説明

光学システム及び投射型表示装置

【課題】二重変調を行うことにより高コントラスト画像を得ると同時に、光変調デバイスにかかる応答時間を大幅に短縮し得、更には立体表示も可能とする。
【解決手段】光学システム100は、1:1リレーレンズ35の光出射側に、90度位相制御板51、Y1Y2画像合成部分103及びY1Y2投射レンズ70を配置することで高解像度で高コントラストの画像を得ると共に、光変調信号フレーム時間の半分をP偏光、残り半分をS偏光とすることで、第2光変調素子であるY2デバイス64側にP偏光、第2光変調素子であるY1デバイス58側にS偏光を分配し、それぞれに合わせて90度位相制御板51の動作を制御すると共に、Y2デバイス64及びY1デバイス58を交互に時分割駆動することで、通常の液晶応答では不可能な約1/4と非常に速い応答時間を達成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学システム及び投射型表示装置に係り、特に投射型表示装置(プロジェクタ)において、高コントラスト画像や立体画像を得る光学システム及び投射型表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、投射型表示装置(プロジェクタ)は、R(赤)、G(緑)、B(青)3枚の変調デバイスを用いた3板式プロジェクタが一般的で、また、その種類にはデバイスの種類によりLCD(Liquid Crystal Device)プロジェクタ、DLP(Digital Light Processing)プロジェクタ、LCOS(Liquid Crystal On Silicon)プロジェクタ等がある。
【0003】
図5は従来の光学システムの一例の構成図を示す。同図において、ランプハウス11(キセノンランプ、超高圧水銀ランプ、レーザーダイオード、発光ダイオード等)から出射した白色光である照明光は、コンデンサレンズ12、コールドミラー13、インテグレータ14及びフィールドレンズ15を経由してB/RGクロスダイクロイックミラー(クロスダイクロミラー)16に入射する。B/RGクロスダイクロミラー16は、入射した照明光のうち赤色光と緑色光の波長帯域の光と青色光とを分離し、赤色光と緑色光の波長帯域の光はRGミラー17に入射し、青色光はBミラー18に入射する。RGミラー17で反射された赤色光と緑色光の波長帯域の光は、R/Gダイクロイックミラー(ダイクロミラー)19で緑色光成分と赤色光成分とが分離されて、フィールドレンズ20、24に入射する。
【0004】
フィールドレンズ20を透過した緑色光成分及び、フィールドレンズ24を透過した赤色光成分は、それぞれ偏光分離素子であるワイヤグリッド(WG)21、25でそのS偏光成分が反射され、更にG用1/4波長(λ/4)板22、R用1/4波長(λ/4)板26を通してGデバイス23、Rデバイス27に入射し、ここで表示すべき画像の緑色信号、赤色信号で光変調された後、その光変調されたP偏光がG用波長板22、R用波長板26と、WG21、25をそれぞれ透過してRGB合成ダイクロイックプリズム32に入射する。
【0005】
一方、Bミラー18で反射された青色光は、Bフィールドレンズ28を透過し、WG29でそのS偏光成分が反射され、更にB用1/4波長(λ/4)板30を透過してBデバイス31に入射し、ここで表示すべき画像の青色信号で光変調された後、その光変調されたP偏光がB用波長板30と、WG29をそれぞれ透過してRGB合成ダイクロイックプリズム32に入射する。
【0006】
RGB合成ダイクロイックプリズム32は、各々光変調されている緑色光、赤色光、及び青色光の各P偏光成分を再合成して、合成後の光をPJレンズ33を透過させてスクリーン(図示せず)に入射結像させる。
【0007】
このような光学システムを用いたプロジェクタにおいて、画像のメリハリを左右するコントラストは、光学システムとデバイス単体の性能で決定される。そこで、近年、二重変調を行うことでコントラストを飛躍的に改善したプロジェクタや液晶ディスプレイが提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0008】
図6は二重変調を行う従来の光学システムの一例の構成図を示す。同図中、図5と同一構成部分には同一符号を付し、その説明を省略する。図6に示す従来の光学システムは、図5の光学システムのRGB合成ダイクロイックプリズム32とPJレンズ33との間に、収差補正レンズ34、1:1リレーレンズ35、ミラー36、収差補正レンズ37、Y用WG38、Y用波長板39、Yデバイス40及びWGアナライザ41よりなるY変調光学システム部分を設けたものである。収差補正レンズ34及び37は、Y用WG38に45度斜めに光軸が入っているために生じる収差を補正するためのシリンドリカルレンズである。
【0009】
図6に示す従来の光学システムでは、RGB合成ダイクロイックプリズム32から出射されたRGB合成光は、収差補正レンズ34、1:1リレーレンズ35をそれぞれ透過し、1:1リレーレンズ35の光軸方向とPJレンズ33の光軸方向とを揃えるためのミラー36により反射されて光路が変えられた後、収差補正レンズ37を透過し、そのP偏光がY用WG38及びY用波長板39を通してYデバイス40に入射する。
【0010】
Yデバイス40は例えばLCOSで構成されており、Rデバイス27、Gデバイス23及びBデバイス31でそれぞれ変調されたR信号、G信号及びB信号と同じ画像信号の輝度信号で入射光を変調する。従って、表示される画像信号は、R,G,Bの三原色信号で一回変調された後、輝度信号で一回変調され、計2回変調されることとなる。Yデバイス40から出射された変調光は、Y用波長板39を通してS偏光がY用WG38で反射された後、WGアナライザ41でS偏光中に混入しているP偏光成分がカットされて高コントラストを保つようにされてからPJレンズ33によりスクリーン(図示せず)に投射される。
【0011】
図5に示した一般的な光学システムでは、光学Fナンバーと表示デバイス性能でコントラストが左右され、明るさをとりながらでは数千:1が限界である。しかし、図6に示す光学システムでは、図5と同様構成の第1の変調光学系の映像を、第2の変調光学系のYデバイス40上に結像して変調させた後、投映する構成のため、第1の変調光学系と第2の変調光学系の各コントラストを掛け算したコントラストが最終的に得られるので、数百万:1以上のコントラストが得られる。
【0012】
しかし、図6に示した光学システムを用いたプロジェクタでは、Yデバイス40の解像度(画素数)が最終的に投映される解像度を決定してしまう。この解像度は、現在市場で生産されている最も高解像度なデバイスでも4k×2k画素(水平方向4096画素、垂直方向2160画素)が最高解像度である。
【0013】
そこで、近年より一層の高解像度の8k×4k画素(水平方向8192画素、垂直方向4320画素)を得るための図7に示す構成の投射型表示装置(プロジェクタ)が知られている。この図7に示すプロジェクタは、日本放送協会が提案しているスーパーハイビジョン(SHV)と称される映像方式に適合したプロジェクタである。この従来のプロジェクタは、例えばHDTV画像で16チャンネル分を並列記録し再生するハードディスクレコーダ45から出力されたG1G2画像信号と、RB画像信号とを、コンバージェンス補正装置46でコンバージェンス補正した後、RBプロジェクタ47からスクリーン49にRB画像で変調された光を投射し、またG1G2プロジェクタ48からスクリーン49にG1G2画像変調された光を投射する。
【0014】
ここで、8k×4k画素を得るためにG1G2プロジェクタ48は、それぞれ4k×2k画素の2個のGデバイス(G1デバイスとG2デバイス)を使用し、かつ、それらG1デバイスとG2デバイスの各画素は、共に水平方向の画素ピッチPx、垂直方向の画素ピッチPyで4k×2k画素の構成とされている。また、G1G2プロジェクタ48は、図8に示すように互いに水平方向にPx/2、垂直方向にPy/2ずらされた、いわゆる45度斜め半画素ずらしにより画像を重ね合わせ、信号もG1G2解像度にあった信号を入力することで等価的に8k画素相当の解像度を得る構成とされている。一方、RBプロジェクタ47は、4k×2k画素のRデバイスとBデバイスとを用いている。
【0015】
また、最近、8k×4k画素(水平方向8192画素、垂直方向4320画素)の表示デバイスが開発され、これをR、G、B用に3個用いたフル解像度の8kプロジェクタも考えられている。しかし、この方式では、図5に示した従来の光学システムと同じ3板式のため、コントラストを飛躍的に上げることができない。また、高解像度のデバイスを3枚使うことで光学システムが高価となってしまう。
【0016】
そこで、図6に示した光学システムの第1の変調光学系に4k×2kデバイス、第2の変調光学系に8k×2kデバイスを用いた2重変調方式のプロジェクタも2008年にNHK技術研究所で試作公開されている。
【0017】
【特許文献1】特開2005−181437号公報
【特許文献2】特開2005−241738号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、図6に示した従来の光学システムは、二重変調で高コントラスト画像は得られるが、表示デバイスの物理的液晶応答時間が、従来と同じレベル(約5msec前後)であり、高解像度な画像が動いた時の動画ボケや、画面が消える時の残像は静止時の画像の解像度が高い分余計に目立ってしまう。
【0019】
これを、表示デバイス単体で解決するには、特に表示デバイスがLCDやLCOSの場合、液晶の応答時間は液晶自体の物性で決まってしまうため、液晶の物理的特性を改善するしかない。しかし、液晶の厚みを小さくすれば、応答時間も早くなるが逆に液晶駆動に必要な電圧も高くする必要があり、ICドライバーの耐電圧、液晶ギャップの耐電圧からむやみに上げられず、現在は液晶厚2〜3μmで応答時間が4〜5msec程度になっており、より一層の液晶応答時間短縮を実現することができない。
【0020】
また、図7に示した従来の投射型表示装置は、RBプロジェクタ47とG1G2プロジェクタ48とからの光をスタック上でスクリーン49に投影し、画像を合成している構成であるため、RBプロジェクタ47とG1G2プロジェクタ48の投射位置が異なるために、特にスクリーン49で周辺レジストレーション(又は周辺コンバージェンス)が大きくずれてしまう。このため、RB画像信号をデジタル的にずらしてG1G2画像信号に重ねるコンバージェンス補正装置46が必須となる。
【0021】
本発明は以上の点に鑑みなされたもので、二重変調を行うことにより高コントラスト画像を得ると同時に、光変調デバイスにかかる応答時間を大幅に短縮し得、更には立体表示も可能な光学システム及び投射型表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記の目的を達成するため、本発明の光学システムは、1/(2T)秒(Tは所定の値)単位で構成されるフレーム画像に関する三原色の色信号の連続する2フレームから得た1/T秒単位の三原色の各色信号毎に照明光を別々に光変調して得られた各変調原色光を波長合成し、その第1の合成光を第1の変調光として出力する変調光学系と、第1の変調光の偏光面を、1/(2T)秒毎に90度回転と回転停止とを交互に繰り返して、第1の変調光を1/(2T)秒毎に交互にS偏光及びP偏光として出力する90度位相制御手段と、連続する2フレームのうち、一方のフレームの1/(2T)秒単位の第1の三原色の各色信号から生成した第1の輝度信号で、90度位相制御手段から出力されたS偏光を光変調して第2の変調光として出力する第1の輝度信号変調光学系と、連続する2フレームのうち、他方のフレームの1/(2T)秒単位の第2の三原色の各色信号から生成した第2の輝度信号で、90度位相制御手段から出力されたP偏光を光変調して第3の変調光として出力する第2の輝度信号変調光学系と、第2及び第3の変調光をPS合成して第2の合成光を生成する光合成手段と、第2の合成光を投射するための投射手段とを有することを特徴とする。
【0023】
また、上記の目的を達成するため、本発明の光学システムは、第1の輝度信号変調光学系内のS偏光を第1の輝度信号で光変調する第1のデバイスと、第2の輝度信号変調光学系内のP偏光を第2の輝度信号で光変調する第2のデバイスの各デバイス応答時間Rt2を、変調光学系内の三原色の各色信号毎に別々に光変調する第3のデバイスの各デバイス応答時間Rt1よりも短く設定したことを特徴とする。
【0024】
また、上記の目的を達成するため、本発明の光学システムは、第1の輝度信号変調光学系内のS偏光を第1の輝度信号で光変調する第1のデバイスの画素と、第2の輝度信号変調光学系内のP偏光を第2の輝度信号で光変調する第2のデバイスの画素とは、互いに水平方向及び垂直方向にそれぞれ半画素ピッチ分ずつずらした45度斜め半画素ずらしの空間位置に配置されていてもよい。
【0025】
また、上記の目的を達成するため、本発明の光学システムは、第1の三原色の各色信号及び第1の輝度信号を右目用画像及び左目用画像の一方の画像に関する信号とし、第2の三原色の各色信号及び第2の輝度信号を右目用画像及び左目用画像の他方の画像に関する信号としてもよい。
【0026】
また、上記の目的を達成するため、本発明の投射型表示装置は、1/(2T)秒(Tは所定の値)単位で構成されるフレーム画像に関する三原色の色信号の連続する2フレームのうち、一方のフレームの第1の三原色の色信号に基づいて、帯域制限されていない第1の輝度信号を生成し、かつ、2フレームのうち他方のフレームの第2の三原色の色信号に基づいて、帯域制限されていない第2の輝度信号を生成する第1の信号生成手段と、第1及び第2の三原色の色信号をそれぞれ帯域制限し、その帯域制限された第1及び第2の三原色の色信号のそれぞれについて画素毎の最大値を求めると共に、帯域制限された第1及び第2の三原色の色信号に基づいて、帯域制限された第3及び第4の輝度信号を生成する第2の信号生成手段と、画素毎の最大値に基づいて色信号用補正係数を生成すると共に、画素毎の最大値と第3の輝度信号とに基づいて第1の表示用輝度信号を生成し、かつ、画素毎の最大値と第4の輝度信号とに基づいて生成した輝度信号を第1の表示用輝度信号に対して1/(2T)秒ずらして第2の表示用輝度信号を生成する第3の信号生成手段と、色信号用補正係数と帯域制限された1及び第2の三原色の色信号とを乗算して、1/(2T)秒単位で構成されるフレーム画像に関する三原色の色信号の連続する2フレームから得た1/T秒単位の表示用の三原色の色信号を生成する第4の信号生成手段と、表示用の三原色の各色信号毎に照明光を別々に光変調して得られた各変調原色光を波長合成し、その第1の合成光を第1の変調光として出力する変調光学系と、第1の変調光の偏光面を、1/(2T)秒毎に90度回転と回転停止とを交互に繰り返して、第1の変調光を1/(2T)秒毎に交互にS偏光及びP偏光として出力する90度位相制御手段と、90度位相制御手段から出力されたS偏光を、第1の表示用輝度信号で光変調して第2の変調光として出力する第1の輝度信号変調光学系と、90度位相制御手段から出力されたP偏光を、第2の表示用輝度信号で光変調して第3の変調光として出力する第2の輝度信号変調光学系と、第2及び第3の変調光をPS合成して第2の合成光を生成する光合成手段と、第2の合成光を投射するための投射手段とを有することを特徴とする。
【0027】
また、上記の目的を達成するため、本発明の投射型表示装置は、第1の輝度信号変調光学系内のS偏光を第1の表示用輝度信号で光変調する第1のデバイスと、第2の輝度信号変調光学系内のP偏光を第2の表示用輝度信号で光変調する第2のデバイスの各デバイス応答時間Rt2を、変調光学系内の三原色の各色信号毎に別々に光変調する第3のデバイスの各デバイス応答時間Rt1よりも短く設定したことを特徴とする。
【0028】
また、上記の目的を達成するため、本発明の投射型表示装置は、第1の輝度信号変調光学系内のS偏光を第1の表示用輝度信号で光変調する第1のデバイスの画素と、第2の輝度信号変調光学系内のP偏光を第2の表示用輝度信号で光変調する第2のデバイスの画素とは、互いに水平方向及び垂直方向にそれぞれ半画素ピッチ分ずつずらした45度斜め半画素ずらしの空間位置に配置されていることを特徴とする。
【0029】
また、上記の目的を達成するため、本発明の投射型表示装置は、第1の三原色の色信号及び第1の表示用輝度信号を右目用画像及び左目用画像の一方の画像に関する信号とし、第2の三原色の色信号及び第2の表示用輝度信号を右目用画像及び左目用画像の他方の画像に関する信号としてもよい。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、表示デバイスの液晶自体の物理特性は、そのままでありながら、光学システム駆動方法を工夫することで従来に比し、変調駆動に伴うデバイス応答時間(液晶応答時間)を大幅に短縮することが可能になり、液晶駆動の欠点である動画再生時の液晶応答による動画像ボケを解決することができると共に、表示する画像を従来に比し極めて高いコントラスト及び高解像度とすることができる。更に、本発明によれば、偏光メガネを使用する立体表示もできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0032】
図1は、本発明になる光学システムの一実施の形態の構成図を示す。同図中、図6と同一構成部分には同一符号を付し、その説明を省略する。図1に示すように、本実施の形態の光学システム100は、光学照明システム部分101、RGB分離合成投影システム系102、1:1リレーレンズ35、Y1Y2画像合成部分103、Y1Y2投射レンズ70、及び切替信号発生回路71から構成される。このうち、光学照明システム部分101、RGB分離構成投影システム系102及び1:1リレーレンズ35からなる構成部分は、図6の1:1リレーレンズ35までの構成部分と同一である。ただし、Rデバイス27、Gデバイス23及びBデバイス31に入力するR信号、G信号及びB信号の構成は、後述するように従来と異なる。
【0033】
本実施の形態の光学システム100は、上記の1:1リレーレンズ35の光出射側に、90度位相制御板51、Y1Y2画像合成部分103及びY1Y2投射レンズ70を配置することで高解像度で高コントラストの画像を得ると共に、後述するように、光変調信号フレーム時間の半分をP偏光、残り半分をS偏光とすることで、第2光変調素子であるY2デバイス64側にP偏光、第2光変調素子であるY1デバイス58側にS偏光を分配し、それぞれに合わせて90度位相制御板51の動作を制御すると共に、Y2デバイス64及びY1デバイス58を交互に時分割駆動することで、通常の液晶応答では不可能な約1/4と非常に速い応答時間を達成するようにしたものである。
【0034】
Y1Y2画像合成部分103は、入射光をP偏光とS偏光とに分離するワイヤグリッド(WG)型の偏光分離素子であるPS分離WG(例えば、商品名「Moxtek」)52、Y1フィールドレンズ53、1/2波長板54、P偏光カットのためのアナライザ55、S偏光を反射しP偏光を透過するY1WG56、デバイス特性に合わせたリターダであるY1波長板57、Y1信号で入射光を変調するY1デバイス58、Y2フィールドレンズ59、Y2収差補正レンズ60、アナライザ61、S偏光を反射しP偏光を透過するY2WG62、デバイス特性に合わせたリターダであるY2波長板63、Y2信号で入射光を変調するY2デバイス64、Y1収差補正レンズ65、1/2波長板66、Y1アナライザ67、PS合成WG68、及びY2アナライザ69からなる。
【0035】
ここで、Y1デバイス58及びY2デバイス64は、いずれも例えば4k×2k画素(水平方向4096画素、垂直方向2160画素)のLCOS(反射型液晶パネル)で構成されており、それらは互いに図8と共に説明した45度斜め半画素ずらしの空間配置とされている。図6及び図7に示した従来の光学システム及び投射型表示装置では、G1デバイスとG2デバイスの45度斜め半画素ずらしであったが、本実施の形態では、輝度信号で変調するY1デバイス58及びY2デバイス64は、45度斜め半画素ずらしの構成であるため、従来より高解像度の8k×4k(水平方向7680画素、垂直方向4320画素)が見込まれる。
【0036】
なお、Gデバイス23、Rデバイス27及びBデバイス31は、例えば4k×2k画素(水平方向4096画素、垂直方向2160画素)のLCOS(反射型液晶パネル)で構成されているが、45度斜め半画素ずらしの構成ではない。また、Gデバイス23、Rデバイス27及びBデバイス31と、Y1デバイス58及びY2デバイス64とは、いずれも60Hzの信号で駆動される。
【0037】
また、Y1アナライザ67は反射光がY1デバイス58に戻らないように約10度傾けられている。同様に、Y2アナライザ69は反射光がY2デバイス64に戻らないように約10度傾けられている。また、1/2波長板54は、Y1WG56で透過するP偏光にするため、PS分離WG52で反射されたS偏光の偏光面を1/2波長回転してP偏光とするために設けられている。更に、1/2波長板66は、Y1WG56で反射されたY1デバイス58からのS偏光の偏光面を1/2波長(90度)回転してP偏光として、PS合成WG68を透過させるために設けられている。
【0038】
更にまた、90度位相制御板51は、入射偏光の偏光面を90度回転させて出力する動作と、偏光面の90度回転を行わないで入射偏光をそのまま出力する動作停止のいずれかを行うように、外部からの切替信号により制御される。切替信号発生回路71は、表示する輝度信号(Y1映像信号及びY2映像信号)、R信号、G信号及びG信号に位相同期して、1フレームの半分の期間(1/120秒)毎に90度位相制御板51を偏光面90度回転動作と動作停止とを交互に繰り返すように制御する切替信号を発生する。
【0039】
次に、本実施の形態の動作について説明する。
【0040】
Rデバイス27、Gデバイス23、Bデバイス31は、それぞれ後述するように、1/120秒単位で構成されるフレームのR信号、G信号、B信号の連続した2フレームから得た、1/60秒毎のR信号、G信号、B信号で変調(第一変調)されたR光、G光、B光を反射する。これらのRGB三原色光は、RGB合成ダイクロプリズム32で合成されて合成光として射出される。この合成光は、RGB画像をY1デバイス58とY2デバイス64にそれぞれ結像させるための1:1リレーレンズ35を透過して、90度位相制御板51に入射する。
【0041】
90度位相制御板51は、切替信号発生回路71から供給される切替信号により制御され、表示する輝度信号(Y1映像信号及びY2映像信号)、R信号、G信号及びG信号に位相同期して、1フレームの半分の期間(1/120秒)毎に入射偏光面の90度回転動作と偏光面の回転動作停止とを交互に繰り返す。
【0042】
この切替信号発生回路71による90度位相制御板51の動作について、図2のタイミングチャートと共に更に詳細に説明する。
【0043】
図2(A)は、この光学システムの入力映像信号であるR信号、G信号及びB信号を1/120秒単位で模式的に示す。ただし、Gデバイス23、Rデバイス27、Bデバイス31、Y1デバイス58及びY2デバイス64の駆動周波数は60Hzである。また、図2(B)は、図1中のGデバイス23、Rデバイス27、Bデバイス31に入力される周波数60HzのG信号GHDR60、R信号RHDR60、B信号BHDR60を模式的に示す。また、図2(C)は、図1中のY1デバイス58に入力されるフレーム周波数60HzのY1映像信号、図2(D)は、図1中のY2デバイス64に入力されるフレーム周波数60HzのY2映像信号を模式的に示す。更に、図2(E)は、切替信号発生回路71から90度位相制御板51へ供給される切替信号を示す。この切替信号は、入力映像信号に同期した、1/120秒毎に反転する、周期1/60秒の矩形波である。
【0044】
90度位相制御板51は、図2(E)に示す切替信号が「0」(ローレベル)のとき、S偏光である1:1リレーレンズ35を透過したRGB三原色光からなる合成光の偏光面を90度回転する動作を行ってP偏光として透過させる。また、90度位相制御板51は、図2(E)に示す切替信号が「1」(ハイレベル)のとき、S偏光である1:1リレーレンズ35を透過したRGB三原色光からなる合成光の偏光面を回転する動作を停止して、そのままS偏光として透過させる。従って、90度位相制御板51からは、1/120秒毎にP偏光である合成光と、S偏光である合成光とが交互に出力されることになる。
【0045】
再び図1に戻って説明する。Y1Y2画像合成部分103は、1:1リレーレンズ35から出力され、更に90度位相制御板51により偏光面が90度回転又は非回転制御された合成光を、Y1デバイス58、Y2デバイス64に一旦結像させて変調させ、その変調された光を再度PS合成WG68でPS合成し、Y1Y2投射レンズ70に入射する。
【0046】
すなわち、このY1Y2画像合成部分103の詳細について説明するに、90度位相制御板51から出力される合成光がP偏光である期間(切替信号が「0」である期間)では、そのP偏光は、ワイヤグリッド(WG)型の偏光分離素子であるPS分離WG52を透過し、更に1:1リレーレンズ35からの光を素子に集めるためのY2フィールドレンズ59及びY2収差補正レンズ60を透過した後、アナライザ61によりS偏光成分がカットされる。Y2収差補正レンズ60は、入射光の光軸に対して45度斜め半画素ずらしにより配置されたPS分離WG52、Y2WG62をP偏光が通過する際に発生するフォーカス劣化、特に非点収差を補正するためのシリンドリカルレンズやウェッジガラスである。
【0047】
アナライザ61は、P偏光がY2フィールドレンズ59及びY2収差補正レンズ60をそれぞれ透過する際に偏光が乱れる恐れがあり、仮に偏光が乱れてもS偏光成分をカットしてP偏光の消光比を上げるために設けられており、例えばWGで構成されている。ただし、Y2デバイス64のコントラストの影響がなければ、アナライザ61を削除することも可能である。アナライザ61を透過したP偏光は、Y2WG62を透過し、更に光の位相調整用のY2波長板(リターダ)63を通してY2デバイス64に入射結像してY2映像信号で変調される。
【0048】
Y2デバイス64に入射して変調されたP偏光は、S偏光とP偏光とが混ざった光となってY2デバイス64を反射し、Y2波長板(リターダ)63を通してY2WG62によりS偏光成分が反射され、残りのP偏光成分が1:1リレーレンズ35に戻っていく。Y2WG62により反射されたS偏光は、Y2アナライザ69を透過してS偏光の消光比を高め、PS合成WG68で反射した後、Y1Y2投射レンズ70で図示しないスクリーンに投射される。Y2アナライザ69は、Y2WG62でP偏光を透過した際に、P偏光が裏面反射の漏れP偏光をカットしている。また、Y2アナライザ69は、レンズ光軸に対して約10度程度傾けられ、Y2アナライザ69の反射光がY2デバイス64に戻らないように設けられている。
【0049】
一方、90度位相制御板51から出力される合成光がS偏光である期間(切替信号が「1」である期間)では、そのS偏光は、Y1デバイス58に結像する画像サイズ、位置の微調整用のY1フィールドレンズ53を透過し、更に1/2波長板54により1/2波長ずらされて一旦P偏光とされる。1/2波長板54からのP偏光は、消光比を高めるために混入している不要なS偏光成分がアナライザ55により除去され、Y1WG56を透過し、更に光の位相調整用のY1波長板(リターダ)57を通してY1デバイス58に入射結像してY1映像信号で変調される。なお、Y2収差補正レンズ60と同様に、Y1WG56の透過光を補正する収差補正レンズをY1WG56の入射側に設けてもよい。
【0050】
Y1デバイス58に入射して変調されたP偏光は、S偏光とP偏光とが混ざった光となってY1デバイス58を反射し、Y1波長板(リターダ)57を通してY1WG56によりS偏光成分が反射され、残りのP偏光成分がPS分離WG52に戻っていく。Y1WG56により反射されたS偏光は、Y1収差補正レンズ65により、後段のPS合成WG68に45度斜めに光軸が入っているためにPS合成WG68を通過する際の非点収差が補正される。このY1収差補正レンズ65は、例えばシリンドリカルレンズやウェッジガラスにより構成されている。
【0051】
Y1収差補正レンズ65を透過したS偏光は、1/2波長板66でP偏光に戻された後、高コントラストを保つために、Y1アナライザ(P偏光透過、S偏光カット)67によりY1WG56で反射するS偏光に混じるP偏光成分(実際は、1/2波長板66を通過するので不要光はS偏光成分)がカットされた後、PS合成WG68に入射する。ここで、Y1アナライザ67は、レンズ光軸に対して約10度程度傾けられ、Y1アナライザ67の反射光がY1デバイス58に戻らないように設けられている。
【0052】
PS合成WG68は、Y1デバイス58で変調されたY1アナライザ67からのP偏光と、Y2デバイス64で変調されたY2アナライザ69からのS偏光とを合成して、その合成光をY1Y2投射レンズ70を通してスクリーン(図示せず)に投射する。なお、Y1デバイス58とY2デバイス64とは、マイクロモータで機械的にその位置が動かされ、画素レベルで一致できる構造を有している。
【0053】
次に、本実施形態の各デバイスの表示タイミングと、第一光変調及び第二光変調の掛け算された投射画像出力との関係について、図2のタイミングチャートを併せ参照して説明する。本実施の形態では、120Hzの倍速表示を目標としており、この場合120Hz時のフレーム数をn、60Hz時のフレーム数をmとすると、両者の関係は
n=2・m、2・m+1、2・m+2、・・・
と表すことができる。
【0054】
図2(A)に示す120Hz時の目標とする入力映像信号は以下の(1)で表される。また、120Hz時のRGB映像信号と輝度信号はそれぞれ以下の(2)と(3)で表される。なお、ここでは、説明を簡単にするため、γ特性のγ値は「1.0」とし、Gデバイス23、Rデバイス27、Bデバイス31、Y1デバイス58及びY2デバイス64の各画素数は同じとし、以下のi,jは画面の画素位置と仮定する。
【0055】
Rin(n,i,j),Gin(n,i,j),Bin(n,i,j) (1)
HDR120(n,i,j),GHDR120(n,i,j),BHDR120(n,i,j) (2)
Yin(n,i,j) (3)
このとき、輝度信号YとR信号、G信号、B信号との関係を(4)式のように定義するものとする。
【0056】
Y=C・R+C・G+C・B (4)
ただし、(4)式中、CはR信号の定数、CはG信号の定数、CはB信号の定数を示す。
【0057】
また、図2(B)に示すフレーム周波数60HzのR信号RHDR60、G信号GHDR60、B信号BHDR60のmフレームの画素位置i,jにおける値は次式で定義される。
【0058】
HDR60(m,i,j)=MAX{RHDR120(2m-1,i,j),RHDR120(2m,i,j)} (5a)
HDR60(m,i,j)=MAX{GHDR120(2m-1,i,j),GHDR120(2m,i,j)} (5b)
HDR60(m,i,j)=MAX{BHDR120(2m-1,i,j),BHDR120(2m,i,j)} (5c)
すなわち、R信号RHDR60、G信号GHDR60、B信号BHDR60のmフレームの画素位置i,jにおける値は、フレーム周波数120HzのR信号RHDR120、G信号GHDR120、B信号BHDR120の連続する2フレーム(2m−1フレームと2mフレーム)の画素位置i,jにおける値のうち大きな方の値を示す。なお、R信号RHDR60、G信号GHDR60、B信号BHDR60は、R信号RHDR120、G信号GHDR120、B信号BHDR120の連続する2フレームの平均値であってもよい。
【0059】
また、図2(C)、(D)に示すフレーム周波数60HzのY1映像信号、Y2映像信号のmフレームの画素位置i,jにおける値は次式で定義される。
【0060】
Y1(m,i,j)=Yin(2m,i,j)/{C・RHDR60(m,i,j)+C・GHDR60(m,i,j)
+C・BHDR60(m,i,j)} (6a)
Y2(m,i,j)=Yin(2m-1,i,j)/{C・RHDR60(m,i,j)+C・GHDR60(m,i,j)
+C・BHDR60(m,i,j)} (6b)
すなわち、mフレームのY1映像信号とY2映像信号は、2mフレームのフレーム周波数120Hzの輝度信号Yinを、mフレームのR信号RHDR60、G信号GHDR60、B信号BHDR60から(4)式のマトリクス変換により生成した値で除算した信号である。
【0061】
前述したように、図2(E)に示した切替信号が「0」である期間では、90度位相制御板51から出力される合成光がP偏光であり、RGB映像信号がY2デバイス64に照射されて図2(D)に示したY2映像信号(以下、輝度信号Y2ともいう)で変調されるので、Y1Y2投射レンズ70からは、図2(F)に模式的に示すように、Y2映像信号とRGB映像信号とがスクリーンに投射される。
【0062】
一方、図2(E)に示した切替信号が「1」である期間では、90度位相制御板51から出力される合成光がS偏光であり、RGB映像信号がY1デバイス58に照射されて図2(C)に示したY1映像信号(以下、輝度信号Y1ともいう)で変調されるので、Y1Y2投射レンズ70からは、図2(F)に模式的に示すように、Y1映像信号とRGB映像信号とがスクリーンに投射される。
【0063】
RGB分離合成投影システム系102による第1の変調光学システムから出力された変調光を、Y1Y2画像合成部分103による第2の変調光学システムで再度変調する、本実施の形態の二重変調光学システム100において、見掛け上の解像度は第2変調光学システムのY1デバイス58とY2デバイス64の解像度で決まる。そのため、本実施の形態では、それぞれ例えば4k×2k画素(水平方向4096画素、垂直方向2160画素)のLCOSで構成されたY1デバイス58とY2デバイス68を前述した45度斜め半画素ずらしの空間配置の構成としているため、従来より高解像度の8k×4k(水平方向7680画素、垂直方向4320画素)が見込まれる。
【0064】
更に、本実施の形態によれば、60Hzで駆動されるY1デバイス58とY2デバイス64を交互に1/120秒単位で時分割駆動するようにしているため、FPD(フラットパネル液晶ディスプレイ)に用いられる倍速駆動技術と同じような、動画応答の改善が期待できる。
【0065】
このように、本実施の形態によれば、1/2フレームずらして1/120秒毎に交互に切り替えられたY1映像信号とY2映像信号で変調された光を投射するようにしているので、60Hz駆動でありながら等価的に120Hz駆動と同じ効果が得られ、動画像の応答スピードが約4倍速くできる。これにより、本実施の形態によれば、高速応答が得られ、液晶駆動の欠点である動画再生時の液晶応答による動画像ボケを解決することができる。
【0066】
また、本実施の形態によれば、RGB分離合成投影システム系102による第1の変調光学システムにより得られる像のコントラストを1000:1、Y1Y2画像合成部分103による第2の変調光学システムで得られる像のコントラストを1000:1とした場合、総合コントラストは1000×1000の掛け算になり、従来の2台スタックよりはるかに高い100万:1という大幅な超高コントラスト画像が得られる。更に、本実施の形態によれば、G信号を二重にする場合に比べ、輝度信号を二重にしているので、より高解像度な画像が得られる。
【0067】
また、本実施の形態の光学システム100は、RGB分離合成投影システム系102の光変調に使用されるGデバイス23、Rデバイス27、Bデバイス31の応答時間Rt1と、Y1Y2画像合成部分103の光変調に使用されるY1デバイス58及びY2デバイス64の応答時間Rt2との合計応答時間(Rt1∩Rt2)を、Rt1のみ、又はRT2のみより短くすることができる。ここで、合計応答時間(Rt1∩Rt2)の「∩」は、Rt1,Rt2の両方が重なっている時間(AND)を表現している記号である。
【0068】
例えば、上記の応答時間Rt1及びRt2をそれぞれ同じ5msecとした場合、応答時間もコントラストと同様に掛け算になり、合計応答時間は上記の応答時間の約半分の2.5msecになる。基本的に、第一の光変調を行うRGB分離合成投影システム系102はRGB映像のバックライトの役目を果たす。一方、第二の光変調に使用されるY1デバイス58及びY2デバイス64は、応答時間が速くなると動画像ボケが大きく改善される(人間の目の応答は、色より輝度の変化に敏感なため。)。理想的には、液晶ディスプレイの応答時間が1msec以下になれば、CRT(陰極線管)を用いたディスプレイの応答時間に大きく近付き、液晶フラットパネルの黒挿入技術やオーバーシュート等の動画ボケ改善効果が有効に働く。
【0069】
次に、本発明になる投射型表示装置の実施の形態について説明する。
【0070】
図3は、本発明になる投射型表示装置の一実施の形態のシステムブロック図を示す。同図において、投射型表示装置80は、所望の被写体を撮像するスーパーハイビジョンカメラ81と、スーパーハイビジョンカメラ81の撮像信号を記録/再生するスーパーハイビジョンレコーダ82と、スーパーハイビジョンレコーダ82から再生出力された緑色信号G1及びG2、赤色信号R1及びR2、青色信号B1及びB2を入力として受け、その入力信号をマトリクス変換して2種類の輝度信号Y1、Y2と、色信号r、g及びbを出力するマトリクス変換デコーダ83と、図示しないスクリーンに光学像を投射する光学システム100とからなる。
【0071】
なお、図3のスーパーハイビジョンカメラ81に替えて、コンピュータ画像、フィルム画像などより作り出した原色光を用いることもできる。
【0072】
スーパーハイビジョンカメラ81はそれぞれ水平方向7680画素、垂直方向4320画素の緑色光用1枚、赤色光用1枚、青色光用1枚の計3枚の固体撮像素子を有し、それぞれの固体撮像素子より12ビットのR1、B1及びG1よりなる三原色信号と、R2、B2及びB2よりなる三原色信号とをフレームレート60p(垂直周波数60Hz)で出力する。
【0073】
スーパーハイビジョンレコーダ82は、スーパーハイビジョンカメラ81が2倍速対応している場合は、入力がR1、B1及びG1よりなる三原色信号と、R2、B2及びB2よりなる三原色信号とが1/120秒毎に交互に入力される。また、スーパーハイビジョンレコーダ82は、スーパーハイビジョンカメラ81が2倍速対応してない場合は、スーパーハイビジョンレコーダ82の内部で、次のフレーム相関からR2G2B2からなる三原色信号のフレーム信号を作り出している。スーパーハイビジョンレコーダ82は、リアル8k×4k画素でフレームレート60pの三原色信号を12ビットで取り込み、再生する。伝送は、12ビット伝送可能なHDMI等の信号を光多重で行う。
【0074】
マトリクス変換デコーダ83は、後述する構成により、入力された量子化ビット数12ビットの三原色信号(R1G1B1/R2G2B2)から、量子化ビット数12ビットの2つの輝度信号(Y1映像信号とY2映像信号)と、量子化ビット数10ビットの三原色信号(r信号、g信号、b信号)の計5チャンネル分の信号を生成して光学システム100へ出力する。
【0075】
光学システム100は、前述した図1の構成の光学システム(狭義のプロジェクタ)で、マトリクス変換デコーダ83からの信号Y1、Y2、r、g、bを受け、これらの信号をスクリーン(図示せず)に投射する。
【0076】
図4は、マトリクス変換デコーダ83の一実施の形態のブロック図を、図1の一部と共に示す。図4には、図1に示した切替信号発生回路71及び90度位相制御板51を示してあり、それ以外の回路部がマトリクス変換デコーダ83の一実施の形態を構成している。
【0077】
図4において、マトリクス変換デコーダ83は、スーパーハイビジョンレコーダ82から出力された、1/120秒毎に切り替わる120Hzの原色信号(赤色信号R1、緑色信号G1及び青色信号B1からなる第1の三原色信号と、赤色信号R2、緑色信号G2及び青色信号B2からなる第2の三原色信号)を入力として受け、その入力三原色信号を逆γ補正部91により一旦逆γ補正して、ガンマ1のリニア信号に戻して内部演算をし易くした後、Y1Y2作成部92により公知のマトリクス演算により、第1の三原色信号(R1、G1、B1)から帯域制限されていない周波数帯域の第1の輝度信号Y1FULLを作成すると共に、第2の三原色信号(R2、G2、B2)から帯域制限されていない周波数帯域の第2の輝度信号Y2FULLを作成する。
【0078】
また、マトリクス変換デコーダ83は、低域フィルタ(LPF)93により逆γ補正部91からの三原色信号の高域周波数成分を減衰させて低域周波数成分の原色信号R1LPF、G1LPF、B1LPF、R2LPF、G2LPF、B2LPFを取り出した後、最大値,Y1Y2計算部94と乗算器96にそれぞれ供給する。最大値,Y1Y2計算部94は、帯域制限された原色信号R1LPF、G1LPF、B1LPF、R2LPF、G2LPF、B2LPFのうちの最大値MAXを画素毎に計算すると共に、帯域制限された第1の3原色信号(R1LPF、G1LPF、B1LPF)から公知のマトリクス演算により第1の輝度信号の低域周波数成分Y1LPFを求め、帯域制限された第2の3原色信号(R2LPF、G2LPF、B2LPF)から公知のマトリクス演算により第2の輝度信号の低域周波数成分Y2LPFを求める。
【0079】
係数及び輝度信号生成部95は、Y1Y2作成部92からの輝度信号Y1FULL及びY2FULLと、最大値,Y1Y2計算部94からの最大値MAXと、輝度信号の低域周波数成分Y1LPF及びY2LPFとを入力として受け、係数Cと輝度信号Y1、Y2とを以下の計算式により求める。
【0080】
C=(α/β)1/2・(MAX)-1/2 (7)
Y1=Y1FULL・(β/α)1/2・(MAX)1/2/Y1LPF (8)
Y2=Y2FULL・(β/α)1/2・(MAX)1/2/Y2LPF (9)
ここで、上記の係数Cと輝度信号Y1、Y2の計算式について更に詳細に説明する。マトリクス変換デコーダ83に供給される入力映像信号は、スーパーハイビジョンレコーダ82から出力される原色信号(R1、G1及びB1、又はR2、G2及びB2)である。入力される三原色信号R1、G1及びB1とR2、G2及びB2とは、1/120秒毎に入力される三原色信号である。これらの三原色信号に対応する1/60秒単位で出力される3つの光出力F1R、F1G、F1Bは、それぞれ次式で表記できる。
【0081】
1R=F1(r)=A・(r1+r2)+α (10a)
1G=F1(g)=A・(g1+g2)+α (10b)
1B=F1(b)=A・(b1+b2)+α (10c)
ただし、(10a)式〜(10c)式中、αはRGB分離合成投影システム系102から出力される光のフレア成分である。また、Aは比例定数である。また、r1、g1、b1、r2、g2、b2は、入力原色信号R1、G1、B1、R2、G2、B2のγ値を「1.0」としたときの各信号を示す。
【0082】
また、この光出力F1R、F1G、F1Bは、それぞれ図1に示したY1Y2画像合成部分103で更に変調されるので、最終的な光出力のRGB成分F2R、F2G、F2Bは、それぞれ次式で表記できる。
【0083】
2R=F1(r)・(A・Y+β)
=A2・Y・(r1+r2)+A・Y・α+A・(r1+r2)・β+α・β
=Y・(r1+r2)+Y・α+ (r1+r2)・β+α・β (11a)
2G=F1(g)・(A・Y+β)
=A2・Y・(g1+g2)+A・Y・α+A・(g1+g2)・β+α・β
=Y・(g1+g2)+Y・α+(g1+g2)・β+α・β (11b)
2B=F1(b)・(A・Y+β)
=A2・Y・(b1+b2)+A・Y・α+A・(b1+b2)・β+α・β
=Y・(b1+b2)+Y・α+ (b1+b2)・β+α・β (11c)
ただし、(11a)式〜(11c)式中、βはY1Y2画像合成部分103から出力される光のフレア成分である。また、YはY1デバイス58、Y2デバイス64に供給される輝度信号Y1、Y2のγ値を「1.0」としたときの輝度信号である(以下の説明では、便宜上、輝度信号Y1、Y2はまとめて輝度信号Yとして示す)。更に、比例定数Aは簡単のため、「1」とする。
【0084】
ところで、通常の3板式のプロジェクタであれば、最終出力であるF2R、F2G、F2Bは、入力映像信号に比例するが、フレアが存在したり、RGB分離合成投影システム系102の各デバイスの画素数と、Y1Y2画像合成部分103の各デバイスの画素数が異なる場合はそうはならない。そこで、説明を簡単にするため、RGB分離合成投影システム系102の各デバイスの画素数が、Y1Y2画像合成部分103の各デバイスの画素数よりも小さいとする。この場合、入力映像信号R1、G1、B1、R2、G2、B2よりも映像信号r1、g1、b1、r2、g2、b2は高い周波数成分を持たない。
【0085】
そこで、入力映像信号R1、G1、B1、R2、G2、B2をLPF93に通して、映像信号r1、g1、b1、r2、g2、b2と同じ周波数特性とした原色信号の低域周波数成分R1LPF、G1LPF、B1LPF、R2LPF、G2LPF、B2LPFを考え、その中の最大値をMAXとする(これは画素毎に異なる値である)。R1LPF、G1LPF、B1LPF、R2LPF、G2LPF、B2LPFは、最大値を用いて次式で表現できる。ここで、rx、gx、bxは0≦rx、gx、bx<1.0なる値である。
【0086】
LPF=R1LPF+R2LPF=MAX・r (12a)
LPF=G1LPF+G2LPF=MAX・g (12b)
LPF=B1LPF+B2LPF=MAX・b (12c)
説明の都合上、RLPFがMAXであるとすると、(11a)式のF2Rは、α・βの成分の値は小さいので、無視すると、次式で表される。
【0087】
2R≒Y(r1+r2)+Y・α+(r1+r2)・β (13)
これからフレア成分を最小にするYと(r1+r2)を計算する。フレア成分がないとき(α=β=0)、F2R=RLPFなので、(12a)式とα=β=0を代入した(13)式とより次式が得られる。
【0088】
2R≒Y・(r1+r2)=RLPF=r・MAX (14)
また、(13)式において、フレアの影響を最小にする条件は次式である。
【0089】
Y・α=(r1+r2)・β (15)
よって、(14)式と(15)式とにより(16)式と(17)式とが得られる。
【0090】
(r1+r2)=r・(α/β)1/2・(MAX)1/2 (16)
Y=(β/α)1/2・(MAX)1/2 (17)
次に、緑色信号gについて説明する。Yは既に求まっているため、(11b)式でF2GがGLPFと等しいとおき、フレア成分α、βを無視すると、(11b)式と(12b)式とから次式が得られる。
【0091】
2G≒Y・(g1+g2)=GLPF=gx・MAX (18)
従って、緑色信号gは(18)式と(17)式とから次式で表される。
【0092】
(g1+g2)=gx・MAX/Y=gx・(α/β)1/2・(MAX)1/2 (19)
同様に、青色信号bも求めることができる。
【0093】
なお、上記の計算では赤色信号の低域周波数成分RLPFがMAXであるとして説明したが、以下のように表記するのであれば、RLPF、GLPF、BLPFのどれがMAXであっても成立する。
【0094】
(r1+r2)=r・(α/β)1/2・(MAX)1/2 (20a)
(g1+g2)=g・(α/β)1/2・(MAX)1/2 (20b)
(b1+b2)=b・(α/β)1/2・(MAX)1/2 (20c)
Y=(β/α)1/2・(MAX)1/2 (20d)
図4の乗算器96は、LPF93から出力された低域周波数成分の原色信号R1LPF、G1LPF、B1LPF、R2LPF、G2LPF、B2LPFと、係数及び輝度信号生成部95から出力された係数Cとから次式の乗算を行って、各10ビットの赤色信号r、緑色信号g、青色信号bをそれぞれ生成する。
【0095】
r=r1+r2=C・(R1LPF+R2LPF)=C・RLPF (21a)
g=g1+g2=C・(G1LPF+G2LPF)=C・GLPF (21b)
b=b1+b2=C・(B1LPF+B2LPF)=C・BLPF (21c)
この結果、(14)式、(18)式、(20a)式〜(20d)式、(21a)式〜(21c)式などから、係数Cは前述した(7)式で表される。
【0096】
これらの赤色信号r、緑色信号g、青色信号bは、それぞれrgb用γ補正部97に供給されてγ補正された後、図3中の光学システム100内の図1に示したRデバイス27、Gデバイス23、Bデバイス31にそれぞれ供給される。
【0097】
ところで、(20a)式〜(20d)式までは高周波数成分がないものとして計算したが、実際には高周波数成分が存在する。このため、(20a)式〜(20c)式の信号r、g、bを用いて輝度信号Yを生成すると、高周波数成分が失われてしまう。また、輝度信号Yについては、図1に示したY1デバイス58、Y2デバイス64に供給される輝度信号Y1、輝度信号Y2とを生成する必要がある。そこで、これらを考慮して、図4のY1Y2作成部92で前述したように、それぞれ帯域制限されていない周波数帯域の第1の輝度信号Y1FULLと第2の輝度信号Y2FULLを生成する。これらの輝度信号Y1FULLとY2FULLとは次式で表される。
【0098】
Y1FULL=C1・R1+C2・G1+C3・B1 (22a)
Y2FULL=C1・R2+C2・G2+C3・B2 (22b)
ここで、C1、C2、C3は入力映像信号R1(R2)、G1(G2)、B1(B2)による輝度成分への寄与係数で、ハイビジョン信号の場合は、それぞれ0.2126,0.7152,0.0722である。
【0099】
また、図4に示す最大値,Y1Y2計算部94では帯域制限されている周波数帯域の第1の輝度信号Y1LPFと第2の輝度信号Y2LPFとを生成する。これらの輝度信号Y1LPFとY2LPFとは次式で表される。
【0100】
Y1LPF=C1・R1LPF+C2・G1LPF+C3・B1LPF (23a)
Y2LPF=C1・R2LPF+C2・G2LPF+C3・B2LPF (23b)
ここで、(17)式や(20d)式のYは帯域制限されており、高周波数成分が存在しないので、高周波数成分を再現するには、(17)式や(20d)式の輝度信号Y(YLPF)に補正項Dを乗算して、帯域制限されていない輝度信号YFullを出力する必要がある。すなわち、YFull=D・YLPFとする。
【0101】
従って、係数及び輝度信号生成部95は、前述した(8)式と(9)式で表される輝度信号Y1とY2とを生成する。ここで、(8)式中、Y1FULL/Y1LPFが上記の補正項Dであり、(9)式中、Y2FULL/Y2LPFが上記の補正項Dである。
【0102】
図4のY1用γ補正部98は、係数及び輝度信号生成部95からの(8)式により計算された輝度信号Y1をγ補正し、それを量子化ビット数12ビットのY1映像信号としてY1ディレイ部110に供給し、ここで、前述した1/120秒遅延された後図1に示した光学システム100内のY1デバイス58に供給する。これと同時に、図4のY2用γ補正部99は、係数及び輝度信号生成部95からの(9)式により計算された輝度信号Y2をγ補正し、それを量子化ビット数12ビットのY2映像信号として図1及び図3に示した光学システム100内のY2デバイス64に供給する。従って、図2(C)に示したようにY1映像信号は、同図(D)に示したY2映像信号に対して1/120秒遅延されてマトリクス変換デコーダ83から出力される。
【0103】
なお、rgb用γ補正部97におけるγ値(=γ1)と、Y1用γ補正部98及びY2用γ補正部99における各γ値(=γ2)とは、第1変調光と第2変調光とが掛け合わせされたときにトータルのγ値が「2.2」になり、かつ、γ1とγ2とはできるだけ近い値になるように振り分けられる。例えば、γ1=1.0、γ2=1.2に選ばれる。この場合、指数の掛け算なので、トータルのγ値は2.2(=1.0+1.2)になる。
【0104】
このような構成のマトリクス変換デコーダ83から輝度信号Y1、Y2、色信号r、g及びbの5信号が供給された光学システム100からカラー画像がスクリーン(図示せず)に投射される。
【0105】
このように、図3に示した本実施の形態の投射型表示装置80は、1台でSHVを構成することでコンバージェンス補正を無くすことが可能となり、また、二重変調を行うので2台スタックより、はるかに高い100万:1以上の高コントラストが得られ、更に、G信号を二重にする装置に比べ、輝度信号を二重にしているので、より高解像度な画像が得られる。
【0106】
なお、本発明は以上の実施の形態に限定されるものではなく、その他種々の変形例が考えられる。例えば、図1の実施の形態の光学システム100では、Y1デバイス58に供給されるY1映像信号とY2デバイス64に供給されるY2映像信号とを1/120秒(1/2フレーム)ずらすと共に、Y1デバイス58とY2デバイス64とを1/120秒毎に交互にP偏光、S偏光を入射して交互に駆動するようにしている。このため、光学システム100は、例えばY1映像信号とその生成要素の第1の三原色信号(R1、G1、B1)を右目用画像及び左目用画像のうちの一方の画像に関する信号とし、Y2映像信号とその生成要素の第2の三原色信号(R2、G2、B2)を他方の画像に関する信号とすることで、視聴者が偏光メガネをかけて視聴する立体表示システムに適用することも可能である。
【0107】
また、光学システム100において、入力映像信号が120Hzに対応している場合において、60Hzのまま倍速駆動と同じ効果を得ているが、もし入力RGB映像信号が60Hzの場合は、図3に示したマトリクス変換デコーダ83の入力前のスーパーハイビジョンデコーダ82内で画像読み出し速度を2倍にすることで対応可能である。
【0108】
更に、本発明は、図1に示すような、RGB分離合成投影システム系102による第1の変調光学システムから出力された変調光を、Y1Y2画像合成部分103による第2の変調光学システムで再度変調する二重変調光学システム100において、Y1Y2画像合成部分103の光変調に使用されるY1デバイス58及びY2デバイス64の応答時間Rt2を、RGB分離合成投影システム系102の光変調に使用されるGデバイス23、Rデバイス27、Bデバイス31の応答時間Rt1より短くすることで、合計応答時間(Rt1∩Rt2)を短くする構成も包含するものである。
【0109】
この変形例について以下詳細に説明する。表示デバイスとして用いられる液晶パネルは、同じ液晶厚(セルギャップ)の場合は、入射光の波長が短いほど低い駆動電圧で速く飽和に達する。このため、上記のGデバイス23、Rデバイス27、Bデバイス31として同一の液晶パネルを用いた場合は、これらのうち最も波長の短い原色光Bが入射するBデバイス31が最も低い駆動電圧で飽和に達する。また、Gデバイス23及びRデバイス27は、Bデバイス31よりも駆動電圧を上げないと、Bデバイス31と同じ時間で飽和に達しない。一方、Y1デバイス58及びY2デバイス64は、同一のRGB合成光が入射するため、各々同じ駆動電圧で駆動されるが、入射RGB合成光中の一番波長の短いB光成分に合わせて駆動電圧が決定される。
【0110】
このため、例えば、白100%の信号の場合、Y1デバイス58及びY2デバイス64に対して、入射するB光成分の駆動電圧で変調できる光に合わせて、R光成分とG光成分の駆動電圧を変えてホワイトバランス調整が行われる。これにより、必然的にY1デバイス58及びY2デバイス64の駆動電圧は、最大でもB光成分の100%駆動時より大きくならないため、駆動電圧は低い電圧(Rの飽和電圧の半分位がBの飽和電圧である)になる。
【0111】
一般に、表示デバイスのLSI露光ルールによって、駆動電圧の最大電圧が決まっているが、上記のY1デバイス58及びY2デバイス64の駆動電圧は、この最大電圧よりも低いため、Y1デバイス58及びY2デバイス64のセルギャップを縮めることが可能である。そこで、この変形例では、Y1デバイス58及びY2デバイス64のセルギャップを縮めることで、上記応答時間Rt2を、Gデバイス23、Rデバイス27、Bデバイス31の応答時間Rt1より短くすることにより、より一層合計応答時間(Rt1∩Rt2)を短縮することができる。この場合の合計の応答時間は、上記の応答時間RT1とRT2とを同じにした場合にはRt1やRt2の約50%であるのに比べて、Rt1やRt2の約30%程度に速くなることが予想できる。
【0112】
なお、合計応答時間は(Rt1∩Rt2)で表されるので、応答時間Rt1を短くするためにGデバイス23、Rデバイス27、Bデバイス31のセルギャップを縮めても数式上は合計応答時間は短くなる。しかし、この場合は、Rデバイス27の飽和駆動電圧が上がり過ぎて飽和しなくなり、R信号の明るさが足りなくなってしまう。
【0113】
このように、Y1デバイス58及びY2デバイス64の応答時間Rt2を、Gデバイス23、Rデバイス27、Bデバイス31の応答時間Rt1より短くすることにより、より一層合計応答時間(Rt1∩Rt2)を短縮することができる。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明は、より自然な超高精細動画像が得られ、極めて臨場感ある映像再現が可能な投射型表示装置を実現できる。また、本発明は、応用としてインテグラル(IP)立体テレビ等への活用も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明の光学システムの一実施の形態の構成図である。
【図2】図1の実施形態の各デバイスの表示タイミングと、第一光変調及び第二光変調の掛け算された投射画像出力との関係及び切替信号を示すタイミングチャートである。
【図3】本発明の投射型表示装置の一実施の形態のブロック図である。
【図4】図3中のマトリクス変換デコーダの一実施の形態を示すブロック図である。
【図5】従来の光学システムの一例の構成図である。
【図6】二重変調を行う従来の光学システムの一例の構成図である。
【図7】従来の投射型表示装置の一例の構成図である。
【図8】45度斜め半画素ずらしの説明図である。
【符号の説明】
【0116】
11 ランプハウス
16 B/RGクロスダイクロミラー
17 RGミラー
18 Bミラー
19 R/Gダイクロミラー
23 Gデバイス
27 Rデバイス
31 Bデバイス
32 RGB合成ダイクロプリズム
35 1:1リレーレンズ
51 90度位相制御板
52 PS分離WG(ワイヤグリッド)
53 Y1フィールドレンズ
54、66 1/2波長板
55、61 アナライザ
56 Y1WG(ワイヤグリッド)
57 Y1波長板
58 Y1デバイス
59 Y2フィールドレンズ
60 Y2収差補正レンズ
62 Y2WG(ワイヤグリッド)
63 Y2波長板
64 Y2デバイス
65 Y1収差補正レンズ
67 Y1アナライザ
68 PS合成WG(ワイヤグリッド)
69 Y2アナライザ
70 Y1Y2投射レンズ
71 切替信号発生回路
80 投射型表示装置
81 スーパーハイビジョンカメラ
82 スーパーハイビジョンレコーダ
83 マトリクス変換デコーダ
91 逆γ補正部
92 Y1Y2作成部
93 低域フィルタ(LPF)
94 最大値,Y1Y2計算部
95 係数及び輝度信号生成部
96 乗算器
97 rgb用γ補正部
98 Y1用γ補正部
99 Y2用γ補正部
100 光学システム
101 光学照明システム部分
102 RGB分離合成投影システム系
103 Y1Y2画像合成部分
110 Y1ディレイ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1/(2T)秒(Tは所定の値)単位で構成されるフレーム画像に関する三原色の色信号の連続する2フレームから得た1/T秒単位の三原色の各色信号毎に照明光を別々に光変調して得られた各変調原色光を波長合成し、その第1の合成光を第1の変調光として出力する変調光学系と、
前記第1の変調光の偏光面を、前記1/(2T)秒毎に90度回転と回転停止とを交互に繰り返して、前記第1の変調光を前記1/(2T)秒毎に交互にS偏光及びP偏光として出力する90度位相制御手段と、
連続する2フレームのうち、一方のフレームの前記1/(2T)秒単位の第1の三原色の各色信号から生成した第1の輝度信号で、前記90度位相制御手段から出力された前記S偏光を光変調して第2の変調光として出力する第1の輝度信号変調光学系と、
連続する2フレームのうち、他方のフレームの前記1/(2T)秒単位の第2の三原色の各色信号から生成した第2の輝度信号で、前記90度位相制御手段から出力された前記P偏光を光変調して第3の変調光として出力する第2の輝度信号変調光学系と、
前記第2及び第3の変調光をPS合成して第2の合成光を生成する光合成手段と、
前記第2の合成光を投射するための投射手段と
を有することを特徴とする光学システム。
【請求項2】
前記第1の輝度信号変調光学系内の前記S偏光を前記第1の輝度信号で光変調する第1のデバイスと、前記第2の輝度信号変調光学系内の前記P偏光を前記第2の輝度信号で光変調する第2のデバイスの各デバイス応答時間Rt2を、前記変調光学系内の前記三原色の各色信号毎に別々に光変調する第3のデバイスの各デバイス応答時間Rt1よりも短く設定したことを特徴とする請求項1記載の光学システム。
【請求項3】
前記第1の輝度信号変調光学系内の前記S偏光を前記第1の輝度信号で光変調する第1のデバイスの画素と、前記第2の輝度信号変調光学系内の前記P偏光を前記第2の輝度信号で光変調する第2のデバイスの画素とは、互いに水平方向及び垂直方向にそれぞれ半画素ピッチ分ずつずらした45度斜め半画素ずらしの空間位置に配置されていることを特徴とする請求項1又は2記載の光学システム。
【請求項4】
前記第1の三原色の各色信号及び前記第1の輝度信号を右目用画像及び左目用画像の一方の画像に関する信号とし、前記第2の三原色の各色信号及び前記第2の輝度信号を前記右目用画像及び左目用画像の他方の画像に関する信号としたことを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項記載の光学システム。
【請求項5】
1/(2T)秒(Tは所定の値)単位で構成されるフレーム画像に関する三原色の色信号の連続する2フレームのうち、一方のフレームの第1の三原色の色信号に基づいて、帯域制限されていない第1の輝度信号を生成し、かつ、前記2フレームのうち他方のフレームの第2の三原色の色信号に基づいて、帯域制限されていない第2の輝度信号を生成する第1の信号生成手段と、
前記第1及び第2の三原色の色信号をそれぞれ帯域制限し、その帯域制限された前記第1及び第2の三原色の色信号のそれぞれについて画素毎の最大値を求めると共に、帯域制限された前記第1及び第2の三原色の色信号に基づいて、帯域制限された第3及び第4の輝度信号を生成する第2の信号生成手段と、
前記画素毎の最大値に基づいて色信号用補正係数を生成すると共に、前記画素毎の最大値と前記第3の輝度信号とに基づいて第1の表示用輝度信号を生成し、かつ、前記画素毎の最大値と前記第4の輝度信号とに基づいて生成した輝度信号を前記第1の表示用輝度信号に対して前記1/(2T)秒ずらして第2の表示用輝度信号を生成する第3の信号生成手段と、
前記色信号用補正係数と帯域制限された前記1及び第2の三原色の色信号とを乗算して、前記1/(2T)秒単位で構成されるフレーム画像に関する三原色の色信号の連続する2フレームから得た1/T秒単位の表示用の三原色の色信号を生成する第4の信号生成手段と、
前記表示用の三原色の各色信号毎に照明光を別々に光変調して得られた各変調原色光を波長合成し、その第1の合成光を第1の変調光として出力する変調光学系と、
前記第1の変調光の偏光面を、前記1/(2T)秒毎に90度回転と回転停止とを交互に繰り返して、前記第1の変調光を前記1/(2T)秒毎に交互にS偏光及びP偏光として出力する90度位相制御手段と、
前記90度位相制御手段から出力された前記S偏光を、前記第1の表示用輝度信号で光変調して第2の変調光として出力する第1の輝度信号変調光学系と、
前記90度位相制御手段から出力された前記P偏光を、前記第2の表示用輝度信号で光変調して第3の変調光として出力する第2の輝度信号変調光学系と、
前記第2及び第3の変調光をPS合成して第2の合成光を生成する光合成手段と、
前記第2の合成光を投射するための投射手段と
を有することを特徴とする投射型表示装置。
【請求項6】
前記第1の輝度信号変調光学系内の前記S偏光を前記第1の表示用輝度信号で光変調する第1のデバイスと、前記第2の輝度信号変調光学系内の前記P偏光を前記第2の表示用輝度信号で光変調する第2のデバイスの各デバイス応答時間Rt2を、前記変調光学系内の前記三原色の各色信号毎に別々に光変調する第3のデバイスの各デバイス応答時間Rt1よりも短く設定したことを特徴とする請求項5記載の投射型表示装置。
【請求項7】
前記第1の輝度信号変調光学系内の前記S偏光を前記第1の表示用輝度信号で光変調する第1のデバイスの画素と、前記第2の輝度信号変調光学系内の前記P偏光を前記第2の表示用輝度信号で光変調する第2のデバイスの画素とは、互いに水平方向及び垂直方向にそれぞれ半画素ピッチ分ずつずらした45度斜め半画素ずらしの空間位置に配置されていることを特徴とする請求項5又は6記載の投射型表示装置。
【請求項8】
前記第1の三原色の色信号及び前記第1の表示用輝度信号を右目用画像及び左目用画像の一方の画像に関する信号とし、前記第2の三原色の色信号及び前記第2の表示用輝度信号を前記右目用画像及び左目用画像の他方の画像に関する信号としたことを特徴とする請求項5乃至7のうちいずれか一項記載の投射型表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−145431(P2010−145431A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−319066(P2008−319066)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】