作業車輌におけるフロントアクスルユニットを前方から視た下方斜視図である。
【図6】図6は、前記フロントユニットを後方から視た下方斜視図である。
【図7】図7は、前記エンジンユニット近傍の横断平面図である。
【図8】図8は、前記作業車輌における前側防振支持機構近傍の斜視図である。
【図9】図9は、前記作業車輌におけるトランスミッション近傍の部分分解斜視図である。
【図10】図10は、前記作業車輌の部分側面図である。
【図11】図11は、前記作業車輌におけるフロントフレーム及びメインフレームの連結部近傍の後方斜視図であって、左側の前記メインフレームを削除した状態の後方斜視図である。
【図12】図12は、フロントフレーム及びメインフレームの連結部近傍の側方斜視図であって、左側のスペーサ及び左側の前記メインフレームを削除した状態の側方斜視図である。
【図13】図13は、図3におけるXIII-XIII線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る作業車輌の好ましい実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図1に、本実施の形態に係る作業車輌1であるトラクタの斜視図を示す。
又、図2及び図3に、それぞれ、前記作業車輌1の車体部分の前方斜視図及び部分側面図を示す。
【0016】
図1〜図3に示すように、前記作業車輌1は、左右一対の車輌フレーム10と、車輌前方側及び後方側にそれぞれ配設された左右一対の前輪21及び左右一対の後輪22と、前記一対の車輌フレーム10に支持されたフロントアクスルユニット30と、前記一対の車輌フレーム10に支持されたエンジンユニット40と、前記エンジンユニット40の後端面に連結されたフライホイールユニット50と、前記エンジンユニット40から前記フライホイールユニット50を介して作動的に回転動力を入力するトランスミッション60とを備えている。
【0017】
前記一対の車輌フレーム10は、図2及び図3に示すように、板面が略垂直に沿った状態で互いに対向するように車輌前後方向に延びている。
詳しくは、前記一対の車輌フレーム10は、前記フロントアクスルユニット30を支持するように車輌前方側に位置し且つ平面視略直線状に延びる左右一対のフロントフレーム11と、前記一対のフロントフレーム11より車輌幅方向外方側に位置し且つ側面視において前端側が対応する前記フロントフレーム11とオーバーラップした状態で平面視略直線状に後方側へ延びる左右一対のメインフレーム12とを含んでいる。
【0018】
本実施の形態においては、前記作業車輌1は、さらに、前記一対の車輌フレーム10を補強する補強部材を有している。
図4に、前記エンジンユニット40近傍を後方から視た上方斜視図を示す。
図2〜図4に示すように、前記補強部材は、前記一対のフロントフレーム11の前側同士を連結する第1補強部材25と、前記一対のフロントフレーム11における前記フロントアクスルユニット30を支持する部分を連結する第2補強部材26と、前記フライホイールユニット50より後方側において前記一対のメインフレーム12の間を連結する第3補強部材27とを有している。
【0019】
前記フロントアクスルユニット30は、前記一対の車輌フレーム10より下方に位置し且つ両端部が前記一対の車輌フレーム10から車輌幅方向外方へ延在された状態で車輌幅方向に沿うように前記一対のフロントフレーム11に支持されている。
【0020】
図5及び図6に、前記フロントアクスルユニット30を前方及び後方からそれぞれ視た下方斜視図を示す。なお、図5及び図6においては、理解容易化の為に、前記エンジンユニット40,前記フライホイールユニット50及び前記トランスミッション60を削除している。
【0021】
図5及び図6に示すように、前記フロントアクスルユニット30は、前記一対のフロントフレーム11に直接又は間接的に設けられた前側支持フレーム35及び後側支持フレーム36に車輌前後方向に沿った回動軸回り揺動可能に支持されている。
本実施の形態においては、前記前側支持フレーム35及び前記後側支持フレーム36は、前記第2補強部材26に取り付けられている。
【0022】
前記一対の前輪21は、前記フロントアクスルユニット30の両端部に操舵可能に連結されている。
前記一対の後輪22は、前記トランスミッション60におけるミッションケース61の両側壁にそれぞれ連結された左右一対のリヤアクスルユニット(図示せず)の車輌幅方向外端部に連結されている。
【0023】
図7に、前記エンジンユニット40近傍の横断平面図を示す。
前記エンジンユニット40は、図2〜図4及び図7に示すように、エンジン本体41と、前記エンジン本体41から後方へ延在された出力軸42と、前記エンジン本体41の後端から径方向外方へ延在された取付フランジ43とを備えている。
【0024】
本実施の形態においては、前記エンジンユニット40は、前後左右の4カ所において防振支持機構70を介して前記車輌フレーム10に支持されている。
詳しくは、前記防振支持機構70は、図2〜図4に示すように、左右一対の前側防振支持機構70Fと、左右一対の後側防振支持機構70Rとを含んでいる。
そして、前記エンジンユニット40は、前側が前記一対の前側防振支持機構70Fを介して前記一対のフロントフレーム11に支持され、且つ、後側が前記一対の後側防振支持機構70Rを介して前記一対のメインフレーム12に間接的に支持されている。
【0025】
図8に、左側の前記前側防振支持機構70F近傍の斜視図を示す。
図4及び図8に示すように、前記前側及び後側防振支持機構70F,70Rの各々は、上面及び下面を有する弾性部材71と、下面が前記弾性部材71の上面に固着される第1ベース部材72と、上面が前記弾性部材71の下面に固着される第2ベース部材73と、前記第1ベース部材72の上面に固着された第1ボルト軸74と、前記第2ベース部材73の下面に固着された第2ボルト軸(図示せず)とを有している。
【0026】
前記前側防振支持機構70Fは、図8に示すように、前記エンジンユニット40の側面に設けられたエンジン前側取付ステー45と前記フロントフレーム11に設けられたフロントフレーム前側取付ステー11Fとの間に介挿されている。
即ち、前記エンジン前側取付ステー45に形成された取付孔に前記第1ボルト軸74が挿通され且つ前記フロントフレーム前側取付ステーに形成された取付孔に前記第2ボルト軸が挿通された状態で、前記第1及び第2ボルト軸にナットが締結されている。
【0027】
前記後側防振支持機構70Rは、図4に示すように、前記エンジンユニット40の後端面に設けられたエンジン後側取付ステー46とエンジン取付ブラケット28との間に介挿されている。
本実施の形態においては、前記エンジン取付ブラケット28は、前記一対のメインフレーム12の間を連結する前記第3補強部材27に立設されている。
【0028】
前記フライホイールユニット50は、図3,図4及び図7に示すように、前記エンジンユニット40の前記出力軸42に同心上において連結されるフライホイール本体51と、前記フライホイール本体51を囲繞するように前記取付フランジ43に連結されるフライホイールカバー52とを備えている。
【0029】
さらに、前記作業車輌1は、前記エンジンユニット40を始動させる為のスタータユニット55を有している。
前記スタータユニット55は、図3,図4及び図8に示すように、スタータ本体56と、前記スタータ本体56のスタータ駆動軸(図示せず)及び前記フライホイール本体51を作動連結するギヤ列(図示せず)とを有している。
前記ギヤ列は、前記フライホイールカバー52に一体形成されたギヤカバー57に収容されている。
即ち、前記フライホイールカバー52は、前記フライホイール本体51を囲繞するフライホイールカバー本体52aと、前記フライホイールカバー本体52aから径方向外方へ膨出されて前記ギヤ列を収容するギヤカバー57とを一体的に備えている。
【0030】
図9に、前記ミッションケース61近傍の部分分解斜視図を示す。
前記トランスミッション60は、図1,図2及び図9に示すように、前記フライホイールユニット50から後方へ離間された状態で、前記一対のメインフレーム12の後端側に連結されている。
本実施の形態においては、前記一対のメインフレーム12の後端側は、前記トランスミッション60のミッションケース61の両側壁にピン65を介して連結されている。
【0031】
図9に示すように、前記ミッションケース61の左右側面には、それぞれ、上側取付孔66U及び下側取付孔66Dの2つの取付孔が形成されている。そして、前記一対のメインフレーム12の後端側は、前記ピン65を介して前記2つの取付孔66U,66Rに連結されている。斯かる構成によれば、前記一対のメインフレーム12と前記ミッションケース61との連結作業の効率化を図ることができる。
【0032】
図10に、前記フロントアクスルユニット30を取り外した状態の前記一対の車輌フレーム10の側面図を示す。
図2及び図10に示すように、前記一対のフロントフレーム11には、前記フロントアクスルユニット30の揺動端を画する停止部11Sが備えられる。
即ち、前述の通り、前記フロントアクスルユニット30は、前記一対のフロントフレーム11より下方位置において両端部が車輌幅方向外方へ延在された状態で前記一対のフロントフレーム11に直接又は間接的に車輌前後方向に沿った回動軸回り揺動可能に支持されている。
前記一対のフロントフレーム11には、前記フロントアクスルユニット30に対応した位置に下方へ開く切り欠きが形成されており、前記切り欠きが前記フロントアクスルユニット30の回動軸回りの揺動端を画する前記停止部11Sとして作用している。
【0033】
好ましくは、図10に示すように、前記停止部11Sの上下位置と前記上側取付孔66U及び前記下側取付孔66Dの間の上下中間位置とを略一致させることができる。
斯かる構成によれば、前記フロントアクスルユニット30が前記回動軸回りに揺動して前記停止部11Sと当接した際に前記車輌フレーム10に付加される捩り荷重に対して、前記車輌フレーム10の強度を向上させることができる。
【0034】
本実施の形態においては、図2,図4,図7及び図8に示すように、前記一対のメインフレーム12は、前記一対のフロントフレーム11より車輌幅方向外方側に配置された状態で、前端側がスペーサ13を介して前記一対のフロントフレーム11の後端側に連結されている。
【0035】
図11に、前記フロントフレーム11及び前記メインフレーム12の連結部近傍の後方斜視図であって、左側の前記メインフレーム12を削除した状態の後方斜視図を示す。
又、図12に、前記連結部近傍の側方斜視図であって、左側の前記スペーサ13及び左側の前記メインフレーム12を削除した状態の側方斜視図を示す。
さらに、図13に、図3におけるXIII-XIII線に沿った断面図を示す。
なお、図11〜図13においては、理解容易化の為に、前記第3補強部材27及び前記エンジン取付ブラケット28を削除している。
【0036】
図11及び図12に示すように、前記一対のフロントフレーム11は、後端面110のうち少なくとも上方領域111が前記取付フランジ43より前方側に位置している。
なお、本実施の形態においては、図11及び図12に示すように、前記一対のフロントフレーム11の前記後端面110は、前記上方領域111に加えて、前記上方領域111の下端部から後方へ延びる後方延在領域112と、前記後方延在領域112の後端部から下方へ延びる下方領域113とを含んでいる。
【0037】
前記スペーサ13は、図11及び図12に示すように、対応する前記フロントフレーム11の後端面110と同一形状の後端面130を有している。
即ち、前記スペーサ13の前記後端面130は、前記取付フランジ43より前方側に位置する上方領域131と、前記上方領域131の下端部から後方へ延びる後方延在領域132と、前記後方延在領域の後端部から下方へ延びる下方領域133とを含んでいる。
前記スペーサ13は、前記後端面130が対応する前記フロントフレーム11の後端面110と面一状態で前記フロントフレーム11の後端側外表面と前記メインフレーム12の前端側内表面との間に介挿されている。
【0038】
そして、図10〜図13に示すように、前記エンジンユニット40及び前記フライホイールユニット50は、少なくとも下方部分が側面視において前記一対の車輌フレーム10とオーバーラップし且つ前記取付フランジ43が正面視において前記フロントフレーム11の前記後端面110の前記上方領域111とオーバーラップした状態で、前記一対の車輌フレーム10に支持されている。
【0039】
斯かる構成を備えた前記作業車輌1によれば、以下の効果を得ることができる。
即ち、前記トランスミッション60は、前記トランスミッション60の上方に設置される運転席の下方設置及び前記作業車輌1の重心の下方設置という観点から、可能な範囲において下方設置されることが好ましい。
そして、前記トランスミッション60が下方設置されると、前記トランスミッション60に伝動軸75を介して作動連結される前記フライホイールユニット50も下方設置されることが望まれる。前記フライホイールユニット75を前記トランスミッション60に合わせて下方設置することにより、前記伝動軸75を可及的に水平状態とすることができ、これにより、前記伝動軸75の伝動効率の向上及び騒音の低減を図ると共に、前記伝動軸75の上方に配置されるフロア部材のフルフラット化が可能となる。
【0040】
この点に関し、本実施の形態に係る前記作業車輌1においては、前述の通り、前記フロントフレーム11の前記後端面110のうち少なくとも前記上方領域111が前記取付フランジ43より前方側に位置し、且つ、前記メインフレーム12は前記スペーサ13を介して対応する前記フロントフレーム11の車輌幅方向外方側に配置されており、前記エンジンユニット40及び前記フライホイールユニット50は、少なくとも下方部分が側面視において前記一対の車輌フレーム10とオーバーラップし且つ前記取付フランジ43が正面視において前記フロントフレーム11の前記後端面110の前記上方領域111とオーバーラップした状態で、前記一対の車輌フレーム10に支持されている。
斯かる構成によれば、前記エンジンユニット40及び前記フライホイールユニット50を前記車輌フレーム10に干渉させることなく、可及的に下方設置させることができる。
【0041】
さらに、前記構成によれば、前記フロントアクスルユニット30を支持する前記一対のフロントフレーム11の左右方向離間幅を前記一対のメインフレーム12の左右方向離間幅とは独立して可及的に狭めることができ、前記フロントアクスルユニット30に操舵可能に支持される前記一対の前輪21の左右方向取付ピッチを大きくすることなく、前記前輪21の最大切れ角を可及的に大きくすることも可能となる。
【0042】
即ち、前記前輪21は、前記一対のフロントフレーム11に干渉しない範囲で旋回可能となる。従って、前記前輪21の最大切れ角を大きくする為には、前記一対のフロントフレーム11の左右離間幅を小さくするか、若しくは、前記一対の前輪21の左右方向取付ピッチ(左右離間幅)を大きくする必要がある。
【0043】
ところで、前記一対のメインフレーム12の左右離間幅は、前記フライホイールユニット50の左右幅及び前記ミッションケース61の左右幅に依存する。従って、仮に、従来技術におけるように、前記一対のフロントフレーム11及び前記一対のメインフレーム12が直接的に連結されている場合には、前記一対のフロントフレーム11の左右離間幅も前記フライホイールユニット50の左右幅及び前記ミッションケース61の左右幅に依存することになり、結果として、前記一対のフロントフレーム11の左右離間幅を自由に狭めることはできない。
【0044】
又、前記一対の前輪21の左右方向取付ピッチ(左右離間幅)は作業車輌1の仕様に応じて決定され、前記作業車輌1の小型化という観点では可及的に狭くすることが望ましい。従って、前記一対の前輪21の左右方向取付ピッチを広げることで、旋回時における前記前輪21の前記フロントフレーム11への干渉を防止することは望ましくない。
【0045】
この点に関し、本実施の形態に係る前記作業車輌1においては、前述の通り、前記フロントアクスルユニット30を支持する前記一対のフロントフレーム11の前記後端面110の少なくとも前記上方領域111を前記取付フランジ43より前方側に位置させ、前記一対のメインフレーム12の前端側を前記スペーサ13を介して対応する前記フロントフレーム11の後端側に連結させている。
斯かる構成によれば、前記一対のメインフレーム12の左右離間幅を前記フライホイールユニット50の左右幅及び前記ミッションケース60の左右幅に対応して決定しつつ、前記一対のフロントフレーム11の左右離間幅を前記一対のメインフレーム12の左右離間幅とは独立して可及的に狭めることができる。従って、前記一対の前輪21の左右方向取付ピッチを大きくすることなく、前記前輪21の最大切れ角を可及的に大きくすることができる。
【0046】
本実施の形態におけるように、前記エンジンユニット40が前記防振支持機構70を介して前記車輌フレーム10に支持されている場合には、好ましくは、前記エンジンユニット40が前記車輌フレーム10に対して前方へ所定距離だけ相対移動すると前記取付フランジ43が前記一対のフロントフレーム11の前記後端面110における前記上方領域111に当接するように、前記上方領域111と前記取付フランジ43との車輌前後方向距離を設定することができる。
【0047】
斯かる構成によれば、前記エンジンユニット40の前記車輌フレーム10に対する前方への相対移動量を制限する安全機構を簡単な構造で実現できる。
即ち、前記エンジンユニット40が前記防振支持機構70を介して前記車輌フレーム10に防振支持されている場合には、前記車輌1が前方へ走行している状態においてブレーキを作動させた際や停止状態から前記車輌1を後方へ発進させた際に前記エンジンユニット40が前記車輌フレーム10に対して相対的に前方へ移動する。
このような前記エンジンユニット40の前記車輌フレーム10に対する相対移動が生じると、前記防振支持機構70に過度の負荷がかかり、場合によっては前記防振支持機構70の損傷を招くことになる。
この点に関し、前記構成によれば、前記取付フランジ43及び前記フロントフレーム11を利用した簡単な構造で前記エンジンユニット40の相対移動量を制限することができる。
【0048】
前述の通り、本実施の形態においては、前記一対のフロントフレーム11の前記後端面110は、前記上方領域111の下端部から後方へ延びる前記後方延在領域112を有している。
斯かる構成においては、好ましくは、図11及び図12に示すように、上方から視た平面視において前記取付フランジ43が前記後方延在領域112とオーバーラップするように、前記後方延在領域112が前記取付フランジ43を跨いで車輌前後方向に延びるように構成される。
【0049】
斯かる構成によれば、前記エンジンユニット40が前記車輌フレーム10に対して下方へ所定量を超えて相対移動することを前記後方延在領域112によって防止することができ、前記防振支持機構70の損傷を有効に防止できる。
【符号の説明】
【0050】
1 作業車輌
10 車輌フレーム
11 フロントフレーム
110 後端面
111 上方領域
12 メインフレーム
13 スペーサ
21 前輪
30 フロントアクスルユニット
40 エンジンユニット
41 エンジン本体
42 出力軸
43 取付フランジ
50 フライホイールユニット
51 フライホイール本体
52 フライホイールカバー
60 トランスミッション
70 防振支持機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板面が略垂直に沿った状態で互いに対向するように車輌前後方向に延びる左右一対の車輌フレームと、前記一対の車輌フレームより下方に位置し且つ両端部が前記一対の車輌フレームから車輌幅方向外方へ延在されるように車輌幅方向に沿った状態で前記一対の車輌フレームに支持されたフロントアクスルユニットと、前記フロントアクスルユニットの両端部に操舵可能に支持される左右一対の前輪と、前記一対の車輌フレームに支持されたエンジンユニットと、前記エンジンユニットの後端面に連結されるフライホイールユニットと、前記フライホイールユニットから後方へ離間配置され、前記エンジンユニットから前記フライホイールユニットを介して作動的に回転動力を入力するトランスミッションとを備え、前記一対の車輌フレームが、前記フロントアクスルユニットを支持する左右一対のフロントフレームと、前端側が前記一対のフロントフレームの後端側にそれぞれ直接又は間接的に連結され且つ後端側が前記トランスミッションのミッションケースの両側面にそれぞれ直接又は間接的に連結される左右一対のメインフレームとを含み、前記エンジンユニットが、エンジン本体と、前記エンジン本体から後方へ延在された出力軸と、前記エンジン本体の後端から径方向外方へ延在された取付フランジとを含み、前記フライホイールユニットが、前記出力軸に連結されるフライホイール本体と、前記フライホイール本体を囲繞するように前記取付フランジに連結されるフライホイールカバーとを含んでいる作業車輌であって、
前記一対のフロントフレームは、後端面のうち少なくとも上方領域が前記取付フランジより前方側に位置し、
前記一対のメインフレームは、前端側の内表面がスペーサを介して対応する前記フロントフレームの後端側の外表面に連結されており、
前記エンジンユニット及び前記フライホイールユニットは、少なくとも下方部分が側面視において前記一対の車輌フレームとオーバーラップし且つ前記取付フランジが正面視において前記フロントフレームの前記後端面の前記上方領域とオーバーラップした状態で、前記一対の車輌フレームに支持されていることを特徴とする作業車輌。
【請求項2】
前記エンジンユニットは防振支持機構を介して前記車輌フレームに支持されており、
前記エンジンユニットが前記車輌フレームに対して前方へ所定距離だけ相対移動すると前記取付フランジが前記一対のフロントフレームの前記後端面における前記上方領域に当接するように、前記上方領域と前記取付フランジとの車輌前後方向距離が画されていることを特徴とする請求項1に記載の作業車輌。
【請求項3】
前記一対のフロントフレームの前記後端面は、前記上方領域の下端部から後方へ延びる後方延在領域を有し、
上方から視た平面視において前記取付フランジが前記後方延在領域とオーバーラップしていることを特徴とする請求項2に記載の作業車輌。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−173602(P2010−173602A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−21472(P2009−21472)
【出願日】平成21年2月2日(2009.2.2)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】