入力インタフェース回路、集積回路装置および電子機器
【課題】信号入力端子に静電気ノイズが印加された場合に、そのノイズの内部回路への伝達を未然に、かつ確実に防止することができる入力インタフェース回路を提供すること。
【解決手段】ノイズを検出するノイズ検出回路(200)と、ノイズが検出されたときに第1のスイッチ回路(SW1)をオフしてノイズ伝達を遮断する機能をもつノイズキャンセラ(300)と、を設ける。第1のスイッチ回路(SW1)がオフしているときは、第2のスイッチ回路(SW2)がオンして、直前の電圧をラッチする。ノイズ検出回路200に含まれるノイズ検出用トランジスタは、Nウエルの電位を適応的に最適化することができるフローティングNウエルトランジスタによって構成される。
【解決手段】ノイズを検出するノイズ検出回路(200)と、ノイズが検出されたときに第1のスイッチ回路(SW1)をオフしてノイズ伝達を遮断する機能をもつノイズキャンセラ(300)と、を設ける。第1のスイッチ回路(SW1)がオフしているときは、第2のスイッチ回路(SW2)がオンして、直前の電圧をラッチする。ノイズ検出回路200に含まれるノイズ検出用トランジスタは、Nウエルの電位を適応的に最適化することができるフローティングNウエルトランジスタによって構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力インタフェース回路、集積回路装置および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機などの電子機器が、帯電した操作者からの静電気放電にさらされると、電子機器が内蔵する集積回路装置のトランジスタが静電破壊する場合がある。このような静電破壊を防止するために、集積回路装置には静電破壊防止用の保護素子(保護ダイオード等)が設けられるのが一般的である。
【0003】
一方、操作者からの静電気放電によってトランジスタの静電破壊は生じないものの、電子機器の表示パネルの表示状態が異常状態になる等の誤動作が生じる場合がある。このような誤動作が生じると、電子機器の信頼性が損なわれることから、近年、静電気放電(ESD)による誤動作に関する耐性(ESDイミュニティ:Electro Static Discharge immunity)が重視される傾向にある。したがって、近年、集積回路装置に対してESDイミュニティテストが実施されることが多くなっている。
【0004】
図16は、ESDイミュニティテストの一例を説明するための図である。図16では、表示パネル8と、集積回路装置(表示ドライバ)10とが組み込まれている表示装置6に対して、静電気印加装置4によって、意図的に静電気(静電気放電:ESD)を印加し、誤動作(例えば、表示パネル8の表示に異常が生じる)が生じないかを、チェックしている。
【0005】
従来のESDパルスに起因する誤動作の防止回路としては、例えば、特許文献1に記載されるものがある。特許文献1では、ESDパルスに起因して異常信号が出力ピンから出力されると、フィードバック経路を介してその出力ピンの異常を検出してリセット信号を生成し、そのリセット信号によって、次段の電子機器等をリセットすることによって、で電子機器を異常状態から回復させる。
【特許文献1】特開2003−234647号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図17は、静電ノイズが信号入力端子に印加されることによって生じる回路ブロックの誤動作について説明するための回路図である。
【0007】
図示されるように、第1の回路(ブロックA)100と第2の回路(ブロックB)110が接続されている。第1の回路100(回路ブロックA)および第2の回路110(回路ブロックB)は共に、高電位電源(VD)と低電位電源(VSS)との間で動作する。
【0008】
第1の回路(ブロックA)100は、入力インタフェース回路であり、第2の回路(ブロックB)110は、例えば、メモリ(MR)を含むロジック回路である。第1の回路(ブロックA)の入力端子Xは、例えば、メモリ(MR)をリセットするためのリセット信号(「H」がアクティブレベル)RSPが入力されるリセット端子である。
【0009】
リセット信号(RSP)がローレベルのときに静電気ノイズ(EDP)が入力端子Xに印加されると、第1の回路(回路ブロックA)の出力レベルが反転し、このことは、アクティブレベル(「H」)のリセット信号(RSP)が入力されたのと同様の効果をもたらし、第2の回路(回路ブロックB)のメモリ(MR)は、誤ってリセットされることになる。
【0010】
このような問題は、入力端子Xが、例えば、チップイネーブル信号やチップセレクト信号を入力する端子(広義には、内部回路の動作に重大な影響を及ぼす信号が入力される端子)である場合にも生じ得る。
【0011】
特許文献1記載の技術は、出力ピンからの異常信号を検出し、誤ってリセットされた次段の回路を再リセットすることによって、事後的な救済措置を提供するものであり、次段の回路の誤ったリセットを未然に防止することはできない。
【0012】
本発明はこのような考察に基づいてなされたものであり、その目的は、信号入力端子に静電気ノイズが印加された場合に、その静電気ノイズの内部回路への伝達を未然に、かつ確実に防止することができる入力インタフェース回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)本発明の入力インタフェース回路の一態様は、入力端子に印加される高電位電源を超える電圧レベルのノイズまたは低電位電源より低い電圧レベルのノイズを検出してノイズ検出信号を出力するノイズ検出回路と、前記入力端子と、前記入力端子からの信号を受ける回路との間に設けられ、前記ノイズ検出信号がアクティブのときに、前記入力端子から前記回路への信号伝達を遮断するノイズキャンセラと、を有し、前記ノイズキャンセラは、前記入力端子と前記回路との間に設けられ、前記ノイズ検出信号がアクティブのときにオフし、非アクティブのときにオンする第1のスイッチ回路と、前記ノイズ検出信号がアクティブのときにオンし、非アクティブのときにオフする第2のスイッチ回路と、を含み、前記第1のスイッチ回路がオフし、前記第2のスイッチ回路がオンすると、前記第1のスイッチ回路の出力端の電圧を保持し、その保持した電圧を前記回路に供給する。
【0014】
入力端子に印加される静電気ノイズ等(ノイズの種類は静電気ノイズに限定されるものではなく、あらゆる種類のノイズを含む)の内部回路への伝達を防止するために、入力インタフェース回路にノイズキャンセラを設けるものである。ノイズキャンセラは、ノイズと正規の入力信号とを区別して検出するノイズ検出回路を有する。正規の入力信号は、高電位電源(VDD)と低電位電源(VSS)との間で動作するが、次段の回路の動作に重大な影響を与えるようなノイズは、VDDを超えるピーク電圧値あるいはVSSよりも低い電圧値をもつ場合が多く、その電圧レベルの差に着目して、ノイズ検出回路は、ノイズを正規の入力信号と区別して検出する。ノイズキャンセラは、入力信号を次段の回路に伝達する経路中に介在する第1のスイッチ回路を有し、ノイズが検出されたときには、その第1のスイッチ回路をオフしてノイズの伝達を完全に防止する。一方、第1のスイッチ回路がオフしているときは、第2のスイッチ回路をオンさせて、直前の電圧(ノイズがない状態の電圧)を保持し、その保持電圧を次段の回路に供給する。このように、ノイズが入力されると、そのノイズの検出結果に基づいてノイズを遮断すると共にノイズのない状態の電圧を出力するため、ノイズの次段の回路への伝達は確実に防止される。
【0015】
(2)本発明の入力インタフェース回路の他の態様では、前記ノイズ検出回路は、前記入力端子の電圧に応じて電位が調整されるフローティングNウエル領域に形成され、ゲートが前記高電位電源電圧のノードに接続され、ソースが前記入力端子に接続され、ドレインから信号が出力されるノイズ検出用PMOSトランジスタと、前記ノイズ検出用PMOSトランジスタの前記ドレインに一端が接続され、他端が前記低電位電源のノードに接続された、前記ノイズ検出信号を発生する抵抗素子と、を有する。
【0016】
ノイズ検出回路の具体的な構成の一例を明らかとしたものである。ゲートが電源電位(VDD)に接続されたノイズ検出用PMOSトランジスタは、ソース(第1の端子)の電位が(VDD+Vthp:VthpはPMOSトランジスタの閾値電圧)以上となったときのみオンするため、ノイズと正規の入力信号を区別して検出することができる。
【0017】
また、ノイズが入力されてノイズ検出PMOS用トランジスタがオンしたときに、ソースとウエル(広義には基板)との間の寄生ダイオードがオンできないように、フローティングNウエル領域にソース/ドレインを形成する。ここで、「フローティングウエル領域」とは、「電位が固定されておらず、適応的にその電位を調整可能なウエル領域(広義には半導体基板であり、トランジスタ要素が形成される半導体領域(一般的にはN型またはP型のいずれか)」である。ウエルの電位を固定した場合、ノイズが入力されたときに、ノイズ検出用PMOSトランジスタのソースとNウエル(広義にはN基板)との間の寄生ダイオードがオンして過渡電流が流れる。このとき、電流量を制限する要素が何も無いことから過大な電流が流れて、例えば配線が溶断し素子の破壊が生じ、あるいはラッチアップの要因となる場合がある。また、寄生ダイオードがオンすると、そのダイオードの順方向電圧分だけNウエル電位が低下し、これによってノイズ検出用PMOSトランジスタのVthn(閾値電圧)に変動が生じる。そこで、Nウエル領域の電位を固定せずに、状況に応じて電位を調整可能とし、これによって寄生ダイオードのオンを阻止し、過大な電流による素子破壊や閾値の変動等を防止するものである。
【0018】
また、ノイズの検出信号を生成する抵抗素子は、以下の4つの機能を併せ持つ。すなわち、「プルダウン抵抗(ノイズがないときにノイズ検出経路の電圧を所定電位に固定する働きをもつ抵抗)」としての機能と、「放電抵抗(ノイズ入力時において、その過大なノイズエネルギを交流接地に速やかに逃がす働きをもつ抵抗)」としての機能と、「センシング抵抗(ノイズ電流が流れているときにノイズ検出経路の電圧レベルを変化させることによってノイズ検出信号を生成する働きをもつ抵抗)」としての機能と、「時定数設定抵抗(ノイズ検出信号がアクティブレベルになった後に、非アクティブレベルに復帰するまでの復帰時間を調整する働きをもつ抵抗)」としての機能と、を併せ持つ。このように、本態様によれば、簡素化された構成でもって、回路に悪影響を生じさせることなく、ノイズを迅速かつ確実に検出することができ、さらにノイズが去った後のノイズキャンセラの復帰タイミングも調整し得る、優れたノイズ検出回路を実現することができる。
【0019】
(3)本発明の入力インタフェース回路の他の態様では、前記ノイズ検出回路は、前記入力端子の電圧に応じて電位が調整されるフローティングPウエル領域に形成され、ゲートが前記低電位電源のノードに接続され、ソースが前記入力端子に接続され、ドレインから信号が出力されるノイズ検出用NMOSトランジスタと、前記ノイズ検出用NMOSトランジスタの前記ドレインに一端が接続され、他端が前記高電位電源電圧のノードに接続された、前記ノイズ検出信号を発生する抵抗素子と、を有する。
【0020】
本態様では、前項の態様とは逆の導電型のウエル(フローティングPウエル)を使用し、ノイズ検出用トランジスタとしてNMOSトランジスタを使用する。ノイズ検出用NMOSトランジスタのゲートは低電位電源電圧(VSS:例えばGND)に接続される。これによってVSS以下の負極性のノイズを検出することが可能となる。得られる効果は、前項の態様と実質的に同じである。
【0021】
(4)本発明の入力インタフェース回路の他の態様では、ゲートが前記高電位電源電圧のノードに接続され、ソースが前記入力端子に接続され、ドレインが前記フローティングNウエル領域に接続され、前記ノイズ検出用PMOSトランジスタがオンすると、前記入力端子の印加電圧を前記フローティングNウエル領域に印加し、これによって前記フローティングNウエル領域の電位を前記入力端子の電位とする、前記フローティングNウエル領域の電位調整用の第1のPMOSトランジスタを有する。
【0022】
高電位電源電圧(HVDD)を超える正極性のノイズがノイズ検出用PMOSトランジスタのソース(第1の端子)に印加されたときに、電位調整用の第1のPMOSトランジスタを経由して、フローティングNウエル領域にも同じノイズ電圧を印加し、これによって、ソースとウエル領域間の寄生ダイオードのアノードとカソードの各電位を同電位として寄生ダイオードのオンを防止するものである。これによって、過渡電流が流れることを防止でき、また、ノイズ検出用PMOSトランジスタのVthp(閾値電圧)の変動を防止することができる。
【0023】
(5)本発明の入力インタフェース回路の他の態様では、ゲートが前記低電位電源に接続され、ソースが前記入力端子に接続され、ドレインが前記フローティングPウエル領域に接続され、前記ノイズ検出用NMOSトランジスタがオンすると、前記入力端子の印加電圧を前記フローティングPウエル領域に印加し、これによって前記フローティングPウエル領域の電位を前記入力端子の電位とする、前記フローティングPウエル領域の電位調整用の第1のNMOSトランジスタを有する。
【0024】
低電位電源電圧(VSS)よりも低い負極性のノイズがノイズ検出用NMOSトランジスタのソース(第1の端子)に印加されたときに、電位調整用の第1のNMOSトランジスタを経由して、フローティングPウエル領域にも同じノイズ電圧を印加し、これによって、ソースとPウエル領域間の寄生ダイオードのアノードとカソードの各電位を同電位として寄生ダイオードのオンを防止するものである。これによって、過渡電流が流れることを防止でき、また、ノイズ検出用NMOSトランジスタのVthn(閾値電圧)の変動を防止することができる。
【0025】
(6)本発明の入力インタフェース回路の他の態様では、ゲートが前記入力端子に接続され、ソースが前記高電位電源電圧のノードに接続され、ドレインが前記フローティングNウエル領域に接続され、前記ノイズ検出用PMOSトランジスタおよび前記フローティングNウエル領域の電位調整用の第1のPMOSトランジスタが共にオフすると、前記高電位電源電圧を前記フローティングNウエル領域に印加する、前記フローティングNウエル領域の電位調整用の第2のPMOSトランジスタを、さらに有する。
【0026】
フローティングNウエルを用いる態様において、電位調整用の第1のPMOSトランジスタがオフしたとき(このときはノイズ検出用PMOSトランジスタもオフしている)は、フローティングNウエル領域の電位を固定できないが、この場合に、何らかの回路動作上の不都合が生じる場合がないとは言えない。そこで、電位調整用の第2のPMOSトランジスタを追加し、第1のPMOSトランジスタがオフのときは、第2のPMOSトランジスタをオンさせて、この第2のPMOSトランジスタを経由してフローティングNウエル領域の電位を高電位電源電圧(HVDD)に調整し、ソース・Nウエル間の寄生ダイオードを逆バイアスすることによってオンできないようにして回路の安定性(信頼性)の万全を図るものである。
【0027】
(7)本発明の入力インタフェース回路の他の態様では、ゲートが前記入力端子に接続され、ソースが前記低電位電源に接続され、ドレインが前記フローティングPウエル領域に接続され、前記ノイズ検出用NMOSトランジスタおよび前記フローティングPウエル領域の電位調整用の第1のNMOSトランジスタが共にオフすると、前記低電位電源電圧を前記フローティングPウエル領域に印加する、前記フローティングPウエル領域の電位調整用の第2のNMOSトランジスタを、さらに有する。
【0028】
フローティングPウエルを用いる態様において、第1のNMOSトランジスタがオフのときは、第2のNMOSトランジスタをオンさせて、この第2のNMOSトランジスタを経由してフローティングPウエル領域の電位を低電位電源電圧(VSS:例えばGND)に調整し、ソース・Pウエル間の寄生ダイオードを逆バイアスすることによってオンできないようにして回路の安定性(信頼性)の万全を図るものである。
【0029】
(8)本発明の入力インタフェース回路の他の態様では、前記ノイズ検出用PMOSトランジスタは、前記入力端子に接続されている前記ソース端子に、前記高電位電源電圧に前記ノイズ検出用PMOSトランジスタの閾値電圧を加算した電圧以上の電圧が印加されることによってオンする。
【0030】
ノイズ検出用PMOSトランジスタは、ソース(第1の端子)の電位が(HVDD+Vthp)以上のときにのみオンする。これによって、正規の信号と正極性のノイズとを区別して検出することができる。
【0031】
(9)本発明の入力インタフェース回路の他の態様では、前記ノイズ検出用NMOSトランジスタは、前記入力端子(X)に接続されている前記ソース端子に、前記低電位電源から前記ノイズ検出用NMOSトランジスタの閾値電圧を減算した電圧以下の電圧が印加されることによってオンする。
【0032】
ノイズ検出用NMOSトランジスタは、ソース(第1の端子)の電位が(VSS−Vthn)以下のときにのみオンする。これによって、正規の信号と負極性のノイズとを区別して検出することができる。
【0033】
(10)本発明の入力インタフェース回路の他の態様では、前記ノイズキャンセラは、前記第1のスイッチ回路としてのトランスファーゲートと、前記第2のスイッチ回路としてのトランスファーゲートと、前記第1のスイッチ回路の出力端および前記第2のスイッチ回路の共通接続点に入力端が接続された第1のインバータと、前記第1のインバータの出力端に入力端が接続され、出力端が前記第2のスイッチ回路の入力端に接続された第2のインバータと、を有し、前記第1のスイッチ回路の出力信号を前記回路に向けてスルーするか、前記第1のスイッチ回路の出力信号を前記第1および第2のインバータならびに前記第2のスイッチ回路を経由する正帰還経路でラッチするかを切換え可能なスルーラッチと、前記抵抗素子から得られる前記ノイズ検出信号を受ける第3のインバータと、前記第3のインバータの出力端に入力端に接続された第4のインバータと、を有し、記第3のインバータの出力端と前記第4のインバータの入力端との共通接続点ならびに前記第4のインバータの出力端の各々から、前記第1のスイッチ回路および前記第2のスイッチ回路を相補的にオン/オフさせるための切換制御信号を生成する切換回路と、を有する。
【0034】
ノイズキャンセラの具体的な回路構成例を明確化したものである。すなわち、本態様のノイズキャンセラは、第1および第2のスイッチ回路を含んで構成されるスルーラッチ(保持回路)と、切換回路と、を有する。切換回路は、通常状態には第1のスイッチ回路をオンして入力信号をそのままスルーラッチの出力端子から出力し、ノイズ検出回路によってノイズが検出されたときには第1のスイッチ回路をオフし、第2のスイッチ回路をオンすることで、ノイズが重畳された入力信号の伝送を遮断し、同時に、保持回路において保持されている直前の信号をスルーラッチの出力端子から出力する。このように、汎用性ある簡単な回路によってノイズキャンセル回路を構成することができる。このことは、省電力化や省スペース化の点で有利である。
【0035】
(11)本発明の入力インタフェース回路の他の態様では、前記入力端子と前記第1のスイッチとの間に設けられたタイミング調整用の遅延回路を、さらに有する。
【0036】
第1および第2のスイッチ回路を、どのようなタイミングで相補的にオン/オフさせるかは、ノイズの確実な遮断の実現、ならびにノイズの継続期間において第1のスイッチ回路をオン状態に復帰させてしまう誤動作の確実な防止の観点から重要である。本態様では、入力端子と第1のスイッチ回路との間にタイミング調整用の遅延回路を設ける。これによって、ノイズが第1のスイッチ回路に到達するのが遅れる。よって、ノイズが第1のスイッチ回路に到達するよりも前に第1のスイッチ回路がオフすることを保障することができ、ノイズの確実な遮断が実現される。
【0037】
(12)本発明の入力インタフェース回路の他の態様では、前記入力端子にノイズが印加されたことによって前記第1のスイッチ回路の入力端の電位が変化する第1のタイミングよりも前の第2のタイミングにて、前記第1のスイッチ回路がオン状態からオフ状態に移行するように、かつ、前記入力端子にノイズが印加されなくなったことによって前記第1のスイッチ回路の入力端の電位が変化する第3のタイミングよりも後の第4のタイミングにて、前記第1のスイッチ回路がオフ状態からオン状態に復帰するように、前記遅延回路の遅延量ならびに前記抵抗素子の抵抗値が設定される。
【0038】
タイミング調整用の遅延回路の遅延量、ならびにノイズを検出する抵抗素子(タイミング調整用の抵抗を兼ねる)の抵抗値の双方を最適化することによって、ノイズ検出時には、ノイズが第1のスイッチ回路に到達する前に第1のスイッチ回路がオフし、ノイズが印加されなくなったときは、ノイズが十分に抑制された(ノイズ印加が確実になくなった)後に第1のスイッチ回路がオン状態に復帰するように、タイミングを調整することができる。これによって、ノイズの確実な遮断、ならびにノイズの継続期間において第1のスイッチ回路をオン状態に復帰させてしまう誤動作の確実な防止が実現される。
【0039】
(13)本発明の入力インタフェース回路の他の態様では、前記抵抗素子の一端に接続されたタイミング調整回路を、さらに有し、前記タイミング調整回路は、前記タイミング調整用の遅延回路の遅延量よりも大きな遅延量をもつ第1のパスと、前記遅延回路の前記遅延量よりも小さな遅延量をもつ第2のパスと、前記第1のパスからの信号および前記第2のパスからの信号を受けて一つの信号を出力するゲート回路と、を有し、前記入力端子へのノイズ印加に伴って前記ノイズ検出用トランジスタがオンして前記抵抗素子の一端の電圧レベルが変化すると、その電圧変化は、前記第2のパスを経由して伝達され、前記入力端子に前記ノイズが印加されなくなったことに伴って前記ノイズ検出用トランジスタがオフして前記抵抗素子の一端の電圧レベルが変化すると、その電圧変化は、前記第1のパスを経由して伝達される。
【0040】
前項の態様では、第1のスイッチ回路をオフからオンに復帰させるタイミングは、抵抗素子の時定数に依存していたが、本態様では、抵抗素子の時定数によるタイミング調整の代わりに、遅延の大きな第1のパスと、遅延が小さい第2のパスと、ゲート回路(例えばNORゲート:論理和ゲートを基本とするゲート回路)と、によって構成されるタイミング調整回路によってタイミングを調整する。これによって、タイミング調整をより高精度に行うことができる。本態様では、タイミング調整回路は、ノイズ検出用のパスに挿入されており、ノイズが検出されたときは、正規の信号パスに挿入されたタイミング調整用の遅延回路よりも小さな遅延量の第1のパスを経由して、迅速にノイズ検出信号が伝達され、第1のスイッチ回路は速やかにオフしてノイズが確実に遮断される。一方、ノイズ検出信号が検出されなくなったときは、その電圧変化は、正規の信号パスに挿入されたタイミング調整用の遅延回路よりも大きな遅延量の第2のパスを経由して伝達される。よって、第1のスイッチ回路の入力端の電位がノイズが無い状態の電位に戻った後に第1のスイッチ回路がオフからオンに切換えられることになり、ノイズが継続している期間に、第1のスイッチ回路がオンに復帰する誤動作が生じず、よってノイズ除去動作に万全を期すことができる。
【0041】
(14)本発明の入力インタフェース回路の他の態様では、前記入力端子と前記第1のスイッチ回路との間に設けられたタイミング調整回路をさらに有し、前記タイミング調整回路は、タイミング調整のための所定の遅延量を有する第1の遅延パスと、前記第1の遅延パスよりも小さな遅延量をもつ第2のパスと、前記第1のパスからの信号および前記第2のパスからの信号を受けて一つの信号を出力するゲート回路と、を有し、前記入力端子へのノイズ印加に伴って前記タイミング調整回路の入力端の電圧レベルが変化すると、その電圧変化は、前記第1のパスを経由して伝達され、前記入力端子に前記ノイズが印加されなくなったことに伴って前記タイミング調整回路の入力端の電圧レベルが変化すると、その電圧変化は、前記第2のパスを経由して伝達される。
【0042】
本態様では、タイミング調整回路を、正規の信号の伝達経路に挿入する。このタイミング調整回路は、所定の遅延量をもつ第1のパスと、遅延が小さい第2のパスと、ゲート回路(例えばNANDゲート:論理積ゲートを基本とするゲート回路)と、によって構成する。入力端子に印加されたノイズは、第1のパスを経由して遅延して伝達されるため、第1のスイッチ回路にノイズが到達する前に、第1のスイッチ回路を余裕をもってオフさせることができる。ノイズが印加されなくなったときは、その電圧変化は遅延量が小さな第2のパスを経由して第1の回路スイッチに伝達される。よって、第1のスイッチ回路の入力端の電圧がノイズがないときの電位に戻った後に、第1のスイッチ回路をオフからオンに復帰させることがより容易に行える。
【0043】
(15)本発明の入力インタフェース回路の他の態様では、前記入力端子と前記第1のスイッチ回路とを結ぶ経路に挿入された、ヒステリシス特性をもつ入力バッファと、前記入力バッファの出力端に一端が接続された平滑コンデンサと、をさらに有する。
【0044】
上記の態様では、電源電圧を越える過大なノイズが入力端子に印加されたことを想定しているが、ノイズとしては、電源電圧を越えない小規模のノイズも想定される。このような小規模のノイズも除去するのが好ましい。そこで、正規の信号伝達経路に、入出力特性にヒステリシスをもつ入力バッファ(例えば、シュミット回路)と、平滑コンデンサと、を設ける。入力バッファは、ヒステリシス特性に起因して入力不感帯(つまり、入力信号のレベルが変動しても出力レベルが変化しない入力レンジ)をもっており、小規模のノイズの振幅が、この入力不感帯幅内に収まっていれば、入力バッファからは、その小規模ノイズは出力されない。また、万一、小規模ノイズが出力されたときには、平滑コンデンサによってノイズを平滑することによって、次段の回路に誤った制御信号(リセット信号やチップイネーブル信号等)が入力されることを防止することができる。これによって、入力インタフェース回路のノイズ除去機能の強化を図ることができる。
【0045】
(16)本発明の入力インタフェース回路の他の態様では、前記ノイズ検出回路の電源電圧と、前記入力端子からの信号を受ける回路の電源電圧は、別系統の電源電圧である。
【0046】
入力インタフェースにおいて、例えば、前段部分は第1の電源電圧で動作し、後段部分は別系統の第2の電源電圧で動作し、かつ、集積回路装置内の内部回路も第2の電源電圧で動作する回路系を想定する。別系統の電源電圧で動作する各回路ブロックでは、各回路が独立して動作し、ノイズも独立に発生することから、特にインタフェース回路におけるノイズ対策が重要である。本発明のノイズキャンセラ付きの入力インタフェース回路を採用することによって、別系統の電源系で動作する回路間の、静電気ノイズ等に起因する誤動作を確実に防止することができる。よって、回路の信頼性が向上する。
【0047】
(17)本発明の集積回路装置は、本発明の入力インタフェース回路を有する。
【0048】
本発明のインタフェース回路を搭載することによって、ノイズに起因する内部回路の重大な誤動作(例えば、メモリがリセットされるという誤動作)が生じることがない。よって、集積回路装置の信頼性が向上する。
【0049】
(18)本発明の電子機器は、本発明の集積回路装置を有する。
【0050】
本発明の集積回路装置を搭載することによって、ノイズに起因する電子機器の重大な誤動作(例えば、パネルの表示が消えるという誤動作)が生じることがない。よって、電子機器の信頼性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
次に、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成のすべてが、本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0052】
(第1の実施形態)
(入力インタフェース回路の全体構成)
図1は、本発明の入出力インタフェース回路の一例を示すブロック図である。入力部には通常静電保護回路が設けられているが、図1では、便宜上、記載を省略する。
【0053】
図示されるように、IC(集積回路装置)90は、リセット信号(RSP)等の制御信号(Vin)が入力される入力端子Xと、入力インタフェース回路(ブロックA)と、内部回路(例えば、メモリを有するゲートアレイからなるロジック回路:ブロックB)と、が設けられている。入力インタフェース回路(ブロックA)100は、例えば、集積回路装置90のパッド(外部接続端子)近傍に配置されるI/Oセル(入出力セル)である。
【0054】
図17で説明したように、正規の制御信号(Vin)の代わりにノイズ(静電気ノイズ等)が入力端子Xに入力されたときには、そのノイズによって、例えば、ブロックB内のメモリがリセットされる事態が発生する場合があるため、そのような事態の発生を確実に防止するために、入力インタフェース回路(ブロックA)には、ノイズ検出回路200と、ノイズキャンセラ500と、が設けられている。
【0055】
ノイズ検出回路200は、入力端子Xに入力されるノイズを、正規の入力信号(Vin)とは区別して検出する。正規の入力信号は、高電位電源(VDD)と低電位電源(VSS)との間で動作するが、次段の回路ブロックB(内部ロジック回路)110の動作に重大な影響を与えるようなノイズは、VDDを超えるピーク電圧値あるいはVSSよりも低い電圧値をもつ場合が多く、その電圧レベルの差に着目して、ノイズ検出回路200は、ノイズを正規の入力信号と区別して検出する(この点については、後述する)。
【0056】
ノイズキャンセラ500は、入力端子XとブロックB(内部ロジック回路)110とを結ぶ正規の信号経路に挿入された第1のスイッチ回路SW1と、第1のスイッチ回路SW1に対して相補的にオン/オフされる第2のスイッチ回路SW2と、2つのインバータ(INV1,INV2)と、スイッチSW1,SW2を相補的に切換える切換回路300と、を有する。
【0057】
切換回路300は、ノイズ検出回路200からのノイズ検出信号NLが非アクティブレベル(L)のときは第1のスイッチ回路SW1をオンとし、第2のスイッチ回路SW2をオフとし、また、ノイズ検出信号NLがアクティブレベル(H)のときは、第1のスイッチ回路SW1をオフとし、第2のスイッチ回路SW2をオンとする。
【0058】
第1のスイッチ回路SW1がオンのときは、入力端子Xに入力される正規の信号(Vin)はスルーされて次段のブロックB(内部ロジック回路)110に伝達される。
【0059】
入力端子Xにノイズが印加されると、第1のスイッチ回路SW1が迅速にオフし、ノイズのブロックBへの伝達が遮断される。第1のスイッチ回路SW1のオフと同時に第2のスイッチ回路SW2がオンし、これによって、スイッチSW2および2つのインバータ(INV1,INV2)を経由する正帰還経路が形成され、スイッチSW1の出力端の直前の電圧がラッチされ、そのラッチされた電圧がブロックB(内部ロジック回路)110に供給される。
【0060】
このように、図1の入力インタフェース回路によれば、ノイズが入力されると、そのノイズの検出結果に基づいてノイズを遮断すると共に、ノイズのない状態の電圧を出力するため、次段の回路ブロックBへのノイズ伝達は確実に防止される。
【0061】
(入力インタフェース回路の具体的な構成例と動作)
図2は、図1の入力インタフェース回路(ブロックA)の具体的な回路構成の一例を示す回路図である。
【0062】
図示されるように、ノイズ検出回路200は、ソース(第1の端子)が入力端子Xに接続され、ゲートが高電位電源電圧(HVDD)ノードに接続されたノイズ検出用のPチャネルトランジスタMP(Nウエルの電位を適応的に調整可能なフローティングNウエル領域に形成されたPtiMOSトランジスタFNWL)と、入力端子Xにノイズが印加されたときに、フローティングNウエル領域の電位を入力端子Xの電位と等しくするための電位調整用のPMOSトランジスタM61と、ノイズ検出用トランジスタMP(FNWL)のドレイン(第2の端子)に一端が接続され、他端が低電位電源電圧(VSS)ノードに接続される抵抗素子R1と、を有している。
【0063】
ノイズ検出用PMOSトランジスタMP(フローティングNウエルトランジスタFNWL)のソース/ドレインは、フローティングNウエル領域に形成される。ここで、「フローティングウエル領域」とは、「電位が固定されておらず、適応的にその電位を調整可能なウエル領域(広義には半導体基板であり、トランジスタ要素が形成される半導体領域:一般的にはN型またはP型のいずれか)」である。
【0064】
電位調整用トランジスタM61は、ノイズ検出用PMOSトランジスタMP(FNWL)と同一の製造プロセスで形成される同一サイズのトランジスタであり、ノイズ検出用PMOSトランジスタMP(FNWL)と同様に、ソースが入力端子Xに接続され、ゲートが高電位電源電圧(HVDD)ノードに接続されている。
【0065】
また、ノイズキャンセラ500は、正規の信号経路に挿入されたタイミング調整用の遅延回路800(INV6〜INV9によって構成される)と、入力信号のスルー/ラッチを切換えることが可能なスルーラッチ400と、2段のインバータ(INV4,INV5)によって構成される切換回路300(ノイズ検出経路のタイミング調整回路700を兼ねる)と、を有する。
【0066】
第1のスイッチ回路SW1は、一対のPMOSトランジスタP1/NMOSトランジスタN1を組み合わせて構成されるトランスファースイッチで構成され、同様に、第2のスイッチ回路SW2は、一対のPMOSトランジスタP2/NMOSトランジスタN2を組み合わせて構成されるトランスファースイッチで構成される。
【0067】
切換回路300を構成する初段のインバータINV4の出力端は、トランスファースイッチを構成するNMOSトランジスタN1のゲートおよびPMOSトランジスタP2のゲートに接続されており、切換回路300を構成する次段のインバータINV5の出力端は、トランスファースイッチを構成するPMOSトランジスタP1のゲートおよびNMOSトランジスタN2のゲートに接続されている。
【0068】
図2の入力インタフェース回路の動作は以下のとおりである。以下の説明において、VthpはPMOSトランジスタの閾値電圧である(同様に、VthnはNMOSトランジスタの閾値電圧である)。
【0069】
ゲートが高電位電源電位(HVDD)ノードに接続されたノイズ検出用PMOSトランジスタMP(フローティングNウエルトランジスタFNWL)は、ソース(第1の端子)の電位が(HVDD+Vthp)以上となったときのみオンし、正規の入力信号Vin(電圧レベルはVDDまたはVSS)が入力されるときはオフ状態を維持する。また、ノイズ検出用PMOSトランジスタMP(FNWL)は、高周波応答特性に優れたゲート接地のトランジスタであり、ノイズ印加時において高速なオンが可能である。
【0070】
VinがLレベル(非アクティブレベル)であるときに、入力端子Xに正極性のノイズが印加されると、入力端子Xの電圧レベルSLはローレベルからハイレベルに変化する。この電圧レベルの変化は、遅延回路800によって所定量の遅延を与えられて第1のスイッチ回路SW1に到達する。
【0071】
一方、入力端子Xへのノイズの印加によって、入力端子Xの電圧レベルSLがHVDD+Vthp以上に上昇すると、ノイズ検出用トランジスタMP(FNWL)がオンし、ノイズはドレイン(第2の端子)に伝達される。このとき、電位調整用トランジスタM61も同時にオンし、フローティングNウエルの電圧レベルがノイズ検出用トランジスタのソース(第1の端子)の電圧レベルと同じになり、よって、ソースとフローティングNウエル間に寄生するPN接合ダイオードD1がオンしない(この点については、図5,図6を用いて後述する)。
【0072】
Nウエルの電位が固定(例えばVSSに固定)されていたとすると、ノイズが入力されたときに、ノイズ検出用PMOSトランジスタMPのソースとNウエル(広義には基板)との間の寄生ダイオードD1がオンして過渡電流が流れる。このとき、電流量を制限する要素が何も無いことから過大な電流が流れて、例えば配線が溶断し素子の破壊が生じる場合があり、あるいはラッチアップの要因となる場合がある。
【0073】
また、寄生ダイオードD1がオンすると、そのダイオードの順方向電圧分だけNウエル電位が低下し、これによってノイズ検出用PMOSトランジスタの閾値電圧に変動が生じる。つまり、入力端子Xに印加される電圧レベルが、VDD+Vthp+Vf(Vfは寄生ダイオードの順方向電圧)よりも大きくないとノイズ検出用トランジスタMPがオンしないことになり、現実のノイズ検出電圧と設計値との間にずれが生じてしまう。
【0074】
そこで、Nウエル領域の電位を固定せずに、状況に応じて電位を調整可能とすると共に、上述のとおり、電位調整用のPMOSトランジスタM61を同時にオンさせてフローティングNウエルの電位をソースと同じ電位にし、寄生ダイオードD1のオンを阻止し、過大な電流による素子破壊やVthの変動を防止する。
【0075】
ノイズ検出用PMOSトランジスタMPがオンすると、抵抗素子R1の一端の電位(b点の電位)が上昇し、これによって、ノイズ検出信号がアクティブレベル(H)となる。
【0076】
ここで、ノイズの検出信号NLを生成する抵抗素子R1は、以下の4つの機能を併せ持つ。すなわち、「プルダウン抵抗:ノイズがないときにノイズ検出経路の電圧レベルをグランドに固定する働きをもつ抵抗)」としての機能と、「放電抵抗(ノイズ入力時において、その過大なノイズエネルギを交流接地に速やかに逃がし、ノイズ検出用トランジスタMP等の破壊を防ぐ働きをもつ抵抗)」としての機能と、「センシング抵抗(ノイズ電流が流れているときにノイズ検出経路の電圧レベルを変化させることによってノイズ検出信号NLを生成する働きをもつ抵抗)」としての機能と、「時定数設定抵抗(ノイズ検出信号がアクティブレベルになった後、非アクティブレベルに復帰するまでの復帰時間を調整する働きをもつ抵抗)」としての機能と、を併せ持つ。
【0077】
抵抗素子R1の抵抗値は、かなりの高抵抗に設定される。よって、ノイズが入力されたとき、b点(抵抗素子R1の一端)の電位は急速に立ち上り、これによって、速やかに第1のスイッチ回路SW1をオフすることができる。
【0078】
一方、ノイズが去った後は、電荷の接地への放電が緩やかであることから、b点の電位は徐々に立ち下がることになり、これによって、ノイズが十分に低下した後に第1のスイッチ回路SW1をオンに復帰させることができる(この点については、図4を用いて、後により具体的に説明する)。
【0079】
このように、抵抗素子R1は多くの機能を集約しており、これによって、簡素化された構成でもって、回路に悪影響を生じさせることなく、ノイズを迅速かつ確実に検出することができる。さらに、抵抗素子R1の抵抗値を最適化することによって、ノイズが去った後のノイズキャンセラの復帰タイミングも調整することも可能となる。
【0080】
ノイズキャンセラ500は、上述のとおり、第1および第2のスイッチ回路(SW1,SW2)を含んで構成されるスルーラッチ(保持回路)400と、切換回路300(タイミング調整回路700としての機能も併せ持つ)と、を有する。切換回路300は、通常状態には第1のスイッチ回路SW1をオンして入力信号をそのままスルーラッチの出力端子から出力し、ノイズ検出回路200によってノイズが検出されたときには第1のスイッチ回路をオフし、第2のスイッチ回路をオンすることで、ノイズが重畳された入力信号の伝送を遮断し、同時に、スルーラッチ(保持回路)400において保持されている直前の信号を、出力段のインバータINV3を経由してスルーラッチの出力端子(Y)から出力する(図3(A),(B)参照)。
【0081】
このように、汎用性ある簡単な回路によって高性能なノイズキャンセラを構成することができ、このことは、省電力化や省スペース化の点で有利である。
【0082】
また、上述のとおり、図2の入力インタフェース回路では、入力端子Xと第1のスイッチ回路SW1との間に、タイミング調整用の遅延回路800(4段のインバータINV6〜INV9により構成される)が設けられている。
【0083】
第1および第2のスイッチ回路(SW1,SW2)を、どのようなタイミングで相補的にオン/オフさせるかは、ノイズの確実な遮断の実現、ならびにノイズの継続期間において第1のスイッチ回路SW1をオン状態に復帰させてしまう誤動作の確実な防止の観点から重要である。
【0084】
そこで、入力端子Xと第1のスイッチ回路SW1との間にタイミング調整用の遅延回路800を設けるものである。これによって、ノイズが第1のスイッチ回路SW1に到達するタイミングが遅れる。その遅れている期間中に、第1のスイッチ回路SW1をオンからオフに移行させることは、ノイズ検出信号NLが高速に得られることを考慮すれば容易である。
【0085】
よって、ノイズが第1のスイッチ回路SW1に到達するよりも前に第1のスイッチ回路SW1をオフ状態とすることを保障することができ、したがって、ノイズの確実な遮断が実現される。
【0086】
図3(A),図3(B)は、スルーラッチの動作を示す回路図である。図3(A),図3(B)において、信号が伝達される様子を太線の矢印または太線の破線で示す。
【0087】
図3(A)に示すように、通常状態(ノイズが無い状態)では、第1のスイッチ回路SW1がオンし、入力信号は、そのままスルーラッチの出力端子Yから出力される。また、図3(B)に示すように、ノイズ検出時には、直前の信号(ノイズが無い状態の信号)がラッチされ、そのラッチされている電圧が出力端子Yから出力される。
【0088】
図4は、図2の入力インタフェース回路における各部の電圧変化のタイミングを示すタイミング図である。図4において、Vth(inv)は、インバータのH/Lの判定閾値(ここでは、電源電圧の中点電圧とする)である。
【0089】
入力端子Xに正極性のノイズが印加されると、入力端子Xの電圧は急速に立ち上がり、時刻t1にインバータ(INV6〜INV9)のH/Lの判定閾値に達し、時刻t2に高電位電源電圧(HVDD)に達する。
【0090】
点a(第1のスイッチ回路SW1の入力端)の電圧は、時刻t1から遅延回路800による遅延時間T1経過後の時刻t5にハイレベルに立ち上がる。
【0091】
一方、点b(抵抗素子R1の一端)の電圧レベルは、抵抗素子R1が高抵抗であることから、ノイズの電圧レベルが高電位電源電圧(HVDD)を超えるタイミングt2を起点として速やかにハイレベルに立ち上がり、時刻t3において、インバータINV4の閾値電圧(Vth(inv))を超える。
【0092】
点cの電圧レベル(トランスファースイッチSW1を構成するPMOSトランジスタP1のゲート電圧ならびにトランスファースイッチSW2を構成するNMOSトランジスタN2のゲート電圧)は、切換回路300(タイミング調整回路700を兼ねる)による若干の遅延の後、時刻t4においてハイレベルとなり、このタイミングで、第1のスイッチ回路SW1はオンからオフに移行し、第2のスイッチ回路SW2がオフからオンに移行する。これによって、ノイズの伝達が遮断されると共に、直前の電圧のラッチモードに切り換わる。
【0093】
ノイズが第1のスイッチ回路SW1に到達するタイミング(時刻t5)よりも以前のタイミング(時刻t4)において第1のスイッチ回路SW1がオフ状態に移行するため、ノイズは確実に遮断され、ノイズによって回路ブロックB(内部ロジック回路)110が誤動作することがない。
【0094】
また、入力端子Xにノイズが印加されなくなると、点a(第1のスイッチ回路SW1の入力端)の電圧は、時刻t7から遅延回路800による遅延時間T1経過後の時刻t8においてローレベルに立ち下がる。
【0095】
一方、時刻t6において点b(抵抗素子R1の一端)の電圧レベルが高電位電源電圧(HVDD)を下回ると、ノイズ検出用トランジスタMPがオフし、抵抗素子R1からの電荷の放電によって、点bの電圧レベルは徐々に低下する。抵抗素子R1の抵抗値がかなり高く設定されており、このために、抵抗素子R1を介した電荷の接地への放電が緩やかであることから、b点の電圧レベルは徐々に立ち下がる。b点の電圧レベルがVth(inv)を下回るのは時刻t9である。
【0096】
点cの電圧レベル(トランスファースイッチSW1を構成するPMOSトランジスタP1のゲート電圧ならびにトランスファースイッチSW2を構成するNMOSトランジスタN2のゲート電圧)は、切換回路300(タイミング調整回路700を兼ねる)による若干の遅延の後、時刻t10においてローレベルとなり、このタイミングで、第2のスイッチ回路SW1はオフからオンに移行し、第2のスイッチ回路SW2がオンからオフに移行する。これによって、スルーラッチ400はラッチモードからスルーモードに復帰する。
【0097】
上述のとおり、第1のスイッチ回路SW1は、t9から若干遅れた時刻t10にオン状態に復帰する。ノイズのない電圧レベルは、時刻t8にスイッチ回路SW1の入力端に到達しているため、第1のスイッチ回路SW1がオン状態に復帰したときにはノイズは残っておらず、何ら問題はない。
【0098】
このように、ノイズが検出されなくなったタイミングから所定時間(十分な時間)が経過した後に、第1のスイッチ回路SW1をオン状態に復帰させることができ、よって、遅延しているノイズが誤って出力されるという事態が生じない。
【0099】
以上のようなタイミング制御は、抵抗素子R1の抵抗値と遅延回路800の遅延量とを適切に設定することによって、容易に実現される。
【0100】
(フローティングNウエル領域の電位の最適化)
図5(A),図5(B)は、ノイズ検出用トランジスタにおけるフローティングNウエル領域の、ノイズ検出時の電位調整について説明するための図である。図5(A)は、図2のノイズ検出回路200の構成を示している(図2と共通する部分には同じ参照符号を付してある)。
【0101】
図5(B)は、ノイズ検出トランジスタ(MP)のデバイス構造(およびノイズ検出時の電位調整用トランジスタ(M61)の接続状態)を示している。
【0102】
図示されるように、P型基板310にフローティングNウエル領域320が設けられ、フローティングNウエル領域320にソース領域/ドレイン領域(322a,322b)が形成されている。
【0103】
P型基板310の表面はゲート絶縁膜324にて覆われており、ゲート絶縁膜324上に、ポリシリコン等からなるゲート電極326が形成されている。
【0104】
フローティングNウエル領域320には、コンタクト用のN+拡散層323が設けられ、このN+拡散層323には配線L10が接続されており、この配線L10の端部は、例えば、他の回路に接続され、その結果として所定の電圧レベルとなっている。
【0105】
ソース/ドレイン領域322a,322bとフローティングNウエル領域320との接合面には、寄生ダイオード(寄生PN接合ダイオード)D1,D2が存在する。
【0106】
入力端子Xにノイズが入力されてノイズ検出用PMOSトランジスタMP(フローティングNウエルトランジスタFNWL)がオンしたときに、ソース322aとNウエル(広義には基板)320との間の寄生ダイオードがオンすると、電流量を制限する要素が何も無いことから、例えば、図5(B)に示すように、配線L10を経由して過大な電流I1が流れ、例えば配線が溶断して素子の破壊が生じる場合があり、あるいはラッチアップの要因となる場合がある。
【0107】
また、寄生ダイオードD1がオンすると、そのダイオードの順方向電圧分だけNウエル電位が低下し、これによってノイズ検出用トランジスタの閾値電圧に変動が生じる。つまり、入力端子Xに印加される電圧レベルが、VDD+Vthp+Vf(Vfは寄生ダイオードの順方向電圧)よりも大きくないとノイズ検出用トランジスタMPがオンしないことになり、現実のノイズ検出電圧と設計値との間にずれが生じてしまう。
【0108】
そこで、そこで、Nウエル領域322aの電位を固定せずに、状況に応じて電位を調整可能とすると共に、上述のとおり、ノイズ検出用トランジスタMPがオンすると同時に電位調整用のトランジスタ(第1の電位調整用トランジスタ)M61もオンさせ、これによってフローティングNウエル領域320の電位をソース領域322aと同じ電位にし、寄生ダイオードD1のオンを防止し、過大な電流による素子破壊や閾値の変動を防止する。上述のとおり、フローティングウエル領域320は、「電位が固定されておらず、適応的にその電位を調整可能なウエル領域(広義には半導体基板であり、トランジスタ要素が形成される半導体領域:一般的にはN型またはP型のいずれか)」である。
【0109】
図6(A),図6(B)は、ノイズ検出用トランジスタにおけるフローティングNウエル領域の、ノイズ検出時およびノイズが印加されないときの電位調整について説明するための図である。
【0110】
図6(A)および図6(B)では、図5(A),図5(B)の構成に加えて、ノイズが印加されない状態でのフローティングNウエル領域320の電位を調整するための電位調整用PMOSトランジスタ(第2の電位調整用PMOSトランジスタ)M63が設けられている。
【0111】
第2の電位調整用PMOSトランジスタM63は、ゲートが入力端子Xに接続され、ソース(第1の端子)が高電位電源電圧HVDDに接続され、ドレイン(第2の端子)がフローティングNウエル領域320に接続されている。
【0112】
図5(A),図5(B)の回路構成では、第1の電位調整用PMOSトランジスタM61がオフしているとき(このときはノイズ検出用PMOSトランジスタもオフしている)は、フローティングNウエル領域の電位は不定となる。このことが特に問題となる訳ではないが、何らかの回路動作上の不都合が生じる場合がないとは言い切れない。
【0113】
そこで、図6(A),図6(B)では、電位調整用の第2のPMOSトランジスタM63を追加し、第1の電位調整用PMOSトランジスタM61がオフのときは、第2のPMOS電位調整用トランジスタM63をオンさせて、この第2の電位調整用PMOSトランジスタM63を経由してフローティングNウエル領域320の電位を高電位電源電圧(HVDD)に調整する。
【0114】
図6(B)から明らかなように、第2の電位調整用PMOSトランジスタM63がオンすると、フローティングNウエル領域320の電位はHVDDとなり、これによって、寄生ダイオードD1,D2は共に逆バイアスされ、寄生ダイオードを経由した電流パスが形成されることが確実に防止される。
【0115】
図6(A),図6(B)の構成によれば、ノイズが印加された場合、ノイズが印加されない場合の双方においてフローティングNウエル領域320の電位が安定化される。これによって、ウエル領域に起因して周辺回路に悪影響が及ぶ心配が全くなくなり、回路の安定性(信頼性)をより高めることができる。
【0116】
(タイミング調整回路をノイズ検出経路に挿入する例)
図7は、第1および第2のスイッチ(SW1,SW2)を相補的にオン/オフするタイミングを最適化する方法の他の例を示す回路図である。
【0117】
図2の入力インタフェース回路では、第1のスイッチ回路SW1をオフからオンに復帰させるタイミングは、抵抗素子R1の時定数に依存していたが、図7の入力インタフェース回路では、抵抗素子R1の抵抗値を低く設定して時定数を小さくし、その代わりに、ノイズ検出用のパスに、タイミング調整回路702を挿入している。
【0118】
タイミング調整回路702は、タイミング調整用の遅延回路800の遅延量よりも大きな遅延量をもつ第1のパス(INV10〜INV13を経由するパス)と、遅延回路800の遅延量よりも小さな遅延量をもつ第2のパス(INV10〜INV13をバイパスするパス)と、前記第1のパスからの信号および前記第2のパスからの信号を受けて一つの信号を出力するゲート回路(具体的にはNORゲート:論理和ゲートを基本とするゲート回路)NOR1と、を有する。
【0119】
ノアゲートNOR1の出力電圧は、入力端子Gの電圧レベルがHとなったときにHからLに変化し、一方、2つの入力端子(F,G)の双方の電圧レベルがLになったときのみ、LからHに変化する。
【0120】
したがって、ノイズ検出用トランジスタMPがオンして抵抗素子R1の一端(b点)の電圧レベルがLからHに変化すると、その電圧変化は、第2のパス(遅延が小さなパス)を経由して速やかに伝達され、入力端子Gの電圧レベルがLからHに変化する。よって、NOR1の出力の電圧レベルは、HからLに変化し、これによってノイズが迅速に検出される。
【0121】
一方、ノイズが印加されなくなったことに伴って、ノイズ検出用トランジスタMPがオフして抵抗素子の一端(b点)の電圧レベルがHからLに変化すると、その電圧変化は、第1のパス(INV10〜INV13を経由するパス)を経由してNOR1の入力端子Fに伝達されることになる。入力端子Gの電圧は、より早いタイミングでLに反転しており、入力端子Fの電圧レベルがLに変化するのを待って、NOR1の出力の電圧レベルがLからHに復帰する。ノイズが検出されなくなったことを示す電圧変化は、実質的に、第1のパスを経由してNOR1に伝達されたことになる。
【0122】
図7の場合、抵抗素子R1の抵抗値を小さく設定して放電時定数を低下させ、その代わりに、タイミング調整回路702におけるインバータ(INV10〜INV13)の遅延量と、遅延回路800におけるインバータ(INNV6〜INV9)による遅延量によって、高精度に、第1および第2のスイッチ(SW1,SW2)のオン/オフのタイミングを調整することができる。
【0123】
(タイミング調整回路を正規の信号経路に挿入する例)
図8は、第1および第2のスイッチ(SW1,SW2)を相補的にオン/オフするタイミングを最適化する方法のさらに他の例を示す回路図である。
【0124】
図8では、タイミング調整回路810を正規の入力信号側に設けている。タイミング調整回路810は、タイミング調整のための所定の遅延量を有する第1の遅延パス(INV14〜INV17を経由するパス)と、第1の遅延パスよりも小さな遅延量をもつ第2のパス(INV14〜INV17をバイパスするパス)と、第1のパスからの信号および第2のパスからの信号を受けて一つの信号を出力するゲート回路(具体的にはNANDゲート:論理積ゲートを基本とするゲート回路)と、を有する。
【0125】
ナンドゲートNAND1の出力の電圧レベルは、入力端子Yの電圧レベルがLとなったときにLからHに変化し、一方、2つの入力端子(X,Y)の双方の電圧レベルがHになったときのみ、HからLに変化する。
【0126】
タイミング調整回路を、正規の信号の伝達経路に挿入する。このタイミング調整回路は、所定の遅延量をもつ第1のパスと、遅延が小さい第2のパスと、ゲート回路(具体的にはNANDゲート:論理積ゲートを基本とするゲート回路)と、によって構成する。
【0127】
入力端子Xに印加された正極性のノイズは、実質的に第1のパスを経由して遅延して伝達されるため、第1のスイッチ回路SW1にノイズが到達する前に、第1のスイッチ回路SW1を余裕をもってオフさせることが容易化される。
【0128】
また、ノイズが印加されなくなったときは、その電圧変化は遅延量が小さな第2のパスを経由して速やかに伝達される。よって、第1のスイッチ回路SW1の入力端(a点)の電圧がノイズがないときの電位に戻った後に、第1のスイッチ回路をオフからオンに復帰させることがより容易に行える(つまり、第1のスイッチ回路SW1をオン状態に復帰させたときに、遅延したノイズが残存している事態が防止される)。よって、第1および第2のスイッチ回路(SW1,SW2)のオン/オフのタイミングをより容易に最適化することができる。
【0129】
(シュミット回路を正規の信号経路に挿入した構成)
図9は、シュミット回路を正規の信号経路に挿入した構成をもつ入力インタフェース回路を示す回路図である。
【0130】
図示されるように、入力端子Xと第1のスイッチ回路SW1とを結ぶ正規の信号経路には、入出力特性としてヒステリシス特性をもつ入力バッファSHと、入力バッファSHの出力端に一端が接続された平滑コンデンサC10と、が設けられている。
【0131】
上述の入力インタフェース回路では、電源電圧を越える過大なノイズが入力端子に印加されたことを想定しているが、ノイズとしては、電源電圧を越えない小規模のノイズも想定される。このような小規模のノイズも除去するのが、次段の回路の誤動作をより確実に防止する観点から好ましいといえる。
【0132】
そこで、正規の信号伝達経路に、入出力特性にヒステリシスをもつ入力バッファ(例えば、シュミット回路)SHと、平滑コンデンサC10と、を設ける。入力バッファSHは、ヒステリシス特性に起因して入力不感帯(つまり、入力信号のレベルが変動しても出力レベルが変化しない入力レンジ)をもっており、小規模のノイズの振幅が、この入力不感帯幅内に収まっていれば、入力バッファSHからは、その小規模ノイズは出力されない。
【0133】
また、万一、小規模ノイズが出力されたときには、平滑コンデンサC10によってノイズを平滑することによって、次段の回路(回路ブロックB)に誤った制御信号(リセット信号やチップイネーブル信号等)が入力されることを防止することができる。これによって、入力インタフェース回路のノイズ除去機能の強化を図ることができる。
【0134】
(第2の実施形態)
前掲の実施形態では、高電位電源電圧(HVDD)を超える正極性のノイズをキャンセルする場合について説明したが、本実施形態では、低電位電源(VSS:例えばGND)よりも低い負極性のノイズをキャンセルする場合について説明する。
【0135】
本実施態様では、フローティングPウエルを使用し、ノイズ検出用トランジスタならびに第1および第2の電位調整用トランジスタとしてNMOSトランジスタを使用する。また、抵抗素子としてプルアップ抵抗を用いる。得られる効果は、前掲の実施形態と実質的に同じである。
【0136】
図10は、低電位電源電圧よりも低い負極性のノイズをキャンセルするノイズキャンセラをもつ入力インタフェース回路の構成を示す回路図である。
【0137】
図10の入力インタフェース回路の基本的構成は、図2の入力インタフェース回路の構成と同じであるが、図10の場合、ノイズ検出回路202の構成が、図2とは異なっている。
【0138】
すなわち、図10のノイズ検出回路202は、ゲートが接地(グランドに接続)されたNMOSトランジスタMN(フローティングPウエル領域にソース・ドレインが形成されたフローティングPウエルトランジスタFPWL:電位調整用トランジスタは記載を省略する)と、一端が高電位電源電圧(HVDD)のノードに接続された抵抗素子R2と、を有する。
【0139】
ノイズ検出用トランジスタ(NMOSトランジスタ)MNは、入力端子Xの電圧が、(GND−Vthn)以下となったときにオンし、これによって、抵抗素子R2の一端の電圧がHからL(ノイズ検出時のアクティブレベル)に変化する。
【0140】
図11は、図10の入力インタフェース回路の各部の電圧変化のタイミングを示すタイミング図である。図11に示されるように、入力端子Xには、低電位電源(GND)よりも低いノイズが入力されると、そのノイズは、遅延回路800の遅延量T1だけ遅延して伝達され、一方、ノイズ検出用トランジスタMNがオンして、点bの電圧は、時刻t12から降下を開始し、時刻t14には、第1のスイッチ回路SW1がオンからオフに移行する。
【0141】
同様に、ノイズが印加されなくなると、点aの電圧は時刻t18に元の電圧レベルに戻り、時刻t20に第1のスイッチ回路SW1がオフからオンに復帰する。なお、図11のt11〜t20は、図4のt1〜t10に対応する。
【0142】
図12(A),図12(B)はフローティングPウエルトランジスタを用いたノイズ検出回路の構成例を示す回路図である。
【0143】
図12(A)は、図5(A)の回路構成に対応する。図示されるように、ノイズ検出用NMOSトランジスタ(MN)のフローティングPウエル領域の電位を調整するために第1の電位調整用NMOSトランジスタM71が設けられている。
【0144】
図12(B)は、図6(A)の回路構成に対応する。図12(B)では、ノイズが検出されないときのフローティングPウエルの電位を調整するための第2の電位調整用NMOSトランジスタM73が追加されている。ノイズが検出されないときは、第2の電位調整用NMOSトランジスタM73がオンして、フローティングPウエル領域の電圧レベルはグランドレベルに調整される。これによって、寄生ダイオードが逆バイアスされ、寄生ダイオードを経由した電流パスの発生が確実に防止される。
【0145】
なお、負極性のノイズを除去する構成をもつ入力インタフェース回路においても、図7〜図9の各々に示したのと同様の回路構成を採用することができる。
【0146】
(第3の実施形態)
本実施形態では、本発明の入力インタフェース回路を搭載する集積回路装置(IC)のレイアウト構成例や、入力インタフェース回路(I/Oセル)における構成のバリエーションについて説明する。
【0147】
図13は、本発明の入力インタフェース回路を搭載する集積回路装置(IC)のレイアウト構成例を説明するための図である。
【0148】
図13の集積回路装置(IC)90のチップ周辺には、入力インタフェース回路としてのI/Oセル100a〜100dが設けられている。チップの中央には、ゲートアレイ等のセミカスタムIC設計手法によって形成される内部ロジック回路110をもつコア回路610が設けられている。
【0149】
図13では、I/Oセル(100a〜100d)とコア回路610とは別系統の電源により動作する。すなわち、I/Oセル(100a〜100d)は、高電位電源電圧(HVDD:例えば3V)で動作し、コア回路610は低電位電源電圧(LVDD:例えば1.8V)で動作する。なお、I/Oセル(100a〜100d)は、出力段にレベルシフト回路(不図示)を備えており、このレベルシフト回路は、高電位電源電圧(HVDD)で動作する。
【0150】
すなわち、図13のICでは、I/Oセル(入力インタフェース回路)の前段部分は第1の電源電圧で動作し、後段部分は第2の電源電圧で動作し、かつ、集積回路装置内の内部回路も第2の電源電圧で動作する回路系となっている。
【0151】
このような別系統の電源電圧で動作する回路ブロックでは、各回路が独立して動作し、ノイズも独立に発生することから、特にインタフェース回路(I/Oセル)におけるノイズ対策が重要である。
【0152】
本発明のノイズキャンセラ付きのI/Oセル(入力インタフェース回路)100a〜100dを採用することによって、別系統の電源系で動作する回路間の、静電気ノイズ等に起因する誤動作を確実に防止することができる。よって、回路の信頼性が向上する。
【0153】
また、図13において、仮に、I/Oセル(入力インタフェース回路)100a,100bと、内部ロジック110とを結ぶ経路(図中、太線で示される経路)がクリティカルパス(ノイズによって内部回路に重大な誤動作が生じる可能性がある重要な信号経路)であり、もう一つの経路は、クリティカルパスではないときは、本発明のノイズキャンセラを搭載したI/Oセルは、クリティカルパスのみに設けてもよい。この場合、I/Oセルの占有面積の増加を最小化することができる。
【0154】
図14は、本発明のノイズキャンセラを搭載したI/Oセルをクリティカルパスのみに設ける場合に、フローティングウエルと、電位が固定された通常のウエルとを選択的に形成する方法を説明するための図である。
【0155】
本発明のノイズキャンセラを搭載したI/Oセルをクリティカルパスのみに設ける場合には、そのクリティカルパスに介在するI/Oセルには、フローティングウエルを形成する必要があり、クリティカルパス以外のパスに介在するI/Oセルには、通常の電位固定のウエルを形成する必要がある。
【0156】
図13の場合、I/Oセル100a〜100dもゲートアレイ的な手法で形成されるため、配線形態を変更するだけで、ウエルの使い分けは簡単に行うことができる。図14(A)ではフローティングNウエルが構築されている。図14(B)では、配線を変更してフローティングNウエル320をHVDDに接続することによって、通常の電位固定のNウエルが構築されている。
【0157】
本発明のノイズキャンセラをもつ入力インタフェース回路を集積回路装置(IC)90に搭載することによって、ノイズに起因する内部回路の重大な誤動作(例えば、メモリがリセットされるという誤動作)が生じることがない。よって、集積回路装置(IC)90の信頼性が向上する。
【0158】
(第4の実施形態)
本実施形態では、本発明の入力インタフェース回路を内蔵する集積回路装置(IC)を搭載した電子機器の例について説明する。この電子機器は、超小型軽量であるにもかかわらず、例えばESDパルス(静電気放電パルス)の入力によって誤動作することがなく、ESDに対する信頼性が保障されることになる。例えば、ノイズに起因してパネルの表示が消えるという誤動作が生じることがなく、よって、電子機器の信頼性が向上する。
【0159】
図15(A)〜図15(C)は各々、本発明の誤動作防止回路を搭載した電子機器の例の外観を示す図である。
図15(A)は、電子機器の1つである携帯電話950の外観図の例を示している。この携帯電話950は、入力部として機能するダイヤルボタン952や、電話番号や名前やアイコンなどを表示するLCD954や、音出力部として機能し音声を出力するスピーカ956を備える。
【0160】
また、図15(B)は、電子機器の1つである携帯型ゲーム装置960の外観図の例を示している。この携帯型ゲーム装置960は、入力部として機能する操作ボタン962、十字キー964や、ゲーム画像を表示する画像出力部966や、音出力部として機能しゲーム音を出力するスピーカ968を備える。
【0161】
また、図15(C)は、電子機器の1つである携帯用情報機器(PDA)970の外観図の例を示している。この携帯用情報機器(PDA)970は、入力部として機能するキーボード972や、文字、数字、グラフィックなどを表示する画像出力部974、音出力部976を備える。
【0162】
なお、図15(A)、図15(B)、図15(C)に示すもの以外にも、本発明を適用することが可能である。例えば、パーソナルコンピュータ、ページャー、電子卓上計算機、タッチパネルを備えた装置、プロジェクタ、ワードプロセッサ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置等の電子機器にも、本発明を適用することが可能である。
【0163】
以上説明したように、本発明の実施態様によれば、以下の主要な効果を得ることができる。但し、以下の効果は一例であり、また、すべての効果が同時に得られるとは限らず、以下の効果の列挙が、本発明の技術的範囲を不当に解釈する根拠とされてはならない。
(1)ノイズを検出し、ノイズが継続している期間においてノイズキャンセル回路によって信号伝送を遮断することから、ノイズの継続時間に関係なく、回路ブロック間の誤った信号伝送を確実に阻止することができる。また、例えば、正規の入力信号がアクティブ(例えばリセット信号がH)のときに、連続するパルス状のノイズが入力されるような特殊な場合も想定され得るが、本発明のノイズキャンセラは、ノイズを検出する毎に信号伝達経路を遮断し、直前の電圧レベルを保持するため、振動するノイズであっても確実に除去することができ、何ら問題は生じない。
(2)正極性/負極性のノイズのいずれにも対応可能である。
(3)ノイズ検出信号の生成に際しタイミング制御を行い、特に、ノイズキャンセル回路への入力信号の遅延と組み合わせることによって、回路ブロックAから回路ブロックBへの誤った信号(ノイズ)の伝送を、より確実に防止することができる。
(4)ノイズキャンセル回路を保持回路(スルーラッチ)で構成することによって、簡単な回路によってノイズを除去できる。
(5)正極性パルスが重畳されたノイズを検出する方式として、ゲート接地のスイッチングトランジスタを使用し、ソース電位とゲート電位の比較によってスイッチングトランジスタを高速にオンさせ、プルダウン(あるいはプルアップ)抵抗により形成される経路にノイズをすみやかに吸収させると共に、プルダウン(プルアップ)抵抗の一端の電位変化を論理ゲートによって検出することによってノイズを検出する方式を採用することによって、簡素化された構成によって、回路を破壊から守りつつ、高速かつ効率的にノイズを検出することができる。
(6)ノイズ検出用トランジスタとして、フローティングウエル方式のスイッチングトランジスタを採用すると共に、基板(ウエル)領域の電位を調整するためのトランジスタを設けてゲート直下の基板(ウエル領域)の電位を常に安定化させる(最適化する)ことによって、ノイズの入力の際に、他の回路に悪影響を与えることがなく、安心して本発明の入出力インタフェース回路を利用することができる。
(7)遅延回路の遅延量と抵抗素子の抵抗値の最適化、あるいは、工夫された構成をもつタイミング調整回路の採用によって、ノイズキャンセラを構成する2つのスイッチ回路のオン/オフのタイミングを容易に最適化することができる。
(8)本発明の入出力インタフェース回路は、素子数が少なくコンパクトであるため、ゲートアレイ等のI/Oセルや内部ロジック回路に容易に配置することができる。
(9)本発明によって、信号入力端子に静電気ノイズが印加された場合に、その静電気ノイズの内部回路への伝達を未然に、かつ確実に防止することができる入力インタフェース回路を提供することができる。
(10)本発明によって、集積回路装置ならびに電子機器の、ノイズに起因する誤動作を確実に防止することができ、その信頼性が向上する。
(11)本発明は、近年、特に重視される傾向にある、集積回路装置のESDエミュニティ(静電気放電耐性)の向上に有効である。
【0164】
なお、本実施形態について詳述したが、本発明の新規事項および効果から逸脱しない範囲で、多くの変形が可能であることは、当業者には容易に理解できるであろう。
【0165】
本発明は、集積回路装置において、ESD等に起因してノイズが入力端子に入力された場合に、その電源ノイズに起因して生じる誤った信号(ノイズ)の内部への伝送を確実に防止するという効果を奏し、したがって、入出力インタフェース回路、集積回路装置、電子機器として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1】本発明の入出力インタフェース回路の一例を示すブロック図
【図2】図1の入力インタフェース回路(ブロックA)の具体的な回路構成の一例を示す回路図
【図3】図3(A),図3(B)は、スルーラッチの動作を示す回路図
【図4】図2の入力インタフェース回路における各部の電圧変化のタイミングを示すタイミング図
【図5】図5(A),図5(B)は、ノイズ検出用トランジスタにおけるフローティングNウエル領域の、ノイズ検出時の電位調整について説明するための図
【図6】図6(A),図6(B)は、ノイズ検出用トランジスタにおけるフローティングNウエル領域の、ノイズ検出時およびノイズが印加されないときの電位調整について説明するための図
【図7】第1および第2のスイッチ(SW1,SW2)を相補的にオン/オフするタイミングを最適化する方法の他の例を示す回路図
【図8】第1および第2のスイッチ回路を相補的にオン/オフするタイミングを最適化する方法のさらに他の例を示す回路図
【図9】シュミット回路を正規の信号経路に挿入した構成をもつ入力インタフェース回路を示す回路図
【図10】低電位電源電圧よりも低い負極性のノイズをキャンセルするノイズキャンセラをもつ入力インタフェース回路の構成を示す回路図
【図11】図10の入力インタフェース回路の各部の電圧変化のタイミングを示すタイミング図
【図12】図12(A),図12(B)はフローティングPウエルトランジスタを用いたノイズ検出回路の構成例を示す回路図
【図13】本発明の入力インタフェース回路を搭載する集積回路装置(IC)のレイアウト構成例を説明するための図
【図14】図14(A),図14(B)は、本発明のノイズキャンセラを搭載したI/Oセルをクリティカルパスのみに設ける場合に、フローティングウエルと、電位が固定された通常のウエルとを選択的に形成する方法を説明するための図
【図15】図15(A)〜図15(C)は各々、本発明の誤動作防止回路を搭載した電子機器の例の外観を示す図
【図16】ESDイミュニティテストの一例を説明するための図
【図17】静電ノイズが信号入力端子に印加されることによって生じる回路ブロックの誤動作について説明するための回路図
【符号の説明】
【0167】
100 入力インタフェース回路(回路ブロックA)、
110 内部ロジック回路(回路ブロックB)、200 ノイズ検出回路、
300 切換回路、400 保持回路(スルーラッチ)、
500 ノイズキャンセラ、SW1 第1のスイッチ回路トランスファースイッチ)、
SW2 第2のスイッチ回路(トランスファースイッチ)、
SL 正規の信号経路の電圧、NL ノイズ検出経路の電圧、X 入力端子、
Y 出力端子、R1,R2 ノイズを検出する抵抗素子
MP,MN ノイズ検出用トランジスタ(フローティングウエルトランジスタ)、
M61 第1の電位調整用トランジスタ、M63 第2の電位調整用トランジスタ
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力インタフェース回路、集積回路装置および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機などの電子機器が、帯電した操作者からの静電気放電にさらされると、電子機器が内蔵する集積回路装置のトランジスタが静電破壊する場合がある。このような静電破壊を防止するために、集積回路装置には静電破壊防止用の保護素子(保護ダイオード等)が設けられるのが一般的である。
【0003】
一方、操作者からの静電気放電によってトランジスタの静電破壊は生じないものの、電子機器の表示パネルの表示状態が異常状態になる等の誤動作が生じる場合がある。このような誤動作が生じると、電子機器の信頼性が損なわれることから、近年、静電気放電(ESD)による誤動作に関する耐性(ESDイミュニティ:Electro Static Discharge immunity)が重視される傾向にある。したがって、近年、集積回路装置に対してESDイミュニティテストが実施されることが多くなっている。
【0004】
図16は、ESDイミュニティテストの一例を説明するための図である。図16では、表示パネル8と、集積回路装置(表示ドライバ)10とが組み込まれている表示装置6に対して、静電気印加装置4によって、意図的に静電気(静電気放電:ESD)を印加し、誤動作(例えば、表示パネル8の表示に異常が生じる)が生じないかを、チェックしている。
【0005】
従来のESDパルスに起因する誤動作の防止回路としては、例えば、特許文献1に記載されるものがある。特許文献1では、ESDパルスに起因して異常信号が出力ピンから出力されると、フィードバック経路を介してその出力ピンの異常を検出してリセット信号を生成し、そのリセット信号によって、次段の電子機器等をリセットすることによって、で電子機器を異常状態から回復させる。
【特許文献1】特開2003−234647号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図17は、静電ノイズが信号入力端子に印加されることによって生じる回路ブロックの誤動作について説明するための回路図である。
【0007】
図示されるように、第1の回路(ブロックA)100と第2の回路(ブロックB)110が接続されている。第1の回路100(回路ブロックA)および第2の回路110(回路ブロックB)は共に、高電位電源(VD)と低電位電源(VSS)との間で動作する。
【0008】
第1の回路(ブロックA)100は、入力インタフェース回路であり、第2の回路(ブロックB)110は、例えば、メモリ(MR)を含むロジック回路である。第1の回路(ブロックA)の入力端子Xは、例えば、メモリ(MR)をリセットするためのリセット信号(「H」がアクティブレベル)RSPが入力されるリセット端子である。
【0009】
リセット信号(RSP)がローレベルのときに静電気ノイズ(EDP)が入力端子Xに印加されると、第1の回路(回路ブロックA)の出力レベルが反転し、このことは、アクティブレベル(「H」)のリセット信号(RSP)が入力されたのと同様の効果をもたらし、第2の回路(回路ブロックB)のメモリ(MR)は、誤ってリセットされることになる。
【0010】
このような問題は、入力端子Xが、例えば、チップイネーブル信号やチップセレクト信号を入力する端子(広義には、内部回路の動作に重大な影響を及ぼす信号が入力される端子)である場合にも生じ得る。
【0011】
特許文献1記載の技術は、出力ピンからの異常信号を検出し、誤ってリセットされた次段の回路を再リセットすることによって、事後的な救済措置を提供するものであり、次段の回路の誤ったリセットを未然に防止することはできない。
【0012】
本発明はこのような考察に基づいてなされたものであり、その目的は、信号入力端子に静電気ノイズが印加された場合に、その静電気ノイズの内部回路への伝達を未然に、かつ確実に防止することができる入力インタフェース回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)本発明の入力インタフェース回路の一態様は、入力端子に印加される高電位電源を超える電圧レベルのノイズまたは低電位電源より低い電圧レベルのノイズを検出してノイズ検出信号を出力するノイズ検出回路と、前記入力端子と、前記入力端子からの信号を受ける回路との間に設けられ、前記ノイズ検出信号がアクティブのときに、前記入力端子から前記回路への信号伝達を遮断するノイズキャンセラと、を有し、前記ノイズキャンセラは、前記入力端子と前記回路との間に設けられ、前記ノイズ検出信号がアクティブのときにオフし、非アクティブのときにオンする第1のスイッチ回路と、前記ノイズ検出信号がアクティブのときにオンし、非アクティブのときにオフする第2のスイッチ回路と、を含み、前記第1のスイッチ回路がオフし、前記第2のスイッチ回路がオンすると、前記第1のスイッチ回路の出力端の電圧を保持し、その保持した電圧を前記回路に供給する。
【0014】
入力端子に印加される静電気ノイズ等(ノイズの種類は静電気ノイズに限定されるものではなく、あらゆる種類のノイズを含む)の内部回路への伝達を防止するために、入力インタフェース回路にノイズキャンセラを設けるものである。ノイズキャンセラは、ノイズと正規の入力信号とを区別して検出するノイズ検出回路を有する。正規の入力信号は、高電位電源(VDD)と低電位電源(VSS)との間で動作するが、次段の回路の動作に重大な影響を与えるようなノイズは、VDDを超えるピーク電圧値あるいはVSSよりも低い電圧値をもつ場合が多く、その電圧レベルの差に着目して、ノイズ検出回路は、ノイズを正規の入力信号と区別して検出する。ノイズキャンセラは、入力信号を次段の回路に伝達する経路中に介在する第1のスイッチ回路を有し、ノイズが検出されたときには、その第1のスイッチ回路をオフしてノイズの伝達を完全に防止する。一方、第1のスイッチ回路がオフしているときは、第2のスイッチ回路をオンさせて、直前の電圧(ノイズがない状態の電圧)を保持し、その保持電圧を次段の回路に供給する。このように、ノイズが入力されると、そのノイズの検出結果に基づいてノイズを遮断すると共にノイズのない状態の電圧を出力するため、ノイズの次段の回路への伝達は確実に防止される。
【0015】
(2)本発明の入力インタフェース回路の他の態様では、前記ノイズ検出回路は、前記入力端子の電圧に応じて電位が調整されるフローティングNウエル領域に形成され、ゲートが前記高電位電源電圧のノードに接続され、ソースが前記入力端子に接続され、ドレインから信号が出力されるノイズ検出用PMOSトランジスタと、前記ノイズ検出用PMOSトランジスタの前記ドレインに一端が接続され、他端が前記低電位電源のノードに接続された、前記ノイズ検出信号を発生する抵抗素子と、を有する。
【0016】
ノイズ検出回路の具体的な構成の一例を明らかとしたものである。ゲートが電源電位(VDD)に接続されたノイズ検出用PMOSトランジスタは、ソース(第1の端子)の電位が(VDD+Vthp:VthpはPMOSトランジスタの閾値電圧)以上となったときのみオンするため、ノイズと正規の入力信号を区別して検出することができる。
【0017】
また、ノイズが入力されてノイズ検出PMOS用トランジスタがオンしたときに、ソースとウエル(広義には基板)との間の寄生ダイオードがオンできないように、フローティングNウエル領域にソース/ドレインを形成する。ここで、「フローティングウエル領域」とは、「電位が固定されておらず、適応的にその電位を調整可能なウエル領域(広義には半導体基板であり、トランジスタ要素が形成される半導体領域(一般的にはN型またはP型のいずれか)」である。ウエルの電位を固定した場合、ノイズが入力されたときに、ノイズ検出用PMOSトランジスタのソースとNウエル(広義にはN基板)との間の寄生ダイオードがオンして過渡電流が流れる。このとき、電流量を制限する要素が何も無いことから過大な電流が流れて、例えば配線が溶断し素子の破壊が生じ、あるいはラッチアップの要因となる場合がある。また、寄生ダイオードがオンすると、そのダイオードの順方向電圧分だけNウエル電位が低下し、これによってノイズ検出用PMOSトランジスタのVthn(閾値電圧)に変動が生じる。そこで、Nウエル領域の電位を固定せずに、状況に応じて電位を調整可能とし、これによって寄生ダイオードのオンを阻止し、過大な電流による素子破壊や閾値の変動等を防止するものである。
【0018】
また、ノイズの検出信号を生成する抵抗素子は、以下の4つの機能を併せ持つ。すなわち、「プルダウン抵抗(ノイズがないときにノイズ検出経路の電圧を所定電位に固定する働きをもつ抵抗)」としての機能と、「放電抵抗(ノイズ入力時において、その過大なノイズエネルギを交流接地に速やかに逃がす働きをもつ抵抗)」としての機能と、「センシング抵抗(ノイズ電流が流れているときにノイズ検出経路の電圧レベルを変化させることによってノイズ検出信号を生成する働きをもつ抵抗)」としての機能と、「時定数設定抵抗(ノイズ検出信号がアクティブレベルになった後に、非アクティブレベルに復帰するまでの復帰時間を調整する働きをもつ抵抗)」としての機能と、を併せ持つ。このように、本態様によれば、簡素化された構成でもって、回路に悪影響を生じさせることなく、ノイズを迅速かつ確実に検出することができ、さらにノイズが去った後のノイズキャンセラの復帰タイミングも調整し得る、優れたノイズ検出回路を実現することができる。
【0019】
(3)本発明の入力インタフェース回路の他の態様では、前記ノイズ検出回路は、前記入力端子の電圧に応じて電位が調整されるフローティングPウエル領域に形成され、ゲートが前記低電位電源のノードに接続され、ソースが前記入力端子に接続され、ドレインから信号が出力されるノイズ検出用NMOSトランジスタと、前記ノイズ検出用NMOSトランジスタの前記ドレインに一端が接続され、他端が前記高電位電源電圧のノードに接続された、前記ノイズ検出信号を発生する抵抗素子と、を有する。
【0020】
本態様では、前項の態様とは逆の導電型のウエル(フローティングPウエル)を使用し、ノイズ検出用トランジスタとしてNMOSトランジスタを使用する。ノイズ検出用NMOSトランジスタのゲートは低電位電源電圧(VSS:例えばGND)に接続される。これによってVSS以下の負極性のノイズを検出することが可能となる。得られる効果は、前項の態様と実質的に同じである。
【0021】
(4)本発明の入力インタフェース回路の他の態様では、ゲートが前記高電位電源電圧のノードに接続され、ソースが前記入力端子に接続され、ドレインが前記フローティングNウエル領域に接続され、前記ノイズ検出用PMOSトランジスタがオンすると、前記入力端子の印加電圧を前記フローティングNウエル領域に印加し、これによって前記フローティングNウエル領域の電位を前記入力端子の電位とする、前記フローティングNウエル領域の電位調整用の第1のPMOSトランジスタを有する。
【0022】
高電位電源電圧(HVDD)を超える正極性のノイズがノイズ検出用PMOSトランジスタのソース(第1の端子)に印加されたときに、電位調整用の第1のPMOSトランジスタを経由して、フローティングNウエル領域にも同じノイズ電圧を印加し、これによって、ソースとウエル領域間の寄生ダイオードのアノードとカソードの各電位を同電位として寄生ダイオードのオンを防止するものである。これによって、過渡電流が流れることを防止でき、また、ノイズ検出用PMOSトランジスタのVthp(閾値電圧)の変動を防止することができる。
【0023】
(5)本発明の入力インタフェース回路の他の態様では、ゲートが前記低電位電源に接続され、ソースが前記入力端子に接続され、ドレインが前記フローティングPウエル領域に接続され、前記ノイズ検出用NMOSトランジスタがオンすると、前記入力端子の印加電圧を前記フローティングPウエル領域に印加し、これによって前記フローティングPウエル領域の電位を前記入力端子の電位とする、前記フローティングPウエル領域の電位調整用の第1のNMOSトランジスタを有する。
【0024】
低電位電源電圧(VSS)よりも低い負極性のノイズがノイズ検出用NMOSトランジスタのソース(第1の端子)に印加されたときに、電位調整用の第1のNMOSトランジスタを経由して、フローティングPウエル領域にも同じノイズ電圧を印加し、これによって、ソースとPウエル領域間の寄生ダイオードのアノードとカソードの各電位を同電位として寄生ダイオードのオンを防止するものである。これによって、過渡電流が流れることを防止でき、また、ノイズ検出用NMOSトランジスタのVthn(閾値電圧)の変動を防止することができる。
【0025】
(6)本発明の入力インタフェース回路の他の態様では、ゲートが前記入力端子に接続され、ソースが前記高電位電源電圧のノードに接続され、ドレインが前記フローティングNウエル領域に接続され、前記ノイズ検出用PMOSトランジスタおよび前記フローティングNウエル領域の電位調整用の第1のPMOSトランジスタが共にオフすると、前記高電位電源電圧を前記フローティングNウエル領域に印加する、前記フローティングNウエル領域の電位調整用の第2のPMOSトランジスタを、さらに有する。
【0026】
フローティングNウエルを用いる態様において、電位調整用の第1のPMOSトランジスタがオフしたとき(このときはノイズ検出用PMOSトランジスタもオフしている)は、フローティングNウエル領域の電位を固定できないが、この場合に、何らかの回路動作上の不都合が生じる場合がないとは言えない。そこで、電位調整用の第2のPMOSトランジスタを追加し、第1のPMOSトランジスタがオフのときは、第2のPMOSトランジスタをオンさせて、この第2のPMOSトランジスタを経由してフローティングNウエル領域の電位を高電位電源電圧(HVDD)に調整し、ソース・Nウエル間の寄生ダイオードを逆バイアスすることによってオンできないようにして回路の安定性(信頼性)の万全を図るものである。
【0027】
(7)本発明の入力インタフェース回路の他の態様では、ゲートが前記入力端子に接続され、ソースが前記低電位電源に接続され、ドレインが前記フローティングPウエル領域に接続され、前記ノイズ検出用NMOSトランジスタおよび前記フローティングPウエル領域の電位調整用の第1のNMOSトランジスタが共にオフすると、前記低電位電源電圧を前記フローティングPウエル領域に印加する、前記フローティングPウエル領域の電位調整用の第2のNMOSトランジスタを、さらに有する。
【0028】
フローティングPウエルを用いる態様において、第1のNMOSトランジスタがオフのときは、第2のNMOSトランジスタをオンさせて、この第2のNMOSトランジスタを経由してフローティングPウエル領域の電位を低電位電源電圧(VSS:例えばGND)に調整し、ソース・Pウエル間の寄生ダイオードを逆バイアスすることによってオンできないようにして回路の安定性(信頼性)の万全を図るものである。
【0029】
(8)本発明の入力インタフェース回路の他の態様では、前記ノイズ検出用PMOSトランジスタは、前記入力端子に接続されている前記ソース端子に、前記高電位電源電圧に前記ノイズ検出用PMOSトランジスタの閾値電圧を加算した電圧以上の電圧が印加されることによってオンする。
【0030】
ノイズ検出用PMOSトランジスタは、ソース(第1の端子)の電位が(HVDD+Vthp)以上のときにのみオンする。これによって、正規の信号と正極性のノイズとを区別して検出することができる。
【0031】
(9)本発明の入力インタフェース回路の他の態様では、前記ノイズ検出用NMOSトランジスタは、前記入力端子(X)に接続されている前記ソース端子に、前記低電位電源から前記ノイズ検出用NMOSトランジスタの閾値電圧を減算した電圧以下の電圧が印加されることによってオンする。
【0032】
ノイズ検出用NMOSトランジスタは、ソース(第1の端子)の電位が(VSS−Vthn)以下のときにのみオンする。これによって、正規の信号と負極性のノイズとを区別して検出することができる。
【0033】
(10)本発明の入力インタフェース回路の他の態様では、前記ノイズキャンセラは、前記第1のスイッチ回路としてのトランスファーゲートと、前記第2のスイッチ回路としてのトランスファーゲートと、前記第1のスイッチ回路の出力端および前記第2のスイッチ回路の共通接続点に入力端が接続された第1のインバータと、前記第1のインバータの出力端に入力端が接続され、出力端が前記第2のスイッチ回路の入力端に接続された第2のインバータと、を有し、前記第1のスイッチ回路の出力信号を前記回路に向けてスルーするか、前記第1のスイッチ回路の出力信号を前記第1および第2のインバータならびに前記第2のスイッチ回路を経由する正帰還経路でラッチするかを切換え可能なスルーラッチと、前記抵抗素子から得られる前記ノイズ検出信号を受ける第3のインバータと、前記第3のインバータの出力端に入力端に接続された第4のインバータと、を有し、記第3のインバータの出力端と前記第4のインバータの入力端との共通接続点ならびに前記第4のインバータの出力端の各々から、前記第1のスイッチ回路および前記第2のスイッチ回路を相補的にオン/オフさせるための切換制御信号を生成する切換回路と、を有する。
【0034】
ノイズキャンセラの具体的な回路構成例を明確化したものである。すなわち、本態様のノイズキャンセラは、第1および第2のスイッチ回路を含んで構成されるスルーラッチ(保持回路)と、切換回路と、を有する。切換回路は、通常状態には第1のスイッチ回路をオンして入力信号をそのままスルーラッチの出力端子から出力し、ノイズ検出回路によってノイズが検出されたときには第1のスイッチ回路をオフし、第2のスイッチ回路をオンすることで、ノイズが重畳された入力信号の伝送を遮断し、同時に、保持回路において保持されている直前の信号をスルーラッチの出力端子から出力する。このように、汎用性ある簡単な回路によってノイズキャンセル回路を構成することができる。このことは、省電力化や省スペース化の点で有利である。
【0035】
(11)本発明の入力インタフェース回路の他の態様では、前記入力端子と前記第1のスイッチとの間に設けられたタイミング調整用の遅延回路を、さらに有する。
【0036】
第1および第2のスイッチ回路を、どのようなタイミングで相補的にオン/オフさせるかは、ノイズの確実な遮断の実現、ならびにノイズの継続期間において第1のスイッチ回路をオン状態に復帰させてしまう誤動作の確実な防止の観点から重要である。本態様では、入力端子と第1のスイッチ回路との間にタイミング調整用の遅延回路を設ける。これによって、ノイズが第1のスイッチ回路に到達するのが遅れる。よって、ノイズが第1のスイッチ回路に到達するよりも前に第1のスイッチ回路がオフすることを保障することができ、ノイズの確実な遮断が実現される。
【0037】
(12)本発明の入力インタフェース回路の他の態様では、前記入力端子にノイズが印加されたことによって前記第1のスイッチ回路の入力端の電位が変化する第1のタイミングよりも前の第2のタイミングにて、前記第1のスイッチ回路がオン状態からオフ状態に移行するように、かつ、前記入力端子にノイズが印加されなくなったことによって前記第1のスイッチ回路の入力端の電位が変化する第3のタイミングよりも後の第4のタイミングにて、前記第1のスイッチ回路がオフ状態からオン状態に復帰するように、前記遅延回路の遅延量ならびに前記抵抗素子の抵抗値が設定される。
【0038】
タイミング調整用の遅延回路の遅延量、ならびにノイズを検出する抵抗素子(タイミング調整用の抵抗を兼ねる)の抵抗値の双方を最適化することによって、ノイズ検出時には、ノイズが第1のスイッチ回路に到達する前に第1のスイッチ回路がオフし、ノイズが印加されなくなったときは、ノイズが十分に抑制された(ノイズ印加が確実になくなった)後に第1のスイッチ回路がオン状態に復帰するように、タイミングを調整することができる。これによって、ノイズの確実な遮断、ならびにノイズの継続期間において第1のスイッチ回路をオン状態に復帰させてしまう誤動作の確実な防止が実現される。
【0039】
(13)本発明の入力インタフェース回路の他の態様では、前記抵抗素子の一端に接続されたタイミング調整回路を、さらに有し、前記タイミング調整回路は、前記タイミング調整用の遅延回路の遅延量よりも大きな遅延量をもつ第1のパスと、前記遅延回路の前記遅延量よりも小さな遅延量をもつ第2のパスと、前記第1のパスからの信号および前記第2のパスからの信号を受けて一つの信号を出力するゲート回路と、を有し、前記入力端子へのノイズ印加に伴って前記ノイズ検出用トランジスタがオンして前記抵抗素子の一端の電圧レベルが変化すると、その電圧変化は、前記第2のパスを経由して伝達され、前記入力端子に前記ノイズが印加されなくなったことに伴って前記ノイズ検出用トランジスタがオフして前記抵抗素子の一端の電圧レベルが変化すると、その電圧変化は、前記第1のパスを経由して伝達される。
【0040】
前項の態様では、第1のスイッチ回路をオフからオンに復帰させるタイミングは、抵抗素子の時定数に依存していたが、本態様では、抵抗素子の時定数によるタイミング調整の代わりに、遅延の大きな第1のパスと、遅延が小さい第2のパスと、ゲート回路(例えばNORゲート:論理和ゲートを基本とするゲート回路)と、によって構成されるタイミング調整回路によってタイミングを調整する。これによって、タイミング調整をより高精度に行うことができる。本態様では、タイミング調整回路は、ノイズ検出用のパスに挿入されており、ノイズが検出されたときは、正規の信号パスに挿入されたタイミング調整用の遅延回路よりも小さな遅延量の第1のパスを経由して、迅速にノイズ検出信号が伝達され、第1のスイッチ回路は速やかにオフしてノイズが確実に遮断される。一方、ノイズ検出信号が検出されなくなったときは、その電圧変化は、正規の信号パスに挿入されたタイミング調整用の遅延回路よりも大きな遅延量の第2のパスを経由して伝達される。よって、第1のスイッチ回路の入力端の電位がノイズが無い状態の電位に戻った後に第1のスイッチ回路がオフからオンに切換えられることになり、ノイズが継続している期間に、第1のスイッチ回路がオンに復帰する誤動作が生じず、よってノイズ除去動作に万全を期すことができる。
【0041】
(14)本発明の入力インタフェース回路の他の態様では、前記入力端子と前記第1のスイッチ回路との間に設けられたタイミング調整回路をさらに有し、前記タイミング調整回路は、タイミング調整のための所定の遅延量を有する第1の遅延パスと、前記第1の遅延パスよりも小さな遅延量をもつ第2のパスと、前記第1のパスからの信号および前記第2のパスからの信号を受けて一つの信号を出力するゲート回路と、を有し、前記入力端子へのノイズ印加に伴って前記タイミング調整回路の入力端の電圧レベルが変化すると、その電圧変化は、前記第1のパスを経由して伝達され、前記入力端子に前記ノイズが印加されなくなったことに伴って前記タイミング調整回路の入力端の電圧レベルが変化すると、その電圧変化は、前記第2のパスを経由して伝達される。
【0042】
本態様では、タイミング調整回路を、正規の信号の伝達経路に挿入する。このタイミング調整回路は、所定の遅延量をもつ第1のパスと、遅延が小さい第2のパスと、ゲート回路(例えばNANDゲート:論理積ゲートを基本とするゲート回路)と、によって構成する。入力端子に印加されたノイズは、第1のパスを経由して遅延して伝達されるため、第1のスイッチ回路にノイズが到達する前に、第1のスイッチ回路を余裕をもってオフさせることができる。ノイズが印加されなくなったときは、その電圧変化は遅延量が小さな第2のパスを経由して第1の回路スイッチに伝達される。よって、第1のスイッチ回路の入力端の電圧がノイズがないときの電位に戻った後に、第1のスイッチ回路をオフからオンに復帰させることがより容易に行える。
【0043】
(15)本発明の入力インタフェース回路の他の態様では、前記入力端子と前記第1のスイッチ回路とを結ぶ経路に挿入された、ヒステリシス特性をもつ入力バッファと、前記入力バッファの出力端に一端が接続された平滑コンデンサと、をさらに有する。
【0044】
上記の態様では、電源電圧を越える過大なノイズが入力端子に印加されたことを想定しているが、ノイズとしては、電源電圧を越えない小規模のノイズも想定される。このような小規模のノイズも除去するのが好ましい。そこで、正規の信号伝達経路に、入出力特性にヒステリシスをもつ入力バッファ(例えば、シュミット回路)と、平滑コンデンサと、を設ける。入力バッファは、ヒステリシス特性に起因して入力不感帯(つまり、入力信号のレベルが変動しても出力レベルが変化しない入力レンジ)をもっており、小規模のノイズの振幅が、この入力不感帯幅内に収まっていれば、入力バッファからは、その小規模ノイズは出力されない。また、万一、小規模ノイズが出力されたときには、平滑コンデンサによってノイズを平滑することによって、次段の回路に誤った制御信号(リセット信号やチップイネーブル信号等)が入力されることを防止することができる。これによって、入力インタフェース回路のノイズ除去機能の強化を図ることができる。
【0045】
(16)本発明の入力インタフェース回路の他の態様では、前記ノイズ検出回路の電源電圧と、前記入力端子からの信号を受ける回路の電源電圧は、別系統の電源電圧である。
【0046】
入力インタフェースにおいて、例えば、前段部分は第1の電源電圧で動作し、後段部分は別系統の第2の電源電圧で動作し、かつ、集積回路装置内の内部回路も第2の電源電圧で動作する回路系を想定する。別系統の電源電圧で動作する各回路ブロックでは、各回路が独立して動作し、ノイズも独立に発生することから、特にインタフェース回路におけるノイズ対策が重要である。本発明のノイズキャンセラ付きの入力インタフェース回路を採用することによって、別系統の電源系で動作する回路間の、静電気ノイズ等に起因する誤動作を確実に防止することができる。よって、回路の信頼性が向上する。
【0047】
(17)本発明の集積回路装置は、本発明の入力インタフェース回路を有する。
【0048】
本発明のインタフェース回路を搭載することによって、ノイズに起因する内部回路の重大な誤動作(例えば、メモリがリセットされるという誤動作)が生じることがない。よって、集積回路装置の信頼性が向上する。
【0049】
(18)本発明の電子機器は、本発明の集積回路装置を有する。
【0050】
本発明の集積回路装置を搭載することによって、ノイズに起因する電子機器の重大な誤動作(例えば、パネルの表示が消えるという誤動作)が生じることがない。よって、電子機器の信頼性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
次に、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成のすべてが、本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0052】
(第1の実施形態)
(入力インタフェース回路の全体構成)
図1は、本発明の入出力インタフェース回路の一例を示すブロック図である。入力部には通常静電保護回路が設けられているが、図1では、便宜上、記載を省略する。
【0053】
図示されるように、IC(集積回路装置)90は、リセット信号(RSP)等の制御信号(Vin)が入力される入力端子Xと、入力インタフェース回路(ブロックA)と、内部回路(例えば、メモリを有するゲートアレイからなるロジック回路:ブロックB)と、が設けられている。入力インタフェース回路(ブロックA)100は、例えば、集積回路装置90のパッド(外部接続端子)近傍に配置されるI/Oセル(入出力セル)である。
【0054】
図17で説明したように、正規の制御信号(Vin)の代わりにノイズ(静電気ノイズ等)が入力端子Xに入力されたときには、そのノイズによって、例えば、ブロックB内のメモリがリセットされる事態が発生する場合があるため、そのような事態の発生を確実に防止するために、入力インタフェース回路(ブロックA)には、ノイズ検出回路200と、ノイズキャンセラ500と、が設けられている。
【0055】
ノイズ検出回路200は、入力端子Xに入力されるノイズを、正規の入力信号(Vin)とは区別して検出する。正規の入力信号は、高電位電源(VDD)と低電位電源(VSS)との間で動作するが、次段の回路ブロックB(内部ロジック回路)110の動作に重大な影響を与えるようなノイズは、VDDを超えるピーク電圧値あるいはVSSよりも低い電圧値をもつ場合が多く、その電圧レベルの差に着目して、ノイズ検出回路200は、ノイズを正規の入力信号と区別して検出する(この点については、後述する)。
【0056】
ノイズキャンセラ500は、入力端子XとブロックB(内部ロジック回路)110とを結ぶ正規の信号経路に挿入された第1のスイッチ回路SW1と、第1のスイッチ回路SW1に対して相補的にオン/オフされる第2のスイッチ回路SW2と、2つのインバータ(INV1,INV2)と、スイッチSW1,SW2を相補的に切換える切換回路300と、を有する。
【0057】
切換回路300は、ノイズ検出回路200からのノイズ検出信号NLが非アクティブレベル(L)のときは第1のスイッチ回路SW1をオンとし、第2のスイッチ回路SW2をオフとし、また、ノイズ検出信号NLがアクティブレベル(H)のときは、第1のスイッチ回路SW1をオフとし、第2のスイッチ回路SW2をオンとする。
【0058】
第1のスイッチ回路SW1がオンのときは、入力端子Xに入力される正規の信号(Vin)はスルーされて次段のブロックB(内部ロジック回路)110に伝達される。
【0059】
入力端子Xにノイズが印加されると、第1のスイッチ回路SW1が迅速にオフし、ノイズのブロックBへの伝達が遮断される。第1のスイッチ回路SW1のオフと同時に第2のスイッチ回路SW2がオンし、これによって、スイッチSW2および2つのインバータ(INV1,INV2)を経由する正帰還経路が形成され、スイッチSW1の出力端の直前の電圧がラッチされ、そのラッチされた電圧がブロックB(内部ロジック回路)110に供給される。
【0060】
このように、図1の入力インタフェース回路によれば、ノイズが入力されると、そのノイズの検出結果に基づいてノイズを遮断すると共に、ノイズのない状態の電圧を出力するため、次段の回路ブロックBへのノイズ伝達は確実に防止される。
【0061】
(入力インタフェース回路の具体的な構成例と動作)
図2は、図1の入力インタフェース回路(ブロックA)の具体的な回路構成の一例を示す回路図である。
【0062】
図示されるように、ノイズ検出回路200は、ソース(第1の端子)が入力端子Xに接続され、ゲートが高電位電源電圧(HVDD)ノードに接続されたノイズ検出用のPチャネルトランジスタMP(Nウエルの電位を適応的に調整可能なフローティングNウエル領域に形成されたPtiMOSトランジスタFNWL)と、入力端子Xにノイズが印加されたときに、フローティングNウエル領域の電位を入力端子Xの電位と等しくするための電位調整用のPMOSトランジスタM61と、ノイズ検出用トランジスタMP(FNWL)のドレイン(第2の端子)に一端が接続され、他端が低電位電源電圧(VSS)ノードに接続される抵抗素子R1と、を有している。
【0063】
ノイズ検出用PMOSトランジスタMP(フローティングNウエルトランジスタFNWL)のソース/ドレインは、フローティングNウエル領域に形成される。ここで、「フローティングウエル領域」とは、「電位が固定されておらず、適応的にその電位を調整可能なウエル領域(広義には半導体基板であり、トランジスタ要素が形成される半導体領域:一般的にはN型またはP型のいずれか)」である。
【0064】
電位調整用トランジスタM61は、ノイズ検出用PMOSトランジスタMP(FNWL)と同一の製造プロセスで形成される同一サイズのトランジスタであり、ノイズ検出用PMOSトランジスタMP(FNWL)と同様に、ソースが入力端子Xに接続され、ゲートが高電位電源電圧(HVDD)ノードに接続されている。
【0065】
また、ノイズキャンセラ500は、正規の信号経路に挿入されたタイミング調整用の遅延回路800(INV6〜INV9によって構成される)と、入力信号のスルー/ラッチを切換えることが可能なスルーラッチ400と、2段のインバータ(INV4,INV5)によって構成される切換回路300(ノイズ検出経路のタイミング調整回路700を兼ねる)と、を有する。
【0066】
第1のスイッチ回路SW1は、一対のPMOSトランジスタP1/NMOSトランジスタN1を組み合わせて構成されるトランスファースイッチで構成され、同様に、第2のスイッチ回路SW2は、一対のPMOSトランジスタP2/NMOSトランジスタN2を組み合わせて構成されるトランスファースイッチで構成される。
【0067】
切換回路300を構成する初段のインバータINV4の出力端は、トランスファースイッチを構成するNMOSトランジスタN1のゲートおよびPMOSトランジスタP2のゲートに接続されており、切換回路300を構成する次段のインバータINV5の出力端は、トランスファースイッチを構成するPMOSトランジスタP1のゲートおよびNMOSトランジスタN2のゲートに接続されている。
【0068】
図2の入力インタフェース回路の動作は以下のとおりである。以下の説明において、VthpはPMOSトランジスタの閾値電圧である(同様に、VthnはNMOSトランジスタの閾値電圧である)。
【0069】
ゲートが高電位電源電位(HVDD)ノードに接続されたノイズ検出用PMOSトランジスタMP(フローティングNウエルトランジスタFNWL)は、ソース(第1の端子)の電位が(HVDD+Vthp)以上となったときのみオンし、正規の入力信号Vin(電圧レベルはVDDまたはVSS)が入力されるときはオフ状態を維持する。また、ノイズ検出用PMOSトランジスタMP(FNWL)は、高周波応答特性に優れたゲート接地のトランジスタであり、ノイズ印加時において高速なオンが可能である。
【0070】
VinがLレベル(非アクティブレベル)であるときに、入力端子Xに正極性のノイズが印加されると、入力端子Xの電圧レベルSLはローレベルからハイレベルに変化する。この電圧レベルの変化は、遅延回路800によって所定量の遅延を与えられて第1のスイッチ回路SW1に到達する。
【0071】
一方、入力端子Xへのノイズの印加によって、入力端子Xの電圧レベルSLがHVDD+Vthp以上に上昇すると、ノイズ検出用トランジスタMP(FNWL)がオンし、ノイズはドレイン(第2の端子)に伝達される。このとき、電位調整用トランジスタM61も同時にオンし、フローティングNウエルの電圧レベルがノイズ検出用トランジスタのソース(第1の端子)の電圧レベルと同じになり、よって、ソースとフローティングNウエル間に寄生するPN接合ダイオードD1がオンしない(この点については、図5,図6を用いて後述する)。
【0072】
Nウエルの電位が固定(例えばVSSに固定)されていたとすると、ノイズが入力されたときに、ノイズ検出用PMOSトランジスタMPのソースとNウエル(広義には基板)との間の寄生ダイオードD1がオンして過渡電流が流れる。このとき、電流量を制限する要素が何も無いことから過大な電流が流れて、例えば配線が溶断し素子の破壊が生じる場合があり、あるいはラッチアップの要因となる場合がある。
【0073】
また、寄生ダイオードD1がオンすると、そのダイオードの順方向電圧分だけNウエル電位が低下し、これによってノイズ検出用PMOSトランジスタの閾値電圧に変動が生じる。つまり、入力端子Xに印加される電圧レベルが、VDD+Vthp+Vf(Vfは寄生ダイオードの順方向電圧)よりも大きくないとノイズ検出用トランジスタMPがオンしないことになり、現実のノイズ検出電圧と設計値との間にずれが生じてしまう。
【0074】
そこで、Nウエル領域の電位を固定せずに、状況に応じて電位を調整可能とすると共に、上述のとおり、電位調整用のPMOSトランジスタM61を同時にオンさせてフローティングNウエルの電位をソースと同じ電位にし、寄生ダイオードD1のオンを阻止し、過大な電流による素子破壊やVthの変動を防止する。
【0075】
ノイズ検出用PMOSトランジスタMPがオンすると、抵抗素子R1の一端の電位(b点の電位)が上昇し、これによって、ノイズ検出信号がアクティブレベル(H)となる。
【0076】
ここで、ノイズの検出信号NLを生成する抵抗素子R1は、以下の4つの機能を併せ持つ。すなわち、「プルダウン抵抗:ノイズがないときにノイズ検出経路の電圧レベルをグランドに固定する働きをもつ抵抗)」としての機能と、「放電抵抗(ノイズ入力時において、その過大なノイズエネルギを交流接地に速やかに逃がし、ノイズ検出用トランジスタMP等の破壊を防ぐ働きをもつ抵抗)」としての機能と、「センシング抵抗(ノイズ電流が流れているときにノイズ検出経路の電圧レベルを変化させることによってノイズ検出信号NLを生成する働きをもつ抵抗)」としての機能と、「時定数設定抵抗(ノイズ検出信号がアクティブレベルになった後、非アクティブレベルに復帰するまでの復帰時間を調整する働きをもつ抵抗)」としての機能と、を併せ持つ。
【0077】
抵抗素子R1の抵抗値は、かなりの高抵抗に設定される。よって、ノイズが入力されたとき、b点(抵抗素子R1の一端)の電位は急速に立ち上り、これによって、速やかに第1のスイッチ回路SW1をオフすることができる。
【0078】
一方、ノイズが去った後は、電荷の接地への放電が緩やかであることから、b点の電位は徐々に立ち下がることになり、これによって、ノイズが十分に低下した後に第1のスイッチ回路SW1をオンに復帰させることができる(この点については、図4を用いて、後により具体的に説明する)。
【0079】
このように、抵抗素子R1は多くの機能を集約しており、これによって、簡素化された構成でもって、回路に悪影響を生じさせることなく、ノイズを迅速かつ確実に検出することができる。さらに、抵抗素子R1の抵抗値を最適化することによって、ノイズが去った後のノイズキャンセラの復帰タイミングも調整することも可能となる。
【0080】
ノイズキャンセラ500は、上述のとおり、第1および第2のスイッチ回路(SW1,SW2)を含んで構成されるスルーラッチ(保持回路)400と、切換回路300(タイミング調整回路700としての機能も併せ持つ)と、を有する。切換回路300は、通常状態には第1のスイッチ回路SW1をオンして入力信号をそのままスルーラッチの出力端子から出力し、ノイズ検出回路200によってノイズが検出されたときには第1のスイッチ回路をオフし、第2のスイッチ回路をオンすることで、ノイズが重畳された入力信号の伝送を遮断し、同時に、スルーラッチ(保持回路)400において保持されている直前の信号を、出力段のインバータINV3を経由してスルーラッチの出力端子(Y)から出力する(図3(A),(B)参照)。
【0081】
このように、汎用性ある簡単な回路によって高性能なノイズキャンセラを構成することができ、このことは、省電力化や省スペース化の点で有利である。
【0082】
また、上述のとおり、図2の入力インタフェース回路では、入力端子Xと第1のスイッチ回路SW1との間に、タイミング調整用の遅延回路800(4段のインバータINV6〜INV9により構成される)が設けられている。
【0083】
第1および第2のスイッチ回路(SW1,SW2)を、どのようなタイミングで相補的にオン/オフさせるかは、ノイズの確実な遮断の実現、ならびにノイズの継続期間において第1のスイッチ回路SW1をオン状態に復帰させてしまう誤動作の確実な防止の観点から重要である。
【0084】
そこで、入力端子Xと第1のスイッチ回路SW1との間にタイミング調整用の遅延回路800を設けるものである。これによって、ノイズが第1のスイッチ回路SW1に到達するタイミングが遅れる。その遅れている期間中に、第1のスイッチ回路SW1をオンからオフに移行させることは、ノイズ検出信号NLが高速に得られることを考慮すれば容易である。
【0085】
よって、ノイズが第1のスイッチ回路SW1に到達するよりも前に第1のスイッチ回路SW1をオフ状態とすることを保障することができ、したがって、ノイズの確実な遮断が実現される。
【0086】
図3(A),図3(B)は、スルーラッチの動作を示す回路図である。図3(A),図3(B)において、信号が伝達される様子を太線の矢印または太線の破線で示す。
【0087】
図3(A)に示すように、通常状態(ノイズが無い状態)では、第1のスイッチ回路SW1がオンし、入力信号は、そのままスルーラッチの出力端子Yから出力される。また、図3(B)に示すように、ノイズ検出時には、直前の信号(ノイズが無い状態の信号)がラッチされ、そのラッチされている電圧が出力端子Yから出力される。
【0088】
図4は、図2の入力インタフェース回路における各部の電圧変化のタイミングを示すタイミング図である。図4において、Vth(inv)は、インバータのH/Lの判定閾値(ここでは、電源電圧の中点電圧とする)である。
【0089】
入力端子Xに正極性のノイズが印加されると、入力端子Xの電圧は急速に立ち上がり、時刻t1にインバータ(INV6〜INV9)のH/Lの判定閾値に達し、時刻t2に高電位電源電圧(HVDD)に達する。
【0090】
点a(第1のスイッチ回路SW1の入力端)の電圧は、時刻t1から遅延回路800による遅延時間T1経過後の時刻t5にハイレベルに立ち上がる。
【0091】
一方、点b(抵抗素子R1の一端)の電圧レベルは、抵抗素子R1が高抵抗であることから、ノイズの電圧レベルが高電位電源電圧(HVDD)を超えるタイミングt2を起点として速やかにハイレベルに立ち上がり、時刻t3において、インバータINV4の閾値電圧(Vth(inv))を超える。
【0092】
点cの電圧レベル(トランスファースイッチSW1を構成するPMOSトランジスタP1のゲート電圧ならびにトランスファースイッチSW2を構成するNMOSトランジスタN2のゲート電圧)は、切換回路300(タイミング調整回路700を兼ねる)による若干の遅延の後、時刻t4においてハイレベルとなり、このタイミングで、第1のスイッチ回路SW1はオンからオフに移行し、第2のスイッチ回路SW2がオフからオンに移行する。これによって、ノイズの伝達が遮断されると共に、直前の電圧のラッチモードに切り換わる。
【0093】
ノイズが第1のスイッチ回路SW1に到達するタイミング(時刻t5)よりも以前のタイミング(時刻t4)において第1のスイッチ回路SW1がオフ状態に移行するため、ノイズは確実に遮断され、ノイズによって回路ブロックB(内部ロジック回路)110が誤動作することがない。
【0094】
また、入力端子Xにノイズが印加されなくなると、点a(第1のスイッチ回路SW1の入力端)の電圧は、時刻t7から遅延回路800による遅延時間T1経過後の時刻t8においてローレベルに立ち下がる。
【0095】
一方、時刻t6において点b(抵抗素子R1の一端)の電圧レベルが高電位電源電圧(HVDD)を下回ると、ノイズ検出用トランジスタMPがオフし、抵抗素子R1からの電荷の放電によって、点bの電圧レベルは徐々に低下する。抵抗素子R1の抵抗値がかなり高く設定されており、このために、抵抗素子R1を介した電荷の接地への放電が緩やかであることから、b点の電圧レベルは徐々に立ち下がる。b点の電圧レベルがVth(inv)を下回るのは時刻t9である。
【0096】
点cの電圧レベル(トランスファースイッチSW1を構成するPMOSトランジスタP1のゲート電圧ならびにトランスファースイッチSW2を構成するNMOSトランジスタN2のゲート電圧)は、切換回路300(タイミング調整回路700を兼ねる)による若干の遅延の後、時刻t10においてローレベルとなり、このタイミングで、第2のスイッチ回路SW1はオフからオンに移行し、第2のスイッチ回路SW2がオンからオフに移行する。これによって、スルーラッチ400はラッチモードからスルーモードに復帰する。
【0097】
上述のとおり、第1のスイッチ回路SW1は、t9から若干遅れた時刻t10にオン状態に復帰する。ノイズのない電圧レベルは、時刻t8にスイッチ回路SW1の入力端に到達しているため、第1のスイッチ回路SW1がオン状態に復帰したときにはノイズは残っておらず、何ら問題はない。
【0098】
このように、ノイズが検出されなくなったタイミングから所定時間(十分な時間)が経過した後に、第1のスイッチ回路SW1をオン状態に復帰させることができ、よって、遅延しているノイズが誤って出力されるという事態が生じない。
【0099】
以上のようなタイミング制御は、抵抗素子R1の抵抗値と遅延回路800の遅延量とを適切に設定することによって、容易に実現される。
【0100】
(フローティングNウエル領域の電位の最適化)
図5(A),図5(B)は、ノイズ検出用トランジスタにおけるフローティングNウエル領域の、ノイズ検出時の電位調整について説明するための図である。図5(A)は、図2のノイズ検出回路200の構成を示している(図2と共通する部分には同じ参照符号を付してある)。
【0101】
図5(B)は、ノイズ検出トランジスタ(MP)のデバイス構造(およびノイズ検出時の電位調整用トランジスタ(M61)の接続状態)を示している。
【0102】
図示されるように、P型基板310にフローティングNウエル領域320が設けられ、フローティングNウエル領域320にソース領域/ドレイン領域(322a,322b)が形成されている。
【0103】
P型基板310の表面はゲート絶縁膜324にて覆われており、ゲート絶縁膜324上に、ポリシリコン等からなるゲート電極326が形成されている。
【0104】
フローティングNウエル領域320には、コンタクト用のN+拡散層323が設けられ、このN+拡散層323には配線L10が接続されており、この配線L10の端部は、例えば、他の回路に接続され、その結果として所定の電圧レベルとなっている。
【0105】
ソース/ドレイン領域322a,322bとフローティングNウエル領域320との接合面には、寄生ダイオード(寄生PN接合ダイオード)D1,D2が存在する。
【0106】
入力端子Xにノイズが入力されてノイズ検出用PMOSトランジスタMP(フローティングNウエルトランジスタFNWL)がオンしたときに、ソース322aとNウエル(広義には基板)320との間の寄生ダイオードがオンすると、電流量を制限する要素が何も無いことから、例えば、図5(B)に示すように、配線L10を経由して過大な電流I1が流れ、例えば配線が溶断して素子の破壊が生じる場合があり、あるいはラッチアップの要因となる場合がある。
【0107】
また、寄生ダイオードD1がオンすると、そのダイオードの順方向電圧分だけNウエル電位が低下し、これによってノイズ検出用トランジスタの閾値電圧に変動が生じる。つまり、入力端子Xに印加される電圧レベルが、VDD+Vthp+Vf(Vfは寄生ダイオードの順方向電圧)よりも大きくないとノイズ検出用トランジスタMPがオンしないことになり、現実のノイズ検出電圧と設計値との間にずれが生じてしまう。
【0108】
そこで、そこで、Nウエル領域322aの電位を固定せずに、状況に応じて電位を調整可能とすると共に、上述のとおり、ノイズ検出用トランジスタMPがオンすると同時に電位調整用のトランジスタ(第1の電位調整用トランジスタ)M61もオンさせ、これによってフローティングNウエル領域320の電位をソース領域322aと同じ電位にし、寄生ダイオードD1のオンを防止し、過大な電流による素子破壊や閾値の変動を防止する。上述のとおり、フローティングウエル領域320は、「電位が固定されておらず、適応的にその電位を調整可能なウエル領域(広義には半導体基板であり、トランジスタ要素が形成される半導体領域:一般的にはN型またはP型のいずれか)」である。
【0109】
図6(A),図6(B)は、ノイズ検出用トランジスタにおけるフローティングNウエル領域の、ノイズ検出時およびノイズが印加されないときの電位調整について説明するための図である。
【0110】
図6(A)および図6(B)では、図5(A),図5(B)の構成に加えて、ノイズが印加されない状態でのフローティングNウエル領域320の電位を調整するための電位調整用PMOSトランジスタ(第2の電位調整用PMOSトランジスタ)M63が設けられている。
【0111】
第2の電位調整用PMOSトランジスタM63は、ゲートが入力端子Xに接続され、ソース(第1の端子)が高電位電源電圧HVDDに接続され、ドレイン(第2の端子)がフローティングNウエル領域320に接続されている。
【0112】
図5(A),図5(B)の回路構成では、第1の電位調整用PMOSトランジスタM61がオフしているとき(このときはノイズ検出用PMOSトランジスタもオフしている)は、フローティングNウエル領域の電位は不定となる。このことが特に問題となる訳ではないが、何らかの回路動作上の不都合が生じる場合がないとは言い切れない。
【0113】
そこで、図6(A),図6(B)では、電位調整用の第2のPMOSトランジスタM63を追加し、第1の電位調整用PMOSトランジスタM61がオフのときは、第2のPMOS電位調整用トランジスタM63をオンさせて、この第2の電位調整用PMOSトランジスタM63を経由してフローティングNウエル領域320の電位を高電位電源電圧(HVDD)に調整する。
【0114】
図6(B)から明らかなように、第2の電位調整用PMOSトランジスタM63がオンすると、フローティングNウエル領域320の電位はHVDDとなり、これによって、寄生ダイオードD1,D2は共に逆バイアスされ、寄生ダイオードを経由した電流パスが形成されることが確実に防止される。
【0115】
図6(A),図6(B)の構成によれば、ノイズが印加された場合、ノイズが印加されない場合の双方においてフローティングNウエル領域320の電位が安定化される。これによって、ウエル領域に起因して周辺回路に悪影響が及ぶ心配が全くなくなり、回路の安定性(信頼性)をより高めることができる。
【0116】
(タイミング調整回路をノイズ検出経路に挿入する例)
図7は、第1および第2のスイッチ(SW1,SW2)を相補的にオン/オフするタイミングを最適化する方法の他の例を示す回路図である。
【0117】
図2の入力インタフェース回路では、第1のスイッチ回路SW1をオフからオンに復帰させるタイミングは、抵抗素子R1の時定数に依存していたが、図7の入力インタフェース回路では、抵抗素子R1の抵抗値を低く設定して時定数を小さくし、その代わりに、ノイズ検出用のパスに、タイミング調整回路702を挿入している。
【0118】
タイミング調整回路702は、タイミング調整用の遅延回路800の遅延量よりも大きな遅延量をもつ第1のパス(INV10〜INV13を経由するパス)と、遅延回路800の遅延量よりも小さな遅延量をもつ第2のパス(INV10〜INV13をバイパスするパス)と、前記第1のパスからの信号および前記第2のパスからの信号を受けて一つの信号を出力するゲート回路(具体的にはNORゲート:論理和ゲートを基本とするゲート回路)NOR1と、を有する。
【0119】
ノアゲートNOR1の出力電圧は、入力端子Gの電圧レベルがHとなったときにHからLに変化し、一方、2つの入力端子(F,G)の双方の電圧レベルがLになったときのみ、LからHに変化する。
【0120】
したがって、ノイズ検出用トランジスタMPがオンして抵抗素子R1の一端(b点)の電圧レベルがLからHに変化すると、その電圧変化は、第2のパス(遅延が小さなパス)を経由して速やかに伝達され、入力端子Gの電圧レベルがLからHに変化する。よって、NOR1の出力の電圧レベルは、HからLに変化し、これによってノイズが迅速に検出される。
【0121】
一方、ノイズが印加されなくなったことに伴って、ノイズ検出用トランジスタMPがオフして抵抗素子の一端(b点)の電圧レベルがHからLに変化すると、その電圧変化は、第1のパス(INV10〜INV13を経由するパス)を経由してNOR1の入力端子Fに伝達されることになる。入力端子Gの電圧は、より早いタイミングでLに反転しており、入力端子Fの電圧レベルがLに変化するのを待って、NOR1の出力の電圧レベルがLからHに復帰する。ノイズが検出されなくなったことを示す電圧変化は、実質的に、第1のパスを経由してNOR1に伝達されたことになる。
【0122】
図7の場合、抵抗素子R1の抵抗値を小さく設定して放電時定数を低下させ、その代わりに、タイミング調整回路702におけるインバータ(INV10〜INV13)の遅延量と、遅延回路800におけるインバータ(INNV6〜INV9)による遅延量によって、高精度に、第1および第2のスイッチ(SW1,SW2)のオン/オフのタイミングを調整することができる。
【0123】
(タイミング調整回路を正規の信号経路に挿入する例)
図8は、第1および第2のスイッチ(SW1,SW2)を相補的にオン/オフするタイミングを最適化する方法のさらに他の例を示す回路図である。
【0124】
図8では、タイミング調整回路810を正規の入力信号側に設けている。タイミング調整回路810は、タイミング調整のための所定の遅延量を有する第1の遅延パス(INV14〜INV17を経由するパス)と、第1の遅延パスよりも小さな遅延量をもつ第2のパス(INV14〜INV17をバイパスするパス)と、第1のパスからの信号および第2のパスからの信号を受けて一つの信号を出力するゲート回路(具体的にはNANDゲート:論理積ゲートを基本とするゲート回路)と、を有する。
【0125】
ナンドゲートNAND1の出力の電圧レベルは、入力端子Yの電圧レベルがLとなったときにLからHに変化し、一方、2つの入力端子(X,Y)の双方の電圧レベルがHになったときのみ、HからLに変化する。
【0126】
タイミング調整回路を、正規の信号の伝達経路に挿入する。このタイミング調整回路は、所定の遅延量をもつ第1のパスと、遅延が小さい第2のパスと、ゲート回路(具体的にはNANDゲート:論理積ゲートを基本とするゲート回路)と、によって構成する。
【0127】
入力端子Xに印加された正極性のノイズは、実質的に第1のパスを経由して遅延して伝達されるため、第1のスイッチ回路SW1にノイズが到達する前に、第1のスイッチ回路SW1を余裕をもってオフさせることが容易化される。
【0128】
また、ノイズが印加されなくなったときは、その電圧変化は遅延量が小さな第2のパスを経由して速やかに伝達される。よって、第1のスイッチ回路SW1の入力端(a点)の電圧がノイズがないときの電位に戻った後に、第1のスイッチ回路をオフからオンに復帰させることがより容易に行える(つまり、第1のスイッチ回路SW1をオン状態に復帰させたときに、遅延したノイズが残存している事態が防止される)。よって、第1および第2のスイッチ回路(SW1,SW2)のオン/オフのタイミングをより容易に最適化することができる。
【0129】
(シュミット回路を正規の信号経路に挿入した構成)
図9は、シュミット回路を正規の信号経路に挿入した構成をもつ入力インタフェース回路を示す回路図である。
【0130】
図示されるように、入力端子Xと第1のスイッチ回路SW1とを結ぶ正規の信号経路には、入出力特性としてヒステリシス特性をもつ入力バッファSHと、入力バッファSHの出力端に一端が接続された平滑コンデンサC10と、が設けられている。
【0131】
上述の入力インタフェース回路では、電源電圧を越える過大なノイズが入力端子に印加されたことを想定しているが、ノイズとしては、電源電圧を越えない小規模のノイズも想定される。このような小規模のノイズも除去するのが、次段の回路の誤動作をより確実に防止する観点から好ましいといえる。
【0132】
そこで、正規の信号伝達経路に、入出力特性にヒステリシスをもつ入力バッファ(例えば、シュミット回路)SHと、平滑コンデンサC10と、を設ける。入力バッファSHは、ヒステリシス特性に起因して入力不感帯(つまり、入力信号のレベルが変動しても出力レベルが変化しない入力レンジ)をもっており、小規模のノイズの振幅が、この入力不感帯幅内に収まっていれば、入力バッファSHからは、その小規模ノイズは出力されない。
【0133】
また、万一、小規模ノイズが出力されたときには、平滑コンデンサC10によってノイズを平滑することによって、次段の回路(回路ブロックB)に誤った制御信号(リセット信号やチップイネーブル信号等)が入力されることを防止することができる。これによって、入力インタフェース回路のノイズ除去機能の強化を図ることができる。
【0134】
(第2の実施形態)
前掲の実施形態では、高電位電源電圧(HVDD)を超える正極性のノイズをキャンセルする場合について説明したが、本実施形態では、低電位電源(VSS:例えばGND)よりも低い負極性のノイズをキャンセルする場合について説明する。
【0135】
本実施態様では、フローティングPウエルを使用し、ノイズ検出用トランジスタならびに第1および第2の電位調整用トランジスタとしてNMOSトランジスタを使用する。また、抵抗素子としてプルアップ抵抗を用いる。得られる効果は、前掲の実施形態と実質的に同じである。
【0136】
図10は、低電位電源電圧よりも低い負極性のノイズをキャンセルするノイズキャンセラをもつ入力インタフェース回路の構成を示す回路図である。
【0137】
図10の入力インタフェース回路の基本的構成は、図2の入力インタフェース回路の構成と同じであるが、図10の場合、ノイズ検出回路202の構成が、図2とは異なっている。
【0138】
すなわち、図10のノイズ検出回路202は、ゲートが接地(グランドに接続)されたNMOSトランジスタMN(フローティングPウエル領域にソース・ドレインが形成されたフローティングPウエルトランジスタFPWL:電位調整用トランジスタは記載を省略する)と、一端が高電位電源電圧(HVDD)のノードに接続された抵抗素子R2と、を有する。
【0139】
ノイズ検出用トランジスタ(NMOSトランジスタ)MNは、入力端子Xの電圧が、(GND−Vthn)以下となったときにオンし、これによって、抵抗素子R2の一端の電圧がHからL(ノイズ検出時のアクティブレベル)に変化する。
【0140】
図11は、図10の入力インタフェース回路の各部の電圧変化のタイミングを示すタイミング図である。図11に示されるように、入力端子Xには、低電位電源(GND)よりも低いノイズが入力されると、そのノイズは、遅延回路800の遅延量T1だけ遅延して伝達され、一方、ノイズ検出用トランジスタMNがオンして、点bの電圧は、時刻t12から降下を開始し、時刻t14には、第1のスイッチ回路SW1がオンからオフに移行する。
【0141】
同様に、ノイズが印加されなくなると、点aの電圧は時刻t18に元の電圧レベルに戻り、時刻t20に第1のスイッチ回路SW1がオフからオンに復帰する。なお、図11のt11〜t20は、図4のt1〜t10に対応する。
【0142】
図12(A),図12(B)はフローティングPウエルトランジスタを用いたノイズ検出回路の構成例を示す回路図である。
【0143】
図12(A)は、図5(A)の回路構成に対応する。図示されるように、ノイズ検出用NMOSトランジスタ(MN)のフローティングPウエル領域の電位を調整するために第1の電位調整用NMOSトランジスタM71が設けられている。
【0144】
図12(B)は、図6(A)の回路構成に対応する。図12(B)では、ノイズが検出されないときのフローティングPウエルの電位を調整するための第2の電位調整用NMOSトランジスタM73が追加されている。ノイズが検出されないときは、第2の電位調整用NMOSトランジスタM73がオンして、フローティングPウエル領域の電圧レベルはグランドレベルに調整される。これによって、寄生ダイオードが逆バイアスされ、寄生ダイオードを経由した電流パスの発生が確実に防止される。
【0145】
なお、負極性のノイズを除去する構成をもつ入力インタフェース回路においても、図7〜図9の各々に示したのと同様の回路構成を採用することができる。
【0146】
(第3の実施形態)
本実施形態では、本発明の入力インタフェース回路を搭載する集積回路装置(IC)のレイアウト構成例や、入力インタフェース回路(I/Oセル)における構成のバリエーションについて説明する。
【0147】
図13は、本発明の入力インタフェース回路を搭載する集積回路装置(IC)のレイアウト構成例を説明するための図である。
【0148】
図13の集積回路装置(IC)90のチップ周辺には、入力インタフェース回路としてのI/Oセル100a〜100dが設けられている。チップの中央には、ゲートアレイ等のセミカスタムIC設計手法によって形成される内部ロジック回路110をもつコア回路610が設けられている。
【0149】
図13では、I/Oセル(100a〜100d)とコア回路610とは別系統の電源により動作する。すなわち、I/Oセル(100a〜100d)は、高電位電源電圧(HVDD:例えば3V)で動作し、コア回路610は低電位電源電圧(LVDD:例えば1.8V)で動作する。なお、I/Oセル(100a〜100d)は、出力段にレベルシフト回路(不図示)を備えており、このレベルシフト回路は、高電位電源電圧(HVDD)で動作する。
【0150】
すなわち、図13のICでは、I/Oセル(入力インタフェース回路)の前段部分は第1の電源電圧で動作し、後段部分は第2の電源電圧で動作し、かつ、集積回路装置内の内部回路も第2の電源電圧で動作する回路系となっている。
【0151】
このような別系統の電源電圧で動作する回路ブロックでは、各回路が独立して動作し、ノイズも独立に発生することから、特にインタフェース回路(I/Oセル)におけるノイズ対策が重要である。
【0152】
本発明のノイズキャンセラ付きのI/Oセル(入力インタフェース回路)100a〜100dを採用することによって、別系統の電源系で動作する回路間の、静電気ノイズ等に起因する誤動作を確実に防止することができる。よって、回路の信頼性が向上する。
【0153】
また、図13において、仮に、I/Oセル(入力インタフェース回路)100a,100bと、内部ロジック110とを結ぶ経路(図中、太線で示される経路)がクリティカルパス(ノイズによって内部回路に重大な誤動作が生じる可能性がある重要な信号経路)であり、もう一つの経路は、クリティカルパスではないときは、本発明のノイズキャンセラを搭載したI/Oセルは、クリティカルパスのみに設けてもよい。この場合、I/Oセルの占有面積の増加を最小化することができる。
【0154】
図14は、本発明のノイズキャンセラを搭載したI/Oセルをクリティカルパスのみに設ける場合に、フローティングウエルと、電位が固定された通常のウエルとを選択的に形成する方法を説明するための図である。
【0155】
本発明のノイズキャンセラを搭載したI/Oセルをクリティカルパスのみに設ける場合には、そのクリティカルパスに介在するI/Oセルには、フローティングウエルを形成する必要があり、クリティカルパス以外のパスに介在するI/Oセルには、通常の電位固定のウエルを形成する必要がある。
【0156】
図13の場合、I/Oセル100a〜100dもゲートアレイ的な手法で形成されるため、配線形態を変更するだけで、ウエルの使い分けは簡単に行うことができる。図14(A)ではフローティングNウエルが構築されている。図14(B)では、配線を変更してフローティングNウエル320をHVDDに接続することによって、通常の電位固定のNウエルが構築されている。
【0157】
本発明のノイズキャンセラをもつ入力インタフェース回路を集積回路装置(IC)90に搭載することによって、ノイズに起因する内部回路の重大な誤動作(例えば、メモリがリセットされるという誤動作)が生じることがない。よって、集積回路装置(IC)90の信頼性が向上する。
【0158】
(第4の実施形態)
本実施形態では、本発明の入力インタフェース回路を内蔵する集積回路装置(IC)を搭載した電子機器の例について説明する。この電子機器は、超小型軽量であるにもかかわらず、例えばESDパルス(静電気放電パルス)の入力によって誤動作することがなく、ESDに対する信頼性が保障されることになる。例えば、ノイズに起因してパネルの表示が消えるという誤動作が生じることがなく、よって、電子機器の信頼性が向上する。
【0159】
図15(A)〜図15(C)は各々、本発明の誤動作防止回路を搭載した電子機器の例の外観を示す図である。
図15(A)は、電子機器の1つである携帯電話950の外観図の例を示している。この携帯電話950は、入力部として機能するダイヤルボタン952や、電話番号や名前やアイコンなどを表示するLCD954や、音出力部として機能し音声を出力するスピーカ956を備える。
【0160】
また、図15(B)は、電子機器の1つである携帯型ゲーム装置960の外観図の例を示している。この携帯型ゲーム装置960は、入力部として機能する操作ボタン962、十字キー964や、ゲーム画像を表示する画像出力部966や、音出力部として機能しゲーム音を出力するスピーカ968を備える。
【0161】
また、図15(C)は、電子機器の1つである携帯用情報機器(PDA)970の外観図の例を示している。この携帯用情報機器(PDA)970は、入力部として機能するキーボード972や、文字、数字、グラフィックなどを表示する画像出力部974、音出力部976を備える。
【0162】
なお、図15(A)、図15(B)、図15(C)に示すもの以外にも、本発明を適用することが可能である。例えば、パーソナルコンピュータ、ページャー、電子卓上計算機、タッチパネルを備えた装置、プロジェクタ、ワードプロセッサ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置等の電子機器にも、本発明を適用することが可能である。
【0163】
以上説明したように、本発明の実施態様によれば、以下の主要な効果を得ることができる。但し、以下の効果は一例であり、また、すべての効果が同時に得られるとは限らず、以下の効果の列挙が、本発明の技術的範囲を不当に解釈する根拠とされてはならない。
(1)ノイズを検出し、ノイズが継続している期間においてノイズキャンセル回路によって信号伝送を遮断することから、ノイズの継続時間に関係なく、回路ブロック間の誤った信号伝送を確実に阻止することができる。また、例えば、正規の入力信号がアクティブ(例えばリセット信号がH)のときに、連続するパルス状のノイズが入力されるような特殊な場合も想定され得るが、本発明のノイズキャンセラは、ノイズを検出する毎に信号伝達経路を遮断し、直前の電圧レベルを保持するため、振動するノイズであっても確実に除去することができ、何ら問題は生じない。
(2)正極性/負極性のノイズのいずれにも対応可能である。
(3)ノイズ検出信号の生成に際しタイミング制御を行い、特に、ノイズキャンセル回路への入力信号の遅延と組み合わせることによって、回路ブロックAから回路ブロックBへの誤った信号(ノイズ)の伝送を、より確実に防止することができる。
(4)ノイズキャンセル回路を保持回路(スルーラッチ)で構成することによって、簡単な回路によってノイズを除去できる。
(5)正極性パルスが重畳されたノイズを検出する方式として、ゲート接地のスイッチングトランジスタを使用し、ソース電位とゲート電位の比較によってスイッチングトランジスタを高速にオンさせ、プルダウン(あるいはプルアップ)抵抗により形成される経路にノイズをすみやかに吸収させると共に、プルダウン(プルアップ)抵抗の一端の電位変化を論理ゲートによって検出することによってノイズを検出する方式を採用することによって、簡素化された構成によって、回路を破壊から守りつつ、高速かつ効率的にノイズを検出することができる。
(6)ノイズ検出用トランジスタとして、フローティングウエル方式のスイッチングトランジスタを採用すると共に、基板(ウエル)領域の電位を調整するためのトランジスタを設けてゲート直下の基板(ウエル領域)の電位を常に安定化させる(最適化する)ことによって、ノイズの入力の際に、他の回路に悪影響を与えることがなく、安心して本発明の入出力インタフェース回路を利用することができる。
(7)遅延回路の遅延量と抵抗素子の抵抗値の最適化、あるいは、工夫された構成をもつタイミング調整回路の採用によって、ノイズキャンセラを構成する2つのスイッチ回路のオン/オフのタイミングを容易に最適化することができる。
(8)本発明の入出力インタフェース回路は、素子数が少なくコンパクトであるため、ゲートアレイ等のI/Oセルや内部ロジック回路に容易に配置することができる。
(9)本発明によって、信号入力端子に静電気ノイズが印加された場合に、その静電気ノイズの内部回路への伝達を未然に、かつ確実に防止することができる入力インタフェース回路を提供することができる。
(10)本発明によって、集積回路装置ならびに電子機器の、ノイズに起因する誤動作を確実に防止することができ、その信頼性が向上する。
(11)本発明は、近年、特に重視される傾向にある、集積回路装置のESDエミュニティ(静電気放電耐性)の向上に有効である。
【0164】
なお、本実施形態について詳述したが、本発明の新規事項および効果から逸脱しない範囲で、多くの変形が可能であることは、当業者には容易に理解できるであろう。
【0165】
本発明は、集積回路装置において、ESD等に起因してノイズが入力端子に入力された場合に、その電源ノイズに起因して生じる誤った信号(ノイズ)の内部への伝送を確実に防止するという効果を奏し、したがって、入出力インタフェース回路、集積回路装置、電子機器として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1】本発明の入出力インタフェース回路の一例を示すブロック図
【図2】図1の入力インタフェース回路(ブロックA)の具体的な回路構成の一例を示す回路図
【図3】図3(A),図3(B)は、スルーラッチの動作を示す回路図
【図4】図2の入力インタフェース回路における各部の電圧変化のタイミングを示すタイミング図
【図5】図5(A),図5(B)は、ノイズ検出用トランジスタにおけるフローティングNウエル領域の、ノイズ検出時の電位調整について説明するための図
【図6】図6(A),図6(B)は、ノイズ検出用トランジスタにおけるフローティングNウエル領域の、ノイズ検出時およびノイズが印加されないときの電位調整について説明するための図
【図7】第1および第2のスイッチ(SW1,SW2)を相補的にオン/オフするタイミングを最適化する方法の他の例を示す回路図
【図8】第1および第2のスイッチ回路を相補的にオン/オフするタイミングを最適化する方法のさらに他の例を示す回路図
【図9】シュミット回路を正規の信号経路に挿入した構成をもつ入力インタフェース回路を示す回路図
【図10】低電位電源電圧よりも低い負極性のノイズをキャンセルするノイズキャンセラをもつ入力インタフェース回路の構成を示す回路図
【図11】図10の入力インタフェース回路の各部の電圧変化のタイミングを示すタイミング図
【図12】図12(A),図12(B)はフローティングPウエルトランジスタを用いたノイズ検出回路の構成例を示す回路図
【図13】本発明の入力インタフェース回路を搭載する集積回路装置(IC)のレイアウト構成例を説明するための図
【図14】図14(A),図14(B)は、本発明のノイズキャンセラを搭載したI/Oセルをクリティカルパスのみに設ける場合に、フローティングウエルと、電位が固定された通常のウエルとを選択的に形成する方法を説明するための図
【図15】図15(A)〜図15(C)は各々、本発明の誤動作防止回路を搭載した電子機器の例の外観を示す図
【図16】ESDイミュニティテストの一例を説明するための図
【図17】静電ノイズが信号入力端子に印加されることによって生じる回路ブロックの誤動作について説明するための回路図
【符号の説明】
【0167】
100 入力インタフェース回路(回路ブロックA)、
110 内部ロジック回路(回路ブロックB)、200 ノイズ検出回路、
300 切換回路、400 保持回路(スルーラッチ)、
500 ノイズキャンセラ、SW1 第1のスイッチ回路トランスファースイッチ)、
SW2 第2のスイッチ回路(トランスファースイッチ)、
SL 正規の信号経路の電圧、NL ノイズ検出経路の電圧、X 入力端子、
Y 出力端子、R1,R2 ノイズを検出する抵抗素子
MP,MN ノイズ検出用トランジスタ(フローティングウエルトランジスタ)、
M61 第1の電位調整用トランジスタ、M63 第2の電位調整用トランジスタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子に印加される高電位電源電圧を超える電圧レベルのノイズまたは低電位電源より低い電圧レベルのノイズを検出してノイズ検出信号を出力するノイズ検出回路と、
前記入力端子と、前記入力端子からの信号を受ける回路との間に設けられ、前記ノイズ検出信号がアクティブのときに、前記入力端子から前記回路への信号伝達を遮断するノイズキャンセラと、を有し、
前記ノイズキャンセラは、
前記入力端子と前記回路との間に設けられ、前記ノイズ検出信号がアクティブのときにオフし、非アクティブのときにオンする第1のスイッチ回路と、前記ノイズ検出信号がアクティブのときにオンし、非アクティブのときにオフする第2のスイッチ回路と、を含み、
前記第1のスイッチ回路がオフし、前記第2のスイッチ回路がオンすると、前記第1のスイッチ回路の出力端の電圧を保持し、その保持した電圧を前記回路に供給する、
ことを特徴とする入力インタフェース回路。
【請求項2】
請求項1記載の入力インタフェース回路であって、
前記ノイズ検出回路は、
前記入力端子の電圧に応じて電位が調整されるフローティングNウエル領域に形成され、ゲートが前記高電位電源電圧のノードに接続され、ソースが前記入力端子に接続され、ドレインから信号が出力されるノイズ検出用PMOSトランジスタと、
前記ノイズ検出用PMOSトランジスタの前記ドレインに一端が接続され、他端が前記低電位電源のノードに接続された、前記ノイズ検出信号を発生する抵抗素子と、
を有することを特徴とする入力インタフェース回路。
【請求項3】
請求項1記載の入力インタフェース回路であって、
前記ノイズ検出回路は、
前記入力端子の電圧に応じて電位が調整されるフローティングPウエル領域に形成され、ゲートが前記低電位電源のノードに接続され、ソースが前記入力端子に接続され、ドレインから信号が出力されるノイズ検出用NMOSトランジスタと、
前記ノイズ検出用NMOSトランジスタの前記ドレインに一端が接続され、他端が前記高電位電源電圧のノードに接続された、前記ノイズ検出信号を発生する抵抗素子と、
を有することを特徴とする入力インタフェース回路。
【請求項4】
請求項2記載の入力インタフェース回路であって、
ゲートが前記高電位電源電圧のノードに接続され、ソースが前記入力端子に接続され、ドレインが前記フローティングNウエル領域に接続され、前記ノイズ検出用PMOSトランジスタがオンすると、前記入力端子の印加電圧を前記フローティングNウエル領域に印加し、これによって前記フローティングNウエル領域の電位を前記入力端子の電位とする、前記フローティングNウエル領域の電位調整用の第1のPMOSトランジスタを有することを特徴とする入力インタフェース回路。
【請求項5】
請求項3記載の入力インタフェース回路であって、
ゲートが前記低電位電源に接続され、ソースが前記入力端子に接続され、ドレインが前記フローティングPウエル領域に接続され、前記ノイズ検出用NMOSトランジスタがオンすると、前記入力端子の印加電圧を前記フローティングPウエル領域に印加し、これによって前記フローティングPウエル領域の電位を前記入力端子の電位とする、前記フローティングPウエル領域の電位調整用の第1のNMOSトランジスタを有することを特徴とする入力インタフェース回路。
【請求項6】
請求項4記載の入力インタフェース回路であって、
ゲートが前記入力端子に接続され、ソースが前記高電位電源電圧のノードに接続され、ドレインが前記フローティングNウエル領域に接続され、前記ノイズ検出用PMOSトランジスタおよび前記フローティングNウエル領域の電位調整用の第1のPMOSトランジスタが共にオフすると、前記高電位電源電圧を前記フローティングNウエル領域に印加する、前記フローティングNウエル領域の電位調整用の第2のPMOSトランジスタを、さらに有することを特徴とする入力インタフェース回路。
【請求項7】
請求項5記載の入力インタフェース回路であって、
ゲートが前記入力端子に接続され、ソースが前記低電位電源に接続され、ドレインが前記フローティングPウエル領域に接続され、前記ノイズ検出用NMOSトランジスタおよび前記フローティングPウエル領域の電位調整用の第1のNMOSトランジスタが共にオフすると、前記低電位電源電圧を前記フローティングPウエル領域に印加する、前記フローティングPウエル領域の電位調整用の第2のNMOSトランジスタを、さらに有することを特徴とする入力インタフェース回路。
【請求項8】
請求項2,請求項4,請求項6のいずれか記載の入力インタフェース回路であって、
前記ノイズ検出用PMOSトランジスタは、前記入力端子に接続されている前記ソース端子に、前記高電位電源電圧に前記ノイズ検出用PMOSトランジスタの閾値電圧を加算した電圧以上の電圧が印加されることによってオンすることを特徴とする入力インタフェース回路。
【請求項9】
請求項3,請求項5,請求項7のいずれか記載の入力インタフェース回路であって、
前記ノイズ検出用NMOSトランジスタは、前記入力端子(X)に接続されている前記ソース端子に、前記低電位電源から前記ノイズ検出用NMOSトランジスタの閾値電圧を減算した電圧以下の電圧が印加されることによってオンすることを特徴とする入力インタフェース回路。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のいずれか記載の入力インタフェース回路であって、
前記ノイズキャンセラは、
前記第1のスイッチ回路としてのトランスファーゲートと、前記第2のスイッチ回路としてのトランスファーゲートと、前記第1のスイッチ回路の出力端および前記第2のスイッチ回路の共通接続点に入力端が接続された第1のインバータと、前記第1のインバータの出力端に入力端が接続され、出力端が前記第2のスイッチ回路の入力端に接続された第2のインバータと、を有し、前記第1のスイッチ回路の出力信号を前記回路に向けてスルーするか、前記第1のスイッチ回路の出力信号を前記第1および第2のインバータならびに前記第2のスイッチ回路を経由する正帰還経路でラッチするかを切換え可能なスルーラッチと、
前記抵抗素子から得られる前記ノイズ検出信号を受ける第3のインバータと、前記第3のインバータの出力端に入力端に接続された第4のインバータと、を有し、記第3のインバータの出力端と前記第4のインバータの入力端との共通接続点ならびに前記第4のインバータの出力端の各々から、前記第1のスイッチ回路および前記第2のスイッチ回路を相補的にオン/オフさせるための切換制御信号を生成する切換回路と、
を有することを特徴とする入力インタフェース回路。
【請求項11】
請求項1〜請求項10のいずれか記載の入力インタフェース回路であって、
前記入力端子と前記第1のスイッチとの間に設けられたタイミング調整用の遅延回路を、さらに有することを特徴とする入力インタフェース回路。
【請求項12】
請求項11記載の入力インタフェース回路であって、
前記入力端子にノイズが印加されたことによって前記第1のスイッチ回路の入力端の電位が変化する第1のタイミングよりも前の第2のタイミングにて、前記第1のスイッチ回路がオン状態からオフ状態に移行するように、かつ、前記入力端子にノイズが印加されなくなったことによって前記第1のスイッチ回路の入力端の電位が変化する第3のタイミングよりも後の第4のタイミングにて、前記第1のスイッチ回路がオフ状態からオン状態に復帰するように、前記遅延回路の遅延量ならびに前記抵抗素子の抵抗値が設定される、ことを特徴とする入力インタフェース回路。
【請求項13】
請求項2〜請求項10のいずれか記載の入力インタフェース回路であって、
前記抵抗素子の一端に接続されたタイミング調整回路を、さらに有し、
前記タイミング調整回路は、
前記タイミング調整用の遅延回路の遅延量よりも大きな遅延量をもつ第1のパスと、前記遅延回路の前記遅延量よりも小さな遅延量をもつ第2のパスと、前記第1のパスからの信号および前記第2のパスからの信号を受けて一つの信号を出力するゲート回路と、を有し、
前記入力端子へのノイズ印加に伴って前記ノイズ検出用トランジスタがオンして前記抵抗素子の一端の電圧レベルが変化すると、その電圧変化は、前記第2のパスを経由して伝達され、
前記入力端子に前記ノイズが印加されなくなったことに伴って前記ノイズ検出用トランジスタがオフして前記抵抗素子の一端の電圧レベルが変化すると、その電圧変化は、前記第1のパスを経由して伝達される、ことを特徴とする入力インタフェース回路。
【請求項14】
請求項2〜請求項10のいずれか記載の入力インタフェース回路であって、
前記入力端子と前記第1のスイッチ回路との間に設けられたタイミング調整回路をさらに有し、
前記タイミング調整回路は、
タイミング調整のための所定の遅延量を有する第1の遅延パスと、前記第1の遅延パスよりも小さな遅延量をもつ第2のパスと、前記第1のパスからの信号および前記第2のパスからの信号を受けて一つの信号を出力するゲート回路と、を有し、
前記入力端子へのノイズ印加に伴って前記タイミング調整回路の入力端の電圧レベルが変化すると、その電圧変化は、前記第1のパスを経由して伝達され、
前記入力端子に前記ノイズが印加されなくなったことに伴って前記タイミング調整回路の入力端の電圧レベルが変化すると、その電圧変化は、前記第2のパスを経由して伝達される、ことを特徴とする入力インタフェース回路。
【請求項15】
請求項1〜請求項14のいずれか記載の入力インタフェース回路であって、
前記入力端子と前記第1のスイッチ回路とを結ぶ経路に挿入された、ヒステリシス特性をもつ入力バッファと、前記入力バッファの出力端に一端が接続された平滑コンデンサと、をさらに有することを特徴とする入力インタフェース回路。
【請求項16】
請求項1〜請求項15のいずれか記載の入力インタフェース回路であって、
前記ノイズ検出回路の電源電圧と、前記入力端子からの信号を受ける回路の電源電圧は、別系統の電源電圧であることを特徴とする入力インタフェース回路。
【請求項17】
請求項1〜請求項16のいずれか記載の入力インタフェース回路を有することを特徴とする集積回路装置。
【請求項18】
請求項17記載の集積回路装置を有することを特徴とする電子機器。
【請求項1】
入力端子に印加される高電位電源電圧を超える電圧レベルのノイズまたは低電位電源より低い電圧レベルのノイズを検出してノイズ検出信号を出力するノイズ検出回路と、
前記入力端子と、前記入力端子からの信号を受ける回路との間に設けられ、前記ノイズ検出信号がアクティブのときに、前記入力端子から前記回路への信号伝達を遮断するノイズキャンセラと、を有し、
前記ノイズキャンセラは、
前記入力端子と前記回路との間に設けられ、前記ノイズ検出信号がアクティブのときにオフし、非アクティブのときにオンする第1のスイッチ回路と、前記ノイズ検出信号がアクティブのときにオンし、非アクティブのときにオフする第2のスイッチ回路と、を含み、
前記第1のスイッチ回路がオフし、前記第2のスイッチ回路がオンすると、前記第1のスイッチ回路の出力端の電圧を保持し、その保持した電圧を前記回路に供給する、
ことを特徴とする入力インタフェース回路。
【請求項2】
請求項1記載の入力インタフェース回路であって、
前記ノイズ検出回路は、
前記入力端子の電圧に応じて電位が調整されるフローティングNウエル領域に形成され、ゲートが前記高電位電源電圧のノードに接続され、ソースが前記入力端子に接続され、ドレインから信号が出力されるノイズ検出用PMOSトランジスタと、
前記ノイズ検出用PMOSトランジスタの前記ドレインに一端が接続され、他端が前記低電位電源のノードに接続された、前記ノイズ検出信号を発生する抵抗素子と、
を有することを特徴とする入力インタフェース回路。
【請求項3】
請求項1記載の入力インタフェース回路であって、
前記ノイズ検出回路は、
前記入力端子の電圧に応じて電位が調整されるフローティングPウエル領域に形成され、ゲートが前記低電位電源のノードに接続され、ソースが前記入力端子に接続され、ドレインから信号が出力されるノイズ検出用NMOSトランジスタと、
前記ノイズ検出用NMOSトランジスタの前記ドレインに一端が接続され、他端が前記高電位電源電圧のノードに接続された、前記ノイズ検出信号を発生する抵抗素子と、
を有することを特徴とする入力インタフェース回路。
【請求項4】
請求項2記載の入力インタフェース回路であって、
ゲートが前記高電位電源電圧のノードに接続され、ソースが前記入力端子に接続され、ドレインが前記フローティングNウエル領域に接続され、前記ノイズ検出用PMOSトランジスタがオンすると、前記入力端子の印加電圧を前記フローティングNウエル領域に印加し、これによって前記フローティングNウエル領域の電位を前記入力端子の電位とする、前記フローティングNウエル領域の電位調整用の第1のPMOSトランジスタを有することを特徴とする入力インタフェース回路。
【請求項5】
請求項3記載の入力インタフェース回路であって、
ゲートが前記低電位電源に接続され、ソースが前記入力端子に接続され、ドレインが前記フローティングPウエル領域に接続され、前記ノイズ検出用NMOSトランジスタがオンすると、前記入力端子の印加電圧を前記フローティングPウエル領域に印加し、これによって前記フローティングPウエル領域の電位を前記入力端子の電位とする、前記フローティングPウエル領域の電位調整用の第1のNMOSトランジスタを有することを特徴とする入力インタフェース回路。
【請求項6】
請求項4記載の入力インタフェース回路であって、
ゲートが前記入力端子に接続され、ソースが前記高電位電源電圧のノードに接続され、ドレインが前記フローティングNウエル領域に接続され、前記ノイズ検出用PMOSトランジスタおよび前記フローティングNウエル領域の電位調整用の第1のPMOSトランジスタが共にオフすると、前記高電位電源電圧を前記フローティングNウエル領域に印加する、前記フローティングNウエル領域の電位調整用の第2のPMOSトランジスタを、さらに有することを特徴とする入力インタフェース回路。
【請求項7】
請求項5記載の入力インタフェース回路であって、
ゲートが前記入力端子に接続され、ソースが前記低電位電源に接続され、ドレインが前記フローティングPウエル領域に接続され、前記ノイズ検出用NMOSトランジスタおよび前記フローティングPウエル領域の電位調整用の第1のNMOSトランジスタが共にオフすると、前記低電位電源電圧を前記フローティングPウエル領域に印加する、前記フローティングPウエル領域の電位調整用の第2のNMOSトランジスタを、さらに有することを特徴とする入力インタフェース回路。
【請求項8】
請求項2,請求項4,請求項6のいずれか記載の入力インタフェース回路であって、
前記ノイズ検出用PMOSトランジスタは、前記入力端子に接続されている前記ソース端子に、前記高電位電源電圧に前記ノイズ検出用PMOSトランジスタの閾値電圧を加算した電圧以上の電圧が印加されることによってオンすることを特徴とする入力インタフェース回路。
【請求項9】
請求項3,請求項5,請求項7のいずれか記載の入力インタフェース回路であって、
前記ノイズ検出用NMOSトランジスタは、前記入力端子(X)に接続されている前記ソース端子に、前記低電位電源から前記ノイズ検出用NMOSトランジスタの閾値電圧を減算した電圧以下の電圧が印加されることによってオンすることを特徴とする入力インタフェース回路。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のいずれか記載の入力インタフェース回路であって、
前記ノイズキャンセラは、
前記第1のスイッチ回路としてのトランスファーゲートと、前記第2のスイッチ回路としてのトランスファーゲートと、前記第1のスイッチ回路の出力端および前記第2のスイッチ回路の共通接続点に入力端が接続された第1のインバータと、前記第1のインバータの出力端に入力端が接続され、出力端が前記第2のスイッチ回路の入力端に接続された第2のインバータと、を有し、前記第1のスイッチ回路の出力信号を前記回路に向けてスルーするか、前記第1のスイッチ回路の出力信号を前記第1および第2のインバータならびに前記第2のスイッチ回路を経由する正帰還経路でラッチするかを切換え可能なスルーラッチと、
前記抵抗素子から得られる前記ノイズ検出信号を受ける第3のインバータと、前記第3のインバータの出力端に入力端に接続された第4のインバータと、を有し、記第3のインバータの出力端と前記第4のインバータの入力端との共通接続点ならびに前記第4のインバータの出力端の各々から、前記第1のスイッチ回路および前記第2のスイッチ回路を相補的にオン/オフさせるための切換制御信号を生成する切換回路と、
を有することを特徴とする入力インタフェース回路。
【請求項11】
請求項1〜請求項10のいずれか記載の入力インタフェース回路であって、
前記入力端子と前記第1のスイッチとの間に設けられたタイミング調整用の遅延回路を、さらに有することを特徴とする入力インタフェース回路。
【請求項12】
請求項11記載の入力インタフェース回路であって、
前記入力端子にノイズが印加されたことによって前記第1のスイッチ回路の入力端の電位が変化する第1のタイミングよりも前の第2のタイミングにて、前記第1のスイッチ回路がオン状態からオフ状態に移行するように、かつ、前記入力端子にノイズが印加されなくなったことによって前記第1のスイッチ回路の入力端の電位が変化する第3のタイミングよりも後の第4のタイミングにて、前記第1のスイッチ回路がオフ状態からオン状態に復帰するように、前記遅延回路の遅延量ならびに前記抵抗素子の抵抗値が設定される、ことを特徴とする入力インタフェース回路。
【請求項13】
請求項2〜請求項10のいずれか記載の入力インタフェース回路であって、
前記抵抗素子の一端に接続されたタイミング調整回路を、さらに有し、
前記タイミング調整回路は、
前記タイミング調整用の遅延回路の遅延量よりも大きな遅延量をもつ第1のパスと、前記遅延回路の前記遅延量よりも小さな遅延量をもつ第2のパスと、前記第1のパスからの信号および前記第2のパスからの信号を受けて一つの信号を出力するゲート回路と、を有し、
前記入力端子へのノイズ印加に伴って前記ノイズ検出用トランジスタがオンして前記抵抗素子の一端の電圧レベルが変化すると、その電圧変化は、前記第2のパスを経由して伝達され、
前記入力端子に前記ノイズが印加されなくなったことに伴って前記ノイズ検出用トランジスタがオフして前記抵抗素子の一端の電圧レベルが変化すると、その電圧変化は、前記第1のパスを経由して伝達される、ことを特徴とする入力インタフェース回路。
【請求項14】
請求項2〜請求項10のいずれか記載の入力インタフェース回路であって、
前記入力端子と前記第1のスイッチ回路との間に設けられたタイミング調整回路をさらに有し、
前記タイミング調整回路は、
タイミング調整のための所定の遅延量を有する第1の遅延パスと、前記第1の遅延パスよりも小さな遅延量をもつ第2のパスと、前記第1のパスからの信号および前記第2のパスからの信号を受けて一つの信号を出力するゲート回路と、を有し、
前記入力端子へのノイズ印加に伴って前記タイミング調整回路の入力端の電圧レベルが変化すると、その電圧変化は、前記第1のパスを経由して伝達され、
前記入力端子に前記ノイズが印加されなくなったことに伴って前記タイミング調整回路の入力端の電圧レベルが変化すると、その電圧変化は、前記第2のパスを経由して伝達される、ことを特徴とする入力インタフェース回路。
【請求項15】
請求項1〜請求項14のいずれか記載の入力インタフェース回路であって、
前記入力端子と前記第1のスイッチ回路とを結ぶ経路に挿入された、ヒステリシス特性をもつ入力バッファと、前記入力バッファの出力端に一端が接続された平滑コンデンサと、をさらに有することを特徴とする入力インタフェース回路。
【請求項16】
請求項1〜請求項15のいずれか記載の入力インタフェース回路であって、
前記ノイズ検出回路の電源電圧と、前記入力端子からの信号を受ける回路の電源電圧は、別系統の電源電圧であることを特徴とする入力インタフェース回路。
【請求項17】
請求項1〜請求項16のいずれか記載の入力インタフェース回路を有することを特徴とする集積回路装置。
【請求項18】
請求項17記載の集積回路装置を有することを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2008−283274(P2008−283274A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−123492(P2007−123492)
【出願日】平成19年5月8日(2007.5.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月8日(2007.5.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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