説明

入力抵抗が改善され、コモンモード制御された増幅器

第1出力(Vo−)を規定し、第1入力端子(330A)に結合されるゲートを各トランジスタ(315A、320A)が有する第1対のトランジスタ(305A)、第2出力(Vo+)を規定し、第2入力端子(330B)に結合されるゲートを各トランジスタ(315B、320B)が有する第2対のトランジスタ(305B)、第2出力端子(310B)に及び第1対のトランジスタの第1トランジスタ(315A)のゲートに結合される第1キャパシタ(350A)、第2出力端子(310B)に及び第1対の第2トランジスタ(320A)のゲートに結合される第2キャパシタ(355A)、第1出力端子(310A)に及び第2対の第3トランジスタ(315B)のゲートに結合される第3キャパシタ(350B)、及び第1出力端子(310A)に及び第2対の第4トランジスタ(320B)のゲートに結合される第4キャパシタ(355B)を含む増幅器(230)。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施例は、増幅器を含む回路に関し、さらに、コモンモード電圧を制御するための方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
無線周波数(RF)増幅器は、幾つかのアプリケーション、例えば無線受信器アプリケーションにおいて、RF信号を増幅するために用いられるデバイスである。RF増幅器は、例えば低雑音増幅器(LNA)などの入力回路と、ミキサーとの間に結合されて、ミキサーがLNAに負荷をかけないようにする。
【0003】
一例のRF増幅器100、後述ではこれを増幅器100と呼ぶ、を図1(先行技術)で説明する。LNAの出力(Vin+及びVin−)は、キャパシタ、例えばそれぞれ、キャパシタ125(Cac)、キャパシタ130(Cac)、キャパシタ135(Cac)、及びキャパシタ140(Cac)、を介して、トランジスタ105、トランジスタ110、トランジスタ115、及びトランジスタ120のゲートに結合される。増幅器100がLNAに負荷をかけないように、かつ、品質係数を低下させないためには、増幅器100は特定の入力抵抗を必要とする。数式1は増幅器100の入力抵抗を示す。
【数1】

ここで、gmは増幅器100の相互コンダクタンスであり、Zoは負荷145のインピーダンスであり、sは複素周波数を表し、s=j×2×π×fで求めることができ、ここで、fは周波数であり、Cp(Cpp+Cpn)は、トランジスタ105及びトランジスタ110の、或いは、トランジスタ115及びトランジスタ120の等価寄生容量である。
【0004】
トランジスタ105及びトランジスタ110の寄生容量は、寄生キャパシタ150(Cpp)及び寄生キャパシタ155(Cpn)として表す。トランジスタ115及びトランジスタ120の寄生容量は、寄生キャパシタ160(Cpp)及び寄生キャパシタ165(Cpn)として表す。負荷145の存在下で、寄生容量は増幅器100の入力抵抗を劣化させる。入力(Vin+及びVin−)から出力(Vo+及びVo−)への位相遅延が180度ずれると、増幅器100の入力抵抗も劣化する。入力抵抗の劣化は、LNAに負荷をかけ、LNAの利得、周波数選択性、及び騒音性能に影響を及ぼす。
【0005】
上記検討事項を考慮すると、LNAに負荷をかけないようにすることが求められている。また、線形性を改善するため、増幅器100の出力に関連するコモンモード電圧を所望の範囲内に維持することも求められている。
【発明の概要】
【0006】
例示の増幅器の形式の一実施例は、第1の出力を規定する第1の対のトランジスタを含む。前記第1の対のトランジスタの各トランジスタは、第1の入力端子に結合されるゲートを有する。この増幅器は更に、第2の出力を規定する第2の対のトランジスタを含む。前記第2の対のトランジスタの各トランジスタは、第2の入力端子に結合されるゲートを有する。この増幅器は更に、前記第1の入力端子の入力抵抗の劣化を最小化する第1の対のキャパシタと、前記第2の入力端子の入力抵抗の劣化を最小化する第2の対のキャパシタを含む。前記第1の対のキャパシタの第1のキャパシタは、第2の出力端子に及び前記第1の対のトランジスタの第1のトランジスタのゲートに結合される。前記第1の対のキャパシタの第2のキャパシタは、前記第2の出力端子に及び前記第1の対のトランジスタの第2のトランジスタのゲートに結合される。前記第2の対のキャパシタの第3のキャパシタは、第1の出力端子に及び前記第2の対のトランジスタの第3のトランジスタのゲートに結合される。前記第2の対のキャパシタの第4のキャパシタは、前記第1の出力端子に及び前記第2の対のトランジスタの第4のトランジスタのゲートに結合される。
【0007】
回路の出力に関連するコモンモード電圧を制御するための制御回路の一例は、コモンモード電圧を参照電圧と比較するため前記回路に結合されるコンパレータを含む。前記コンパレータにデジタル・アナログ・コンバータ(DAC)が結合される。前記DACは、コンパレータ出力の遷移に応答して、前記DACをこの遷移に対応する設定に構成する。前記回路及び前記DACにバイアス(biasing)要素が結合される。バイアス要素は、前記設定に基づいて前記回路にバイアスをかけることができ、それにより、コモンモード電圧を制御する。
【0008】
回路のコモンモード電圧を制御するための方法の一例は、コモンモード電圧を参照電圧と比較することを含む。この方法は更に、デジタル・アナログ・コンバータ(DAC)をこの比較に基づいた設定に構成することを含む。この方法は更に、この設定に基づいて前記回路にバイアスをかけることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は先行技術に従った増幅器を示す。
【0010】
【図2】図2は一実施例に従った環境を示す。
【0011】
【図3】図3は一実施例に従った増幅器を示す。
【0012】
【図4】図4は、一実施例に従って、或る回路の出力に関連するコモンモード電圧を制御するための制御回路を示す。
【0013】
【図5】図5は一実施例に従った二段増幅器の等価回路を示す。
【0014】
【図6】図6は、一実施例に従って、入力抵抗に対する等価寄生容量の影響が低減されることを示す一例である。
【0015】
【図7】図7は、一実施例に従って、入力抵抗に対する等価補正静電容量の影響が強まることを示す一例である。
【0016】
【図8】図8は、一実施例に従って、入力回路の負荷を制御するための方法を説明するフローチャートである。
【0017】
【図9】図9は、一実施例に従って、回路のコモンモード電圧を制御するための方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図2は、例えば無線受信器などの環境200を図示する。環境200は、入力回路205、増幅器230、ミキサー235、フィルタ240、アナログ・デジタル・コンバータ(ADC)245、及びデジタル・ブロック250を含む。入力回路205は、低雑音増幅器(LNA)210とチューニング回路215を含み得る。チューニング回路215は、LNA210の出力に結合され、並列接続で結合されるインダクタ220及びキャパシタ225を含む。チューニング回路215は、帯域内信号に電圧利得を供給し、帯域外信号を排除する。例えばRF増幅器などの増幅器230は、入力回路205とミキサー235との間に結合されて、入力回路205の負荷を防止する。ミキサー235は、発振器クロックから及び増幅器230からの入力を乗算して、出力信号を供給する乗算ミキサーであってよい。ミキサー235からの出力信号は更にフィルタ240に送られる。フィルタ240は、この出力信号を中間周波数信号に変換する中間周波数フィルタであってよい。この中間周波数信号はADC245に供給され、ADC245はこの中間周波数信号をデジタル出力に変換する。デジタル・ブロック250は、このデジタル出力を受信し、種々のオペレーションを実行する。デジタル・ブロック250はクロック回路及びカウンタを含み得る。デジタル・ブロック250は、増幅器230にも結合され、入力を受信し、増幅器230のコモンモード電圧を制御するための出力を供給する。
【0019】
幾つかの実施例において、入力回路205は、増幅器230への入力を供給する多段増幅器回路の幾つかの段の1段であってよい。その場合、増幅器230を多段増幅器回路の出力段増幅器と呼ぶことができ、入力回路205及び増幅器230を共に多段増幅器回路と呼ぶこともできる。
【0020】
入力回路205は、差動出力を増幅器230に供給することができる。入力回路205の差動出力を、増幅器230への入力と呼ぶことができる。増幅器230はこの入力を増幅し、入力回路205の負荷を低減させる。増幅器230が入力回路205に負荷をかけないようにするため、かつ、品質係数を低下させないようにするため、増幅器230は高い入力抵抗を有する必要がある。
【0021】
図3を参照すると、増幅器230は、第1の対のトランジスタ305Aを含む。第1の対のトランジスタ305Aは、入力(Vin+)に応答して第1の出力端子310Aの第1の出力(Vo−)を規定する。第1の対のトランジスタ305Aは、第1のトランジスタ315Aと第2のトランジスタ320Aを含む。トランジスタ315Aは、バイアス回路325に及びキャパシタ335A(Cac)を介して第1の入力端子330Aに結合されるゲート、電源(VCC)に結合されるソース(S)、トランジスタ320Aのドレイン(D)に結合されるドレイン(D)を有する。トランジスタ320Aは、バイアス回路325に及びキャパシタ335B(Cac)を介して入力端子330Aに結合されるゲート、及び接地(GND)に結合されるソース(S)を有する。トランジスタ315A及びトランジスタ320Aの寄生容量は、寄生キャパシタ340A(Cpp)及び寄生キャパシタ345A(Cpn)で表す。
【0022】
増幅器230は更に、第2の対のトランジスタ305Bを含む。第2の対のトランジスタ305Bは、入力(Vin−)に応答して第2の出力端子310Bの第2の出力(Vo+)を規定する。第2の対のトランジスタ305Bは、第3のトランジスタ315Bと、後述ではトランジスタ320Bと呼ぶ第4のトランジスタ320Bを含む。トランジスタ315Bは、バイアス回路325に及びキャパシタ335C(Cac)を介して第2の入力端子330Bに結合されるゲート、電源(VCC)に結合されるソース、及びトランジスタ320Bのドレインに結合されるドレインを有する。トランジスタ320Bは、バイアス回路325に及びキャパシタ335D(Cac)を介して入力端子330Bに結合されるゲート、及び接地(GND)に結合されるソースを有する。トランジスタ315B及びトランジスタ320Bの寄生容量は、寄生キャパシタ340B(Cpp)及び寄生キャパシタ345B(Cpn)で表す。
【0023】
増幅器230は更に、入力端子330Aの入力抵抗の劣化を最小化する第1の対のキャパシタを含む。第1の対のキャパシタは、後述ではキャパシタ350Aと呼ぶ第1のキャパシタ350A(Cpc)と、後述ではキャパシタ355Aと呼ぶ第2のキャパシタ355A(Cnc)を含む。キャパシタ350Aの1つの端子(陰極)はトランジスタ315Aのゲートに結合され、他方の端子(陽極)はトランジスタ315Bのドレインに結合される。キャパシタ355Aの1つの端子(陰極)はトランジスタ320Aのゲートに結合され、他方の端子(陽極)はトランジスタ320Bのドレインに結合される。
【0024】
増幅器230は更に、入力端子330Bの入力抵抗の劣化を最小化する第2の対のキャパシタを含む。第2の対のキャパシタは、後述ではキャパシタ350Bと呼ぶ第3のキャパシタ350B(Cpc)と、後述ではキャパシタ355Bと呼ぶ第4のキャパシタ355B(Cnc)を含む。キャパシタ350Bの1つの端子(陰極)はトランジスタ315Aのドレインに結合され、他方の端子(陽極)はトランジスタ315Bのゲートに結合される。キャパシタ355Bの1つの端子(陰極)はトランジスタ320Aのドレインに結合され、他方の端子(陽極)はトランジスタ320Bのゲートに結合される。
【0025】
増幅器230はバイアス回路325を含む。バイアス回路325は、一対のダイオードと、これらのダイオードに結合される一対の電流源を含み得る。これらのダイオードはトランジスタ・ベースのダイオードであってよい。
【0026】
前記電流源は、前記第1の出力(Vo−)及び前記第2の出力(Vo+)に関連するコモンモード電圧を制御する少なくとも1つのデジタル・アナログ・コンバータ(DAC)を含み得る。コモンモード電圧([(Vo+)+(Vo−)]/2)は、前記第1の出力及び前記第2の出力の平均として求めることができる。
【0027】
増幅器230は更に、出力端子310A及び出力端子310Bに結合されるコンパレータを含む。このコンパレータはコモンモード電圧を参照電圧と比較する。
【0028】
増幅器230は、出力端子310A及び出力端子310Bを介して負荷360(Zo)に結合され得る。
【0029】
幾つかの実施例において、キャパシタ350A、キャパシタ355A、キャパシタ350B、及びキャパシタ355Bは、サイズ及び静電容量が同一であってもよい。キャパシタ335A、キャパシタ335B、キャパシタ335C、及びキャパシタ335Dは、交流(AC)結合キャパシタであってもよく、同一であってもよい。
【0030】
幾つかの実施例において、キャパシタ(4個のキャパシタ)の組み合わせは、これらのキャパシタの補正静電容量が所定の基準を満たすように選択され得る。例えば1つの側面において、キャパシタ350A及びキャパシタ355Aの補正静電容量の比(Cpc/Cnc)は、寄生キャパシタ340A及び寄生キャパシタ345Aの静電容量の比(Cpp/Cpn)と同等である。同様に、キャパシタ350B及びキャパシタ355Bの補正静電容量の比は、寄生キャパシタ340B及び寄生キャパシタ345Bの静電容量の比と同等である。
【0031】
幾つかの実施例において、トランジスタ315A及びトランジスタ315Bは、正の金属酸化物半導体(PMOS)型トランジスタを含み、トランジスタ320A及びトランジスタ320Bは、負の金属酸化物半導体(NMOS)型トランジスタを含む。
【0032】
増幅器230の入力抵抗をエンハンスすることにより入力回路の負荷を防止するための増幅器230の働きを下記のように説明する。バイアス回路325を用いて、トランジスタ315A、トランジスタ320A、トランジスタ315B、及びトランジスタ320Bにバイアスがかけられる。入力端子330Aは、キャパシタ335Aを介してトランジスタ315Aのゲートへ及びキャパシタ335Bを介してトランジスタ320Aのゲートへ、正の入力電圧信号を供給する。トランジスタ315A及びトランジスタ320Aはアクティブである。同様に、入力端子330Bは、キャパシタ335Cを介してトランジスタ315Bのゲートへ及びキャパシタ335Dを介してトランジスタ320Bのゲートへ、負の入力電圧信号を供給する。トランジスタ315B及びトランジスタ320Bはアクティブとなる。これらの正の入力電圧信号及び負の入力電圧信号は、入力回路205から送信されるAC結合されたRF信号であってよい。
【0033】
トランジスタ315Aの寄生キャパシタ340Aに対応する第1の電流は、入力端子330Aから、キャパシタ335A、トランジスタ315Aのゲート、及び寄生キャパシタ340Aを介して、出力端子310Aに向かって流れる。トランジスタ320Aの寄生キャパシタ345Aに対応する第2の電流は、入力端子330Aから、キャパシタ335B、トランジスタ320Aのゲート、及び寄生キャパシタ345Aを介して、出力端子310Aに向かって流れる。トランジスタ315Bの寄生キャパシタ340Bに対応する第3の電流は、入力端子330Bから、キャパシタ335C、トランジスタ315Bのゲート、及び寄生キャパシタ340Bを介して、出力端子310Bに向かって流れる。トランジスタ320Bの寄生キャパシタ345Bに対応する第4の電流は、入力端子330Bから、キャパシタ335D、トランジスタ320Bのゲート、及び寄生キャパシタ345Bを介して、出力端子310Bに向かって流れる。各トランジスタの寄生容量は、増幅器230の性能を劣化させる。前記第1の対のキャパシタは、補正電流の経路を規定する。この補正電流は、前記第1の対のトランジスタ305Aの対応する寄生容量に因り流れる電流と大きさが等しく極性が反対である。一例において、キャパシタ350Aは、寄生キャパシタ340Aを介して流れる前記第1の電流と大きさが同じであり極性が反対である、第1の補正電流の経路を規定する。前記第1の補正電流は、出力端子310Bから、キャパシタ350A、及びトランジスタ315Aのゲートを流れて、前記第1の電流に因る性能劣化を低減させる。別の例において、キャパシタ355Aは、寄生キャパシタ345Aを介して流れる前記第2の電流と大きさが同じであり極性が反対である、第2の補正電流の経路を規定する。前記第2の補正電流は、出力端子310Bから、キャパシタ355A、及びトランジスタ320Aのゲートを流れて、前記第2の電流に因る性能劣化を低減させる。前記第2の対のキャパシタは、補正電流の経路を規定する。これらの補正電流は、前記第2の対のトランジスタ305Bの対応する寄生容量を介して流れる電流と大きさが同じであり極性が反対である。一例において、キャパシタ350Bは、寄生キャパシタ340Bを介して流れる前記第3の電流と大きさが同じであり極性が反対である、第3の補正電流の経路を規定する。前記第3の補正電流は、出力端子310Aから、キャパシタ350B、及びトランジスタ315Bのゲートを流れて、前記第3の電流に因る性能劣化を低減させる。別の例において、キャパシタ355Bは、寄生キャパシタ345Bを介して流れる前記第4の電流と大きさが同じであり極性が反対である、第4の補正電流の経路を規定する。前記第4の補正電流は、出力端子310Aから、キャパシタ355B、及びトランジスタ320Bのゲートを流れて、前記第4の電流に因る性能劣化を低減させる。
【0034】
入力抵抗Rinは、等価補正静電容量(Cc)によってエンハンスされ、下記の数式2によって求められる。
【数2】

ここで、gmは増幅器230の相互コンダクタンスであり、Zoは負荷360のインピーダンスであり、Cp(Cpp+Cpn)は、トランジスタ315A及びトランジスタ320A、又はトランジスタ115及びトランジスタ120のいずれかの等価寄生容量であり、Cc(Cpc+Cnc)は、キャパシタ350A及びキャパシタ355A、又はキャパシタ350B及びキャパシタ355Bのいずれかの等価補正静電容量であり、sは複素周波数を表し、s=j×2×π×fで求めることができ、ここで、fは周波数である。入力抵抗をエンハンスすることは、入力端子330A及び入力端子330Bの入力抵抗の劣化の最小化又は防止であるということもできる。
【0035】
幾つかの実施例において、バイアス回路325が、コモンモード電圧を制御するためのDACを含む場合、このバイアス回路を制御回路と呼ぶこともできる。この制御回路について図4で説明する。
【0036】
図4を参照すると、制御回路は、例えば増幅器230などの或る回路の、例えば出力端子310A及び出力端子310Bなどの出力端子に結合される回路410を含む。トランジスタ315A及びトランジスタ320Aは、出力端子310Aの第1の出力(Vo−)を規定する。同様に、トランジスタ315B及びトランジスタ320Bが、出力端子310Bの第2の出力(Vo+)を規定する。回路410はコンパレータ415に結合される。コンパレータ415はクロック420に結合される。クロック420はカウンタ425に結合され、このカウンタ425は、例えばデジタル・アナログ・コンバータ(DAC)430など、電流源に結合される。DAC430は、一つ又は複数のスイッチ、例えば、スイッチ455A、スイッチ455B、スイッチ455C、スイッチ455D、スイッチ455E、及びスイッチ455Fを含む。DAC430は更に、例えばトランジスタ・ダイオードなどのダイオード445に結合されるドレイン、及び対応するスイッチに結合されるソースを有する、一つ又は複数のトランジスタ、例えば、トランジスタ460A、トランジスタ460B、トランジスタ460C、トランジスタ460D、トランジスタ460E、及びトランジスタ460Fを含み、例えば、トランジスタ460Fのソースはスイッチ455Fに結合される。ダイオード445は、抵抗450Bを介してトランジスタ320Aのゲートに結合されるゲートと接地(GND)に結合されるソースを有する。例えば、トランジスタ・ダイオードなどのダイオード440は、抵抗450Aを介してトランジスタ315Aのゲートに結合されるゲートと、電源(VCC)に結合されるソースを有する。ダイオード440のドレインと接地との間に電流源435が結合される。
【0037】
幾つかの実施例において、前記制御回路は、回路410、コンパレータ415、クロック420、カウンタ425、DAC430、ダイオード445、ダイオード440、電流源435、抵抗450A、及び抵抗450Bを含む。幾つかの実施例において、回路410は、例えば複数の抵抗など、一つ又は複数の受動要素を含む。幾つかの実施例において、バイアス要素と呼ぶこともあるダイオード445はNMOS型トランジスタであり、ダイオード440はPMOS型トランジスタである。
【0038】
回路410は、第1の出力と第2の出力を平均することによりコモンモード電圧を決定する。コンパレータ415は、このコモンモード電圧を参照電圧と比較する。コンパレータ415は、この比較に基づいてコンパレータ出力をクロック420へ供給する。コモンモード電圧が参照電圧を交差するとき、コンパレータ出力は遷移を含む。クロック420は、クロック入力(INPUT CLK)とコンパレータ出力を受信し、カウンタ425へクロック信号(COUNTER CLK)を生成する。カウンタ425は、前述のスイッチを制御することによってクロック信号に応答したDAC430の構成を可能にする。これらのスイッチは1つずつ閉じられ、コンパレータ出力はカウンタ425を用いて観測される。カウンタ425は、リセット・ピン(RST)を用いてリセットされ得る。これらのスイッチは、DAC430内の電流の流れを制御し、この電流の流れがトランジスタ320Aのバイアスを制御する。DAC430は、ダイオード445と関連して、トランジスタ320Aのオペレーションの開始時間のずれを防ぎ、さらに、トランジスタ315Aのオペレーションの開始時間のずれにより生じるコモンモード電圧の変動にも対応する。カウンタ425は、DAC430をコンパレータ出力が遷移を含むとき存在する或る設定に構成する。
【0039】
幾つかの実施例において、DAC430は6ビットDACである。幾つかの実施例において、電流源435は、トランジスタ315Aにバイアスをかけるために用いられる定電流源である。
【0040】
前記制御回路は、トランジスタ320A及びトランジスタ315Aに関連して説明されていることに注意されたい。同様の又は異なる制御回路をトランジスタ320B及びトランジスタ315Bに用いることが可能である。
【0041】
図5は二段増幅器の等価回路を図示する。この二段増幅器は、相互コンダクタンスgm1を有する入力段内の増幅器505と、出力段内の相互コンダクタンスgm2を有する増幅器230を含む。増幅器505は、インダクタ515及びキャパシタ520の並列接続である、チューニング回路510に結合される。増幅器505は、増幅された出力を入力として増幅器230へ供給する。出力段内の増幅器230の等価寄生容量(Cp)に因る電流の存在は、入力抵抗(Rin)をエンハンスすることにより、等価補正静電容量(Cc)に因る補正電流によって無効とされる。Rinのエンハンスにより、増幅器230の周波数選択性と利得が改善される。
【0042】
図6は、先行技術と比較して、入力抵抗(Rin)に対する等価寄生容量(Cp)の影響が低減されることを示す一例である。X軸は、10フェムトファラド(fF)から100fFまでの等価寄生容量の変動を表す。Y軸は、0キロオームから70キロオームまでの入力抵抗の変動を表す。波形605は2.5ギガヘルツ(GHz)での入力抵抗に対応し、波形610は増幅器230の5GHzでの入力抵抗に対応する。増幅器230の入力抵抗は、入力回路205の利得をエンハンスする。波形615は2.5GHzでの入力抵抗に対応し、波形620は先行技術の5GHzでの入力抵抗Rinに対応する。Cpの或る所定の値に対し、波形605に対応する入力抵抗は、波形615に対応する入力抵抗に較べて高い。同様に、Cpの前記所定の値に対し、波形610に対応する入力抵抗は、波形620に対応する入力抵抗に較べて高い。
【0043】
図7は、一例の性能範囲について、入力抵抗(Rin)に対する等価補正静電容量(Cc)の影響が強まることを示す一例である。X軸は、等価補正静電容量の、要求される値から−10%又は+10%までの変動を表す。要求される値は、等価寄生容量にほぼ等しくてよい。波形705は、等価補正静電容量の変化に対応する入力抵抗の変動に対応する。入力抵抗の増加は、等価補正静電容量の増加に正比例する。
【0044】
図8は、例えば低雑音増幅器などの入力回路の負荷を制御するための方法を説明するフローチャートである。この制御により、所望の利得の達成が促進され、周波数選択性及び騒音性能が改善される。入力回路の負荷は、この入力回路の出力に結合される、例えば無線周波数(RF)増幅器などの増幅器を用いて制御することができる。この増幅器は、後述では前記第1の対と呼ぶ第1の対のトランジスタと、後述では前記第2の対と呼ぶ第2の対のトランジスタを含む。
【0045】
工程805において、前記第1の対のトランジスタに交差して第1の対のキャパシタが結合され、前記第2の対のトランジスタに交差して第2の対のキャパシタが結合される。前記第1の対のトランジスタは正の入力に応答して第1の出力を規定する。前記第2の対のトランジスタは、負の入力に応答して第2の出力を規定する。各トランジスタのゲートとドレインの間の寄生容量が或る電流を生成し、この電流が前記増幅器の入力抵抗を劣化させる。
【0046】
工程810において、前記第1の対のキャパシタ及び前記第2の対のキャパシタを用いて補正電流が生成される。前記増幅器の入力抵抗の劣化を低減するため、この補正電流が生成される。この補正電流は、前記第1の出力及び前記第2の出力に関連し、それぞれのキャパシタを介して流れる。
【0047】
工程815において、前記補正電流を用いて電流が低減される。前記補正電流は、対応する寄生容量に因る電流と等しく極性が反対であってよい。
【0048】
前記補正電流は、前記寄生容量の影響を低減し、入力抵抗を増加させる。入力抵抗の増加は、前記増幅器の利得を改善し、入力回路の負荷を防ぐ。
【0049】
図9は、回路のコモンモード電圧を制御するための方法を図示する。例えば増幅器などのこの回路は、二対のトランジスタ、例えば、後述では前記第1の対と呼ぶ第1の対のトランジスタと、後述では前記第2の対と呼ぶ第2の対のトランジスタ、を含む。前記第1の対は第1の出力を規定し、前記第2の対は第2の出力を規定する。前記コモンモード電圧は、前記第1の出力及び前記第2の出力の平均として規定されてもよい。
【0050】
工程905において、前記コモンモード電圧が参照電圧と比較される。コモンモード電圧を参照電圧と比較するためにコンパレータが用いられてもよい。前記参照電圧は、電源の大きさの半分に等しくてよい。
【0051】
工程910において、例えば前記DAC430などの、デジタル・アナログ・コンバータ(DAC)が、前述の比較に基づいた設定に構成される。この設定は、前記コモンモード電圧に因る前記参照電圧の交差に対応する。この交差は、例えば、前記コンパレータを用いることにより判定されてもよい。コンパレータ出力での遷移がこの交差を示すこともできる。
【0052】
一実施例において、前記DACの構成を可能にするため、クロック及びカウンタを含むデジタル・ブロックが組み合わせて用いられる。
【0053】
別の実施例において、前記DACを構成するためにソフトウェア又はファームウェアが用いられてもよい。
【0054】
工程915において、前記設定に基づいて前記回路にバイアスがかけられる。前記DACは、設定された後、前記コモンモード電圧を制御するため前記回路にバイアスをかけるために用いられる。前記DACの構成は、前記DACを介する電流の制御と、前記第1の対及び前記第2の対のバイアスを助ける。このバイアスはその後、前記DACへの入力を制御することによって前記コモンモード電圧を制御する。
【0055】
例示の実施例の文脈で説明したような特徴又は工程のすべて又はその幾つかを有する例示の実施例の文脈で説明した1つ又はそれ以上の特徴又は工程の異なる組み合わせを有する実施例も、本明細書に包含されることも意図している。当業者であれば、他の多くの実施例及び変形も特許請求の範囲に包含されることが理解されるであろう。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
増幅器を含む回路であって、
第1の出力端子を規定する第1の対のトランジスタであって、第1の入力端子に結合されるゲートを各トランジスタが有する、前記第1の対のトランジスタ、
第2の出力端子を規定する第2の対のトランジスタであって、第2の入力端子に結合されるゲートを各トランジスタが有する、前記第2の対のトランジスタ、
前記第1の入力端子の入力抵抗の劣化を最小化する第1の対のキャパシタであって、前記第1の対のキャパシタの第1のキャパシタが、前記第2の出力端子に及び前記第1の対のトランジスタの第1のトランジスタの前記ゲートに結合され、前記第1の対のキャパシタの第2のキャパシタが、前記第2の出力端子に及び前記第1の対のトランジスタの第2のトランジスタの前記ゲートに結合される、前記第1の対のキャパシタ、及び
前記第2の入力端子の入力抵抗の劣化を最小化する第2の対のキャパシタであって、前記第2の対のキャパシタの第3のキャパシタが、前記第1の出力端子に及び前記第2の対のトランジスタの第3のトランジスタの前記ゲートに結合され、前記第2の対のキャパシタの第4のキャパシタが、前記第1の出力端子に及び前記第2の対のトランジスタの第4のトランジスタの前記ゲートに結合される、前記第2の対のキャパシタ、
を含む、回路。
【請求項2】
請求項1に記載の回路であって、
前記第1の対のキャパシタが補正電流のための経路を規定し、前記補正電流は、前記第1の対のトランジスタの対応する寄生容量に因り流れる電流と大きさが等しく極性が反対であり、更に、
前記第2の対のキャパシタが補正電流のための経路を規定し、前記補正電流は、前記第2の対のトランジスタの対応する寄生容量に因り流れる電流と大きさが等しく極性が反対である、
回路。
【請求項3】
請求項1に記載の回路であって、前記第1の対のトランジスタ及び前記第2の対のトランジスタに結合され、前記第1の対のトランジスタ及び前記第2の対のトランジスタにバイアスをかけるバイアス回路を更に含む、回路。
【請求項4】
請求項3に記載の回路であって、前記バイアス回路が、一対のダイオードと、前記一対のダイオード結合される一対の電流源とを含む、回路。
【請求項5】
請求項4に記載の回路であって、前記一対の電流源が、前記第1の出力及び前記第2の出力に関連するコモンモード電圧を制御する少なくとも1つのデジタル・アナログ・コンバータを含む、回路。
【請求項6】
請求項5に記載の回路であって、前記第1の出力端子及び前記第2の出力端子に結合され、前記コモンモード電圧を参照電圧と比較するコンパレータを更に含む、回路。
【請求項7】
請求項1に記載の回路であって、前記第1のトランジスタ及び前記第3のトランジスタが正の金属酸化物半導体(PMOS)型トランジスタを含み、前記第2のトランジスタ及び前記第4のトランジスタが負の金属酸化物半導体(NMOS)型トランジスタを含む、回路。
【請求項8】
請求項1に記載の回路であって、前記増幅器が多段増幅器回路の出力段増幅器を含む、回路。
【請求項9】
請求項1に記載の回路であって、前記増幅器が入力回路に結合され、前記増幅器が前記入力回路に対する負荷として機能し、前記第1の対のキャパシタ及び前記第2の対のキャパシタを用いて補正電流を生成することにより前記入力回路の負荷を低減させる、回路。
【請求項10】
回路の出力に関連するコモンモード電圧を制御するための制御回路を含む、回路であって、前記制御回路が、
前記コモンモード電圧を参照電圧と比較するため前記回路に結合されるコンパレータ、
前記コンパレータに結合されるデジタル・アナログ・コンバータ(DAC)であって、コンパレータ出力での遷移に応答して前記遷移に対応する設定に構成される、前記DAC、及び、
前記回路に及び前記DACに結合されるバイアス要素であって、前記設定に基づいた前記回路のバイアスを可能にし、それにより前記コモンモード電圧を制御する、前記バイアス要素、
を含む、回路。
【請求項11】
請求項10に記載の回路であって、前記バイアス要素がダイオードである、回路。
【請求項12】
請求項11に記載の回路であって、
前記コンパレータに結合され、前記コンパレータ出力とクロック入力とに応答してクロック信号を生成するクロック、及び、
前記DAC及び前記クロックに結合され、前記クロック信号に応答して前記DACを構成するカウンタ、
を更に含む、回路。
【請求項13】
回路のコモンモード電圧を制御するための方法であって、前記方法が、
前記コモンモード電圧を参照電圧と比較し、
前記比較に基づいた設定にデジタル・アナログ・コンバータ(DAC)を構成し、更に、
前記設定に基づいて前記回路をバイアスすること、
を含む、方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、前記DACを構成することが、デジタル・ブロックにより前記DACを構成することを含み、前記デジタル・ブロックがクロック及びカウンタを含む、方法。
【請求項15】
請求項13に記載の方法であって、前記DACを構成することが、前記コモンモード電圧による前記参照電圧の交差に対応して前記設定に前記DACを構成することを含む、方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2013−516894(P2013−516894A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−548014(P2012−548014)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【国際出願番号】PCT/US2010/060127
【国際公開番号】WO2011/084384
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(390020248)日本テキサス・インスツルメンツ株式会社 (219)
【出願人】(507107291)テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド (50)
【Fターム(参考)】