説明

光デバイスおよびこれを用いた光モジュール

【課題】従来の構成の光合分波器のような光モジュールはフェルールおよびレンズのサイズが大きく、小型化が難しいという問題があった。
【解決手段】 光学的に結合される少なくとも2つの光ファイバと、前記光ファイバ間に配置される光学素子13と、光学素子13と前記光ファイバの端部との間に介在されるとともに前記光ファイバの前記端部に融着接続された上、光学素子13を支持する透光性部材14とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光アイソレータや光フィルタなどの光学素子を有し、光を入出力する光ファイバを2本以上有してなる光アイソレータや、波長の異なる複数の光を合波、あるいは分波する光合分波器などの光デバイス、およびこのような光デバイスを備える光モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、情報の大容量化に伴い光通信用伝送装置の導入が進んでおり、光通信用伝送装置に使用される光アイソレータや光合分波器等の光モジュールの要求が高まっている。ここでは、従来の光合分波器の代表的な構成を図7に示す(例えば特許文献1参照)。
【0003】
図7に示した光合分波器31は、光ファイバ32、光ファイバ33を保持する2芯フェルール35、光ファイバ34を保持する1芯フェルール37、2芯フェルール35と1芯フェルール37との間に配置された光フィルタ38、および光フィルタ38と両フェルール間に配置された2個のレンズ36a、36bとから構成されている。光合分波器は、単一の光ファイバに入射された複数の異なる波長帯域を有する光を、その波長帯域に応じて複数の光ファイバに分波する機能、もしくは、それぞれ異なる波長帯域の光が入射された複数の光ファイバから出射された光を単一の光ファイバに入射することによって合波する機能を有する。
【0004】
この光合分波器31であれば、たとえば光ファイバ32に2つの異なる波長の光λ1、λ2が入射された場合、まず、光ファイバ2から出射された光λ1、λ2がレンズ36aに入射される。このレンズ36a、36bは出射した光を平行光に変換する機能を有するため、レンズ36aから出射した光はその光路が曲げられて光フィルタ38に入射される。ここで光フィルタ38は、波長λ1の光を透過し、一方で、波長λ2の光を反射する特性を有するものが使用されているため、レンズ36aから出射された光のうち、波長λ1の光は透過し、波長λ2の光は反射される。そして、光フィルタ38で反射された波長λ2の光はレンズ36aに再び入射し、レンズ36aを介して光ファイバ33に入射され、一方で、光フィルタ38を透過した波長λ1の光はレンズ36bで集光され、光ファイバ34に入射される。このように、光合分波器31は、光ファイバ32に入ったλ1とλ2の異なる波長の光をそれぞれ別の光ファイバに分離する光分波器としての機能を有し、一方で、上記した光の入出力を逆にする、すなわち、光ファイバ33、34にそれぞれ入射される光λ1、λ2の光を光ファイバ22に合波して入射することによって、光合波器としての機能を有する。
【0005】
また、他の光合分波器の形態としては、図8に示めされたように、基板49上に複数方向に分岐する溝を形成して、その溝内に光ファイバ42、43、44を実装し、上記溝の交点に形成された溝に光フィルタ48を実装し透光性樹脂で接着固定する構成である(例えば特許文献2参照)。この光合分波器41は、2つの波長λ1、λ2の光が光ファイバ42に入射されると、光フィルタ48で反射された光λ2は光ファイバ43へ入射され、一方で、光フィルタ48を透過した光λ1は、光ファイバ44へ入射されるため、図7に示した光合分波器と同様の機能を有している。
【特許文献1】特開平8−271760号公報
【特許文献2】特開平2−100005号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、光合分波器31のような構成による光デバイスでは、フェルールおよびレンズのサイズが大きいため、デバイスの小型化が難しいという問題があった。また、このような光分合波器31は、その小型化を図るためにレンズのサイズを小さく設計すると、隣り合う光ファイバの間隔も狭くなるため、光フィルタで分波もしくは合波するための光が隣り合う光ファイバにわずかに漏れて入射し、アイソレーション特性が低下するという問題があった。さらに、このような光分合波器では、光フィルタを透過もしくは反射する光を効率良く各光ファイバに入射させる必要があり、レンズ、光ファイバ、および光フィルタ等の構成部品を精密に調芯する作業を要するため、量産化が困難であった。
【0007】
また、光合分波器41のような構成による光デバイスでは、光ファイバ42、43、44を基板48上に形成された溝内に接着剤を介して実装するため、基板48が必須になるとともに光ファイバ42、43、44の長さに応じて基板48を大きくする必要があり、デバイスの小型化が困難であった。また、光合分波器41が光の低損失を強くが求められる仕様において利用される場合、光ファイバから出射される光を集光するためのレンズが用いられていないため、光ファイバ42から出射された光が光フィルタ48を透過して光ファイバ44に結合する光学系においては、光フィルタ48の厚みにより光のビーム径が広がるため、光ファイバ同士の光の結合損失が大きく、また、光ファイバ42から出射された光が光フィルタ48で反射して光ファイバ43に結合する光学系においては、光ファイバ自体のクラッド径の厚み分、ビームが広がるため光の損失が大きくなる問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の光デバイスは、光学的に結合される少なくとも2つの光ファイバと、前記光ファイバ間に配置される光学素子と、前記光学素子と前記光ファイバの端部との間に介在されるとともに前記光ファイバの前記端部に融着接続された上、前記光学素子を支持する透光性部材とを備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明において、前記光ファイバの前記光学素子に臨む端部は、前記透光性部材の内部に融着接続されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明において、前記透光性部材の前記光ファイバの前記光学素子に臨む端部の周面と連続して接続されている部位が、円弧状であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明において、前記透光性部材は、前記光学素子を支持するための底面部を有する凹部が設けられていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明において、前記光ファイバは、前記光学素子に臨む端部に接合されたグレーデッドインデックスファイバを備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明において、前記光ファイバは、前記グレーデッドインデックスファイバの前記光学素子に臨む端部に接合されたコアレスファイバを備えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明において、前記光学素子は、入射される光の偏波面を回転させるファラデー回転子を含むアイソレータ素子であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明において、前記光学素子は、入射される光を合波および/または分波するための光フィルタであることを特徴とする。
【0016】
本発明の光モジュールは、発光素子と、該発光素子から出射された光が一方の光ファイバに入射され、かつ他方の光ファイバから光が出射される前記の光デバイスと、該光デバイスから出射された光を受光するための受光素子と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の構成によれば、光学的に結合される少なくとも2つの光ファイバと、前記光ファイバ間に配置される光学素子と、前記光学素子と前記光ファイバの端部との間に介在されるとともに前記光ファイバの前記端部に融着接続された上、前記光学素子を支持する透光性部材とを備えている。これによって、本発明の光デバイスでは、前記透光性部材と光ファイバとが融着接続によって固定されているため、光ファイバを保持するような保持部材が必須ではなくなり、部品の小型化を実現できる。
【0018】
また、本発明の光デバイスにおいては、前記光ファイバの前記光学素子に臨む端部が前記透光性部材の内部に融着接続されていることが好ましい。このような構成によれば、前記透光性部材と接する前記光ファイバの表面積を増加させることができるため、前記光ファイバと前記透光性部材とを、より強固に接続することができる。
【0019】
また、本発明の光デバイスにおいては、前記透光性部材の前記光ファイバの前記光学素子に臨む端部の周面と連続して接続されている部位が、円弧状であることが好ましい。このような構成によれば、たとえば前記光ファイバに対して外部から曲げや引っ張り等の応力が作用しても、前記光ファイバと前記透光性部材との接続部位に生じる応力集中を緩和することができるため、上記接続部位に発生するクラック等を抑制することができる。
【0020】
また、本発明の光デバイスにおいては、前記透光性部材に前記光学素子を支持するための底面部を有する凹部が設けられていることが好ましい。このような構成によれば、前記光学素子を容易に実装できるとともにその実装面積が大きくなるため、前記光学素子をより強固に前記透光性部材に固定することができる。
【0021】
また、本発明の光デバイスにおいては、前記光ファイバが前記光学素子に臨む端部にグレーデッドインデックスファイバを備えることが好ましい。このような構成であれば、グレートインデックスファイバのレンズ効果により、前記透光性部材内で光路長を調整して最適な光結合状態を維持するとともに、従来のレンズを使用することなく光学調整が可能となるため、部品の小型化を実現できる。
【0022】
さらに、本発明の光デバイスにおいては、前記グレーデッドインデックスファイバの前記光学素子に臨む端部にコアレスファイバを備えることにより、たとえば光路長を長く設計した場合においても、前記透光性部材を極力小さな厚みで設定することが可能となるため、前記透光性部材内で生じる光の損失を低減することが可能である
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下においては、本発明の光デバイスについて、図面を参照しつつ説明する。
【0024】
図1は、本発明の光デバイスの一種である光合分波器の第1の実施形態を示す平面図である。本発明の第1の実施形態に係る光合分波器100は、シングルモードファイバ10a、10b、10c、グレーデッドインデックスファイバ11a、11b、11c、コアレスファイバ12a、12b、12cが接合された光ファイバ17a、17b、17cと支持基板13aに光学薄膜13bが形成されてなる光フィルタ13(光学素子に相当)と、透光性部材14と、を備えている。
【0025】
シングルモードファイバ10a、10b、10cは、屈折率の高いコア部と該コア部の外周を被覆するクラッド部からなり、コア部とクラッド部との界面における屈折率差による反射を利用することによってコア部内で光を伝送するものであり、たとえば円柱状の石英等から構成され、クラッド部の外径がたとえば125μm程度、コア部の径が10μm程度のものが用いられる。
【0026】
グレーデッドインデックスファイバ11a、11b、11c、はその軸対称にほぼ2乗の屈折率分布を備えるファイバであり、屈折率分布型レンズとして使用することができるため、光ファイバ17a、17b、17cから出射する、もしくは入射する光を集光あるいはコリメートする機能を有する。グレーテッドインデックスファイバ11a、11b、11cは、たとえば円柱状の石英等から構成され、クラッド部の外径がたとえば125μm程度(上述したシングルモードファイバと同等)、コア部の径が50μm程度であり、コア部に上述の屈折率分布有する。そして、これらのグレーテッドインデックスファイバ11a、11b、11cとシングルモードファイバ10a、10b、10cは、たとえばそれぞれのファイバの中心同士が一致する様に位置調整した後、アーク放電等の熱による融着によって接合される。
【0027】
コアレスファイバ15a、15b、15cは、略均一な屈折率分布を備えるファイバであり、その材質はたとえば石英ガラスからなり、屈折率は1.45程度、光の透過損失は0.25×10−6dB/mm以下であり、このように光の透過損失が比較的低いものが好ましい。このコアレスファイバ15a、15b、15cは、外径が光ファイバ(シングルモードファイバ)およびグレーテッドインデックスファイバと等しく約125μmであり、先に接合されたとグレーテッドインデックスファイバ11a、11b、11cの先端に、たとえばそれぞれのファイバの中心同士が一致する様に位置調整した後、アーク放電等の熱による融着によって接合され、それぞれ光ファイバ17a、17b、17cとして作製される。
【0028】
光フィルタ13は、たとえば透光性のある支持基板13aの一方の主面に光学薄膜13bが施されており、この光学薄膜13bは異なる複数の波長領域の光を含んでなる光を波長領域ごとに選択的に分離(分波)する機能を有する。具体的には、光フィルタ11は、一方の波長領域の光を反射し、他方の波長領域の光を透過させることによって波長領域ごとに光を分波する、即ち、所定波長領域の光を反射する機能を有するものである。本発明の第1の実施形態において、光フィルタ13は、シングルモードファイバ10aに入射され(図1(a)の実線矢印参照)、コアレスファイバ12aから出射された2つの波長領域の光λ1、λ2が入射されると、一方の波長領域λ1の光を透過してコアレスファイバ12bに入射され、一方で、他方の波長領域λ2の光を反射することによってコアレスファイバ12cに入射させることによって光を分波することができる。なお、本発明の第1の実施形態においては、光の入出力を逆にすると(図1(a)の点線矢印参照)、光ファイバ10b、10cに入射される光を、光フィルタ13を介して合波した後に、光ファイバ10aに入射させることができる。
【0029】
この光フィルタ13の一部を構成する支持基板13aは透光性をものであり、たとえば光学ガラス(硼珪酸ガラスや白板ガラス)や石英ガラスからなり、屈折率は1.45〜1.55程度のものが用いられる。また、そのサイズは光の有効径以上あればよく、たとえば0.5mm角、厚みは0.3mmである。また、この光フィルタ13の一部を構成する光学薄膜13bは、たとえば二酸化ケイ素と二酸化チタン等の屈折率の異なる2種類以上の誘電体を交互に積層して構成される多層膜である。この誘電体多層膜は、誘電体膜間の繰り返しの反射干渉により波長選択性を示し、その膜厚は、反射させる光の波長の1/4波長分に設定される。このように、誘電体膜の膜厚を1/4波長分とすることにより、各誘電体膜界面における多重反射において、ある特定の波長の光の位相が一致し、干渉して強めあうことで波長選択性のフィルタが実現する。そして、この光フィルタ13では、光学薄膜13bが支持基板13aの表面に形成されているため、たとえば支持基板13aの一方の主面に蒸着、スパッタリング等の方法によって光学薄膜13bを容易に作製することができる。なお、上述した光フィルタ13は、支持基板13aの一主面に光学薄膜13bが形成された構成であるが、本発明においては、上述した形態に限定されるものではなく、たとえば光学薄膜13bが2枚の支持基板13aで挟持させた形態、および透光性のある基体内に光学薄膜13bを配した形態であってもよい。
【0030】
透光性部材14は、コアレスファイバ15a、15b、15cと光フィルタ13との間に配置され、光フィルタ13を支持するとともに融着によって接続される光ファイバ17a、17b、17cを固定する機能を有する。透光性部材14の材質には、たとえば光ファイバのコア部とクラッド部を主として構成する石英ガラス(融点:1700〜1800℃)よりも融点の低い光学ガラス、たとえば硼珪酸ガラス(融点:500〜700℃)や白板ガラス(融点:500〜700℃)などが挙げられ、その屈折率は、融着接続される光ファイバの屈折率と同等の1.45〜1.55程度であることが好ましい。
【0031】
透光性部材14の形状は、光フィルタ13を支持するとともに融着接続された光ファイバ同士が光フィルタ13を介して光学結合可能な形態であれば、特に限定されるものではく、たとえば図1(a)に示すように、光フィルタ13の両面から把持する形状であってもよいが、外形が円状もしくは多角形状の枠体形状等でもよく、また、下記に詳述するが、ブロック状または球体状の一部に凹部を設けた形状であってもよい。
【0032】
また、本発明では、透光性部材14で光フィルタ13を支持するとともに光の反射防止のため、透光性部材14と光フィルタ13との間に、透光性部材14および光フィルタ13に対して屈折率が整合された光学接着剤(図示なし)を充填するのが好ましい。この光学接着剤は、光透過性のあるエポキシ樹脂、アクリル系樹脂、またはシリコン系樹脂のような材質を使用することができる。なお、エポキシ樹脂、シリコン樹脂およびアクリル系樹脂は、その添加物によって紫外線硬化または熱硬化するものであり、これらの併用硬化を利用してもよい。
【0033】
この透光性部材14の作製方法としては、たとえば硼珪酸ガラスで構成されていれば、ダイシング等で所望の形状に仕上げることによって作製される。
【0034】
また、透光性部材14とは、使用する波長の光(たとえば1550nm)に対する透光性部材1cmあたりの光の減衰量(損失)が、投入した光の量に対して6dB以下のものである。望ましくは3dB以下のものが好適に用いられ、最適には0.5dB以下のものを指す。さらに、この光の減衰量の測定方法としては、光源(たとえばLEDもしくはLD)からの光をレンズを介して平行ビームとし、透光性部材14を透過するように配置し、裏面から出射された光の光量をパワーメータにて測定する。この測定によって得られた光量の比より光の減衰量を算出する。この際、透明性部材14の屈折率により表裏の面での反射損失も含まれて測定される。
【0035】
そして、この透光性部材14には、光ファイバ17a、17b、17cがそれぞれ融着接続されている。この融着接続は、透光性部材14と光ファイバとを互いに接続させる位置に配置し、たとえばアーク放電や、レーザなどによって透光性部材14または光ファイバ17a、17b、17cの少なくとも一方を融解させた後に、冷却して接続される。このような融着接続は、樹脂系の接着剤による接着よりも強固に接続することができるため、光ファイバ17a、17b、17cを保持するための基板が必須ではなくなる。また、たとえば光ファイバ17a、17b、17cに外部から力が作用しても、透光性部材14から光ファイバ17a、17b、17cが脱落するのを抑制することができる。
【0036】
このように、本発明では、透光性部材14に対して直に光ファイバ17a、17b、17cが融着接続されているため、光ファイバ17a、17b、17cを保持するための基板が必須ではなくなる。したがって、本発明では、部品の小型化を容易に実現することができる。
【0037】
また、図1(b)に示すように、光ファイバ17a、17b、17cの光フィルタ13に臨む端部、すなわち、コアレスファイバ15a、15b、15cが透光性部材14の内部で融着接続されることが好ましい。このような構成によれば、透光性部材14と接する光ファイバ17a、17b、17cの表面積を増加させることができるため、光ファイバ17a、17b、17cと透光性部材14とを、より強固に接続することができる。
【0038】
さらに、図1(b)に示すように、透光性部材14の光ファイバ17a、17b、17cの光学素子に臨む端部、すなわち、コアレスファイバ15a、15b、15cの周面と連続して接続されている部位14aが円弧状であることが好ましい。このような構成によれば、たとえば光ファイバ17a、17b、17cに対して外部から曲げや引っ張り等の応力が作用しても、光ファイバ17a、17b、17cと透光性部材14との接続部位に生じる応力集中を緩和することができるため、上記接続部位に発生するクラック等を抑制することができる
次に、本発明の第1の実施形態に係る光合分波器の製造方法について説明する。
【0039】
まず、光ファイバ17aと17cはそれぞれから出射する光が交点を結ぶように固定治具で保持し、たとえば平板状の2枚の透光性部材14を用いる場合、一方の透光性部材14の側面に対して光ファイバ17a、17cを当て付けた後、その接触面に対して、アーク放電または、レーザなどで短い時間で加熱しながら、透光性部材14に対して光ファイバ17a、17cを挿入する。このとき、設計位置は突き当て面に対して少し内側に設定されており、最初の挿入時にはこの設計位置より深く挿入しておき、加熱中に設計位置まで光ファイバ17a、17cを引き戻すことにより所望の位置に固定すると同時に、光ファイバ17a、17cと透光性部材14の界面を円弧状に形成することが可能となる。この溶融加熱の際には、透光性部材14が融解されることによって、局所的ではあるが透光性部材14に変形が生じ、光路となる厚さ方向の寸法が変化するため、あらかじめ作製条件による補正量を見込んでおく必要がある。次に光ファイバ17bを他方の透光性部材14に対して光ファイバ17aと一直線上になる位置にて融着する。最後に、2つの透光性部材14の間に光フィルタ13を屈折率が整合された光学接着剤(図示なし)を介して貼り付けるが。このとき、光ファイバ10aにはλ1、λ2の光を導入しておき、光ファイバ17bと光ファイバ17cの出射端をパワーメータ等で測定しながら、それぞれの光出力が最大となるような位置に調整した後、光学接着剤を硬化させることによって光合分波器100が作製される。この際、光学接着剤によっては硬化の際に収縮するため、位置ズレが発生するのでなるべく薄くなるように構成することが好ましく、また、完全に硬化するまで微妙な位置調整をすることで位置ズレの発生を防ぐことが可能となる。なお、支持基板13aは、一方の透光性部材14として用いることも可能である。
【0040】
以下に、本発明の他の実施形態について、図2〜図4を用いて説明する。なお、図1を参照して先に説明した光分波器1と同様な要素および部材については同一の符号を付してあり、重複説明は省略する。
【0041】
図2は、本発明の光デバイス(光合分波器)の第2の実施形態を示す斜視図である。本発明の第2の実施形態に係る光合分波器200では、透光性部材14の一部に、光フィルタ13を支持するための底面部を有する凹部14bが設けられている点で光合分波器100と異なる。光合分波器200の他の構成については、光合分波器100に関して上述したのと同様である。このような構成によれば、光フィルタ13を容易に実装できるとともにその実装面積が大きくなるため、光フィルタ13をより強固に透光性部材14に固定することができる。
【0042】
このような透光性部材14の凹部14bは、透光性部材14が硼珪酸ガラスで構成されている場合は、たとえばダイシング等で加工することが可能である。この際、凹部14bの光ファイバ側面は光学面となるため、ダイシングや研削等によってその側面の表面粗さを1um以下となる様に加工することが望ましい。
【0043】
また、この凹部14b内に光フィルタ13を配置する際には、光フィルタ13の一方の面に上記した光学接着剤を塗布して凹部14bの側面と接着し、残りの凹部14bの隙間を弾性のある樹脂を埋める構造とすれば、固定時の熱収縮によるズレや完成後の熱膨張による光学接着材の剥離を防止することできる。
【0044】
図3は、本発明の光デバイス(光合分波器)の第3の実施形態を示す平面図である。本発明の第3の実施形態に係る光合分波器300では、光ファイバ17a、17b、17cがそれぞれ平行に配置され、光フィルタ13が2つの光学薄膜を備えている点で光合分波器200と異なる。光合分波器300の他の構成については、光合分波器200に関して上述したのと同様である。この光フィルタ13は、支持基板13aに光学薄膜13bおよび13cが表裏に少し重なるように構成されている。このような光フィルタ13は、たとえば光学薄膜13bを樹脂上に成形した後に樹脂を溶かし、誘電体多層膜からなる光学薄膜13bを支持基板13aの表裏に張り合わせるなどして作製する必要がある。このような構成によれば、光ファイバ17a、17b、17cをそれぞれ平行に近接して配置することができるため、部品の小型化をすることができる。さらに、このように光ファイバ17a、17b、17cがそれぞれ平行に配置されていれば、これらの光ファイバを一括して位置決めして融着することが容易になる。
【0045】
図4は、本発明の光デバイス(光合分波器)の第4の実施形態を示す平面図である。本発明の第3の実施形態に係る光合分波器400では、光合分波器300の光ファイバの数を増やすことで多チャンネル化したものである。光合分波器400では、支持基板13aの片面に、光ファイバの数に対応して複数の光学薄膜13b、13d、13e、13fを配置し、一方で、反対の面に1つの大きな薄膜13cを配置してなる光フィルタ13が用いられている。
【0046】
このときコアレスファイバ12b、12c、12d、12eに対して光路長がグレーデッドインデックスファイバ11aからそれぞれほぼ同一となるように調整され、光ファイバ17b、17c、17e、17dの先端位置が同一となるように調整されていることが望ましい。これは、それぞれの光ファイバを一括して位置決めして融着することが可能になるためである。
【0047】
光合分波器400は、は光ファイバ17aに対して波長λ1、λ2、λ3、λ4、の4つの波長の光信号が入力された場合、波長λ1は光学薄膜13bを通過して光ファイバ10bに入射され、波長λ2は光学薄膜13b、13cの順で反射され、光学薄膜13dを透過して光ファイバ17cへ入射され、波長λ3は光学薄膜13b、13c、13d、13cの順で反射され、光学薄膜13eを通過して、光ファイバ10dへ入射され、波長λ4は光学薄膜13b、13c、13d、13c、13e、12cの順でと反射され、光学薄膜13fを通過して、光ファイバ10eへ入射する機能を持つ。
【0048】
なお、本発明の第1〜第4の実施形態では、グレーデッドインデックスファイバ11と同径のコアレスファイバ12を融着した光ファイバ17を用いているが、透光性部材14に対してグレーデッドインデックスファイバ11を融着接続してもよく、また、用途に応じては、グレーデッドインデックスファイバ11を用いることなく、シングルモードファイバ10だけを用いてもよい。
【0049】
図5は本発明の光デバイスの一種である光アイソレータの実施形態を示す平面図である。
【0050】
光アイソレータ500は、透光性部材14の凹部14bに配されている光フィルタ13の代わりに、周囲に磁石19が配されたファラデー回転子を含むアイソレータ素子18(光学素子)を用いている点で光合分波器200と異なる構成である。
【0051】
光アイソレータ500では、アイソレータ素子18が凹部14b内で透光性のある光学接着剤で固定されている。アイソレータ素子18は、第1の偏光子、ファラデー回転子および第二の偏光子を重ねてそれぞれを透光性樹脂で固定したもので、順方向(図5の矢印方向)には光を透過するが逆方向には光の透過を阻止する機能を有する。
【0052】
第1の偏光子および第2の偏光子は、入射する光の1方向の偏光成分を透過し、これに直交する成分の光を吸収する機能を有し、偏光子は楕円体形の金属粒子がガラス内に分散された構造の偏光ガラスからなる。この偏光ガラスは長く延伸された金属粒子をガラス自身の中に一方向に配列させることにより偏光特性を持たせたガラスであり、金属粒子の延伸方向に垂直な偏波面を持つ光が透過し、平行な偏波面を持つ光は吸収される。この偏光特性は誘電体に埋め込まれた金属微粒子が、光−プラズマ共鳴を示すためである。
【0053】
ファラデー回転子は、例えば、ビスマス置換ガーネット結晶等で、その厚みは所定の波長をもつ入射光線の偏光面が45°回転する様に設定する。偏波面を回転させるためには、入射光線の光軸Z方向に十分な磁界Hを印可することが必要であり、一般に、永久磁石(図示なし)を用いることが多い。またファラデー回転子に磁気ヒステリシスが非常に大きく、磁石がなくても自磁力を保持する磁力保持型の材料、例えば(TbBi)(FeAlGa)12等を用いれば磁界を印加する磁石も不要となる。
【0054】
以下に光アイソレータ500の動作について説明する。
【0055】
図5に示すように、光ファイバ17aに入射される光は、コアレスファイバ12aの端部から出射されるとともに透光性部材14を介してアイソレータ素子18に入射される。アイソレータ素子18に入射される光のうち、第1の偏光子に設定された偏波方向の光が第1の偏光子を透過する。第1の偏光子を透過した光は、ファラデー回転子に入射され、その光の偏波面が45°回転された状態で第2の偏光子に入射される。第2の偏光子は、予め、その偏波方向が第1の偏光子の偏波方向に対して45°の角度になるように配置されている。これにより、ファラデー回転子を透過する光の偏波方向は第2の偏光子の偏波方向と一致しているため、光は第2の偏光子を透過して光ファイバ17bに入射される。一方で、第2の偏光子とファラデー回転子との屈折率差によって反射された反射光は、ファラデー回転子に入射されることにより、その偏波方向が45°回転される。そして、このファラデー回転子を透過する反射光の偏波方向は、第1の偏光子の偏波方向に対して90°ずれているため、上記反射光は、第1の偏光子の表面で遮断され、光ファイバ17aへの入射が低減される。このように、光アイソレータ500では、光ファイバ17aに光を入射する光源(図示なし)に反射光が戻ることによって生じる光源の光出力変動を抑制することができる。
【0056】
図6は本発明の光デバイスの一種である光合分波器を用いて作製された光モジュールの実施形態を示す平面図である。
【0057】
光モジュール600は、光合分波器400の光ファイバ17b〜17eの端部近傍に、該光ファイバ17b〜17eに光を入射するためのレーザダイオード20a〜20d(発光素子)を基板21上にそれぞれ実装した構成である。このレーザダイオードは、20a〜20dは、たとえばシリコン基板上にAuめっきされて形成された電極パターン上に、基板上に予め形成された電極マーカを基準として高精度に位置決めした後、金錫半田にて加熱固定されている。シリコン基板21には、電極マーカを基準にファイバを実装するためのV溝がたとえばエッチング工程により形成されており、光ファイバ17b〜17eはこのV溝に対して当てつける位置決めのみで高精度に実装され、たとえばエポキシ系の透光性樹脂で光ファイバ端とレーザダイオードが封止される。このような光モジュール600は、それぞれのレーザダイオードから出た波長の異なる光を効率良く単一の光ファイバ17aに合波するとともに、光ファイバ17aから出射された該合波光を受光素子(図示なし)に入力することができる。
【0058】
なお、上記した実施形態では、光合波用の光モジュールを例に挙げて説明したが、光の入出力を逆にすれば、光分波器としての機能を有するようになる。具体的には、光ファイバ17aの近傍に、たとえばレーザダイオードのような光源を配置し、該光源から複数の異なる波長帯域を有する光を入射するとともに、分波する波長帯域に応じて光フィルタ13の光学薄膜13bを設定すればよく、さらに、レーザダイオード20a〜20dの代わりに、光ファイバの数に対応する受光素子を配置すればよい。
【0059】
このような本発明の光モジュール600の構成によれば、レーザダイオードを実装するための基板は必要となるものの、出力側の光ファイバ17aを保持するための基板は必須ではないため、多チャンネル化しても部品の小型化を実現することができる。また、本発明の光モジュールにおいては、発光素子や受光素子がそれぞれ異なる基板に実装されているのであれば、光デバイスを構成する光ファイバを保持するような基板は必須ではなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】(a)は、本発明の光デバイスの一種である光合分波器の第1の実施形態を示す平面図であり、(b)は、(a)の部分拡大図である。
【図2】本発明の光デバイスの一種である光合分波器の第2の実施形態を示す斜視図である。
【図3】本発明の光デバイスの一種である光合分波器の第3の実施形態を示す平面図である。
【図4】本発明の光デバイスの一種である光合分波器の第4の実施形態を示す平面図である。
【図5】本発明の光デバイスの一種である光アイソレータの実施形態を示す平面図である。
【図6】本発明の光モジュールの一例を示す平面図である。
【図7】従来の光合分波器の一例を示す平面図である。
【図8】従来の光合分波器の一例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0061】
17a〜17c、32、33、34、42、43、44:光ファイバ
10a〜10e:シングルモードファイバ
11a〜11e:グレーデッドインデックスファイバ
13a〜12e:コアレスファイバ
13:光フィルタ(光学素子)
13a:支持基板
13b:光学薄膜
14:透光性部材
14a:凹部
18:アイソレータ素子(光学素子)
19:磁石
20a〜20d:レーザダイオード
35、37:フェルール
36a、36b:レンズ
31、100、200、300、400:光合分波器
500:光アイソレータ
600:光モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学的に結合される少なくとも2つの光ファイバと、前記光ファイバ間に配置される光学素子と、前記光学素子と前記光ファイバの端部との間に介在されるとともに前記光ファイバの前記端部に融着接続された上、前記光学素子を支持する透光性部材とを備えた光デバイス。
【請求項2】
前記光ファイバの前記光学素子に臨む端部は、前記透光性部材の内部に融着接続されていることを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。
【請求項3】
前記透光性部材の前記光ファイバの前記光学素子に臨む端部の周面と連続して接続されている部位が、円弧状であることを特徴とする請求項1または2に記載の光デバイス。
【請求項4】
前記透光性部材は、前記光学素子を支持するための底面部を有する凹部が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光デバイス。
【請求項5】
前記光ファイバは、前記光学素子に臨む端部に接合されたグレーデッドインデックスファイバを備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光デバイス。
【請求項6】
前記光ファイバは、前記グレーデッドインデックスファイバの前記光学素子に臨む端部に接合されたコアレスファイバを備えることを特徴とする請求項5に記載の光デバイス。
【請求項7】
前記光学素子は、入射される光の偏波面を回転させるファラデー回転子を含むアイソレータ素子であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の光デバイス。
【請求項8】
前記光学素子は、入射される光を合波および/または分波するための光フィルタであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の光デバイス。
【請求項9】
発光素子と、該発光素子から出射された光が一方の光ファイバに入射され、かつ他方の光ファイバから光が出射される請求項1〜8のいずれかに記載の光デバイスと、該光デバイスから出射された光を受光するための受光素子と、を備えてなる光モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−199558(P2007−199558A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−20235(P2006−20235)
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】