説明

光パターン化方法において使用するための水性の現像可能な光画像形成性前駆組成物

本発明は、(I)導電性、電気抵抗性および誘電性の粒子から選択される機能相粒子と、325〜600℃の範囲のガラス転移温度を有する無機結合剤とを含む無機材料の微細粒子を含み、(II)(e)コポリマー、インターポリマーまたはそれらの混合物である水性現像可能な非感光性ポリマーであって、各コポリマーまたはインターポリマーが、(1)C1−10のアルキルアクリレート、C1−10のアルキルメタクリレート、スチレン、置換スチレンまたはそれらの組合せを含む非酸性コモノマーと(2)エチレン性不飽和カルボン酸含有部分を含む酸性コモノマーとを含む水性現像可能な非感光性ポリマーと、(d)第1および第2の官能性単位を有する二官能性UV硬化性モノマーであって、第1の官能性単位がビニル基であり、第2の官能性単位が、カルボン酸部分との反応によって化学結合を形成することができる、二官能性UV硬化性モノマーとを含む有機媒体中に分散された、光画像形成性前駆組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光パターン化方法において使用するための光画像形成性の厚いフィルム組成物およびテープ組成物に関する。より詳しくは1つの実施形態において、本発明の光画像形成性の厚いフィルムペースト組成物は、プラズマディスプレイパネル(PDP)などのフラットパネルディスプレイの用途において電極の形成の性能を改良するために用いられる。
【背景技術】
【0002】
電子機器産業は、より小さい、より安価である電子デバイスを形成し、より高い解像度性能を提供しようと絶えず取り組んでいる。それ故に、新規な光画像形成性組成物およびこれらの目的を達成する光パターン化方法を開発することが必要になっている。
【0003】
光パターン化技術は、従来のスクリーン印刷方法に比べたとき、均一なより細かいラインおよび空間解像度を提供する。本願特許出願人のフォーデル(FODEL)(登録商標)の光画像形成性の厚いフィルムペーストなどの光パターン化方法は、米国特許公報(特許文献1)、米国特許公報(特許文献2)、米国特許公報(特許文献3)、米国特許公報(特許文献4)および米国特許公報(特許文献5)に見出されるような光画像形成性有機媒体を利用し、それによって、基板は最初に、光画像形成性の厚いフィルム組成物で完全に被覆され(印刷、噴霧、コーティングされるかまたは積層され)、必要ならば乾燥される。パターンの画像は、パターンを有するフォトマスクを通して化学線で光画像形成性の厚いフィルム組成物を露光することによって生成される。次いで露光された基板を現像する。パターンの露光されていない部分は洗浄除去され、光画像形成された厚いフィルム組成物を基板上に残し、次にそれを焼成して有機材料を除去し、無機材料を焼結する。このような光パターン化方法は、基板の平滑さ、無機粒度分布、露光および現像変数に応じて約30ミクロン以上の厚いフィルムライン解像度を示す。このような技術はプラズマディスプレイパネルなどのフラットパネルディスプレイの製造において有用であることが判明している。
【0004】
しかしながら、先行技術の光画像形成性の厚いフィルム組成物およびテープ組成物は典型的に、ポリマー樹脂自体に光反応性基を導入しない(米国特許公報(特許文献6)、米国特許公報(特許文献2)、米国特許公報(特許文献3)、米国特許公報(特許文献4)および米国特許公報(特許文献7)のケースのように)。
【0005】
カキヌマ(Kakinuma)らに対する米国特許公報(特許文献8)およびマサギ(Masagi)に対する(特許文献9)には、特定の感光性樹脂と、希釈剤と、感光性開始剤と、無機粉体と、安定剤とを含む感光性組成物が開示されている。
【0006】
マサギ(Masagi)は、感光性樹脂としてアクリル酸系コポリマーを有する感光性組成物を開示している。これはまた、感光性組成物中での感光性樹脂を示す。
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,912,019号明細書
【特許文献2】米国特許第4,925,771号明細書
【特許文献3】米国特許第5,049,480号明細書
【特許文献4】米国特許第5,851,732号明細書
【特許文献5】米国特許第6,075,319号明細書
【特許文献6】米国特許第4,912,019号明細書
【特許文献7】米国特許第6,075,319号明細書
【特許文献8】米国特許第6,342,322号明細書
【特許文献9】日本特許第3218767B2号公報
【特許文献10】米国特許第3,583,931号明細書
【特許文献11】米国特許第3,380,831号明細書
【特許文献12】米国特許第2,927,022号明細書
【特許文献13】米国特許第2,760,863号明細書
【特許文献14】米国特許第2,850,445号明細書
【特許文献15】米国特許第2,875,047号明細書
【特許文献16】米国特許第3,097,096号明細書
【特許文献17】米国特許第3,074,974号明細書
【特許文献18】米国特許第3,097,097号明細書
【特許文献19】米国特許第3,145,104号明細書
【特許文献20】米国特許第3,427,161号明細書
【特許文献21】米国特許第3,479,185号明細書
【特許文献22】米国特許第3,549,367号明細書
【特許文献23】米国特許第4,162,162号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願発明者は、より経済的で環境にやさしい組成物、光パターン化方法、および電極を形成する方法を提供することを望んだ。別個の方法で感光性ポリマーを予備形成する必要がない、新規な組成物および方法をもたらすことによって、本願発明者はこの目的を達成した。
【0009】
本発明は、光パターン化されうる感光性ポリマーを加工する時に生成する新規な厚いフィルムペーストおよびテープ組成物を開示する。先行技術と異なり、本発明の厚いフィルムペースト組成物は、感光性樹脂を含有しないが、加工する間に感光性樹脂を生成して所望の光画像形成されたパターンを形成する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
(a)導電性、電気抵抗性および誘電性の粒子から選択される機能相粒子と、
(b)325〜600℃の範囲のガラス転移温度を有する無機結合剤と
を含む無機材料の微細粒子を含み、
(c)コポリマー、インターポリマーまたはそれらの混合物である水性現像可能な非感光性ポリマーであって、各コポリマーまたはインターポリマーが、(1)C1−10のアルキルアクリレート、C1−10のアルキルメタクリレート、スチレン、置換スチレンまたはそれらの組合せを含む非酸性コモノマーと(2)エチレン性不飽和カルボン酸含有部分を含む酸性コモノマーとを含む水性現像可能な非感光性ポリマーと、
(d)第1および第2の官能性単位を有する二官能性UV硬化性モノマーであって、前記第1の官能性単位がビニル基であり、前記第2の官能性単位が、前記カルボン酸部分との反応によって化学結合を形成することができる二官能性UV硬化性モノマーと
を含む有機媒体中に分散された、光画像前駆組成物に関する。
【0011】
光開始系を前駆組成物に添加して、活性化されうる光パターン化可能な組成物を形成してもよい。
【0012】
また、本発明は、
(a)光開始系を含有する前駆組成物の組成物を基板上に付着させる工程と、
(b)現像可能な非光画像形成性ポリマーと二官能性モノマーとの反応を開始して感光性ポリマーおよび光パターン化可能な組成物を形成する工程と、
(c)(b)の前記光パターン化可能な組成物および(a)の基板を化学線に露光して露光された部分を形成する工程と、
(d)(b)の前記露光された部分を現像して現像された部分を形成する工程と、
(e)(c)の前記現像された部分を焼成して有機媒体を実質的に除去し、無機材料を実質的に焼結する工程と
を含む光パターン化方法を提供する。
【0013】
この方法において、組成物中に存在する一切の有機溶剤を除去する乾燥工程は、付着工程(a)の後に行われもよい。また、開始工程は、乾燥工程と同時にまたは露光工程と同時に行われてもよい。
【0014】
前駆組成物は、テープ、フィルム、または厚いフィルムテープを作製するために完全機能性の光パターン化可能な組成物の一部であってもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
一般に、厚いフィルム組成物は、導電性、電気抵抗性および誘電体性質などの適切な電気機能性性質を与える機能相を含む。機能相は、機能相のためのキャリアとして作用する有機媒体中に分散された電気機能性粉体を含む。機能相は、電気的性質を決定し、焼成された厚いフィルムの機械的性質に影響を与える。本発明の厚いフィルムペースト組成物およびテープ組成物は、有機媒体中に分散された無機結合剤と共にこのような機能相を含む。
【0016】
本発明の基本は、感光性または光架橋性ポリマーを前駆組成物を加工する間にin situで形成することである。特に、感光性または光架橋性ポリマーは、光パターンを形成する間にin situで形成されてもよい。これは、プラズマディスプレイパネルなどのフラットパネルディスプレイの用途のための電極を光パターン形成する間、特に有用である。
【0017】
PDP電極を形成するための、本願特許出願人によるフォーデル(Fodel)(登録商標)など、光画像形成性の厚いフィルムペーストの一般的な加工は、厚いフィルムペースト(典型的に、光反応性基を導入しないポリマーを含有する)をガラス基板の上に印刷または被覆すること、印刷されたペーストを20〜40分間、約80℃において乾燥させること、UV露光、現像および焼成を含める。
【0018】
しかしながら、本発明の組成物は、以下の化学反応に示されるようにポリマー1、非光画像形成性ポリマーと、二官能性モノマーとを利用して所望の感光性ポリマー、ポリマー2を形成することによって先行技術と異なるものとなっている。反応は、乾燥工程、または光パターン化工程(すなわち、UV露光)、または反応を開始するために十分な他の条件を含めて、光パターン形成の間、十分な程度に行われることができる。典型的に、光パターン化プロセスにおいての乾燥条件は、約20〜40分間、約80℃である。他の条件および光パターン化工程自体も、ポリマー2を製造するための化学反応を開始することができる。さらに、反応は、広範囲の時間および温度下で、特に十分に選択された触媒を用いて、例えば、エポキシ単位をエステルに変換するための十分に選択された触媒の存在下で行われることができる。
【0019】
実施例IV(本発明の実施形態)に示されるように、ポリマー1とグリシジルメタクリレート(GMA)などの二官能性モノマーとの反応は、光パターン形成の間に行われることができる。特に、ポリマー2の形成をもたらす反応は、反応を開始するために十分なエネルギーに暴露する間に加工することによって行われてもよい。例えば、(UCBケミカルズによるユバキュア(Uvacure)(登録商標)1600または他の適した材料を用いて)UV露光によって生成された強酸は、ポリマー1とGMAとの間の反応を触媒して、例えば、ポリマー2を形成することができる。
【0020】
テープまたはシートは、有機溶剤を除去するための十分な時間および温度において組成物を乾燥させることによって本発明の前駆組成物から形成されてもよい。テープまたはシートの加工のために、テープは、非感光性ポリマーと二官能性モノマーとの間の反応を開始して感光性ポリマーを形成するために十分な時間および温度またはエネルギーで加工される限り、テープの乾燥、赤外炉内でのテープの加熱、熱炉内でのテープの加熱、基板の予備加熱、基板およびテープの加熱、化学線への露光などがあるがそれらに限定されない様々な方法によって加工されてもよい。
【0021】
厚いフィルムペースト組成物の場合、反応開始方法の同じタイプが、ペーストを基板上に付着した後に用いられてもよいが、さらに、ペースト組成物において反応はペーストが光パターン化されるのと同時に開始されてもよい。
【0022】
【化1】

【0023】
米国特許公報(特許文献1)、米国特許公報(特許文献2)、米国特許公報(特許文献3)、米国特許公報(特許文献4)および米国特許公報(特許文献7)(その内容を本願明細書に参照によって援用するものとする)に見出されるように、ポリマー1は、多くの光画像形成性の厚いフィルムペースト組成物において用いられたポリマーである。ポリマー1は、メタクリル酸またはアクリル酸および他のモノマー、例えばメタクリレートを含有する。ポリマー1は感光性ポリマーではない。
【0024】
上の反応の生成物であるポリマー2は、感光性ポリマーである。上の反応の生成物(すなわちポリマー2)は、本発明の組成物中に存在しないが、光パターンの形成(乾燥、光パターン化、UV露光など)中に形成される。ポリマー1および二官能性モノマー1(エポキシ−アクリレート)または二官能性モノマー2(ヒドロキシル−アクリレート)だけが、組成物が加工される前に本発明において組成物中に存在する。この加工は、一般に電極、プラズマディスプレイパネル(PDP)など、フラットパネルディスプレイの用途のための電極など、多くの物品の形成の目的のために行われてもよい。物品は、PDP自体と考えられてもよい。
【0025】
組成物の性能は、二官能性アクリレートモノマー、例えばエポキシ−アクリレートタイプを単に添加することによって改良することができる。
【0026】
本発明の光画像形成性組成物の主成分は以下に記載される。
【0027】
(I.無機材料)
(A.機能相−電気機能性粉体(粒子))
(i.導体の用途)
導体の用途において、機能相は、電気機能性導体粉体からなる。与えられた厚いフィルム組成物中の電気機能性粉体は、単一タイプの粉体、粉体の混合物、種々の元素の合金または化合物を含んでもよい。本発明において使用されてもよい電気機能性導電性粉体には、金、銀、ニッケル、アルミニウム、パラジウム、モリブデン、タングステン、タンタル、スズ、インジウム、ランタン、ガドリニウム、ホウ素、ルテニウム、コバルト、タンタル、イットリウム、ユウロピウム、ガリウム、硫黄、亜鉛、ケイ素、マグネシウム、バリウム、セリウム、ストロンチウム、鉛、アンチモン、導電性炭素、白金、銅、またはそれらの混合物などがあるがそれらに限定されない。金属粒子は、有機材料でコーティングされるかまたはコーティングされなくてもよい。球形粒子およびフレーク(ロッド、コーンおよびプレート)などの実質的にいかなる形状の金属粉体が本発明の実施において用いられてもよい。好ましい金属粉体は金、銀、パラジウム、白金、銅またはそれらの組合せである。粒子が球形であるのが好ましい。本発明の分散体は0.1μm未満の粒度を有する有意量の固形分を含有してはならないことがわかっている。分散体を用いて厚いフィルムペーストを作製するとき、それらは通常、スクリーン印刷によって適用されるが、最大粒度はスクリーンの厚さを超えてはならない。導電性固形分の少なくとも80重量パーセントが0.5〜10μmの範囲内になることが好ましい。
【0028】
さらに、導電性粒子の表面積は20m/gを超えず、好ましくは10m/gを超えず、より好ましくは5m/gを超えないのが好ましい。20m/gより大きい表面積を有する金属粒子が用いられるとき、同伴する無機結合剤の焼結特性は悪影響を与えられる。
【0029】
(ii.抵抗器の用途)
抵抗組成物において、機能相は一般に導電性酸化物である。抵抗組成物中の機能相の例には、Pd/Ag、RuO、パイロクロア酸化物、ならびに当該技術分野に公知の他の例がある。
【0030】
ルテニウム系多元酸化物は、以下の一般式
(MBi2−x)(M’M’’2−y)O7−z
によって表される、Ru+4、Ir+4、またはそれらの混合物(M’’)の多成分化合物であるパイロクロア酸化物の1つのタイプであり、
Mが、イットリウム、タリウム、インジウム、カドミウム、鉛、銅、および希土類材料からなる群から選択され、
M’が、白金、チタン、クロム、ロジウム、およびアンチモンからなる群から選択され、
M’’がルテニウム、イリジウムまたはそれらの混合物であり、
xが0〜2であるが、一価銅についてx≦1であり、
yが0〜0.5であるが、M’がロジウムであるかまたは白金、チタン、クロム、ロジウム、またはアンチモンの1つより多いとき、yが0〜1であり、
zが0〜1であるが、Mが二価鉛またはカドミウムであるとき、これは少なくとも約x/2に等しい。
【0031】
ルテニウムパイロクロア酸化物は、米国特許公報(特許文献10)(その内容を参照によって本願明細書に援用するものとする)に詳細に見出される。
【0032】
好ましいルテニウム多元酸化物は、ルテニウム酸ビスマスBiRu、ルテニウム酸鉛PbRu、Pb1.5Bi0.5Ru6.5、PbBiRu6.75およびGdBiRuである。これらの材料を高純度の形態で容易に得ることができ、それらは、ガラス結合剤によって悪影響を与えられず、空気中で約1000℃に加熱された時でも安定している。
【0033】
ルテニウム酸化物および/またはルテニウムパイロクロア酸化物は、有機媒体を含有する全組成物の重量を基準にして、4〜50重量%、好ましくは6〜30%、より好ましくは5〜15%、最も好ましくは9〜12%の比率で用いられる。
【0034】
(iii.誘電体の用途)
誘電体組成物において、機能相は一般にガラスまたはセラミックである。厚い誘電体フィルム組成物は、電荷を分離し、電荷の蓄積をもたらすことがある非導電組成物または絶縁体組成物である。このため、厚いフィルム誘電体組成物は典型的に、セラミック粉体、酸化物および非酸化物フリット、結晶化開始剤または抑制剤、界面活性剤、着色剤、有機媒体、およびこのような厚いフィルム誘電体組成物の技術分野において一般的な他の成分を含有する。セラミック固形分の例には、アルミナ、チタン酸塩、ジルコン酸塩およびスズ酸塩、BaTiO、CaTiO、SrTiO、PbTiO、CaZrO、BaZrO、CaSnO、BaSnO、およびAl、ガラスおよびガラス−セラミックなどがある。また、それはこのような材料の前駆物質、すなわち、焼成した時に誘電体固形分に変換される固体材料、およびそれらの混合物に適用可能である。
【0035】
(B.無機結合剤)
本発明において用いられる無機結合剤および一般にガラスフリットの機能は、焼成後に粒子を互いにおよび基板に結合することである。無機結合剤の例には、ガラス結合剤(フリット)、金属酸化物およびセラミックなどがある。組成物中で有用なガラス結合剤は、当該技術分野において一般的である。いくつかの例を挙げると、ホウケイ酸塩およびアルミノケイ酸塩ガラスなどがある。さらに例を挙げると、独立にまたは組み合わせて用いてガラス結合剤を形成してもよいB、SiO、Al、CdO、CaO、BaO、ZnO、SiO、NaO、LiO、PbO、およびZrOなどの酸化物の組合せがある。厚いフィルム組成物中で有用な代表的な金属酸化物は当該技術分野において一般的であり、例えば、ZnO、MgO、CoO、NiO、FeO、MnOおよびそれらの混合物であってもよい。
【0036】
最も好ましく使用されるガラスフリットは、ホウケイ酸鉛フリット、ビスマス、カドミウム、バリウム、カルシウム、または他のアルカリ土類ホウケイ酸塩フリットなどのホウケイ酸塩フリットである。実施形態において、ガラス結合剤は、Pbを含有しないガラスフリットである。様々なPbを含有しないフリットが利用されてもよいが、バリウム−ビスマス系のPbを含有しないガラスフリットが特に有用である。
【0037】
このようなガラスフリットの調製は公知であり、例えば、成分の酸化物の形のガラスの成分を一緒に混合する工程と、このような溶融組成物を水中に流し込んでフリットを形成する工程である。バッチ成分は、当然ながら、フリット製造の通常の条件下で所望の酸化物を生じるいかなる化合物であってもよい。例えば、三酸化二ホウ素(boric oxide)はホウ酸から得られ、二酸化ケイ素はフリントから製造され、酸化バリウムは炭酸バリウムから製造される、等々。ガラスは好ましくは、水を用いてボールミルでミリングされ、フリットの粒度を低減し、実質的に均一なサイズのフリットを得る。次に、それを水中に沈降させて微粉を分離し、微粉を含有する上澄み液を除去する。分別の他の方法も同様に用いられてもよい。
【0038】
ガラスは、所望の成分を所望の比率で混合する工程と、混合物を加熱して溶融体を形成する工程とによって、通常のガラス製造技術によって作製される。当該技術分野に公知であるように、加熱は、ピーク温度までおよび溶融体が完全に液体になり均質になるような時間、行われる。所望のガラス転移温度は、325〜600℃の範囲である。
【0039】
無機結合剤粒子の少なくとも85%が0.1〜10μmであるのが好ましい。この理由は、高表面積を有する、より小さな粒子が有機材料を吸着する傾向があり、従ってきれいな分解を妨げる傾向があるということである。他方、より大きなサイズの粒子は、より不十分な焼結特性を有する傾向がある。無機結合剤の、全固形分に対する重量比は0.1〜0.75の範囲であるのが好ましく、より好ましくは0.2〜0.5の範囲である。
【0040】
(C.非感光性の水性の現像可能なポリマー)
ポリマー結合剤自体は感光性ではない。それらはコポリマー、インターポリマーまたはそれらの混合物から製造され、各コポリマーまたはインターポリマーが、(1)C1−10のアルキルアクリレート、C1−10のアルキルメタクリレート、スチレン、置換スチレンまたはそれらの組合せを含む非酸性コモノマーと、(2)少なくとも10重量%であるエチレン性不飽和カルボン酸含有部分を含む酸性コモノマーとを含む。
【0041】
組成物中の酸性コモノマー成分の存在は、この技術において重要である。酸性官能基は、0.4〜2.0%の炭酸ナトリウムの水溶液などの水性塩基中で現像されうる能力を提供する。酸性コモノマーが10%より少ない濃度で存在する場合、組成物は、水性塩基で完全に洗浄除去されないことがある。酸性コモノマーが30%より大きい濃度で存在するとき、組成物は、現像条件下でより耐性でなく、部分的な現像が画像部分に生じる。適切な酸性コモノマーには、エチレン性不飽和モノカルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、またはクロトン酸、およびエチレン性不飽和ジカルボン酸、例えばフマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ビニルコハク酸、およびマレイン酸、ならびにそれらのヘミエステル、およびいくつかの場合それらの無水物およびそれらの混合物などがある。それらは低酸素雰囲気中で、よりきれいに燃焼しているので、メタクリルポリマーがアクリルポリマーよりも好ましい。
【0042】
また、酸性コモノマー成分の存在によって、二官能性モノマーがポリマー鎖に結合される反応部位を提供する。このため、これらの酸性コモノマー成分は、結合剤ポリマーが感光性ポリマーへ反応によって加工されることを可能にする。
【0043】
非酸性コモノマーが上述のようにアルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートである場合、これらの非酸性コモノマーは、ポリマー結合剤の少なくとも50重量%、好ましくは70〜85重量%を占めるのが好ましい。非酸性コモノマーがスチレンまたは置換スチレンであるとき、これらの非酸性コモノマーはポリマー結合剤の50重量%を占め、他の50重量%が無水マレイン酸のヘミエステルなどの酸無水物であるのが好ましい。好ましい置換スチレンはアルファ−メチルスチレンである。
【0044】
ポリマー結合剤の非酸性部分は、ポリマーのアルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、スチレン、または置換スチレン部分のための置換基として他の非酸性コモノマーを約50重量%まで含有することができる。例には、アクリロニトリル、酢酸ビニル、およびアクリルアミドなどがある。しかしながら、これらが完全に燃焼消失することはより難しいので、全ポリマー結合剤中のこのようなモノマーの約25重量%未満が使用されるのが好ましい。結合剤として単一コポリマーまたはコポリマーの組合せを使用することは、これらの各々が上の様々な基準を満たす限り、認められる。上のコポリマーに加えて、少量の他のポリマー結合剤を添加することが可能である。例えば、ポリオレフィン、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリイソブチレン、およびエチレン−プロピレンコポリマー、ポリビニルアルコールポリマー(PVA)、ポリビニルピロリドンポリマー(PVP)、ビニルアルコールおよびビニルピロリドンコポリマー、ならびにポリエチレンオキシドなどの低級アルキレンオキシドポリマーであるポリエーテルが使用されてもよい。
【0045】
さらに、ポリマー結合剤の好ましい重量平均分子量は、2,000〜250,000の範囲である。ポリマー結合剤の分子量は、用途に依存する。
【0046】
組成物中の全ポリマーは、全組成物を基準にして5〜70重量%の範囲であり、一切の範囲がその中に含まれる。
【0047】
(D.二官能性UV硬化性モノマー)
二官能性UV硬化性モノマーは、第1および第2の官能性単位を有する反応性分子であり、第1の官能性単位がビニル基であり、第2の官能性単位が、カルボン酸含有部分との反応によって化学結合を形成することができる。同じ分子中の2つの官能性単位は異なっている。ビニル基の例には、メタクリレートおよびアクリレート基などがあるがそれらに限定されない。第2の官能性単位の例には、エポキシド、アルコールおよびアミンなどがあるがそれらに限定されない。1つの実施形態において、第1の官能性単位は、UV硬化性アクリレートまたはメタクリレートであり、第2の官能性単位は、ポリマーのカルボン酸部分との反応によって化学結合を形成することができる。
【0048】
二官能性UV硬化性モノマーの第1の官能性単位がメタクリレートまたはアクリレートである場合、各二官能性分子に通常1つのメタクリレートまたはアクリレート単位がある。二官能性モノマーは、ペースト組成物を加工する間に感光性結合剤ポリマーへと、非感光性有機結合剤ポリマーと反応して電極を形成するが、これは、フラットパネルディスプレイの用途において用いられてもよい。二官能性モノマーは、組成物の全重量を基準にして0.01%〜10重量%の量において存在してもよい。以下に示された実施形態において、二官能性モノマーは、組成物の全重量を基準にして0.05%〜2.0重量%の量において存在する。
【0049】
触媒は、説明された反応の高反応収量を達成するために非常に有用であることがあるが、必要ではない。触媒には、第四アンモニウム塩、ルイス酸、トルスルホニウム塩および超酸などがあるがそれらに限定されない。触媒の量は、使用されるとき、全組成物の0.01重量%〜2重量%の範囲であってもよい。
【0050】
以下の成分を本発明の前駆物質光画像形成性組成物中に混入して光パターン化物品に直接に加工されうる組成物を提供することができる。
【0051】
(E.光硬化性モノマー)
通常の光硬化性アクリレートおよびメタクリレートモノマーおよびオリゴマーを本発明において用いてもよい。モノマー成分は、乾燥光重合性層の全重量を基準にして0〜20重量%の量において存在してもよい。このような好ましいモノマーには、t−ブチルアクリレートおよびメタクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレートおよびジメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレートおよびメタクリレート、エチレングリコールジアクリレートおよびジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレートおよびジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレートおよびジメタクリレート、ヘキサメチレングリコールジアクリレートおよびジメタクリレート、1,3−プロパンジオールジアクリレートおよびジメタクリレート、デカメチレングリコールジアクリレートおよびジメチアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレートおよびジメタクリレート、2,2−ジメチロールプロパンジアクリレートおよびジメタクリレート、グリセロールジアクリレートおよびジメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレートおよびジメタクリレート、グリセロールトリアクリレートおよびトリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートおよびトリメタクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレートおよびトリメタクリレート、ポリオキシエチル化トリメチロールプロパントリアクリレートおよびトリメタクリレートおよび米国特許公報(特許文献11)に開示されているような同様な化合物、2,2−ジ(p−ヒドロキシ−フェニル)−プロパンジアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレートおよびテトラメタクリレート、2,2−ジ−(p−ヒドロキシフェニル)−プロパンジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリオキシエチル−2,2−ジ−(p−ヒドロキシフェニル)プロパンジメタクリレート、ビスフェノール−Aのジ−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、ビスフェノール−Aのジ−(2−メタクリルオキシエチル)エーテル、ビスフェノール−Aのジ−(3−アクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、ビスフェノール−Aのジ−(2−アクリルオキシエチル)エーテル、1,4−ブタンジオールのジ−(3−メタクルルオキシ(methacrloxy)−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリオキシプロピルトリメチロールプロパントリアクリレート、ブチレングリコールジアクリレートおよびジメタクリレート、1,2,4−ブタントリオールトリアクリレートおよびトリメタクリレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジアクリレートおよびジメタクリレート、1−フェニルエチレン−1,2−ジメタクリレート、ジアリルフマレート、スチレン、1,4−ベンゼンジオールジメタクリレート、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、および1,3,5−トリイソプロペニルベンゼンなどがある。また、少なくとも300の重量平均分子量を有するエチレン性不飽和化合物も有用であり、例えば、アルキレンまたは2〜15個の炭素のアルキレングリコールまたは1〜10のエーテル結合のポリアルキレンエーテルグリコールから調製されたポリアルキレングリコールジアクリレート、および米国特許公報(特許文献12)に開示されたエチレン性不飽和化合物、例えば、特に末端結合として存在する時に複数のフリーラジカル重合性エチレン結合を有するエチレン性不飽和化合物が有用である。特に好ましいモノマーはポリオキシエチル化トリメチロールプロパントリアクリレート、エチル化ペンタエリトリトールトリアクリレート、ジペンタエリトリトールモノヒドロキシペンタアクリレートおよび1,10−デカンジオールジメチルアクリレート(dimethlacrylate)である。
【0052】
さらに、ウレタンアクリレート、メタクリレートおよびエステルアクリレートを利用してもよい。
【0053】
フリーラジカル重合される、上に言及されたモノマーのほかにも、カチオン重合される、二、三、四官能性エポキシドモノマーは、それらがアクリレートモノマーおよびオニウム塩光開始剤と共存するとき、より良い性能をもたらすことが見出されている。エポキシドモノマーの量が組成物に添加されてもよいが、必要とされない。添加されてもよいエポキシドモノマーの量は、全組成物重量の0.01%〜5%の範囲である。
【0054】
(F.光開始系)
適した光開始系は、周囲温度において化学線に露光した時にフリーラジカルを発生する、光開始系である。これらには、共役炭素環式環系に2個の環内炭素原子を有する化合物である置換または非置換多核キノン、例えば、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、9,10−アントラキノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナントレンキノン、ベンズ(ア)アントラセン−7、12−ジオン、2,3−ナフタセン−5,12−ジオン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、1,4−ジメチル−アントラキノン、2,3−ジメチルアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、レテンキノン、7,8,9,10−テトラヒドロナフトラセン−5,12−ジオン、および1,2,3,4−テトラヒドロベンズ(ア)アントラセン−7,12−ジオンなどがある。同じく有用である他の光開始剤は、いくつかは最低85℃の温度において熱的に活性である場合があるけれども、米国特許公報(特許文献13)に記載されており、ビシナルケタールドニルアルコール、例えばベンゾイン、ピバロイン、アシロインエーテル、例えば、ベンゾインメチルおよびエチルエーテルの他、α−メチルベンゾイン、α−アリルベンゾインおよびα−フェニルベンゾインなどのアルファ−炭化水素−置換芳香族アシロイン、チオキサントンおよび/またはチオキサントン誘導体および適切な水素供与体などがある。米国特許公報(特許文献14)、米国特許公報(特許文献15)、米国特許公報(特許文献16)、米国特許公報(特許文献17)、米国特許公報(特許文献18)、および米国特許公報(特許文献19)に開示された光還元性染料および還元剤、ならびに米国特許公報(特許文献20)、米国特許公報(特許文献21)、および米国特許公報(特許文献22)に記載されているようなロイコ染料およびそれらの混合物など、フェナジン、オキサジン、およびキノンクラスの染料、ミヒラーケトン、ベンゾフェノン、2,4,5−トリフェニルイミダゾリルダイマーと水素供与体が開始剤として用いられてもよい。また、米国特許公報(特許文献23)に開示された増感剤は光開始剤および光抑制剤と共に用いて有用である。光開始剤または光開始剤系は、乾燥光重合性層の全重量を基準にして0.05〜10重量%において存在する。
【0055】
(G.有機溶剤)
溶剤または溶剤の混合物であってもよい、有機媒体の有機溶剤成分は、ポリマーおよび他の有機成分のその中の完全な溶液を得るために選択される。溶剤は、組成物の他の成分に対して不活性(非反応性)であるのがよい。スクリーン印刷可能なおよび光画像形成性ペーストのために、溶剤は、大気圧において比較的低いレベルの熱を加えることによって溶剤を分散体から蒸発させることができるために十分に高い揮発性を有するのがよいが、しかしながら、溶剤は、印刷プロセスの間、通常の室温においてペーストがスクリーン上で急速に乾燥するほど揮発性でないのがよい。ペースト組成物に使用するための好ましい溶剤は、大気圧において300℃未満、好ましくは250℃未満の沸点を有するのがよい。このような溶剤には、脂肪族アルコール、このようなアルコールのエステル、例えば、アセテートおよびプロピオネート、テルペン、例えばパイン油およびアルファ−またはベータ−テルピネオール、またはそれらの混合物、エチレングリコールおよびそれらのエステル、例えばエチレングリコールモノブチルエーテルおよびブチルセロソルブアセテート、カルビトールエステル、例えばブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテートおよびカルビトールアセテートおよび他の適切な溶剤、例えばテキサノール(Texanol)(登録商標)(2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート)などがある。キャスティングテープのために、溶剤は、スクリーン印刷可能なペーストのために用いられた溶剤よりも低い沸点を有する。このような溶剤には、エチルアセテート、メタノール、イソプロアノール(isoproanol)、アセトン、キシレン、エタノール、メチルエチルケトンおよびトルエンなどがある。
【0056】
(H.他の添加剤)
しばしば有機媒体はまた、1つまたは複数の可塑剤を含有する。このような可塑剤は、基板への良好な積層を確実にし、組成物の露光されていない領域の現像適性を強化するのに役立つ。可塑剤の選択は、第一に、改良する必要のあるポリマーによって決定される。様々な結合剤系において用いられている可塑剤には、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジベンジルフタレート、アルキルホスフェート、ポリアルキレングリコール、グリセロール、ポリ(エチレン酸化物)、ヒドロキシエチル化アルキルフェノール、トリクレシルホスフェートトリエチレングリコールジアセテートおよびポリエステル可塑剤がある。分散剤(dispersants)、安定剤、剥離剤、分散剤(dispersing agents)、剥離剤、消泡剤および湿潤剤などの当該技術分野に公知のさらに別の成分が組成物中に存在してもよい。適した材料の一般的な開示は米国特許公報(特許文献3)に示されている。
【0057】
(試料の調製および試験手順)
(有機媒体の調製)
有機媒体の主な目的は、ガラスまたは他の基板に容易に適用されうるような形態で組成物の微細固形分の分散体のためのビヒクルとして役立つことである。従って、有機媒体は第一に、固形分が十分な安定度で分散可能である有機媒体でなければならない。第2に、有機媒体のレオロジー性質は良好な適用性質を分散体に与えるようなものでなければならない。
【0058】
有機媒体の調製の一般的な手順は以下の通りである。溶剤およびアクリルポリマーを混合し、攪拌しながら100℃に加熱した。加熱および攪拌は、全結合剤ポリマーが溶解するまで続けられた。残りの有機成分を添加し、混合物は、全ての固形分が溶解するまで、黄色光下で75℃において攪拌された。溶液を冷却させた。
【0059】
(一般的なペーストの調製)
典型的に、厚いフィルム組成物はペースト状稠度を有するように調合され、「ペースト」と呼ばれる。一般に、ペーストは、有機ビヒクル、モノマー、および他の有機成分を混合容器内で混合することによって、黄色光下で調製される。次に、無機材料を有機成分の混合物に添加する。次いで、全組成物は、無機粉体が有機材料によって湿潤されるまで混合される。次に、混合物は、3つの練りロール機を用いてロール練りされる。この時点においてのペースト粘度を適切なビヒクルまたは溶剤で調節して加工のために最適な粘度を達成することができる。
【0060】
ペースト組成物の調製プロセスにおいておよび加工品の調製において夾雑物の混入を避けるように注意しないと、このような混入は欠陥につながる恐れがある。
【0061】
(一般的なテープの作製)
本発明の組成物を用いてテープ、シート、ロール、または他の同様な実体を形成してもよい。本発明者らは、この実体を一般にテープの形成に関して説明する。
【0062】
本発明の組成物は、テープの形態で用いられてもよい。組成物がテープの形態で用いられる場合、スリップを調製し、テープのキャスティングのために使用する。スリップは、テープの作製時に組成物のために用いられる一般的な用語であり、有機媒体中に分散された無機粉体の適切に分散された混合物である。有機媒体中の無機粉体の十分な分散を達成する一般的な方法は、通常のボールミリング方法の使用による。ボールミリングは、セラミックミリングジャーおよびミリング媒体(典型的に球形または円筒状アルミナまたはジルコニアペレット)からなる。全混合物をミリングジャー内に入れ、ミリング媒体を添加する。ジャーを漏れ止めの蓋で閉じた後、混転して、混合効率が最適化されるローリング速度においてジャー内のミリング媒体のミリング処置を行う。ローリングの長さは、十分に分散された無機粒子を達成して性能仕様を満たすために必要とされる時間である。スリップは、ブレードまたはバーコーティング方法または当業者に公知の他の方法によって基板に適用されてもよく、その後に、周囲または熱乾燥を行ってもよい。乾燥後のコーティング厚さは、用途に応じて、数ミクロンから数十ミクロンの範囲であってもよい。テープは、溶剤を十分に除去するために周囲または熱乾燥によって形成される。しかしながら、乾燥/加熱の時間および温度は、ポリマーと二官能性モノマーとの間の反応を開始するために一般に十分ではない。
【0063】
テープは、ワイドストックロール(widestock roll)として捲回される前にカバーシートを積層されてもよい。シリコーン被覆マイラー(テレフタレートPETフィルム)、ポリプロピレン、ポリエチレン、マイラーおよびナイロンが普通のカバーシート材料の例であり、カバーシートとして使用されてもよい。カバーシートは、最終基板に積層される前に除去される。
【0064】
(ガラスフリットの作製)
ガラスフリットは入手可能なもので使用されるか、または必要ならば直径0.5インチ×長さ0.5インチのアルミナ円筒を用いてスウェコ・ミル(Sweco Mill)内で水ミリングによって作製された。次に、ガラスフリット混合物を凍結乾燥するかまたは熱風乾燥した。熱風乾燥は通常、150℃の温度において行われた。
【0065】
ガラスフリットの作製の他の方法が同様に有効である場合がある。
【0066】
(C.印刷および積層条件)
最初に、実施例のブラックペーストを、355メッシュのポリエステルスクリーンを用いてスクリーン印刷することによってガラス基板上に付着させた。次に、その加工品を空気雰囲気炉内で約20分間、約80℃において乾燥させた。乾燥されたコーティング厚さは5〜8ミクロンに測定された。
【0067】
テープを積層するためにテープをガラス基板上にホットプレスし、次いでカバーシートを剥離した。
【0068】
(D.作業条件)
加工品は、フォトツールと試料表面との間に約100ミクロンの間隙を有する視準されたUV光源を用いてフォトツールを通して露光された。使用されたエネルギーレベルは、400〜1000mJ/sq.cmであった。露光された加工品は、現像剤溶液として水中に0.5重量%の炭酸ナトリウムを含有するコンベヤーで行われる噴霧処理装置を用いて現像された。現像剤溶液の温度を約30℃に維持し、現像剤溶液を10〜20psiにおいて噴霧した。現像された加工品を乾燥させるために、現像後に、強制空気ストリームで過剰な水をブローした。
【0069】
(一般的な焼成プロファイル)
本発明の組成物は、焼成プロファイルを用いて加工されてもよい。焼成プロファイルは、厚いフィルム技術の当業者の情報の十分に範囲内である。有機媒体の除去および無機材料の焼結は、焼成プロファイルに依存している。プロファイルは、媒体が完成物品から実質的に除去されているかどうかおよび無機材料が完成物品において実質的に焼結されているかどうかを決定する。本明細書中で用いられるとき、用語「実質的に」は、媒体の少なくとも95%の除去および使用目的または用途のために少なくとも十分な抵抗率または導電率を提供する点までの無機材料の焼結を意味する。
【0070】
実施例において、乾燥された加工品は、3時間のプロファイルを用いて、520〜580℃の10分のピーク温度で、空気雰囲気中で焼成された。
【0071】
(清浄にするための時間)
清浄にするための時間(TTC)は、基板上にコーティングされるかまたは印刷された光画像形成性ペーストが、10〜20psiの噴霧圧力で約30℃において、水中に0.5重量%の炭酸ナトリウムを含有するコンベヤーで行われる噴霧処理装置を用いて現像によって完全に除去される時間として定義される。TTCは、ペーストが印刷および乾燥された後、UV光に露光する前に試験加工品上で測定される。
【0072】
(ライン解像度)
画像形成された試料は、10倍の接眼レンズを用いて20倍の最小倍率のズーム顕微鏡を用いて検査された。一切の短絡(ライン間の接続)または開路(ラインの完全な破断)のない完全に無損傷であった最も細かい線群は、その試料についての明記されたライン解像度である。
【0073】
(乾燥試料の厚さ)
印刷された試料は、実施例I〜IVについて20分間80℃において乾燥され、実施例VおよびVIについて40分間82℃において乾燥された。乾燥された加工品をへらで引っ掻いた。厚さは、テンコー・アルファ・ステップ(Tencor Alpha Step)2000などのコンタクトプロファイルメーターを用いて4つの異なった点において測定された。
【0074】
(焼成された試料の厚さ)
印刷および乾燥された試料を550℃の10分のピークで3時間の加熱プロファイルを用いて焼成した。厚さは、コンタクトプロファイルメーターを用いて4つの異なった点において測定された。
【実施例】
【0075】
実施例I〜VIIIの組成物(全組成物の重量パーセント)を以下の表1に記載する。
【0076】
【表1】

【0077】
有機媒体組成物を表2、3、および4に記載する。材料の用語解説を表4の後に示す。
【0078】
【表2】

【0079】
【表3】

【0080】
【表4】

【0081】
(材料の用語解説)
導体粉体I:本願特許出願人によって製造された、Bi2Sr2CaCu2O8の調合物を有するブラック導体。
【0082】
導体粉体II:フェロー・コーポレーション(Ferro Corporation)製の銀粉体、7000−7。
【0083】
ガラスフリット:ガラスフリット、ガラスフリット組成物(重量パーセント):12.5%のB、9.1%のSiO、1.4%のAl、77.0%のPbO、[ヴィオックス(Viox)製のガラス製品番号24109、本願特許出願人によってY−ミリングされた]。
【0084】
SR−454:サートマー(Sartomer)から購入されたトリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート。
【0085】
マロン酸(Malnonic acid):アルドリッチ・ケミカルズ(Aldrich Chemicals)から購入された。
【0086】
テキサノール(Texanol)(登録商標):イーストマン・ケミカルズ(Eastman Chemicals)から購入された2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート。
【0087】
BHT:アルドリッチ・ケミカルズから購入された2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール。
【0088】
グリシジルメタクリレート:アルドリッチ・ケミカルズから購入された。
【0089】
ユバキュア(UVacure)(登録商標)1500:UCBケミカルズ製のフリーサンプルとして脂環式ジエポキシドモノマー。
【0090】
ユバキュア(登録商標)1600:UCBケミカルズ製のフリーサンプルとしてフェニル−p−オクチルオキシフェニル−ヨードニウムヘキサフルオルアンチモネート。
【0091】
DMAc:アルドリッチ・ケミカルズから購入されたN.N’−ジメチルアセトアミド。
【0092】
アクリレートコポリマーI:ノヴェオン(Noveon)から購入された、80重量%のメチルメタクリレートと20重量%のメタクリル酸とのコポリマー、重量平均分子量Mw=約7,000、酸価=約125。
【0093】
アクリレートコポリマーII:日本のネガミ・ケミカルズ(Negami Chemicals)によって製造された、35%のメチルメタクリレート、35%のエチルアクリレート、20%のブチルメタクリレートおよび20%のメタクリル酸のコポリマー、重量平均分子量=約38,000および酸価=約129。
【0094】
イルガキュア(登録商標)369:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)から購入された、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン。
【0095】
DETX:2,4−ジエチル−9H−チオキサンテン−9−オン アセト・コーポレーション(Aceto Corporation)製のDETXスピードキュア。
【0096】
EDAB:アルドリッチ・ケミカルズから購入されたエチル4−ジメチルアミノベンゾエート。
【0097】
TAOBN:1,4,4−トリメチル−2、3−ジアザビシクロ[3,2,2]−ノン−2−エン−N,N’−ジオキシド。
【0098】
DC209:本願特許出願人によるフォーデル(Fodel)(登録商標)ブランド光パターン化可能な銀導体の厚いフィルムペースト。
【0099】
実施例の間の性能の比較を以下の表5および6に記載する。
【0100】
【表5】

【0101】
【表6】

【0102】
実施例Iは、実験条件下で、元の組成物、すなわち二官能性モノマーの存在しない場合、印刷された、乾燥されUV硬化された試料は、現像工程によって完全に洗浄除去されたことを示す。
【0103】
実施例IIは、ジエポキシド官能基を有する分子とオニウム塩とだけを有する組成物が元の組成物よりもわずかだけ良く機能したことを示す。
【0104】
実施例IIIは、小さな二官能性モノマーを有する組成物が元の組成物よりもはるかに良く機能したことを示す。
【0105】
実施例IVは、小さな二官能性モノマーとジエポキシド分子とオニウム塩を有する組成物が最も良く機能したことを示す。それは20ミクロンのラインを保持することもできる。
【0106】
実施例Vは、グリシジルメタクリレートのない組成物に比べて、より良い現像許容度を示し、現像された導体ラインの厚さの低減のないことを示す。
【0107】
実施例VIは、グリシジルメタクリレートが、本願特許出願人によって現在販売中の製品DC209と単に混合され、DC209に比べて、より広い現像許容度および現像された導体ラインの厚さの低減を除くなど、DC209のより良い性能をもたらしたことを示す。
【0108】
実施例VIIは、エポキシドモノマーとオニウム塩とをDC209ペーストに添加することによって、DC209だけに比べて、現像された導体ラインの厚さの低減を除くなど、DC209をより良く機能させたことを示す。
【0109】
実施例VIIIは、光硬化性アクリレートモノマーを用いずに銀導体パターンを得ることができることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)導電性、電気抵抗性および誘電性の粒子から選択される電気機能性粉体と、
(b)325〜600℃の範囲のガラス転移温度を有する無機結合剤と
を含む無機材料の微細粒子を含み、
(c)コポリマー、インターポリマーまたはそれらの混合物である水性現像可能な非感光性ポリマーであって、各コポリマーまたはインターポリマーが、(1)C1−10のアルキルアクリレート、C1−10のアルキルメタクリレート、スチレン、置換スチレンまたはそれらの組合せを含む非酸性コモノマーと(2)エチレン性不飽和カルボン酸含有部分を含む酸性コモノマーとを含む水性現像可能な非感光性ポリマーと、
(d)第1および第2の官能性単位を有する二官能性UV硬化性モノマーであって、前記第1の官能性単位がビニル基であり、前記第2の官能性単位が、前記カルボン酸含有部分との反応によって化学結合を形成することができる、二官能性UV硬化性モノマーと
を含む有機媒体中に分散されること
を特徴とする光画像形成性前駆組成物。
【請求項2】
アクリル酸系またはメタクリル酸系光硬化性モノマーをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の前駆組成物。
【請求項3】
触媒をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の前駆組成物。
【請求項4】
前記二官能性UV硬化性モノマーの前記ビニル基が、メタクリレート、アクリレート基およびそれらの混合物から選択されることを特徴とする請求項1に記載の前駆組成物。
【請求項5】
前記二官能性UV硬化性モノマーの前記第2の官能性単位が、エポキシド、アルコール、アミンおよびそれらの混合物から選択されることを特徴とする請求項1に記載の前駆組成物。
【請求項6】
前記電気機能性粉体が、(i)Au、Ag、Pd、Pt、またはCu、(ii)RuO、(iii)ルテニウム系多元酸化物、および(v)それらの混合物から選択されることを特徴とする請求項1に記載の前駆組成物。
【請求項7】
エポキシドモノマーをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の前駆組成物。
【請求項8】
請求項1の前駆組成物と光開始系とを含むことを特徴とする光画像形成性組成物。
【請求項9】
有機溶剤をさらに含み、スクリーン印刷のために適したペーストの形態にあることを特徴とする請求項8に記載の光画像形成性組成物。
【請求項10】
請求項8に記載の光画像形成性組成物を含むことを特徴とするテープ。
【請求項11】
(a)請求項8の組成物を基板上に付着させる工程と、
(b)現像可能な非光画像形成性ポリマーと二官能性モノマーとの反応を開始して感光性ポリマーおよび光パターン化可能な組成物を形成する工程と、
(c)(b)の前記光パターン化可能な組成物および(a)の基板を化学線に露光して露光された部分を形成する工程と、
(d)(b)の前記露光された部分を現像して現像された部分を形成する工程と、
(e)(c)の前記現像された部分を焼成して有機媒体を実質的に除去し、無機材料を実質的に焼結する工程と
を含むことを特徴とする光パターン化方法。
【請求項12】
工程(a)の後に前記組成物中に存在する有機溶剤を除去するための乾燥工程があることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記開始工程(b)が工程(c)と同時に行われることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記開始工程(b)が乾燥工程と同時に行われることを特徴とする請求項12に記載の方法。

【公表番号】特表2008−509439(P2008−509439A)
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−525053(P2007−525053)
【出願日】平成17年8月5日(2005.8.5)
【国際出願番号】PCT/US2005/028005
【国際公開番号】WO2006/017791
【国際公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】