説明

先行車追従走行装置及び運転支援システム

【課題】先行車追従走行を行うものにおいて、燃費の悪化をより抑制することを可能にする。
【解決手段】先行車の速度と、車車間通信で取得した先行車と同一道路上の先行車の進行方向前方に位置する先行車前方車の速度情報とをもとに、当該先行車前方車の速度が先行車の速度よりも所定値以上小さいか否かを判定する。そして、肯定判定した場合であって、且つ、自車の速度が先行車の速度以下の場合には、先行車追従制御を中断し、自車の速度を維持することで加速を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先行車追従走行装置及びその先行車追従走行装置を含む運転支援システムに関し、特に、先行車追従走行における省燃費技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、先行車に自動的に追従して走行することができる先行車追従走行装置が知られている。先行車追従走行装置としては、ドライバの設定した車速を上限として、先行車との車間距離や相対速度に応じた車速となるように制御するものが知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、車車間通信によって得られる先行車の絶対位置情報及び加減速調整情報を用いて先行車追従走行を行う技術が開示されている。特許文献1に開示の技術では、自車の絶対位置情報と車車間通信によって得られる先行車の絶対位置情報から、先行車との車間距離を求める。そして、先行車との車間距離と目標車間距離との偏差を検出し、この偏差と車車間通信で得られた先行車の加減速調整情報とに基づいて、自車両を加減速制御する。
【0004】
また、例えば特許文献2には、レーダを用いて検出した先行車との車間距離や相対速度に加え、補正接近離間状態評価指標KdB_cを用いて先行車追従走行を行う技術が開示されている。上記補正接近離間状態評価指標KdB_cは、先行車の速度を考慮して、接近離間状態評価指標KdBを補正した指標である。また、接近離間状態評価指標KdBは、前方物体のドライバの目に映る像を想定し、当該想定した像の面積の単位時間当たりの変化度合いを表す指標である。この接近離間状態評価指標KdBおよび前述の補正接近離間状態評価指標KdB_cは、例えば、それぞれ、下記式1、2で表される。なお、式1、2において、Dは自車両と先行車との車間距離、Vrは自車両に対する先行車の相対速度、aは乗数、Vpは先行車速度である。
【数1】

【数2】

【0005】
上記式1に示すように、補正接近離間状態評価指標KdB_cは、先行車に接近する相対速度Vrの絶対値が高くなるほど大きくなる。また、先行車速度Vpが高いほど小さくなる。また、車間距離が短くなるほど大きくなる。また、車間距離Dは三乗項であることから、車間距離Dが短くなる変化に対する補正接近離間状態評価指標KdB_cの増加勾配は、車間距離Dが短くなるほど急峻になる。特許文献2のように、先行車追従走行を、補正接近離間状態評価指標を用いて行うと、ドライバにとって違和感の少ない追従走行が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3480484号公報
【特許文献2】特開2008−280017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に開示の技術では、自車が先行車の加減速に追従して加減速を行うため、無駄な加減速を行って燃費の悪化を招く可能性があるという問題点を有していた。詳しくは、以下の通りである。
【0008】
自車の追従先の先行車と同じ道路上の当該先行車よりも前方に位置する車両(以下、先行車前方車)が渋滞による低速走行、或いは故障や事故で停車しているような場合がある。このような場合において、先行車が先行車前方車の状況に関わらず加速したり、減速を行わずに高速走行を維持したりしたときには、先行車は先行車前方車に接近したところで急減速を行うことになる。また、先行車追従走行を行っている自車も、先行車の加減速に追従してしまうので、無駄な加速や急減速を行うことになる。従って、無駄な加減速を行うことによって燃費の悪化を招く可能性がある。
【0009】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、先行車追従走行を行うものにおいて、燃費の悪化をより抑制することを可能にする先行車追従走行装置及び運転支援システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の先行車追従走行装置は、車両に搭載され、車車間通信によって情報を受信する無線通信装置を介して情報を取得するとともに、自車の先行車への追従走行を行わせる先行車追従制御を行う。また、先行車位置決定手段で決定した先行車の現在位置と他車情報取得手段で取得した先行車以外の他車の現在位置情報と地図データ取得手段で取得した地図データとから、当該他車が先行車と同一道路上の前記先行車の進行方向前方に位置する先行車前方車であるか否かを判断する先行車前方車判断手段と、先行車前方車判断手段で先行車前方車と判断した場合に、先行車速度決定手段によって決定した先行車の速度と他車情報取得手段で取得した当該先行車前方車の速度情報とをもとに、当該先行車前方車の速度が先行車の速度よりも所定値以上小さいか否かを判定する速度判定手段とを備える。そして、速度判定手段で肯定判定した場合であって、且つ、自車速検出手段で検出した自車の速度が先行車速度決定手段によって決定した先行車の速度以下である場合には、先行車追従制御を中断し、自車の速度を維持することで加速を抑制する。
【0011】
先行車前方車の速度が先行車の速度よりも所定値以上小さい場合には、先行車前方車と先行車との車間距離が縮まっていくので、先行車はいずれ減速を行わなければならなくなる。このような場合において、先行車の速度以下で走行している自車が、先行車に追従すべく加速を行ってしまうと、その後に先行車が減速した際には、今度は、その減速に追従して減速しなければならない。そこで、請求項1では、先行車前方車の速度が先行車の速度よりも所定値以上小さい場合、すなわち、先行車前方車と先行車との車間距離が縮まっていく状況では、先行車追従制御を行っていれば加速を行う、自車の速度が先行車の速度以下の状況であっても、先行車追従制御を中断し、自車の速度を維持する。よって、その後に、自車は無駄な加速や急減速を行わずに済むようになる。
【0012】
その結果、無駄な加速や急減速による燃費の悪化を防ぐことができ、先行車追従走行を行うものにおいて、燃費の悪化をより抑制することが可能になる。なお、燃料を搭載しない電気自動車においても一般に燃費という概念が用いられるのと同様、本明細書の「燃費」も、電気自動車における燃費を含む概念である。
【0013】
また、請求項1の構成においては、他車の現在位置情報及び速度情報を車車間通信によって取得する。車車間通信は、一般的に半径数百m〜1km程度の範囲が通信範囲である。よって、例えば先行車前方車と自車との相対速度が40km/h程度であるとき、先行車前方車に対するTHW(Time Head Way:車頭時間)は90sec程度までとなる。従って、請求項1の構成によれば、過度の遠方に存在する車が低速走行若しくは停車中であっても、その車を先行車前方車として扱って、先行車追従走行制御を中断してしまうことがない。よって、頻繁に先行車追従走行制御を中断してしまうことを避けることが可能となっている。
【0014】
請求項2の先行車追従走行装置は、車両に搭載され、路車間通信によって情報を受信する無線通信装置を介して情報を取得するとともに、自車の先行車への追従走行を行わせる先行車追従制御を行う。また、先行車速度決定手段によって決定した先行車の速度と他車情報取得手段で取得した先行車前方車の速度情報とをもとに、当該先行車前方車の速度が先行車の速度よりも所定値以上小さいか否かを判定する速度判定手段を備える。そして、速度判定手段で肯定判定した場合であって、且つ、自車速検出手段で検出した自車の速度が先行車速度決定手段によって決定した先行車の速度以下である場合には、先行車追従制御を中断し、自車の速度を維持することで加速を抑制する。
【0015】
請求項2の構成によっても、先行車前方車と先行車との車間距離が縮まっていく状況では、先行車追従制御を行っていれば加速を行う、自車の速度が先行車の速度以下の状況であっても、先行車追従制御を中断し、自車の速度を維持する。よって、自車は無駄な加速や急減速を行わずに済むようにすることができる。従って、無駄な加速や急減速による燃費の悪化を防ぐことができ、先行車追従走行を行うものにおいて、燃費の悪化をより抑制することが可能になる。
【0016】
また、請求項2の構成においては、先行車と同一道路上の先行車の進行方向前方の所定距離内に位置する先行車前方車の現在位置情報及び速度情報を路車間通信によって取得する。これは、例えば先行車と同一道路上の先行車の進行方向前方の所定距離内の地点において、当該地点に位置する車両の現在位置情報及び速度情報を取得して路上機から送信することで可能になる。請求項2の構成によれば、先行車の進行方向前方の所定距離内に位置する先行車前方車の現在位置情報及び速度情報を取得して用いるので、低速走行若しくは停車中の先行車前方車が過度に遠方に存在する位置から自車の速度を維持し加速を禁止してしまうことを避けることが可能となっている。
【0017】
請求項3の先行車追従走行装置は、車両に搭載され、路車間通信によって情報を受信する無線通信装置を介して情報を取得するとともに、自車の先行車への追従走行を行わせる先行車追従制御を行う。また、路側基地局から路車間通信で送信される、路側センサで検出した路上車両の速度情報、位置情報、及び進行方向情報を、無線通信装置を介して他車情報取得手段で逐次取得する。そして、先行車位置決定手段で決定した先行車の現在位置及び進行方向決定手段で決定した先行車の進行方向と、他車情報取得手段で取得した路上車両の位置情報及び進行方向情報とから、当該路上車両が先行車の進行方向前方の所定距離内に位置する先行車前方車であるか否かを先行車前方車判断手段で判断する。さらに、先行車速度決定手段によって決定した先行車の速度と他車情報取得手段で取得した先行車前方車の速度情報とをもとに、当該先行車前方車の速度が先行車の速度よりも所定値以上小さいか否かを速度判定手段で判定する。そして、速度判定手段で肯定判定した場合であって、且つ、自車速検出手段で検出した自車の速度が先行車速度決定手段によって決定した先行車の速度以下である場合には、先行車追従制御を中断し、自車の速度を維持することで加速を抑制する。
【0018】
請求項3の構成によっても、先行車前方車と先行車との車間距離が縮まっていく状況では、先行車追従制御を行っていれば加速を行う、自車の速度が先行車の速度以下の状況であっても、先行車追従制御を中断し、自車の速度を維持する。よって、自車は無駄な加速や急減速を行わずに済むようにすることができる。従って、無駄な加速や急減速による燃費の悪化を防ぐことができ、先行車追従走行を行うものにおいて、燃費の悪化をより抑制することが可能になる。
【0019】
請求項4の先行車追従走行装置は、車両に搭載され、路車間通信によって情報を受信する無線通信装置を介して情報を取得するとともに、自車の先行車への追従走行を行わせる先行車追従制御を行う。また、路側基地局から路車間通信で送信される、路上車両の第2無線通信装置から路側基地局が受信した路上車両の速度情報、位置情報、及び進行方向情報を、無線通信装置を介して他車情報取得手段で逐次取得する。そして、先行車位置決定手段で決定した先行車の現在位置及び進行方向決定手段で決定した先行車の進行方向と、他車情報取得手段で取得した路上車両の位置情報及び進行方向情報とから、当該路上車両が先行車の進行方向前方の所定距離内に位置する先行車前方車であるか否かを先行車前方車判断手段で判断する。さらに、先行車速度決定手段によって決定した先行車の速度と他車情報取得手段で取得した先行車前方車の速度情報とをもとに、当該先行車前方車の速度が先行車の速度よりも所定値以上小さいか否かを速度判定手段で判定する。そして、速度判定手段で肯定判定した場合であって、且つ、自車速検出手段で検出した自車の速度が先行車速度決定手段によって決定した先行車の速度以下である場合には、先行車追従制御を中断し、自車の速度を維持することで加速を抑制する。
【0020】
請求項4の構成によっても、先行車前方車と先行車との車間距離が縮まっていく状況では、先行車追従制御を行っていれば加速を行う、自車の速度が先行車の速度以下の状況であっても、先行車追従制御を中断し、自車の速度を維持する。よって、自車は無駄な加速や急減速を行わずに済むようにすることができる。従って、無駄な加速や急減速による燃費の悪化を防ぐことができ、先行車追従走行を行うものにおいて、燃費の悪化をより抑制することが可能になる。
【0021】
請求項5のように、速度判定手段で肯定判定した場合であって、且つ、自車速検出手段で検出した自車の速度が前記先行車速度決定手段によって決定した前記先行車の速度よりも大きい場合は、先行車追従制御を継続するとともに、速度判定手段で否定判定した場合にも、先行車追従制御を継続する態様とすることが好ましい。
【0022】
これは、先行車前方車の速度が先行車の速度よりも所定値以上小さい場合においても、自車の速度が先行車の速度よりも大きい場合には、自車が先行車に徐々に接近していってしまうので、先行車追従制御を継続させて自車を減速させる必要があるためである。また、先行車前方車の速度が先行車の速度よりも所定値以上小さくなっていない場合には、自車が無駄な加速や急減速を行ってしまう可能性が低いと考えられるためである。詳しくは、先行車前方車の速度が先行車の速度よりも所定値以上小さくなっていない場合には、先行車前方車と先行車との車間距離が縮まりにくい状態にあると考えられるので、先行車は加速した分だけ減速を行わなければならなくなる可能性が低い。よって、このような場合において自車が先行車に追従走行を行っても、自車が無駄な加速や急減速を行ってしまう可能性が低いと考えられる。
【0023】
請求項6の構成においては、先行車追従制御を中断した後、速度判定手段で肯定判定した場合であって、且つ、自車の速度が先行車の速度以下の場合には、先行車追従制御の中断を継続する一方、速度判定手段で肯定判定した場合であって、且つ、自車の速度が先行車の速度よりも大きい場合は、先行車追従制御を再開するとともに、速度判定手段で否定判定した場合にも、先行車追従制御を再開する。
【0024】
先行車の速度が下がるか先行車前方車の速度が上がるかして、先行車前方車の速度が先行車の速度よりも所定値以上小さくなっていない場合には、前述したように、先行車に追従しても無駄な加速や急減速を行う可能性が低いと考えられる。また、先行車前方車の速度が先行車の速度よりも所定値以上小さい場合であっても、自車の速度が先行車の速度よりも大きくなった場合には、前述したように追従走行を行って減速する必要がある。請求項6の構成によれば、以上のような場合に先行車追従制御を再開するので、無駄な加速や急減速を行う可能性が低い場合や追従走行が必要な場合に、先行車追従制御を再開することができる。
【0025】
一方、先行車前方車の速度が先行車の速度よりも所定値以上小さい場合であって、自車の速度が先行車の速度以下の場合には、前述したように、先行車に追従すると無駄な加速や急減速を行うことが考えられる。請求項3の構成によれば、以上のような場合に先行車追従制御の中断を継続するので、無駄な加速や急減速を行う可能性が低くなるまでは先行車追従制御を再開しないようにすることができる。
【0026】
請求項7の構成によれば、前述の補正接近離間状態評価指標KdB_cを用いて先行車追従走行を行う。記憶手段には、ブレーキ開始閾値式および加速制御終了閾値式を記憶する。これらは、いずれもブレーキ判別式にオフセット値を加えた式である。ブレーキ判別式は、運転者のブレーキ操作開始時点における補正接近離間状態評価指標と車間距離との関係を示す式である。ブレーキ開始閾値式は、このブレーキ判別式に同一の車間距離に対する補正接近離間状態評価指標を低下させるブレーキ用オフセット値を加えた式であって、ブレーキ制御開始時点における補正接近離間状態評価指標と車間距離との関係を示す式である。加速制御終了閾値式は、ブレーキ判別式にブレーキ用オフセット値よりも同一の車間距離に対する補正接近離間状態評価指標をさらに低下させる加速用オフセット値を加えた式であって、加速制御終了時点における補正接近離間状態評価指標と車間距離との関係を示す式である。現在値算出手段は、補正接近離間状態評価指標の現在値を逐次算出し、閾値算出手段は、ブレーキ開始閾値式と車間距離の現在値とからブレーキ開始閾値を算出するとともに、加速制御終了閾値式と車間距離の現在値とから加速制御終了閾値を算出する。そして、速度制御手段は、現在値算出手段が算出した補正接近離間状態評価指標の現在値と、閾値算出手段が算出したブレーキ開始閾値、加速制御終了閾値とを比較する。比較の結果、補正接近離間状態評価指標の現在値がブレーキ開始閾値よりも高ければブレーキを作動させ、補正接近離間状態評価指標の現在値が加速制御終了閾値よりも低ければ加速制御を行い、補正接近離間状態評価指標の現在値がブレーキ開始閾値と加速制御終了閾値との間であれば自車両を等速で走行させる。
【0027】
これによれば、補正接近離間状態評価指標KdB_cを用いて先行車追従走行を行うので、ドライバにとって違和感の少ない追従走行が可能となる。また、以上の構成によれば、ブレーキ開始閾値と、加速制御終了閾値とを設けており、補正接近離間状態評価指標の現在値がブレーキ開始閾値と加速制御終了閾値との間であれば等速制御を行うので、加減速の頻度が低下する。よって、燃費の悪化が抑制できる。
【0028】
請求項8の構成では、ブレーキ開始閾値として、摩擦ブレーキ開始閾値と原動機ブレーキ開始閾値の2つの閾値を用いる。なお、原動機ブレーキとは、エンジンブレーキや回生ブレーキを指す。記憶手段には、ブレーキ開始閾値式として、摩擦ブレーキ開始閾値式と原動機ブレーキ開始閾値式とが記憶されている。摩擦ブレーキ開始閾値式は、摩擦ブレーキの作動開始時点における補正接近離間状態評価指標と車間距離との関係を示す式であって、ブレーキ判別式に同一の車間距離に対する補正接近離間状態評価指標を低下させる第1ブレーキ用オフセット値を加えた式である。原動機ブレーキ開始閾値式は、原動機ブレーキの作動開始時点における補正接近離間状態評価指標と車間距離との関係を示す式であって、ブレーキ判別式に、同一の車間距離に対する補正接近離間状態評価指標を第1ブレーキ用オフセット値よりもさらに低下させる第2ブレーキ用オフセット値を加えた式である。閾値算出手段は、3つの閾値を算出する。すなわち、摩擦ブレーキ開始閾値式と車間距離の現在値とから摩擦ブレーキ開始閾値を算出し、原動機ブレーキ開始閾値式と車間距離の現在値とから原動機ブレーキ開始閾値を算出し、加速制御終了閾値式と車間距離の現在値とから加速制御終了閾値を算出する。速度制御手段は、現在値算出手段が算出した補正接近離間状態評価指標の現在値と、閾値算出手段が算出した摩擦ブレーキ開始閾値、原動機ブレーキ開始閾値、加速制御終了閾値とを比較する。比較の結果、補正接近離間状態評価指標の現在値が摩擦ブレーキ開始閾値よりも高ければ摩擦ブレーキを作動させ、補正接近離間状態評価指標の現在値が摩擦ブレーキ開始閾値と原動機ブレーキ開始閾値との間であれば原動機ブレーキを作動させ、補正接近離間状態評価指標の現在値が加速制御終了閾値よりも低ければ加速制御を行い、補正接近離間状態評価指標の現在値がブレーキ開始閾値と加速制御終了閾値との間であれば自車両を等速で走行させる。
【0029】
この発明によれば、補正接近離間状態評価指標の現在値に応じて、摩擦ブレーキと原動機ブレーキの2種類のブレーキが行われる。運転者は、自ら運転する場合、摩擦ブレーキと原動機ブレーキとを適宜使い分けて運転することが通常であることから、この発明によれば、追従走行時の減速制御が、運転者にとってより違和感の少ない減速となる。
【0030】
請求項9の構成によれば、路面状況判断手段で判断した路面の状況に応じてブレーキ開始閾値をブレーキ開始閾値変更手段が可変とするので、路面の状況に応じて減速開始点を変更することが可能になる。
【0031】
請求項9のようにする場合には、請求項10のように、路面の状況が高μであるか低μであるかを自車の乗員が選択して入力する入力装置の入力結果を取得する入力結果取得手段を備え、路面状況判断手段は、入力結果取得手段で取得した入力結果に応じて、路面の状況が高μであるか低μであるかを判断するものであって、ブレーキ開始閾値変更手段は、路面状況判断手段で路面の状況が高μであると判断した場合には、低μであると判断した場合よりもブレーキ開始閾値を高い値に設定する一方、路面の状況が低μであると判断した場合には、高μであると判断した場合よりもブレーキ開始閾値を低い値に設定する態様とすることが好ましい。これによれば、高μの路面に対し制動距離が長くなる低μの路面においては、ブレーキ開始閾値を高μの場合よりも低い値に設定することにより、高μの場合よりも早く減速開始を行うようにして、先行車の減速に対しても余裕をもって減速することが可能となる。
【0032】
請求項11のように、自車の現在位置を逐次取得する現在位置取得手段をさらに備え、先行車位置決定手段は、現在位置情報取得手段で取得した自車の位置情報と車間距離検出手段で検出した先行車と自車との車間距離とから先行車の現在位置を決定することが好ましい。これによれば、自車との間で車車間通信を行う装置を先行車が有しておらず、車車間通信で先行車の現在位置情報を取得できない場合であっても、自車の位置情報と例えば自律センサで検出した先行車との車間距離とから先行車の現在位置を決定することが可能になる。従って、汎用性をより向上させることができる。
【0033】
請求項12の運転支援システムは、車両に搭載された請求項3に記載の先行車追従走行装置を含むので、無駄な加速や急減速による燃費の悪化を防ぐことができ、先行車追従走行を行うものにおいて、燃費の悪化をより抑制することが可能になる。
【0034】
請求項13の運転支援システムは、車両に搭載された請求項4に記載の先行車追従走行装置を含むので、無駄な加速や急減速による燃費の悪化を防ぐことができ、先行車追従走行を行うものにおいて、燃費の悪化をより抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】運転支援システム100の概略的な構成を示すブロック図である。
【図2】車両制御ECU10での加速制限関連処理のフローの一例を示すフローチャートである。
【図3】車両制御ECU10での先行車追従走行制御再開判定処理のフローの一例を示すフローチャートである。
【図4】従来の先行車追従制御における自車O、先行車P、先行車前方車Cの相対位置関係及び走行状態を説明するための模式図である。
【図5】従来の先行車追従制御における自車O、先行車Pの速度変化を説明するためのグラフである。
【図6】本実施形態の先行車追従制御における自車O、先行車P、先行車前方車Cの相対位置関係及び走行状態を説明するための模式図である。
【図7】本実施形態の先行車追従制御における自車O、先行車Pの速度変化を説明するためのグラフである。
【図8】変形例2の先行車追従制御における自車O、先行車P、先行車前方車Cの相対位置関係及び走行状態を説明するための模式図である。
【図9】変形例2及び変形例3の先行車追従制御における自車O、先行車Pの速度変化を説明するためのグラフである。
【図10】変形例3の先行車追従制御における自車O、先行車P、先行車前方車Cの相対位置関係及び走行状態を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の先行車追従走行装置を運転支援システム100に適用した場合について説明するものである。図1に、本実施形態の運転支援システム100の全体構成を示す。同図に示すように、本運転支援システム100は、VSC_ECU1、舵角センサ2、Gセンサ3、ヨーレートセンサ4、ENG_ECU5、ナビECU6、無線通信装置7、レーダ8、操作SW9、及び車両制御ECU10によって構成される。
【0037】
図1に示すVSC_ECU1は、自車に制動力を印加するブレーキアクチュエータ(図示せず)を制御するもので、自車の横滑りを抑制するVSC(Vehicle Stability Control、登録商標)の制御機能を備える。このVSC_ECU1は、車内LANから要求減速度の情報を受信し、この要求減速度が自車に発生するように、ブレーキアクチュエータを制御する。また、VSC_ECU1は、自車の速度(車速)Vo、及びブレーキ圧力の情報を車内LANに送信する。舵角センサ2は、自車のステアリングの操舵角の情報を検出するセンサであり、検出した操舵角の情報を車内LANに送信する。
【0038】
Gセンサ3は、自車の前後方向に発生する加速度(前後G)と、横(左右)方向に発生する加速度(横G)を検出する加速度センサであり、検出した前後G及び横Gの情報を車内LANに送信する。ヨーレートセンサ4は、自車の鉛直軸まわりの角速度(ヨーレート)を検出するセンサであり、検出したヨーレートの情報を車内LANに送信する。ENG_ECU5は、車内LANから要求加速度の情報を受信し、自車が要求加速度を発生するように、図示しないスロットルアクチュエータを制御する。また、要求減速度の情報を受信した場合にも、スロットルアクチュエータを制御してエンジンブレーキを発生させる。
【0039】
ナビECU6は、車載ナビゲーション装置の制御装置であって、後述する位置検出器61が検出した車両の現在位置および進行方向や後述する地図データ入力器62から読み出した地図データに基づいて、ナビゲーション機能としての各種処理を実行する。
【0040】
位置検出器61は、地磁気を検出する地磁気センサ、自車両の鉛直方向周りの角速度を検出するジャイロスコープ、自車両の移動距離を検出する距離センサ、および衛星からの電波に基づいて車両の現在位置を検出するGPS(global positioning system)のためのGPS受信機といった各センサから得られる情報をもとに、車両の現在位置および進行方向の検出を逐次行う。これらのセンサは、各々が性質の異なる誤差を持っているため、複数のセンサにより各々補完しながら使用するように構成されている。なお、各センサの精度によっては位置検出器61を上述した内の一部で構成してもよいし、上述した以外のセンサを用いる構成としてもよい。例えば、現在位置は、緯度・経度で表すものとし、進行方向は北を基準とした方位角で表すものとする。
【0041】
地図データ入力器62は、記憶媒体(図示せず)が装着され、その記憶媒体に格納されている地図データを入力するための装置である。地図データには、道路を示すリンクデータとノードデータとが含まれる。リンクデータは、リンクを特定する固有番号(リンクID)、リンクの長さを示すリンク長、リンク方向、リンク方位、リンクの始端及び終端ノード座標(緯度・経度)、道路名称、道路種別、一方通行属性、道路幅員、車線数、右折・左折専用車線の有無とその専用車線の数、及び速度規制値等の各データから構成される。一方、ノードデータは、地図上の各道路が交差、合流、分岐するノード毎に固有の番号を付したノードID、ノード座標、ノード名称、ノードに接続するリンクのリンクIDが記述される接続リンクID、及び交差点種類等の各データから構成される。
【0042】
なお、地図データは、地図データ入力器62に装着される記憶媒体に格納されているものを利用する構成に限らず、サーバ装置に格納されているものを、図示しないサーバ通信部を介して利用する構成としてもよい。
【0043】
無線通信装置7は、送受信アンテナを備え、自車位置の周囲に存在する他車との間で、電話網を介さずに無線通信によって自車の情報の配信や他車の情報の受信(つまり、車車間通信)を行う。車車間通信の通信範囲は所定範囲内(半径数百m〜1km程度が好ましい)に制限されているものとする。例えば、700MHz帯の電波を用いた無線通信の場合には、自車位置を中心とした例えば半径約1kmの範囲に存在する相手車両との間で車車間通信を行い、5.9GHz帯の電波を用いた無線通信の場合には、自車位置を中心とした例えば半径約500mの範囲に存在する相手車両との間で車車間通信を行う。
【0044】
無線通信装置7は、自車の情報として、車内LANから得られる例えば自車速Vo、自車の現在位置及び進行方向といった車両情報を100msecごとなどの一定の送信周期で送信するものとする。また、無線通信装置7は、自車以外の車両である他車に搭載されている運転支援システム100に含まれる無線通信装置7から送信される他車の車両情報を受信するものとする。無線通信装置7は、受信した情報を車両制御ECU10に出力する。
【0045】
レーダ8は、例えば周知のレーザレーダであって、レーザ光を自車前方の所定範囲に照射し、その反射光を受信して、先行車との車間距離D、先行車との相対速度Vr、自車幅中心軸と先行車の中心軸とのズレ量(横ずれ量)等を検出し、車両制御ECU10へ出力する。なお、先行車との車間距離D、先行車との相対速度Vr、自車幅中心軸と先行車の中心軸とのズレ量(横ずれ量)等の検出は、車両制御ECU10で行う構成としてもよい。本実施形態では上記検出はレーダ8の信号をもとに車両制御ECU10で行うものとして以降の説明を続ける。操作SW9は、自車のドライバが操作するスイッチ群であり、スイッチ群の操作情報は車両制御ECU10へ出力される。
【0046】
車両制御ECU10は、主にマイクロコンピュータとして構成され、何れも周知のCPU、ROM、RAM、I/O、及びこれらを接続するバスによって構成される。車両制御ECU10は、VSC_ECU1、舵角センサ2、Gセンサ3、ヨーレートセンサ4、ENG_ECU5、ナビECU6、無線通信装置7、レーダ8、操作SW9から入力された各種情報に基づき、各種の処理を実行する。車両制御ECU10が請求項の先行車追従走行装置に相当する。
【0047】
車両制御ECU10の例えばROM等のメモリには、摩擦ブレーキ開始閾値式、エンジンブレーキ開始閾値式、加速制御終了閾値式の3つの閾値式が記憶されている。よって、車両制御ECU10が請求項の記憶手段に相当する。これらの閾値式は、いずれも、ブレーキ判別式にオフセット値を加えた式である。式3にブレーキ判別式を示す。
【数3】

【0048】
このブレーキ判別式は、運転者のブレーキ操作開始時点におけるKdB_cと車間距離Dとの関係を示す式であり、式3において、a、b、cはいずれも定数であり、実験に基づいて定められる。また、aは式2におけるaを意味する。a、b、cは、たとえば、それぞれ0.2、−22.66、74.71である。
【0049】
ブレーキ判別式が式3に示す式であることから、摩擦ブレーキ開始閾値式、エンジンブレーキ開始閾値式、加速制御終了閾値式は、いずれも式4に示す式となる。式4におけるΔcがオフセット値であり、このオフセット値として、摩擦ブレーキ開始閾値式では第1ブレーキ用オフセット値Δc1を用い、エンジンブレーキ開始閾値式では第2ブレーキ用オフセット値Δc2を用い、加速制御終了閾値式では加速用オフセット値Δc3を用いる。これらのオフセット値Δc1、Δc2、Δc3は、たとえば、−3dB、−4dB、−6dBである。
【数4】

【0050】
オフセット値の大小関係により、同一の車間距離Dにおける補正接近離間状態評価指標KdB_cは、ブレーキ判別式、摩擦ブレーキ開始閾値式、エンジンブレーキ開始閾値式、加速制御終了閾値式の順に低下する。
【0051】
車両制御ECU10は、車内LAN等により接続される各種機器を利用して先行車追従走行制御を行う。なお、先行車追従制御は、ドライバが操作SW9を操作して、先行車追従制御開始指示を行ったことにより開始し、また、ドライバの終了操作により、先行車追従制御は終了する。また、レーダ8の信号をもとに、先行車追従制御開始指示を行った時点においてレーダ8で検出している追従先行車との距離を検出し、検出したこの距離(つまり、追従先行車との初期車間距離)を例えば目標車間距離Dtとして設定するものとする。
【0052】
以下、先行車追従走行制御の内容を詳しく説明する。車両制御ECU10は、先行車追従走行制御中は、KdB_cの現在値を逐次算出する。よって、車両制御ECU10が請求項の現在値算出手段に相当する。KdB_cは、式2に示した評価指標算出式から算出する。従って、KdB_cの現在値の算出には、相対速度Vr、先行車の速度Vp、車間距離Dを決定する必要がある。相対速度Vr、車間距離Dは、例えばレーダ8からの信号に基づいて決定する。先行車の速度Vpは、上記相対速度VrとVSC_ECU1からの自車速Voとから算出する。そして、これらを式2に代入することで、KdB_cの現在値を逐次算出する。よって、車両制御ECU10が請求項の車間距離検出手段、相対速度決定手段、及び先行車速度決定手段に相当する。
【0053】
なお、先行車の速度Vpは、先行車が運転支援システム100を搭載した車両である場合には、無線通信装置7を介して先行車から逐次取得する構成としてもよい。この場合、相対速度Vrは、VSC_ECU1から逐次取得する自車速Voと無線通信装置7を介して逐次取得する先行車の速度Vpとから逐次算出する構成としてもよい。また、車間距離Dは、逐次算出される相対速度Vrをもとにして目標車間距離Dtからの距離増減分を算出することで決定する構成としてもよい。なお、目標車間距離Dtの代わりに、本願出願人が先に出願した特願2011−99199における安定車間距離を用いる構成としてもよい。
【0054】
車両制御ECU10は、先行車追従走行制御中は、3つの閾値、すなわち、摩擦ブレーキ開始閾値、エンジンブレーキ開始閾値、加速制御終了閾値を逐次算出する。よって、車両制御ECU10が請求項の閾値算出手段に相当する。これらはメモリに記憶されている3つの閾値式、すなわち、摩擦ブレーキ開始閾値式、エンジンブレーキ開始閾値式、加速制御終了閾値式と、車間距離Dの現在値とから算出する。
【0055】
車両制御ECU10は、先行車追従走行制御中は、目標車間距離Dtと、現在の車間距離Dとを比較し、現在の車間距離Dが目標車間距離Dtよりも短い場合には、KdB_cの現在値がどのような値であるかに関係なく、VSC_ECU1に摩擦ブレーキを作動させる指示を行う。
【0056】
一方、現在の車間距離Dが目標車間距離Dtよりも長い場合には、KdB_cの現在値と、摩擦ブレーキ開始閾値、エンジンブレーキ開始閾値、加速制御終了閾値とを比較する。比較の結果としては、次の(1)〜(4)の結果がある。すなわち、(1)KdB_cの現在値が摩擦ブレーキ開始閾値よりも高い場合、(2)KdB_cの現在値が摩擦ブレーキ開始閾値とエンジンブレーキ開始閾値との間の場合、(3)KdB_cの現在値がブレーキ開始閾値と加速制御終了閾値との間の場合、(4)補正接近離間状態評価指標の現在値が加速制御終了閾値よりも低い場合がある。(1)の場合には摩擦ブレーキを作動させ、(2)の場合にはエンジンブレーキを作動させ、(3)の場合には自車両を等速で走行させ、(4)の場合には加速制御を行う。よって、車両制御ECU10が請求項の速度制御手段に相当する。なお、自車両を減速あるいは加速させる場合の要求加減速度GDpは、たとえば、下記式5により算出する。なお、プラスの値が要求加速度、マイナスの値が要求減速度となる。
【数5】

【0057】
この式5におけるVr_tは、ブレーキ判別式から求まる、現在の車間距離DにおけるKdB_cを、式2に代入することで求まる目標相対速度である。また、Tは、自車の現在の相対速度Vrと、目標相対速度Vr_tとの差分を、要求加減速度GDpに変換するための除数であり、適宜、設定されるものである。
【0058】
また、車両制御ECU10は、無線通信装置7を介して逐次取得する他車の車両情報をもとに、先行車追従走行制御を中断して自車の加速制限を行うか否かを判断し、判断結果に応じた制御を行う加速制限関連処理を行う。以下では、この加速制限関連処理について図2のフローを用いて説明を行う。図2は、車両制御ECU10での加速制限関連処理のフローの一例を示すフローチャートである。図2のフローは、例えば先行車追従走行制御が開始したときに開始され、先行車追従走行制御が終了したときに終了する。
【0059】
まず、ステップS1では、他車の無線通信装置7から送信される車両情報(具体的には車速、現在位置、及び進行方向の情報)を取得したか否かを判定する。例えば、無線通信装置7で受信した車両情報が車両制御ECU10に入力されたことをもとに、他車の車両情報を取得したと判定する構成とすればよい。よって、車両制御ECU10が請求項の他車情報取得手段に相当する。
【0060】
そして、他車の車両情報を取得したと判定した場合(ステップS1でYES)には、ステップS2に移る。また、他車の車両情報を取得していないと判定した場合(ステップS1でNO)には、ステップS1のフローを繰り返す。
【0061】
ステップS2では、先行車前方車判断処理を行って、ステップS3に移る。先行車前方車判断処理では、取得した車両情報の送信元の他車が、自車の先行車と同一道路上の先行車の進行方向前方に位置する車両(つまり、先行車前方車)であるか否かを判断する。よって、車両制御ECU10が請求項の先行車前方車判断手段に相当する。具体的には、先行車の現在位置及び進行方向と車両情報の送信元の他車の現在位置及び進行方向と地図データとから、車両情報の送信元の他車が先行車と同一道路上の先行車の進行方向前方に位置するか否かを判定することによって判断する。
【0062】
なお、同一道路とは、途中に分岐のない区間(つまり、同一リンク)における先行車の走行中の車線と同一進行方向の車線全てであってもよいし、先行車の走行中の車線のみであってもよい。他にも、同一道路とは、先行車の走行中の道路と同じ道路名の、先行車の走行中の車線と同一進行方向の車線全てであってもよいし、先行車の走行中の車線のみであってもよい。
【0063】
先行車前方車判断処理において、ナビECU6から案内経路のデータを取得できる場合に、自車の先行車と同一道路上の先行車の進行方向前方に位置する車両のうち、この案内経路上の車両のみを先行車前方車とする構成としてもよい。また、案内経路上の先行車の進行方向と同一方向の道路を上記同一道路としてもよい。
【0064】
ここで、先行車の現在位置及び進行方向については、先行車が運転支援システム100を搭載した車両であって、無線通信装置7を介して先行車の車両情報を先行車から取得することができる場合には、先行車から取得した車両情報から決定する構成とすればよい。また、先行車が運転支援システム100を搭載しておらず、先行車から車車間通信で車両情報を取得することができない場合には、以下のようにすればよい。
【0065】
例えば先行車の現在位置については、位置検出器61から取得した自車の現在位置及びレーダ8の信号をもとに検出した先行車との車間距離Dから決定すればよい。先行車の進行方向については、自車の進行方向を先行車の進行方向と類推して決定すればよい。よって、車両制御ECU10が請求項の先行車位置決定手段及び現在位置取得手段に相当する。地図データについては、地図データ入力器62から取得する。よって、車両制御ECU10が請求項の地図データ取得手段に相当する。
【0066】
なお、本実施形態では、進行方向の情報も取得して先行車前方車判断処理を行う構成を示したが、必ずしもこれに限らず、進行方向の情報を取得せずに先行車前方車判断処理を行う構成としてもよい。詳しくは、現在位置を含む、位置検出器61で逐次検出された複数の位置情報(例えば2点の位置情報)を、無線通信装置7を介して送信する構成とした場合には、他車から取得したこの複数の位置情報から他車の進行方向を車両制御ECU10で推定し、先行車前方車判断処理に用いる構成とすればよい。進行方向の情報を取得しない構成とする場合には、位置検出器61で進行方向を検出せず、無線通信装置7から進行方向の情報を送信させない構成としてもよい。
【0067】
ステップS3では、先行車前方車判断処理で先行車前方車であると判定した場合(ステップS3でYES)には、ステップS4に移る。また、先行車前方車判断処理で先行車前方車でないと判定した場合(ステップS3でNO)には、ステップS1に戻ってフローを繰り返す。
【0068】
ステップS4では、先行車の速度Vpと先行車前方車の速度Vcとをもとに、先行車前方車の速度Vcが先行車の速度Vpよりも所定値以上小さいか否かを判定する。よって、車両制御ECU10が請求項の速度判定手段に相当する。ここで言うところの所定値とは、任意に設定可能な値である。例えば、所定値は0としてもよく、所定値を0とした場合には、先行車前方車の速度が先行車の速度よりも小さいか否かを判定することになる。先行車の速度Vpは、前述したようにして決定すればよく、先行車前方車の速度Vcは先行車前方車から取得した車速の情報を用いればよい。なお、所定値としては、先行車が走行を続けた場合に徐々に先行車前方車に接近する程度以上の値とすることが好ましく、例えば5[km/h]とする構成とすればよい。
【0069】
そして、先行車前方車の速度Vcが先行車の速度Vpよりも所定値以上小さいと判定した場合(ステップS4でYES)には、ステップS6に移る。また、先行車前方車の速度Vcが先行車の速度Vpよりも所定値以上小さくなっていないと判定した場合(ステップS4でNO)には、ステップS5に移る。ステップS5では、先行車追従走行制御を継続し、ステップS1に戻ってフローを繰り返す。ステップS5において、先行車前方車の速度Vcが先行車の速度Vpよりも所定値以上小さい(本例では、Vp≧Vd+5[km/h])と判定していた場合には、自車の速度制限値は、設定車速を越えない範囲で、自車の速度Voと先行車前方車の速度Vcとのうちの大きい方の値とする。また、先行車前方車の速度Vcが先行車の速度Vpよりも所定値以上小さくなっていない(本例では、Vp<Vd+5[km/h])と判定していた場合には、自車の速度制限値は、例えば先行車の速度Vp+5[Km/h]とする。
【0070】
ステップS6では、先行車の速度Vpと自車の速度Voとをもとに、自車の速度Voが先行車の速度Vp以下か否かを判定する。自車の速度Voは、VSC_ECU1から送信される信号をもとに検出する。よって、車両制御ECU10が請求項の自車速検出手段に相当する。
【0071】
そして、自車の速度Voが先行車の速度Vp以下と判定した場合(ステップS6でYES)には、ステップS7に移る。また、自車の速度Voが先行車の速度Vpよりも大きいと判定した場合(ステップS6でNO)には、ステップS5に移る。
【0072】
ステップS7では、加速制限処理を行って、ステップS8に移る。加速制限処理では、先行車追従走行制御を中断し、自車の速度Voを維持することで加速を抑制する。つまり、速度制限値は中断時の自車の速度Voとなる。自車の速度Voを維持するとは、例えば現在(加速制限処理を開始した時点)の自車の速度Voを維持する構成としてもよいし、ステップS6で用いた自車の速度Voとなるように維持する構成としてもよい。
【0073】
ステップS8では、先行車追従走行制御再開判定処理を行って、ステップS9に移る。ここで、図3のフローチャートを用いて、先行車追従走行制御再開判定処理の概略について説明を行う。図3は、車両制御ECU10での先行車追従走行制御再開判定処理のフローの一例を示すフローチャートである。
【0074】
まず、ステップS81では、ステップS1と同様にして、他車の無線通信装置7から送信される車両情報を取得したか否かを判定する。そして、他車の車両情報を取得したと判定した場合(ステップS81でYES)には、ステップS82に移る。また、他車の車両情報を取得していないと判定した場合(ステップS81でNO)には、ステップS84に移る。
【0075】
ステップS82では、同一先行車前方車情報取得判定処理を行って、ステップS83に移る。同一先行車前方車情報取得判定処理では、ステップS3で先行車前方車であると判定された車両と同一の車両(つまり、同一対象)からの車両情報を取得したか否かを判定する。具体例としては、車車間通信で送信する車両情報に、送信元の車両を特定可能な識別情報(車両IDなど)を付加する構成とすることで、この識別情報をもとにして、同一対象からの車両情報を取得したか否かを判定する構成とすればよい。
【0076】
ステップS83では、同一先行車前方車情報取得判定処理で、同一対象から車両情報を取得したと判定した場合(ステップS83でYES)には、ステップS85に移る。また、同一先行車前方車情報取得判定処理で、同一対象から車両情報を取得しなかったと判定した場合(ステップS83でNO)には、ステップS84に移る。
【0077】
ステップS84では、ステップS3で先行車前方車であると判定された車両から車両情報を取得してから所定時間以上が経過した(つまり、タイムアウト)か否かを判定する。例えば、ステップS3で先行車前方車であると判定された車両から車両情報を取得した時点で図示しないタイマのカウントを開始することで、当該時点からの経過時間を計測し、タイムアウトか否かを判定する構成とすればよい。なお、ここで言うところの所定時間とは任意に設定可能な時間であって、例えば1sなどとすればよい。
【0078】
そして、タイムアウトと判定した場合(ステップS84でYES)には、ステップS86に移る。また、タイムアウトでないと判定した場合(ステップS84でNO)には、ステップS81に戻ってフローを繰り返す。なお、タイムアウトは、ステップS3で先行車前方車であると判定された車両から車両情報を取得してからの経過時間だけでなく、例えば先行車追従走行制御を中断してからの経過時間などをもとに判定する構成としてもよい。
【0079】
ステップS85では、ステップS4と同様にして、先行車前方車の速度Vcが先行車の速度Vpよりも所定値以上小さいか否かを判定する。そして、先行車前方車の速度Vcが先行車の速度Vpよりも所定値以上小さいと判定した場合(ステップS85でYES)には、ステップS87に移る。また、先行車前方車の速度Vcが先行車の速度Vpよりも所定値以上小さくなっていないと判定した場合(ステップS85でNO)には、ステップS86に移る。ステップS86では、先行車追従走行制御を再開と判定し、ステップS9に移る。
【0080】
ステップS87では、ステップS6と同様にして、自車の速度Voが先行車の速度Vp以下か否かを判定する。そして、自車の速度Voが先行車の速度Vp以下と判定した場合(ステップS87でYES)には、ステップS88に移る。また、自車の速度Voが先行車の速度Vpよりも大きいと判定した場合(ステップS87でNO)には、ステップS86に移る。ステップS88では、先行車追従走行制御の中断を継続と判定し、ステップS9に移る。
【0081】
図2に戻って、ステップS9では、先行車追従走行制御再開判定処理で先行車追従走行制御を再開と判定した場合(ステップS9でYES)には、ステップS10に移る。また、先行車追従走行制御再開判定処理で先行車追従走行制御の中断を継続と判定した場合(ステップS9でNO)には、ステップS8に戻ってフローを繰り返す。ステップS10では、先行車追従走行制御を再開してステップS1に戻り、フローを繰り返す。
【0082】
ここで、本発明における作用効果について、具体的に図4〜図7を用いて説明を行う。まず、従来の先行車追従制御の具体的制御を説明する。図4は、従来の先行車追従制御における自車O、先行車P、先行車前方車Cの相対位置関係及び走行状態を説明するための模式図である。図5は、従来の先行車追従制御における自車O、先行車Pの速度変化を説明するためのグラフである。なお、従来の先行車追従制御では、自車Oは、設定車速Vmを超えない範囲で、先行車Pに対して一定車間距離、同速度を目標に追従するものとして説明を行う。
【0083】
図4(A)では、自車Oは先行車Pに対して一定車間距離、同速度(Vo=Vp)となるように走行している。また、先行車前方車Cは渋滞に巻き込まれており停止中である。この状態から、先行車Pが先行車前方車Cの速度Vcよりも所定値以上の速度(例えばVc+5km/h)を超えて加速した場合、自車Oは先行車Pに追従して加速を行う(図4(B)参照)。そして、自車Oは先行車Pに追従し続ける(図4(C)参照)。
【0084】
その後、先行車Pが先行車前方車Cに接近したところで急減速を行う(図4(D)参照)と、自車Oも追従して急減速を行う(図4(E)参照)ことになる。この場合、自車Oは、先行車Pに一定車間距離で追従しているため、急減速によって先行車Pに非常に接近してしまい(図4(F)参照)、ドライバに恐怖を感じさせてしまう可能性がある。また、自車Oは、設定車速Vmを超えない範囲では先行車Pに追従するので、図5に示すように、自車Oは先行車Pと同様に加減速を行うことになる。
【0085】
次に、本実施形態の先行車追従制御の具体的制御を説明する。図6は、本実施形態の先行車追従制御における自車O、先行車P、先行車前方車Cの相対位置関係及び走行状態を説明するための模式図である。図7は、本実施形態の先行車追従制御における自車O、先行車Pの速度変化を説明するためのグラフである。なお、本実施形態の先行車追従制御でも、自車Oは、設定車速Vmを超えない範囲で、先行車Pに対して一定車間距離、同速度を目標に追従するように制御するものとして説明を行う。
【0086】
図6(A)は図4(A)と同じ状態であり、先行車前方車Cは渋滞に巻き込まれており停止中である。この状態から、先行車Pが先行車前方車Cの速度Vcよりも所定値以上の速度(例えばVc+5km/h)を超えて加速した場合、図4の従来例では、自車Oは先行車Pに追従して加速をしていた。しかし、図6の例では、自車Oは先行車Pに追従して加速を行わない(図6(B)参照)。図6(B)の状態では、自車Oは先行車Pに追従しているので、先行車Pが加速した時点で自車Oの速度Voは先行車Pの速度Vp以下となっている筈である。よって、先行車追従制御が中断されるとともに、自車Oの速度Voは等速が維持され、加速が抑制される(図6(B)、(C)参照)。
【0087】
その後、先行車Pが先行車前方車Cに接近したところで急減速を行い(図6(D)参照)、先行車Pの速度Vpが自車Oの速度Voまで減速されたところで、自車Oの先行車Pに対する先行車追従制御が再開される。先行車追従制御が再開された場合に、自車Oも先行車Pに追従して減速を行うが、先行車Pに追従して加速を行っていないため、急減速を行う必要がない。また、先行車追従制御を中断して等速で走行していたため、先行車Pに対する車間距離に余裕をもって減速を行うことができる(図6(E)参照)。従って、図4(F)の例とは異なり、先行車Pに非常に接近してしまうことなく自車Oを停止することができる(図6(F)参照)。
【0088】
このように、本実施形態の構成によれば、自車Oは、図7に示すように、速度制限が設けられることになるので(図中の点線参照)、無駄な加速を行うことがなくなる。また、無駄な加速を行わないことにより、無駄な急減速も防止することができる。他にも、本実施形態の構成によれば、無駄な加速や急減速を行う可能性が低い場合や無駄な加減速を行わない場合に、先行車追従制御を再開することができる。その結果、無駄な加速や急減速による燃費の悪化を防ぐことができ、先行車追従走行を行うものにおいて、燃費の悪化をより抑制することが可能になる。
【0089】
また、本実施形態の構成によれば、先行車追従制御において、摩擦ブレーキ開始閾値式、エンジンブレーキ開始閾値式、加速制御終了閾値式を用いて、摩擦ブレーキ開始閾値、エンジンブレーキ開始閾値、加速制御終了閾値を逐次算出している。そして、エンジンブレーキ開始閾値と加速制御終了閾値の間を等速領域としており、KdB_cの現在値が等速領域にあれば等速制御を行う。等速制御を行うことができる結果、加減速の頻度が低下するので、燃費の悪化がさらに抑制できる。
【0090】
さらに、本実施形態では、ブレーキ制御として、摩擦ブレーキとエンジンブレーキの2種類のブレーキ制御が可能となっている。運転者は、自ら運転する場合、摩擦ブレーキとエンジンブレーキとを適宜使い分けて運転することが通常であることから、本実施形態によれば、追従走行時の減速制御が、運転者にとってより違和感の少ない減速となる。
【0091】
また、前述の実施形態では、車車間通信で得られる他車の車両情報を用いる構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、路上機との間での路車間通信で得られる先行車前方車の車両情報を用いる構成としてもよい。
【0092】
路上機は、路上機が設置された側の道路の進行方向の所定距離(数百m〜1km程度が好ましい)前方に設置された検出器から、当該検出器の設置地点に位置する車両の速度及び位置の情報を取得する構成(変形例1)とすればよい。ここで、検出器は、図示しない無線通信装置によって、検出した速度及び位置の情報を路上機に送信する構成とすればよい。
【0093】
また、検出器は、前記路上機が設置された側の道路と進行方向の同じ車線を走行する車両の速度及び位置のみを検出するように路側に設置されているものとする。これは、検出器が例えばレーダ等によって車両の速度を検出するものである場合には、レーダの検出範囲を、路上機が設置された側と進行方向の同じ車線まで含む一方、路上機が設置された側と逆方向の車線を含まない範囲に限定することで実現すればよい。また、位置の情報については、検出器の設置地点の位置(緯度・経度の座標)を用いる構成とすればよい。
【0094】
そして、無線通信装置7と路上機との間での路車間通信は、路上機が設置された側の道路と進行方向が逆の車線を走行する車両が通信範囲に含まれないように通信範囲を限定したスポット通信によって行うものとする。一例としては、光ビーコンや電波ビーコンを用いる構成とすればよい。以上の構成により、路上機と路車間通信を行う自車にとっての所定距離内(例えば数百m〜1km程度以内)の先行車前方車にあたる車両の車両情報を取得することが可能になっている。
【0095】
変形例1の構成によれば、車両制御ECU10で先行車前方車判断処理を行わなくてもよくなるという利点がある。一方、車車間通信で得られる他車の車両情報を用いる構成では、路上機や検出器のない場所でも加速制限関連処理を実行可能になるという利点がある。
【0096】
他にも、路上機との間での路車間通信で得られる先行車前方車の車両情報を用いる構成として、以下の変形例2に示すような構成としてもよい。ここで、変形例2について図8及び図9を用いて説明を行う。
【0097】
変形例2では、路上機としては、運転支援システム100の無線通信装置7と路車間通信を行うことが可能な路側基地局200を用いる。路側基地局200としては、例えば通信範囲が光ビーコンや電波ビーコンの通信範囲よりも広い無線通信を用いて情報を送信するものとする。一例としては、通信範囲が数百m〜1km程度の700MHz帯の電波を用いた無線通信を用いて情報を送信する構成とすればよい。
【0098】
路側基地局200は、路側センサ300から例えば無線通信で送信される情報を受信する。路側センサ300は、例えば路側に設置され、その路側に接する道路上の当該路側センサ300の設置側と進行方向の同じ車線を走行する車両の速度、位置、及び進行方向の情報を検出する。
【0099】
これは、路側センサ300が例えばレーダ等によって車両の速度を検出するものである場合には、レーダの検出範囲を、路側センサ300が設置された側と進行方向の同じ車線まで含む一方、路側センサ300が設置された側と逆方向の車線は含まない範囲に限定することで実現すればよい。また、位置の情報については、路側センサ300の設置地点の位置(緯度・経度の座標)を用いる構成とすればよく、進行方向の情報については、路側センサ300が設置された側の車線の進行方向(北を基準とした方位角)を用いる構成とすればよい。
【0100】
変形例2では、路側基地局200から送信される車両情報を無線通信装置7で受信し、車両制御ECU10に出力する。路側基地局200から送信される車両情報は、路側センサ300で検出された車両の速度、位置、及び進行方向の情報であるものとする。車両制御ECU10では、無線通信装置7から入力される車両情報を取得し、先行車前方車判断処理を行う。
【0101】
変形例2の先行車前方車判断処理では、車両制御ECU10で取得した車両情報が路側センサ300において検出された他車が、前述の先行車前方車であるか否かを判断する。具体的には、先行車の現在位置及び進行方向と、取得した車両情報に含まれる位置情報及び進行方向情報と地図データとから、車両情報の検出元の他車が先行車と同一道路上の先行車の進行方向前方に位置するか否かを前述したのと同様にして判定することによって判断する。そして、判断結果に応じて、前述の加速制限関連処理と同様の処理を行う。
【0102】
なお、先行車の現在位置及び進行方向については、前述したようにして車両制御ECU10で決定する構成とすればよい。よって、車両制御ECU10が請求項の進行方向決定手段に相当する。
【0103】
ここで、変形例2における作用効果について、図8及び図9を用いて説明を行う。図8は、変形例2の先行車追従制御における自車O、先行車P、先行車前方車Cの相対位置関係及び走行状態を説明するための模式図である。図9は、変形例2の先行車追従制御における自車O、先行車Pの速度変化を説明するためのグラフである。なお、変形例2の先行車追従制御でも、自車Oは、設定車速Vmを超えない範囲で、先行車Pに対して一定車間距離、同速度を目標に追従するように制御するものとして説明を行う。
【0104】
変形例2は、先行車前方車の車両情報を車車間通信によって取得するか、路車間通信によって取得するかが前述の実施形態と異なっている点を除けば同様の構成である。よって、先行車前方車Cが渋滞に巻き込まれており停止中である図8(A)の状態から、先行車Pが先行車前方車Cの速度Vcよりも所定値以上の速度を超えて加速した場合にも、自車Oは先行車Pに追従して加速を行わない(図8(B)参照)。
【0105】
その後、先行車Pが先行車前方車Cに接近したところで急減速を行った(図8(C)参照)場合にも、前述したのと同様に自車Oが急減速を行う必要がない。このように、変形例2の構成によっても、自車Oは、図9に示すように、速度制限(Vo_max)が設けられるため、前述の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0106】
また、路側基地局200と路車間通信を行う無線通信装置7を含む運転支援システム100を搭載した他車の車速、位置、及び進行方向といった車両情報を、路側基地局200を介した路車間通信によって取得し、取得した車両情報を用いて前述の加速制限関連処理と同様の処理を行う構成(変形例3)としてもよい。他車の車速、位置、及び進行方向の検出については、他車の運転支援システム100において前述したのと同様にして行うものとする。変形例3において、路側基地局200は、運転支援システム100に含まれる無線通信装置7との間での無線通信によって情報を送受信するものとする。
【0107】
変形例3では、路側基地局200から送信される車両情報を無線通信装置7で受信し、車両制御ECU10に出力する。路側基地局200から送信される車両情報は、路側基地局200が他車の無線通信装置7から受信した他車の速度、位置、及び進行方向の情報であるものとする。車両制御ECU10では、自車の無線通信装置7から入力される車両情報を取得し、先行車前方車判断処理を行う。なお、自車の無線通信装置7が請求項の第1無線通信装置に相当し、他車の無線通信装置7が請求項の第2無線通信装置に相当する。
【0108】
変形例3の先行車前方車判断処理では、車両制御ECU10で取得した車両情報を路側通信局に送信した無線通信装置7を搭載した他車が、前述の先行車前方車であるか否かを、変形例2で説明したのと同様にして判断する。そして、判断結果に応じて、前述の加速制限関連処理と同様の処理を行う。
【0109】
ここで、変形例3における作用効果について、図9及び図10を用いて説明を行う。図10は、変形例3の先行車追従制御における自車O、先行車P、先行車前方車Cの相対位置関係及び走行状態を説明するための模式図である。なお、変形例3の先行車追従制御でも、自車Oは、設定車速Vmを超えない範囲で、先行車Pに対して一定車間距離、同速度を目標に追従するように制御するものとして説明を行う。
【0110】
変形例3は、先行車前方車の車両情報を路車間通信によって取得するという点では変形例2と同様の構成である。よって、先行車前方車Cが渋滞に巻き込まれており停止中である図10(A)の状態から、先行車Pが先行車前方車Cの速度Vcよりも所定値以上の速度を超えて加速した場合にも、自車Oは先行車Pに追従して加速を行わない(図10(B)参照)。
【0111】
その後、先行車Pが先行車前方車Cに接近したところで急減速を行った(図10(C)参照)場合にも、前述したのと同様に自車Oが急減速を行う必要がない。このように、変形例3の構成によっても、自車Oは、図9に示すように、速度制限(Vo_max)が設けられるため、前述の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0112】
また、車両制御ECU10において、前述のブレーキ開始閾値(摩擦ブレーキ開始閾値、エンジンブレーキ開始閾値)を、路面の状況(以下、路面状況)に応じて変更する構成としてもよい。例えば路面状況としては、路面のμが挙げられる。ここでは、高μと低μとの2つの路面状況に応じてブレーキ開始閾値を可変とする場合を例に挙げて説明を行う。
【0113】
まず、高μと低μとの2つの路面状況は、ドライバ等の乗員が高μか低μかを選択して例えば操作SW9に入力するものとする。そして、高μを選択した入力結果を操作SW9から車両制御ECU10が取得した場合には、路面状況が高μと判断する。一方、低μを選択した入力結果を操作SW9から車両制御ECU10が取得した場合には、路面状況が低μと判断する。よって、車両制御ECU10が請求項の入力結果取得手段及び路面状況判断手段に相当する。また、操作SW9が請求項の入力装置に相当する。
【0114】
なお、路面状況の判断については、他の方法によって行う構成としてもよい。例えば、水分が近赤外線波長帯域で大きな吸収度を有するという分光特性と、近赤外線波長帯域の光の反射が路面の状況によって異なることとを利用して、赤外線カメラで撮像した画像を用いて判断してもよい。他にも、可視光画像の輝度を用いて判断したり、サーモグラフィによる温度分布画像を用いて判断したりしてもよい。
【0115】
車両制御ECU10では、路面状況が高μと判断した場合に、摩擦ブレーキ開始閾値式やエンジンブレーキ開始閾値式のオフセット値として前述の値を用いる一方、路面状況が低μと判断した場合に、摩擦ブレーキ開始閾値式やエンジンブレーキ開始閾値式のオフセット値として前述の値(Δc1、Δc2)よりも小さい値に変更する構成とすればよい。これによれば、路面状況が高μと判断した場合には、低μと判断した場合よりもブレーキ開始閾値を高い値に設定する一方、低μと判断した場合には、高μと判断した場合よりもブレーキ開始閾値を低い値に設定することになる。よって、車両制御ECU10が請求項のブレーキ開始閾値変更手段に相当する。
【0116】
なお、路面状況が高μと判断した場合に、摩擦ブレーキ開始閾値式やエンジンブレーキ開始閾値式のオフセット値を前述の値(Δc1、Δc2)よりも大きい値に変更する一方、路面状況が低μと判断した場合に、摩擦ブレーキ開始閾値式やエンジンブレーキ開始閾値式のオフセット値として前述の値(Δc1、Δc2)よりも小さい値に変更する構成としてもよい。この場合、操作SW9に選択入力が行われていないデフォルトの状態において、摩擦ブレーキ開始閾値式やエンジンブレーキ開始閾値式のオフセット値を前述の値(Δc1、Δc2)とする構成としてもよい。
【0117】
さらに、ここでは路面状況として高μと低μとの2段階を判断する構成としたが、必ずしもこれに限らない。例えば、3段階以上を判断する構成としてもよい。その場合には、μが低くなるほどオフセット値を低く変更すればよい。
【0118】
なお、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0119】
1 VSC_ECU、2 舵角センサ、3 Gセンサ、4 ヨーレートセンサ、5 ENG_ECU、6 ナビECU、7 無線通信装置(第1無線通信装置、第2無線通信装置)、8 レーダ、9 操作SW(入力装置)、10 車両制御ECU(先行車追従走行装置、車間距離検出手段、相対速度決定手段、先行車速度決定手段、他車情報取得手段、先行車前方車判断手段、先行車位置決定手段、現在位置取得手段、地図データ取得手段、速度判定手段、自車速検出手段、路面状況判断手段、ブレーキ開始閾値変更手段、入力結果取得手段、記憶手段、現在値算出手段、閾値算出手段、速度制御手段、進行方向決定手段)、61 位置方向検出器、62 地図データ入力器、100 運転支援システム、200 路側基地局、300 路側センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、車車間通信によって情報を受信する無線通信装置を介して情報を取得するとともに、自車の先行車への追従走行を行わせる先行車追従制御を行う先行車追従走行装置であって、
自車の速度を検出する自車速検出手段と、
車車間通信によって他車から逐次送信される当該他車の現在位置情報及び速度情報を、前記無線通信装置を介して逐次取得する他車情報取得手段と、
前記先行車の現在位置を決定する先行車位置決定手段と、
前記先行車の速度を決定する先行車速度決定手段と、
道路の情報を少なくとも含む地図データを取得する地図データ取得手段と、
前記先行車位置決定手段で決定した前記先行車の現在位置と前記他車情報取得手段で取得した前記先行車以外の他車の現在位置情報と前記地図データ取得手段で取得した地図データとから、当該他車が前記先行車と同一道路上の前記先行車の進行方向前方に位置する先行車前方車であるか否かを判断する先行車前方車判断手段と、
前記先行車前方車判断手段で先行車前方車と判断した場合に、前記先行車速度決定手段によって決定した前記先行車の速度と前記他車情報取得手段で取得した当該先行車前方車の速度情報とをもとに、当該先行車前方車の速度が前記先行車の速度よりも所定値以上小さいか否かを判定する速度判定手段とを備え、
前記速度判定手段で肯定判定した場合であって、且つ、前記自車速検出手段で検出した自車の速度が前記先行車速度決定手段によって決定した前記先行車の速度以下の場合には、前記先行車追従制御を中断し、自車の速度を維持することで加速を抑制することを特徴とする先行車追従走行装置。
【請求項2】
車両に搭載され、路車間通信によって情報を受信する無線通信装置を介して情報を取得するとともに、自車の先行車への追従走行を行わせる先行車追従制御を行う先行車追従走行装置であって、
自車の速度を検出する自車速検出手段と、
路車間通信によって逐次送信される前記先行車と同一道路上の前記先行車の進行方向前方の所定距離内に位置する先行車前方車の速度情報を、前記無線通信装置を介して逐次取得する他車情報取得手段と、
前記先行車の現在位置を決定する先行車位置決定手段と、
前記先行車の速度を決定する先行車速度決定手段と、
前記先行車速度決定手段によって決定した前記先行車の速度と前記他車情報取得手段で取得した先行車前方車の速度情報とをもとに、当該先行車前方車の速度が前記先行車の速度よりも所定値以上小さいか否かを判定する速度判定手段を備え、
前記速度判定手段で肯定判定した場合であって、且つ、前記自車速検出手段で検出した自車の速度が前記先行車速度決定手段によって決定した前記先行車の速度以下の場合には、前記先行車追従制御を中断し、自車の速度を維持することで加速を抑制することを特徴とする先行車追従走行装置。
【請求項3】
車両に搭載され、路車間通信によって情報を受信する無線通信装置を介して情報を取得するとともに、自車の先行車への追従走行を行わせる先行車追従制御を行う先行車追従走行装置であって、
自車の速度を検出する自車速検出手段と、
道路上の車両である路上車両の速度、位置、及び進行方向を検出する路側センサで検出した路上車両の速度情報、位置情報、及び進行方向情報を当該路側センサから取得して路車間通信で送信する路側基地局から、路車間通信によって逐次送信される前記路上車両の速度情報、位置情報、及び進行方向情報を、前記無線通信装置を介して逐次取得する他車情報取得手段と、
前記先行車の現在位置を決定する先行車位置決定手段と、
前記先行車の進行方向を決定する進行方向決定手段と、
前記先行車の速度を決定する先行車速度決定手段と、
前記先行車位置決定手段で決定した前記先行車の現在位置及び前記進行方向決定手段で決定した前記先行車の進行方向と、前記他車情報取得手段で取得した路上車両の位置情報及び進行方向情報とから、当該路上車両が前記先行車の進行方向前方の所定距離内に位置する先行車前方車であるか否かを判断する先行車前方車判断手段と、
先行車前方車判断手段で先行車前方車であると判断した場合に、前記先行車速度決定手段によって決定した前記先行車の速度と前記他車情報取得手段で取得した当該先行車前方車の速度情報とをもとに、当該先行車前方車の速度が前記先行車の速度よりも所定値以上小さいか否かを判定する速度判定手段を備え、
前記速度判定手段で肯定判定した場合であって、且つ、前記自車速検出手段で検出した自車の速度が前記先行車速度決定手段によって決定した前記先行車の速度以下の場合には、前記先行車追従制御を中断し、自車の速度を維持することで加速を抑制することを特徴とする先行車追従走行装置。
【請求項4】
車両に搭載され、路車間通信によって情報を受信する第1無線通信装置を介して情報を取得するとともに、自車の先行車への追従走行を行わせる先行車追従制御を行う先行車追従走行装置であって、
自車の速度を検出する自車速検出手段と、
前記車両以外の道路上の車両である路上車両に搭載された第2無線通信装置から送信される前記路上車両の速度情報、位置情報、及び進行方向情報を受信して路車間通信で送信する路側基地局から、路車間通信によって逐次送信される前記路上車両の速度情報、位置情報、及び進行方向情報を、前記無線通信装置を介して逐次取得する他車情報取得手段と、
前記先行車の現在位置を決定する先行車位置決定手段と、
前記先行車の進行方向を決定する進行方向決定手段と、
前記先行車の速度を決定する先行車速度決定手段と、
前記先行車位置決定手段で決定した前記先行車の現在位置及び前記進行方向決定手段で決定した前記先行車の進行方向と、前記他車情報取得手段で取得した路上車両の位置情報とから、当該路上車両が前記先行車の進行方向前方の所定距離内に位置する先行車前方車であるか否かを判断する先行車前方車判断手段と、
先行車前方車判断手段で先行車前方車であると判断した場合に、前記先行車速度決定手段によって決定した前記先行車の速度と前記他車情報取得手段で取得した当該先行車前方車の速度情報とをもとに、当該先行車前方車の速度が前記先行車の速度よりも所定値以上小さいか否かを判定する速度判定手段を備え、
前記速度判定手段で肯定判定した場合であって、且つ、前記自車速検出手段で検出した自車の速度が前記先行車速度決定手段によって決定した前記先行車の速度以下の場合には、前記先行車追従制御を中断し、自車の速度を維持することで加速を抑制することを特徴とする先行車追従走行装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項において、
前記速度判定手段で肯定判定した場合であって、且つ、前記自車速検出手段で検出した自車の速度が前記先行車速度決定手段によって決定した前記先行車の速度よりも大きい場合は、前記先行車追従制御を継続するとともに、
前記速度判定手段で否定判定した場合にも、前記先行車追従制御を継続することを特徴とする先行車追従走行装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項において、
前記先行車追従制御を中断した後、
前記速度判定手段で肯定判定した場合であって、且つ、前記自車速検出手段で検出した自車の速度が前記先行車速度決定手段によって決定した前記先行車の速度以下の場合には、前記先行車追従制御の中断を継続する一方、
前記速度判定手段で肯定判定した場合であって、且つ、前記自車速検出手段で検出した自車の速度が前記先行車速度決定手段によって決定した前記先行車の速度よりも大きい場合は、前記先行車追従制御を再開するとともに、
前記速度判定手段で否定判定した場合にも、前記先行車追従制御を再開することを特徴とする先行車追従走行装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項において、
先行車に対する接近離間状態を前記先行車の速度を考慮して表す指標であって、前記先行車に接近する相対速度が高くなるほど大きくなり、且つ、前記先行車との車間距離が短くなるほど大きくなるとともに、前記車間距離が短くなる変化に対する増加勾配が前記車間距離が短くなるほど急峻になる指標を補正接近離間状態評価指標とし、
前記補正接近離間状態評価指標を用いて先行車追従制御を行うものであって、
前記先行車と自車との車間距離を検出する車間距離検出手段と、
前記先行車に対する自車の相対速度を決定する相対速度決定手段と、
ドライバのブレーキ操作開始時点における前記補正接近離間状態評価指標と前記車間距離との関係を示す式であるブレーキ判別式に、同一の車間距離に対する前記補正接近離間状態評価指標を低下させるブレーキ用オフセット値を加えた式であって、ブレーキ制御開始時点における前記補正接近離間状態評価指標と前記車間距離との関係を示すブレーキ開始閾値式、および、前記ブレーキ判別式に前記ブレーキ用オフセット値よりも同一の車間距離に対する前記補正接近離間状態評価指標をさらに低下させる加速用オフセット値を加えた式であって、加速制御終了時点における前記補正接近離間状態評価指標と前記車間距離との関係を示す加速制御終了閾値式を記憶する記憶手段と、
前記補正接近離間状態評価指標の現在値を逐次算出する現在値算出手段と、
前記ブレーキ開始閾値式と前記車間距離の現在値とからブレーキ開始閾値を算出するとともに、前記加速制御終了閾値式と前記車間距離の現在値とから加速制御終了閾値を算出する閾値算出手段と、
前記現在値算出手段が算出した補正接近離間状態評価指標の現在値と、前記閾値算出手段が算出したブレーキ開始閾値、加速制御終了閾値とを比較し、補正接近離間状態評価指標の現在値がブレーキ開始閾値よりも高ければブレーキを作動させ、補正接近離間状態評価指標の現在値が加速制御終了閾値よりも低ければ加速制御を行い、補正接近離間状態評価指標の現在値がブレーキ開始閾値と加速制御終了閾値との間であれば自車両を等速で走行させる速度制御手段とを備えることを特徴とする先行車追従走行装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記記憶手段には、ブレーキ開始閾値式として、摩擦ブレーキの作動開始時点における前記補正接近離間状態評価指標と前記車間距離との関係を示す式であって、前記ブレーキ判別式に同一の車間距離に対する前記補正接近離間状態評価指標を低下させる第1ブレーキ用オフセット値を加えた摩擦ブレーキ開始閾値式と、原動機ブレーキの作動開始時点における前記補正接近離間状態評価指標と前記車間距離との関係を示す式であって、前記ブレーキ判別式に、同一の車間距離に対する前記補正接近離間状態評価指標を前記第1ブレーキ用オフセット値よりもさらに低下させる第2ブレーキ用オフセット値を加えた原動機ブレーキ開始閾値式とが記憶されており、
前記閾値算出手段は、摩擦ブレーキ開始閾値式と前記車間距離の現在値とから摩擦ブレーキ開始閾値を算出し、原動機ブレーキ開始閾値式と前記車間距離の現在値とから原動機ブレーキ開始閾値を算出し、加速制御終了閾値式と前記車間距離の現在値とから加速制御終了閾値を算出し、
前記速度制御手段は、前記現在値算出手段が算出した補正接近離間状態評価指標の現在値と、前記閾値算出手段が算出した摩擦ブレーキ開始閾値、原動機ブレーキ開始閾値、加速制御終了閾値とを比較し、補正接近離間状態評価指標の現在値が摩擦ブレーキ開始閾値よりも高ければ摩擦ブレーキを作動させ、補正接近離間状態評価指標の現在値が摩擦ブレーキ開始閾値と原動機ブレーキ開始閾値との間であれば原動機ブレーキを作動させ、補正接近離間状態評価指標の現在値が加速制御終了閾値よりも低ければ加速制御を行い、補正接近離間状態評価指標の現在値がブレーキ開始閾値と加速制御終了閾値との間であれば自車両を等速で走行させることを特徴とする先行車追従走行装置。
【請求項9】
請求項7又は8において、
路面の状況を判断する路面状況判断手段と、
前記路面状況判断手段で判断した路面の状況に応じて前記ブレーキ開始閾値を可変とするブレーキ開始閾値変更手段とをさらに備えることを特徴とする先行車追従走行装置。
【請求項10】
請求項9において、
路面の状況が高μであるか低μであるかを自車の乗員が選択して入力する入力装置の入力結果を取得する入力結果取得手段をさらに備え、
前記路面状況判断手段は、前記入力結果取得手段で取得した入力結果に応じて、路面の状況が高μであるか低μであるかを判断するものであって、
前記ブレーキ開始閾値変更手段は、前記路面状況判断手段で路面の状況が高μであると判断した場合には、低μであると判断した場合よりも前記ブレーキ開始閾値を高い値に設定する一方、前記路面状況判断手段で路面の状況が低μであると判断した場合には、高μであると判断した場合よりも前記ブレーキ開始閾値を低い値に設定することを特徴とする先行車追従走行装置。
【請求項11】
請求項7〜10のいずれか1項において、
自車の現在位置を逐次取得する現在位置取得手段をさらに備え、
前記先行車位置決定手段は、
前記現在位置取得手段で取得した自車の位置情報と前記車間距離検出手段で検出した前記先行車と自車との車間距離とから前記先行車の現在位置を決定することを特徴とする先行車追従走行装置。
【請求項12】
車両に搭載された請求項3に記載の先行車追従走行装置と、
当該車両に搭載された無線通信装置と、
前記車両の外部に設置され、道路上の車両である路上車両の速度、位置、及び進行方向を検出する路側センサと、
路側センサで検出した路上車両の速度情報、位置情報、及び進行方向情報を当該路側センサから取得して路車間通信で送信する路側基地局とを含むことを特徴とする運転支援システム。
【請求項13】
車両に搭載された請求項4に記載の先行車追従走行装置と、
当該車両に搭載された第1無線通信装置と、
前記車両以外の道路上の車両である路上車両に搭載され、当該路上車両の速度情報、位置情報、及び進行方向情報を送信する第2無線通信装置と、
前記路上車両の第2無線通信装置から送信された当該路上車両の速度情報、位置情報、及び進行方向情報を受信し、受信した当該路上車両の速度情報、位置情報、及び進行方向情報を路車間通信で送信する路側基地局とを含むことを特徴とする運転支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−67365(P2013−67365A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−35429(P2012−35429)
【出願日】平成24年2月21日(2012.2.21)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】