説明

光モジュール用フォルダ

【課題】光素子を含む光素子パッケージを短時間で且つ容易に位置決めできる光モジュール用フォルダを提供する。
【解決手段】光素子を内蔵した光素子パッケージを備えており光素子と光ファイバとを光結合する光モジュールを構成するフォルダ1であって、光ファイバの端部に設けられたフェルールが挿入される挿入孔11を有するスリーブ部10と、光素子パッケージが固定される固定部20と、スリーブ部10と固定部20との間に設けられたレンズ部30と、を備えている。スリーブ部10は、挿入孔11における開口端面12の反対側にある照準面13を有し、照準面13はレンズ部30の光軸Lを示す照準部を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光素子を内蔵した光素子パッケージを備えており光素子と光ファイバとを光結合する光モジュールを構成するフォルダに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、データ通信の高速化・大容量化に伴い、光ファイバを用いた光ファイバ通信技術への需要が高まっている。発光素子や受光素子といった光素子と光ファイバとを相互に結合する光モジュールは、光通信機器に用いられる部品の一つである。このような光モジュールは、例えば光素子パッケージ及びフォルダによって構成される。光素子パッケージは、光素子を内蔵しており、しばしばCANパッケージと称される。フォルダは、光ファイバの端面を保持するフェルールが挿入されるスリーブ、光素子パッケージが固定される固定部、及び固定部とスリーブとの間に配置されたレンズを有する。光素子パッケージ内の光素子と、フェルールによって保持された光ファイバとは、レンズを介して光学的に結合される。
【0003】
特許文献1には、上記のような構成を有するフォルダと光素子パッケージとを備える光モジュールが記載されている。図15は、この光モジュールの構成を示す断面図である。図15を参照すると、特許文献1に開示されている光モジュール100は、フォルダ110と、光素子103を内蔵する光素子パッケージ102とを備えている。フォルダ110は、光ファイバ101を保持したフェルール104が挿入されるスリーブ112と、レンズ113と、光素子パッケージ102を固定する固定部114とを有している。
【0004】
特許文献2には、光モジュールの製造方法が記載されている。この製造方法では、光ファイバと光素子との光軸を合わせる際、フォルダに仮配置した光素子を発光させる。そして、発光させた光素子をその光軸と直交する方向に振動させながら、光ファイバの端面から出射される光の強度を観察する。光強度の波形が線対称となる対称軸の位置において、フォルダに光素子パッケージを固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−107692号公報
【特許文献2】特開2007−155973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された光モジュール100において所望の光結合効率を得るためには、光素子103の位置をレンズ113の焦点に精度良く一致させることが望ましい。例えば、光ファイバ101がマルチモードファイバであるとき、レンズ113の光軸と直交する方向において、光素子103はレンズ113の焦点から10μm程度の範囲内に位置決めされる必要がある。しかし、光素子103を光素子パッケージ102の内部に実装する工程において、このような位置精度でもって光素子103を実装することは容易ではなく、その実現のためには高価な精密実装装置や高精度に加工された部材を用いる必要がある。
【0007】
また、特許文献2に記載された光モジュールの製造方法では、光素子を発光させ、且つ光ファイバから出射される光の強度を検出するための装置が必要であり、また、光素子パッケージの最適な位置を確定するまでに長時間を要するという問題がある。
【0008】
本発明は、上述した問題点を鑑みてなされたものであり、光素子を含む光素子パッケージを短時間で且つ容易に位置決めできる光モジュール用フォルダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明による光モジュール用フォルダは、光素子を内蔵した光素子パッケージを備えており光素子と光ファイバとを光結合する光モジュールを構成するフォルダであって、光ファイバの端部に設けられたフェルールが挿入される挿入孔を有するスリーブ部と、光素子パッケージが固定される固定部と、スリーブ部と固定部との間に設けられたレンズ部と、を備え、スリーブ部は挿入孔における開口端面の反対側にある照準面を有し、照準面はレンズ部の光軸を示す照準部を有する。
【0010】
この光モジュール用フォルダは、スリーブ部と固定部との間に設けられたレンズ部を備えているので、光ファイバから出射された光を効率よく光素子に集光することができる。また、光素子から出射された光を効率よく光ファイバの端面に集光することができる。更に、この光モジュール用フォルダでは、スリーブ部が照準面を有する。照準面は、レンズ部の光軸を示す照準部を有するので、光素子パッケージの位置決めを行う際に、スリーブ部側から照準部を観察することによって照準面におけるレンズ部の光軸の位置を視覚的に確認できる。そして、照準面に映る光素子の像の位置をレンズ部の光軸位置を基準として調整することによって、光素子の位置を好適に調整することができる。従って、光素子を含む光素子パッケージを短時間で且つ容易に位置決めすることができる。
【0011】
また、上記光モジュール用フォルダは、フェルールが当接する当接面をスリーブ部が有し、レンズ部の光軸に沿った方向の当接面の位置が開口端面と照準面との間であり、該当接面には照準面を底面とする凹部が形成されていることが好ましい。このような構成によれば、レンズ部の光軸に沿った方向における光ファイバの端面の位置を所定の位置に精度良く且つ容易に設定することができる。また、当接面には照準面を底面とする凹部が形成されているので、光ファイバの端面において当接面に当接する部分を低減できる。従って、光ファイバの端面を破損等から保護することができる。また、この場合、レンズ部の光軸に沿った方向から見た凹部の直径が光ファイバの直径よりも大きいことがより好ましい。このような構成によれば、光ファイバの端面が当接面に当接しないので、光ファイバの端面をより効果的に保護することができる。
【0012】
また、上記光モジュール用フォルダは、光素子が、光ファイバから出射された光が入射される領域又は光素子の内部で発生した光を出射する領域である光入出力領域を有し、レンズ部が、光入出力領域を物点としたときの像点であって所定波長に対応する第1像点を有し、所定波長が、光ファイバから出射される光の波長又は光素子の内部で発生する光の波長であり、第1像点が当接面を含む平面に重なることが好ましい。このような構成によれば、当接面を含む平面と、当接面により位置決めされる光ファイバの端面とが互いに重なる。これ故、光ファイバの端面に第1像点を重ねることができるので、光ファイバから出射された光を効率よく光素子に集光することができる。また、光素子から出射された光を効率よく光ファイバの端面に集光することができる。なお、所定波長は800nmよりも長くてもよい。また、この光モジュール用フォルダでは、第1像点が当接面からレンズ部の光軸に沿った方向に離間した平面に重なっていてもよい。このような構成によれば、光結合効率を所望の値に調整することができる。また、レンズ部と光ファイバとの軸ずれに対する許容度を高めることができる。
【0013】
また、上記光モジュール用フォルダは、光素子が、光ファイバから出射された光が入射される領域又は光素子の内部で発生した光を出射する領域である光入出力領域を有し、照準面が、レンズ部の光軸を中心として照準面に結像される光入出力領域の像の輪郭と、像の占める面積の4倍の面積を有しレンズ部の光軸を中心とする領域の輪郭とにより囲まれた照準領域を有し、照準部が、光入出力領域の像が含まれる範囲の輪郭を示す基準エッジを備え、基準エッジが照準領域内に形成されていることが好ましい。このような構成によれば、基準エッジにより光入出力領域の像が含まれる範囲の輪郭が示されるので、照準面において光入出力領域の像をレンズ部の光軸位置に容易に近づけることができる。また、照準部の基準エッジが、光入出力領域の像の輪郭の外側に形成されているので、光ファイバの端面から出射された光又は光素子から出射された光が照準部により散乱されることを防止できる。更に、照準部の基準エッジが、光入出力領域の像の占める面積の4倍の面積を有する領域の輪郭の内側といった、光軸位置に比較的近い位置に形成されているので、光軸位置をより正確に認識でき、光軸位置に対する光入出力領域の像の位置ずれを精度良く検出することができる。
【0014】
また、上記光モジュール用フォルダは、光素子が、光ファイバから出射された光が入射される領域又は光素子の内部で発生した光を出射する領域である光入出力領域を有し、レンズ部が、光入出力領域を物点としたときの像点であって観察用波長に対応する第2像点を有し、観察用波長が可視光の波長域に含まれる波長であり、第2像点が照準面に重なることが好ましい。このような構成によれば、照準面に光入出力領域の像を結像させて、光入出力領域の像を明確に観察することができる。なお、観察用波長は600nmより短くてもよい。
【0015】
また、上記光モジュール用フォルダは、レンズ部が、スリーブ部及び固定部と一体成形されており、レンズ部、スリーブ部及び固定部は、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、及びポリメタクリル酸メチルのうち少なくとも1つの材料により構成されていることが好ましい。このような構成によれば、レンズ部とスリーブ部と固定部とが一体成形されているので、光ファイバの端面とレンズ部との相対的な位置関係を精度良く設定することができる。また、上記各材料はいずれも光透過性を有するので、この一体成形物が上記材料によって構成されていることにより、スリーブ部と光素子との光結合を好適に実現できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明による光モジュール用フォルダによれば、光素子を含む光素子パッケージを短時間で且つ容易に位置決めできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るフォルダを備える光モジュールの構成を示す図である。
【図2】図2は、光素子の平面図である。
【図3】図3は、本発明に係る光モジュール用フォルダの一実施形態を示す図である。
【図4】図4は、照準部を示す図である。
【図5】図5は、フォルダにおける光路を示す図である。
【図6】図6は、フォルダにおける別の光路を示す図である。
【図7】図7は、一実施形態に係る光モジュールの製造方法を示すフローチャートである。
【図8】図8は、光モジュールの製造方法に含まれる主要な工程を示す図である。
【図9】図9は、光モジュールの製造方法に含まれる主要な工程を示す図である。
【図10】図10は、光モジュールの製造方法に含まれる主要な工程を示す図である。
【図11】図11は、カメラにより得られる画像の一例を模式的に示した図である。
【図12】図12は、光軸がレンズ部の中心軸と一致しない場合を示す図である。
【図13】図13は、照準部の変形例を示す図である。
【図14】図14は、照準部の別の変形例を示す図である。
【図15】図15は、従来の光モジュールの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る光モジュール用フォルダ(以下、単に「フォルダ」という。)の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0019】
図1は、本実施形態に係るフォルダ1を含む光モジュール90の断面を示す図である。光モジュール90は、光素子4を内蔵した光素子パッケージ3を備えている。光素子パッケージ3は、光素子4を収容する空間を規定する容器3a、及び光素子4を含む複数の機能素子が実装されるベース3bを備えている。フォルダ1には、光ファイバ2aの一端部と、該一端部に取り付けられたフェルール2bとが挿入される。フォルダ1は、光ファイバ2aと光素子4とを相互に光結合する。なお、光ファイバ2aは、例えばマルチモードファイバである。
【0020】
光素子4としては、例えば発光素子であるレーザダイオード、又は受光素子であるフォトダイオードを用いることができる。本実施形態では、光素子4として、表面発光型の半導体レーザ素子4Lが用いられている。半導体レーザ素子4Lから出射される光の波長は、可視域より長く、例えば850nmである。図2は、半導体レーザ素子4Lの平面図である。図2を参照すると、半導体レーザ素子4Lの主面4aには、光素子4における光入出力領域としての出射領域4bが形成されている。出射領域4bは、半導体レーザ素子4Lの内部で発生した光を出射する領域である。出射領域4bの周囲には、電極4cが設けられている。電極4cは、例えば出射領域4bを囲むリング状を呈しており、このような電極4cの形状によって、出射領域4bの輪郭を容易に視認することができる。なお、電極4cには、ワイヤボンディングの為のパッド電極4dが電気的に接続されている。また、光素子4として例えばフォトダイオード等の受光素子を用いる場合、光入出力領域は、光ファイバ2aから出射された光が入射される領域である。また、光素子4として例えば端面発光型のレーザダイオードを用いる場合、発光端面が光入出力領域に相当し、この光入出力領域は、発光端面に存在する突起などによって視認されることができる。
【0021】
次に、図3を参照して、本実施形態に係るフォルダ1について詳細に説明する。図3は、フォルダ1の断面を示す図である。フォルダ1は、スリーブ部10、固定部20及びレンズ部30を有する。レンズ部30は、スリーブ部10及び固定部20と一体成形されている。レンズ部30は、光軸Lを有する。光軸Lは、挿入孔11の中心軸と一致している。レンズ部30、スリーブ部10及び固定部20は、例えばポリエーテルイミド(PEI)、ポリカーボネート(PC)、又はポリメタクリル酸メチル(PMMA)等の光透過性を有するプラスチック材料からなる。フォルダ1は、例えばこれらのようなプラスチック材料を射出成形して形成される。
【0022】
固定部20には、光素子パッケージ3(図1参照)が固定される。固定部20は、固定面21と、光軸Lに沿った方向に延びる収納孔22とを有している。収納孔22には、光素子パッケージ3の容器3aが挿入される。固定面21には、半導体レーザ素子4Lを含む複数の機能素子が実装されたベース3bの周縁部が当接する。そして、この当接部分において固定面21とベース3bとが互いに接着されることによって、フォルダ1に光素子パッケージ3が固定される。
【0023】
スリーブ部10は、挿入孔11、照準面13、及び当接面14を有している。挿入口11は、光軸Lに沿った方向に延びている。スリーブ部10は、挿入孔11の一端側に開口端面12を有しており、光ファイバ2aの端部に設けられたフェルール2b(図1を参照)は、該開口端面12側から挿入口11に挿入される。照準面13及び当接面14は、挿入孔11における開口端面12の反対側(すなわち他端側)において、光軸Lに垂直な平面に沿ってそれぞれ形成されている。照準面13には、レンズ部30の光軸Lを示す照準部(後述)が形成されている。レンズ部30の光軸Lに沿った方向における当接面14の位置は、開口端面12と照準面13との間にある。当接面14には、照準面13を底面とする凹部15が形成されている。レンズ部30の光軸Lに沿った方向から見た凹部15の直径D2は、典型的な光ファイバ2aの直径(例えば125μm)よりも大きいことが望ましく、例えば600μmである。なお、本実施形態では、照準面13の直径は凹部15の直径D2と略等しい。当接面14の直径D3は、フェルール2bが挿入可能な大きさであると共に、凹部15の直径D2よりも大きい。
【0024】
ここで、図4を参照して、照準面13に形成された照準部16について詳細に説明する。図4は、照準部16を示す図であり、図4の(a)部は照準面13における照準部16を含む領域を拡大した断面図であり、図4の(b)部は照準部16の平面図である。照準部16は、図3に示されたレンズ部30の光軸Lの中心位置を示しており、半導体レーザ素子4Lの位置決めに用いられる。すなわち、開口端面12側から挿入口11の内部を観察したときに、照準面13に映し出される半導体レーザ素子4Lの出射領域4bの中心を、照準部16が示す光軸Lの中心位置に近づけることによって、半導体レーザ素子4Lを位置決めすることができる。なお、照準面13に映し出される出射領域4bの大きさは、出射領域4bの直径D1(図2参照)にレンズ部30が有する倍率を乗じて得た寸法値と同程度となる。
【0025】
照準部16は、例えば直径が10μm〜30μm程度の円形といった平面形状を有する凹部や凸部、或いはクロスマークなどによって好適に実現される。なお、図4には、照準面13に形成された平面円形状の凹部からなる照準部16が例示されている。一実施例では、この照準部16の直径D4は20μmであり、その深さ(照準面13と凹部の底面16bとの段差A0)は10μmである。照準面13は、輪郭17aと輪郭17bとにより囲まれた照準領域17を有する。輪郭17aは、光軸Lを中心として照準面13に結像される出射領域4bの像の輪郭である。また、輪郭17bは、出射領域4bの像の占める面積の4倍の面積を有し(すなわち出射領域4bの像の直径の2倍の直径を有し)光軸Lを中心とする領域の輪郭である。光軸Lの方向から見て、照準領域17内には、照準部16の基準エッジ16aが形成されている。基準エッジ16aは、出射領域4bの像が含まれる範囲の輪郭を示す形状であり、例えば本実施形態の基準エッジ16aは、光軸Lを中心とする円形状といった平面形状を有することによって、光軸Lの中心位置を直接的に示している。
【0026】
半導体レーザ素子4L若しくは光ファイバ2aから出射された光の散乱を避けるため、照準部16(特に基準エッジ16a)は輪郭17aよりも外側に形成されていることが望ましい。さらに、出射領域4bの像と光軸Lとを照準面13において精度良く位置合わせするために、基準エッジ16aは輪郭17bよりも内側に形成されていることが望ましい。そして、基準エッジ16aにより示される範囲の輪郭の大きさは、出射領域4bの直径D1に、レンズ部30が有する倍率を乗じた大きさ(すなわち、照準面13における出射領域4bの像の大きさ)に対して、係数1ないし2を乗じた大きさであることが望ましい。例えば、基準エッジ16aにより囲まれる範囲の輪郭の直径は、10〜30μmである。
【0027】
次に、図5及び図6を参照して、レンズ部30について詳細に説明する。図5は、フォルダ1が有する、所定波長での光路を示す図である。ここで、所定波長とは、半導体レーザ素子4Lの内部で発生し、出射領域4bから出射される光の波長である。或いは、光素子4が受光素子である場合、所定波長とは、ファイバ2aから出射され、該受光素子へ入射する光の波長である。所定波長は、可視域より長い波長(具体的には800nmよりも長い波長)として設定されることが好ましく、例えば、850nm、1300nm、あるいは1550nmである。
【0028】
図5に示されるように、レンズ部30は、出射領域4bを物点としたときの像点であって所定波長の光に対応する第1像点F1を有する。本実施形態の第1像点F1は、当接面14を含む仮想平面14aと焦点深度の範囲内で重なっている。すなわち、半導体レーザ素子4Lの出射領域4bを対物側の焦点(すなわち物点)としたときに、虚像側の焦点(すなわち像点)である第1像点F1は、光ファイバ2aの端面に一致する。なお、第1像点F1は、仮想平面14aからレンズ部30の光軸Lに沿った方向(或いはフォルダ1の光軸方向)に離間した別の仮想平面に重なっていてもよい。
【0029】
図6は、上述した所定波長よりも短い観察波長での光路を示す図である。ここで、観察波長とは、視覚によって観察可能な可視域に含まれる波長である。観察波長は600nmより短いことが好ましく、一実施例では555nmである。レンズ部30は、出射領域4bを物点としたときの像点であって観察波長の光に対応する第2像点F2を有する。本実施形態の第2像点F2は、照準面13を含む仮想平面14bと焦点深度の範囲内で重なっている。
【0030】
ここで、所定波長が850nmであり、観察波長が550nmであり、フォルダ1がポリエーテルイミドからなる場合に、上述した第1像点F1及び第2像点F2を実現するためのレンズ部30周辺の具体的な構造例を示す。なお、ポリエーテルイミドの屈折率は、波長550nmの可視光線に対しては1.67であり、波長850nmの光に対しては、1.64である。図5に示されるように、レンズ部30は、所定の曲率半径を有するレンズ曲面部31を有しており、レンズ曲面部31の頂部付近における曲率半径は、例えば0.689mmである。なお、レンズ曲面部31は、収差を補正するために非球面とされることが望ましい。
【0031】
また、図5に示されるように、レンズ部30において、照準面13と平行であり且つレンズ曲面部31の頂部を含む仮想平面32を想定すると、フォルダ1と光素子パッケージ3とを相互に固定したとき、仮想平面32と出射領域4bとの間の光軸Lに沿った方向の距離A1は、例えば2.2mmである。また、仮想平面32と照準面13との間の光軸Lに沿った方向の距離A2は、例えば3.146mmである。また、照準面13と当接面14との間の光軸Lに沿った方向の距離A3は、例えば0.137mmである。なお、一般に透明樹脂の屈折率は、波長が短くなるほど大きくなる傾向がある。従って、所定波長と観察用波長とを離すために短波長の観察光を用いるときには、照準面13と当接面14との間の光軸Lに沿った方向の距離A3を大きくするとよい。
【0032】
次に、図7〜図10を参照して、本実施形態に係るフォルダ1を用いて光モジュール90を製造する方法について説明する。図7は、光モジュール90の製造方法を示すフローチャートである。また、図8〜図10は、光モジュール90の製造方法における主要な工程を示す図である。この製造方法では、スリーブ部10の開口端面12側から照準面13を観察して、光軸Lに対する出射領域4bの位置ずれの大きさを評価する。そして、位置ずれの大きさが適切な範囲に入るように、フォルダ1と光素子パッケージ3との位置関係を調整したのち、これらを相互に接着固定する。なお、図8〜図10にはXYZ座標系を設定し、以下の説明に用いる。以下の説明において、XYZ座標系のZ軸方向は、レンズ部30の光軸Lと平行である。
【0033】
図8を参照すると、工程S100では、上述したフォルダ1を準備する。工程S101では、光素子パッケージ3をXYステージ51に固定する。XYステージ51は、光素子パッケージ3を支持する装置である。XYステージ51は、当接面14を含む仮想平面14aと平行な平面内において、光素子パッケージ3をX軸方向又はY軸方向に移動させる。
【0034】
工程S102では、フォルダ1と観察用治具52とを接続する(焦点調整工程)。観察用治具52は、カメラ53(撮像装置)とチャック54とを有している。観察用治具52は、カメラ53をフォルダ1に連結するための治具である。カメラ53は、照準面13に結像された出射領域4bの像と照準部16とを観察するために用いられる。カメラ53には、F値が小さく、且つ焦点深度の浅いレンズを用いるとよい。チャック54は、カメラ53を保持した状態でフォルダ1を掴むことによって、カメラ53とフォルダ1とを相互に接続する。チャック54は、チャック54の所定の位置にフォルダ1を把持したときに、カメラ53のフォーカスF3(撮像焦点)が照準面13と重なるように構成されている。
【0035】
なお、カメラ53とチャック54とは一体に構成されている必要はなく、個別に配置されてもよい。即ち、カメラ53は、フォルダ1の照準面13が観察できるように配置されていればよく、具体的にはカメラ53のフォーカスF3が照準面13に重なる位置に配置されていればよい。
【0036】
図9を参照すると、工程S103では、Z軸方向(面外方向)における半導体レーザ素子4Lの位置を調整する(面外調整工程)。この工程では、まず、カメラ53を用いて照準面13を観察する。カメラ53のフォーカスF3は照準面13に重なっているので、視野の中心には、照準面13に設けられた照準部16が明瞭に確認される。そして、フォルダ1を把持した観察用治具52をZ軸方向に移動させることによって、出射領域4bの像が照準面13に結像されるように、照準面13と半導体レーザ素子4Lとの相対距離を調整する。こうして、出射領域4bの像を照準面13に結像させることにより、照準部16と共に出射領域4bの像が明瞭に確認される。カメラ53により照準部16と出射領域4bの像とが明瞭に確認されたところで、Z軸方向における半導体レーザ素子4Lの位置を調整する工程が終了する。
【0037】
なお、上記工程S103において用いられる観察光は、観察用波長成分(例えば550nm)のみから成る単色光であることが望ましい。このような観察光を用いることで、より正確なZ軸方向の調芯作業を実施できる。また、光ファイバ2aと半導体レーザ素子4Lとの光結合効率を所望の値に調整するため、或いはレンズ部30の光軸Lと光ファイバ2aとの光軸ずれに対する許容度を高めるために、カメラ53により照準部16と出射領域4bの像とが明瞭に確認された後に、フォルダ1と光素子パッケージ3とのZ軸方向の距離を所定の距離だけ変更してもよい。
【0038】
図10を参照すると、工程S104では、照準面13と平行な平面(すなわちXY平面)に沿った方向(面内方向)における半導体レーザ素子4Lの位置を調整する(面内調整工程)。ここで、図11は、カメラ53により得られる画像の一例を模式的に示した図である。カメラ53により取得された画像において、照準部16により示される光軸Lの位置と、出射領域4bの像の中心4dとがずれているときには、XYステージ51を調整して、出射領域4bの像の中心4dを光軸Lに近づける。図11に示された画像の一例では、出射領域4bの像の中心4dは照準部16により示される光軸Lからずれているものの、XYステージ51を調整することにより、中心4dを光軸Lに容易に近づけることができる。こうして、出射領域4bの像の中心4dが光軸Lにほぼ一致したところで、光素子パッケージ3の位置が適切に調整されたものとして、XY平面に沿った方向における半導体レーザ素子4Lの位置を調整する工程を終了する。
【0039】
再び図10を参照すると、工程S105では、光素子パッケージ3のベース3bをフォルダ1の固定部20の固定面21に接着固定する。以上の工程により、良好な光結合を得ることができる光モジュール90が完成する。
【0040】
本実施形態に係るフォルダ1は、挿入孔11が形成されたスリーブ部10を有している。これにより、光ファイバ2aの端部に設けられたフェルール2bを挿入孔11に挿入して、フォルダ1に光ファイバ2aを接続することができる。また、フォルダ1は、光素子パッケージ3が固定される固定部20を有している。これにより、半導体レーザ素子4Lが搭載された光素子パッケージ3をフォルダ1に固定することができる。また、スリーブ部10と固定部20との間にレンズ部30が設けられているので、半導体レーザ素子4Lから出射された光を効率よく光ファイバ2aの端面に集光することができる。
【0041】
更に、本実施形態に係るフォルダ1では、スリーブ部10が照準面13を備えており、照準面13は、レンズ部30の光軸Lの中心位置を示す照準部16を有する。これ故、照準面13においてレンズ部30の光軸Lの位置を視覚的に確認しながら、半導体レーザ素子4Lの出射領域4bの像の位置を光軸Lに近づけることによって、半導体レーザ素子4Lを位置決めすることができる。従って、本実施形態のフォルダ1によれば、半導体レーザ素子4Lを発光させることなく、半導体レーザ素子4Lを短時間で且つ容易に位置決めすることができ、光モジュール90の製造コストを低減させることができる。
【0042】
また、本実施形態に係るフォルダ1のスリーブ部10は当接面14を有しており、レンズ部30の光軸Lに沿った方向における当接面14の位置が、開口端面12と照準面13との間にある。従って、光軸Lに沿った方向における光ファイバ2aの端面の位置を所定の位置に精度良く且つ容易に設定することができる。更に、当接面14には照準面13を底面とする凹部15が形成されているので、光ファイバ2aの端面のうち当接面14に接触する部分を低減し、光ファイバ2aの端面を破損等から保護することができる。
【0043】
また、本実施形態に係るフォルダ1の凹部15の直径D2は、光ファイバ2aの直径より大きい。従って、フェルール2bの端面が当接面14と接触して位置決めされる一方で、光ファイバ2aの端面は当接面14に接触せず、光ファイバ2aの端面を破損等からより効果的に保護することができる。
【0044】
また、本実施形態に係るフォルダ1のレンズ部30は、所定波長に対応する第1像点F1を有している。そして、第1像点F1は、当接面14を含む仮想平面14aに重なっている。この仮想平面14aには、光ファイバ2aをスリーブ部10に挿入したときに光ファイバ2aの端面が重なるので、このような構成によって第1像点F1と光ファイバ2aの端面とが互いに重なることとなる。従って、半導体レーザ素子4Lから出射された光を効率よく光ファイバ2aの端面に集光することができる。なお、第1像点F1は、当接面14からレンズ部30の光軸Lに沿った方向(或いはフォルダ1の光軸方向)に離間した仮想平面に重なっていてもよい。このように構成することで、光結合効率を所望の値に調整することができ、また、レンズ部30の光軸Lと光ファイバ2aとの軸ずれに対する許容度を高めることができる。
【0045】
また、本実施形態では、照準部16が基準エッジ16aを備えている。基準エッジ16aにより、半導体レーザ素子4Lの出射領域4b(光入出力領域)の像が含まれる範囲の輪郭が示されるので、照準面13において出射領域4bの像をレンズ部30の光軸Lに容易に近づけることができる。また、本実施形態では、照準部16(特に基準エッジ16a)が、レンズ部30の光軸Lを中心として照準面13に結像される出射領域4bの像の輪郭17aの外側に形成されているので、半導体レーザ素子4Lから出射された光が照準部16により散乱されることを防止できる。更に、基準エッジ16aが、出射領域4bの像の占める面積の4倍の面積を有する領域の輪郭17bの内側といった、光軸Lに比較的近い位置に形成されているので、光軸Lの位置をより正確に認識でき、光軸Lに対する出射領域4bの像の位置ずれを精度良く検出することができる。
【0046】
また、本実施形態では、レンズ部30が、観察用波長に対応する第2像点F2を有しており、第2像点F2は照準面13に重なっている。これにより、照準面13に出射領域4bの像を結像させて、出射領域4bの像を明確に観察することができる。
【0047】
また、本実施形態に係るフォルダ1のレンズ部30は、スリーブ部10及び固定部20と一体成形されているので、光ファイバ2aの端面とレンズ部30との相対的な位置関係を精度良く設定することができる。また、レンズ部30、スリーブ部10及び固定部20は、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、及びポリメタクリル酸メチルといった光透過性の材料のうち少なくとも1つにより構成されているので、スリーブ部10と半導体レーザ素子4Lとの光結合を好適に実現できる。
【0048】
なお、これまでの説明では、光軸Lが、レンズ部30の中心軸と一致する場合について例示をしたが、光軸Lは、必ずしもレンズ部30の中心軸と一致している必要は無い。例えば、図12に示されるように、出射領域4b(光入出力領域)をレンズ部30の中心軸線上から外れた位置に配置した場合、光軸Lはレンズ部30の中心軸線に対して傾斜することとなる。このような場合においても、出射領域4b(光入出力領域)を物点としたときに光ファイバ2aの端面(フェルール2bの中心)に像点(第1像点F1)が重なるように、レンズ部30の位置や形状を設計することができる。このような設計によれば、半導体レーザ素子4Lから発した光が光ファイバ2aの端面に対して斜め方向から入射するので、光ファイバ2aの端面から反射した光が半導体レーザ素子4Lに戻ることを防ぐことができ、半導体レーザ素子4Lの動作を安定させることができる。
【0049】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、照準部16の形状は、レンズ部30の光軸Lの中心位置を認識できるものであれば、どのような形状でもよい。図13は、上記実施形態に係るフォルダ1が有する照準部16の変形例を示す図である。図13の(a)部は本変形例に係る照準部60付近を拡大した側面図であり、図13の(b)部はその平面図である。図13を参照すると、照準部60は、レンズ部30の光軸Lに対して3方向にそれぞれ伸びる突起部61〜63により構成されている。突起部61〜63は、光軸L側の一端に基準エッジ61a〜63aを有しており、これらの基準エッジ61a〜63aは、上記実施形態における基準エッジ16aと同様の機能を有する。なお、基準エッジ61a〜63aは、輪郭17aと輪郭17bとに囲まれた照準領域17内に形成されていることが好ましい。また、本変形例のような照準部は、光軸Lに対して任意のN方向に延びるN個(但し、Nは2以上)の突起部によって構成されることができる。
【0050】
図14は、上記実施形態に係るフォルダ1が有する照準部16の別の変形例を示す図である。図14の(a)部は本変形例に係る照準部70付近を拡大した側断面図であり、図14の(b)部はその平面図である。図14を参照すると、照準部70は、平面形状が円形であるリブ状の突起71により構成されている。突起71の内壁面は基準エッジ71aを構成しており、この基準エッジ71aは、上記実施形態における基準エッジ16aと同様の機能を有する。なお、基準エッジ71aは、輪郭17aと輪郭17bとに囲まれた照準領域17内に形成されていることが好ましい。
【符号の説明】
【0051】
1…フォルダ、2a…光ファイバ、2b…フェルール、3…光素子パッケージ、4…光素子、10…スリーブ部、11…挿入孔、12…開口端面、13…照準面、16…照準部、20…固定部、30…レンズ部、90…光モジュール、L…光軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光素子を内蔵した光素子パッケージを備えており前記光素子と光ファイバとを光結合する光モジュールを構成するフォルダであって、
前記光ファイバの端部に設けられたフェルールが挿入される挿入孔を有するスリーブ部と、
前記光素子パッケージが固定される固定部と、
前記スリーブ部と前記固定部との間に設けられたレンズ部と、
を備え、
前記スリーブ部は前記挿入孔における開口端面の反対側にある照準面を有し、
前記照準面は前記レンズ部の光軸中心を示す照準部を有することを特徴とする、光モジュール用フォルダ。
【請求項2】
前記スリーブ部は前記フェルールが当接する当接面を有し、前記レンズ部の光軸に沿った方向の前記当接面の位置が前記開口端面と前記照準面との間であり、
前記当接面には前記照準面を底面とする凹部が形成されたことを特徴とする、請求項1に記載の光モジュール用フォルダ。
【請求項3】
前記レンズ部の光軸に沿った方向から見た前記凹部の直径は、前記光ファイバの直径よりも大きいことを特徴とする、請求項2に記載の光モジュール用フォルダ。
【請求項4】
前記光素子は、前記光ファイバから出射された光が入射される領域又は前記光素子の内部で発生した光を出射する領域である光入出力領域を有し、
前記レンズ部は、前記光入出力領域を物点としたときの像点であって所定波長に対応する第1像点を有し、
前記所定波長は、前記光ファイバから出射される光の波長又は前記光素子の内部で発生する光の波長であり、
前記第1像点は前記当接面を含む平面に重なることを特徴とする、請求項2又は請求項3に記載の光モジュール用フォルダ。
【請求項5】
前記光素子は、前記光ファイバから出射された光が入射される領域又は前記光素子の内部で発生した光を出射する領域である光入出力領域を有し、
前記レンズ部は、前記光入出力領域を物点としたときの像点であって所定波長に対応する第1像点を有し、
前記所定波長は、前記光ファイバから出射される光の波長又は前記光素子の内部で発生する光の波長であり、
前記第1像点は、前記当接面から前記レンズ部の光軸に沿った方向に離間した平面に重なることを特徴とする、請求項2又は請求項3に記載の光モジュール用フォルダ。
【請求項6】
前記所定波長は800nmよりも長いことを特徴とする、請求項4又は請求項5に記載の光モジュール用フォルダ。
【請求項7】
前記光素子は、前記光ファイバから出射された光が入射される領域又は前記光素子の内部で発生した光を出射する領域である光入出力領域を有し、
前記照準面は、前記レンズ部の光軸を中心として前記照準面に結像される前記光入出力領域の像の輪郭と、前記像の占める面積の4倍の面積を有し前記レンズ部の光軸を中心とする領域の輪郭とにより囲まれた照準領域を有し、
前記照準部は、前記光入出力領域の像が含まれる範囲の輪郭を示す基準エッジを備え、
前記基準エッジは前記照準領域内に形成されていることを特徴とする、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の光モジュール用フォルダ。
【請求項8】
前記光素子は、前記光ファイバから出射された光が入射される領域又は前記光素子の内部で発生した光を出射する領域である光入出力領域を有し、
前記レンズ部は、前記光入出力領域を物点としたときの像点であって観察用波長に対応する第2像点を有し、
前記観察用波長は可視光の波長域に含まれる波長であり、
前記第2像点は前記照準面に重なることを特徴とする、請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の光モジュール用フォルダ。
【請求項9】
前記観察用波長は600nmより短いことを特徴とする、請求項8に記載の光モジュール用フォルダ。
【請求項10】
前記レンズ部は、前記スリーブ部及び前記固定部と一体成形されており、
前記レンズ部、前記スリーブ部及び前記固定部は、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、及びポリメタクリル酸メチルのうち少なくとも1つの材料により構成されていることを特徴とする、請求項1〜請求項9のうちいずれか一項に記載の光モジュール用フォルダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−237819(P2012−237819A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105526(P2011−105526)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】