説明

優れた特性を有するポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマー

本発明は、各例においてエチレン性不飽和モノマーの合計質量に対してa)0〜40質量%の、式中Rが水素またはメチルであり、R1が1〜5個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルキル基であり、R2およびR3が独自に水素または化学式−COOR'の基であり、その式中R'が1〜5個の炭素原子を有する水素またはアルキル基である化学式(I)の1つ以上のエチレン性不飽和エステル化合物、b)10〜99.9質量%の、式中Rが水素またはメチルであり、R4が6〜15個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルキル基であり、R5およびR6が独自に水素または化学式−COOR''の基であり、その式中R''が6〜15個の炭素原子を有する水素またはアルキル基である化学式(II)の1つ以上のエチレン性不飽和エステル化合物、c)0〜80質量%の、式中Rが水素またはメチルであり、R7が16〜30個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルキル基であり、R8およびR9が独自に水素または化学式−COOR'''の基であり、その式中R'''が16〜30個の炭素原子を有する水素またはアルキル基である化学式(III)の1つ以上のエチレン性不飽和エステル化合物、d)0.1〜30質量%の、式中Rが水素またはメチルであり、Xが酸素、硫黄または化学式−NH−または−NRa−のアミノ基であり、その式中Raは1〜40個の炭素原子を有するアルキル基であり、R10が2〜1000個の炭素原子を包含し少なくとも2個のヘテロ原子を有する基であり、R11およびR12が独自に水素または化学式−COX'R10'であり、その式中X'は酸素または化学式−NH−または−NRa'−のアミノ基であり、その式中Ra'は1〜40個の炭素原子を有するアルキル基であり、R10'は1〜100個の炭素原子を包含する基である化学式(IV)の1つ以上のエチレン性不飽和極性エステル化合物、e)0〜50質量%のコモノマーからなるモノマー組成物を重合することによって得ることのできるコポリマーに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は優れた特性を有するポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマーに関する。
【0002】
現代のギヤボックス、エンジンまたは油圧ポンプの効率性は、機械の部品の特性のみによるのではなく、使用する潤滑剤の摩擦特性によっても大いに左右される。こうした潤滑剤の開発にあたっては、使用する潤滑剤の構成要素のフィルム形成および摩擦に関する作用の知識をもっておくことが特に重要であり、好適な添加剤を選択することで、たとえば、車両の平均燃料消費量を数パーセント低下させることができる。この文脈において、潤滑剤の特に有効な構成要素としては、特に粘度が低くそのため固有摩擦が低いベースオイルおよび有機系摩擦調整剤が挙げられる。この傾向の例は、たとえば新世代のSAEクラスのいわゆる省燃費エンジンオイル5W−20、5W−30または0W−20であり、マニュアル車およびオートマチック車のギヤボックスの油として同様に使用されている。
【0003】
省燃費潤滑剤と並行して開発されるにつれ、摩擦を低減する添加剤の使用がさらに重要となる。現代のギヤボックスおよびポンプケーシングの寸法は明らかに小さくなり、冷却されることが少なく、ギヤホイールおよびベアリングの両方がより高い負荷を担う必要が生じている。その結果、操作温度は過去に比してはるかに高い。したがって、互いに動いて当たる二つの表面の摩擦学的接触によりフィルムが薄くなり、そのなかに存在する潤滑剤および添加剤は、こうした混合した摩擦条件下で摩擦損失を低くすることができ、摩耗から表面を保護することができなくてはならない。当業界の現状によれば、典型的な油溶性の摩擦を調整する潤滑剤としての添加剤は、摩擦接触の金属表面に吸着するか、反応層を形成するかのいずれかを行っていると仮定されている。前者は典型的には長鎖カルボキシル酸およびその塩、エステル類、エーテル類、アルコール類、アミン類、アミド類およびイミド類からなる。こうした摩擦調整剤の作用方法は、極性基が整列し、関連フィルムが摩擦接触の表面に形成されることであると仮定されている。その後、実際の油フィルムが奏功しない場合に、こうしたフィルムが固体の接触を予防する。しかし、双極子相互作用または水素結合などの極性相互作用の実際の機序および影響については、完全に説明はついていない。
【0004】
反応層を形成する典型的な摩擦調整剤は、たとえば飽和脂肪酸エステル、リン酸および三リン酸エステル、キサントゲン酸塩または硫黄含有脂肪酸である。このクラスには、摩擦接触における摩擦学的応力が、耐荷力の高い固体ではなく液体の反応産物を形成する化合物も含まれる。その例は、不飽和脂肪酸、二カルボキシル酸の部分エステル、ジアルキルフタル酸エステルおよびスルホン化オレフィン混合物である。こうした摩擦調整添加剤の機能は、EP添加剤の機能ときわめて近く、その場合、潤滑剤をさされた間隙幅の反応層の形成は、比較的軽度の混合摩擦条件下で行われる必要がある。
【0005】
さらに、モリブデンジチオホスホネートおよびジカルバメートなどの有機金属化合物、有機銅か合物および、グラファイトおよびMoS2などのいくつかの固形潤滑剤も、潤滑剤中の摩擦調整添加剤として機能することができる。
【0006】
これらの化合物の欠点はコストがきわめて高いことである。さらに、多くの化合物は極性が高いため、完全に合成潤滑油に溶けない。
【0007】
油溶性ポリマーを包含する潤滑剤の摩擦特性は、いくつかの特許および発行物の対象である。そのなかで特異的な摩擦特性とポリマーまたは粘度指数向上剤の存在またはその構造の関係が記載されているのはいくつかのみである。
【0008】
日本特許第05271331号は、潤滑剤におけるポリマーの製造およびその使用の特許権を申請している。αオレフィンおよび二塩基性エステルのコポリマーおよびそれとアルカノールアミン、シクロアルカノールアミン、複素環式アミンおよびポリアルキレンポリアミンとの反応が記載されている。このランダムコポリマーを包含する潤滑剤は、対照に比して、摩擦係数0.1104から0.07134に低下することが、Falex摩擦試験の例によって明らかにされている(ASTM D 2714)。これらのポリマーの特別な欠点は、製造が複雑であるということである。
【0009】
日本特許第2000355695号(米国特許第6426323号)は、粘度指数向上剤の分散液を包含する、持続的オートマチックギヤボックス(CVT)用の潤滑剤組成物を記載している。酸化安定性を向上させるために粘度指数向上剤としてのジメチルアミノエチルメタクリレート、2−メチル−5−ビニルピリジンおよびN−ビニルピロリドンなどのコモノマー分散液と、ポリアルキルメタクリレートを使用するのが望ましい。これらの潤滑剤を用いた摩擦実験が、実施例の形で記載されているが、上述の粘度指数向上剤の影響に関する情報はない。
【0010】
欧州特許第570073号は、潤滑添加剤として、粘度指数向上剤と摩擦調整剤の作用を同時に有するホウ素含有ポリアルキルアクリレートおよびメタクリレートを記載している。この文脈においては、摩擦調整構成要素として知られている環状ホウ素化合物が、通例のPAMA粘度指数向上剤の側鎖に官能基としてランダムに導入される。関連する試験として、SRV(振動−摩擦−摩耗)およびLFW−1摩擦計(ASTM D 2714=Falex試験)を用いた摩擦試験の結果を、市販のPAMA粘度指数向上剤を使用した場合と比較して記載されている。これらのコポリマーの欠点は、製造がきわめて複雑であるため、こうした産物が現時点まで市販による大きなスケールで使用されていないことである。
【0011】
欧州特許第286996号(米国特許第5064546号)は、0.01〜5%の摩擦調整剤を含有し、特にオートマチックおよび持続的ギヤボックスに好適な、特定のナフテンを主成分とするベースオイル組成物の潤滑組成物の特許権を申請している。粘度指数向上剤、特にPAMAは追加的な構成要素として言及されているが、その種類は当該調剤の摩擦性能に関して決定的ではないと判断されている。
【0012】
米国特許第4699723号は、それに対して分散液の抗酸化官能基を融合するエチレン−プロピレンコポリマー(OCP)からなる多機能粘度指数向上剤の分散液を記載している。結果得られる潤滑剤の摩擦特性に対するこれらの粘度指数向上剤の影響は記述されていない。この場合、一般にランダムなコポリマーが得られ、それは摩擦向上特性を有さない。
【0013】
米国特許第6444622号および米国特許第6303547号は、摩擦特性が、機能の向上した従来の摩擦調整剤、この場合はC5−C60カルボキシル酸とアミンとの組み合わせによって影響される、摩擦調整潤滑剤を記載している。ポリアルキルメタクリレート粘度指数向上剤の添加も、潤滑油の粘性の調節(SAE単位)および剪断安定性を絡めて特許請求されている。
【0014】
欧州特許第0747464号は、オートマチック車ギヤボックス用の長時間持続性の「シャダー防止」摩擦特性を有する潤滑剤組成物を記載している。この組成物は、アルコキシル化した脂肪酸アミンおよび他の摩擦調整添加剤の混合物も包含する。請求項のなかで粘度指数向上剤の分散液または非分散液は、潤滑剤のさらなる構成要素としてのみしか言及されておらず、記載の潤滑剤の摩擦特性に対するその影響については言及されていない。
【0015】
WO00/58423号は、高性能モーターオイルおよび高い粘度指数を有するポリαオレフィン(HVI−PO)と比較的高分子量の増粘剤(通常は水素化したポリ(スチレン−co−イソプレン))であるHSI、エチレン−プロピレンコポリマー(OCP)または質量−平均分子量Mwが10,000〜100,000g/molのポリイソブチレン(PIB)との混合物に基づく他の潤滑剤を記載している。特許請求されている潤滑剤は、先行技術に比して潤滑剤のフィルム厚さが増し、摩耗からの保護力が優れている。
【0016】
申請者らは通常の高分子量の粘度指数向上剤の使用は、結果として得られるオイルが非ニュートン挙動を示すことから多大な欠点を有すると主張する。このように、こうしたポリマー添加剤の剪断応力は高く、一時的な剪断安定性は低いことから、特に摩擦接触における潤滑剤フィルムを薄くする必要がある。このポリマーを包含する潤滑剤の挙動は本発明によって否認される。
【0017】
米国特許第6358896号は、ケトアミドおよびケトエステルに基づき燃費が向上したモーターオイル組成物のための摩擦調整剤を記載している。この特許において、ポリマーの粘度指数向上剤はこうした潤滑剤の構成要素として言及されている。粘度指数向上剤の分散液は、分散剤の作用に関連してのみしか言及されていない。
【0018】
WO9524458号(米国特許第5622924号)は、10個以下の炭素原子を有する少なくとも70質量%のアルキルメタクリレートを含む粘度指数向上剤の特許請求を行っている。優れた低温特性に加えて、こうした粘度指数向上剤とともに調合されたオイルは、モリブデン含有摩擦調整剤とともに使用する場合に優れた低い摩擦特性も有する。
【0019】
日本特許第08157855号は、モリブデンを主成分とする摩擦調整剤の作用を最大限にする粘度指数向上剤を包含する潤滑剤を記載している。WO9524458号に記載のものと同じポリマーが特許請求されている。
【0020】
米国特許第3925217号は、1個または2個のシクロヘキシル環を有し、ローラーベアリングの摩擦接触において優れたフィルム厚さを保証する化合物からなる潤滑剤の特許請求を行っている。
【0021】
注:本特許はいわゆるトラクション液、すなわち流体力学的領域の摩擦特性(ハイスピードにおける)のため、力を摩擦接触を介して移動させることができる潤滑剤の基礎をなす。ここで望まれるのは、力の移動ができるだけ効率的に行われるための特に高い牽引力と摩擦係数である。
【0022】
ここから、ポリマー、ポリアルキルアクリレートまたはメタクリレートまたは環構造を有する他の粘度指数向上剤を記述する一連の特許が派生している。これらには、たとえば以下が含まれる。
・WO 8902911/欧州特許第339088号
・日本特許第61044997号
・日本特許第61019697号
しかし、これらの特許の内容は、上述の摩擦接触が潤滑剤フィルムによって完全に分離されている流体力学的条件下での最大の摩擦/牽引係数の達成に関する。摩擦特性の影響がこれらの液体に重要であっても、オイル、添加剤および特に粘度指数向上剤の作用は、混合摩擦の分野において摩擦調整作用をもたせることを意図するそれとは反対である。Kyotaniらはポリマー溶液の牽引特性を調査し、環状側鎖を有するポリマーは高い摩擦/牽引係数の傾向にあることを明らかにした(Kyotani, T.; Yamada, Y.; Tezuka, T.; Yamamoto, H.; Tamai, Y.; Sekiyu Gakkaishi (1987), 30 (5), 353−8)。
【0023】
科学的文献においては、いくつかでは論争にもなっている潤滑剤の摩擦性能に対するポリマーの影響に関する声明が認められる。
【0024】
Kugimiyaは、オートマチック車ギヤボックスの潤滑油を対象とした摩擦実験で、粘度指数向上剤はポリアルキルメタクリレートも、オレフィンコポリマーも、オイルの摩擦特性に影響を及ぼさないと結論づけている(Kugimiya, T.; Toraiborojisuto (2000), 45 (5), 387−395)。
【0025】
ポリアルキルメタクリレートについては、そのN−ビニルピロリドンコポリマーおよびポリイソブチレンをオートマチック車のギヤボックスの潤滑剤に応用したRodgersらも同様の結果を得ている(Rodgers, John J.; Gallopoulos, Nicholas E; ASLE Trans. (1967), 10(1), 102−12, discussion 113−14)。ポリアルキルメタクリレートもPIBも、摩擦学的特徴において変化を示していない(摩擦曲線)。わずかに、PMA−N−ビニルピロリドンコポリマーのみが、静的摩擦係数の低下をもたらしている。しかし、この挙動は単に、その試験で調査されたオイルの高粘度および粘度指数向上剤の包含によるものであって、ポリマーの構造によるものではない。
【0026】
Gunselらは、摩擦接触面で20nmのフィルムを形成し、そのため摩擦範囲を制限して、滑りを緩徐にし、転動速度にシフトさせることのできるいくつかの粘度指数向上剤を報告している(Gunsel, S.; Smeeth, M.; Spikes, H.; Society of Automotive Engineers, (1996), SP−1209 (Subjects in Engine Oil Rheology and Tribology), 85−109)。この試験では、ポリマーの構造と任意の潤滑剤混合物の実際の摩擦性能に対するその影響とのあいだに相関関係は認められていない。
【0027】
これに対し、Sharmaらは、粘度指数向上剤、特にPAO中のポリアルキルメタクリレートが、摩擦接触面における潤滑剤のフィルムの厚みにそれほど大きく寄与しないことを明らかにしている(Sharma, S.−K.; Forster, N.−H.; Gschwender, L.−J.; Tribol. Trans. (1993), 36(4), 555−64)。
【0028】
Yoshidaは、自らの摩耗実験から、ポリアルキルメタクリレートは高負荷の摩擦接触面に実際に潤滑剤封入間隙ができる前に蓄積し、オイルの枯渇に至り、そのため、潤滑剤封入間隙には高い摩擦力が起こるとさえ結論づけている(Yoshida, K.; Tribol. Trans. (1990), 33(20), 229−37)。
【0029】
既知の摩擦調整剤にまつわる問題はこのようにそのコストである。また、完全な合成オイルの新種の既知の摩擦調整添加剤の多くの可溶性は低い。
【0030】
さらに、上述の添加剤の多くは、摩擦調整剤としてのみしか機能しない。しかし、添加剤はさらに良好な特性をベースオイルに付与することが望ましい。これにより、添加剤の総合的な添加量は減少し、さらにコストを節約することができる。
【0031】
先行技術の観点からいえば、特にコストをかけずに生成することができる効率性の高い摩擦調整添加剤を提供することが本発明の目的である。また、本発明のさらなる目的は、高い分散性、高い防錆性(すなわち良好な金属不活性化剤の特性)、酸化および熱応力に対する高い安定性および高い耐剪断性を有する添加剤を提供することである。また、この添加剤は、完全合成のオイルなどの非極性の潤滑油に大量に溶ける必要がある。また、摩擦調整作用に加えて、潤滑油の流体特性を改善する、すなわち粘度指数向上作用を有する添加剤を提供することも本発明のさらなる目的である。
【0032】
明確に特定されていないが、本明細書の緒言というかたちで考察した文脈から直接派生または識別されることのできるこれらのおよびさらなる目的は、請求項1に記載のすべての特性を有するコポリマーによって達成される。本発明のコポリマーに対するしかるべき改変は、請求項1に依存するその他の請求項によって保護される。
【0033】
各例においてエチレン性不飽和モノマーの合計質量に対して
a)0〜40質量%の、化学式(I)
【化1】

[式中Rが水素またはメチルであり、R1が1〜5個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルキル基であり、R2およびR3が独自に水素または化学式−COOR'の基であり、その式中R'が1〜5個の炭素原子を有する水素またはアルキル基である]の1つ以上のエチレン性不飽和エステル化合物、
b)エチレン性不飽和モノマーの合計質量に対して10〜99.9質量%の、化学式(II)
【化2】

[式中Rが水素またはメチルであり、R4が6〜15個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルキル基であり、R5およびR6が独自に水素または化学式−COOR''の基であり、その式中R''が6〜15個の炭素原子を有する水素またはアルキル基である]の1つ以上のエチレン性不飽和エステル化合物、
c)0〜80質量%の、化学式(III)
【化3】

[式中Rが水素またはメチルであり、R7が16〜30個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルキル基であり、R8およびR9が独自に水素または化学式−COOR'''の基であり、その式中R'''が16〜30個の炭素原子を有する水素またはアルキル基である]の1つ以上のエチレン性不飽和エステル化合物、
d)0.1〜30質量%の、化学式(IV)
【化4】

[式中Rが水素またはメチルであり、Xが酸素、硫黄または化学式−NH−または−NRa−のアミノ基であり、その式中Raは1〜40個の炭素原子を有するアルキル基であり、R10が2〜1000個の炭素原子を包含し少なくとも2個のヘテロ原子を有する基であり、R11およびR12が独自に水素または化学式−COX'R10'であり、その式中X'は酸素または化学式−NH−または−NRa'−のアミノ基であり、その式中Ra'は1〜40個の炭素原子を有するアルキル基であり、R10'は1〜100個の炭素原子を包含する基である]の少なくとも1つのエチレン性不飽和極性エステル化合物、
e)0〜50質量%のコモノマー
からなるモノマー組成物を重合することによって得ることのできる本発明のコポリマーを使用すれば、即時に予見できる様式でなくても、上述の問題を簡単な方法で低減することのできる潤滑油組成物のための添加剤を提供することができる。
【0034】
同時に、本発明のコポリマーは一連のさらなる利点を有する。これらには以下が含まれる。
・本発明のコポリマーは、粘度指数向上剤として優れた特性を示す。たとえば、ASTM D 2270で試験した場合の40℃および100℃における動粘度をみれば、粘度指数向上作用が認められる。
・また、本発明のコポリマーは潤滑油組成物中で優れた低温特性を有する。この低温特性は、ASTM D 4684で試験した場合のMRV粘度(mini−rotational viscometry)の値およびASTM D 5133に従った場合のスキャンニングブルックフィールド粘度の結果によって得ることができる。本発明のコポリマーの流動点向上作用は、たとえばASTM D 97に従って測定することができる。
・あらかじめ決定した温度において特別な流体特性を達成する必要がある場合、本発明のごく少量のコポリマーによって達成が可能である。
・本発明のコポリマーは優れた摩擦特性を有する。その結果、これらのコポリマーは表面を摩耗から保護する。
・本発明のコポリマーは優れた分散特性を示す。その結果、これらのコポリマーは沈着物の形成を予防する。
・コポリマーは優れた防錆特性、すなわち金属不活性化特性を示す。
・本発明のコポリマーは金属イオンと優れた方法で結合する。これにより、潤滑油組成物が早期に酸化することが減る。
・本発明のコポリマーは安価で製造することができる。
・コポリマーは高度の酸化安定性を示し、化学的にきわめて安定である。
【0035】
本発明のコポリマーが得られる組成物は、特に、異なるアルコール基を有する(メタ)アクリレート、マレエートおよび/またはフマレートを包含する。「(メタ)アクリレート」という表記は、メタクリレートおよびアクリレートを包含し、その二つの混合物をも包含する。これらのモノマーは幅広く知られている。アルキル基は直鎖、環状または分枝鎖であることができる。
【0036】
本発明のコポリマーが得られる混合物は、エチレン性不飽和モノマーの合計質量に対して0〜40質量%、特に0.5〜20質量%の、化学式(I)
【化5】

[式中Rが水素またはメチルであり、R1が1〜5個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルキル基であり、R2およびR3が独自に水素または化学式−COOR'の基であり、その式中R'が1〜5個の炭素原子を有する水素またはアルキル基である]の1つ以上のエチレン性不飽和エステル化合物を包含する。
【0037】
構成要素a)の例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレートおよびペンチル(メタ)アクリレートなどの、飽和アルコールに由来する(メタ)アクリレート、フマレートおよびマレエート、
シクロペンチル(メタ)アクリレートなどのシクロアルキル(メタ)アクリレート、
2−プロピニル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレートおよびビニル(メタ)アクリレートなどの、不飽和アルコールに由来する(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0038】
さらなる構成要素として、重合する組成物は、エチレン性不飽和モノマーの合計質量に対して10〜99.9質量%、特に20〜95質量%の、化学式(II)
【化6】

[式中Rが水素またはメチルであり、R4が6〜15個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルキル基であり、R5およびR6が独自に水素または化学式−COOR''の基であり、その式中R''が6〜15個の炭素原子を有する水素またはアルキル基である]の1つ以上のエチレン性不飽和エステル化合物を含有することができる。
【0039】
これらには、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−tert−ブチルヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、3−イソプロピルヘプチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、5−メチルウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、2−メチルドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、5−メチルトリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレートなどの、飽和アルコールから派生した(メタ)アクリレート、フマレートおよびマレエート、
オレイル(メタ)アクリレートなどの、不飽和アルコールから派生した(メタ)アクリレート、
3−ビニルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレートなどのシクロアルキル(メタ)アクリレートおよび対応するフマレートおよびマレエートが挙げられる。
【0040】
また、本発明に従って使用するモノマー混合物は、エチレン性不飽和モノマーの合計質量に対して0〜80質量%、好ましくは0.5〜60質量%の、化学式(III)
【化7】

[式中Rが水素またはメチルであり、R7が16〜30個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルキル基であり、R8およびR9が独自に水素または化学式−COOR'''の基であり、その式中R'''が16〜30個の炭素原子を有する水素またはアルキル基である]の1つ以上のエチレン性不飽和エステル化合物を含有することができる。
【0041】
構成要素c)の例としては、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、2−メチルヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、5−イソプロピルヘプタデシル(メタ)アクリレート、4−tert−ブチルオクタデシル(メタ)アクリレート、5−エチルオクタデシル(メタ)アクリレート、3−イソプロピルオクタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、セチルエイコシル(メタ)アクリレート、ステアリルエイコシル(メタ)アクリレート、ドコシル(メタ)アクリレートおよび/またはエイコシルテトラトリアコンチル(メタ)アクリレートなどの、飽和アルコールから派生した(メタ)アクリレート、
2,4,5−トリ−t−ブチル−3−ビニルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2,3,4,5−テトラ−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートなどのシクロアルキル(メタ)アクリレート、
10,11−エポキシヘキサデシルメタクリレートなどのオキシラニルメタクリレートおよび対応するフマレートおよびマレエートが挙げられる。
【0042】
長鎖アルコール基を有するエステル化合物、特に構成要素(b)および(c)は、たとえば、(メタ)アクリレート、フマレート、マレエートおよび/または相当する酸を、エステル混合物を一般に形成する長鎖脂肪アルコールと、たとえば(メタ)アクリレートと種々の長鎖アルコール基とを反応させることによって得ることができる。これらの脂肪アルコールとしては、オキソ Alcohol(登録商標)7911およびオキソ Alcohol(登録商標)7900、オキソ Alcohol(登録商標)1100、Alfol(登録商標)610、Alfol(登録商標)810、Lial(登録商標)125およびNafol(登録商標)シリーズ(Sasol Olefins & Surfactant GmbH);Alphanol(登録商標)79(ICI);Epal(登録商標)610およびEpal(登録商標)810(Ethyl Corporation);Linevol(登録商標)79、Linevol(登録商標)911およびNeodol(登録商標)25E(Shell AG);Dehydad(登録商標)、Hydrenol(登録商標)およびLorol(登録商標)シリーズ(Cognis);Acropol(登録商標)35およびExxal(登録商標)10(Exxon Chemicals GmbH);Kalcol(登録商標)2465(Kao Chemicals)が挙げられる。
【0043】
必須の構成要素として、重合する組成物は、エチレン性不飽和モノマーの合計質量に対して0.1〜30質量%、特に0.5〜10質量%の、化学式(IV)
【化8】

[式中Rが水素またはメチルであり、Xが酸素、硫黄または化学式−NH−または−NRa−のアミノ基であり、その式中Raは1〜40個の炭素原子を有するアルキル基であり、R10が2〜1000個の炭素原子を包含し少なくとも2個のヘテロ原子を有する基であり、R11およびR12が独自に水素または化学式−COX'R10'の基であり、その式中X'は酸素または化学式−NH−または−NRa'−のアミノ基であり、その式中Ra'は1〜40個の炭素原子を有するアルキル基であり、R10'は1〜100個の炭素原子を包含する基である]の1つ以上のエチレン性不飽和極性エステル化合物を含有する。
【0044】
化学式(IV)において、Xは酸素、硫黄または、式中Raが1〜40個、好ましくは1〜4個の炭素原子を有するアルキル基である化学式−NH−または−NRa−のアミノ基である。
【0045】
化学式(IV)のR11およびR12基は、それぞれ独自に水素または、式中X'は酸素、硫黄または、式中Ra'が1〜40個、好ましくは1〜4個の炭素原子を有するアルキル基であり、R10'が1〜100個、好ましくは1〜30個、さらに好ましくは1〜15個の炭素原子を包含する基である化学式−NH−または−NRa'−のアミノ基である化学式−COX'R10の基である。「1〜100この炭素原子を包含する基」という表現は、1〜100個の炭素原子を有する有機化合物の基を示す。これには、芳香族および複素環式芳香族基、およびアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、シクロアルコキシ、アルケニル、アルカノイル、アルコキシカルボニル基および複素環式脂肪族基が包含される。言及された基は分枝鎖でも非分枝鎖でもよい。
【0046】
10基は、2〜1000個、特に2〜100個、好ましくは2〜20個の炭素原子を包含する基である。「2〜1000個の炭素原子を包含する基」という表現は、2〜1000個の炭素原子を有する有機化合物の基を示す。これには、芳香族および複素環式芳香族基、およびアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、シクロアルコキシ、アルケニル、アルカノイル、アルコキシカルボニル基および複素環式脂肪族基が包含される。言及された基は分枝鎖でも非分枝鎖でもよい。また、これらの基は通例の置換基を有することができる。
【0047】
置換基は、たとえば、1〜6個の炭素原子を有する直鎖および分枝鎖アルキル基、たとえばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、2−メチルブチルまたはヘキシル、シクロアルキル基、たとえばシクロペンチルおよびシクロヘキシル、フェニルまたはナフチルなどの芳香族基、アミノ基、エーテル基、エステル基およびハロゲン化物である。
【0048】
本発明によれば、芳香族基とは、好ましくは6〜20個、特に6〜12個の炭素原子を有する単環式または多環式の芳香族化合物の基を指す。複素環式芳香族基は、少なくとも1つのCH基がNで置換されているおよび/または少なくとも2つの隣接するCH基がS、NHまたはOで置換されているアリール基、3〜19個の炭素原子を有する複素環式芳香族基を指す。
【0049】
本発明に従って好適な芳香族または複素環式芳香族基は、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルメタン、ジフェニルジメチルメタン、ビスフェノン、ジフェニルスルフォン、チオフェン、フラン、ピロル、チアゾール、オキサゾール、イミダゾール、イソチアゾール、イソキサゾール、ピラゾール、1,3,4−オキサ−ジアゾール、2,5−ジフェニル−1,3,4−オキサジアゾール、1,3,4−チアジアゾール、1,3,4−トリアゾール、2,5−ジフェニル−1,3,4−トリアゾール、1,2,5−トリフェニル−1,3,4−トリアゾール、1,2,4−オキサジアゾール、1,2,4−チアジアゾール、1,2,4−トリアゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,3,4−テトラゾール、ベンゾ[b]チオフェン、ベンゾ[b]フラン、インドール、ベンゾ[c]チオフェン、ベンゾ[c]フラン、イソインドール、ベンゾキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンズイミダゾール、ベンズイソキサゾール、ベンズイソチアゾール、ベンゾピラゾール、ベンゾチアジアゾール、ベンゾトリアゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、カルバゾール、ピリジン、ビピリジン、ピラジン、ピラゾール、ピリミジン、ピリダジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,2,4,5−トリアジン、テトラジン、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、シノリン、1,8−ナフチリジン、1,5−ナフチリジン、1,6−ナフチリジン、1,7−ナフチリジン、フタラジン、ピリドピリミジン、プリン、プテリジンまたはキノリジン、4H−キノリジン、ジフェニルエーテル、アントラセン、ベンゾピロル、ベンゾオキサチアジアゾール、ベンゾオキサジアゾール、ベンゾピリジン、ベンゾピラジン、ベンゾピラジジン、ベンゾピリミジン、ベンゾトリアジン、インドリジン、ピリドピリジン、イミダゾピリミジン、ピラジノピリミジン、カルバゾール、アシリジン、フェナジン、ベンゾキノリン、フェノキサジン、フェノチアジン、アクリジジン、ベンゾプテリジン、フェナントロリンおよびフェナントレンから派生し、そのそれぞれは任意に置換されてもよい。
【0050】
好ましいアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、1−ブチル、2−ブチル、2−メチルプロピル、tert−ブチル基、ペンチル、2−メチルブチル、1,1−ジメチルプロピル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、1,1,3,3−テトラメチルブチル、ノニル、1−デシル、2−デシル、ウンデシル、ドデシル、ペンタデシルおよびエイコシル基が挙げられる。
【0051】
好ましいシクロアルキル基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびシクロオクチル基があげられ、そのそれぞれは任意には分枝鎖または非分枝鎖アルキル基で置換される。
【0052】
好ましいアルケニル基としては、ビニル、アリル、2−メチル−2−プロペニル、2−ブテニル、2−ペンテニル、2−デセニルおよび2−エイコセニル基が挙げられる。
【0053】
望ましいアルキニル基としては、エチニル、プロパルギル、2−メチル−2−プロピニル、2−ブチニル、2−ペンチニルおよび2−デシニル基が挙げられる。
【0054】
好ましいアルカノイル基としては、フォルミル、アセチル、プロピオニル、2−メチルプロピオニル、ブチリル、バレロイル、ピバロイル、ヘキサノイル、デカノイルおよびドデカノイル基が挙げられる。
【0055】
好ましいアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、ヘキシルオキシカルボニル、2−メチルヘキシルオキシカルボニル、デシルオキシカルボニルまたはドデシルオキシカルボニル基が挙げられる。
【0056】
好ましいアルコキシ基は、炭化水素基が前述の好ましいアルキル基の1つであるアルコキシ基を含む。
【0057】
好ましいシクロアルコキシ基は、炭化水素基が前述の好ましいシクロアルキル基の1つであるシクロアルコキシ基を含む。
【0058】
10基に存在する好ましいヘテロ原子としては、酸素、窒素、硫黄、ホウ素、珪素およびリン、好ましくは酸素および窒素が挙げられる。
【0059】
10基は、少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つのヘテロ原子を包含する。
【0060】
化学式(IV)のエステル化合物のR10基は、好ましくは少なくとも2種類のヘテロ原子を有する。この場合、化学式(IV)のエステル化合物の少なくとも1つのなかのR10基は、少なくとも1個の窒素原子および少なくとも1個の酸素原子を包含する。
【0061】
本発明の特殊な様態において、化学式(IV)の少なくとも1つのエステル化合物のR10基の少なくとも1つのヘテロ原子は、少なくとも4個、望ましくは少なくとも6個の原子によってX基から分離されることができる。
【0062】
化学式(IV)の少なくとも1つのエステル化合物のR10基は、好ましくは、化学式(V)
【化9】

[式中Aが1〜500個の炭素原子、好ましくは1〜100個の炭素原子、さらに好ましくは1〜50個の炭素原子を有する結合基であり、R13およびR14基はそれぞれ独自に水素または1〜40個の炭素原子、より好ましくは1〜20個の炭素原子、最も好ましくは1〜4個の炭素原子を有するアルキル基である]の基である。「1〜500個の炭素原子を有する結合基」という表現は、1〜500個の炭素原子を包含する有機化合物の基を示す。これには、芳香族および複素環式芳香族基、およびアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、シクロアルコキシ、アルケニル、アルカノイル、アルコキシカルボニル基および複素環式脂肪族基が包含される。これらの基は上に詳述されている。
【0063】
化学式(V)の好ましい結合基には、化学式(VI)
【化10】

[式中nが1〜8の整数、好ましくは1〜6の整数、より好ましくは1〜3の整数である]の基が含まれる。
【0064】
化学式(IV)の少なくとも1つのエステル化合物のR10基は、望ましくは化学式(VII)
【化11】

の基である。
【0065】
より好ましくは、構成要素d)は、化学式(VIII)
【化12】

のジメチルアミノジグリコールメタクリレート(2−[2−(ジメチル−アミノ)エトキシ]エチルメタクリレート、2−[2−(ジメチル−アミノ)エトキシ]エチル2−メチル−2−プロペノエート)を包含する。
【0066】
本発明のさらなる様態において、化学式(IV)の少なくとも1つのエステル化合物のR10基は、化学式−CO−の少なくとも1つの基、より好ましくは2つの基を包含することができる。化学式−CO−の基は、ケトン類および/またはアルデヒド類のカルボニル基、カルボキシル酸、カルボキシル酸エステルおよび/またはカルボキサミドのカルボニル基および/またはカルボン酸誘導体、特に尿素基および/またはウレタン基のカルボニル基であることができる。
【0067】
この場合、化学式−CO−の少なくとも2つの基が、多くとも4個の原子を介して互いに結合することができる。
【0068】
化学式(IV)の少なくとも1つのエステル化合物のR10基は、好ましくは化学式(IX)
【化13】

の基であることができる。
【0069】
より好ましくは、構成要素d)は、化学式(X)
【化14】

のモノ−2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸塩を包含する。
【0070】
化学式(IV)の少なくとも1つのエステル化合物のR10基は、好ましくは化学式(XI)
【化15】

の基であることができる。
【0071】
より好ましくは、構成要素d)は、化学式(XII)
【化16】

の2−アセトアセトキシエチルメタクリレート(2−[(2−メチル−1−オキソ−2−プロペニル)オキシ]エチル3−オキソブタノエート)を包含する。
【0072】
本発明のさらなる様態において、化学式(IV)の少なくとも1つのエステル化合物のR10基は、化学式−CO−の少なくとも1つの基および少なくとも1個の窒素原子を包含することができる。
【0073】
この場合、化学式(IV)の少なくとも1つのエステル化合物のR10基は、少なくとも1つの尿素基を有する。尿素基は一般には化学式−NRb−CO−NRc−で表せ、式中RbおよびRc基はそれぞれ独自に水素または1〜40個の炭素原子、望ましくは1〜20個の炭素原子、より好ましくは1〜4個の炭素原子を有する基であるか、RbおよびRc基は1〜80個の炭素原子を有する環を形成することができる。
【0074】
化学式(IV)の少なくとも1つのエステル化合物のR10基は、好ましくは化学式(XIII)
【化17】

[式中Aは1〜500個の炭素原子、好ましくは1〜100個の炭素原子、さらに好ましくは1〜50個の炭素原子を有する結合基である]の基である。「1〜500個の炭素原子を有する結合基」という表現は、すでに上に詳述している。
【0075】
より好ましくは、構成要素d)は、化学式(XIV)
【化18】

のN−(2−メタクリロイルオキシエチル)エチレンウレア(2−(2−オキソ−1−イミダゾリジニル)エチル2−メチル−2−プロペノエート)を包含する。
【0076】
エチレン性不飽和エステル化合物のうち、特に好ましいのはマレエートおよびフマレートよりも(メタ)アクリレートである。すなわち、化学式(I)、(II)、(III)および(IV)のR2、R3、R5、R6、R8、R9、R11およびR12は、好ましい実施形態において、より好ましくは水素である。
【0077】
構成要素d)のモノマーは、構成要素b)またはc)のモノマーと同じく、メチル(メタ)アクリレートを好適なアルコール類、アミン類および/またはチオール類でトランスエステル化することによって得ることができる。また、これらのモノマーのいくつかは市販されている。
【0078】
構成要素e)は特に、化学式(I)、(II)、(III)および/または(IV)のエチレン性不飽和エステル化合物で共重合することができるエチレン性不飽和モノマーを包含する。
【0079】
しかし、本発明に従った重合に特に好適なコモノマーは、化学式
【化19】

に対応するコモノマーであり、式中R1*およびR2*はそれぞれ独自に水素、ハロゲン、CN、1〜20個、好ましくは1〜6個、さらに好ましくは1〜4個の炭素原子を有し、nがアルキル基の炭素原子数である1〜(2n+1)個のハロゲン原子で置換することができる直鎖または分枝鎖アルキル基(たとえばCF3)、2〜10個、好ましくは2〜6個、さらに好ましくは2〜4個の炭素原子を有し、nがアルキル基の炭素原子数である1〜(2n−1)個のハロゲン原子、好ましくはクロリンで置換することができるα、β−不飽和直鎖または分枝鎖アルケニルまたはアルキニル基、たとえばCH2=CCl−、3〜8個の炭素原子を有し、nがシクロアルキル基の炭素原子数である1〜(2n−1)個のハロゲン原子、好ましくはクロリンで置換することができるシクロアルキル基;追加のR8*、アリールまたはヘテロシクリル基で四級化することのできるC(=Y*)R5*、C(=Y*)NR6*7*、Y*C(=Y*)R5*、SOR5*、SO2R5*、OSO2R5*、NR8*SO2R5*、PR5*2、P(=Y*)R5*2、Y*PR5*2、Y*P(=Y*)R5*2、NR8*2であって、式中Y*はNR8*、SまたはO、好ましくはOであり、R5*は1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、1〜20個の炭素原子を有するアルキルチオ、OR15(R15は水素またはアルカリ金属)、1〜20個の炭素原子を有するアルコキシ、アリールオキシまたはヘテロシクリルオキシであり、R6*およびR7*はそれぞれ独自に水素または1〜20個の炭素原子を有するアルキル基であるか、R6*およびR7*はともに2〜7個、望ましくは2〜5個の炭素原子を有するアルキレン基を形成することができ、その場合それらは3〜8員環、望ましくは3〜6員環の環を形成し、R8*は水素、1〜20個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルキルまたはアリール基であって、
3*およびR4*は独自に、水素、ハロゲン(望ましくはフルオリンまたはクロリン)、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基および式中R9*が水素、アルカリ金属または1〜40個の炭素原子を有するアルキル基であるCOOR9*からなる群から選択されるか、R1*およびR3*はともに、式中n'が2〜6であり、望ましくは3または4である、1〜2n'個のハロゲン原子またはC1〜C4アルキル基で置換することのできる化学式(CH2)n'の基を形成することができるか、式中Y*が上に定義した通りである化学式C(=O)−Y*−を形成することができ、少なくともR1*、R2*、R3*およびR4*基の2つが水素またはハロゲンである。
【0080】
これらは、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3,4−ジヒドロキシブチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2,5−ジメチル−1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオール(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、
N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、3−ジエチル−アミノペンチルメタクリレート、3−ジブチルアミノヘキサデシル(メタ)アクリレートなどのアミノアルキル(メタ)アクリレート、
N−(メタクリロイルオキシエチル)ジイソブチルケチミン、N−(メタクリロイルオキシエチル)ジヘキサデシルケチミン、メタクリロイルアミドアセトニトリル、2−メタクリロイルオキシエチルメチルシアンアミド、シアノメチルメタクリレートなどの(メタ)アクリル酸のニトリル類および他の窒素含有メタクリレート、
アリール基がそれぞれ非置換されるかテトラ置換されるベンジルメタクリレートまたはフェニルメタクリレートなどのアリール(メタ)アクリレート、
塩化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニリデンおよびフッ化ビニリデンなどのビニルハリド、酢酸ビニルなどのビニルエステル、
スチレン、α−メチルスチレンおよびα−エチルスチレンなどの側鎖にアルキル置換基を有する置換スチレン、ビニルトルエンおよびp−メチルスチレンなどの環上にアルキル置換基を有する置換スチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、トリブロモスチレンおよびテトラブロモスチレンなどのハロゲン化スチレン、
2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン、3−エチル−4−ビニルピリジン、2,3−ジメチル−5−ビニルピリジン、ビニル−ピリミジン、ビニルピペリジン、9−ビニルカルバゾール、3−ビニル−カルバゾール、4−ビニルカルバゾール、1−ビニルイミダゾール、2−メチル−1−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロリドン、2−ビニルピロリドン、N−ビニルピロリジン、3−ビニルピロリジン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルブチロラクタム、ビニルオキソラン、ビニルフラン、ビニルチオフェン、ビニルチオラン、ビニルチアゾールおよび水素化ビニルチアゾール、ビニルオキサゾールおよび水素化ビニルオキサゾールなどの複素環式ビニル化合物、
ビニルおよびイソプレニルエーテル、
マレイン酸のモノ−およびジエステル、無水マレイン酸、無水メチルマレイン酸、マレイミド、メチルマレイミドなどのマレイン酸およびマレイン酸誘導体、
フマル酸のモノ−およびジエステルなどのフマル酸およびフマル酸誘導体、
ジビニルベンゼンなどのジエン類を含む。
【0081】
これらの構成要素は、個々に使用されるか混合物として使用される。しかし、少なくとも2種類のモノマーが重合することが必須である。
【0082】
好ましいコポリマーは、25℃のクロロホルムで測定した比粘度ηsp/cは、ISO 1628−6で測定した場合に8〜74mL/g、より好ましくは11〜55mL/gである。
【0083】
本発明のコポリマーは、一般に分子量が1,000〜1,000,000g/mol、好ましくは10×103〜500×103g/mol、より好ましくは20×103〜300×103g/molであるが、制限として強制する意図は全くない。この数値は、組成物中の多分散系ポリマーの質量平均分子量に基づいたものである。このパラメータはGPCで測定することができる。
【0084】
不飽和エステル化合物を重合することによって得られる好ましいコポリマーは、好ましくは多分散性Mw/Mnが1.05〜4.0である。このパラメータはGPCで測定することができる。
【0085】
上述の組成物からポリアルキルエステルの製造はそれ自体既知である。たとえば、これらのポリマーは、特にフリーラジカル重合および、ATRP(原子移動ラジカル重合)またはRAFT(可逆的付加開裂連鎖移動)などの関連の過程によって実行することができる。
【0086】
通例のフリーラジカル重合は、とりわけ、Ullmanns's Encyclopedia of Industrial Chemistry, Sixth Editionに説明されている。一般に、重合開始剤および鎖移動剤をこの目的のために使用する。
【0087】
使用可能な開始剤としては、AIBNおよび1,1−アゾ−ビスシクロヘキサンカルボニトリルなどの当該技術分野で既知のアゾ開始剤、メチルエチルケトンペルオキシド、アセチルアセトンペルオキシド、ジラウリルペルオキシド、tert−ブチルper−2−エチル−ヘキサノエート(tert−ブチルペルオクトエート TBPOと呼ぶことが多い)、ケトンペルオキシド、tert−ブチルペルオクトエート、メチルイソブチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシベンゾエート、tert−ブチルペルオキシイソプロピルカルボネート、2,5−bis(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、tert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、ジクミルペルオキシド、1,1,−bis(tert−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−bis(tert−ブチル−ペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、クミルヒドロペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、bis(4−tert−ブチル−シクロヘキシル)ペルオキシジカルボネート、上述の化合物の2つ以上を互いに混合したもの、また上述の化合物と、言及しておらず、同様にフリーラジカルを形成することができる化合物と混合したものが挙げられる。好適な鎖移動剤は、特に、tert−ドデシルメルカプタンまたは2−メルカプトエタノールなどの油溶性メルカプタン、またはテルピノレンなどのテルペン類の他の鎖移動剤である。
【0088】
ATRP過程はそれ自体既知である。これは、「生きた」フリーラジカル重合であり、これが機序の説明を制限する意図は一切ないとされている。これらの過程において、遷移金属化合物は、移動可能な原子団を有する化合物と反応する。この移動可能な原子が、金属を酸化する遷移金属化合物に移動する。この反応は、エチレン基に添加する基を形成する。しかし、原子団の遷移金属化合物への移動は可逆性であるため、原子団は成長するポリマー鎖に戻り、制御された重合系を形成する。ポリマーの構造、分子量および分子量分布は同様に制御することができる。
【0089】
この反応はたとえば、J−S. WangらJ. Am. Chem. Soc., vol. 117, p.5614−5615 (1995)、Matyjaszewski, Macromolecules, vol. 28, p.7901−7910 (1995)が記載している。また、特許出願WO96/30421号、WO97/47661号、WO97/18247号、WO98/40415号およびWO99/10387号は、上で説明したATRPの亜型を開示している。
【0090】
また、RAFT法によっても、本発明のポリマーは得ることができる。この過程は、たとえばWO98/01478号およびWO2004/083169号に詳細が説明されており、それに対する参照文献は開示内容の目的を明確にしている。
【0091】
重合は標準の圧力、減圧または加圧下で実行することができる。重合温度も重要ではない。ただし、一般には−20〜200℃、好ましくは0〜130℃、さらに好ましくは60〜120℃で実施される。重合は溶媒の有無にかかわらず実施できる。溶媒という用語はここでは広い意味で理解すべきものである。
【0092】
重合は望ましくは非極性の溶媒中で実施するのがよい。これらには、トルエン、ベンゼンおよびキシレンなどの芳香族溶媒といった炭化水素溶媒、分枝鎖の形状でも存在することのできるシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカンなどの飽和炭化水素が含まれる。これらの溶媒は個々に使用することも、混合物で使用することもできる。特に好ましい溶媒は、鉱物油、天然油および合成油であり、またその混合物である。これらのうち、特に好ましいのは鉱物油である。
【0093】
本発明のコポリマーの構造は、多くの応用および特性にとって重要ではない。したがって、本発明のコポリマーはランダムコポリマーであることができる。
【0094】
本発明の特別な様態において、本発明のコポリマーは勾配を有する。この場合、モノマー組成物は連鎖成長中に変化して、勾配を有するコポリマーを得ることができる。
【0095】
本発明のさらなる様態において、本発明のコポリマーはブロックコポリマーであることができる。これらのポリマーは、たとえば、連鎖成長中にモノマー組成物を非連続的に変化させることによって得ることができる。化学式(I)、(II)および/または(III)のエステル化合物に由来するブロックは、好ましくは少なくとも30モノマー単位を有する。
【0096】
ブロックコポリマーとは、少なくとも2つのブロックを有するポリマーを指す。この文脈におけるブロックは、1つ以上のモノマー単位からなる定組成物を有するコポリマーのセグメントである。個々のブロックは異なるモノマーから形成することができる。また、ブロックは種々のモノマー単位の濃度のみが異なることができ、その場合、異なるモノマー単位のランダムな分布が1つのブロック内に存在することができる。
【0097】
本発明の興味深い様態において、異なるブロックは少なくとも1つの5%以上、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上のモノマー単位の濃度の差があるが、これによって何らかの制限が強要されるという意図はない。
【0098】
用語「モノマー単位の濃度」は、ブロック内の反復単位の合計数に対する、使用モノマーに由来するこれらの単位数に関する。濃度差は、2つのブロックの少なくとも1つのモノマー単位の濃度の間の差から発生する。
【0099】
当業者はポリマーの多分散性を知っている。したがって、濃度差に関するデータは、対応するセグメントのすべてのポリマー鎖における静的平均に基づくものである。
【0100】
ブロック長は幅広い範囲で変化する。本発明によれば、ブロックは好ましくは少なくとも30、より好ましくは少なくとも50、特に好ましくは少なくとも100、最も好ましくは少なくとも150モノマー単位を有する。
【0101】
ジブロックコポリマーと同様に、本発明は少なくとも3つ、好ましくは少なくとも4つのブロックを有するマルチブロックコポリマーも提供する。これらのブロックコポリマーは交替ブロックを有することができる。また、ブロックコポリマーは櫛型ポリマーまたは星型ポリマーとして存在することができる。
【0102】
好ましいブロックコポリマーは、特に(メタ)アクリレート、マレエートおよび/またはフマレートを包含するモノマー組成物を重合することによって得られる疎水性セグメントを含むことができる。疎水性セグメントは、特に化学式(I)、(II)および/または(III)のエチレン性不飽和化合物由来である。また、これらの好ましいブロックコポリマーは、化学式(IV)のモノマーを包含する極性セグメントを包含する。
【0103】
特に好ましいブロックコポリマーは、少なくとも1つの疎水性セグメントPおよび少なくとも1つの極性セグメントDを包含し、疎水性セグメントは以下を包含するモノマー組成物を重合することによって得ることができる。
a)疎水性セグメントを製造するためのモノマー組成物の質量に対して0〜40質量%、特には0.5〜20質量%の化学式(I)
【化20】

[式中Rは水素またはメチルであり、R1は1〜5個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルキル基であり、R2およびR3はそれぞれ独自に水素または化学式−COOR'の基であって、式中R'は水素または1〜5個の炭素原子を有するアルキル基である]の少なくとも1つのエチレン性不飽和エステル化合物、
b)疎水性セグメントを製造するためのモノマー組成物の質量に対して10〜99.9質量%、特には55〜95質量%の化学式(II)
【化21】

[式中Rは水素またはメチルであり、R4は6〜15個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルキル基であり、R5およびR6はそれぞれ独自に水素または化学式−COOR''の基であって、式中R''は水素または6〜15個の炭素原子を有するアルキル基である]の少なくとも1つのエチレン性不飽和エステル化合物、
c)疎水性セグメントを製造するためのモノマー組成物の質量に対して0〜80質量%、特には0.5〜60質量%の化学式(III)
【化22】

[式中Rは水素またはメチルであり、R7は16〜30個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルキル基であり、R8およびR9はそれぞれ独自に水素または化学式−COOR'''の基であって、式中R'''は水素または16〜30個の炭素原子を有するアルキル基である]の少なくとも1つのエチレン性不飽和エステル化合物、
e)疎水性セグメントを製造するためのモノマー組成物の質量に対して0〜50質量%のコモノマー、
および化学式(IV)
【化23】

のエチレン性不飽和極性エステル化合物に由来する単位を包含する極性セグメントであって、
式中Rは水素またはメチルであり、Xは酸素、硫黄または化学式−NH−または−NRa−のアミノ基であり、その式中Raは1〜40個の炭素原子を有するアルキル基であり、R10が2〜1000個の炭素原子を包含し少なくとも2個のヘテロ原子を有する基であり、R11およびR12が独自に水素または化学式−COX'R10'の基であり、その式中X'は酸素または化学式−NH−または−NRa'−のアミノ基であり、その式中Ra'は1〜40個の炭素原子を有するアルキル基であり、R10'は1〜100個の炭素原子を包含する基であり、少なくとも1つの極性セグメントは、化学式(IV)のモノマーに由来する単位を少なくとも3つ包含し、互いに直接結合している。
【0104】
好ましくは極性セグメントは、化学式(IV)のモノマーに由来する極性単位を高率で有する。少なくとも1つの極性セグメントは、極性セグメントの質量に対して好ましくは少なくとも50質量%、より好ましくは少なくとも70質量%、さらに好ましくは少なくとも80質量%の、化学式(IV)のモノマーに由来する単位を包含する。
【0105】
したがって、疎水性セグメントPおよび極性セグメントDを有する好ましいブロックコポリマーは、化学式
Pm−Dn(XV)
で表すことができ、
式中mおよびnはそれぞれ独自に1〜40の整数、特に1〜5、望ましくは1または2であるが、これによって何らかの制限が強要されるという意図はない。たとえば、m=1およびn=5は、櫛型ポリマーまたは星型ポリマーを生じさせる。m=2およびn=2は、たとえば星型ポリマーまたは交替P−D−P−Dブロックを有するブロックポリマーを生じさせる。
【0106】
疎水性および極性セグメントの長さは幅広い範囲で変化する。疎水性セグメントPは好ましくは少なくとも10、特に少なくとも50の質量平均重合度を有するのがよい。疎水性セグメントの質量平均重合度は、好ましくは20〜5000であり、特には60〜2000である。
【0107】
極性セグメントDの長さは、好ましくは少なくとも3、より好ましくは少なくとも5、特に好ましくは少なくとも10モノマー単位であり、これらのモノマー単位は好ましくは化学式(IV)の化合物に由来する。
【0108】
極性セグメントDの質量平均重合度は好ましくは10〜1000である。
【0109】
特別な様態において、極性セグメントDの疎水性セグメントPに対する質量比は、1:1〜1:100、好ましくは1:2〜1:30である。
【0110】
本発明の望ましい実施形態において、コポリマーの極性セグメントに対する疎水性セグメントの長さは、10:1〜1:10、好ましくは5:1〜1:2、さらに好ましくは3:1〜1:1であるが、互いに対するブロックの長さのこのほかの比も本発明に包含される。
【0111】
当業者はブロックコポリマーおよび個々のセグメントの多分散性に留意する。報告されている値は、特別な分子量の質量平均に基づくものである。
【0112】
本発明のコポリマーは好ましくは潤滑油組成物に使用することができる。潤滑油組成物は、少なくとも1つの潤滑油を包含する。
【0113】
潤滑油は特に鉱物油、合成油および天然油を含む。
【0114】
鉱物油はそれ自体既知であり、市販されている。一般に鉱物油または粗油から、蒸留および/または再精製およい任意にはさらなる精製および最終工程によって得ることができ、用語「鉱物油」は特に粗油または鉱物油の沸点の高い分画を含む。一般に、鉱物油の沸点は5000Paにおいて、200℃以上、好ましくは300℃以上である。シェール油の低温におけるカルボニル化、軟炭のコークス化、空気を除外した褐炭の蒸留、および軟炭または褐炭の水素化によって産生が可能である。鉱物油はこれよりも小規模で、野菜(ホホバ、ナタネなど)または動物(牛脚油など)由来の原材料からも産生される。したがって、鉱物油はその由来に応じて、種々の比率で芳香族、環状、分枝鎖および直鎖の炭化水素を有する。
【0115】
一般に、粗油または鉱物油において、パラフィンベース分画、ナフテン分画および芳香族分画は区別され、用語「パラフィンベース分画」は長鎖または多分岐状のイソアルカン類であり、ナフテン分画はシクロアルカン類である。また、鉱物油は、その由来および最終工程に応じて、n−アルカン類、分枝度の低いいわゆるモノ−メチル−分枝鎖パラフィンとして既知のイソアルカン類およびある程度の極性特性が付与される特にO、Nおよび/またはSといったヘテロ原子を有する化合物の種々の分画を有する。しかし、個々のアルカン分子は長鎖分枝の基およびシクロアルカン基および芳香族の両方を有することができるため、割り当ては困難である。本発明の目的のため、たとえば割り当てはDIN 51 378に従って実行することができる。極性分画もASTM D 2007に従って測定することができる。
【0116】
好ましい鉱物油中のn−アルカン類の分画は、3質量%未満であり、O−、N−および/またはS−含有化合物での比率は6質量%未満である。芳香族およびモノ−メチル−分枝鎖パラフィン類の比率は、一般にそれぞれの場合で0〜40質量%である。ある興味深い様態において、鉱物油は主として、一般に13個以上、好ましくは18個以上、最も好ましくは20個以上の炭素原子を有するナフテン系およびパラフィンを主成分とするアルカン類を包含する。これらの化合物の分画は一般に60質量%以上、好ましくは80質量%以上であるが、これによって何らかの制限が強要されるという意図はない。好ましい鉱物油は、鉱物油の合計質量のそれぞれの場合に対して0.5〜30質量%の芳香族分画、15〜40質量%のナフテン系分画、35〜80質量%のパラフィンを主成分とする分画、3質量%までのn−アルカン類および0.05〜5質量%の極性化合物を含有する。
【0117】
特に好ましい鉱物油を、尿素分離およびシリカゲル上の液体クロマトグラフィーといった従来の過程によって実施した場合、たとえば下記の構成要素、使用した特別な鉱物油の合計質量に対する割合が明らかになる。
約18〜31個の炭素原子を有するn−アルカン類:0.7〜1.0%
18〜31個の炭素原子を有する軽度に分枝鎖のアルカン類:1.0〜8.0%
14〜32個の炭素原子を有する芳香族:0.4〜10.7%
20〜32個の炭素原子を有するイソおよびシクロアルカン類:60.7〜82.4%
極性化合物:0.1〜0.8%
喪失量:6.9〜19.4%
鉱物油の解析に関する価値ある情報および種々の組成を有する鉱物油の一覧は、たとえば、Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 5th Edition on CD−ROM, 1997の「潤滑剤および関連製品」の項に記載がある。
【0118】
合成油としては、ジエステルおよびポリエステルなどの有機エステル類、ポリアルキレングリコール、ポリエーテル、合成炭化水素、特にポリオレフィンが挙げられるが、そのうち好ましいのはポリアルファオレフィン(PAO)、シリコンオイルおよびペルフルオロアルキルエーテルである。これらは通常、鉱物油よりも若干高価であるが、その性能については利点を有する。
【0119】
天然油は、動物油または植物油であり、たとえば牛脚油またはホホバ油である。
【0120】
これらの潤滑油は混合物としても使用され、多くの場合市販されている。
【0121】
潤滑油組成物中のポリアルキルエステル濃度は、好ましくは組成物の合計質量に対して2〜40質量%、より好ましくは4〜20質量%である。
【0122】
上述の構成要素に加えて、潤滑油組成物はさらに添加剤を包含することができる。
【0123】
これらの添加剤としては、抗酸化剤、防錆剤、消泡剤、抗摩耗剤、染料、染料安定剤、洗浄剤、流動点降下剤および/または洗浄抑制添加剤が挙げられる。
【0124】
好ましい潤滑油組成物の粘度は、40℃でASTM D 445で測定した場合、10〜120mm2/s、より望ましくは22〜100mm2/sである。
【0125】
本発明の特別な様態において、好ましい潤滑油組成物の粘度指数は、ASTM D 2270で測定した場合、120〜350、特には140〜200である。
【0126】
本発明のコポリマーは、優れた分散作用を示す。この特性は、たとえばCEC L−48−A−00で測定することができる(「人工老化による自動車変速装置に使用する潤滑油の酸化安定性」)。この試験では、酸化の程度は粘度の上昇によって検出される。ΔKV100またはΔKV40が低いと、酸化安定性およびポリマーの分散性は良好になる。また、ヘプタン不溶性質量分率の値を使用して、酸化安定性および分散性を記述することができる。
【0127】
さらに、コポリマーの分散作用はJIS K2514に従って測定することができる。この試験では、ペンタン不溶性構成要素を測定し、コポリマーの優れた特性がJIS K2514方法A(凝集剤の添加なし)またはJIS K2514方法B(凝集剤の添加後)のいずれかに従って測定することができる。
【0128】
また、分散性は、酸化残留物の実行半径とベースオイルとの比率のかたちで、吸い取り紙上で地耐力を測定することによって、酸化オイルで測定することができる。これらの試験は、いわゆる吸い取り紙試験として、製油産業で既知であり広く行われている。
【0129】
上述の過程において、通常は酸化段階を実施して、添加剤の分散性を調査する。しかし、この段階は煤煙粒子を添加することで置換し、本発明のコポリマーの優れた抗酸化特性の影響なしに分散作用を調査することができる。
【0130】
これらの方法において、市販の煤煙、たとえばDegussa AG(Hanau)のPrintex 95などのカーボンブラックを、制御された方法で調剤に添加し、激しく攪拌し(たとえば、高速撹拌機または振盪機内の鉄鋼研摩球を用いて)、上述のように、分散性を粘度の上昇、非分散煤煙の質量による比率または実行半径比のかたちで評価する(欧州特許0699694号を参照)。また、煤煙の代わりに他の色素、たとえばBASF AG(Ludwigshafen)の銅フタロシアニンHeliogen blue L7101Fなどの有機色素または、Kronos Titan GmbH(Leverkusen)の二酸化チタンKronos 2310などの無機色素を使用することは可能で、たとえば塗装業で他の応用例に必要とされる分散作用を示すことができる。
【0131】
また、トルエン/水試験を用いて、ポリマー分散液の界面活性、すなわち油中水型エマルジョンを安定させる能力または極性物質を非極性有機培地に分散させる一般的な能力を確認することもできる。したがって、この試験はモーターオイルにおける極性スラッジの分散モデルとして役立つ。エマルジョンの分離が緩徐であるほど、界面活性および分散作用は高い。この方法の詳細は欧州特許0699694号に記載されている。
【0132】
また、本発明に基づくコポリマーを包含する潤滑油組成物は、特に高い酸化耐性を有する。酸化耐性は、酸の数または赤外線スペクトルにおけるカルボニルバンドの変化によって測定することができる。
【0133】
さらに、本発明のコポリマーは防錆添加剤として役立つことができる。
【0134】
潤滑油組成物の腐食挙動は、ZF Friedrichshafen AG("Korrosionsverhalten gegenuber Kupfer"[銅に対する腐食挙動])のZF 702047で測定することができ、厳しい条件下で実施する(150℃で168時間)。この試験は、分毎に5リットルの空気供給とともにCEC L−48−A−00に従ってセットアップまでを実施する。ISO 2160に基づいた銅棒を実験設備に導入し、実験を実施した後、オイル中の銅含有量をDIN 51391−2に従って測定する。これは、たとえば最大で50mg/kg(CVTオイル)または150mg/kg(HGVオイル)である必要があり、これは銅試料の質量の喪失量、約1.5mg(CVTオイル)または5mg(HGVオイル)に対応している。本発明のコポリマーは、潤滑油組成物に添加する添加剤がきわめて少なくても、この基準を満たすことができる。
【0135】
また、腐食挙動は、自動車産業で広く使用されており、腐食が比較的緩やかな条件下(40℃で48時間)で実行される、Volkswagen AGのVW PV 1401過程("Korrosionsschutz gegenuber Stahl" [車輪に関する腐食防止])に従って調査することができる。いくつかのカテゴリーにおける表面の評価により、腐食の程度が分類できるようになり、レベル3以下の値が望ましい。本発明のコポリマーは、潤滑油組成物に添加する添加剤がきわめて少なくても、この基準を満たすことができる。
【0136】
また、本発明のコポリマーは金属不活性化剤として優れた作用を示す。
【0137】
本発明のコポリマーの金属不活性化特性は、ASTM D130またはISO 2160(「銅腐食試験」)、ASTM D665方法A(「非腐食および非発錆特性」)およびASTM D1748(「発錆防止試験」)に従って測定することができる。
【0138】
本発明を以下に実施例を用いて詳細に説明するが、本発明をこれらの実施例によって制限する意図はない。
【0139】
実施例1
ジメチルアミノジグリコールメタクリレートの製造:
サーベル撹拌機、撹拌機モーター、接触温度計、加熱マントル、空気注入チューブ、ランダム充填剤の入ったカラムおよび蒸気ディバイダーの付いた2L用四口フラスコにまず、ジメチルアミノジグリコール(=BASF AG Ludwigshafenの2−(2−ジメチルアミノ(エトキシ))エタノール)491.2g、メチルメタクリレート(MMA)1110.0g、フェノチアジン0.37g、N,N−ジフェニル−フェニレンジアミン0.37gおよびTempol 11mgを入れ、攪拌しながら60℃まで加熱し、リチウムメトキシド4.80gを添加した。生成されたメタノール(MeOH)をMMA/MeOH共沸混合物として持続的に蒸留分離し、カラムの上部の一定温度が100℃になるまで続けた。次に、濾過用に1%Celatorn FW 80を攪拌し、反応混合物をSEITZ T1000 depth濾過層で濾過して、約12mbarで回転蒸発器を用いて80℃で過剰なMMAを除去した。残留物を減圧下でもう一度蒸留して精製した。
【0140】
ジメチルアミノジグリコールメタクリレートを包含する分散ブロックポリマーの製造
サーベル撹拌機、撹拌機モーター、N2注入チューブ、接触温度計および加熱マントルの付いた2L用四口フラスコにまず、LIMA(C12−C15アルコール混合物Lial(登録商標)125のメタクリル酸エステル)900.0g、KPE 100Nオイル225.0gおよびクミルジチオベンゾエート6.75gを入れ、攪拌しながら95℃まで加熱した。窒素の導入およびドライアイスの添加によって不活化した後、tert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート(TBPO)0.90gを添加することによって重合を開始した。さらにTBPO 0.90gを2時間後に添加し、1.80gを4時間後に添加した。反応時間が6時間を経た後に、温度を85℃まで低下させ、ジメチルアミノジグリコールメタクリレート89.0gおよびTBPO 2.0gを添加し、混合物を85℃で一晩攪拌した。翌日、混合物をKPE 100Nオイル434.3gで希釈した。これにより澄明で粘性のある溶液が得られた。
【0141】
実施例2
モノ−2−メタクリロイルオキシエチルスクシネートを包含する分散ブロックポリマーの製造
サーベル撹拌機、撹拌機モーター、N2注入チューブ、接触温度計および加熱マントルの付いた2L用四口フラスコにまず、LIMA(C12−C15アルコール混合物Lial(登録商標)125のメタクリル酸エステル)1000.0g、酢酸ブチル250.0gおよびクミルジチオベンゾエート7.50gを入れ、攪拌しながら85℃まで加熱した。窒素の導入およびドライアイスの添加によって不活化した後、tert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート(TBPO)2.0gを添加することによって重合を開始した。2時間後、さらにTBPO 2.0gを添加した。反応時間が6時間を経た後に、温度を90℃まで上昇させ、酢酸ブチル230gおよびTBPO 1.0gに溶解したモノ−2−メタクリロイルオキシエチルスクシネート(Rohm GmbH & Co KG, Darmstadt)92.9gを添加し、混合物を90℃で一晩攪拌した。翌日、混合物をKPE 100Nオイル728.6gで希釈し、酢酸ブチルを120℃/12mbarで回転式蒸発器を用いて酢酸ブチルを除去した。これにより澄明で粘性のある溶液が得られた。
【0142】
実施例3
N−(2−メタクリロイルオキシエチル)エチレン尿素を包含する分散ブロックポリマーの製造
サーベル撹拌機、撹拌機モーター、N2注入チューブ、接触温度計および加熱マントルの付いた2L用四口フラスコにまず、LIMA(C12−C15アルコール混合物Lial(登録商標)125のメタクリル酸エステル)900.0g、酢酸ブチル225.0gおよびクミルジチオベンゾエート6.75gを入れ、攪拌しながら90℃まで加熱した。窒素の導入およびドライアイスの添加によって不活化した後、tert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート(TBPO)1.80gを添加することによって重合を開始した。2時間後および4時間後にそれぞれTBPO 0.90gを添加した。反応時間が6時間を経た後に、酢酸ブチル300gおよびTBPO 1.0gに溶解したN−(2−メタクリロイルオキシエチル)エチレン尿素(MMA=Rohm GmbH and Co. KG, DarmstadtのPlex(登録商標)6855−O中のN−(2−メタクリロイルオキシエチル)エチレン尿素の25%溶液からMMAを除去することによって得られる)78.3gを添加し、混合物を90℃で一晩攪拌した。翌日、混合物をKPE 100Nオイル647.9gで希釈し、120℃/12mbarで回転式蒸発器を用いて酢酸ブチルを除去した。これにより澄明で粘性のある溶液が得られた。
【0143】
実施例4
2−アセトアセトキシエチルメタクリレートを包含する分散ブロックポリマーの製造
サーベル撹拌機、撹拌機モーター、N2注入チューブ、接触温度計および加熱マントルの付いた2L用四口フラスコにまず、LIMA(C12−C15アルコール混合物Lial(登録商標)125のメタクリル酸エステル)900.0g、酢酸ブチル225.0gおよびクミルジチオベンゾエート6.75gを入れ、攪拌しながら85℃まで加熱した。窒素の導入およびドライアイスの添加によって不活化した後、tert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート(TBPO)1.80gを添加することによって重合を開始した。2時間後、さらにTBPO 0.90gを添加した。反応時間が6時間を経た後に、酢酸ブチル300gおよびTBPO 0.90gに溶解した2−アセトアセトキシエチルメタクリレート(Lonza, SwitzerlandのLonzamon AAEMA)78.3gを添加し、混合物を85℃で一晩攪拌した。翌日、混合物をKPE 100Nオイル652.2gで希釈し、120℃/12mbarで回転式蒸発器を用いて酢酸ブチルを除去した。これにより澄明で粘性のある溶液が得られた。
【0144】
比較例1
サーベル撹拌機、撹拌機モーター、N2注入チューブ、接触温度計および加熱マントルの付いた2L用四口フラスコにまず、LIMA(C12−C15アルコール混合物Lial(登録商標)125のメタクリル酸エステル)608.0gおよびクミルジチオベンゾエート2.90g、TBPO(tert−ブチルペルオクトエート)1.22gおよび反応フラスコ中の鉱物油160gを入れ、ドライアイスの添加によって不活化し、窒素は省いた。次に、混合物を攪拌しながら85℃まで加熱した。
【0145】
反応時間が約5時間を経た後に、ヒドロキシエチルメタクリレート32.0gを添加した。2.5時間後、TBPO 0.64gを添加し、反応混合物を85℃で一晩攪拌した。これにより、澄明で粘性のあるポリマーの油溶液が得られた。
【0146】
比較例2
サーベル撹拌機、撹拌機モーター、N2注入チューブ、接触温度計および加熱マントルの付いた2L用四口フラスコにまず、LIMA(C12−C15アルコール混合物Lial(登録商標)125のメタクリル酸エステル)608.0gおよびクミルジチオベンゾエート2.90g、TBPO(tert−ブチルペルオクトエート)1.22gおよび反応フラスコ中の鉱物油160gを入れ、ドライアイスの添加によって不活化し、窒素は省いた。次に、混合物を攪拌しながら85℃まで加熱した。
【0147】
反応時間が約5時間を経た後に、ジメチルアミノエチルメタクリレート32.0gを添加した。2.5時間後、TBPO 0.64gを添加し、反応混合物を85℃で一晩攪拌した。これにより、澄明で粘性のあるポリマーの油溶液が得られた。
【0148】
実施例5〜8および比較例3および4
結果得られたコポリマーをベースオイルと混合した。次にこの混合物を対象にして摩擦実験で調査した。
【0149】
摩擦実験は、下記の条件下でミニ牽引器(PCS Instruments)を使用して実施した。
【0150】
表4:MTM摩擦試験のパラメータおよび条件の測定
【表1】

【0151】
摩擦実験の結果、Stribeck曲線が得られ、そこから10mm/sの摩擦係数が測定された。
【0152】
【表2】

【0153】
比較例5
サーベル撹拌機、撹拌機モーター、N2注入チューブ、接触温度計、加熱マントルおよび還流濃縮器の付いた2L用四口フラスコにまず、150Nオイル430gおよび質量比99:1のC12−C18アルキルメタクリレートとメチルメタクリレートのモノマー混合物47.8gを入れる。N2の導入およびドライアイスの添加によって不活化した後、温度を100℃に調節する。その後、tert−ブチルペルオクトエート0.71gを添加し、同時に、質量比99:1のC12−C18アルキルメタクリレートとメチルメタクリレートのモノマー混合物522.2gおよびtert−ブチルペルオクトエート3.92gからなるモノマーフィードを開始する。フィード時間は均一なフィード速度で3.5時間である。フィード終了から2時間後、さらにtert−ブチルペルオクトエート1.14gを添加する。130℃まで加熱した後、150Nオイル13.16g、N−ビニルピロリドン17.45gおよびtert−ブチルペルベンゾエート1.46gを添加する。それから1時間後、2時間後および3時間後にそれぞれ、tert−ブチルペルベンゾエート0.73gをさらに添加する。Rohm & Haas GmbHのDE1 520 696も参照されたい。
【0154】
ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)
ポリマーの質量平均分子量Mおよび多分散指数PDIをGPCで測定した。測定は35℃のテトラヒドロフラン中で、25以上の標準品(Polymer Standards ServiceまたはPolymer Laboratories)のポリメチルメタクリレート較正曲線から決定し、そのMpeakは5×106〜2×102g/molの範囲内では対数的に均一に分配された。6本のカラムの組み合わせ(Polymer Standards Service SDV 100Å/2×SDV LXL/2×SDV 100Å/Shodex KF−800D)を使用した。信号を記録するため、RI検出器(Agilent 1100 series)を使用した。
【0155】
【表3】

【0156】
分散作用および酸化安定性
本発明の実施例2〜4の分散作用および酸化安定性(CEC L−48−A−00、方法B、160℃、192時間)を、分散粘度指数向上剤IIとしてのSAE 15W40モーターオイル調剤(ASTM D445に準拠した100℃における運動粘性率:KV100=12.5〜16.3mm2/s;ASTM D5293に準拠した−20℃におけるコールドクランキングシミュレーターでの動粘性率:CCS粘度<7000mPA)で比較例5と比較した。調剤は以下から構成されていた。
・5.2質量%のChevron−Oronite Paratone 8002(OCPタイプの非分散粘度指数向上剤I)
・分散粘度指数向上剤II(調剤に対して2.12質量%のポリマー含量)
・0.19質量%のViscoplex 1−211(流動点向上剤)
・13.8質量%のChevron−Oronite Oloa 4594 CA(添加剤包装)および
・12質量%の600Nオイル
が150Nオイルの100質量%を構成する
この試験では、酸化の程度は粘度の上昇によって検出される。ΔKV40relまたはΔ100relの値が低ければ、ポリマーの酸化安定性および分散性は優れている。得られた結果を以下の表に示す。実施例2〜4に従った本発明のポリマーは、比較例5に比して、酸化安定性および分散性に関して著明な利点を有する。
【0157】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれエチレン性不飽和モノマーの合計質量に対して
a)0〜40質量%の、化学式(I)
【化1】

[式中Rが水素またはメチルであり、R1が1〜5個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルキル基であり、R2およびR3が独自に水素または化学式−COOR'の基であり、その式中R'が水素または1〜5個の炭素原子を有するアルキル基である]の少なくとも1つのエチレン性不飽和エステル化合物、
b)10〜99.9質量%の、化学式(II)
【化2】

[式中Rが水素またはメチルであり、R4が6〜15個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルキル基であり、R5およびR6が独自に水素または化学式−COOR''の基であり、その式中R''が水素または6〜15個の炭素原子を有するアルキル基である]の少なくとも1つのエチレン性不飽和エステル化合物、
c)0〜80質量%の、化学式(III)
【化3】

[式中Rが水素またはメチルであり、R7が16〜30個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルキル基であり、R8およびR9が独自に水素または化学式−COOR'''の基であり、その式中R'''が水素または16〜30個の炭素原子を有するアルキル基である]の少なくとも1つのエチレン性不飽和エステル化合物、
d)0.1〜30質量%の、化学式(IV)
【化4】

[式中Rが水素またはメチルであり、Xが酸素、硫黄または化学式−NH−または−NRa−のアミノ基であり、その式中Raは1〜40個の炭素原子を有するアルキル基であり、R10が2〜1000個の炭素原子を包含し少なくとも2個のヘテロ原子を有する基であり、R11およびR12が独自に水素または化学式−COX'R10'であり、その式中X'は酸素または化学式−NH−または−NRa'−のアミノ基であり、その式中Ra'は1〜40個の炭素原子を有するアルキル基であり、R10'は1〜100個の炭素原子を包含する基である]の少なくとも1つのエチレン性不飽和極性エステル化合物、
e)0〜50質量%のコモノマーからなる少なくとも1つのモノマー組成物を重合することによって得られるコポリマー。
【請求項2】
コポリマーが25℃のクロロホルムで測定した比粘度ηsp/cが8〜74ml/gを有することを特徴とする、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項3】
モノマー組成物がコポリマーの製造中に変化することでブロックコポリマーが得られることを特徴とする、請求項1または2に記載のコポリマー。
【請求項4】
化学式(IV)のエステル化合物のR10基が少なくとも2種類の異なるヘテロ原子を有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載のコポリマー。
【請求項5】
化学式(IV)のエステル化合物の少なくとも1つのなかのR10基が少なくとも1個の窒素原子および少なくとも1個の酸素原子を包含することを特徴とする、請求項4に記載のコポリマー。
【請求項6】
化学式(IV)のエステル化合物の少なくとも1つのなかのR10基の少なくとも1個のヘテロ原子が、少なくとも4個の原子によってX基から分離されていることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載のコポリマー。
【請求項7】
化学式(IV)のエステル化合物の少なくとも1つのなかのR10基が、化学式(V)
【化5】

[式中Aが1〜500個の炭素原子を有する結合基であり、R13およびR14基はそれぞれ独自に水素または1〜40個の炭素原子を有するアルキル基である]の基であることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載のコポリマー。
【請求項8】
化学式(V)の結合基が、化学式(IV)
【化6】

[式中nが1〜3の整数である]の基であることを特徴とする、請求項7に記載のコポリマー。
【請求項9】
化学式(IV)のエステル化合物の少なくとも1つのなかのR10基が、化学式(VII)
【化7】

の基であることを特徴とする、請求項8に記載のコポリマー。
【請求項10】
構成要素d)が化学式(VIII)
【化8】

のエステル化合物を少なくとも1つ包含することを特徴とする、請求項9に記載のコポリマー。
【請求項11】
化学式(IV)のエステル化合物の少なくとも1つのなかのR10基が、化学式−CO−の少なくとも1つの基を包含することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載のコポリマー。
【請求項12】
化学式(IV)のエステル化合物の少なくとも1つのなかのR10基が、化学式−CO−の少なくとも2つの基を包含することを特徴とする、請求項11に記載のコポリマー。
【請求項13】
化学式−CO−の少なくとも2つの基が、多くて4個の原子を介し、CO基の炭素原子に関して互いに結合していることを特徴とする、請求項12に記載のコポリマー。
【請求項14】
化学式(IV)のエステル化合物の少なくとも1つのなかのR10基が、化学式(IX)
【化9】

の基であることを特徴とする、請求項13に記載のコポリマー。
【請求項15】
構成要素d)が化学式(X)
【化10】

のエステル化合物を少なくとも1つ包含することを特徴とする、請求項14に記載のコポリマー。
【請求項16】
化学式(IV)のエステル化合物の少なくとも1つのなかのR10基が、化学式(XI)
【化11】

の基であることを特徴とする、請求項13に記載のコポリマー。
【請求項17】
構成要素d)が化学式(XII)
【化12】

のエステル化合物を少なくとも1つ包含することを特徴とする、請求項16に記載のコポリマー。
【請求項18】
化学式(IV)のエステル化合物の少なくとも1つのなかのR10基が、化学式−CO−の少なくとも1つの基および少なくとも1個の窒素原子を包含することを特徴とする、請求項11に記載のコポリマー。
【請求項19】
化学式(IV)のエステル化合物の少なくとも1つのなかのR10基が、少なくとも1つの尿素基を包含することを特徴とする、請求項18に記載のコポリマー。
【請求項20】
化学式(IV)のエステル化合物の少なくとも1つのなかのR10基が、化学式(XIII)
【化13】

[式中Aが1〜500個の炭素原子を有する結合基である]の基であることを特徴とする、請求項19に記載のコポリマー。
【請求項21】
構成要素d)が化学式(XIV)
【化14】

のエステル化合物を少なくとも1つ包含することを特徴とする、請求項20に記載のコポリマー。
【請求項22】
コポリマーの多分散度Mw/Mnが1.05〜4.0であることを特徴とする、請求項1から21までのいずれか1項に記載のコポリマー。
【請求項23】
コポリマーがブロックコポリマーであり、そのブロックコポリマーが少なくとも1つの疎水性セグメントPおよび少なくとも1つの極性セグメントDを包含し、該疎水性セグメントは、
a)疎水性セグメントを製造するためのモノマー組成物の質量に対して0〜40質量%の、化学式(I)
【化15】

[式中Rは水素またはメチルであり、R1は1〜5個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルキル基であり、R2およびR3はそれぞれ独自に水素または化学式−COOR'の基であって、式中R'は水素または1〜5個の炭素原子を有するアルキル基である]の1つ以上のエチレン性不飽和エステル化合物、
b)疎水性セグメントを製造するためのモノマー組成物の質量に対して10〜99.9質量%の、化学式(II)
【化16】

[式中Rは水素またはメチルであり、R4は6〜15個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルキル基であり、R5およびR6は独自に水素または化学式−COOR''の基であって、式中R''は水素または6〜15個の炭素原子を有するアルキル基である]の1つ以上のエチレン性不飽和エステル化合物、
c)疎水性セグメントを製造するためのモノマー組成物の質量に対して0〜80質量%の、化学式(III)
【化17】

[式中Rは水素またはメチルであり、R7は16〜30個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルキル基であり、R8およびR9は独自に水素または化学式−COOR'''の基であって、式中R'''は水素または16〜30個の炭素原子を有するアルキル基である]の1つ以上のエチレン性不飽和エステル化合物、
e)疎水性セグメントを製造するためのモノマー組成物の質量に対して0〜50質量%のコモノマー
を包含するモノマー組成物を重合することによって得られ、かつ前記極性セグメントが、化学式(IV)
【化18】

[式中Rは水素またはメチルであり、Xは酸素、硫黄または化学式−NH−または−NRa−のアミノ基であり、その式中Raは1〜40個の炭素原子を有するアルキル基であり、R10が2〜1000個の炭素原子を包含し少なくとも2個のヘテロ原子を有する基であり、R11およびR12が独自に水素または化学式−COX'R10'の基であり、その式中X'は酸素または化学式−NH−または−NRa'−のアミノ基であり、その式中Ra'は1〜40個の炭素原子を有するアルキル基であり、R10'は1〜100個の炭素原子を包含する基である]のエチレン性不飽和極性エステル化合物に由来する単位を包含するものであって、少なくとも1つの極性セグメントは、化学式(IV)のモノマーに由来する単位を少なくとも3つ包含し、それらが互いに直接結合していることを特徴とする、請求項1から22までのいずれか1項に記載のコポリマー。
【請求項24】
疎水性セグメントPの質量平均重合度が20〜5000であることを特徴とする、請求項23に記載のコポリマー。
【請求項25】
極性セグメントDの質量平均重合度が3〜1000であることを特徴とする、請求項23または24に記載のコポリマー。
【請求項26】
少なくとも1つの極性セグメントが、極性セグメントの質量に対して少なくとも50質量%の、化学式(IV)のモノマーに由来する単位を包含することを特徴とする、請求項23から25までのいずれか1項に記載のコポリマー。
【請求項27】
疎水性セグメントと極性セグメントの質量比が100:1〜1:1であることを特徴とする、請求項23から26までのいずれか1項に記載のコポリマー。
【請求項28】
請求項1〜27の少なくとも1つに記載された少なくとも1つのコポリマーを包含する潤滑油組成物。
【請求項29】
潤滑油組成物が少なくとも1つの鉱物油および/または合成油を包含することを特徴とする、請求項28に記載の潤滑油組成物。

【公表番号】特表2009−510178(P2009−510178A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−504672(P2008−504672)
【出願日】平成18年4月4日(2006.4.4)
【国際出願番号】PCT/EP2006/003032
【国際公開番号】WO2006/105926
【国際公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(399020957)エボニック ローマックス アディティヴス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (38)
【氏名又は名称原語表記】Evonik RohMax Additives GmbH
【住所又は居所原語表記】Kirschenallee, D−64293 Darmstadt, Germany
【Fターム(参考)】