説明

光電変換素子の製造方法、光電変換素子、及び撮像素子

【課題】十分な感度が得られ、高速応答を示す光電変換素子を提供する。
【解決手段】一対の電極11、15と、前記一対の電極間に配置された光電変換層12とを含む光電変換素子の製造方法であって、前記光電変換層を形成するための原料の少なくとも1種として、最小径が0.3mm以上である結晶粒子を含む有機材料を使用し、前記有機材料を所定の安定蒸着速度に到達するまで加熱する工程と、前記安定蒸着速度に到達した後、前記光電変換層の成膜を行わずに前記結晶粒子の全体積の少なくとも1/5を昇華させる工程と、前記有機材料の全体積の少なくとも1/5を昇華させた後、前記光電変換層の製膜を行う工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子の製造方法、光電変換素子、及び撮像素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光電変換素子は、撮像素子、光センサ、太陽電池等に応用されており、高感度化や高速応答化を目指した様々な技術開発が行われている。従来の光電変換素子としてはシリコン半導体等を用いたフォトダイオードがよく知られている。しかし、近年では、素子の大面積化やフレキシブル化を容易にするため、有機材料を用いた有機光電変換素子が注目されている。
【0003】
有機光電変換素子においては、高いS/N比を得ることが重要な課題の1つである。有機光電変換素子のS/N比を高くするには、光電変換効率の向上、低暗電流化が必要とされる。光電変換効率を向上させる技術としては、光電変換膜においてpn接合やバルクへテロ構造を導入することが検討されている。また、低暗電流化のための技術としては、ブロッキング層の導入等が検討されている。
【0004】
pn接合やバルクへテロ構造の導入する場合、暗電流の増大が問題になることが多い。また、光電変換効率の改善程度も材料の組み合わせにより程度の差があり、特にバルクへテロ構造を導入する方法をとる場合、バルクへテロ構造導入前に対しS/Nが増大しない場合もあり、どの材料を組み合わせるかが重要となる。
【0005】
また、使用する材料の種類、膜構造は、光電変換効率(励起子解離効率、電荷輸送性)、暗電流(暗時キャリア量等)の主要因の一つであるとともに、これまでの報告ではほとんど触れられていないが、信号応答速度の支配因子となる。特に、光電変換素子を固体撮像素子として用いる場合、高光電変換効率、低暗電流、高速応答速度を全て満たすことが重要であるが、そのような性能を満たす有機光電変換材料、素子構造がどのようなものであるか、具体的に示されてこなかった。
【0006】
特許文献1は、p型半導体とn型半導体からなる光電変換膜を一対の電極で挟んだ光電変換素子を含有し、該光電変換膜にフラーレン又はフラーレン誘導体を含有する撮像素子を開示している。
また、特許文献1においては、光電変換効率を向上させるために、p型半導体とn型半導体の間に、該p型半導体及びn型半導体を含むバルクへテロ接合構造層を中間層として有する構成も記載されている。
【0007】
また、真空蒸着において、蒸着材料への不純物混入を防ぐため、大気下に材料をさらさずに坩堝に送り込む機構を備えた蒸着装置を用いた蒸着方法が開示されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−123707号公報
【特許文献2】特開2003−89865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、感度と高速応答に優れた光電変換素子を作製することは困難であった。また、特許文献2についても、特殊な機構の蒸着装置を必要とする上、特許文献2に記載の技術を有機光電変換素子に適用しても、応答速度の高い素子を得ることはできない。
【0010】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みなされたものであり、十分な感度が得られ、高速応答を示す光電変換素子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らによる鋭意検討の結果、有機光電変換膜成膜時に、結晶性の高い有機材料において表面近傍部分を十分に取り除いた後に成膜を行うことで、特に応答速度を向上できることを見出した。
すなわち、前記課題は以下の手段により解決することができる。
(1)一対の電極と、前記一対の電極間に配置された光電変換層とを含む光電変換素子の製造方法であって、
前記光電変換層を形成するための原料の少なくとも1種として、最小径が0.3mm以上である結晶粒子を含む有機材料を使用し、
前記有機材料を所定の安定蒸着速度に到達するまで加熱する工程と、
前記安定蒸着速度に到達した後、前記光電変換層の成膜を行わずに前記結晶粒子の全体積の少なくとも1/5を昇華させる工程と、
前記有機材料の全体積の少なくとも1/5を昇華させた後、前記光電変換層の成膜を行う工程と、
を含む光電変換素子の製造方法。
(2)前記結晶粒子が、単結晶粒子及び複数の結晶ドメインで構成される多結晶粒子の少なくともいずれかを含み、前記単結晶粒子の最小径が0.3mm以上又は前記多結晶粒子の結晶ドメインサイズが0.3mm角以上である、上記(1)に記載の光電変換素子の製造方法。
(3)前記有機材料がp型半導体化合物又はn型半導体化合物である、上記(1)又は(2)に記載の光電変換素子の製造方法。
(4)前記有機材料がn型半導体化合物であって、前記n型半導体化合物が、フラーレン又はフラーレン誘導体である、上記(3)に記載の光電変換素子の製造方法。
(5)前記安定蒸着速度が0.1Å/s以上である、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の光電変換素子の製造方法。
(6)前記有機光電変換素子が電荷ブロッキング層を含む、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の有機光電変換素子の製造方法。
(7)上記(1)〜(6)のいずれかの製造方法により製造された光電変換素子。
(8)上記(7)に記載の光電変換素子を備えた撮像素子。
【発明の効果】
【0012】
本発明の製造方法によれば、十分な感度が得られ、高速応答を示す光電変換素子を製造することができる。また、本発明の製造方法により製造された光電変換素子によれば、十分な感度を有し、高速応答を示す撮像素子が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】光電変換素子の構成例の一例を示す断面模式図である。
【図2】光電変換素子の他の構成例を示す断面模式図である。
【図3】蒸着材料の加熱時間と蒸着速度の関係を示す模式図である。
【図4】第1の実施形態に係る固体撮像素子の1画素分の断面模式図である。
【図5】図4に示す中間層の断面模式図である。
【図6】第2の実施形態に係る固体撮像素子の1画素分の断面模式図である。
【図7】第3の実施形態に係る固体撮像素子の1画素分の断面模式図である。
【図8】第4の実施形態に係る固体撮像素子の断面模式図である。
【図9】第5の実施形態に係る撮像素子の部分表面模式図である。
【図10】図9に示す撮像素子のX−X線の断面模式図である。
【図11】図10に示す信号読み出し部の具体的な構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[光電変換素子の製造方法]
以下、本発明に係る製造方法について詳細に説明する。
本発明の製造方法に係る光電変換素子は、一対の電極と、一対の電極間に配置された光電変換層とを有している。
図1及び図2に本実施形態において好適に製造される光電変換素子の構成例を示す。
図1に示す光電変換素子10は、基板を兼ねた下部電極11上に、光電変換層12と、上部電極15がこの順に積層されたものである。
【0015】
本発明の製造方法における好適な実施形態について説明する。本実施形態においては、まず、下部電極11を形成する。
下部電極11を形成する方法は特に限定されず、下部電極11を構成する材料との適正を考慮して適宜選択することができる。具体的には、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式等により形成することができる。
下部電極11の材料が例えばITOの場合、電子ビーム法、スパッタリング法、抵抗加熱蒸着法、化学反応法(ゾルーゲル法など)、酸化インジウムスズの分散物の塗布などの方法で形成することができる。さらに、ITOを用いて作製された膜に、UV−オゾン処理、プラズマ処理などを施すことができる。
【0016】
透明な電極膜(透明電極膜)成膜時の条件について触れる。透明電極膜成膜時のシリコン基板温度は500℃以下が好ましく、より好ましくは、300℃以下で、さらに好ましくは200℃以下、さらに好ましくは150℃以下である。また、透明電極膜成膜中にガスを導入しても良く、基本的にそのガス種は制限されないが、Ar、He、酸素、窒素などを用いることができる。また、これらのガスの混合ガスを用いても良い。特に酸化物の材料の場合は、酸素欠陥が入ることが多いので、酸素を用いることが好ましい。
【0017】
また、透明電極膜の表面抵抗は、第一電極膜11であるか第二電極膜15であるか等により好ましい範囲は異なる。信号読出し部がCMOS構造である場合、透明導電膜の表面抵抗は、10000Ω/□以下が好ましく、より好ましくは、1000Ω/□以下である。信号読出し部が仮にCCD構造の場合、表面抵抗は1000Ω/□以下が好ましく、より好ましくは、100Ω/□以下である。第二電極膜13に使用する場合には1000000Ω/□以下が好ましく、より好ましくは、100000Ω/□以下である。
【0018】
透明電極膜の材料として特に好ましいのは、ITO、IZO、SnO2、ATO(アンチモンドープ酸化スズ)、ZnO、AZO(Alドープ酸化亜鉛)、GZO(ガリウムドープ酸化亜鉛)、TiO2、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)のいずれかの材料である。
透明電極膜の光透過率は、その透明電極膜を含む光電変換部に含まれる光電変換膜の吸収ピーク波長において、60%以上が好ましく、より好ましくは80%以上で、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上である。
【0019】
次に、下部電極11上に光電変換層12を形成する。
光電変換層12を形成するための原料の少なくとも1種として、最小径が0.3mm以上である結晶粒子を含む有機材料(以下、「結晶性有機材料」という。)を使用する。
なお、本発明における最小径が0.3mm以上である結晶粒子は、具体的には、最小径が0.3mm以上の単結晶粒子や、結晶ドメインサイズが0.3mm角以上の多結晶粒子を含むことが好ましく、例えばセラミックスのように微細な粉末を固めたもの(焼結体)からなる粒子や、表面に鬆が入ったような粒子は含まれないものとする。
【0020】
結晶粒子の最小径は好ましくは、0.3mm以上であり、好ましくは0.4mm以上であり、より好ましくは0.5mm以上である。結晶粒子の最小径の上限は特に限定されないが、20mm程度であり、好ましくは10mm、より好ましくは5mmである。
最小径が0.3mm以上である結晶粒子の結晶性有機材料中における含有率は、80質量%以上含まれていることが好ましく、90質量%以上含まれていることがより好ましく、95質量%以上含まれていることがさらに好ましい。
なお本明細書において、最小径が0.3mm以上である結晶粒子の結晶性有機材料中における含有率(質量%)は、網目のサイズが100μm〜220μm□の格子状のふるいにかけ、ふるい上に残留した粒子の質量を計量することで得られる。
【0021】
結晶粒子の最小径が0.3mm以上のような大サイズの結晶粒子を含む有機材料は、有機半導体の精製技術において温度勾配下で1気圧のガスを流しながら昇華させることにより作製することができる。具体的には、機能材料, Vol.28, No.6 p.25-32, 2008年6月号に記載の方法や、Journal of Crystal Growth 187. 1998. 449-454に記載の方法等に準じて作製することができる。
【0022】
なお、このような方法で作製された結晶粒子には、球状、立方体形状、柱状、針状、その他の不定形粒子が含まれる。
柱状粒子又は針状粒子の長軸/短軸比は、1〜100の範囲が好ましく、1〜50の範囲がより好ましく、1〜20の範囲がさらに好ましい。
【0023】
結晶性有機材料を構成する化合物としては、後述する光電変換層を形成するための材料から選ばれる。好ましくは、後述のp型有機半導体化合物及びn型有機半導体化合物から選ばれる。より好ましくは、結晶性有機材料はn型有機半導体化合物であり、さらに好ましくは、結晶性有機材料はフラーレン又はフラーレン誘導体である。
なお、光電変換層12を形成するための材料は、結晶性有機材料以外の他の有機材料を含むことが好ましい。他の有機材料は、後述のp型有機半導体化合物から選ばれることが好ましい。
【0024】
光電変換層12は、蒸着により形成される。蒸着は、物理蒸着(PVD)、化学蒸着(CVD)のいずれでもよいが、真空蒸着等の物理蒸着が好ましい。真空蒸着により成膜する場合、真空度、蒸着温度等の製造条件は常法に従って設定することができる。
真空蒸着法は抵抗加熱蒸着法、電子線加熱蒸着法等の化合物の加熱の方法、るつぼ、ボ−ト等の蒸着源の形状、真空度、蒸着温度、基板温度、蒸着速度等が基本的なパラメ−タ−である。均一な蒸着を可能とするために基板を回転させて蒸着することは好ましい。真空度は高い方が好ましく、好ましくは10−4Torr以下、より好ましくは10−6Torr以下、特に好ましくは10−8Torr以下で真空蒸着が行われる。蒸着時のすべての工程は真空中で行われることが好ましく、基本的には化合物が直接、外気の酸素、水分と接触しないようにする。真空蒸着の上述した条件は有機膜の結晶性、アモルファス性、密度、緻密度等に影響するので厳密に制御する必要がある。水晶振動子、干渉計等の膜厚モニタ−を用いて蒸着速度をPIもしくはPID制御することは好ましく用いられる。2種以上の化合物を同時に蒸着する場合には共蒸着法、フラッシュ蒸着法等を好ましく用いることができる。
【0025】
光電変換層12を蒸着により形成する際、結晶性有機材料(及び、必要に応じて結晶性有機材料以外の有機材料)をヒータ上で安定蒸着速度に到達するまで加熱する。加熱方式は、抵抗加熱式、電子ビーム式、高周波誘導式、レーザー式等、いずれでもかまわない。
そして、安定蒸着速度に達した後、そのまま加熱を続け、光電変換層12の成膜を行わずに結晶性有機材料の全体積の少なくとも1/5を昇華させる。そして、結晶性有機材料の全体積の少なくとも1/5を昇華させた後、前記光電変換層の成膜を行う。
【0026】
本実施形態において、結晶性有機材料の全体積の1/5が昇華される時間は以下のようにして算出することができる。
まず、蒸着に用いる量の結晶性有機材料を蒸着装置内で加熱し、すべて昇華させる。ここで、結晶性有機材料を蒸着装置内で加熱したときの加熱時間と蒸着速度との関係を図3に示す。tは安定蒸着速度に到達した時間、tは結晶性有機材料を全て昇華したときの時間、Vは安定蒸着速度を示す。これらから、結晶性有機材料の総蒸着量Sを算出する。すなわち、Vがほぼ一定であれば(t−t)×Vで求めることができる。ここで総蒸着量Sが結晶性有機材料の総体積に等しいと仮定すると、全体積の少なくとも1/5が昇華した時間tは以下の式により算出することができる。
(t−t)×V=S×1/5、すなわち、
t=S/5V+t
つまり、少なくとも、上記式によって算出された時間tの間昇華させ続ければ、結晶性有機材料の全体積の少なくとも1/5が昇華されたことになる。
【0027】
本発明においては、上記のように、光電変換層を形成する際、結晶性有機材料中の結晶粒子の表面近傍部分を十分に取り除いた後に成膜を行うことで、特に応答速度を向上できる。
通常、蒸着により化合物を昇華させて成膜を行うとき、安定蒸着速度後すぐに成膜を行った場合と、すぐには成膜を行わず、そのままある程度の時間昇華し続けた後蒸着を行った場合とでは、素子性能に影響は見られない。
しかしながら、本発明者らによれば、結晶性有機材料において安定蒸着速度の到達後から成膜開始までの時間を変えることにより、素子の応答速度に有意差が生じることが見出された。これは化合物においての内部と表面近傍での不純物(酸素など)含有量に違いがあるものと推察でき、化合物表面の不純物を消失させることにより、キャリアトラップがなくなり応答速度が改善したと考えられる。
【0028】
成膜を行わずに昇華させる体積は、少なくとも全体積の2/5であることが好ましい。なお、製造効率の観点から、昇華させる体積は3/5以下とすることが好ましい。
【0029】
なお、安定蒸着速度は、特に限定されないが、0.1Å/s以上とすることが好ましく、1Å/s以上とすることがより好ましい。また、蒸着速度の上限は特に限定されないが、50Å/s程度とすることができ、好ましくは40Å/s、より好ましくは30Å/sとすることができる。安定蒸着速度を1Å/s以上とすることにより、より効率的な成膜を行うことができる。
なお、安定蒸着速度に達した後、そのまま安定蒸着速度を保持することが好ましいが、わずかな範囲であれば、蒸着速度が変動してもかまわない。具体的には、0.1Å/s〜3Å/sの範囲(好ましくは、0.1Å/s〜1Å/sの範囲)内であれば変動してもよい。
【0030】
光電変換層12の厚みは、使用する材料の種類や素子に印加する電圧の最大値によって適宜設定することができる。具体的には、電極に外部から印加する電圧を、電荷ブロッキング層の厚みと光電変換層の厚みの総和で割った値が1.0×10V/cmから1.0×10V/cmとなるように設定することが好ましい。
【0031】
最後に光電変換層12の上に、上部電極15を形成する。上部電極15は、下部電極11と同様の方法で形成することができる。
【0032】
本実施形態によって製造される光電変換素子は、電荷ブロッキングを有することができる。電荷ブロッキング層を有することにより、より確実に暗電流を抑制することができる。
図2に電荷ブロッキング層を有する光電変換素子の構成例を示す。
図2(a)に示す光電変換素子10aは、下部電極11に正孔を移動させるように電極に電圧を印加させる場合の構成であり、下部電極11上に、電子ブロッキング層16Aと、光電変換層12と、上部電極15がこの順に積層されたものである。
図2(b)に示す光電変換素子10bは、下部電極11上に、電子ブロッキング層16Aと、光電変換層12と、正孔ブロッキング層16Bと、上部電極15がこの順に積層されたものである。
なお、図2(a)及び(b)に示す構成は、電子を上部電極15に移動させ、正孔を下部電極11に移動させるように電圧を印加させる(すなわち、上部電極15を電子取り出し用電極とする)構成であるが、本発明に係る光電変換素子はこのような形態に限定されず、電子を下部電極11に移動させ、正孔を上部電極15に移動させるように電圧を印加させる(すなわち、下部電極11を電子取り出し用電極とする)構成としてもよい。この場合は、下部電極11と光電変換層12との間に正孔ブロッキング層、上部電極15と光電変換層12との間に電子ブロッキング層を有する構成となる。
【0033】
電荷ブロッキング層(16A,16B)は、蒸着により形成することができる。蒸着は、物理蒸着(PVD)、化学蒸着(CVD)のいずれでもよいが、真空蒸着等の物理蒸着が好ましい。真空蒸着により成膜する場合、真空度、蒸着温度等の製造条件は常法に従って設定することができる。
電荷ブロッキング層を形成する材料としては後述する材料が挙げられる。
電荷ブロッキング層の厚みは、10nm以上300nm以下が好ましく、さらに好ましくは30nm以上150nm以下、特に好ましくは50nm以上100nm以下である。10nm以上とすることにより、好適な暗電流抑制効果が得られ、300nm以下とすることにより、好適な光電変換効率が得られる。
なお、電荷ブロッキング層は複数層形成してもよい。
【0034】
次に、本発明に係る光電変換素子を構成する電極及び各層に用いる材料について説明する。
(電極形成用材料)
上部電極15と下部電極11は、導電性材料から構成される。導電性材料としては、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、またはこれらの混合物などを用いることができる。金属材料としては、Li、Na、Mg、K、Ca、Rb、Sr、Cs、Ba、Fr、Ra、Sc、Ti、Y、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe,Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In,Tl、Si、Ge、Sn、Pb、P、As、Sb、Bi、Se、Te、Po、Br、I、At、B、C、N、F、O、S、Nの中から選ばれる任意の組み合わせを挙げることができるが、特に好ましいのはAl、Pt、W、Au、Ag、Ta、Cu、Cr、Mo、Ti、Ni、Pd、Znである。
また、具体的には、アンチモンやフッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物、金、銀、クロム、ニッケル等の金属、さらにこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの有機導電性材料、及びこれらとITOとの積層物などが挙げられる。この中で好ましいのは、導電性金属酸化物であり、特に、生産性、高導電性、透明性等の点からはITO、IZOが好ましい。
【0035】
(光電変換層形成用材料)
光電変換層12を形成するための材料は、光電変換機能を有する有機材料を使用する。
有機材料としては、例えば電子写真の感光材料に用いられているような、様々な有機半導体材料を用いることができる。
その中でも、高い光電変換性能を有すること、分光する際の色分離に優れていること、長時間の光照射に対する耐久性が高いこと、真空蒸着を行ないやすいこと、等の観点から、キナクリドン骨格を含む材料やフタロシアニン骨格を含む有機材料が特に好ましい。
【0036】
光電変換層12としてキナクリドンを用いた場合には、光電変換層12にて緑色の波長域の光を吸収してこれに応じた電荷を発生することが可能となる。
【0037】
光電変換層12としては亜鉛フタロシアニンを用いることができる。この場合には、光電変換層12にて赤色の波長域の光を吸収してこれに応じた電荷を発生することが可能となる。
【0038】
また、光電変換層12を構成する有機材料は、p型有機半導体及びn型有機半導体の少なくとも一方を含んでいることが好ましい。p型有機型半導体及びn型有機半導体として、それぞれキナクリドン誘導体、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、及びフルオランテン誘導体のいずれかを特に好ましく用いることができる。
【0039】
p型有機半導体(化合物)は、ドナー性有機半導体(化合物)であり、主に正孔輸送性有機化合物に代表され、電子を供与しやすい性質がある有機化合物をいう。さらに詳しくは2つの有機材料を接触させて用いたときにイオン化ポテンシャルの小さい方の有機化合物をいう。したがって、ドナー性有機化合物は、電子供与性のある有機化合物であればいずれの有機化合物も使用可能である。例えば、トリアリールアミン化合物、ベンジジン化合物、ピラン化合物、ピラゾリン化合物、スチリルアミン化合物、ヒドラゾン化合物、トリフェニルメタン化合物、カルバゾール化合物、ポリシラン化合物、チオフェン化合物、フタロシアニン化合物、シアニン化合物、メロシアニン化合物、オキソノール化合物、ポリアミン化合物、インドール化合物、ピロール化合物、ピラゾール化合物、ポリアリーレン化合物、縮合芳香族炭素環化合物(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)、含窒素ヘテロ環化合物を配位子として有する金属錯体等を用いることができる。なお、これに限らず、上記したように、n型(アクセプター性)化合物として用いた有機化合物よりもイオン化ポテンシャルの小さい有機化合物であればドナー性有機半導体として用いてよい。
【0040】
上記の中でも、好ましいのは、トリアリールアミン化合物、ピラン化合物、フタロシアニン化合物、メロシアニン化合物、縮合芳香族炭素環化合物であり、より好ましいのは、トリアリールアミン化合物である。
トリアリールアミン化合物としては、下記一般式(I)の化合物が好ましい。
一般式(I):
【0041】
【化1】

【0042】
式中、R20〜R24、R30〜R34、R41〜R44はそれぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。R20〜R24、R30〜R34はそれぞれ互いに結合して環を形成してもよい。Arは、置換基を有していてもよい、アリーレン基又はヘテロアリーレン基を表す。
【0043】
20〜R24、R30〜R34、R41〜R44が表す置換基又はArが有する置換基としては、後述の置換基Wが挙げられ、好ましくはハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、炭素数1から30(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10)のアルキル基(例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2−エチルヘキシル)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3から30のシクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)、炭素数2から30のアルケニル基(例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル)、炭素数2から30のアルキニル基(例えば、エチニル、プロパルギル、トリメチルシリルエチニル基)、炭素数6から30のアリール基(例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル、フェロセニル)、炭素数2から50の複素環基(5または6員からなり、芳香族でも非芳香族でもよい、例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル)、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、スルファモイル基、スルホ基、またはこれらを組み合わせた基等が挙げられる。
なお、これらの基はさらに置換基を有していてもよい。
上記の中でもより好ましくは、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基であり、より好ましくはアルキル基又はアリール基、さらに好ましくは無置換の炭素数1〜5のアルキル基又はフェニル基である。
【0044】
20〜R24、R30〜R34は、好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基である。中でも、R20、R30がアルキル基又はアリール基であり、かつ、その他のR21〜R24、R31〜R34が水素原子である場合がより好ましい。
41〜R44は、好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基である。中でも、R42、R43がアルキル基又はアリール基であり、かつ、R41、R44はが水素原子である場合が好ましい。
【0045】
Arは、置換基を有していてもよい、アリーレン基又はヘテロアリーレン基を表す。アリーレン基またはヘテロアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基、チエニレン基、ピリジニレン基、フリレン基等を挙げることができる。
Arとして好ましくは、置換基を有していてもよいアリーレン基であり、より好ましくは、置換基を有していてもよい、フェニレン基またはナフチレン基であり、さらに好ましくは、無置換のフェニレン基または無置換のナフチレン基である。
【0046】
以下に、上記一般式(I)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0047】
【化2】

【0048】
【化3】

【0049】
n型有機半導体(化合物)は、アクセプター性有機半導体(化合物)であり、主に電子輸送性有機化合物に代表され、電子を受容しやすい性質がある有機化合物をいう。さらに詳しくは2つの有機化合物を接触させて用いたときに電子親和力の大きい方の有機化合物をいう。したがって、アクセプター性有機化合物は、電子受容性のある有機化合物であればいずれの有機化合物も使用可能である。例えば、縮合芳香族炭素環化合物(ナフタレン、アントラセン、フラーレン、フェナントレン、テトラセン、ピレン、ペリレン、フルオランテン、又はこれらの誘導体)、窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含有する5ないし7員のヘテロ環化合物(例えばピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、キノリン、キノキサリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、イソキノリン、プテリジン、アクリジン、フェナジン、フェナントロリン、テトラゾール、ピラゾール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、インダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、カルバゾール、プリン、トリアゾロピリダジン、トリアゾロピリミジン、テトラザインデン、オキサジアゾール、イミダゾピリジン、ピラリジン、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジン、ジベンズアゼピン、トリベンズアゼピン等)、ポリアリーレン化合物、フルオレン化合物、シクロペンタジエン化合物、シリル化合物、含窒素ヘテロ環化合物を配位子として有する金属錯体などが挙げられる。なお、これに限らず、上記したように、ドナー性有機化合物として用いた有機化合物よりも電子親和力の大きな有機化合物であればアクセプター性有機半導体として用いてよい。
【0050】
n型有機半導体としては、フラーレン又はフラーレン誘導体を用いることが好ましい。
フラーレンとは、フラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC80、フラーレンC82、フラーレンC84、フラーレンC90、フラーレンC96、フラーレンC240、フラーレン540、ミックスドフラーレン、フラーレンナノチューブを表し、フラーレン誘導体とはこれらに置換基が付加された化合物のことを表す。置換基としては、アルキル基、アリール基、又は複素環基が好ましい。
フラーレン誘導体としては、以下の化合物の例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0051】
【化4】

【0052】
【化5】

【0053】
また、フラーレン及びフラーレン誘導体としては、日本化学会編 季刊化学総説No.43(1999)、特開平10−167994号公報、特開平11−255508号公報、特開平11−255509号公報、特開2002−241323号公報、特開2003−196881号公報等に記載の化合物を用いることもできる。
【0054】
光電変換層に用いる有機材料として、p型有機色素又はn型有機色素を使用することもできる。
p型有機色素又はn型有機色素としては、いかなるものを用いても良いが、好ましくは、シアニン色素、スチリル色素、ヘミシアニン色素、メロシアニン色素(ゼロメチンメロシアニン(シンプルメロシアニン)を含む)、3核メロシアニン色素、4核メロシアニン色素、ロダシアニン色素、コンプレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン色素、アロポーラー色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素、スクアリウム色素、クロコニウム色素、アザメチン色素、クマリン色素、アリーリデン色素、アントラキノン色素、トリフェニルメタン色素、アゾ色素、アゾメチン色素、スピロ化合物、メタロセン色素、フルオレノン色素、フルギド色素、ペリレン色素、フェナジン色素、フェノチアジン色素、キノン色素、インジゴ色素、ジフェニルメタン色素、ポリエン色素、アクリジン色素、アクリジノン色素、ジフェニルアミン色素、キナクリドン色素、キノフタロン色素、フェノキサジン色素、フタロペリレン色素、ポルフィリン色素、クロロフィル色素、フタロシアニン色素、金属錯体色素、縮合芳香族炭素環系色素(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)が挙げられる。
【0055】
なお、金属錯体化合物としては、金属に配位する少なくとも1つの窒素原子または酸素原子または硫黄原子を有する配位子をもつ金属錯体であり、金属錯体中の金属イオンは特に限定されないが、好ましくはベリリウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、ガリウムイオン、亜鉛イオン、インジウムイオン、または錫イオンであり、より好ましくはベリリウムイオン、アルミニウムイオン、ガリウムイオン、または亜鉛イオンであり、更に好ましくはアルミニウムイオン、または亜鉛イオンである。前記金属錯体中に含まれる配位子としては種々の公知の配位子が有るが、例えば、「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」 Springer-Verlag社 H.Yersin著1987年発行、「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社山本明夫著1982年発行等に記載の配位子が挙げられる。
【0056】
光電変換層は、p型半導体およびn型半導体を含むバルクヘテロ接合構造層を有する場合が好ましい。光電変換層がバルクへテロ接合構造を有することにより、光電変換層のキャリア拡散長が短いという欠点を補い、光電変換層の光電変換効率を向上させることができる。なお、バルクへテロ接合構造については、特開2005−303266号公報において詳細に説明されている。
【0057】
(電荷ブロッキング層形成用材料)
電荷ブロッキング層(正孔ブロッキング層、電子ブロッキング層)を形成するための材料としては、以下のものが挙げられる。 正孔ブロッキング層は、電子受容性有機材料を用いることができる。
電子受容性材料としては、1,3−ビス(4−tert−ブチルフェニル−1,3,4−オキサジアゾリル)フェニレン(OXD−7)等のオキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、バソクプロイン、バソフェナントロリン、及びこれらの誘導体、トリアゾール化合物、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、ビス(4−メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、ジスチリルアリーレン誘導体、シロール化合物などを用いることができる。また、電子受容性有機材料でなくとも、十分な電子輸送性を有する材料ならば使用することは可能である。ポルフィリン系化合物や、DCM(4-ジシアノメチレン-2-メチル-6-(4-(ジメチルアミノスチリル))-4Hピラン)等のスチリル系化合物、4Hピラン系化合物を用いることができる。
具体的には、以下の化合物が好ましい。なお、以下の具体例において、Ea及びIpはそれぞれ電子親和力Ea(eV)及びイオン化ポテンシャルIp(eV)を示す。
【0058】
【化6】

【0059】
電子ブロッキング層には、電子供与性有機材料を用いることができる。
具体的には、低分子材料では、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)や4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)等の芳香族ジアミン化合物、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、イミダゾロン、スチルベン誘導体、ピラゾリン誘導体、テトラヒドロイミダゾール、ポリアリールアルカン、ブタジエン、4,4’,4”−トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)、ポルフィン、テトラフェニルポルフィン銅、フタロシアニン、銅フタロシアニン、チタニウムフタロシアニンオキサイド等のポリフィリン化合物、トリアゾール誘導体、オキサジザゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アニールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、シラザン誘導体などを用いることができ、高分子材料では、フェニレンビニレン、フルオレン、カルバゾール、インドール、ピレン、ピロール、ピコリン、チオフェン、アセチレン、ジアセチレン等の重合体や、その誘導体を用いることができる。電子供与性化合物でなくとも、十分なホール輸送性を有する化合物であれば用いることは可能である。
具体的には、以下の化合物が好ましい。なお、以下の具体例において、Ea及びIpはそれぞれ電子親和力Ea(eV)及びイオン化ポテンシャルIp(eV)を示す。
【0060】
【化7】

【0061】
【化8】

【0062】
[撮像素子]
次に、光電変換素子を備えた撮像素子の構成例を説明する。なお、以下に説明する構成例において、すでに説明した部材などと同等な構成・作用を有する部材等については、図中に同一符号又は相当符号を付すことにより、説明を簡略化或いは省略する。
【0063】
以下、本実施形態に係る光電変換素子を用いた固体撮像素子の構成例について説明する。以下の説明では、図4〜図8を参照する。
【0064】
(第1の実施形態)
図4は、第1の実施形態を説明するための固体撮像素子の1画素分の断面模式図である。図5は、図4に示す中間層の断面模式図である。この固体撮像素子は、図4に示す1画素が同一平面上でアレイ状に多数配置されたものであり、この1画素から得られる信号によって画像データの1つの画素データを生成することができる。
【0065】
図4に示す固体撮像素子の1画素は、n型シリコン基板1と、n型シリコン基板1上に形成された透明な絶縁膜7と、絶縁膜7上に形成された第一電極膜11、第一電極膜11上に形成された中間層12、及び中間層12上に形成された第二電極膜13からなる光電変換部とを含んで構成され、光電変換部上には開口の設けられた遮光膜14が形成されており、この遮光膜14によって中間層12の受光領域が制限されている。また、遮光膜14及び第二電極膜13上には透明な絶縁膜15が形成されている。尚、絶縁膜7上に形成される光電変換部は、図2に示す光電変換素子の構成を採用することができる。
【0066】
中間層12は、図5に示すように、第一電極膜11上に、下引き層兼電子ブロッキング層122と、光電変換層123と、正孔ブロッキング兼バッファ層124とがこの順に積層されて構成される。
【0067】
光電変換層123は、第二電極膜13上方からの入射光に応じて電子と正孔を含む電荷を発生し、且つ、正孔の移動度よりも電子の移動度が小さく、且つ、第一電極膜11近傍よりも第二電極膜13近傍の方が電子と正孔をより多く発生するような特性を持つ材料を含んで構成される。光電変換層123は、全画素で共通して用いることができるため、1枚構成の膜であれば良く、画素毎に分離しておく必要はない。
【0068】
また、中間層12に含まれる光電変換層は、p型半導体の層、n型半導体の層、(好ましくは混合・分散(バルクヘテロ接合構造)層)を持ち、p型半導体及びn型半導体のうちの少なくとも1方に配向制御された有機化合物を含む場合が好ましく、さらに好ましくは、p型半導体及びn型半導体の両方に配向制御された(可能な)有機化合物を含む場合である。この有機化合物としては、π共役電子を持つものが好ましく用いられるが、このπ電子平面が、基板(電極基板)に対して垂直ではなく、平行に近い角度で配向しているほど好ましい。基板に対する角度として好ましくは0°以上80°以下であり、さらに好ましくは0°以上60°以下であり、さらに好ましくは0°以上40°以下であり、さらに好ましくは0°以上20°以下であり、特に好ましくは0°以上10°以下であり、最も好ましくは0°(すなわち基板に対して平行)である。上記のように、配向の制御された有機化合物の層は、中間層12全体に対して一部でも含めば良いが、好ましくは、中間層12全体に対する配向の制御された部分の割合が10%以上の場合であり、さらに好ましくは30%以上、さらに好ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上、特に好ましくは90%以上、最も好ましくは100%である。このような状態は、中間層12に含まれる有機化合物の配向を制御することにより、光電変換素層のキャリア拡散長が短いという欠点を補い、光電変換膜の光電変換効率を向上させるものである。
【0069】
有機化合物の配向が制御されている場合において、さらに好ましくはヘテロ接合面(例えばpn接合面)が基板に対して平行ではない場合である。ヘテロ接合面が、基板(電極基板)に対して平行ではなく、垂直に近い角度で配向しているほど好ましい。基板に対する角度として好ましくは10°以上90°以下であり、さらに好ましくは30°以上90°以下であり、さらに好ましくは50°以上90°以下であり、さらに好ましくは70°以上90°以下であり、特に好ましくは80°以上90°以下であり、最も好ましくは90°(すなわち基板に対して垂直)である。上記のような、ヘテロ接合面の制御された有機化合物の層は、中間層12全体に対して一部でも含めば良い。好ましくは、中間層12全体に対する配向の制御された部分の割合が10%以上の場合であり、さらに好ましくは30%以上、さらに好ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上、特に好ましくは90%以上、最も好ましくは100%である。このような場合、中間層12におけるヘテロ接合面の面積が増大し、界面で生成する電子、正孔、電子正孔ペア等のキャリア量が増大し、光電変換効率の向上が可能となる。以上の、有機化合物のヘテロ接合面とπ電子平面の両方の配向が制御された光電変換層において、特に光電変換効率の向上が可能である。これらの状態については、特開2006−086493(特願2004−079931)号において詳細に説明されている。光吸収の点では有機色素層の膜厚は大きいほど好ましいが、電荷分離に寄与しない割合を考慮すると、有機色素層の膜厚として好ましくは、30nm以上300nm以下、さらに好ましくは50nm以上250nm以下、特に好ましくは80nm以上200nm以下である。
【0070】
有機材料からなる光電変換層123では、上述した構成において第二電極13の上方から光が入射してくるとすると、光吸収によって発生する電子及び正孔が第二電極13近傍において多く発生し、第一電極11近傍ではそれほど多く発生しないのが一般的である。これは、この光電変換層123の吸収ピーク波長付近の光の多くが第二電極13近傍で吸収されてしまい、第二電極13近傍から離れるにしたがって、光の吸収率が低下していくことに起因している。このため、第二電極13近傍において発生した電子又は正孔がシリコン基板にまで効率良く移動されないと、光電変換効率が低下してしまい、結果的に素子の感度低下を招くことになる。また、第二電極13近傍で強く吸収された光波長による信号が減少することになるため、結果として分光感度の幅が広がってしまういわゆるブロード化を招くことにもなる。
【0071】
また、有機材料からなる光電変換層123では、電子の移動度が正孔の移動度よりも非常に小さいのが一般的である。さらに、有機材料からなる光電変換層123における電子の移動度は酸素の影響を受けやすく、光電変換層123を大気中に晒すと電子の移動度が更に低下しまうことも分かっている。このため、電子をシリコン基板1まで移動させようとする場合、第二電極13近傍において発生した電子の光電変換層123内での移動距離が長いと、電子の移動中にその一部が失活するなどして電極にて捕集されず、結果として感度が低下し、分光感度がブロード化してしまう。
【0072】
感度低下及び分光感度のブロード化を防ぐためには、第二電極13近傍において発生した電子又は正孔をシリコン基板1にまで効率良く移動させることが有効であり、これを実現するためには、光電変換層123内で発生した電子又は正孔の取り扱い方が課題となる。
【0073】
固体撮像素子1000は、上述した特性を持つ光電変換層123を有しているため、上述したように、光入射側の電極と反対の電極である第一電極膜11にて正孔を捕集してこれを利用することで、外部量子効率を上げることができ、感度向上及び分光感度のシャー
プ化が可能となる。そこで、固体撮像素子1000では、光電変換層123で発生した電子が第二電極膜13に移動し、光電変換層123で発生した正孔が第一電極膜11に移動するように、第一電極膜11と第二電極膜13に電圧が印加される。
【0074】
下引き兼電子ブロッキング層122の1つの機能は、第一電極膜11上の凹凸を緩和するためのものである。第一電極膜11に凹凸がある場合、あるいは第一電極膜11上にゴミが付着していた場合、その上に低分子有機材料を蒸着して光電変換層123を形成すると、この凹凸部分で光電変換層123に細かいクラック、つまり光電変換層123が薄くしか形成されない部分ができやすい。この時、さらにその上から第二電極膜13を形成すると、上記クラック部が第二電極膜13にカバレッジされて第一電極膜11と近接するため、DCショートやリーク電流の増大が生じやすい。特に、第二電極膜13としてTCOを用いる場合、その傾向が顕著である。このため、あらかじめ第一電極膜11上に下引き膜兼電子ブロッキング層122を設けることで凹凸を緩和して、これらを抑制することができる。
【0075】
下引き膜兼電子ブロッキング層122としては、均質で平滑な膜であることが重要である。特に平滑な膜を得ようとする場合、好ましい材料として、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリカルバゾール、PTPDES、PTPDEKなどの有機の高分子系材料があげられ、スピンコート法で形成することもできる。
【0076】
電子ブロッキング層122は、第一電極膜11から電子が注入されることによる暗電流を低減するために設けられており、第一電極膜11からの電子が光電変換層123に注入されるのを阻止する。
【0077】
正孔ブロッキング兼バッファ層125は、正孔ブロッキング層として、第二電極膜13から正孔が注入されることによる暗電流を低減するために設けられており、第二電極膜13からの正孔が光電変換層123に注入されるのを阻止する機能とともに、場合によっては、第二電極膜13成膜時に光電変換層123に与えられるダメージを軽減する機能を果たす。
【0078】
第二電極膜13を光電変換層123の上層に成膜する場合、第二電極膜13の成膜に用いる装置中に存在する高エネルギー粒子、例えばスパッタ法ならば、スパッタ粒子や2次電子、Ar粒子、酸素負イオンなどが光電変換層123に衝突する事で、光電変換層123が変質し、リーク電流の増大や感度の低下など性能劣化が生じる場合がある。これを防止する一つの方法として、光電変換層123の上層にバッファ膜125を設ける事が好ましい。
【0079】
図4に戻り、n型シリコン基板1内には、その浅い方からp型半導体領域(以下、p領域と略す)4と、n型半導体領域(以下、n領域と略す)3と、p領域2がこの順に形成されている。p領域4の遮光膜14によって遮光されている部分の表面部には、高濃度のp領域(p+領域という)6が形成され、p+領域6の周りはn領域5によって囲まれている。
【0080】
p領域4とn領域3とのpn接合面のn型シリコン基板1表面からの深さは、青色光を吸収する深さ(約0.2μm)となっている。したがって、p領域4とn領域3は、青色光を吸収してそれに応じた正孔を発生し、これを蓄積するフォトダイオード(Bフォトダイオード)を形成する。Bフォトダイオードで発生した正孔は、p領域4に蓄積される。
【0081】
p領域2とn型シリコン基板1とのpn接合面のn型シリコン基板1表面からの深さは、赤色光を吸収する深さ(約2μm)となっている。したがって、p領域2とn型シリコン基板1は、赤色光を吸収してそれに応じた正孔を発生し、これを蓄積するフォトダイオード(Rフォトダイオード)を形成する。Rフォトダイオードで発生した正孔は、p領域2に蓄積される。
【0082】
p+領域6は、絶縁膜7に開けられた開口に形成された接続部9を介して第一電極膜11と電気的に接続されており、接続部9を介して、第一電極膜11で捕集された正孔を蓄積する。接続部9は、第一電極膜11とp+領域6以外とは絶縁膜8によって電気的に絶縁される。
【0083】
p領域2に蓄積された正孔は、n型シリコン基板1内に形成されたpチャネルMOSトランジスタからなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換され、p領域4に蓄積された正孔は、n領域3内に形成されたpチャネルMOSトランジスタからなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換され、p+領域6に蓄積された電子は、n領域5内に形成されたpチャネルMOSトランジスタからなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換されて、固体撮像素子1000外部へと出力される。これらのMOS回路が特許請求の範囲の信号読み出し部を構成する。各MOS回路は配線10によって図示しない信号読み出しパッドに接続される。尚、p領域2、p領域4に引き出し電極を設け、所定のリセット電位をかけると、各領域が空乏化し、各pn接合部の容量は限りなく小さい値になる。これにより、接合面に生じる容量を極めて小さくすることができる。
【0084】
このような構成により、例えば光電変換層123でG光を光電変換し、n型シリコン基板1中のBフォトダイオードとRフォトダイオードでB光およびR光を光電変換することができる。また上部でG光がまず吸収されるため、B−G間およびG−R間の色分離は優れている。これが、シリコン基板内に3つのPDを積層し、シリコン基板内でBGR光を全て分離する形式の固体撮像素子に比べ、大きく優れた点である。以下の説明では、固体撮像素子1000のn型シリコン基板1内に形成される無機材料からなる光電変換を行う部分(Bフォトダイオード及びRフォトダイオード)のことを無機層とも言う。
【0085】
尚、n型シリコン基板1と第一電極膜11との間(例えば絶縁膜7とn型シリコン基板1との間)に、光電変換層123を透過した光を吸収して、該光に応じた電荷を発生しこれを蓄積する無機材料からなる無機光電変換部を形成することも可能である。この場合、n型シリコン基板1内に、この無機光電変換部の電荷蓄積領域に蓄積された電荷に応じた信号を読み出すためのMOS回路を設け、このMOS回路にも配線10を接続しておけば良い。
【0086】
第一電極膜11は、光電変換層123で発生して移動してきた正孔を捕集する役割を果たす。第一電極膜11は、画素毎に分離されており、これによって画像データを生成することができる。図4に示す構成では、n型シリコン基板1でも光電変換を行っているため、第一電極膜11は、可視光に対する透過率が60%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。第一電極膜11下方に光電変換領域が存在しない構成の場合には、第一電極膜11は透明性の低いものであっても構わない。材料としては、ITO、IZO、ZnO、SnO、TiO、FTO、Al、Ag、及びAuのいずれかを最も好ましく用いることができる。
【0087】
第二電極膜13は、光電変換層123で発生して移動してきた電子を吐き出す機能を有する。第二電極膜13は、全画素で共通して用いることができる。このため、固体撮像素子1000では、第二電極膜13が全画素で共通の一枚構成の膜となっている。第二電極膜13は、光電変換層123に光を入射させる必要があるため、可視光に対する透過性が高い材料を用いる必要がある。第二電極膜13は、その可視光に対する透過率が60%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。材料としては、ITO、IZO、ZnO、SnO、TiO、FTO、Al、Ag、及びAuのいずれかを最も好ましく用いることができる。
【0088】
無機層は、結晶シリコン、アモルファスシリコン、GaAsなどの化合物半導体のpn接合またはpin接合が一般的に用いられる。この場合、シリコンの光進入深さで色分離を行っているため積層された各受光部で検知するスペクトル範囲はブロードとなる。しかしながら、図4に示すように光電変換層123を上層に用いることにより、すなわち光電変換層123を透過した光をシリコンの深さ方向で検出することにより色分離が顕著に改良される。特に図4に示すように、光電変換層123でG光を検出すると、光電変換層123を透過する光はB光とR光になるため、シリコンでの深さ方向での光の分別はBR光のみとなり色分離が改良される。光電変換層123がB光またはR光を検出する場合でも、シリコンのpn接合面の深さを適宜選択することにより顕著に色分離が改良される。
【0089】
無機層の構成は、光入射側から、npn又はpnpnとなっていることが好ましい。特に、表面にp層を設け表面の電位を高くしておくことで、表面付近で発生した正孔、及び暗電流をトラップすることができ暗電流を低減できるため、pnpn接合とすることがより好ましい。
【0090】
尚、図4では、光電変換部がn型シリコン基板1上方に1つ積層される構成を示したが、n型シリコン基板1上方に、光電変換部を複数積層した構成にすることも可能である。光電変換部を複数積層した構成については後の実施形態で説明する。このようにした場合は、無機層で検出する光は一色で良く、好ましい色分離が達成できる。また、固体撮像素子1000の1画素にて4色の光を検出しようとする場合には、例えば、1つの光電変換部にて1色を検出して無機層にて3色を検出する構成、光電変換部を2つ積層して2色を検出し、無機層にて2色を検出する構成、光電変換部を3つ積層して3色を検出し、無機層にて1色を検出する構成等が考えられる。また、固体撮像素子1000が、1画素で1色のみを検出する構成であっても良い。この場合は、図1においてp領域2、n領域3、p領域4を無くした構成となる。
【0091】
無機層についてさらに詳細に説明する。無機層の好ましい構成としては、光伝導型、p−n接合型、ショットキー接合型、PIN接合型、MSM(金属−半導体−金属)型の受光素子やフォトトランジスタ型の受光素子が挙げられる。特に、図4に示したように、単一の半導体基板内に、第1導電型の領域と、第1導電型と逆の導電型である第2導電型の領域とを交互に複数積層し、第1導電型及び第2導電型の領域の各接合面を、それぞれ異なる複数の波長帯域の光を主に光電変換するために適した深さに形成してなる無機層を用いることが好ましい。単一の半導体基板としては、単結晶シリコンが好ましく、シリコン基板の深さ方向に依存する吸収波長特性を利用して色分離を行うことができる。
【0092】
無機半導体として、InGaN系、InAlN系、InAlP系、又はInGaAlP系の無機半導体を用いることもできる。nGaN系の無機半導体は、Inの含有組成を適宜変更し、青色の波長範囲内に極大吸収値を有するよう調整されたものである。すなわち、InxGa1-xN(0≦X<1)の組成となる。このような化合物半導体は、有機金属気相成長法(MOCVD法)を用いて製造される。Gaと同じ13族原料のAlを用いる窒化物半導体のInAlN系についても、InGaN系と同様に短波長受光部として利用することができる。また、GaAs基板に格子整合するInAlP、InGaAlPを用いることもできる
【0093】
無機半導体は、埋め込み構造となっていてもよい。埋め込み構造とは、短波長受光部部分の両端を短波長受光部とは異なる半導体で覆われる構成のものをいう。両端を覆う半導体としては、短波長受光部のバンドギャップ波長より短い又は同等のバンドギャップ波長を有する半導体であることが好ましい。
【0094】
また、中間層12を複数積層する場合、第一電極膜11と第二電極膜13は、光入射側に最も近い位置にある光電変換膜から最も遠い位置にある光電変換膜まで、それぞれの光電変換層が検出する光以外の波長の光を透過させる必要があり、可視光に対し、好ましくは90%、さらに好ましくは95%以上の光を透過する材料を用いる事が好ましい。
【0095】
第二電極膜13はプラズマフリーで作製することが好ましい。プラズマフリーで第二電極膜13を作成することで、プラズマが基板に与える影響を少なくすることができ、光電変換特性を良好にすることができる。ここで、プラズマフリーとは、第二電極膜13の成膜中にプラズマが発生しないか、またはプラズマ発生源から基体までの距離が2cm以上、好ましくは10cm以上、更に好ましくは20cm以上であり、基体に到達するプラズマが減ずるような状態を意味する。
【0096】
第二電極膜13の成膜中にプラズマが発生しない装置としては、例えば、電子線蒸着装置(EB蒸着装置)やパルスレーザー蒸着装置がある。EB蒸着装置またはパルスレーザー蒸着装置については、沢田豊監修「透明導電膜の新展開」(シーエムシー刊、1999年)、沢田豊監修「透明導電膜の新展開II」(シーエムシー刊、2002年)、日本学術振興会著「透明導電膜の技術」(オーム社、1999年)、及びそれらに付記されている参考文献等に記載されているような装置を用いることができる。以下では、EB蒸着装置を用いて透明電極膜の成膜を行う方法をEB蒸着法と言い、パルスレーザー蒸着装置を用いて透明電極膜の成膜を行う方法をパルスレーザー蒸着法と言う。
【0097】
プラズマ発生源から基体への距離が2cm以上であって基体へのプラズマの到達が減ずるような状態を実現できる装置(以下、プラズマフリーである成膜装置という)については、例えば、対向ターゲット式スパッタ装置やアークプラズマ蒸着法などが考えられ、それらについては沢田豊監修「透明導電膜の新展開」(シーエムシー刊、1999年)、沢田豊監修「透明導電膜の新展開II」(シーエムシー刊、2002年)、日本学術振興会著「透明導電膜の技術」(オーム社、1999年)、及びそれらに付記されている参考文献等に記載されているような装置を用いることができる。
【0098】
TCOなどの透明導電膜を第二電極膜13とした場合、DCショート、あるいはリーク電流増大が生じる場合がある。この原因の一つは、光電変換層123に導入される微細なクラックがTCOなどの緻密な膜によってカバレッジされ、反対側の第一電極膜11との間の導通が増すためと考えられる。そのため、Alなど膜質が比較して劣る電極の場合、リーク電流の増大は生じにくい。第二電極膜13の膜厚を、光電変換層123の膜厚(すなわち、クラックの深さ)に対して制御する事により、リーク電流の増大を大きく抑制できる。第二電極膜13の厚みは、光電変換層123厚みの1/5以下、好ましくは1/10以下であるようにする事が望ましい。
【0099】
通常、導電性膜をある範囲より薄くすると、急激な抵抗値の増加をもたらすが、本実施形態の固体撮像素子1000では、シート抵抗は、好ましくは100〜10000Ω/□でよく、薄膜化できる膜厚の範囲の自由度は大きい。また、透明導電性薄膜は厚みが薄いほど吸収する光の量は少なくなり、一般に光透過率が増す。光透過率の増加は、光電変換層123での光吸収を増大させ、光電変換能を増大させるため、非常に好ましい。薄膜化に伴う、リーク電流の抑制、薄膜の抵抗値の増大、透過率の増加を考慮すると、透明導電性薄膜の膜厚は、5〜100nmであることが好ましく、さらに好ましくは5〜20nmである事が望ましい。
【0100】
透明電極膜の材料は、プラズマフリーである成膜装置、EB蒸着装置、及びパルスレーザー蒸着装置により成膜できるものが好ましい。例えば、金属、合金、金属酸化物、金属窒化物、金属ホウ化物、有機導電性化合物、これらの混合物等が好適に挙げられ、具体例としては、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウムタングステン(IWO)等の導電性金属酸化物、窒化チタン等の金属窒化物、金、白金、銀、クロム、ニッケル、アルミニウム等の金属、更にこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロ−ル等の有機導電性材料、これらとITOとの積層物、などが挙げられる。また、沢田豊監修「透明導電膜の新展開」(シーエムシー刊、1999年)、沢田豊監修「透明導電膜の新展開II」(シーエムシー刊、2002年)、日本学術振興会著「透明導電膜の技術」(オーム社、1999年)等に詳細に記載されているものを用いても良い。
【0101】
(第2の実施形態)
本実施形態では、第1の実施形態で説明した図4に示す構成の無機層を、n型シリコン基板内で2つのフォトダイオードを積層するのではなく、入射光の入射方向に対して垂直な方向に2つのフォトダイオードを配列して、n型シリコン基板内で2色の光を検出するようにしたものである。
【0102】
図6は、本発明の第4の実施形態を説明するための固体撮像素子の1画素分の断面模式図である。
図6に示す固体撮像素子2000の1画素は、n型シリコン基板17と、n型シリコン基板17上方に形成された第一電極膜30、第一電極膜30上に形成された中間層31、及び中間層31上に形成された第二電極膜32からなる光電変換部とを含んで構成され、光電変換部上には開口の設けられた遮光膜34が形成されており、この遮光膜34によって中間層31の受光領域が制限されている。また、遮光膜34上には透明な絶縁膜33が形成されている。
【0103】
第一電極膜30、中間層31、及び第二電極膜32は、第一電極膜11、中間層12、及び第二電極膜13と同じ構成である。
【0104】
遮光膜34の開口下方のn型シリコン基板17表面には、n領域19とp領域18からなるフォトダイオードと、n領域21とp領域20からなるフォトダイオードとが、n型シリコン基板17表面に並んで形成されている。n型シリコン基板17表面上の任意の方向が、入射光の入射方向に対して垂直な方向となる。
【0105】
n領域19とp領域18からなるフォトダイオードの上方には、透明な絶縁膜24を介してB光を透過するカラーフィルタ28が形成され、その上に第一電極膜30が形成されている。n領域21とp領域20からなるフォトダイオードの上方には、透明な絶縁膜24を介してR光を透過するカラーフィルタ29が形成され、その上に第一電極膜30が形成されている。カラーフィルタ28,29の周囲は、透明な絶縁膜25で覆われている。
【0106】
n領域19とp領域18からなるフォトダイオードは、カラーフィルタ28を透過したB光を吸収してそれに応じた正孔を発生し、発生した正孔をp領域18に蓄積する。n領域21とp領域20からなるフォトダイオードは、カラーフィルタ29を透過したR光を吸収してそれに応じた正孔を発生し、発生した正孔をp領域20に蓄積する。
【0107】
p型シリコン基板17表面の遮光膜34によって遮光されている部分には、p+領域23が形成され、p+領域23の周りはn領域22によって囲まれている。
【0108】
p+領域23は、絶縁膜24,25に開けられた開口に形成された接続部27を介して第一電極膜30と電気的に接続されており、接続部27を介して、第一電極膜30で捕集された正孔を蓄積する。接続部27は、第一電極膜30とp+領域23以外とは絶縁膜26によって電気的に絶縁される。
【0109】
p領域18に蓄積された正孔は、n型シリコン基板17内に形成されたpチャネルMOSトランジスタからなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換され、p領域20に蓄積された正孔は、n型シリコン基板17内に形成されたpチャネルMOSトランジスタからなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換され、p+領域23に蓄積された正孔は、n領域22内に形成されたpチャネルMOSトランジスタからなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換されて、固体撮像素子2000外部へと出力される。これらのMOS回路が特許請求の範囲の信号読み出し部を構成する。各MOS回路は配線35によって図示しない信号読み出しパッドに接続される。
【0110】
尚、信号読出し部は、MOS回路ではなくCCDとアンプによって構成しても良い。つまり、p領域18、p領域20、及びp+領域23に蓄積された正孔をn型シリコン基板17内に形成したCCDに読み出し、これをCCDでアンプまで転送して、アンプからその正孔に応じた信号を出力させるような信号読出し部であっても良い。
【0111】
このように、信号読み出し部は、CCDおよびCMOS構造が挙げられるが、消費電力、高速読出し、画素加算、部分読出し等の点から、CMOSの方が好ましい。
【0112】
尚、図6では、カラーフィルタ28,29によってR光とB光の色分離を行っているが、カラーフィルタ28,29を設けず、p領域20とn領域21のpn接合面の深さと、p領域18とn領域19のpn接合面の深さを各々調整して、それぞれのフォトダイオードでR光とB光を吸収するようにしても良い。この場合、n型シリコン基板17と第一電極膜30との間(例えば絶縁膜24とn型シリコン基板17との間)に、中間層31を透過した光を吸収して、該光に応じた電荷を発生しこれを蓄積する無機材料からなる無機光電変換部を形成することも可能である。この場合、n型シリコン基板17内に、この無機光電変換部の電荷蓄積領域に蓄積された電荷に応じた信号を読み出すためのMOS回路を設け、このMOS回路にも配線35を接続しておけば良い。
【0113】
また、n型シリコン基板17内に設けるフォトダイオードを1つとし、n型シリコン基板17上方に光電変換部を複数積層した構成としても良い。更に、n型シリコン基板17内に設けるフォトダイオードを複数とし、n型シリコン基板17上方に光電変換部を複数積層した構成としても良い。また、カラー画像を作る必要がないのであれば、n型シリコン基板17内に設けるフォトダイオードを1つとし、光電変換部を1つだけ積層した構成としても良い。
【0114】
(第3の実施形態)
本実施形態の固体撮像素子は、第1の実施形態で説明した図4に示す構成の無機層を設けず、シリコン基板上方に複数(ここでは3つ)の光電変換層を積層した構成である。
図7は、本発明の第3の実施形態を説明するための固体撮像素子の1画素分の断面模式図である。
図7に示す固体撮像素子3000は、シリコン基板41上方に、第一電極膜56、第一電極膜56上に積層された中間層57、及び中間層57上に積層された第二電極膜58を含むR光電変換部と、第一電極膜60、第一電極膜60上に積層された中間層61、及び中間層61上に積層された第二電極膜62を含むB光電変換部と、第一電極膜64、第一電極膜64上に積層された中間層65、及び中間層65上に積層された第二電極膜66を含むG光電変換部とが、それぞれに含まれる第一電極膜をシリコン基板41側に向けた状態で、この順に積層された構成となっている。
【0115】
シリコン基板41上には透明な絶縁膜48が形成され、その上にR光電変換部が形成され、その上に透明な絶縁膜59が形成され、その上にB光電変換部が形成され、その上に透明な絶縁膜63が形成され、その上にG光電変換部が形成され、その上に開口の設けられた遮光膜68が形成され、その上に透明な絶縁膜67が形成されている。
【0116】
G光電変換部に含まれる第一電極膜64、中間層65、及び第二電極膜66は、図4に示す第一電極膜11、中間層12、及び第二電極膜13と同じ構成である。
【0117】
B光電変換部に含まれる第一電極膜60、中間層61、及び第二電極膜62は、図4に示す第一電極膜11、中間層12、及び第二電極膜13と同じ構成である。ただし、中間層61に含まれる光電変換層は、青色光を吸収してこれに応じた電子及び正孔を発生する材料を用いる。
【0118】
R光電変換部に含まれる第一電極膜56、中間層57、及び第二電極膜58は、図4に示す第一電極膜11、中間層12、及び第二電極膜13と同じ構成である。ただし、中間層57に含まれる光電変換層は、赤色光を吸収してこれに応じた電子及び正孔を発生する材料を用いる。
【0119】
中間層61、57に含まれる、それぞれの電子、正孔ブロッキング層は、それぞれの光電変換膜のHOMO、LUMOエネルギー準位と、それと接する各ブロッキング層のHOMO、LUMO準位の関係において、信号電荷の輸送に際しエネルギー障壁が生じないよう、適当な材料、構成を選択することが好ましい。
【0120】
シリコン基板41表面の遮光膜68によって遮光されている部分には、p+領域43,45,47が形成され、それぞれの周りはn領域42,44,46によって囲まれている。
【0121】
p+領域43は、絶縁膜48に開けられた開口に形成された接続部54を介して第一電極膜56と電気的に接続されており、接続部54を介して、第一電極膜56で捕集された正孔を蓄積する。接続部54は、第一電極膜56とp+領域43以外とは絶縁膜51によって電気的に絶縁される。
【0122】
p+領域45は、絶縁膜48、R光電変換部、及び絶縁膜59に開けられた開口に形成された接続部53を介して第一電極膜60と電気的に接続されており、接続部53を介して、第一電極膜60で捕集された正孔を蓄積する。接続部53は、第一電極膜60とp+領域45以外とは絶縁膜50によって電気的に絶縁される。
【0123】
p+領域47は、絶縁膜48、R光電変換部、絶縁膜59、B光電変換部、及び絶縁膜63に開けられた開口に形成された接続部52を介して第一電極膜64と電気的に接続されており、接続部52を介して、第一電極膜64で捕集された正孔を蓄積する。接続部52は、第一電極膜64とp+領域47以外とは絶縁膜49によって電気的に絶縁される。
【0124】
p+領域43に蓄積された正孔は、n領域42内に形成されたpチャネルMOSトランジスタからなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換され、p+領域45に蓄積された正孔は、n領域44内に形成されたpチャネルMOSトランジスタからなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換され、p+領域47に蓄積された正孔は、n領域46内に形成されたpチャネルMOSトランジスタからなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換されて、固体撮像素子3000外部へと出力される。これらのMOS回路が特許請求の範囲の信号読み出し部を構成する。各MOS回路は配線55によって図示しない信号読み出しパッドに接続される。尚、信号読出し部は、MOS回路ではなくCCDとアンプによって構成しても良い。つまり、p+領域43,45,47に蓄積された正孔をシリコン基板41内に形成したCCDに読み出し、これをCCDでアンプまで転送して、アンプからその正孔に応じた信号を出力させるような信号読出し部であっても良い。
【0125】
なお、シリコン基板41と第一電極膜56との間(例えば絶縁膜48とシリコン基板41との間)に、中間層57,61,65を透過してきた光を受光して、該光に応じた電荷を発生しこれを蓄積する無機材料からなる無機光電変換部を形成することも可能である。この場合、シリコン基板41内に、この無機光電変換部の電荷蓄積領域に蓄積された電荷に応じた信号を読み出すためのMOS回路を設け、このMOS回路にも配線55を接続しておけば良い。
【0126】
このように、第1の実施形態及び第2の実施形態で述べた、光電変換層をシリコン基板上に複数積層する構成は、図7のような構成によって実現できる。
【0127】
以上の説明において、B光を吸収する光電変換層とは、少なくとも400〜500nmの光を吸収することができ、好ましくはその波長域でのピ−ク波長の吸収率が50%以上であるものを意味する。G光を吸収する光電変換層とは、少なくとも500〜600nmの光を吸収することができ、好ましくはその波長域でのピ−ク波長の吸収率が50%以上であることを意味する。R光を吸収する光電変換層とは、少なくとも600〜700nmの光を吸収することができ、好ましくはその波長域でのピ−ク波長の吸収率が50%以上であることを意味する。
【0128】
第1の実施形態や第3の実施形態のような構成の場合は、上層からBGR、BRG、GBR、GRB、RBG、RGBという順序で色を検出するパターンが考えられる。好ましくは最上層がGである。また、第2の実施形態のような構成の場合は、上層がR層の場合は下層が同一平面状にBG層、上層がB層の場合は下層が同一平面状にGR層、上層がG層の場合は下層が同一平面状にBR層といった組み合わせが可能である。好ましくは上層がG層で下層が同一平面状にBR層である構成である。
【0129】
(第4の実施形態)
図8は、本発明の第4の実施形態を説明するための固体撮像素子の断面模式図である。図8では、光を検出して電荷を蓄積する部分である画素部における2画素分の断面と、その画素部にある電極に接続される配線や、その配線に接続されるボンディングPAD等が形成される部分である周辺回路部との断面を併せて示した。
【0130】
画素部のn型シリコン基板413には、表面部にp領域421が形成され、p領域421の表面部にはn領域422が形成され、n領域422の表面部にはp領域423が形成され、p領域423の表面部にはn領域424が形成されている。
【0131】
p領域421は、n型シリコン基板413とのpn接合により光電変換された赤色(R)成分の正孔を蓄積する。R成分の正孔が蓄積されたことによるp領域421の電位変化が、n型シリコン基板413に形成されたMOSトランジスタ426から、そこに接続されたメタル配線419を介して信号読み出しPAD427に読み出される。
【0132】
p領域423は、n領域422とのpn接合により光電変換された青色(B)成分の正孔を蓄積する。B成分の正孔が蓄積されたことによるp領域423の電位変化が、n領域422に形成されたMOSトランジスタ426’から、そこに接続されたメタル配線419を介して信号読み出しPAD427に読み出される。
【0133】
n領域424内には、n型シリコン基板413上方に積層された光電変換層123で発生した緑色(G)成分の正孔を蓄積するp領域からなる正孔蓄積領域425が形成されている。G成分の正孔が蓄積されたことによる正孔蓄積領域425の電位変化が、n領域424内に形成されたMOSトランジスタ426’’から、そこに接続されたメタル配線419を介して信号読み出しPAD427に読み出される。通常、信号読み出しPAD427は、各色成分が読み出されるトランジスタ毎に別々に設けられる。
【0134】
ここでp領域、n領域、トランジスタ、メタル配線等は模式的に示したが、それぞれの構造等はこれに限らず、適宜最適なものが選ばれる。B光、R光はシリコン基板の深さにより分別しているのでpn接合等のシリコン基板表面からの深さ、各不純物のドープ濃度の選択などは重要である。信号読み出し部となるCMOS回路には、通常のCMOSイメージセンサに用いられている技術を適用することができる。低ノイズ読出カラムアンプやCDS回路を初めとして、画素部のトランジスタ数を減らす回路構成を適用することができる。
【0135】
n型シリコン基板413上には、酸化シリコン、窒化シリコン等を主成分とする透明な絶縁膜412が形成され、絶縁膜412上には酸化シリコン、窒化シリコン等を主成分とする透明な絶縁膜411が形成されている。絶縁膜412の膜厚は薄いほど好ましく5μm以下、好ましくは3μm以下、さらに好ましくは2μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。
【0136】
絶縁膜411,412内には、第一電極膜414と正孔蓄積領域としてのp領域425とを電気的に接続する例えばタングステンを主成分としたプラグ415が形成されており、プラグ415は絶縁膜411と絶縁膜412との間でパッド416によって中継接続されている。パッド416はアルミニウムを主成分としたものが好ましく用いられる。絶縁膜412内には、前述したメタル配線419やトランジスタ426,426’,426’’のゲート電極等も形成されている。メタル配線も含めてバリヤー層が設けられていることが好ましい。プラグ415は、1画素毎に設けられている。
【0137】
絶縁膜411内には、n領域424とp領域425のpn接合による電荷の発生に起因するノイズを防ぐために、遮光膜417が設けられている。遮光膜417は通常、タングステンやアルミニウム等を主成分としたものが用いられる。絶縁膜411内には、ボンディングPAD420(外部から電源を供給するためのPAD)と、信号読み出しPAD427が形成され、ボンディングPAD420と後述する第一電極膜414とを電気的に接続するためのメタル配線(図示せず)も形成されている。
【0138】
絶縁膜411内の各画素のプラグ415上には透明な第一電極膜414が形成されている。第一電極膜414は、画素毎に分割されており、この大きさによって受光面積が決定される。第一電極膜414には、ボンディングPAD420からの配線を通じてバイアスがかけられる。後述する第二電極膜405に対して第一電極膜414に負のバイアスをかけることで、正孔蓄積領域425に正孔を蓄積できる構造が好ましい。
【0139】
第一電極膜414上には図4と同様の構造の中間層12が形成され、この上に、第二電極膜405が形成されている。
【0140】
第二電極膜405上には中間層12を保護する機能を持つ窒化シリコン等を主成分とする保護膜404が形成されている。保護膜404には、画素部の第一電極膜414と重ならない位置に開口が形成され、絶縁膜411及び保護膜404には、ボンディングPAD420上の一部に開口が形成されている。そして、この2つの開口によって露出する第二電極膜405とボンディングPAD420とを電気的に接続して、第二電極膜405に電位を与えるためのアルミニウム等からなる配線418が、開口内部及び保護膜404上に形成されている。配線418の材料としては、Al−Si、Al−Cu合金等のアルミニウムを含有する合金を用いることもできる。
【0141】
配線418上には、配線418を保護するための窒化シリコン等を主成分とする保護膜403が形成され、保護膜403上には赤外カット誘電体多層膜402が形成され、赤外カット誘電体多層膜402上には反射防止膜401が形成されている。
【0142】
第一電極膜414は、図4に示す第一電極膜11と同じ機能を果たす。第二電極膜405は、図4に示す第二電極膜13と同じ機能を果たす。
【0143】
以上のような構成により、1画素でBGR3色の光を検出してカラー撮像を行うことが可能となる。図8の構成では、2つの画素においてR,Bを共通の値として用い、Gの値だけを別々に用いるが、画像を生成する際はGの感度が重要となるため、このような構成であっても、良好なカラー画像を生成することが可能である。
【0144】
以上説明した固体撮像素子は、デジタルカメラ、ビデオカメラ、ファクシミリ、スキャナー、複写機をはじめとする撮像素子に適用できる。バイオや化学センサーなどの光センサーとしても利用可能である。
【0145】
また、以上の実施形態で説明した絶縁膜として挙げられる材料は、SiOx、SiNx、BSG、PSG、BPSG、Al、MgO、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe、Y、TiO等の金属酸化物、MgF、LiF、AlF、CaF等の金属フッ化物等であるが、最も好ましい材料はSiOx、SiNx、BSG、PSG、BPSGである。
【0146】
尚、第1の実施形態〜第4の実施形態において、光電変換層以外からの信号の読み出しは、正孔と電子のどちらを用いても構わない。つまり、上述してきたように、半導体基板とその上に積層される光電変換部との間に設けられる無機光電変換部や、半導体基板内に形成されるフォトダイオードにて正孔を蓄積し、この正孔に応じた信号を信号読み出し部によって読み出す構成としても良いし、無機光電変換部や半導体基板内に形成されるフォトダイオードにて電子を蓄積し、この電子に応じた信号を信号読み出し部によって読み出す構成としても良い。
【0147】
又、第1〜第4の実施形態では、シリコン基板上方に設ける光電変換部として、図5に示した構成のものを用いているが、図1に示した構成のものを用いることも可能である。図5のような構成によれば、電子と正孔をブロッキングできるため、暗電流抑制効果が高い。又、光入射側とは反対側の電極を電子取り出し用の電極とした場合には、図4において、接続部9を第2電極13に接続し、図6において、接続部27を第2電極13に接続し、図7において、接続部54を第2電極58に接続し、接続部53を第2電極62に接続し、接続部52を第2電極66に接続した構成にすれば良い。
【0148】
本実施形態で説明した固体撮像素子は、図4〜図8に示した1画素を同一平面上でアレイ状に多数配置した構成であるが、この1画素によってRGBの色信号を得ることができることから、この1画素は、RGBの光を電気信号に変換する光電変換素子と考えることができる。このため、本実施形態で説明した固体撮像素子は、図4〜図8に示す
ような光電変換素子が、同一平面上でアレイ状に多数配置した構成と言うことができる。
【0149】
(第5の実施形態)
図9、10に示した構成の光電変換素子を用いて固体撮像素子を実現した第5の実施形態について説明する。
図9は、本発明の実施形態を説明するための撮像素子の部分表面模式図である。図10は、図9に示す撮像素子のX−X線の断面模式図である。尚、図9では、マイクロレンズ14の図示を省略してある。
【0150】
n型シリコン基板1上にはpウェル層2が形成されている。以下では、n型シリコン基板1とpウェル層2とを併せて半導体基板という。半導体基板上方の同一面上の行方向とこれに直交する列方向には、主としてR光を透過するカラーフィルタ13rと、主としてG光を透過するカラーフィルタ13gと、主としてB光を透過するカラーフィルタ13bとの3種類のカラーフィルタがそれぞれ多数配列されている。
【0151】
カラーフィルタ13rは、公知の材料を用いることができるが、このような材料は、R光を透過する。カラーフィルタ13gは、公知の材料を用いることができるが、このような材料は、G光を透過する。カラーフィルタ13bは、公知の材料を用いることができるが、このような材料は、B光を透過する。
【0152】
カラーフィルタ13r,13g,13bの配列は、公知の単板式固体撮像素子に用いられているカラーフィルタ配列(ベイヤー配列や縦ストライプ、横ストライプ等)を採用することができる。
【0153】
n領域4r上方には透明電極11rが形成され、n領域4g上方には透明電極11gが形成され、n領域4b上方には透明電極11bが形成されている。透明電極11r,11g,11bは、それぞれカラーフィルタ13r,13g,13bの各々に対応して分割されている。透明電極11r,11g,11bは、それぞれ、図1の下部電極11と同じ機能を有する。
【0154】
透明電極11r,11g,11bの各々の上には、カラーフィルタ13r,13g,13bの各々で共通の一枚構成である光電変換膜12が形成されている。
【0155】
光電変換膜12上には、カラーフィルタ13r,13g,13bの各々で共通の一枚構成である上部電極13が形成されている。
【0156】
透明電極11rと、それに対向する上部電極13と、これらに挟まれる光電変換膜12の一部とにより、カラーフィルタ13rに対応する光電変換素子が形成される。以下では、この光電変換素子を、半導体基板上に形成されたものであるため、R光電変換素子という。
【0157】
透明電極11gと、それに対向する上部電極13と、これらに挟まれる光電変換膜12の一部とにより、カラーフィルタ13gに対応する光電変換素子が形成される。以下では、この光電変換素子をG光電変換素子という。
【0158】
透明電極11bと、それに対向する上部電極13と、これらに挟まれる光電変換膜12の一部とにより、カラーフィルタ13bに対応する光電変換素子が形成される。以下では、この光電変換素子をB光電変換素子という。
【0159】
pウェル層2内のn領域には、R基板上光電変換素子の光電変換膜12で発生した電荷
を蓄積するための高濃度のn型不純物領域(以下、n+領域という)4rが形成されている。尚、n+領域4rに光が入るのを防ぐために、n+領域4r上には遮光膜を設けておくことが好ましい。
【0160】
pウェル層2内のn領域には、G基板上光電変換素子の光電変換膜12で発生した電荷を蓄積するためのn+領域4gが形成されている。尚、n+領域4gに光が入るのを防ぐために、n+領域4g上には遮光膜を設けておくことが好ましい。
【0161】
pウェル層2内のn領域には、B基板上光電変換素子の光電変換膜12で発生した電荷を蓄積するためのn+領域4bが形成されている。尚、n+領域4bに光が入るのを防ぐために、n+領域4b上には遮光膜を設けておくことが好ましい。
【0162】
n+領域4r上にはアルミニウム等の金属からなるコンタクト部6rが形成され、コンタクト部6r上に透明電極11rが形成されており、n+領域4rと透明電極11rはコンタクト部6rによって電気的に接続されている。コンタクト部6rは、可視光及び赤外光に対して透明な絶縁層5内に埋設されている。
【0163】
n+領域4g上にはアルミニウム等の金属からなるコンタクト部6gが形成され、コンタクト部6g上に透明電極11gが形成されており、n+領域4gと透明電極11gはコンタクト部6gによって電気的に接続されている。コンタクト部6gは絶縁層5内に埋設されている。
【0164】
n+領域4b上にはアルミニウム等の金属からなるコンタクト部6bが形成され、コンタクト部6b上に透明電極11bが形成されており、n+領域4bと透明電極11bはコンタクト部6bによって電気的に接続されている。コンタクト部6bは絶縁層5内に埋設されている。
【0165】
pウェル層2内のn+領域4r,4g,4bが形成されている以外の領域には、R光電変換素子で発生してn+領域4rに蓄積された電荷に応じた信号をそれぞれ読み出すための信号読み出し部5rと、G光電変換素子で発生してn+領域4gに蓄積された電荷に応じた信号をそれぞれ読み出すための信号読み出し部5gと、B光電変換素子で発生してn+領域4bに蓄積された電荷に応じた信号をそれぞれ読み出すための信号読み出し部5bとが形成されている。信号読み出し部5r,5g,5bは、それぞれ、CCDやMOS回路を用いた公知の構成を採用することができる。尚、信号読み出し部5r,5g,5bに光が入るのを防ぐために、信号読み出し部5r,5g,5b上には遮光膜を設けておくことが好ましい。
【0166】
図11は、図10に示す信号読み出し部5rの具体的な構成例を示す図である。図11において図9、10と同様の構成には同一符号を付してある。尚、信号読み出し部5r,5g,5bの各々の構成は同一であるため、信号読み出し部5g,5bの説明は省略する。
【0167】
信号読み出し部5rは、ドレインがn+領域4rに接続され、ソースが電源Vnに接続されたリセットトランジスタ543と、ゲートがリセットトランジスタ543のドレインに接続され、ソースが電源Vccに接続された出力トランジスタ542と、ソースが出力トランジスタ542のドレインに接続され、ドレインが信号出力線545に接続された行選択トランジスタ541と、ドレインがn領域3rに接続され、ソースが電源Vnに接続されたリセットトランジスタ546と、ゲートがリセットトランジスタ546のドレインに接続され、ソースが電源Vccに接続された出力トランジスタ547と、ソースが出力トランジスタ547のドレインに接続され、ドレインが信号出力線549に接続された行選択トランジスタ548とを備える。
【0168】
透明電極11rと上部電極13間にバイアス電圧を印加することで、光電変換膜12に入射した光に応じて電荷が発生し、この電荷が透明電極11rを介してn+領域4rへと移動する。n+領域4rに蓄積された電荷は、出力トランジスタ542でその電荷量に応じた信号に変換される。そして、行選択トランジスタ541をONにすることで信号出力線545に信号が出力される。信号出力後は、リセットトランジスタ543によってn+領域4r内の電荷がリセットされる。
【0169】
このように、信号読み出し部5rは、3トランジスタからなる公知のMOS回路で構成することができる。
【0170】
図10に戻り、光電変換膜12上には、基板上光電変換素子を保護するための2層構造の保護層15,16が形成され、保護層16上にカラーフィルタ13r,13g,13bが形成されている。
【0171】
この撮像素子100は、光電変換膜12を形成した後に、カラーフィルタ13r,13g,13b等を形成することで製造するが、カラーフィルタ13r,13g,13bは、フォトリソグラフィ工程やベーク工程を含むため、光電変換膜12として有機材料を用いる場合、光電変換膜12が露出した状態で、このフォトリソグラフィ工程やベーク工程が行われると、光電変換膜12の特性が劣化してしまう。撮像素子100では、このような製造工程に起因する光電変換膜12の特性劣化を防止するために、保護層15,16が設けられている。
【0172】
保護層15は、ALCVD法によって形成した無機材料からなる無機層であることが好ましい。ALCVD法は原子層CVD法であり緻密な無機層を形成することが可能で、光電変換層9の有効な保護層となり得る。ALCVD法はALE法もしくはALD法としても知られている。ALCVD法により形成した無機層は、好ましくはAl、SiO,TiO,ZrO,MgO,HfO,Taからなり、より好ましくはAl、SiOからなり、最も好ましくはAlからなる。
【0173】
保護層16は、光電変換膜12の保護性能をより向上させるために保護層15上に形成されたものであり、有機ポリマーからなる有機層であることが好ましい。有機ポリマーとしてはパリレンが好ましく、パリレンCがより好ましい。尚、保護層16は省略しても良く、又、保護層15と保護層16の配置を逆にしても良い。光電変換膜12の保護効果が特に高いのは、図10に示した構成である。
【0174】
透明電極11rと上部電極13に所定のバイアス電圧を印加すると、R基板上光電変換素子を構成する光電変換膜12で発生した電荷が透明電極11rとコンタクト部6rを介してn+領域4rに移動し、ここに蓄積される。そして、n+領域4rに蓄積された電荷に応じた信号が、信号読み出し部5rによって読み出され、撮像素子100外部に出力される。
【0175】
同様に、透明電極11gと上部電極13に所定のバイアス電圧を印加すると、G基板上光電変換素子を構成する光電変換膜12で発生した電荷が透明電極11gとコンタクト部6gを介してn+領域4gに移動し、ここに蓄積される。そして、n+領域4gに蓄積された電荷に応じた信号が、信号読み出し部5gによって読み出され、撮像素子100外部に出力される。
【0176】
同様に、透明電極11bと上部電極13に所定のバイアス電圧を印加すると、B基板上
光電変換素子を構成する光電変換膜12で発生した電荷が透明電極11bとコンタクト部6bを介してn+領域4bに移動し、ここに蓄積される。そして、n+領域4bに蓄積された電荷に応じた信号が、信号読み出し部5bによって読み出され、撮像素子100外部に出力される。
【0177】
このように、撮像素子100は、R光電変換素子で発生した電荷に応じたR成分の信号と、G光電変換素子で発生した電荷に応じたG成分の信号と、B光電変換素子で発生した電荷に応じたB成分の信号を外部に出力することができる。これにより、カラーの画像を得る事ができる。この形式により、光電変換部が薄くなるため、解像度が向上し、偽色を低減できる。また、下部回路によらず、開口率を大きくできるため、高感度が可能であり、マイクロレンズを省略可能なため、部品数の省略にも効果がある。
本実施形態では、有機光電変換膜は緑光高領域に最大吸収波長があり、可視光全体に吸収域を有する必要があるが、本発明の前記規定の材料で好ましく実現することができる。
以上、本発明の光電変換素子を撮像素子として用いることの実施形態を記載したが、本発明の光電変換素子は高い光電変換効率を示すため,太陽電池として用いても高い性能を示す。
太陽電池として用いる場合に好ましい素子構成は、本発明記載内容の構成を用いる他、非特許文献(Adv.Mater.,17,66(2005))等の構成に本発明記載の光電変換材料の組み合わせを適用することができる。
【0178】
以下に、実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明は勿論この実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0179】
[実施例1]
アモルファス性ITO(ガラス)基板を蒸着装置(装置名:ELORA-500、アルバック機工製)に入れ、真空度1.0×10-4Pa以下に減圧した。この基板上に、電荷ブロッキング層として下記有機化合物(1)を20nm成膜した。
そして、下記有機化合物(2)と、結晶性有機材料として結晶性フラーレン材料とを、それぞれ単層換算で100nm、300nmとなる比率でヒータ上に載せ、ヒータを加熱した。なお、結晶性フラーレン材料は、純度99%以上、最小径が0.3mm以上の結晶粒子を95質量%以上含むものを使用した。
安定蒸着速度1.0Å/sとなった後、有機化合物(2)及び結晶性フラーレン材料をそのまま40分間昇華させ続けた。40分間昇華後、真空加熱蒸着により共蒸着膜の成膜を開始して、光電変換層を形成した。なお、蒸着時における基板温度は25℃であった。光電変換層の厚さは400nmであった。
さらに、真空に保ちながら、アモルファス性ITOを高周波マグネトロンスパッタにより10nm成膜し、光電変換素子を作製した。この素子を大気暴露することなく、UV硬化樹脂を用いてガラス封止を行った。
【0180】
[実施例2]
実施例1において、光電変換層における有機化合物(2)を下記有機化合物(3)に変更したこと以外は同様にして素子を作製した。
【0181】
[実施例3]
実施例2において、光電変換層形成時に安定蒸着速度が出た後の昇華時間を80分間としたこと以外は同様にして素子を作製した。
【0182】
【化9】

【0183】
[比較例1]
実施例1において、光電変換層形成時に安定蒸着速度が出た後ですぐに共蒸着膜の成膜を開始したこと以外は同様にして素子を作製した。
【0184】
[比較例2]
比較例1において、光電変換層における有機化合物(2)を有機化合物(3)に変更したこと以外は同様にして素子を作製した。
【0185】
[比較例3]
比較例1において、光電変換層における結晶性フラーレン材料を粉末状フラーレン材料(フロンティアカーボン株式会社製、nanom purple SUH)に変更したこと以外は同様にして素子を作製した。この粉末状フラーレン材料は、平均粒子径が数μm〜数10μmの範囲のものであった。
【0186】
[比較例4]
比較例3において、光電変換層形成時に安定蒸着速度が出た後で、そのまま40分間昇華し続けた後、共蒸着膜の成膜を開始したこと以外は同様にして素子を作製した。
【0187】
なお、以上の実施例及び比較例で使用したフラーレン(C60)を上記安定蒸着速度(1.0Å/s)ですべて昇華する時間は、200分であった。従って、本実施例では、40分後又は80分後に成膜を開始しているので、フラーレン全体積の1/5以上を昇華させたことになる。
【0188】
[評価]
各光電変換素子の暗電流200pA/cm時の最大感度波長での外部量子効率(相対値))、膜内電界強度が3.0E+5(V/cm)印加した状態での相対応答速度(0から100%信号強度への立ち上がり時間(相対値))を測定した。結果を以下の表に示す。なお、各素子の光電変換性能の測定の際には、それぞれ、適切な電圧を印加した。
外部量子効率における相対値は、比較例1を100とした場合の相対値であり、立ち上がり時間は実施例2を100とした場合の相対値である。
【0189】
【表1】

【0190】
実施例1〜3に示すように、結晶性の高い有機材料を使用し、かつ安定蒸着後に成膜を行わずに一定時間昇華し続けることで、外部量子効率が高く、0から100%信号強度への立ち上がり時間が短い光電変換素子が得られることが分かる。
一方、比較例1及び4のように、結晶性の高い有機材料を使用することと、安定蒸着後に成膜を行わずに一定時間昇華し続けることのどちらか一方が欠けると本発明の効果が得られないことがわかる。
【符号の説明】
【0191】
11 下部電極
12 光電変換層
15 上部電極
16A,16B 電荷ブロッキング層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極と、前記一対の電極間に配置された光電変換層とを含む光電変換素子の製造方法であって、
前記光電変換層を形成するための原料の少なくとも1種として、最小径が0.3mm以上である結晶粒子を含む有機材料を使用し、
前記有機材料を所定の安定蒸着速度に到達するまで加熱する工程と、
前記安定蒸着速度に到達した後、前記光電変換層の成膜を行わずに前記結晶粒子の全体積の少なくとも1/5を昇華させる工程と、
前記有機材料の全体積の少なくとも1/5を昇華させた後、前記光電変換層の成膜を行う工程と、
を含む光電変換素子の製造方法。
【請求項2】
前記結晶粒子が、単結晶粒子及び複数の結晶ドメインで構成される多結晶粒子の少なくともいずれかを含み、前記単結晶粒子の最小径が0.3mm以上又は前記多結晶粒子の結晶ドメインサイズが0.3mm角以上である、請求項1に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項3】
前記有機材料がp型半導体化合物又はn型半導体化合物である、請求項1又は2に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項4】
前記有機材料がn型半導体化合物であって、前記n型半導体化合物が、フラーレン又はフラーレン誘導体である、請求項3に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項5】
前記安定蒸着速度が0.1Å/s以上である、請求項1〜4のいずれかに記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項6】
前記有機光電変換素子が電荷ブロッキング層を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の有機光電変換素子の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかの製造方法により製造された光電変換素子。
【請求項8】
請求項7に記載の光電変換素子を備えた撮像素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−278155(P2010−278155A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−128163(P2009−128163)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】