説明

光導波路素子ならびに光モジュールおよびその光軸調整方法

【課題】微小なチャネル導波路との光軸調整を容易かつ短時間に実施できる光導波路素子ならびに光モジュールおよびその光軸調整方法を提供する。
【解決手段】SHG素子1は、基板2の上面に配置されたチャネル導波路3と、チャネル導波路3に近接して配置されたスラブ導波路4などで構成される。最初に、SHG素子1の入射端面2aにおいて光ビームを高さ方向に走査して、スラブ導波路4との光結合を得た後、光ビームを横方向に走査して、チャネル光導波路3との光結合を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ素子等の光源と光導波路素子との間の光軸調整を容易に実施するための光導波路素子、ならびに該光導波路素子を含む光モジュールおよびその光軸調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光導波路素子を用いた光モジュールにおいて、光の導波機能と光変調や波長フィルタリング、合分波等の所要の機能を受け持つチャネル光導波路と光源との間の光結合を一般に行う必要がある。
【0003】
下記の特許文献1では、光通信モジュールにおいて、レーザ光源と光ファイバの入射面との間に集光レンズが配置され、この集光レンズをアクチェータでX方向またはY方向に一定周期、一定振幅で微少振動(wobbling)させることにより、光軸誤差信号を得る手法が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−338795号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光導波路素子の光入出力端面は、一般に、1mm×1mm程度の面積を持ち、その中で光結合を要するチャネル導波路の断面寸法は、数μm×数μm程度であり、素子全体の面積に比べて非常に小さい。
【0006】
従って、光導波路素子の光入出力端面に対してラスター走査を行って、チャネル導波路を探し出そうとする場合、スキャンピッチが数μmオーダーであるため、スキャンに要する時間が非常に長くなってしまう。
【0007】
本発明の目的は、微小なチャネル導波路との光軸調整を容易かつ短時間に実施できる光導波路素子ならびに光モジュールおよびその光軸調整方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る光導波路素子は、基板下面から所定の高さに配置されたチャネル導波路と、
該チャネル導波路に対して所定の高さに配置され、該チャネル導波路より幅広の断面形状を有するスラブ導波路とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る光導波路素子において、チャネル導波路は、スラブ導波路と同じ高さに配置されていることが好ましい。
【0010】
本発明に係る光導波路素子において、チャネル導波路は、スラブ導波路から高さ方向に一定距離隔てて配置されていることが好ましい。
【0011】
本発明に係る光導波路素子において、スラブ導波路は、光入力側から光出力側へ向けて断面幅が減少するテーパー状導波路であることが好ましい。
【0012】
本発明に係る光導波路素子において、チャネル導波路は、高調波発生機能、光変調機能、光導波機能および波長フィルタリング機能のうち少なくとも1つの機能を有することが好ましい。
【0013】
また本発明に係る光モジュールは、上記の光導波路素子と、
光源からの光を伝送して、光導波路素子に入射させる光伝送素子と、
該光伝送素子を、光軸に対して垂直な面内で位置決めするためのアクチュエータとを備えることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る光モジュールにおいて、前記光伝送素子は、結合レンズまたは光ファイバであることが好ましい。
【0015】
本発明に係る光モジュールにおいて、前記アクチュエータは、スムーズインパクト駆動機構であることが好ましい。
【0016】
また本発明に係る光モジュールの光軸調整方法は、光導波路素子の光出力側に配置した受光素子を用いて、スラブ導波路から出射される光の強度を計測しながら、光伝送素子を高さ方向に走査するステップと、
光伝送素子の高さ方向の走査後、チャネル導波路から出射される光の強度を計測しながら、光伝送素子を横方向に走査するステップと、を含むことを特徴とする。
【0017】
本発明に係る光モジュールの光軸調整方法において、光伝送素子の高さ方向の走査後で横方向の走査前に、光伝送素子の横方向走査の高さを予め定めた距離だけ変更するステップと、をさらに含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、チャネル導波路に対して所定の相対位置に、チャネル導波路より幅広の断面形状を有するスラブ導波路を設けた光導波路素子を用いることにより、チャネル導波路との光軸調整を容易かつ短時間に実施することができる。
【0019】
その光軸調整方法として、最初に、光源と光導波路素子の間に配置された光伝送素子を高さ方向に変位させ、光導波路素子を高さ方向に走査することによって、スラブ導波路の光軸高さを検出する。続いて、光伝送素子を横方向に変位させ、光導波路素子を横方向に走査することによって、チャネル導波路の光軸を検出する。こうして高さ方向の走査および横方向の走査により光伝送素子の光軸調整が完了するため、光導波路素子の端面全体をラスター走査する従来の方法と比べて格段に短時間で光軸調整を実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係る光導波路素子の一例を示す斜視図である。ここでは、光導波路素子としてSHG(第2高調波発生)素子を例示する。理解容易のため、素子の光軸方向をX軸、素子の幅方向をY軸、素子の高さ方向をZ軸としている。
【0021】
SHG素子1は、基板2と、基板2の上面に配置されたチャネル導波路3と、チャネル導波路3に近接して配置されたスラブ導波路4などで構成される。
【0022】
基板2は、ニオブ酸リチウム結晶などの非線形材料で構成され、一般に、矩形断面を有する平板形状や角柱形状に形成される。素子の入射端面2aおよび出射端面2bは、例えば、1mm×1mm程度の断面寸法を有する。
【0023】
チャネル導波路3は、一般に、数μm×数μm程度の断面を有し、入射端面2aから出射端面2bに至るまで一定の断面形状を成し、チャネル導波路3を伝搬する光と相互作用して、半分の波長を有する光を発生するSHG機能を有する。例えば、波長900nm〜1300nmの赤外光がチャネル導波路3に入射すると、波長450nm〜650nmの可視光に変換される。波長の変換効率を上げるために、チャネル導波路3は、一般に、赤外光と可視光の位相整合をとるための周期的ドメイン反転構造を有している。
【0024】
スラブ導波路4は、チャネル導波路3とほぼ同じ厚さを有するが、入射端面2aにおいてチャネル導波路3より幅広の断面形状を有し、入射端面2aから出射端面2bへ向けて導波路の断面幅が単調に減少するテーパー状導波路として構成される。スラブ導波路4は、チャネル導波路3と同じ高さになるように、基板2の上面に配置される。
【0025】
スラブ導波路4の機能は、入射端面2aにおいて光ビームを高さ方向(Z方向)に走査した場合、光ビームがY方向にずれていても、光ビームを確実に捕捉できる点にある。即ち、入射端面2aでは、スラブ導波路4の断面幅がチャネル導波路3より格段に大きいことから、光ビームをチャネル導波路3に入射させる場合と比べて、スラブ導波路4に入射させる方が格段に容易になる。
【0026】
光ビームがスラブ導波路4に入射した時点で、光ビームの高さはスラブ導波路4の高さと一致することになる。さらに、図1に示すSHG素子1では、スラブ導波路4は、チャネル導波路3の高さと一致するように予め形成されることから、光ビームの高さはチャネル導波路3の高さとも一致することになる。従って、この段階で、光ビームの高さ調整が完了したことになる。
【0027】
次に、入射端面2aにおいて光ビームを横方向(Y方向)に走査すると、光ビームがチャネル導波路3に入射するようになる。光ビームの高さ調整が済んでいることから、Y方向走査による光軸検出も短時間で完了させることができる。
【0028】
一方、SHG素子1の出射端面2bでは、スラブ導波路4の断面幅が比較的小さくなっているため、スラブ導波路4からの光ビーム出射位置はほぼ一定となり、スラブモードからの光出力を小口径のフォトダイオードなどで容易に検出することできる。
【0029】
図2は、図1に示したSHG素子1を搭載した光モジュールの一例を示す斜視図である。光モジュール10は、レーザ素子11と、コリメートレンズL1と、集光レンズL2と、SHG素子1と、出力レンズL3などを備え、さらに、レンズL1,L2を位置決めするアクチュエータ12を備える。
【0030】
レーザ素子11は、半導体レーザや固体レーザなどで構成され、ヒートシンク11aの上面に固定されている。
【0031】
コリメートレンズL1は、レーザ素子11から発散する光をほぼ平行光に変換する。集光レンズL2は、コリメートレンズL1からの平行光を集光して、SHG素子1の入射端面2aにビームスポットを形成する。これらのコリメートレンズL1および集光レンズL2は、レーザ素子11からの光を伝送して、SHG素子1に入射させる光伝送素子として機能する。
【0032】
出力レンズL3は、SHG素子1の出射端面2bから出射される光を集光して、次のステージへ出力する。
【0033】
アクチュエータ12は、コリメートレンズL1および集光レンズL2を光軸に対して垂直な面内で位置決めする機能を有し、例えば、特開2002−95272号公報で示されるようなスムーズインパクト駆動機構(SIDM:Smooth Impact Drive Mechanism)で構成される。
【0034】
SIDMは、ある程度質量を持つ移動体と、この移動体を摩擦で保持するためのロッドと、ロッドと固定部材(ベース)との間に介在した圧電素子などで構成される。その動作は、圧電素子の伸縮運動によりロッドが長手方向に変位するとともに、鋸歯状駆動により順方向速度と逆方向速度を変えることによって、移動体が慣性で静止するか、あるいはロッドに追従するかを選択して、移動体を累積的に変位させることができる。
【0035】
図2では、アクチュエータ12は、ベース(不図示)に対してZ方向に変位する第1SIDMと、第1SIDMの移動体に搭載され、Y方向に変位する第2SIDMとを備え、コリメートレンズL1はY方向に位置決め可能であり、集光レンズL2はZ方向に位置決め可能である。
【0036】
光モジュール10の出力側には、出力レンズL3から出力される光の一部を反射し、残りを通過させるビームスプリッタ20と、ビームスプリッタ20で反射した光を受光するモニタ用のフォトダイオード21が配置される。
【0037】
図1に示したように、SHG素子1の出射端面2bでは、チャネル導波路3の出射位置とスラブ導波路4の出射位置が近接しているため、単一のフォトダイオード21で双方からの出射光を検出することができる。また、各導波路の出射位置とモニタ用光学系を調整することで、チャネル導波路3からの出力とスラブ導波路4からの出力をそれぞれ独立に検出することも可能である。
【0038】
図3(a)は、本発明に係る光モジュールの光軸調整方法の一例を示す説明図であり、図3(b)は、光軸調整時のモニタ出力の時間変化を示すグラフである。SHG素子1の入射端面2aにおいて、図2に示したアクチュエータ12の駆動により、コリメートレンズL1をY方向に変位させたり、集光レンズL2をZ方向に変位させることによって、集光レンズL2からの光ビームをY方向またはZ方向に走査する。
【0039】
まずステップ1において、コリメートレンズL1をY方向に変位させて、光ビームをZ方向に走査したとき、スラブ導波路4に入射するように、光ビームのY位置を粗く調整する。スラブ導波路4は、アクチュエータ12の有効ストロークより十分に幅広に設計することが可能であるので、この工程は容易に実現可能である。
【0040】
次に、コリメートレンズL1を固定したままで、集光レンズL2をZ方向に変位させて、光ビームをZ方向(高さ方向)に走査する。この工程で、レーザ素子11からの光を確実にスラブ導波路4と光結合させることができる。即ち、光ビームの高さがスラブ導波路4の設置高さに一致したとき、スラブ導波路4との光結合が起こる。光ビームは、スラブ導波路4を通過して、フォトダイオード21によって検出される。フォトダイオード21の出力が最大になるように、集光レンズL2の高さを調整することで、SHG素子1の導波路の設置高さが決定され、ステップ1は終了する。
【0041】
次に、ステップ2において、集光レンズL2を停止した状態で、コリメートレンズL1をY方向に変位させて、光ビームをY方向(横方向)に走査する。このとき、コリメートレンズL1が取り付けられたアクチュエータ12の駆動方向と基板2の上面とが完全に平行になっていない場合には、このY方向走査の際に、実際の光結合位置はZ方向にわずかにシフトする。また、各光導波路の厚さは一般に数ミクロン程度である。
【0042】
これらの事実を考慮して、Y方向走査は、集光レンズL2によるZ方向の位置調整を適宜実施しながら、数回行う。集光レンズL2によるZ方向の位置調整は、導波路厚さより十分少ない1ミクロン程度が適当である。この工程によると、チャネル光導波路3への光結合は、その光軸高さがステップ1により予めほぼ決定されているために、最小限の走査回数で足りることになる。
【0043】
チャネル光導波路3との光結合が得られた後は、フォトダイオード21の出力が最大になるように、光ビームのZ方向およびY方向に関するディザ(Dither)動作や山登り制御を行うことにより光軸調整を微調整して、チャネル光導波路3との光結合効率が最大となるように設定できる。
【0044】
ここでは、コリメートレンズL1をY方向に変位させ、集光レンズL2をZ方向に変位させるアクチュエータ12を用いた例を説明したが、コリメートレンズL1をZ方向に、集光レンズL2をY方向に変位させてもよく、あるいは、レンズL1,L2の一方を固定し、他方をY方向およびZ方向に変位させるアクチュエータを用いてもよく、本発明は同様に適用可能である。
【0045】
図4(a)は、比較例として従来のラスター走査による光軸調整方法を示す説明図であり、図4(b)は、光軸調整時のモニタ出力の時間変化を示すグラフである。SHG素子1の基板上面には、チャネル導波路3のみが配置され、本発明に係るスラブ導波路は存在していない。
【0046】
ラスター走査の場合、走査位置を微小ピッチでY方向に移動しながら、光ビームをZ方向に往復走査させる。この場合、光ビームがチャネル導波路3と結合するまで、モニター出力は全く観測されない。
【0047】
また、チャネル光導波路3の幅は、一般に数ミクロン程度であることから、光結合位置を飛び越えてしまわないように、Y方向の各走査ラインのシフト位置は1ミクロン程度にしなければならない。従って、1mm程度の領域をラスター走査するためには、1000回程度のZ方向走査を繰り返す必要がある。その結果、全体の走査時間は、本発明に比べてかなり長くなることが判る。
【0048】
図5は、図1に示したSHG素子1を搭載した光モジュールの他の例を示す斜視図である。光モジュール10は、レーザ素子11と、コリメートレンズL1と、集光レンズL2と、SHG素子1と、出力レンズ(不図示)などを備え、さらに、レンズL1,L2を固定するためのホルダ13,14を備える。
【0049】
この光モジュール10は、図2に示したものと同様な構成を有するが、レンズL1,L2の位置調整後に、モジュール筐体(不図示)に恒久的に固定するためのホルダ13,14を追加している。
【0050】
レンズL1,L2は、断面コ字状のホルダ13,14によって挟み込まれるように保持される。レンズL1,L2を位置調整する場合、YZステージなどの微動機構を装着して、各ホルダ13,14をZ方向およびY方向に独立に位置決めする。レンズL1,L2の位置調整が完了すると、接着や溶接を用いてホルダ13,14をモジュール筐体に完全に固定する。位置調整に使用した微動機構は取り外して、再利用することができる。
【0051】
レンズL1,L2の位置調整工程において、図3で既に説明したレンズ位置調整方法と同一のアルゴリズムを適用する。即ち、最初にレンズの位置調整によりスラブ導波路4と光結合を行って光軸高さを検出し(図3のステップ1)、検出された光軸高さ近傍でY方向にレンズを移動することにより(図3のステップ2)、チャネル導波路3との光結合を短時間で達成できる。
【0052】
図6は、光変調器を搭載した光モジュールの一例を示す斜視図である。光モジュール40は、光導波路型の光変調器30と、光変調器30の入射側に配置された光ファイバ41と、光変調器30の出射側に配置された光ファイバ42などで構成される。
【0053】
入射側の光ファイバ41の一端は、ホルダ41aによって保持され、その他端は、レーザ素子などの光源(不図示)と結合している。光ファイバ41は、光源からの光を伝送して、光変調器30に入射させる光伝送素子として機能する。出射側光ファイバ42の一端は、ホルダ42aによって保持され、その他端は、別のモジュール(不図示)と結合している。
【0054】
光変調器30は、ニオブ酸リチウムなどの基板の上面に、光進行方向に沿って、チャネル導波路31と、チャネル導波路31から分岐した2本のチャネル導波路32,33と、各チャネル導波路32,33が合流したチャネル導波路34とが配置されてマッハツェンダ型干渉計を構成している。各チャネル導波路32,33の近傍には、光変調用の電極(不図示)が設けられる。
【0055】
本発明に係るスラブ導波路35が、チャネル導波路31,33,34に近接して設けられている。スラブ導波路35は、チャネル導波路31〜34とほぼ同じ厚さを有するが、入射端面においてチャネル導波路31より幅広の断面形状を有し、チャネル導波路31〜34と同じ高さになるように、基板2の上面に配置される。
【0056】
従来のラスター走査を用いた光軸調整方法では、それぞれのファイバ位置を調整するために、幅・深さともに数ミクロン程度のチャネル光導波路31,34に対して、直径10ミクロン程度の光ファイバ41,42の光導波部を位置合わせする必要があり、熟練した技能と長い作業時間が要求される。
【0057】
本発明に係る光軸調整方法を実施する場合、ホルダ41aを、YZステージなどの微動機構に取り付けて、光ファイバ41の先端を光変調器30の入射端面でY方向またはZ方向に走査できるように構成する。さらに、光変調器30の出射側には、チャネル導波路31〜34およびスラブ導波路35からの光を検出するためのモニタ用のフォトダイオードを配置する。
【0058】
光ファイバ41の位置調整工程において、図3で既に説明したレンズ位置調整方法と同一のアルゴリズムを適用する。即ち、最初に光ファイバ41の位置調整によりスラブ導波路35と光結合を行って光軸高さを検出し(図3のステップ1)、検出された光軸高さ近傍でY方向に光ファイバ41を移動することにより(図3のステップ2)、チャネル導波路31との光結合を短時間で達成できる。
【0059】
光ファイバ41の位置調整が完了すると、ホルダ41aをモジュール筐体(不図示)に恒久的に固定する。位置調整に使用した微動機構は取り外して、再利用する。
【0060】
図7は、本発明が適用可能な光導波路素子の他の例を示す断面図である。ここでは、光導波路素子を装荷型光導波路として構成した例を説明する。装荷型光導波路は、一般に、基板結晶51の上に、基板結晶51より屈折率の高いスラブ導波路54が形成され、さらにスラブ導波路54の上に屈折率の高いストリップライン55が形成されている。
【0061】
スラブ導波路54の膜厚は、光が伝搬しにくいカットオフ条件になるように薄めに作成される。また、ストリップライン55についても、その幅を調整することで、ストリップライン55自体に光が導波しないように設計している。
【0062】
このような装荷型構造の場合、スラブ導波路54のストリップライン55直下の領域の等価屈折率が上昇し、その結果、この直下領域がチャネル導波路53として機能する。
【0063】
本発明に係る光軸調整方法を実施する場合、光導波路素子の出射側に、チャネル導波路53およびスラブ導波路54からの光を検出するためのモニタ用のフォトダイオードを配置する。このとき、スラブ導波路54に入射した光が、減衰しながらもスラブ導波路54を通過できるように、スラブ導波路54の膜厚をカットオフ条件近傍に設定することが好ましい。
【0064】
したがって、このような構造をもつ光導波路素子への光結合においても本発明によるスラブモードを用いた光結合が可能になり、光結合工程の簡略化が図られる。
【0065】
図8は、本発明が適用可能な光導波路素子のさらに他の例を示す断面図である。この光導波路素子では、チャネル導波路53が、スラブ導波路54と同一高さでなく、高さ方向に一定距離隔てて配置されている。
【0066】
石英などの基板結晶51の上に、ガラスなど低屈折率材料からなるクラッド層52が形成され、さらにクラッド層52の上に、クラッド層52より高屈折率の材料からなるスラブ導波路54が形成され、さらにスラブ導波路54の上に、低屈折率材料からなるクラッド層56が形成されている。
【0067】
クラッド層56の内部には、基板結晶51の下面から所定の高さに、チャネル導波路53が埋め込まれている。チャネル導波路53とスラブ導波路54は、相互に光結合が起きない程度の間隔をおいて配置される。その間隔は、導波する光モードのサイズ等に依存するが、一般に、10ミクロンから20ミクロン程度の間隔であり、さらに精密に調整して形成することが可能である。
【0068】
本発明に係る光軸調整方法を実施する場合、光導波路素子の出射側に、チャネル導波路53およびスラブ導波路54からの光を検出するためのモニタ用のフォトダイオードを配置する。
【0069】
図6と同様に、光導波路素子の入射側に光伝送素子として光ファイバを設けた場合、光ファイバの位置調整工程において、図3のステップ1と同様にして、最初に光ファイバの位置調整によりスラブ導波路54と光結合を行って光軸高さを検出する。
【0070】
次に、チャネル導波路53の中心とスラブ導波路54の中心との間の間隔に対応した距離だけ、光ファイバの横方向走査の高さを変更するステップを追加する。
【0071】
次に、図3のステップ2と同様にして、光ファイバをY方向に移動することにより、チャネル導波路53との光結合を短時間で達成できる。
【0072】
このように、一般の光導波路素子において、素子本来の機能を実現するためのチャネル導波路だけでなく、スラブモードによる光伝搬が可能なスラブ導波路が存在していれば、本発明に係る光軸調整方法を適用することができる。その場合、チャネル導波路とスラブ導波路の高さが相違していても、横方向走査の高さを変更するステップを追加することによって、迅速な光軸調整が可能になる。
【0073】
以上の説明では、光導波路素子のチャネル導波路は、高調波発生機能、光変調機能または光導波機能を有する場合を例示したが、その他に、波長フィルタリング機能を有するものでもよく、あるいはこれらの機能の2つ以上を有する場合であっても、本発明は同様に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、微小なチャネル導波路との光軸調整を容易かつ短時間に実施できる点で、産業上極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の一実施形態に係る光導波路素子の一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示したSHG素子1を搭載した光モジュールの一例を示す斜視図である。
【図3】図3(a)は、本発明に係る光モジュールの光軸調整方法の一例を示す説明図であり、図3(b)は、光軸調整時のモニタ出力の時間変化を示すグラフである。
【図4】図4(a)は、比較例として従来のラスター走査による光軸調整方法を示す説明図であり、図4(b)は、光軸調整時のモニタ出力の時間変化を示すグラフである。
【図5】図1に示したSHG素子1を搭載した光モジュールの他の例を示す斜視図である。
【図6】光変調器を搭載した光モジュールの一例を示す斜視図である。
【図7】本発明が適用可能な光導波路素子の他の例を示す断面図である。
【図8】本発明が適用可能な光導波路素子のさらに他の例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0076】
1 SHG素子
3,31〜34,53 チャネル導波路
4,35,54 スラブ導波路
10 光モジュール
11 レーザ素子
12 アクチュエータ
13,14 ホルダ
20 ビームスプリッタ
21 フォトダイオード
30 光変調器
41,42 光ファイバ
55 ストリップライン
52,56 クラッド層
L1 コリメートレンズ
L2 集光レンズ
L3 出力レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板下面から所定の高さに配置されたチャネル導波路と、
該チャネル導波路に対して所定の高さに配置され、該チャネル導波路より幅広の断面形状を有するスラブ導波路とを備えることを特徴とする光導波路素子。
【請求項2】
チャネル導波路は、スラブ導波路と同じ高さに配置されていることを特徴とする請求項1記載の光導波路素子。
【請求項3】
チャネル導波路は、スラブ導波路から高さ方向に一定距離隔てて配置されていることを特徴とする請求項1記載の光導波路素子。
【請求項4】
スラブ導波路は、光入力側から光出力側へ向けて断面幅が減少するテーパー状導波路であることを特徴とする請求項1記載の光導波路素子。
【請求項5】
チャネル導波路は、高調波発生機能、光変調機能、光導波機能および波長フィルタリング機能のうち少なくとも1つの機能を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光導波路素子。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の光導波路素子と、
光源からの光を伝送して、光導波路素子に入射させる光伝送素子と、
該光伝送素子を、光軸に対して垂直な面内で位置決めするためのアクチュエータとを備えることを特徴とする光モジュール。
【請求項7】
前記光伝送素子は、結合レンズまたは光ファイバであることを特徴とする請求項6記載の光モジュール。
【請求項8】
前記アクチュエータは、スムーズインパクト駆動機構であることを特徴とする請求項6記載の光モジュール。
【請求項9】
請求項6記載の光モジュールの光軸調整方法であって、
光導波路素子の光出力側に配置した受光素子を用いて、スラブ導波路から出射される光の強度を計測しながら、光伝送素子を高さ方向に走査するステップと、
光伝送素子の高さ方向の走査後、チャネル導波路から出射される光の強度を計測しながら、光伝送素子を横方向に走査するステップと、を含むことを特徴とする光モジュールの光軸調整方法。
【請求項10】
光伝送素子の高さ方向の走査後で横方向の走査前に、光伝送素子の横方向走査の高さを予め定めた距離だけ変更するステップと、をさらに含むことを特徴とする請求項9記載の光モジュールの光軸調整方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−233726(P2008−233726A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−76077(P2007−76077)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】