光学式信号出力装置の信号処理装置及び光学式変位検出装置
【課題】位置検出の分解能及び安定性を広い変位検出範囲に渡って高いレベルで維持しつつ且つスケール上の欠陥等の影響による信頼度をもチェックできる光学式信号出力装置の信号処理装置及びそのような信号処理装置を備えた光学式変位検出装置を提供すること。
【解決手段】スケール50上に形成され、変位検出対象物の変位方向Xに沿って実効反射率が漸増する光学特性を有するグレートラック51に光ビーム61を照射して得られる第1の信号群の振幅成分と変位検出対象物の変位方向Xに沿って実効反射率が漸減する光学特性を有するグレートラック52に光ビーム62を照射して得られる第2の信号群の振幅成分との和と第1の信号群の振幅成分と第2の信号群の振幅成分の差との比から変位検出対象物の絶対変位を求める。また、第1の信号群の振幅成分と第2の信号群の振幅成分の和から光学式信号出力装置が正常であるか否かを判定する。
【解決手段】スケール50上に形成され、変位検出対象物の変位方向Xに沿って実効反射率が漸増する光学特性を有するグレートラック51に光ビーム61を照射して得られる第1の信号群の振幅成分と変位検出対象物の変位方向Xに沿って実効反射率が漸減する光学特性を有するグレートラック52に光ビーム62を照射して得られる第2の信号群の振幅成分との和と第1の信号群の振幅成分と第2の信号群の振幅成分の差との比から変位検出対象物の絶対変位を求める。また、第1の信号群の振幅成分と第2の信号群の振幅成分の和から光学式信号出力装置が正常であるか否かを判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変位検出対象物の変位を検出するための光学式信号出力装置からの信号を処理する信号処理装置、及びこのような信号処理装置を備えて変位検出対象物の変位を検出する光学式変位検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
変位検出対象物の変位を検出する光学式変位検出装置に関連する技術として、例えば特許文献1には次のような技術が開示されている。即ち、特許文献1においては、被検体に一定の間隔でスリット又は反射面を列設し、このスリット又は反射面に由来する光パルスを検出する光電式検出装置であって、スリット又は反射面の径方向の長さを時計回りに順次大きくなるように構成している。
【0003】
図14は、特許文献1の光電式検出装置(光学式変位検出装置)の光学式信号出力装置に係る部分を示す側面図である。図14に示すように、光源1から出射した光ビームBは、被検体であるスケール4のスリットに照射され、その透過光が光検出器2によって検出される。
【0004】
また、図15は、特許文献1の光電式検出装置におけるスケール4の平面図である。図15に示すように、スケール4に設けられているスリットの径方向の長さは、図15において矢印で示されている回転方向に対し、基準位置A又はBを基準に一定の間隔で増大又は減少(図は増大の例を示している)させられている。
【0005】
さらに、図16は、特許文献1の光電式検出装置における光検出器の出力信号を示す図である。図16に示すグラフでは、横軸に被検体の変位(回転角)を取り、縦軸に光検出器2の出力を取っている。スケール4が反時計周りに回転すると、スリットの開口長さが減少する。この場合、図16に示すように光検出器からの出力信号は、振幅が徐々に減少するような特性となる。このような特性を有する出力信号を信号処理装置において適切に演算することにより、被検体の回転速度を検出することができる。また、振幅の変化を検出することによりスケール4の回転方向を検出することができる。
【0006】
なお、特許文献1には明記されてないが、上述した構成においては、回転変位に対する出力信号の振幅又は直流(DC)成分の大きさを予め調べておくことにより、出力信号の振幅又はDCレベルを測定すれば、基準位置からのスケール4の回転角の絶対位置を検出することもできる。このようにして、特許文献1に開示されている光電式検出装置では、被検体の動きに伴って変化する検出信号の振幅に基づいて、被検体の運動方向や絶対位置を検出することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭48−78959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1に開示されている技術において、光検出器2からの出力信号は、光源1やスケール4の光学的配置や光源の出力変動、さらにはスケール4の欠陥等に大きく影響されるDC成分を有している。ここで、絶対位置の検出感度を向上させるために或いは絶対位置の検出範囲を拡げるために、スリット等の開口長さを小さくする場合を考える。この場合には、スリット等の開口長さの最小値を小さくする程、出力信号の振幅が減少する。したがって、光検出器2からの出力信号におけるノイズ成分が相対的に大きくなってしまい、結果として、スリットの開口長さが小さい箇所では検出性能(分解能、安定性)が低下してしまう。
【0009】
さらに言えば、特許文献1に開示されている構成により絶対位置を検出する場合には、回転変位に対する光検出器2の出力信号の振幅特性を予め調べておく必要がある。ここで、回転変位に対する出力信号の振幅の特性は、例えば周囲環境、センサの取り付けガタ、経時変化、さらにはスケール上の欠陥等に起因して変化する。このため、その検出精度とその信頼性は極めて低い。
【0010】
本発明は、前記の事情に鑑みてなされたものであり、位置検出の分解能及び安定性を広い変位検出範囲に渡って高いレベルで維持しつつ且つスケール上の欠陥等の影響による信頼度をもチェックできる光学式信号出力装置の信号処理装置及びそのような信号処理装置を備えた光学式変位検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の態様の光学式信号出力装置の信号処理装置は、変位検出対象物に連結された光学式信号出力装置から出力され前記変位検出対象物の所定方向の変位に伴って振幅又は直流成分が漸増する第1の信号群と前記光学式信号出力装置から出力され前記変位検出対象物の前記所定方向の変位に伴って振幅又は直流成分が漸減し且つ前記第1の信号群に対して逆相となる第2の信号群とに対して第1の所定演算をすることにより、前記光学式信号出力装置が正常状態の時に所定特性となる第1成分を抽出する第1の信号処理部と、前記第1の信号群と前記第2の信号群に対して第2の所定演算をすることにより、前記変位検出対象物の任意の位置に特有の第2成分を含む出力を前記変位検出対象物の変位として抽出する第2の信号処理部と、を具備することを特徴とする。
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明の第2の態様の光学式変位検出装置は、第1のトラックパターンと第2のトラックパターンとが変位検出対象物の変位方向に平行な方向が長手方向となるように形成されたスケールと、前記スケールに対して光ビームを照射する光源と、前記光源から射出された光ビームを前記第1のトラックパターンを介して検出することで前記変位検出対象物の所定方向の変位に伴って振幅又は直流成分が漸増する第1の信号群を生成する第1の光検出器及び前記光源から射出された光ビームを前記第2のトラックパターンを介して検出することで前記変位検出対象物の前記所定方向の変位に伴って振幅又は直流成分が漸減し且つ前記第1の信号群に対して逆相となる第2の信号群を生成する第2の光検出器を有するセンサヘッドと、を具備し、前記第1のトラックパターン、前記第2のトラックパターン、前記第1の光検出器、前記第2の光検出器、及び前記光源はそれぞれ前記第1の光検出器による検出と前記第2の光検出器による検出とが関連付けて実行されるように配置されている光学式信号出力装置と、前記第1の信号群と前記第2の信号群とに対して第1の所定演算をすることにより、前記光学式信号出力装置が正常状態の時に所定特性となる第1成分を抽出する第1の信号処理部と、前記第1の信号群と前記第2の信号群に対して第2の所定演算をすることにより、前記変位検出対象物の任意の位置に特有の第2成分を含む出力を前記変位検出対象物の変位として抽出する第2の信号処理部と、を具備する信号処理装置と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、位置検出の分解能及び安定性を広い変位検出範囲に渡って高いレベルで維持しつつ且つスケール上の欠陥等の影響による信頼度をもチェックできる光学式信号出力装置の信号処理装置及びそのような信号処理装置を備えた光学式変位検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る光学式変位検出装置の構成を示す斜視図である。
【図2】信号処理装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態における同相成分除去部の出力特性の一例を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態における振幅成分演算回路の出力特性の一例を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施形態における加算回路及び減算回路の出力特性の一例を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施形態における加算回路の出力と減算回路の出力との比の特性を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施形態における同相加算回路の出力特性の一例を示す図である。
【図8】本発明の第1の実施形態におけるリサージュ生成回路で生成されるリサージュ図形の一例を示す図である。
【図9】本発明の第1の実施形態において光学式信号出力装置が非正常状態のときの同相成分除去部の出力特性の一例を示す図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る光学式変位検出装置の構成を示す斜視図である。
【図11】本発明の第2の実施形態における受光素子の出力特性の一例を示す図である。
【図12】本発明の第2の実施形態における加算回路及び減算回路の出力特性の一例を示す図である。
【図13】本発明の第2の実施形態における加算回路の出力と減算回路の出力との比の特性を示す図である。
【図14】従来例の光電式検出装置の光学式信号出力装置に係る部分を示す側面図である。
【図15】従来例の光電式検出装置におけるスケールの平面図である。
【図16】従来例の光電式検出装置における光検出器の出力信号を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
[第1の実施形態]
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る光学式変位検出装置の構成を示す斜視図である。
【0016】
図1に示すように、光学式変位検出装置10は、センサヘッド30及びスケール50を含む光学式信号出力装置と、信号処理装置70とを有している。ここで、センサヘッド30とスケール50とは、一方が所定方向に変位可能な変位検出対象物に連結され、他方が基準面に連結されている。本実施形態においては、変位検出対象物の変位方向を図1に示すX軸に沿った方向(X方向)とする。勿論、変位検出対象物の変位方向を図1に示すY軸に沿った方向やZ軸に沿った方向としても良い。さらには、変位検出対象物の変位方向を図1に示すX軸、Y軸、Z軸回りの回転方向としても良い。
【0017】
センサヘッド30は、光源31と、第1の光検出器32と、第2の光検出器33とを有している。そして、光源31と、第1の光検出器32及び第2の光検出器33の受光面とはスケール50と対向して且つ平行となるように配置されている。
【0018】
光源31は、光源(例えばレーザダイオード)とスリットを有する本体とを備え、光源からの光ビームを、スリットを介してスケール50に向けて照射する。本実施形態における光源31は、スリットを介して2方向に光ビームを照射可能になされている。図1では一方の光ビームを参照符号61、他方の光ビームを参照符号62で示している。
【0019】
第1の光検出器32はスケール50に向けて出射されスケール50で反射された光ビーム61を電気信号に変換するための複数の受光素子(例えばフォトダイオード)を有してなる受光素子アレイが4群形成された受光面を有している。また、第2の光検出器33はスケール50に向けて出射されスケール50で反射された光ビーム62を電気信号に変換するための複数の受光素子を有してなる受光素子アレイが4群形成された受光面を有している。ここで、各群の受光素子アレイを構成する受光素子は、スケール50からの反射光によって第1の光検出器32、第2の光検出器33のそれぞれに形成される光学イメージ(回折模様)の空間周期piと同一の空間周期で形成されている。さらに、各群の受光素子アレイはpi/4だけずらして形成されている。ここで、図1においては、各群の受光素子アレイを構成する受光素子を、光学イメージの空間周期piと同一の空間周期で形成している。実際には、各群の受光素子アレイを構成する受光素子を光学イメージの空間周期piの正の整数倍(1、2、3、…、)の空間周期で形成して良い。
【0020】
また、図1において、第1の光検出器32を構成する4群の受光素子アレイはそれぞれ出力端子VA1、VB1、VAB1、VBB1を介して信号処理装置70に接続されている。さらに、第2の光検出器33を構成する4群の受光素子アレイはそれぞれ出力端子VA2、VB2、VAB2、VBB2を介して信号処理装置70接続されている。
【0021】
スケール50は、変位対象物の変位方向(図1の例ではX方向)が長手方向となるように形成されている。そして、スケール50のセンサヘッド30と対向する側の面には、第1のトラックパターンの一例としてのグレートラック51と、第2のトラックパターンの一例としてのグレートラック52とが形成されている。
【0022】
ここで、以下に説明するトラックパターンに係る用語の定義を行う。まず、スケール50の変位方向に沿った所定区間において実効反射率、実効透過率、回折効率の何れかが漸増又は漸減する光学パターンを「グレースケールパターン」と定義する。また、スケール50の変位方向に対して実効反射率、実効透過率、回折効率の何れかが周期的に変化する光学パターンを「エンコードパターン」と定義する。また、エンコードパターンとグレースケールパターンとを重畳してなる光学特性を有するパターンを「変調コードパターン」と定義する。さらに、グレースケールパターンと変調コードパターンの何れかで構成されるトラックを「グレートラック」と定義する。
【0023】
上述のような定義に対し、図1に示すグレートラック51、52はそれぞれが変調コードパターンのみで構成されているものである。そして、グレートラック51の変調コードパターンにおいては、図1のX方向に沿って空間周期ps毎に実効反射率が漸増するように複数の異なる実効反射率を有するエンコードパターン53が形成されている。また、グレートラック52の変調コードパターンにおいては、図1のX方向に沿って空間周期ps毎に実効反射率が漸減するように複数の異なる実効反射率を有するエンコードパターン53が形成されている。このようにして、グレートラック51とグレートラック52とを構成することにより、グレートラック51を構成する変調コードパターンとグレートラック52を構成する変調コードパターンとは実効反射率が鏡面反転した光学特性を有するものとなる。
【0024】
なお、グレートラック51、52の構成は、図1に示した構成に限定されるものではない。例えば、図1のグレートラック51、52の構成は、光源31から出射された光ビーム61、62のスケール50からの反射光を第1の光検出器32及び第2の光検出器33で検出する反射型の光学式信号出力装置の場合の構成例を示している。これに対し、光源31からスケール50に対して出射された光ビーム61、62の透過光を第1の光検出器32及び第2の光検出器33で検出する透過型の光学式信号出力装置の場合には、グレートラック51の変調コードパターンとグレートラック52の変調コードパターンとには実効透過率が鏡面反転するように光学特性を持たせる。この他、本実施形態においては、スケール50に照射した光ビーム61、62の反射光、透過光、又は回折光により第1の光検出器32又は第2の光検出器33の受光面上に形成される光学イメージの空間振幅又は総光量が変調される各種のグレートラックの構成を適用可能である。
【0025】
信号処理装置70は、第1の光検出器32と第2の光検出器33からそれぞれ出力される信号を処理して変位検出対象物の変位を検出する。図2は、信号処理装置70の構成を示すブロック図である。図2に示す信号処理装置70は、同相成分除去部71、72と、前段の信号処理部73と、後段の信号処理部74とを有している。
【0026】
同相成分除去部71は、第1の光検出器32の出力端子VA1、VB1、VAB1、VBB1からそれぞれ出力される信号(第1の信号群)VA1、VB1、VAB1、VBB1のうちで互いに1/2周期位相の異なる信号同士の差を演算することにより、同相のオフセット成分やノイズを除去する。また、同相成分除去部72は、第2の光検出器33の出力端子VA2、VB2、VAB2、VBB2からそれぞれ出力される信号(第2の信号群)VA2、VB2、VAB2、VBB2のうちで互いに1/2周期位相の異なる信号同士の差を演算することにより、同相のオフセット成分やノイズを除去する。
【0027】
前段の信号処理部73は、同相成分除去部71の出力信号Va1、Vb1と同相成分除去部72の出力信号Va2、Vb2とを用いて第1の所定演算等を行う。この前段の信号処理部73は、振幅成分演算回路731と、加算回路732と、減算回路733と、告知部734と、所定特性記憶部735と、同相加算回路736とを有している。なお、加算回路732は、「第1の信号処理部」の一例として機能する。
【0028】
振幅成分演算回路731は、同相成分除去部71、72の出力を用いて第1の光検出器32からの信号の振幅成分Vpp1と第2の光検出器33からの信号の振幅成分Vpp2とをそれぞれ演算する。
【0029】
加算回路732は、第1の所定演算として、第1の光検出器32からの信号の振幅成分Vpp1と第2の光検出器33からの信号の振幅成分Vpp2との和(Vpp1+Vpp2)を演算する。また、減算回路733は、第1の光検出器32からの信号の振幅成分Vpp1と第2の光検出器33からの信号の振幅成分Vpp2との差(Vpp1−Vpp2)を演算する。
【0030】
告知部734は、加算回路732の出力信号(Vpp1+Vpp2)に基づいて光学式信号出力装置であるセンサヘッド30やスケール50が正常状態であるか否かを判定し、この判定結果を例えば表示出力によって告知する。所定特性記憶部735は、光学式信号出力装置であるセンサヘッド30やスケール50が正常状態であるか否かを告知部734において判定するための所定特性を記憶している。
【0031】
同相加算回路736は、複数の入力チャンネルを有し、同相成分除去部71の出力Va1、Vb1と同相成分除去部72の出力Va2、Vb2との同相成分同士を加算する。
【0032】
後段の信号処理部74は、前段の信号処理部73で演算された結果を用いて変位を算出するための第2の所定演算等を行う。この後段の信号処理部74は、絶対変位演算回路741と、リサージュ生成回路742とを有している。
【0033】
なお、後段の信号処理部74の絶対変位演算回路741、リサージュ生成回路742、及び前段の信号処理部73の振幅成分演算回路731、加算回路732、減算回路733、同相加算回路736が、「第2の信号処理部」の一例として機能する。
【0034】
絶対変位演算回路741は、加算回路732の出力と減算回路733の出力とを用いて変位検出対象物の絶対変位xを演算するための演算を行う。相対変位演算部の一例としてのリサージュ生成回路742は同相加算回路736の出力を用いてリサージュ図形を生成し、このリサージュ図形から変位検出対象物の相対変位に対応したθを演算する。
【0035】
以下、図1に示す光学式変位検出装置10の動作について説明する。なお、理解を容易にするために、まずは、光学式信号出力装置が正常状態であるときの光学式変位検出装置10の動作について説明する。ここで、本実施形態における「光学式信号出力装置の正常状態」とは、スケール50上のグレートラック51又は52にゴミや傷等の物理的な欠陥や各種の使用上の欠陥が存在していない状態を言うものとする。一方、「光学式信号出力装置の非正常状態」とは、スケール50上のグレートラック51又は52にゴミや傷等の物理的な欠陥や各種の使用上の欠陥が存在している状態を言うものとする。
【0036】
まず、光学式信号出力装置としてのセンサヘッド30とスケール50による信号出力動作について説明する。図1に示す構成において、光源31から出射された光ビーム61、62はスケール50に形成されたグレートラック51、52に照射される。そして、グレートラック51に照射された光ビーム61はグレートラック51で反射される。これにより、第1の光検出器32の受光素子上にグレートラック51を構成する変調コードパターンに対応した光学イメージ(回折模様)が形成される。同様に、グレートラック52に照射された光ビーム62はグレートラック52で反射される。これにより、第2の光検出器33の受光素子上にグレートラック52を構成する変調コードパターンに対応した光学イメージが形成される。
【0037】
ここで、変調コードパターンに対応した光学イメージについて説明する。まずは、変調コードパターン中のあるエンコードパターン53に対応した光学イメージについて説明する。ここで、本実施形態においては多様な光学イメージの生成原理が適用可能である。以下の説明では、典型的な例として、点光源構成による検出原理(Talbotイメージ)を用いた光学イメージの生成原理について説明する。
【0038】
まず、図1において、光源31が点光源であるとし、さらに光源31とスケール50上のエンコードパターン53とのZ方向距離をZ1、第1の光検出器32又は第2の光検出器33の受光面(受光素子で構成される面)とスケール50上のエンコードパターン53とのZ方向距離をZ2、スケール50上のエンコードパターン53の空間周期をpsとする。
【0039】
このような前提において、光源31からあるエンコードパターン53に光ビーム61、62が照射されると、これら照射された光ビーム61、62はそれぞれエンコードパターン53で反射される。これにより第1の光検出器32、第2の光検出器33の受光面上に空間周期piの周期的な光学イメージが形成される。この場合、Talbotイメージにおいては、以下の(式1)で示す関係が成立する。
pi=ps・(Z1+Z2)/Z1 (式1)
なお、第1の光検出器32、第2の光検出器33の受光面上に空間周期piの周期的な光学イメージがクリアに形成されるためには、pi、ps、Z1、Z2、及び光源31の光波長λをTalbot光学イメージの形成条件に合致させる必要がある。しかしながら、本実施形態においては光学イメージの生成原理がTalbotイメージに限定されないのでpi、ps、Z1、Z2、及び光源31の光波長λの詳細な決定手法については説明を省略する。
【0040】
上述したように、第1の光検出器32、第2の光検出器33にはエンコードパターン53の空間周期piに相当する空間周期で受光素子アレイが4群形成されており、各群は空間周期方向に沿ってpi/4だけずらして配置されている。即ち、受光面上に空間周期piを持って形成された光学イメージに対し、各群の受光素子アレイは1/4周期ずつずれた空間位相差を持って光を検出する。したがって、第1の光検出器32の各受光素子アレイの出力信号VA1、VB1、VAB1、VBB1は電気角で90度(即ち1/4周期)ずつずれた周期信号となる。同様に、第2の光検出器33の受光素子アレイの出力信号VA2、VB2、VAB2、VBB2も電気角で90度ずつずれた周期信号となる。
【0041】
次に、変位検出対象物がX方向に変位したときの変調コードパターンに対応した受光素子アレイの出力信号について説明する。上述したように、グレートラック51は、変調コードパターンとして、X方向に沿って実効反射率が漸増するような光学特性を有している。また、グレートラック52は、X方向に沿って実効反射率が漸減するような光学特性を有している。ここで、変位検出対象物がX方向にpsだけ変位すると、光源31からの光ビーム61、62がpsだけずれた位置のエンコードパターン53に照射される。そして、psだけずれた位置のエンコードパターン53からの反射光に基づく光学イメージが第1の光検出器32、第2の光検出器33の受光面上に形成される。このため、第1の光検出器32の各群の受光素子アレイからの出力信号VA1、VB1、VAB1、VBB1は振幅が増加する。一方、第2の光検出器33の各群の受光素子アレイからの出力信号VA2、VB2、VAB2、VBB2は振幅が減少する。即ち、変位検出対象物がX方向にpsだけ変位する毎に、第1の光検出器32の各群の受光素子アレイの出力端子VA1、VB1、VAB1、VBB1からは90度(即ち1/4周期)ずつの位相差を有し且つ振幅が漸増する特性を有する周期信号VA1、VB1、VAB1、VBB1が出力され、第2の光検出器33の各群の受光素子アレイの出力端子VA2、VB2、VAB2、VBB2からは90度(即ち1/4周期)ずつの位相差を有し且つ振幅が漸減する特性を有する周期信号VA2、VB2、VAB2、VBB2が出力される。このようにして、出力信号VA1、VB1、VAB1、VBB1の振幅の特性に対して出力信号VA2、VB2、VAB2、VBB2の振幅の特性は逆相の特性となる。
【0042】
次に、信号処理装置70における信号処理動作について説明する。
まず、同相ノイズ成分の除去について説明する。まず、同相成分除去部71において、第1の光検出器32からの出力信号VA1、VB1、VAB1、VBB1のうちで互いに1/2周期(180度)位相の異なる信号同士の差が演算される。即ち、同相成分除去部71においては以下の(式2)で示す演算が行われる。
Va1=VA1−VAB1
Vb1=VB1−VBB1 (式2)
同様に、同相成分除去部72において、第2の光検出器33からの出力信号VA2、VB2、VAB2、VBB2のうちで互いに1/2周期(180度)位相の異なる信号同士の差が演算される。即ち、同相成分除去部72においては以下の(式3)で示す演算が行われる。
Va2=VA2−VAB2
Vb2=VB2−VBB2 (式3)
このような同相成分除去部71、72の動作により、同相成分除去部71からは図3(a)に示すような90度(すなわち1/4周期)の位相差を有する信号Va1、Vb1が得られ、同相成分除去部72からは図3(b)に示すような90度(すなわち1/4周期)の位相差を有する信号Va2、Vb2が得られる。
【0043】
次に、信号処理装置70における変位対象物の絶対変位の検出について説明する。まず、振幅成分演算回路731において、図3(a)に示すようにして得られた信号Va1、Vb1の振幅成分Vpp1と図3(b)に示すようにして得られた信号Va2、Vb2の振幅成分Vpp2とがそれぞれ演算される。上述したように、グレートラック51の変調コードパターンは図1のX方向に沿って実効反射率が漸増するような光学特性を有し、また、グレートラック52の変調コードパターンは図1のX方向に沿って実効反射率が漸減するような光学特性を有している。このため、第1の光検出器32から出力される信号の振幅成分Vpp1は、図4に示すように、変位量xに対して単調増加の特性104を有する。一方、第2の光検出器33から出力される信号の振幅成分Vpp2は、図4に示すように、変位量xに対して単調減少の特性105を有する。なお、図4に示す振幅成分Vpp1、Vpp2はそれぞれ(式4)、(式5)に示す関係で定義される。
Vpp1=a・x (式4)
Vpp2=−a・(x−Lgray) (式5)
ここで、Lgrayはグレートラック51、52において実効反射率が変化する所定区間の長さであり、aは変位検出対象物が単位距離だけ変位した際の振幅成分Vpp1の変化量(即ち図4に示すVpp1の傾き)である。なお、Vppmaxを所定区間において第1の光検出器32、第2の光検出器33からそれぞれ出力される信号の最大振幅とすると、傾きaは以下の(式6)によって求めることができる。
a=Vppmax/Lgray (式6)
振幅成分演算回路731における振幅成分の演算の後、加算回路732においてVpp1とVpp2の和が演算され、また減算回路733においてVpp1とVpp2の差が演算される。これらの演算結果を以下の(式7)、(式8)に示す。
【0044】
Vpp1+Vpp2=a・Lgray=Vppmax (式7)
Vpp1−Vpp2=2a・x−a・Lgray (式8)
(式7)の特性を図5の特性106で、(式8)の特性を図5の特性107でそれぞれ示す。図5の特性106で示すように、Vpp1とVpp2の和として第1の成分は変位量xに依存しない略一定値Vppmaxとなる。
【0045】
ここで、第2の所定演算として、(Vpp1+Vpp2)と(Vpp1−Vpp2)の比を演算すると、図6の参照符号108で示す特性が得られる。この特性を数式で示すと以下の(式9)となる。
(Vpp1−Vpp2)/(Vpp1+Vpp2)=2/Lgray・x−1
(式9)
(式9)をxについて解いた結果は(式10)となる。
x=Lgray・((Vpp1−Vpp2)/(Vpp1+Vpp2)+1)/2
(式10)
(式10)から分かるように、予めLgrayを測定しておきさえすれば絶対変位演算回路741において変位量xを検出することができる。また、(式9)に示すように、(Vpp1−Vpp2)/(Vpp1+Vpp2)は、最大振幅Vppmaxや傾きaに依存しない値である。また、Lgrayはスケール50の設計段階で決定される固定値である。このため、光学式変位検出装置10の動作中にVppmaxやaが変動しても(式10)の変位量xは変化しない。また、(Vpp1+Vpp2)の値や(Vpp1−Vpp2)の値も光源31の光量変動や光源31とスケール50の配置状態等の要因によって変動する可能性はあるが、第1の実施形態では(Vpp1+Vpp2)と(Vpp1−Vpp2)との比を取ることによりこれらの変動成分をキャンセルすることができる。したがって、安定して変位量xを検出することができる。
【0046】
本実施形態においては、第2の所定演算の後に変位にのみ依存する第2成分が抽出される。ここで、第2成分とは、典型的には、上述の(式9)や(式10)で示す関係が該当するが、所定演算を行った後に変位のみに依存する値が得られるのであれば種々の値を第2成分として用いることが可能である。
【0047】
次に、信号処理装置70における変位対象物の相対変位の検出について説明する。まず、同相加算回路736において、図4(a)、図4(b)に示す1/4周期の位相差を有する2組の信号が同相信号毎に加算される。即ち、同相加算回路736においては以下の(式11)で示す演算が行われる。
Va=Va1+Va2
Vb=Vb1+Vb2 (式11)
このような同相加算回路736からは図7に示すような90度(すなわち1/4周期)の位相差を有する信号Va、Vbが得られる。
【0048】
同相加算回路736における演算の後、リサージュ生成回路742においてリサージュ図形が生成される。図8はリサージュ生成回路742において生成されるリサージュ図形の例を示した図である。図8に示すように、リサージュ図形は一定の半径で回転する円になり、この円周上の位相角θが空間周期ps内での変位量xに相当するものとなる。
【0049】
次に、光学式信号出力装置が非正常状態であるときの光学式変位検出装置10の動作について説明する。ここでは一例として、図2に示すように、グレートラック51上にゴミ100が付着していた場合を考える。この場合、ゴミ100によって光ビーム61の反射が阻害されるため、第1の光検出器32の受光素子アレイに入射する光の光量も低下する。したがって、第1の光検出器32からの信号の振幅Vpp1の特性も図9(a)に示すように、ゴミ100の位置において振幅強度が低下するような特性に変化する。これに対し、第2の光検出器33からの信号の振幅Vpp2の特性は図9(b)に示すように、図3(b)と同じ特性である。
【0050】
この結果、加算回路732の出力である(Vpp1+Vpp2)の特性も図5の特性106’で示すように、ゴミ100の位置に対応した部分106aにおいて窪みが生じる。また、減算回路733の出力である(Vpp1−Vpp2)の特性も図5の特性107’で示すように、ゴミ100の位置に対応した部分においてレベルの低下が生じる。結果として、(Vpp1+Vpp2)と(Vpp1−Vpp2)との比の特性も図6の特性108’で示すように、ゴミ100の位置に対応した部分においてレベルの低下が生じる。
【0051】
上述したように、光学式信号出力装置が正常状態であるときには(Vpp1+Vpp2)は図5の特性106で示すように略一定となる。したがって、加算回路732の出力(Vpp1+Vpp2)を、光学式信号出力装置が正常状態のときの加算回路732の出力(a・Lgray=Vppmax)と比較することにより、光学式信号出力装置が正常状態であるか否かを判定することができる。
【0052】
このような比較が告知部734において行われる。告知部734では、所定特性記憶部735に予め記憶しておいた所定値Vppmaxと加算回路732から出力される(Vpp1+Vpp2)との比較が行われる。そして、Vppmaxと(Vpp1+Vpp2)との差異が一定未満のときには、光学式信号出力装置が正常状態である旨が例えば表示出力によって告知される。一方、Vppmaxと(Vpp1+Vpp2)との差異が一定以上となった時点で、光学式信号出力装置が非正常状態である旨が例えば表示出力によって告知される。なお、(Vpp1+Vpp2)との差異の程度によりゴミ100の付着による検出精度への影響の程度を検出することもできる。したがって、Vppmaxと(Vpp1+Vpp2)との差異の程度に基づいて告知部734においてゴミ100の付着による検出精度の影響を告知できるようにしても良い。
【0053】
ここで、告知部734における比較には各種の変形例が適用できる。「光学式信号出力装置が正常状態の時に所定特性となる第1成分」は正常時と異常時の判別が容易な指標であれば良い。したがって、例えば、図4に示す正常時の振幅成分の特性104、105を予め記憶しておき、この特性104、105と振幅成分演算回路の出力Vpp1、Vpp2をそれぞれ比較するようにしても良い。この他、減算回路733の出力や絶対変位演算回路741の出力を比較に用いるようにしても良い。
【0054】
以上説明したように、第1の実施形態によれば、変位検出対象物の変位方向に沿って実効反射率が漸増する光学特性を有する変調コードパターンで構成されるグレートラック51と変位検出対象物の変位方向に沿って実効反射率が漸減する光学特性を有する変調コードパターンで構成されるグレートラック52とが形成されたスケール50に光ビーム61、62を照射し、グレートラック51、52からの反射光を第1の光検出器32と第2の光検出器33とで個別に検出している。そして、第1の光検出器32からの出力信号と第2の光検出器33からの出力信号を用いて第2の所定演算を行うことにより、変位量xにのみ依存する第2成分を抽出することができる。これにより、変位量xを安定して検出することができる。
【0055】
また、第1の光検出器32からの出力信号と第2の光検出器33からの出力信号を用いて第1の所定演算を行うことにより、光学式信号出力装置が正常状態の時に変位量xに依存しない略一定となる第1成分を抽出することができる。これにより、スケール50上の異常の有無や欠陥等による影響等の信頼度を容易にチェックすることができる。
【0056】
ここで、第1の実施形態においては、第1の光検出器32と第2の光検出器33からそれぞれ4相の信号を得るようにしているが、必ずしも4相ずつの信号を得るようにしなくとも良い。例えば、ノイズの影響を考慮しないのであれば、第1の光検出器32において信号VA1と信号VB1のみを得るようにし、第2の光検出器33において信号VA2と信号VB2のみを得るようにしても良い。
【0057】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図10は、本発明の第2の実施形態に係る光学式変位検出装置の構成を示す斜視図である。第1の実施形態においては、第1のトラックパターンの一例としてのグレートラック51と第2のトラックパターンの一例としてのグレートラック52とが何れも変調コードパターンで構成されている例について説明している。これに対し、第2の実施形態においては、2つのグレートラックがそれぞれグレースケールパターン511、512で構成されている点が異なる。ここで、グレースケールパターン511は、図10のX方向に沿って実効反射率が連続的に増加するような光学特性を有し、また、グレースケールパターン512は、図10のX方向に沿って実効反射率が連続的に減少するような光学特性を有している。
【0058】
このようなグレートラックの変更に対応して、第1の光検出器及び第2の光検出器も受光素子アレイではなく、一面ベタの受光素子35、36で構成されている。そして、第1の光検出器の出力端子はV1のみであり、この出力端子V1は信号処理装置70に接続されている。同様に、第2の光検出器の出力端子はV2のみであり、この出力端子V2は信号処理装置70に接続されている。なお、第2の実施形態における信号処理装置70の構成については図示を省略する。この第2の実施形態における信号処理装置70は、図2で示した構成から、同相成分除去部71及び72、振幅成分演算回路731、同相加算回路736、リサージュ生成回路742を省略したものである。
【0059】
以下、図10に示す光学式変位検出装置10の動作について説明する。まず、光学式信号出力装置が正常状態であるときの光学式変位検出装置10の動作について説明する。図10に示す光学式変位検出装置10において、変位対象物がX方向に変位したときに第1の光検出器の受光素子35から出力される信号V1は、図11の特性104で示すものとなる。この図11の特性104は、図4の特性104で示した振幅成分Vpp1の特性に対応したものである。また、第2の光検出器の受光素子36から出力される信号V2は、図11の特性105で示すものとなる。この図11の特性105は、図4の特性105で示した振幅成分Vpp2の特性に対応したものである。
【0060】
加算回路732においては第1の所定演算としてV1とV2の和が演算されて第1成分が抽出される。また、減算回路733においてはV1とV2の差が演算される。加算回路732の出力特性を図12の特性106で、減算回路733の出力特性を図12の特性107でそれぞれ示す。図12の特性106で示すように、V1とV2の和としての第1の成分も変位量xに依存しない略一定値Vmaxとなる。
【0061】
ここで、第2の所定演算として(V1+V2)と(V1−V2)の比を演算すると、図13の特性108で示すものとなる。この特性108も図6の特性108と対応したものであり、上述の(式9)においてVpp1をV1に、Vpp2をV2にそれぞれ置き換えたものである。(V1+V2)の値や(V1−V2)の値は光源31の光量変動や光源31とスケール50の配置状態等の各種の要因により変動する可能性がある。これに対し、第2の実施形態では(V1+V2)と(V1−V2)との比を取ることによりこれらの変動成分をキャンセルすることができる。これにより、絶対変位演算回路741において安定して変位量xを検出することができる。
【0062】
次に、光学式信号出力装置が非正常状態であるときの光学式変位検出装置10の動作について説明する。変位検出対象物がX方向に変位したときに第1の光検出器の受光素子35から出力される信号V1は、図11の特性104’で示すものとなる。また、第2の光検出器の受光素子36から出力される信号V2は、図11の特性105’で示すものとなる。図11の特性104’で示すように、ゴミ100の位置において局所的に信号強度が変化する。このため、加算回路732の出力である(V1+V2)の特性は図12の特性106’に示すものとなり、ゴミ100が付着した部分106aにおいて窪みが生じる。また、減算回路733の出力である(V1−V2)の特性も図12の特性107’で示すように、ゴミ100の位置に対応した部分においてレベルの低下が生じる。結果として、(V1+V2)と(V1−V2)との比の特性も図13の特性108’で示すように、ゴミ100の位置に対応した部分においてレベルの低下が生じる。
【0063】
図12の特性106で示したように、光学式信号出力装置が正常状態であるときには(V1+V2)は略一定となる。したがって、加算回路732の出力(V1+V2)を、光学式信号出力装置が正常状態のときの加算回路732の出力Vmaxと比較することにより、光学式信号出力装置が正常状態であるか否かを判定することができる。
【0064】
このような比較が告知部734において行われる。告知部734では、所定特性記憶部735に予め記憶しておいた所定値Vmaxと加算回路732から出力される(V1+V2)との比較が行われる。そして、Vmaxと(V1+V2)との差異が一定未満のときには、光学式信号出力装置が正常状態である旨が例えば表示出力によって告知される。一方、Vmaxと(V1+V2)との差異が一定以上となった時点で、光学式信号出力装置が非正常状態である旨が例えば表示出力によって告知される。なお、(V1+V2)との差異の程度によりゴミ100の付着による検出精度への影響の程度を検出することもできる。したがって、Vmaxと(V1+V2)との差異の程度に基づいて告知部734においてゴミ100の付着による検出精度の影響を告知できるようにしても良い。
【0065】
ここで、告知部734における比較には各種の変形例が適用できる。第1の実施形態と同様に、「光学式信号出力装置が正常状態の時に所定特性となる第1成分」は正常時と異常時の判別が容易な指標であれば良い。したがって、例えば、図11に示す正常時の振幅成分の特性104、105を予め記憶しておき、この特性104、105とV1、V2をそれぞれ比較するようにしても良い。この他、減算回路733の出力や絶対変位演算回路741の出力を比較に用いるようにしても良い。
【0066】
以上説明したように、第2の実施形態によれば、変位検出対象物の変位方向に沿って実効反射率が連続的に増加する光学特性を有するグレースケールパターン511で構成されるグレートラックと変位検出対象物の変位方向に沿って実効反射率が連続的に減少する光学特性を有するグレースケールパターン512で構成されるグレートラックとが形成されたスケール50に光ビーム61、62を照射し、各グレートラックからの反射光を受光素子35及び受光素子36を用いて個別に検出している。そして、受光素子35からの出力信号と受光素子36からの出力信号を用いて第2の所定演算を行うことにより、変位量xにのみ依存する第2成分を抽出することができる。これにより、変位量xを安定して検出することができる。
【0067】
また、受光素子35からの出力信号と受光素子36からの出力信号を用いて第1の所定演算を行うことにより、光学式信号出力装置が正常状態の時に変位量xに依存しない略一定となる第1成分を抽出することができる。これにより、スケール50上の異常の有無や欠陥等による影響等の信頼度を容易にチェックすることができる。
【0068】
以上実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形や応用が可能なことは勿論である。
【0069】
さらに、上記した実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件の適当な組合せにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、上述したような課題を解決でき、上述したような効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成も発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0070】
10…光学式変位検出装置、30…センサヘッド、31…光源、32…第1の光検出器、33…第2の光検出器、35,36…受光素子、50…スケール、51,52…グレートラック、53…エンコードパターン、511,512…グレースケールパターン、70…信号処理装置、71,72…同相成分除去部、73…前段の信号処理部、74…後段の信号処理部、731…振幅成分演算回路、732…加算回路、733…減算回路、734…告知部、735…所定特性記憶部、736…同相加算回路、741…絶対変位演算回路、742…リサージュ生成回路
【技術分野】
【0001】
本発明は、変位検出対象物の変位を検出するための光学式信号出力装置からの信号を処理する信号処理装置、及びこのような信号処理装置を備えて変位検出対象物の変位を検出する光学式変位検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
変位検出対象物の変位を検出する光学式変位検出装置に関連する技術として、例えば特許文献1には次のような技術が開示されている。即ち、特許文献1においては、被検体に一定の間隔でスリット又は反射面を列設し、このスリット又は反射面に由来する光パルスを検出する光電式検出装置であって、スリット又は反射面の径方向の長さを時計回りに順次大きくなるように構成している。
【0003】
図14は、特許文献1の光電式検出装置(光学式変位検出装置)の光学式信号出力装置に係る部分を示す側面図である。図14に示すように、光源1から出射した光ビームBは、被検体であるスケール4のスリットに照射され、その透過光が光検出器2によって検出される。
【0004】
また、図15は、特許文献1の光電式検出装置におけるスケール4の平面図である。図15に示すように、スケール4に設けられているスリットの径方向の長さは、図15において矢印で示されている回転方向に対し、基準位置A又はBを基準に一定の間隔で増大又は減少(図は増大の例を示している)させられている。
【0005】
さらに、図16は、特許文献1の光電式検出装置における光検出器の出力信号を示す図である。図16に示すグラフでは、横軸に被検体の変位(回転角)を取り、縦軸に光検出器2の出力を取っている。スケール4が反時計周りに回転すると、スリットの開口長さが減少する。この場合、図16に示すように光検出器からの出力信号は、振幅が徐々に減少するような特性となる。このような特性を有する出力信号を信号処理装置において適切に演算することにより、被検体の回転速度を検出することができる。また、振幅の変化を検出することによりスケール4の回転方向を検出することができる。
【0006】
なお、特許文献1には明記されてないが、上述した構成においては、回転変位に対する出力信号の振幅又は直流(DC)成分の大きさを予め調べておくことにより、出力信号の振幅又はDCレベルを測定すれば、基準位置からのスケール4の回転角の絶対位置を検出することもできる。このようにして、特許文献1に開示されている光電式検出装置では、被検体の動きに伴って変化する検出信号の振幅に基づいて、被検体の運動方向や絶対位置を検出することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭48−78959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1に開示されている技術において、光検出器2からの出力信号は、光源1やスケール4の光学的配置や光源の出力変動、さらにはスケール4の欠陥等に大きく影響されるDC成分を有している。ここで、絶対位置の検出感度を向上させるために或いは絶対位置の検出範囲を拡げるために、スリット等の開口長さを小さくする場合を考える。この場合には、スリット等の開口長さの最小値を小さくする程、出力信号の振幅が減少する。したがって、光検出器2からの出力信号におけるノイズ成分が相対的に大きくなってしまい、結果として、スリットの開口長さが小さい箇所では検出性能(分解能、安定性)が低下してしまう。
【0009】
さらに言えば、特許文献1に開示されている構成により絶対位置を検出する場合には、回転変位に対する光検出器2の出力信号の振幅特性を予め調べておく必要がある。ここで、回転変位に対する出力信号の振幅の特性は、例えば周囲環境、センサの取り付けガタ、経時変化、さらにはスケール上の欠陥等に起因して変化する。このため、その検出精度とその信頼性は極めて低い。
【0010】
本発明は、前記の事情に鑑みてなされたものであり、位置検出の分解能及び安定性を広い変位検出範囲に渡って高いレベルで維持しつつ且つスケール上の欠陥等の影響による信頼度をもチェックできる光学式信号出力装置の信号処理装置及びそのような信号処理装置を備えた光学式変位検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の態様の光学式信号出力装置の信号処理装置は、変位検出対象物に連結された光学式信号出力装置から出力され前記変位検出対象物の所定方向の変位に伴って振幅又は直流成分が漸増する第1の信号群と前記光学式信号出力装置から出力され前記変位検出対象物の前記所定方向の変位に伴って振幅又は直流成分が漸減し且つ前記第1の信号群に対して逆相となる第2の信号群とに対して第1の所定演算をすることにより、前記光学式信号出力装置が正常状態の時に所定特性となる第1成分を抽出する第1の信号処理部と、前記第1の信号群と前記第2の信号群に対して第2の所定演算をすることにより、前記変位検出対象物の任意の位置に特有の第2成分を含む出力を前記変位検出対象物の変位として抽出する第2の信号処理部と、を具備することを特徴とする。
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明の第2の態様の光学式変位検出装置は、第1のトラックパターンと第2のトラックパターンとが変位検出対象物の変位方向に平行な方向が長手方向となるように形成されたスケールと、前記スケールに対して光ビームを照射する光源と、前記光源から射出された光ビームを前記第1のトラックパターンを介して検出することで前記変位検出対象物の所定方向の変位に伴って振幅又は直流成分が漸増する第1の信号群を生成する第1の光検出器及び前記光源から射出された光ビームを前記第2のトラックパターンを介して検出することで前記変位検出対象物の前記所定方向の変位に伴って振幅又は直流成分が漸減し且つ前記第1の信号群に対して逆相となる第2の信号群を生成する第2の光検出器を有するセンサヘッドと、を具備し、前記第1のトラックパターン、前記第2のトラックパターン、前記第1の光検出器、前記第2の光検出器、及び前記光源はそれぞれ前記第1の光検出器による検出と前記第2の光検出器による検出とが関連付けて実行されるように配置されている光学式信号出力装置と、前記第1の信号群と前記第2の信号群とに対して第1の所定演算をすることにより、前記光学式信号出力装置が正常状態の時に所定特性となる第1成分を抽出する第1の信号処理部と、前記第1の信号群と前記第2の信号群に対して第2の所定演算をすることにより、前記変位検出対象物の任意の位置に特有の第2成分を含む出力を前記変位検出対象物の変位として抽出する第2の信号処理部と、を具備する信号処理装置と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、位置検出の分解能及び安定性を広い変位検出範囲に渡って高いレベルで維持しつつ且つスケール上の欠陥等の影響による信頼度をもチェックできる光学式信号出力装置の信号処理装置及びそのような信号処理装置を備えた光学式変位検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る光学式変位検出装置の構成を示す斜視図である。
【図2】信号処理装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態における同相成分除去部の出力特性の一例を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態における振幅成分演算回路の出力特性の一例を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施形態における加算回路及び減算回路の出力特性の一例を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施形態における加算回路の出力と減算回路の出力との比の特性を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施形態における同相加算回路の出力特性の一例を示す図である。
【図8】本発明の第1の実施形態におけるリサージュ生成回路で生成されるリサージュ図形の一例を示す図である。
【図9】本発明の第1の実施形態において光学式信号出力装置が非正常状態のときの同相成分除去部の出力特性の一例を示す図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る光学式変位検出装置の構成を示す斜視図である。
【図11】本発明の第2の実施形態における受光素子の出力特性の一例を示す図である。
【図12】本発明の第2の実施形態における加算回路及び減算回路の出力特性の一例を示す図である。
【図13】本発明の第2の実施形態における加算回路の出力と減算回路の出力との比の特性を示す図である。
【図14】従来例の光電式検出装置の光学式信号出力装置に係る部分を示す側面図である。
【図15】従来例の光電式検出装置におけるスケールの平面図である。
【図16】従来例の光電式検出装置における光検出器の出力信号を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
[第1の実施形態]
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る光学式変位検出装置の構成を示す斜視図である。
【0016】
図1に示すように、光学式変位検出装置10は、センサヘッド30及びスケール50を含む光学式信号出力装置と、信号処理装置70とを有している。ここで、センサヘッド30とスケール50とは、一方が所定方向に変位可能な変位検出対象物に連結され、他方が基準面に連結されている。本実施形態においては、変位検出対象物の変位方向を図1に示すX軸に沿った方向(X方向)とする。勿論、変位検出対象物の変位方向を図1に示すY軸に沿った方向やZ軸に沿った方向としても良い。さらには、変位検出対象物の変位方向を図1に示すX軸、Y軸、Z軸回りの回転方向としても良い。
【0017】
センサヘッド30は、光源31と、第1の光検出器32と、第2の光検出器33とを有している。そして、光源31と、第1の光検出器32及び第2の光検出器33の受光面とはスケール50と対向して且つ平行となるように配置されている。
【0018】
光源31は、光源(例えばレーザダイオード)とスリットを有する本体とを備え、光源からの光ビームを、スリットを介してスケール50に向けて照射する。本実施形態における光源31は、スリットを介して2方向に光ビームを照射可能になされている。図1では一方の光ビームを参照符号61、他方の光ビームを参照符号62で示している。
【0019】
第1の光検出器32はスケール50に向けて出射されスケール50で反射された光ビーム61を電気信号に変換するための複数の受光素子(例えばフォトダイオード)を有してなる受光素子アレイが4群形成された受光面を有している。また、第2の光検出器33はスケール50に向けて出射されスケール50で反射された光ビーム62を電気信号に変換するための複数の受光素子を有してなる受光素子アレイが4群形成された受光面を有している。ここで、各群の受光素子アレイを構成する受光素子は、スケール50からの反射光によって第1の光検出器32、第2の光検出器33のそれぞれに形成される光学イメージ(回折模様)の空間周期piと同一の空間周期で形成されている。さらに、各群の受光素子アレイはpi/4だけずらして形成されている。ここで、図1においては、各群の受光素子アレイを構成する受光素子を、光学イメージの空間周期piと同一の空間周期で形成している。実際には、各群の受光素子アレイを構成する受光素子を光学イメージの空間周期piの正の整数倍(1、2、3、…、)の空間周期で形成して良い。
【0020】
また、図1において、第1の光検出器32を構成する4群の受光素子アレイはそれぞれ出力端子VA1、VB1、VAB1、VBB1を介して信号処理装置70に接続されている。さらに、第2の光検出器33を構成する4群の受光素子アレイはそれぞれ出力端子VA2、VB2、VAB2、VBB2を介して信号処理装置70接続されている。
【0021】
スケール50は、変位対象物の変位方向(図1の例ではX方向)が長手方向となるように形成されている。そして、スケール50のセンサヘッド30と対向する側の面には、第1のトラックパターンの一例としてのグレートラック51と、第2のトラックパターンの一例としてのグレートラック52とが形成されている。
【0022】
ここで、以下に説明するトラックパターンに係る用語の定義を行う。まず、スケール50の変位方向に沿った所定区間において実効反射率、実効透過率、回折効率の何れかが漸増又は漸減する光学パターンを「グレースケールパターン」と定義する。また、スケール50の変位方向に対して実効反射率、実効透過率、回折効率の何れかが周期的に変化する光学パターンを「エンコードパターン」と定義する。また、エンコードパターンとグレースケールパターンとを重畳してなる光学特性を有するパターンを「変調コードパターン」と定義する。さらに、グレースケールパターンと変調コードパターンの何れかで構成されるトラックを「グレートラック」と定義する。
【0023】
上述のような定義に対し、図1に示すグレートラック51、52はそれぞれが変調コードパターンのみで構成されているものである。そして、グレートラック51の変調コードパターンにおいては、図1のX方向に沿って空間周期ps毎に実効反射率が漸増するように複数の異なる実効反射率を有するエンコードパターン53が形成されている。また、グレートラック52の変調コードパターンにおいては、図1のX方向に沿って空間周期ps毎に実効反射率が漸減するように複数の異なる実効反射率を有するエンコードパターン53が形成されている。このようにして、グレートラック51とグレートラック52とを構成することにより、グレートラック51を構成する変調コードパターンとグレートラック52を構成する変調コードパターンとは実効反射率が鏡面反転した光学特性を有するものとなる。
【0024】
なお、グレートラック51、52の構成は、図1に示した構成に限定されるものではない。例えば、図1のグレートラック51、52の構成は、光源31から出射された光ビーム61、62のスケール50からの反射光を第1の光検出器32及び第2の光検出器33で検出する反射型の光学式信号出力装置の場合の構成例を示している。これに対し、光源31からスケール50に対して出射された光ビーム61、62の透過光を第1の光検出器32及び第2の光検出器33で検出する透過型の光学式信号出力装置の場合には、グレートラック51の変調コードパターンとグレートラック52の変調コードパターンとには実効透過率が鏡面反転するように光学特性を持たせる。この他、本実施形態においては、スケール50に照射した光ビーム61、62の反射光、透過光、又は回折光により第1の光検出器32又は第2の光検出器33の受光面上に形成される光学イメージの空間振幅又は総光量が変調される各種のグレートラックの構成を適用可能である。
【0025】
信号処理装置70は、第1の光検出器32と第2の光検出器33からそれぞれ出力される信号を処理して変位検出対象物の変位を検出する。図2は、信号処理装置70の構成を示すブロック図である。図2に示す信号処理装置70は、同相成分除去部71、72と、前段の信号処理部73と、後段の信号処理部74とを有している。
【0026】
同相成分除去部71は、第1の光検出器32の出力端子VA1、VB1、VAB1、VBB1からそれぞれ出力される信号(第1の信号群)VA1、VB1、VAB1、VBB1のうちで互いに1/2周期位相の異なる信号同士の差を演算することにより、同相のオフセット成分やノイズを除去する。また、同相成分除去部72は、第2の光検出器33の出力端子VA2、VB2、VAB2、VBB2からそれぞれ出力される信号(第2の信号群)VA2、VB2、VAB2、VBB2のうちで互いに1/2周期位相の異なる信号同士の差を演算することにより、同相のオフセット成分やノイズを除去する。
【0027】
前段の信号処理部73は、同相成分除去部71の出力信号Va1、Vb1と同相成分除去部72の出力信号Va2、Vb2とを用いて第1の所定演算等を行う。この前段の信号処理部73は、振幅成分演算回路731と、加算回路732と、減算回路733と、告知部734と、所定特性記憶部735と、同相加算回路736とを有している。なお、加算回路732は、「第1の信号処理部」の一例として機能する。
【0028】
振幅成分演算回路731は、同相成分除去部71、72の出力を用いて第1の光検出器32からの信号の振幅成分Vpp1と第2の光検出器33からの信号の振幅成分Vpp2とをそれぞれ演算する。
【0029】
加算回路732は、第1の所定演算として、第1の光検出器32からの信号の振幅成分Vpp1と第2の光検出器33からの信号の振幅成分Vpp2との和(Vpp1+Vpp2)を演算する。また、減算回路733は、第1の光検出器32からの信号の振幅成分Vpp1と第2の光検出器33からの信号の振幅成分Vpp2との差(Vpp1−Vpp2)を演算する。
【0030】
告知部734は、加算回路732の出力信号(Vpp1+Vpp2)に基づいて光学式信号出力装置であるセンサヘッド30やスケール50が正常状態であるか否かを判定し、この判定結果を例えば表示出力によって告知する。所定特性記憶部735は、光学式信号出力装置であるセンサヘッド30やスケール50が正常状態であるか否かを告知部734において判定するための所定特性を記憶している。
【0031】
同相加算回路736は、複数の入力チャンネルを有し、同相成分除去部71の出力Va1、Vb1と同相成分除去部72の出力Va2、Vb2との同相成分同士を加算する。
【0032】
後段の信号処理部74は、前段の信号処理部73で演算された結果を用いて変位を算出するための第2の所定演算等を行う。この後段の信号処理部74は、絶対変位演算回路741と、リサージュ生成回路742とを有している。
【0033】
なお、後段の信号処理部74の絶対変位演算回路741、リサージュ生成回路742、及び前段の信号処理部73の振幅成分演算回路731、加算回路732、減算回路733、同相加算回路736が、「第2の信号処理部」の一例として機能する。
【0034】
絶対変位演算回路741は、加算回路732の出力と減算回路733の出力とを用いて変位検出対象物の絶対変位xを演算するための演算を行う。相対変位演算部の一例としてのリサージュ生成回路742は同相加算回路736の出力を用いてリサージュ図形を生成し、このリサージュ図形から変位検出対象物の相対変位に対応したθを演算する。
【0035】
以下、図1に示す光学式変位検出装置10の動作について説明する。なお、理解を容易にするために、まずは、光学式信号出力装置が正常状態であるときの光学式変位検出装置10の動作について説明する。ここで、本実施形態における「光学式信号出力装置の正常状態」とは、スケール50上のグレートラック51又は52にゴミや傷等の物理的な欠陥や各種の使用上の欠陥が存在していない状態を言うものとする。一方、「光学式信号出力装置の非正常状態」とは、スケール50上のグレートラック51又は52にゴミや傷等の物理的な欠陥や各種の使用上の欠陥が存在している状態を言うものとする。
【0036】
まず、光学式信号出力装置としてのセンサヘッド30とスケール50による信号出力動作について説明する。図1に示す構成において、光源31から出射された光ビーム61、62はスケール50に形成されたグレートラック51、52に照射される。そして、グレートラック51に照射された光ビーム61はグレートラック51で反射される。これにより、第1の光検出器32の受光素子上にグレートラック51を構成する変調コードパターンに対応した光学イメージ(回折模様)が形成される。同様に、グレートラック52に照射された光ビーム62はグレートラック52で反射される。これにより、第2の光検出器33の受光素子上にグレートラック52を構成する変調コードパターンに対応した光学イメージが形成される。
【0037】
ここで、変調コードパターンに対応した光学イメージについて説明する。まずは、変調コードパターン中のあるエンコードパターン53に対応した光学イメージについて説明する。ここで、本実施形態においては多様な光学イメージの生成原理が適用可能である。以下の説明では、典型的な例として、点光源構成による検出原理(Talbotイメージ)を用いた光学イメージの生成原理について説明する。
【0038】
まず、図1において、光源31が点光源であるとし、さらに光源31とスケール50上のエンコードパターン53とのZ方向距離をZ1、第1の光検出器32又は第2の光検出器33の受光面(受光素子で構成される面)とスケール50上のエンコードパターン53とのZ方向距離をZ2、スケール50上のエンコードパターン53の空間周期をpsとする。
【0039】
このような前提において、光源31からあるエンコードパターン53に光ビーム61、62が照射されると、これら照射された光ビーム61、62はそれぞれエンコードパターン53で反射される。これにより第1の光検出器32、第2の光検出器33の受光面上に空間周期piの周期的な光学イメージが形成される。この場合、Talbotイメージにおいては、以下の(式1)で示す関係が成立する。
pi=ps・(Z1+Z2)/Z1 (式1)
なお、第1の光検出器32、第2の光検出器33の受光面上に空間周期piの周期的な光学イメージがクリアに形成されるためには、pi、ps、Z1、Z2、及び光源31の光波長λをTalbot光学イメージの形成条件に合致させる必要がある。しかしながら、本実施形態においては光学イメージの生成原理がTalbotイメージに限定されないのでpi、ps、Z1、Z2、及び光源31の光波長λの詳細な決定手法については説明を省略する。
【0040】
上述したように、第1の光検出器32、第2の光検出器33にはエンコードパターン53の空間周期piに相当する空間周期で受光素子アレイが4群形成されており、各群は空間周期方向に沿ってpi/4だけずらして配置されている。即ち、受光面上に空間周期piを持って形成された光学イメージに対し、各群の受光素子アレイは1/4周期ずつずれた空間位相差を持って光を検出する。したがって、第1の光検出器32の各受光素子アレイの出力信号VA1、VB1、VAB1、VBB1は電気角で90度(即ち1/4周期)ずつずれた周期信号となる。同様に、第2の光検出器33の受光素子アレイの出力信号VA2、VB2、VAB2、VBB2も電気角で90度ずつずれた周期信号となる。
【0041】
次に、変位検出対象物がX方向に変位したときの変調コードパターンに対応した受光素子アレイの出力信号について説明する。上述したように、グレートラック51は、変調コードパターンとして、X方向に沿って実効反射率が漸増するような光学特性を有している。また、グレートラック52は、X方向に沿って実効反射率が漸減するような光学特性を有している。ここで、変位検出対象物がX方向にpsだけ変位すると、光源31からの光ビーム61、62がpsだけずれた位置のエンコードパターン53に照射される。そして、psだけずれた位置のエンコードパターン53からの反射光に基づく光学イメージが第1の光検出器32、第2の光検出器33の受光面上に形成される。このため、第1の光検出器32の各群の受光素子アレイからの出力信号VA1、VB1、VAB1、VBB1は振幅が増加する。一方、第2の光検出器33の各群の受光素子アレイからの出力信号VA2、VB2、VAB2、VBB2は振幅が減少する。即ち、変位検出対象物がX方向にpsだけ変位する毎に、第1の光検出器32の各群の受光素子アレイの出力端子VA1、VB1、VAB1、VBB1からは90度(即ち1/4周期)ずつの位相差を有し且つ振幅が漸増する特性を有する周期信号VA1、VB1、VAB1、VBB1が出力され、第2の光検出器33の各群の受光素子アレイの出力端子VA2、VB2、VAB2、VBB2からは90度(即ち1/4周期)ずつの位相差を有し且つ振幅が漸減する特性を有する周期信号VA2、VB2、VAB2、VBB2が出力される。このようにして、出力信号VA1、VB1、VAB1、VBB1の振幅の特性に対して出力信号VA2、VB2、VAB2、VBB2の振幅の特性は逆相の特性となる。
【0042】
次に、信号処理装置70における信号処理動作について説明する。
まず、同相ノイズ成分の除去について説明する。まず、同相成分除去部71において、第1の光検出器32からの出力信号VA1、VB1、VAB1、VBB1のうちで互いに1/2周期(180度)位相の異なる信号同士の差が演算される。即ち、同相成分除去部71においては以下の(式2)で示す演算が行われる。
Va1=VA1−VAB1
Vb1=VB1−VBB1 (式2)
同様に、同相成分除去部72において、第2の光検出器33からの出力信号VA2、VB2、VAB2、VBB2のうちで互いに1/2周期(180度)位相の異なる信号同士の差が演算される。即ち、同相成分除去部72においては以下の(式3)で示す演算が行われる。
Va2=VA2−VAB2
Vb2=VB2−VBB2 (式3)
このような同相成分除去部71、72の動作により、同相成分除去部71からは図3(a)に示すような90度(すなわち1/4周期)の位相差を有する信号Va1、Vb1が得られ、同相成分除去部72からは図3(b)に示すような90度(すなわち1/4周期)の位相差を有する信号Va2、Vb2が得られる。
【0043】
次に、信号処理装置70における変位対象物の絶対変位の検出について説明する。まず、振幅成分演算回路731において、図3(a)に示すようにして得られた信号Va1、Vb1の振幅成分Vpp1と図3(b)に示すようにして得られた信号Va2、Vb2の振幅成分Vpp2とがそれぞれ演算される。上述したように、グレートラック51の変調コードパターンは図1のX方向に沿って実効反射率が漸増するような光学特性を有し、また、グレートラック52の変調コードパターンは図1のX方向に沿って実効反射率が漸減するような光学特性を有している。このため、第1の光検出器32から出力される信号の振幅成分Vpp1は、図4に示すように、変位量xに対して単調増加の特性104を有する。一方、第2の光検出器33から出力される信号の振幅成分Vpp2は、図4に示すように、変位量xに対して単調減少の特性105を有する。なお、図4に示す振幅成分Vpp1、Vpp2はそれぞれ(式4)、(式5)に示す関係で定義される。
Vpp1=a・x (式4)
Vpp2=−a・(x−Lgray) (式5)
ここで、Lgrayはグレートラック51、52において実効反射率が変化する所定区間の長さであり、aは変位検出対象物が単位距離だけ変位した際の振幅成分Vpp1の変化量(即ち図4に示すVpp1の傾き)である。なお、Vppmaxを所定区間において第1の光検出器32、第2の光検出器33からそれぞれ出力される信号の最大振幅とすると、傾きaは以下の(式6)によって求めることができる。
a=Vppmax/Lgray (式6)
振幅成分演算回路731における振幅成分の演算の後、加算回路732においてVpp1とVpp2の和が演算され、また減算回路733においてVpp1とVpp2の差が演算される。これらの演算結果を以下の(式7)、(式8)に示す。
【0044】
Vpp1+Vpp2=a・Lgray=Vppmax (式7)
Vpp1−Vpp2=2a・x−a・Lgray (式8)
(式7)の特性を図5の特性106で、(式8)の特性を図5の特性107でそれぞれ示す。図5の特性106で示すように、Vpp1とVpp2の和として第1の成分は変位量xに依存しない略一定値Vppmaxとなる。
【0045】
ここで、第2の所定演算として、(Vpp1+Vpp2)と(Vpp1−Vpp2)の比を演算すると、図6の参照符号108で示す特性が得られる。この特性を数式で示すと以下の(式9)となる。
(Vpp1−Vpp2)/(Vpp1+Vpp2)=2/Lgray・x−1
(式9)
(式9)をxについて解いた結果は(式10)となる。
x=Lgray・((Vpp1−Vpp2)/(Vpp1+Vpp2)+1)/2
(式10)
(式10)から分かるように、予めLgrayを測定しておきさえすれば絶対変位演算回路741において変位量xを検出することができる。また、(式9)に示すように、(Vpp1−Vpp2)/(Vpp1+Vpp2)は、最大振幅Vppmaxや傾きaに依存しない値である。また、Lgrayはスケール50の設計段階で決定される固定値である。このため、光学式変位検出装置10の動作中にVppmaxやaが変動しても(式10)の変位量xは変化しない。また、(Vpp1+Vpp2)の値や(Vpp1−Vpp2)の値も光源31の光量変動や光源31とスケール50の配置状態等の要因によって変動する可能性はあるが、第1の実施形態では(Vpp1+Vpp2)と(Vpp1−Vpp2)との比を取ることによりこれらの変動成分をキャンセルすることができる。したがって、安定して変位量xを検出することができる。
【0046】
本実施形態においては、第2の所定演算の後に変位にのみ依存する第2成分が抽出される。ここで、第2成分とは、典型的には、上述の(式9)や(式10)で示す関係が該当するが、所定演算を行った後に変位のみに依存する値が得られるのであれば種々の値を第2成分として用いることが可能である。
【0047】
次に、信号処理装置70における変位対象物の相対変位の検出について説明する。まず、同相加算回路736において、図4(a)、図4(b)に示す1/4周期の位相差を有する2組の信号が同相信号毎に加算される。即ち、同相加算回路736においては以下の(式11)で示す演算が行われる。
Va=Va1+Va2
Vb=Vb1+Vb2 (式11)
このような同相加算回路736からは図7に示すような90度(すなわち1/4周期)の位相差を有する信号Va、Vbが得られる。
【0048】
同相加算回路736における演算の後、リサージュ生成回路742においてリサージュ図形が生成される。図8はリサージュ生成回路742において生成されるリサージュ図形の例を示した図である。図8に示すように、リサージュ図形は一定の半径で回転する円になり、この円周上の位相角θが空間周期ps内での変位量xに相当するものとなる。
【0049】
次に、光学式信号出力装置が非正常状態であるときの光学式変位検出装置10の動作について説明する。ここでは一例として、図2に示すように、グレートラック51上にゴミ100が付着していた場合を考える。この場合、ゴミ100によって光ビーム61の反射が阻害されるため、第1の光検出器32の受光素子アレイに入射する光の光量も低下する。したがって、第1の光検出器32からの信号の振幅Vpp1の特性も図9(a)に示すように、ゴミ100の位置において振幅強度が低下するような特性に変化する。これに対し、第2の光検出器33からの信号の振幅Vpp2の特性は図9(b)に示すように、図3(b)と同じ特性である。
【0050】
この結果、加算回路732の出力である(Vpp1+Vpp2)の特性も図5の特性106’で示すように、ゴミ100の位置に対応した部分106aにおいて窪みが生じる。また、減算回路733の出力である(Vpp1−Vpp2)の特性も図5の特性107’で示すように、ゴミ100の位置に対応した部分においてレベルの低下が生じる。結果として、(Vpp1+Vpp2)と(Vpp1−Vpp2)との比の特性も図6の特性108’で示すように、ゴミ100の位置に対応した部分においてレベルの低下が生じる。
【0051】
上述したように、光学式信号出力装置が正常状態であるときには(Vpp1+Vpp2)は図5の特性106で示すように略一定となる。したがって、加算回路732の出力(Vpp1+Vpp2)を、光学式信号出力装置が正常状態のときの加算回路732の出力(a・Lgray=Vppmax)と比較することにより、光学式信号出力装置が正常状態であるか否かを判定することができる。
【0052】
このような比較が告知部734において行われる。告知部734では、所定特性記憶部735に予め記憶しておいた所定値Vppmaxと加算回路732から出力される(Vpp1+Vpp2)との比較が行われる。そして、Vppmaxと(Vpp1+Vpp2)との差異が一定未満のときには、光学式信号出力装置が正常状態である旨が例えば表示出力によって告知される。一方、Vppmaxと(Vpp1+Vpp2)との差異が一定以上となった時点で、光学式信号出力装置が非正常状態である旨が例えば表示出力によって告知される。なお、(Vpp1+Vpp2)との差異の程度によりゴミ100の付着による検出精度への影響の程度を検出することもできる。したがって、Vppmaxと(Vpp1+Vpp2)との差異の程度に基づいて告知部734においてゴミ100の付着による検出精度の影響を告知できるようにしても良い。
【0053】
ここで、告知部734における比較には各種の変形例が適用できる。「光学式信号出力装置が正常状態の時に所定特性となる第1成分」は正常時と異常時の判別が容易な指標であれば良い。したがって、例えば、図4に示す正常時の振幅成分の特性104、105を予め記憶しておき、この特性104、105と振幅成分演算回路の出力Vpp1、Vpp2をそれぞれ比較するようにしても良い。この他、減算回路733の出力や絶対変位演算回路741の出力を比較に用いるようにしても良い。
【0054】
以上説明したように、第1の実施形態によれば、変位検出対象物の変位方向に沿って実効反射率が漸増する光学特性を有する変調コードパターンで構成されるグレートラック51と変位検出対象物の変位方向に沿って実効反射率が漸減する光学特性を有する変調コードパターンで構成されるグレートラック52とが形成されたスケール50に光ビーム61、62を照射し、グレートラック51、52からの反射光を第1の光検出器32と第2の光検出器33とで個別に検出している。そして、第1の光検出器32からの出力信号と第2の光検出器33からの出力信号を用いて第2の所定演算を行うことにより、変位量xにのみ依存する第2成分を抽出することができる。これにより、変位量xを安定して検出することができる。
【0055】
また、第1の光検出器32からの出力信号と第2の光検出器33からの出力信号を用いて第1の所定演算を行うことにより、光学式信号出力装置が正常状態の時に変位量xに依存しない略一定となる第1成分を抽出することができる。これにより、スケール50上の異常の有無や欠陥等による影響等の信頼度を容易にチェックすることができる。
【0056】
ここで、第1の実施形態においては、第1の光検出器32と第2の光検出器33からそれぞれ4相の信号を得るようにしているが、必ずしも4相ずつの信号を得るようにしなくとも良い。例えば、ノイズの影響を考慮しないのであれば、第1の光検出器32において信号VA1と信号VB1のみを得るようにし、第2の光検出器33において信号VA2と信号VB2のみを得るようにしても良い。
【0057】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図10は、本発明の第2の実施形態に係る光学式変位検出装置の構成を示す斜視図である。第1の実施形態においては、第1のトラックパターンの一例としてのグレートラック51と第2のトラックパターンの一例としてのグレートラック52とが何れも変調コードパターンで構成されている例について説明している。これに対し、第2の実施形態においては、2つのグレートラックがそれぞれグレースケールパターン511、512で構成されている点が異なる。ここで、グレースケールパターン511は、図10のX方向に沿って実効反射率が連続的に増加するような光学特性を有し、また、グレースケールパターン512は、図10のX方向に沿って実効反射率が連続的に減少するような光学特性を有している。
【0058】
このようなグレートラックの変更に対応して、第1の光検出器及び第2の光検出器も受光素子アレイではなく、一面ベタの受光素子35、36で構成されている。そして、第1の光検出器の出力端子はV1のみであり、この出力端子V1は信号処理装置70に接続されている。同様に、第2の光検出器の出力端子はV2のみであり、この出力端子V2は信号処理装置70に接続されている。なお、第2の実施形態における信号処理装置70の構成については図示を省略する。この第2の実施形態における信号処理装置70は、図2で示した構成から、同相成分除去部71及び72、振幅成分演算回路731、同相加算回路736、リサージュ生成回路742を省略したものである。
【0059】
以下、図10に示す光学式変位検出装置10の動作について説明する。まず、光学式信号出力装置が正常状態であるときの光学式変位検出装置10の動作について説明する。図10に示す光学式変位検出装置10において、変位対象物がX方向に変位したときに第1の光検出器の受光素子35から出力される信号V1は、図11の特性104で示すものとなる。この図11の特性104は、図4の特性104で示した振幅成分Vpp1の特性に対応したものである。また、第2の光検出器の受光素子36から出力される信号V2は、図11の特性105で示すものとなる。この図11の特性105は、図4の特性105で示した振幅成分Vpp2の特性に対応したものである。
【0060】
加算回路732においては第1の所定演算としてV1とV2の和が演算されて第1成分が抽出される。また、減算回路733においてはV1とV2の差が演算される。加算回路732の出力特性を図12の特性106で、減算回路733の出力特性を図12の特性107でそれぞれ示す。図12の特性106で示すように、V1とV2の和としての第1の成分も変位量xに依存しない略一定値Vmaxとなる。
【0061】
ここで、第2の所定演算として(V1+V2)と(V1−V2)の比を演算すると、図13の特性108で示すものとなる。この特性108も図6の特性108と対応したものであり、上述の(式9)においてVpp1をV1に、Vpp2をV2にそれぞれ置き換えたものである。(V1+V2)の値や(V1−V2)の値は光源31の光量変動や光源31とスケール50の配置状態等の各種の要因により変動する可能性がある。これに対し、第2の実施形態では(V1+V2)と(V1−V2)との比を取ることによりこれらの変動成分をキャンセルすることができる。これにより、絶対変位演算回路741において安定して変位量xを検出することができる。
【0062】
次に、光学式信号出力装置が非正常状態であるときの光学式変位検出装置10の動作について説明する。変位検出対象物がX方向に変位したときに第1の光検出器の受光素子35から出力される信号V1は、図11の特性104’で示すものとなる。また、第2の光検出器の受光素子36から出力される信号V2は、図11の特性105’で示すものとなる。図11の特性104’で示すように、ゴミ100の位置において局所的に信号強度が変化する。このため、加算回路732の出力である(V1+V2)の特性は図12の特性106’に示すものとなり、ゴミ100が付着した部分106aにおいて窪みが生じる。また、減算回路733の出力である(V1−V2)の特性も図12の特性107’で示すように、ゴミ100の位置に対応した部分においてレベルの低下が生じる。結果として、(V1+V2)と(V1−V2)との比の特性も図13の特性108’で示すように、ゴミ100の位置に対応した部分においてレベルの低下が生じる。
【0063】
図12の特性106で示したように、光学式信号出力装置が正常状態であるときには(V1+V2)は略一定となる。したがって、加算回路732の出力(V1+V2)を、光学式信号出力装置が正常状態のときの加算回路732の出力Vmaxと比較することにより、光学式信号出力装置が正常状態であるか否かを判定することができる。
【0064】
このような比較が告知部734において行われる。告知部734では、所定特性記憶部735に予め記憶しておいた所定値Vmaxと加算回路732から出力される(V1+V2)との比較が行われる。そして、Vmaxと(V1+V2)との差異が一定未満のときには、光学式信号出力装置が正常状態である旨が例えば表示出力によって告知される。一方、Vmaxと(V1+V2)との差異が一定以上となった時点で、光学式信号出力装置が非正常状態である旨が例えば表示出力によって告知される。なお、(V1+V2)との差異の程度によりゴミ100の付着による検出精度への影響の程度を検出することもできる。したがって、Vmaxと(V1+V2)との差異の程度に基づいて告知部734においてゴミ100の付着による検出精度の影響を告知できるようにしても良い。
【0065】
ここで、告知部734における比較には各種の変形例が適用できる。第1の実施形態と同様に、「光学式信号出力装置が正常状態の時に所定特性となる第1成分」は正常時と異常時の判別が容易な指標であれば良い。したがって、例えば、図11に示す正常時の振幅成分の特性104、105を予め記憶しておき、この特性104、105とV1、V2をそれぞれ比較するようにしても良い。この他、減算回路733の出力や絶対変位演算回路741の出力を比較に用いるようにしても良い。
【0066】
以上説明したように、第2の実施形態によれば、変位検出対象物の変位方向に沿って実効反射率が連続的に増加する光学特性を有するグレースケールパターン511で構成されるグレートラックと変位検出対象物の変位方向に沿って実効反射率が連続的に減少する光学特性を有するグレースケールパターン512で構成されるグレートラックとが形成されたスケール50に光ビーム61、62を照射し、各グレートラックからの反射光を受光素子35及び受光素子36を用いて個別に検出している。そして、受光素子35からの出力信号と受光素子36からの出力信号を用いて第2の所定演算を行うことにより、変位量xにのみ依存する第2成分を抽出することができる。これにより、変位量xを安定して検出することができる。
【0067】
また、受光素子35からの出力信号と受光素子36からの出力信号を用いて第1の所定演算を行うことにより、光学式信号出力装置が正常状態の時に変位量xに依存しない略一定となる第1成分を抽出することができる。これにより、スケール50上の異常の有無や欠陥等による影響等の信頼度を容易にチェックすることができる。
【0068】
以上実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形や応用が可能なことは勿論である。
【0069】
さらに、上記した実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件の適当な組合せにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、上述したような課題を解決でき、上述したような効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成も発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0070】
10…光学式変位検出装置、30…センサヘッド、31…光源、32…第1の光検出器、33…第2の光検出器、35,36…受光素子、50…スケール、51,52…グレートラック、53…エンコードパターン、511,512…グレースケールパターン、70…信号処理装置、71,72…同相成分除去部、73…前段の信号処理部、74…後段の信号処理部、731…振幅成分演算回路、732…加算回路、733…減算回路、734…告知部、735…所定特性記憶部、736…同相加算回路、741…絶対変位演算回路、742…リサージュ生成回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変位検出対象物に連結された光学式信号出力装置から出力され前記変位検出対象物の所定方向の変位に伴って振幅又は直流成分が漸増する第1の信号群と前記光学式信号出力装置から出力され前記変位検出対象物の前記所定方向の変位に伴って振幅又は直流成分が漸減し且つ前記第1の信号群に対して逆相となる第2の信号群とに対して第1の所定演算をすることにより、前記光学式信号出力装置が正常状態の時に所定特性となる第1成分を抽出する第1の信号処理部と、
前記第1の信号群と前記第2の信号群に対して第2の所定演算をすることにより、前記変位検出対象物の任意の位置に特有の第2成分を含む出力を前記変位検出対象物の変位として抽出する第2の信号処理部と、
を具備することを特徴とする光学式信号出力装置の信号処理装置。
【請求項2】
前記第1の信号処理部により実際に抽出された第1成分と前記所定特性とに差異があるか否かを比較し、該比較の結果に応じて前記光学式信号出力装置が正常状態であるか否かを告知する、又は前記比較の結果に応じて前記第1の信号処理部により実際に抽出された第1成分と前記所定特性との差異の程度を告知する告知部をさらに具備することを特徴とする請求項1に光学式信号出力装置の信号処理装置。
【請求項3】
前記第1の信号処理部は、前記第1の信号群の振幅と前記第2の信号群の振幅との和又は前記第1の信号群の直流成分と前記第2の信号群の直流成分の和を、前記第1の所定演算として演算することを特徴とする請求項1又は2に記載の光学式信号出力装置の信号処理装置。
【請求項4】
前記光学式信号出力装置は、
第1のトラックパターンと第2のトラックパターンとが前記変位検出対象物の変位方向に平行な方向が長手方向となるように形成されたスケールと、
前記スケールに対して光ビームを照射する光源と、
前記光源から射出された光ビームを前記第1のトラックパターンを介して検出することで前記第1の信号群を生成する第1の光検出器及び前記光源から射出された光ビームを前記第2のトラックパターンを介して検出することで第2の信号群を生成する第2の光検出器を有するセンサヘッドと、
を具備し、
前記第1のトラックパターン、前記第2のトラックパターン、前記第1の光検出器、前記第2の光検出器、及び前記光源はそれぞれ前記第1の光検出器による検出と前記第2の光検出器による検出とが関連付けて実行されるように配置されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の光学式信号出力装置の信号処理装置。
【請求項5】
前記第1のトラックパターン、前記第2のトラックパターン、前記第1の光検出器、前記第2の光検出器、及び前記光源は、前記第1の信号処理部により抽出される第1成分が前記変位検出対象物の所定区間の変位に依存せず略一定であるように配置されていることを特徴とする請求項4に記載の光学式信号出力装置の信号処理装置。
【請求項6】
第1のトラックパターンと第2のトラックパターンとが変位検出対象物の変位方向に平行な方向が長手方向となるように形成されたスケールと、前記スケールに対して光ビームを照射する光源と、前記光源から射出された光ビームを前記第1のトラックパターンを介して検出することで前記変位検出対象物の所定方向の変位に伴って振幅又は直流成分が漸増する第1の信号群を生成する第1の光検出器及び前記光源から射出された光ビームを前記第2のトラックパターンを介して検出することで前記変位検出対象物の前記所定方向の変位に伴って振幅又は直流成分が漸減し且つ前記第1の信号群に対して逆相となる第2の信号群を生成する第2の光検出器を有するセンサヘッドと、を具備し、前記第1のトラックパターン、前記第2のトラックパターン、前記第1の光検出器、前記第2の光検出器、及び前記光源はそれぞれ前記第1の光検出器による検出と前記第2の光検出器による検出とが関連付けて実行されるように配置されている光学式信号出力装置と、
前記第1の信号群と前記第2の信号群とに対して第1の所定演算をすることにより、前記光学式信号出力装置が正常状態の時に所定特性となる第1成分を抽出する第1の信号処理部と、前記第1の信号群と前記第2の信号群に対して第2の所定演算をすることにより、前記変位検出対象物の任意の位置に特有の第2成分を含む出力を前記変位検出対象物の変位として抽出する第2の信号処理部と、を具備する信号処理装置と、
を有することを特徴とする光学式変位検出装置。
【請求項7】
前記信号処理装置は、前記第1の信号処理部により実際に抽出された第1成分と前記所定特性とに差異があるか否かを比較し、該比較の結果に応じて前記光学式信号出力装置が正常状態であるか否かを告知する、又は前記比較の結果に応じて前記第1の信号処理部により実際に抽出された第1成分と前記所定特性との差異の程度を告知する告知部をさらに具備することを特徴とする請求項6に光学式変位検出装置。
【請求項8】
前記第1の信号処理部は、前記第1の信号群の振幅と前記第2の信号群の振幅との和又は前記第1の信号群の直流成分と前記第2の信号群の直流成分の和を、前記第1の所定演算として演算することを特徴とする請求項6又は7に記載の光学式変位検出装置。
【請求項9】
前記第1のトラックパターン、前記第2のトラックパターン、前記第1の光検出器、前記第2の光検出器、及び前記光源は、前記第1の信号処理部により抽出される第1成分が前記変位検出対象物の所定区間の変位に依存せず略一定であるように配置されていることを特徴とする請求項6乃至8の何れか1項に記載の光学式変位検出装置。
【請求項10】
前記第1のトラックパターンと前記第2のトラックパターンとには、
前記変位検出対象物の変位方向に沿った所定区間において実効反射率、実効透過率、回折効率の何れかが漸増或いは漸減する光学パターンであるグレースケールパターンと、
前記グレースケールパターンと、前記変位検出対象物の変位方向に沿った方向に対して実効反射率、実効透過率、回折効率の何れかが所定の空間周期で変化する光学パターンであるエンコードパターンとが重畳されてなる光学特性を有するパターンである変調コードパターンと、
の何れかで構成されるグレートラックが形成されていることを特徴とする請求項6乃至9の何れかに記載の光学式変位検出装置。
【請求項11】
前記第1のトラックパターンと前記第2のトラックパターンとには、少なくとも前記変調コードパターンが形成され、
前記光源から出射された光ビームが前記変調コードパターンにて透過、反射、又は回折された際に前記第1の光検出器と前記第2の光検出器の受光面上に空間周期piの回折模様を形成するように、前記スケールと前記センサヘッドとが配置されており、
前記第1の光検出器と前記第2の光検出器の受光面上には、前記空間周期piの回折模様と同一又は前記空間周期piの整数倍の空間周期を有する複数の受光素子アレイが互いに異なる空間位相差で前記回折模様を検出するように前記変位検出対象物の変位方向に沿った方向に対してずらして配置されているとともに、
前記信号処理装置は、
第1の光検出器と前記第2の光検出器の複数の受光素子アレイのうち、前記回折模様の同相部分を受光する受光素子アレイからの出力同士を加算する複数チャンネルの同相加算部と、
前記同相加算部から出力される複数チャンネル出力を組み合わせて前記変位を演算する相対変位演算部と、
をさらに具備することを特徴とする請求項10に記載の光学式変位検出装置。
【請求項1】
変位検出対象物に連結された光学式信号出力装置から出力され前記変位検出対象物の所定方向の変位に伴って振幅又は直流成分が漸増する第1の信号群と前記光学式信号出力装置から出力され前記変位検出対象物の前記所定方向の変位に伴って振幅又は直流成分が漸減し且つ前記第1の信号群に対して逆相となる第2の信号群とに対して第1の所定演算をすることにより、前記光学式信号出力装置が正常状態の時に所定特性となる第1成分を抽出する第1の信号処理部と、
前記第1の信号群と前記第2の信号群に対して第2の所定演算をすることにより、前記変位検出対象物の任意の位置に特有の第2成分を含む出力を前記変位検出対象物の変位として抽出する第2の信号処理部と、
を具備することを特徴とする光学式信号出力装置の信号処理装置。
【請求項2】
前記第1の信号処理部により実際に抽出された第1成分と前記所定特性とに差異があるか否かを比較し、該比較の結果に応じて前記光学式信号出力装置が正常状態であるか否かを告知する、又は前記比較の結果に応じて前記第1の信号処理部により実際に抽出された第1成分と前記所定特性との差異の程度を告知する告知部をさらに具備することを特徴とする請求項1に光学式信号出力装置の信号処理装置。
【請求項3】
前記第1の信号処理部は、前記第1の信号群の振幅と前記第2の信号群の振幅との和又は前記第1の信号群の直流成分と前記第2の信号群の直流成分の和を、前記第1の所定演算として演算することを特徴とする請求項1又は2に記載の光学式信号出力装置の信号処理装置。
【請求項4】
前記光学式信号出力装置は、
第1のトラックパターンと第2のトラックパターンとが前記変位検出対象物の変位方向に平行な方向が長手方向となるように形成されたスケールと、
前記スケールに対して光ビームを照射する光源と、
前記光源から射出された光ビームを前記第1のトラックパターンを介して検出することで前記第1の信号群を生成する第1の光検出器及び前記光源から射出された光ビームを前記第2のトラックパターンを介して検出することで第2の信号群を生成する第2の光検出器を有するセンサヘッドと、
を具備し、
前記第1のトラックパターン、前記第2のトラックパターン、前記第1の光検出器、前記第2の光検出器、及び前記光源はそれぞれ前記第1の光検出器による検出と前記第2の光検出器による検出とが関連付けて実行されるように配置されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の光学式信号出力装置の信号処理装置。
【請求項5】
前記第1のトラックパターン、前記第2のトラックパターン、前記第1の光検出器、前記第2の光検出器、及び前記光源は、前記第1の信号処理部により抽出される第1成分が前記変位検出対象物の所定区間の変位に依存せず略一定であるように配置されていることを特徴とする請求項4に記載の光学式信号出力装置の信号処理装置。
【請求項6】
第1のトラックパターンと第2のトラックパターンとが変位検出対象物の変位方向に平行な方向が長手方向となるように形成されたスケールと、前記スケールに対して光ビームを照射する光源と、前記光源から射出された光ビームを前記第1のトラックパターンを介して検出することで前記変位検出対象物の所定方向の変位に伴って振幅又は直流成分が漸増する第1の信号群を生成する第1の光検出器及び前記光源から射出された光ビームを前記第2のトラックパターンを介して検出することで前記変位検出対象物の前記所定方向の変位に伴って振幅又は直流成分が漸減し且つ前記第1の信号群に対して逆相となる第2の信号群を生成する第2の光検出器を有するセンサヘッドと、を具備し、前記第1のトラックパターン、前記第2のトラックパターン、前記第1の光検出器、前記第2の光検出器、及び前記光源はそれぞれ前記第1の光検出器による検出と前記第2の光検出器による検出とが関連付けて実行されるように配置されている光学式信号出力装置と、
前記第1の信号群と前記第2の信号群とに対して第1の所定演算をすることにより、前記光学式信号出力装置が正常状態の時に所定特性となる第1成分を抽出する第1の信号処理部と、前記第1の信号群と前記第2の信号群に対して第2の所定演算をすることにより、前記変位検出対象物の任意の位置に特有の第2成分を含む出力を前記変位検出対象物の変位として抽出する第2の信号処理部と、を具備する信号処理装置と、
を有することを特徴とする光学式変位検出装置。
【請求項7】
前記信号処理装置は、前記第1の信号処理部により実際に抽出された第1成分と前記所定特性とに差異があるか否かを比較し、該比較の結果に応じて前記光学式信号出力装置が正常状態であるか否かを告知する、又は前記比較の結果に応じて前記第1の信号処理部により実際に抽出された第1成分と前記所定特性との差異の程度を告知する告知部をさらに具備することを特徴とする請求項6に光学式変位検出装置。
【請求項8】
前記第1の信号処理部は、前記第1の信号群の振幅と前記第2の信号群の振幅との和又は前記第1の信号群の直流成分と前記第2の信号群の直流成分の和を、前記第1の所定演算として演算することを特徴とする請求項6又は7に記載の光学式変位検出装置。
【請求項9】
前記第1のトラックパターン、前記第2のトラックパターン、前記第1の光検出器、前記第2の光検出器、及び前記光源は、前記第1の信号処理部により抽出される第1成分が前記変位検出対象物の所定区間の変位に依存せず略一定であるように配置されていることを特徴とする請求項6乃至8の何れか1項に記載の光学式変位検出装置。
【請求項10】
前記第1のトラックパターンと前記第2のトラックパターンとには、
前記変位検出対象物の変位方向に沿った所定区間において実効反射率、実効透過率、回折効率の何れかが漸増或いは漸減する光学パターンであるグレースケールパターンと、
前記グレースケールパターンと、前記変位検出対象物の変位方向に沿った方向に対して実効反射率、実効透過率、回折効率の何れかが所定の空間周期で変化する光学パターンであるエンコードパターンとが重畳されてなる光学特性を有するパターンである変調コードパターンと、
の何れかで構成されるグレートラックが形成されていることを特徴とする請求項6乃至9の何れかに記載の光学式変位検出装置。
【請求項11】
前記第1のトラックパターンと前記第2のトラックパターンとには、少なくとも前記変調コードパターンが形成され、
前記光源から出射された光ビームが前記変調コードパターンにて透過、反射、又は回折された際に前記第1の光検出器と前記第2の光検出器の受光面上に空間周期piの回折模様を形成するように、前記スケールと前記センサヘッドとが配置されており、
前記第1の光検出器と前記第2の光検出器の受光面上には、前記空間周期piの回折模様と同一又は前記空間周期piの整数倍の空間周期を有する複数の受光素子アレイが互いに異なる空間位相差で前記回折模様を検出するように前記変位検出対象物の変位方向に沿った方向に対してずらして配置されているとともに、
前記信号処理装置は、
第1の光検出器と前記第2の光検出器の複数の受光素子アレイのうち、前記回折模様の同相部分を受光する受光素子アレイからの出力同士を加算する複数チャンネルの同相加算部と、
前記同相加算部から出力される複数チャンネル出力を組み合わせて前記変位を演算する相対変位演算部と、
をさらに具備することを特徴とする請求項10に記載の光学式変位検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−107106(P2011−107106A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−265517(P2009−265517)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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