説明

信頼性設計支援方法

【課題】経年変化による特性の劣化が抑制され、寿命に係る性能を十分に満足した信頼性の高い半導体集積回路装置を効率良く設計することが可能な信頼性設計支援方法を提供する。
【解決手段】信頼性設計支援方法は、初期マスクレイアウトパターン10で示され、半導体集積回路装置の内、経年変化により特性が劣化する劣化発生箇所を求める経年劣化対象箇所抽出ステップ20と、初期マスクレイアウトパターン10を変形して、経年変化後の半導体集積回路装置を示す劣化マスクレイアウトパターン40を生成する経年劣化実行ステップ30と、劣化マスクレイアウトパターン40で示される半導体集積回路装置の特性を評価する経年劣化対策ステップ50とを備えている。経年劣化対策ステップ50では、評価結果に基づいて初期マスクレイアウトパターン10を修正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスや金属配線などを有する半導体集積回路装置の信頼性設計支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体集積回路装置の設計には、CAD(Computer Aided Design)やEDA(Electronic Design Automation)と呼ばれる計算機ソフトウェアを用いて、半導体集積回路装置の設計の自動化を行ってきた。ここで、半導体集積回路装置を構成する電子回路(半導体デバイス)のマスクレイアウトの設計では、デザインルールと呼ばれる製造限界を示す規則に基づき、人手により、またはCADツールを用いて自動設計されたマスクパターンを検証し、該マスクパターンの修正を行ってきた。また、製品寿命に係わる規則に関してもデザインルールとして規定され、上述と同様の手法を用いて設計され、検証されてきた。
【0003】
しかし、近年の半導体集積回路装置の進歩に伴い、寿命(経年変化)における信頼性が高い半導体集積回路の設計が必要となってきた。半導体集積回路装置の代表的な寿命に関係する物理現象としては、ホットキャリアやアンテナ効果による電気特性の劣化現象や、エレクトロマイグレーションおよびストレスマイグレーションによる物理特性の劣化現象が挙げられる。これらの劣化現象を抑えるために、信頼性設計支援装置と呼ばれる、経年変化による電気特性の変化を捉え、信頼性を解析し、半導体集積回路の設計を最適化する装置の先行例がいくつか開示されている(例えば特許文献1参照)。これらの信頼性設計支援装置は、半導体集積回路装置に求められる電気特性の寿命に係る性能を満足させる信頼性設計を、効率良く行うことを可能とする半導体集積回路装置の信頼性設計支援システムである。
【特許文献1】特開2003―224258号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来技術では、半導体デバイスの性能を左右するホットキャリアやアンテナ効果などの電気特性の劣化現象を抑えるための信頼性設計支援技術は提案されているが、マスクレイアウトに依存した製品寿命に係る物理特性の劣化現象を抑えるための信頼性設計支援技術は提案されていない。従って、製品寿命に影響を及ぼす性能の信頼性を高めるために、マスクレイアウトに依存したデザインルールと呼ばれる半導体集積回路装置の製造上の制約を用いて規定を行うことで、設計を行ってきた。しかしながら、この従来の設計方法では、信頼性の設計と同時に、チップ面積の増大を最小化させたり、マスクレイアウトに依存したバラツキを低減させることなどが難しかった。
【0005】
これらの課題に鑑み、本発明の目的は、経年変化による特性の劣化が抑制され、寿命に係る性能を十分に満足した信頼性の高い半導体集積回路装置を効率良く設計することが可能な信頼性設計支援方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の信頼性設計支援方法は、第1のマスクレイアウトパターンで示され、半導体デバイスおよび金属配線を有する半導体集積回路装置の内、経年変化により特性が劣化する劣化発生箇所を求めるステップ(a)と、前記第1のマスクレイアウトパターンを変形して、経年変化後の前記半導体集積回路装置を示す第2のマスクレイアウトパターンを生成するステップ(b)と、前記第2のマスクレイアウトパターンで示される前記半導体集積回路装置の特性を評価するステップ(c)と、前記ステップ(c)で得られた結果に基づいて前記第1のマスクレイアウトパターンを修正することで、前記半導体集積回路装置の経年変化による特性の劣化を抑制するステップ(d)とを備えている。
【0007】
この方法によれば、半導体集積回路装置の初期の特性だけでなく、第2のマスクレイアウトパターンで示される経年劣化後の半導体集積回路装置の特性を評価することで、製品寿命に係る性能に関する評価を行うことができるため、半導体集積回路装置の所望の寿命を満足させる信頼性の高い設計を行うことが可能となる。さらに、第2のマスクレイアウトパターンを用いて特性を評価することで、例えば半導体デバイスや金属配線の内、経年劣化後も十分な信頼性を有する箇所がある場合、寿命に係る性能を維持しつつ、チップ面積を削減できる。これにより、本発明の信頼性設計支援方法を用いると、チップ面積の増大を抑制しつつ、寿命に係る性能を十分に満足した信頼性の高い半導体集積回路装置を設計することができる。
【0008】
なお、前記ステップ(a)では、DRCを用いて前記第1のマスクレイアウトパターンから、前記劣化発生箇所を抽出してもよい。また、前記ステップ(a)では、LRCを用いて前記第1のマスクレイアウトパターンから、前記劣化発生箇所を抽出してもよい。これらのDRCやLRCなどのCADツールを用いることで、設計工程が自動化されるため、マスクレイアウトパターンの設計にかかる時間と労力を低減させることができ、効率良く信頼性の高い半導体集積回路装置を設計することができる。
【0009】
また、前記ステップ(a)では、前記劣化発生箇所において劣化が発生する確率をさらに求め、前記ステップ(b)では、前記確率を基に、前記第2のマスクレイアウトパターンを生成してもよい。この場合、忠実に経年劣化後の第2のマスクレイアウトパターンを生成することができるため、より信頼性の高い半導体集積回路装置を設計することができる。
【0010】
なお、前記劣化発生箇所は、前記金属配線の一部領域であり、前記ステップ(b)では、前記第1のマスクレイアウトパターンにおける前記金属配線の一部領域の幅を小さくすることで、前記第2のマスクレイアウトパターンを生成してもよい。この場合、前記ステップ(d)では、前記第1のマスクレイアウトパターンにおける前記金属配線の幅を大きくすることが好ましい。
【0011】
この方法では、劣化発生箇所として抽出された金属配線の幅を小さくすることで、例えば断線などの危険性が示された経年劣化後の第2のマスクレイアウトパターンを生成することができる。これにより、第1のマスクレイアウトパターンにおいて、経年劣化後に断線などを起こしやすい部分の金属配線の幅を大きく修正することで、断線などが抑制され、金属配線の寿命に係る性能を十分に満足した半導体集積回路装置を設計することが可能となる。
【0012】
また、前記ステップ(c)は、前記第2のマスクレイアウトパターンから前記半導体デバイスおよび前記金属配線の回路情報を抽出するステップと、前記回路情報を用いて回路シミュレーションを行い、前記半導体集積回路装置の特性を評価するステップとを含んでいてもよい。
【0013】
この方法では、経年劣化後の半導体集積回路装置の電気特性を評価することができるため、初期のマスクレイアウトパターンに起因する物理特性の劣化だけでなく、電気特性の劣化も抑制された信頼性の高い半導体集積回路装置を実現することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の信頼性支援設計方法では、マスクレイアウトパターンを用いて、初期の特性だけでなく、経年劣化後の半導体集積回路装置の特性を評価することで、高い信頼性を有する半導体集積回路装置の設計を効率良く行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を用いて詳細に説明する。
【0016】
(実施形態)
最初に、本発明の実施形態における半導体デバイスおよび金属配線を有する半導体集積回路装置の信頼性設計支援方法について説明する。図1は、本発明の半導体集積回路の信頼性設計支援方法の一例を示すブロック図である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の信頼性設計支援方法は、寿命による劣化を考慮しない初期マスクレイアウトパターン10を基に、半導体デバイスおよび金属配線を有する半導体集積回路装置の内、経年変化が起こり得る劣化発生箇所を抽出する経年劣化対象箇所抽出ステップ20と、初期マスクレイアウトパターン10における経年劣化対象箇所抽出ステップ20で特定された対象箇所(劣化発生箇所)を、デザインルールに基づき変形することで、経年変化後の劣化マスクレイアウトパターン40を作成する経年劣化実行ステップ30と、経年劣化実行ステップ30で生成された劣化マスクレイアウトパターン40を入力し、設計初期の特性が維持できるか否かを確認する経年劣化対策ステップ50とを備えている。以下、各ステップについて説明する。
【0018】
まず、経年劣化対象箇所抽出ステップ20では、DRC(Design Rule Check)を用いて、デザインルールに従った規則に基づいて初期マスクレイアウトパターン10の確認を行うことで、対象箇所の特定および抽出を行うことができる。また、シリコンウェハ上に形成されるパターンを再現するリソグラフィシミュレーション検証(LRC:Lithography Rule Check)を用いることで、対象箇所の特定および抽出を行うこともできる。なお、以下で説明するステップも、本ステップと同様にコンピュータ等のハードウェア手段に組み込まれたDRCツール、LRCツール等により実行される。
【0019】
次に、経年劣化実行ステップ30では、デザインルールに従った規則に基づいて、初期マスクレイアウトパターン10の内、経年劣化対象箇所抽出ステップ20で特定した対象箇所に対して変形を施し、経年変化後の半導体デバイスまたは金属配線が示された劣化マスクレイアウトパターン40を生成する。ここで、劣化マスクレイアウトパターン40は、初期マスクレイアウトパターン10を基に変形したマスクレイアウトパターンであり、対象箇所以外は初期マスクレイアウトパターン10と同様な構成である。
【0020】
続いて、経年劣化対策ステップ50について説明する。ここで、図2は、経年劣化対策ステップ50の詳細を示すブロック図である。図2に示すように、経年劣化対策ステップ50では、劣化マスクレイアウトパターン40から半導体デバイスまたは金属配線における回路情報を抽出し、例えば回路シミュレーションを用いて設計初期の特性が維持できるか否かを確認する特性確認ステップ70と、初期の特性を維持できない場合には、初期マスクレイアウトパターン10に対して修正を施し、補正マスクレイアウトパターン90を生成する経年変化修正ステップ80とを有している。なお、図1に示すように、補正マスクレイアウトパターン90に対し、再度ステップ10〜ステップ50の処理を行う。一方、経年劣化対策ステップ50において初期の特性を維持できると判断した場合には、処理を終了する。以上のステップを経て、本実施形態に係る半導体集積回路装置の信頼性設計を行うことができる。
【0021】
次に、本実施形態に係る半導体デバイスおよび金属配線を有する半導体集積回路装置の信頼性設計支援方法について具体例を挙げて説明する。最初に、図3〜図7を参照しながら図1に示す経年劣化実行ステップ30の具体例を示す。
【0022】
−経年劣化実行ステップ30の第1の具体例−
図3(a)は、本実施形態に係る半導体集積回路装置の金属配線の初期マスクレイアウトパターンを示す図であり、図3(b)は、経年劣化実行ステップ30の第1の具体例を示す図である。
【0023】
図3(a)に示す初期マスクレイアウトパターン10で表される半導体集積回路装置の金属配線は、1層目金属配線500と、1層目金属配線500の上方に設けられた第1の2層目金属配線511および第2の2層目金属配線522と、1層目金属配線500と第1の2層目金属配線511、および1層目金属配線500と第2の2層目金属配線522をそれぞれ接続する第1の接続ビア510および第2の接続ビア520とを備えている。なお、第2の2層目金属配線522は、第1の2層目金属配線511と配線幅が等しい第1の領域521と、第1の領域521よりも配線幅が大きい第2の領域523とを有している。
【0024】
最初に、図3(a)に示す初期マスクレイアウトパターン10より、第2の2層目金属配線522の第2の領域523では、第1の領域521に比べて面積が大きく、ボイドと呼ばれる空孔が発生する数も多くなると判断される。そのため、経年劣化対象箇所抽出ステップ20では、半導体集積回路装置の長期にわたる寿命を考えた場合、ボイドの影響を受けて第2の2層目金属配線522が断線する可能性は大きいと言える。一方、第1の2層目金属配線511では、第2の2層目金属配線522と比較して、第2の領域523のように配線幅および面積が変化する領域が無いため、ボイドが第1の2層目金属配線511に及ぼす影響は軽微であり、第1の2層目金属配線511が断線する可能性は低い。このように、経年劣化対象箇所抽出ステップ20では、初期マスクレイアウトパターン10を基にして、断線など、経年変化により特性が劣化する対象箇所を例えばDRCにより抽出する。
【0025】
次に、図3(b)に示すように、本実施形態の経年劣化実行ステップ30では、デザインルールに基づき、上述の経年劣化対象箇所抽出ステップ20で特定した対象箇所に対して変形を施す。本実施形態の第1の具体例では、第2の2層目金属配線522の第1の領域521を、配線幅が第1の領域521より小さい第6の領域530に変形する。これにより、第2の2層目金属配線522の断線の危険性が示された劣化マスクレイアウトパターン40を生成することができる。
【0026】
−経年劣化実行ステップ30の第2の具体例−
図4(a)は、本実施形態に係る半導体集積回路装置の金属配線の初期マスクレイアウトパターンを示す図であり、図4(b)は、経年劣化実行ステップ30の第2の具体例を示す図である。なお、図4(a)に示す初期マスクレイアウトパターンは、図3(a)に示す初期マスクレイアウトパターンと同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0027】
最初に、本実施形態に係る経年劣化対象箇所抽出ステップ20では、例えばDRCを用いて、図4(a)に示す初期レイアウトパターンから、第2の2層目金属配線622の第1の領域621を対象箇所として抽出する。これは、第2の2層目金属配線622が、他の部分よりも面積の大きい第2の領域623を有しているため、ボイドなどの影響を受けやすく、第1の2層目金属配線611よりも断線の危険性が大きいと判断されるからである。
【0028】
次に、図4(b)に示すように、本実施形態の経年劣化実行ステップ30では、対象箇所として抽出した第2の2層目金属配線622の第1の領域621に対して、変形を施す。ここでは、1層目金属配線600と第2の2層目金属配線622とを接続する第2の接続ビア620の数を1個から0個に減らす。これにより、第2の接続ビア620が除去された除去領域630を含む第2の2層目金属配線622の断線の危険性が示された劣化マスクレイアウトパターン40を生成することができる。
【0029】
なお、図4(b)では、第2の接続ビア620が1個である例を示したが、第2の接続ビア620が2個以上設けられる箇所が抽出される場合には、適宜1個以上の第2の接続ビア620を減らしてもよい。
【0030】
−経年劣化実行ステップ30の第3の具体例−
図5(a)は、本実施形態に係る半導体集積回路装置の金属配線の初期マスクレイアウトパターン10を示す図であり、図5(b)は、経年劣化実行ステップ30の第3の具体例を示す図である。
【0031】
最初に、図5(a)に示す初期レイアウトパターンで表される金属配線は、1層目金属配線700と、1層目金属配線700の上方に設けられた第1の2層目金属配線712および第2の2層目金属配線722と、1層目金属配線700と第1の2層目金属配線712、および1層目金属配線700と第2の2層目金属配線722とをそれぞれ接続する第1の接続ビア710および第2の接続ビア720とを備えている。なお、第1の1層目金属配線712は、第1の領域711と第1の領域711よりも配線幅が大きい第2の領域713とを有しており、第2の2層目金属配線722は、第3の領域721と第3の領域721よりも配線幅が大きい第4の領域723とを有している。
【0032】
本実施形態の経年劣化対象箇所抽出ステップ20では、図5(a)に示す初期マスクレイアウトパターンより、DRCなどを用いて、第1の2層目金属配線712の第1の領域711および第2の2層目金属配線722の第3の領域721を対象箇所として抽出する。これは、第1の領域711および第3の領域721が、他の部分よりも面積の大きい第2の領域713および第4の領域723と隣接しているため、ボイドの影響をそれぞれ受けることで、断線の危険性が大きいと判断されるからである。加えて、ここでは、金属配線の断線が発生する確率を実測により予め求めておき、その確率を基に対象箇所を抽出している。例えば、第1の領域711および第3の領域721の配線幅が0.15μm以下である場合、第1の2層目金属配線712および第2の2層目金属配線722の断線が発生する確率は、1ppm程度である。
【0033】
次に、図5(b)に示すように、経年劣化実行ステップ30では、経年劣化対象箇所抽出ステップ20で対象箇所として抽出した第2の2層目金属配線722の第3の領域721の幅を小さくして、第7の領域771を形成する。これにより、第2の2層目金属配線722の断線の危険性が示された劣化マスクレイアウトパターン40を生成することができる。
【0034】
−経年劣化実行ステップ30の第4の具体例−
図6(a)は、本実施形態に係る半導体集積回路装置の金属配線の初期マスクレイアウトパターン10を示す図であり、図6(b)は、経年劣化実行ステップ30の第4の具体例を示す図である。なお、図6(a)に示す初期マスクレイアウトパターンは、図5(a)に示す初期マスクレイアウトパターンと同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0035】
最初に、本実施形態に係る経年劣化対象箇所抽出ステップ20では、図6(a)に示す初期レイアウトパターンより、第1の2層目金属配線812と1層目金属配線800とを接続する第1の接続ビア810と、第2の2層目金属配線822と1層目金属配線800とを接続する第2の接続ビア820とを対象箇所として抽出する。これは、第1の2層目金属配線812および第2の2層目金属配線822が、他の部分よりも面積の大きい第2の領域813および第4の領域823を有していることで、ボイドの影響を受けやすく、長期の製品寿命を考慮した場合、第1の2層目金属配線812および第2の2層目金属配線822とそれぞれ接続される第1の接続ビア810および第2の接続ビア820における断線の危険性が大きいと判断されるからである。加えて、ここでは、各接続ビアの断線が発生する確率を実測により予め求めておき、その確率を基に対象箇所を抽出している。例えば、第2の領域813および第4の領域823の配線幅が0.5μm以下である場合、第2の領域813に接続される第1の接続ビア810および第4の領域823に接続される第2の接続ビア820で断線が発生する確率は、1ppm程度である。
【0036】
続いて、図6(b)に示すように、経年劣化実行ステップ30では、経年劣化対象箇所抽出ステップ20で対象箇所として抽出した第2の接続ビア820の数を、1個から0個に減らす。これにより、1層目金属配線800と第2の2層目金属配線822とを接続する接続ビアが無く(ビア除去箇所870参照)、第2の接続ビア820の断線の危険性が示された劣化マスクレイアウトパターン40を生成することができる。
【0037】
−経年劣化実行ステップ30の第5の具体例−
図7(a)は、本実施形態に係る半導体集積回路装置の金属配線の初期マスクレイアウトパターン10を示す図であり、図7(b)は、経年劣化実行ステップ30の第5の具体例を示す図である。なお、図7(a)に示す初期マスクレイアウトパターンは、図5(a)に示す初期マスクレイアウトパターンと同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0038】
最初に、本実施形態の経年劣化対象箇所抽出ステップ20では、上述の第4の具体例と同様にして、図7(a)に示す初期レイアウトパターンの形状と、予め実測された断線の発生確率とから、第1の2層目金属配線912と1層目金属配線900とを接続する第1の接続ビア910と、第2の2層目金属配線922と1層目金属配線900とを接続する第2の接続ビア920とを対象箇所として抽出する。
【0039】
次に、図7(b)に示すように、経年劣化実行ステップ30では、経年劣化対象箇所抽出ステップ20で対象箇所として抽出した第2の接続ビア920の数を1個から0.5個に減らす。これにより、第2の接続ビアから金属配線と平行な方向における断面積が第2の接続ビア920の半分である第4の接続ビア970へ変更することで、金属配線の断線の危険性が示された劣化マスクレイアウトパターン40を生成することができる。ここで、劣化マスクレイアウトパターン40に示す第2の接続ビアの個数を正の実数で表現することで、経年劣化対象箇所抽出ステップ20で予め算出された確率を基に、忠実に劣化マスクレイアウトパターン40を生成することができる。
【0040】
続いて、図8〜図10を用いて経年劣化対策ステップ50の具体例を示す。
【0041】
−経年劣化対策ステップ50の第1の具体例−
図8(a)は、本実施形態に係る半導体集積回路装置の金属配線の初期マスクレイアウトパターン10を示す図であり、図8(b)は経年劣化対策ステップ50の第1の具体例を示す図である。なお、図8(a)に示す初期マスクレイアウトパターンは、上述の図3(a)に示す初期マスクレイアウトパターンと同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0042】
最初に、図8(a)に示す初期マスクレイアウトパターンを用いて、経年劣化実行ステップ30の各具体例で述べたように、経年変化が発生する可能性が高い対象箇所を抽出し、劣化マスクレイアウトパターン40を生成する。ここでは、経年劣化実行ステップ30の第1の具体例と同様にして、面積が大きい第2の領域223を有する第2の2層目金属配線222の第1の領域221が対象箇所として抽出され、該対象箇所に対して変更が施された劣化マスクレイアウトパターン40(図示せず)が生成される。
【0043】
次に、経年劣化対策ステップ50では、劣化マスクレイアウトパターン40より半導体デバイスおよび金属配線の回路情報を抽出し、例えば回路シミュレーションを用いて、初期の特性が維持できるか否かを判定する。この評価により初期の特性が維持できない場合、図8(b)に示すように、図8(a)に示す初期マスクレイアウトパターンを基に、第2の2層目金属配線222の第1の領域221を修正する。ここでは、第1の領域221を、配線幅が第1の領域221よりも大きい第5の領域230へ変更することで、補正マスクレイアウトパターン90(図2参照)を生成する。これにより、初期マスクレイアウトパターンにおける金属配線の断線の危険性を低下させることができ、信頼性の高い半導体集積回路装置を設計することができる。
【0044】
−経年劣化対策ステップ50の第2の具体例−
図9(a)は、本実施形態に係る半導体集積回路装置の金属配線の初期マスクレイアウトパターン10を示す図であり、図9(b)は経年劣化対策ステップ50の第2の具体例を示す図である。なお、図9(a)に示す初期マスクレイアウトパターンは、図3(a)に示す初期マスクレイアウトパターンと同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0045】
最初に、図9(a)に示す初期マスクレイアウトパターンを用いて、上述の経年劣化実行ステップ30の各具体例で述べたように、経年変化が発生する可能性が高い対象箇所を抽出し、劣化マスクレイアウトパターン40を生成する。ここでは、経年劣化実行ステップ30の第1の具体例と同様にして、面積が大きい第2の領域323を有する第2の2層目金属配線322の第1の領域321が経年変化により断線する可能性が大きいと判断され、第1の領域が対象箇所として抽出される。そして、対象箇所に対して変更が施された劣化マスクレイアウトパターン40(図示せず)が生成される。
【0046】
次に、経年劣化対策ステップ50では、上述の劣化マスクレイアウトパターン40より半導体デバイスおよび金属配線の回路情報を抽出し、例えば回路シミュレーションを用いて、初期の特性が維持できるか否かを判定する。この評価により初期の特性が維持できない場合、図9(b)に示すように、図9(a)に示す初期マスクレイアウトパターンを基に、第4の接続ビア330を設けて、第1の2層目金属配線322の第1の領域321と1層目金属配線300とを接続するビアの数を1個から2個に増加させることで、補正マスクレイアウトパターン90(図2参照)を生成する。これにより、初期マスクレイアウトパターン10における金属配線の断線の危険性を低下させることができ、信頼性の高い半導体集積回路装置を設計することができる。
【0047】
−経年劣化対策ステップ50の第3の具体例−
図10(a)は、本実施形態に係る半導体集積回路装置の金属配線の初期マスクレイアウトパターン10を示す図であり、図10(b)は経年劣化対策ステップ50の第3の具体例を示す図である。なお、図10(a)に示す初期マスクレイアウトパターンは、図3(a)に示す初期マスクレイアウトパターンと同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0048】
最初に、図10(a)に示す初期マスクレイアウトパターンを用いて、上述の経年劣化実行ステップ30の各具体例で述べたように、経年変化が発生する可能性が高い対象箇所を抽出し、劣化マスクレイアウトパターン40を生成する。ここでは、経年劣化実行ステップ30の第1の具体例と同様にして、面積が大きい第2の領域423を有する第2の2層目金属配線422の第1の領域421が経年変化により断線する危険性が大きいと判断され、第1の領域421が対象箇所として抽出される。そして、対象箇所に対して変更が施された劣化マスクレイアウトパターン40(図示せず)が生成される。
【0049】
次に、経年劣化対策ステップ50では、上述の劣化マスクレイアウトパターン40より半導体デバイスおよび金属配線の回路情報を抽出し、例えば回路シミュレーションを用いて、初期の特性が維持できるか否かを判定する。この評価により初期の特性が維持できない場合、図10(b)に示すように、図10(a)に示す初期マスクレイアウトパターンを基に、第1の領域421と1層目金属配線400とを接続する第2の接続ビア420を、第1の2層目金属配線422と接触する部分の面積が第2の接続ビア420よりも大きい第3の接続ビア430に変更する。これにより、初期マスクレイアウトパターン10における金属配線の断線の危険性を低下させることができ、信頼性の高い半導体集積回路装置を設計することができる。
【0050】
以上説明したように、本実施形態の信頼性設計支援方法では、初期マスクレイアウトパターンに示された半導体集積回路装置の特性だけでなく、経年変化後の劣化マスクレイアウトパターンに示された半導体集積回路装置の特性を評価することで、製品寿命に係る性能の信頼性が高い半導体集積回路装置を設計することができる。ここで、例えば、エレクトロマイグレーションを考慮して金属配線およびビアの設計を行った場合、初期マスクレイアウトパターンを用いるだけでは、所望の寿命を有する半導体集積回路装置を得ることは難しい。このため、経年変化後の劣化マスクレイアウトパターンを用いて、エレクトロマイグレーションだけでなく、例えばストレスマイグレーションなど、製品寿命に係る他の性能に関しても合わせて評価を行うことで、半導体集積回路装置の所望の寿命を満足させる信頼性の高い設計を行うことができる。
【0051】
さらに、劣化マスクレイアウトパターンを用いて特性を評価することで、例えば半導体デバイスや金属配線の内、経年劣化後も十分な信頼性を有する箇所がある場合、寿命に係る性能を維持しつつ、チップ面積を削減できる。これにより、本実施形態の信頼性設計支援方法を用いると、チップ面積の増大を抑制しつつ、寿命に係る性能を十分に満足した信頼性の高い半導体集積回路装置を設計することができる。
【0052】
また、本実施形態の信頼性設計支援方法では、DRCなどのCADツールを用いて、経年劣化対象箇所抽出ステップ20、経年劣化実行ステップ30、および経年劣化対策ステップ50を行っており、設計工程が自動化されているため、マスクレイアウトパターンの設計にかかる時間と労力を低減させることができ、効率良く信頼性設計を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の半導体集積回路の信頼性設計支援方法は、半導体集積回路装置の信頼性設計の効率化に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の半導体集積回路装置の信頼性設計支援方法を示すブロック図である。
【図2】図1に示す経年劣化対策ステップの詳細を示すブロック図である。
【図3】(a)は、本発明に係る金属配線の初期マスクレイアウトパターンを示す図であり、(b)は、経年劣化実行ステップ30の第1の具体例を示す図である。
【図4】(a)は、本発明に係る金属配線の初期マスクレイアウトパターンを示す図であり、(b)は、経年劣化実行ステップ30の第2の具体例を示す図である。
【図5】(a)は、本発明に係る金属配線の初期マスクレイアウトパターンを示す図であり、(b)は、経年劣化実行ステップ30の第3の具体例を示す図である。
【図6】(a)は、本発明に係る金属配線の初期マスクレイアウトパターンを示す図であり、(b)は、経年劣化実行ステップ30の第4の具体例を示す図である。
【図7】(a)は、本発明に係る金属配線の初期マスクレイアウトパターンを示す図であり、(b)は、経年劣化実行ステップ30の第5の具体例を示す図である。
【図8】(a)は、本発明に係る金属配線の初期マスクレイアウトパターンを示す図であり、(b)は、経年劣化対策ステップ50の第1の具体例を示す図である。
【図9】(a)は、本発明に係る金属配線の初期マスクレイアウトパターンを示す図であり、(b)は、経年劣化対策ステップ50の第2の具体例を示す図である。
【図10】(a)は、本発明に係る金属配線の初期マスクレイアウトパターンを示す図であり、(b)は、経年劣化対策ステップ50の第3の具体例を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
10 初期マスクレイアウトパターン
20 経年劣化対象箇所抽出ステップ
30 −経年劣化実行ステップ
30 経年劣化実行ステップ
40 劣化マスクレイアウトパターン
50 経年劣化対策ステップ
70 特性確認ステップ
80 経年変化修正ステップ
90 補正マスクレイアウトパターン
200、300、400、500、600、700、800、900
1層目配線
210、310、410、510、610、710、810、910
第1の接続ビア
211、311、411、511、611、712、812、912
第1の2層目配線
220、320、420、520、620、720、820、820
第2の接続ビア
221、321、421、521、621、711、811、911
第1の領域
222、322、422、522、622、722、822、922
第2の2層目金属配線
223、323、423、523、623、713、813、913
第2の領域
230 第5の領域
330 第4の接続ビア
430 第3の接続ビア
530 第6の領域
630 除去領域
721、821、921 第3の領域
723、823、923 第4の領域
771 第7の領域
870 ビア除去箇所
970 第4の接続ビア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のマスクレイアウトパターンで示され、半導体デバイスおよび金属配線を有する半導体集積回路装置の内、経年変化により特性が劣化する劣化発生箇所を求めるステップ(a)と、
前記第1のマスクレイアウトパターンを変形して、経年変化後の前記半導体集積回路装置を示す第2のマスクレイアウトパターンを生成するステップ(b)と、
前記第2のマスクレイアウトパターンで示される前記半導体集積回路装置の特性を評価するステップ(c)と、
前記ステップ(c)で得られた結果に基づいて前記第1のマスクレイアウトパターンを修正することで、前記半導体集積回路装置の経年変化による特性の劣化を抑制するステップ(d)とを備えた信頼性設計支援方法。
【請求項2】
前記ステップ(c)では、経年変化後の前記半導体集積回路装置が初期の特性を維持できるか否かを判断し、
前記ステップ(d)では、前記第1のマスクレイアウトパターンの内、前記ステップ(c)で所望の特性が得られない箇所を修正する請求項1に記載の信頼性設計支援方法。
【請求項3】
前記ステップ(a)では、DRCを用いて前記第1のマスクレイアウトパターンから、前記劣化発生箇所を抽出する請求項1または2に記載の信頼性設計支援方法。
【請求項4】
前記ステップ(a)では、LRCを用いて前記第1のマスクレイアウトパターンから、前記劣化発生箇所を抽出する請求項1または2に記載の信頼性設計支援方法。
【請求項5】
前記ステップ(a)では、前記劣化発生箇所において劣化が発生する確率をさらに求め、
前記ステップ(b)では、前記確率を基に、前記第2のマスクレイアウトパターンを生成する請求項1〜4のうちいずれか1つに記載の信頼性設計支援方法。
【請求項6】
前記劣化発生箇所は、前記金属配線の一部領域であり、
前記ステップ(b)では、前記第1のマスクレイアウトパターンにおける前記金属配線の一部領域の幅を小さくすることで、前記第2のマスクレイアウトパターンを生成する請求項1〜5のうちいずれか1つに記載の信頼性設計支援方法。
【請求項7】
前記ステップ(d)では、前記第1のマスクレイアウトパターンにおける前記金属配線の幅を大きくする請求項6に記載の信頼性設計支援方法。
【請求項8】
前記劣化発生箇所は、前記金属配線の内、配線幅が減少する領域である請求項6または7に記載の信頼性設計支援方法。
【請求項9】
前記劣化発生箇所は、前記金属配線の一部領域であり、
前記ステップ(b)では、前記第1のマスクレイアウトパターンにおける前記金属配線の一部領域に接続されるビアの個数を減少させることで、前記第2のマスクレイアウトパターンを生成する請求項1〜5のうちいずれか1つに記載の信頼性設計支援方法。
【請求項10】
前記ステップ(b)では、前記ビアをn個減少させることで、前記第2のマスクレイアウトパターンを生成し、nは正の実数からなる請求項9に記載の信頼性設計支援方法。
【請求項11】
前記ステップ(d)では、前記第1のマスクレイアウトパターンにおける前記ビアの個数を増加させる請求項9または10に記載の信頼性設計支援方法。
【請求項12】
前記ステップ(d)では、前記第1のマスクレイアウトパターンにおける前記ビアの前記金属配線と接触する部分の面積を大きくする請求項9〜11のうちいずれか1つに記載の信頼性設計支援方法。
【請求項13】
前記ステップ(c)は、前記第2のマスクレイアウトパターンから前記半導体デバイスおよび前記金属配線の回路情報を抽出するステップと、前記回路情報を用いて回路シミュレーションを行い、前記半導体集積回路装置の特性を評価するステップとを含んでいる請求項1〜12のうちいずれか1つに記載の信頼性設計支援方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2008−210983(P2008−210983A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−45989(P2007−45989)
【出願日】平成19年2月26日(2007.2.26)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】