説明

光電気混載モジュールおよびその製造方法

【課題】半導体チップの発光部または受光部とコアに形成された反射面との間の距離を短縮し、光電変換基板部分と光導波路部分との間の光損失を小さくすることができる光電気混載モジュールおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】光導波路部分W1 のオーバークラッド層3の表面に凹部3aを形成し、その凹部3a内に、光電変換基板部分E1 における光電変換用の半導体チップ7の発光部7aまたは受光部の少なくとも一部、およびボンディングワイヤ8のループ部8aの少なくとも一部を位置決めし、その状態で、上記光電変換基板部分E1 を光導波路部分W1 に固定する。それにより、半導体チップ7の発光部7aまたは受光部とコア2に形成された反射面2aとを近づける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路部分と、光電変換用の半導体チップが実装された光電変換基板部分とを備えた光電気混載モジュールおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光電気混載モジュールは、図6に示すように、封止樹脂部69を有する光電変換基板部分E0 と光導波路部分W0 とを個別に作製し、その光導波路部分W0 の表面に、透明な接着剤層Bを介して、上記光電変換基板部分E0 の封止樹脂部69を接着して構成されている(例えば、特許文献1,2参照)。上記光電変換基板部分E0 では、リード電極66が形成された基板65に、光電変換用の半導体チップ67が実装され、その半導体チップ67と上記リード電極66とがボンディングワイヤ68により電気的に接続されている。さらに、そのボンディングワイヤ68を保護するために、そのボンディングワイヤ68とともに、上記半導体チップ67およびリード電極66が透明樹脂(封止樹脂部69)で封止されている。一方、上記光導波路部分W0 では、光を伝達するコア62がアンダークラッド層61とオーバークラッド層63とで挟まれた状態になっている。さらに、アンダークラッド層61の、コア62と反対側の面には、その先端がコア62を通ってオーバークラッド層63に達する逆V字状の切削部64が図示のように形成されている。そして、その切削部64の切削面は、上記コアの軸方向(長手方向)に対して45°の傾斜面に形成され、その傾斜面から、上記切削により削られたコア62の部分が露呈し、その露呈部の内側が反射面62aになっている。そして、上記光電変換基板部分E0 と光導波路部分W0 との接着は、光導波路部分W0 の上記反射面62aに対応するオーバークラッド層63の表面部分と、光電変換基板部分E0 の封止樹脂部69との間で、透明な接着剤層Bを介して行われている。なお、上記半導体チップ67は、発光素子または受光素子であり、上記基板65とは反対側の表面(図6では下端面)に、発光部67aまたは受光部が形成されている。
【0003】
上記光電気混載モジュールにおける光Lの伝播は、つぎのようにして行われる。すなわち、上記半導体チップ67が発光素子である場合、まず、その半導体チップ67の発光部67aから光Lが下方に出射される。その光Lは、上記封止樹脂部69,接着剤層Bを通過した後、光導波路部分W0 のオーバークラッド層63を通り抜け、コア62に入射する。つづいて、その光Lは、上記反射面62aで反射して、コア62内を軸方向に進む。そして、その光Lは、コア62の先端面から出射する。
【0004】
一方、上記半導体チップ67が受光素子である場合は、図示しないが、光は、上記とは逆の方向に進む。すなわち、光は、コア62の先端面からコア62内に入射する。ついで、その光は、コア62内を軸方向に進み、上記反射面62aで上方に反射する。そして、その光は、オーバークラッド層63を通り抜け、接着剤層B,封止樹脂部69を通過した後、上記半導体チップ67の受光部で受光される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−17885号公報
【特許文献2】特開2007−286289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記光Lの伝播において、上記半導体チップ67が発光素子である場合、その半導体チップ67の発光部67aから発光された光Lは、図6に示すように広がる。このため、半導体チップ67の発光部67aとコア62に形成された反射面62aとの間の距離Dが長いと、光Lの広がりが大きくなり、場合によって、その光Lが反射面62aから外れコア62内に導かれないことがある。同様に、上記半導体チップ67が受光素子である場合、コア62内を進み反射面62aで反射した光も広がるため、場合によって、その光が半導体チップ67の受光部から外れ受光されないことがある。そこで、光電気混載モジュールでは、半導体チップの発光部67aまたは受光部とコア62に形成された反射面62aとの間の距離Dをできる限り短く設計する必要がある。
【0007】
しかしながら、従来は、特許文献1,2にあるとおり、光電気混載モジュールにおいて、光導波路部分W0 のオーバークラッド層63上に、接着剤層Bを介して、光電変換基板部分E0 の封止樹脂部69を、単に積層して接着しているのであり、これが技術常識であった。このような構造の光電気混載モジュールでは、半導体チップ67の発光部67aまたは受光部とコア62に形成された反射面62aとの間の距離Dを、それ以上短縮することができない。すなわち、光電変換基板部分E0 と光導波路部分W0 との間の光損失を、それ以上小さくすることができない。なお、上記半導体チップ67の下端面(発光部67aまたは受光部)と反射面62aの中心(コア62の軸)との間の距離Dは、通常、200μm以上になる。
【0008】
本発明は、このような従来の技術常識を打破してなされたもので、半導体チップの発光部または受光部とコアに形成された反射面との間の距離を短縮し、光電変換基板部分と光導波路部分との間の光損失を小さくすることができる光電気混載モジュールおよびその製造方法の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明は、光を伝達するコアと,このコアを挟む第1および第2のクラッド層を有する光導波路部分と、光電変換用の半導体チップと,リード電極と,これらを電気的に接続するボンディングワイヤを有する光電変換基板部分とを備え、上記コアの一部に、光を反射して上記コアと上記半導体チップとの間の光伝達を可能とする反射面が形成されている光電気混載モジュールであって、上記光導波路部分の第1のクラッド層の、コアと反対側の面に凹部が形成され、この凹部内に、上記光電変換基板部分の半導体チップの発光部または受光部の少なくとも一部が位置決めされているとともに、上記ボンディングワイヤのループ部の少なくとも一部が位置決めされ、その状態で、上記光電変換基板部分と上記光導波路部分とが一体化されている光電気混載モジュールを第1の要旨とする。
【0010】
また、本発明は、光を伝達するコアと,このコアを挟む第1および第2のクラッド層を有する光導波路部分と、光電変換用の半導体チップと,リード電極と,これらを電気的に接続するボンディングワイヤを有する光電変換基板部分とを備え、上記コアの一部に、光を反射して上記コアと上記半導体チップとの間の光伝達を可能とする反射面が形成されている、請求項1記載の光電気混載モジュールの製造方法であって、上記光導波路部分の第1のクラッド層の、コアと反対側の面に凹部を形成する工程と、この凹部内に、上記光電変換基板部分の半導体チップの発光部または受光部の少なくとも一部を位置決めするとともに、上記ボンディングワイヤのループ部の少なくとも一部を位置決めする工程と、上記位置決め後、上記光電変換基板部分と上記光導波路部分とを一体化する工程とを備えている光電気混載モジュールの製造方法を第2の要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の光電気混載モジュールは、第1のクラッド層の、コアと反対側の面に、凹部が形成され、その凹部内に、光電変換基板部分の半導体チップの発光部または受光部の少なくとも一部が位置決めされているとともに、上記ボンディングワイヤのループ部の少なくとも一部が位置決めされている。このため、光電変換基板部分における半導体チップの発光部または受光部と光導波路部分における反射面との間の距離を短縮することができる。その結果、例えば、上記半導体チップが発光素子である場合には、その半導体チップの発光部からの光があまり広がらないうちに、その光を上記反射面に到達させることができる。また、上記半導体チップが受光素子である場合には、コア内を進み上記反射面で反射した光があまり広がらないうちに、その光を半導体チップの受光部で受光することができる。すなわち、本発明の光電気混載モジュールは、光電変換基板部分と光導波路部分との間の光損失を小さくすることができる。さらに、本発明の光電気混載モジュールは、上記のように、第1のクラッド層の凹部内に、上記ボンディングワイヤのループ部の少なくとも一部が位置決めされているため、そのボンディングワイヤを第1のクラッド層の凹部で保護することができる。その結果、従来形成していたボンディングワイヤ保護用の封止樹脂部を不要にすることも可能である。
【0012】
特に、ボンディングワイヤ,半導体チップおよびリード電極が樹脂封止されていない場合には、光が封止樹脂部を通過しないため、光損失をより小さくすることができる。
【0013】
そして、本発明の光電気混載モジュールの製造方法は、第1のクラッド層の、コアと反対側の面に、凹部を形成し、その凹部内に、光電変換基板部分の半導体チップの発光部または受光部の少なくとも一部を位置決めするとともに、上記ボンディングワイヤのループ部の少なくとも一部を位置決めする。このため、光電変換基板部分における半導体チップの発光部または受光部と光導波路部分における反射面との間の距離を短縮し、光電変換基板部分と光導波路部分との間の光損失を小さくした光電気混載モジュールを製造することができる。また、上記凹部を目印にして半導体チップの発光部または受光部を位置決めできるため、上記光電気混載モジュールの製造も容易になる。さらに、本発明の光電気混載モジュールの製造方法は、上記のように、第1のクラッド層の凹部内に、上記ボンディングワイヤのループ部の少なくとも一部を位置決めするため、そのボンディングワイヤを第1のクラッド層の凹部で保護することができ、従来形成していたボンディングワイヤ保護用の封止樹脂部を不要にすることも可能である。
【0014】
また、第1のクラッド層に形成する凹部を、第1のクラッド層形成後にレーザによる切削により成形するか、または型成形により第1のクラッド層と同時に形成する場合には、上記凹部の形成を容易に行うことができる。
【0015】
特に、ボンディングワイヤ,半導体チップおよびリード電極を樹脂封止しない場合には、その封止樹脂部の形成に要するコストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の光電気混載モジュールの一実施の形態を模式的に示す説明図(光電変換基板部分は側面図、光導波路部分は断面図)である。
【図2】上記光電気混載モジュールを構成する光電変換基板部分を模式的に示す側面図である。
【図3】(a)〜(c)は、上記光電気混載モジュールを構成する光導波路部分の作製工程を模式的に示す説明図である。
【図4】(a)〜(b)は、上記光電気混載モジュールを構成する光導波路部分の作製工程を模式的に示す説明図である。
【図5】(a)〜(b)は、上記光導波路部分に上記光電変換基板部分を固定する工程を模式的に示す説明図である。
【図6】従来の光電気混載モジュールを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。
【0018】
図1は、本発明の光電気混載モジュールの一実施の形態を模式的に示す説明図である。この光電気混載モジュールは、光電変換基板部分E1 と光導波路部分W1 とを備えている。光電変換基板部分E1 では、光電変換用の半導体チップ7がボンディングワイヤ8により電気的に接続されている。光導波路部分W1 では、上記半導体チップ7の発光部7aまたは受光部の全体、およびボンディングワイヤ8のループ部8aのかなりの部分を挿入する凹部3aが、そのオーバークラッド層(第1のクラッド層)3に形成されている。そして、上記オーバークラッド層3の凹部3a内に、上記のように、上記半導体チップ7の発光部7aまたは受光部の全体が位置決めされているとともに、上記ボンディングワイヤ8のループ部8aのかなりの部分が位置決めされ、その状態で、上記光電変換基板部分E1 が上記光導波路部分W1 に固定されている。上記凹部3aの形成により、半導体チップ7を、コア2に形成された反射面2aに近づけている。なお、上記固定は、この実施の形態では、上記光電変換基板部分E1 の基板5の各隅部に貫通孔5aを形成し、その各貫通孔5aに柱体Pの上端部分を嵌合させ、その各柱体Pの底面を上記オーバークラッド層3の凹部3aの周縁部に接着剤等で接着することにより行っている。また、図1において、符号6はリード電極、符号1はアンダークラッド層(第2のクラッド層)、符号4は切削部である。
【0019】
より詳しく説明すると、上記光電変換基板部分E1 では、シリコン等からなる基板5に、リード電極6が形成されているとともに、光電変換用の半導体チップ7が実装されている。そして、その半導体チップ7と上記リード電極6とがボンディングワイヤ8により電気的に接続されている。上記半導体チップ7は、半導体レーザ等の発光素子、またはフォトダイオード等の受光素子であり、上記基板5とは反対側の表面(図1では下端面)に、発光部7aまたは受光部が形成されている。上記ボンディングワイヤ8のループ部8aは、上記半導体チップ7の発光部7aまたは受光部の近傍に形成される曲線部である。なお、この実施の形態では、上記ボンディングワイヤ8等は、従来とは異なり、樹脂で封止されていない。
【0020】
一方、上記光導波路部分W1 では、光を伝達するコア2がオーバークラッド層3とアンダークラッド層1とで挟まれた状態になっている。そして、オーバークラッド層3の、コア2と反対側の面に、上記凹部3aが形成されている。また、アンダークラッド層1の、コア2と反対側の面には、上記凹部3aに対応する位置に、その先端がコア2を通ってオーバークラッド層3に達する逆V字状の切削部4が、図示のように、形成されている。その切削部4の切削面は、上記コア2の軸方向に対して45°の傾斜面に形成され、その傾斜面から、上記切削により削られたコア2の部分が露呈し、その露呈部の内側が反射面2aになっている。
【0021】
上記光電気混載モジュールでは、上記のように、凹部3aの形成により、半導体チップ7の下端面(発光部7aまたは受光部)と、コア2に形成された反射面2aの中心(コア3の軸)との間の距離Dが、従来の光電気混載モジュール(図6参照)よりも短縮されている。このため、上記半導体チップ7が発光素子である場合、図1に示すように、その半導体チップ7の発光部7aからの光Lがあまり広がらないうちに、その光Lを上記反射面2aに到達させ、コア2に導くことができる。また、上記半導体チップ7が受光素子である場合、コア2内を進み上記反射面2aで反射した光があまり広がらないうちに、その光を半導体チップ7の受光部で受光することができる。すなわち、上記光電気混載モジュールは、光電変換基板部分E1 と光導波路部分W1 との間の光損失が小さくなっている。
【0022】
さらに、上記光電気混載モジュールでは、上記のように、オーバークラッド層3の凹部3a内に、上記ボンディングワイヤ8のループ部8aのかなりの部分が位置決めされている。このため、ボンディングワイヤ8を樹脂で封止しなくても、そのボンディングワイヤ8は、オーバークラッド層3の凹部3aで保護されている。また、上記ボンディングワイヤ8がこのように保護されているため、そのボンディングワイヤ8を、オーバークラッド層3の凹部3aの底面に接触させることもでき、その場合、半導体チップ7と、コア2に形成された反射面2aとを、より近づけることができる。
【0023】
また、上記光電気混載モジュールでは、上記のように、ボンディングワイヤ8を樹脂で封止することなく、柱体Pにより、光電変換基板部分E1 と光導波路部分W1 とを一体化している。このため、樹脂封止する際の樹脂の圧力等によりボンディングワイヤ8を損傷するおそれがない。しかも、柱体Pは、切断により、それ自身の短縮化が容易であるため、半導体チップ7の下端面(発光部7aまたは受光部)と、コア2に形成された反射面2aとの間の距離Dの短縮化を、容易に行うことができる。
【0024】
上記光電気混載モジュールは、下記の(1)〜(3)の工程を経て製造される。
(1)上記光電変換基板部分E1 を準備する工程(図2参照)。
(2)上記光導波路部分W1 を作製する工程〔図3(a)〜(c),図4(a)〜(b)参照〕。
(3)上記光電変換基板部分E1 を上記光導波路部分W1 に固定する工程〔図5(a)〜(b)参照〕。
【0025】
上記(1)の光電変換基板部分E1 を準備する工程について、図2に基づいて説明する。この光電変換基板部分E1 は、先に述べたように、シリコン等からなる基板5,リード電極6,光電変換用の半導体チップ7,および上記リード電極6と半導体チップ7とを電気的に接続するボンディングワイヤ8からなり、上記ボンディングワイヤ8等は、従来とは異なり、樹脂で封止されていない。このような未封止の光電変換基板部分E1 は、例えば、Optwell社等から市販品として入手(購入)することができる。
【0026】
つぎに、上記(2)の光導波路部分W1 の作製工程について説明する。すなわち、まず、アンダークラッド層1を形成する際に用いる平板状の基台10〔図3(a)参照〕を準備する。この基台10の形成材料としては、例えば、ガラス,石英,シリコン,樹脂,金属等があげられる。なかでも、ステンレス製基板が好ましい。ステンレス製基板は、熱に対する伸縮耐性に優れ、上記光導波路装置の製造過程において、様々な寸法が設計値に略維持されるからである。また、基台10の厚みは、例えば、20μm〜5mmの範囲内に設定される。
【0027】
ついで、図3(a)に示すように、上記基台10の表面の所定領域に、アンダークラッド層1を形成する。このアンダークラッド層1の形成材料としては、熱硬化性樹脂または感光性樹脂があげられる。上記熱硬化性樹脂を用いる場合は、その熱硬化性樹脂が溶媒に溶解しているワニスを塗布した後、それを加熱することにより、アンダークラッド層1に形成する。一方、上記感光性樹脂を用いる場合は、その感光性樹脂が溶媒に溶解しているワニスを塗布した後、それを紫外線等の照射線で露光することにより、アンダークラッド層1に形成する。アンダークラッド層1の厚みは、好ましくは10〜50μmの範囲内に設定される。
【0028】
つぎに、図3(b)に示すように、上記アンダークラッド層1の表面に、フォトリソグラフィ法により所定パターンのコア2を形成する。このコア2の形成材料としては、好ましくは、パターニング性に優れた感光性樹脂が用いられる。その感光性樹脂としては、例えば、アクリル系紫外線硬化樹脂,エポキシ系紫外線硬化樹脂,シロキサン系紫外線硬化樹脂,ノルボルネン系紫外線硬化樹脂,ポリイミド系紫外線硬化樹脂等があげられる。また、コア2の断面形状は、例えば、パターニング性に優れた台形または長方形である。コア2の幅は、好ましくは10〜500μmの範囲内に設定される。コア2の厚み(高さ)は、好ましくは30〜100μmの範囲内に設定される。
【0029】
なお、上記コア2の形成材料としては、上記アンダークラッド層1および下記オーバークラッド層3〔図3(c)参照〕の形成材料よりも屈折率が高く、伝播する光の波長で透明性が高い材料が用いられる。上記屈折率の調整は、上記アンダークラッド層1,コア2,オーバークラッド層3の各形成材料である樹脂に導入する有機基の種類および含有量の少なくとも一方(種類および/または含有量)を変化させることにより、適宜、増加ないし減少させることができる。例えば、環状芳香族性の基(フェニル基等)を樹脂分子中に導入するか、あるいはその芳香族性基の樹脂分子中の含有量を増大させることにより、屈折率を増大させることができる。他方、直鎖または環状脂肪族性の基(メチル基,ノルボルネン基等)を樹脂分子中に導入するか、あるいはその脂肪族性基の樹脂分子中の含有量を増大させることにより、屈折率を減少させることができる。
【0030】
ついで、図3(c)に示すように、まず、上記コア2を被覆するように、オーバークラッド層3を形成する。このオーバークラッド層3の形成材料としては、上記アンダークラッド層1と同様の熱硬化性樹脂または感光性樹脂が用いられ、上記アンダークラッド層1と同様にして形成される。オーバークラッド層3の厚み(コア2の頂面からの厚み)は、好ましくは25〜1500μmの範囲内に設定される。
【0031】
そして、図4(a)に示すように、上記オーバークラッド層3の、コア2と反対側の面〔図4(a)では上面)に、レーザ等による切削により、凹部3aを形成する。この凹部3aの開口部および底面は、前記光電変換基板部分E1 における半導体チップ7の発光部7aまたは受光部の全体、およびボンディングワイヤ8のループ部8aのかなりの部分が入る形状に設定される(図1参照)。上記凹部3aの底面は、図4(a)では、平坦状であるが、U字状等でもよい。また、上記凹部3aの底面(最低面)とコア2の頂面との間の厚み(最薄部の厚み)Tは、好ましくは10μm以下であり、さらに好ましくは1〜5μmの範囲内である。上記凹部3aの深さは、オーバークラッド層3の厚みに応じて、最薄部の厚みTが上記範囲内の所定値となるよう、適宜設定される。
【0032】
ついで、図4(b)に示すように、アンダークラッド層1から基台10〔図4(a)参照〕を剥離する。そして、アンダークラッド層1の、コア2と反対側の面〔図4(b)では下面〕のうち、上記オーバークラッド層3の凹部3aに対応する位置に、その先端がコア2を通ってオーバークラッド層3に達する逆V字状の切削部4を形成する。この切削部4の形成では、切削面を、上記コア2の軸方向に対して45°の傾斜面に形成し、その傾斜面から、上記切削により削られたコア2の部分を露呈させ、その露呈部の内側を反射面2aに形成する。この切削部4の形成方法としては、刃先角度90°のV字型刃先のダイシングブレードを用いた切削、またはレーザによる切削等があげられる。そして、上記逆V字状の切削部4は、オーバークラッド層3を貫通しないようにすることが好ましい。貫通すると、光導波路部分W1 の片側〔例えば、図4(b)の右側〕が切断されてなくなるため、つぎの工程において、光電変換基板部分E1 〔図5(b)参照〕を固定するスペースが少なくなり、光電変換基板部分E1 を固定し難くなるからである。このようにして、上記(2)の光導波路部分W1 の作製工程が完了する。
【0033】
つぎに、前記(3)の、上記光電変換基板部分E1 を上記光導波路部分W1 に固定する工程について説明する。すなわち、まず、この実施の形態では、図5(a)に示すように、上記光電変換基板部分E1 の基板5の各隅部に、貫通孔5aを形成し、その各貫通孔5aに柱体Pの上端部分を嵌合させる。上記柱体Pは、半導体チップ7が実装されている側に、突出した状態に位置決めし、その突出長さは、半導体チップ7の突出長さよりも短くする。
【0034】
そして、図5(b)に示すように、上記光電変換基板部分E1 の半導体チップ7の発光部7aまたは受光部を、光導波路部分W1 の上記反射面2aに向けた状態にする。さらに、上記オーバークラッド層3の凹部3a内に、上記半導体チップ7の発光部7aまたは受光部を位置決めするとともに、上記ボンディングワイヤ8のループ部8aの一部を位置決めする。そして、上記光電変換基板部分E1 における柱体Pの底面を、上記オーバークラッド層3の凹部3aの周縁部に、接着剤等で固定する。このようにして、上記(3)の、上記光電変換基板部分E1 を上記光導波路部分W1 に固定する工程が完了する。
【0035】
なお、上記実施の形態では、上記オーバークラッド層3の凹部3a内に、半導体チップ7の発光部7aまたは受光部の全体、およびボンディングワイヤ8のループ部8aのかなりの部分を位置決めしたが、その凹部3a内への位置決めは、半導体チップ7の発光部7aまたは受光部の少なくとも一部、およびボンディングワイヤ8のループ部8aの少なくとも一部であればよい。もちろん、上記凹部3a内に、半導体チップ7の全体およびボンディングワイヤ8の全体を位置決めしてもよい。
【0036】
また、上記実施の形態では、上記オーバークラッド層3に凹部3aを形成した後に、アンダークラッド層1側に逆V字状の切削部4を形成したが、これらの形成順序は、上記と逆でもよいし、同時でもよい。
【0037】
さらに、上記実施の形態では、オーバークラッド層3の凹部3aを、オーバークラッド層3を形成した後に、レーザ等による切削により形成したが、型成形によりオーバークラッド層3と同時に形成してもよい。
【0038】
そして、上記実施の形態では、光電変換基板部分E1 の固定手段として、光電変換基板部分E1 に柱体Pを設けたが、その柱体Pに代えて、基板5の周縁部に沿う枠体を設けてもよい。また、上記柱体Pに相当する突起を、オーバークラッド層3を型成形により形成する際に、オーバークラッド層3と一体的に、オーバークラッド層3の形成材料で形成してもよい。この場合、成形型として、上記突起を形成するための窪みを有するものが用いられる。
【0039】
また、上記実施の形態では、光電変換基板部分E1 を未封止のものとしたが、樹脂で封止してもよい。その場合、上記オーバークラッド層3の凹部3aの形状に対応して封止した後に、光導波路部分W1 に固定してもよいし、光導波路部分W1 に固定した後に、両者の隙間を樹脂で封止してもよい。前者の場合は、封止後に固定されるため、固定作業中に、半導体チップ7を保護することができるとともに、半導体チップ7を基板5から脱落させないようにすることができる。後者の場合は、固定後に封止されるため、凹部3aの表面と封止樹脂部の表面とが接着し、光電変換基板部分E1 の固定が強固になる。
【0040】
つぎに、実施例について従来例と併せて説明する。但し、本発明は、実施例に限定されるわけではない。
【実施例】
【0041】
〔アンダークラッド層,オーバークラッド層の形成材料〕
脂環骨格を有するエポキシ系紫外線硬化性樹脂(アデカ社製、EP4080E)(成分A)100重量部、光酸発生剤(サンアプロ社製、CPI−200K)(成分B)2重量部を混合することにより、アンダークラッド層およびオーバークラッド層の形成材料を調製した。
【0042】
〔コアの形成材料〕
フルオレン骨格を含むエポキシ系紫外線硬化性樹脂(大阪ガスケミカル社製、オグソールEG)(成分C)40重量部、フルオレン骨格を含むエポキシ系紫外線硬化性樹脂(ナガセケムテックス社製、EX−1040)(成分D)30重量部、1,3,3−トリス{4−〔2−(3−オキセタニル)〕ブトキシフェニル}ブタン(成分E)30重量部、上記成分B:1重量部、乳酸エチル41重量部を混合することにより、コアの形成材料を調製した。
【0043】
〔光電変換基板部分の準備〕
半導体レーザ(発光素子)がボンディングワイヤでリード電極と電気的に接続されている未封止の光電変換基板部分(Optwell社製、商品名『SM85−2N001』)を購入した。
【0044】
〔光導波路部分の作製〕
まず、ステンレス製基板の表面に、上記アンダークラッド層の形成材料をアプリケーターにより塗布した後、紫外線照射による露光を行うことにより、厚み20μmのアンダークラッド層(波長830nmにおける屈折率=1.510)を形成した。
【0045】
ついで、上記アンダークラッド層の表面に、上記コアの形成材料をアプリケーターにより塗布した後、乾燥処理を行い、感光性樹脂層を形成した。つぎに、コアのパターンと同形状の開口パターンが形成されたフォトマスクを介して、上記感光性樹脂層を紫外線照射により露光した後、加熱処理を行った。つぎに、現像液を用いて現像することにより、未露光部分を溶解除去した後、加熱処理を行うことにより、幅20μm、高さ50μmの断面長方形のコア(波長830nmにおける屈折率=1.592)を形成した。
【0046】
つぎに、上記コアを被覆するように、上記アンダークラッド層の表面に、上記オーバークラッド層の形成材料をアプリケーターにより塗布した後、紫外線照射による露光を行うことにより、コアの頂面からの厚み1000μmのオーバークラッド層(波長830nmにおける屈折率=1.510)を形成した。そして、上記オーバークラッド層の表面(コアと反対側の面)に、レーザによる切削により、深さ990μm(凹部の底面とコアの頂面との間の厚み10μm)の凹部を形成した。
【0047】
その後、アンダークラッド層の裏面からステンレス製基板を剥離した。そして、そのアンダークラッド層の裏面(コアと反対側の面)のうち、上記オーバークラッド層の凹部に対応する位置に、刃先角度90°のV字型刃先のダイシングブレードを用いた切削により、逆V字状の切削部を形成した。これにより、上記切削部の切削面(上記コアの軸方向に対して45°の傾斜面)から、上記切削により削られたコアの部分を露呈させ、その露呈部の内側を反射面に形成した。なお、この逆V字状の切削部の先端は、オーバークラッド層の凹部の底面とコアの頂面との間に位置決めした。このようにして、光導波路部分を作製した。
【0048】
〔光電気混載モジュールの製造〕
まず、上記光電変換基板部分の基板の各隅部に、孔部を形成し、その各孔部に、上記オーバークラッド層と同一の形成材料からなる柱体の上端部分を嵌合させた。ついで、その光電変換基板部分の半導体レーザの発光部を、上記光導波路部分の上記反射面に向けた状態にし、上記オーバークラッド層の凹部内に、上記半導体レーザの発光部を位置決めするとともに、上記ボンディングワイヤのループ部の一部を位置決めした。この位置決めは、上記半導体レーザの発光部から光を発光させた状態で、自動調芯機を用い、光電変換基板部分の位置を変えながら、上記反射面での反射を経てコアの先端面から出射した光の光量をモニタリングし、その光量が最大となった位置で行った。そして、その位置決めした状態で、上記光電変換基板部分における柱体の底面を、上記オーバークラッド層の凹部の周縁部に、接着剤で固定した。このようにして、光電気混載モジュールを製造した。
【0049】
〔従来例〕
上記実施例において、光電変換基板部分のボンディングワイヤ,半導体レーザ,リード電極を、透明樹脂で封止した。また、光導波路部分は、オーバークラッド層に凹部を形成していないものとした。そして、光導波路部分のオーバークラッド層の表面部分に、透明な接着剤層を介して、光電変換基板部分の封止樹脂部を接着した。それ以外は、上記実施例と同様にして、光電気混載モジュールを製造した。
【0050】
〔半導体レーザの発光部(下端面)からコアの軸(反射面の中心)までの距離〕
半導体レーザの発光部(下端面)からコアの軸(反射面の中心)までの距離は、実施例が60μm、従来例が200μmであった。
【0051】
〔光損失〕
上記実施例および従来例の光電気混載モジュールの光電変換基板部分に、その光電変換基板部分を駆動させるドライバを接続した。そして、半導体レーザの発光部から赤外光を発光させ、光導波路部分の反射面での反射を経て、コアの先端面から出射した赤外光を凸レンズで集光し、その強度をパワーメータ(アドバンテスト社製、OPTICAL SENSOR Q 82214)で測定した。そして、下記の式により、光損失を算出した。その結果、光損失は、実施例が2.5dB、従来例が3.1dBであった。
【0052】
【数1】

【0053】
その結果、光損失は、実施例が2.5dB、従来例が3.1dBであり、実施例の方が小さいことがわかった。
【0054】
また、オーバークラッド層の凹部を、上記実施例のレーザによる切削に代えて、型成形によりオーバークラッド層と同時に形成した場合も、上記実施例と同様の結果を得た。
【0055】
〔屈折率の測定〕
なお、上記光電気混載モジュールにおける、アンダークラッド層等の屈折率は、つぎのようにして測定した。すなわち、上記アンダークラッド層(オーバークラッド層),コアの各形成材料を、それぞれシリコンウエハ上にスピンコートにより成膜して、屈折率測定用のサンプルを作製し、プリズムカプラー(サイクロン社製、SPA−400)を用いて測定した。
【0056】
〔寸法の測定〕
また、上記光電気混載モジュールにおける、コア,オーバークラッド層の凹部等の寸法は、製造した光電気混載モジュールを、ダイサー式切断機(DISCO社製、DAD522)を用いて切断し、その切断面をレーザ顕微鏡(キーエンス社製)を用いて測定した。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の光電気混載モジュールは、タッチパネルにおける指等の触れ位置の検知手段、または音声や画像等のデジタル信号を高速で伝送,処理する情報通信機器,信号処理装置等に用いることができる。
【符号の説明】
【0058】
1 光電変換基板部分
1 光導波路部分
2 コア
2a 反射面
3 オーバークラッド層
3a 凹部
7 半導体チップ
7a 発光部
8 ボンディングワイヤ
8a ループ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を伝達するコアと,このコアを挟む第1および第2のクラッド層を有する光導波路部分と、光電変換用の半導体チップと,リード電極と,これらを電気的に接続するボンディングワイヤを有する光電変換基板部分とを備え、上記コアの一部に、光を反射して上記コアと上記半導体チップとの間の光伝達を可能とする反射面が形成されている光電気混載モジュールであって、上記光導波路部分の第1のクラッド層の、コアと反対側の面に凹部が形成され、この凹部内に、上記光電変換基板部分の半導体チップの発光部または受光部の少なくとも一部が位置決めされているとともに、上記ボンディングワイヤのループ部の少なくとも一部が位置決めされ、その状態で、上記光電変換基板部分と上記光導波路部分とが一体化されていることを特徴とする光電気混載モジュール。
【請求項2】
ボンディングワイヤ,半導体チップおよびリード電極が樹脂封止されていない請求項1記載の光電気混載モジュール。
【請求項3】
光を伝達するコアと,このコアを挟む第1および第2のクラッド層を有する光導波路部分と、光電変換用の半導体チップと,リード電極と,これらを電気的に接続するボンディングワイヤを有する光電変換基板部分とを備え、上記コアの一部に、光を反射して上記コアと上記半導体チップとの間の光伝達を可能とする反射面が形成されている、請求項1記載の光電気混載モジュールの製造方法であって、上記光導波路部分の第1のクラッド層の、コアと反対側の面に凹部を形成する工程と、この凹部内に、上記光電変換基板部分の半導体チップの発光部または受光部の少なくとも一部を位置決めするとともに、上記ボンディングワイヤのループ部の少なくとも一部を位置決めする工程と、上記位置決め後、上記光電変換基板部分と上記光導波路部分とを一体化する工程とを備えていることを特徴とする光電気混載モジュールの製造方法。
【請求項4】
第1のクラッド層に形成する凹部を、第1のクラッド層形成後にレーザによる切削により成形するか、または型成形により第1のクラッド層と同時に形成する請求項3記載の光電気混載モジュールの製造方法。
【請求項5】
ボンディングワイヤ,半導体チップおよびリード電極を樹脂封止しない請求項3または4記載の光電気混載モジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−64910(P2011−64910A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214915(P2009−214915)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】