説明

光スキャナー、光スキャナーの製造方法、および画像形成装置

【課題】可動板を互いに直交する2つの軸のそれぞれの軸まわりに安定して回動させることのできる光スキャナーおよび画像形成装置を提供すること。
【解決手段】貫通孔411に挿通された永久磁石811が、アライメント面41X,41Yに固定されることにより、永久磁石811を変位部41の所望の位置に位置決めして固定することができる。詳しくは、永久磁石811のX軸方向寸法の中心およびY軸方向寸法の中心が、回動中心軸X1,Y2の交点と一致させることができる。これにより、電源813,833からコイル812,832に交番電圧を印加することにより、永久磁石811が傾斜し、回動中心軸Y2からずれることなく、駆動梁43を捩じり変形させつつ、変位部41が回動中心軸Y2まわりに安定して傾斜する。これにより、可動梁42は、回動中心軸X1からずれて傾いた屈曲をすることなく、可動部2を安定して回動させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光スキャナー、光スキャナーの製造方法、および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、レーザープリンター等にて光走査により描画を行うための光スキャナーとして、捩り振動子で構成されアクチュエーターを用いたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1には、一対の永久磁石が設けられた絶縁基板と、一対の永久磁石の間に位置するように絶縁基板に支持されたスキャナー本体とを有するアクチュエーターが開示されている。また、スキャナー本体は、枠状の支持部と、支持部の内側に設けられた枠状の外側可動板と、外側可動板の内側に設けられた内側可動板(ミラー)とを有している。また、外側可動板は、X軸方向に延長する一対の第1トーションバーを介して支持部に連結されており、内側可動板は、X軸方向と直交するY軸方向に延長する第2トーションバーを介して外側可動板に連結している。また、外側可動板および内側可動板には、それぞれコイルが設けられている。
【0003】
このような構成のアクチュエーターでは、通電により各コイルから発生する磁界と一対の永久磁石間に発生する磁界とを作用させることにより、外側可動板が内側可動板とともに第1トーションバーを中心軸としてX軸まわりに回動し、内側可動板が第2トーションバーを中心軸としてY軸まわりに回動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−181395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、特許文献1のアクチュエーターでは、内側可動板をX軸まわりに回動させる機構と、Y軸まわりに回動させる機構とが異なっている。そのため、内側可動板をX軸およびY軸まわりに等しい条件で回動させることができない。また、特許文献1のアクチュエーターでは、外側可動板に設けられたコイルから発生する磁場と、内側可動板に設けられたコイルから発生する磁場とが干渉し、内側可動板をX軸およびY軸のそれぞれの軸まわりに独立して回動させることができない。したがって、特許文献1のアクチュエーターでは、内側可動板をX軸およびY軸のそれぞれの軸まわりに安定して回動させることができないという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、可動板を互いに直交する2つの軸のそれぞれの軸まわりに安定して回動させることができ、可動板と回動する軸との偏りを押さえ、正確な画像を実現することができる光スキャナーおよび画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものである。以下の形態または適用例により実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]本適用例にかかる光スキャナーは、光反射面を有する光反射部材と、前記光反射部材を支持する支持部材と、前記支持部材を介して前記光反射部材を支持する可動部と、前記可動部から前記光反射面に沿って延長する少なくとも一対の可動梁と、前記可動梁の延長方向に連結する変位部と、前記変位部を駆動する駆動部と、前記変位部から前記可動梁に直交して前記光反射面の略面方向に延長する2つの駆動梁と、前記駆動梁が連結される支持部とを備え、前記変位部に形成された少なくとも2つのアライメント面と、少なくとも2つの前記アライメント面が交差して形成された貫通孔とを備え、前記貫通孔に挿通され前記アライメント面に固定される永久磁石とを備えることを要旨とする。
【0009】
これによれば、貫通孔に挿通された永久磁石が、アライメント面に固定されることにより、永久磁石を変位部の所望の位置に位置決めして固定することができる。詳しくは、永久磁石のX軸方向寸法の中心およびY軸方向寸法の中心を、回動中心軸の交点と一致させることができる。これにより、電源からコイルに交番電圧を印加することにより、永久磁石が傾斜し、回動中心軸からずれることなく、駆動梁を捩じり変形させつつ、変位部が回動中心軸まわりに安定して傾斜する。これにより、可動梁は、回動中心軸からずれて傾いた屈曲をすることなく、可動部を安定して回動させることができる。同様に、永久磁石のX軸方向寸法の中心およびY軸方向寸法の中心を、回動中心軸の交点と一致させることができるので、上述のように可動部を回動させることができる。
【0010】
[適用例2]上記適用例にかかる光スキャナーにおいて、複数の前記アライメント面とともに前記貫通孔を構成する面によって囲まれた範囲の外側に段差部が形成されていることが好ましい。
【0011】
これによれば、段差部は複数のアライメント面とともに貫通孔を構成する面によって囲まれた範囲の外側に形成されているので、貫通孔への永久磁石の挿通を容易にすることができる。また、変位部の貫通孔、特に複数のアライメント面に、接着剤などにより固定する際に、永久磁石をアライメント面に押し付けて、接着剤が複数のアライメント面、およびに段差部に広がり、アライメント面と、永久磁石との間を均等にすることができ、永久磁石を変位部の所望の位置に位置決めして固定することができる。
【0012】
[適用例3]上記適用例にかかる光スキャナーにおいて、隣り合う2つの前記アライメント面に接して、逃げ部が形成されていることが好ましい。
【0013】
これによれば、隣り合う2つのアライメント面に接して形成された逃げ部により、貫通孔と永久磁石との位置決めを、隣り合う2つのアライメント面に接する部分により阻害されない。これにより、永久磁石が、アライメント面に固定されることにより、永久磁石を変位部の所望の位置に位置決めして固定することができる。
【0014】
[適用例4]上記適用例にかかる光スキャナーにおいて、前記変位部には、前記アライメント面を示すマークが形成されていることが好ましい。
【0015】
これによれば、複数のアライメント面を間違うことなく正確に確認することができ、永久磁石が、アライメント面に固定されることにより、永久磁石を変位部の所望の位置に位置決めして固定することができる。
【0016】
[適用例5]本適用例にかかる光スキャナーの製造方法は、光反射面を有する光反射部材と、前記光反射部材を支持する支持部材と、前記支持部材を介して前記光反射部材を支持する可動部と、前記可動部から前記光反射面に沿って延長する少なくとも一対の可動梁と、前記可動梁の延長方向に連結する変位部と、前記変位部を駆動する駆動部と、前記変位部から前記可動梁に直交して前記光反射面の略面方向に延長する2つの駆動梁と、前記駆動梁が連結される支持部とを備え、前記変位部に形成された少なくとも2つのアライメント面と、少なくとも2つの前記アライメント面が交差して形成された貫通孔とを備え、前記貫通孔に挿通される永久磁石とを備える光スキャナーの製造方法であって、前記貫通孔に接着剤を塗布する塗布工程と、前記貫通孔に前記永久磁石を挿通する挿通工程と、前記永久磁石を前記アライメント面に押し付ける押付工程とを備えることを要旨とする。
【0017】
これによれば、変位部の貫通孔、特に複数のアライメント面に、接着剤などにより固定する際に、永久磁石をアライメント面に押し付けるので、永久磁石を変位部の所望の位置に位置決めして固定することができる。
【0018】
[適用例6]本適用例にかかる画像形成装置は、光反射面を有する光反射部材と、前記光反射部材を支持する支持部材と、前記支持部材を介して前記光反射部材を支持する可動部と、前記可動部から前記光反射面に沿って延長する少なくとも一対の可動梁と、前記可動梁の延長方向に連結する変位部と、前記変位部を駆動する駆動部と、前記変位部から前記可動梁に直交して前記光反射面の略面方向に延長する2つの駆動梁と、前記駆動梁が連結される支持部とを備え、前記変位部に形成された少なくとも2つのアライメント面と、少なくとも2つの前記アライメント面が交差して形成された貫通孔とを備え、前記貫通孔に挿通され前記アライメント面に固定される永久磁石とを備えることを要旨とする。
【0019】
これによれば、上述と同様の効果を奏することが可能な画像形成装置としてのプロジェクターを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施形態にかかる光スキャナーを示す平面を示す概略平面図。
【図2】第1実施形態にかかる光スキャナーの断面図(図1中A−A断面図)。
【図3】第1実施形態にかかる光スキャナーが有する連結部の斜視図。
【図4】第1実施形態にかかる光スキャナーが有する連結部の概略XY平面図。
【図5】第1実施形態にかかる光スキャナーの製造方法を示すフローチャート。
【図6】第1実施形態にかかる光スキャナーの製造方法を示す概略工程図。
【図7】第1実施形態にかかる光スキャナーの製造方法を示す概略工程図。
【図8】第1実施形態にかかる光スキャナーが有する変位手段を説明する図。
【図9】第1実施形態にかかる光スキャナーの駆動を説明する図。
【図10】第1実施形態にかかる光スキャナーの駆動を説明する図。
【図11】第1実施形態にかかる光スキャナーの駆動を説明する図。
【図12】第1実施形態にかかる光スキャナーの駆動を説明する図。
【図13】第2実施形態にかかる光スキャナーが有する連結部の概略XY平面図。
【図14】第3実施形態にかかるプロジェクターを示す概略構成図。
【図15】変形例にかかる光スキャナーが有する連結部の概略XY平面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の光スキャナーおよび画像形成装置の好適な実施形態の一例について説明する。
【0022】
以下では、説明の便宜上、図中の左側を「左」、右側を「右」と言い、図中の上側を「上」、下側を「下」と言う。また、図1に示すように互いに直交する3軸を、X軸、Y軸およびZ軸とし、非駆動状態の可動部の面と、X軸およびY軸で形成される面とが一致し(平行であり)、可動部の厚さ方向とZ軸とが一致する。また、以下では、X軸に平行な方向を「X軸方向」と言い、Y軸に平行な方向を「Y軸方向」と言い、Z軸方向に平行な方向を「Z軸方向」と言う。
【0023】
<第1実施形態>
第1実施形態の光スキャナーについて説明する。
図1および図2に示す光スキャナー1は、可動部2、可動部2に支持される光反射部材20、可動部2を支持する支持部3および可動部2と支持部3とを連結する4つの連結部4,5,6,7で構成された振動基板11と、振動基板11を支持する基台12と、可動部2を変位させる変位手段8とを有している。以下、光スキャナー1の各構成について順次詳細に説明する。
【0024】
(1−1.振動基板11)
第1実施形態では、振動基板11(すなわち、可動部2、支持部3および4つの連結部4,5,6,7)は、SOI基板の不要部位をドライエッチングおよびウェットエッチング等の各種エッチング法により除去することにより一体的に形成されている。
【0025】
支持部3は、可動部2を支持する機能を有する。このような支持部3は、枠状をなしており、可動部2の周囲を囲むように設けられている。支持部3は、四隅に固定部13を備えている。なお、支持部3の形状としては、可動部2を支持することができれば、特に限定されず、例えば、可動部2を介してX軸方向またはY軸方向に対向するように一対設けられていてもよい。または、連結部4の変位部41とコイル812(駆動部810)との間、連結部5の変位部51とコイル822(駆動部820)との間、連結部6の変位部61とコイル832(駆動部830)との間、および/または連結部7の変位部71とコイル842(駆動部840)との間に、支持部3を構成しない形状であってもよい。この場合、それぞれの固定部13は、駆動梁43,53,63,73により連結されている。
支持部3の内側には、可動部2が設けられている。可動部2は、平板状をなしている。そして、可動部2には、支持部材23を備えた光反射部材20が配置されている。光反射部材20は平板状をなし、光反射部材20の一方の面(基台12と反対側の面)21には、光反射性を有する光反射部22が形成されている。そして、支持部材23を接着剤などにより可動部2に固定されることで、光反射部材20は、可動部2に支持される。光反射部22は、例えば、面21上に金、銀、アルミニウム等の金属膜などを蒸着等により形成することにより得られる。
【0026】
なお、第1実施形態では、可動部2のXY平面視形状は、円形であるが、可動部2のXY平面視形状としては、特に限定されず、例えば三角形、長方形、正方形等の多角形、楕円形等であってもよい。
このような可動部2は、4つの連結部4,5,6,7によって支持部3に連結されている。4つの連結部4,5,6,7は、可動部2のXY平面視にて、可動部2の周方向に沿って等間隔、すなわち90度間隔で配置されている。
【0027】
そして、4つの連結部4,5,6,7のうち、連結部4,6は、可動部2を介してX軸方向に対向しかつ可動部2に対して対称的に形成されており、連結部5,7は、可動部2を介してY軸方向に対向しかつ可動部2に対して対称的に形成されている。このような連結部4,5,6,7によって可動部2を支持することにより、可動部2を安定した状態で支持することができる。
【0028】
4つの連結部4,5,6,7は、互いに同様の構成をなしている。
具体的には、連結部(第1の連結部)4は、変位部41と、可動梁42と、一対の駆動梁43とを有している。可動梁42は、変位部41と可動部2とを連結している。駆動梁43は、変位部41と支持部3とを連結している。
そして、連結部(第3の連結部)5は、変位部51と、可動梁52と、一対の駆動梁53とを有している。可動梁52は、変位部51と可動部2とを連結している。駆動梁53は、変位部51と支持部3とを連結している。
また、連結部(第2の連結部)6は、変位部61と、可動梁62と、一対の駆動梁63とを有している。可動梁62は、変位部61と可動部2とを連結している。駆動梁63は、変位部61と支持部3とを連結している。
同様に、連結部(第4の連結部)7は、変位部71と、可動梁72と、一対の駆動梁73とを有している。可動梁72は、変位部71と可動部2とを連結している。駆動梁73は、変位部71と支持部3とを連結している。
なお、前記「同様の構成」とは、連結部を構成する要素が共通しているということである。したがって、外形形状については一致している必要はない。
各連結部4,5,6,7をこのような構成とすることにより、連結部の構成が簡単となるとともに、可動部2の回動中心軸X1,Y1まわりの回動等をスムーズに行うことができる。
【0029】
以下、連結部4,5,6,7について具体的に説明するが、連結部4,5,6,7の構成は、互いに同様であるため、連結部4について代表して説明し、他の連結部5,6,7については、その説明を省略する。なお、連結部5,7は、可動部2のXY平面視にて、連結部4に対して90度回転した状態で配置されている。そのため、連結部5,7については、下記の連結部4の説明中の「Y軸方向」を「X軸方向」とし、「X軸方向」を「Y軸方向」とすることで説明することもできる。
【0030】
図3に示すように、一対の駆動梁43は、変位部41を介してY軸方向に対向配置されており、変位部41を両持ち支持している。また、一対の駆動梁43は、それぞれ、Y軸方向に延長する棒状をなしている。また、一対の駆動梁43は、駆動梁43の中心軸まわりに捩じり変形可能となっている。このような一対の駆動梁43は、同軸的に設けられており、この軸(以下、「回動中心軸Y2」とも言う)を中心として、一対の駆動梁43が捩じり変形するとともに変位部41が回動する。
【0031】
変位部41は、可動部2に対してX軸方向に離間して設けられている。また、変位部41は、前述したように一対の駆動梁43によって両持ち支持されている。このような変位部41には貫通孔411が形成されており、この貫通孔411に永久磁石811が挿通、固定されている。永久磁石811は、例えば、接着剤44によって、変位部41に固定されている。接着剤44は、エポキシ樹脂またはアクリル樹脂などからなり、加熱または紫外線照射などにより硬化される。
【0032】
図4に示すように、貫通孔411は、アライメント面41X,41Y、および段差部45を備えている。図4(a)に示すように、段差部45は、XY平面視において、アライメント面41X,41Yとともに貫通孔411を構成する面によって囲まれた範囲の外側に形成されている。変位部41には、アライメント面41X,41Yを示すマーク(図示黒色三角形)が形成されている。アライメント面41X,41Yは、交差して形成され、図4では直交して形成されている。
アライメント面41Xは、永久磁石811のX軸方向の位置決めを規定し、アライメント面41Yは、永久磁石811のY軸方向の位置決めを規定するように形成されている。詳しくは、アライメント面41X,41Yは、回動中心軸X1,Y2に対して、永久磁石811のX軸方向寸法の半分、およびY軸方向寸法の半分の距離をおいて形成されている。
このようにして、永久磁石811を、アライメント面41X,41Yに押し付けて、接着剤44によって貫通孔411に固定されることで、永久磁石811のX軸方向寸法の中心およびY軸方向寸法の中心が、回動中心軸X1,Y2の交点と一致するように位置決めされて、配置される。ここで、永久磁石811のXY平面視形状は、図4(a)に実線で示す矩形、または破線で示す円形とするが、これに限定されず、多角形または楕円形など適宜決定することができる。
【0033】
段差部45、特にアライメント面41X,41Yの外側に、接着剤44が注入または塗布されている。そして、貫通孔411、特にアライメント面41X,41Yに、接着剤44が注入または塗布されている。ここで、接着剤44は、アライメント面41X,41Yの外側だけでなく、アライメント面41X,41Yとともに貫通孔411を構成する面の外側に、注入または塗布されていてもよい。また、段差部45には、上述のように接着剤44が注入または塗布されていて、貫通孔411には、上述とは異なり接着剤44が注入または塗布されていないとしてもよく、適宜決定することができる。
そして、図4(a)でX軸方向およびY軸方向の寸法で示される段差部45の長さ、図4(b)でZ軸方向の寸法で示される段差部45の深さ、ならびに図4(b)に示す段差部45の断面形状、および注入または塗布される接着剤44の量は、永久磁石811と変位部41とを固定する接着強度の決定などにより、適宜決定することができる。
【0034】
永久磁石821,831,841は、変位部41と同様に、接着剤44によって、変位部51,61,71に固定されている。そして、変位部41と同様に、変位部51,61,71は、それぞれアライメント面41X,41Y、および段差部45を備えている。そして、永久磁石811と同様に、永久磁石821,831,841は、アライメント面41X,41Yに固定されることで、位置決めされている。図1を参照して詳しく説明すると、永久磁石821のX軸方向の寸法中心およびY軸方向の寸法中心が、回動中心軸X2,Y1の交点と一致するように設定されている。そして、永久磁石831のX軸方向の寸法中心およびY軸方向の寸法中心が、回動中心軸X1,Y3の交点と一致するように設定されている。同様に、永久磁石841のX軸方向の寸法中心およびY軸方向の寸法中心が、回動中心軸X3,Y1の交点と一致するように設定されている。
【0035】
次に、永久磁石811を変位部41に固定する方法について、図6および図7を参照して説明する。
【0036】
まず、塗布工程(S101)を実施する。
図6(a)に示すように、段差部45、特にアライメント面41X,41Yの外側に、接着剤44を注入または塗布する。そして、段差部45だけでなく、貫通孔411、特にアライメント面41X,41Yに、接着剤44を注入または塗布する。ここで、接着剤44は、アライメント面41X,41Yの外側だけでなく、アライメント面41X,41Yとともに貫通孔411を構成する面の外側に、注入または塗布されていてもよい。
【0037】
次に、挿通工程(S102)を実施する。
図6(b)に示すように、貫通孔411に永久磁石811を挿通する。特に、貫通孔411を構成する面側、つまりアライメント面41X,41Yから離れる側に寄せて、貫通孔411に永久磁石811を挿通する。
【0038】
その後、押付工程(S103)を実施する。
図7(c)に示すように、黒色矢印の方向に永久磁石811を押して、アライメント面41X,41Yに押し付ける。
【0039】
そして、硬化工程(S104)を実施し、接着剤44を加熱または紫外線照射などにより硬化する。これにより、永久磁石811を貫通孔411に固定する。これにより、永久磁石811は、接着剤44によって、変位部41に固定される。
【0040】
その後、着磁工程(S105)を実施し、永久磁石811のZ軸方向の一端がN極となり、その反対側がS極となる。
【0041】
塗布工程(S101)および挿通工程(S102)の順序は、上述の順序に限定されることなく、挿通工程(S102)の後に塗布工程(S101)を実施してもよい。
上述のように実施するのであれば、段差部45に加えてアライメント面41X,41Y、およびアライメント面41X,41Yとともに貫通孔411を構成する面において、接着剤44により固定され接着強度が向上される。または、挿通工程(S102)の後に塗布工程(S101)を実施するのであれば、永久磁石811をアライメント面41X,41Yに直接接して位置決めを規定することが可能となる。
【0042】
着磁工程(S105)は、上述の順序に限定されることなく、たとえば塗布工程(S101)または挿通工程(S102)の前に実施するとしてもよく、適宜決定することができる。
【0043】
また、第1実施形態では、変位部41の平面視形状は、Y軸方向を長手とする長方形である。変位部41をこのような形状とすることにより、永久磁石811を固定するスペースを確保しつつ、変位部41の幅(X軸方向の長さ)を抑えることができる。変位部41の幅を抑えることにより、変位部41が回動中心軸Y2まわりに回動する際に発生する慣性モーメントを抑えることができ、変位部41の反応性が高まり、より高速な回動が可能となる。また、変位部41の反応性が高まると、変位部41の回動(特に回動方向が切り替わる切り返しの時)によって、不本意な振動が発生するのを抑えることができる。そのため、光スキャナー1を安定して駆動することができる。
【0044】
なお、変位部41の平面視形状としては、特に限定されず、例えば、三角形や正方形や五角形以上の多角形であってもよいし、円形であってもよい。
このような変位部41は、可動梁42によって可動部2と連結している。可動梁42は、全体的にX軸方向に延長するように設けられている。このような可動梁42は、変位部41と可動部2との間に設けられた屈曲部421と、可動部側可動梁422と、変位部側可動梁423とを有している。可動部側可動梁422は、屈曲部421と可動部2とを連結し、変位部側可動梁423は、屈曲部421と変位部41とを連結している。
可動部側可動梁422および変位部側可動梁423は、それぞれ、X軸方向に延長する棒状をなしている。また、可動部側可動梁422および変位部側可動梁423は、同軸的に設けられている。
【0045】
これら2つの軸部のうちの変位部側可動梁423は、光スキャナー1の駆動時に大きな変形が起こらない硬さに設定されているのが好ましく、実質的に変形しない硬さに設定されているのがより好ましい。これに対して可動部側可動梁422は、その中心軸まわりに捩じり変形可能となっている。このように、可動梁42が実質的に変形しない硬い部分およびその先端側に位置する捩じり変形可能な部位を有することにより、可動部2をX軸およびY軸のそれぞれの軸まわりに安定して回動させることができる。なお、前記「変形しない」とは、Z軸方向への屈曲または湾曲および中心軸まわりの捩じり変形が実質的に起きないことを言う。
このような可動部側可動梁422および変位部側可動梁423は、屈曲部421を介して連結している。屈曲部421は、可動梁42が屈曲変形する際の節となる機能と、可動部側可動梁422の捩じり変形により発生するトルクを緩和(吸収)し、前記トルクが変位部側可動梁423に伝わるのを防止または抑制する機能とを有している。
【0046】
図3に示すように、屈曲部421は、一対の変形部4211,4212と、これらの間に設けられた非変形部4213と、変形部4211を非変形部4213に接続する一対の接続部4214と、変形部4212を非変形部4213に接続する一対の接続部4215とを有している。
非変形部4213は、Y軸方向に延長する棒状をなしている。このような非変形部4213は、光スキャナー1の駆動時に実質的に変形しない硬さに設定されている。これにより、非変形部4213の中心軸Y4を中心に可動梁42を屈曲させることができ、屈曲部421に節としての機能を確実に発揮させることができ、光スキャナー1を安定して駆動させることができる。
【0047】
このような非変形部4213に対して対称的に一対の変形部4211,4212が配置されている。変形部4211,4212は、それぞれ、Y軸方向に延長する棒状をなしている。また、変形部4211,4212は、互いにX軸方向に離間して並設されている。このような変形部4211,4212は、それぞれ、その中心軸まわりに捩じり変形可能となっている。
【0048】
可動部2側に位置する変形部4211は、その長手方向のほぼ中央にて可動部側可動梁422の一端と連結しているとともに、その両端部にて一対の接続部4214を介して非変形部4213に連結している。同様に、変位部41側に位置する変形部4212は、その長手方向のほぼ中央にて変位部側可動梁423の一端と連結しているとともに、その両端部にて一対の接続部4215を介して非変形部4213に連結している。
【0049】
一対の接続部4214の一方の接続部は、変形部4211および非変形部4213の一端部同士を連結し、他方の接続部は、変形部4211および非変形部4213の他端部同士を連結している。また、一対の接続部4215の一方の接続部は、変形部4212および非変形部4213の一端部同士を連結し、他方の接続部は、変形部4212および非変形部4213の他端部同士を連結している。
このような各接続部4214,4215は、X軸方向に延長する棒状をなしている。また、各接続部4214,4215は、Z軸方向に湾曲可能でかつその中心軸まわりに捩じり変形可能となっている。
以上、振動基板11の構成について具体的に説明した。
【0050】
前述したように、このような構成の振動基板11は、SOI基板から一体的に形成されている。これにより、振動基板11の形成が容易となる。具体的には、前述したように、振動基板11には、積極的に変形させる部位と、変形させない(変形させたくない)部位とが混在している。一方、SOI基板は、第1のSi層と、SiO2層と、第2のSi層とがこの順に積層した基板である。そこで、変形させない部位を前記3つの層の全てで構成するとともに、積極的に変形させる部位を第2のSi層のみで構成することにより、すなわち、SOI基板の厚さを異ならせることにより、変形させる部位と変形させない部位が混在する振動基板11を簡単に形成することができる。なお、積極的に変形させる部位は、第2のSi層とSiO2層の2層で構成されていてもよい。
【0051】
前記「変形させる部位」には、駆動梁43,53,63,73、可動部側可動梁422,522,622,722、変形部4211,4212,5211,5212,6211,6212,7211,7212および接続部4214,4215,5214,5215,6214,6215,7214,7215が含まれる。
一方、前記「変形させない部位」には、可動部2、支持部3、変位部41,51,61,71、変位部側可動梁423,523,623,723および非変形部4213,5213,6213,7213が含まれる。
【0052】
(1−2.基台12)
図2に示すように、基台12は、平板状の基部121と、基部121の縁部に沿って設けられた枠部122とを有しており、箱状(枡状)をなしている。このような基台12は、枠部122にて振動基板11の支持部3および固定部13(図1参照)の下面と接合されている。これにより、基台12によって振動基板11が支持される。このような基台12は、例えば、ガラスやシリコンを主材料として構成されている。なお、基台12と支持部3の接合方法としては、特に限定されず、例えば接着剤を用いて接合してもよく、陽極接合等の各種接合方法を用いてもよい。また、基台12は、箱状(枡状)をなしているとしたが、これに限定されず、基部121の縁部に、部分的に枠部122が設けられるとしてもよい。
【0053】
(1−3.変位手段8)
図1に示すように、変位手段8は、第1の変位手段81と、第2の変位手段82と、第3の変位手段83と、第4の変位手段84とを有している。
第1の変位手段81は、永久磁石811、コイル812が巻き付けられた駆動部810、および電源813を有している。第2の変位手段82は、永久磁石821、コイル822が巻き付けられた駆動部820、および電源823を有している。第3の変位手段83は、永久磁石831、コイル832が巻き付けられた駆動部830、および電源833を有している。第4の変位手段84は、永久磁石841、コイル842が巻き付けられた駆動部840、および電源843を有している。
【0054】
そして、第1の変位手段81は、連結部4に対応して設けられており、第2の変位手段82は、連結部5に対応して設けられており、第3の変位手段83は、連結部6に対応して設けられており、第4の変位手段84は、連結部7に対応して設けられている。
このような構成によれば、変位手段8の構成が簡単となる。また、変位手段8を電磁駆動とすることにより、比較的大きな力を発生させることができ、可動部2をより確実に回動させることができる。また、各連結部4,5,6,7に1つの変位手段8(81,82,83,84)が設けられているため、各連結部4,5,6,7を独立して変形させることができる。そのため、可動部2を様々な態様で変位させることができる。
【0055】
以下、第1の変位手段81、第2の変位手段82、第3の変位手段83および第4の変位手段84について説明するが、これらはそれぞれ同様の構成であるため、以下では、第1の変位手段81について代表して説明し、第2の変位手段82、第3の変位手段83および第4の変位手段84については、その説明を省略する。なお、第2の変位手段82および第4の変位手段84は、可動部2の平面視にて、第1の変位手段81に対して90度回転した状態で配置されている。そのため、第2の変位手段82および第4の変位手段84については、下記の第1の変位手段81の説明中の「Y軸方向」を「X軸方向」とし、「X軸方向」を「Y軸方向」とすることで説明することもできる。
【0056】
図8に示すように、永久磁石811は、棒状をなしており、その長手方向に磁化している。すなわち、永久磁石811は、その長手方向の一端側がS極となっており、他端側がN極となっている。このような永久磁石811は、変位部41に形成された貫通孔411に挿通されており、長手方向のほぼ中央で変位部41に固定されている。そして、永久磁石811が、変位部41の上下に同じ長さだけ突出し、かつ変位部41(回動中心軸Y2)を介してS極とN極が対向する。これにより、可動部2を安定して変位させることができる。
【0057】
また、永久磁石811は、その長手方向が変位部41の面方向に直交するように設けられている。また、永久磁石811は、その中心軸が回動中心軸Y2と交わるように設けられている。
このような永久磁石811としては、特に限定されず、例えば、ネオジウム磁石、フェライト磁石、サマリウムコバルト磁石、アルニコ磁石、ボンド磁石などの、硬磁性体を着磁したものを好適に用いることができる。
【0058】
なお、第1実施形態では、永久磁石811は、棒状をなしているが、永久磁石の形状としては、特に限定されず、例えば、板状または円柱状をなしていてもよい。この場合には、永久磁石811を面方向に磁化し、その面方向がX軸方向と直交するように変位部41に固定すればよい。これにより、永久磁石811のX軸方向長さを短くすることができるため、変位部41の回動に伴って発生する慣性モーメントを抑えることができる。
【0059】
コイル812は、永久磁石811に作用する磁界を発生する。このようなコイル812は、振動基板11の外側近傍に、X軸方向にて永久磁石811と対向するように配置されている。また、コイル812は、X軸方向の磁界を発生させることができるように、すなわち、コイル812の永久磁石811側がN極となりその反対側がS極となる状態と、コイル812の永久磁石811側がS極となりその反対側がN極となる状態とを発生させることができるように設けられている。
【0060】
第1実施形態の光スキャナー1は、振動基板11の外側に基台12と固定的に設けられた駆動部810(820,830,840)にコイル固定部85を有しており、このコイル固定部85が有するX軸方向に延長する突出部851にコイル812が巻き付けられている。このような構成とすることにより、コイル812を振動基板11に対して固定でき、かつ、簡単に前述のような磁界を発生させることができる。また、突出部851を鉄などの軟磁性体で構成することにより、突出部851をコイル812の磁心として用いることができ、前述のような磁界をより効率的に発生させることもできる。
【0061】
電源813は、コイル812に電気的に接続されている。そして、電源813からコイル812に所望の電圧を印加することにより、コイル812から前述したような磁界を発生させることができる。第1実施形態では、電源813は、交番電圧および直流電圧を選択して印加できるようになっている。また、交番電圧を印加する際には、その強さ、周波数を変更できるようになっており、さらにオフセット電圧(直流電圧)を重畳させることもできるようになっている。
【0062】
(2.光スキャナー1の作動)
次いで、光スキャナーの作動について説明する。
上述のような構成の光スキャナー1では、可動部2を回動させるパターンと、可動部2を振動させるパターンと、可動部2を所定位置で静止させるパターンとを選択することができるようになっている。このように、光スキャナー1が種々のパターンで駆動することができるのは、各連結部4,5,6,7の可動梁42,52,62,72を屈曲変形させることにより得られる効果である。
以下、これら3つのパターンについて順次説明する。なお、以下では、説明の便宜上、永久磁石811,821,831,841が全てN極を上側にして配置された構成について代表して説明する。
【0063】
(2−1.回動)
<Y軸まわりの回動>
図9に基づいて、可動部2のY軸まわりの回動について説明する。なお、図9は、図1中A−A線断面図に対応する断面図である。
まず、コイル812の永久磁石811側がN極、コイル832の永久磁石831側がS極となる第1の状態と、コイル812の永久磁石811側がS極、コイル832の永久磁石831側がN極となる第2の状態とが交互にかつ周期的に切り替わるように、電源813,833からコイル812,832に交番電圧を印加する。電源813,833からコイル812,832に印加される交番電圧は、互いに同じ波形(強さおよび周波数が同じ)であるのが好ましい。
【0064】
図9(a)に示す第1の状態では、永久磁石811のS極がコイル812に引き付けられるとともにN極がコイル812から遠ざかって傾斜するため、一対の駆動梁43を捩じり変形させつつ、変位部41がその上面を可動部2側に向けるように回動中心軸Y2まわりに傾斜する。これとともに、永久磁石831のN極がコイル832に引き付けられるとともにS極がコイル832から遠ざかって傾斜するため、一対の駆動梁63を捩じり変形させつつ、変位部61がその下面を可動部2側に向けるように回動中心軸Y3まわりに傾斜する。すなわち、変位部41,61がともに図9(a)中時計回りに傾斜する。
【0065】
この変位部41,61の傾斜とともに、変位部側可動梁423が可動部2側の端を下側に向けるように傾斜し、変位部側可動梁623が可動部2側の端を上側に向けるように傾斜する。これにより、変位部側可動梁423,623の可動部2側の端同士がZ軸方向にずれた状態となる。
そして、変位部側可動梁423,623の可動部2側の端同士がZ軸方向にずれることによって、変形部4211,4212,6211,6212をその中心軸まわりに捩じり変形させるとともに各接続部4214,4215,6214,6215を湾曲変形させながら、可動部側可動梁422,622および可動部2が一体的に図9(a)中反時計回りに傾斜する。
【0066】
このように、第1の状態では、連結部4の可動梁42がその途中にある屈曲部421で下側に凸のV字状に屈曲変形(第1の変形)するとともに、連結部6の可動梁62がその途中にある屈曲部621で上側に凸のV字状に屈曲変形(第2の変形)することにより、回動中心軸Y1を中心として、可動部2が図9(a)中反時計回りに傾斜する。
【0067】
一方、図9(b)に示す第2の状態では、前述した第1の状態と逆の変形が起こる。すなわち、第2の状態では、連結部4の可動梁42が屈曲部421で上側に凸のV字状に屈曲変形(第2の変形)するとともに、連結部6の可動梁62が屈曲部621で下側に凸のV字状に屈曲変形(第1の変形)する。これにより、回動中心軸Y1を中心として、可動部2が図9(b)中時計回りに傾斜する。
【0068】
このような第1の状態と、第2の状態とを交互にかつ周期的に切り替えることによって、可動部2を回動中心軸Y1まわりに回動させることができる。なお、可動部2の回動中心軸Y1まわりの回動は、連結部5,7が有する可動部側可動梁522,722がその中心軸まわりに捩じり変形することによって許容される。
なお、コイル812,832に印加する交番電圧の周波数としては特に限定されず、可動部2および連結部4,5,6,7で構成される振動基板11の共振周波数と等しくても異なっていてもよいが、前記共振周波数と異なっているのが好ましい。すなわち、光スキャナー1を非共振で駆動するのが好ましい。これにより、光スキャナー1のより安定した駆動が可能となる。
【0069】
<X軸まわりの回動>
次いで、図10に基づいて、可動部2のX軸まわりの回動について説明する。なお、図10は、図1中B−B線断面図に対応する断面図である。
まず、コイル822の永久磁石821側がN極、コイル842の永久磁石841側がS極となる第1の状態と、コイル822の永久磁石821側がS極、コイル842の永久磁石841側がN極となる第2の状態とが交互にかつ周期的に切り替わるように、電源823,843からコイル822,842に交番電圧を印加する。電源823,843からコイル822,842に印加される交番電圧は、互いに同じ波形であるのが好ましい。
【0070】
前述した可動部2の回動中心軸Y1まわりの回動と同様に、図10(a)に示す第1の状態では、連結部5の可動梁52がその途中にある屈曲部521で下側に凸のV字状に屈曲変形(第1の変形)するとともに、連結部7の可動梁72がその途中にある屈曲部721で上側に凸のV字状に屈曲変形(第2の変形)することにより、回動中心軸X1を中心として、可動部2が図10(a)中反時計回りに傾斜する。
【0071】
一方、図10(b)に示す第2の状態では、前述した第1の状態と逆の変形が起こる。すなわち、第2の状態では、連結部5の可動梁52が屈曲部521で上側に凸のV字状に屈曲変形(第2の変形)するとともに、連結部7の可動梁72が屈曲部721で下側に凸のV字状に屈曲変形(第1の変形)することにより、回動中心軸X1を中心として、可動部2が図10(b)中時計回りに傾斜する。
このような第1の状態と、第2の状態とを交互にかつ周期的に切り替えることによって、可動部2を回動中心軸X1まわりに回動させることができる。なお、可動部2の回動中心軸X1まわりの回動は、連結部4,6が有する可動部側可動梁422,622がその中心軸まわりに捩じり変形することにより許容される。
【0072】
なお、コイル822,842に印加する交番電圧の周波数としては特に限定されず、可動部2および連結部4,5,6,7で構成される振動基板11の共振周波数と等しくても異なっていてもよいが、前記共振周波数と異なっているのが好ましい。すなわち、光スキャナー1を非共振で駆動するのが好ましい。これにより、光スキャナー1のより安定した駆動が可能となる。
【0073】
<X軸およびY軸のそれぞれの軸まわりの回動>
前述したようなX軸まわりの回動と、Y軸まわりの回動とを同時に行うことにより、可動部2を回動中心軸Y1および回動中心軸X1のそれぞれの軸まわりに2次元的に回動させることができる。前述したように、可動部2の回動中心軸Y1まわりの回動は、可動部側可動梁522,722がその中心軸まわりに捩じり変形することによって許容され、可動部2の回動中心軸X1まわりの回動は、可動部側可動梁422,622がその中心軸まわりに捩じり変形することにより許容される。
【0074】
前述したX軸まわりの回動、Y軸まわりの回動およびこれら2軸まわりの回動では、コイル812,822,832,842に印加する交番電圧の周波数としては特に限定されず、可動部2および連結部4,5,6,7で構成される振動基板11の共振周波数と等しくても異なっていてもよいが、前記共振周波数と異なっているのが好ましい。すなわち、光スキャナー1を非共振で駆動するのが好ましい。これにより、光スキャナー1のより安定した駆動が可能となる。
【0075】
また、可動部2を回動中心軸Y1まわりに回動させるためにコイル812,832に印加する交番電圧の周波数と、可動部2を回動中心軸X1まわりに回動させるためにコイル822,842に印加する交番電圧の周波数とは等しくてもよいし異なっていてもよい。例えば、可動部2を回動中心軸X1よりも回動中心軸Y1まわりに速く回動させたい場合には、コイル812,832に印加する交番電圧の周波数を、コイル822,842に印加する交番電圧の周波数よりも高く設定すればよい。
【0076】
また、コイル812,832に印加する交番電圧の強さと、コイル822,842に印加する交番電圧の強さは、等しくても異なっていてもよい。例えば、可動部2を回動中心軸X1よりも回動中心軸Y1まわりに大きく回動させたい場合には、コイル812,832に印加する交番電圧の強さを、コイル822,842に印加する交番電圧の強さよりも強くすればよい。
【0077】
上記では、コイル812,822,832,842に交番電圧を印加する駆動方法について説明したが、次のような駆動方法によっても可動部2を回動させることができる。すなわち、電源813,823,833,843からコイル812,822,832,842に印加される交番電圧に(+)または(−)のオフセット電圧(直流電圧)を重畳してもよい。言い換えれば、永久磁石811,821,831,841のN極がコイル812,822,832,842に引き付けられる強さ(以下、単に「N極引き付け強さ」とも言う)と、永久磁石811,821,831,841のS極がコイル812,822,832,842に引き付けられる強さ(以下、単に「S極引き付け強さ」とも言う)とを異ならせてもよい。
【0078】
以下、具体的に説明するが、前述したような、N極引き付け強さおよびS極引き付け強さが等しい状態を「通常状態」と言う。
コイル812,822,832,842のS極引き付け強さがN極引き付け強さよりも大きい場合には、通常状態と比較して、変位部41,51,61,71の回動の上死点および下死点(回動方向が切り替わる点)が上側に移動する。その結果、図11に示すように、可動部2の回動中心軸X1,Y1が通常状態に比べて上側に移動する。逆に、コイル812,822,832,842のS極引き付け強さがN極引き付け強さよりも弱い場合には、通常状態と比較して、変位部41,51,61,71の回動の上死点および下死点がそれぞれ下側に移動するため、可動部2の回動中心軸X1,Y1が通常状態に比べて下側に移動する。
【0079】
このように、電源813,823,833,843からコイル812,822,832,842に印加される交番電圧にオフセット電圧を重畳することにより、可動部2の回動中心軸X1,Y1をZ軸方向にずらすことができる。これにより、例えば、光スキャナー1がプロジェクター等の画像形成装置に組み込まれている場合に、画像形成装置を組み立てた後でも、光源から出射される光の可動部2までの光路長を調整することができる。すなわち、画像形成装置の組み立て時には、光源と可動部2との位置決めを精密に行うが、仮にこれらの位置が設定値に対してずれてしまった場合でも、組み立て後に、光源と可動部2との位置を補正することができる。
【0080】
(2−2.振動)
まず、コイル812,822,832,842の永久磁石811,821,831,841側がそれぞれN極となる第1の状態と、コイル812,822,832,842の永久磁石811,821,831,841側がそれぞれS極となる第2の状態とが、交互にかつ周期的に切り替わるように、電源813,823,833,843からコイル812,822,832,842に交番電圧を印加する。電源813,823,833,843からコイル812,822,832,842に印加される交番電圧は、互いに同じ波形であるのが好ましい。
【0081】
図12(a)に示す第1の状態では、前述した回動の場合と同様にして、変位部41,51,61,71は、それぞれ、その上面を可動部2側に向けるように回動中心軸Y2,X2,Y3,X3まわりに傾斜する。このような変位部41,51,61,71の傾斜に伴って、変位部側可動梁423,523,623,723は、それぞれ、可動部2側の端が下側を向くように傾斜する。これにより、可動梁42,52,62,72が屈曲部421,521,621,721で屈曲しながら、可動部側可動梁422,522,622,722および可動部2が一体的にかつ可動部2の姿勢(すなわち面方向)を一定に保ちつつ下側に移動する。
【0082】
一方、図12(b)に示す第2の状態では、変位部41,51,61,71は、それぞれ、その下面を可動部2側に向けるように回動中心軸Y2,X2,Y3,X3まわりに傾斜する。このような変位部41,51,61,71の傾斜に伴って、変位部側可動梁423,523,623,723は、それぞれ、可動部2側の端が上側を向くように傾斜する。これにより、可動梁42,52,62,72が屈曲部421,521,621,721で屈曲しながら、可動部側可動梁422,522,622,722および可動部2が一体的にかつ可動部2の姿勢を一定に保ちつつ上側に移動する。
【0083】
このような第1の状態と、第2の状態とを交互に切り替えることによって、可動部2をその姿勢を保ちつつ、すなわち光反射部22の表面をX−Y平面と平行に保ちつつ、Z軸方向に振動させることができる。
なお、コイル812,822,832,842に印加する交番電圧の周波数としては特に限定されず、可動部2および連結部4,5,6,7で構成される振動基板11の共振周波数と等しくても異なっていてもよいが、前記共振周波数と等しいのが好ましい。すなわち、光スキャナー1を共振で駆動するのが好ましい。これにより、光スキャナー1のより安定した駆動が可能となる。
このような振動パターンでも、前述した回動パターンと同様に、コイル812,822,832,842に印加する交番電圧にオフセット電圧を重畳させることにより、自然状態からZ軸方向にシフトして可動部2を振動させることができる。
【0084】
(2−3.静止パターン)
例えば、コイル812,822,832,842の永久磁石811,821,831,841側がそれぞれN極となる状態となるように電源813,823,833,843からコイル812,822,832,842に直流電圧を印加する。電源813,823,833,843からコイル812,822,832,842に印加される直流電圧は、互いに同じ強さであるのが好ましい。このような電圧をコイル812,822,832,842に印加すると図12(a)に示すような状態で可動部2が静止する。
【0085】
逆に、コイル812,822,832,842の永久磁石811,821,831,841側がそれぞれS極となる状態となるように電源813,823,833,843からコイル812,822,832,842に直流電圧を印加すると、図12(b)に示すような状態で可動部2が静止する。
このように、可動部2を自然状態とは異なる位置に維持することができる。このような駆動によれば、例えば光反射部22で反射した光の光路を自然状態のときに対してずらすことができるため、例えば、光スキャナー1を光スイッチとして利用するときに特に有効である。
【0086】
また、例えば、光スキャナー1がプロジェクター等の画像形成装置に組み込まれている場合に、光源から異常なレーザーが出射されるなどの理由から、レーザーの装置外部への出射を停止しなければならない場合に、可動部2を自然状態とは異なる位置(レーザーの光路と交わらない位置)に退避させることにより、光反射部22によるレーザーの反射を防止する。これにより、装置外部へのレーザーの出射を防止することができる。また、可動部2を変位させることにより光反射部22で反射されたレーザーの光路を変更することにより、装置外部へのレーザーの出射を防止してもよい。これにより、このような問題を解決するための安全機構を別途組み込まなくてもよくなり、画像形成装置の製造工程が簡易化されるとともに、製造コストを削減することができる。
【0087】
このような可動部2の静止駆動を応用し、コイル812,822,832,842に印加する直流電圧の強さを互いに異ならせることにより、可動部2を自然状態に対して傾けた状態で維持することもできる。また、コイル812,822,832,842に印加する直流電圧の強さを、それぞれ独立して、かつ経時的に変化させることにより、可動部2を連続的または段階的に不規則に変位させることもできる。このような駆動方法は、例えば、光反射部22で反射した光をベクタースキャンする時に特に有効である。
以上、光スキャナー1の駆動について詳細に説明した。
【0088】
このような光スキャナー1では、可動部2の回動中心軸Y1まわりの回動と回動中心軸X1まわりの回動とを同じ機構で行うことができる。また、光スキャナー1では、可動部2の回動中心軸Y1まわりの回動と回動中心軸X1まわりの回動とを独立して行うことができる。すなわち、光スキャナー1では、回動中心軸Y1の回動が回動中心軸X1まわりの回動に影響を受けず、逆に、回動中心軸X1の回動も回動中心軸Y1まわりの回動に影響を受ない。そのため、光スキャナー1によれば、回動中心軸Y1および回動中心軸X1のそれぞれの軸まわりに可動部2を安定して回動させることができる。
【0089】
また、前述したように、光スキャナー1では、可動部2の回動中心軸Y1まわりの回動は、可動部側可動梁522,722がその中心軸まわりに捩じり変形することによって許容され、可動部2の回動中心軸X1まわりの回動は、可動部側可動梁422,622がその中心軸まわりに捩じり変形することにより許容される。このように、各連結部4,5,6,7が中心軸まわりに捩じり変形可能な可動部側可動梁422,522,622,722を有しているため、可動部2を回動中心軸Y1,X1のそれぞれの軸まわりにスムーズに回動させることができる。
【0090】
さらには、光スキャナー1では、可動部側可動梁422,522,622,722が直接、可動部2に接続されているため、よりスムーズに、可動部2を回動中心軸Y1,X1のそれぞれの軸まわりに回動させることができたり、Z軸方向へ振動させたりすることができる。
また、光スキャナー1では、連結部4において、前述のように捩じり変形する可動部側可動梁422と変形させたくない変位部側可動梁423との間に屈曲部421を設けている。そのため、前述の捩じり変形により生じた応力は、屈曲部421の変形部4211,4212や接続部4214,4215が変形することにより吸収・緩和され、変位部側可動梁423に伝わらない。すなわち、屈曲部421を設けることにより、可動部2の回動中に変位部側可動梁423がその中心軸まわりに捩じり変形してしまうのを確実に防止することができる。このことは、連結部4以外の他の連結部5,6,7についても同様である。そのため、可動部2を回動中心軸Y1,X1のそれぞれの軸まわりにスムーズに回動させることができる。
【0091】
さらには、各変位部側可動梁423,523,623,723の破壊が効果的に防止される。すなわち、棒状の部材において、自然状態からZ軸方向の応力が加わったときの破壊強度よりも、中心軸まわりの捩じり変形が生じている状態からZ軸方向の応力が加わったときの破壊強度の方が低いことが技術的に明らかになっている。そのため、上述のように、屈曲部421,521,621,721を設け、変位部側可動梁423,523,623,723に捩じり変形を生じさせないことにより、変位部側可動梁423,523,623,723の破壊を効果的に防止することができる。
【0092】
また、連結部4において、変位部側可動梁423が実質的に変形しないため、変位部41の回動によって生じる応力を効率よく可動部2の回動に用いることができる。このことは連結部5,6,7についても同様である。そのため、可動部2を大きい回動角度でしかも省電力で回動させることができたり、大きい振幅でZ軸方向に振動させたりすることができる。
【0093】
また、連結部4において、屈曲部421が非変形部4213を有しているため、この非変形部4213を軸にして可動梁42を屈曲させることができる。このことは、連結部5,6,7についても同様である。そのため、各連結部4,5,6,7の可動梁42,52,62,72を簡単かつ確実に屈曲させることができ、可動部2を安定して回動、振動させることができる。
【0094】
また、連結部4において、屈曲部421が可動部側可動梁422と連結する変形部4211と、変位部側可動梁423と連結する変形部4212とを有し、可動梁42の屈曲時に、変形部4211,4212がその中心軸まわりに捩じり変形することにより、屈曲により発生する応力を効果的に緩和している。このことは、連結部5,6,7についても同様である。そのため、各連結部4,5,6,7の可動梁42,52,62,72を確実に屈曲させることができるとともに、可動梁42,52,62,72の破壊を防止することができる。すなわち、光スキャナー1を安定して駆動することができる。
【0095】
また、連結部4において、屈曲部421が一対の変形部4211,4212を有しているため、次のような効果も発揮することができる。すなわち、例えば、通電によりコイル812から発生する熱や光反射部22に照射される光によって生じる熱等による可動部側可動梁422および変位部側可動梁423の熱膨張を、変形部4211,4212が変形することにより許容することができる。このことは、連結部5,6,7についても同様である。そのため、光スキャナー1は、振動基板11に応力が残留してしまうのを防止または抑制することができ、温度によらずに所望の振動特性を発揮することができる。
【0096】
本実施形態によれば、貫通孔411に挿通された永久磁石811が、アライメント面41X,41Yに固定されることにより、永久磁石811を変位部41の所望の位置に位置決めして固定することができる。詳しくは、永久磁石811のX軸方向寸法の中心およびY軸方向寸法の中心を、回動中心軸X1,Y2の交点と一致させることができる。これにより、電源813,833からコイル812,832に交番電圧を印加することにより、永久磁石811が傾斜し、回動中心軸Y2からずれることなく、駆動梁43を捩じり変形させつつ、変位部41が回動中心軸Y2まわりに安定して傾斜する。これにより、可動梁42は、回動中心軸X1からずれて傾いた屈曲をすることなく、可動部2を安定して回動させることができる。同様に、永久磁石821,831,841のX軸方向寸法の中心およびY軸方向寸法の中心を、回動中心軸X2,Y1(X1,Y3、およびX3,Y1)の交点と一致させることができるので、上述のように可動部2を回動させることができる。
【0097】
これによれば、段差部45は2つのアライメント面41X,41Yとともに貫通孔411を構成する面によって囲まれた範囲の外側に形成されているので、貫通孔411への永久磁石811の挿通を容易にすることができる。また、変位部41の貫通孔411、特に2つのアライメント面41X,41Yに、接着剤44などにより固定する際に、永久磁石811をアライメント面41X,41Yに押し付けて、接着剤44が2つのアライメント面41X,41Y、およびに段差部45に広がり、アライメント面41X,41Yと、永久磁石811との間を均等にすることができ、永久磁石811を変位部41の所望の位置に位置決めして固定することができる。
【0098】
これによれば、2つのアライメント面41X,41Yを間違うことなく正確に確認することができ、永久磁石811が、アライメント面41X,41Yに固定されることにより、永久磁石811を変位部41の所望の位置に位置決めして固定することができる。
【0099】
これによれば、変位部41の貫通孔411、特に2つのアライメント面41X,41Yに、接着剤44などにより固定する際に、永久磁石811をアライメント面41X,41Yに押し付けるので、永久磁石811を変位部41の所望の位置に位置決めして固定することができる。
【0100】
<第2実施形態>
第2実施形態の光スキャナーについて、図13および図5を参照して説明する。
第2実施形態の光スキャナーは、第1実施形態とほぼ同様の構成であるが、貫通孔の構成が相違する。このため、同様の構成および製造方法については、同一の符号を付与し、構成および製造方法などの説明を省略する。
【0101】
図13に示すように、貫通孔411は、貫通孔411は、アライメント面41X,41Y、および逃げ部46を備えている。逃げ部46は、隣り合う2つのアライメント面41X,41Yに接して備えている。そして、この逃げ部46のほかに、アライメント面41X,41Yとともに貫通孔411を構成する面に接するように、逃げ部46を3つ備えている。また、逃げ部46は、アライメント面41X,41Y、貫通孔411を構成する面に備えられていてもよい。
【0102】
逃げ部46に、接着剤44が注入または塗布されている。また、貫通孔411、特にアライメント面41X,41Yに、接着剤44が注入または塗布されている。ここで、接着剤44は、アライメント面41X,41Yとともに貫通孔411を構成する面に、注入または塗布されていてもよい。
【0103】
また、図13(a)では逃げ部46のXY平面視での大きさを同一に示したが、これに限定することなく、それぞれの逃げ部46の大きさは異なっていてもよく適宜決定することができる。逃げ部46のXY平面視形状は、図13(a)に示した矩形に限定されず、例えば、三角形や五角形以上の多角形であってもよく、また円形や楕円形など曲線により構成される形状であってもよい。また、図13(a)でX軸方向およびY軸方向の寸法で示される逃げ部46の長さ、図13(b)でZ軸方向の寸法で示される逃げ部46の深さ、ならびに図13(b)に示す逃げ部46の断面形状、および注入または塗布される接着剤44の量は、永久磁石811と変位部41とを固定する接着強度の決定などにより、適宜決定することができる。また、逃げ部46は、貫通孔411と同様に変位部41を貫通していてもよい。さらに、逃げ部46は、4つ備えると図示および説明したが、これに限るものではなく、逃げ部46は、隣り合う2つのアライメント面41X,41Yに接して、少なくとも1つ備えていればよい。
【0104】
次に、図5を参照して、永久磁石811を変位部41に固定する方法について説明する。
【0105】
塗布工程(S101)を実施し、逃げ部46に、接着剤44を注入または塗布する。そして、貫通孔411、特にアライメント面41X,41Yに、接着剤44が注入または塗布されている。ここで、接着剤44は、アライメント面41X,41Yとともに貫通孔411を構成する面に、注入または塗布されていてもよい。
【0106】
次に、第1実施形態と同様にして、挿通工程(S102)、押付工程(S103)、硬化工程(S104)を実施する。これにより、永久磁石811を貫通孔411に固定する。これにより、永久磁石811は、接着剤44によって、変位部41に固定される。
【0107】
そして、着磁工程(S105)を実施し、永久磁石811のZ軸方向の一端がN極となり、その反対側がS極となる。
【0108】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏するとともに以下の効果を奏することができる。
【0109】
隣り合う2つのアライメント面41X,41Yに接して形成された逃げ部により、貫通孔411と永久磁石811との位置決めを、隣り合う2つのアライメント面に接する部分により阻害されない。これにより、永久磁石811が、アライメント面41X,41Yに固定されることにより、永久磁石811を変位部41の所望の位置に位置決めして固定することができる。
【0110】
<第3実施形態>
第3実施形態の画像形成装置について、図14を参照して説明する。
第3実施形態の画像形成装置は、第1および第2実施形態の光スキャナーを備えている。このため、同様の構成および製造方法については、同一の符号を付与し、構成および製造方法などの説明を省略する。
【0111】
以上説明したような光スキャナー1は、例えば、プロジェクター、レーザープリンター、イメージング用ディスプレイ、バーコードリーダー、走査型共焦点顕微鏡などの画像形成装置に好適に適用することができる。図14は、本発明の画像形成装置の概要を示す模式図である。図14には、画像形成装置としてのプロジェクター200が示されている。ここでは、スクリーン280の長手方向を「横方向」といい、長手方向に直角な方向を「縦方向」という。プロジェクター200は、レーザーなどの光を出射する光源装置210と、複数のダイクロイックミラー220と、光スキャナー1とを有している。
【0112】
光源装置210は、赤色光を出射する赤色光源装置211と、青色光を出射する青色光源装置212と、緑色光を出射する緑色光源装置213とを備えている。各ダイクロイックミラー220は、赤色光源装置211、青色光源装置212、緑色光源装置213のそれぞれから出射された光を合成する光学素子である。このようなプロジェクター200は、図示しないホストコンピューターからの画像情報に基づいて、光源装置210から出射された光をダイクロイックミラー220で合成し、この合成された光が光スキャナー1によって2次元走査され、固定ミラー250を介してスクリーン280上にカラー画像を形成するよう構成されている。
【0113】
2次元走査の際、光スキャナー1の可動部2が、Y軸方向の軸まわりに回動し、可動部2の光反射部22で反射した光がスクリーン280の横方向に走査(主走査)される。一方、光スキャナー1の可動部2が、X軸方向の軸まわりに回動し、光反射部22で反射した光がスクリーン280の縦方向に走査(副走査)される。光スキャナー1による光の走査は、いわゆるラスタースキャンによって行ってもよしい、いわゆるベクタースキャンによって行ってもよい。特に、光スキャナー1においては、その構成上、ベクタースキャンに適しているため、ベクタースキャンによって光を走査するのが好ましい。
【0114】
光スキャナー1にとって好ましいベクタースキャンとは、光源装置210から出射された光を、スクリーン280に対し、該スクリーン280上の異なる2点を結ぶ線分を順次形成するように走査する手法である。すなわち、微少な直線を集合させることにより、スクリーン280に所望の画像を形成する手法である。光スキャナー1では、可動部2を、Y軸方向の軸まわりおよびX軸方向の軸まわりに、不規則に且つ連続的に変位させることが可能であるため、ベクタースキャンに特に適している。
【0115】
具体的に説明すれば、図14に示すような文字(aおよびb)をベクタースキャンにて描画する場合には、光源装置210から出射された光をそれぞれの文字を書くように走査する。この際、光スキャナー1が有する可動部2のX軸方向の軸まわりの姿勢(回動)とY軸方向の軸まわりの姿勢(回動)とをそれぞれ制御して、走査軌跡230に沿って不規則に光を走査することができ、aおよびbの文字を一筆書きのように描画することができる。このようなベクタースキャンによれば、ラスタースキャンのように、スクリーン280の全面に光を走査させなくてよいため、効率的に画像を描画することができる。なお、図14では、ダイクロイックミラー220で合成された光を光スキャナー1によって2次元的に走査した後、その光を固定ミラー250で反射させてからスクリーン280に画像を形成するように構成されているが、固定ミラー250を省略し、光スキャナー1によって2次元的に走査された光を直接スクリーン280に照射してもよい。
【0116】
本実施形態によれば、第1および第2実施形態と同様の効果を奏することが可能な画像形成装置としてのプロジェクター200を提供することができる。
【0117】
なお、上記課題の少なくとも一部を解決できる範囲での変形、改良などは前述の実施形態に含まれるものである。
【0118】
たとえば、段差部45は、アライメント面41X,41Yに対して、アライメント面41X,41Yとともに貫通孔411を構成する面によって囲まれた範囲の外側に形成されているとして、アライメント面41X,41Yとともに貫通孔411を構成する面は、上述の「囲まれた範囲の外側」ではなく、同一面であってもよい。さらに、段差部45のXY平面視形状は、図4(a)に示した矩形に限定されず、例えば、三角形や五角形以上の多角形であってもよく、また円形や楕円形など曲線により構成される形状であってもよい。
【0119】
貫通孔411は、図13に示す形状に、図4に示した段差部45を備えた形状であってもよい。あるいは、貫通孔411は、図4に示した段差部45、および図13に示した逃げ部46を備えない形状であってもよく、この場合永久磁石811は、アライメント面41X,41Yとともに貫通孔411を構成する面に、または変位部41のXY面に、接着剤44によって固定され、変位部41に固定されている。
また、貫通孔411のアライメント面41X,41Yは、永久磁石811,821,831,841のX軸方向の寸法中心およびY軸方向の寸法中心が、回動中心軸X1,Y2(X2,Y1、およびX1,Y3、およびX3,Y1)の交点と一致するように設定されているとしてが、これに限るものではない。たとえば、アライメント面41X,41Yに加えて、貫通孔411を構成する他の面によって、永久磁石811,821,831,841のX軸方向の寸法中心および/またはY軸方向の寸法中心が、回動中心軸X1,Y2(X2,Y1、およびX1,Y3、およびX3,Y1)の交点と一致するように設定されているとしてもよい。
【0120】
そして、アライメント面41X,41Yの配置は、図4および図13に示した配置に限定されることなく、回動中心軸X1,Y2(X2,Y1、およびX1,Y3、およびX3,Y1)の交点を通るZ軸に対して、XY平面視にて回転させた配置であってもよい。
アライメント面41X,41Yの配置について、言い換えると、永久磁石811のX軸方向の寸法中心およびY軸方向の寸法中心が、それぞれ回動中心軸X1,Y2の交点と一致する配置であればよい。そして、永久磁石821のX軸方向の寸法中心およびY軸方向の寸法中心が、回動中心軸X2,Y1の交点と一致する配置であればよい。また、永久磁石831のX軸方向の寸法中心およびY軸方向の寸法中心が、回動中心軸X1,Y3の交点と一致する配置であればよい。さらには、永久磁石841のX軸方向の寸法中心およびY軸方向の寸法中心が、回動中心軸X3,Y1と一致する配置であればよい。
この回転させた配置の一例として、図13に示したアライメント面41X,41Yを、回動中心軸X1,Y2の交点を通るZ軸に対して、XY平面視にて時計回りに45度回転させた配置を、図15に示す。これによっても、上述の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0121】
また、貫通孔411のXY平面視形状は、図1、図2、および図4に示した矩形に限定されず、例えば、アライメント面41X,41Yを有する形状であれば三角形や正方形や五角形以上の多角形、またはアライメント面41X,41Yと円弧とを備える扇形であってもよく、適宜決定することができる。
【0122】
また、永久磁石811,821,831,841のXY平面視形状としては、図1および図3、図4、および図13で矩形と図示したが、特に限定されず、例えば、三角形や正方形や五角形以上の多角形であってもよいし、図4、図13、および図15に破線で図示する円形であってもよい。
【0123】
さらに、コイル固定部、変位手段、応力緩和部、振動基板、および可動板の構成および形状、ならびに振動基板を図示上下に反転して光反射部材を取り付けるなどは、前述の実施形態を限定するものではなく、適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0124】
1…光スキャナー、2…可動部、3…支持部、4,5,6,7…連結部、8…変位手段、11…振動基板、12…基台、13…固定部、20…光反射部材、21…面、22…光反射部、23…支持部材、41,51,61,71…変位部、41X,41Y…アライメント面、42,52,62,72…可動梁、43,53,63,73…駆動梁、44…接着剤、45…段差部、46…逃げ部、81…第1の変位手段、82…第2の変位手段、83…第3の変位手段、84…第4の変位手段、85…コイル固定部、121…基部、122…枠部、200…プロジェクター、210…光源装置、211…赤色光源装置、212…青色光源装置、213…緑色光源装置、220…ダイクロイックミラー、230…走査軌跡、250…固定ミラー、280…スクリーン、411…貫通孔、421,521,621,721…屈曲部、422,522,622,722…可動部側可動梁、423,523,623,723…変位部側可動梁、810,820,830,840…駆動部、811,821,831,841…永久磁石、812,822,832,842…コイル、813,823,833,843…電源、851…突出部、4213,5213,6213,7213…非変形部、4214,4215,5214,5215,6214,6215,7214,7215…接続部、X1,X2,X3,Y1,Y2,Y3,Y4…回動中心軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光反射面を有する光反射部材と、
前記光反射部材を支持する支持部材と、
前記支持部材を介して前記光反射部材を支持する可動部と、
前記可動部から前記光反射面に沿って延長する少なくとも一対の可動梁と、
前記可動梁の延長方向に連結する変位部と、
前記変位部を駆動する駆動部と、
前記変位部から前記可動梁に直交して前記光反射面の略面方向に延長する2つの駆動梁と、
前記駆動梁が連結される支持部とを備え、
前記変位部に形成された少なくとも2つのアライメント面と、
少なくとも2つの前記アライメント面が交差して形成された貫通孔とを備え、
前記貫通孔に挿通され前記アライメント面に固定される永久磁石とを備えることを特徴とする光スキャナー。
【請求項2】
請求項1に記載の光スキャナーにおいて、
複数の前記アライメント面とともに前記貫通孔を構成する面によって囲まれた範囲の外側に段差部が形成されていることを特徴とする光スキャナー。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光スキャナーにおいて、
隣り合う2つの前記アライメント面に接して、逃げ部が形成されていることを特徴とする光スキャナー。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の光スキャナーにおいて、
前記変位部には、前記アライメント面を示すマークが形成されていることを特徴とする光スキャナー。
【請求項5】
光反射面を有する光反射部材と、
前記光反射部材を支持する支持部材と、
前記支持部材を介して前記光反射部材を支持する可動部と、
前記可動部から前記光反射面に沿って延長する少なくとも一対の可動梁と、
前記可動梁の延長方向に連結する変位部と、
前記変位部を駆動する駆動部と、
前記変位部から前記可動梁に直交して前記光反射面の略面方向に延長する2つの駆動梁と、
前記駆動梁が連結される支持部とを備え、
前記変位部に形成された少なくとも2つのアライメント面と、
少なくとも2つの前記アライメント面が交差して形成された貫通孔とを備え、
前記貫通孔に挿通される前記永久磁石とを備える光スキャナーの製造方法であって、
前記貫通孔に前記接着剤を塗布する塗布工程と、
前記貫通孔に永久磁石を挿通する挿通工程と、
前記永久磁石をアライメント面に押し付ける押付工程とを備えることを特徴とする光スキャナーの製造方法。
【請求項6】
光反射面を有する光反射部材と、
前記光反射部材を支持する支持部材と、
前記支持部材を介して前記光反射部材を支持する可動部と、
前記可動部から前記光反射面に沿って延長する少なくとも一対の可動梁と、
前記可動梁の延長方向に連結する変位部と、
前記変位部を駆動する駆動部と、
前記変位部から前記可動梁に直交して前記光反射面の略面方向に延長する2つの駆動梁と、
前記駆動梁が連結される支持部とを備え、
前記変位部に形成された少なくとも2つのアライメント面と、
少なくとも2つの前記アライメント面が交差して形成された貫通孔とを備え、
前記貫通孔に挿通され前記アライメント面に固定される永久磁石とを備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−58560(P2012−58560A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202768(P2010−202768)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】