説明

光学式検出装置、表示装置及び電子機器

【課題】温度が変化しても安定した検出精度を得ることができる光学式検出装置、表示装置及び電子機器等を提供すること。
【解決手段】光学式検出装置は、照射光を出射する照射部EUと、照射光が対象物に反射することによる反射光を少なくとも受光する受光素子PDと、受光素子PDからの受光検出信号を増幅する増幅部100と、増幅部100が出力する信号に基づいて、対象物の位置特定情報を検出する検出部200と、位置特定情報に基づいて対象物の位置を判定する判定部300と、温度を検出する温度検出部TSUと、温度検出部TSUの検出結果に基づいて、増幅部100が有する回路素子の回路定数CNTを設定する処理を行う制御部400とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学式検出装置、表示装置及び電子機器等に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、パーソナルコンピューター、カーナビゲーション装置、券売機、銀行の端末などの電子機器では、近年、表示部の前面にタッチパネルが配置された位置検出機能付きの表示装置が用いられる。この表示装置によれば、ユーザーは、表示部に表示された画像を参照しながら、表示画像のアイコン等をポインティングしたり、情報を入力することが可能になる。このようなタッチパネルによる位置検出方式としては、例えば抵抗膜方式や静電容量方式などが知られている。
【0003】
一方、投写型表示装置(プロジェクター)やデジタルサイネージ用の表示装置では、携帯電話やパーソナルコンピューターの表示装置に比べて、その表示エリアが広い。従って、これらの表示装置において、上述の抵抗膜方式や静電容量方式のタッチパネルを用いて位置検出を実現することは難しい。
【0004】
投写型表示装置用の位置検出装置の従来技術としては、例えば特許文献1、2に開示される技術が知られている。これらの位置検出装置では、温度変化などによる素子特性の変化により、検出精度の低下などが生じる。これを補正するためには、光学設計上のパラメーターや回路設計上のパラメーターを調整しなければならないなどの課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−345085
【特許文献2】特開2001−142643
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の幾つかの態様によれば、温度が変化しても安定した検出精度を得ることができる光学式検出装置、表示装置及び電子機器等を提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、照射光を出射する照射部と、前記照射光が対象物に反射することによる反射光を少なくとも受光する受光素子と、前記受光素子からの受光検出信号を増幅する増幅部と、前記増幅部が出力する信号に基づいて、前記対象物の位置特定情報を検出する検出部と、前記位置特定情報に基づいて前記対象物の位置を判定する判定部と、温度を検出する温度検出部と、前記温度検出部の検出結果に基づいて、前記増幅部が有する回路素子の回路定数を設定する処理を行う制御部とを含む光学式検出装置に関係する。
【0008】
本発明の一態様によれば、制御部が、温度検出部の検出結果に基づいて、素子特性の変化を検出し、その変化を補正するように、増幅部が有する回路素子の回路定数を設定することができる。こうすることで、温度変化によって発光素子、受光素子、回路素子等の特性が変化しても、検出特性の変化を補正することができる。その結果、例えば温度に影響されず安定した検出精度を得ることなどが可能になる。
【0009】
また本発明の一態様では、前記増幅部は、前記受光素子の検出電流を電圧に変換する電流電圧変換回路と、前記電流電圧変換回路により電圧に変換された検出信号を増幅する増幅回路と、前記増幅回路の出力ノードと前記検出部の入力ノードとの間に設けられる結合キャパシターとを含んでもよい。
【0010】
このようにすれば、増幅部により増幅された検出信号を、結合キャパシターを介して検出部に入力することができる。結合キャパシターを設けることで、検出信号の交流成分を通過させ、直流成分を遮断することができる。
【0011】
また本発明の一態様では、前記制御部は、前記温度検出部の検出結果に基づいて、前記結合キャパシターの容量値を、前記回路定数として設定してもよい。
【0012】
このようにすれば、結合キャパシターの容量値を調整することで、検出信号の信号レベルを調整することができるから、制御部は、温度検出部の検出結果に基づいて、検出信号の信号レベルを調整することができる。こうすることで、検出特性の変化を補正するように、結合キャパシターの容量値を設定することができる。
【0013】
また本発明の一態様では、前記制御部は、前記温度検出部の検出結果に基づいて、前記増幅回路の回路定数を設定してもよい。
【0014】
このようにすれば、増幅回路の回路定数を調整することで、検出信号の信号レベルを調整することができるから、制御部は、温度検出部の検出結果に基づいて、検出信号の信号レベルを調整することができる。こうすることで、検出特性の変化を補正するように、増幅回路の回路定数を設定することができる。
【0015】
また本発明の一態様では、前記検出部は、前記位置特定情報として発光電流制御情報を出力し、前記制御部は、前記発光電流制御情報の変動幅が所定の変動幅になるように、前記回路定数を設定してもよい。
【0016】
このようにすれば、制御部は、回路定数を設定することで、発光電流制御情報の変動幅を所定の変動幅に設定することができる。その結果、座標検出レンジを一定に保持することができるから、温度変化によって発光素子、受光素子、回路素子等の特性が変化しても、検出特性を安定にすることなどが可能になる。
【0017】
また本発明の一態様では、前記所定の変動幅は、前記対象物の検出精度が所望の検出精度になる変動幅であってもよい。
【0018】
このようにすれば、制御部は、回路定数を設定することで、対象物の検出精度を所望の検出精度に保つことができる。その結果、温度変化によって発光素子、受光素子、回路素子等の特性が変化しても、検出精度を安定にすることなどが可能になる。
【0019】
また本発明の一態様では、前記温度検出部は、前記照射部の周囲の温度を検出してもよい。
【0020】
このようにすれば、温度検出部は、照射部の周囲の温度変化を検出することができるから、制御部は、照射部が有する発光素子の温度変化に伴う検出特性の変化を補正するように、回路定数を設定することができる。
【0021】
また本発明の一態様では、前記温度検出部は、前記受光素子の周囲の温度を検出してもよい。
【0022】
このようにすれば、温度検出部は、受光素子の周囲の温度変化を検出することができるから、制御部は、受光素子の温度変化に伴う検出特性の変化を補正するように、回路定数を設定することができる。
【0023】
また本発明の一態様では、前記温度検出部は、前記増幅部の周囲の温度を検出してもよい。
【0024】
このようにすれば、温度検出部は、増幅部の周囲の温度変化を検出することができるから、制御部は、増幅部の温度変化に伴う検出特性の変化を補正するように、回路定数を設定することができる。
【0025】
本発明の他の態様は、上記いずれかに記載の光学式検出装置を含む表示装置及び電子機器に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】光学式検出装置の基本的な構成例。
【図2】増幅部の構成例。
【図3】図3(A)、図3(B)は、結合キャパシター及び帰還抵抗の構成例。
【図4】検出部の構成例。
【図5】第1の期間における発光電流制御を説明する図。
【図6】第2の期間における発光電流制御を説明する図。
【図7】発光電流制御情報と発光電流との関係を説明する図。
【図8】図8(A)、図8(B)は、第2期間用発光電流制御情報の温度依存性の実測例及び実測に用いた光学式検出装置の構成例。
【図9】X方向及びY方向の発光電流制御情報の実測値のプロット図。
【図10】容量値の調整による検出特性の補正を説明する図。
【図11】図11(A)、図11(B)は、照射部EUの別の構成例。
【図12】図12(A)、図12(B)は、表示装置及び電子機器の基本的な構成例。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0028】
1.光学式検出装置
図1に本実施形態の光学式検出装置の基本的な構成例を示す。本実施形態の光学式検出装置は、照射部EU、受光素子PD、増幅部100、検出部200、判定部300、温度検出部TSU及び制御部400を含む。また、照射部EUは、光源部LS1、LS2を含む。なお、本実施形態の光学式検出装置は図1の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素に置き換えたり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。例えば、照射部EUは、3個以上の光源部を含んでもよい。
【0029】
光源部LS1、LS2は、LED(発光ダイオード)等の発光素子を含み、例えば赤外光(可視光領域に近い近赤外線)を出射する。照射部EUは、光源部LS1、LS2が発光することで、対象物の位置を検出するための照射光を出射する。
【0030】
受光素子PDは、照射光が対象物に反射することによる反射光を少なくとも受光する。この受光素子PDは、例えばフォトダイオードやフォトトランジスターなどを用いることができる。
【0031】
増幅部100は、受光素子PDからの受光検出信号を増幅して、検出部200に出力する。検出部200は、増幅部100が出力する信号に基づいて、対象物の位置特定情報(発光電流制御情報LCN)を検出し、判定部300に出力する。判定部300は、検出部200が出力する位置特定情報(発光電流制御情報LCN)に基づいて、対象物の位置を判定する。なお、発光電流制御及び発光電流制御情報LCNを用いて位置関係を判定する手法については、後述する。
【0032】
ここで対象物の位置特定情報とは、対象物の位置を特定するための情報であり、例えば後述する図8(B)の検出領域RDET(XY平面)でのX、Y座標自体であってもよいし、これらのX、Y座標を取得するための情報であってもよい。また例えば位置特定情報は、後述する図11(A)、図11(B)の構成例における方向DDB(角度θ)であってもよい。
【0033】
温度検出部TSUは、光学式検出装置の周囲の温度を検出して、検出結果を制御部400に出力する。具体的には、温度検出部TSUは、例えば照射部EUの周囲の温度、受光素子PDの周囲の温度、増幅部100の周囲の温度などを検出する。なお、温度検出部TSUは、上記のいずれか1つを検出してもよいし、2つを検出してもよいし、3つを検出してもよい。さらに、上記以外の温度、例えば検出部200、判定部300、制御部400などの周囲の温度を検出してもよい。ここで周囲の温度とは、温度検出の対象となる物(例えば照射部EU等)の表面又は近傍で測定される温度であって、温度検出の対象となる物の温度であるとみなすことができる温度である。
【0034】
温度検出部TSUは、サーミスターなどの温度検出素子(温度センサー)と温度検出回路で構成することができる。或いは、温度センサーICを用いることもできる。また、温度検出部TSUは、制御部400を含む集積回路装置内(同一チップ内)に形成することもできる。
【0035】
制御部400は、温度検出部TSUの検出結果に基づいて、増幅部100が有する回路素子の回路定数CNTを設定する処理を行う。具体的には、制御部400は、温度検出部TSUからの検出温度情報に基づいて、増幅部100が有する回路素子の回路定数CNTを設定するための制御信号SADを出力する。より具体的には、この回路定数CNTは、例えば後述する結合キャパシターCAの容量値や帰還抵抗RFBの抵抗値などであって、予め制御部400に記憶されたルックアップテーブル等に従って、検出温度に対応する容量値又は抵抗値に設定される。このルックアップテーブルは、後述する発光電流制御情報の変動幅(座標検出レンジ)の温度依存性に基づいて、温度変化に伴う座標検出レンジの変化を補正するように決めることができる。
【0036】
後述するように、本実施形態の光学式検出装置によれば、温度変化に伴う発光素子(LEDなど)、受光素子PD、回路素子などの特性の変化を補償する(打ち消す)ように、増幅部100の回路定数を設定することができる。こうすることで、温度変化に伴う検出特性(座標検出レンジ、検出精度など)の変化を補正することができる。その結果、温度の影響を受けずに安定した検出特性を得ることなどが可能になる。
【0037】
図2に、本実施形態の増幅部100の構成例を示す。増幅部100は、電流電圧変換回路110、増幅回路120、結合キャパシターCA及び逆バイアス設定回路BSCを含む。なお、本実施形態の増幅部100は図2の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素に置き換えたり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
【0038】
電流電圧変換回路110は、オペアンプOPA1及び抵抗素子R1を含み、受光素子PDに流れる電流(検出電流)を電圧に変換して、例えば高電位電源電圧VDDの1/2の電圧レベルを中心とする信号(受光検出信号)を出力する。この受光検出信号は、キャパシターC1を介して増幅回路120に入力される。
【0039】
増幅回路120は、オペアンプOPA2及び抵抗素子R2、RFBを含み、受光検出信号を増幅して、例えば1/2×VDDの電圧レベル(バイアス電圧)を中心とする信号を出力ノードN1に出力する。抵抗素子RFBは、オペアンプOPA2の帰還抵抗であって、増幅回路120の増幅率(ゲイン)は、RFBの抵抗値に依存する。従って、帰還抵抗RFBの抵抗値(広義には回路定数)を可変に設定することで、検出信号の信号レベルを所望の信号レベルに設定することができる。
【0040】
結合キャパシターCAは、増幅回路120の出力ノードN1と検出部200の入力ノードN2との間に設けられ、交流成分である検出信号を通過させ、直流成分であるバイアス電圧を遮断する働きをする。結合キャパシターCAの容量値が大きいほど検出信号の信号レベル(ノードN2の電圧レベル)は大きくなり、容量値が小さいほど検出信号の信号レベルは小さくなるから、CAの容量値を可変に設定することで、検出信号の信号レベルを所望の信号レベルに設定することができる。
【0041】
逆バイアス設定回路BSCは、受光素子PD(フォトダイオード)に対して逆方向のバイアス電圧を印加する。
【0042】
図2を用いて、温度変化に伴う検出特性(座標検出レンジ、検出精度など)の変化を補正する制御について説明する。
【0043】
制御部400は、調整期間において、温度検出部TSUからの検出温度情報と予め制御部400に記憶されたルックアップテーブルとに基づいて、増幅部100が有する回路素子の回路定数CNTを設定するための制御信号SAD1、SAD2を出力する。具体的には、例えば制御信号SAD1により、結合キャパシターCAの容量値が可変に設定される。或いは、制御信号SAD2により、帰還抵抗RFBの抵抗値が可変に設定される。ルックアップテーブルにより、温度変化に伴う座標検出レンジの変化を補正するように、容量値又は抵抗値を設定することができるから、温度が変化しても安定した検出特性を得ることができる。
【0044】
例えば温度上昇などにより光源部LS1、LS2の発光強度や受光素子の検出電流が変化し、その結果として検出特性が変化しても、制御部400が、検出温度情報に基づいて、結合キャパシターCAの容量値又は帰還抵抗RFBの抵抗値を再設定することで、検出特性の変化を補正することができる。なお、座標検出レンジの温度依存性については、後で詳しく述べる。
【0045】
位置検出を行う期間(位置検出期間)では、後述するように光源部LS1、LS2を交互に発光させて発光電流制御を行う。調整期間は、温度を検出して、検出温度に対応して回路定数を調整する期間であり、例えば一定時間毎に設けることができる。具体的には、位置検出期間が開始して所定の時間が経過したタイミングで調整期間に移行する。そして調整期間終了後、再び位置検出期間が開始され、所定の時間が経過したタイミングで再び調整期間に移行し、以降これを繰り返す。このようにすることで、温度変化に追随して回路定数を調整することができる。また調整期間の時間は、位置検出期間より十分に短くすることができるから、対象物の位置検出に支障を与えることはない。
【0046】
なお、制御部400により可変に設定される回路定数としては、図2に示した結合キャパシターCA及び帰還抵抗RFBのいずれか一方でもよいし、両方でもよい。また、これら以外の抵抗素子(例えばR1、R2)の抵抗値又はキャパシター(例えばC1)の容量値であってもよい。また例えばオペアンプOPA1、OPA2に含まれる電流源の電流値であってもよい。
【0047】
ここで回路定数とは、回路を構成する素子(抵抗素子、キャパシター、トランジスターなど)の電気的特性を表す値(抵抗値、容量値、電流値など)であって、これらの値によってその回路の動作特性が決定されるものをいう。
【0048】
図3(A)、図3(B)に、回路定数が可変に設定できる結合キャパシターCA及び帰還抵抗RFBの構成例を示す。図3(A)に示す結合キャパシターCAは、容量値の異なるn(nは2以上の整数)個のキャパシターCA1〜CAnを含み、スイッチ回路(選択回路)により容量値が可変に設定される。また、図3(B)に示す帰還抵抗RFBは、抵抗値の異なるn個の抵抗素子RFB1〜RFBnを含み、スイッチ回路(選択回路)により抵抗値が可変に設定される。スイッチ回路(選択回路)は、制御部400に設けられたレジスターREGのレジスター値に基づいて制御される。なお、本実施形態の結合キャパシターCA及び帰還抵抗RFBは図3(A)、図3(B)の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素に置き換えたり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
【0049】
図4に、本実施形態の検出部200の構成例を示す。検出部200は、バッファー回路BUF、スイッチ回路SW、比較回路220、発光電流制御回路230及び駆動回路DR1、DR2を含む。
【0050】
スイッチ回路SWは、バッファー回路BUFでバッファーされた受光検出信号を、比較回路220の一方の入力ノード(+)と他方の入力ノード(−)とに切り換えて出力する。具体的には、第1の光源部LS1の発光時には入力ノード(+)に受光検出信号を出力し、第2の光源部LS2の発光時には入力ノード(−)に受光検出信号を出力する。
【0051】
比較回路220は、入力ノード(+)に入力された受光検出信号と入力ノード(−)に入力された受光検出信号とを比較して、その結果を発光電流制御回路230に出力する。具体的には、例えばLS1の発光時の受光検出信号VA1が入力ノード(+)に入力され、LS2の発光時の受光検出信号VA2が入力ノード(−)に入力された場合に、比較回路220は2つの受光検出信号の差分VA1−VA2に対応する信号を出力する。
【0052】
発光電流制御回路230は、比較回路220からの信号に基づいて光源部LS1、LS2の発光制御を行う。具体的には、比較回路220の比較結果(受光検出信号の差分)に基づいて、2つの受光検出信号(例えばVA1、VA2など)が等しくなるように、2つの光源部LS1、LS2に流れる電流(発光電流)を設定するための発光電流制御情報LCNを出力する。この発光電流制御情報LCNは、例えばLS1の発光電流を設定するための電流設定値IA1及びLS2の発光電流を設定するための電流設定値IA2を含む。なお、発光電流制御の詳細については、後述する。
【0053】
駆動回路DR1、DR2は、発光電流制御回路230からの電流設定値に基づいて、発光電流IA1、IA2を生成して光源部LS1、LS2にそれぞれ供給する。具体的には、位置検出期間に光源部LS1、LS2に発光電流IA1、IA2が交互に供給される。光源部LS1、LS2に供給される発光電流IA1、IA2の電流値は、後述する発光電流制御により制御され、対象物の位置によって変化する。
【0054】
2.位置検出の手法
本実施形態の光学式検出装置では、検出部200が出力する位置特定情報(発光電流制御情報LCN)に基づいて、対象物の位置を判定する。具体的には、判定部300は、第1期間用発光電流制御情報LCNinitと第2期間用発光電流制御情報LCNdetとに基づいて、第1、第2の光源部LS1、LS2と対象物OBとの位置関係を判定する。第1期間用発光電流制御情報LCNinitは、対象物OBが検出領域に存在しない第1の期間(初期状態期間)での発光電流制御情報であり、第2期間用発光電流制御情報LCNdetは、対象物OBが検出領域に存在する第2の期間(検出期間)での発光電流制御情報である。
【0055】
なお、検出領域とは、対象物が検出される領域であって、具体的には、例えば照射光が対象物OBに反射されることによる反射光を、受光素子PDが受光して、対象物OBを検出することができる領域である。より具体的には、受光素子PDが反射光を受光して対象物OBを検出することが可能であって、かつ、その検出精度について、許容できる範囲の精度が確保できる領域である。
【0056】
図5は、第1の期間、すなわち対象物が検出領域に存在しない期間における発光電流制御を説明する図である。図5に示すように、発光電流制御回路230は、LS1とLS2とを交互に発光させる。受光素子PDは、LS1の発光時にはLS1からの照射光LT1を受光し、LS2の発光時にはLS2からの照射光LT2を受光する。さらに受光素子PDは、太陽光などの外光(環境光)LOを受光する。なお、図5には透光部材TPを含む構成例を示すが、透光部材TPを含まない構成であってもよい。
【0057】
発光電流制御回路230は、LS1の発光時の受光結果とLS2の発光時の受光結果とが等しくなるように、発光制御を行う。具体的には、比較回路220の比較結果(受光検出信号の差分)に基づいて、差分が0に近づくようにLS1、LS2の発光電流の電流設定値IA1、IA2を設定する。そして2つの受光結果が等しくなった時の発光電流制御情報を第1期間用発光電流制御情報LCNinitとして判定部300に出力する。
【0058】
図6は、第2の期間、すなわち対象物OBが検出領域に存在する期間における発光電流制御を説明する図である。図6に示すように、発光電流制御回路230は、LS1とLS2とを交互に発光させる。受光素子PDは、LS1の発光時にはLS1からの照射光LT1aと、照射光LT1bが対象物OBに反射されることによる反射光LR1とを受光し、LS2の発光時にはLS2からの照射光LT2aと、照射光LT2bが対象物OBに反射されることによる反射光LR2とを受光する。さらに受光素子PDは、太陽光などの外光(環境光)LOを受光する。なお、図6には透光部材TPを含む構成例を示すが、透光部材TPを含まない構成であってもよい。
【0059】
第2の期間、すなわち対象物が検出領域に存在する期間での発光制御は、上述した第1の期間での発光制御と同じである。すなわち発光電流制御回路230は、LS1とLS2とを交互に発光させ、LS1の発光時の受光結果とLS2の発光時の受光結果とが等しくなるように、発光制御を行う。具体的には、比較回路220の比較結果(受光検出信号の差分)に基づいて、差分が0に近づくようにLS1、LS2の発光電流の電流設定値IA1d、IA2dを設定する。そして2つの受光結果が等しくなった時の発光電流制御情報を第2期間用発光電流制御情報LCNdetとして判定部300に出力する。
【0060】
判定部300は、第1期間用及び第2期間用発光制御情報LCNinit、LCNdetに基づいて、対象物OBの位置を判定する。具体的には、電流設定値IA1、IA2、IA1d、IA2dから、次式により光源部LS1、LS2と対象物OBとの位置関係を判定することができる。
【0061】
FR=FA1/FA2=F(LOB1)/F(LOB2)
=(IA1×IA2d)/(IA2×IA1d)
ここで、FRは距離関数F(LOB1)の値FA1と距離関数F(LOB2)の値FA2との比である。また距離関数F(LOB1)は、第1の光源部LS1に対する対象物OBの位置関係を表す距離関数であり、F(LOB2)は第2の光源部LS2に対する対象物OBの位置関係を表す距離関数である。
【0062】
この距離関数F(L)は、ある光経路Lに対する光減衰を表す関数である。距離関数F(L)は、例えば光源が点光源である場合には、距離Lの2乗に反比例する関数である。実際には、距離関数F(L)は、光源部LS1、LS2と受光素子PDとの位置関係や透光部材TPの有無などを考慮して決めることができる。
【0063】
このように、第1期間用及び第2期間用発光制御情報LCNinit、LCNdetに基づいて対象物OBの位置を判定することで、外光(環境光)LOや照射光の初期経路LT1a、LT2aなどの影響を除去することができる。
【0064】
図7は、発光電流制御情報LCNと発光電流との関係を説明する図である。図7の横軸は、10ビットのデジタル値(0〜1023)で表現した発光電流制御情報LCNを示す。また図7の縦軸は、発光電流制御回路230により制御される電流値の範囲(上限値、下限値)を示す。例えば、LCNが0の場合には、IA1は下限値に設定され、IA2は上限値に設定される。またLCNが512の場合には、IA1とIA2は共に中央値(上限値と下限値の中間)に設定され、LCNが1023の場合には、IA1は上限値に設定され、IA2は下限値に設定される。
【0065】
上述したように、発光電流制御回路230は、比較回路220の比較結果(受光検出信号の差分)に基づいて、差分が0に近づくようにLS1、LS2の発光電流の電流値IA1、IA2を調整する。すなわち、IA1、IA2のいずれか一方を増加させ、他方を減少させることで、受光検出信号の差分を0に近づける。このようにして、発光電流制御情報LCNの値は0〜1023の範囲内の1つの値に決まる。
【0066】
第2の期間、すなわち対象物OBが検出領域に存在する期間では、対象物OBの位置によって、第2期間用発光電流制御情報LCNdetの値は変化する。例えば、対象物OBが第1の光源部LS1に近く、第2の光源部LS2から遠いほど、LCNdetの値は0に近づく。IA2が大きい値に設定され、IA1が小さい値に設定されるためである。反対に、対象物OBが第2の光源部LS2に近く、第1の光源部LS1から遠いほど、LCNdetの値は1023に近づく。IA1が大きい値に設定され、IA2が小さい値に設定されるためである。
【0067】
位置検出精度は、発光電流制御情報LCNを表現するデジタル値(例えば0〜1023)の刻み(ステップ数)が多いほど、精度が高くなる。例えば、検出領域のX座標値が0〜XAの範囲であり、このX座標値に対応するLCNのステップ数がNである場合には、位置検出精度はXA/Nになる。従って、例えば図7では、N=1024である場合に、最も精度が良くなる。すなわち、対象物OBが検出領域の一端(例えばX座標値が0)に存在する時にLCNの値が0になり、対象物OBが検出領域の他端(例えばX座標値がXA)に存在する時にLCNの値が1023になる場合に、最も精度が良くなる。
【0068】
以上説明したように、対象物OBが検出領域の一端から他端に移動した際の第2期間用発光電流制御情報LCNdetの変動幅(座標検出レンジ)が大きいほど、位置検出精度が高くなる。従って、できるだけ高い検出精度を得るためには、LCNdetの変動幅(座標検出レンジ)を可能な最大の変動幅(例えば1023)に近い値に設定する。すなわち、検出精度が所望の検出精度になる変動幅を所定の変動幅とし、発光電流制御情報の変動幅をその所定の変動幅に設定する。
【0069】
3.検出特性の補正
出荷時に座標検出レンジ(LCNdetの変動幅)を可能な最大の変動幅に設定しても、装置使用時の温度変化によって座標検出レンジが変化してしまう。例えば座標検出レンジが初期設定値(出荷時の設定値)より小さくなると検出精度が低下する。また、座標検出レンジが初期設定値より大きくなり、可能な最大の変動幅を超えてしまうと、発光電流制御回路230による発光電流制御が適正に行われなくなる。
【0070】
本実施形態の光学式検出装置によれば、制御部400が増幅部100の回路定数を調整(再設定)することにより、温度変化による検出特性(座標検出レンジ、座標検出精度など)の変化を補正することができる。
【0071】
図8(A)に、第2期間用発光電流制御情報LCNdet(10ビットのデジタル値)の温度依存性の実測例を示す。この実測例は、図8(B)に示す構成例の光学式検出装置を用いて実測されたものである。この構成例では、検出領域RDETの各辺にライトガイドLG1〜LG4が設けられ、例えば光源部LS1と直線状のライトガイドLG1が1つの照射部を構成する。ライトガイドLG1〜LG4から、各辺に垂直に検出領域RDETの内側に向かう方向に照射光が出射される。対象物のX座標検出時にはLS1とLS3とを交互に発光させ、Y座標検出時にはLS2とLS4とを交互に発光させて発光電流制御を行う。
【0072】
図8(A)は、対象物OBが検出領域RDETの左上隅、すなわち図8(B)のP1の位置に存在する場合のX方向及びY方向のLCNdetを示す。図8(A)から分かるように、温度上昇に伴ってX方向のLCNdetは減少し、Y方向のLCNdetは増加する。対象物OBが存在する位置P1は、X座標値がほぼ最小になり、Y座標値がほぼ最大になる位置であるから、X座標及びY座標の検出レンジが温度上昇により増大することが分かる。
【0073】
図9は、図8(B)の構成例について、3つの温度(−20、20、60℃)で対象物OBを9箇所の位置P1〜P9に置いた場合のX方向及びY方向のLCNdetの実測値をプロットしたものである。位置P1〜P9は、図8(B)に示す検出領域RDET内の9箇所の位置である。図9から分かるように、X方向及びY方向の座標検出レンジは温度上昇に伴って増大し、また温度降下に伴って減少する。
【0074】
図10は、結合キャパシターCAの容量値の調整(再設定)による検出特性の補正を説明する図である。図10には、初期設定時の温度T1と温度上昇時の温度T2(T1<T2)とにおける座標検出レンジ(LCNdetの変動幅)の容量値依存性の一例を示す。
【0075】
例えば初期設定時に温度T1において容量値が1200pFに設定されているとする(図10のA1)。温度上昇により温度T2になると、図10のA2に示すように、座標検出レンジが増加する。この変化に対して、結合キャパシターCAの容量値を減少させることにより、図10のA3に示すように、座標検出レンジを初期設定時の値に補正することができる。
【0076】
先に図2で説明したように、制御部400は、調整期間において温度検出部TSUの検出結果と予め制御部400に記憶されたルックアップテーブルとに基づいて、回路定数(例えば結合キャパシターCAの容量値)を調整する。図10に示すように、例えば検出温度T2に対して容量値を1000pFに設定することで、座標検出レンジを初期設定時の値に補正することができる。このように予め座標検出レンジの容量依存性、温度依存性を実測し、実測値から各温度における回路定数(例えば容量値)の設定値を求めてルックアップテーブルを作成し、制御部400に記憶しておくことで、温度変化に伴う検出特性(座標検出レンジ、検出精度)の変化を補正することができる。
【0077】
以上説明したように、本実施形態の光学式検出装置によれば、温度変化によって、発光素子、受光素子、回路素子等の特性が変化しても、制御部400が温度変化に応じて増幅部100の回路定数を調整することで、検出特性(座標検出レンジ、検出精度など)の変化を補正することができる。その結果、温度の影響を受けずに安定した検出特性を得ることなどが可能になる。
【0078】
また、本実施形態の光学式検出装置では、調整期間において増幅部100の回路定数を調整することでよく、光学設計上のパラメーターや比較回路220、発光電流制御回路230の回路設計上のパラメーターを調整する必要がないから、簡素な構成で検出特性を安定化することができる。その結果、設計コスト、製造コスト等の増大を抑制しつつ、安定な検出特性を確保することなどが可能になる。
【0079】
4.照射部
本実施形態の光学式検出装置では、図8(B)に示す構成例の他に種々の構成をとることができる。例えば図11(A)に、照射部EUの別の構成例を示す。図11(A)の照射部EUは、光源部LS1、LS2と、ライトガイドLGと、照射方向設定部LEを含む。また反射シートRSを含む。そして照射方向設定部LEはプリズムシート(光学シート)PS及びルーバーフィルムLFを含む。なお、本実施形態の照射部EUは、図11(A)の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素に置き換えたり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
【0080】
光源部LS1は、図11(A)のF1に示すようライトガイドLGの一端側に設けられる。また第2の光源部LS2は、F2に示すようにライトガイドLGの他端側に設けられる。そして光源部LS1が、ライトガイドLGの一端側(F1)の光入射面に対して光源光を出射することで、照射光LT1を出射し、第1の照射光強度分布LID1を対象物の検出エリアに形成(設定)する。一方、光源部LS2が、ライトガイドLGの他端側(F2)の光入射面に対して第2の光源光を出射することで、第2の照射光LT2を出射し、第1の照射光強度分布LID1とは強度分布が異なる第2の照射光強度分布LID2を検出エリアに形成する。このように照射部EUは、検出領域RDETでの位置に応じて強度分布が異なる照射光を出射することができる。
【0081】
ライトガイドLG(導光部材)は、光源部LS1、LS2が発光した光源光を導光するものである。例えばライトガイドLGは、光源部LS1、LS2からの光源光を曲線状の導光経路に沿って導光し、その形状は曲線形状になっている。具体的には図11(A)ではライガイドLGは円弧形状になっている。なお図11(A)ではライトガイドLGはその中心角が180度の円弧形状になっているが、中心角が180度よりも小さい円弧形状であってもよい。ライトガイドLGは、例えばアクリル樹脂やポリカーボネートなどの透明な樹脂部材等により形成される。
【0082】
ライトガイドLGの外周側及び内周側の少なくとも一方には、ライトガイドLGからの光源光の出光効率を調整するための加工が施されている。加工手法としては、例えば反射ドットを印刷するシルク印刷方式や、スタンパーやインジェクションで凹凸を付ける成型方式や、溝加工方式などの種々の手法を採用できる。
【0083】
プリズムシートPSとルーバーフィルムLFにより実現される照射方向設定部LE(照射光出射部)は、ライトガイドLGの外周側に設けられ、ライトガイドLGの外周側(外周面)から出射される光源光を受ける。そして曲線形状(円弧形状)のライトガイドLGの内周側から外周側へと向かう方向に照射方向が設定された照射光LT1、LT2を出射する。即ち、ライトガイドLGの外周側から出射される光源光の方向を、ライトガイドLGの例えば法線方向(半径方向)に沿った照射方向に設定(規制)する。これにより、ライトガイドLGの内周側から外周側に向かう方向に、照射光LT1、LT2が放射状に出射されるようになる。
【0084】
このような照射光LT1、LT2の照射方向の設定は、照射方向設定部LEのプリズムシートPSやルーバーフィルムLFなどにより実現される。例えばプリズムシートPSは、ライトガイドLGの外周側から低視角で出射される光源光の方向を、法線方向側に立ち上げて、出光特性のピークが法線方向になるように設定する。またルーバーフィルムLFは、法線方向以外の方向の光(低視角光)を遮光(カット)する。
【0085】
このように図11(A)の照射部EUによれば、ライトガイドLGの両端に光源部LS1、LS2を設け、これらの光源部LS1、LS2を交互に点灯させることで、2つの照射光強度分布を形成することができる。すなわちライトガイドLGの一端側の強度が高くなる照射光強度分布LID1と、ライトガイドLGの他端側の強度が高くなる照射光強度分布LID2を交互に形成することができる。すなわち図11(B)のDD1の方向である場合に強度が最も高くなる照射光強度分布LID1と、図11(B)のDD3の方向である場合に強度が最も高くなる照射光強度分布LID2を交互に形成することができる。なお図11(B)では、ライトガイドLGの円弧形状の中心位置が、照射部EUの配置位置PEになっている。
【0086】
そして図11(B)に示すように、角度θの方向DDBに対象物OBが存在したとする。照射光強度分布LID1を形成した場合の対象物OBの位置での強度と、照射光強度分布LID2を形成した場合の対象物OBの位置での強度とは、それぞれ角度θによって変化する。従って、上述したように、光源部LS1、LS2の発光電流制御を行うことで、対象物OBの位置する方向DDB(角度θ)を特定することができる。
【0087】
5.表示装置及び電子機器
図12(A)、図12(B)に本実施形態の光学式検出装置を用いた表示装置や電子機器の基本的な構成例を示す。図12(A)、図12(B)は本実施形態の光学式検出装置を、液晶プロジェクター或いはデジタル・マイクロミラー・デバイスと呼ばれる投写型表示装置(プロジェクター)に適用した場合の例である。図12(A)、図12(B)では、互いに交差する軸をX軸、Y軸、Z軸(広義には第1、第2、第3の座標軸)としている。具体的には、X軸方向を横方向とし、Y軸方向を縦方向とし、Z軸方向を奥行き方向としている。
【0088】
本実施形態の光学式検出装置は、照射部EU、受光部RU(受光素子PD)、増幅部100、検出部200、判定部300、温度検出部TSUを含む。また本実施形態の表示装置(電子機器)は、光学式検出装置とスクリーン20(広義には表示部)を含む。さらに表示装置(電子機器)は画像投射装置10(広義には画像生成装置)を含むことができる。なお、本実施形態の光学式検出装置、表示装置、電子機器は図12(A)、図12(B)の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
【0089】
画像投射装置10は、筺体の前面側に設けられた投射レンズからスクリーン20に向けて画像表示光を拡大投射する。具体的には画像投射装置10は、カラー画像の表示光を生成して、投射レンズを介してスクリーン20に向けて出射する。これによりスクリーン20の表示エリアARDにカラー画像が表示されるようになる。
【0090】
本実施形態の光学式検出装置は、図12(B)に示すようにスクリーン20の前方側(Z軸方向側)に設定された検出領域RDETにおいて、ユーザーの指やタッチペンなどの対象物を光学的に検出する。このために光学式検出装置の照射部EUは、対象物を検出するための照射光(検出光)を出射する。具体的には、照射方向に応じて強度(照度)が異なる照射光を放射状に出射する。これにより検出領域RDETには、照射方向に応じて強度が異なる照射光強度分布が形成される。なお検出領域RDETは、スクリーン20(表示部)のZ方向側(ユーザー側)において、XY平面に沿って設定される領域である。
【0091】
なお、図12(A)では、照射部EUとして図11(A)の構成例を用いているが、他の構成の照射部EU(例えば図8(B)に示した構成例)を用いてもよい。
【0092】
受光部RUは、照射部EUからの照射光が対象物に反射されることによる反射光を受光する。この受光部RUは、例えばフォトダイオードやフォトトランジスターなどの受光素子PDにより実現できる。この受光部RUには増幅部100が例えば電気的に接続されている。
【0093】
増幅部100は、受光素子PDの受光検出信号を増幅し、増幅された信号を検出部200に出力する。
【0094】
検出部200は、増幅部100が出力する信号に基づいて、対象物の位置特定情報を検出し、判定部300に出力する。また検出部200は、照射部EUが有する光源部及び参照光源部の発光制御などを行う。この検出部200は照射部EUに電気的に接続されている。
【0095】
判定部300は、検出部200が出力する位置特定情報に基づいて、対象物の位置を判定する。判定部300の機能は、集積回路装置やマイクロコンピューター上で動作するソフトウェアなどにより実現できる。
【0096】
温度検出部TSUは、例えば照射部EUの周囲の温度を検出して、検出結果を制御部400に出力する。
【0097】
制御部400は、温度検出部TSUからの検出温度情報に基づいて、増幅部100が有する回路素子の回路定数を調整する処理を行う。こうすることで、温度変化による検出特性の変化を補正することができる。
【0098】
なお本実施形態の光学式検出装置は、図12(A)に示す投写型表示装置には限定されず、各種の電子機器に搭載される様々な表示装置に適用できる。また本実施形態の光学式検出装置を適用できる電子機器としては、パーソナルコンピューター、カーナビゲーション装置、券売機、携帯情報端末、或いは銀行の端末などの様々な機器を想定できる。この電子機器は、例えば画像を表示する表示部(表示装置)や、情報を入力するための入力部や、入力された情報等に基づいて各種の処理を行う処理部などを含むことができる。
【0099】
なお、以上のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、光学式検出装置、表示装置及び電子機器の構成、動作も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0100】
EU 照射部、RU 受光部、PD 受光素子、ARD 表示エリア、
LT1、LT2 照射光、LR1、LR2 反射光、LS1、LS2 光源部、
OB 対象物、CNT 回路定数、CA 結合キャパシター、RFB 帰還抵抗、
RDET 検出領域、TSU 温度検出部、
LCNinit 第1期間用発光電流制御情報、
LCNdet 第2期間用発光電流制御情報、TP 透光部材、
LG1〜LG4 ライトガイド、RS 反射シート、
PS プリズムシート(光学シート)、LF ルーバーフィルム、
LE 照射方向設定部、
LID1 第1の照射光強度分布、LID2 第2の照射光強度分布、
10 画像投射装置、20 スクリーン、100 増幅部、110 電流電圧変換回路、
120 増幅回路、200 検出部、220 比較回路、230 発光電流制御回路、
300 判定部、400 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射光を出射する照射部と、
前記照射光が対象物に反射することによる反射光を少なくとも受光する受光素子と、
前記受光素子からの受光検出信号を増幅する増幅部と、
前記増幅部が出力する信号に基づいて、前記対象物の位置特定情報を検出する検出部と、
前記位置特定情報に基づいて前記対象物の位置を判定する判定部と、
温度を検出する温度検出部と、
前記温度検出部の検出結果に基づいて、前記増幅部が有する回路素子の回路定数を設定する処理を行う制御部とを含むことを特徴とする光学式検出装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記増幅部は、
前記受光素子の検出電流を電圧に変換する電流電圧変換回路と、
前記電流電圧変換回路により電圧に変換された検出信号を増幅する増幅回路と、
前記増幅回路の出力ノードと前記検出部の入力ノードとの間に設けられる結合キャパシターとを含むことを特徴とする光学式検出装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記制御部は、前記温度検出部の検出結果に基づいて、前記結合キャパシターの容量値を、前記回路定数として設定することを特徴とする光学式検出装置。
【請求項4】
請求項2又は3において、
前記制御部は、前記温度検出部の検出結果に基づいて、前記増幅回路の回路定数を設定することを特徴とする光学式検出装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記検出部は、前記位置特定情報として発光電流制御情報を出力し、
前記制御部は、前記発光電流制御情報の変動幅が所定の変動幅になるように、前記回路定数を設定することを特徴とする光学式検出装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記所定の変動幅は、前記対象物の検出精度が所望の検出精度になる変動幅であることを特徴とする光学式検出装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかにおいて、
前記温度検出部は、前記照射部の周囲の温度を検出することを特徴とする光学式検出装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかにおいて、
前記温度検出部は、前記受光素子の周囲の温度を検出することを特徴とする光学式検出装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかにおいて、
前記温度検出部は、前記増幅部の周囲の温度を検出することを特徴とする光学式検出装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の光学式検出装置を含むことを特徴とする表示装置。
【請求項11】
請求項1乃至9のいずれかに記載の光学式検出装置を含むことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−37260(P2012−37260A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−175114(P2010−175114)
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】