光起電力モジュールの大量製造装置および方法
【課題】 基体の急速加熱、CdSの成膜、CdTeの成膜、CdCl2処理お よびオーム接点形成を含むすべての工程を中程度の圧力で単独の真空境界内で実施する、CdTe光起電力モジュールを大規模インラインで製造するための装置およびプロセスを提供する。
【解決手段】 金属塩をCdTe層上へ昇華することによってp+オーム接点領域を形成する。低コスト噴霧プロセスによって背面電極を形成し、マスクを介して行なう研磨ブラスチングか機械的ブラッシングによってモジュールをスクライビングする。真空処理装置によって、基体および膜の加熱、蒸気漏出を極力抑制した、基体および膜の蒸気への暴露、基体上への薄膜の成膜、および薄膜の基体からの剥離が容易になる。基体搬送装置により、薄膜成膜時に基体を真空に出入りさせるのが容易になり、基体搬送装置自体に被覆が生じるのを防止する。
【解決手段】 金属塩をCdTe層上へ昇華することによってp+オーム接点領域を形成する。低コスト噴霧プロセスによって背面電極を形成し、マスクを介して行なう研磨ブラスチングか機械的ブラッシングによってモジュールをスクライビングする。真空処理装置によって、基体および膜の加熱、蒸気漏出を極力抑制した、基体および膜の蒸気への暴露、基体上への薄膜の成膜、および薄膜の基体からの剥離が容易になる。基体搬送装置により、薄膜成膜時に基体を真空に出入りさせるのが容易になり、基体搬送装置自体に被覆が生じるのを防止する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[政府援助]
本発明は全米科学財団およびエネルギー省により与えられた助成金により政府の援助の下になされた発明である。この発明に対して政府は一定の権利を有するものである。
本発明は、低コストの光起電力モジュールの大量製造装置および方法、特に一緒に適用する非真空プロセスと相俟って高いスループットで実現できる、臨界的な半導体層を製造するインライン型連続真空装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光起電力(PV)モジュールは、光起電力効果により日光から電気を発生するために使用されている。過去数十年にわたって、これらモジュールが低コストで製造できるなら、世界中のエネルギー需要のかなりの部分を賄えることができるという認識があった。大手のメーカーのRoyal Dutch/ShellやBP−Amocoなどは、PVモジュールは地球環境に多大なメリットをもたらす主要なエネルギー源になる潜在力をもっていると言明していたほどである。ところが、これらのメリットを実現するためには、Bonnetなどが“Cadmium−telluride material for thin film solar cells”、J.Mater.Res.、Vol.13、No.10(1998)で議論しているように、PVモジュールを現在の容量の何倍もの容量でしかも$100/m2未満のコストで製造しなければならない。現 在 、少量ではあるが、PVモジュールはほぼ$500/m2のコストで製造されている。現在の発電量のちょうど5%に相当するPVモジュール製造能力を担うためには、現在の年製造量の約100倍が必要である。すなわち、PVモジュールの大幅な増産をかなり低いコストで達成する必要がある。
【0003】
必要な増産を必要なコスト削減とともに実現するためには、PVモジュールを製品として製造しなければならない。製品レベルの製造には技術革新により、特に製品を製造できるように設計された高度自動化製造プロセスおよび装置を開発する必要がある。製品製造には、高い製造速度(高スループット)、最低の人件費、連続的なプロセスフローが必要である。低キャピタルコストや増産の容易さもまた製品製造に役立つ。各種のPV装置が知られているが、テルル化カドミウム(CdTe)薄膜PV装置のみが製品製造の必要条件を満足しているに過ぎない。
【0004】
1974年以来、数多くの工業上の努力がCdTePVモジュールを製造できる技術の開発に費やされてきたが、これら工業上の努力の大半は、USP4319069、4734381や5501744に示されているように、基本的に製造技術としては未熟なため既に打ち切られている。今のところ、CdTePVモジュールを製品レベルで製造するために好適な技術は開発されていない。この事実は、この分野における技術革新が必要なことを証明している。
【0005】
最も普遍的なCdTePVセルは、CdTe層を硫化カドミウム(CdS)とペア化し、ヘテロ接合を形成した薄膜多結晶装置である。CdS/CdTePV装置の薄膜は、各種の真空プロセスおよび非真空プロセスにより製造できる。多数の薄膜成膜方法のうち、最も製品レベルに対応できるのは真空昇華法である。これは、CdS/CdTePVモジュールの真空昇華法の場合、他のPVモジュール成膜法よりも10〜100倍高い成膜速度を示すからである。また、CdS/CdTePVモジュールを対象とする半導体層の真空昇華法は中程度の真空レベルで実施できるため、コストの高い高真空装置を必要としない。他の薄膜PV装置の真空成膜法では、コストの高い複雑な高真空装置が必要なため、スループットが低くなる。
【0006】
高い成膜速度、そして低いキャピタルコストの理由により、真空昇華法で製造したCdS/CdTe薄膜セルがPVモジュールの製品レベル製造に最適である。ところが、カドミウムはB族発癌物質である。米国政府基準によれば、環境や工業地区などに合法的に放出できるこの物質の量はきわめて低く設定されている。従来公知のCdS/CdTe真空昇華法の場合、プロセス、ハードウェア両面で技術革新を導入し、連邦基準が規定する環境上、工業上の安全を確保すると同時に、製品レベルの製造を達成する必要がある。
【0007】
CdTe装置の一つの公知構成は、以下単に基体と呼ぶガラス基体に薄膜を成膜したバックウォール構成である。ほとんどの場合、CdTe装置は透明な導電性酸化物(TCO)膜を被覆したガラス基体に製造している。このTCO膜には、順にa)CdS膜、b)CdTe膜、c)オーム接点層、d)金属膜の他の膜が成膜されている。これら膜の成膜と同時に、装置特性を向上させるために、多くの熱処理が必要である。TCO膜および金属膜は、それぞれ、正面電極および背面電極を形成する。また、CdS層(n形)およびCdTe層(p形)が装置のp/n接合を形成する。基体を太陽に向けて、セルを展開する。光子はガラスおよびTCO膜を移動してから、装置のp/n接合に到達する。モジュールは有用な電圧を発生するように、個々のセルを直列に接続して構成する。
【0008】
このように、CdS/CdTeモジュールの製造方法は次の工程を含む。すなわち、1)TCO被覆ガラス基体の洗浄工程、2)基体の加熱工程、3)n形CdS層の成膜工程、4)p形CdTe層の成膜工程、5)CdTe結晶粒子構造および電気特性を向上させるためのCdCl2処理工程、6)CdTeからの集 電を向上させるためのp+オーム低抵抗層の形成工程、7)金属層を成膜(金属被着)し、背面電極を形成する工程、8)膜層を個々のセルに切断する工程、9)セルを直列に接続し、モジュールに電気接続を与える手段を形成する工程、そして10)完成モジュールをカプセル化する工程である。
【0009】
従来のCdTeモジュールの製造方法はいずれも制約があり、製品レベルの製造に不向きである。例えば、従来方法のCdCl2処理は連続フロープロセスで はなく、プロセスから切り離された、低スループットのバッチ操作である。これらバッチプロセスは効率が悪く、スループットを製品製造レベルまで上げるコストが非常に高くなる。公知方法のCdCl2処理の大半は水洗を必要とし、カド ミウムを含有する廃液が出る。また、公知方法のオーム接点形成工程もバッチプロセスであり、スループットが低い。さらに、従来の金属被着工程もスループットが低い上に、コストの高いプロセス装置が必要である。このように、スループットの高い連続プロセスを実現するためには、現在の方法のCdCl2処理工程 、オーム接点形成工程や金属被着工程を改善する必要がある。
【0010】
層を切断してモジュールにする従来方法としてはレーザ切断方法、機械的切方法や研磨ブラスチング切断方法がある。PV分野で使用されている公知レーザ切断方法には低い生産速度、高いキャピタルコストの問題が伴う。最近、Borgが“Commercial Production of Thin−FilmCdTe Photovoltaic Modules”、NREL/SR−520−23733、Oct.1997で議論しているように、このレーザ切断法は、レーザ装置の欠陥によりひとつの工業上の状況では使用が放棄されている。また、公知の機械的切断方法や研磨ブラスチング切断方法は、Albrightを発明者とするUSP5,501,744に示されているように、規模の小さい場合にのみ使用されているに過ぎなく、製品レベルの製造までには、技術革新や改良が必要である。
【0011】
真空昇華法によるCdS成膜やCdTe成膜に関する従来例について、以下詳しく説明する。また、CdTePVモジュールの完成品を形成するために必要な他の従来工程もあわせて説明する。
【0012】
真空昇華によってCdTe太陽電池を製造する一つの公知真空方法は、Footeなどを発明者とする米国特許第5,536,333号に開示されている。この方法については、Sasalaなども“Technology Support for Initiation of High−Throughput Processing of Thin−Film CdTePV Modules”、NREL/SR−520−23542、pp.1−2、(1997)に記載している。これら文献が記載している技術は蒸気輸送成膜法(VTD)として知られ、半導体材料を容器に装填し、これを加熱して蒸気を発生する方法である。窒素などの不活性キャリヤガスが、半導体の蒸気を加熱された導管により基体に輸送する。加熱された雰囲気中水平に基体を保持し、かつこの加熱された雰囲気中セラミックローラによって下から基体を支持する。基体の上面に半導体を成膜する。この従来方法によれば、セラミックローラが、関与する高温により自重によってガラス基体が垂れ下るを防止できる。
【0013】
VTD法は全体として非常に複雑であり、コストも高い。しかし、きわめて短い時間で、しかも十分に低い基体温度でCdTe太陽電池完成品を成膜できるため、垂れ下りを完全の防止できるか、あるいはあってもきわめて低い許容値まで抑制することができる。このように、VTD法のコストの高いセラミックローラは必要ない。原料の再装填は、従来法よりもきわめて簡単に実施できる。膜が薄膜であるため、これを形成するには、ごく少量の材料があればよい。従って、何日にもわたる操業でも、ごく少量の原料があればよく、このような複雑な再装填作業も必要がない。ところが、この方法における加熱された容器は有毒蒸気、すなわち、操業中に再装填のために開いた場合に、大きな作業上の安全問題になる有毒蒸気を含有するものである。VTD法では、蒸気をキャリヤガスとともに長距離輸送するため、蒸気の凝縮により非常に小さな粒子、すなわちナノ粒子が発生する。これらナノ粒子は膜品質を劣化させ、システムの操業時に作業環境を危険なものにする。さらに、VTD法の場合、基体にそってキャリヤガスの連続流れを維持する必要がある。また、基体を通り過ぎて搬送されるCdSやCdTeがあれば、これは無駄になる。真空チャンバー、ポンプ、排気管などの内面に付着した廃物があれば、これを除去しなければならず、保守要員が有毒材料に暴露され、作業上の安全に支障をきたすことになる。CdS蒸気やCdTe蒸気の望ましくない凝縮を未然に防止するためには、気化容器自体、導管、成膜チャンバーなどを始めとする装置の大部分を連続加熱する必要がある。これはエネルギーの無駄であり、キャピタルコストが増加する。VTD法は、p/n接合層を成膜するためにのみ使用されている。すなわち、CdCl2処理工程、オ ーム接点形成工程や金属被着工程などの他のプロセス工程は、固有の性質から、スループットの低いバッチプロセスである。切断には、レーザ切断やフォトリソグラフィが例示されているが、いずれも加工速度が低く、コストが高いプロセスである。
【0014】
International Journal of Solar Energy、Vol.12、1992に発表された“The CdTe Thin Film Solar Cell”を表題とする別な論文において、Bonnetは間隔が密な昇華CSS(close−spaced sublimation)型成膜法を使用して、CdS/CdTe層を製造するインライン型製造方法を提案している。この論文には、基体の加熱工程、CdS成膜工程およびCdTe成膜工程のみからなる、一つの真空境界内で実施するインライン型成膜方法が記載されている。他の工程、すなわちCdCl2処理、オーム接点形成および金 属被着工程は、連続インライン型真空プロセスの要部としては示されていないので、従来より公知の方法で実施されていると考えられる。既に説明したように、これら工程を実施する公知方法には制限がある。Bonnet法では、2つの以上の膜を成膜する多元基体処理が可能である。ところが、長時間操作により、大面積基体に均質に成膜を行なえるかどうかは不分明である。さらに、Bonnet法ではCSSを利用している。このCSSは、定義によれば、蒸発源と基体との間隔が2〜3mmでなければならない。このギャップでは、基体エッジから蒸気漏れが発生するはずである。蒸発源は時間の経過につれ昇華により減少するため、ギャップが大きくなる。本発明者の知見によれば、こギャップと、これに伴う蒸気漏れが基体への不均質な成膜の原因であり、また真空チャンバー内面の望ましくない領域に有毒物質が凝縮する原因でもある。この蒸気漏れを抑制するには、真空チャンバーの背圧を十分高く維持し、真空チャンバー内のガス分子間の平均自由行程を短くすればよいが、圧力が高くなると、成膜速度が低くなり、ナノ粒子の形成が顕著になる。操作圧力については、750millitorrと特定されているが、このような圧力では、ナノ粒子が形成する。なぜなら、成膜空間のエッジ付近の周囲ガスに蒸気が均質に凝縮するからである。これらきわめて小さい粒子は膜品質を劣化させ、真空チャンバーに定期的な保守のために出入りする作業員の健康にとって危険な因子になる。
【0015】
以上述べたように、CdTePVモジュールを製造するために必要な従来の各プロセス工程にはいずれも制限がある。さらに、上記各文献には、基体の加熱、n形CdS層の成膜、p形CdTe層の成膜、CdCl2処理、オーム接点形成 の一連の工程をインラインで連続的にかつ単独の真空境界内で実施できる総合的なプロセスは記載されていない。特に、CdCl2処理、オーム接点形成の工程 には、これら工程を連続インライン型真空プロセスに組み入れる前に、効果のある技術革新が必要である。すなわち、このような連続インライン型真空プロセスが実現できれば、CdTePVモジュールの製品製造にとって大きな効果が期待できる。
【0016】
また、CdTePVモジュールを製造する真空プロセスには、いずれの場合も、基体を真空内の各プロセス工程を通じて搬送し、かつこれら基体を迅速に真空に出入りさせる装置が必要である。この装置は、耐久性がある上に、構成が簡単で、低コストであることが条件である。これら条件を満足する装置は、従来文献には記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】USP4,319,069
【特許文献2】USP4,734,381
【特許文献3】USP5,501,744
【特許文献4】USP5,501,744
【特許文献5】USP5,536,333
【特許文献6】USP3,294,670
【特許文献7】USP3,636,919
【特許文献8】USP5,304,499
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Cadmium−telluride material for thin film solar cells”、J.Mater.Res.、Vol.13、No.10(1998)
【非特許文献2】“Commercial Production of Thin−FilmCdTe Photovoltaic Modules”、NREL/SR−520−23733、Oct.1997
【非特許文献3】“Technology Support for Initiation of High−Throughput Processing of Thin−Film CdTePV Modules”、NREL/SR−520−23542、pp.1−2、(1997)
【非特許文献4】International Journal of Solar Energy、Vol.12、1992に発表された“The CdTe Thin Film Solar Cell”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、CdTePVモジュールの製品化に関するもので、製造方法および製造装置両者における技術革新をもたらすものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
すなわち、本発明の第一実施態様は、CdTePVモジュールの必須の半導体層を処理する工程のすべてを、単独の真空境界内で完全実施し、高スループットを実現することに関する。これら工程は、基体の急速加熱、CdS成膜、CdTe成膜、CdCl2処理、オーム接点形成の各工程を含む。これら工程は、コス トの高い高真空装置を使用する必要のない中程度の真空圧で実施できる。インライン型真空処理を利用して、真空を破ることなく必須な層すべてを形成することにより、プロセススループット、膜品質、モジュール効率を改善でき、しかも同時にピンホール形成を未然に防止した状態で、モジュールを安定化できる。これらインライン型処理のすべてが、有毒廃棄物の発生を制限でき、かつ有毒化合物の環境への放出や作業員の有毒化合物への暴露を制限できる特徴をもつ。
【0021】
本発明の第二実施態様は、同一の真空境界内で実施でき、しかも他の製造工程とともにインラインで実施することができる新規なCdCl2処理工程に関する 。この態様によるCdCl2処理工程は、高スループットが実現できる上に、安 定かつ効率のよいモジュールを製造でき、同時に有毒化合物の環境中への放出や有毒化合物への作業員の暴露を抑制できる作用効果をもつ。
【0022】
本発明の第三実施態様は、CdTe層上へ金属塩を昇華することによりp+オーム接点を形成する新規な真空プロセスに関する。この態様によるオーム接点形成プロセスは、経時的に安定な低抵抗オーム接点を高スループットで形成できる作用効果をもつ。
【0023】
本発明の第四実施態様は、高スループットかつ低コストで背面電極を形成できる独自な噴霧プロセスに関する。このプロセスは、公知の低コスト工業用噴霧方法を利用して、耐久性があり、導電性の高い背面電極を製造できる作用効果をもつ。
【0024】
本発明の第五実施態様は、マスクを介在させて行なう研磨ブラスチングまたは機械式ブラッシングを利用して、高スループットかつ低コストでモジュールをスクライビングする新規なプロセスに関する。この新規なスクライビングプロセスは、TCO層をスクライビングすることなく、半導体層を選択的にスクライビングできる作用効果をもつ。
【0025】
本発明の第六実施態様は、基体および膜を選択的に加熱でき、基体および膜を蒸気に暴露でき、薄膜を基体上に成膜でき、かつ薄膜を基体から剥離できる新規な真空処理ステーションに関する。この真空処理ステーションを用いれば、基体の真空への出入りを容易に行なえる。成膜源として利用した場合、この真空処理ステーションは、蒸気漏れを最小限に抑制できるため、作業員の有毒物質への暴露を大幅に抑制できる作用効果をもつ。この独自な成膜源は層をきわめて均質に成膜できるため、長時間連続操作に好適なものである。
【0026】
本発明の第七実施態様は、基体を真空中を移動するために用いるか、あるいは独自な開口を形成し、基体を迅速に真空へ出入りさせるために用いる新規な基体搬送装置に関する。この基体搬送装置は耐久性があり、構成が簡単な上に、低コストであり、また薄膜成膜プロセスに基体を搬送している間、皮膜を回収する必要がないという作用効果をもつ。
【0027】
本発明の第七実施態様は、インライン型連続真空プロセスへの入り口に設定した小さく、クリーンな環境内で基体を洗浄することに関する。この実施態様は、全プロセスラインを収容する洗浄ルームが必要ないため、コストの大幅削減を可能にする作用効果をもつ。
【発明の効果】
【0028】
本発明に従って一対の金属ストリップベルト1を基体搬送体として使用すると、上記以外にも多くの作用効果が得られる。ベルト1が低質量なので、使用する軸受け面の磨耗が減少する。また、低質量であると、基体搬送体の慣性が大幅に小さくなるため、処理ステーション間での基体の迅速な移動が可能になる。
【0029】
真空チャンバー3において一連の真空プロセスを実施する必要がある状態で使用すると、連続金属ストリップベルト1の作用効果がいっそう明らかになる。長さが200フィートの連続金属ストリップベルト1は公知方法で製造できるため、工程数がきわめて多いプロセスを単独の真空チャンバー3内で実施できることになる。
【0030】
別な作用効果は、この種の基体搬送体の場合、製造コストが、従来の許容限度の小さい、ピクチャーフレーム形基体搬送体を加工するコストよりもはるかに低い点である。本発明による基体搬送体を利用すれば、プロセスのスケールアップが簡単になる。大きな基体の場合には、開口2も大きくしなければならないが、ストリップベルト1では、間隔を広くするだけよい。
【0031】
連続金属ストリップベルト1は、耐腐蝕性が高く、高温で高強度を維持する金属合金で構成するのが好ましい。表面特性を変える必要がある場合には、これらベルトを他の材料で被覆してもよい。基体10を保持するタブ6などには多種多様なものがあるが、いずれも比較的低コストで金属ストリップベルトに溶接その他の手段で固着することができる。
【0032】
連続金属ストリップベルト1によって搬送されるガラス基体1の場合、切断のさいの許容差は±0.003インチでなければならない。切断に必要な許容差まで基体10を切断するさいには、市販されているスループットの高い低コストの装置を利用できる。ガラス基体10は方法がどのようなものであれ、正確なサイズに切断する必要があり、本発明に必要な精密なガラス切断も同様に付随的な処理工程ではない。
【0033】
また、連続金属ストリップベルト1の横断面については比較的小さくする。横断面が小さいと、高温真空プロセス移動時、ベルトの熱膨張が小さいため、AVA開口2でベルトが熱膨張により詰まる恐れが小さくなる。
【0034】
また、金属ストリップベルト1の質量が比較的小さいため、従来のピクチャーフレーム形基体搬送体と比較した場合、冷却および加熱を急速に行なうことができる。さらに、金属ストリップベルト1の質量が小さいため、処理時にベルトとガラスを同温度にでき、ガラス基体10の熱勾配を小さくできる。このため、ガラスに割れが発生する応力を小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に従って光起電力モジュールを製造するシステムを示す概略上面図である。
【図2A】基体搬送装置および複数の真空処理ステーションを示す、図1の50−50線についての長手断面方向にみた、一部破断した概略正面図である。
【図2B】図2Aの基体搬送装置の別な実施態様を示す、長手断面方向にみた一部破断して概略正面図である。
【図3】真空チャンバーへの外気の混入を極力抑制する封止構成を示す、図2Aの60−60線についての横断面における一部破断した概略正面図である。
【図4】図3の封止構成を示す、図2Aの70−70線についての横断面における一部破断した概略正面図である。
【図5】図2Aの基体搬送装置を示す、図4の100−100線についての概略正面図である。
【図6】図6A及びBは、従来装置に適用した状態の、密閉基体および密閉していない基体を示す断面の概略正面図である。
【図7A】図2Aの基体搬送装置の真空処理ステーションの細部を示す、図2Aの80−80線についての横断面における概略正面図である。
【図7B】図7Aの真空処理ステーションの別な実施態様を示す、横断面における概略正面図である。
【図8】図7Aの真空処理ステーションの第2の実施態様を示す、横断面における概略正面図である。
【図9A】光起電力モジュールのスクライビング方法を示す、図1の90−90線についての概略斜視図である。
【図9B】光起電力モジュールのスクライビング方法の別な実施態様を示す、図1の90−90線についての概略斜視図である。
【図10A】本発明の処理工程を示すフローチャートである。
【図10B】図10Aの処理工程の別な実施態様のいくつかを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、本発明に従って光起電力モジュールを製造する装置1000の好適な実施態様を示す概略図である。基体洗浄ステーション55で、透明な導電性酸化物(TCO)を被覆した、例えば低コストのソーダ石灰ガラスからなる工業的に入手可能な基体を洗浄する。洗浄後、一対の金属ストリップベルト1でこの基体を装置1000の次の位置に搬送する。これらベルトは、公知のステッパモータ7によって双方向に移動可能になっている。一対のベルト1の位置を正確に割り出すには、工業的に入手可能なステッパモータ制御装置8を使用すればよい。一対の金属ストリップベルト1は、一対の開口2を介して真空チャンバー3内を移動する。以下に詳しく説明するように、必須の半導体層を処理する複数の処理ステーションを真空チャンバー3内に設置する。別な系列の処理ステーションを複数のコンベヤベルト51によって接続する。これら処理ステーションは真空を必要としない。第1の噴霧処理ステーション52aの後に、第1の膜スクライビング処理ステーション53aを設ける。これら処理ステーションの後に、第2噴霧処理ステーション52bと第2の膜スクライビング処理ステーション53bを設ける。本発明の装置および方法を以下基体搬送装置および開口、真空処理ステーション、金属被着方法、膜スクライビング方法、および光起電力モジュールの製造工程の順で説明する。そして、好適な実施態様を説明した後に、別な実施態様について説明することにする。
【0037】
図2A、図3、図4および図5は、本発明による一対の空気対真空対空気(AVA)開口と基体搬送装置の好適な実施態様の完成状態を示す図である。一対のAVA開口2により、基体を空気から真空中へ迅速に搬送でき、また空気中に戻すことができる。図2Aに示す真空チャンバー3の場合、公知方法によって適当な真空までポンプ排気できる。図示では、一対のAVA開口2を真空チャンバー3の両側に設ける。一対の連続金属ストリップベルト1は、AVA開口2の両者を介して真空チャンバー3の全長を移動する。二本金属ベルト1に支持された複数の基体10も示してある。図示のように、AVA開口2には、複数のポケット14および真空ポンプ作用のための複数の真空ポンプ口15を設ける。同様に、処理ガスを噴出するために一対の噴出口11を設ける。さらに、ベルト1を移動させる複数の滑車4を設ける。ベルト張力装置9によりベルト1に所定の張力を作用させておく。
【0038】
図3は、AVA開口2の細部を示す横断面図である。上部チャネル2aと下部チャネル2bとをベルト軸受けプレート20によって分割する。全体で、2a、2bおよび20が、図2A、図3および図4の開口2の横断面を構成する。基体10の周囲には、0.005インチ±0.002インチ程度のクリアランス21を設定する。同様に、このクリアランス21は基体10と上部チャネル12aとの間、そして基体10とベルト軸受けプレート20との間にも設定する。クリアランス21の大きさについては、基体10が自由に移動できる程度には大きく、またクリアランス21を流動する流体に対して抵抗を示す程度には小さくする。この流体抵抗により、真空チャンバー3を所望の真空レベルに維持できる。一対の連続金属ストリップベルト1が、複数の基体10を搬送する基体搬送体として作用する。
【0039】
図5は、金属ストリップベルト1に取り付けた一対のタブ6を詳細に示す図である。ベルト1にそって一定の間隔で設けたこれら複数のタブ6は、基体10を位置決めする手段になる。
【0040】
一対の連続金属ストリップベルト1は、真空成膜プロセスによって被覆されない基体搬送体として作用する。このベルト1の被覆されない点が、従来方法にみられない重要な点である。Charschanを発明者とする米国特許第3,294,670号(1966)に例示されているように、従来は、“ピクチャーフレーム”形構成で基体全体を閉じこめる基体搬送体を利用していた。このピクチャーフレーム形基体搬送体は成膜時に必ず被覆されることになる。このような被覆が生じると、移動時に、許容限度の小さいシールに詰まりが発生したり、あるいは粒子の発生により作業員の安全に問題が生じたり、あるいはプロセス間に相互汚染が発生する。本発明では、これら問題に対処するために、真空成膜時に基体のみを被覆するようにしている。さらに、すべての従来法とは異なり、基体搬送体と開口との間にクリアランスを設定しない。むしろ、正確に切断された基体10とAVA開口2との間にクリアランス21を設定する。特に、基体10と上部チャネル10aとの間、および基体10と線形の軸受けプレート20との間に設定する。
【0041】
図2Aは、真空チャンバー3および複数の真空処理ステーション200、300を示す一部断面図である。金属ストリップベルト1により、複数の基体10を複数の真空処理ステーション200、300に送る。処理ステーション300では、一対の水冷プレート34によって基体10を冷却する。
【0042】
図2Aの各処理ステーション200には、一対の加熱されたポケット33を設置する。熱流や蒸気流を発生するこれら加熱されたポケット33は、熱伝導率の高い材料を成形して得たブロック体で構成する。図7Aは、一対の加熱されたポケット33を示す図で、一対の金属ストリップベルト1の横断面細部を示す図でもある。上下の加熱されたポケット33はいずれも機械加工したポケット29をもつ。図示のように、成膜材料35を下部の加熱されたポケット33のポケット29に設置する。基体20のみをポケット29の上に掛け渡す。ベルト1はまったくポケット29を横断しないため、成膜は基体10の上だけで生じる。なお、上部の加熱されたポケット33は、基体10のヒーターとして機能する。
【0043】
加熱されたポケット33は、熱伝導率が許容レベルにある任意の材料で構成することができる。なお、この材料は、空気や水蒸気の吸着を防止するために、多孔度レベルは低いほうがよく、また不純物レベルも低いほうがよい。好ましい材料の一例は、精製パイロリチックグラファイトである。もちろん、金属、セラミックで被覆した金属やその他の適当な材料を選択することも可能である。
【0044】
本発明の好ましい実施態様では、高温真空で使用しても損傷しない複数の石英ハロゲンランプ38によって加熱されたポケット33を加熱する。加熱されたポケット33の温度制御は、加熱されたポケット33の壁中に熱電対を埋め込み、公知のランプ38への電力についてPID(proportional with integral and derivative)温度制御によって行なえばよい。ランプ38は、保護のために、ボックス39に収めておく。ボックス39はランプ38および加熱されたポケット33の支持構造体として作用する。また、安全のために電気的に絶縁し、ランプ38からの影響を防止するだけでなく、エネルギーロスを減らすための放射線シールドとして作用する。加熱されたポケット33を加熱する手段として、抵抗加熱や誘導加熱を始めとする他の手段も使用可能である。
【0045】
各処理ステーション200では、基体10に対して各種の処理を行なうことができる。これら処理には、i)基体の急熱、ii)基体および膜のアニーリング、iii)膜の基体からの熱剥離、iv)基体および膜の蒸気処理、あるいはv)基体への薄膜の成膜がある。ステーション200によって行なう所定の処理は以下の三つのパラメータに依存する。すなわち、a)下部の加熱されたポケット33の温度、b)上部の加熱されたポケット33の温度、およびc)成膜材料35の有無。上記の処理i)〜iii)では、成膜材料34はポケット29には装入しない。処理i)では、ガラス基体10の急速加熱のサイクルが1分程度と短くなるような温度に上下の加熱されたポケット33を維持する。加熱が均一になると、基体10の割れがなくなる。処理ii)では、薄膜が再昇華し基体10から剥離しない温度に上下の加熱されたポケット33を維持する。処理iii)では、膜が再昇華により基体10から剥離するのに十分高い温度に上下の加熱されたポケット33を維持する。
【0046】
上記の処理iv)およびv)では、成膜材料35をポケット29に装入する。処理iv)では、下部の加熱されたポケット33より高い温度に、上部の加熱されたポケット33および基体10を維持する。このようにすると、成膜材料35が下部の加熱されたポケット33のポケット29内で昇華し、基体10の下面が蒸気に暴露されるが、蒸気は、基体10には膜として付着しない。処理v)では、基体10および上部の加熱されたポケット33よりも比較的高い温度に下部の加熱されたポケット33を維持する。このようにすると、成膜材料35が下部の加熱されたポケット33のポケット29内で昇華し、蒸気が凝縮し、基体10の下面に膜として付着する。これら処理すべては耐久性があり、高スループット処理である上に、環境上あるいは作業員にとっても安全であり、キャピタルコストが低い。
【0047】
本発明によれば、一対の金属ベルト1が基体10を複数の処理ステーション200または300に送る。金属ベルト1および基体10は、連続移動させることができるが、本発明の好適な実施態様では、金属ベルト1および基体10を間欠的に移動させてもよい。この間欠動作は、通常のステッパモーター7およびステッパモーター動作制御装置8によって実行可能である。基体10をベルト1上に等ピッチ距離に設定し、処理ステーション200または300を一ピッチ離した距離に設定する。間欠動作は、処理を行なうベルト1の停止と、複数の基体10を一連の処理工程に送るベルト1の短時間の動作とからなる。このようにすると、各基体10を短時間各処理ステーション200または300で停止させることができる。本明細書でサイクル時間として定義する有効時間は、一回の停止時間と一回のベルト1の動作時間との合計時間からなる。一つの基体10は、各サイクル時間で一連のインライン型真空処理工程を終了する。
【0048】
処理ステーション200または300はモジュール式なため、ある一つの処理を複数同時に実施できる。ある処理工程にサイクル時間を越える処理時間が必要な場合には、一連の同様な処理ステーション200または300で実施することができる。例えば、終了するにはサイクル時間以上の時間が必要なアニーリング工程の場合、一連のアニーリング処理ステーション200で実施することができる。
【0049】
基体20への成膜処理は、本発明の重要な処理工程である。以下、成膜装置について詳しく説明する。
【0050】
ベルト1を間欠動作すると、その動作停止時に成膜を実施できる。この動作停止時には、図2Aに示すように、金属ストリップベルト1上に一定のピッチ間隔で配設した個々の基体10は、個々の加熱されたポケット33に対して封止関係にある。この動作停止時に、個々の加熱されたポケット33において基体10に成膜する。所定の動作停止時間の間に、個々の加熱されたポケット33の温度を変えることによって膜厚を変えることができる。膜厚の閉ループ制御は、公知膜厚モニターにより膜厚を測定し、必要に応じて、加熱されたポケット33の温度を調節すれば実施できる。成膜速度は加熱されたポケット33の温度の関数であるため、きわめて精密な制御を実施できる。
【0051】
特に、本発明のおいては、高スループットで基体10の表面の面方向にきわめて均質な成膜を行なって、大量生産する場合に、ある基体10から別な基体10の膜均質性の再現性をきわめて長い時間にわたって厳密に制御できるように構成する。
【0052】
新規な封止関係は、本発明独自のものであり、これまでに指摘あるいは示唆された封止関係ではない。図6Aおよび図6Bは、真空昇華による成膜に使用する2種類の従来装置を示す正面図である。図6Aに、成膜源である成膜材料35aと基体10aとを密閉空間に設置した、Bozlerを発明者とする米国特許第3,636,919号(1972)に記載されている方法を示す。この密閉空間は、上部ヒーター36Uと下部ヒーター36Lとによって構成する。基体10aは、密閉空間に封止してあるため、移動することができず、真空チャンバーの下にあるポンプ毎に一つの膜のみを成膜する。図6Bに、一般にCSS(密間隔昇華)として知られている、Bonnetを発明者とする米国特許第5,304,499号(1994)記載の別な公知方法を示す。この公知方法では、成膜材料35aを平坦な加熱されたプレート36Lに設置し、成膜材料35aから例えば2〜3mmの距離をおいて基体を保持する。成膜材料35aと基体10aとの間のクリアランスが蒸気の漏出路になる点が、この公知方法の問題である。蒸気の漏出が生じると、成膜が不均質になる上に、処理空間に有毒なナノ粒子が発生する。
【0053】
本発明の加熱されたポケットを使用する成膜装置は、これら従来方法の問題を解決するものである。図7Aに示すように、基体10と加熱されたポケット33を構成するブロック体の上面との間に、0.001〜0.018インチ程度のクリアランス37を設定する。このクリアランス37は、ベルト1が基体10の両側部にある基体10の両側にも設定する。クリアランス37は、基体10が加熱されたポケット33に接触し、成膜された膜を損傷することを未然に防ぐために必要である。また、クリアランス37は、加熱されたポケット33の上部と各基体10の底部との間に許容差の狭い滑り嵌めシールを形成するようにも設定する。このクリアランス37から蒸気漏出が生じても、これは分子レベルの蒸気漏出であり、きわめて微小なものである。これによりクリアランス37からの蒸気漏出をなくし、基体10が成膜源ポケット29を遮断するシャッターとして作用することになる。
【0054】
さらに、ポケット29の壁が、昇華材料35の蒸気流を直線状に整流する。ポケット29上部にあるクリアランス37が整流化された蒸気流に対して直角になっているため、ほぼすべての蒸気流がクリアランス37を迂回し、直接クリアランスに入ることはない。例え、ガス散乱によりクリアランス37に入る蒸気があったとしても、これは容易に基体10の表面に付着することになる。このようにクリアランス37を構成してあるため、蒸気シールを維持しつつ、多数の基体10を移動させることができる。この構成は、基体10の面方向の成膜均質性を維持できる点で、従来方法より有利である。本発明では、基体10をシャッターとしても利用するため、加熱されたポケット33間の相互汚染を実質的に防止できる。PV装置を処理するほとんどの真空プロセスでは、負荷ロックを使用するか、あるいは負荷ロックを中間チャンバーと組合せて使用し、処理工程間の相互汚染を防止している。
【0055】
図7Aに示すように、成膜材料35は、ポケット29の床面に等しい間隔のパターンで設置する必要がある。成膜材料35は、粉末、粉末をプレスして得たペレット、あるいはランダムな塊な形で使用することができる。CdTePVの製造には、これら材料すべてを利用でき、市場から入手できる。また、下部の加熱されたポケット33内のポケット29の深さよって定まる成膜材料35と基体10の下面との間の距離は、昇華成膜種がガス散乱できる十分な距離でなければならない。
【0056】
ガス散乱は、昇華成膜種間の衝突かあるいは昇華成膜種と周囲の背景ガスの分子との衝突の結果である。これら衝突により、成膜材料35からの直線経路から基体10の方に昇華成膜種が偏向し、散乱する。昇華成膜種がこのように散乱するため、基体10上に均質な成膜が生じる。クヌーセン数は、存在するガス散乱量を定量化するために使用されている公知無次元パラメータである。また、クヌーセン数は、成膜材料35と基体10との間の距離によって除した、所定温度および圧力におけるポケット20内の平均自由行程の比である。クヌーセン数が0.01未満の場合には、ポケット29内の成膜種が粘稠な流れとして存在するため、ガス散乱が有意味になる。この粘稠な流れ状態で、ガスが散乱すると、昇華成膜種からエネルギーが失われるため、凝縮して、ナノ粒子が発生することになる。また、クヌーセン数が1以上の場合には、成膜種が分子状の流れになるため、ガスの散乱がきわめて少なくなる。この分子状流れでは、成膜種は直線状に移動して、基体に達する。この直線状の成膜が生じると、基体10の面内方向において膜厚が不均質になる。クヌーセン数が0.01〜1の範囲にある場合は、成膜種は、ガス散乱が認められる遷移流れ状態になる。この遷移流れ状態では、蒸気流はガス散乱によってランダム化されるが、衝突がほとんどないため、昇華成膜種はエネルギーのほとんどを維持し、基体10に衝突する前に、凝縮してナノ粒子になることはない。本発明では、クヌーセン数が0.07〜0.44の中間範囲にある状態で成膜を行なうため、基体10の面内方向の膜厚が均質になる。
【0057】
ポケット29内で処理ガスを加熱することが、本発明の別な特徴である。基体10が加熱されたポケット33に対してシャッターとして作用するため、成膜源ポケット29内のガスが均一に高温になる。加熱されたポケット33内で処理ガスが高温になることが、上記のガス散乱衝突によるナノ粒子の生成を抑制する別な要因である。
本発明の好適な実施態様では、低いキャピタルコストの装置を利用して、高いスループットで背面電極を形成する手段を実現する。この層は、膜積層体の他の層に接着性を示し、きわめて低い電気抵抗率をもつ層である。図1に示すように、処理ステーション52aおよび52bで大気圧力下にて実施する新規な噴霧プロセスによって背面電極を製造する。従来知られている噴霧方法によって、導電性グラファイトコーチング層を形成し、この上に導電性Niコーチング層を形成し、電流を伝達する背面電極を形成する。Niの外に他の金属を含む噴霧も公知であり、使用することができる。金属導電性コーチング層については、炭素層を介在させずに、噴霧により直接オーム接点層に設けることも可能である。なお、ここでは炭素を金属とは考えていない。金属被着層に酸素や水蒸気が混入することを制限するために、N2やArなどの無水不活性ガスを噴霧プロセスにおける 充填ガスとして使用し、噴霧プロセスを制御された環境内で実施することも可能である。
【0058】
厚膜背面電極は、完成製品をカプセル化かつ保護できるレベルでポリマーバインダーを含有する。噴霧は室温で行なうため、予め製造した半導体層に損傷を与えたり、あるいは欠陥を導入する恐れはない。噴霧方法は、キャピタルコストが低いのが特徴である。スパッタリングなどの公知の、他のPV装置の金属被着方法は、コストの高い高真空装置が必要である。
【0059】
また、本発明の好適な実施態様は、高スループットおよび低コストのスクライビング手段を提供するものでもある。図1に示すように、処理ステーション52aでの噴霧プロセスによってグラファイト層を形成した後に、スクライビング工程を実施する。グラファイト層の形成後にスクライビングを行なうのは、半導体層に取り扱いにより損傷が発生することがあるが、これを未然に防止するためである。
【0060】
図9Aは、膜スクライビング方法の好適な実施態様の細部を示す図である。マスク41の開口45を介して回転ワイヤブラシ42を接触させ、基体10から膜40の一部を除去する。マスク41の開口45の横断面をテーパー加工し、マスク41と膜層40の接触部分付近で狭くする。これにより、回転ブラシ42の開口45への挿入が容易になる。磨耗を減らすために、窒化チタンなどのハードコーチングでマスク41を被覆してもよい。
【0061】
図9Aに示した膜スクライビング方法の好適な実施態様の場合、ブラシ42を精密加工する必要ない。というのは、マスク41の開口45が膜40の除去される領域になるからである。スクライビングは、基体10全面にマスク41の開口45にそって軸方向に回転ワイヤブラシ42を送って行なう。複数の回転金属ブラシ42を設ければ、マスク41の開口45の軸方向にそって1回のスクライビングを行なうだけで、基体10全体のスクライビングを終了することができる。この膜スクライビング方法は、層を選択的にスクライビングできる。回転ブラシ42とともに研磨粉を用いれば、TCO層もスクライビングすることもできる。回転ブラシ42だけでも、TCO以外の層すべてを除去することができる。
【0062】
本発明の好適な実施態様の処理工程を図10Aのフローチャートに示す。本発明プロセスを行なうために必要な装置1000の全体は、図1に示してある。プロセスの真空部分、すなわち図10Aの工程2)から工程12)の部分を実施するために必要な装置を図2Aに示す。図2Aに示すように、金属ストリップベルト1により基体10を真空処理ステーション200および300に送る。図10Aに示すように、これら処理ステップは、図2Aに示す真空処理ステーション200または300のうち一つのあるいは一連のステーションを使用して実施することができる。各処理ステーション200または300で処理、および基体10を次の処理ステーション200または300に送るために必要な総時間は、上記定義の通り、サイクル時間を単位とする。以下の記載では、このサイクル時間は30秒〜2分の範囲である。
【0063】
図10Aについて、複数の基体10を処理するさいの各基体10に行なわれる処理工程を以下説明する。
【0064】
工程(1)では、一面にTCOを設けていてもよい基体10を超音波洗浄、水洗し、イソプロピルアルコールに浸漬し、表面から水を除き、クリーンルーム形の小さな環境内で乾燥する。
【0065】
工程(2)で、金属ストリップベルト1を使用して、基体10を真空チャンバー3にAVA開口2を介して移す。
【0066】
工程(3)で、基体10を500℃〜560℃の範囲にある温度に加熱し、次のプロセスに送る。
【0067】
工程(4)では、基体10の温度を500℃〜560℃の範囲に維持した状態で、基体10のTCO層にCdS膜を成膜し、基体10を次のプロセスに移す。
【0068】
工程(5)では、基体10の温度を500℃〜560℃の範囲に維持した状態で、基体10上のCdS層にCdTe膜を成膜し、基体10を次のプロセスに移す。
【0069】
工程(6)および工程(7)では、CdS/CdTe層をCdCl2処理する 。まず、基体を300℃〜500℃の温度範囲に維持した状態で、基体10上のCdS/CdTe層をCdCl2に暴露し、基体10を次のプロセスに移す。基 体10上のCdS/CdTe層のCdCl2への暴露は、CdCl2蒸気に暴露して行なってもよく、あるいはCdTe層にCdCl2膜を成膜して行なってもよ い。いずれのCdCl2暴露方法でも、高効率でCdTePVモジュールを得る ことができる。この処理工程では、一連のCdCl2処理ステーションが必要な 場合もある。
【0070】
工程(7)では、基体10の温度を400℃〜450℃の範囲に維持した状態で、基体10上のCdCl2処理層をアニーリングし、CdCl2膜があればこれを除去し、基体10を次のプロセスに移す。この処理工程では、一連のアニーリングステーションが必要な場合もある。以上の工程(6)および(7)で、CdS/CdTe層のCdCl2処理を行なう。CdTePVモジュールの真空中で のCdCl2処理は公知であるが、CdTe層の成膜とオーム接点層の形成との 間で、しかも基体を真空に維持した状態においてインラインで行なうCdCl2 処理工程は従来にはない。同様に、基体をCdTe成膜から直接CdCl2処理 に回すことも従来にはない。
【0071】
工程(8)では、25℃〜100℃の必要な温度範囲に基体10および膜を冷却し、基体10を次のプロセスに移す。この処理工程では、一連の冷却ステーションが必要な場合もある。
【0072】
工程(9)および工程(10)では、低抵抗オーム接点をCdTe層に形成する。基体10の温度を150℃〜300℃の範囲に維持した状態で、基体10上のCdTe層に金属塩を被着し、基体10を次のプロセスに回す。この処理工程では、金属塩の一例としてCuClを使用する。基体10の温度を150℃〜250℃の範囲に維持した状態で、基体10上のCdS/CdTe/金属塩層をアニーリングし、基体10を次のプロセスに回す。この処理工程では、一連のアニーリングステーションが必要になる場合もある。工程(9)および工程(10)では、金属塩とCdTe層の表面とが反応し、この反応により薄いp+半導体層がCdTe表面に形成し、オーム接点になる。Cu塩の場合、CuTexまたは CuがドーピングしたCdTe:Cuなどのテルル化銅、あるいは両者が形成することがある。この薄いp+層により、安定な低抵抗オーム接点がCdTe層の表面に形成することになる。真空中でCdTe層に金属塩を被着することによってCdTe上にオーム接点を形成する例は従来にはない。
【0073】
工程(11)では、25℃〜100℃の範囲にある必要な温度に基体10を冷却し、基体10を次のプロセスに回す。このプロセスでは、一連の冷却ステーションが必要な場合もある。
【0074】
工程(12)では、金属ストリップベルト1によりAVA開口を介して真空チャンバー3から基体10を取り出す。
【0075】
工程(13)では、4〜16時間の範囲から選択した最適な時間オーム接点層を空気に暴露してから、炭素含有導電性コーチングの層を噴霧プロセスによってオーム接点層に形成する。空気への暴露により、PVモジュールの長期間安定性が向上する。
【0076】
従来例に関して記載したように、基体10の膜層に選択して一連のスクライビングを行なって、基体上の個々のPVモジュールを分離し、基体10上の個々モジュールを配線して、モジュール製品を完成する。
【0077】
工程(14)で、透明な導電性酸化物を有する基体上の膜層のすべてについて最初の複数のスクライビングを行なう。次に、TCOを除去せずに炭素層及び/又はp/n層について2回目の複数のスクライビングを行なうが、この場合には、これを第1回のスクライビングと平行に行なう。これら第1回と第2回の複数のスクライビングは、図9Aについて説明した新規な膜スクライビング方法により行なう。
【0078】
工程(15)で、噴霧によって、炭素含有導電性コーチングの層にNi含有導電性コーチングの層を形成する。第2回目のスクライビングの後にNi金属被着層を形成するため、第2回目のスクライビングにより生じた半導体層の凹部をNi層が埋めることになる。これによって、あるモジュールの背面電極を別なモジュールの正面電極に接続する。この工程が、次に金属被着層について行なう最後のスクライビングにより、PVモジュールを直列に相互結合し、PVモジュール製品が完成する。
【0079】
工程(16)では、金属被着層のみについて第3回の複数のスクライビングを行なう。第3回目のスクライビングは、図9Aについて説明した新規な膜スクライビング方法によって行なう。
【0080】
工程(17)において、電気的に接続し、そしてモジュール完成品をカプセル化する。
【0081】
図10Aの工程4)、5)、6)または9)を始めとする成膜工程のいずれにおいても、特定材料の一つ以上の層を成膜することができる。これら多数の層は、一連の加熱されたポケット成膜装置によって成膜することができる。一つの材料層を所定のサイクル時間で所定の膜厚に成膜する場合、この単一層は、より短いサイクル時間で多元成膜により単一層の厚みまで成膜した多数の薄い層によって構成してもよい。多元成膜は、サイクル時間の短縮毎に対応して生産速度が高くなるため、有利である。また、多元処理ステーションを使用すると、アニーリング、蒸気処理、冷却などの他の工程のサイクル時間を短縮できる。
【0082】
また、本発明によれば、多元接続太陽電池を構成することも可能である。この場合、基体上にはモノリシックな多元接続構造体を構成することができる。この構造において、まず太陽光線が大きなバンドギャップの材料を透過し、次に残りの光線が小さなバンドギャップの材料を透過するように、2つかそれ以上の太陽電池を一つの基体に積層することができる。材料の必要なバンドギャップは、元素Zn、Cd、Hg、S、SeまたはTeなどを組合せて形成した半導体を使用することにより実現することができる。これら元素は、周規律表IIB族およびVIB族元素である。これら半導体については、三つかそれ以上の元素からなる合金として構成することも可能である。多元層は、一連の加熱されたポケット成膜装置によって成膜することができる。また、加熱された多元ポケットにおける成膜材料の組成を変えることによって、高品位のバンドギャップ光起電力装置を製造することができる。
【0083】
上記の図10Aの処理工程(1)〜(13)および工程(15)に従って多数のモジュールを構成した。工程(9)の金属塩としてCuClを使用した。多数の基体に、面積が0.3cm角の個々のPVモジュールを形成した。これらモジュールは、所定領域にマスクを被せ、研磨ブラスチングを使用して、基体10上の膜の残りを除去することによって整形した。得られた最良のモジュールは変換効率が11.8%で、市販品のコストが低い、SnOx:F被覆ソーダ石灰ガラ ス基体に形成したモジュールである。この高効率モジュールは、安定性もすぐれている。多数のモジュールについて、開路条件下1,000W/m2および65 ℃での光ソーキングによって加速応力試験を行なった。数百時間経過後に測定した、モジュール効率は元の効率の少なくとも98%を維持していた。
【0084】
以上、本発明の好適な実施態様について説明した。以下、本発明の別な実施態様について説明する。これら実施態様について、本発明の好適な実施態様における処理工程のフローチャートである図10Aに関して説明する。
【0085】
図10Aに示した工程9)の別な実施態様では、Cu、Ag、Au、Hg、Sn、SbおよびPbの化合物を含む金属化合物を成膜することができる。これら化合物は、好適な実施態様で説明した金属塩であればよい。あるいは、Cu、Ag、Au、Hg、Sn、SbおよびPbの有機金属化合物も使用することができる。真空中でこれら化合物をCdTeに被着すると、CdTe層との反応により低抵抗オーム接点層を形成することができる。この低抵抗オーム接点は、Cu、Ag、Au、Hg、Sn、SbおよびPbのテルル化物によって形成することができる。あるいは、高度にドーピングしたCdTeによってオーム接点を形成してもよい。図10Aの工程10)の別な実施態様では、オーム接点層を真空チャンバー外部の空気中、不活性雰囲気中かその他の雰囲気中でオーム接点層をアニーリングする。
【0086】
図10Aの工程4)および5)の他の実施態様では、CdSおよびCdTeの代わりに他の半導体を使用することができる。これら半導体の場合は、元素Zn、Cd、Hg、S、SeまたはTeの任意の組合せによって形成する。これら元素は、周規律表IIV族およびVIB族元素である。これら半導体は、三つかそれ以上の元素からなる合金として使用することもできる。既に知られているように、これら化合物半導体はPVモジュールの製造に有用であるほか、昇華が容易であり、本発明によって真空成膜することができる。一連のステーションを使用して、n形半導体およびp形半導体を成膜することができる。このように、一つ以上の層を使用して、モジュールのn形領域およびp形領域を形成することができる。これによって、半導体の膜厚を十分に維持した状態で、サイクル時間を短縮することが可能になる。また、異なるステーションでは、元素Zn、Cd、Hg、S、SeまたはTeからなる異なるIIB−VIB族化合物を成膜することができる。
【0087】
図10Aの工程6)の別な実施態様では、CdCl2の代わりに、あるいはこ れに加えてHClやCl2などのハロゲン含有物質を使用することができる。こ の場合には、制御された量のガスを加熱されたポケット33に導入できる。CdCl2と同様な効果をもつことが知られている他のハロゲン含有物質も使用する ことができる。これら化合物の既知実例はCdBr2やCdI2などである。
【0088】
図10Aの処理工程の別な実施態様では、図10Aの工程4)におけるCdSを成膜せずにCdTePVモジュールを製造することができる。この実施態様では、n形TCOとp形CdTeか他のIIB−VIB化合物との間にp/n接合を形成する。
【0089】
図10Aの処理工程の別な実施態様では、化学的浴成膜方法などの公知方法によって、真空チャンバー3の外部で基体10にCdS層を成膜することによってCdTeモジュールを製造することができる。この実施態様では、CdS層を形成した基体10を真空チャンバー3に装入し、図10Aの工程3)〜11)を真空中で実施することになる。
【0090】
図10Aの処理工程の別な実施態様では、工程4)のCdS成膜と工程5)のCdTe成膜との間でCdCl2処理を実施することができる。このCdCl2処理は、図10Aに示した工程6)のCdCl2処理の前処理である。このCdCl2前処理により、モジュールの性能が一層向上することが知られている。
【0091】
図10Aのさらに別な実施態様では、HPD成膜用の加熱されたポケット33を使用して、CdS/CdTePVモジュールの性能改善に役立つ他の膜層を形成することができる。このような層の一例は、ガラス基体10のTCOとは反対側に成膜することになる反射防止(AR)層である。AR層は、太陽に向けて配設し、ガラス表面からの反射により失われる入射太陽光線の量を減らすものである。これにより、モジュールの発電量が増加することになる。このようなAR層の一例は、MgF2の薄膜である。MgF2は昇華性であるため、加熱されたポケット33での成膜によりこの薄膜を形成することができる。また、AR層は、真空チャンバー3内の任意の位置で成膜することができる。CdS/CdTeモジュールを高効率化できることが知られている別な層は、抵抗率の高い、真性酸化スズ(i−SnOx)の層である。この層の場合は、TCO層とCdS層との間 に設けることになる。あるいは、所望の抵抗率をもつSnOxの層をガラス基体 10に直接成膜できることになる。この真性酸化物層は、電気抵抗率がTCOよりもはるかに高く、モジュールの高効率化を実現できることが確認されている。また、この抵抗層によりCdS層をより薄膜化できることになる。CdS層の薄膜化は、CdTe層に入射する光量が増えるため、モジュールの発電量が増えることになる。加熱されたポケット33を使用すれば、i−SnOxを昇華させる ことができる。i−SnOxは、図10Aの工程4)のCdS成膜工程の前に成 膜することになる。
【0092】
図10Aの工程15)の別な実施態様では、マスクを介してグラファイトおよびNiを噴霧して、パターン化成膜を行なう。このように背面電極をパターン化すると、図10Aの工程14)および16)に示した第2回目および第3回目のスクライビングの必要性がなくなる。別な実施態様では、Ni導電性コーチングを噴霧成膜する前に、マスクを介して噴霧することにより第1回目のスクライビングで生じた凹部を絶縁性化合物で埋めることができる。このように絶縁性化合物を使用すると、Ni層とTCOとの間に分路を形成する必要がなくなる。
【0093】
本発明のさらに別な実施態様を以下に説明する。これら実施態様については図2B、図7B、図8、図9Bおよび図10Bに示す。以下、これらの図について説明する。
【0094】
図2Bに、一対の連続金属ストリップベルト1全体を真空チャンバー3に収めた本発明の別な実施態様を示す。真空チャンバー3の両側の一対の負荷ロック5が基体10を真空に出入りさせる手段になる。
【0095】
図7Bに、上部の加熱されたポケット33の別な構成をもつ、図7Aの真空処理ステーションの別な実施態様を示す。この別な実施態様には、複数の穴28を形成したバッフルを付加してある。成膜材料35は、密閉空間内においてバッフルの上方に設ける。この密閉空間には、成膜材料35を再装入するさいには取り外すことができる蓋27を取り付ける。上部のポケット33を加熱すると、成膜材料35が昇華し、発生した蒸気が穴28を通って、上部の加熱されたポケット33の成膜源ポケット29に流入する。この、真空処理ステーション200の別な実施態様を加熱されたポケット33として使用すると、基体10の上面に膜を成膜することができる。基体10の上面に成膜を行なう場合には、公知のローラやロボットアームなどによって基体10を搬送できる。これは、特にAR層の成膜に有利である。
【0096】
図8に、加熱されたポケット33の別な実施態様を示す。この実施態様を使用すると、ポケット29内にプラズマを発生できる。この配置は、プラズマ強化加熱ポケット成膜(PEHPD)と呼ばれている。加熱されたポケット33のこの別な実施態様は、プラズマを発生する、グラファイトからなる高電圧ピン30を使用する。ピン30は、石英管を使用することができる絶縁材32によって電気的に絶縁する。DC電源32からの高電圧がプラズマを発生する。PEHPD加熱ポケットにおける加熱ポケット/基体間の距離は、ポケット29内にイオンを発生する長さでなければならない。ポケット29があまり浅いと、成膜時に基体10がポケット29をシーリングするさいに、所望の圧力でグロー放電が発生しない。本発明の別な実施態様では、適宜、加熱されたCdSポケットおよびCdTeポケットの両者をPEHPD形としてもよく、この場合には、プラズマ強化成膜の特徴を利用できる。モジュールを高効率化できるプラズマ強化成膜のこれら特徴には、(i)CdTeの窒素ドーピング、(ii)CdTeにおける欠陥の抑制、(iii)CdSの構造変換、(iv)CdSのドーピング、および(v)CdS/CdTe界面の混合がある。さらに、PEHPDによってZnTeに窒素をドーピングし、CdTeに対するオーム接点として使用することができるZnTe:N、すなわちp+半導体層を形成することができる。
【0097】
図10Bは、本発明における別な好適な実施態様のいくつかの処理工程を示すフローチャートである。図示の処理工程には、(1)クリーンルーム形の小さな環境内で公知手段による基体の洗浄、(2)AVAまたは負荷ロックによる基体の真空チャンバーへの搬送、(3)基体の加熱、(4)プラズマとともに、あるいはプラズマをともなわずに、加熱されたポケットを使用して行なう、基体へのCdSの成膜、(5)プラズマとともに、あるいはプラズマをともなわずに、加熱されたポケットを使用して行なう、CdS膜へのCdTe膜の成膜、(6)加熱されたポケットを使用して行なう、CdS/CdTe膜のハロゲン物質含有物質処理、(7)基体および膜のアニーリング、(8)加熱されたポケットによるCdTe層へのTe層の成膜か、あるいはプラズマを使用する加熱されたポケットによるCdTe層へのZnTe:N層の成膜によって行なう、CdTe層へのオーム接点の形成、(9)ZnまたはCdなどの昇華性金属層の加熱されたポケットにより成膜によって行なう、オーム接点層への金属被着層の成膜、(10)基体および膜のアニーリング、(11)基体および膜の冷却、(12)AVAまたは負荷ロックを使用して行なう、真空チャンバーからの基体および膜の搬送、(13)金属被着層および透明導電性酸化物を含む膜積層体全体の第1回目のスクライビング、(14)公知スクリーン印刷方法によって行なう、あるモジュールの背面電極の次のモジュールの正面電極への電気接続、および(15)完成したモジュールのカプセル化がある。工程(13)における第1回目のスクライビングは、本発明に従って行なうか、あるいは機械的スクライビングかレーザースクライビングを始めとするいくつかの公知手段のいずれか一つによって行い、そして第2回目のスクライビングはTCOを除去せずに、炭素層及び/又はp/n層について行なう。
【0098】
図10Bに示す工程8)は、Teをオーム接点層として使用する本発明のさらに別な実施態様である。Teは、昇華が容易な物質で、CdTeモジュールのオーム接点材料になる物質である。CdCl2処理工程およびアニーリング工程の 後に、Teをインラインで成膜できる。なお、この場合、冷却工程を使用してもよく、あるいは使用しなくてもよい。真空成膜工程か、あるいは本発明の噴霧プロセスによって金属背面電極をTeオーム接点に形成できる。
【0099】
図10Bに示す工程9)は、背面電極の金属被着を真空中インラインで実施することができる本発明の別な実施態様である。この実施態様では、制限するものではないが、昇華が容易で、導電性のZrまたはCdを始めとする金属の加熱されたポケットによる成膜によって背面電極へ金属被着することができる。
【0100】
図9Bに、公知方法による研磨ブラスチング43を使用する、本発明のスクライビング方法の別な実施態様を示す。マスク41の開口45から研磨ブラスチング43を行なって、基体10から膜40の一部を除去する。この実施態様のスクライビング方法では、マスク41が除去する膜40の領域になるため、精密な研磨ブラスチング43は必要ない。基体10全面に研磨ブラスチング43を行なって、スクライビングを行なう。マスク41の開口45の一つ以上について研磨ブラスチング43を行い、基体10上を一回ブラスチングすることにより一つ以上の開口45をブラスチングする。複数の研磨ブラスチング43をおこなって、マスク41の開口45の軸にそって一回スクライビングを行なって、基体10全体の複数のスクライビングを終えてもよい。硬度および大きさが異なる、異なる研磨媒体を使用すれば、膜積層体40の各種層を選択的にスクライビングすることができる。このように、本発明のスクライビング方法によれば、1)比較的硬いTCO層を含む膜積層体をすべてスクライビングでき、2)TCOを除去することなく、TCO層上部の層すべてについて選択的にスクライビングできる。
【符号の説明】
【0101】
1000 本発明による光起電力モジュールの製造装置
1 金属ストリップベルト
2 開口
3 真空チャンバー
10 基体
20 軸受けプレート
21 クリアランス
29 ポケット
33 ポケット
200 処理ステーション
300 処理ステーション
【技術分野】
【0001】
[政府援助]
本発明は全米科学財団およびエネルギー省により与えられた助成金により政府の援助の下になされた発明である。この発明に対して政府は一定の権利を有するものである。
本発明は、低コストの光起電力モジュールの大量製造装置および方法、特に一緒に適用する非真空プロセスと相俟って高いスループットで実現できる、臨界的な半導体層を製造するインライン型連続真空装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光起電力(PV)モジュールは、光起電力効果により日光から電気を発生するために使用されている。過去数十年にわたって、これらモジュールが低コストで製造できるなら、世界中のエネルギー需要のかなりの部分を賄えることができるという認識があった。大手のメーカーのRoyal Dutch/ShellやBP−Amocoなどは、PVモジュールは地球環境に多大なメリットをもたらす主要なエネルギー源になる潜在力をもっていると言明していたほどである。ところが、これらのメリットを実現するためには、Bonnetなどが“Cadmium−telluride material for thin film solar cells”、J.Mater.Res.、Vol.13、No.10(1998)で議論しているように、PVモジュールを現在の容量の何倍もの容量でしかも$100/m2未満のコストで製造しなければならない。現 在 、少量ではあるが、PVモジュールはほぼ$500/m2のコストで製造されている。現在の発電量のちょうど5%に相当するPVモジュール製造能力を担うためには、現在の年製造量の約100倍が必要である。すなわち、PVモジュールの大幅な増産をかなり低いコストで達成する必要がある。
【0003】
必要な増産を必要なコスト削減とともに実現するためには、PVモジュールを製品として製造しなければならない。製品レベルの製造には技術革新により、特に製品を製造できるように設計された高度自動化製造プロセスおよび装置を開発する必要がある。製品製造には、高い製造速度(高スループット)、最低の人件費、連続的なプロセスフローが必要である。低キャピタルコストや増産の容易さもまた製品製造に役立つ。各種のPV装置が知られているが、テルル化カドミウム(CdTe)薄膜PV装置のみが製品製造の必要条件を満足しているに過ぎない。
【0004】
1974年以来、数多くの工業上の努力がCdTePVモジュールを製造できる技術の開発に費やされてきたが、これら工業上の努力の大半は、USP4319069、4734381や5501744に示されているように、基本的に製造技術としては未熟なため既に打ち切られている。今のところ、CdTePVモジュールを製品レベルで製造するために好適な技術は開発されていない。この事実は、この分野における技術革新が必要なことを証明している。
【0005】
最も普遍的なCdTePVセルは、CdTe層を硫化カドミウム(CdS)とペア化し、ヘテロ接合を形成した薄膜多結晶装置である。CdS/CdTePV装置の薄膜は、各種の真空プロセスおよび非真空プロセスにより製造できる。多数の薄膜成膜方法のうち、最も製品レベルに対応できるのは真空昇華法である。これは、CdS/CdTePVモジュールの真空昇華法の場合、他のPVモジュール成膜法よりも10〜100倍高い成膜速度を示すからである。また、CdS/CdTePVモジュールを対象とする半導体層の真空昇華法は中程度の真空レベルで実施できるため、コストの高い高真空装置を必要としない。他の薄膜PV装置の真空成膜法では、コストの高い複雑な高真空装置が必要なため、スループットが低くなる。
【0006】
高い成膜速度、そして低いキャピタルコストの理由により、真空昇華法で製造したCdS/CdTe薄膜セルがPVモジュールの製品レベル製造に最適である。ところが、カドミウムはB族発癌物質である。米国政府基準によれば、環境や工業地区などに合法的に放出できるこの物質の量はきわめて低く設定されている。従来公知のCdS/CdTe真空昇華法の場合、プロセス、ハードウェア両面で技術革新を導入し、連邦基準が規定する環境上、工業上の安全を確保すると同時に、製品レベルの製造を達成する必要がある。
【0007】
CdTe装置の一つの公知構成は、以下単に基体と呼ぶガラス基体に薄膜を成膜したバックウォール構成である。ほとんどの場合、CdTe装置は透明な導電性酸化物(TCO)膜を被覆したガラス基体に製造している。このTCO膜には、順にa)CdS膜、b)CdTe膜、c)オーム接点層、d)金属膜の他の膜が成膜されている。これら膜の成膜と同時に、装置特性を向上させるために、多くの熱処理が必要である。TCO膜および金属膜は、それぞれ、正面電極および背面電極を形成する。また、CdS層(n形)およびCdTe層(p形)が装置のp/n接合を形成する。基体を太陽に向けて、セルを展開する。光子はガラスおよびTCO膜を移動してから、装置のp/n接合に到達する。モジュールは有用な電圧を発生するように、個々のセルを直列に接続して構成する。
【0008】
このように、CdS/CdTeモジュールの製造方法は次の工程を含む。すなわち、1)TCO被覆ガラス基体の洗浄工程、2)基体の加熱工程、3)n形CdS層の成膜工程、4)p形CdTe層の成膜工程、5)CdTe結晶粒子構造および電気特性を向上させるためのCdCl2処理工程、6)CdTeからの集 電を向上させるためのp+オーム低抵抗層の形成工程、7)金属層を成膜(金属被着)し、背面電極を形成する工程、8)膜層を個々のセルに切断する工程、9)セルを直列に接続し、モジュールに電気接続を与える手段を形成する工程、そして10)完成モジュールをカプセル化する工程である。
【0009】
従来のCdTeモジュールの製造方法はいずれも制約があり、製品レベルの製造に不向きである。例えば、従来方法のCdCl2処理は連続フロープロセスで はなく、プロセスから切り離された、低スループットのバッチ操作である。これらバッチプロセスは効率が悪く、スループットを製品製造レベルまで上げるコストが非常に高くなる。公知方法のCdCl2処理の大半は水洗を必要とし、カド ミウムを含有する廃液が出る。また、公知方法のオーム接点形成工程もバッチプロセスであり、スループットが低い。さらに、従来の金属被着工程もスループットが低い上に、コストの高いプロセス装置が必要である。このように、スループットの高い連続プロセスを実現するためには、現在の方法のCdCl2処理工程 、オーム接点形成工程や金属被着工程を改善する必要がある。
【0010】
層を切断してモジュールにする従来方法としてはレーザ切断方法、機械的切方法や研磨ブラスチング切断方法がある。PV分野で使用されている公知レーザ切断方法には低い生産速度、高いキャピタルコストの問題が伴う。最近、Borgが“Commercial Production of Thin−FilmCdTe Photovoltaic Modules”、NREL/SR−520−23733、Oct.1997で議論しているように、このレーザ切断法は、レーザ装置の欠陥によりひとつの工業上の状況では使用が放棄されている。また、公知の機械的切断方法や研磨ブラスチング切断方法は、Albrightを発明者とするUSP5,501,744に示されているように、規模の小さい場合にのみ使用されているに過ぎなく、製品レベルの製造までには、技術革新や改良が必要である。
【0011】
真空昇華法によるCdS成膜やCdTe成膜に関する従来例について、以下詳しく説明する。また、CdTePVモジュールの完成品を形成するために必要な他の従来工程もあわせて説明する。
【0012】
真空昇華によってCdTe太陽電池を製造する一つの公知真空方法は、Footeなどを発明者とする米国特許第5,536,333号に開示されている。この方法については、Sasalaなども“Technology Support for Initiation of High−Throughput Processing of Thin−Film CdTePV Modules”、NREL/SR−520−23542、pp.1−2、(1997)に記載している。これら文献が記載している技術は蒸気輸送成膜法(VTD)として知られ、半導体材料を容器に装填し、これを加熱して蒸気を発生する方法である。窒素などの不活性キャリヤガスが、半導体の蒸気を加熱された導管により基体に輸送する。加熱された雰囲気中水平に基体を保持し、かつこの加熱された雰囲気中セラミックローラによって下から基体を支持する。基体の上面に半導体を成膜する。この従来方法によれば、セラミックローラが、関与する高温により自重によってガラス基体が垂れ下るを防止できる。
【0013】
VTD法は全体として非常に複雑であり、コストも高い。しかし、きわめて短い時間で、しかも十分に低い基体温度でCdTe太陽電池完成品を成膜できるため、垂れ下りを完全の防止できるか、あるいはあってもきわめて低い許容値まで抑制することができる。このように、VTD法のコストの高いセラミックローラは必要ない。原料の再装填は、従来法よりもきわめて簡単に実施できる。膜が薄膜であるため、これを形成するには、ごく少量の材料があればよい。従って、何日にもわたる操業でも、ごく少量の原料があればよく、このような複雑な再装填作業も必要がない。ところが、この方法における加熱された容器は有毒蒸気、すなわち、操業中に再装填のために開いた場合に、大きな作業上の安全問題になる有毒蒸気を含有するものである。VTD法では、蒸気をキャリヤガスとともに長距離輸送するため、蒸気の凝縮により非常に小さな粒子、すなわちナノ粒子が発生する。これらナノ粒子は膜品質を劣化させ、システムの操業時に作業環境を危険なものにする。さらに、VTD法の場合、基体にそってキャリヤガスの連続流れを維持する必要がある。また、基体を通り過ぎて搬送されるCdSやCdTeがあれば、これは無駄になる。真空チャンバー、ポンプ、排気管などの内面に付着した廃物があれば、これを除去しなければならず、保守要員が有毒材料に暴露され、作業上の安全に支障をきたすことになる。CdS蒸気やCdTe蒸気の望ましくない凝縮を未然に防止するためには、気化容器自体、導管、成膜チャンバーなどを始めとする装置の大部分を連続加熱する必要がある。これはエネルギーの無駄であり、キャピタルコストが増加する。VTD法は、p/n接合層を成膜するためにのみ使用されている。すなわち、CdCl2処理工程、オ ーム接点形成工程や金属被着工程などの他のプロセス工程は、固有の性質から、スループットの低いバッチプロセスである。切断には、レーザ切断やフォトリソグラフィが例示されているが、いずれも加工速度が低く、コストが高いプロセスである。
【0014】
International Journal of Solar Energy、Vol.12、1992に発表された“The CdTe Thin Film Solar Cell”を表題とする別な論文において、Bonnetは間隔が密な昇華CSS(close−spaced sublimation)型成膜法を使用して、CdS/CdTe層を製造するインライン型製造方法を提案している。この論文には、基体の加熱工程、CdS成膜工程およびCdTe成膜工程のみからなる、一つの真空境界内で実施するインライン型成膜方法が記載されている。他の工程、すなわちCdCl2処理、オーム接点形成および金 属被着工程は、連続インライン型真空プロセスの要部としては示されていないので、従来より公知の方法で実施されていると考えられる。既に説明したように、これら工程を実施する公知方法には制限がある。Bonnet法では、2つの以上の膜を成膜する多元基体処理が可能である。ところが、長時間操作により、大面積基体に均質に成膜を行なえるかどうかは不分明である。さらに、Bonnet法ではCSSを利用している。このCSSは、定義によれば、蒸発源と基体との間隔が2〜3mmでなければならない。このギャップでは、基体エッジから蒸気漏れが発生するはずである。蒸発源は時間の経過につれ昇華により減少するため、ギャップが大きくなる。本発明者の知見によれば、こギャップと、これに伴う蒸気漏れが基体への不均質な成膜の原因であり、また真空チャンバー内面の望ましくない領域に有毒物質が凝縮する原因でもある。この蒸気漏れを抑制するには、真空チャンバーの背圧を十分高く維持し、真空チャンバー内のガス分子間の平均自由行程を短くすればよいが、圧力が高くなると、成膜速度が低くなり、ナノ粒子の形成が顕著になる。操作圧力については、750millitorrと特定されているが、このような圧力では、ナノ粒子が形成する。なぜなら、成膜空間のエッジ付近の周囲ガスに蒸気が均質に凝縮するからである。これらきわめて小さい粒子は膜品質を劣化させ、真空チャンバーに定期的な保守のために出入りする作業員の健康にとって危険な因子になる。
【0015】
以上述べたように、CdTePVモジュールを製造するために必要な従来の各プロセス工程にはいずれも制限がある。さらに、上記各文献には、基体の加熱、n形CdS層の成膜、p形CdTe層の成膜、CdCl2処理、オーム接点形成 の一連の工程をインラインで連続的にかつ単独の真空境界内で実施できる総合的なプロセスは記載されていない。特に、CdCl2処理、オーム接点形成の工程 には、これら工程を連続インライン型真空プロセスに組み入れる前に、効果のある技術革新が必要である。すなわち、このような連続インライン型真空プロセスが実現できれば、CdTePVモジュールの製品製造にとって大きな効果が期待できる。
【0016】
また、CdTePVモジュールを製造する真空プロセスには、いずれの場合も、基体を真空内の各プロセス工程を通じて搬送し、かつこれら基体を迅速に真空に出入りさせる装置が必要である。この装置は、耐久性がある上に、構成が簡単で、低コストであることが条件である。これら条件を満足する装置は、従来文献には記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】USP4,319,069
【特許文献2】USP4,734,381
【特許文献3】USP5,501,744
【特許文献4】USP5,501,744
【特許文献5】USP5,536,333
【特許文献6】USP3,294,670
【特許文献7】USP3,636,919
【特許文献8】USP5,304,499
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Cadmium−telluride material for thin film solar cells”、J.Mater.Res.、Vol.13、No.10(1998)
【非特許文献2】“Commercial Production of Thin−FilmCdTe Photovoltaic Modules”、NREL/SR−520−23733、Oct.1997
【非特許文献3】“Technology Support for Initiation of High−Throughput Processing of Thin−Film CdTePV Modules”、NREL/SR−520−23542、pp.1−2、(1997)
【非特許文献4】International Journal of Solar Energy、Vol.12、1992に発表された“The CdTe Thin Film Solar Cell”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、CdTePVモジュールの製品化に関するもので、製造方法および製造装置両者における技術革新をもたらすものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
すなわち、本発明の第一実施態様は、CdTePVモジュールの必須の半導体層を処理する工程のすべてを、単独の真空境界内で完全実施し、高スループットを実現することに関する。これら工程は、基体の急速加熱、CdS成膜、CdTe成膜、CdCl2処理、オーム接点形成の各工程を含む。これら工程は、コス トの高い高真空装置を使用する必要のない中程度の真空圧で実施できる。インライン型真空処理を利用して、真空を破ることなく必須な層すべてを形成することにより、プロセススループット、膜品質、モジュール効率を改善でき、しかも同時にピンホール形成を未然に防止した状態で、モジュールを安定化できる。これらインライン型処理のすべてが、有毒廃棄物の発生を制限でき、かつ有毒化合物の環境への放出や作業員の有毒化合物への暴露を制限できる特徴をもつ。
【0021】
本発明の第二実施態様は、同一の真空境界内で実施でき、しかも他の製造工程とともにインラインで実施することができる新規なCdCl2処理工程に関する 。この態様によるCdCl2処理工程は、高スループットが実現できる上に、安 定かつ効率のよいモジュールを製造でき、同時に有毒化合物の環境中への放出や有毒化合物への作業員の暴露を抑制できる作用効果をもつ。
【0022】
本発明の第三実施態様は、CdTe層上へ金属塩を昇華することによりp+オーム接点を形成する新規な真空プロセスに関する。この態様によるオーム接点形成プロセスは、経時的に安定な低抵抗オーム接点を高スループットで形成できる作用効果をもつ。
【0023】
本発明の第四実施態様は、高スループットかつ低コストで背面電極を形成できる独自な噴霧プロセスに関する。このプロセスは、公知の低コスト工業用噴霧方法を利用して、耐久性があり、導電性の高い背面電極を製造できる作用効果をもつ。
【0024】
本発明の第五実施態様は、マスクを介在させて行なう研磨ブラスチングまたは機械式ブラッシングを利用して、高スループットかつ低コストでモジュールをスクライビングする新規なプロセスに関する。この新規なスクライビングプロセスは、TCO層をスクライビングすることなく、半導体層を選択的にスクライビングできる作用効果をもつ。
【0025】
本発明の第六実施態様は、基体および膜を選択的に加熱でき、基体および膜を蒸気に暴露でき、薄膜を基体上に成膜でき、かつ薄膜を基体から剥離できる新規な真空処理ステーションに関する。この真空処理ステーションを用いれば、基体の真空への出入りを容易に行なえる。成膜源として利用した場合、この真空処理ステーションは、蒸気漏れを最小限に抑制できるため、作業員の有毒物質への暴露を大幅に抑制できる作用効果をもつ。この独自な成膜源は層をきわめて均質に成膜できるため、長時間連続操作に好適なものである。
【0026】
本発明の第七実施態様は、基体を真空中を移動するために用いるか、あるいは独自な開口を形成し、基体を迅速に真空へ出入りさせるために用いる新規な基体搬送装置に関する。この基体搬送装置は耐久性があり、構成が簡単な上に、低コストであり、また薄膜成膜プロセスに基体を搬送している間、皮膜を回収する必要がないという作用効果をもつ。
【0027】
本発明の第七実施態様は、インライン型連続真空プロセスへの入り口に設定した小さく、クリーンな環境内で基体を洗浄することに関する。この実施態様は、全プロセスラインを収容する洗浄ルームが必要ないため、コストの大幅削減を可能にする作用効果をもつ。
【発明の効果】
【0028】
本発明に従って一対の金属ストリップベルト1を基体搬送体として使用すると、上記以外にも多くの作用効果が得られる。ベルト1が低質量なので、使用する軸受け面の磨耗が減少する。また、低質量であると、基体搬送体の慣性が大幅に小さくなるため、処理ステーション間での基体の迅速な移動が可能になる。
【0029】
真空チャンバー3において一連の真空プロセスを実施する必要がある状態で使用すると、連続金属ストリップベルト1の作用効果がいっそう明らかになる。長さが200フィートの連続金属ストリップベルト1は公知方法で製造できるため、工程数がきわめて多いプロセスを単独の真空チャンバー3内で実施できることになる。
【0030】
別な作用効果は、この種の基体搬送体の場合、製造コストが、従来の許容限度の小さい、ピクチャーフレーム形基体搬送体を加工するコストよりもはるかに低い点である。本発明による基体搬送体を利用すれば、プロセスのスケールアップが簡単になる。大きな基体の場合には、開口2も大きくしなければならないが、ストリップベルト1では、間隔を広くするだけよい。
【0031】
連続金属ストリップベルト1は、耐腐蝕性が高く、高温で高強度を維持する金属合金で構成するのが好ましい。表面特性を変える必要がある場合には、これらベルトを他の材料で被覆してもよい。基体10を保持するタブ6などには多種多様なものがあるが、いずれも比較的低コストで金属ストリップベルトに溶接その他の手段で固着することができる。
【0032】
連続金属ストリップベルト1によって搬送されるガラス基体1の場合、切断のさいの許容差は±0.003インチでなければならない。切断に必要な許容差まで基体10を切断するさいには、市販されているスループットの高い低コストの装置を利用できる。ガラス基体10は方法がどのようなものであれ、正確なサイズに切断する必要があり、本発明に必要な精密なガラス切断も同様に付随的な処理工程ではない。
【0033】
また、連続金属ストリップベルト1の横断面については比較的小さくする。横断面が小さいと、高温真空プロセス移動時、ベルトの熱膨張が小さいため、AVA開口2でベルトが熱膨張により詰まる恐れが小さくなる。
【0034】
また、金属ストリップベルト1の質量が比較的小さいため、従来のピクチャーフレーム形基体搬送体と比較した場合、冷却および加熱を急速に行なうことができる。さらに、金属ストリップベルト1の質量が小さいため、処理時にベルトとガラスを同温度にでき、ガラス基体10の熱勾配を小さくできる。このため、ガラスに割れが発生する応力を小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に従って光起電力モジュールを製造するシステムを示す概略上面図である。
【図2A】基体搬送装置および複数の真空処理ステーションを示す、図1の50−50線についての長手断面方向にみた、一部破断した概略正面図である。
【図2B】図2Aの基体搬送装置の別な実施態様を示す、長手断面方向にみた一部破断して概略正面図である。
【図3】真空チャンバーへの外気の混入を極力抑制する封止構成を示す、図2Aの60−60線についての横断面における一部破断した概略正面図である。
【図4】図3の封止構成を示す、図2Aの70−70線についての横断面における一部破断した概略正面図である。
【図5】図2Aの基体搬送装置を示す、図4の100−100線についての概略正面図である。
【図6】図6A及びBは、従来装置に適用した状態の、密閉基体および密閉していない基体を示す断面の概略正面図である。
【図7A】図2Aの基体搬送装置の真空処理ステーションの細部を示す、図2Aの80−80線についての横断面における概略正面図である。
【図7B】図7Aの真空処理ステーションの別な実施態様を示す、横断面における概略正面図である。
【図8】図7Aの真空処理ステーションの第2の実施態様を示す、横断面における概略正面図である。
【図9A】光起電力モジュールのスクライビング方法を示す、図1の90−90線についての概略斜視図である。
【図9B】光起電力モジュールのスクライビング方法の別な実施態様を示す、図1の90−90線についての概略斜視図である。
【図10A】本発明の処理工程を示すフローチャートである。
【図10B】図10Aの処理工程の別な実施態様のいくつかを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、本発明に従って光起電力モジュールを製造する装置1000の好適な実施態様を示す概略図である。基体洗浄ステーション55で、透明な導電性酸化物(TCO)を被覆した、例えば低コストのソーダ石灰ガラスからなる工業的に入手可能な基体を洗浄する。洗浄後、一対の金属ストリップベルト1でこの基体を装置1000の次の位置に搬送する。これらベルトは、公知のステッパモータ7によって双方向に移動可能になっている。一対のベルト1の位置を正確に割り出すには、工業的に入手可能なステッパモータ制御装置8を使用すればよい。一対の金属ストリップベルト1は、一対の開口2を介して真空チャンバー3内を移動する。以下に詳しく説明するように、必須の半導体層を処理する複数の処理ステーションを真空チャンバー3内に設置する。別な系列の処理ステーションを複数のコンベヤベルト51によって接続する。これら処理ステーションは真空を必要としない。第1の噴霧処理ステーション52aの後に、第1の膜スクライビング処理ステーション53aを設ける。これら処理ステーションの後に、第2噴霧処理ステーション52bと第2の膜スクライビング処理ステーション53bを設ける。本発明の装置および方法を以下基体搬送装置および開口、真空処理ステーション、金属被着方法、膜スクライビング方法、および光起電力モジュールの製造工程の順で説明する。そして、好適な実施態様を説明した後に、別な実施態様について説明することにする。
【0037】
図2A、図3、図4および図5は、本発明による一対の空気対真空対空気(AVA)開口と基体搬送装置の好適な実施態様の完成状態を示す図である。一対のAVA開口2により、基体を空気から真空中へ迅速に搬送でき、また空気中に戻すことができる。図2Aに示す真空チャンバー3の場合、公知方法によって適当な真空までポンプ排気できる。図示では、一対のAVA開口2を真空チャンバー3の両側に設ける。一対の連続金属ストリップベルト1は、AVA開口2の両者を介して真空チャンバー3の全長を移動する。二本金属ベルト1に支持された複数の基体10も示してある。図示のように、AVA開口2には、複数のポケット14および真空ポンプ作用のための複数の真空ポンプ口15を設ける。同様に、処理ガスを噴出するために一対の噴出口11を設ける。さらに、ベルト1を移動させる複数の滑車4を設ける。ベルト張力装置9によりベルト1に所定の張力を作用させておく。
【0038】
図3は、AVA開口2の細部を示す横断面図である。上部チャネル2aと下部チャネル2bとをベルト軸受けプレート20によって分割する。全体で、2a、2bおよび20が、図2A、図3および図4の開口2の横断面を構成する。基体10の周囲には、0.005インチ±0.002インチ程度のクリアランス21を設定する。同様に、このクリアランス21は基体10と上部チャネル12aとの間、そして基体10とベルト軸受けプレート20との間にも設定する。クリアランス21の大きさについては、基体10が自由に移動できる程度には大きく、またクリアランス21を流動する流体に対して抵抗を示す程度には小さくする。この流体抵抗により、真空チャンバー3を所望の真空レベルに維持できる。一対の連続金属ストリップベルト1が、複数の基体10を搬送する基体搬送体として作用する。
【0039】
図5は、金属ストリップベルト1に取り付けた一対のタブ6を詳細に示す図である。ベルト1にそって一定の間隔で設けたこれら複数のタブ6は、基体10を位置決めする手段になる。
【0040】
一対の連続金属ストリップベルト1は、真空成膜プロセスによって被覆されない基体搬送体として作用する。このベルト1の被覆されない点が、従来方法にみられない重要な点である。Charschanを発明者とする米国特許第3,294,670号(1966)に例示されているように、従来は、“ピクチャーフレーム”形構成で基体全体を閉じこめる基体搬送体を利用していた。このピクチャーフレーム形基体搬送体は成膜時に必ず被覆されることになる。このような被覆が生じると、移動時に、許容限度の小さいシールに詰まりが発生したり、あるいは粒子の発生により作業員の安全に問題が生じたり、あるいはプロセス間に相互汚染が発生する。本発明では、これら問題に対処するために、真空成膜時に基体のみを被覆するようにしている。さらに、すべての従来法とは異なり、基体搬送体と開口との間にクリアランスを設定しない。むしろ、正確に切断された基体10とAVA開口2との間にクリアランス21を設定する。特に、基体10と上部チャネル10aとの間、および基体10と線形の軸受けプレート20との間に設定する。
【0041】
図2Aは、真空チャンバー3および複数の真空処理ステーション200、300を示す一部断面図である。金属ストリップベルト1により、複数の基体10を複数の真空処理ステーション200、300に送る。処理ステーション300では、一対の水冷プレート34によって基体10を冷却する。
【0042】
図2Aの各処理ステーション200には、一対の加熱されたポケット33を設置する。熱流や蒸気流を発生するこれら加熱されたポケット33は、熱伝導率の高い材料を成形して得たブロック体で構成する。図7Aは、一対の加熱されたポケット33を示す図で、一対の金属ストリップベルト1の横断面細部を示す図でもある。上下の加熱されたポケット33はいずれも機械加工したポケット29をもつ。図示のように、成膜材料35を下部の加熱されたポケット33のポケット29に設置する。基体20のみをポケット29の上に掛け渡す。ベルト1はまったくポケット29を横断しないため、成膜は基体10の上だけで生じる。なお、上部の加熱されたポケット33は、基体10のヒーターとして機能する。
【0043】
加熱されたポケット33は、熱伝導率が許容レベルにある任意の材料で構成することができる。なお、この材料は、空気や水蒸気の吸着を防止するために、多孔度レベルは低いほうがよく、また不純物レベルも低いほうがよい。好ましい材料の一例は、精製パイロリチックグラファイトである。もちろん、金属、セラミックで被覆した金属やその他の適当な材料を選択することも可能である。
【0044】
本発明の好ましい実施態様では、高温真空で使用しても損傷しない複数の石英ハロゲンランプ38によって加熱されたポケット33を加熱する。加熱されたポケット33の温度制御は、加熱されたポケット33の壁中に熱電対を埋め込み、公知のランプ38への電力についてPID(proportional with integral and derivative)温度制御によって行なえばよい。ランプ38は、保護のために、ボックス39に収めておく。ボックス39はランプ38および加熱されたポケット33の支持構造体として作用する。また、安全のために電気的に絶縁し、ランプ38からの影響を防止するだけでなく、エネルギーロスを減らすための放射線シールドとして作用する。加熱されたポケット33を加熱する手段として、抵抗加熱や誘導加熱を始めとする他の手段も使用可能である。
【0045】
各処理ステーション200では、基体10に対して各種の処理を行なうことができる。これら処理には、i)基体の急熱、ii)基体および膜のアニーリング、iii)膜の基体からの熱剥離、iv)基体および膜の蒸気処理、あるいはv)基体への薄膜の成膜がある。ステーション200によって行なう所定の処理は以下の三つのパラメータに依存する。すなわち、a)下部の加熱されたポケット33の温度、b)上部の加熱されたポケット33の温度、およびc)成膜材料35の有無。上記の処理i)〜iii)では、成膜材料34はポケット29には装入しない。処理i)では、ガラス基体10の急速加熱のサイクルが1分程度と短くなるような温度に上下の加熱されたポケット33を維持する。加熱が均一になると、基体10の割れがなくなる。処理ii)では、薄膜が再昇華し基体10から剥離しない温度に上下の加熱されたポケット33を維持する。処理iii)では、膜が再昇華により基体10から剥離するのに十分高い温度に上下の加熱されたポケット33を維持する。
【0046】
上記の処理iv)およびv)では、成膜材料35をポケット29に装入する。処理iv)では、下部の加熱されたポケット33より高い温度に、上部の加熱されたポケット33および基体10を維持する。このようにすると、成膜材料35が下部の加熱されたポケット33のポケット29内で昇華し、基体10の下面が蒸気に暴露されるが、蒸気は、基体10には膜として付着しない。処理v)では、基体10および上部の加熱されたポケット33よりも比較的高い温度に下部の加熱されたポケット33を維持する。このようにすると、成膜材料35が下部の加熱されたポケット33のポケット29内で昇華し、蒸気が凝縮し、基体10の下面に膜として付着する。これら処理すべては耐久性があり、高スループット処理である上に、環境上あるいは作業員にとっても安全であり、キャピタルコストが低い。
【0047】
本発明によれば、一対の金属ベルト1が基体10を複数の処理ステーション200または300に送る。金属ベルト1および基体10は、連続移動させることができるが、本発明の好適な実施態様では、金属ベルト1および基体10を間欠的に移動させてもよい。この間欠動作は、通常のステッパモーター7およびステッパモーター動作制御装置8によって実行可能である。基体10をベルト1上に等ピッチ距離に設定し、処理ステーション200または300を一ピッチ離した距離に設定する。間欠動作は、処理を行なうベルト1の停止と、複数の基体10を一連の処理工程に送るベルト1の短時間の動作とからなる。このようにすると、各基体10を短時間各処理ステーション200または300で停止させることができる。本明細書でサイクル時間として定義する有効時間は、一回の停止時間と一回のベルト1の動作時間との合計時間からなる。一つの基体10は、各サイクル時間で一連のインライン型真空処理工程を終了する。
【0048】
処理ステーション200または300はモジュール式なため、ある一つの処理を複数同時に実施できる。ある処理工程にサイクル時間を越える処理時間が必要な場合には、一連の同様な処理ステーション200または300で実施することができる。例えば、終了するにはサイクル時間以上の時間が必要なアニーリング工程の場合、一連のアニーリング処理ステーション200で実施することができる。
【0049】
基体20への成膜処理は、本発明の重要な処理工程である。以下、成膜装置について詳しく説明する。
【0050】
ベルト1を間欠動作すると、その動作停止時に成膜を実施できる。この動作停止時には、図2Aに示すように、金属ストリップベルト1上に一定のピッチ間隔で配設した個々の基体10は、個々の加熱されたポケット33に対して封止関係にある。この動作停止時に、個々の加熱されたポケット33において基体10に成膜する。所定の動作停止時間の間に、個々の加熱されたポケット33の温度を変えることによって膜厚を変えることができる。膜厚の閉ループ制御は、公知膜厚モニターにより膜厚を測定し、必要に応じて、加熱されたポケット33の温度を調節すれば実施できる。成膜速度は加熱されたポケット33の温度の関数であるため、きわめて精密な制御を実施できる。
【0051】
特に、本発明のおいては、高スループットで基体10の表面の面方向にきわめて均質な成膜を行なって、大量生産する場合に、ある基体10から別な基体10の膜均質性の再現性をきわめて長い時間にわたって厳密に制御できるように構成する。
【0052】
新規な封止関係は、本発明独自のものであり、これまでに指摘あるいは示唆された封止関係ではない。図6Aおよび図6Bは、真空昇華による成膜に使用する2種類の従来装置を示す正面図である。図6Aに、成膜源である成膜材料35aと基体10aとを密閉空間に設置した、Bozlerを発明者とする米国特許第3,636,919号(1972)に記載されている方法を示す。この密閉空間は、上部ヒーター36Uと下部ヒーター36Lとによって構成する。基体10aは、密閉空間に封止してあるため、移動することができず、真空チャンバーの下にあるポンプ毎に一つの膜のみを成膜する。図6Bに、一般にCSS(密間隔昇華)として知られている、Bonnetを発明者とする米国特許第5,304,499号(1994)記載の別な公知方法を示す。この公知方法では、成膜材料35aを平坦な加熱されたプレート36Lに設置し、成膜材料35aから例えば2〜3mmの距離をおいて基体を保持する。成膜材料35aと基体10aとの間のクリアランスが蒸気の漏出路になる点が、この公知方法の問題である。蒸気の漏出が生じると、成膜が不均質になる上に、処理空間に有毒なナノ粒子が発生する。
【0053】
本発明の加熱されたポケットを使用する成膜装置は、これら従来方法の問題を解決するものである。図7Aに示すように、基体10と加熱されたポケット33を構成するブロック体の上面との間に、0.001〜0.018インチ程度のクリアランス37を設定する。このクリアランス37は、ベルト1が基体10の両側部にある基体10の両側にも設定する。クリアランス37は、基体10が加熱されたポケット33に接触し、成膜された膜を損傷することを未然に防ぐために必要である。また、クリアランス37は、加熱されたポケット33の上部と各基体10の底部との間に許容差の狭い滑り嵌めシールを形成するようにも設定する。このクリアランス37から蒸気漏出が生じても、これは分子レベルの蒸気漏出であり、きわめて微小なものである。これによりクリアランス37からの蒸気漏出をなくし、基体10が成膜源ポケット29を遮断するシャッターとして作用することになる。
【0054】
さらに、ポケット29の壁が、昇華材料35の蒸気流を直線状に整流する。ポケット29上部にあるクリアランス37が整流化された蒸気流に対して直角になっているため、ほぼすべての蒸気流がクリアランス37を迂回し、直接クリアランスに入ることはない。例え、ガス散乱によりクリアランス37に入る蒸気があったとしても、これは容易に基体10の表面に付着することになる。このようにクリアランス37を構成してあるため、蒸気シールを維持しつつ、多数の基体10を移動させることができる。この構成は、基体10の面方向の成膜均質性を維持できる点で、従来方法より有利である。本発明では、基体10をシャッターとしても利用するため、加熱されたポケット33間の相互汚染を実質的に防止できる。PV装置を処理するほとんどの真空プロセスでは、負荷ロックを使用するか、あるいは負荷ロックを中間チャンバーと組合せて使用し、処理工程間の相互汚染を防止している。
【0055】
図7Aに示すように、成膜材料35は、ポケット29の床面に等しい間隔のパターンで設置する必要がある。成膜材料35は、粉末、粉末をプレスして得たペレット、あるいはランダムな塊な形で使用することができる。CdTePVの製造には、これら材料すべてを利用でき、市場から入手できる。また、下部の加熱されたポケット33内のポケット29の深さよって定まる成膜材料35と基体10の下面との間の距離は、昇華成膜種がガス散乱できる十分な距離でなければならない。
【0056】
ガス散乱は、昇華成膜種間の衝突かあるいは昇華成膜種と周囲の背景ガスの分子との衝突の結果である。これら衝突により、成膜材料35からの直線経路から基体10の方に昇華成膜種が偏向し、散乱する。昇華成膜種がこのように散乱するため、基体10上に均質な成膜が生じる。クヌーセン数は、存在するガス散乱量を定量化するために使用されている公知無次元パラメータである。また、クヌーセン数は、成膜材料35と基体10との間の距離によって除した、所定温度および圧力におけるポケット20内の平均自由行程の比である。クヌーセン数が0.01未満の場合には、ポケット29内の成膜種が粘稠な流れとして存在するため、ガス散乱が有意味になる。この粘稠な流れ状態で、ガスが散乱すると、昇華成膜種からエネルギーが失われるため、凝縮して、ナノ粒子が発生することになる。また、クヌーセン数が1以上の場合には、成膜種が分子状の流れになるため、ガスの散乱がきわめて少なくなる。この分子状流れでは、成膜種は直線状に移動して、基体に達する。この直線状の成膜が生じると、基体10の面内方向において膜厚が不均質になる。クヌーセン数が0.01〜1の範囲にある場合は、成膜種は、ガス散乱が認められる遷移流れ状態になる。この遷移流れ状態では、蒸気流はガス散乱によってランダム化されるが、衝突がほとんどないため、昇華成膜種はエネルギーのほとんどを維持し、基体10に衝突する前に、凝縮してナノ粒子になることはない。本発明では、クヌーセン数が0.07〜0.44の中間範囲にある状態で成膜を行なうため、基体10の面内方向の膜厚が均質になる。
【0057】
ポケット29内で処理ガスを加熱することが、本発明の別な特徴である。基体10が加熱されたポケット33に対してシャッターとして作用するため、成膜源ポケット29内のガスが均一に高温になる。加熱されたポケット33内で処理ガスが高温になることが、上記のガス散乱衝突によるナノ粒子の生成を抑制する別な要因である。
本発明の好適な実施態様では、低いキャピタルコストの装置を利用して、高いスループットで背面電極を形成する手段を実現する。この層は、膜積層体の他の層に接着性を示し、きわめて低い電気抵抗率をもつ層である。図1に示すように、処理ステーション52aおよび52bで大気圧力下にて実施する新規な噴霧プロセスによって背面電極を製造する。従来知られている噴霧方法によって、導電性グラファイトコーチング層を形成し、この上に導電性Niコーチング層を形成し、電流を伝達する背面電極を形成する。Niの外に他の金属を含む噴霧も公知であり、使用することができる。金属導電性コーチング層については、炭素層を介在させずに、噴霧により直接オーム接点層に設けることも可能である。なお、ここでは炭素を金属とは考えていない。金属被着層に酸素や水蒸気が混入することを制限するために、N2やArなどの無水不活性ガスを噴霧プロセスにおける 充填ガスとして使用し、噴霧プロセスを制御された環境内で実施することも可能である。
【0058】
厚膜背面電極は、完成製品をカプセル化かつ保護できるレベルでポリマーバインダーを含有する。噴霧は室温で行なうため、予め製造した半導体層に損傷を与えたり、あるいは欠陥を導入する恐れはない。噴霧方法は、キャピタルコストが低いのが特徴である。スパッタリングなどの公知の、他のPV装置の金属被着方法は、コストの高い高真空装置が必要である。
【0059】
また、本発明の好適な実施態様は、高スループットおよび低コストのスクライビング手段を提供するものでもある。図1に示すように、処理ステーション52aでの噴霧プロセスによってグラファイト層を形成した後に、スクライビング工程を実施する。グラファイト層の形成後にスクライビングを行なうのは、半導体層に取り扱いにより損傷が発生することがあるが、これを未然に防止するためである。
【0060】
図9Aは、膜スクライビング方法の好適な実施態様の細部を示す図である。マスク41の開口45を介して回転ワイヤブラシ42を接触させ、基体10から膜40の一部を除去する。マスク41の開口45の横断面をテーパー加工し、マスク41と膜層40の接触部分付近で狭くする。これにより、回転ブラシ42の開口45への挿入が容易になる。磨耗を減らすために、窒化チタンなどのハードコーチングでマスク41を被覆してもよい。
【0061】
図9Aに示した膜スクライビング方法の好適な実施態様の場合、ブラシ42を精密加工する必要ない。というのは、マスク41の開口45が膜40の除去される領域になるからである。スクライビングは、基体10全面にマスク41の開口45にそって軸方向に回転ワイヤブラシ42を送って行なう。複数の回転金属ブラシ42を設ければ、マスク41の開口45の軸方向にそって1回のスクライビングを行なうだけで、基体10全体のスクライビングを終了することができる。この膜スクライビング方法は、層を選択的にスクライビングできる。回転ブラシ42とともに研磨粉を用いれば、TCO層もスクライビングすることもできる。回転ブラシ42だけでも、TCO以外の層すべてを除去することができる。
【0062】
本発明の好適な実施態様の処理工程を図10Aのフローチャートに示す。本発明プロセスを行なうために必要な装置1000の全体は、図1に示してある。プロセスの真空部分、すなわち図10Aの工程2)から工程12)の部分を実施するために必要な装置を図2Aに示す。図2Aに示すように、金属ストリップベルト1により基体10を真空処理ステーション200および300に送る。図10Aに示すように、これら処理ステップは、図2Aに示す真空処理ステーション200または300のうち一つのあるいは一連のステーションを使用して実施することができる。各処理ステーション200または300で処理、および基体10を次の処理ステーション200または300に送るために必要な総時間は、上記定義の通り、サイクル時間を単位とする。以下の記載では、このサイクル時間は30秒〜2分の範囲である。
【0063】
図10Aについて、複数の基体10を処理するさいの各基体10に行なわれる処理工程を以下説明する。
【0064】
工程(1)では、一面にTCOを設けていてもよい基体10を超音波洗浄、水洗し、イソプロピルアルコールに浸漬し、表面から水を除き、クリーンルーム形の小さな環境内で乾燥する。
【0065】
工程(2)で、金属ストリップベルト1を使用して、基体10を真空チャンバー3にAVA開口2を介して移す。
【0066】
工程(3)で、基体10を500℃〜560℃の範囲にある温度に加熱し、次のプロセスに送る。
【0067】
工程(4)では、基体10の温度を500℃〜560℃の範囲に維持した状態で、基体10のTCO層にCdS膜を成膜し、基体10を次のプロセスに移す。
【0068】
工程(5)では、基体10の温度を500℃〜560℃の範囲に維持した状態で、基体10上のCdS層にCdTe膜を成膜し、基体10を次のプロセスに移す。
【0069】
工程(6)および工程(7)では、CdS/CdTe層をCdCl2処理する 。まず、基体を300℃〜500℃の温度範囲に維持した状態で、基体10上のCdS/CdTe層をCdCl2に暴露し、基体10を次のプロセスに移す。基 体10上のCdS/CdTe層のCdCl2への暴露は、CdCl2蒸気に暴露して行なってもよく、あるいはCdTe層にCdCl2膜を成膜して行なってもよ い。いずれのCdCl2暴露方法でも、高効率でCdTePVモジュールを得る ことができる。この処理工程では、一連のCdCl2処理ステーションが必要な 場合もある。
【0070】
工程(7)では、基体10の温度を400℃〜450℃の範囲に維持した状態で、基体10上のCdCl2処理層をアニーリングし、CdCl2膜があればこれを除去し、基体10を次のプロセスに移す。この処理工程では、一連のアニーリングステーションが必要な場合もある。以上の工程(6)および(7)で、CdS/CdTe層のCdCl2処理を行なう。CdTePVモジュールの真空中で のCdCl2処理は公知であるが、CdTe層の成膜とオーム接点層の形成との 間で、しかも基体を真空に維持した状態においてインラインで行なうCdCl2 処理工程は従来にはない。同様に、基体をCdTe成膜から直接CdCl2処理 に回すことも従来にはない。
【0071】
工程(8)では、25℃〜100℃の必要な温度範囲に基体10および膜を冷却し、基体10を次のプロセスに移す。この処理工程では、一連の冷却ステーションが必要な場合もある。
【0072】
工程(9)および工程(10)では、低抵抗オーム接点をCdTe層に形成する。基体10の温度を150℃〜300℃の範囲に維持した状態で、基体10上のCdTe層に金属塩を被着し、基体10を次のプロセスに回す。この処理工程では、金属塩の一例としてCuClを使用する。基体10の温度を150℃〜250℃の範囲に維持した状態で、基体10上のCdS/CdTe/金属塩層をアニーリングし、基体10を次のプロセスに回す。この処理工程では、一連のアニーリングステーションが必要になる場合もある。工程(9)および工程(10)では、金属塩とCdTe層の表面とが反応し、この反応により薄いp+半導体層がCdTe表面に形成し、オーム接点になる。Cu塩の場合、CuTexまたは CuがドーピングしたCdTe:Cuなどのテルル化銅、あるいは両者が形成することがある。この薄いp+層により、安定な低抵抗オーム接点がCdTe層の表面に形成することになる。真空中でCdTe層に金属塩を被着することによってCdTe上にオーム接点を形成する例は従来にはない。
【0073】
工程(11)では、25℃〜100℃の範囲にある必要な温度に基体10を冷却し、基体10を次のプロセスに回す。このプロセスでは、一連の冷却ステーションが必要な場合もある。
【0074】
工程(12)では、金属ストリップベルト1によりAVA開口を介して真空チャンバー3から基体10を取り出す。
【0075】
工程(13)では、4〜16時間の範囲から選択した最適な時間オーム接点層を空気に暴露してから、炭素含有導電性コーチングの層を噴霧プロセスによってオーム接点層に形成する。空気への暴露により、PVモジュールの長期間安定性が向上する。
【0076】
従来例に関して記載したように、基体10の膜層に選択して一連のスクライビングを行なって、基体上の個々のPVモジュールを分離し、基体10上の個々モジュールを配線して、モジュール製品を完成する。
【0077】
工程(14)で、透明な導電性酸化物を有する基体上の膜層のすべてについて最初の複数のスクライビングを行なう。次に、TCOを除去せずに炭素層及び/又はp/n層について2回目の複数のスクライビングを行なうが、この場合には、これを第1回のスクライビングと平行に行なう。これら第1回と第2回の複数のスクライビングは、図9Aについて説明した新規な膜スクライビング方法により行なう。
【0078】
工程(15)で、噴霧によって、炭素含有導電性コーチングの層にNi含有導電性コーチングの層を形成する。第2回目のスクライビングの後にNi金属被着層を形成するため、第2回目のスクライビングにより生じた半導体層の凹部をNi層が埋めることになる。これによって、あるモジュールの背面電極を別なモジュールの正面電極に接続する。この工程が、次に金属被着層について行なう最後のスクライビングにより、PVモジュールを直列に相互結合し、PVモジュール製品が完成する。
【0079】
工程(16)では、金属被着層のみについて第3回の複数のスクライビングを行なう。第3回目のスクライビングは、図9Aについて説明した新規な膜スクライビング方法によって行なう。
【0080】
工程(17)において、電気的に接続し、そしてモジュール完成品をカプセル化する。
【0081】
図10Aの工程4)、5)、6)または9)を始めとする成膜工程のいずれにおいても、特定材料の一つ以上の層を成膜することができる。これら多数の層は、一連の加熱されたポケット成膜装置によって成膜することができる。一つの材料層を所定のサイクル時間で所定の膜厚に成膜する場合、この単一層は、より短いサイクル時間で多元成膜により単一層の厚みまで成膜した多数の薄い層によって構成してもよい。多元成膜は、サイクル時間の短縮毎に対応して生産速度が高くなるため、有利である。また、多元処理ステーションを使用すると、アニーリング、蒸気処理、冷却などの他の工程のサイクル時間を短縮できる。
【0082】
また、本発明によれば、多元接続太陽電池を構成することも可能である。この場合、基体上にはモノリシックな多元接続構造体を構成することができる。この構造において、まず太陽光線が大きなバンドギャップの材料を透過し、次に残りの光線が小さなバンドギャップの材料を透過するように、2つかそれ以上の太陽電池を一つの基体に積層することができる。材料の必要なバンドギャップは、元素Zn、Cd、Hg、S、SeまたはTeなどを組合せて形成した半導体を使用することにより実現することができる。これら元素は、周規律表IIB族およびVIB族元素である。これら半導体については、三つかそれ以上の元素からなる合金として構成することも可能である。多元層は、一連の加熱されたポケット成膜装置によって成膜することができる。また、加熱された多元ポケットにおける成膜材料の組成を変えることによって、高品位のバンドギャップ光起電力装置を製造することができる。
【0083】
上記の図10Aの処理工程(1)〜(13)および工程(15)に従って多数のモジュールを構成した。工程(9)の金属塩としてCuClを使用した。多数の基体に、面積が0.3cm角の個々のPVモジュールを形成した。これらモジュールは、所定領域にマスクを被せ、研磨ブラスチングを使用して、基体10上の膜の残りを除去することによって整形した。得られた最良のモジュールは変換効率が11.8%で、市販品のコストが低い、SnOx:F被覆ソーダ石灰ガラ ス基体に形成したモジュールである。この高効率モジュールは、安定性もすぐれている。多数のモジュールについて、開路条件下1,000W/m2および65 ℃での光ソーキングによって加速応力試験を行なった。数百時間経過後に測定した、モジュール効率は元の効率の少なくとも98%を維持していた。
【0084】
以上、本発明の好適な実施態様について説明した。以下、本発明の別な実施態様について説明する。これら実施態様について、本発明の好適な実施態様における処理工程のフローチャートである図10Aに関して説明する。
【0085】
図10Aに示した工程9)の別な実施態様では、Cu、Ag、Au、Hg、Sn、SbおよびPbの化合物を含む金属化合物を成膜することができる。これら化合物は、好適な実施態様で説明した金属塩であればよい。あるいは、Cu、Ag、Au、Hg、Sn、SbおよびPbの有機金属化合物も使用することができる。真空中でこれら化合物をCdTeに被着すると、CdTe層との反応により低抵抗オーム接点層を形成することができる。この低抵抗オーム接点は、Cu、Ag、Au、Hg、Sn、SbおよびPbのテルル化物によって形成することができる。あるいは、高度にドーピングしたCdTeによってオーム接点を形成してもよい。図10Aの工程10)の別な実施態様では、オーム接点層を真空チャンバー外部の空気中、不活性雰囲気中かその他の雰囲気中でオーム接点層をアニーリングする。
【0086】
図10Aの工程4)および5)の他の実施態様では、CdSおよびCdTeの代わりに他の半導体を使用することができる。これら半導体の場合は、元素Zn、Cd、Hg、S、SeまたはTeの任意の組合せによって形成する。これら元素は、周規律表IIV族およびVIB族元素である。これら半導体は、三つかそれ以上の元素からなる合金として使用することもできる。既に知られているように、これら化合物半導体はPVモジュールの製造に有用であるほか、昇華が容易であり、本発明によって真空成膜することができる。一連のステーションを使用して、n形半導体およびp形半導体を成膜することができる。このように、一つ以上の層を使用して、モジュールのn形領域およびp形領域を形成することができる。これによって、半導体の膜厚を十分に維持した状態で、サイクル時間を短縮することが可能になる。また、異なるステーションでは、元素Zn、Cd、Hg、S、SeまたはTeからなる異なるIIB−VIB族化合物を成膜することができる。
【0087】
図10Aの工程6)の別な実施態様では、CdCl2の代わりに、あるいはこ れに加えてHClやCl2などのハロゲン含有物質を使用することができる。こ の場合には、制御された量のガスを加熱されたポケット33に導入できる。CdCl2と同様な効果をもつことが知られている他のハロゲン含有物質も使用する ことができる。これら化合物の既知実例はCdBr2やCdI2などである。
【0088】
図10Aの処理工程の別な実施態様では、図10Aの工程4)におけるCdSを成膜せずにCdTePVモジュールを製造することができる。この実施態様では、n形TCOとp形CdTeか他のIIB−VIB化合物との間にp/n接合を形成する。
【0089】
図10Aの処理工程の別な実施態様では、化学的浴成膜方法などの公知方法によって、真空チャンバー3の外部で基体10にCdS層を成膜することによってCdTeモジュールを製造することができる。この実施態様では、CdS層を形成した基体10を真空チャンバー3に装入し、図10Aの工程3)〜11)を真空中で実施することになる。
【0090】
図10Aの処理工程の別な実施態様では、工程4)のCdS成膜と工程5)のCdTe成膜との間でCdCl2処理を実施することができる。このCdCl2処理は、図10Aに示した工程6)のCdCl2処理の前処理である。このCdCl2前処理により、モジュールの性能が一層向上することが知られている。
【0091】
図10Aのさらに別な実施態様では、HPD成膜用の加熱されたポケット33を使用して、CdS/CdTePVモジュールの性能改善に役立つ他の膜層を形成することができる。このような層の一例は、ガラス基体10のTCOとは反対側に成膜することになる反射防止(AR)層である。AR層は、太陽に向けて配設し、ガラス表面からの反射により失われる入射太陽光線の量を減らすものである。これにより、モジュールの発電量が増加することになる。このようなAR層の一例は、MgF2の薄膜である。MgF2は昇華性であるため、加熱されたポケット33での成膜によりこの薄膜を形成することができる。また、AR層は、真空チャンバー3内の任意の位置で成膜することができる。CdS/CdTeモジュールを高効率化できることが知られている別な層は、抵抗率の高い、真性酸化スズ(i−SnOx)の層である。この層の場合は、TCO層とCdS層との間 に設けることになる。あるいは、所望の抵抗率をもつSnOxの層をガラス基体 10に直接成膜できることになる。この真性酸化物層は、電気抵抗率がTCOよりもはるかに高く、モジュールの高効率化を実現できることが確認されている。また、この抵抗層によりCdS層をより薄膜化できることになる。CdS層の薄膜化は、CdTe層に入射する光量が増えるため、モジュールの発電量が増えることになる。加熱されたポケット33を使用すれば、i−SnOxを昇華させる ことができる。i−SnOxは、図10Aの工程4)のCdS成膜工程の前に成 膜することになる。
【0092】
図10Aの工程15)の別な実施態様では、マスクを介してグラファイトおよびNiを噴霧して、パターン化成膜を行なう。このように背面電極をパターン化すると、図10Aの工程14)および16)に示した第2回目および第3回目のスクライビングの必要性がなくなる。別な実施態様では、Ni導電性コーチングを噴霧成膜する前に、マスクを介して噴霧することにより第1回目のスクライビングで生じた凹部を絶縁性化合物で埋めることができる。このように絶縁性化合物を使用すると、Ni層とTCOとの間に分路を形成する必要がなくなる。
【0093】
本発明のさらに別な実施態様を以下に説明する。これら実施態様については図2B、図7B、図8、図9Bおよび図10Bに示す。以下、これらの図について説明する。
【0094】
図2Bに、一対の連続金属ストリップベルト1全体を真空チャンバー3に収めた本発明の別な実施態様を示す。真空チャンバー3の両側の一対の負荷ロック5が基体10を真空に出入りさせる手段になる。
【0095】
図7Bに、上部の加熱されたポケット33の別な構成をもつ、図7Aの真空処理ステーションの別な実施態様を示す。この別な実施態様には、複数の穴28を形成したバッフルを付加してある。成膜材料35は、密閉空間内においてバッフルの上方に設ける。この密閉空間には、成膜材料35を再装入するさいには取り外すことができる蓋27を取り付ける。上部のポケット33を加熱すると、成膜材料35が昇華し、発生した蒸気が穴28を通って、上部の加熱されたポケット33の成膜源ポケット29に流入する。この、真空処理ステーション200の別な実施態様を加熱されたポケット33として使用すると、基体10の上面に膜を成膜することができる。基体10の上面に成膜を行なう場合には、公知のローラやロボットアームなどによって基体10を搬送できる。これは、特にAR層の成膜に有利である。
【0096】
図8に、加熱されたポケット33の別な実施態様を示す。この実施態様を使用すると、ポケット29内にプラズマを発生できる。この配置は、プラズマ強化加熱ポケット成膜(PEHPD)と呼ばれている。加熱されたポケット33のこの別な実施態様は、プラズマを発生する、グラファイトからなる高電圧ピン30を使用する。ピン30は、石英管を使用することができる絶縁材32によって電気的に絶縁する。DC電源32からの高電圧がプラズマを発生する。PEHPD加熱ポケットにおける加熱ポケット/基体間の距離は、ポケット29内にイオンを発生する長さでなければならない。ポケット29があまり浅いと、成膜時に基体10がポケット29をシーリングするさいに、所望の圧力でグロー放電が発生しない。本発明の別な実施態様では、適宜、加熱されたCdSポケットおよびCdTeポケットの両者をPEHPD形としてもよく、この場合には、プラズマ強化成膜の特徴を利用できる。モジュールを高効率化できるプラズマ強化成膜のこれら特徴には、(i)CdTeの窒素ドーピング、(ii)CdTeにおける欠陥の抑制、(iii)CdSの構造変換、(iv)CdSのドーピング、および(v)CdS/CdTe界面の混合がある。さらに、PEHPDによってZnTeに窒素をドーピングし、CdTeに対するオーム接点として使用することができるZnTe:N、すなわちp+半導体層を形成することができる。
【0097】
図10Bは、本発明における別な好適な実施態様のいくつかの処理工程を示すフローチャートである。図示の処理工程には、(1)クリーンルーム形の小さな環境内で公知手段による基体の洗浄、(2)AVAまたは負荷ロックによる基体の真空チャンバーへの搬送、(3)基体の加熱、(4)プラズマとともに、あるいはプラズマをともなわずに、加熱されたポケットを使用して行なう、基体へのCdSの成膜、(5)プラズマとともに、あるいはプラズマをともなわずに、加熱されたポケットを使用して行なう、CdS膜へのCdTe膜の成膜、(6)加熱されたポケットを使用して行なう、CdS/CdTe膜のハロゲン物質含有物質処理、(7)基体および膜のアニーリング、(8)加熱されたポケットによるCdTe層へのTe層の成膜か、あるいはプラズマを使用する加熱されたポケットによるCdTe層へのZnTe:N層の成膜によって行なう、CdTe層へのオーム接点の形成、(9)ZnまたはCdなどの昇華性金属層の加熱されたポケットにより成膜によって行なう、オーム接点層への金属被着層の成膜、(10)基体および膜のアニーリング、(11)基体および膜の冷却、(12)AVAまたは負荷ロックを使用して行なう、真空チャンバーからの基体および膜の搬送、(13)金属被着層および透明導電性酸化物を含む膜積層体全体の第1回目のスクライビング、(14)公知スクリーン印刷方法によって行なう、あるモジュールの背面電極の次のモジュールの正面電極への電気接続、および(15)完成したモジュールのカプセル化がある。工程(13)における第1回目のスクライビングは、本発明に従って行なうか、あるいは機械的スクライビングかレーザースクライビングを始めとするいくつかの公知手段のいずれか一つによって行い、そして第2回目のスクライビングはTCOを除去せずに、炭素層及び/又はp/n層について行なう。
【0098】
図10Bに示す工程8)は、Teをオーム接点層として使用する本発明のさらに別な実施態様である。Teは、昇華が容易な物質で、CdTeモジュールのオーム接点材料になる物質である。CdCl2処理工程およびアニーリング工程の 後に、Teをインラインで成膜できる。なお、この場合、冷却工程を使用してもよく、あるいは使用しなくてもよい。真空成膜工程か、あるいは本発明の噴霧プロセスによって金属背面電極をTeオーム接点に形成できる。
【0099】
図10Bに示す工程9)は、背面電極の金属被着を真空中インラインで実施することができる本発明の別な実施態様である。この実施態様では、制限するものではないが、昇華が容易で、導電性のZrまたはCdを始めとする金属の加熱されたポケットによる成膜によって背面電極へ金属被着することができる。
【0100】
図9Bに、公知方法による研磨ブラスチング43を使用する、本発明のスクライビング方法の別な実施態様を示す。マスク41の開口45から研磨ブラスチング43を行なって、基体10から膜40の一部を除去する。この実施態様のスクライビング方法では、マスク41が除去する膜40の領域になるため、精密な研磨ブラスチング43は必要ない。基体10全面に研磨ブラスチング43を行なって、スクライビングを行なう。マスク41の開口45の一つ以上について研磨ブラスチング43を行い、基体10上を一回ブラスチングすることにより一つ以上の開口45をブラスチングする。複数の研磨ブラスチング43をおこなって、マスク41の開口45の軸にそって一回スクライビングを行なって、基体10全体の複数のスクライビングを終えてもよい。硬度および大きさが異なる、異なる研磨媒体を使用すれば、膜積層体40の各種層を選択的にスクライビングすることができる。このように、本発明のスクライビング方法によれば、1)比較的硬いTCO層を含む膜積層体をすべてスクライビングでき、2)TCOを除去することなく、TCO層上部の層すべてについて選択的にスクライビングできる。
【符号の説明】
【0101】
1000 本発明による光起電力モジュールの製造装置
1 金属ストリップベルト
2 開口
3 真空チャンバー
10 基体
20 軸受けプレート
21 クリアランス
29 ポケット
33 ポケット
200 処理ステーション
300 処理ステーション
【特許請求の範囲】
【請求項1】
p型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層にオーム接点を形成する方法であって、
真空チャンバー内で金属化合物をp型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層の上に堆積させる工程と、
真空チャンバー内で上記のp型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層をアニーリング工程と、
を具備してなることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記p型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層を真空チャンバー内でアニーリングする工程が該p型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層を適当なガス雰囲気内で加熱することからなる請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記p型IIB/VIB半導体材料がテルル化カドミウムからなる請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記金属化合物が、銅、銀、金、スズ、鉛、アンチモン、水銀の塩からなる群から選択される金属塩である請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記金属化合物が、銅、銀、金、スズ、鉛、アンチモン、水銀の有機金属化合物からなる群から選択される有機金属化合物である請求項1記載の方法。
【請求項6】
半導体装置の所望の表面に導電性電極を形成する方法であって、
該所望の表面に導電性グラファイトコーチングをスプレイにより形成する工程と、
該導電性グラファイトコーチング表面に導電性金属コーチングをスプレイにより形成する工程と、
を具備してなることを特徴とする方法。
【請求項7】
前記導電性金属コーチングがニッケルを含む請求項6記載の方法。
【請求項8】
半導体装置の所望の表面に導電性電極を形成する方法であって、
該所望の表面に導電性金属コーチングをスプレイにより形成する工程と、
スプレイにより形成された該導電性金属コーチングを乾燥する工程と、
を具備してなることを特徴とする方法。
【請求項9】
真空チャンバー内で基体を搬送するための装置であって、
真空チャンバー内に配置された一対の離間する平行金属ベルトと、
該一対の金属ベルトを二方向に同期移動させる移動装置と、
金属ベルトを跨る固定位置に複数の基体を保持するため、各金属ベルトの外面に設けられた複数の整合され、周期的に離間させた複数のタブと、
を具備してなることを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項9記載の真空チャンバー内で基体を搬送するための装置であって、該真空チャンバーが前部開口部と後部開口部とを有し、これら開口部を介して前記一対の金属ベルトおよび前記基体が、これら開口部の外側に通過、延出するようにしたものであって、該装置が更に、
各基体と、該前部開口部および後部開口部との間にクリアランス距離が設けられ、空気漏れを抑制しつつ該基体を移動させ、それにより真空チャンバー内の所望の真空レベルを維持するようにしたもの。
【請求項11】
複数の基体を真空チャンバー内にて加熱処理、成膜処理又は蒸気処理に曝すため、該基体を移送および処理するための装置であって、該装置が、
複数の基体の夫々に隣接、対応させて配置させた複数の加熱ポケットを有し、各基体の表面と加熱ポケットの対応する1つとの間のクリアランス距離を小さくし、それにより該加熱ポケットからの蒸気漏れを抑制しつつこれら基体の移動を可能としたものと、
1つの加熱ポケットから次の加熱ポケットへ該基体を移動させるための移送装置と、
を具備してなることを特徴とするもの。
【請求項12】
前記移送装置が、
前記真空チャンバー内に配置された一対の離間する平行金属ベルトと、
該一対の金属ベルトを二方向に同期移動させる移動装置と、
金属ベルト間を跨る固定位置に複数の基体を保持するため、各金属ベルトの外面に設けられた複数の整合され、周期的に離間させた複数のタブと、
該移動装置に連結され、該ベルトを漸増的に割り出し、各基体を1つの加熱ポケットから次の加熱ポケットへ移送させるためのコントローラと、
を具備してなる請求項11記載の装置。
【請求項13】
前記加熱ポケットの選択された1つ又はそれ以上が、それら加熱ポケット内にてプラズマを発生させるための直流電圧源に接続された高圧ピンを有する請求項11記載の装置。
【請求項14】
光起電力セルの複数の半導体層を形成するための方法であって、以下の工程の全てが単一の真空チャンバー内で一定の真空レベルで行われ、該方法が、
光起電力セルが形成されるところの、n型透明導電性酸化物の1つかそれ以上の層を有する基体を真空チャンバー内に用意する工程と、
該基体を真空チャンバー内にて所望の温度まで加熱する工程と、
真空チャンバー内にてp型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層を前記基体の表面に堆積させる工程と、
n型透明導電性酸化物およびp型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層を、真空チャンバー内にてハロゲン含有物質で処理する工程と、
真空チャンバー内にて、処理されたp型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層にオーム接点を形成する工程と、
を具備してなることを特徴とするもの。
【請求項15】
前記p型IIB/VIB半導体材料がテルル化カドミウムからなる請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記ハロゲン含有物質が塩化カドミウムからなる請求項14記載の方法。
【請求項17】
前記n型透明導電性酸化物およびp型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層をハロゲン含有物質で処理する工程が、
n型透明導電性酸化物およびp型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層を、特定の温度で所定時間に亘ってハロゲン含有物質の蒸気に曝す工程と、
ハロゲン含有物質の蒸気に予め曝したn型透明導電性酸化物およびp型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層をアニーリングする工程を更に具備してなる請求項14記載の方法。
【請求項18】
前記n型透明導電性酸化物およびp型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層をハロゲン含有物質の蒸気に曝す温度がp型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層上にハロゲン含有物質のフィルムを堆積させるのに適当な温度であり、
n型透明導電性酸化物およびp型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層をアニーリングする工程が、n型透明導電性酸化物およびp型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層を処理するのに適当であり、かつ、先に堆積させたハロゲン含有物質のフィルムを除去するのに適当な温度で行われる請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記処理されたp型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層上にオーム接点を形成する工程が、p型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層に金属化合物を堆積させること、およびその後この処理されたp型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層をアニーリングすることからなる請求項14記載の方法。
【請求項20】
前記金属化合物が、銅、銀、金、スズ、鉛、アンチモン、水銀の塩からなる群から選択される金属塩である請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記金属化合物が、銅、銀、金、スズ、鉛、アンチモン、水銀の有機金属化合物からなる群から選択される有機金属化合物である請求項19記載の方法。
【請求項22】
前記真空チャンバー内で基体の反対側表面に反射防止層を形成する工程を更に含む請求項14記載の方法。
【請求項23】
光起電力セルの半導体層を形成するための方法であって、以下の工程の全てが単一の真空チャンバー内で一定の真空レベルで行われ、該方法が、
光起電力セルが形成されるところの基体であって、n型透明導電性酸化物の1つかそれ以上の層並びにその頂部に形成されたn型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層を有する基体を真空チャンバー内に用意する工程と、
真空チャンバー内にて該基体を所望の温度まで加熱する工程と、
真空チャンバー内にてp型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層を基体表面に堆積する工程と、
真空チャンバー内にてn型IIB/VIB半導体材料およびp型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層の一つかそれ以上の層をハロゲン含有物質で処理する工程と、
この処理されたp型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層上に、真空チャンバー内にてオーム接点を形成する工程と、
を具備してなることを特徴とするもの。
【請求項24】
前記n型IIB/VIB半導体材料が硫化カドミウムからなる請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記p型IIB/VIB半導体材料がテルル化カドミウムからなる請求項23記載の方法。
【請求項26】
前記ハロゲン含有物質が塩化カドミウムからなる請求項23記載の方法。
【請求項27】
前記n型IIB/VIB半導体材料およびp型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層をハロゲン含有物質で処理する工程が、
n型IIB/VIB半導体材料およびp型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層を、特定の温度で所定時間に亘ってハロゲン含有物質の蒸気に曝す工程と、
ハロゲン含有物質の蒸気に予め曝したn型IIB/VIB半導体材料およびp型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層をアニーリングする工程を具備してなる請求項23記載の方法。
【請求項28】
前記n型IIB/VIB半導体材料およびp型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層をハロゲン含有物質の蒸気に曝す温度がp型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層上にハロゲン含有物質のフィルムを堆積させるのに適当な温度であり、
n型IIB/VIB半導体材料およびp型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層をアニーリングする工程が、n型IIB/VIB半導体材料およびp型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層を処理するのに適当であり、かつ、先に堆積させたハロゲン含有物質のフィルムを除去するのに適当な温度で行われる請求項27記載の方法。
【請求項29】
予め処理されたp型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層上にオーム接点を形成する工程が、p型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層に金属化合物を堆積させることと、及びその後この処理されたp型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層をアニーリングすることとからなる請求項23記載の方法。
【請求項30】
前記金属化合物が、銅、銀、金、スズ、鉛、アンチモン、水銀の塩からなる群から選択される金属塩である請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記金属化合物が、銅、銀、金、スズ、鉛、アンチモン、水銀の有機金属化合物からなる群から選択される有機金属化合物である請求項29記載の方法。
【請求項32】
前記真空チャンバー内で基体の反対側表面に反射防止層を形成する工程を更に含む請求項23記載の方法。
【請求項33】
前記p型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層を堆積する前に、n型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層をハロゲン含有物質で処理する工程を更に具備してなる請求項23記載の方法。
【請求項34】
前記ハロゲン含有物質が塩化カドミウムからなる請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記n型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層をハロゲン含有物質で処理する工程が、
n型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層を、特定の温度で所定時間に亘ってハロゲン含有物質の蒸気に曝す工程と、
ハロゲン含有物質の蒸気に予め曝したn型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層をアニーリングする工程とを更に具備してなる請求項33記載の方法。
【請求項36】
前記n型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層を上記ハロゲン含有物質の蒸気に暴露する温度が、上記ハロゲン含有物質の膜をn型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層に堆積させるのに好適であり、
n型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層をアニーリングする工程が、n型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層を処理するのに好適であって、かつ先に堆積させたハロゲン含有物質の膜を除去するのに好適な温度で行われる請求項33記載の方法。
【請求項1】
p型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層にオーム接点を形成する方法であって、
真空チャンバー内で金属化合物をp型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層の上に堆積させる工程と、
真空チャンバー内で上記のp型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層をアニーリング工程と、
を具備してなることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記p型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層を真空チャンバー内でアニーリングする工程が該p型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層を適当なガス雰囲気内で加熱することからなる請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記p型IIB/VIB半導体材料がテルル化カドミウムからなる請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記金属化合物が、銅、銀、金、スズ、鉛、アンチモン、水銀の塩からなる群から選択される金属塩である請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記金属化合物が、銅、銀、金、スズ、鉛、アンチモン、水銀の有機金属化合物からなる群から選択される有機金属化合物である請求項1記載の方法。
【請求項6】
半導体装置の所望の表面に導電性電極を形成する方法であって、
該所望の表面に導電性グラファイトコーチングをスプレイにより形成する工程と、
該導電性グラファイトコーチング表面に導電性金属コーチングをスプレイにより形成する工程と、
を具備してなることを特徴とする方法。
【請求項7】
前記導電性金属コーチングがニッケルを含む請求項6記載の方法。
【請求項8】
半導体装置の所望の表面に導電性電極を形成する方法であって、
該所望の表面に導電性金属コーチングをスプレイにより形成する工程と、
スプレイにより形成された該導電性金属コーチングを乾燥する工程と、
を具備してなることを特徴とする方法。
【請求項9】
真空チャンバー内で基体を搬送するための装置であって、
真空チャンバー内に配置された一対の離間する平行金属ベルトと、
該一対の金属ベルトを二方向に同期移動させる移動装置と、
金属ベルトを跨る固定位置に複数の基体を保持するため、各金属ベルトの外面に設けられた複数の整合され、周期的に離間させた複数のタブと、
を具備してなることを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項9記載の真空チャンバー内で基体を搬送するための装置であって、該真空チャンバーが前部開口部と後部開口部とを有し、これら開口部を介して前記一対の金属ベルトおよび前記基体が、これら開口部の外側に通過、延出するようにしたものであって、該装置が更に、
各基体と、該前部開口部および後部開口部との間にクリアランス距離が設けられ、空気漏れを抑制しつつ該基体を移動させ、それにより真空チャンバー内の所望の真空レベルを維持するようにしたもの。
【請求項11】
複数の基体を真空チャンバー内にて加熱処理、成膜処理又は蒸気処理に曝すため、該基体を移送および処理するための装置であって、該装置が、
複数の基体の夫々に隣接、対応させて配置させた複数の加熱ポケットを有し、各基体の表面と加熱ポケットの対応する1つとの間のクリアランス距離を小さくし、それにより該加熱ポケットからの蒸気漏れを抑制しつつこれら基体の移動を可能としたものと、
1つの加熱ポケットから次の加熱ポケットへ該基体を移動させるための移送装置と、
を具備してなることを特徴とするもの。
【請求項12】
前記移送装置が、
前記真空チャンバー内に配置された一対の離間する平行金属ベルトと、
該一対の金属ベルトを二方向に同期移動させる移動装置と、
金属ベルト間を跨る固定位置に複数の基体を保持するため、各金属ベルトの外面に設けられた複数の整合され、周期的に離間させた複数のタブと、
該移動装置に連結され、該ベルトを漸増的に割り出し、各基体を1つの加熱ポケットから次の加熱ポケットへ移送させるためのコントローラと、
を具備してなる請求項11記載の装置。
【請求項13】
前記加熱ポケットの選択された1つ又はそれ以上が、それら加熱ポケット内にてプラズマを発生させるための直流電圧源に接続された高圧ピンを有する請求項11記載の装置。
【請求項14】
光起電力セルの複数の半導体層を形成するための方法であって、以下の工程の全てが単一の真空チャンバー内で一定の真空レベルで行われ、該方法が、
光起電力セルが形成されるところの、n型透明導電性酸化物の1つかそれ以上の層を有する基体を真空チャンバー内に用意する工程と、
該基体を真空チャンバー内にて所望の温度まで加熱する工程と、
真空チャンバー内にてp型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層を前記基体の表面に堆積させる工程と、
n型透明導電性酸化物およびp型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層を、真空チャンバー内にてハロゲン含有物質で処理する工程と、
真空チャンバー内にて、処理されたp型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層にオーム接点を形成する工程と、
を具備してなることを特徴とするもの。
【請求項15】
前記p型IIB/VIB半導体材料がテルル化カドミウムからなる請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記ハロゲン含有物質が塩化カドミウムからなる請求項14記載の方法。
【請求項17】
前記n型透明導電性酸化物およびp型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層をハロゲン含有物質で処理する工程が、
n型透明導電性酸化物およびp型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層を、特定の温度で所定時間に亘ってハロゲン含有物質の蒸気に曝す工程と、
ハロゲン含有物質の蒸気に予め曝したn型透明導電性酸化物およびp型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層をアニーリングする工程を更に具備してなる請求項14記載の方法。
【請求項18】
前記n型透明導電性酸化物およびp型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層をハロゲン含有物質の蒸気に曝す温度がp型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層上にハロゲン含有物質のフィルムを堆積させるのに適当な温度であり、
n型透明導電性酸化物およびp型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層をアニーリングする工程が、n型透明導電性酸化物およびp型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層を処理するのに適当であり、かつ、先に堆積させたハロゲン含有物質のフィルムを除去するのに適当な温度で行われる請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記処理されたp型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層上にオーム接点を形成する工程が、p型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層に金属化合物を堆積させること、およびその後この処理されたp型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層をアニーリングすることからなる請求項14記載の方法。
【請求項20】
前記金属化合物が、銅、銀、金、スズ、鉛、アンチモン、水銀の塩からなる群から選択される金属塩である請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記金属化合物が、銅、銀、金、スズ、鉛、アンチモン、水銀の有機金属化合物からなる群から選択される有機金属化合物である請求項19記載の方法。
【請求項22】
前記真空チャンバー内で基体の反対側表面に反射防止層を形成する工程を更に含む請求項14記載の方法。
【請求項23】
光起電力セルの半導体層を形成するための方法であって、以下の工程の全てが単一の真空チャンバー内で一定の真空レベルで行われ、該方法が、
光起電力セルが形成されるところの基体であって、n型透明導電性酸化物の1つかそれ以上の層並びにその頂部に形成されたn型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層を有する基体を真空チャンバー内に用意する工程と、
真空チャンバー内にて該基体を所望の温度まで加熱する工程と、
真空チャンバー内にてp型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層を基体表面に堆積する工程と、
真空チャンバー内にてn型IIB/VIB半導体材料およびp型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層の一つかそれ以上の層をハロゲン含有物質で処理する工程と、
この処理されたp型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層上に、真空チャンバー内にてオーム接点を形成する工程と、
を具備してなることを特徴とするもの。
【請求項24】
前記n型IIB/VIB半導体材料が硫化カドミウムからなる請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記p型IIB/VIB半導体材料がテルル化カドミウムからなる請求項23記載の方法。
【請求項26】
前記ハロゲン含有物質が塩化カドミウムからなる請求項23記載の方法。
【請求項27】
前記n型IIB/VIB半導体材料およびp型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層をハロゲン含有物質で処理する工程が、
n型IIB/VIB半導体材料およびp型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層を、特定の温度で所定時間に亘ってハロゲン含有物質の蒸気に曝す工程と、
ハロゲン含有物質の蒸気に予め曝したn型IIB/VIB半導体材料およびp型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層をアニーリングする工程を具備してなる請求項23記載の方法。
【請求項28】
前記n型IIB/VIB半導体材料およびp型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層をハロゲン含有物質の蒸気に曝す温度がp型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層上にハロゲン含有物質のフィルムを堆積させるのに適当な温度であり、
n型IIB/VIB半導体材料およびp型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層をアニーリングする工程が、n型IIB/VIB半導体材料およびp型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層を処理するのに適当であり、かつ、先に堆積させたハロゲン含有物質のフィルムを除去するのに適当な温度で行われる請求項27記載の方法。
【請求項29】
予め処理されたp型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層上にオーム接点を形成する工程が、p型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層に金属化合物を堆積させることと、及びその後この処理されたp型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層をアニーリングすることとからなる請求項23記載の方法。
【請求項30】
前記金属化合物が、銅、銀、金、スズ、鉛、アンチモン、水銀の塩からなる群から選択される金属塩である請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記金属化合物が、銅、銀、金、スズ、鉛、アンチモン、水銀の有機金属化合物からなる群から選択される有機金属化合物である請求項29記載の方法。
【請求項32】
前記真空チャンバー内で基体の反対側表面に反射防止層を形成する工程を更に含む請求項23記載の方法。
【請求項33】
前記p型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層を堆積する前に、n型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層をハロゲン含有物質で処理する工程を更に具備してなる請求項23記載の方法。
【請求項34】
前記ハロゲン含有物質が塩化カドミウムからなる請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記n型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層をハロゲン含有物質で処理する工程が、
n型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層を、特定の温度で所定時間に亘ってハロゲン含有物質の蒸気に曝す工程と、
ハロゲン含有物質の蒸気に予め曝したn型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層をアニーリングする工程とを更に具備してなる請求項33記載の方法。
【請求項36】
前記n型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層を上記ハロゲン含有物質の蒸気に暴露する温度が、上記ハロゲン含有物質の膜をn型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層に堆積させるのに好適であり、
n型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層をアニーリングする工程が、n型IIB/VIB半導体材料の一つかそれ以上の層を処理するのに好適であって、かつ先に堆積させたハロゲン含有物質の膜を除去するのに好適な温度で行われる請求項33記載の方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【公開番号】特開2010−141343(P2010−141343A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10341(P2010−10341)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【分割の表示】特願2001−160953(P2001−160953)の分割
【原出願日】平成13年5月29日(2001.5.29)
【出願人】(501214096)
【出願人】(501214100)
【出願人】(501214111)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【分割の表示】特願2001−160953(P2001−160953)の分割
【原出願日】平成13年5月29日(2001.5.29)
【出願人】(501214096)
【出願人】(501214100)
【出願人】(501214111)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]