説明

光学材料用硬化性組成物及び光導波路

【課題】本発明の目的は、耐熱性、耐湿性、通信波長における透明性(低光損失性)を同時に満足する、特に、光導波路用材料として優れた、光学材料用硬化性組成物及び該組成物を硬化させて得られた部材を備えてなる光導波路を提供することにある。
【解決手段】本発明の光学材料用硬化性組成物は、必須の構成成分として、(A)特定のケイ素含有重合体;(B)特定のエポキシ樹脂;及び(C):エネルギー線感受性カチオン重合開始剤を含有してなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学材料用硬化性組成物に関し、更に詳しくは、種々の光学部品、光集積回路、光配線板、光導波路等に利用できる光学材料用硬化性組成物及び該組成物を硬化させて得られた部品を備えてなる光導波路に関する。
【背景技術】
【0002】
光導波路は、例えば、基板の表面もしくは基板表面直下に、周囲よりわずかに屈折率の高い部分を作ることにより光を閉じ込め、光の合波・分波やスイッチングなどを行う特殊な光学部品である。具体的には、通信や光情報処理の分野で有用な光合分波回路、周波数フィルター、光スイッチ又は光インターコネクション部品等が挙げられる。例えば、時間分割された信号を異なる波長において伝送するWDMシステムは、高度情報化社会に必要な高速大容量通信を実現できるシステムとして有望視されているが、このWDMシステムにおいてキーとなる光デバイスは、光源、光増幅器、光合分波器、光スイッチ、波長可変フィルター、波長変換器などが挙げられる。
光導波路デバイスは、光ファイバー部品と比較して、精密に設計された導波回路を基に高機能をコンパクトに実現できること、量産が可能であること、多種類の光導波路を1つのチップに集積可能であること等の利点が挙げられる。
【0003】
従来、光導波路用材料としては、透明性に優れ、光学異方性の小さい無機ガラスが主に用いられてきた。しかし、無機ガラスは重く、破損し易く、生産コストが高い等の問題を有しており、最近では、無機ガラスの代わりに、例えば0.85μmなどの可視光域において、また、赤外領域である1.3〜1.55μm等の通信波長で透明な高分子材料を使って、光導波路部品を製造しようとする動きが活発化してきている。
【0004】
例えば、特許文献1には、必須の構成成分として、エポキシ基を有し、少なくとも3つの結合元素が酸素原子であるケイ素原子を含み、Si−R基(Rは、アルキル基、フェニル基、アルキルフェニル基若しくはフェニルアルキル基又はR中の水素原子の一部若しくは全部がハロゲン化若しくは重水素化された、アルキル基、フェニル基、アルキルフェニル基若しくはフェニルアルキル基)を有し、Si−OH基を有さない、重量平均分子量500〜100万のケイ素含有重合体及び硬化触媒を含有することを特徴とする光学材料用硬化性組成物及びこれを硬化させた光導波路が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−10849号公報 特許請求の範囲
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1にみられるようなエポキシ基を有するケイ素含有重合体をマクロモノマーとして用いた光学材料用硬化性組成物は、耐熱性や通信波長における透明性(低光損失性)などに優れ、耐湿性についてもある程度良好なものの、近年の光導波路の作製においては更に高温多湿な条件で作製されており、もはや耐湿性においては不十分なものであった。
【0007】
従って、本発明の目的は、耐熱性、耐湿性、通信波長における透明性(低光損失性)を同時に満足する、特に、光導波路用材料として優れた、光学材料用硬化性組成物及び該組成物を硬化させて得られた部材を備えてなる光導波路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、上記課題を解決することができ、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、必須の構成成分として、
(A):エポキシ基を有し、少なくとも3つの結合元素が酸素原子であるケイ素原子を含み、Si−R基(Rは、アルキル基、フェニル基、アルキルフェニル基若しくはフェニルアルキル基又はR中の水素原子の一部若しくは全部がハロゲン化若しくは重水素化された、アルキル基、フェニル基、アルキルフェニル基若しくはフェニルアルキル基を表わす。)並びにSi−OR’基(R’は、アルキル基、フェニル基、アルキルフェニル基若しくはフェニルアルキル基又はR’中の水素原子の一部若しくは全部がハロゲン化若しくは重水素化された、アルキル基、フェニル基、アルキルフェニル基若しくはフェニルアルキル基を表わす)を有し、重量平均分子量1000〜100万のケイ素含有重合体;
(B):下記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂
【化1】

(式中、X及びYは、同一でも異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、フルオロアルキル基、パーフルオロアルキル基、フェニル基、アルキルフェニル基、フルオロフェニル基、パーフルオロフェニル基、フルオロアルキルフェニル基、パーフルオロアルキルフェニル基から選択される一価の基を表わし、nは、正の数であり、R〜R18は、水素原子、ハロゲン原子、あるいは酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでも良い炭化水素基、または置換基を有していてもよいアルコキシ基を表わす。);及び
(C):エネルギー線感受性カチオン重合開始剤
を含有する光学材料用硬化性組成物である。
【0009】
また、本発明の光学材料用硬化性組成物は、(D):下記一般式(2)で表されるエポキシ樹脂
【化2】

(式中、R19、R20は、同一でも異なっていてもよく、水素、炭素原子数1〜4のアルキル基を表わす。)
を含有していてもよい。
【0010】
更に、本発明は、上記の光学材料用硬化性組成物を硬化させ形成したコアを有することを特徴とする光導波路である。
【0011】
また、本発明は、上記の光学材料用硬化性組成物を硬化させ形成したクラッドを有する上記の光導波路である。
【0012】
更に、本発明は、上記の光学材料用硬化性組成物を硬化させコアを形成する工程を有する光導波路の製造方法である。
【0013】
また、本発明は、上記の光学材料用硬化性組成物を硬化させクラッドを形成する工程を有する上記の光導波路の製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の効果は、耐熱性、耐湿性、通信波長における透明性(低光損失性)を同時に満足する、特に、光導波路用材料として優れた、光学材料用硬化性組成物及び該組成物を硬化させて得られた部品を備えてなる光導波路を提供したことにある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(A)成分:ケイ素含有重合体
まず、本発明の光学材料用硬化性組成物の必須の構成成分(A)であるケイ素含有重合体について説明する。
本発明の光学材料用硬化性組成物に用いられるケイ素含有重合体は、その構造中に、エポキシ基を有し、少なくとも3つの酸素原子に結合しているケイ素原子を有している。
【0016】
更に、本発明で用いられるケイ素含有重合体は、その構造中にSi−R基を有しており、Rは、アルキル基、フェニル基、アルキルフェニル基若しくはフェニルアルキル基又はR中の水素原子の一部若しくは全部がハロゲン化若しくは重水素化されたアルキル基、フェニル基、アルキルフェニル基若しくはフェニルアルキル基である。
【0017】
ここで、近赤外領域の透明性の点から、R中の水素原子の一部若しくは全部がハロゲン化若しくは重水素化されていることが好ましい。ハロゲン化は、フッ素化が好ましく、具体的には、3,3,3−トリフルオロプロピル基、ペンタフルオロフェニル基等が好ましい。重水素化されている基としては、重水素化フェニル基が好ましい。
【0018】
また、本発明で用いられるケイ素含有重合体は、その構造中にSi−OR’基を有しており、R’は、アルキル基、フェニル基、アルキルフェニル基若しくはフェニルアルキル基又はR’中の水素原子の一部若しくは全部がハロゲン化若しくは重水素化された、アルキル基、フェニル基、アルキルフェニル基若しくはフェニルアルキル基である。
【0019】
なお、本発明で用いられるケイ素含有重合体の重量平均分子量は、ポリスチレン換算で、1000から100万の範囲内であり、好ましくは1000から50万の範囲内である。ここで、ケイ素含有重合体の重量平均分子量が1000より小さいと望ましい物性が得られず(熱重量減温度の低下)、100万より大きいと、やはり充分な物性が得られない(光散乱が発生したり、高粘度となってハンドリングが困難になり、生産性が低下したりする)ために好ましくない。
【0020】
本発明の光学材料用硬化性組成物に用いられるケイ素含有重合体のエポキシ当量(分子量をエポキシ基数で割った値)は、特に限定されるものではないが、好ましくはエポキシ当量100〜2000が良い。
【0021】
また、本発明の光学材料用硬化性組成物に用いられるケイ素含有重合体は、ケイ素以外の原子として、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、リン、チタン、鉄、ジルコニウム、ニオブ、スズ、テルル、タンタル、ゲルマニウムからなる群から選ばれる原子を1種又は2種以上含有してもよく、特に、ホウ素、アルミニウム、リン、チタン、ジルコニウム、スズ、ゲルマニウムが好ましい。これら原子の導入には、アルコキシシランまたはクロロシランと、他の原子のアルコラートを併用して加水分解・縮合反応を行うか、他の原子の錯体で処理すればよい。
【0022】
ケイ素含有重合体へのエポキシ基の導入方法
<加水分解・縮合反応>
エポキシ基を有する、アルコキシシラン及び/又はクロロシランの加水分解・縮合反応により、ケイ素含有重合体へエポキシ基を導入することができる。
<ヒドロシリル化反応>
シラン基(Si−H)を有するアルコキシシラン及び/又はシラン基(Si−H)を有するクロロシラン、又はこれらの少なくとも1種の重合体と、ビニル基を有するエポキシ化合物(例えばビニルシクロヘキセンオキシド等)とのヒドロシリル化反応により、ケイ素含有重合体へエポキシ基を導入することができる。或いは、ビニル基(−CH=CH)を有するアルコキシシラン及び/又はビニル基(−CH=CH)を有するクロロシラン、又はこれらの少なくとも1種の重合体と、シラン基(Si−H)を有するエポキシ化合物とのヒドロシリル化反応により、導入することもできる。
より具体的には、シラン基(Si−H)を有する、アルコキシシラン及び/又はクロロシランの加水分解・縮合反応により得られた重合体と、ビニル基を有するエポキシ化合物とをヒドロシリル化反応に供することが好ましい。また、ビニル基(−CH=CH)を有する、アルコキシシラン及び/又はクロロシランの加水分解・縮合反応により得られた重合体と、シラン基を有するエポキシ化合物(例えばグリシドキシジメチルシラン)とを、ヒドロシリル化反応に供することにより導入することができる。
【0023】
なお、これらエポキシ基導入の方法はいずれを用いてもよく、併用することもできる。
【0024】
ケイ素含有重合体の製造方法
上述のように、本発明の光学材料用硬化性組成物に使用される(A)成分のケイ素含有重合体は、アルコキシシラン及び/又はクロロシランの加水分解・縮合反応の際、エポキシ基を有する、アルコキシシラン及び/又はクロロシランを存在させることにより製造することができる。
この場合、エポキシ基を有する、アルコキシシラン及び/又はクロロシランだけで加水分解・縮合反応を行ってもよいが、物性の点から、他のアルコキシシランと混合し、加水分解・縮合反応を行うことが好ましい。
【0025】
また、本発明の光学材料用硬化性組成物に使用される(A)成分のケイ素含有重合体は、アルコキシシラン及び/又はクロロシランの加水分解・縮合反応の際、シラン基を有するアルコキシシラン及び/又はシラン基を有するクロロシランを存在させ、シラン基を有する重合体を形成し、その後、該重合体と、ビニル基を有するエポキシ化合物(例えばビニルシクロヘキセンオキシド等)とをヒドロシリル化反応に供し、製造することができる。
別法として、アルコキシシラン及び/又はクロロシランの加水分解・縮合反応の際、ビニル基を有するアルコキシシラン及び/又はビニル基を有するクロロシランを存在させ、ビニル基を有する重合体を形成し、その後、該重合体と、シラン基を有するエポキシ化合物とを、ヒドロシリル化反応に供し、製造することができる。
なお、シラン基(Si−H)とビニル基(−CH=CH)のヒドロシリル化反応により、本発明の光学材料用硬化性組成物で用いられるケイ素含有重合体を得る場合、白金触媒等の従来公知の触媒を使用してヒドロシリル化反応を行なえばよい。
【0026】
ヒドロシリル化反応によって、ケイ素含有重合体へエポキシ基を導入するために用いるエポキシ化合物としては、エポキシ基とビニル基を有する化合物又はエポキシ基とシラン基を有する化合物であればよい。具体的には、ビニルシクロへキセンオキシド、グリシドキシジメチルシラン等が挙げられる。
【0027】
本発明の光学材料用硬化性組成物に用いられるケイ素含有重合体を得るための、アルコキシシランの加水分解・縮合反応は、いわゆるゾル・ゲル反応を行えばよく、ゾル・ゲル反応としては、無溶媒もしくは溶媒中で、酸又は塩基等の触媒で加水分解・縮合反応を行う方法が挙げられる。ここで用いる溶媒は、特に限定されず、具体的には、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、トルエン等が挙げられ、これらの1種を用いることも、2種以上を混合して用いることもできる。
【0028】
上記アルコキシシランの加水分解縮合反応は、アルコキシシランが、水による加水分解により、シラノール基(Si−OH)を生成し、この生成したシラノール基同士又はシラノール基とアルコキシ基が縮合することにより進む。この反応を進ませるためには、適量の水を加えることが好ましく、水は溶媒中に加えてもよく、触媒を水に溶解して加えてもよい。また、空気中の水分あるいは、溶媒中に含まれる微量の水分によっても加水分解反応は進む。
【0029】
上記加水分解・縮合反応で用いられる酸、塩基等の触媒は、加水分解・縮合反応を促進するものであれば、特に限定されず、具体的には、塩酸、リン酸、硫酸等の無機酸類;酢酸、p−トルエンスルホン酸、リン酸モノイソプロピル等の有機酸類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア等の無機塩基類;トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアミン化合物類;テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタンエステル類;ジブチル錫ラウレート、オクチル酸錫等の錫カルボン酸塩類;トリフルオロボロン等のホウ素化合物類;鉄、コバルト、マンガン、亜鉛等の金属の塩化物やナフテン酸塩あるいはオクチル酸塩等の金属カルボン酸塩類;アルミニウムトリスアセチルアセテート等のアルミニウム化合物等が挙げられ、これらの1種を用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0030】
酸触媒を加えて、酸性下(pH7以下)で反応を進ませた後、塩基触媒を加えて塩基性下(pH7以上)で反応を行う方法が好ましい例として挙げられる。
【0031】
なお、上記加水分解・縮合反応を行うときには、攪拌することが好ましく、また加熱することで反応を促進することができる。
【0032】
加水分解・縮合反応の順序は特に限定されず、例えば、エポキシ基を導入するために、エポキシ基を有するアルコキシシランを使用する場合、エポキシ基を有するアルコキシシランと他のアルコキシシランを両者混合して、加水分解・縮合反応を行ってもよく、単独で、ある程度加水分解・縮合反応を行った後、他を加えてさらに加水分解・縮合反応を行ってもよい。
【0033】
アルコキシシラン以外にクロロシランを使用する場合もアルコキシシランと同様に加水分解縮合反応を行なえばよい。
【0034】
加水分解縮合反応で生成したケイ素含有重合体を得るためには、反応溶媒、水、触媒を除去すればよく、例えば、ブタノール等の溶媒を加えて溶媒抽出後、抽出溶媒を窒素気流下で減圧留去すればよい。
【0035】
また、本発明の光学材料用硬化性組成物に用いられるケイ素含有重合体は、アルコキシシラン、クロロシラン以外に、ケイ酸ナトリウムからナトリウムをイオン交換等で除去後、二酸化ケイ素の縮合物を利用することもできる。
【0036】
<アルコキシシラン、クロロシラン>
本発明の光学材料用硬化性組成物に用いられる(A)成分のケイ素含有重合体の製造に使用されるアルコキシシランまたはクロロシランは、分子中に加水分解・縮合反応をするアルコキシ基を有するか、Si−Cl基を有すればよく、具体的には、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメトキシメチルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルビニルメトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ―(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、N―β(アミノエチル)γ―アミノプロピルトリメトキシシラン、N―β(アミノエチル)γ―アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ―アミノプロピルトリエトキシシラン及びこれらの各アルコキシ基の代わりにクロル化物、さらには、これらのアルコキシ基以外の基の水素原子の一部又は全部がハロゲン化(特にフッ素化)、又は重水素化されているものが挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0037】
特に近赤外領域の透明性の点から、一部または全部がハロゲン化(特に、フッ素化)もしくは重水素化されているものを使用するのが好ましい。具体的には、重水素化フェニルトリメトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン等が好ましく用いられる。また、エポキシ基の導入のために、シラン基(Si−H)、ビニル基(−CH=CH)、ビニルシラン基(Si−CH=CH)を有するものが好ましい。
【0038】
<エポキシ基を有するアルコキシシラン>
本発明の光学材料用硬化性組成物に用いられるケイ素含有重合体でエポキシ基導入のために使用されるエポキシ基を有するアルコキシシランは、分子中にエポキシ基を持っていればよく、具体的にはγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0039】
3,4−エポキシシクロヘキシル基を有するアルコキシシランは、温和な条件で(他のアルコキシシランも用いる場合は、他のアルコキシシランとは別釜の温和な条件で)加水分解反応を行い、液性を中性またはアルカリ性にした後に反応液を混合して加熱重縮合して共重合体を得ることが、熱重量減温度を向上する観点から好ましい。
【0040】
なお、これらのエポキシ基は、途中に酸素原子を介さずにケイ素原子に結合していることが好ましい。また、特に光硬化性の点から、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランが好ましい。
【0041】
<エポキシ基を有するクロロシラン>
本発明の光学材料用硬化性組成物に用いられるケイ素含有重合体で、エポキシ基導入のために使用されるエポキシ基を有するクロロシランは、分子中にエポキシ基を持っていればよい。
【0042】
<加水分解性エステル化合物処理>
また、本発明の光学材料用硬化性組成物に用いられる(A)成分のケイ素含有重合体を、あるいはケイ素含有重合体を得るために行なった加水分解・縮合反応後の溶液を、そのまま或いは脱触媒処理を行ってから、トリメチルクロロシラン等のクロロシラン化合物、あるいは加水分解性エステル化合物で処理してもよい。特に加水分解性エステル化合物で処理することにより、ケイ素含有重合体中のシラノール基(Si−OH)を封止してSi−OR’とすることが好ましい。
【0043】
加水分解性エステル化合物の例としては、オルト蟻酸エステル、オルト酢酸エステル、テトラアルコキシメタン、炭酸エステルなどが挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用すればよい。とりわけオルト蟻酸トリアルキルエステル、テトラアルコキシメタン等が好ましい。
【0044】
加水分解性エステルでの処理方法は、ケイ素含有重合体又はケイ素含有重合体と溶媒との混合物又はケイ素含有重合体を含有する光学材料組成物に、過剰量の加水分解性エステルを加えればよく、その時攪拌、加熱をすることが好ましい。処理後、そのまま使用するか、或いは窒素気流下、加熱減圧して、未反応の加水分解性エステルを除去処理すればよい。この処理によって、シラノール基がなくなり、保存安定性や透明性がよくなる。
【0045】
本発明の光学材料用硬化性組成物に用いられる(A)成分のケイ素含有重合体は、全有機成分(ケイ素を除く成分)中の割合に対するフェニル基の割合が、85質量%以下、メチル基の割合が、85質量%以下の範囲内であることが好ましい。フェニル基が多いほど耐熱温度は向上するが、室温での粘度が高くなり、ハンドリング性が低下する。メチル基を多く含有するほど室温での粘度が低くなるが、多すぎると耐熱性が低下するために好ましくない。
【0046】
なお、上記(A)成分は、上記した1種または2種以上が使用できる。
【0047】
(B)成分:エポキシ樹脂
本発明の光学材料用硬化性組成物に使用される(B)成分のエポキシ樹脂は、下記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂である。
【化3】

(式中、X及びYは、同一でも異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、フルオロアルキル基、パーフルオロアルキル基、フェニル基、アルキルフェニル基、フルオロフェニル基、パーフルオロフェニル基、フルオロアルキルフェニル基、パーフルオロアルキルフェニル基から選択される一価の基を表わし、nは、正の数であり、R〜R18は、水素原子、ハロゲン原子、あるいは酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでも良い炭化水素基、または置換基を有していてもよいアルコキシ基を表わす。)
【0048】
(B)成分は分子構造が剛直であるために、得られた硬化物は高いガラス転移点を示す。また、硬化に伴って起こる収縮の割合が小さい。パーフルオロ基を含むものは低分極性であるために、硬化物の吸水性を低減する効果を有する。
【0049】
なお、(B)成分のR〜R18として好ましいのは水素原子である。またX、Yとして好ましいのはメチル基、パーフルオロメチル基であり、nとして好ましいのは1〜3の数である。
【0050】
このような好ましい化合物の具体例としては、例えば、2,2−ビス(3,4−エポキシシクロへキシル)プロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル−2,2−ビス(3,4−エポキシシクロへキシル)プロパンなどが挙げられる。
なお、(B)成分は1種または2種以上の化合物が使用できる。
【0051】
(A)成分と(B)成分の好ましい使用割合(質量比)は、(A):(B)=10:90〜90:10、より好ましくは20:80〜80:20、更に好ましくは40:60〜60:40の範囲内である。
【0052】
本発明の光学材料用硬化性組成物に使用される(C)成分は、エネルギー線感受性カチオン重合開始剤である。即ち、エネルギー線の照射によってカチオン重合を開始させる物質を放出させることが可能な化合物であり、特に限定されるものではないが、好ましくは、エネルギー線の照射によってルイス酸を放出するオニウム塩である復塩またはその誘導体が好ましい。
【0053】
かかる化合物の代表的なものとしては、次の一般式[A]m+[B]m−で表される陽イオンと陰イオンの塩を挙げることができる。ここで、陽イオン[A]m+はオニウムであるのが好ましく、その構造は、例えば、次の一般式[(R21Q]m+で表すことができる。なお、R21は、炭素数が1〜60の範囲内であり、炭素原子以外の原子をいくつ含んでもよい有機の基である。aは、1〜5なる整数である。a個のR21は各々独立で、同一でも異なっていてもよい。また、少なくとも1つは、芳香環を有する上記の如き有機の基であることが好ましい。Qは、S、N、Se、Te、P、As、Sb、Bi、O、I、Br、Cl、F、N=Nからなる群から選ばれる原子あるいは原子団である。また、陽イオン[A]m+中のQの原子価をqとしたとき、m=a−qなる関係が成り立つことが必要である(但し、N=Nは原子価0として扱う)。
【0054】
また、陰イオン[B]m−は、ハロゲン化物錯体であるのが好ましく、その構造は、例えば、次の一般式[LXm−で表すことができる。なお、Lは、ハロゲン化物錯体の中心原子である金属または半金属(Metalloid)であり、B、P、As、Sb、Fe、Sn、Bi、Al、Ca、In、Ti、Zn、Sc、V、Cr、Mn、Co等である。Xは、ハロゲン原子である。bは、3〜7なる整数である。また、陰イオン[B]m−中のLの原子価をpとしたとき、m=b−pなる関係が成り立つことが必要である。
【0055】
上記一般式で表される陰イオン[LXm−の具体例としては、テトラフルオロボレート(BF、ヘキサフルオロフォスフェート(PF、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF、ヘキサフルオロアルセネート(AsF、ヘキサクロロアンチモネート(SbCl等が挙げられる。
【0056】
また、陰イオンBm−は、[LXb−1 (OH)]m−で表される構造のものも好ましく用いることができる。なお、L、X、bは、上記と同意義を有する。また、その他用いることができる陰イオンとしては、過塩素酸イオン(ClO、トリフルオロメチル亜硫酸イオン(CFSO、フルオロスルホン酸イオン(FSO、トルエンスルホン酸陰イオン、トリニトロベンゼンスルホン酸陰イオン等が挙げられる。
【0057】
本発明では、このようなオニウム塩の中でも、下記のイ)〜ハ)の芳香族オニウム塩を使用するのが特に有効である。これらの中から、その1種を単独で、または2種以上を混合して使用することができる:
イ)フェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、4−メトキシフェニルジアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−メチルフェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェートなどのアリールジアゾニウム塩;
ロ)ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジ(4−メチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェートなどのジアリールヨードニウム塩;
ハ)トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4,4’−ビス(ジフェニルスルフォニオ)フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモネート、4,4’−ビス(ジフェニルスルフォニオ)フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロホスフェート、4,4’−ビス[ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ]フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモネート、4,4’−ビス[ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ]フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロホスフェート、4−[4’−(ベンゾイル)フェニルチオ]フェニル−ジ−(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−[4’−(ベンゾイル)フェニルチオ]フェニル−ジ−(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェートなどのトリアリールスルホニウム塩。
【0058】
また、その他好ましいものとしては、(η−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)〔(1,2,3,4,5,6,−η)−(1−メチルエチル)ベンゼン〕−アイアン−ヘキサフルオロホスフェート等の鉄−アレーン錯体や、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム、トリス(エチルアセトナトアセタト)アルミニウム、トリス(サリチルアルデヒダト)アルミニウムなどのアルミニウム錯体とトリフェニルシラノールなどのシラノール類との混合物なども挙げられる。
【0059】
これらの中でも実用面と光感度の観点から、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、鉄−アレーン錯体を用いることが好ましい。
【0060】
なお、(C)成分のエネルギー線感受性カチオン重合開始剤の配合量は、(A)成分、(B)成分、及び後述の(D)成分を含む場合には(D)成分の合計質量に対して、0.05〜30質量%であり、好ましくは0.5〜10質量%である。この量が少なすぎると感度が悪くなり、多すぎると硬化性が悪化するとともに接着性の低下、硬化物の着色等の問題が生じやすい。
【0061】
本発明の光学材料用硬化性組成物は、更に(D)成分として下記一般式(2)で表されるエポキシ樹脂を含有することが好ましい:
【化4】

(式中、R19、R20は、同一でも異なっていてもよく、水素、炭素原子数1〜4のアルキル基を表わす。)
【0062】
19、R20としては好ましくはいずれも水素であることがよい。具体的には、3,4−エポキシシクロへキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートが好ましい。
【0063】
(D)成分を含有すると、室温での粘度を低下させることができるので、上記(A)成分として、より高粘度のものを使用することができるので好ましい。
【0064】
なお、(D)成分の好ましい使用割合は、(A)成分100質量部に対して10〜60質量部、より好ましくは15〜50質量部がよい。ここで、(D)成分の使用割合が10質量部未満では、その添加効果が出現せず、また、60質量部を超えると、プロセス耐性、耐環境性が悪化する可能性が高まるため好ましくない。
【0065】
本発明の光学材料用硬化性組成物には、必須ではないが本発明の効果を阻害しない範囲内で所望により、溶媒、他のカチオン重合性有機物質、酸拡散制御剤、光増感剤、熱可塑性高分子化合物、充填剤などを添加することができる。以下、これらについて説明する。
【0066】
溶剤としては、上記(A)成分、(B)成分、(C)成分並びに(D)成分の全てに溶解性を有するものでれば、特に限定されないが、沸点が80〜200℃のものが推奨される。
具体的には、イソプロパノール、t−ブタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、メチルエーテル、2−メトキシ−2−プロパノールアセテート、メトキシ−2−プロパノールアセテート、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、等が挙げられる。このような有機溶媒は単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。
ただし、溶剤を用いる場合、溶剤が残存することにより、硬化物の性能が変わる可能性がある。溶剤の配合量は、性状や溶解性、粘度により異なるが、(A)成分〜(D)成分の合計質量に対して1〜1000質量%が好ましく、1〜500質量%がより好ましい。
【0067】
他のカチオン重合性有機物質としては、例えば、エポキシ化合物[上記(A)成分、(B)成分、(D)成分に該当するものを除く]、オキセタン化合物、環状エーテル化合物、環状ラクトン化合物、環状チオエーテル化合物、スピロオルトエステル化合物、ビニルエーテル化合物などであり、これらの1種類または2種類以上を使用することができる。中でも入手するのが容易であり、取扱いに便利なエポキシ化合物が適している。かかるエポキシ化合物としては、芳香族エポキシ化合物、脂環族エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物などが挙げられる。
上記芳香族エポキシ化合物の具体例としては、少なくとも1個の芳香環を有する多価フェノール、またはそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、またはこれらに更にアルキレンオキサイドを付加させた化合物のグリシジルエーテルやエポキシノボラック樹脂などが挙げられる。
また、上記脂環族エポキシ化合物の具体例としては、少なくとも1個の脂環族環を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテルまたはシクロへキセンやシクロペンテン環含有化合物を酸化剤でエポキシ化することによって得られるシクロへキセンオキサイドやシクロペンテンオキサイド含有化合物が挙げられる。例えば、水素添加ビスフェノールAグリシジルエーテル、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロへキセンジオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロへキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロへキシルカルボキシレート、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールジ(3,4−エポキシシクロへキシルメチル)エーテル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルへキシル等が挙げられる。
さらに、上記脂肪族エポキシ化合物の具体例としては、脂肪族多価アルコールまたはそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、グリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレートのビニル重合により合成したホモポリマー、グリシジルアクリレートとその他のビニルモノマーとのビニル重合体により合成したコポリマー等が挙げられる。代表的な化合物としては、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ソルビトールのテトラグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールのヘキサグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテルなどの多価アルコールのグリシジルエーテル、またはプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステルが挙げられる。さらに、脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテルやフェノール、クレゾール、ブチルフェノール、また、これらにアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル、高級脂肪酸のグリシジルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシ化アマニ油、エポキシ化ポリブタジエン等が挙げられる。
エポキシ化合物以外の具体例としては、トリメチレンオキサイド、3,3−ジメチルオキセタン、3,3−ジクロロメチルオキセタン等のオキセタン化合物、テトラヒドロフラン、2,3−ジメチルテトラヒドロフラン等のトリオキサン、1,3−ジオキソラン、1,3,6−トリオキサシクロオクタン等の環状エーテル化合物、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン等の環状ラクトン化合物、エチレンスルフィド等のチイラン化合物、トリメチレンスルフィド、3,3−ジメチルチエタン等のチエタン化合物、テトラヒドロチオフェン誘導体等の環状チオエーテル化合物、エポキシ化合物とラクトンとの反応によって得られるスピロオルトエステル化合物、エチレングリコールジビニルエーテル、アルキルビニルエーテル、3,4−ジヒドロピラン−2−メチル(3,4−ジヒドロピラン−2−メチル(3,4−ジヒドロピラン−2−カルボキシレート)、トリエチレングリコールジビニルエーテル等のビニルエーテル化合物などが挙げられる。 他のカチオン重合性有機物質の配合量は、(A)成分〜(D)成分の合計質量に対して0.01〜10質量%が好ましく、0.1〜5質量%がより好ましい。
【0068】
酸拡散制御剤は、エネルギー線照射により(C)成分から生じた酸性活性物質の被膜中における拡散を制御し、非照射領域での硬化反応を制御する作用を有する化合物である。
酸拡散制御剤としては、形成工程中の露光や加熱処理によって塩基性が変化しない含窒素化合物などがこのましく、例えば、分子内に窒素を1つ含む含窒素化合物、同一分子内に窒素原子を2個含むジアミノ化合物、窒素原子を3個以上有するジアミノ重合体、あるいは、アミド基含有化合物、ウレア化合物、含窒素複素環化合物などを挙げることができる。
具体的には、n−へキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミンなどのモノアルキルアミン類;ジ−n−ブチルアミン、ジ−n−へキシルアミン、ジ−n−オクチルアミン等のジアルキルアミン類、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−へキシルアミン、トリ−n−ノニルアミン等のトリアルキルアミン類;4−ニトロアニリン、ジフェニルアミン等の芳香族アミンなどを上げることができる。
酸拡散制御剤の配合量は、(A)成分〜(D)成分の合計質量に対して0.001〜10質量%が好ましく、0.001〜5質量%がより好ましい。
【0069】
熱可塑性高分子化合物の代表的なものとしては、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリブタジエン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリビニルエーテル、ポリビニルブチラール、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリブテン、スチレンブタジエンジエンブロックコポリマー水添物などが挙げられる。
また、これらの熱可塑性高分子化合物に水酸基、カルボキシル基、ビニル基、エポキシ基などの官能基を導入したものも用いることができる。
かかる熱可塑性高分子化合物の好ましい数平均分子量は1000〜500,000であり、さらに好ましい数平均分子量は5,000〜100,000である。
熱可塑性高分子化合物の配合量は、(A)成分〜(D)成分の合計質量に対して1〜100質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましい。
【0070】
代表的な光増感剤としては、例えば、アントラセン誘導体、ピレン誘導体等の光増感剤を例示することができ、これらを併用することにより、これらを配合しない場合に比べて硬化速度が向上し、光学材料用硬化性組成物として好ましいものになる。(C)成分に対して0.1〜300質量%程度あればよい。
【0071】
充填剤としては、無機及び有機の粉末状、フレーク状、繊維状物質が挙げられる。無機充填剤の例としては、ガラス粉末、マイカ粉末、シリカまたは石英粉末、炭素粉末、炭酸カルシウム粉末、アルミナ粉末、水酸化アルミニウム粉末、ケイ酸アルミニウム粉末、ケイ酸ジルコニウム粉末、酸化鉄粉末、硫酸バリウム粉末、カオリン、ドロマイト、金属粉末、ガラス繊維、炭素繊維、金属ホイスカー、炭酸カルシウムホイスカー、中空ガラスバルーンあるいはこれらの表面をカップリング剤で処理し、表面に有機基をつけたものなどが上げられる。
有機の充填剤の例としては、パルプ粉末、ナイロン粉末、ポリエチレン粉末、架橋ポリスチレン粉末、架橋アクリル樹脂粉末、架橋フェノール樹脂粉末、架橋アクリル樹脂粉末、架橋フェノール樹脂粉末、架橋尿素樹脂粉末、架橋メラミン樹脂粉末、架橋エポキシ樹脂粉末、ゴム粉末あるいはこれらの表面にエポキシ基、アクリル基、水酸基などの反応基をつけたものなどが挙げられる。
充填剤は、概ね(A)成分〜(D)成分の合計量に対して0.5〜30質量%程度、好ましくは、1〜20質量%程度であればよい。
【0072】
また、本発明の効果を損なわない範囲で所望により、熱感応性カチオン重合開始剤、顔料、染料などの着色剤、レべリング剤、消泡剤、増粘剤、難燃剤、酸化防止剤、安定剤等の各種樹脂添加物等を通常の使用量の範囲内で添加することができる。
【0073】
<活性重水素化化合物処理>
また、本発明では、本発明の光学材料用硬化性組成物に用いられる(A)成分〜(D)成分の各成分及びその他の任意成分を活性重水素化合物で処理することが好ましい。
活性重水素化化合物で処理することにより、近赤外領域の透明性を損なう原因である、ケイ素含有重合体中または光学材料用硬化性組成物中に存在するC−H結合、O−H結合等のHを重水素化でき、透明性を改善することができる。
なお、活性重水素化化合物の例としては、重水や重水素化メタノール、重水素化エタノール等の重水素化アルコール等が挙げられる。
【0074】
また、本発明の光学材料用硬化性組成物を調製する工程は、周知の工程によればよく、例えば、構成材料を十分混合することにより行なうことができる。具体的な混合方法としては、例えば、プロペラの回転に伴う攪拌力を利用する攪拌法や、ロール練りこみ法、遊星式攪拌法などが挙げられる。その後、0.1〜5.0μのフィルターに通して調製する。
【0075】
本発明の光学材料用硬化性組成物を硬化させる活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、X線、放射線、高周波等があり、紫外線が経済的に最も好ましい。紫外線の光源としては、紫外線レーザ、水銀ランプ、高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ナトリウムランプ、アルカリ金属ランプ等が挙げられる。
【0076】
次に、本発明の光導波路及び光導波路の製造方法について説明する。
本発明の光導波路は、少なくともコアを、本発明の光学材料用硬化性組成物から形成してなるものであり、更に、クラッドを、本発明の光学材料用硬化性組成物から形成することもできる。なお、本発明の光学材料用硬化性組成物をコア、クラッドの両方に用いるにあたっては、予めその屈折率を測定しておき、屈折率の高い方をコアに、低い方をクラッドに用いればよい。
【0077】
次に、本発明の光導波路の製造方法について説明する。
本発明の光導波路の製造方法は、本発明の光学材料用硬化性組成物を硬化させてコアを形成する工程を有するものである。また、本発明の光学材料用硬化性組成物を硬化させてクラッドを形成する工程を有するものであってもよい。
例えば、本発明の光学材料用硬化性組成物(例えば紫外線硬化性組成物)を基板に塗布して硬化させることによりクラッドを形成し、得られたクラッド上に更に本発明の光学材料用硬化性組成物(例えば紫外線硬化性組成物)を塗布し、位置あわせ(好ましくはマスクアライナーを使用して位置あわせ)をしてマスクを通してあるいは、直接紫外線照射し、照射していない部分を溶媒除去することにより導波路リッジパターンを作製し、更に、クラッド材料用の光学材料用硬化性組成物を供給して硬化させ光導波路とすればよい。ここでは、コア、クラッドの両方に本発明の光学材料用硬化性組成物を用いた例を説明したが、コアのみに本発明の光学材料用硬化性組成物を用い、クラッドには慣用の材料を用いることもできる。
【0078】
光導波路の製造方法の例を具体的に述べる。図1(a)から(d)は、本発明による光導波路の形成工程を示す概略断面図である。
図1(a)に示すように、基板(1)上に所望の厚さにクラッド部分形成用の硬化性組成物(例えば紫外線硬化性組成物)の層(2)を形成し、その上に、所望の厚さにコア部分形成用の硬化性組成物(例えば紫外線硬化性組成物)の層(3)を形成する。次いで、図1(b)に示すように、コア部分形状のパターンマスクを有するマスク(4)をコア部分形成用の硬化性組成物の層(3)の上に被せ、マスク(4)を通して紫外線(5)を照射する。これにより、コア部分形成用の硬化性組成物の層(3)は、コア部分(6)のみ硬化する。その後、コア部分形成用の硬化性組成物の層(3)のうち、紫外線の未照射部分を溶媒で溶解除去すると、図1(c)に示すようなコア部(6)のリッジパターンが形成される。このコア部分(6)を埋め込むように、クラッド部分形成用の硬化性組成物の層(2)を所望の厚さに塗布して、図1(d)に示すようなクラッド部分(7)を形成することができる。
【0079】
このようにして作製された基板付光導波路は、コア、或いはさらにクラッドとして本発明の光学材料用硬化性組成物を材料としているので、耐溶剤性に優れ、また用いた材料の複屈折が小さいために偏波依存性が小さく、かつ低損失で、耐熱性、耐湿性に優れているものである。
【0080】
光導波路の製造で使用される基板は、フィルム化する前工程にて剥離しないことが好ましい。光導波路作製に使用される基板は、特に制限されるものではないが、具体例としては、ガラス基板、Si基板、焼成Si基板、PETフィルム、ポリカーボネート、セラミックス、エポキシ基板、ポリイミド基板、フッ素化ポリイミド基板、FR4基板または、これらの表面が物理的、またはカップリング剤などで化学的に処理されて密着性を変えたものなどが挙げられる。
【0081】
基板は、1種類または2種類、または2種類以上の材質を積層した基板を使用してもよい。基板は、表面が平滑であって、材料との密着性の高いものが好ましい。具体的には、焼成基板上にノボラック型エポキシ樹脂を塗布して硬化させたものを使用することが好ましい。
【0082】
本発明の光学材料用硬化性組成物を、基板またはクラッド上に均一な厚さに塗布する方法は、特に制限されるものではないが、スピンコーター法、バーコーター法、溶媒キャスト法、インクジェット法などを利用して行なうことができ、短時間に均一に塗布できるスピンコーターを使用するのが好ましい。
【0083】
また、本発明の光学材料用硬化性組成物が紫外線硬化性組成物である場合には、紫外線源として、高圧水銀ランプを使用することが好ましい。紫外線照射量は、塗布した膜厚により最適条件が異なるが、100〜10000mJ/cmの範囲内であることが好ましい。
【0084】
本発明の光学材料用硬化性組成物を、光導波路へ成形する際、必要に応じて加熱してもよい。加熱操作は、特に制限されないが、ホットプレート、オーブン等を用いて行なうことができる。このなかで、均一に熱をかけることが可能な、オーブンを使用することが好ましい。
【0085】
更に、上記の光導波路を作製する際に、コアリッジを形成するために使用する溶剤は、上記(A)〜(D)成分を溶解する溶剤であれば、特に制限されるものではなく、具体例としては、アルカリ性水溶液、酸性水溶液、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エタノール、イソプロパノール、n―プロパノール、ベンゼン、トルエン、o―キシレン、m−キシレン、p−キシレン、1,3,4−トリメチルベンゼン等が挙げられる。これらの1種または2種類以上を使用すればよい。また、これらを任意の割合にて混合したものも使用してよい。
【0086】
また、本発明の光学材料用硬化性組成物を用いて光導波路を形成する場合、溶剤による現像法を利用しなくともよい。即ち、導波路リッジパターンの形成には、硬化後に成形物との剥離可能な鋳型モールドを使用してもよい。モールドとしては、シリコーン、フッ素、ガラス若しくはこれらがカップリング剤などで表面処理されたものを使用することができる。光により鋳型形成させることが好ましい。
【実施例】
【0087】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに実施例に限定されるものではないことを理解されたい。
実施例に記載した成分は以下の通りである:
(A)成分として以下の(A1)〜(A6)を使用した。
(A1):以下の手順に従って合成したケイ素含有重合体
反応槽1:フェニルトリメトキシシランを178.5g(0.90mol)、0.032%リン酸水溶液を97.2g混合して、10℃にて2時間の攪拌の後、0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液を6.07g加えた。
反応槽2:3,4−エポキシシクロへキシルエチルトリメトキシシランを24.6g(0.10mol)、エタノールを10.8g混合して、0.032%のリン酸水溶液10.8gを反応液の温度が10℃を超えないように注意しながら5分間かけて滴下し、10℃以下で2時間攪拌した。その後、0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液を0.67g加えた。
上記の反応槽1と反応槽2の反応液を混合し、さらにトルエンを600ml、エタノールを600ml加えて、外浴温度を130℃まで加熱し、共沸により水を除去しながら、ケイ素含有重合体の重量平均分子量Mwが1400(GPCにより分析、ポリスチレン換算値)となるまで加熱縮重合を行った。オルトギ酸トリエチル890g(6.0mol)を添加して130℃まで加温し、130℃到達後、1時間加熱攪拌した。吸着剤(協和化学工業製 キョーワード600S、以下同様)を45g加え、100℃で1時間加熱攪拌した。吸着剤を濾過して除去後、120℃、3mmHgにて揮発成分を除去し、トルエン45g、メタノール1000gを加えて2層分離した。
下層を110℃、3mmHgにて揮発成分を除去し、得られたケイ素含有重合体を(A1)とした。GPCによる分析の結果、重量平均分子量は1800であり、H−NMRによる分析の結果、シラノール基(Si−OH)は検出されなかった。
また、H−NMRと赤外吸収スペクトルによる分析の結果、エポキシ基を有することが確認され、29Si−NMRによる分析の結果、少なくとも3つの結合元素が酸素原子であるケイ素原子を有することが確認され、H−NMRによる分析の結果、Si−R基を有することが確認され、H−NMRと29Si−NMRによる分析の結果、Si−OR’基を有することが確認された。また、ケイ素原子を除いた有機成分中のフェニル基は、65.0質量%、ケイ素原子を除いた有機成分中のメチル基は、0質量%、電位差法により測定したエポキシ当量は、1428であった。
【0088】
(A2):以下の手順に従って合成したケイ素含有重合体
反応槽1:フェニルトリメトキシシランを300.1g(1.51mol)、0.032%リン酸水溶液を163.7g混合して、10℃にて2時間の攪拌の後、0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液を10.67g加えた。
反応槽2:3,4−エポキシシクロへキシルエチルトリメトキシシランを124.4g(0.50mol)、エタノールを54.7g混合して、0.032%のリン酸水溶液54.7gを反応液の温度が10℃を超えないように注意しながら5分間かけて滴下し、10℃以下で2時間の攪拌の後、0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液を3.42g加えた。 上記の反応槽1と反応槽2の反応液を混合し、さらにトルエンを1200ml、エタノールを1200ml加えて、外浴温度を130℃まで加熱した。
共沸により水を除去しながら、ケイ素含有重合体の重量平均分子量Mwが2200となるまで加熱縮重合を行った。オルトギ酸トリエチル1780g(12.0mol)を添加して130℃まで加温し、130℃到達後、1時間加熱攪拌した。
吸着剤を90g加え、100℃で1時間加熱攪拌した。吸着剤をろ過して除去後、120℃、3mmHgにて揮発成分を除去し、トルエン45g、メタノール1000gを加えて2層分離した。
下層を110℃、3mmHgにて揮発成分を除去し、得られたケイ素含有重合体を(A1)とした。GPCによる分析の結果、重量平均分子量は1800であり、H−NMRによる分析の結果、シラノール基(Si−OH)は検出されなかった。
また、H−NMRと赤外吸収スペクトルによる分析の結果、エポキシ基を有することが確認され、29Si−NMRによる分析の結果、少なくとも3つの結合元素が酸素原子であるケイ素原子を有することが確認され、H−NMRによる分析の結果、Si−R基を有することが確認され、H−NMRと29Si−NMRによる分析の結果、Si−OR’基を有することが確認された。また、ケイ素原子を除いた有機成分中のフェニル基は、50.8質量%、ケイ素原子を除いた有機成分中のメチル基は、0質量%、電位差法により測定したエポキシ当量は、600であった。
【0089】
(A3):以下の手順に従って合成したケイ素含有重合体
反応槽1:フェニルトリメトキシシランを138.8g(0.70mol)、ジメチルジメトキシシランを6.0g(0.05mol)、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを23.6g(0.10mol)、0.032%リン酸水溶液91.8gを混合して、10℃にて2時間の攪拌の後、0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液を5.74g加えた。
反応槽2:3,4−エポキシシクロへキシルエチルトリメトキシシランを37.0g(0.15mol)、エタノールを16.2gを混合して、0.032%のリン酸水溶液16.2gを反応液の温度が10℃を超えないように注意しながら5分間かけて滴下し、10℃以下で2時間攪拌した。その後、0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液を1.01g加えた。
上記の反応槽1と反応槽2の反応液を混合し、さらにトルエンを600ml、エタノールを600ml加えて、外浴温度を130℃まで加熱し、共沸により水を除去しながら、ケイ素含有重合体の重量平均分子量Mwが1700(GPCにより分析、ポリスチレン換算値)となるまで加熱縮重合を行った。オルトギ酸トリエチル1780g(12.0mol)を添加して130℃まで加温し、130℃到達後、1時間加熱攪拌した。吸着剤を90g加え、100℃で1時間加熱攪拌した。吸着剤をろ過して除去後、120℃、3mmHgにて揮発成分を除去し、トルエン45g、メタノール1000gを加えて2層分離した。下層を110℃、3mmHgにて揮発成分を除去し、得られたケイ素含有重合体(200g)を(A3)とした。GPCによる分析の結果、重量平均分子量は2800であり、H−NMRによる分析の結果、シラノール基(Si−OH)は検出されなかった。
また、H−NMRと赤外吸収スペクトルによる分析の結果、エポキシ基を有することが確認され、29Si−NMRによる分析の結果、少なくとも3つの結合元素が酸素原子であるケイ素原子を有することが確認され、H−NMRによる分析の結果、Si−R基を有することが確認され、H−NMRと29Si−NMRによる分析の結果、Si−OR’基を有することが確認された。また、ケイ素原子を除いた有機成分中のフェニル基は、49.3質量%、ケイ素原子を除いた有機成分中のメチル基は、1.3質量%、電位差法により測定したエポキシ当量は、584であった。
【0090】
(A4):以下の手順に従って合成したケイ素含有重合体
反応槽1:フェニルトリメトキシシランを119.0g(0.6mol)、ジメチルジメトキシシランを48.1g(0.4mol)、0.032%リン酸水溶液を108.0gを混合して、10℃にて2時間の攪拌の後、0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液を6.06g加えた。
反応槽2:3,4−エポキシシクロへキシルエチルトリメトキシシランを246.4g(1.00mol)、エタノール108.0gを混合して、0.032%のリン酸水溶液108.0gを反応液の温度が10℃を超えないように注意しながら5分間かけて滴下し、10℃以下で2時間攪拌した。その後、0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液を6.06g加えた。
上記の反応槽1と反応槽2中の反応液を混合した後、トルエンを1200ml、エタノールを1200ml加え、外浴を130℃に加熱した。共沸により水を除去しながら、ケイ素含有重合体の重量平均分子量Mwが9000以上となるまで重縮合を行った。オルトギ酸トリエチル1780g(12mol)を添加して130℃まで加温し、130℃到達後、1時間加熱攪拌した。吸着剤を90g加え、100℃で1時間加熱攪拌した。吸着剤をろ過して除去後、60℃、20mmHgにて揮発成分を除去し、トルエン45g、メタノール1000gを加えて2層分離した。下層を60℃、3mmHgにて揮発成分を除去し、得られたケイ素含有重合体を(A4)とした。GPCによる分析の結果、重量平均分子量(Mw)は12000であり、H−NMRによる分析の結果、シラノール基(Si−OH)は検出されなかった。
また、H−NMRと赤外吸収スペクトルによる分析の結果、エポキシ基を有することが確認され、29Si−NMRによる分析の結果、少なくとも3つの結合元素が酸素原子であるケイ素原子を有することが確認され、H−NMRによる分析の結果、Si−R基を有することが確認され、H−NMRと29Si−NMRによる分析の結果、Si−OR’基を有することが確認された。また、ケイ素原子を除いた有機成分中のフェニル基は、20.3質量%、ケイ素原子を除いた有機成分中のメチル基は、5.1質量%、電位差法により測定したエポキシ当量は、307であった。
【0091】
(A5):以下の手順に従って合成したケイ素含有重合体
反応槽1:フェニルトリメトキシシランを50g(0.25mol)、ジメチルジメトキシシランを121.5g(1.01mol)、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを149g(0.63mol)、0.032%リン酸水溶液を204.6gを混合して、10℃にて2時間の攪拌の後、0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液を4.26g加えた。
反応槽2:3,4−エポキシシクロへキシルエチルトリメトキシシランを155.2g(0.63mol)、エタノール68.2gを混合して、0.032%のリン酸水溶液68.2gを反応液の温度が10℃を超えないように注意しながら5分間かけて滴下し、10℃以下で2時間攪拌した。その後、0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液を12.8g加えた。
上記の反応槽1と反応槽2中の反応液を混合した後、45℃まで加熱して1.5時間ほど重縮合を行った。トルエンを356.4g加えて反応液を希釈した後攪拌をやめ、2層に分かれた有機成分を多く含む下層を分離搾取し、減圧下、45℃にて1時間ほど還流脱水を行った。オルトギ酸トリエチル561g(3.79mol)を添加して130℃まで加温し、130℃到達後、1時間加熱攪拌を行った。空冷し、反応液を脱イオンフィルターに通した後、60℃、3mmHgにて揮発成分を除去し、トルエン100gを加えて溶解させ、ヘキサン800gを加えて2層分離した。下層を60℃、5mmHgにて揮発成分を除去し、得られたケイ素含有重合体を(A5)とした。GPCによる分析の結果、重量平均分子量(Mw)は10000であり、H−NMRによる分析の結果、シラノール基(Si−OH)は検出されなかった。
また、H−NMRと赤外吸収スペクトルによる分析の結果、エポキシ基を有することが確認され、29Si−NMRによる分析の結果、少なくとも3つの結合元素が酸素原子であるケイ素原子を有することが確認され、H−NMRによる分析の結果、Si−R基を有することが確認され、H−NMRと29Si−NMRによる分析の結果、Si−OR’基を有することが確認された。また、ケイ素原子を除いた有機成分中のフェニル基は、7.7質量%、ケイ素原子を除いた有機成分中のメチル基は、11.9質量%、電位差法により測定したエポキシ当量は、307であった。
【0092】
(A6):以下の手順に従って合成したケイ素含有重合体
反応槽1:ジメチルジメトキシシランを108.2g(0.90mol)、0.032%リン酸水溶液を97.2g混合して、10℃にて2時間の攪拌の後、0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液を6.07g加えた。
反応槽2:3,4−エポキシシクロへキシルエチルトリメトキシシランを24.6g(0.10mol)、エタノールを10.8g混合して、0.032%のリン酸水溶液10.8gを反応液の温度が10℃を超えないように注意しながら5分間かけて滴下し、10℃以下で2時間攪拌した。その後、0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液を0.67g加えた。
上記の反応槽1と反応槽2の反応液を混合し、さらにトルエンを600ml、エタノールを400ml加えて、外浴温度を130℃まで加熱し、共沸により水を除去しながら、加熱縮重合を行った。オルトギ酸トリエチル1780g(12.0mol)を添加して130℃まで加温し、130℃到達後、1時間加熱攪拌した。吸着剤を90g加え、100℃で1時間加熱攪拌した。120℃、3mmHgにて揮発成分を除去し、トルエン45g、ヘキサン1000gを加えて2層分離した。下層を110℃、3mmHgにて揮発成分を除去し、得られたケイ素含有重合体を(A6)とした。GPCによる分析の結果、重量平均分子量は15000であり、H−NMRによる分析の結果、シラノール基(Si−OH)は検出されなかった。
また、H−NMRと赤外吸収スペクトルによる分析の結果、エポキシ基を有することが確認され、29Si−NMRによる分析の結果、少なくとも3つの結合元素が酸素原子であるケイ素原子を有することが確認され、H−NMRによる分析の結果、Si−R基を有することが確認され、H−NMRと29Si−NMRによる分析の結果、Si−OR’基を有することが確認された。また、ケイ素原子を除いた有機成分中のフェニル基は、0質量%、ケイ素原子を除いた有機成分中のメチル基は、45.8質量%、電位差法により測定したエポキシ当量は、933であった。
【0093】
(B)成分として以下の(B1)及び(B2)を使用した。
(B1):2,2−ビス(3,4−エポキシシクロへキシル)プロパン
(B2):1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル−2,2−ビス(3,4− エポキシシクロヘキシル)プロパン
【0094】
(C)成分として以下の(C1)を使用した。
(C1):ビス−[4−(ビス(4−ブトキシフェニル)スルホニオ)フェニル]スルフ ィドヘキサフルオロアンチモネート
【0095】
(D)成分として以下の(D1)を使用した。
(D1):3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサン カルボキシレート
【0096】
実施例1〜12及び比較例1〜2
上記で得られた(A)〜(D)の各成分について、表−1に記載した割合(表中の数字は質量部である)で混合して本発明の光学材料用硬化性組成物及び比較のための組成物を得た。
【0097】
【表1】

【0098】
実施例13〜18及び比較例3
表−1に記載の各実施例及び比較例の組成物をコア材料、クラッド材料として表−2に示した組み合わせで用い、本発明の光導波路及び比較のための光導波路を作製した。得られた各光導波路について光損失、プロセス耐性、耐環境性について試験した。結果を表−2に示す。
【0099】
<光導波路の作製>
焼成シリコン基板に、表−2に示す各クラッド材料(実施例13においては実施例5で得られた組成物)をスピンコート法により30μmの厚さに積層し、光量10mW/cmの紫外線を200秒照射後、120℃にて15分間加熱した。次いで、表−2に示す各コア材料(実施例13においては実施例2で得られた組成物)をスピンコート法により50μmの厚さに積層し、ネガ型のフォトマスクを使用して、光量10mW/cmの紫外線を400秒照射した。オーブンを用いて90℃で15分間加熱した後、混合質量比が1:1のアセトン:イソプロパノールで現像した。120℃で15分間加熱硬化させ、線幅50μmのパターンを形成した。更に、同じクラッド材料をスピンコート法により、先に形成されたパターン線上部より30μmの厚さとなるように積層し、光量10mW/cmの紫外線を200秒間照射後、120℃にて15分間加熱することで、シリコン基板上光導波路を作製した。
【0100】
<光導波路の光損失の測定方法>
波長850nmのアイソレータ付ASE光源を用い、カットバック法により測定した伝送損失から接続損失を差し引いて光伝送損失を得た。
【0101】
<光導波路のプロセス耐性評価>
作製した光導波路のプロセス耐性を、短期はんだ耐熱性と耐紫外線特性より以下のようにして総合的に評価した;
○:短期はんだ耐熱性と耐紫外線特性ともに○のもの
△:短期はんだ耐熱性または耐紫外線特性のどちらか一方が○であるもの
×:短期はんだ耐熱性、耐紫外線特性ともに○でないもの
【0102】
<短期はんだ耐熱性>
作製した5cmの光導波路を空気中で、250℃で15分間加熱する試験を行った。加熱前後における外観形状の変化を目視で確認した。また、試験後の波長850nmの光損失を測定し、試験前と比較して変化量を算出した;
○:試験後に外観形状に変化が見られず、光損失変化量が0.3dB以内のもの
△:試験後に外観形状に変化が見られず、光損失変化量が0.3〜0.5dBのもの
×:試験後の外観形状に変化が見られるか、または光損失変化量が0.5dBより大き いもの
【0103】
<耐紫外線特性>
作製した光導波路に、中心波長が365nmで光量10mW/cmの高圧水銀灯の光を100,000秒間照射する試験を行った。試験後の外観形状の変化を目視で観察した。また、試験後の波長850nmの光損失を測定し、試験前と比較して変化量を算出した;
○:試験後に外観形状に変化が見られず、光損失変化量が0.3dB以内のもの
△:試験後に外観形状に変化が見られず、光損失変化量が0.3〜0.5dBのもの
×:試験後の外観形状に変化が見られるか、または光損失変化量が0.5dBより大き いもの
【0104】
<光導波路の耐環境性評価>
耐環境性は、ヒートサイクル特性試験、高温高湿試験により以下のようにして総合的に評価した;
○:ヒートサイクル特性試験と高温高湿試験ともに○のもの
△:ヒートサイクル特性試験または高温高湿試験のどちらか一方が○であるもの
×:ヒートサイクル特性試験または高温高湿試験ともに○でないもの
【0105】
<ヒートサイクル特性試験>
作製した光導波路をプログラム運転が可能な恒温槽に保管し、−40℃で5分間保持した後、1℃/分の割合で120℃まで昇温させ、その後120℃で5分間保持し、1℃/分の割合で−40℃に冷却することを1サイクルとして、30サイクル試験した。試験終了後、試験片の外観の変化の様子を確認した。また、試験後の波長850nmの光損失を測定し、試験前と比較して変化量を測定した;
○:試験後に外観形状に変化が見られず、光損失変化量が0.3dB以内のもの
△:試験後に外観形状に変化が見られず、光損失変化量が0.3〜0.5dBのもの
×:試験後の外観形状に変化が見られるか、または光損失変化量が0.5dBより大き いもの
【0106】
<高温高湿試験>
作製した光導波路を恒温恒湿槽に保管し、85℃×85%RHで1000時間試験した。試験終了後、試験片の外観の変化の様子を確認した。また、試験後の波長850nmの光損失を測定し、試験前と比較して変化量を算出した;
○:試験後に外観形状に変化が見られず、光損失変化量が0.3dB以内のもの
△:試験後に外観形状に変化が見られず、光損失変化量が0.3〜0.5dBのもの
×:試験後の外観形状に変化が見られるか、または光損失変化量が0.5dBより大き いもの
【0107】
【表2】

【0108】
表−2の通り、本発明の光導波路は、光損失、プロセス耐性、耐環境性について優れたものであり、耐熱性、耐湿性、通信波長における透明性(低光損失性)を同時に満足するものであった。
【0109】
なお、焼成シリコン基板にプレコート剤(例えばポリイミド樹脂やエポキシノボラック樹脂など)を積層しておき、上記と同様に作製した後、焼成シリコン基板及びプレコート剤(膜)を剥離してフィルム状の光導波路を形成することができた。また、得られたフィルム状の光導波路は、上記実施例と同様に良好な性質を有するものであった。
また、本発明の光導波路は、焼成シリコン基板上の場合も、フィルム状の場合も、常法によるメタル(銅)マーク付き光導波路として作製しても同様に優れた性質を有するものであった。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明の光学材料用硬化性組成物は、種々の光学部品、光集積回路、光配線板、光導波路等に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本発明の光導波路を形成する工程を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0112】
1 基板
2 クラッド部分形成用の硬化性組成物の層
3 コア部分形成用の硬化性組成物の層
4 マスク
5 紫外線
6 コア部分
7 クラッド部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
必須の構成成分として、
(A):エポキシ基を有し、少なくとも3つの結合元素が酸素原子であるケイ素原子を含み、Si−R基(Rは、アルキル基、フェニル基、アルキルフェニル基若しくはフェニルアルキル基又はR中の水素原子の一部若しくは全部がハロゲン化若しくは重水素化された、アルキル基、フェニル基、アルキルフェニル基若しくはフェニルアルキル基を表わす。)並びにSi−OR’基(R’は、アルキル基、フェニル基、アルキルフェニル基若しくはフェニルアルキル基又はR’中の水素原子の一部若しくは全部がハロゲン化若しくは重水素化された、アルキル基、フェニル基、アルキルフェニル基若しくはフェニルアルキル基を表わす。)を有し、重量平均分子量1000〜100万のケイ素含有重合体;
(B):下記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂
【化1】

(式中、X及びYは、同一でも異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、フルオロアルキル基、パーフルオロアルキル基、フェニル基、アルキルフェニル基、フルオロフェニル基、パーフルオロフェニル基、フルオロアルキルフェニル基、パーフルオロアルキルフェニル基から選択される一価の基を表わし、nは、正の数であり、R〜R18は、水素原子、ハロゲン原子、あるいは酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでも良い炭化水素基、または置換基を有していてもよいアルコキシ基を表わす。);及び
(C):エネルギー線感受性カチオン重合開始剤
を含有することを特徴とする光学材料用硬化性組成物。
【請求項2】
更に、(D):下記一般式(2)で表されるエポキシ樹脂
【化2】

(式中、R19、R20は、同一でも異なっていてもよく、水素、炭素原子数1〜4のアルキル基を表わす。)
を含有する、請求項1記載の光学材料用硬化性組成物。
【請求項3】
更に、溶媒、他のカチオン重合性有機物質、酸拡散制御剤、光増感剤、熱可塑性高分子化合物及び充填剤からなる群から選択される1種または2種以上の成分を含有する、請求項1または2記載の光学材料用硬化性組成物。
【請求項4】
更に、熱感応性カチオン重合開始剤、着色剤、レべリング剤、消泡剤、増粘剤、難燃剤、酸化防止剤及び安定剤からなる群から選択される1種または2種以上の樹脂添加物を含有する、請求項1ないし3のいずれか1項記載の光学材料用硬化性組成物。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項記載の光学材料用硬化性組成物を硬化させ形成したコアを有することを特徴とする光導波路。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれか1項記載の光学材料用硬化性組成物を硬化させ形成したクラッドを有する、請求項5記載の光導波路。
【請求項7】
請求項1ないし4のいずれか1項記載の光学材料用硬化性組成物を硬化させコアを形成する工程を有することを特徴とする光導波路の製造方法。
【請求項8】
請求項1ないし4のいずれか1項記載の光学材料用硬化性組成物を硬化させクラッドを形成する工程を有する、請求項7記載の光導波路の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−238868(P2007−238868A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−66294(P2006−66294)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】