説明

光学部材変形装置、光学系、露光装置、デバイスの製造方法

【課題】光学部材の光学特性を高精度に調整することができる光学部材変形装置、光学系、露光装置、及びデバイスの製造方法を提供する。
【解決手段】凹面鏡41の形状を変形させるミラー変形装置53において、凹面鏡41に固定される第2永久磁石72と、第2永久磁石72に対向して配置される第1永久磁石71と、アクチュエータ61から伝達される駆動力に基づいて、第1永久磁石71を第2永久磁石72に対して相対距離が変化するように変位させる変位機構80とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部材の形状を変形させる光学部材変形装置、該光学部材変形装置を備える光学系、該光学系を備える露光装置、及び該露光装置を用いたデバイスの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体素子、液晶表示素子等のデバイスを製造するためのリソグラフィ工程では、レチクル、フォトマスク等のマスクに形成された所定のパターンを、投影光学系を介して、レジスト等が塗布されたウエハやガラスプレート等の基板上に転写する露光装置が用いられている。こうした露光装置では、投影光学系を構成する少なくとも一部の光学素子に対して不均一な熱膨張が加わった場合に、光学部材が局所的に変形することがあり得る。このように光学部材が変形した場合には、投影光学系の光学特性が変化してしまい、基板に対するパターン像の投影不良が発生する虞があった。そこで、従来の露光装置には、投影光学系の光学特性を調整するために、光学部材の形状を積極的に変形させるための機構が設ける構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
すなわち、上記露光装置には、ミラー(光学部材)を変形させるための電磁石ユニットが設けられている。電磁石ユニットは、ミラーの裏面側に取り付けられた磁性部材と、該磁性部材に対して非接触に対向して配置される電磁石とを含んで構成されている。そして、この露光装置では、電磁石に通電させる電流の大きさを変化させて、電磁石が磁性部材に対して作用させる磁力の大きさを調整することにより、電磁石ユニットによるミラーの変形量を制御するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−316132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記露光装置では、電磁石ユニットによるミラーの変形量を大きくするためには、電磁石に通電させる電流の大きさを増加させる必要がある。そして、電磁石に通電させる電流の大きさが増加すると、電磁石における発熱量が増大する。そこで、この露光装置には、電磁石を冷却するための冷却ジャケットが設けられている。
【0006】
しかしながら、上記露光装置では、冷却ジャケットが冷媒の循環に伴って振動を発生すると、その振動が冷却ジャケットからミラーに対して伝播されることによりミラーの光学特性に影響を及ぼす虞があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、光学部材の光学特性を高精度に調整することができる光学部材変形装置、光学系、露光装置、及びデバイスの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、実施形態に示す図1〜図10に対応付けした以下の構成を採用している。
本発明の光学部材変形装置は、光学部材(41)の形状を変形させる光学部材変形装置(53)において、前記光学部材(41)に固定される第1の部材(72)と、前記第1の部材(72)に対向して配置される第2の部材(71)と、駆動源(61)から伝達される駆動力に基づいて、前記第1の部材(72)及び前記第2の部材(71)のうち一方の部材を、他方の部材に対して相対距離が変化するように変位させる変位機構(80)とを備え、前記第1の部材及び前記第2の部材のうち、一方の部材は磁性体又は磁界発生部材であると共に、他方の部材は磁界発生部材であることを要旨とする。
【0009】
上記構成によれば、第1の部材及び第2の部材のうち、一方の部材は磁性体又は磁界発生部材であると共に、他方の部材は磁界発生部材であるため、第1の部材と第2の部材との間には磁界が発生する。こうした第1の部材又は第2の部材を、変位機構によって相対変位させると、第1の部材と第2の部材との間で作用する磁力の大きさが変化する。そのため、第1の部材と第2の部材との間で作用する磁力を変化させる際に、変位機構によって相対変位される部材が大きな発熱を伴うことはない。よって、当該部材の近傍位置に冷却装置を設けることが不要となる。したがって、冷却装置を設ける場合のように、冷却装置から光学部材に対して振動が伝播することはなく、光学部材の光学特性を精密に調整することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、光学部材の光学特性を高精度に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態の露光装置の概略断面図。
【図2】(a)は図1の2a−2a線矢視断面図、(b)は第1の実施形態のミラー変形装置の断面図。
【図3】(a)は初期状態のミラー変形装置の断面図、(b)は図3(a)よりもアクチュエータが収縮した状態を示す断面図、(c)は図3(a)よりもアクチュエータが伸長した状態を示す断面図。
【図4】(a)は凹面鏡が+Y方向側に歪み変形している状態を示す模式図、(b)は凹面鏡の変形量がほぼゼロとなる状態を示す模式図、(c)は凹面鏡が−Y方向側に歪み変形している状態を示す模式図。
【図5】(a)はマイクロメータのスピンドル部を伸長させた状態を示すミラー変形装置の断面図、(b)はマイクロメータのスピンドル部を収縮させた状態を示すミラー変形装置の断面図。
【図6】第2の実施形態のミラー変形装置の断面図。
【図7】(a)は凹面鏡が+Y方向側に歪み変形している状態を示す模式図、(b)は図7(a)に示す状態よりも凹面鏡が+Y方向側に更に大きく歪み変形している状態を示す模式図。
【図8】別の実施形態のミラー変形装置の断面図。
【図9】デバイスの製造例のフローチャート。
【図10】半導体デバイスの場合の基板処理に関する詳細なフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態について図1〜図4に基づき説明する。なお、本実施形態では、図1において、後述する投影光学系15を構成する反射屈折光学系の第1光軸AX1に平行にZ軸を、第1光軸AX1に垂直な面内において図1の紙面に平行にY軸を、紙面に垂直にX軸を、それぞれ設定している。
【0013】
図1に示すように、本実施形態の露光装置11は、所定の回路パターンが形成された透過型のレチクルRを露光光ELで照明することにより、露光面Wa(+Z方向側の面であって、図1では上面)にレジストなどの感光性材料が塗布された感光性基板としてのウエハWに回路パターンを形成するための装置である。そして、こうした露光装置11は、光源装置12から射出された露光光ELをレチクルRの被照射面Ra(+Z方向側の面)に導く照明光学系13と、レチクルRを保持するレチクルステージ14と、レチクルRを透過した露光光ELをウエハWの露光面Waに導く投影光学系15と、ウエハWを保持するウエハステージ16とを備えている。なお、本実施形態の光源装置12は、193nmの波長の光を出力するArFエキシマレーザ光源を有し、該ArFエキシマレーザ光源から出力される光が露光光ELとして露光装置11内に導かれる。
【0014】
光源装置12と照明光学系13との間には、ビームマッチングユニット17が連結されている。ビームマッチングユニット17は、光源装置12と露光装置11とを光学的に接続しており、光源装置12から射出された露光光ELを露光装置11内に導くようになっている。なお、光源装置12から照明光学系13における最もレチクルR側の光学部材までの空間域は、露光光ELの吸収率が低い気体であるヘリウムガスや窒素などの不活性ガスで置換されている。
【0015】
照明光学系13の下方には、架台18が設けられている。架台18は、定盤19上に立設される下部架台20と、該下部架台20上に支持される上部架台21とによって構成されている。また、上部架台21の上面にはレチクルステージ14が載置されている。レチクルステージ14は、レチクルRを保持する保持面14aをXY平面に対して平行とするように配置されている。また、レチクルステージ14は、レチクルステージ駆動部(図示略)の駆動によって、Y軸方向に所定ストロークで移動可能である。また、レチクルステージ駆動部は、レチクルステージ14をX軸方向、Z軸方向及びZ軸周りの回転方向にも微小量移動させるように構成されている。そして、照明光学系13から射出される露光光ELは、レチクルRを透過した後、上部架台21の上壁部の略中央に形成された透過口22を介して架台18内に収容される投影光学系15に導かれるようになっている。なお、レチクルRが露光光ELで照明される場合、該レチクルRの被照射面Raの一部には、X軸方向に延びる略矩形状の照明領域が形成されるようになっている。
【0016】
投影光学系15は、該投影光学系15の第1光軸AX1を中心とする略円筒状の上部鏡筒23と、第1光軸AX1と直交する第2光軸AX2を中心とする略円筒状の横鏡筒24と、上部鏡筒23よりもウエハW側に配置され且つ第1光軸AX1を中心とする略円筒状の下部鏡筒25とを備えている。下部鏡筒25は、下部架台20の上壁部の略中央に形成された開口部26を上下方向に挿通している。そして、これらの各鏡筒23,24,25は結合部材27を介して互いに結合されている。なお、結合部材27は、下部架台20における開口部26の口縁近傍に取り付けられている。
【0017】
上部鏡筒23の上端部(+Z方向側の端部)には、該上部鏡筒23の開口を閉塞するカバーガラス31が設けられている。そして、投影光学系15に導かれる露光光ELは、カバーガラス31を透過して上部鏡筒23の内部に入射するようになっている。また、上部鏡筒23の下端部(−Z方向側の端部)は結合部材27に挿入されている。
【0018】
なお、上部鏡筒23によって保持される複数(図1では1つのみ図示)の光学部材32は第1結像光学系33を構成している。そして、第1結像光学系33は、上部鏡筒23の内部にレチクルRの回路パターンの第1中間像を形成するようになっている。
【0019】
横鏡筒24は、有底筒状をなしており、その底部35が結合部材27の側面に形成された開口部36を介して結合部材27に挿入されている。また、横鏡筒24の上側壁(即ち、上部鏡筒23側の側壁)には、第1光軸AX1を略中心とする開口部47が貫通形成されており、横鏡筒24内には、上部鏡筒23側から開口部47を介して露光光ELが入射するようになっている。また、横鏡筒24の下側壁(即ち、下部鏡筒25側の側壁)には、第1光軸AX1を略中心とする開口部48が貫通形成されており、横鏡筒24からは、開口部48を介して下部鏡筒25側に露光光ELが射出されるようになっている。こうした横鏡筒24は、結合部材27に挿入される底部35によって直角反射鏡38を保持している。
【0020】
また、横鏡筒24は、横鏡筒24の内壁に固定された保持部材40を介して負レンズ39及び凹面鏡41を保持している。この凹面鏡41の側面には略円環状をなす被保持部41a(図2(b)参照)が形成されており、横鏡筒24の保持部材はこの被保持部41aを介して凹面鏡41を保持している。一例として、横鏡筒24の保持部材40は、第2光軸AX2を中心とする周方向に沿って等間隔に複数(例えば3つ)配置されており、凹面鏡41は、保持部材40によって複数点(例えば3点)で保持されている。
【0021】
また、横鏡筒24内の右端側には、該横鏡筒24の内径とほぼ同一の径を有する円板状のリアクションプレート42が横鏡筒24の開口を閉塞するように設けられている。また、横鏡筒24の右側には、有底略円筒状をなす封止部材43が横鏡筒24の外側からリアクションプレート42を覆うように設けられている。なお、リアクションプレート42と封止部材43の底壁(図1では右側の壁部)との間には、所定の空間Sが形成されている。
【0022】
横鏡筒24に保持される直角反射鏡38には、第1光路折り曲げ鏡44及び第2光路折り曲げ鏡45が形成されている。第1光路折り曲げ鏡44は、第1結像光学系33が形成する第1中間像の近傍位置に配置され、第1結像光学系33から開口部47を介して横鏡筒24内に入射する露光光ELをほぼ直角に反射して負レンズ39に導くようになっている。また、第2光路折り曲げ鏡45は、負レンズ39を通過して凹面鏡41で反射された露光光ELを、負レンズ39を再度通過させた後にほぼ直角に反射して開口部48を介してウエハW側に射出するようになっている。すなわち、本実施形態では、横鏡筒24によって保持される直角反射鏡38、負レンズ39、及び凹面鏡41によって第2結像光学系46が構成されている。こうした第2結像光学系46は、第1中間像の形成位置の近傍となる第2光路折り曲げ鏡45の近傍にレチクルRの回路パターンの第2中間像を形成するようになっている。なお、第2中間像は、第1中間像とほぼ等倍であり、レチクルRの回路パターンの二次像となっている。
【0023】
下部鏡筒25の上端側は結合部材27に挿入されている。また、下部鏡筒25の下端側には、該下部鏡筒25の開口を閉塞するカバーガラス50が設けられている。そして、投影光学系15の内部を通過した露光光ELは、カバーガラス50を透過して投影光学系15から射出されるようになっている。
【0024】
こうした下部鏡筒25内には、複数(図1では3つのみ図示)の光学部材51が第1光軸AX1に沿って保持されており、各光学部材51によって第3結像光学系52が構成されている。そして、第3結像光学系52は、第2結像光学系46によって形成される第2中間像からの光束に基づいて、レチクルRの回路パターンの縮小像(第2中間像の像であって回路パターンの最終像)をウエハWの露光面Waに形成するようになっている。また、投影光学系15の内部は、上記のカバーガラス31、リアクションプレート42、及びカバーガラス50によって気密化された状態で、露光光ELの吸収率が低い気体であるヘリウムガスや窒素などの不活性ガスで置換されている。
【0025】
投影光学系15の下方には、ウエハステージ16が定盤19上に設けられている。ウエハステージ16は、ウエハWを保持する保持面16aをXY平面に対して平行とするように配置されている。また、ウエハステージ16は、ウエハステージ駆動部(図示略)によって、Y軸方向に移動可能である。また、ウエハステージ駆動部は、ウエハステージ16をX軸方向、Z軸方向及びZ軸周りの回転方向にも微小量移動させるように構成されている。
【0026】
そして、本実施形態の露光装置11を用いてウエハWの一つのショット領域にレチクルRの回路パターンを形成する場合、照明光学系13によって照明領域をレチクルRに形成した状態で、レチクルステージ駆動部の駆動によって、レチクルステージ14に保持されるレチクルRをY軸方向(例えば、+Y方向側から−Y方向側)に所定ストローク毎に移動させる。また同時に、ウエハステージ駆動部の駆動によって、ウエハステージ16に保持されるウエハWをレチクルRのY軸方向に沿った移動に対して投影光学系15の縮小倍率に応じた速度比でY軸方向(例えば、−Y方向側から+Y方向側)に同期して移動させる。そして、一つのショット領域へのパターンの形成が終了した場合、ウエハWの他のショット領域に対するパターンの形成が連続して行われる。
【0027】
本実施形態の露光装置11では、横鏡筒24に保持される凹面鏡41の形状を意図的に変形させて、投影光学系15の光学特性が調整されるようになっている。そこで次に、凹面鏡41の形状を変形させるためのミラー変形装置53について説明する。
【0028】
図2(a)(b)に示すように、リアクションプレート42には、複数(本実施形態では17つ、図2(b)において1つのみ図示)の挿入部54がリアクションプレート42の厚み方向(Y軸方向)に貫通するように形成されている。こうした各挿入部54は、リアクションプレート42の全域に均等に分散して形成されている。そして、本実施形態では、複数(本実施形態では17つ)のミラー変形装置53がこれらの挿入部54に個別に挿入されている。なお、各ミラー変形装置53は、それぞれ同じ構成を有しているため、明細書の説明理解の便宜上、これらのミラー変形装置53のうち最も−Y方向側に配置されるミラー変形装置53のみを以下説明し、他のミラー変形装置53については説明を省略する。
【0029】
図2(b)に示すように、ミラー変形装置53は、リアクションプレート42から投影光学系15の第2光軸AX2に沿って立設される支持部材55を備えており、該支持部材55は、所定の空間S内において挿入部54の近傍に配置されている。一例として、図2(b)に示す支持部材55は、該支持部材55に個別対応する挿入部54の径方向内側に配置されている。こうした支持部材55の基端側(図2(b)では上端側)は、ボルト56によってリアクションプレート42に連結されている。また、支持部材55は、先端側(図2(b)では下端側)から直角に屈曲して挿入部54側(図2(b)では径方向外側)に向けて延設される第1延設部55aと、基端側と先端側の略中央位置から挿入部54側(図2(b)では径方向外側)に向けて延設される第2延設部55bとを有している。
【0030】
支持部材55の第1延設部55aには第1連結部材57が弾性材料からなる弾性ヒンジ58を介して連結されている。第1連結部材57は、断面略L字状をなしており、支持部材55の第1延設部55aの延設方向と略平行に延びる底部57aと、該底部57aの一端側(図2(b)では左端側)から略垂直に屈曲して支持部材55の立設方向と略平行に延びる側部57bとを備えている。第1連結部材57の底部57aの他端側(図2(b)では右端側)は、第1延設部55aの一方側(図2(b)において上側)に位置していると共に、弾性ヒンジ58を介して第1延設部55aの一端側(図2(b)では、径方向外側であって且つ左端側)に連結されている。そして、第1連結部材57は、弾性ヒンジ58の弾性変形に伴って支持部材55の第1延設部55aに対して相対変位するようになっている。また、第1連結部材57の底部57aの一方の面は、弾性ヒンジ58との連結部よりも一端側(径方向内側であって、図2(b)では右端側)において、コイルスプリング59を介して支持部材55の第1延設部55aに接続されている。このコイルスプリング59は、第1連結部材57の底部57aを−Y方向側に押圧している。
【0031】
また、第1連結部材57の底部57aの他方の面は、一方の面において径方向において弾性ヒンジ58とコイルスプリング59との間となる位置で、アクチュエータ(例えば、圧電素子)61を介して支持部材55の第2延設部55bに接続されている。このアクチュエータ61は、第2光軸AX2とほぼ平行な方向(Y軸方向)に沿って伸縮可能に構成されている。また、このアクチュエータ61は、その基端が第2延設部55bに連結されると共に、その先端が第1連結部材57の底部57aに連結されている。そして、第1連結部材57の底部57aには、アクチュエータ61の伸長駆動に伴ってアクチュエータ61から力が作用し、結果として、第1連結部材57は、弾性ヒンジ58の弾性変形に伴って該弾性ヒンジ58を支点としてX軸周りに揺動するようになっている。また、第1連結部材57の側部57bの一方端側(図2(b)では上端側)には、弾性材料からなる弾性ヒンジ62を介して第2連結部材63に連結されている。すなわち、第1連結部材57において第2連結部材63に連結される側部57bの連結部が、アクチュエータ61に連結される底部57aの連結部よりも、揺動支点となる弾性ヒンジ58から揺動の径方向となるZ軸方向に相対的に大きく離間している。
【0032】
第2連結部材63は、第1連結部材57よりもY軸方向においてリアクションプレート42に近接する位置に配置されると共に、径方向における長さがY軸方向における長さよりも長くなるように形成されている。そして、弾性ヒンジ62は、第2連結部材63において径方向における中心よりも径方向外側の部位であって、且つY軸方向における中心よりも+Y方向側の部位に接続されている。こうした第2連結部材63は、弾性ヒンジ62の弾性変形に伴って第1連結部材57に対して相対変位するようになっている。また、第2連結部材63には、弾性材料からなる弾性ヒンジ64を介して変位部材65が連結されている。なお、弾性ヒンジ64は、第2連結部材63において径方向における中心よりも径方向内側の部位であって、且つY軸方向における中心よりも−Y方向側の部位に接続されている。
【0033】
また、変位部材65と支持部材55との間には、変位部材65とY軸方向で略同一位置に、第2光軸AX2を中心とする径方向(図2(b)では左右方向)に延びる可撓性部材66が介設されている。可撓性部材66は、第2光軸AX2に沿ったY軸方向とは異なるZ軸方向及びZ軸方向と直交するX軸方向には高い剛性を有する一方で、支持部材55の立設方向でもあるY軸方向には低い剛性を有している。そのため、変位部材65は、可撓性部材66がY軸方向に容易に撓み変形するため、投影光学系15の第2光軸AX2に沿うY軸方向への変位が可撓性部材66によって自在に許容されるようになっている。一方、変位部材65は、可撓性部材66がX軸方向及びZ軸方向にはほとんど変形(伸長)しないため、Y軸方向と直交するXZ平面内での変位が可撓性部材66によって規制されるようになっている。
【0034】
また、変位部材65に対して該変位部材65の変位方向(Y軸方向)と直交するX軸方向で対向する位置には、変位部材65の変位量(より具体的には、変位部材65のY軸方向への変位量)を計測する変位センサ67が設けられている。変位センサ67は、変位部材65に固着された図示しないスケールの位置情報を検出することにより変位部材65の変位量を計測し、その計測結果を制御機構68に送信する。そして、制御機構68は、変位センサ67から受信した計測結果に基づき、アクチュエータ61の伸長量を駆動制御するようになっている。
【0035】
また、変位部材65において挿入部54と同一径方向位置には、コイルスプリング69が連結されている。コイルスプリング69は、投影光学系15の第2光軸AX2に沿う方向に伸縮自在に構成されている。また、コイルスプリング69は、リアクションプレート42に形成された挿入部54を介して横鏡筒24の内部に挿入されている。そして、コイルスプリング69は、横鏡筒24の内部に収容される中間部材70に連結されている。
【0036】
中間部材70は、略円柱状をなしており、変位部材65の変位方向となるY軸方向に延びるように構成されている。そして、中間部材70は、長手方向の一端側がコイルスプリング69に連結されると共に、長手方向の他端側が第1永久磁石71に連結されている。また、凹面鏡41における反射面の裏面側には、第1永久磁石71に対してY軸方向で対向する位置に、凸部を有する第2永久磁石72が固定(例えば、接着)されている。第2永久磁石72は、その大きさが第1永久磁石71よりも大きくなるように構成されている。そして、本実施形態では、第1永久磁石71及び第2永久磁石72は、それらによって発生される磁界に従ってY軸方向に互いに斥力を作用させるようになっている。すなわち、第1永久磁石71及び第2永久磁石72は、それらの対向面同士が同一極(例えばN極)となるようにそれぞれ配置されている。
【0037】
なお、リアクションプレート42の挿入部54は、外壁面側(横鏡筒24の外側であって、図2(b)では下側)に位置する小径部と、内壁面側(横鏡筒24の内側であって、図2(b)では上側)に位置する大径部とを有している。すなわち、挿入部54内において外壁面側には、円環状の支持部73が形成されている。支持部73には、複数(本実施形態では2つ)の貫通部74が支持部73をY軸方向に貫通するように形成されており、これらの貫通部74は、互いに異なる周方向位置にそれぞれ配置されている。そして、これらの貫通部74には、マイクロメータ75がそれぞれ挿入されている。また、挿入部54内における内壁面側には、横鏡筒24の内部を気密状に封止する封止部材76が配置されている。この封止部材76には、中間部材70及び各マイクロメータ75が挿通される挿通孔が形成されている。また、封止部材76は、薄板状の弾性材料から構成されており、中間部材70の変位に連動してY軸方向に容易に撓み変形することにより、中間部材70の変位を阻害することがないようになっている。
【0038】
マイクロメータ75は、スピンドル部75aと、該スピンドル部75aのY軸方向への突出量を調整するための操作部75bとを有している。この操作部75bは、所定の空間S内、即ちリアクションプレート42の外壁面側に配置されており、操作部75bが回動操作されることによりスピンドル部75aの突出量が変化するようになっている。こうしたマイクロメータ75は、スピンドル部75aを貫通部74を介して横鏡筒24の内部に挿入させた状態で、図示しないボルトによって支持部73に固定されている。また、マイクロメータ75におけるスピンドル部75aの先端(図2(b)では上端)は、支持板77に連結されている。すなわち、支持板77は、該支持板77に個別対応する挿入部54に設けられる各マイクロメータ75のスピンドル部75aによって支持されている。そして、支持板77は、各スピンドル部75aの突出量の変化に伴い、Y軸方向に変位するようになっている。
【0039】
なお、支持板77は、略円環状をなしており、その略中央部には中間部材70の外径よりもやや大きな径を有する円形状の挿通孔77aが形成されている。そして、支持板77の挿通孔77aには中間部材70が支持板77に対してY軸方向に相対変位を可能とする態様で挿入されている。また、凹面鏡41の裏面に接着される第2永久磁石72と支持板77との間にはコイルスプリング78が着脱交換可能に介設されている。
【0040】
次に、上記のように構成されたミラー変形装置53のうち最も−Z方向側に配置されたミラー変形装置53を一例として、ミラー変形装置53がアクチュエータ61の伸長駆動に伴って変位部材65を変位させる際の作用について以下説明する。なお、図3(a)は、アクチュエータ61がY軸方向に所定量だけ伸長した初期状態を示している。
【0041】
さて、こうした初期状態では、図3(a)に示すように、第1連結部材57の底部57aが支持部材55の第1延設部55aの延設方向と略平行に延びると共に、第1連結部材57の側部57bが支持部材55の立設方向と略平行に延びるように配置される。なお、支持部材55の第1延設部55aと第1連結部材57の底部57aとを連結する弾性ヒンジ58、第1連結部材57の側部57bと第2連結部材63とを連結する弾性ヒンジ62、及び第2連結部材63と変位部材65とを連結する弾性ヒンジ64は各々の変形量がほぼゼロとなっている。また、変位部材65と支持部材55との間に介設される可撓性部材66は、Z軸方向に略平行に延びるように配置されており、その変形量がほぼゼロとなっている。
【0042】
ここで、図3(b)に示すように、アクチュエータ61が制御機構68からの制御指令に基づいてY軸方向の伸長量が初期状態から減少したとする。この場合、アクチュエータ61は、その基端が支持部材55の第2延設部55bに固定されているため、その先端が−Y方向側に変位する。また、第1連結部材57の底部57aの一端側は、支持部材55の第1延設部55aとの間に介設されたコイルスプリング59の付勢力に従って−Y方向側に押圧される。
【0043】
すると、第1連結部材57は、支持部材55の第1延設部55aとの間に介在する弾性ヒンジ58によって固定されているため、第1連結部材57には、弾性ヒンジ58を支点として第1連結部材57を+X方向側から見て反時計周り方向に回動させるようにコイルスプリング59から押圧力が作用する。そのため、この弾性ヒンジ58は、該弾性ヒンジ58から見てコイルスプリング59とは反対側となる−Z方向側にしなるように弾性変形する。
【0044】
この場合、第1連結部材57は、その第2連結部材63に対する連結部が弾性ヒンジ58を軸中心とする円弧状の軌道を描きながら+Y方向側に向けて回動する。その結果、第1連結部材57は、第1連結部材57と第2連結部材63との間に介在する弾性ヒンジ62を介して−Z方向側であって且つ+Y方向側となる方向(図3(b)では左斜め下方)に向けて第2連結部材63を引っ張るようになる。また、第2連結部材63は、第2連結部材63と変位部材65との間に介在する弾性ヒンジ64を介して変位部材65を−Z方向側であって且つ+Y方向側となる方向に引っ張るようになる。すなわち、変位部材65は、支持部材55から離間する方向であって且つリアクションプレート42から離間する方向、即ち図3(b)における左斜め下方に第2連結部材63によって引っ張られることとなる。
【0045】
なお、可撓性部材66は、変位部材65と支持部材55とが互いに対向するZ軸方向にはほとんど変形しない構造となっている。そのため、変位部材65が第2連結部材63によって−Z方向側に引っ張られたとしても、可撓性部材66が−Z方向側に変形(伸長)することはほとんどなく、変位部材65の−Z方向側への変位が規制される。その結果、第1連結部材57が支持部材55に対して−Z方向側に相対変位する一方で、変位部材65が支持部材55に対してZ軸方向に変位することはほとんどない。すなわち、第1連結部材57は、変位部材65に対してZ軸方向に離間するように相対変位する。
【0046】
すると、第1連結部材57と第2連結部材63との間に介設される弾性ヒンジ62が+Z方向側にしなるように弾性変形する。その結果、第2連結部材63は、第1連結部材57に対して+Z方向側に相対変位する。また同時に、第2連結部材63と変位部材65との間に介設される弾性ヒンジ64も同様に+Z方向側にしなるように弾性変形する。さらに、第2連結部材63は、両弾性ヒンジ62,64の弾性復帰力に従って、第1連結部材57に連動するように+X方向側から見て反時計周り方向に回動する。このように変位部材65と各連結部材57,63とのZ軸方向における位置関係が変化したとしても、各連結部材57,63及び変位部材65の連結状態は、両弾性ヒンジ62,64の弾性変形及び第2連結部材63の回動によって維持される。
【0047】
一方、変位部材65と支持部材55との間に介設される可撓性部材66は、変位部材65とリアクションプレート42とが互いに対向するY軸方向には容易に撓み変形する構造となっている。そのため、変位部材65が第2連結部材63によって+Y方向側に引っ張られると、可撓性部材66が+Y方向側にしなるように撓み変形することにより、変位部材65の+Y方向側への変位が許容される。
【0048】
また、図3(c)に示すように、アクチュエータ61が制御機構68からの制御指令に基づいてY軸方向の伸長量が増大したとする。この場合、アクチュエータ61は、その基端が支持部材55の第2延設部55bに固定されているため、その先端が+Y方向側に変位する。そして、アクチュエータ61は、第1連結部材57の底部57aの一端側をコイルスプリング59の付勢力に抗して+Y方向側に押圧するようになる。
【0049】
すると、第1連結部材57は、支持部材55の第1延設部55aとの間に介在する弾性ヒンジ58によって固定されているため、第1連結部材57には、弾性ヒンジ58を支点として第1連結部材57を+X方向側から見て時計周り方向に回動させるようにアクチュエータ61から押圧力が作用する。そのため、この弾性ヒンジ58は、該弾性ヒンジ58から見てアクチュエータ61側となる+Z方向側にしなるように弾性変形する。
【0050】
この場合、第1連結部材57は、その第2連結部材63に対する連結部が弾性ヒンジ58を軸中心とする円弧状の軌道を描きながら−Y方向側に向けて回動する。その結果、第1連結部材57は、第1連結部材57と第2連結部材63との間に介在する弾性ヒンジ58を介して+Z方向側であって且つ−Y方向側となる方向(右斜め上方)に向けて第2連結部材63を押圧するようになる。また、第2連結部材63は、第2連結部材63と変位部材65との間に介在する弾性ヒンジ64を介して変位部材65を+Z方向側であって且つ−Y方向側となる方向に押圧するようになる。すなわち、変位部材65は、支持部材55に接近する方向であって且つリアクションプレート42に接近する方向に第2連結部材63によって押圧されることとなる。
【0051】
このとき、第1連結部材57は、アクチュエータ61の伸長量の増大に伴って支持部材55に対して+Z方向側に相対変位すると共に、第1連結部材57に弾性ヒンジ62を介して連結される第2連結部材63もまた支持部材55に対して+Z方向側に相対変位する。一方、変位部材65は、可撓性部材66によって、+Z方向側への変位が規制される。すなわち、変位部材65に対する各連結部材57,63のZ軸方向における相対的な位置関係は変化する。こうした状況であっても、各弾性ヒンジ62,64が−Z方向側にしなるようにそれぞれ弾性変形すると共に、第2連結部材63が第1連結部材57に連動して回動するため、各連結部材57,63及び変位部材65の連結状態は維持される。
【0052】
その一方で、変位部材65は、第2連結部材63から−Y方向側に押圧されると、可撓性部材66が−Y方向側にしなるように撓み変形することにより、変位部材65の−Y方向側への変位が許容される。
【0053】
なお、第1連結部材57において、第2連結部材63に対する連結部は、アクチュエータ61に対する連結部よりも支点となる弾性ヒンジ58に対して大きく離間している。そのため、第1連結部材57に連結される第2連結部材63及び該第2連結部材63に連結される変位部材65には、弾性ヒンジ58を支点とする梃子の原理に基づき、アクチュエータ61からの駆動力が増大されてそれぞれ伝達される。すなわち、第2連結部材63及び変位部材65のY軸方向における各変位量は、アクチュエータ61の伸長量よりも拡大される。したがって、本実施形態では、支持部材55、弾性ヒンジ58,62,64、第1連結部材57、及び、第2連結部材63によって、アクチュエータ61の伸長量を拡大して変位部材65に伝達する変位拡大機構79が構成されている。また、本実施形態では、変位拡大機構79、変位部材65、コイルスプリング69、中間部材70、マイクロメータ75、支持板77、及び、コイルスプリング78によって、アクチュエータ61の伸長駆動に基づき第1永久磁石71を第2永久磁石72に対して相対変位させる変位機構80が構成されている。
【0054】
次に、アクチュエータ61の伸長駆動に伴って凹面鏡41の形状を変形させる際の作用について以下説明する。なお、図4(a)は、ミラー変形装置53においてアクチュエータ61がY軸方向に所定量だけ伸長した初期状態を示している。また、ミラー変形装置53が初期状態である場合、第2永久磁石72と支持板77との介設されるコイルスプリング78が自然長よりも伸長しているものとする。
【0055】
さて、図4(a)に示すように、ミラー変形装置53が初期状態である場合、コイルスプリング78は、その付勢力によって、第2永久磁石72及び凹面鏡41において該第2永久磁石72の固定される位置の近傍に対して+Y方向側への張力を作用させている。その結果、凹面鏡41において第2永久磁石72の固定される位置の近傍は、+Y方向側に歪み変形する。
【0056】
ここで、図4(b)に示すように、アクチュエータ61が制御機構68からの制御指令に基づいてY軸方向の伸長量が初期状態から増大したとする。すると、アクチュエータ61の伸長量の増大量は変位拡大機構79によって拡大されて変位部材65に伝達されるため、変位部材65の−Y方向側への変位量は、アクチュエータ61の先端の+Y方向側への変位量よりも多くなる。また、中間部材70は、コイルスプリング78を介して変位部材65に接続されているため、変位部材65と連動して−Y方向側に変位する。このとき、中間部材70に連結される第1永久磁石71は、中間部材70と一体となって、凹面鏡41の裏面側に接着された第2永久磁石72に対して接近するように−Y方向側に変位する。すると、凹面鏡41には、第1永久磁石71から第2永久磁石72に対して作用する磁力(斥力)が押圧力として作用するようになる。そして、第1永久磁石71から第2永久磁石72に作用する磁力とコイルスプリング78から第2永久磁石72に作用する張力とが互いに相殺されると、凹面鏡41は、第2永久磁石72の固定される位置の近傍が外部から作用される力の減少に起因して歪み変形が解消される。
【0057】
なお、第1永久磁石71が第2永久磁石72に接近して該第2永久磁石72に対する斥力を増大させると、第1永久磁石71は第2永久磁石72から+Y方向側への反力を受ける。このとき、第1永久磁石71と変位部材65との間に介設されるコイルスプリング69は、第1永久磁石71によって+Y方向側に押圧されて収縮する。その結果、コイルスプリング69に連結された第1永久磁石71の第2永久磁石72に対する相対変位量は、第1永久磁石71が変位部材65に直接連結された場合と比較して減衰される。
【0058】
また、図4(c)に示すように、アクチュエータ61が制御機構68からの制御指令に基づいてY軸方向に更に大きく伸長したとする。すると、変位部材65が−Y方向側に更に大きく変位すると共に、該変位部材65にコイルスプリング69を介して連結される中間部材70もまた、−Y方向側に更に大きく変位する。このとき、第1永久磁石71は、中間部材70と一体となって、凹面鏡41の裏面側に接着された第2永久磁石72に対して更に接近するように変位する。すると、第1永久磁石71から第2永久磁石72に対して作用する磁力(斥力)が増大し、凹面鏡41において第2永久磁石72が接着される位置の近傍では、第1永久磁石71から第2永久磁石72に作用する磁力が、コイルスプリング69から第2永久磁石72に作用する張力を上回るようになる。この場合、第1永久磁石71から第2永久磁石72への−Y方向側への押圧力が強くなるため、凹面鏡41は、第2永久磁石72の固定される位置の近傍が−Y方向側に歪み変形する。
【0059】
ところで、本実施形態では、マイクロメータ75の操作によって、コイルスプリング78が第2永久磁石72に作用させる張力を変更させることができる。例えば、図5(a)に示すように、マイクロメータ75の操作部75bを回動操作して、スピンドル部75aの突出量を増大させたとする。この場合、マイクロメータ75は、リアクションプレート42の支持部73に固定されているため、スピンドル部75aの先端が凹面鏡41に対して接近するように伸長する。すると、スピンドル部75aの先端に連結された支持板77は、スピンドル部75aの伸長に伴って凹面鏡41に対して接近するように変位する。そのため、支持板77は、凹面鏡41の裏面側に接着された第2永久磁石72に対して接近することとなる。その結果、コイルスプリング78のY軸方向における長さは、マイクロメータ75の操作前と比較して短くなり、該コイルスプリング78から第2永久磁石72に作用する+Y方向側への張力が小さくなる。そのため、第1永久磁石71を第2永久磁石72に接近させるようにアクチュエータ61を駆動させる場合、凹面鏡41の第2永久磁石72が接着される位置の近傍は、マイクロメータ75の作動前と比較して、−Y方向側に変位しやすくなる。つまり、マイクロメータ75の操作前と比較して、凹面鏡41の光学特性を粗調整することが可能となる。
【0060】
一方、図5(b)に示すように、マイクロメータ75の操作部75bを回動操作して、スピンドル部75aの突出量を減少させたとする。この場合、マイクロメータ75のスピンドル部75aの先端が凹面鏡41から離間するように収縮し、該スピンドル部75aの先端に連結された支持板77は、凹面鏡41から離間するように変位する。そのため、支持板77は、凹面鏡41の裏面側に接着された第2永久磁石72から離間するように変位する。その結果、コイルスプリング78のY軸方向における長さは、マイクロメータ75の操作前と比較して長くなり、該コイルスプリング78から第2永久磁石72に作用する+Y方向側への張力が大きくなる。そのため、第1永久磁石71を第2永久磁石72に接近させるようにアクチュエータ61を駆動させる場合、凹面鏡41において第2永久磁石72が接着される位置の近傍は、マイクロメータ75の操作前と比較して、−Y方向側に変位し難くなる。つまり、マイクロメータ75の操作前と比較して、凹面鏡41の光学特性を微調整することが可能となる。
【0061】
すなわち、マイクロメータ75の操作部75bを回動操作することにより、凹面鏡41の調整精度を変更することが可能となる。そのため、調整精度を変更できない場合に比して、凹面鏡41の光学特性、即ち投影光学系15の光学特性を、迅速且つ適切に調整することが可能となる。
【0062】
したがって、本実施形態では、以下に示す効果を得ることができる。
(1)凹面鏡41から離間して配置される第1永久磁石71は、変位機構80の作動によって、凹面鏡41に接着される第2永久磁石72に対して相対的に接離可能となっている。そして、第1永久磁石71と第2永久磁石72との距離が変化すると、第1永久磁石71から第2永久磁石72に対して作用される磁力の大きさが変化する。そのため、変位機構80は、第1永久磁石71と第2永久磁石72との距離を変化させて、第1永久磁石71から第2永久磁石72を介して作用させる凹面鏡41への押圧力を調整することにより、凹面鏡41の光学特性を調整することができる。
【0063】
(2)コイルスプリング78は、第2永久磁石72に対して、該第2永久磁石72を第1永久磁石71に接近させる方向への張力を付与している。ここで、第1永久磁石71が第2永久磁石72に対して大きく離間して配置されると、第1永久磁石71から第2永久磁石72に作用する磁力(斥力)の方が、コイルスプリング78から第2永久磁石72に作用する張力よりも小さくなる。すると、凹面鏡41において第2永久磁石72が接着される位置の近傍は、コイルスプリング78によって第2永久磁石72を介して引っ張られて歪み変形する。一方、第1永久磁石71が第2永久磁石72に対して接近する方向に変位すると、第1永久磁石71から第2永久磁石72に作用する磁力(斥力)の方が、コイルスプリング78から第2永久磁石72に作用する張力よりも大きくなる。そして、凹面鏡41において第2永久磁石72が接着される位置の近傍は、第1永久磁石71によって第2永久磁石72を介して押圧されて歪み変形する。すなわち、第1永久磁石71を第2永久磁石72に対して接離する方向に相対的に変位させることにより、凹面鏡41を引張方向及び押圧方向の双方向に歪み変形させることができる。したがって、凹面鏡41の光学特性の変更度合いの自由度を増大させることができる。
【0064】
(3)マイクロメータ75は、操作部75bが回動操作されることにより、支持板77を第2永久磁石72に対して接離する方向に変位させる。そのため、支持板77と第2永久磁石72との間に介設されるコイルスプリング78の伸長量が調整され、コイルスプリング78から第2永久磁石72に作用する張力の大きさを調整することができる。したがって、支持板77のY軸方向における位置を調整することにより、凹面鏡41の光学特性を変更させる際の調整精度を自由に設定することができる。
【0065】
(4)変位センサ67は、変位拡大機構79によって拡大された変位部材65の変位量を計測し、計測された変位部材65の変位量に基づいて第1永久磁石71の変位量を推定するため、第1永久磁石71の変位量を高精度に計測することが可能となっている。そして、この変位センサ67の計測結果に基づいて、アクチュエータ61の伸長度合いが制御されるため、第1永久磁石71から第2永久磁石72を介して凹面鏡41に作用する押圧力の大きさを高精度に調整することができる。したがって、凹面鏡41の形状を精密に調整でき、ひいては投影光学系15の光学特性を精密に調整できるため、ウエハWに形成される回路パターンの正確性を向上することができる。
【0066】
(5)変位部材65と第1永久磁石71の間にはコイルスプリング69が介設されている。そして、変位部材65の変位に基づく力は、コイルスプリング69によって減衰された状態で第1永久磁石71に伝達される。そのため、変位拡大機構79によって変位部材65の変位量を拡大させる場合であっても、第1永久磁石71から第2永久磁石72を介して凹面鏡41に対して過大な歪み応力が作用することを回避できる。
【0067】
(6)支持部材55は、第1連結部材57を弾性ヒンジ58を中心として揺動可能に支持している。ここで、第1連結部材57は、第2連結部材63に対する連結部の方がアクチュエータ61に対する連結部よりも弾性ヒンジ58に対して大きく離間した構成となっている。そして、第1連結部材57が弾性ヒンジ58を中心として揺動すると、アクチュエータ61の伸長量は、梃子の原理に基づいて変位量が拡大された状態で第1連結部材57及び第2連結部材63を介して変位部材65に伝達される。したがって、アクチュエータ61の伸長量を第1連結部材57及び第2連結部材63を介して拡大させた状態で変位部材65に伝達する構成を簡便に実現することができる。
【0068】
(7)可撓性部材66は、変位部材65の変位方向を凹面鏡41の光軸に沿う一方向(Y軸方向)に規定している。そのため、第1永久磁石71から第2永久磁石72を介して凹面鏡41に対して作用する歪み応力の方向が一方向に規定される。したがって、第1永久磁石71から第2永久磁石72を介して凹面鏡41に作用する歪み応力に基づく凹面鏡41の変形量がより細密に調整されるため、凹面鏡41の光学特性を高精度に調整することができる。
【0069】
(8)変位拡大機構79がアクチュエータ61から受ける反力はリアクションプレート42によって受容される。そのため、変位拡大機構79は、リアクションプレート42によって安定に支持されつつ、アクチュエータ61の伸長量を拡大して変位部材65に伝達することができる。
【0070】
(9)リアクションプレート42には、ミラー変形装置53の一部を横鏡筒24の内部に挿入可能とする挿入部54が設けられており、アクチュエータ61は横鏡筒24の外部に設けられている。そのため、アクチュエータ61と凹面鏡41とがリアクションプレート42を介在させて互いに隔離された配置構成となり、アクチュエータ61の伸長駆動に伴ってアクチュエータ61から生じる振動が凹面鏡41に対して伝播することを抑制できる。
【0071】
(10)リアクションプレート42に形成された挿入部54には、挿入部54の口縁とミラー変形装置53との間の空間域を閉塞するように封止部材76が設けられている。そのため、横鏡筒24の外部の気体がリアクションプレート42の挿入部54を介して横鏡筒24の内部に進入することが回避される。また同様に、横鏡筒24の外部に設けられたアクチュエータ61やアクチュエータ61に接続される電線(図示略)からアウトガスが生じた場合であっても、このアウトガスがリアクションプレート42の挿入部54を介して横鏡筒24の内部に進入することが回避される。したがって、これらのアウトガスが凹面鏡41の反射面上で光化学反応によって曇りを生じることはなく、凹面鏡41の光学特性を信頼性よく調整することができる。
【0072】
(11)横鏡筒24には、封止部材43がリアクションプレート42を横鏡筒24の外側から覆うように設けられている。そのため、露光装置11外の気体(即ち、大気)がリアクションプレート42の挿入部54を介して横鏡筒24の内部に進入することをより確実に回避できる。なお、アクチュエータ61に接続される電線(不図示)からのアウトガスの発生量がゼロであるか若しくは許容範囲内であれば、封止部材43を省略することも可能である。また、封止部材76及び封止部材43の両方を併用することによって、露光装置11外の気体が横鏡筒24の内部に進入することをより確実に回避できる。
【0073】
(12)第2永久磁石72と支持板77との間にはコイルスプリング78が着脱交換可能に介設されている。そのため、弾性力の異なる新規のコイルスプリング78に交換することにより、コイルスプリング78による第2永久磁石72に対する張力(付勢力)を容易に変更することができる。
【0074】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を図6及び図7に従って説明する。なお、第2の実施形態は、第1永久磁石71の代わりに電磁石81を設け、該電磁石81と第2永久磁石72との間で磁界を発生させる点が第1の実施形態と異なっている。したがって、以下の説明においては、第1の実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、第1の実施形態と同一又は相当する部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
【0075】
図6に示すように、本実施形態のリアクションプレート42の挿入部54内には、上記第1の実施形態における支持部73に相当する部位が設けられていない。こうした挿入部54内において外壁面側(図6では下面側)には、封止部材76が配置されている。この封止部材76は、薄板状の弾性材料から構成されており、コイルスプリング69の伸縮動作に連動してY軸方向に容易に撓み変形することにより、コイルスプリング69の伸縮動作を阻害することがないようになっている。そして、これらの挿入部54に対応する各位置に、本実施形態のミラー変形装置53がそれぞれ設けられている。
【0076】
すなわち、ミラー変形装置53は、封止部材76よりも−Y方向側に配置される断面略T字状の中間部材70を備えている。この中間部材70は、XZ平面に沿うように拡大形成された略円盤状の底部70aと、該底部70aの略中央から+Y方向側に延びる軸部70bとを有している。そして、中間部材70は、底部70aがコイルスプリング69を介して変位部材65に連結されると共に、軸部70bの先端(図6では上端)が電磁石81に連結されている。
【0077】
電磁石81は、凹面鏡41における反射面の裏面側に接着された第2永久磁石72に対してY軸方向で対向するように配置されている。そして、電磁石81は、内部に収容されるコイル82を通電させることにより、コイル82が発生する磁界に従って第2永久磁石72に対してY軸方向に磁力を作用させるようになっている。
【0078】
また、中間部材70の底部70aには、+Y方向側が開口すると共に−Y方向側が閉塞される有底略筒状の封止部材83が電磁石81を覆うように固定されている。そして、封止部材83と中間部材70の底部70aとによって囲繞される空間域は、気密状に封止されている。なお、封止部材83の一部は、電磁石81と第2永久磁石72との間を横切るように配置されているが、封止部材83は、薄膜状をなしているため、電磁石81と第2永久磁石72との間で作用する磁力に影響を及ぼすことはほとんどない。
【0079】
次に、アクチュエータ61の伸長駆動に伴って凹面鏡41の形状を変形させる際の作用について以下説明する。図7(a)は、アクチュエータ61が所定量だけ伸長した初期状態を示している。この初期状態では、電磁石81内のコイル82は通電された状態にあり、凹面鏡41の裏面側に接着された第2永久磁石72に対して磁力として引力を作用させているものとする。
【0080】
さて、初期状態では、図7(a)に示すように、電磁石81は、保持部材40によって固定された状態にある凹面鏡41に対して、該電磁石81に対応する第2永久磁石72が接着される位置の近傍に引力を作用させている。そのため、凹面鏡41において第2永久磁石72が接着される位置の近傍は+Y方向側に歪み変形する。
【0081】
ここで、図7(b)に示すように、アクチュエータ61が制御機構68からの制御指令に基づいてY軸方向の伸長量が初期状態から減少したとする。すると、アクチュエータ61に変位拡大機構79を介して連結される変位部材65が+Y方向側に大きく変位すると共に、該変位部材65にコイルスプリング69を介して連結される中間部材70は、変位部材65と連動して+Y方向側に変位する。このとき、中間部材70に連結される電磁石81は、中間部材70と一体となって、凹面鏡41の裏面側に接着された第2永久磁石72に対して離間するように+Y方向側に変位する。すると、第2永久磁石72は、電磁石81から作用する磁力(引力)に基づいて、電磁石81との間の距離を維持するように、電磁石81と一体となって+Y方向側に変位する。その結果、電磁石81から第2永久磁石72を介して凹面鏡41に対して+Y方向側に作用させる引力が増大するため、凹面鏡41において第2永久磁石72が接着される位置の近傍は+Y方向側に更に大きく歪み変形する。
【0082】
なお、電磁石81が第2永久磁石72に対して+Y方向側に作用させる引力を増大させると、電磁石81は第2永久磁石72から−Y方向側に更に大きな反力を受ける。このとき、電磁石81と変位部材65との間に介設されるコイルスプリング69は、電磁石81によって−Y方向側に引っ張られて伸長する。その結果、コイルスプリング69に連結された電磁石81の第2永久磁石72に対する相対変位量は、電磁石81が変位部材65に直接連結された場合と比較して減衰される。
【0083】
したがって、本実施形態では、上記第1の実施形態の効果(1)、(2)、(4)〜(11)に加えて以下に示す効果を得ることができる。
(13)変位機構80が電磁石81を第2永久磁石72に対して相対変位させると、電磁石81と第2永久磁石72との間で作用する磁力の大きさが変化する。そのため、電磁石81と第2永久磁石72との間で作用する磁力の大きさを変化させる際に、電磁石81のコイル82に通電させる電流の大きさを変化させることがないため、電磁石81が大きな発熱を伴うことはない。その結果、電磁石81を冷却するための冷却装置を設けることが不要となる。したがって、冷却装置を設ける場合のように、冷却装置から凹面鏡41に対して振動が伝播することはなく、凹面鏡41の光学特性を精密に調整することができる。
【0084】
(14)電磁石81は、コイル82が樹脂によってモールドされる場合であっても、この樹脂から発生するアウトガスは封止部材83によって気密状に封止されているため、凹面鏡41の反射面の近傍に到達することはほとんどない。そのため、このアウトガスが凹面鏡41の反射面上において光化学反応を生じることにより凹面鏡41の反射面に曇りを生じることが抑制され、凹面鏡41の光学特性を精密に調整することができる。
【0085】
なお、上記実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・上記第2の実施形態において、変形前の凹面鏡41の反射面の曲率を予め所望の値よりも小さくなるように加工してもよい。この構成によれば、初期状態では、凹面鏡41はミラー変形装置53によってほとんど変形されないため、凹面鏡41の反射面の曲率が所望の値よりも小さな値となっている。ここで、ミラー変形装置53が電磁石81を凹面鏡41から離間する方向に変位させたとする。すると、電磁石81から第2永久磁石72を介して凹面鏡41に対して作用する引力が増大して、凹面鏡41の反射面の曲率は所望の値に調整される。さらに、ミラー変形装置53が変位機構80によって電磁石81を凹面鏡41から離間する方向に変位させたとする。すると、電磁石81から第2永久磁石72を介して凹面鏡41に対して作用する引力が更に増大して、凹面鏡41の反射面の曲率は所望の値よりも大きな値となるように調整される。すなわち、この構成によれば、ミラー変形装置53は、変位機構80が電磁石81を凹面鏡41に対して相対変位させることにより、凹面鏡41の反射面の曲率を所望の値の前後で連続的に調整することができる。
【0086】
・上記第2の実施形態において、ミラー変形装置53は、変位機構80が電磁石81を凹面鏡41に対して相対変位させた後、電磁石81のコイル82に通電させる電流の大きさを変化させる構成としてもよい。この場合、ミラー変形装置53は、電磁石81と第2永久磁石72との間で作用する磁力の大きさが変化するため、電磁石81から第2永久磁石72を介して凹面鏡41に作用させる引力の大きさを調整することができる。
【0087】
また、この構成によれば、ミラー変形装置53では、電磁石81を凹面鏡41に対して相対変位させない場合と比較して、電磁石81から第2永久磁石72を介して凹面鏡41に作用させる引力の大きさを調整する際に電磁石81のコイル82に通電させる電流量が低減される。したがって、電磁石81における発熱量が抑制されるため、電磁石81を冷却するための冷却ジャケットを設けることは不要となる。
【0088】
さらに、この構成によれば、ミラー変形装置53は、変位機構80が電磁石81を凹面鏡41から離間する方向に相対変位させることにより凹面鏡41の変形量を増大させると同時に、電磁石81のコイル82に通電させる電流量を増大させることにより、凹面鏡41の変形量を増大させる。そのため、電磁石81を凹面鏡41に対して相対変位させない場合と比較して、凹面鏡41の変形量を増大させることができる。
【0089】
・上記各実施形態において、アクチュエータ61として、直動型のMEMS(Micro Electro Mechanical System)や直動型のモータを採用してもよい。
・上記各実施形態において、ミラー変形装置53は、任意の配置態様を採用することができる。
【0090】
・上記各実施形態において、封止部材43は、ミラー変形装置53を横鏡筒24の外部から覆うようにリアクションプレート42に固定して設けてもよい。
・上記各実施形態において、ミラー変形装置53を横鏡筒24の外部から覆うように配置される封止部材43を省略してもよい。
【0091】
・上記各実施形態において、図8に示すように、封止部材76は、電磁石81と第2永久磁石72との間(又は、第1永久磁石71と第2永久磁石72との間)を横切るように横鏡筒24に固定して設けてもよい。
【0092】
・上記各実施形態において、ミラー変形装置53は、横鏡筒24の内部に収容される構成としてもよい。
・上記各実施形態において、変位拡大機構79は、投影光学系15を内部に収容する架台18に固定して設けられる構成としてもよい。
【0093】
・上記各実施形態において、凹面鏡41を保持するための保持機構としてパラレルリンク機構を採用し、このパラレルリンク機構を横鏡筒24又はリアクションプレート42に固定して配置する構成としてもよい。
【0094】
・上記第1の実施形態において、第1永久磁石71を内部に収容可能な大きさを有する単一のコイルスプリング78を、第1永久磁石71を包囲するように第2永久磁石72と支持板77との間に介設する構成としてもよい。
【0095】
・上記第1の実施形態において、コイルスプリング78と支持板77との間に薄板状のシムを介設させて、コイルスプリング78による第2永久磁石72に対する付勢力を調整する構成としてもよい。
【0096】
・上記第1の実施形態において、第1永久磁石71及び第2永久磁石72は、各々が発生する磁界に従って互いに引力を作用させる構成としてもよい。この場合、凹面鏡41を引張方向及び押圧方向の双方向に歪み変形させる場合には、コイルスプリング78は、凹面鏡41の裏面側に接着される第2永久磁石72を第1永久磁石71から離間させる方向に付勢する構成とすることが望ましい。この構成によれば、第1永久磁石71は、コイルスプリング78の付勢力に抗して第2永久磁石72に対して引力を作用させることにより、凹面鏡41において第2永久磁石72が接着される位置の近傍を引張方向及び押圧方向の双方向に歪み変形させることができる。
【0097】
・上記第2の実施形態において、凹面鏡41の裏面側に電磁石81を接着させると共に、該電磁石81に対向する位置に第2永久磁石72を配置し、変位機構80が第2永久磁石72を電磁石81に対して接離する方向に変位させる構成としてもよい。
【0098】
・上記第1の実施形態において、凹面鏡41の裏面側に常磁性を有する磁性体(例えば、金属板)を接着させる構成としてもよい。また、凹面鏡41の裏面側に接着された第2永久磁石72に対向する位置に常磁性を有する磁性体(例えば、金属板)を配置し、変位機構80がこの磁性部材を第2永久磁石72に対して接離する方向に変位させる構成としてもよい。
【0099】
・上記第2の実施形態において、凹面鏡41の裏面側に接着される第2永久磁石72を電磁石81から離間させる方向に付勢する付勢部材を設けてもよい。この構成によれば、電磁石81は、凹面鏡41において第2永久磁石72が接着される位置の近傍を引張方向及び押圧方向の双方向に歪み変形させることができる。
【0100】
・上記第2の実施形態において、凹面鏡41の裏面側に常磁性を有する磁性体(例えば、金属板)を接着させる構成としてもよい。
・上記各実施形態において、凹面鏡41を保持するための保持部材40を省略し、複数のミラー変形装置53によって凹面鏡41を保持する構成としてもよい。
【0101】
・上記各実施形態において、ミラー変形装置53によって形状が変形される対象は凹面鏡41に限定されず、投影光学系15を構成する他の光学部材を対象としてもよい。また、照明光学系13を構成する各種の光学部材、更には、レチクルR及びウエハWを対象としてもよい。
【0102】
・上記各実施形態において、中間部材70の変位量を計測する変位センサを設け、制御機構68は、この変位センサから受信した計測結果に基づき、アクチュエータ61の伸長量を駆動制御する構成としてもよい。
【0103】
・上記各実施形態において、光源装置12は、例えばg線(436nm)、i線(365nm)、KrFエキシマレーザ(248nm)、F2レーザ(157nm)、Kr2レーザ(146nm)、Ar2レーザ(126nm)等を供給可能な光源であってもよい。また、光源装置12は、DFB半導体レーザまたはファイバレーザから発振される赤外域、または可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(またはエルビウムとイッテルビウムの双方)がドープされたファイバアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を供給可能な光源であってもよい。また、光源装置12は、波長が100nm程度以下の軟X線領域である極端紫外光、即ちEUV(Extreme Ultraviolet)光を供給可能な光源であってもよい。
【0104】
・上記各実施形態において、露光装置11は、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるレチクルまたはマスクを製造するために、マザーレチクルからガラス基板やシリコンウエハなどへ回路パターンを転写する露光装置であってもよい。また、露光装置11は、液晶表示素子(LCD)などを含むディスプレイの製造に用いられてデバイスパターンをガラスプレート上へ転写する露光装置、薄膜磁気ヘッド等の製造に用いられて、デバイスパターンをセラミックウエハ等へ転写する露光装置、及びCCD等の撮像素子の製造に用いられる露光装置などであってもよい。
【0105】
・上記各実施形態において、露光装置11を、カバーガラス50とウエハWとの間の所定空間に1.1よりも大きな屈折率を有する任意の液体(例えば純水)を供給した状態で露光を行なう所謂液浸型の露光装置であってもよい。
【0106】
・上記各実施形態において、露光装置11を、ステップ・アンド・リピート方式の装置に具体化してもよい。
・上記各実施形態において、可変パターン生成器(例えば、DMD(Digital Mirror Device 又はDigital Micro-mirror Device ))を用いたマスクレス露光装置に具体化してもよい。
【0107】
次に、本発明の実施形態の露光装置11によるデバイスの製造方法をリソグラフィ工程で使用したマイクロデバイスの製造方法の実施形態について説明する。図9は、マイクロデバイス(ICやLSI等の半導体チップ、液晶パネル、CCD、薄膜磁気ヘッド、マイクロマシン等)の製造例のフローチャートを示す図である。
【0108】
まず、ステップS101(設計ステップ)において、マイクロデバイスの機能・性能設計(例えば、半導体デバイスの回路設計等)を行い、その機能を実現するためのパターン設計を行う。引き続き、ステップS102(マスク製作ステップ)において、設計した回路パターンを形成したマスク(レチクルRなど)を製作する。一方、ステップS103(基板製造ステップ)において、シリコン、ガラス、セラミックス等の材料を用いて基板(シリコン材料を用いた場合にはウエハWとなる。)を製造する。
【0109】
次に、ステップS104(基板処理ステップ)において、ステップS101〜ステップS104で用意したマスクと基板を使用して、後述するように、リソグラフィ技術等によって基板上に実際の回路等を形成する。次いで、ステップS105(デバイス組立ステップ)において、ステップS104で処理された基板を用いてデバイス組立を行う。このステップS105には、ダイシング工程、ボンティング工程、及びパッケージング工程(チップ封入)等の工程が必要に応じて含まれる。最後に、ステップS106(検査ステップ)において、ステップS105で作製されたマイクロデバイスの動作確認テスト、耐久性テスト等の検査を行う。こうした工程を経た後にマイクロデバイスが完成し、これが出荷される。
【0110】
図10は、半導体デバイスの場合におけるステップS104の詳細工程の一例を示す図である。
ステップS111(酸化ステップ)においては、基板の表面を酸化させる。ステップS112(CVDステップ)においては、基板表面に絶縁膜を形成する。ステップS113(電極形成ステップ)においては、基板上に電極を蒸着によって形成する。ステップS114(イオン打込みステップ)においては、基板にイオンを打ち込む。以上のステップS111〜ステップS114のそれぞれは、基板処理の各段階の前処理工程を構成しており、各段階において必要な処理に応じて選択されて実行される。
【0111】
基板プロセスの各段階において、上述の前処理工程が終了すると、以下のようにして後処理工程が実行される。この後処理工程では、まず、ステップS115(レジスト形成ステップ)において、基板に感光性材料を塗布する。引き続き、ステップS116(露光ステップ)において、上で説明したリソグラフィシステム(露光装置11)によってマスクの回路パターンを基板に転写する。次に、ステップS117(現像ステップ)において、ステップS116にて露光された基板を現像して、基板の表面に回路パターンからなるマスク層を形成する。さらに続いて、ステップS118(エッチングステップ)において、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去る。そして、ステップS119(レジスト除去ステップ)において、エッチングが済んで不要となった感光性材料を取り除く。すなわち、ステップS118及びステップS119において、マスク層を介して基板の表面を加工する。これらの前処理工程と後処理工程とを繰り返し行うことによって、基板上に多重に回路パターンが形成される。
【符号の説明】
【0112】
11…露光装置、15…光学系としての投影光学系、24…横鏡筒、41…光学部材としての凹面鏡、42…反力受容部材としてのリアクションプレート、53…光学部材変形装置としてのミラー変形装置、54…挿入部、55…支持部材、57…第1連結部材、58…支持部としての弾性ヒンジ、61…駆動源としてのアクチュエータ、63…第2連結部材、65…変位部材、67…計測部材としての変位センサ、69…縮小機構としてのコイルスプリング、71…第2の部材及び磁界発生部材としての第1永久磁石、72…第2の部材及び磁界発生部材としての第2永久磁石、75…付勢力調整機構としてのマイクロメータ、76…封止部材、78…付勢部材としてのコイルスプリング、79…変位拡大機構、80…変位機構、81…第1の部材及び磁界発生部材としての電磁石、83…封止部材、EL…放射ビームとしての露光光、W…被照射体としてのウエハ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学部材の形状を変形させる光学部材変形装置において、
前記光学部材に固定される第1の部材と、
前記第1の部材に対向して配置される第2の部材と、
駆動源から伝達される駆動力に基づいて、前記第1の部材及び前記第2の部材のうち一方の部材を、他方の部材に対して相対距離が変化するように変位させる変位機構とを備え、
前記第1の部材及び前記第2の部材のうち、一方の部材は磁性体又は磁界発生部材であると共に、他方の部材は磁界発生部材であることを特徴とする光学部材変形装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光学部材変形装置において、
前記変位機構は、前記第2の部材を前記第1の部材に対して相対距離が変化するように変位させることを特徴とする光学部材変形装置。
【請求項3】
請求項2に記載の光学部材変形装置において、
前記変位機構は、前記第1の部材を前記第2の部材に対して相対距離が変化するように付勢する付勢部材を更に備えることを特徴とする光学部材変形装置。
【請求項4】
請求項3に記載の光学部材変形装置において、
前記付勢部材は、
前記第1の部材と前記第2の部材との間に斥力が作用する場合には、前記第1の部材を前記第2の部材に接近させる方向に付勢すると共に、
前記第1の部材と前記第2の部材との間に引力が作用する場合には、前記第1の部材を前記第2の部材から離間させる方向に付勢することを特徴とする光学部材変形装置。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の光学部材変形装置において、
前記変位機構は、前記付勢部材による前記第1の部材に対する付勢力を調整する付勢力調整機構を更に備えることを特徴とする光学部材変形装置。
【請求項6】
請求項3〜請求項5のうち何れか一項に記載の光学部材変形装置において、
前記付勢部材は、着脱交換可能に設けられていることを特徴とする光学部材変形装置。
【請求項7】
請求項2〜請求項6のうち何れか一項に記載の光学部材変形装置において、
前記変位機構は、
前記第2の部材側に連結され、前記駆動源から伝達される駆動力に基づいて変位する変位部材と、
前記駆動源からの駆動力に基づき変位する連結部材を有し、該連結部材の変位量を拡大して前記変位部材に伝達する変位拡大機構と
を更に備えることを特徴とする光学部材変形装置。
【請求項8】
請求項7に記載の光学部材変形装置において、
前記変位拡大機構は、前記連結部材を支持部を介して支持する支持部材を含んで構成され、
前記連結部材は、前記駆動源に前記連結部を介して連結されると共に、該駆動源からの駆動力に基づいて前記支持部を中心に揺動することを特徴とする光学部材変形装置。
【請求項9】
請求項8に記載の光学部材変形装置において、
前記支持部材は、前記連結部材における前記第2の部材に対する連結部と前記支持部との距離が、前記連結部材における前記駆動源に対する連結部と前記支持部との距離よりも大きくなるように前記連結部材を支持することを特徴とする光学部材変形装置。
【請求項10】
請求項9に記載の光学部材変形装置において、
前記変位部材の変位量を計測する計測部材を更に備えることを特徴とする光学部材変形装置。
【請求項11】
請求項7〜請求項10のうち何れか一項に記載の光学部材変形装置において、
前記変位機構は、
前記第2の部材と前記変位部材との間に設けられ、前記変位拡大機構から伝達される前記変位部材の変位量を縮小して前記第2の部材に伝達する縮小機構を更に備えることを特徴とする光学部材変形装置。
【請求項12】
被照射体に光を導くための複数の光学部材を備える光学系において、
前記光学部材を保持する鏡筒と、
前記鏡筒に設けられ、前記光学部材の形状の少なくとも一部を変形させる請求項1〜請求項11のうち何れか一項に記載の光学部材変形装置と
を備えることを特徴とする光学系。
【請求項13】
請求項12に記載の光学系において、
前記一方の部材の変位量を拡大する変位拡大機構に連結され、該変位拡大機構を介して伝達される前記駆動源からの反力を受容する反力受容部材を更に備えることを特徴とする光学系。
【請求項14】
請求項13に記載の光学系において、
前記反力受容部材は、前記鏡筒の内外を仕切る壁面の少なくとも一部を構成しており、
前記反力受容部材には、前記変位機構を前記鏡筒の内側に挿入可能とする挿入部が設けられていることを特徴とする光学系。
【請求項15】
請求項14に記載の光学系において、
前記駆動源は、前記鏡筒の外側に設けられていることを特徴とする光学系。
【請求項16】
請求項14又は請求項15に記載の光学系において、
前記挿入部の口縁と前記変位機構との間に設けられ、前記鏡筒の内側を気密化する封止部材を更に備えることを特徴とする光学系。
【請求項17】
請求項16に記載の光学系において、
前記封止部材の一部は、前記第1の部材と前記第2の部材との間を横切ることを特徴とする光学系。
【請求項18】
請求項17に記載の光学系において、
前記封止部材は、前記反力受容部材に固定して設けられることを特徴とする光学系。
【請求項19】
請求項13〜請求項18のうち何れか一項に記載の光学系を備え、
前記鏡筒に保持される光学部材を介して放射ビームを被照射体に照射し、該被照射体に所定のパターンを形成することを特徴とする露光装置。
【請求項20】
リソグラフィ工程を含むデバイスの製造方法において、
前記リソグラフィ工程は請求項19に記載の露光装置を用いることを特徴とするデバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−119551(P2011−119551A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276989(P2009−276989)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】