説明

光結合装置および光結合方法

【課題】光導波路をはじめとする光学素子に効率的に光を結合する光結合装置を提供する。
【解決手段】光学素子に光を結合するための光結合装置であって、流体の多層流を形成するための流路と、前記流体の多層流の光学的特性を変更するための手段を有しており、前記多層流のいずれかの層を光導波路として使用し、前記多層流の光学的特性を変更することで、前記光学素子との光の結合の効率を変更することを特徴とする光結合装置。前記多層流を形成するための流路は、複数種類の流体のそれぞれを注入する流路があり、注入地点より下流にある一点において合流することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子に光を結合させるための光結合装置および光結合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバは、少ないエネルギーロスで長距離に信号を伝搬する、レーザ光を光ファイバに結合することによりレーザ光を照射標的物へ向けて照射方向を簡便に変更できるなど、光を狭い空間に閉じ込めることによる利点が知られている。光ファイバ内での光の伝搬はコア部分の屈折率がその周囲にあるクラディング層屈折率より高いことにより、光がコア部分とクラディング層の境界面を全反射することにより実現する。同様の現象は光ファイバだけでなく、光導波路を形成しても生じる。半導体基板上に二酸化ケイ素などの透明な材質を薄膜として配置することにより、レーザ用の結晶より生じたレーザ光を導くなどの応用に利用されている。また、光を数マイクロメートル程度の大きさを有する薄膜導波路に導入することにより、薄膜導波路を伝搬する光を用いた物理的、化学的、および生物学的な光センサとしての応用が注目されている。(非特許文献1)
【0003】
上記のような光電子光学およびセンサー工学において、薄膜導波路の有用性は実証されているが、光をいかに少ないエネルギーロスで薄膜導波路へ導入するかという課題を解決するために、従来技術として様々な方法が開示されている。なお、この光の導波路またはファイバへの導入は一般にカップリングまたは光結合と呼ばれるが、本明細書においては以下光結合と記載する。
【0004】
端面光結合法はレンズによって集光された光を導波路の端面に照射する方法である(特許文献1参照)。また、プリズムによって光を導波路に結合させる方法も開示されている(特許文献2参照)。その他に、プリズムと同様な原理で光が導波路に結合される方法として、回折格子を用いた方法が開示されている(特許文献3参照)。さらに、導波路端面付近にマイクロミラーを用いて入射光を導波路方向へ反射することによって結合する方法も開示されている(特許文献4参照)。また、光ファイバより照射される光を導波路に結合する場合にはエンドバッド法が用いられることが多い(特許文献5参照)。エンドバッド法の応用として、導波路をテーパー形状の加工を施すことにより、より薄い導波路に光を結合する方法も開示されている(特許文献6参照)。
【0005】
一方、光導波路をセンサとして用いる場合、流体内における検体の検出に光センサを応用する試みが実施されている。例えば、光導波路を流路近傍へ配置して、光導波路より生じるエバネッセント波により流路内の検体を検出する方法が開示されている(特許文献7参照)。また、マイクロ流路を用いたデバイスでは、一般的な流路幅は50から200μm程度で構成されることが多く、この大きさはおよそマルチモードの光ファイバの直径に相当する。このため、マイクロ流路を構成する部材より流体の屈折率が高くなるようにすると、マイクロ流路内に流体を満たして、そこに光を伝搬させるということが可能になり、マイクロ流体と光を融合したOptofluidicsという分野が立ち上がりつつある。マイクロ流路内に入射された光は、流路壁面において全反射を繰り返し、光が光ファイバ内を伝搬するのと同様の原理でマイクロ流体内に閉じ込められたまま伝搬する(非特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平05−224099号公報(第5項、図3)
【特許文献2】特開平06−341894号公報(第6項、図1)
【特許文献3】特許第03236199号公報(第7項、図1)
【特許文献4】特開平05−264833号公報(第10項、図1)
【特許文献5】特開平07−281213号公報(第4項、図1)
【特許文献6】特開平09−061652号公報(第7項、図1)
【特許文献7】特開2006−177878号公報(第8項、図1)
【非特許文献1】W.Lukosz,“Integrated optical chemical and direct biochemical sensors,”Sensors and Actuators B,1995,Vol.29,pp37から50(第38項、図1)
【非特許文献2】Demetri Psaltis,Stephen R. Quake,and Changhuei Yang,“Developing optofluidic technology through the fusion of microfluidics and optics,”Nature,2006,Vol.442,pp381から386(第384項、図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記端面光結合法およびマイクロミラーを用いた光結合方法において、導波路端面またはマイクロミラーへ入射光を集光するさいに精密なアライメントが要求されるという課題がある。
【0007】
また、前記プリズムを用いた結合法は、プリズム面を導波路面に密着させる必要が生じるため、プリズムを押さえつけることによる導波路面の破損の可能性が生じるという課題がある。さらに、前記エンドバッド法では、導波路の断面積と光ファイバの断面積が同じような大きさであることが好ましく、センサとして使用される導波路は一般的なシングルモードの光ファイバ系である5μmより小さいことがあるため、薄膜導波路への光結合には限界がある。
【0008】
さらに、前記回折格子を用いた方法および前記テーパー状の導波路を形成する方法は、デバイスの作成方法が複雑であるという課題を有する。
エバネッセント波により流路内の検体を検出するセンサとして用いる方法は、流路側壁の近傍にしか光が到達せず、エバネッセント波の領域と重ならない流路領域の検体が検出されないという課題が存在する。
【0009】
本発明は、このような背景技術を鑑みてなされたものであり、アライメント条件を低減し、簡便なデバイス作成方法により薄膜導波路に代表される光学素子への光結合を実現する光結合装置および光結合方法を提供するものである。さらに、前記光結合装置を用いて検体のデッドボリュームを低減させた検出装置および検出方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決する光結合装置は、光学素子に光を結合するための光結合装置であって、流体の多層流を形成するための流路と、前記流体の多層流の光学的特性を変更するための手段を有しており、前記多層流のいずれかの層を光導波路として使用し、前記多層流の光学的特性を変更することで、前記光学素子との光の結合の効率を変更することを特徴とする。
【0011】
上記の課題を解決する光結合方法は、光学素子に光を結合する光結合方法であって、流体の多層流を形成する工程と、前記多層流のいずれかの層に光を導入し、前記光を導入した層を介して光学素子へ光を導入する工程を有することを特徴とする。
【0012】
上記の課題を解決する光検出装置は、光学的な検出を行うための検出装置であって、流体の多層流を形成するための流路と、前記流体の多層流の状態を変更するための手段と、前記流体のいずれかの層に選択的に光を導入する手段と、前記多層流から発せられる信号を検出する手段を有しており、前記多層流のいずれかの層を光導波路として使用し、前記多層流の状態を変更することで、前記光学素子との光の結合の状態を変更し、前記光学素子に結合された光により検出することを特徴とする。
【0013】
上記の課題を解決する光検出方法は、流体の多層流を形成する工程と、前記多層流のいずれかの層に光を導入し、前記光を導入した層を介して光学素子へ光を導入する工程と、前記光学素子を伝搬する光を利用して検出する工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、光導波路をはじめとする光学素子へマイクロ流路内の流体で構成された光導波路を介して光結合させる光結合装置および光結合方法を提供することができる。
本発明の光結合装置においては、マイクロ流路を用いて光導波路を構成するため、テーパーなどの複雑な形状を形成するために、半導体製造装置などの特殊な製造機器を用いることなく、射出成型などの簡便な方法によりデバイスを作成できるという効果を有する。
【0015】
また、マイクロ流路の幅は50から200μm程度で用いられることが多いため、5μm未満のシングルモード光導波路幅へ直接光結合するためのアライメント条件に比較すると、大きく緩和されるという効果がある。
【0016】
さらに、本発明における光結合装置は、光導波路面と接触するのがプリズムのような固体でなく流体であるため、光導波路面を損傷することなく光結合が可能であるという効果を有する。
【0017】
また、本発明における光検出装置は、検体を光導波路より生じるエバネッセント領域に閉じ込めて検出するため、検体のデッドボリュームが低減できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に記載する。
本発明に関わる光結合装置は、光学素子に光を結合するための光結合装置であって、流体の多層流を形成するための流路と、前記流体の多層流の光学的特性を変更するための手段を有しており、前記多層流のいずれかの層を光導波路として使用し、前記多層流の光学的特性を変更することで、前記光学素子との光の結合の効率を変更することを特徴とする。
【0019】
前記多層流を形成するための流路は、複数種類の流体のそれぞれを注入する流路があり、注入地点より下流にある一点において合流する流路が好ましい。
前記多層流を形成する流体のうち少なくとも1つは他の流体と異なる屈折率を有することが好ましい。
【0020】
前記多層流の光学的特性を変更するための手段は、複数種類のそれぞれの流体に付与する圧力を調節することができる装置が好ましく、マイクロデバイス内に圧力調整装置が組みまれていても、もしくは圧力調整装置がマイクロデバイス外部に存在していてもよい。
【0021】
前記多層流の光学的特性の変更は、多層流を形成する少なくとも1つの層の幅、または多層流を形成する少なくとも1つの層の屈折率であることが好ましい。
前記光の結合の効率は、光学素子との光結合強度であることが好ましい。
【0022】
本発明に関わる光結合方法は、光学素子に光を結合する光結合方法であって、流体の多層流を形成する工程と、前記多層流のいずれかの層に光を導入し、前記導入した層を介して光学素子へ光を導入する工程を有することを特徴とする。
【0023】
前記多層流の幅を調整することにより光が伝搬する多層流のいずれかの層の断面積を変化させることが可能であることが好ましい。
前記多層流を構成する流体のうち少なくとも1つの流体を異なる屈折率を有する流体に変更することが可能であることが好ましい。
【0024】
本発明に関わる光検出装置は、光学的な検出を行うための検出装置であって、流体の多層流を形成するための流路と、前記流体の多層流の光学的特性を変更するための手段と、前記流体のいずれかの層に選択的に光を導入する手段と、前記多層流から発せられる信号を検出する手段を有しており、前記多層流のいずれかの層を光導波路として使用し、前記多層流の状態を変更することで、前記光学素子との光の結合の効率を変更し、前記光学素子に結合された光により検出することを特徴とする。
【0025】
前記光学素子が、前記流路の壁面、底面または上面を構成する、または前記流路近傍に存在する光導波路であることが好ましい。
本発明に関わる光検出方法は、光検出方法であって、流体の多層流を形成する工程と、前記多層流のいずれかの層に光を導入し、前記導入した層を介して光学素子へ光を導入する工程と、前記光学素子を伝搬する光を利用して検出する工程を有することを特徴とする。
【0026】
前記光学素子を伝搬する光より生じるエバネッセント波を利用して検体を検出することが好ましい。
前記エバネッセント波を利用して、光吸収、光散乱、蛍光、または表面プラズモン共鳴のいずれかの方法により検体を検出することが好ましい。
【0027】
前記検体が、化学物質、分子、細胞、粒子またはそれらの混合であることが好ましい。
前記検体が、多層流により液−液抽出されたものであることが好ましい。
前記検体が、前記多層流により前記光学素子近傍へ集められることが好ましい。
前記光学素子を伝搬する光を利用して、前記多層流の状態をモニタすることが好ましい。
前記光学素子を伝搬する光の強度を利用して、前記光学素子へ光を導入する工程をモニタすることが好ましい。
【0028】
本発明において、光学素子とは、素子内または表面において光を閉じ込めて伝搬させることができる機構を有する素子を表し、一般に光導波路を有していることが好ましい。
本発明において、デバイスとは、何らかの機能を有する素子を表し、一例として流路や光導波路を有している素子が含まれる。
本発明は、マイクロ流路内に多層流を形成するが、ある特定の流路内における流体の流れが層流を形成するかまたは乱流を形成するかはレイノルズ数Reで見積もることが可能であり、以下の式、
【0029】
【数1】

【0030】
によって導かれる。ここで、Uは代表速度、Lは代表長さ、νは動粘度係数である。厳密な境界となる数値はないが、一般におよそレイノルズ数が2000より低ければ、当該系の流体は層流を形成すると考えられている。実際、マイクロ流路の場合レイノルズ数が低くなることが知られ、その値は通常100より低く、しばしば1以下にもなるため、マイクロ流路においては流体の流れは層流を形成するものと考えてよい。
【0031】
また、本発明は光を流体に伝搬させるが、その方法は光ファイバと同様の原理を用いている。光ファイバはコア部分の屈折率が周囲を取り囲むクラディング層の屈折率よりも高く設定されていて、そのために光がコア部分で全反射されながら伝搬される現象を利用している。同様な現象はコア部分とクラディング層の一方または双方が流体であるときにも成り立ち、光の伝搬のようすはマックスウェル方程式より導くことが可能である。
【0032】
前記マックスウェル方程式の解は、導波路付近の光の伝搬のようすは、導波路とクラディング層の断面積、光の伝搬モード、伝搬波長、導波路とクラディング層の屈折率をパラメータとして導き出される。このとき、各パラメータの条件により、光を導波路から侵出した領域を伝搬するエバネッセント波とよばれる状態で伝搬させることが可能である。このエバネッセント波は導波路から垂直方向へ指数的に強度が弱まり通常導波路近傍にのみ存在するが、前記近傍領域内にもう1つの導波路が存在している場合には、光はもう1つの導波路へ移動してゆき、この現象をエバネッセント光結合と呼ぶ。
【0033】
本発明は、上記の原理を利用して多層流のいずれかに光を伝搬させて、前記エバネッセント光結合を用いて光導波路をはじめとする光学素子へ光結合を行う装置である。図1は本発明の検出装置の一実施態様を示す概念図である。以下、図1を用いて詳細に説明する。
【0034】
本発明の光結合装置は、デバイス基板1にあるレザーバ2および3はそれぞれ流体10と高屈折率流体11を含んでいる。レザーバ2および3よりそれぞれ流体注入流路6および高屈折率流体注入流路7が延びており、流体注入流路6と高屈折率流体注入流路7は合流し、合流部9を形成する。合流部9へ達した流体は廃棄流路8を通って、廃棄レザーバ4へ達する。このとき、流体10と高屈折率流体11は合流部9において多層流を形成し、界面12近傍を除いて、低レイノルズ数である環境のために両流体は混合されることなく進行する。入射光13を高屈折率流体注入流路7より合流部9の方向へ入射すると、電界分布14によって示されるように、エバネッセント波を除いて高屈折率流体11内に閉じ込められながら伝搬する。
【0035】
合流部9近傍において、薄膜光導波路5が配置されている。入射光13は高屈折率流体11のエバネッセント波を通じて薄膜光導波路5と接し、これにより薄膜光導波路5へ光結合される。
【0036】
デバイス基板1の材質は、ガラス、セラミック、プラスチック、半導体またはそれらのハイブリッドなど特に限定を設ける必要はないが、必要とされる入射光の波長における吸収ができる限り少ない材質が好ましい。また、流体10および高屈折率流体11に対する化学的耐性を有するものが好ましく、さらに高温度などの特殊な環境にて設置される場合には、それらへの耐性も考慮する必要がある。
【0037】
薄膜光導波路5は、固体で構成されており、ある一定の屈折率を有する。また、合流部9から離れた近傍領域に配置されていてもよいし、合流部の流路壁面を構成していてもよい。また、図1においては図示していないが、薄膜導波路5を伝搬する光を通じていかなる工程を経るものであってもよい。
【0038】
各流路6、7、8、および合流部9は、合流部9において注入された流体どうしが多層流を形成することができる大きさであればよく、おおよその幅および深さは上記レイノルズ数より計算することができる。ただし、少なくとも1つの断面積寸法が100nmから500μm程度であるマイクロ流路と一般に呼ばれる流路幅であることが好ましい。
【0039】
合流部9における流体注入流路6と高屈折率注入流路7の接触角度は任意に設定でき、入射光や高屈折率流体11への結合効率により決定されることが好ましい。
高屈折率流体11は、流体10と屈折率が異なる材質であればよく、流体10に他の物質を混合させて屈折率を変化させたり、または流体10と物理化学的性質が異なる材質でもよい。ただし、入射光13の波長における吸収ができる限り少ない材質で構成されるのが好ましい。なお、高屈折率流体11はデバイス基板1および流体10より高い屈折率を有することを特徴とする。
【0040】
入射光13はデバイス基板1の吸収波長や流体10、および高屈折率流体11の吸収波長は好ましくなく、好ましくはレーザ光などのコヒーレントな光が選択されるとよい。
流体10と高屈折率流体11を流す手段は、それぞれの流体に圧力を付与することができる装置でよく、例えばレザーバを介してチューブで接続されたシリンジポンプ、あるいはデバイス基板1内に組み込まれたマイクロポンプなどを用いてもよい。流体10と高屈折率流体11に付与される圧力により、合流部9におけるそれぞれの流体の幅が決定されるが、その幅は任意に設定でき、あらかじめ計算によって求めることができる。
【0041】
上記光結合装置はさまざまな製造方法が採用できる。一例として、ガラス基板上にガラスより高い屈折率を有するポリマー薄膜をコーティングした光導波路を利用することができる。ポリマー薄膜の上に流路およびレザーバ形状を施されたポリジメチルシロキサンなどのシーリングできるポリマーを配置することによりデバイスが製造できる。但し、上記製造方法は一例であって、これに限定されるものではなく、従来技術で用いられる半導体製造技術を応用したものでもデバイス作成は可能である。
【実施例】
【0042】
以下、実施例を示し本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下の実施例は本発明をより詳細に説明するための例であって、実施形態は以下の実施例のみに限定されない。
実施例1
実施例1において、流体幅を調整することによる本発明の応用について図1を用いて説明する。
【0043】
まず、レザーバ2および3にそれぞれ含まれる流体10と高屈折率流体11に圧力を付与して合流部9へ向けて流体を流す。このとき、高屈折率流体11としては例えば屈折率整合オイルを用いることにより、およそ1.45〜2.3程度の範囲の屈折率を選択することができる。また、屈折率整合オイルはオイルによる光吸収が少ないものを選択すると、伝搬光の媒体として好ましい。また、流体10の主成分が水であれば、水とオイルの物性により混合が生じにくく、安定した2層流の形成が期待される。合流部9へ達した流れは、2層流を形成しながらレザーバ4へ流れる。
【0044】
次に入射光13を高屈折率流体注入流路7へ合流部9に向かって照射し、高屈折率流体11内を伝搬させる。入射光13はコヒーレントな光であることが好ましく、レーザ光などがこれに相当する。また、入射光13と高屈折率流体11へのカップリングロスを低減するために、光ファイバを高屈折率流体注入流路7近傍に配置してもよい。さらには、高屈折率流体注入流路7幅と光ファイバの径を似たような大きさにすることにより、高屈折率流体11へのより効率的な光結合が期待される。このときの光ファイバ径は、シングルモードファイバであるおよそ5μmや、マルチモードファイバである100μmであってもよく、高屈折率流体流路7幅に合わせて設定することが好ましい。
【0045】
合流部9部分へ達した入射光13は、電界分布14を示しながら引き続き高屈折率流体11内を伝搬するが、このとき流体10と高屈折率流体11に付与する圧力を調整することにより、合流部9内におけるそれぞれの流体の幅を調整することができる。同時に、電界分布14も高屈折率流体11の幅の変化に対応して電界分布を再編成しながら伝搬することになる。
【0046】
いま、流体10側の圧力を高めて高屈折率流体11側の圧力を低くすると、合流部9において高屈折率流体11幅が両流体を等しい圧力で流したときと比較して狭くなる。この狭くなる中間状態として流体によるテーパー型が現れる。高屈折率流体11内を伝搬している光はテーパー形状に沿うように伝搬し、それに付随して電界分布14も狭い範囲に閉じ込められるが、同時に薄膜光導波路5側へのエバネッセント波の侵出距離も増大する。
【0047】
薄膜光導波路5側へのエバネッセント波の侵出距離も増大とともに、薄膜光導波路5へ光結合が生じ、入射光13は高屈折率流体11を通じて薄膜光導波路5へと移動する。この結合効率はある一定の波長の場合、薄膜光導波路5の屈折率や幅、高屈折率流体11の屈折率や幅、および流体10の屈折率に影響される。これらのパラメータはあらかじめ設定できるが、高屈折率流体11の幅または屈折率を直接のパラメータとしてデバイスを製造後にも結合効率を調整できるという効果も有する。
【0048】
このように、本発明において、流体を介した光結合方法を採用することが可能なので、光導波路面を傷つけることなく、高屈折率流体注入流路7を入射光13の幅に合わせることによる入射光のアライメント条件の大幅な緩和が実現される。
【0049】
実施例2
実施例2おいて、平面導波路への結合に対する本発明の応用を図2を用いて説明する。
図2はデバイス基板21上にある薄膜光導波路25が形成され、その上に流路部材35によって流路が配置された光結合装置の断面図である。
【0050】
本発明の光結合装置は、デバイス基板21にあるレザーバ22および23はそれぞれ流体30と高屈折率流体31を含んでいる。レザーバ22および23よりそれぞれ流体注入流路26および高屈折率流体注入流路27が延びており、流体注入流路26と高屈折率流体注入流路27は合流し、合流部29を形成する。合流部29へ達した流体は廃棄流路28を通って、レザーバ24へ達する。このとき、流体30と高屈折率流体31は合流部29において多層流を形成し、界面32近傍を除いて、低レイノルズ数である環境のために両流体は混合されることなく進行する。入射光33を高屈折率流体注入流路27より合流部29の方向へ入射すると、電界分布34によって示されるように、エバネッセント波を除いて高屈折率流体31内に閉じ込められながら伝搬する。
【0051】
合流部29近傍において、薄膜光導波路25が配置されている。界面32は合流部29に流体注入流路26が合流したさいにテーパー形状を形成することができ、入射光33は高屈折率流体31内に閉じ込められ、同時にエバネッセント波を通じて薄膜光導波路35と接し、これにより薄膜光導波路35へ光結合される。
【0052】
上記光結合装置は、簡便な方法によって作成することが可能である。デバイス基板21にガラスを用いると、ガラス上に薄膜光導波路25は、ガラスの屈折率より高い屈折率を有するポリマー、例えばポリカーボネ−トをスピンコートすることにより形成できる。流路部材35はポリジメチルシロキサンのような平面に吸着して流体をシールすることができる部材が好ましい。また、ポリジメチルシロキサンであれば離形剤を塗布した金型上で熱固化して流路を形成できるため、安価に生産することも可能である。流路部材35内に各流路およびレザーバを形成して、薄膜光導波路25上に流路部材35を配置することにより結合装置は作成される。
【0053】
このように、本発明は簡便なデバイス作成方法にて実現するものであり、さらに流体にてテーパー形状を形成することが可能である。
【0054】
実施例3
実施例3において光スイッチに対する本発明の応用を図1および図3を用いて説明する。
図3は、図1の概念図と同様である。図1は薄膜光導波路5へ入射光13を光結合させる方法について説明した。図3においては、薄膜光導波路5への光結合効率を大幅に下げることにより、薄膜光導波路5の延長方向に光検出器を配置した場合には光強度が大幅に減少する。これによる図1と図3の状態を利用した光スイッチングデバイスとした応用を以下説明する。
【0055】
図1における界面12の位置を調節して、入射光13がなるべく高屈折率流体11内の狭い範囲に閉じ込められるようにして薄膜光導波路5へ光結合させた。一方、図3においては、流体10に付与する圧力を高屈折率流体11に付与する圧力に対して相対的に低減させることにより、界面12は流体10の幅を狭くする方向へ移動する。これにより、高屈折率流体11の電界分布14は図1の状態と比較してより多くが高屈折率流体11内に留まり、より少ないエバネッセント波が薄膜光導波路5へ侵出することにより、薄膜光導波路5への光結合の強度が弱まる。
【0056】
つまり、薄膜光導波路5への光結合効率を調節する機能が本発明に備わっていて、光結合強度をアナログ信号として抽出することができる。また、得られた信号、つまり光結合強度を測定することで、流体10と高屈折率流体11に付与する圧力のモニタリングにも利用できる。例えば、光結合強度を薄膜光導波路5の延長上にある固定された位置において光検出器で検出し、その結果を流体10と高屈折率流体11に付与する圧力へフィードバックすることにより、安定的な流体の供給を提供できる。他の例として、流体10か高屈折率流体11に付与する圧力のどちらか一方だけを可変とすると、薄膜光導波路5への光結合強度をフィードバックすることにより、圧力をモニタリングすることになる。これを用いて、光結合強度を任意の値に設定できるように自動化することも可能である。
【0057】
実施例4
実施例4として、検出器としての本発明の応用を図4を用いて説明する。
図4Aにおける本発明の光結合装置は、デバイス基板41にあるレザーバ42および43はそれぞれ流体50と高屈折率流体51を含んでいる。レザーバ42および43よりそれぞれ流体注入流路46および高屈折率流体注入流路47が延びており、流体注入流路46と高屈折率流体注入流路47は合流し、合流部49を形成する。合流部49へ達した流体は廃棄流路48を通って、レザーバ44へ達する。このとき、流体50と高屈折率流体51は合流部49において多層流を形成し、界面52近傍を除いて、低レイノルズ数である環境のために両流体は混合されることなく進行する。入射光53を高屈折率流体注入流路47より合流部49の方向へ入射すると、電界分布54によって示されるように、エバネッセント波を除いて高屈折率流体51内に閉じ込められながら伝搬する。
【0058】
合流部49近傍において、薄膜光導波路45が配置されている。界面52は合流部49に流体注入流路46が合流したさいにテーパー形状を形成することができ、入射光53は高屈折率流体51内に閉じ込められ、同時にエバネッセント波を通じて薄膜光導波路45と接し、これにより薄膜光導波路45へ光結合される。図4Bは図4AのA−A’断面を示しており、入射光53が薄膜光導波路45へ光結合されるときの電界分布54を図示している。
【0059】
さらに、薄膜光導波路45は合流部49の周囲を取り囲むように形成されているため、高屈折率流体51を介して薄膜光導波路45へ光結合された光は、薄膜光導波路45内を広がり、一部は合流部49の底面を伝搬する。図4Cは図4AのB−B’断面を示しており、入射光53の一部が薄膜光導波路45の合流部49底面を伝搬するときの電界分布55を図示している。
【0060】
図4に示されるようなデバイスは、シリコン基板上に異方性エッチングを用いてV字型流路を形成し、その表面に二酸化シリコン膜および窒化シリコン膜を配置して蓋をすることにより形成できるが、製造方法が複雑である。より簡便に、イオン交換法によっても薄膜導波路を形成してもよい。ナトリウムを含むガラス基板に流路を形成し、硝酸銀溶液に流路面が接するようにガラス基板を浮遊させると、一定時間後にガラス表面のナトリウムイオンと銀イオンの交換が生じるため、ガラス表面の屈折率が上昇する。イオン同士の交換は拡散に支配されるため、表面近傍はより高い屈折率となり、ガラス基板深部までイオンが到達しない程度の時間であればガラス基板深部の屈折率は変化しない。また、硝酸銀のほかには硝酸カリウムによるカリウムとナトリウムのイオン交換による光導波路を形成してもよく、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0061】
いま、レザーバ42内に検体56を含むとすると、検体56は流体50によって運ばれながら電界分布55を示す付近の合流部を通過する。このとき、電界分布55内に存在する検体56は、光散乱、光吸収などにより検出することが可能である。また、検体56に蛍光色素のような標識が付与されていれば、標識に応じた検出を行うことが可能である。さらに、標識より発した光の一部が薄膜光導波路45内を伝搬するときは、その伝搬光を検出してもよい。
【0062】
実施例5
実施例5として、検出器としての本発明の他の応用を図4および図5を用いて説明する。
【0063】
図4におけるデバイスと同様のデバイスを用いる。合流部49部分の薄膜光導波路45を伝搬する入射光43において、位置B−B’における合流部49底面における電界分布は55のように図示される。薄膜光導波路45表面において、受容体57を配置する。検体56の一部が、選択的に受容体57と化学結合することができるとき、本発明の光結合装置は選択的に検体を検出できる検出デバイスとして機能する。
【0064】
検体56の一例として、種々の抗原抗体反応や核酸のハイブリダイゼーションが挙げられる。検体56応じて受容体57はレセプター、相補鎖DNAなどに変更することが好ましい。化学結合によって蛍光標識が発せられることにより、検体56の存在を確認することが可能である。また、合流部49の表面に金などの金属膜を蒸着し、その上に受容体57を配置した場合には、入射光53の波長を表面プラズモン共鳴が生じるように選択することにより、検体56を標識を使わずに検出することもできる。
【0065】
なお、図5においては、例示のため電界分布55は受容体57に重ならないように図示されているが、本発明においては受容体57は電界分布55の範囲内に含まれる。
【0066】
実施例6
実施例6として、検出装置としての本発明の他の応用を図6を用いて説明する。
図6Aにおいて、デバイス基板61にあるレザーバ62および63はそれぞれ流体70と高屈折率流体71を含んでいる。レザーバ62および63よりそれぞれ流体注入流路66および高屈折率流体注入流路67が延びており、流体注入流路66と高屈折率流体注入流路67は合流し、合流部69を形成する。合流部69へ達した流体は廃棄流路68を通って、レザーバ64へ達する。このとき、流体70と高屈折率流体71は合流部69において多層流を形成し、界面72近傍を除いて、低レイノルズ数である環境のために両流体は混合されることなく進行する。入射光73を高屈折率流体注入流路67より合流部69の方向へ入射すると、電界分布74によって示されるように、エバネッセント波を除いて高屈折率流体71内に閉じ込められながら伝搬する。
【0067】
合流部69近傍において、薄膜光導波路65が配置されている。入射光73は高屈折率流体71のエバネッセント波を通じて薄膜光導波路65と接し、これにより薄膜光導波路65へ光結合される。
【0068】
図6Bにおいて、図6Aにおける位置A−A’の断面図を示す。
いま、検体76は高屈折率流体71と親和性を有する性質を有するとし、レザーバ62内に含まれる。検体76は流体70によって運ばれ、合流部69において界面72を越えて高屈折率流体71内を進行する。薄膜光導波路65に光結合された電界分布は図6Bにおける74のように示され、薄膜光導波路65からの高屈折率流体71へのエバネッセント光によって検体は検出される。検体76は、光散乱、光吸収などにより検出することが可能である。また、検体76に蛍光色素のような標識が付与されていれば、標識に応じた検出を行うことが可能である。さらに、標識より発した光の一部が薄膜光導波路65内を伝搬するときは、その伝搬光を検出してもよい。
【0069】
このように本発明は、流体同士による液−液抽出された検体を検出することが可能であり、同様な検出方法は、実施例2において説明されたような多層流が縦方向に形成されたデバイスにおいても可能である。また、抽出効率を上昇させるために、流体70をさらにもう1つの流体を用いて高屈折率流体71側へ加圧することにより押し付てもよい。
【0070】
なお、図6Bにおいては、例示のため電界分布74は検体76に重ならないように図示されているが、本発明においては検体76は電界分布74の範囲内に含まれる。
【0071】
実施例7
実施例7として、検出装置としての本発明の他の応用を図7を用いて説明する。
図7Aにおいて、デバイス基板81にあるレザーバ82および83はそれぞれ流体90と高屈折率流体91を含んでいる。レザーバ82および83よりそれぞれ流体注入流路86および高屈折率流体注入流路87が延びており、流体注入流路86と高屈折率流体注入流路87は合流し、合流部89を形成する。合流部89へ達した流体は廃棄流路88を通って、レザーバ84へ達する。このとき、流体90と高屈折率流体91は合流部89において多層流を形成し、界面92近傍を除いて、低レイノルズ数である環境のために両流体は混合されることなく進行する。入射光93を高屈折率流体注入流路87より合流部89の方向へ入射すると、電界分布94によって示されるように、エバネッセント波を除いて高屈折率流体91内に閉じ込められながら伝搬する。
【0072】
合流部89近傍において、薄膜光導波路85が配置されている。入射光93は高屈折率流体91のエバネッセント波を通じて薄膜光導波路85と接し、これにより薄膜光導波路85へ光結合される。
【0073】
図7Bにおいて、図7Aにおける位置A−A’の断面図を示す。
いま、検体96は高屈折率流体91と親和性を有することがない性質を有するとし、レザーバ83内に含まれる。検体96は高屈折率流体91によって運ばれる。合流部89より先は高屈折率流体91と流体90との圧力差により界面92の位置が決定され、界面92ができる限り薄膜光導波路85へ近くなるように調整することが可能である。このとき、検体96は合流部89の薄膜導波路85側の流路側壁に沿ってのみ進行することになる。薄膜光導波路85に光結合された電界分布は図7Bにおける94のように示され、薄膜光導波路85からの高屈折率流体91へのエバネッセント光によって検体は検出される。検体96は、光散乱、光吸収などにより検出することが可能である。また、検体96に蛍光色素のような標識が付与されていれば、標識に応じた検出を行うことが可能である。さらに、標識より発した光の一部が薄膜光導波路85内を伝搬するときは、その伝搬光を検出してもよい。また、合流部89の薄膜光導波路85側の表面に金などの金属薄膜を蒸着し、金属薄膜上に受容体を配置することもできる。このとき、入射光53の波長を表面プラズモン共鳴が生じるように選択することにより、受容体と検体96の特異的な化学反応を標識を使わずに薄膜光導波路85を伝搬する光の強度によって検出することもできる。
【0074】
このように本発明においては、多層流に付与される圧力差を調節して界面を移動させることにより、検体を光導波路近傍へ収束させることが可能で、そのため検出における検体のデッドボリュームが低減されるという効果がある。なお、図7Bにおいては、例示のため電界分布94は検体96に重ならないように図示されているが、本発明においては検体96は電界分布94の範囲内に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、多層流の少なくとも1層に伝搬する光を介して流路近傍に配置された光導波路へ光結合することができるので、流体を用いた光操作デバイスに対して利用することができる。また、化学合成、環境分析、臨床検体分析を実施するためのマイクロ流体デバイスやキャピラリ内にある化学物質、分子、細胞などの検出に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の光結合装置の一実施態様を示す概念図である。
【図2】本発明の光結合装置の他の実施態様を示す概念図である。
【図3】本発明の光結合装置の光スイッチングデバイスに対する応用の一実施態様を示す概念図である。
【図4】本発明の光結合装置の検体検出デバイスに対する応用の一実施態様を示す概念図である。
【図5】本発明の光結合装置の検体検出デバイスに対する受容体を用いた応用の一実施態様を示す概念図である。
【図6】本発明の光結合装置の検体検出デバイスに対する液−液抽出を用いた応用の一実施態様を示す概念図である。
【図7】本発明の光結合装置の検体検出デバイスに対する検体デッドボリューム低減方法の一実施態様を示す概念図である。
【符号の説明】
【0077】
1 デバイス基板
2、3、4 レザーバ
5 薄膜光導波路
6 流体注入流路
7 高屈折率流体注入流路
8 廃棄流路
9 合流部
10 流体
11 高屈折率流体
12 界面
13 入射光
14 電界分布
21 デバイス基板
22、23、24 レザーバ
25 薄膜光導波路
26 流体注入流路
27 高屈折率流体注入流路
28 廃棄流路
29 合流部
30 流体
31 高屈折率流体
32 界面
33 入射光
34 電界分布
35 流路部材
41 デバイス基板
42、43、44 レザーバ
45 薄膜光導波路
46 流体注入流路
47 高屈折率流体注入流路
48 廃棄流路
49 合流部
50 流体
51 高屈折率流体
52 界面
53 入射光
54、55 電界分布
56 検体
57 受容体
61 デバイス基板
62、63、64 レザーバ
65 薄膜光導波路
66 流体注入流路
67 高屈折率流体注入流路
68 廃棄流路
69 合流部
70 流体
71 高屈折率流体
72 界面
73 入射光
74 電界分布
76 検体
81 デバイス基板
82、83、84 レザーバ
85 薄膜光導波路
86 流体注入流路
87 高屈折率流体注入流路
88 廃棄流路
89 合流部
90 流体
91 高屈折率流体
92 界面
93 入射光
94 電界分布
96 検体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学素子に光を結合するための光結合装置であって、流体の多層流を形成するための流路と、前記流体の多層流の光学的特性を変更するための手段を有しており、前記多層流のいずれかの層を光導波路として使用し、前記多層流の光学的特性を変更することで、前記光学素子との光の結合の効率を変更することを特徴とする光結合装置。
【請求項2】
前記多層流を形成するための流路は、複数種類の流体のそれぞれを注入する流路があり、注入地点より下流にある一点において合流することを特徴とする請求項1に記載の光結合装置。
【請求項3】
前記多層流を形成する流体のうち少なくとも1つは他の流体と異なる屈折率を有することを特徴とする請求項1に記載の光結合装置。
【請求項4】
前記多層流の光学的特性を変更するための手段は、複数種類のそれぞれの流体に付与する圧力を調節することができることを特徴とする請求項1に記載の光結合装置。
【請求項5】
前記多層流の光学的特性の変更は、多層流を形成する少なくとも1つの層の幅、または多層流を形成する少なくとも1つの層の屈折率であることを特徴とする請求項1に記載の光結合装置。
【請求項6】
前記光の結合の効率が光学素子との光結合強度であることを特徴とする請求項1に記載の光結合装置。
【請求項7】
光学素子に光を結合する光結合方法であって、流体の多層流を形成する工程と、前記多層流のいずれかの層に光を導入し、前記光を導入した層を介して光学素子へ光を導入する工程を有することを特徴とする光結合方法。
【請求項8】
前記多層流の幅を調整することにより光が伝搬する前記多層流のいずれかの層の断面積を変化させることが可能であることを特徴とする請求項7に記載の光結合方法。
【請求項9】
前記多層流を構成する流体のうち少なくとも1つの流体を異なる屈折率を有する流体に変更することが可能であることを特徴とする請求項7に記載の光結合方法。
【請求項10】
光学的な検出を行うための検出装置であって、流体の多層流を形成するための流路と、前記流体の多層流の光学的特性を変更するための手段と、前記流体のいずれかの層に選択的に光を導入する手段と、前記多層流から発せられる信号を検出する手段を有しており、前記多層流のいずれかの層を光導波路として使用し、前記多層流の光学的特性を変更することで、前記光学素子との光の結合の効率を変更し、前記光学素子に結合された光により検出することを特徴とする検出装置。
【請求項11】
前記光学素子が、前記流路の壁面、底面または上面を構成する、または前記流路近傍に存在する光導波路であることを特徴とする請求項10に記載の検出装置。
【請求項12】
光検出方法であって、流体の多層流を形成する工程と、前記多層流のいずれかの層に光を導入し、前記光を導入した層を介して光学素子へ光を導入する工程と、前記光学素子を伝搬する光を利用して検出する工程を有することを特徴とする光検出方法。
【請求項13】
前記光学素子を伝搬する光より生じるエバネッセント波を利用して検体を検出することを特徴とする請求項12に記載の光検出方法。
【請求項14】
前記エバネッセント波を利用して、光吸収、光散乱、蛍光、または表面プラズモン共鳴のいずれかの方法により検体を検出することを特徴とする請求項12に記載の光検出方法。
【請求項15】
請求項13または14に記載の検体は、化学物質、分子、細胞、粒子またはそれらの混合であることを特徴とする請求項12に記載の光検出方法。
【請求項16】
請求項13または14に記載の検体が、前記多層流により液−液抽出されたものであることを特徴とする請求項12に記載の光検出方法。
【請求項17】
請求項13または14に記載の検体が、前記多層流により前記光学素子近傍へ集められることを特徴とする請求項12に記載の光検出方法。
【請求項18】
前記光学素子を伝搬する光を利用して、前記多層流の状態をモニタすることを特徴とする請求項12に記載の光検出方法。
【請求項19】
前記光学素子を伝搬する光の強度を利用して、前記光学素子へ光を導入する工程をモニタすることを特徴とする請求項12に記載の光検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−133923(P2009−133923A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−307978(P2007−307978)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】