説明

光学反射素子

【課題】本発明は光学反射素子の駆動精度を高めることを目的とする。
【解決手段】この目的を達成するため本発明は、ミラー部1と、このミラー部1とそれぞれ第一の支持部2で連結された、対の第一の音叉形圧電振動子3と、これらの第一の音叉形圧電振動子3とそれぞれ第二の支持部5で連結され、対の第一の音叉形圧電振動子3の外周を囲う枠体6と、この枠体6とそれぞれ第三の支持部7で連結された第二の音叉形圧電振動子8と、これらの第二の音叉形圧電振動子8とそれぞれ第四の支持部10で連結された支持体11とを備え、第一の音叉形圧電振動子3は、それぞれ第一の支持部2の両側に第一、第二のアーム12、13を有し、対の第一の音叉形圧電振動子3の少なくともいずれか一方は、第一または第二のアーム12、13上に第一のモニター電極17を有するものとした。これにより本発明は、光学反射素子の駆動精度を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザーディスプレイなどに用いられる光学反射素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の光学反射素子として、図8に示すような光学反射素子が挙げられる。この光学反射素子は、ミラー部101と、このミラー部101を、トーションバー102を介して支持する枠体103と、この枠体103内において、トーションバー102を回動させる圧電振動子104と、枠体103を、トーションバー105を介して支持する支持体106と、この支持体106内において、トーションバー105を回動させる第二の圧電振動子107とを備えている。そしてトーションバー102の回転軸とトーションバー105の回転軸とは垂直な関係である。
【0003】
そしてこの光学反射素子は、小型のディスプレイ装置などに利用することができ、このトーションバー102、105の回転トルクによってミラー部101を励振させ、回動するミラー部101でレーザー光を反射することにより、スクリーン面上にレーザー光線を掃引させる。
【0004】
なお、この技術分野に関連する文献としては、下記特許文献1が挙げられる。
【特許文献1】特開2008−20701号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの光学反射素子では、駆動精度が低いことがある。
【0006】
その理由は、圧電振動子104、107の設計誤差や外部環境要因により、発生する駆動力が変動するからである。したがって所定の電気信号を印加しても、所望の駆動力が得られない場合がある。
【0007】
そこで本発明は光学反射素子の駆動精度を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そして、この目的を達成するために本発明は、ミラー部と、このミラー部を介して対向するとともに、このミラー部とそれぞれ第一の支持部で連結された、対の第一の音叉形圧電振動子と、これらの第一の音叉形圧電振動子の振動中心とそれぞれ第二の支持部で連結され、対の第一の音叉形圧電振動子の外周を囲う枠体と、この枠体を介して対向するとともに、この枠体とそれぞれ第三の支持部で連結され、第一の音叉形圧電振動子の回転軸に対して垂直な回転軸を有する対の第二の音叉形圧電振動子と、これらの第二の音叉形圧電振動子の振動中心とそれぞれ第四の支持部で連結された支持体とを備え、第一の音叉形圧電振動子は、それぞれ第一の支持部の両側に第一のアームと第二のアームとを有し、第二の音叉形圧電振動子は、それぞれ第三の支持部の両側に第三のアームと第四のアームとを有し、対の第一の音叉形圧電振動子の少なくともいずれか一方は、第一のアームまたは第二のアーム上に第一のモニター電極を有するものとした。
【発明の効果】
【0009】
これにより本発明は、光学反射素子の駆動精度を高めることができる。
【0010】
その理由は、第一の音叉形圧電振動子の変位を、第一のモニター電極で検出できるからである。したがって、第一のモニター電極からの信号を検出して、第一の音叉形圧電振動子に入力する電気信号を制御すれば、第一の音叉形圧電振動子に所望の変位駆動をさせることができる。そしてその結果、光学反射素子の駆動精度を高めることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1における光学反射素子の構成について説明する。
【0012】
図1に示すように、この光学反射素子は、ミラー部1と、このミラー部1を介して対向するとともに、このミラー部1とそれぞれの第一の支持部2で連結された、一対の第一の音叉形圧電振動子3と、これらの第一の音叉形圧電振動子3の振動中心4とそれぞれ第二の支持部5で連結され、一対の第一の音叉形圧電振動子3の外周を囲う枠体6と、この枠体6を介して対向するとともに、この枠体6とそれぞれ第三の支持部7で連結された、一対の第二の音叉形圧電振動子8と、これらの第二の音叉形圧電振動子8の振動中心9とそれぞれ第四の支持部10で連結された枠形状の支持体11とを備えている。
【0013】
そして第一の音叉形圧電振動子3は、それぞれ第一の支持部2の両側に、第一のアーム12と第二のアーム13とを有し、第二の音叉形圧電振動子8は、それぞれ第三の支持部7の両側に第三のアーム14と第四のアーム15とを有している。
【0014】
また本実施の形態では、第一の音叉形圧電振動子3は、図1のX軸を回転軸とし、このX軸上に第一の支持部2と第二の支持部5とが配置されている。
【0015】
また第二の音叉形圧電振動子8はX軸に垂直なY軸を回転軸とし、このY軸上に第三の支持部7と第四の支持部10とが配置されている。
【0016】
なお本実施の形態では、X軸とY軸とは、ミラー部1のほぼ中心で直交するように形成されている。これによりミラー部1の中心が不動点となり、この不動部分に光を入射すれば、スクリーン上に投影される光の光路長は一定となり、画像を高精度に投影することができる。
【0017】
そして本実施の形態では、図1に示すように、対の第一の音叉形圧電振動子3はいずれも、それぞれ対向する第一のアーム12の表面には圧電アクチュエータ16が形成され、またそれぞれ対向する第二のアーム13の表面には第一のモニター電極17が形成されている。
【0018】
この圧電アクチュエータ16は、図2に示すように、基材18上に形成された、下部電極19、圧電体20および上部電極21の積層体構造からなる薄膜積層型である。これによって、図1の第一の音叉形圧電振動子3、第二の音叉形圧電振動子8をより薄型にすることができる。
【0019】
また第一のモニター電極17は、図2に示すように、上部電極21と同様に圧電体20上に積層されている。
【0020】
また本実施の形態では、図1に示すように、対の第二の音叉形圧電振動子8はいずれも、それぞれ対向する第三のアーム14の表面には第二のモニター電極22が形成され、またそれぞれ対向する第四のアーム15の表面には圧電アクチュエータ16が形成されている。
【0021】
上述の第二のモニター電極22は、第一のモニター電極17と同様に、圧電体(図2の20)上に積層されている。
【0022】
なお、本実施の形態では、図2に示す下部電極19および圧電体20は第一の音叉形圧電振動子3と第二の音叉形圧電振動子8とで共通に形成し、第一のアーム12上の上部電極21、第四のアーム15上の上部電極(図示せず)、第一のモニター電極17、第二のモニター電極22はそれぞれ電気的に独立するように形成した。これら電極の配線は、それぞれ圧電体20上に引き回され、支持体11に形成された接続端子23〜27に引き出される。また下部電極19も支持体11上の接続端子28に引き出される。なお図2には、第一のモニター電極17の配線29、第一のアーム12上に形成された上部電極21の配線30、第四のアーム15上に形成された上部電極(図示せず)の配線31をそれぞれ示した。
【0023】
なお本実施の形態では、対となる第一の音叉形圧電振動子3はいずれも第一のアーム12上に上部電極21を有し、これらの上部電極21には同じ位相の電気信号が印加されるため、これらの上部電極21の配線(図2の30)は例えば枠体6上で連結してもよい。これにより素子上で引き回す配線の数を減らすことができ、生産性が高まる。特に上部電極21の配線30は、枠体6を通り、第三の支持部7、第四の支持部10を介して接続端子23に引き出すことができるが、第三の支持部7、第四の支持部10は非常に微細なため、配線の数が増えるほど配線のパターニングが困難になる。しかし前述のように枠体6上で複数の配線を合流させることができれば、配線の数が減り、生産性向上に大きく寄与するとともに、配線のスペースを確保することにより、その他の配線や電極との間の電気的絶縁性を高めることができる。
【0024】
また対となる第一の音叉形圧電振動子3はいずれも第二のアーム13上に第一のモニター電極17を有し、これらの第一のモニター電極17は同位相の略同じ電気信号を検知するため、これらの第一のモニター電極17の配線(図2の29)を枠体6上で連結してもよい。これにより配線数を低減でき、生産性が向上するとともに配線間の電気的絶縁性を高めることができる。
【0025】
なお、本実施の形態では、第四のアーム15に形成された上部電極(図示せず)の配線31や、第二のモニター電極22の配線も、それぞれ一対ずつ形成されているため、これらをそれぞれ連結してもよい。
【0026】
また本実施の形態では、第一の音叉形圧電振動子3の共振周波数と、ミラー部1と第一の支持部2で構成された捩れ振動子の共振周波数とが略同一周波数となるように振動設計した。これにより効率良くミラー部1を反復回転振動させることができる。
【0027】
同様に、第二の音叉形圧電振動子8の共振周波数と、枠体6と第三の支持部7とで構成された捩れ振動子の共振周波数とが略同一周波数となるように設計することが好ましい。
【0028】
次に、このような構成からなる光学反射素子の動作原理について説明する。
【0029】
図2に示す第一のアーム12の下部電極19と上部電極21との間に交流の駆動電圧を印加すると、圧電体20が面方向に伸び縮みし、第一のアーム12が基材18に対して垂直方向に撓み振動する。
【0030】
この時、上部電極21に第一の音叉形圧電振動子3の共振駆動電圧を印加すれば、共振の原理により、第二のアーム13は第一のアーム12と逆位相に駆動する。すなわち、図3に示すように、第一のアーム12と第二のアーム13とを、位相が180度異なる方向(矢印32A、32B方向)に、つまり逆方向に撓み振動させることができる。ここで本実施の形態では、第一、第二のアーム12、13は、その先端を自由端とする片持ち構造のため、大きく撓み振動させることができる。
【0031】
そして、この第一のアーム12と第二のアーム13の振動エネルギーは、第一の音叉形圧電振動子3の連結部34へと伝搬される。これによって、第一の音叉形圧電振動子3は、その振動中心4を通る直線X軸を回転軸として、このX軸を中心に、所定の周波数にて反復回転振動(捩れ振動)をする。
【0032】
次に、この反復回転振動の振動エネルギーが、連結部34に接合された第一の支持部2に伝達され、第一の支持部2とミラー部1とで構成される捩れ振動子が、X軸を中心に矢印33方向に捩れ振動を起こすようになる。これによって、ミラー部1はX軸を軸中心として反復回転振動を起こす。このとき、第一の音叉形圧電振動子3の反復回転振動の方向と、第一の支持部2およびミラー部1で構成される捩れ振動子の反復回転振動の方向は位相が180度異なる反対方向に振動することとなる。
【0033】
そして図1に示す第一のモニター電極17が、第二のアーム13の変位を電気信号として検知する。この時、前述のように第一のモニター電極17で検出する電気信号は、第一のアーム12の上部電極21に印加される電気信号と逆位相になるため、第一のモニター電極17で検出した電気信号を、フィードバック回路を介して第一のアーム12の上部電極21に入力すれば、第一の音叉形圧電振動子3を自励駆動させることができる。また第一のモニター電極17で検出した電気信号によって上部電極21への入力信号を制御すれば、高精度に駆動させることができる。
【0034】
また図1に示す第二の音叉形圧電振動子8も、第四のアーム15の下部電極と上部電極間に第二の音叉形圧電振動子8の共振駆動電圧を印加し、第三のアーム14と第四のアーム15とを、それぞれ位相が180度異なる方向に撓み振動させることによって、振動中心9を通るY軸を中心に、捩り振動を起こす。
【0035】
そしてこの振動エネルギーが連結部35を介して第三の支持部7に伝播すると、この第三の支持部7と枠体6とからなる捩り振動子を、Y軸を中心に、第二の音叉形圧電振動子8と逆位相に反復回転振動させることができる。
【0036】
そして枠体6が傾くと、この枠体6に支持されているミラー部1も傾き、ミラー部1を反復回転振動させることができる。
【0037】
また第二のモニター電極22が、第三のアーム14の変位を電気信号として検知する。この時、前述のように第二のモニター電極22で検出する電気信号を、フィードバック回路を介して第四のアーム15上の上部電極に入力すれば、第二の音叉形圧電振動子8を自励駆動させることができる。また第二のモニター電極22で検出した電気信号によって第四のアーム15への入力信号を制御すれば、高精度に駆動させることができる。
【0038】
そしてこの光学反射素子は、例えば図4に示すように、画像投影装置に応用することができる。すなわち二軸方向に振動するミラー部1にレーザー光源またはLED光源などの光源36から光を入射し、このミラー部1で光を反射し、光を二次元に走査することでスクリーン37に画像を投影することができる。その他レーザ露光機などにも用いることができる。
【0039】
なお、本実施の形態では、図1の第一の音叉形圧電振動子3による駆動で光を水平方向に走査し、第二の音叉形圧電振動子8による駆動で光を垂直方向に走査する。
【0040】
次に、本実施の形態1における光学反射素子の製造方法について図2を用いて説明する。
【0041】
まず始めに、基材18となる、厚みが約0.5mmのシリコン基板を準備し、その上にスパッタリング法または蒸着法などの薄膜プロセスを用いて白金電極からなる下部電極19を形成する。なお、基材18としては、金属、ガラスまたはセラミック基板などの弾性、機械的強度および高いヤング率を有する材料で構成することが生産性の観点から好ましく、例えば、金属、水晶、ガラス、石英またはセラミック材料を用いることが機械的特性と入手性の観点から好ましい。さらに、シリコン、チタン、ステンレス、エリンバー、黄銅合金などの金属を用いれば、振動特性、加工性に優れた光学反射素子を実現できる。
【0042】
その後、この下部電極19の上にチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などの高い圧電定数を有する圧電材料を用いてスパッタリング法などによって圧電体20を形成する。このとき、圧電体20と下部電極19との間には、配向制御層としてPbとTiを含む酸化物誘電体を用いることが好ましく、チタン酸・マグネ・ランタン・鉛(PLMT)からなる配向制御層を形成することがより好ましい。これによって、圧電体20の結晶配向性がより高まり、圧電特性に優れた圧電アクチュエータ16を実現することができる。
【0043】
次に、この圧電体20の上にチタン(Ti)/金(Au)よりなる上部電極21や第一のモニター電極17、第二のモニター電極22を形成している。
【0044】
このとき、上部電極21、第一のモニター電極17、第二のモニター電極22の下層のチタンはPZT薄膜などの圧電体20との密着力を高めるために形成しており、チタンの他にクロムなどの金属を用いることができる。これによって、圧電体20との密着性に優れ、かつ、金電極とは強固な拡散層を形成していることから、積層体としての接合強度が高まる。
【0045】
なお、本実施の形態では、白金の下部電極19の厚みは0.2μm、PZTからなる圧電体20は3.5μm、上部電極21、第一のモニター電極17、第二のモニター電極22のチタン部分は0.01μmとし、金電極部分は0.3μmで形成している。
【0046】
次に、下部電極19、圧電体20、上部電極21、第一のモニター電極17、第二のモニター電極22とを、フォトリソ技術を用いてエッチングし、パターン形成する。
【0047】
このとき、上部電極21、第一のモニター電極17、第二のモニター電極22のエッチング液としてはヨウ素/ヨウ化カリウム混合溶液と水酸化アンモニウム、過酸化水素混合溶液からなるエッチング液を用いて所定の電極パターンを形成した。
【0048】
また、下部電極19、圧電体20に用いるエッチング方法としては、ドライエッチング法とウエットエッチング法のいずれかの方法、あるいはこれらを組み合わせた方法などを用いることができる。
【0049】
一例として、ドライエッチング法であればフルオロカーボン系のエッチングガス、あるいはSF6ガスなどを用いることができる。
【0050】
その他、圧電体20を、弗酸、硝酸、酢酸および過酸化水素の混合溶液を用いウエットエッチングしてパターニングし、その後、さらに、ドライエッチングによって下部電極19をエッチングしてパターニングする方法がある。
【0051】
次に、XeF2ガスを用いてシリコン基板を等方的にドライエッチングすることによって不必要なシリコン部分を除去してパターニングし、図2に示すような基材18を形成すれば、図1に示したような形状の光学反射素子を形成することができる。
【0052】
なお、シリコン基板をより高精度にエッチングする場合は、シリコンの異方性を利用したドライエッチングが好ましい。この場合は、エッチングを促進するSF6ガスとエッチングを抑制するC48ガスの混合ガスを用いるか、あるいはこれらのガスを交互に切り替えることにより、より直線的にエッチングできる。
【0053】
以上のような製造方法によって、小型で、高精度な光学反射素子を一括して効率よく作製することができる。
【0054】
以上のような製造プロセスによって、例えばミラー部1の大きさが1.0mm×1.0mm、支持体11の大きさが5.8mm×5.8mm、厚さ0.03mm、駆動周波数;fH(水平)22kHz、fV(垂直)0.5kHz、ミラー部1の振れ角;θH(水平)±5度、θV(垂直)±5度程度の特性を有した光学反射素子を作製することができる。
【0055】
なお本実施の形態では、ミラー部1、第一の支持部2、第一の音叉形圧電振動子3、第二の支持部5、枠体6、第三の支持部7、第二の音叉形圧電振動子8、第四の支持部10、および支持体11の基材18を、同一基材18から一体形成とすることができ、振動特性と、生産性に優れた光学反射素子を実現することができる。
【0056】
また本実施の形態における光学反射素子は、シリコンウエハーなどの基材18の上に薄膜プロセス、フォトリソ技術などの半導体プロセスを応用することによって高精度に、一括して作製することができ、光学反射素子の小型化、高精度化および生産効率に優れた光学反射素子を実現することができる。
【0057】
なお、ミラー部1は基材18の表面を鏡面研磨することによっても形成できるが、光の反射特性に優れた金やアルミニウムの金属薄膜をミラー膜として形成することもできる。本実施の形態では、上部電極21や第一のモニター電極17、第二のモニター電極22として金を用いた為、この金の膜をそのままミラー膜として用いることができ、生産効率も高まる。
【0058】
本実施の形態の効果を以下に説明する。
【0059】
本実施の形態では、光学反射素子の駆動精度を高めることができる。
【0060】
その理由は、第一の音叉形圧電振動子3に発生した振幅を、第一のモニター電極17で検出でき、また第二の音叉形圧電振動子8に発生した振幅を、第二のモニター電極22で検出できるからである。
【0061】
すなわち、圧電振動子は、設計誤差などにより形状が異なったり、あるいは外部環境要因が変わったりすると、出力される駆動力も変動する。したがって所定の電気信号を印加しても、所望の駆動力が得られない場合がある。特に圧電振動子を共振駆動させる場合は、形状の僅かな違いにより圧電振動子に固有の振動周波数が変わり、所定の周波数の電気信号を入力しても駆動しない場合がある。
【0062】
これに対し本実施の形態では、第一のモニター電極17で第二のアーム13、すなわち第一の音叉形圧電振動子3の変位を電気信号として検知することができる。
【0063】
ここで第一の音叉形圧電振動子3とミラー部1の振動は連動しているため、第一の音叉形圧電振動子3の駆動が分かればミラー部1のX軸を中心に回動する駆動も分かることになる。したがって、第一のモニター電極17からの信号を検出して、第一のアーム12に入力する電気信号を制御すれば、第一の音叉形圧電振動子3に所望の変位駆動をさせることができ、これに伴ってミラー部1も所望の変位駆動をさせることができる。そしてその結果、光学反射素子の駆動精度を高めることが出来る。
【0064】
また同様に、本実施の形態では、第二のモニター電極22で第三のアーム14の変位を検知することができる。そして第二の音叉形圧電振動子8の駆動が分かれば、枠体6およびミラー部1のY軸を中心に回動する変位も分かることになる。
【0065】
したがって、第二のモニター電極22からの信号を検出して第四のアーム15の圧電アクチュエータ16に入力する電気信号を制御すれば、第二の音叉形圧電振動子8および枠体6、ミラー部1に所望の変位駆動をさせることができる。そしてその結果、光学反射素子の駆動精度を高めることができる。
【0066】
なお、本実施の形態では、第一の音叉形圧電振動子3、第二の音叉形圧電振動子8のいずれの駆動も第一のモニター電極17、第二のモニター電極22でそれぞれ検出したが、少なくともいずれか一方にモニター電極を設けることで、その設けた方の音叉形圧電振動子を高精度に駆動させることができ、光学反射素子の駆動精度の向上に寄与する。
【0067】
また本実施の形態では、第一の音叉形圧電振動子3、第二の音叉形圧電振動子8のいずれも共振駆動させているため、第一のアーム12、第二のアーム13のいずれか一方と、第三のアーム14、第四のアーム15のいずれか一方に圧電アクチュエータ16を配置すれば、他方のアームをそれぞれ共振駆動させることができる。したがって、この他方のアームにモニター電極を配置すれば、素子のスペースを有効に活用して駆動をモニタリングすることができる。
【0068】
また第一のアーム12と第二のアーム13、第三のアーム14と第四のアーム15はそれぞれ逆位相に駆動するため、いずれか一方にモニター電極を配置すれば、このモニター電極から検知した電気信号を、他方のアームに入力することができ、素子を自励駆動させることができる。
【0069】
なお、たとえば一方の第一の音叉形圧電振動子3の第一のアーム12に圧電アクチュエータ16を配置し、他方の第一のアーム12に第一のモニター電極17を配置する場合は、出力信号と入力信号とが同位相になる。したがって、この場合は、第一のモニター電極17で検出した電気信号を反転させ、その後第二のアーム13の圧電アクチュエータ16に入力し、自励駆動させる。
【0070】
更に本実施の形態では、対となる第一の音叉形圧電振動子3は、互いに対向するアームに、すなわち同じ位相で変位駆動をする位置に第一のモニター電極17を設けたため、これらの配線(図2の29)は、素子上で合流させることができる。したがって、例えば枠体6上で合流させれば、微小な第三の支持部7、第四の支持部10に引き回す配線の数を低減することができ、生産性向上に寄与する。さらに、配線数が減ると、これらの配線スペースを確保することができ、配線間の電気的絶縁性を高めることが出来る。
【0071】
また同様の理由により、第一のアーム12の上部電極21の配線30も、同位相の電気信号が流れるため、対となる配線30を例えば枠体6上で合流させることができ、生産性向上と配線間の電気的絶縁性向上に寄与する。
【0072】
なお、第二のモニター電極22の配線、第四のアーム15の上部電極の配線31も、それぞれ対となる配線と素子上で合流させることができる。そして電気信号を合流して引き出せば、S/N比を高めることができる。
【0073】
さらに本実施の形態では、光学反射素子を小型化することができる。
【0074】
すなわち第一の音叉形圧電振動子3、第二の音叉形圧電振動子8を用いることにより、それぞれの第一のアーム12、第二のアーム13、第三のアーム14、第四のアーム15の撓み振動を利用して、ミラー部1を反復回転振動することができるからである。
【0075】
したがって、例えば電磁駆動式の光学反射素子のように、配置面積の大きい磁石等を用いることなく、ミラー部1を励振することができ、素子の小型化に寄与する。
【0076】
また駆動源を音叉形にすることにより、アームの先端が自由端となるため、小型であってもミラー部1の振れ角度を効率よく大きくできる。
【0077】
また振動源を、高Q値を有する音叉形とすることにより、小さなエネルギーで大きな振動エネルギーを得ることが出来、素子の小型化にも寄与する。
【0078】
またこれらの第一の音叉形圧電振動子3、第二の音叉形圧電振動子8の振動設計をすることによって、出力光の反射角度を大きく変化させることができ、レーザー光線などの入力光を所定の設計値となるように掃引することができる光学反射素子を実現することができる。
【0079】
さらに実施の形態では、ミラー部1をその両側から一対の第一の音叉形圧電振動子3で囲い、これらの第一の音叉形圧電振動子3の外周を枠体6で囲い、この枠体6をその両側から一対の第二の音叉形圧電振動子8で囲い、これらの第二の音叉形圧電振動子8の外周を支持体11で囲う構成のため、各部材が小さな隙間を介して幾層にも巻かれたような構造となり、素子全体のデッドスペースを減らし、素子を小型化できる。
【0080】
また本実施の形態では、第一、第二、第三、第四のアーム12〜15はそれぞれ直線形状のため、加工も容易である。
【0081】
また本実施の形態では、ミラー部1の両側に、対称的に第一の音叉形圧電振動子3を配置しているため、ミラー部1を安定して左右対称に励振させることができ、その中心が不動点となるため光を安定して走査することができる。
【0082】
またミラー部1は、その両端が第一の支持部2で支持されている両持ち構造のため、ミラー部1の不要な共振を抑制し、さらに外乱振動による影響も低減できる。
【0083】
さらに本実施の形態では、枠体6の両側に、対称的に第二の音叉形圧電振動子8を配置しているため、枠体6の中心を不動点として励振させることができる。
【0084】
また枠体6は、その両端が第三の支持部7で支持されている両持ち構造のため、枠体6の不要な共振を抑制し、外乱振動による影響も低減できる。
【0085】
なお、上記実施の形態では、第一のモニター電極17は第二のアーム13上に形成したが、第一のアーム12上に形成し、圧電アクチュエータ16を第二のアーム13上に形成してもよい。また第二のモニター電極22は、第三のアーム14上に形成したが、第四のアーム15上に形成し、圧電アクチュエータ16を第四のアーム15上に形成してもよい。
【0086】
また上記実施の形態では、第一の支持部2、第二の支持部5、第三の支持部7、第四の支持部10はいずれも棒形状としたが、例えば図5に示すようにミアンダ形としてもよい。このように支持部をミアンダ形とすることにより、共振器長を長くすることができ、変位量を大きくすることができる。特に第三の支持部7、第四の支持部10をミアンダ形とすれば、第二の音叉形圧電振動子8の共振周波数を大きくすることができる。したがって、垂直方向と水平方向との振動周波数比を大きくすることができ、高精度な画像を投影することができる。
【0087】
(実施の形態2)
本実施の形態と実施の形態1との違いは、図6に示すように、圧電アクチュエータ16は、対となる第一の音叉形圧電振動子3および対となる第二の音叉形圧電振動子8の、それぞれいずれか一方に配置し、また第一、第二のモニター電極17、22は、他方の第一、第二の音叉形圧電振動子3、8に形成した点である。
【0088】
そして本実施の形態では、一方の第一の音叉形圧電振動子3の第一のアーム12に圧電アクチュエータ16を形成し、他方の第一の音叉形圧電振動子3の第二のアーム13に第一のモニター電極17を形成した。
【0089】
また一方の第二の音叉形圧電振動子8の第三のアーム14に第二のモニター電極22を形成し、他方の第二の音叉形圧電振動子8の第四のアーム15に圧電アクチュエータ16を形成した。
【0090】
本実施の形態では、まず圧電アクチュエータ16を備えた一方の第一のアーム12を共振駆動させることにより、この振動が連結部34を介して隣接する第二のアーム13に伝搬し、この第二のアーム13を逆位相に駆動させることができる。
【0091】
そしてこの一方の第一の音叉形圧電振動子3の振動エネルギーが第一の支持部2、ミラー部1を介して他方の第一の音叉形圧電振動子3に伝搬する。そしてこの他方の第一の音叉形圧電振動子3も同様に共振駆動させることができる。
【0092】
このように本実施の形態では、対となる第一の音叉形圧電振動子3のいずれか一方に圧電アクチュエータ16、他方に第一のモニター電極17を設けたため、これらの配線は互いに異なる第二の支持部5、第三の支持部7、第四の支持部10にそれぞれ引き回せばよく、素子が小型化しても生産性を維持することができるとともに、配線間の電気的絶縁性を向上させることが出来る。
【0093】
また第二の音叉形圧電振動子8も、一方の第四のアーム15を共振駆動させることにより、一対の第二の音叉形圧電振動子8の計四本のアームを共振駆動させている。
【0094】
そして対となる第二の音叉形圧電振動子8のいずれか一方に圧電アクチュエータ16、他方に第二のモニター電極22を設けたため、配線数を減らすことができ、配線の引き回しが容易になると共に、配線スペースが広がり配線間の電気的絶縁性を向上させることができる。
【0095】
更に本実施の形態では、圧電アクチュエータ16をそれぞれL字形に形成している。すなわち本実施の形態では、圧電アクチュエータ16を連結部34、35にも広げ、振動中心4、9の手前まで幅広く形成している。このように圧電アクチュエータ16の面積を広げているため、駆動力が大きくなり、一つの圧電アクチュエータ16で四本のアームを効率よく駆動させることができる。また第一のモニター電極17、第二のモニター電極22もL字形に形成したため、面積を有効に活用し、効率よく検出することができる。
【0096】
なお、圧電アクチュエータ16と第一のモニター電極17、第二のモニター電極22の配置はこの形態に限定されず、例えば第一の音叉形圧電振動子3のみ実施の形態1と同様に第一のモニター電極17と圧電アクチュエータ16をそれぞれ対に配置し、第二の音叉形圧電振動子8は、本実施の形態のように第二のモニター電極22と圧電アクチュエータ16を一つずつ配置してもよい。
【0097】
その他実施の形態1と同様の構成および効果については説明を省略する。
【0098】
(実施の形態3)
本実施の形態と実施の形態1との違いは、圧電アクチュエータ16、第一、第二のモニター電極17、22の数および配置場所である。
【0099】
すなわち本実施の形態では、図7に示すように、一対の第一の音叉形圧電振動子3のうち一方は、実施の形態1と同様に、第一のアーム12上に圧電アクチュエータ16を形成し、第二のアーム13上に第一のモニター電極17を形成している。しかし他方の第一の音叉形圧電振動子3は、第一、第二のアーム12、13上にそれぞれ圧電アクチュエータ16を形成している。
【0100】
また一対の第二の音叉形圧電振動子8のうち一方は、実施の形態1と同様に第三のアーム14上に第二のモニター電極22を形成し、第四のアーム15上には圧電アクチュエータ16を形成している。しかし他方の第二の音叉形圧電振動子8は、第三、第四のアーム14、15上にそれぞれ圧電アクチュエータ16を形成している。
【0101】
本実施の形態の駆動方法を以下に説明する。
【0102】
すなわち本実施の形態では、第一のアーム12、第二のアーム13のいずれにも圧電アクチュエータ16が形成された第一の音叉形圧電振動子3には、第一のアーム12と第二のアーム13にそれぞれ逆位相の電気信号を印加すれば、第一のアーム12と第二のアーム13とを180度異なる方向に撓み振動させることが出来る。なお、第一のアーム12に圧電アクチュエータ16が形成され、第二のアーム13に第一のモニター電極17が形成された第一の音叉形圧電振動子3の駆動方法は実施の形態1と同様である。
【0103】
また本実施の形態では、第三のアーム14、第四のアーム15それぞれに圧電アクチュエータ16が形成された第二の音叉形圧電振動子8には、第三のアーム14と第四のアーム15にそれぞれ逆位相の電気信号を印加すればよい。
【0104】
なお、第三のアーム14に第二のモニター電極22が形成され、第四のアーム15に圧電アクチュエータ16が形成された第二の音叉形圧電振動子8の駆動方法は実施の形態1と同様である。
【0105】
本実施の形態においても、実施の形態1と同様に、光学反射素子を高精度に駆動させることができる。
【0106】
また第一の音叉形圧電振動子3、第二の音叉形圧電振動子8は、それぞれ圧電アクチュエータ16を三つずつ配置することができ、実施の形態1と比較して大きな駆動力を得ることが出来る。
【0107】
その他実施の形態1と同様の構成および効果については説明を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明は、光学反射素子に関して小型化できるという効果を有し、例えば携帯電話端末にも利用できる小型のディスプレイ装置や車載用のヘッドアップディスプレイ装置、電子写真方式の複写機、レーザープリンタ、光学スキャナ用途に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の実施の形態1における光学反射素子の平面図
【図2】同光学反射素子の断面図(図1のAA断面)
【図3】同光学反射素子の動作状態を示す模式図
【図4】同光学反射素子を用いた画像投影装置の原理を示す図
【図5】本発明の実施の形態1における別の例の光学反射素子の平面図
【図6】本発明の実施の形態2における光学反射素子の平面図
【図7】本発明の実施の形態3における光学反射素子の平面図
【図8】従来の光学反射素子の平面図
【符号の説明】
【0110】
1 ミラー部
2 第一の支持部
3 第一の音叉形圧電振動子
4 振動中心
5 第二の支持部
6 枠体
7 第三の支持部
8 第二の音叉形圧電振動子
9 振動中心
10 第四の支持部
11 支持体
12 第一のアーム
13 第二のアーム
14 第三のアーム
15 第四のアーム
16 圧電アクチュエータ
17 第一のモニター電極
18 基材
19 下部電極
20 圧電体
21 上部電極
22 第二のモニター電極
23〜27 接続端子
28 接続端子
29 配線
30 配線
31 配線
32A、32B 矢印
33 矢印
34 連結部
35 連結部
36 光源
37 スクリーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミラー部と、このミラー部を介して対向するとともに、このミラー部とそれぞれ第一の支持部で連結された、対の第一の音叉形圧電振動子と、これらの第一の音叉形圧電振動子の振動中心とそれぞれ第二の支持部で連結され、前記対の第一の音叉形圧電振動子の外周を囲う枠体と、この枠体を介して対向するとともに、この枠体とそれぞれ第三の支持部で連結され、前記第一の音叉形圧電振動子の回転軸に対して垂直な回転軸を有する対の第二の音叉形圧電振動子と、これらの第二の音叉形圧電振動子の振動中心とそれぞれ第四の支持部で連結された支持体とを備え、
前記第一の音叉形圧電振動子は、それぞれ前記第一の支持部の両側に第一のアームと第二のアームとを有し、前記第二の音叉形圧電振動子は、それぞれ前記第三の支持部の両側に第三のアームと第四のアームとを有し、
前記対の第一の音叉形圧電振動子の少なくともいずれか一方は、前記第一のアームまたは第二のアーム上に第一のモニター電極を有する光学反射素子。
【請求項2】
前記第一のアームまたは第二のアームのいずれか一方には前記第一のモニター電極が形成され、
他方には圧電アクチュエータが形成された請求項1に記載の光学反射素子。
【請求項3】
対向する前記第一のアームまたは対向する前記第二のアーム上には、それぞれ前記第一のモニター電極が形成された請求項1に記載の光学反射素子。
【請求項4】
ミラー部と、このミラー部を介して対向するとともに、このミラー部とそれぞれ第一の支持部で連結された、対の第一の音叉形圧電振動子と、これらの第一の音叉形圧電振動子の振動中心とそれぞれ第二の支持部で連結され、前記対の第一の音叉形圧電振動子の外周を囲う枠体と、この枠体を介して対向するとともに、この枠体とそれぞれ第三の支持部で連結され、前記第一の音叉形圧電振動子の回転軸に対して垂直な回転軸を有する対の第二の音叉形圧電振動子と、これらの第二の音叉形圧電振動子の振動中心とそれぞれ第四の支持部で連結された支持体とを備え、
前記第一の音叉形圧電振動子は、それぞれ前記第一の支持部の両側に第一のアームと第二のアームとを有し、前記第二の音叉形圧電振動子は、それぞれ前記第三の支持部の両側に第三のアームと第四のアームとを有し、
前記対の第二の音叉形圧電振動子の少なくともいずれか一方は、前記第三のアームまたは第四のアーム上に第二のモニター電極を有する光学反射素子。
【請求項5】
前記第三のアームまたは第四のアームのいずれか一方には前記第二のモニター電極が形成され、
他方には圧電アクチュエータが形成された請求項4に記載の光学反射素子。
【請求項6】
対向する前記第三のアームまたは対向する前記第四のアーム上には、それぞれ前記第二のモニター電極が形成された請求項4に記載の光学反射素子。
【請求項7】
前記対の第一の音叉形圧電振動子の少なくともいずれか一方は、前記第一のアームまたは第二のアーム上に第一のモニター電極を有する請求項4に記載の光学反射素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−265560(P2009−265560A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−118261(P2008−118261)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】