説明

光伝送モジュール

【課題】光素子モジュールとハウジングとの間のクリアランスによって、ハウジング内でのリセプタクルの位置が片寄っている場合でも、光ファイバコネクタのプラグフェルールがリセプタクルの内側に円滑に案内され得る光伝送モジュールを提供する。
【解決手段】光伝送モジュールは、リセプタクル21を有する光素子モジュールを有する。リセプタクル21には、その受け入れ口23bに向かって、漸次内径の大きくなるテーパ面23cが形成される。また、リセプタクル21は、ハウジング10と光素子モジュールとの間のクリアランスによって、光ファイバコネクタ100の挿入方向と直交する方向への位置の変化が許容される。そして、受け入れ口23bは、クリアランスによって許容される範囲でリセプタクル21の位置が変化した状態において、当該受け入れ口23bの内側にプラグフェルール101が到来するよう形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受光素子や発光素子によって電気信号と光信号とを相互に変換する光伝送モジュールに関し、特に、光伝送モジュールへの光ファイバコネクタの挿入作業の作業性を向上するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光ファイバを介した通信において、光ファイバコネクタが接続される光伝送モジュールが利用されている。光伝送モジュールは、発光素子によって電気信号を光信号に変換する発光素子モジュールや、受光素子によって光信号を電気信号に変換する受光素子モジュールなど光素子モジュールを備え、これら光素子モジュールは、光伝送モジュールのハウジング内で保持されている。
【0003】
ハウジングは光ファイバコネクタが挿入されるコネクタ部を有し、光素子モジュールは、シェルやスリーブ等を有するリセプタクルを有している。このリセプタクルは、ハウジングのコネクタ部の奥部に配置されており、光ファイバコネクタがコネクタ部に挿入されることによって、光ファイバコネクタの端部に位置する円柱状のプラグフェルールがリセプタクルに嵌る。そして、プラグフェルールが保持する光ファイバが、リセプタクルの内側に配置されたスタブフェルールの光ファイバに光学的に結合する。
【0004】
従来、リセプタクルの先端に、プラグフェルールの受け入れ口が形成されるとともに、プラグフェルールの外径に対応する内径を有する内周面から、受け入れ口に向かって漸次内径の大きくなるテーパ面が形成された光素子モジュールがある。このような光素子モジュールでは、受け入れ口に正対する位置から僅かにずれた位置に、プラグフェルールが到来した場合には、プラグフェールはテーパ面によってリセプタクルの内側に案内され得る。
【特許文献1】特開2006−106680号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、光素子モジュールとハウジングとの間には、ハウジング内での光素子モジュールの動きを許容するクリアランスが設けられているため、プラグフェールがテーパ面によってリセプタクルの内側に円滑に案内されない場合がある。つまり、従来の光素子モジュールの受け入れ口とテーパ面は、光素子モジュールとハウジングとの間のクリアランスに起因する、リセプタクルの位置の変化を補うものでなかった。そのため、例えば、リセプタクルの位置がクリアランスによって許容される限界まで片寄っている状態では、プラグフェルールの位置と受け入れ口の位置とのずれが過剰に大きくなり、プラグフェルールはテーパ面によってリセプタクルの内側に円滑には案内されなかった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、光素子モジュールとハウジングとの間のクリアランスによって、ハウジング内でのリセプタクルの位置が片寄っている場合でも、光ファイバコネクタのプラグフェルールがリセプタクルの内側に円滑に案内され得る光伝送モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る光伝送モジュールは、先端にプラグフェルールが設けられた光ファイバコネクタが挿入可能なハウジングと、前記ハウジング内で保持されるとともに、当該ハウジングとの間にクリアランスが設けられる光素子モジュールであって、前記光ファイバコネクタの挿入によって到来する前記プラグフェルールに正対可能な受け入れ口と、前記プラグフェルールに対応する径を有する内周面とが設けられた筒状のリセプタクルを有する光素子モジュールと、を備える。前記リセプタクルには、前記受け入れ口に向かって前記内周面から漸次内径の大きくなるテーパ面が形成され、当該リセプタクルは、前記クリアランスによって、少なくとも前記光ファイバコネクタの挿入方向と直交する方向への位置の変化が許容される。そして、前記受け入れ口は、前記クリアランスによって許容される範囲で前記リセプタクルの位置が変化した状態において、当該受け入れ口の内側に前記プラグフェルールが到来するよう形成されている。
【0008】
本発明によれば、光素子モジュールとハウジングとの間のクリアランスによって、ハウジング内でのリセプタクルの位置が片寄っている場合でも、プラグフェルールがリセプタクルの内側に円滑に案内され得る。
【0009】
本発明の一態様では、前記リセプタクルは、前記クリアランスによって、前記光ファイバコネクタの挿入方向と直交する方向への動きとともに、当該挿入方向に対する傾斜が許容されてもよい。この態様によれば、リセプタクルがハウジング内で傾斜している場合においても、プラグフェルールがリセプタクルの内側に円滑に案内され得る。
【0010】
また、この態様では、前記クリアランスによって許容される限度まで前記リセプタクルが傾斜した状態で、前記光ファイバコネクタの挿入方向に対する前記テーパ面の角度が予め規定された角度以下となるように、前記テーパ面は形成されてもよい。これによって、予め規定する角度を小さく設定しておくことによって、プラグフェルールがテーパ面に衝突することによって生じる摩擦力を低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について説明する。図1は、本発明の実施形態の例である光伝送モジュール1の平面図であり、図2は図1に示すII−II線断面図である。
【0012】
図1又は図2に示すように、光伝送モジュール1は、ハウジング10と、当該ハウジングに収容される2つの光素子モジュール20とを有している。
【0013】
ハウジング10は、概略直方体の箱状であり、ここで説明する例では、後部の下面が開いた箱状のハウジング本体10aと、ハウジング本体10aの後部に対して下方から取り付けられるハウジングカバー10bとを有している。ハウジングカバー10bは、ハウジング本体10aの後部を閉塞し、それによって、箱状のハウジング10が構成される。このハウジング10内には、光素子モジュール20の他に、プリント基板3が収容されている。このプリント基板3には、外部から受けた電気信号を変換して光素子モジュール20に入力する駆動回路3aや、光素子モジュール20から受けた電気信号を増幅する増幅回路3bが実装されている。この駆動回路3aや増幅回路3bは、それぞれフレキシブル基板4を介して、光素子モジュール20に接続されている。
【0014】
ハウジング10の先端側には、コネクタ部10cが設けられている。このコネクタ部10cは、光ファイバコネクタ100の外形に対応しており、光ファイバコネクタ100を挿入可能に構成されている。具体的には、光ファイバコネクタ100は略円柱状であり、コネクタ部10cは、光ファイバコネクタ100の挿入方向(図2においてInが示す方向)とは反対方向(図2においてOutが示す方向)に開く筒状であり、当該コネクタ部10cの内径は、光ファイバコネクタ100の外径に相応している。そのため、光ファイバコネクタ100は、コネクタ部10c内を概ね一方向(Inが示す方向)に進行する。光ファイバコネクタ100の先端に位置し、当該先端から突出するように設けられたプラグフェルール101は、光ファイバコネクタ100の中心に位置している。そのため、光ファイバコネクタ100がコネクタ部10cに挿入される際には、プラグフェルール101は、コネクタ部10cの中心線X1上を挿入方向に進行する。なお、コネクタ部10cの形状は、これに限られず、例えば光ファイバコネクタ100が断面四角形の柱状である場合には、コネクタ部10cは、光ファイバコネクタ100の形状に対応して、四角形の筒状に形成されてもよい。
【0015】
2つの光素子モジュールは、それぞれ電気信号を光信号に変換する発光素子モジュールと、光信号を電気信号に変換する受光素子モジュールである。光素子モジュール20は、光デバイス30と、リセプタクル21とを有している。
【0016】
光デバイス30は、ステム31と、レンズ32と、受光素子又は発光素子である光素子33と、ハウジング34とを有している。ステム31は円盤状の部材であり、その一方の面上に光素子33が設けられている。また、光素子33に接続される端子30aは、ステム31の他方の面から突出している。この端子30aに上述したフレキシブル基板4が接続される。ハウジング34は光素子33を囲む筒状を呈し、ハウジング34の端部はステム31の上記一方の面に固定されている。また、ハウジング34において光素子33に対向する位置には開口が形成されており、ハウジング34は当該開口に嵌められたレンズ32を保持している。このハウジング34とステム31の内側は気密に閉じられている。
【0017】
また、光デバイス30は、ハウジング34を囲む円筒状の外壁部35を有している。外壁部35の端部もステム31に固定されており、外壁部35はステム31からリセプタクル21側に立つように設けられている。そして、光デバイス30は、同じく円筒状のアダプタ36を介して、リセプタクル21と連結されている。具体的には、外壁部35のリセプタクル21側の部分が、アダプタ36の内側に嵌められ、当該アダプタ36に固定されている。アダプタ36の先端は、リセプタクル21が有するホルダ22に固定されている。なお、ハウジング10のコネクタ部10cより奥側にはデバイス収容部10dが設けられている。このデバイス収容部10dに、光デバイス30と、アダプタ36と、リセプタクル21が有するホルダ22の後部とが収容されている。このデバイス収容部10dの内周面は、光デバイス30やアダプタ36、ホルダ22の外周面から離れている。
【0018】
リセプタクル21は、コネクタ部10cの奥部に配置されている。リセプタクル21は筒状に形成され、当該リセプタクル21の先端には、リセプタクル21の正面視において円形を呈し、光ファイバコネクタ100のコネクタ部10cへの挿入によって到来するプラグフェルール101を受け入れ可能な受け入れ口(リセプタクル21の先端に位置する開口)23bが設けられている。この受け入れ口23bは、到来するプラグフェルール101と正対可能に設けられている。この例では、リセプタクル21の中心線がコネクタ部10cの中心線X1上に位置している状態では、受け入れ口23bの中心も中心線X1上に位置し、受け入れ口23bはプラグフェルール101と正対する。なお、ここで説明する例では、リセプタクル21は、円筒状のシェル23と、同じく円筒状のスリーブ24とを有し、受け入れ口23bはシェル23の先端に位置している。
【0019】
スリーブ24はシェル23の内側に配置されている。すなわち、シェル23の奥部の内径は、先端側に比べて大きくなっており、当該大きな内径を有する部分の内側にスリーブ24は収容されている。また、リセプタクル21は、シェル23とスリーブ24とに加えて、円柱状のスタブフェルール25を有している。スタブフェルール25の先端25a側は、スリーブ24の内側に嵌められ、当該スリーブ24によって保持されている。
【0020】
シェル23の先端側の内周面23aと、スリーブ24の内周面は、プラグフェルール101の外径に対応しており、受け入れ口23bから受け入れられたプラグフェルール101は、リセプタクル21の内側に配置され得る。ここで説明する例では、スリーブ24の内径はプラグフェルール101の外形に相応しており、プラグフェルール101は、スリーブ24の奥部に配置されたスタブフェルール25に当るまでスリーブ24の奥部に向かって挿入される。スタブフェルール25の中心線上には、当該スタブフェルール25の長さ方向に延伸する光ファイバ25cが設けられており、プラグフェルール101が保持する光ファイバ101aと、スタブフェルール25によって保持された光ファイバ25cとがスリーブ24の内側で光学的に結合する。
【0021】
また、シェル23には、プラグフェルール101の外形に対応する内径を有する内周面23aから受け入れ口23bに向かって、漸次内径の大きくなるテーパ面23cが形成されている。このテーパ面23cは、コネクタ部10cに光ファイバコネクタ100が挿入され、それによってシェル23の受け入れ口23bに到来したプラグフェルール101をシェル23及びスリーブ24の内側に案内する。このテーパ面23cについては後において詳説する。
【0022】
リセプタクル21は、スタブフェルール25の後端25b側を保持するホルダ22を有している。ホルダ22には凹部22aが形成され、スタブフェルール25の後端25b側は、ホルダ22の凹部22aに圧入されている。また、凹部22aの先端側には、スタブフェルール25を保持する部分より大きな内径を有する大径部22bが形成されている。シェル23とスリーブ24とは、大径部22bに嵌められ、当該ホルダ22に固定されている。また、ホルダ22の凹部22aの底部には、光ファイバ25cと光素子33との間で伝送される光信号が通過するための貫通孔が形成されている。
【0023】
光素子モジュール20は、当該光素子モジュール20とハウジング10との間にクリアランスが設けられた状態で、ハウジング10内で保持されている。このクリアランスによって、ハウジング10内でのリセプタクル21の位置の変化が許容されている。
【0024】
図3は、リセプタクル21の位置の変化を説明するための図である。図2又は図3に示すように、ホルダ22の外周面に、ホルダ22の径方向に突出する被支持部22cが形成され、被支持部22cは、リセプタクル21の正面視において円環状を呈している。一方、ハウジング10の内周面には、リセプタクル21の外面に向かって突出する一対の支持部10e,10fが形成されている。この支持部10e,10fは、被支持部22cを前方及び後方から挟むように設けられている。すなわち、一対の支持部10e,10fの間の凹部に被支持部22cが嵌っている。支持部10eと支持部10fとの間隔は、被支持部22cの厚さより大きくなっており、支持部10e,10fと、被支持部22cとの間にクリアランスが設けられている。そして、これによって、図3(a)に示すように、ハウジング10内でのリセプタクル21の前後方向(In−Out方向)への位置の変化が許容されている。すなわち、被支持部22cが支持部10e又は支持部10fに当るまで、リセプタクル21は前後方向に移動可能となっている。
【0025】
また、支持部10eと支持部10fの間の部分の内径、すなわち、被支持部22cの外周面を囲むハウジング10の内周面10gの内径は、被支持部22cの外径より大きくなっており、被支持部22cの外周面とハウジング10の内周面10gとの間にクリアランスが設けられている。これによって、図3(b)に示すように、リセプタクル21は、コネクタ部10cの径方向(光ファイバコネクタ100の挿入方向(Inの示す方向)と直交する方向)への動きが許容されている。すなわち、被支持部22cの外周面がハウジング10の内周面10gに当るまで、リセプタクル21は径方向に移動可能となっている。
【0026】
また、上述したように、支持部10e,10fと、被支持部22cとの間にもクリアランスが設けられており、これらのクリアランスによって、図3(c)に示すように、光ファイバコネクタ100の挿入方向(以下においてコネクタ挿入方向とする)、すなわち、コネクタ部10cの中心線X1に対するリセプタクル21の傾斜も許容されている。ここで説明する例では、被支持部22cの上端と下端が、それぞれ支持部10eと支持部10fとに当るまで、リセプタクル21は傾斜可能となっている。このように、ハウジング10と光素子モジュール20との間のクリアランスによって、リセプタクル21のハウジング10内での動きが許容されるので、例えば光ファイバコネクタ100の挿入時や光伝送モジュール1の使用時に外部から作用する力に対して強い耐性を有する光伝送モジュール1が実現され得る。
【0027】
上述したように、シェル23の先端側には、テーパ面23cが形成され、テーパ面23cの先端に位置する受け入れ口23bは、プラグフェルール101に正対可能に設けられている。また、受け入れ口23bは、光素子モジュール20とハウジング10との間のクリアランスによって許容される範囲でリセプタクル21の位置が変化した状態においても、受け入れ口23bの内側にプラグフェルール101が到来するよう形成されている。具体的には、クリアランスによって許容される限度まで、リセプタクル21の位置が変化した状態においても、受け入れ口23bの内側にプラグフェルール101が到来するように、受け入れ口23bの大きさ及びクリアランスの大きさが設定されている。
【0028】
図3(b)に示す例では、リセプタクル21は、クリアランスによって許容される最も低い位置まで、すなわち、被支持部22cの外周面がハウジング10の内周面10gに当るまで、リセプタクル21は下方に移動している。そのため、光ファイバコネクタ100の挿入によって到来するプラグフェルール101とリセプタクル21との相対位置が、クリアランスによって許容される限界まで変化し、受け入れ口23bはプラグフェルール101に正対する位置からずれている。そして、この状態においても、プラグフェルール101が受け入れ口23bの内側に到来するように、受け入れ口23bの大きさが設定されており、リセプタクル21に到来したプラグフェルール101の先端は受け入れ口23bの内側に位置するようになる。そして、プラグフェルール101はテーパ面23cによってリセプタクル21の内側に案内される。
【0029】
また、本実施形態では、受け入れ口23bは、クリアランスによって許容される限度までリセプタクル21が傾斜且つ移動した状態においても、当該受け入れ口23bの内側にプラグフェルール101が到来するように形成されている。図3(c)に示す例では、被支持部22cの上端が、ハウジング10の支持部10eと内周面10gとに当るとともに、被支持部22cの下端が支持部10fに当っており、クリアランスによって許容される限度まで、リセプタクル21が上方に移動し且つ下方に傾斜している。そして、この状態においても、プラグフェルール101の先端がリセプタクル21に当る時に、当該プラグフェルール101の先端が受け入れ口23bの内側に位置するように、受け入れ口23bの大きさが設定されている。そして、リセプタクル21の先端に到来したプラグフェルール101は、テーパ面23cによってリセプタクル21の内側に案内される。
【0030】
また、本実施形態では、クリアランスによって許容される限度までリセプタクル21が傾斜した状態(コネクタ挿入方向とリセプタクル21の中心線との角度が最大となった状態)で、コネクタ挿入方向に対するテーパ面23cの角度(以下、衝突角度)が、予め規定された角度(以下、許容最大角度)以下となるように、テーパ面23cは形成されている。すなわち、テーパ面23cのいずれの位置においても、衝突角度が許容最大角度以下となるように、テーパ面23cの角度が設定されている。
【0031】
図4は、クリアランスによって許容される限度まで傾斜した状態のリセプタクル21を示す図である。リセプタクル21が傾斜した状態では、テーパ面23c上の位置のうち、傾斜した側の位置での衝突角度が最大となる。例えば、図4に示すように、リセプタクル21が下方に傾斜した状態では、テーパ面23cと内周面23aとの境である小径縁23dと、受け入れ口23bとを結ぶテーパ面23cの母線のうち、最も下側の直線Lとコネクタ挿入方向との衝突角度θ2が最大となる。そして、この衝突角度θ2が、許容最大角度以下となるように、テーパ面23cの角度θ1が設定されている。なお、この説明において、テーパ面23cの角度θ1は、リセプタクル21の中心線X3に対するテーパ面23cの角度である。また、衝突角度θ2は、コネクタ挿入方向の直線X2と直線Lとの交点Pより、受け入れ口23b側に位置する部分(交点Pから受け入れ口23bに向かって延伸する半直線)とがなす角度である。
【0032】
なお、許容最大角度は、作業者による光ファイバコネクタ100の挿入作業が円滑に行い得る程度の角度である。つまり、光ファイバコネクタ100を挿入する際に、テーパ面23cとプラグフェルール101とが接することによって、摩擦力が発生する。この摩擦力は、衝突角度が大きくなるに従って、すなわち、コネクタ挿入方向に対するテーパ面23cの角度が大きくなるに従って、大きくなる。そして、許容最大角度は、その摩擦力が、作業者による挿入作業の障害にならない程度の角度であり、例えば、45度である。
【0033】
このようなテーパ面23cの角度θ1は、光伝送モジュールの製造工程において、例えば次のようにして設定される。まず、図4に示すように、光素子モジュール20とハウジング10との間のクリアランスによって許容される範囲内でリセプタクル21が最も大きく傾斜した状態での傾斜度(以下、最大傾斜度θ3)を取得する。ここで最大傾斜度θ3は、例えば図3(c)に示すように、コネクタ部10cの中心線X1とリセプタクル21の中心線X3とがなす角度である。また、コネクタ挿入方向に対するテーパ面23cの角度(上述した衝突角度)の許容範囲、すなわち上述した許容最大角度を求める。そして、リセプタクル21の最大傾斜度θ3と、許容最大角度とに基づいて、実際のテーパ面23cの角度θ1を算出する。具体的には、許容最大角度から最大傾斜度θ3を差し引き、それによって得られた値より小さい値にテーパ面23cの角度θ1を設定する。
【0034】
以上説明した光伝送モジュール1では、ハウジング10と光素子モジュール20との間のクリアランスによって許容される範囲でリセプタクル21の位置が変化した状態においても、プラグフェルール101が受け入れ口23bの内側に到来するように、受け入れ口23bが形成されている。これによって、ハウジング10内でのリセプタクル21の位置が片寄っている場合においても、プラグフェルール101がリセプタクル21の内側に円滑に案内され、プラグフェルール101によるリセプタクル21の損傷が抑制され得る。
【0035】
なお、本発明は、以上説明した光伝送モジュール1に限られず、種々の変更が可能である。例えば、以上の説明では、受け入れ口23bは円形であるとして説明したが、受け入れ口23bは、プラグフェルール101の形状に合わせて四角形や楕円形であってもよい。
【0036】
また、以上の説明では、リセプタクル21や受け入れ口23bは、コネクタ部10cと同軸上に配置可能となっていた。しかしながら、プラグフェルール101が光ファイバコネクタ100の中心に位置していない場合には、受け入れ口23bがプラグフェルール101に正対可能となるように、受け入れ口23b及びリセプタクル21が、コネクタ部10cの中心線X1から径方向に片寄った位置に設けられてもよい。
【0037】
また、コネクタ部10cの内周面と、光ファイバコネクタ100との間にクリアランスが設けられている場合には、受け入れ口23bは、光素子モジュール20とハウジング10との間のクリアランスに加えて、コネクタ部10cと光ファイバコネクタ100との間のクリアランスをも補うように設けられてもよい。すなわち、受け入れ口23bは、コネクタ部10cと光ファイバコネクタ100との間のクリアランスによって許容される限度まで光ファイバコネクタ100の位置が変化すると同時に、光素子モジュール20とハウジング10との間のクリアランスによって許容される限度までリセプタクル21の位置が変化した状態において、受け入れ口23bの内側にプラグフェルール101が到来するよう設けられてもよい。
【0038】
また、以上の説明では、リセプタクル21には、スタブフェルール25を保持するスリーブ24を囲むシェル23が設けられ、シェル23に受け入れ口23bやテーパ面23cが形成されていた。しかしながら、リセプタクル21の構造はこれに限られない。例えば、そのようなシェルが設けられていないリセプタクルに、本発明は適用されてもよい。この場合、スリーブにテーパ面や受け入れ口が形成される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施形態の例である光伝送モジュールの平面図である。
【図2】図1に示すII−II線断面図である。
【図3】上記光伝送モジュールが有するハウジング内におけるリセプタクルの位置の変化を説明するための図である。
【図4】上記ハウジングと光素子モジュールとの間のクリアランスによって許容される限度まで傾斜した状態のリセプタクルを示す図である。
【符号の説明】
【0040】
1 光伝送モジュール、3 プリント基板、4 フレキシブル基板、10 ハウジング、10c コネクタ部、10d デバイス収容部、10e,10f 支持部、10g 内周面、20 光素子モジュール、21 リセプタクル、22 ホルダ、23 シェル、23a 内周面、23b 受け入れ口、23c テーパ面、24 スリーブ、25 スタブフェルール、25c 光ファイバ、30 光デバイス、31 ステム、32 レンズ、33 光素子、34 ハウジング、35 外壁部、36 アダプタ、X1 コネクタ部の中心線、X2 光ファイバコネクタの挿入方向の直線、X3 リセプタクルの中心線、100 ファイバコネクタ、101 プラグフェルール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端にプラグフェルールが設けられた光ファイバコネクタが挿入可能なハウジングと、
前記ハウジング内で保持されるとともに、当該ハウジングとの間にクリアランスが設けられる光素子モジュールであって、前記光ファイバコネクタの挿入によって到来する前記プラグフェルールに正対可能な受け入れ口と、前記プラグフェルールに対応する径を有する内周面とが設けられた筒状のリセプタクルを有する光素子モジュールと、を備え
前記リセプタクルには、前記受け入れ口に向かって前記内周面から漸次内径の大きくなるテーパ面が形成され、当該リセプタクルは、前記クリアランスによって、少なくとも前記光ファイバコネクタの挿入方向と直交する方向への位置の変化が許容され、
前記受け入れ口は、前記クリアランスによって許容される範囲で前記リセプタクルの位置が変化した状態において、当該受け入れ口の内側に前記プラグフェルールが到来するよう形成されている、
ことを特徴とする光伝送モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の光伝送モジュールにおいて、
前記リセプタクルは、前記クリアランスによって、前記光ファイバコネクタの挿入方向と直交する方向への動きとともに、当該挿入方向に対する傾斜が許容される、
ことを特徴とする光伝送モジュール。
【請求項3】
請求項2に記載の光伝送モジュールにおいて、
前記クリアランスによって許容される限度まで前記リセプタクルが傾斜した状態で、前記光ファイバコネクタの挿入方向に対する前記テーパ面の角度が予め規定された角度以下となるように、前記テーパ面は形成されている、
ことを特徴とする光伝送モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−117513(P2010−117513A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−290116(P2008−290116)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(301005371)日本オプネクスト株式会社 (311)
【Fターム(参考)】