説明

傾斜角測定方法及び光学式測定装置

【課題】測定対象に設けられた穴の傾斜角を高精度で測定すること。
【解決手段】測定対象130の穴132を含む領域の原画像データを取得し、断面が面状の第1測定用光を測定対象130の穴132を含む領域に照射した状態で前記領域の第1画像データを取得し、断面が複数の線状光である第2測定用光を穴132を含む領域に照射した状態で前記領域の第2画像データを取得し、第1画像データと原画像データの差をとることによって、穴132を含む領域における第1測定用光に関する第3画像データを取得し、第2画像データと原画像データの差をとることによって、穴132を含む領域における第2測定用光に関する第4画像データを取得し、第3画像データにおける穴132周縁部と第4画像データにおける第2測定用光との複数の交点の位置データを算出し、前記位置データを用いて穴132の傾斜角を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
測定対象の穴の傾斜角を光学的に測定する傾斜角測定方法及び光学式測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体レーザ等の光源から発生した測定用光を測定対象に照射し、前記測定対象で反射した前記測定用光を検出することによって、三角測量法を用いて、所定位置から測定対象までの距離や前記測定対象の3次元形状等、測定対象についての長さに関する情報を光学的に測定する光学式測定装置が開発されている。光学的に測定する方式として、光源及び光検出部を各々1つ用いて光学的に測定する光学式測定装置(例えば、特許文献1参照)と、1つの光源と2つの光検出部を用いて光学的に測定する光学式装置が開発されている(例えば特許文献2参照)。
【0003】
光学的に測定する用途は多岐にわたっており、その一つの例として、測定対象に設けられた穴の中心位置や穴径等を測定する方法が開発されている(例えば、特許文献3参照)。
特許文献3記載の発明では、レーザスポットを用いて測定対象の穴を相互に交差する方向に走査することにより、前記穴縁部の4点の座標を取得し、前記座標に基づいて、前記穴の中心位置や穴径を算出するように構成している。
【0004】
特許文献3記載の発明では、レーザスポットを用いて走査することによって前記穴縁部の座標を取得するようにしているため、走査に時間がかかり、測定に長時間要するという問題がある。
特許文献4記載の発明のように、断面が線状の複数の光ビームを発生する光源が知られているが、特許文献4記載には単に光源としての発明が開示されているにすぎず、光学的な測定に応用することは何ら記載されていない。
【0005】
一方、所定位置を基準として、測定対象に設けられた穴の傾斜角を測定することが求められる場合がある。一般に、加工された穴には、その周縁角部にバリ、ダレあるいは面取りによる丸み等が存在するため、穴の周縁角部は先鋭になっておらず、したがって、穴の角部の位置を正確に測定することは困難である。
所定位置を基準として穴の傾斜角を測定する場合、当該穴の周縁角部の位置データを用いて算出する方法が考えられるが、前記理由から、周縁角部の測定誤差が大きくなるため、穴の傾斜角を正確に算出することが困難であり、誤差が大きくなるという問題がある。
【0006】
【特許文献1】特開2004−340856号公報
【特許文献2】特開2007−198841号公報
【特許文献3】特開2000−18914号公報
【特許文献4】特開平8−43610号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、測定対象に設けられた穴の傾斜角を高精度で測定することが可能な傾斜角測定方法を提供することを課題としている。
また本発明は、測定対象に設けられた穴の傾斜角を高精度で測定することが可能な光学式測定装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、測定対象の穴を含む領域の原画像データを取得する第1工程と、前記測定対象の穴を含む領域に断面が面状の第1測定用光を照射した状態で、前記測定対象の穴を含む領域の第1画像データを取得する第2工程と、前記測定対象の穴を含む領域に断面が複数の線状である第2測定用光を照射した状態で、前記測定対象の穴を含む領域の第2画像データを取得する第3工程と、前記第1画像データと前記原画像データの差をとることによって、前記穴を含む領域における前記第1測定用光に関する第3画像データを取得する第4工程と、前記第2画像データと前記原画像データの差をとることによって、前記穴を含む領域における前記第2測定用光に関する第4画像データを取得する第5工程と、前記第3画像データにおける穴周縁部と前記第4画像データにおける前記第2測定用光との複数の交点の位置データを算出し、前記位置データを用いて前記穴の傾斜角を算出する第6工程とを備えて成ることを特徴とする傾斜角測定方法が提供される。
【0009】
第1工程において、測定対象の穴を含む領域の原画像データを取得する。第2工程において、前記測定対象の穴を含む領域に断面が面状の第1測定用光を照射した状態で、前記測定対象の穴を含む領域の第1画像データを取得する。第3工程において、前記測定対象の穴を含む領域に断面が複数の線状である第2測定用光を照射した状態で、前記測定対象の穴を含む領域の第2画像データを取得する。第4工程において、前記第1画像データと前記原画像データの差をとることによって、前記穴を含む領域における前記第1測定用光に関する第3画像データを取得する。第5工程において、前記第2画像データと前記原画像データの差をとることによって、前記穴を含む領域における前記第2測定用光に関する第4画像データを取得する。第6工程において、前記第3画像データにおける穴周縁部と前記第4画像データにおける前記第2測定用光との複数の交点の位置データを算出し、前記位置データを用いて前記穴の傾斜角を算出する。
【0010】
ここで、前記第2測定用光は断面が線状で相互に直交する光ビームまたは断面が線状で所定間隔に配置された複数の平行な光ビームであり、前記第1測定用光は拡散光であるように構成してもよい。
【0011】
また本発明によれば、断面が面状の第1測定用光を出力する第1光源部と、断面が複数の線状である第2測定用光を出力する第2光源部と、測定対象の穴を含む領域の原画像データを、前記測定対象の穴を含む領域に前記第1測定用光を照射した状態で前記測定対象の穴を含む領域の第1画像データを、及び、前記測定対象の穴を含む領域に前記第2測定用光を照射した状態で前記測定対象の穴を含む領域の第2画像データを取得する検出手段と、前記第1画像データと前記原画像データの差をとることによって前記穴を含む領域における前記第1測定用光に関する第3画像データを取得し、前記第2画像データと前記原画像データの差をとることによって前記穴を含む領域における前記第2測定用光に関する第4画像データを取得し、前記第3画像データにおける穴周縁部と前記第4画像データにおける前記第2測定用光との複数の交点の位置データを算出して、前記位置データを用いて前記穴の傾斜角度を算出する算出手段とを備えて成ることを特徴とする光学式測定装置が提供される。
【0012】
第1光源部は、断面が面状の第1測定用光を出力する。第2光源部は、断面が複数の線状である第2測定用光を出力する。検出手段は、測定対象の穴を含む領域の原画像データを、前記測定対象の穴を含む領域に前記第1測定用光を照射した状態で前記測定対象の穴を含む領域の第1画像データを、及び、前記測定対象の穴を含む領域に前記第2測定用光を照射した状態で前記測定対象の穴を含む領域の第2画像データを取得する。算出手段は、前記第1画像データと前記原画像データの差をとることによって前記穴を含む領域における前記第1測定用光に関する第3画像データを取得し、前記第2画像データと前記原画像データの差をとることによって前記穴を含む領域における前記第2測定用光に関する第4画像データを取得し、前記第3画像データにおける穴周縁部と前記第4画像データにおける前記第2測定用光との複数の交点の位置データを算出して、前記位置データを用いて前記穴の傾斜角度を算出する。
【0013】
ここで、前記第2測定用光は断面が線状で相互に直交する光ビームであり、前記第1測定用光は拡散光であるように構成してもよい。
この場合、前記穴が円形であれば、前記算出手段は、下記式に基づいて前記穴の傾斜角を算出するように構成してもよい。
θX=tan−1((Z1−Z2)/(Y1−Y2))
θY=tan−1((Z3−Z4)/(X3−X4))
但し、θXはX軸周りの傾斜角、θYはY軸周りの傾斜角であり、又、X3、X4、Y1、Y2、Z1〜Z4は前記測定対象表面上の前記穴の周縁部と前記線状光との間の4つの交点P1〜P4の座標であり、又、X3、X4は2つの交点P3、P4のX座標であり、又、Y1、Y2は2つの交点P1、P2のY座標であり、又、Z1〜Z4は4つの交点P1〜P4のZ座標である。
【0014】
また、前記第2測定用光は、断面が線状で所定間隔に配置された複数の平行な光ビームであり、前記第1測定用光は拡散光であるように構成してもよい。
この場合、前記穴が円形であれば、前記算出手段は、下記式に基づいて前記穴の傾斜角を算出するように構成してもよい。
θX=tan−1((Z6O−Z1O)/(Y6O−Y1O))
θY=tan−1((Z4R−Z4L)/(X4R−X4L))
但し、θXはX軸周りの傾斜角、θYはY軸周りの傾斜角であり、又、Y10、Y60、Z10、Z60は前記穴の両側に位置し前記穴と交差しない2つの線状光と前記穴の中心を通り前記2つの線状光に直交する線との交点のY座標及びZ座標であり、又、X4R、Z4R、X4L、Z4Lは前記穴の差し渡しが最長の線状光と前記測定対象表面上の前記穴の周縁部との間の2つの交点のX座標、Z座標である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、測定対象に設けられた穴の傾斜角を高精度で測定することが可能な傾斜角測定方法が提供できる。
また、本発明によれば、測定対象に設けられた穴の傾斜角を高精度で測定することが可能な光学式測定装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係る傾斜角測定方法、及び、前記傾斜角方法に好適な光学式測定装置について説明する。尚、各図において同一部分には同一符号を付している。
図1は、本発明の実施の形態に係る傾斜角測定方法に使用する光学式測定装置の平面図で、ケース本体の一部を省略して内部を示した図である。
図2は図1の光学式測定装置の正面図であり又、図3は図1の光学式測定装置の左側面図であり、各々、ケース本体の一部を省略して内部を示した図である。
【0017】
本実施の形態に係る光学式測定装置100は、ケース本体101、ケース本体101の前面に配設された非透光性の前面板102、前面板102の貫通穴を覆うように取り付けられケース本体101内とケース本体101外間の光通過を可能にする円板状の第1〜第3窓部103〜105を備えている。第1〜第3窓部103〜105は長方形状等の他の形状にしてもよい。
第1〜第3窓部103〜105は、透光性部材によって構成され、防塵機能を有すると共に赤外線を遮断して熱を遮蔽する機能を備えている。ケース本体101と前面板102及び第1〜第3窓部103〜105により、防塵機能を有する密閉ケースが構成されている。
【0018】
第1窓部103は第1光軸119と直交するように前面板102に取り付けられると共に第1窓部103の中心を光軸119が通る位置に取り付けられている。第2光軸120と第3光軸121は、光軸に対して所定角度傾斜すると共に、光軸119を軸として対称に配置されている。第2、第3窓部104、105は、各々、第2、第3光軸120、121と直交するように前面板102に取り付けられると共に、相互に光軸119を軸として対称になる位置に取り付けられている。第2、第3窓部104、105は、光軸119に対して、逆方向に所定角度傾斜するよう取り付けられている。また、第2窓部104の中心を光軸120が通り、第3窓部105の中心を光軸121が通るように配置されている。
【0019】
ケース本体101内には、断面が面状の光である第1測定用光を測定対象130に向けて出力する第1光源部109、及び、断面が複数の線状光によって構成された第2測定用光(本実施の形態では十字状光)を測定対象130に向けて出力する第2光源部106を備えた光源部125が所定位置に取り付けられている。ケース本体101の内側から外側に向かって、第2光源部106、第1光源部109、第1窓部103の順に、光軸119に沿って並設されている。
尚、測定対象130については後述するが、図1に測定対象130の断面図を示し、図2及び図3では測定対象130は省略して描いている。
【0020】
第2光源部106は、スポット状の光ビームを発生する発光素子107と前記光ビームを第2測定用光である十字状光に変換して出力する公知のプロジェクタ108を備えている。発光素子107は、レーザや発光ダイオード(LED)によって構成することができる。本実施の形態では、発光素子107は赤色光を出力するレーザによって構成している。第2光源部106から出力される十字状の第2測定用光の中心(交点)が光軸119に一致するように配置されている。第2測定用光は指向性を有する光であり、収束した光(光ビーム)である。
【0021】
第1光源部109は、長方形の貫通穴117の周囲に複数のLED110を配置した構成となっている。第1光源部109は、貫通穴117の中心が光軸119に一致するように配置されており、複数の発光素子(本実施の形態ではLED110)を同時に発光させることによって断面が面状の第1測定用光を出力する。第1測定用光は第2測定用光とは異なる指向特性を有する光である。第1測定用光は拡散光(ランダムな方向に進行する光が集まった光)であり、指向性を有しない光である。
【0022】
貫通穴117の形状は、第1光源部109の構成によって決定することができる。例えば、第1光源部109の複数のLEDの配置構成がリング状(換言すればドーナツ状)の場合には、丸形の貫通穴にする。外形が直方体状のLEDを複数離れて平行に配置する場合には、長方形の貫通穴にする。
第1測定用光、第2測定用光は、各々、第1測定用光と第2測定用光のいずれも測定対象130に照射しない状態で得られる測定対象130の画像(背景画像)と、第1測定用光、第2測定用光を、各々、照射した状態で得られる測定対象の画像(対象部位画像)との相違を明確にできるような色の光を使用する。
【0023】
本実施の形態では、測定用光を検出するしきい値として、所定の輝度値をしきい値として設定している。また、背景画像と対象部位画像を区別するため、第1測定用光として白色光を選択して使用している。背景画像が白色の場合には、対象部位画像を得るための光の輝度値を高めるか、背景と対象部位を明確に区別することができるような波長の光(例えば輝度差の得られる波長の光)を用いるようにしてもよい。
第2光源部106から出力される十字状光である第2測定用光は、光軸119に沿って、第1光源部109の貫通穴117及び第1窓部103を通ってケース本体101の外部に出力される。第1光源部109から出力される面状光である第1測定用光は、光軸119に沿って、第1窓部103を通ってケース本体101の外部に出力される。
【0024】
また、ケース本体101内には、複数(本実施の形態では2つ)の光検出部111、114が所定位置に配置されている。第1光検出部111は、測定用光を受光する受光レンズ112及び受光レンズ112が受光した測定用光を検出する光検出素子113を備えている。受光レンズ112の中心及び光検出素子113の中心を結ぶ第2光軸120上に、光検出素子113、受光レンズ112、第2窓部104の順で、ケース本体101の内側から外側に向かって並設されている。光検出素子113としては、例えば平面状のCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型光センサやCCD(Charge Coupled Device)センサが使用できる。
【0025】
第2光検出部114は、測定用光を受光する受光レンズ115及び受光レンズ115が受光した測定用光を検出する光検出素子116を備えている。受光レンズ115の中心及び光検出素子116の中心を結ぶ第3光軸121上に、光検出素子116、受光レンズ115、第3窓部105の順で、ケース本体101の内側から外側に向かって並設されている。光検出素子116として、光検出素子113と同様に、CMOS型光センサやCCDセンサが使用できる。
【0026】
位置合わせ部材118は光検出部111、114の取り付け位置を決めるための補助具である。位置合わせ部材118の両斜辺に光検出部111、114を当接させた状態で光検出部111、114をケース本体101に取り付けることにより、光検出部111及び光検出部114の相対的な位置関係を予め既知の値に設定した状態で容易に固定できるようにしている。光検出部111、114を構成する受光レンズ112、115及び光検出素子113、116の相対的な位置関係が既知の値に設定される。
【0027】
光検出部111、114の相対的な位置関係を所定の既知の関係になるが、その一方、光源部125は、光検出部111、114との位置関係は規定せずに、制約のない自由な位置に取り付けられる。
光軸120、121は光軸119に対して対称となるように位置している。また、光軸120、121は光軸119に対して所定角度傾斜するように配置しており、これによって、光検出部111、114から所定距離範囲内を、高精度に測定可能な焦点領域に設定している。
【0028】
また、ケース本体101内には、第1光源部109及び第2光源部106の発光動作の制御処理、第1光検出部111及び第2光検出部114の光検出動作の制御処理、第1光検出部111及び第2光検出部114が検出した測定用光に基づいて測定対象130についての長さに関する情報等の算出処理、第1光検出部111及び第2光検出部114が検出した測定用光データの記憶部1127に対する書き込み及び読み出し制御処理等を行う制御部126が設けられている。
【0029】
また、ケース本体101内には、第1光検出部111及び第2光検出部114が検出した測定用光のデータや制御部126が算出した測定対象130についての長さに関する情報等の各種データ、制御部126を中央処理装置(CPU)によって構成した場合に実行されるプログラム等を記憶する記憶部127が設けられている。
尚、第1光検出部111及び第2光検出部114は検出手段を構成し、制御部126は算出手段を構成し、記憶部127は記憶手段を構成している。
【0030】
検出手段は、測定対象の穴を含む領域の原画像データを、前記測定対象の穴を含む領域に前記第1測定用光を照射した状態で前記測定対象の穴を含む領域の第1画像データを、及び、前記測定対象の穴を含む領域に前記第2測定用光を照射した状態で前記測定対象の穴を含む領域の第2画像データを取得することができる。
また、算出手段は、前記第1画像データと前記原画像データの差をとることによって前記穴を含む領域における前記第1測定用光に関する第3画像データを取得し、前記第2画像データと前記原画像データの差をとることによって前記穴を含む領域における前記第2測定用光に関する第4画像データを取得し、前記第3画像データにおける穴周縁部と前記第4画像データにおける前記第2測定用光との複数の交点の位置データを算出して、前記位置データを用いて前記穴の傾斜角度を算出することができる。
【0031】
図4は、本実施の形態で測定する測定対象130の斜視図である。図1及び図4において、測定対象130は、平面である測定対象表面131、穴132、穴132の周縁部に形成された角部133を備えている。
図4の例では、穴132は貫通穴であり又、円形である。また、角部133は面取されており、面取された部分は加工によってバリが生じたり、丸みを帯びている。角部133は、角部133の内側に円形状の内側縁部134を有し又、角部133の外側に円形状の外側縁部135を有している。縁部134は貫通穴134の端部であり、又、縁部135は測定対象表面131の端部である。
【0032】
図5は、本発明の実施の形態に係る光学式測定装置を用いて、測定対象130の穴132の中心や半径等の測定対象130についての長さに関する情報を測定する場合の説明図である。測定対象130についての長さに関する情報としては、例えば、所定位置を基準とする測定対象130の穴132の中心座標、穴132の半径や直径、所定位置を基準とする穴132の傾斜角、所定位置を基準とする測定対象130上の点の座標、所定位置から測定対象130上の所定点までの距離、測定対象130の2次元又は3次元形状、所定位置を基準とする測定対象130の傾きがある。
【0033】
以下、図1〜図5を用いて、測定対象130の穴132の中心座標等、測定対象130についての長さに関する情報の測定処理を説明する。
先ず、第1光軸119が穴132内に位置するように、光学式測定装置100と測定対象130の相対的な位置関係を設定する。
この状態で、第2光源部106の発光素子107がスポット状の光ビームを発生すると、プロジェクタ108は、発光素子107からの前記光ビームを十字状の第2測定用光に変換して出力する。
【0034】
第2測定用光は、貫通穴117、第1窓部103を介して、測定対象130に照射される。このとき、第2測定用光502の十字中心501が光軸119に一致しているため、図5に示すように、第2測定用光502の十字中心501は穴132内に位置することになる。第2測定用光502は測定対象130の測定対象表面131に対して垂直に照射される。
測定対象130に照射された第2測定用光502のうち、穴132に照射された第2測定用光502は穴132を通過し、測定対象130における穴132を除く領域に照射された第2測定用光502は反射する。
【0035】
測定対象130で反射した第2測定用光502は、第2窓部104、第3窓部105を介して、各々、第1光検出部111、第2光検出部114に入射する。
第1光検出部111に入射した第2測定用光502は、受光レンズ112を介して、光検出素子113によって検出される。第2光検出部114に入射した第2測定用光502は、受光レンズ115を介して、光検出素子116によって検出される。
【0036】
制御部126は、光検出素子113、116によって検出された第2測定用光502に基づいて、公知の手法(例えば特許文献2記載の手法)により、穴132の中心座標等を算出する。
図5に示すように、測定対象130が有する穴132の中心P0のXYZ座標を(X0,Y0,Z0)とする。また、貫通穴132の内側縁部134と十字状の第2測定用光502との間の4つの交点P1、P2、P3、P4のXYZ軸座標を各々、(X1,Y1,Z1)、(X2,Y2,Z2)、(X3,Y3,Z3)、(X4,Y4,Z4)とする。各点P1〜P4のXYZ座標値は、光検出部111、116が検出した第2測定用光502に基づいて算出される値である。
【0037】
穴132の中心座標P(X0,Y0,Z0)は、点P1〜P4のXYZ座標値を用いて、下記3つの式(1)のように表される。
X0=(X1−X2−X3+X4)/(2(X1−X2−X3+X4))
Y0=(Y1−Y2−Y3+Y4)/(2(Y1−Y2−Y3+Y4))
Z0=(Z1−Z2−Z3+Z4)/(2(Z1−Z2−Z3+Z4)) ・・・(1)
【0038】
X1=X2、Y3=Y4の場合、即ち、基軸(受光レンズ112と受光レンズ115を結ぶ線分)とX軸が平行(換言すれば、Y軸が直交)の場合には、穴132の中心座標P0(X0,Y0,Z0)は、下記3つの式(2)によって表すことができる。
X0=(X4−X3)/2
Y0=(Y4−Y3)/2
Z0=(Z1−Z2−Z3+Z4)/(2(Z1−Z2−Z3+Z4)) ・・・(2)
【0039】
穴132の半径Rは、点P1、P2、P3およびP4の各々について、下記4つの式(3)のように記述できる。但し、R1、R2、R3、R4は、各々、穴中心P0と、点P1、P2、P3、P4の距離である。
R1=√((X1−X0)+(Y1−Y0)+(Z1−Z0)
R2=√((X2−X0)+(Y2−Y0)+(Z2−Z0)
R3=√((X3−X0)+(Y3−Y0)+(Z3−Z0)
R4=√((X4−X0)+(Y4−Y0)+(Z4−Z0)) ・・・(3)
【0040】
穴132の直径dは半径を2倍することにより、半径R1、R2、R3、R4の夫々から求めることができる。理想状態ではR1=R2=R3=R4である。下記式(4)によって半径R1〜R4の平均値から求めるようにしてもよい。
d=2R=(R1+R2+R3+R4)/2 ・・・(4)
点P1〜P4が全て測定対象表面131上の点であれば、穴132の傾斜角θは点P1〜P4の座標を用いて表すことができる。即ち、X軸回りの傾斜角θX、Y軸回りの傾斜角θYは、下記2つの式(5)のように表すことができる。
θX=tan−1((Z1−Z2)/(Y1−Y2))
θY=tan−1((Z3−Z4)/(X3−X4)) ・・・(5)
【0041】
しかしながら、角部133は面取りされている場合、面取部は加工によってバリが生じたり、丸みを帯びているため、内側の周縁部134は測定対象表面131上の点ではない。したがって、点P1〜P4の座標を用いて前記式(5)によって傾斜角θX、θYを算出した場合、正確な傾斜角を得ることができない。正確な傾斜角を得るためには、測定対象表面131上の点を用いて算出する必要がある。
本実施の形態では、以下のようにして、測定対象表面131上の複数の点の座標を測定し、前記測定した点を用いて正確な傾斜角を得るようにしている。
【0042】
以下、穴132の傾斜角を正確に測定する方法を説明する。
図6〜図9は、本発明の実施の形態に関して、傾斜角を測定するための説明図である。以下、図1〜図9を参照して、測定対象130の穴132の傾斜角の測定処理を説明する。
先ず、制御部126は、光源部125が発光しないように制御した状態で、光検出部111、114によって測定対象130の穴132周辺の画像を検出し、両光検出部111、114によって得られた画像を合成することにより、穴132を含む測定対象130の画像データを得る。
【0043】
図6は、光検出部111、114によって検出された穴132周辺の画像を合成して得られた、測定対象130の穴132周辺の画像を示す図である。制御部126は、このようにして、測定対象130を光源部125によって照射しない状態で得られた、測定対象130の穴132を含む領域の画像(原画像)を原画像データとして記憶部127に記憶する。
【0044】
次に、制御部126は、第2光源部106は発光させずに第1光源部109のLED110を発光させ、断面が面状の第1測定用光701によって測定対象130の穴132を含む領域を照明する。光検出部111、114は、測定対象130の穴132を含む領域によって反射された第1測定用光701を検出する。制御部126は、光検出部111、114が検出した測定対象130の穴132周辺の画像を用いて、前記両画像を合成することにより、測定対象130の穴132を含む領域の画像を得る。
【0045】
図7は、光検出部111、114によって検出された測定対象130の穴132周辺の画像を合成して得られた、測定対象130の穴132を含む領域の画像を示す図である。穴132を含む測定対象130の領域が第1測定用光701によって照射された状態の画像が得られている。
第1測定用光701は拡散光であるが、第1光源部109からの第1測定用光701によって垂直(測定対象表面131の法線方向)に照射された領域では、所定値以上の高い輝度の第1測定用光701が反射されて光検出部111、114によって検出される。したがって、外側縁部135よりも外側の平坦な面である測定対象表面131で反射した第1測定用光701は、光検出部111、114によって検出される。
【0046】
しかしながら、第1測定用光701は拡散光であるため、第1測定用光701によって垂直には照射されない領域(図7では角部133や穴132内壁面)では、所定輝度以上の第1測定用光701は光検出部111、114方向に殆ど反射されない。したがって、外側縁部135よりも内側の領域(角部133や穴132内壁面)で反射した第1測定用光701は、光検出部111、114では殆ど検出されないことになる。
【0047】
よって、図7に示すように、角部133の外側縁部135よりも外側で第1測定用光701によって照射された領域の測定対象表面131の画像が得られることになる。制御部126は、このようにして、測定対象130を第1測定用光701によって照射した状態で得られた、測定対象130の穴132を含む領域の画像を第1画像データとして記憶部127に記憶する。
【0048】
次に、制御部126は、第1光源部109は発光させずに第2光源部106のみを発光させて、断面が十字状の第2測定用光502によって測定対象130の穴132を含む領域を照明する。この状態で、光検出部111、114は測定対象130の穴132周辺の画像を検出し、制御部126は、両光検出部111、114によって得られた画像を合成することにより、測定対象130の穴132を含む領域の画像を得る。
図8は、光検出部111、114によって検出された測定対象130の穴132周辺の画像を合成して得られた、測定対象130の穴132を含む領域の画像を示す図である。穴132を含む測定対象130の領域が第2測定用光502によって照射された状態の画像が得られている。
【0049】
第2測定用光502は所定の進行方向に絞られた十字状の収束光であるため、第2光源部106からの第2測定用光502によって垂直(測定対象表面131の法線方向)に照射された領域では、所定輝度よりも高い輝度の第2測定用光502が反射されて光検出部111、114によって検出され又、第2測定用光502によって垂直には照射されない領域(図8では角部133や穴132内壁面)でも、所定輝度よりも高い輝度の第2測定用光502が反射されて光検出部111、114によって検出される。
【0050】
したがって、外側縁部135よりも内側の領域(図8では角部133や穴132内壁面)で反射した第2測定用光502も、光検出部111、114によって検出されることになる。
図8の例では、第2測定用光502によって角部133の内側縁部134まで照射された画像が得られている。制御部126は、このようにして、測定対象130を第2測定用光502によって照射した状態で得られた、測定対象130の穴132を含む領域の画像を第2画像データとして記憶部127に記憶する。
【0051】
次に、制御部126は、記憶部127に記憶した原画像データ、第1、第2画像データを用いて、以下のようにして、穴132の傾斜角を求める。
先ず、制御部126は、第1画像データから原画像データを差し引くことによって、測定対象130を照射した第1測定用光701に関する画像データ(第3画像データ)を得る。これにより、図7の第1測定用光701の部分の画像データが第3画像データとして得られる。第3画像データは、測定対象130上の平面領域である測定対象表面131の画像データであり、測定対象130における外側縁部135よりも外側の領域の画像データである。
【0052】
次に、制御部126は、第2画像データから原画像データを差し引くことによって、測定対象を照射した第2測定用光502に関する画像データ(第4画像データ)を得る。これにより、図8の第2測定用光502の部分の画像データが第4画像データとして得られる。第4画像データは、測定対象130における内側縁部134よりも外側の領域の画像データである。
【0053】
次に、図9に示すように、制御部126は、第3画像データと第4画像データを重ねることにより、第4画像データの第2測定用光502が測定対象130表面の平面領域(測定対象表面131上)に位置する部分を検出する。具体的には、第3画像データにおける角部133の外側縁部135と、第4画像データにおける第2測定用光502との4つの交点P1〜P4を検出する。
【0054】
制御部126は、交点P1〜P4の座標データを用いて、前記式(5)によって穴132のX軸回りの傾斜角θX、Y軸回りの傾斜角θYを算出する。交点P1〜P4は測定対象130表面と同一平面上の点であり、穴132の傾斜角を正確に求めることが可能になる。穴132の表面は測定対象130の表面と同一平面であるため、穴132の傾斜角を求めることによって測定対象130の傾斜角も得られることになる。
以上のように、本実施の形態によれば、下記第1工程〜第6工程の処理を行うことによって測定対象130の穴132の傾斜角を測定している。
【0055】
即ち、第1工程では、光源125が第1測定用光901及び第2測定用光502を出力しない状態で、測定対象130の穴132を含む領域の原画像データを取得する。第2工程では、測定対象130の穴132を含む領域に第1光源部109から断面が面状の第1測定光701のみを照射した状態で、測定対象130の穴132を含む領域の第1画像データを取得する。第3工程では、測定対象130の穴132を含む領域に断面が複数の線状光(本実施の形態では十字状光)である第2測定用光502を照射した状態で、測定対象130の穴132を含む領域の第2画像データを取得する。
【0056】
第4工程では、前記第1画像データと原画像データの差をとることによって、穴132を含む領域における第1測定用光701に関する第3画像データを取得する。第5工程では、前記第2画像データと原画像データの差をとることによって、穴132を含む領域における第2測定用光502に関する第4画像データを取得する。第6工程では、前記第3画像データにおける第1測定用701の穴132の外側周縁部135と、前記第4画像データにおける第2測定用光502との複数の交点P1〜P4の位置データを算出し、前記位置データを用いて幾何学的に、所定位置に対する穴132の傾斜角を算出するようにしている。
【0057】
したがって、測定対象130に設けられた穴132の傾斜角を高精度で測定することが可能な傾斜角測定方法を提供することが可能になる。また、測定対象130に設けられた穴132の傾斜角を高精度で測定することが可能な光学式測定装置100を提供することが可能になる。
尚、前記第1工程〜第6工程は、必ずしも前記順序で行う必要はなく、順序を入れ換えて実行するようにしてもよい。
【0058】
図10は、本発明の他の実施の形態の処理を示す説明図である。前述した実施の形態では、第2測定用光502として断面が十字状の測定用光を用いたが、断面が複数の線状である線状光であれば他の構成の測定用光を用いることが可能であり、図10の例は、第2測定用光1001として断面が線状で所定間隔に配置された複数の平行な光ビーム(マルチライン光)を用いた例である。
【0059】
第2測定用光1001は、前記実施の形態で用いた第2測定用光502と同様に、指向性を有する光であり、収束した光(光ビーム)である。したがって、測定対象130を第2測定用光1001によって照射した場合、光検出部111、114では、平坦な測定対象表面131から内側縁部134に至る領域で反射した所定輝度以上の第2測定用光1001が検出されることになる。
本他の実施の形態と前記実施の形態とは、第2測定用光の構成が異なるのみであり、構成図その他は同じであるため、図1〜図10を参照して相違点についてのみ説明する。
【0060】
尚、図10では、第2測定用光1001は、基軸(受光レンズ112と受光レンズ115を結ぶ線分)に平行な光の例を挙げているが、前記基軸に直交する光でもよい。
図10において、本実施の形態では、第2測定用光1001は、相互に平行な6本の線状光L1〜L6を有している。各線状光L1〜L6相互の間隔は既知の値に設定されている。各線状光L1〜L6はX軸と平行である。尚、線状光は6本でなくてもよい。
【0061】
線状光L2が測定対象130の穴132の縁部134と交差する2点の中の左側の点、右側の点を各々、P2L、P2Rとする。同様に、線状光L3が測定対象130の穴132の縁部134と交差する2点の中の左側の点、右側の点を各々P3L、P3R、線状光L4が測定対象130の穴132の縁部134と交差する2点の中の左側の点、右側の点を各々P4L、P4R、線状光L5が測定対象130の穴132の縁部134と交差する2点の中の左側の点、右側の点を各々P5L、P5Rとする。
【0062】
点P2L、P2RのXYZ軸座標は各々、(X2L,Y2L,Z2L)、(X2R,Y2R,Z2R)で表される。同様に、点P3L、P3R、P4L、P4R、P5L、P5RのXYZ軸座標は各々、(X3L,Y3L,Z3L)、(X3R,Y3R,Z3R)、(X4L,Y4L,Z4L)、(X4R,Y4R,Z4R)、(X5L,Y5L,Z5L)、(X5R,Y5R,Z5R)で表される。
点P2Lと点P2R間、点P3Lと点P3R間、点P4Lと点P4R間、点P5Lと点P5R間の距離(差し渡し)を各々、d2、d3、d4、d5とする。
【0063】
また、点P2LとP2Rの中点、点P3LとP3Rの中点、点P4LとP4Rの中点、点P5LとP5Rの中点を各々、P2O、P3O、P4O、P5Oとして、それらを結ぶ直線をQとする。点P2O、P3O、P4O、P5OのXYZ軸座標を各々、(X20,Y20,Z20)、(X30,Y30,Z30)、(X40,Y40,Z40)、(X50,Y50,Z50)とする。直線Qと線状光L1の交点P10のXYZ軸座標を(X10,Y10,Z10)、直線Qと線状光L6の交点P60のXYZ軸座標を(X60,Y60,Z60)とする。
点PL1、PR1、PL2、PR2、PL3、PR3、PL4、PR4、PL5、PR5の各座標は測定によって得られる値である。また、点P10〜P60の座標、穴132の中心P0の座標、差し渡しd2、d3、d4、d5は計算によって得られる値である。
【0064】
X軸回りの傾斜角θXは、縁部134と交差しない線状光L1、L6上の点P10(X10,Y10,Z10)、点P60(X60,Y60,Z60)の座標を用いて下記式(6)のように表すことができる。
θX=tan−1((Z6O−Z1O)/(Y6O−Y1O)) ・・・(6)
Y軸回りの傾斜角θYは、差し渡しが最長d4の線状光L4の点PL4(X4L,Y4L,Z4L)、PR4(X4R,Y4R,Z4R)の座標を用いて下記式(7)のように表すことができる。
θY=tan−1((Z4R−Z4L)/(X4R−X4L)) ・・・(7)
尚、点P10、点P60、点PL4、点PR4の座標は後述するようにして得ることができる。
【0065】
正確な傾斜角は、前記実施の形態と同様に、(1)測定対象130を光源部125によって照射しない状態で得られた、測定対象130の穴132を含む領域の画像を原画像データとして取得し(図6参照)、(2)測定対象130を第1測定用光701によって照射した状態で得られた、測定対象130の穴132を含む領域の画像を第1画像データとして取得し(図7参照)、(3)測定対象130を第2測定用光1001によって照射した状態で得られた、測定対象130の穴132を含む領域の画像を第2画像データとして取得し、(4)原画像データ、第1、第2画像データ及び式(6)、(7)を用いて穴132の傾斜角を求めることができる。
【0066】
穴132の中心座標 P0(X0,Y0,Z0)は、直線Qの線上にある。図10の例では、右側の4点(P2R、P3R、P4R、P5R)または左側の4点(P2L、P3L、P4L、P5L)、あるいは、前記計8点から、前記選択した各点を通るような楕円の方程式を算出(楕円フィティング)することで、楕円中心すなわち傾斜した穴132の中心P0の座標を求めることができる。以下、その解析法を説明する。
【0067】
点P2R、P2L、P3R、P3L、P4R、P4L、P5L、P5Rについての半径R2R、R2L、R3R、R3L、R4R、R4L、R5R、R5Lは、以下の式(8)の通りであり、穴132が理想的な円形状の場合には各半径は等しい。
R2R=(X2R−X0)+(Y2R−Y0)+(Z2R−Z0)
R2L=(X2L−X0)+(Y2L−Y0)+(Z2L−Z0)
R3R=(X3R−X0)+(Y3R−Y0)+(Z3R−Z0)
R3L=(X3L−X0)+(Y3L−Y0)+(Z3L−Z0)
R4R=(X4R−X0)+(Y4R−Y0)+(Z4R−Z0)
R4L=(X4L−X0)+(Y4L−Y0)+(Z4L−Z0)
R5R=(X5R−X0)+(Y5R−Y0)+(Z5R−Z0)
R5L=(X5L−X0)+(Y5L−Y0)+(Z5L−Z0) ・・・(8)
【0068】
ここで、X2R、X2L、X3R、X3L、X4R、X4L、X5R、X5L、Y2R、Y2L、Y3R、Y3L、Y4R、Y4L、Y5R、Y5L、Z2R、Z2L、Z3R、Z3L、Z4R、Z4L、Z5R、Z5Lは測定によって得られる値であり、既知となる数値である。X0、Y0、Z0は未知数である。
例えば、穴132の右側の4点(P2R、P3R、P4R、P5R)を用いて、中心P0の座標を求める場合、上記8つの式(8)から穴132の右側の4点(P2R、P3R、P4R、P5R)の式を抽出すると下記4つの式(9)のようになる。
【0069】
R2R=(X2R−X0)+(Y2R−Y0)+(Z2R−Z0)
R3R=(X3R−X0)+(Y3R−Y0)+(Z3R−Z0)
R4R=(X4R−X0)+(Y4R−Y0)+(Z4R−Z0)
R5R=(X5R−X0)+(Y5R−Y0)+(Z5R−Z0) ・・・(9)
尚、式(9)において、X0が既知の場合には、4番目の式は不要である。
【0070】
各点の半径は等しいため、式(9)を用いて、R2R=R3R、R3R=R4R、R4R=R5R、R5R=R2Rとすると、下記4つの式(10)が成立する。
(X2R−X0)+(Y2R−Y0)+(Z2R−Z0)=(X3R−X0)+(Y3R−Y0)+(Z3R−Z0)
(X3R−X0)+(Y3R−Y0)+(Z3R−Z0)=(X4R−X0)+(Y4R−Y0)+(Z4R−Z0)
(X4R−X0)+(Y4R−Y0)+(Z4R−Z0)=(X5R−X0)+(Y5R−Y0)+(Z5R−Z0)
(X5R−X0)+(Y5R−Y0)+(Z5R−Z0)=(X2R−X0)+(Y2R−Y0)+(Z2R−Z0) ・・・(10)
【0071】
ここで、既知の係数をつぎのように置く。
A23=2(X2R−X3R)
B23=2(Y2R−Y3R)
C23=2(Z2R−Z3R)
D23=(X2R−X3R)+(Y2R−Y3R)+(Z2R−Z3R
【0072】
同様に A34、B34、C34、D34 および A45、B45、C45、D45 を置き、X0、Y0、Z0で記述すると、下記4つの式(11)が得られる。
A23・X0+B23・Y0+C23・Z0=D23
A34・X0+B34・Y0+C34・Z0=D34
A45・X0+B45・Y0+C45・Z0=D45 ・・・(11)
穴132の中心P0の座標(X0、Y0、Z0)は、下記3つの式(12)で表される。
【0073】
【数1】

・・・(12)
【0074】
穴132の半径Rは式(11)のX0、Y0、Z0を式(9)に代入することで求められる。穴132の直径は、それぞれの半径、またはそれらの平均値を2倍して求めることができる。
以上述べたように、本他の実施の形態によれば、相互に間隔が既知の複数の線状光より成る測定用光1001を用いて、測定対象130の穴132の傾斜角を正確に測定することが可能になる。特に、穴132と交差しない線状光を用いて傾斜角を測定することが可能になる。
【0075】
尚、前記各実施の形態では、2つの光検出部111、114を用いた光学式測定装置100を用いて三角測量法によって測定するように構成しているため、光源部125を、光検出部111、114とは位置関係が無関係な位置に設置できるという効果を奏するが、1つの光源部及び1つの光検出部を用いて三角測量法によって測定するように構成してもよい。この場合も、前記同様にして測定対象130の穴132の傾斜角を正確に測定することが可能になり又、各種の測定対象130についての長さに関する情報を測定することができる。
【0076】
また、相互の相違を明確にした背景画像と測定対象部位画像を得るために、測定用光の強さ(振幅)を利用する方法、測定用光の位相を利用する方法、測定用光の波長(または周波数)を利用する方法がある。強さを利用する方法として、輝度差を利用する方法(例えば2値化法)がある。位相を利用する方法として、照射した測定用光と反して戻ってきた測定用光の位相差を利用する方法(例えば偏光法)がある。また、波長を利用する方法として、波長即ち、色情報を利用する方法がある。背景画像と測定対象画像の相違を明確にするためにはいずれの方法も用いることができるが、前述した実施の形態のように輝度差を利用する方法は構成が簡単で高精度である。
また、前記各実施の形態では、穴の例として貫通穴132の例で説明したが、有底穴にも適用可能である。
また、穴の形状は必ずしも円形に限られない。
【産業上の利用可能性】
【0077】
少なくとも測定対象に形成された穴の傾斜角測定を測定する傾斜角測定方法や光学式測定装置に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の実施の形態に係る傾斜角測定方法に使用する光学式測定装置の平面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る光学式測定装置の正面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る光学式測定装置の左側面図である。
【図4】本発明の実施の形態における測定対象の斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態における測定動作の説明図である。
【図6】本発明の実施の形態における傾斜角測定の説明図である。
【図7】本発明の実施の形態における傾斜角測定の説明図である。
【図8】本発明の実施の形態における傾斜角測定の説明図である。
【図9】本発明の実施の形態における傾斜角測定の説明図である。
【図10】本発明の他の実施の形態における測定動作の説明図である。
【符号の説明】
【0079】
100・・・光学式測定装置
101・・・ケース本体
102・・・前面板
103〜105・・・窓部
106・・・第2光源部
107・・・発光素子
108・・・プロジェクタ
109・・・第1光源部
117・・・貫通穴
119〜121・・・光軸
110・・・LED
111、114・・・光検出部
112、115・・・受光レンズ
113、116・・・光検出素子
118・・・位置合わせ部材
125・・・光源部
126・・・制御部
127・・・記憶部
130・・・測定対象
131・・・測定対象表面
132・・・穴
133・・・角部
134・・・内側縁部
135・・・外側縁部
501・・・十字中心
502・・・第2測定用光
701・・・第1測定用光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の穴を含む領域の原画像データを取得する第1工程と、
前記測定対象の穴を含む領域に断面が面状の第1測定用光を照射した状態で、前記測定対象の穴を含む領域の第1画像データを取得する第2工程と、
前記測定対象の穴を含む領域に断面が複数の線状である第2測定用光を照射した状態で、前記測定対象の穴を含む領域の第2画像データを取得する第3工程と、
前記第1画像データと前記原画像データの差をとることによって、前記穴を含む領域における前記第1測定用光に関する第3画像データを取得する第4工程と、
前記第2画像データと前記原画像データの差をとることによって、前記穴を含む領域における前記第2測定用光に関する第4画像データを取得する第5工程と、
前記第3画像データにおける穴周縁部と前記第4画像データにおける前記第2測定用光との複数の交点の位置データを算出し、前記位置データを用いて前記穴の傾斜角を算出する第6工程とを備えて成ることを特徴とする傾斜角測定方法。
【請求項2】
前記第2測定用光は断面が線状で相互に直交する光ビームまたは断面が線状で所定間隔に配置された複数の平行な光ビームであり、前記第1測定用光は拡散光であることを特徴とする請求項1記載の傾斜角測定方法。
【請求項3】
断面が面状の第1測定用光を出力する第1光源部と、
断面が複数の線状である第2測定用光を出力する第2光源部と、
測定対象の穴を含む領域の原画像データを、前記測定対象の穴を含む領域に前記第1測定用光を照射した状態で前記測定対象の穴を含む領域の第1画像データを、及び、前記測定対象の穴を含む領域に前記第2測定用光を照射した状態で前記測定対象の穴を含む領域の第2画像データを取得する検出手段と、
前記第1画像データと前記原画像データの差をとることによって前記穴を含む領域における前記第1測定用光に関する第3画像データを取得し、前記第2画像データと前記原画像データの差をとることによって前記穴を含む領域における前記第2測定用光に関する第4画像データを取得し、前記第3画像データにおける穴周縁部と前記第4画像データにおける前記第2測定用光との複数の交点の位置データを算出して、前記位置データを用いて前記穴の傾斜角度を算出する算出手段とを備えて成ることを特徴とする光学式測定装置。
【請求項4】
前記第2測定用光は断面が線状で相互に直交する光ビームであり、前記第1測定用光は拡散光であることを特徴とする請求項3記載の光学式測定装置。
【請求項5】
前記穴は円形であり、前記算出手段は、下記式に基づいて前記穴の傾斜角を算出することを特徴とする請求項4記載の光学式測定装置。
θX=tan−1((Z1−Z2)/(Y1−Y2))
θY=tan−1((Z3−Z4)/(X3−X4))
但し、θXはX軸周りの傾斜角、θYはY軸周りの傾斜角であり、又、X3、X4、Y1、Y2、Z1〜Z4は前記測定対象表面上の前記穴の周縁部と前記線状光との間の4つの交点P1〜P4の座標であり、又、X3、X4は2つの交点P3、P4のX座標であり、又、Y1、Y2は2つの交点P1、P2のY座標であり、又、Z1〜Z4は4つの交点P1〜P4のZ座標である。
【請求項6】
前記第2測定用光は、断面が線状で所定間隔に配置された複数の平行な光ビームであり、前記第1測定用光は拡散光であることを特徴とする請求項3記載の光学式測定装置。
【請求項7】
前記穴は円形であり、前記算出手段は、下記式に基づいて前記穴の傾斜角を算出することを特徴とする請求項6記載の光学式測定装置。
θX=tan−1((Z6O−Z1O)/(Y6O−Y1O))
θY=tan−1((Z4R−Z4L)/(X4R−X4L))
但し、θXはX軸周りの傾斜角、θYはY軸周りの傾斜角であり、又、Y10、Y60、Z10、Z60は前記穴の両側に位置し前記穴と交差しない2つの線状光と前記穴の中心を通り前記2つの線状光に直交する線との交点のY座標及びZ座標であり、又、X4R、Z4R、X4L、Z4Lは前記穴の差し渡しが最長の線状光と前記測定対象表面上の前記穴の周縁部との間の2つの交点のX座標、Z座標である。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−117249(P2010−117249A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−290858(P2008−290858)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(391030077)株式会社ソアテック (30)
【Fターム(参考)】